説明

トラフ用蓋とこのトラフ用蓋の連結部材、これらを用いたトラフ及びトラフ用蓋の布設方法

【課題】 本発明の目的は、トラフ内に収納されているケーブルを傷つける恐れが少なく、しかも蓋同士の連結が容易な、トラフ用蓋、これを連結するトラフ用蓋の連結部材、これらトラフ用蓋やトラフ用蓋の連結部材を用いたトラフ及びトラフへの前記トラフ用蓋の布設方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明のトラフ用蓋10は、一端上部に張出部11を有し、かつ他端下部に隣接する蓋10の張出部11の下方に位置決めされる張出受け部12とを有している。そしてこの蓋10同士を連結する連結部材30は、その上部に蓋10の張出部11が挿入される断面略コの字状の張出部差込部31を有し、かつ下部に蓋10と隣接する蓋10の他端に設けられている張出受け部12が挿入される断面略逆コの字状の張出受け部差込部32を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道の線路の脇や変電施設内に設けられているケーブルトラフの布設に係るもので、特にトラフ用蓋、このトラフ用蓋の連結部材、これらトラフ用蓋やトラフ用蓋の連結部材を用いたトラフ、及びトラフへのトラフ用蓋の布設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば鉄道の線路脇や変電施設内には、電力ケーブルや通信ケーブル等を保護し、布設するためのケーブルトラフが設けられている。
このケーブルトラフは、通常、断面略U字状のコンクリート製のトラフ本体と、このトラフ本体の上部開口部をトラフ本体全長に亘って覆う、これもコンクリート製のトラフ用蓋とからなっていて、トラフ本体内部に前述したケーブル類を収納した後、トラフ本体上部の開口部をトラフ用蓋で全長に亘って覆うものである。
【0003】
ところで近年、ケーブルトラフの布設を容易にしたい、との要望が多く、そのためケーブルトラフ用蓋を合成樹脂にする試みや、トラフ用蓋だけに留まらずトラフ本体及びトラフ用蓋のすべてを合成樹脂にする試みがなされている。とりわけ合成樹脂の再利用の観点から、前述したトラフ本体やトラフ用蓋すべてを合成樹脂のリサイクル品でまかなう試みも行われるようになってきている。
【0004】
このように少なくともトラフ用蓋を合成樹脂製のものに代えると、布設工事の際、作業者の負担が大きく改善される。すなわちトラフ用蓋が軽くなった分、トラフ用蓋の運搬やトラフ本体へトラフ用蓋を被せる作業が容易になり、作業者の腰痛対策にも有効である。また、重機を使用しなくとも運搬、施工が可能である上、工期が短縮でき工費の節減にもつながる。またリサイクル材を使用すれば使用後も再成型し、再利用することもできる。もちろんトラフ用蓋のみならずトラフ本体も含めて合成樹脂化すれば、その効果は極めて大きい。
【0005】
しかしながらトラフ用蓋を合成樹脂化した場合、以下のような問題がある。
すなわち、トラフ用蓋を合成樹脂化すると、当然のことながら従来のコンクリート製の場合に比して大幅に軽量になる。
具体的には、サイズがほぼ同じトラフ用蓋で比較すると、合成樹脂製のトラフ用蓋ではコンクリート製の蓋の約1/10程度になる。その結果、ケーブルトラフの傍を電車が走行した場合、その風圧でトラフ用蓋が飛び上がってトラフ本体から外れてしまう、という問題がある。もちろん台風等風が強い場合にも同様のことが起こり得る。
【0006】
風や電車の風圧でトラフ用蓋が飛んで外れると、通過中の電車にトラフ用蓋が当たったり、線路脇を歩いている歩行者等に当たる可能性もある。また、トラフ本体内部に収納されているケーブル類が直接風雨に曝される、とか、最悪の場合にはケーブル類も舞い上がってトラフ本体から飛び出してしまう、ということも引き起こされ得る。
【0007】
