説明

トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンのコハク酸塩およびマロン酸塩、および薬剤としての使用方法

【課題】対応するフマル酸塩の水溶解度よりも非常に大きい水溶解度を有する式(I)の化合物の塩を提供すること。
【解決手段】4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンコハク酸水素塩またはマロン酸水素塩、これらの塩を含む医薬調合物、および統合失調症およびその他の精神病性障害の治療のためを含むその薬学的用途。また、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンの製造方法およびその薬学的用途もまた記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン、特にそのコハク酸水素塩およびマロン酸水素塩、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンおよびその塩の製造方法、これらの塩を含む医薬調合物、および統合失調症または精神病の症状に関連するその他の疾患の治療を含むその薬学的用途に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の対象である化合物[4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン]は、一般式(I):
【0003】
【化1】

【0004】
を有し、特許文献1に包括的に記載されている。
【0005】
特許文献1はピペラジン環の2−および/または3−位において置換される3−アリール−1−(1−ピペラジニル)インダンのトランス異性体からなる群をカバーしている。前記化合物は、ドーパミンDおよびD受容体および5−HT受容体に対して高い親和性を有することが記載されており、統合失調症を含む中枢神経系における種々の疾患の治療に有用であることが指摘されている。特許文献1には式(I)である前記化合物の特定のエナンチオマーの形態については開示がなく、ラセミ体の形態におけるトランス異性体のみが記載されている。
【0006】
式(I)のエナンチオマーはBogeso等による非特許文献1における表5、化合物(−)−38を参照すると、フマル酸塩の形態で記載されている。この刊行物は、化合物38の(−)−エナンチオマーがインビボではDおよびDアンタゴニストとして同等であるが、インビトロではいくらかのD選択性を示す強力なD/Dアンタゴニストであると結論付けている。また、前記化合物は強力な5−HTアンタゴニストとして、およびαアドレナリン受容体に対して高い親和性を有するとして記載されている。前記化合物がラットにおいてカタレプシーを誘導しないことも記載されている。
【0007】
式(I)の前記化合物のフマル酸塩と同様に対応するラセミ体も、非特許文献2においてKlaus P. Bogesoにより記載されている(例えば47ページの表3および101ページの表9Aにおける化合物69)。
【0008】
このように、式(I)の化合物は混合D/Dアンタゴニスト、5−HTアンタゴニストであり、αアドレナリン受容体に対しても親和性を有する。以下に種々の疾患とそれぞれドーパミンDおよびD受容体、5−HT受容体およびαアドレナリン受容体との間の関連性の可能性について概説する。
【0009】
統合失調症の病因はわかっていないが、1960年代初期に考案された統合失調症のドーパミン仮説(非特許文献3)が、この疾患の根底にある生物学的なメカニズムを理解するうえでの理論的な枠組みを提供してきた。簡潔に言うと、ドーパミン仮説では統合失調症は高ドーパミン状態に関連すると示されており、この見解は今日の市場における全ての抗精神病薬がいくらかのドーパミンD受容体拮抗作用を発揮するという事実(非特許文献4)により支持される。しかし、脳の辺縁域におけるドーパミンD受容体の拮抗作用が統合失調症の陽性症状の治療において重要な役割を果たしているということが一般的に受け入れられているのに対して、脳の線条体領域におけるD受容体の遮断は錐体外路系症状(EPS)を引き起こす。特許文献1に記載されているように、統合失調症患者の治療において使用されるいくつかのいわゆる「非定型」抗精神病化合物、特にクロザピンで、ドーパミンD/D受容体混合阻害が観察される。
【0010】
中枢α拮抗作用が抗精神病特性の改善に寄与することが提唱されている(非特許文献5)。
【0011】
さらに、選択的Dアンタゴニストは睡眠障害およびアルコール依存症の治療に関連する(非特許文献6)。
【0012】
ドーパミンは情動障害の病因においても重要な役割を果たしている(非特許文献7)。
【特許文献1】欧州特許(EP)第638 073号明細書
【非特許文献1】J. Med. Chem., 1995, 38, page 4380−4392
【非特許文献2】Drug Hunting, the Medicinal Chemistry of 1−Piperazino−3−phenylindanes and Related Compounds(1998, ISBN 87−88085−10−4)
【非特許文献3】Carlsson, Am. J. Psychiatry 1978, 135, 164−173
【非特許文献4】Seeman Science and Medicine 1995, 2, 28−37
【非特許文献5】Millan et al, JPET, 2000, 292, 38−53
【非特許文献6】D.N.Eder, Current Opinion in Investigational Drugs, 2002 3(2):284−288
