説明

トランクリッド取付用車両構造

【課題】トランクリッドのトランク閉位置の位置ズレを容易に吸収可能なトランクリッド取付用車両構造を提供する。
【解決手段】トランクリッド取付用車両構造100は、トランク104の開口部の後縁に取り付けられるストライカと、トランクリッド106に取り付けられストライカに対してスライド可能でありスライド可能な範囲S内の任意の位置でストライカと噛み合うことによりトランクリッド106の位置を決定するラッチと、トランクリッド106を支持する第1の端部108Aを有し車体に回動可能に取り付けられた第2の端部108Bを有するトランクリッドヒンジ108とを備え、トランクリッドヒンジ108の第1の端部108Aは、ラッチ118がスライドする方向130と実質的に平行な接合面140を有し、接合面140にてトランクリッド106と接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノッチバック車のトランクリッド取付用車両構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノッチバック車において、トランクの蓋であるトランクリッドは、トランクリッドを支持するトランクリッドヒンジが回動することによってトランクを開閉している。
【0003】
トランクリッドは、車体側すなわちトランクの開口部の後縁に取り付けられるストライカと、トランクリッド側に取り付けられたラッチとが噛み合うことによってトランクを閉め、トランク閉位置に位置決めされる(例えば特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平3−28684号公報
【特許文献2】特開2002−201856号公報
【特許文献3】特開2005−297607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしトランクリッドには、トランクを開くときのため、トーションスプリング等によりトランクリッド開方向に付勢する力が作用している。このためトランクリッドは、設計上決定されたトランク閉位置に対して、ストライカ/ラッチの噛合位置の変化に応じてズレてしまう傾向がある。
【0006】
また、設計上決定されたトランク閉位置にトランクリッドを配置した場合であっても、トランクリッドと車体との間に段差が生じることがある。このような外観上の瑕疵が生じた場合には、段差を解消して見切りを調整するため、トランクリッドの位置をズラす必要がある。
【0007】
一方、トランクリッドを支持するトランクリッドヒンジは、一端でトランクリッドを支持し、他端で車体に回動可能に取り付けられている。回動の中心となる他端の位置は固定されているため、トランク閉時にトランクリッドの位置にズレが生じても、トランクリッドヒンジはその位置を変更できない。
【0008】
したがって従来、ストライカ/ラッチの噛合位置の変化に起因してトランクリッドのトランク閉位置が設計上のものからズレてしまった場合、現物に合わせて、トランクリッドヒンジに対するトランクリッドの位置を変更して位置ズレを吸収していた。
【0009】
しかしながら、トランクリッドヒンジ・トランクリッドの相対的な位置が変更されると、設計上想定していた通りに両者を接合することはできない。現物に応じて両者の接合を実現することは一般に困難であり、辛うじて整合性をつけて行っているのが現状である。とりわけトランクリッドの位置ズレが大きくなるほど、両者の接合は困難さを増し、当初想定していた安定な接合面を確保できないおそれも生じる。極端な場合には、トランクリッドヒンジまたはトランクリッドの形状変更を余儀なくされることもあった。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑み、トランクリッドを車体に取り付ける際に生じたトランクリッドのトランク閉位置の位置ズレを容易に吸収可能なトランクリッド取付用車両構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、車両のトランクを開閉するトランクリッドを車体に取り付けるトランクリッド取付用車両構造において、トランクの開口部の後縁に取り付けられるストライカと、トランクリッドに取り付けられストライカに対してスライド可能でありスライド可能な範囲内の任意の位置でストライカと噛み合うことによりトランクリッドの位置を決定するラッチと、トランクリッドを支持する第1の端部を有し車体に回動可能に取り付けられた第2の端部を有するトランクリッドヒンジとを備え、トランクリッドヒンジの第1の端部は、ラッチがスライドする方向と実質的に平行な接合面を有し、接合面にてトランクリッドと接合されていることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、ラッチがストライカに対してスライドすると、トランクリッドは、トランクリッドヒンジとの接合面において摺動する。これは接合面が、上記スライドする方向と実質的に平行だからである。したがって上記スライドによって設計上のトランク閉位置からズレて位置決めされたトランクリッドは、トランクリッドヒンジに対してスムーズに平行移動可能である。平行移動によってトランクリッドの位置がズレた後も、トランクリッドヒンジをトランクリッドにボルト締結するボルト穴位置の変更のみで、両者を問題なく接合可能である。