そこで電車の風圧や風によってケーブルトラフ用蓋が簡単に外れないように、隣接するトラフ用蓋同士を連結金具で連結する方法が提案されている(特許文献1)。
特許文献1に開示されている方法は、図10が示すように隣接するトラフ用蓋3の連結端面を中に挟んで、当該連結端面部の近傍にトラフ用蓋3の表裏を貫通する貫通孔8a、8bをそれぞれ穿ち、この貫通孔8a、8bに略U字状のトラフ用蓋の連結部材6の脚部7、7を挿通して両トラフ用蓋3同士を連結するものである。
【0008】
さらに前記連結部材6の脚部7、7は、トラフの内壁側に向かって斜めに挿通されるように貫通孔8a、8bに工夫が施されていて、トラフ用蓋3、3の貫通孔8a、8bに挿通された連結部材6の脚部7は、その先端部がトラフの内側壁を外向きに押すように作用する。その結果、トラフ用蓋3がより外れ難くなっている、というものである。
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3045816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながらこの特許文献1に記載の連結部材6の場合、連結部材6の脚部7、7の先端でトラフ内の、例えばケーブル類に傷を付ける危険性がある。特にこの連結部材6を抜け難くしようと脚部7、7の長さを長くすると、その危険性は高まる。かといって脚部7、7の長さを短くすれば、今度は逆に連結部材6が貫通孔8a、8bから抜け易くなって、このトラフの脇を電車が高速で通過したりした場合に、その風圧でトラフ用蓋3が外れ易くなる、という危険性もある。
【0011】
しかも実際のトラフにおいては、トラフ内に収納されるケーブルの本数やサイズはまちまちである可能性が高く、さらにはケーブル類がきちんと整列された状態で収納されている場合もあればそうでない場合もあり、脚部7の長さを仮に一定にしたとしても、常にケーブル類を傷つけない、という保証はないのが実情である。
【0012】
そこで本発明の目的は、トラフ内に収納されているケーブルを傷つける恐れが少なく、しかも蓋同士の連結が容易な、トラフ用蓋、これを連結するトラフ用蓋の連結部材、これらトラフ用蓋やトラフ用蓋の連結部材を用いたトラフ及びトラフへの前記トラフ用蓋の布設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成すべく請求項1記載のトラフ用蓋は、上部に開口部を有するトラフ本体の前記開口部をトラフ本体長手方向に亘って覆う合成樹脂製の複数のトラフ用蓋であって、隣接する前記トラフ用蓋同士が互いにトラフ用蓋の連結部材により連結されてなるトラフ用蓋において、前記トラフ用蓋は一端上部に張出部を有し、かつ他端下部に隣接するトラフ用蓋の前記張出部の下方に位置決めされる張出受け部とを有していて、前記トラフ用蓋の連結部材は上部に前記トラフ用蓋の張出部が挿入される断面略コの字状の張出部差込部を有し、かつ下部に前記トラフ用蓋と隣接するトラフ用蓋の他端に設けられている前記張出受け部が挿入される断面略逆コの字状の張出受け部差込部を有していて、前記トラフ用蓋の張出部が前記トラフ用蓋の連結部材の断面略コの字状の張出部差込部に挿入され、隣接するトラフ用蓋の張出受け部が前記トラフ用蓋の連結部材の断面略逆コの字状の張出受け部差込部に挿入されて互いに隣接するトラフ用蓋同士が相互に連結されてなることを特徴とするものである。
【0014】
このようにしてなる請求項1記載のトラフ用蓋によれば、これらトラフ用蓋を連結する連結部材はトラフ内部に向かって延びる脚部のような突起物を有していない。それ故、トラフ内部に収納されているケーブル類を損傷する恐れが極めて少ない。しかもこのトラフ用蓋であれば、その上部に設けられている張出部を連結部材の断面略コの字状の張出部差込部に差し込み、トラフ用蓋の下部に設けられている張出受け部を断面略逆コの字状の張出受け部差込部に挿入するだけで隣接するトラフ用蓋同士を連結できるため、連結作業が極めて簡単である。