【非特許文献7】P. Willner, Brain. Res. Rev. 1983, 6, 211−224, 225−236 and 237−246; J. Med. Chem., 1985, 28, 1817−1828
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1には、統合失調症における陰性症状を含む統合失調症、うつ病、不安、睡眠障害、片頭痛発作および精神遮断薬により誘導される振せん麻痺のような種々の疾患を治療することが示唆されている、5−HT受容体に対する親和性を有する化合物、特に5−HT受容体アンタゴニストが記載されている。5−HT受容体拮抗作用はまた、古典的な精神遮断薬により誘導される錐体外路の副作用の発症を減少することが示唆されている(Balsara et al. Psychopharmacology 1979, 62, 67−69)。
【課題を解決するための手段】
【0014】
<本発明の塩>
式(I)の化合物のコハク酸水素塩(hydrogen succinate salt)およびマロン酸水素塩(hydrogen malonate salt)の水溶解度が、対応するフマル酸塩の水溶解度よりも非常に大きいことが見出された。
【0015】
本明細書において、式(I)の化合物の「コハク酸水素塩」という語句は、式(I)の化合物およびコハク酸の1:1の塩を表す。
【0016】
本明細書において、式(I)の化合物の「マロン酸水素塩」という語句は、式(I)の化合物およびマロン酸の1:1の塩を表す。
【0017】
前記コハク酸水素塩は、フマル酸塩よりそしてマロン酸水素塩より安定であり、そして非吸湿性であることが見出された。
【0018】
化合物Iのマロン酸水素塩は、光に暴露された場合にはフマル酸塩と類似の安定性を有し、60℃/80%の相対湿度(RH)に暴露された場合にはより安定であるが、90℃ではフマル酸塩より安定でないことが見出された。しかしながら90℃はとてもストレスをかけた条件であるので、通常の条件における安定性とは必ずしも関連しない。マロン酸塩は、相対湿度が95%に上昇した場合にヒステリシスなしに1%の水まで徐々に吸収する。従って、非吸湿性であるが良好な湿潤特性を有し、好ましい溶解特性を示す。
【0019】
本発明はまた、例えば本発明の塩の無水物(anhydrates)、水和物および溶媒和物を含む本発明の結晶質の塩も包含する。無水物という語句は、結晶の結合水を含まない本発明の塩を意味する。水和物は、結晶の結合水分子を含む本発明の塩を意味する。水和物は通常いくらかの水の存在下において塩を形成させることにより製造される。溶媒和物は、結晶の結合溶媒分子を含む本発明の塩を意味する。溶媒和物は通常、溶媒の存在下においてコハク酸塩を形成させることにより製造される。1つの溶媒和物における溶媒分子は、1つまたは2つまたはそれ以上の異なる溶媒からなることができる。溶媒和物は2つまたはそれ以上の有機溶媒のうちの1つとして水を含むことができ、または非水系溶媒のみであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、化合物Iのコハク酸水素塩の結晶形アルファの(銅Kα1線(λ=1.5406Å)を用いて得られた)粉末X線ディフラクトグラムを示す。
【図2】図2は、化合物Iのコハク酸水素塩の結晶形ベータの(銅Kα1線(λ=1.5406Å)を用いて得られた)粉末X線ディフラクトグラムを示す。
【図3】図3は、化合物Iのマロン酸水素塩の(銅Kα1線(λ=1.5406Å)を用いて得られた)粉末X線ディフラクトグラムを示す。
【0021】
本発明の1つの実施態様は、結晶質の無水物の形態でのトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン、すなわち式(I)の化合物、およびコハク酸の1:1の塩に関する。
【0022】
本発明者は、化合物Iのコハク酸水素塩の2つの結晶形(アルファおよびベータと名付ける)を見出した。
【0023】
従って、1つの実施態様は、アルファと命名され、以下:(i)図1に示すような粉末X線ディフラクトグラム;(ii)一定の2θ角においてメインピークを示す、銅Kα1線(λ=1.5406Å)を用いて得られる表Iに記載されるような粉末X線ディフラクトグラムパターン;(iii)139〜141℃に吸熱が起こるDSC(示差走査熱量測定)のトレース(trace)を有すること、のうちの1つまたはそれ以上により特徴付けられる、化合物Iのコハク酸水素塩の結晶形に関する。
【0024】
さらなる実施態様は、ベータと命名され、以下:(i)図2に示すような粉末X線ディフラクトグラム;(ii)一定の2θ角においてメインピークを示す、銅Kα1線(λ=1.5406Å)を用いて得られる表Iに記載されるような粉末X線ディフラクトグラムパターン;(iii)135〜138℃に吸熱が起こるDSCのトレースを有すること、のうちの1つまたはそれ以上により特徴付けられる、化合物Iのコハク酸水素塩の結晶形に関する。
【0025】
さらなる実施態様は、以下:(i)図3に示すような粉末X線ディフラクトグラム;(ii)一定の2θ角においてメインピークを示す、銅Kα1線(λ=1.5406Å)を用いて得られる表Iに記載されるような粉末X線ディフラクトグラムパターン、のうちの1つまたはそれ以上により特徴付けられる、化合物Iの結晶質マロン酸水素塩に関する。
【0026】
表1.銅Kα1線(λ=1.5406Å)を用いて得られる、化合物Iのコハク酸水素塩の結晶形アルファおよびベータの、および化合物Iの結晶質マロン酸水素塩の特徴的な粉末X線ディフラクトグラム。図;それぞれ化合物Iのコハク酸水素塩の結晶多型アルファおよびベータ、およびマロン酸塩の代表的なXRPDを提供する図1、図2および図3も参照のこと。
【0027】
【表1】