【0013】
このように本発明によれば、ストライカ/ラッチのスライドで生じたトランクリッドのズレがトランクリッドヒンジとの接合面で吸収できるから、トランクリッドを車体に取り付ける際にその位置を容易に調整可能である。
【0014】
上記接合面は、トランクリッドの上面に対して傾斜していることが望ましく、例えば車両後方に向かって下降する傾斜面としてよい。かかる構成によれば、接合面は、トランクリッド上面に対して平行でなく傾斜している分、長さを長くとることができる。したがって、トランクリッド前後長が短くトランクリッドヒンジの締結(接合)領域を前後方向に長く確保することが困難な車両においても、傾斜した接合面によって十分な締結範囲を確保可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トランクリッドを車体に取り付ける際に生じたトランクリッドのトランク閉位置の位置ズレを容易に吸収可能なトランクリッド取付用車両構造を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるトランクリッド取付用車両構造の実施形態を適用したノッチバック車の車両後部を車両側方から見た図である。
【図2】図1のトランクリッド取付用車両構造を車両の左斜め前方から見た図である。
【図3】図1の一部拡大図である。
【図4】図3のストライカおよびラッチの斜視図である。
【図5】図4のストライカおよびラッチを車両側方から見た図である。
【図6】図2のトランクリッド取付用車両構造を車両側方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、本発明によるトランクリッド取付用車両構造の実施形態を適用したノッチバック車の車両後部を車両側方から見た図である。なおノッチバック車とは乗員が乗り込む車室(キャビン)とトランクとの区別が明確な型の乗用車を意味する。図1では、トランクリッド取付用車両構造100をよりよく理解するため、リヤホイールハウス102の上方に位置するトランク104の内部を透視して示している。
【0019】
図2は図1のトランクリッド取付用車両構造100を車両の左斜め前方から見た図である。図2では車両の同構造100以外の部位を図示省略している。トランクリッド106は、車両のトランク104を開閉する蓋体であり、左右に設けられたトランクリッドヒンジ108、110に支持されている。トランクリッドヒンジ108、110は同様の構成を有するため、以下、本文ではトランクリッドヒンジ108についてのみ説明する。
【0020】
トランクリッドヒンジ108は、いわゆるドッグレッグ(Dog-leg)タイプのヒンジである。トランクリッドヒンジ108は、その第1の端部108Aでトランクリッド106を支持していて、その第2の端部108Bで車体に回動可能に取り付けられている。トランクリッドヒンジ108が第2の端部108Bを中心として回動することにより、トランクリッド106がトランク104を開閉する。
【0021】
図3は図1の一部拡大図である。図3では図1の領域112を拡大して示している。図示しないが、トランクリッド106が開位置にあるときに露出するトランク104の開口部の後縁116には、ストライカ114が取り付けられている。一方、トランクリッド106には、ストライカに対してスライド可能なラッチ118が取り付けられている。
【0022】
図4は図3のストライカ114およびラッチ118の斜視図である。ストライカ114は固定プレート114Aと、固定プレート114Aから垂直に立設された噛合プレート114Bとで一体構成される金属製の部材である。固定プレート114Aはトランク104の開口部の後縁116にボルト120、122で固定されている。噛合プレート114Bには車両左右方向に貫通した貫通孔114Cが形成されている。
【0023】
ラッチ118は固定ブラケット118Aと、固定ブラケット118Aからトランク104側に張り出しているスライド部材118Bとで構成される金属製の部材である。固定ブラケット118Aはトランクリッド106にボルト124、126で固定されている。スライド部材118Bは、機構は説明を省略するが、トランクリッド106が閉められるときにストライカ114にアプローチし、貫通孔118Cにストライカ114の噛合プレート114Bを迎え入れる。その結果、図4に示すように、ストライカ114はラッチ118と鎖状に噛み合う。
【0024】
図5は図4のストライカ114およびラッチ118を車両側方から見た図である。図5(a)(b)に示すように、ラッチ118はストライカ114に対してスライド可能な範囲Sを有し、範囲S内の任意の位置でストライカ114と噛み合うことができる。範囲Sは、ストライカ114の貫通孔114Cの1辺の長さに相当する。図5(a)(b)において符号FR、RRはそれぞれ車両前方、車両後方を示す。範囲Sによれば、ラッチ118はストライカ114に対して車両後方に向かって下降する方向(図1の方向130)にスライド可能である。図5(a)(b)は、スライド可能な範囲S内の互いに異なる位置で噛み合ったストライカ114およびラッチ118を示している。
【0025】
ここで重要な点は、図1に示すように、トランクリッドヒンジ108の第1の端部108Aが、ラッチ118がスライドする方向130と実質的に平行な接合面140を有し、接合面140にてトランクリッド106と接合されているという点である。