【0015】
また請求項2記載のトラフ用蓋の連結部材は、上部に開口部を有するトラフ本体の前記開口部をトラフ本体長手方向に亘って覆う合成樹脂製の複数のトラフ用蓋の隣接するトラフ用蓋同士を互いに連結するトラフ用蓋の連結部材において、該トラフ用蓋の連結部材は上部に前記トラフ用蓋の一端上部に設けられた張出部が挿入される断面略コの字状の張出部差込部と、下部に前記トラフ用蓋と隣接するトラフ用蓋の他端下部に設けられている張出受け部が挿入される断面略逆コの字状の張出受け部差込部とを有していることを特徴とするものである。
【0016】
このようにしてなる請求項2記載のトラフ用蓋の連結部材には、トラフ内部に向かって延びる脚部のような突起物はない。それ故、トラフ内部に収納されているケーブル類を損傷する恐れが極めて少ない。しかもこの連結部材を使用すれば、トラフ用蓋の上部に設けられている張出部をこの連結部材の断面略コの字状の張出部差込部に差し込み、トラフ用蓋の下部に設けられている張出受け部を断面略逆コの字状の張出受け部差込部に挿入するだけで隣接する蓋同士を簡単に連結できる。
【0017】
また請求項3記載のトラフ用蓋の連結部材は、請求項2記載の連結部材において、前記トラフ用蓋の連結部材の前記断面略コの字状の張出部差込部の入口は、前記トラフ用蓋の張出部の厚さよりも狭められ、前記断面略逆コの字状の張出受け部差込部の入口部は、前記トラフ用蓋の張出受け部の厚さよりも狭められていて、かつそれぞれが内側方向にバネ付勢されていることを特徴としている。
【0018】
このようにしてなる請求項3記載の連結部材によれば、その断面略コの字状の張出部差込部の入口は、トラフ用蓋の張出部の厚さよりも狭められ、断面略逆コの字状の張出受け部差込部の入口は、トラフ用蓋の張出受け部の厚さよりも狭められていて、かつそれぞれが内側方向にバネ付勢されている。そのため隣接する蓋同士を簡単かつ確実に連結することができる。
【0019】
また請求項4記載のトラフは、上部に開口部を有するトラフ本体と、該トラフ本体の前記開口部をトラフ本体長手方向に亘って覆う合成樹脂製の複数のトラフ用蓋と、隣接する前記トラフ用蓋同士が互いにトラフ用蓋の連結部材により連結されてなるトラフにおいて、前記トラフ用蓋は一端上部に張出部を有し、かつ他端下部に隣接するトラフ用蓋の前記張出部の下方に位置決めされる張出受け部とを有していて、前記トラフ用蓋の連結部材は上部に前記トラフ用蓋の張出部が挿入される断面略コの字状の張出部差込部と下部に前記トラフ用蓋と隣接するトラフ用蓋の他端下部に設けられている張出受け部が挿入される断面略逆コの字状の張出受け部差込部とを有していて、前記トラフ用蓋の張出部が前記トラフ用蓋の連結部材の断面略コの字状の張出部差込部に挿入され、隣接するトラフ用蓋の張出受け部が前記トラフ用蓋の連結部材の断面略逆コの字状の張出受け部差込部に挿入されて互いに隣接するトラフ用蓋同士が相互に連結されてなることを特徴とするものである。
【0020】
このようにしてなる請求項4記載のトラフによれば、トラフ用蓋同士の連結が簡単で、しかもこの連結部材にはトラフ内に収納されるケーブル類を損傷するようなトラフ内部に向かう突起形状など有していないため、トラフ内部のケーブル類を損傷する恐れがほとんどない。それ故、安心してトラフ用蓋の布設作業を行うことができる。
【0021】
さらにまた請求項5記載のトラフ蓋の布設方法は、上部に開口部を有するトラフ本体の前記開口部にトラフ本体長手方向に亘って合成樹脂製の複数のトラフ用蓋を隣接するトラフ用蓋同士をトラフ用蓋の連結部材により連結しながら被せるトラフ用蓋の布設方法において、前記トラフ用蓋の一端上部に設けられている張出部を前記トラフ用蓋の連結部材の上部に設けられている断面略コの字状の張出部差込部に差し込み、前記トラフ用蓋と隣接するトラフ用蓋の他端下部に設けられ前記隣接するトラフ用蓋の張出部の下方に位置決めされる張出受け部を前記トラフ用蓋の連結部材の下部に設けられている断面略逆コの字状の張出受け部差込部に差し込み、これを繰り返しながら複数のトラフ用蓋同士をトラフ本体長手方向に順次被せていくことを特徴とする。