【0028】
本明細書で用いられる「図(1)に示される粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる化合物Iの特定の塩の結晶形」のような表現は、図(1)と実質的に類似する粉末X線ディフラクトグラムを有する、すなわち、実質的に前記図において例証されるような粉末X線ディフラクトグラムパターンを示し、そして本明細書に記載されるものと同様の条件下でまたは同様の任意の方法により測定される、該化合物Iの塩の結晶形を意味する。
【0029】
通常、本明細書における全てのデータは近似であり、例えば使用する装置、およびピーク位置およびピーク強度に影響を及ぼすその他のパラメーターに依存する標準的な測定誤差を生じる。
【0030】
本発明はまた、固体の塩が該塩の全量と比較して主にアルファ型からなる、化合物Iのコハク酸水素塩に関する。1つの実施態様において、「主に」という語句は、前記化合物Iの固体のコハク酸水素塩が、該化合物Iのコハク酸水素塩全体と比較して、少なくとも80%のような少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも95%のアルファ型結晶からなることを意味する。
【0031】
本発明はまた、固体の塩が該塩の全量と比較して主にベータ型からなる、化合物Iのコハク酸水素塩に関する。1つの実施態様において、「主に」という語句は、前記化合物Iの固体のコハク酸水素塩が、該化合物Iのコハク酸水素塩全体と比較して、少なくとも80%のような少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも95%のベータ型結晶からなることを意味する。
【0032】
本発明はまた、本発明のコハク酸水素塩の結晶形の任意の混合物、例えば化合物Iのコハク酸水素塩のアルファおよびベータ結晶形の混合物に関する。
【0033】
<本発明の塩の製造>
本発明のコハク酸塩は、不活性溶剤下における、式(I)の化合物の遊離塩基のコハク酸での処理、それに続く沈殿、単離および場合により再結晶化により得ることができる。所望の場合には、その後、結晶質の塩を湿式または乾式粉砕または別の都合のよい方法による微粒子化、または溶剤−乳化工程からの粒子の製造に付すことができる。
【0034】
本発明のコハク酸塩の沈殿は、好ましくは式(I)の化合物の遊離塩基をアセトンまたはトルエンのような適当な溶剤に溶解させ、その後にこの溶液をアセトン、アセトン水溶液またはトルエンのような適当な溶剤におけるコハク酸の懸濁液または溶液と混合させることにより行われる。1つの実施態様において、前記溶剤はアセトンおよび水の混合物、例えば主にアセトン、および該混合物を基準として約2%〜10%、好ましくは約5%の水からなる混合物である。得られる懸濁液は加熱することができ、全てのコハク酸が溶解するまで溶剤を加えることができる。本発明の化合物のコハク酸塩は、好ましくは溶液を冷却しながら沈殿させる。本発明のコハク酸塩は、場合により1回またはそれ以上再結晶化させてもよく、そしてろ過により単離し、例えばアセトンで洗浄して、乾燥する。
【0035】
本発明はまた、化合物Iのコハク酸水素塩のベータ型結晶を製造する方法であって、この方法が周囲条件(ambient conditions)で溶剤をゆっくりと留去させるために化合物Iのコハク酸水素塩の水溶液を置いておくことを含む、前記製造方法に関する。
【0036】
前記マロン酸塩は同様の方法を用いて得ることができる。従って、本発明のマロン酸塩は、不活性溶剤下における、式(I)の化合物の遊離塩基のマロン酸での処理、それに続く沈殿、単離および場合により再結晶化により得ることができる。所望の場合には、その後、結晶質の塩を湿式または乾式粉砕または別の都合のよい方法による微粒子化、または溶剤−乳化工程からの粒子の製造に付すことができる。
【0037】
本発明のマロン酸塩の沈殿は、好ましくは式(I)の化合物の遊離塩基を適当な溶剤、例えば2−プロパノールに溶解させ、その後にこの溶液を適当な溶剤、例えば2−プロパノールにおけるマロン酸の懸濁液または溶液と混合させることにより行われる。前記懸濁液は全てのマロン酸が溶解するまで加熱することができる。本発明の化合物のマロン酸塩は、好ましくは溶液を冷却しながら沈殿させる。本発明のマロン酸塩は、場合により1回またはそれ以上再結晶化させてもよく、そしてろ過により単離し、例えば2−プロパノールで洗浄して、乾燥する。
【0038】
<式(I)の化合物の製造>
ラセミ体の式(I)の化合物は、特許文献1に記載されているように製造することができ、そして「Bogeso et al. J. Med. Chem., 1995, 38, page 4380−4392」にはラセミ化合物の光学分割がジアステレオマー塩の結晶化により達成され、それによって式(I)のエナンチオマーが得られる方法が記載されている。
【0039】
本発明者は、純エナンチオマーV、すなわち化合物Va((1S,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−オール、下記参照)から開始する合成手順を経て式(I)のエナンチオマーが得られる、改善された合成経路を見出した。従ってこの方法においては、式Vの中間体が例えばキラルクロマトグラフィーにより、または酵素的に分割され、式Vaのエナンチオマーが得られる。この式(I)の化合物を得るための新しい合成経路は、上述の最終生成物Iのジアステレオマー塩の結晶化よりもさらにいっそう効率的である。特に分割における収率は、ジアステレオマー塩の結晶化による最終生成物Iの分割における収率(ラセミ体の開始物質の量と比較して22%、すなわち理論的最大収率は50%である)と比較して、この新しい方法(ラセミ体の開始物質の量と比較して45%、すなわち理論的最大収率は50%である)において十分に高い。この発明のもう1つの有利な点は、本発明に従って合成された場合に、ジアステレオマー塩の結晶化を用いる合成(95.4%ee)と比較して(I)のエナンチオマー純度が高い(99%eeより高い)ことである。さらに最終生成物の代わりに中間体を分割することにより、次の段階において正しいエナンチオマーのみを使用すると例えば高量の収率および試薬消費の減少が得られるように、より効率的な合成が得られ、
従って、式(I)のエナンチオマーは以下の段階を含む工程により得ることができる。
【0040】
【化2】