【0026】
図6は図2のトランクリッド取付用車両構造100を車両側方から見た図である。ラッチ118が図5(a)(b)のようにスライド可能な範囲S内の様々な位置でストライカ114と噛み合うと、トランクリッド106が平行移動し、図6(a)(b)にそれぞれ示すように、トランクリッド106の位置が決定される。図6(a)(b)に示すように、ラッチ118のスライドによって移動するのは専らトランクリッド106であり、車体に固定されているトランクリッドヒンジ108およびトランク104はその位置を変えない。
【0027】
しかしながら、既に述べたように、ラッチ118のスライド方向130(図1)と接合面140とが実質的に平行であるため、トランクリッド106は、トランクリッドヒンジ108との接合面140において摺動する。したがってトランクリッド106が、上記スライドによって設計上のトランク閉位置からズレて位置決めされても、トランクリッド106はトランクリッドヒンジ108に対してスムーズに平行移動可能である。平行移動によってトランクリッド106の位置が例えば図6(a)から図6(b)のようにズレた後も、トランクリッドヒンジ108をトランクリッド106にボルト締結するボルト穴位置(図示省略)の変更のみで、両者を問題なく接合可能である。
【0028】
このように本実施形態によれば、ストライカ114/ラッチ118のスライドで生じたトランクリッド106のズレがトランクリッドヒンジ108との接合面140で吸収できるから、トランクリッド106を車体に取り付ける際にその位置を容易に調整可能である。
【0029】
本実施形態ではドッグレッグタイプのトランクリッドヒンジ108を用いたが、ダブルリンクタイプ等の他のタイプのヒンジであっても、本発明を適用可能である。すなわち、ヒンジのタイプに関わらず、ヒンジとトランクリッドとの接合面を、ストライカ/ラッチのスライド方向と実質的に平行にレイアウトできればよい。
【0030】
また、本実施形態ではトランク104にストライカ114を、トランクリッド106にラッチ118をそれぞれ設けて噛み合わせているが、これらの噛み合う部材は例示であり、これらに限られるものではない。トランクリッド106に設けられた噛合部材がトランク104に設けられた噛合部材に対してスライドする機構を有するものであれば、いかなる部材同士を噛み合わせてもよい。
【0031】
図1に示すように、接合面140は、トランクリッド106の上面106Aに対して傾斜している。従来、トランクリッドとトランクリッドヒンジとの接合面は、トランクリッドの上面(実質的な水平面)と平行であった。これは、このようにすることでトランクリッドと車体との見切り/段差を調整容易と考えられていたためである。
【0032】
しかし本実施形態によれば、接合面140は、トランクリッド上面106Aに対して平行でなく傾斜している分、長さを長くとることができる。したがって、トランクリッド106のように前後長が短くトランクリッドヒンジ108の締結(接合)領域を前後方向に長く確保することが困難な車両においても、傾斜した接合面140によって十分な締結範囲を確保可能となる。また、かかる前後長が短いトランクリッド106においても、トランクリッドのインナパネルのプレス成形性が有利になる。
【0033】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、ノッチバック車のトランクリッド取付用車両構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
100 …トランクリッド取付用車両構造
102 …リヤホイールハウス
104 …トランク
106 …トランクリッド
108、110 …トランクリッドヒンジ
114 …ストライカ
116 …トランクの開口部の後縁
118 …ラッチ
140 …接合面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のトランクを開閉するトランクリッドを車体に取り付けるトランクリッド取付用車両構造において、
前記トランクの開口部の後縁に取り付けられるストライカと、
前記トランクリッドに取り付けられ前記ストライカに対してスライド可能であり該スライド可能な範囲内の任意の位置で該ストライカと噛み合うことにより該トランクリッドの位置を決定するラッチと、
前記トランクリッドを支持する第1の端部を有し車体に回動可能に取り付けられた第2の端部を有するトランクリッドヒンジとを備え、
前記トランクリッドヒンジの第1の端部は、前記ラッチがスライドする方向と実質的に平行な接合面を有し、該接合面にて前記トランクリッドと接合されていることを特徴とするトランクリッド取付用車両構造。
【請求項2】
前記接合面は、前記トランクリッドの上面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のトランクリッド取付用車両構造。
【請求項3】
前記接合面は車両後方に向かって下降する傾斜面であることを特徴とする請求項2に記載のトランクリッド取付用車両構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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