【0022】
このようにしてなる請求項5記載のトラフ用蓋の布設方法によれば、隣接する蓋同士を連結する連結部材はトラフ内部に向かって延びる脚部のような突起物を有していないので、トラフ内に収納されているケーブル類を傷つける恐れがほとんどないため、安心してトラフ用蓋の布設作業を行うことができる。またこのトラフ用蓋を用いる場合、その上部に設けられている張出部を連結部材の断面略コの字状の張出部差込部に差し込み、トラフ用蓋の下部に設けられている張出受け部を連結部材の断面略逆コの字状の張出受け部差込部に挿入するだけで隣接する蓋同士を連結できるため、布設作業を極めて簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、トラフ内に収納されているケーブルを傷つける恐れが少なく、しかも蓋同士の連結が容易な、トラフ用蓋、これを連結するトラフ用蓋の連結部材、これらトラフ用蓋やトラフ用蓋の連結部材を用いたトラフ及びトラフへの前記トラフ用蓋の布設方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明のトラフ用蓋、そのトラフ用蓋の連結部材、さらにはこれらトラフ用蓋や連結部材を用いたトラフ、さらにはトラフへのトラフ用蓋の布設方法について、図を用いて詳細に説明する。
【0025】
図1〜図3は、本発明のトラフ用蓋(以下単に蓋という)の一実施例を示すもので、図1は本発明の蓋同士を、これも本発明のトラフ用蓋の連結部材(以下単に連結部材という)で連結した状態を示す縦断面図、図2は図1に示す連結部材の平面図、そして図3は図1が示す蓋を図2が示す連結部材で連結して、蓋をトラフの開口部に被せた状態を示す斜視図である。
【0026】
図1〜図3では、例えばコンクリート製のトラフ本体20の上部に開口している開口部21をトラフ本体長手方向に亘って覆う合成樹脂製の蓋、例えばポリプロピレン、ポリスチレンあるいはポリエチレン等のリサイクル品からなる隣接する2枚の蓋を例に、本発明の一実施例を説明する。
隣接するこの2枚の蓋10同士が互いに2個の、例えばステンレス製、または金属に溶融亜鉛メッキ加工を施したもの等からなる連結部材30により連結されている。
因みに、図1が示すようにこの蓋10は、一端上部に張出部11を有し、かつ他端下部に隣接する蓋10の張出部11の下方に位置決めされる張出受け部12とを有している。そしてこの蓋10同士を連結する連結部材30は、図2が示すようにその上部に蓋10の張出部11が挿入される断面略コの字状の張出部差込部31を有し、かつ下部に前記蓋10と隣接する蓋10の他端に設けられている張出受け部12が挿入される断面略逆コの字状の張出受け部差込部32を有している。
【0027】
ところで連結部材30に関してコの字状とか逆コの字状という表現を採用しているが、この連結部材30を逆の方向から見るとコの字状が逆コの字状に見える。それ故、例えば上部に断面略コ字状の張出部差込部を有する、といった場合には、上部の形状がコの字状に見える方向から連結部材30を見て表現している、というただそれだけの意味である。
【0028】
さて、隣接する蓋10同士を連結する場合には、蓋10の張出部11が連結部材30の断面略コの字状の張出部差込部31に挿入され、隣接する蓋10の張出受け部12が連結部材30の断面略逆コの字状の張出受け部差込部32に各々挿入されて互いに隣接する蓋10同士が相互に連結される。図1、図2の例では連結部材30の断面略コ字状の張出部差込部31の高さ方向の間隔が、蓋10の張出部11の厚さとほぼ同等か、弱冠それより大きめに設定されており、同様に連結部材30の断面略逆コ字状の張出受け部差込部32の高さ方向の間隔が、蓋10の張出受け部12の厚さとほぼ同じか、それより弱冠大きめに設計されていて、連結部材30で連結された蓋10、10があまりガタつかない程度に連結される。