【0041】
ベンジルシアニドを、ジメチルエーテル(DME)のような適当な溶剤下において、塩基、最適にはカリウムtert−ブトキシド(t−BuOK)の存在下で2,5−ジクロロベンゾニトリルと反応させ、さらにメチルクロロアセテート(MCA)と反応させることにより、自発的な閉環および式(II)の化合物のワンポット形成が起こる。
【0042】
式(II)の化合物はその後、最適には酢酸、硫酸および水の混合物中で加熱されることにより酸加水分解に付されて式(III)の化合物を形成し、そしてその後、トルエンのような適当な溶剤下で式(III)の化合物をトリエチルアミンまたはN−メチルピロリドンと加熱することによる脱炭酸反応により、式(IV)の化合物を形成する。
【0043】
【化3】

【0044】
式(IV)の化合物はその後、アルコール、例えばエタノールまたはイソプロパノールのような溶剤下、最適にはNaBHで、そして好ましくは−30℃〜+30℃の範囲、例えば30℃以下、20℃以下、10℃以下、または好ましくは5℃以下の温度で還元され、シス構造を有する式(V):
【0045】
【化4】

【0046】
の化合物を形成する。
【0047】
式(V)の化合物が分割され、所望のエナンチオマー(式Va)、すなわちシス構造を有する((1S,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−オール):
【0048】
【化5】

【0049】
が得られる。
【0050】
(V)の(Va)への分割は、例えばキラルクロマトグラフィー、好ましくは液体クロマトグラフィーを用いて、最適にはキラルポリマー、例えば修飾されたアミロースで被覆されたシリカゲル、好ましくはシリカゲルにおいてアミロース・トリス−(3,5−ジメチルフェニルカルバメート)が被覆されたキラルカラムにおいて実施される。キラル液体クロマトグラフィーには、例えばアルコール、ニトリル、エーテルまたはアルカン、またはそれらの混合物、好ましくはエタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリルまたはメチルtert−ブチルエーテルまたはそれらの混合物、好ましくはメタノールまたはアセトニトリルのような適当な溶剤が使用される。キラル液体クロマトグラフィーは適当な技術、例えば擬似移動床技術(SMB)を用いてスケールアップをすることができる。
【0051】
もう1つの方法として、酵素的分割により式(V)の化合物を分割して化合物Vaが得られる。エナンチオマー的に純粋な化合物Vaまたはそのアシル化誘導体が、高い光学純度で化合物Vaまたはそのアシル化誘導体が得られる、ラセミ体化合物Vのヒドロキシル基の酵素的なエナンチオ選択的アシル化により製造することができることが見出された。もう1つの方法として、エナンチオマー的に純粋な化合物Vaは、ラセミ体化合物Vのヒドロキシ位における対応するエステルへの変換、それに続く酵素的なエナンチオ選択的脱アシル化を含む方法によっても得ることができる。酵素的なエナンチオ選択的脱アシル化を使用する方法は、その他の化合物に関しても報告されている。
【0052】
従って、化合物Vの化合物Vaへの分割は選択的な酵素的アシル化によって実施することができる。選択的な酵素的アシル化は、酵素的アシル化が式Vの化合物のシス−エナンチオマーの一方の変換に対して優先的に効率的であり、式Vの他方のシス−エナンチオマーを反応混合物中に変換しない状態のまま残すことを意味する。
【0053】
もう1つの方法として、化合物Vの化合物Vaへの分割は、選択的な酵素的脱アシル化により実施される。選択的な酵素的脱アシル化は、酵素的脱アシル化が式(V)の化合物のエステルの一方の変換に対して優先的に効率的であり、式(V)の他方のエステルのシス−エナンチオマーを反応混合物中に変換しない状態のまま残すことを意味する。
【0054】
【化6】

【0055】
式(V)の化合物の適当なエステル(Vb)は、アセテート、プロピオネート、ブチレート、バレレート、ヘキサノエート、ベンゾエート、ラウレート、イソブチレート、2−メチルブチレート、3−メチルブチレート、ピバレート、2−メチルバレレート、3−メチルバレレート、4−メチルバレレートのようなエステルであり、
【0056】
【化7】