【0029】
図3は前述したようにして蓋10同士を連結部材30で連結した状態を示している。ここで符号10aは案内部材で、蓋10をトラフ本体20の開口部21に被せる際のガイドである。この案内部材10aに代えてトラフ本体20と蓋10とを、側方からフック等で押えて固定してもよく、それ故この案内部材10aは必ずしも必要というわけではない。因みにこの案内部材10aは図1では省略している。また図3の手前の蓋10はトラフ先端の蓋10ということで、張出受け部12を設けていないものを使用している。
【0030】
ところで図2が示す連結部材30では、断面略逆コ字状の張出受け部差込部32の下板を構成する部分の中央付近に切り起し33が設けられているが、これはこの切り起し33の先端を蓋10の下面に食い込ませて、連結部材30に対して蓋10の張出受け部12がガタつかないようにするためのものである。
この切り起し33は、特に蓋10の厚さ方向の精度が出難い場合に有効である。もちろん蓋10の張出受け部12を含む厚さ方向の精度がきちんと出ている場合には、この切り起し33は不要である。
【0031】
また図2において、符合34は連結部材30の同じく断面略逆コ字状の張出受け部差込部32を構成する下板の先端を内側に折り曲げて形成した折り曲げ部で、この折り曲げ部34を、切り起し33同様に蓋10の下面に食い込ませたり、あるいは蓋10の下面にリブを設けておいて、そのリブにこの折り曲げ部34の先端を引っ掛けて、連結部材30に対して蓋10の張出受け部12がガタつかないようにするためのものである。
それ故、この折り曲げ部34も、蓋10の張出受け部12を含む厚さ方向の精度が出ている場合にはあえて設ける必要がないものである。
【0032】
また図4は、蓋10の張出部11や張出受け部12の厚さの精度が出難い場合の別の対策を示すもので、この連結部材30は、断面略コ字状の張出部差込部31及び断面略逆コ字状の張出受け部差込部32の入口の間隔を、蓋10の張出部11や張出受け部12の厚さより、例えば数mm程度狭くしておき、これら断面略コ字状の張出部差込部31や断面略逆コ字状の張出受け部差込部32に挿入される蓋10の張出部11や張出受け部12を確実に挟持するようにしている。
因みに、この図4が示す連結部材30にあっては、切り起し33や折り曲げ部34は必ずしも必要ではない。しかしながら、これらが揃っていれば張出部11や張出受け部12の厚さに大きなばらつきがあっても協働して充分に対応でき好ましい。
【0033】
また図2や図4において、連結部材30の断面略コ字状の張出部差込部31の上板の先端を上部に向かって少し湾曲させて湾曲部を設けているが、これは蓋10の張出部11を断面略コ字状の張出部差込部31に挿入する際、挿入を容易にするために設けたものである。
【0034】
ところで、隣接する蓋10同士を連結部材30で連結する場合には、例えば最初に連結部材30の断面略逆コ字状の張出受け部差込部32に一方の蓋10の張出受け部12を挿入し、折り曲げ部34を蓋10の下面に設けてあるリブ等に引っ掛けたり、切り起し33を蓋10の下面に食い込ませるなどして一方の蓋10に連結部材30を予めしっかり装着させておいて、この連結部材30装着済みの蓋10を、既にトラフ本体20上に被せてある蓋10の張出部11に向けてスライドさせ、この張出部11を連結部材30の断面略コ字状の張出部差込部31に挿入させ、これを順次繰り返して蓋10を次々に連結させてもよい。
【0035】
図5は本発明の別の実施例を示す縦断面図である。