【0057】
式中、Rは例えばアセテート、プロピオネート、ブチレート、バレレート、ヘキサノエート、ベンゾエート、ラウレート、イソブチレート、2−メチルブチレート、3−メチルブチレート、ピバレート、2−メチルバレレート、3−メチルバレレート、4−メチルバレレートを示す。
【0058】
従って、1つの実施態様は、a)ラセミ体化合物Vを、アシル化剤を用いるエナンチオ選択的な酵素的アシル化に付すこと、またはb)ラセミ体化合物Vbを、脱アシル化化合物Vaの混合物の形成のためにエナンチオ選択的な酵素的脱アシル化に付すことを含む式Vの化合物の(S,S)−または(R,R)−エナンチオマー(すなわちシス構造を持つ)の製造方法に関する。
【0059】
エナンチオ選択的な酵素的アシル化は、酵素的アシル化が式(V)の化合物のエナンチオマーの一方の変換に対して優先的に効率的であり、式(V)の化合物の他方のエナンチオマーを変換しないまま優先的に反応混合物中に残すことを意味する。エナンチオ選択的な酵素的脱アシル化は、酵素的脱アシル化が式(Vb)の化合物のエナンチオマーの一方の変換に対して優先的に効率的であり、式(Vb)の化合物の他方のエナンチオマーを変換しないまま優先的に反応混合物中に残すことを意味する。
【0060】
酵素的分割により得られる混合物は完全に純粋ではなく、例えばそれらは多量の所望のエナンチオマー(Va)に加えて少量の他方のエナンチオマーを含む。本発明のアシル化または脱アシル化後に得られる組成物混合物は、使用される特定の加水分解酵素および反応が行われる条件に依存する。本発明の酵素的アシル化/脱アシル化の特徴は、相当大部分の一方のエナンチオマーが他方のエナンチオマーよりも変換されることである。従って本発明のエナンチオ選択的アシル化においては、優先的に式(Vb)の化合物を(R,R)−体で、そして式(Va)の化合物を(S,S)−体で含む混合物が得られるか、または優先的に式(Vb)の化合物を(S,S)−体で、そして式(Va)の化合物を(R,R)−体で含む混合物が得られる。同様に、エナンチオ選択的な酵素的脱アシル化においては、優先的に式(Vb)の化合物を(S,S)−体で、そして式(V)の化合物を(R,R)−体で含む混合物が得られるか、または好ましくは式(Va)の化合物を(R,R)−体で、そして式(Va)の化合物を(S,S)−体で含む混合物が得られる。本発明の光学分割法により得られるVaの光学純度は、通常少なくとも90%ee.であり、好ましくは少なくとも97%ee.、さらに好ましくは少なくとも95%eeおよび最も好ましくは少なくとも98%eeである。しかし、光学純度に関する低い値は許容される。
【0061】
本発明において、エナンチオ選択的な酵素的アシル化は実質的に加水分解を抑制する条件下で実施される。アシル化反応の逆反応である加水分解は、反応系に水が存在する場合に起こる。従って、エナンチオ選択的な酵素的アシル化は好ましくは水を含まない有機溶剤またはほぼ無水の有機溶剤(通常、酵素は活性であるためにいくらかの水の存在を必要とする)中で実施される。適当な溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼンおよびトルエンのような炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテルおよびジメトキシエタンのようなエーテル;アセトン、ジエチルケトン、ブタノンおよびメチルエチルケトンのようなケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、エチルブチレート、ビニルブチレートおよびエチルベンゾエートのようなエステル;塩化メチレン、クロロホルムおよび1,1,1−トリクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素;tert−ブタノールのような第2級および第3級アルコール;ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ホルムアミド、アセトニトリルおよびプロピオニトリルのような窒素含有溶剤;およびジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンおよびヘキサメチルホスホン酸トリアミドのような非プロトン性極性溶剤が挙げられる。酵素的アシル化のために好ましい有機溶剤は、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、ジオキサンおよびテトラヒドロフラン(THF)のような有機溶剤である。
【0062】
適当な不可逆アシル供与体は、例えばビニル−エステル、2−プロペニル−エステルまたは2,2,2−トリハライド−エチル−エステル(2,2,2−trihalid−ethyl−esters)のようなアシル供与体である。
【0063】
エナンチオ選択的な酵素的脱アシル化は、好ましくは水、または水および有機溶剤の混合物中、適当な緩衝液の存在下で実施される。適当な有機溶剤は、例えばアルコール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,4−ジオキサン、DMEおよびジグライムのような水と混和性の溶剤である。
【0064】
本発明の酵素的アシル化はノボザイム435(カンジダアンタルクチカ(Candida Antarctica)リパーゼB、Novozymes A/S, Fluka製、カタログ番号73940)を用いて実施できることが見出された。一般的に本発明の酵素的アシル化または脱アシル化は、好ましくはリパーゼ、エステラーゼ、アシラーゼまたはプロテアーゼを用いて実施される。本発明に有用な酵素は、式(V)のラセミ化合物のヒドロキシ基のR−選択的アシル化またはS−選択的アシル化を実施することができる酵素、または式(Vb)のラセミ化合物のアシル基のR−選択的脱アシル化またはS−選択的脱アシル化を実施することができる酵素である。特にCross−Linked Enzyme Crystal(CLEC)を含む固定化型の酵素が本発明に有用である。好ましい実施態様は、化合物Vの酵素的分割を実施するためのリパーゼの使用に関する。最も好ましいリパーゼは、好ましくは固定化型のカンジダアンタルクチカリパーゼ(Fluka製、カタログ番号62299);シュードモナス・セパシアリパーゼ(Fluka製、カタログ番号62309);ノボザイムCALB L(カンジダアンタルクチカリパーゼB)(Novozymes A/S製);ノボザイム435(カンジダアンタルクチカリパーゼB)(Novozymes A/S製);またはリポザイムTL IM(サーモマイセス・ラヌギノーサス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ)(Novozymes A/S製)である。
【0065】
式(Va)のシス−アルコールのアルコール基は、好ましくは、不活性溶媒、例えばエーテル、最適にはテトラヒドロフランにおいて、最適には塩化チオニル、塩化メシルまたは塩化トシルのような試薬と反応させることにより、例えばハロゲン、例えばClまたはBr、好ましくはCl、またはスルホネート、例えばメシレートまたはトシレートのような適当な脱離基に変換される。得られる化合物は、LGが脱離基である式(VI):
【0066】
【化8】