図5が示す実施例の特徴は、布設環境の変化、特に温度変化で合成樹脂製の蓋10が膨張し、膨張した部分が逃げ場を失って、蓋10がトラフ本体20から飛び出すことのないように工夫されている点にある。
具体的には、連結部材30の断面略コ字状の張出部差込部31の奥の面と、この断面略コ字状の張出部差込部31に差し込まれた蓋10の張出部11の先端との間に、例えば蓋10の長さの0.1%〜5%になるような長さの隙間38ができるように、同様に連結部材30の断面略逆コ字状の張出受け部差込部32を構成する板の裏面から隣接する蓋10の張出部11の起点からの隙間39も蓋10の長さの0.1%〜5%の長さになるように蓋10と連結部材30の各寸法が決められている。
【0036】
前記隙間38や隙間39を所定の間隔にするために、図5が示すように連結部材30の断面略コ字状の張出部差込部31を構成する板の先端に下向きの突起36を設け、さらに蓋10の上面に位置規制用突起13、14を設けてある。すなわち、常温では前記突起36が蓋10に設けた位置規制用突起13、14の間に位置決めされる。もし温度が上がって蓋10が膨張した場合には、突起36が位置規制用突起13を乗り越える。その結果、蓋10の膨張分は隙間38、39に吸収され、蓋10同士が膨張して逃げ場を失ってトラフ本体20から持ち上がることがなくなる。
尚、位置規制用突起13は必ずしも必要でないが、位置規制用突起13があった方が常温時、連結部材30ががたつくことがなく好ましい。
この図5に示すものは、温度変化が大きい場所に布設されるトラフには最適である。因みに、温度変化の少ない環境下に布設されるものにはあえてこの種の位置規制用突起13、14を設ける必要はない。
【0037】
図6は本発明のさらにまた別の実施例を示すもので、その特徴は、蓋10の張出受け部12の形状にある。前述した実施例のものでは、蓋10の連結部の隙間から雨水等がトラフ本体20内に侵入する恐れがあるが、図6に示す実施例のものはこの雨水等外部からの水の侵入を防止するような改良を加えたものである。因みに、図6(a)は蓋10の一部平面図、図6(b)は正面図である。
【0038】
図6が示す蓋10の特徴は、蓋10の張出受け部12の先端に水侵入防止突起17を設け、かつこの張出受け部12の断面形状を頂部16を有する屋根型にし、蓋10同士の連結部の隙間から侵入した水が張出受け部12の先端方向からトラフ本体20の内部に流れずに、屋根型の斜面を伝ってトラフ本体20の側壁の外側に流れるようにした点にある。
因みに、この屋根型の部分の角度は、例えば0.001度以上、好ましくは数度程度にするのが好ましい。あまり角度を大きくすると、連結部材30の断面略逆コ字状の張出受け部差込部32にこの張出受け部12を差し込んだ際、両者の隙間が大きくなってがたつきが大きくなってしまうからである。尚、屋根型の斜面を伝って流れ落ちた水がトラフ本体20内に流れ込まないように、張出受け部12の両端はトラフ本体20の側壁の外側に位置するように設計されている。
【0039】
図7、図8は本発明の連結部材30の別の実施例を示すものである。この連結部材30の特徴は、断面略コ字状の張出部差込部31と断面略逆コ字状の張出受け部差込部32の中間部に仕切り板40を溶接等により形成し、仕切り区間41を設けた点にある。
因みに、図7が示すものは単に1枚の仕切り板40を連結部材30の中間位置に溶接したもの、図8が示すものは、断面略コ字状の張出部差込部31と仕切り区間41が形成されたものに、断面略逆コ字状の張出受け部差込部32のみ形成された部材を面溶接したものである。
これらの連結部材30は、蓋10の全体の厚さに対して張出部11と張出受け部12の合計厚さが比較的小さい場合に用いるもので、このように連結部材30の中間部に仕切り板40を設けることで、断面略コ字状の張出部差込部31に張出部11を、断面略逆コ字状の張出受け部差込部32に張出受け部12をがたつきなく差し込み、保持することができる。
【0040】
ところで本発明の連結部材30を用いて、トラフ本体20の開口部21を蓋10で塞いでいった場合、ある箇所で数個の蓋10を開かねばならないとき、どのように蓋10を開くかが問題になる。そのような場合、予め蓋10を例えば5個くらいを一組にして、隣接する組同士の連結には、連結部材10に代えて図9が示すように、断面略L字状の連結具50を用いて、隣接する蓋10同士を側面方向から連結する方法がある。
このようにしておけば、トラフ本体20内のケーブルに問題が起こったら、その問題が起こった近くの連結具50を外して、一組または二組の蓋10、すなわち5〜10個の蓋10を順次外せばよい。
【0041】
ところで蓋10の材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂あるいはこれらのリサイクル品が利用できる。また連結部材30としては、これが風雨に晒されるものであることを鑑み、ステンレス製とかプラスチック製あるいはメッキを施した金属製であることが好ましい。特に蓋10の張出部11や張出受け部12を長期に亘って把持しなければならないことを考えると、ステンレス製であることが好ましい。
また隣接する蓋10同士を連結部材30で連結する場合には、図3が示すように蓋10の幅方向の両側、すなわち2箇所で連結するのが一般的であるが、蓋10の幅が狭いものなら1箇所でもよいし、逆に幅の広い蓋10同士を連結する場合には、2箇所以上でもよいし、幅の広い連結部材30を用いてもよい。蓋10の幅や布設される環境条件を考慮して連結部材30の個数及び寸法を決めればよい。
【0042】
以上述べたように本発明によれば、トラフ内に収納されているケーブルを傷つける恐れが少なく、しかも蓋同士の連結が容易な、トラフ用蓋、これを連結するトラフ用蓋の連結部材、これらトラフ用蓋やトラフ用蓋の連結部材を用いたトラフ及びトラフへの前記トラフ用蓋の布設方法を提供ができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例のトラフ用蓋と連結部材との連結状態を示す縦断面図である。
【図2】本発明の連結部材の一例を示す平面図である。
【図3】図1が示すトラフ用蓋を図2が示すトラフ用蓋の連結部材で連結して、トラフ用蓋をトラフの開口部に被せた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の連結部材の別の実施例を示す平面図である。
【図5】本発明の別の実施例のトラフ用蓋と連結部材との連結状態を示す縦断面図である。
【図6】本発明のトラフ用蓋のさらに別の実施例を示すもので、(a)は一部平面図、(b)は正面図である。
【図7】本発明の連結部材の別の実施例のもので、トラフ用蓋をこの連結部材で連結した状態を示す縦断面図である。
【図8】本発明の連結部材のさらに別の実施例を示す縦断面図である。
【図9】本発明のトラフの応用例を示す一部平面図である。
【図10】従来の連結部材でトラフ用蓋を連結した状態を示す一部縦断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 トラフ用蓋
11 張出部
12 張出受け部
13 位置規制用突起
16 頂部
17 水侵入防止突起
20 トラフ本体
30 連結部材
31 断面略コ字状の張出部差込部
32 断面略逆コ字状の張出受け部差込部
33 切り起し
34 折り曲げ部
38、39 隙間