【0067】
を有する。
【0068】
好ましい実施態様において、LGはClであり、すなわち式(VIa):
【0069】
【化9】

【0070】
で表されるシス−クロリドである。
【0071】
例えばクロロのようなLGを有する化合物VIをその後、例えば炭酸カリウムのような塩基の存在下で、適当な溶剤、例えばメシルイソブチルケトンまたはメチルエチルケトン、好ましくはメチルイソブチルケトンのような例えばケトンにおいて、2,2−ジメチルピペラジンと反応させる。得られる式(VII):
【0072】
【化10】

【0073】
で表される化合物は、2級アミン官能基でメチル化され(最適には、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサンまたはジエトキシメタン(DEM)のような適当な試薬を用いる還元的アミノ化により)式(I)
【0074】
【化11】

【0075】
の化合物の遊離塩基が得られる。
【0076】
もう1つの方法として、前記メチル基は、例えばLGがClである化合物VIと反応させる時に2,2−ジメチルピペラジンの代わりに1,2,2−トリメチルピペラジン(以下の式VIII)を使用することにより直接導入することができ、従って1段階合成が短縮される。
【0077】
【化12】

【0078】
さらに、前記分子のピペラジン部分は、化合物VIを、PGが例えばフェニルメトキシカルボニル(しばしばCbzまたはZと呼ばれる)、tert−ブチルオキシカルボニル(しばしばB℃と呼ばれる)、エトキシカルボニルまたはベンジルであるがそれに制限されないような保護基である以下の式(IX)の化合物と反応させることにより導入することができ、それによって以下の式(X)の化合物が得られる。
【0079】
【化13】

【0080】
前記生成物の(VII)への脱保護後の上述のようなメチル化により最終生成物である化合物Iが得られる。あるいは、例えばエトキシカルボニルのような保護基は、適当な還元剤、例えば水素化リチウムアルミニウムを用いて直接メチル基に変換することができる。
【0081】
合成の間に、化合物Iのシスジアステレオ異性体(すなわち4−((1S,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン)が最終生成物の不純物としていくらか形成される。この不純物は主に、化合物VIが形成される段階におけるいくらかの(VI)のトランス体(例えば、LGがClの場合に(1S,3R)−3,5−ジクロロ−1−フェニルインダン)の形成による。従って前記不純物は、化合物VIの所望のシス体の、トランスおよびシス(VI)の混合物からの結晶化により最小限にすることができ、化合物VIのLGがClである場合には、これは前記混合物と適当な溶剤、例えばヘプタンのようなアルカンとを撹拌することにより行うことができ、それによって所望であるVIのシス体が沈殿し、不要な化合物VIのトランス体が溶液中に行く。化合物VIの所望のシス体(例えばLGがClの場合)をろ過により単離し、前記溶剤で洗浄して、乾燥させる。
【0082】
化合物VIIの合成に使用される(VI)のバッチ中に化合物VIのシス体が存在する場合には、(VII)の不純物としての式VIIのトランス体(すなわち4−((1S,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−3,3−ジメチルピペラジン)の形成が上昇し、これにより、最終生成物における化合物Iのシス体を避けるための第2の選択肢が与えられる。化合物VIIのシス体は、式VIIの化合物の適当な塩、例えば式(VII)の化合物の有機二塩基酸のような有機酸の塩、最適にはフマル酸水素塩またはマレイン酸水素塩のような沈殿、場合によりそれに続く1回またはそれ以上の再結晶化により除去することができることが見出された。
【0083】
さらに、(I)におけるシスジアステレオマーの形態(すなわち、4−((1S,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン)の不純物は、式(I)の化合物の適当な塩、例えば式(I)の化合物の適当な塩、例えば有機二塩基酸のような有機酸の塩、最適にはフマル酸塩、例えばフマル酸水素塩の沈殿、場合によりそれに続く1回またはそれ以上の再結晶化により効率的に除去することができることが見出された。
【0084】
さらなる態様における本発明はまた、式(I)の化合物の合成に関して本明細書に記載されているような中間体、すなわち特に中間体(Va)、VI、例えばVIa、およびVII、または化合物VIIの塩に関する。このように、立体異性体の形態を指定する場合には、立体異性体が前記化合物の主要な構成要素であることが理解される。特に、エナンチオマーの形態を指定する場合には、前記化合物はエナンチオマー過剰なエナンチオマーを有する。
【0085】
従って、本発明の1つの実施態様は、好ましくは少なくとも60%(60%エナンチオマー過剰率は、前記混合物中のVaとそのエナンチオマーとの比率が80:20であることを意味する)、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも96%、好ましくは少なくとも98%のエナンチオマー過剰率を有する式(Va)の化合物に関する。さらに、前記化合物のジアステレオマー過剰率は好ましくは少なくとも70%(70%ジアステレオマー過剰率は、前記混合物における化合物Vaと(1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−オールの比率が85:15であることを意味する)、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%である。1つの実施態様は実質的に純粋な化合物Vaに関する。
【0086】
本発明のさらなる実施態様は、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも96%、好ましくは少なくとも98%のエナンチオマー過剰率を有する式(VI)
【0087】
【化14】

【0088】
の化合物であって、LGが潜在的な脱離基であり、好ましくは塩化物のようなハロゲンまたはスルホネートからなる群から選択される、前記化合物に関する。1つの実施態様は、化合物VIのジアステレオマー純度;すなわち好ましくは少なくとも10%(10%のジアステレオマー過剰率は、前記混合物中における化合物VIとシスジアステレオマー(例えばLG=CLの場合に、(1S,3R)−3,5−ジクロロ−1−フェニルインダン)の比率が55:45であることを意味する)、少なくとも25%または少なくとも50%のジアステレオマー過剰率を有する化合物に関する。
【0089】
従って、本発明はまた、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも96%、好ましくは少なくとも98%のエナンチオマー過剰率を有する、以下の式(VIa)
【0090】
【化15】

【0091】
を有する化合物に関する。1つの実施態様は、前記化合物のジアステレオマー純度、すなわち好ましくは少なくとも10%(10%のジアステレオマー過剰率は、前記混合物中における前記化合物とシスジアステレオマー(1S,3R)−3,5−ジクロロ−1−フェニルインダンの比率が55:45であることを意味する)、少なくとも25%、または少なくとも50%のジアステレオマー過剰率を有する化合物に関する。1つの実施態様は、LGがClである実質的に純粋な化合物VIに関する。
【0092】
本発明はまた、好ましくは少なくとも60%(60%エナンチオマー過剰率は、前記混合物中のVIIとそのエナンチオマーとの比率が80:20であることを意味する)、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも96%、好ましくは少なくとも98%のエナンチオマー過剰率を有し、以下の構造を有する化合物(VII):
【0093】
【化16】