40 仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有するトラフ本体の前記開口部をトラフ本体長手方向に亘って覆う合成樹脂製の複数のトラフ用蓋であって、隣接する前記トラフ用蓋同士が互いにトラフ用蓋の連結部材により連結されてなるトラフ用蓋において、前記トラフ用蓋は一端上部に張出部を有し、かつ他端下部に隣接するトラフ用蓋の前記張出部の下方に位置決めされる張出受け部とを有していて、前記トラフ用蓋の連結部材は上部に前記トラフ用蓋の張出部が挿入される断面略コの字状の張出部差込部を有し、かつ下部に前記トラフ用蓋と隣接するトラフ用蓋の他端に設けられている前記張出受け部が挿入される断面略逆コの字状の張出受け部差込部を有していて、前記トラフ用蓋の張出部が前記トラフ用蓋の連結部材の断面略コの字状の張出部差込部に挿入され、隣接するトラフ用蓋の張出受け部が前記トラフ用蓋の連結部材の断面略逆コの字状の張出受け部差込部に挿入されて互いに隣接するトラフ用蓋同士が相互に連結されてなることを特徴とするトラフ用蓋。
【請求項2】
上部に開口部を有するトラフ本体の前記開口部をトラフ本体長手方向に亘って覆う合成樹脂製の複数のトラフ用蓋の隣接するトラフ用蓋同士を互いに連結するトラフ用蓋の連結部材において、該トラフ用蓋の連結部材は上部に前記トラフ用蓋の一端上部に設けられた張出部が挿入される断面略コの字状の張出部差込部と、下部に前記トラフ用蓋と隣接するトラフ用蓋の他端下部に設けられている張出受け部が挿入される断面略逆コの字状の張出受け部差込部とを有していることを特徴とするトラフ用蓋の連結部材。
【請求項3】
前記トラフ用蓋の連結部材の前記断面略コの字状の張出部差込部の入口は、前記トラフ用蓋の張出部の厚さよりも狭められ、前記断面略逆コの字状の張出受け部差込部の入口部は、前記トラフ用蓋の張出受け部の厚さよりも狭められていて、かつそれぞれが内側方向にバネ付勢されていることを特徴とする請求項2記載のトラフ用蓋の連結部材。
【請求項4】
上部に開口部を有するトラフ本体と、該トラフ本体の前記開口部をトラフ本体長手方向に亘って覆う合成樹脂製の複数のトラフ用蓋と、隣接する前記トラフ用蓋同士が互いにトラフ用蓋の連結部材により連結されてなるトラフにおいて、前記トラフ用蓋は一端上部に張出部を有し、かつ他端下部に隣接するトラフ用蓋の前記張出部の下方に位置決めされる張出受け部とを有していて、前記トラフ用蓋の連結部材は上部に前記トラフ用蓋の張出部が挿入される断面略コの字状の張出部差込部と下部に前記トラフ用蓋と隣接するトラフ用蓋の他端下部に設けられている張出受け部が挿入される断面略逆コの字状の張出受け部差込部とを有していて、前記トラフ用蓋の張出部が前記トラフ用蓋の連結部材の断面略コの字状の張出部差込部に挿入され、隣接するトラフ用蓋の張出受け部が前記トラフ用蓋の連結部材の断面略逆コの字状の張出受け部差込部に挿入されて互いに隣接するトラフ用蓋同士が相互に連結されてなることを特徴とするトラフ。
【請求項5】
上部に開口部を有するトラフ本体の前記開口部にトラフ本体長手方向に亘って合成樹脂製の複数のトラフ用蓋を隣接するトラフ用蓋同士をトラフ用蓋の連結部材により連結しながら被せるトラフ用蓋の布設方法において、前記トラフ用蓋の一端上部に設けられている張出部を前記トラフ用蓋の連結部材の上部に設けられている断面略コの字状の張出部差込部に差し込み、前記トラフ用蓋と隣接するトラフ用蓋の他端下部に設けられ前記隣接するトラフ用蓋の張出部の下方に位置決めされる張出受け部を前記トラフ用蓋の連結部材の下部に設けられている断面略逆コの字状の張出受け部差込部に差し込み、これを繰り返しながら複数のトラフ用蓋同士をトラフ本体長手方向に順次被せていくことを特徴とするトラフ用蓋の布設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−6024(P2006−6024A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179303(P2004−179303)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】