【0094】
または例えばフマル酸塩、例えばフマル酸水素塩、またはマレイン酸塩、例えばマレイン酸水素塩のようなその塩に関する。1つの実施態様は、化合物VIIのジアステレオマー純度、すなわち好ましくは少なくとも10%(10%のジアステレオマー過剰率は、前記混合物中における化合物VIIとシス−(1S,3S)ジアステレオ異性体の比率が55:45であることを意味する)、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%のジアステレオマー過剰率を有する化合物に関する。1つの実施態様は、実質的に純粋な化合物VIIまたはその塩に関する。
【0095】
さらなる態様は化合物Iまたはその塩、特に本明細書に記載されるような本発明の方法により得られる、特にフマル酸塩、マロン酸塩またはコハク酸塩に関する。
【0096】
さらなる態様は化合物VIIまたはその塩、特に本明細書に記載されるような本発明の方法により得られる、例えばフマル酸塩に関する。
【0097】
<薬学的用途>
本発明の化合物Iの塩の物理的特性は、薬剤として特に有用であることを示している。
【0098】
従って、本発明はさらに式(I)の化合物のコハク酸塩、特に本明細書に記載されるようなコハク酸水素塩(例えば本明細書に記載されるようなアルファまたはベータ型)、またはマロン酸塩、特にマロン酸水素塩の医薬調合物に関する。本発明はまた、前記塩および調合物を精神病、特に統合失調症または例えば、統合失調症、分裂病様障害、統合失調性感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病障害のような精神病の症状に関連するその他の疾患、ならびに精神病の症状を伴って存在するその他の精神病性疾患または障害、例えば双極性障害における躁病を含む中枢神経系における疾患の治療のためのように、医薬として使用する方法に関する。
【0099】
さらに、本発明化合物の5−HT拮抗活性により、前記化合物が錐体外路系の副作用に関して比較的低いリスクを有することが示唆される。
【0100】
本発明はまた、本発明の式(I)の化合物のコハク酸塩またはマロン酸塩、好ましくはコハク酸水素塩(例えば結晶形アルファ)またはマロン酸水素塩を、不安障害、うつ病を含む情動障害、睡眠障害、片頭痛、神経遮断薬によって引き起こされる振せん麻痺、コカイン乱用、ニコチン乱用、アルコール乱用およびその他の乱用障害からなる群から選択される疾患を治療するために使用する方法に関する。
【0101】
広い態様において、本発明は、治療的有効量の化合物トランス−4−(6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたはその塩を投与することを含む、分裂病様障害、統合失調性感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病障害または双極性障害における躁病を治療する方法に関する。
【0102】
本明細書において使用される語句「トランス−4−(6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン」、すなわちエナンチオマーの形態に関する特定の指示(例えば(+)および(−)を用いる、またはR/S表記法を用いる)のない語句は、この化合物のいずれか一方のエナンチオマー、すなわち2つのエナンチオマー、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(I)または4−((1S,3R)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンのうちのいずれか一方、または2つの混合物、例えばラセミ混合物を意味する。しかし、これに関連して、好ましくは化合物Iの含有量に対応する前記エナンチオマーの含有量は少なくとも50%、すなわち少なくともラセミ混合物と同様であり、好ましくは化合物Iはエナンチオマー過剰である。
【0103】
薬学的な用途に関連して、前記化合物トランス−4−(6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(例えば式(I)のような)のエナンチオマーの形態を指定した場合には、前記化合物は上述のように比較的立体化学的に純粋であり、好ましくはエナンチオマー過剰率は少なくとも80%(80%のエナンチオマー過剰率は、前記混合物中においてIとそのエナンチオマーの比率が90:10であることを意味する)、少なくとも90%、少なくとも96%、または好ましくは少なくとも98%であることが理解される。好ましい実施態様において、化合物Iのジアステレオマー過剰率は少なくとも90%、(90%のジアステレオマー純度は、化合物Iとそのシス−4−((1S,3S))−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル−1,2,2−トリメチルピペラジンの比率が95:5であることを意味する)少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも98%である。
【0104】
好ましい実施態様において、本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物[すなわち4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン]またはその塩を投与することを含む、分裂病様障害、統合失調性感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病障害または双極性障害における躁病を治療する方法に関する。
【0105】
本発明の1つの実施態様は、治療的有効量の化合物トランス−4−(6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたはその塩、好ましくは式(I)の化合物またはその塩、または好ましい実施態様においては式(I)の化合物のコハク酸塩またはマロン酸塩、好ましくは式(I)の化合物のコハク酸水素塩またはマロン酸水素塩を投与することを含む、統合失調症の陽性症状、統合失調症の陰性症状および抑うつ症状を治療する方法に関する。
【0106】
本発明のさらなる実施態様は、治療的有効量の化合物トランス−4−(6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたはその塩、好ましくは式(I)の化合物またはその塩、または好ましい実施態様においては式(I)の化合物のコハク酸塩またはマロン酸塩、好ましくは式(I)の化合物のコハク酸水素塩またはマロン酸水素塩を投与することを含む、統合失調症の陽性症状を治療する方法に関する。
【0107】
本発明のもう1つの実施態様は、治療的有効量の化合物トランス−4−(6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたはその塩、または好ましくは式(I)の化合物またはその塩、または好ましい実施態様においては式(I)の化合物のコハク酸塩またはマロン酸塩、好ましくは式(I)の化合物のコハク酸水素塩またはマロン酸水素塩を投与することを含む、統合失調症の陰性症状を治療する方法に関する。
【0108】
本発明のさらなる実施態様は、治療的有効量の化合物トランス−4−(6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたはその塩、好ましくは式(I)の化合物またはその塩、または好ましい実施態様においては式(I)の化合物のコハク酸水素塩またはマロン酸水素塩を投与することを含む、統合失調症の抑うつ症状を治療する方法に関する。
【0109】
本発明のさらなる態様は、治療的有効量の化合物トランス−4−(6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたはその塩、好ましくは式(I)の化合物またはその塩、または好ましい実施態様においては式(I)の化合物のコハク酸塩またはマロン酸塩、好ましくは式(I)の化合物のコハク酸水素塩またはマロン酸水素塩を投与することを含む、躁病および/または双極性障害の維持を治療する方法に関する。
【0110】
本発明のさらなる態様は、治療的有効量の化合物トランス−4−(6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたはその塩、好ましくは式(I)の化合物またはその塩、または好ましい実施態様においては式(I)の化合物のコハク酸塩またはマロン酸塩、好ましくは式(I)の化合物のコハク酸水素塩またはマロン酸水素塩を投与することを含む、神経遮断薬によって引き起こされる振せん麻痺を治療する方法に関する。
【0111】
本発明はさらに、治療的有効量の化合物トランス−4−(6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたはその塩、好ましくは式(I)の化合物またはその塩、または好ましい実施態様においては式(I)の化合物のコハク酸塩またはマロン酸塩、好ましくは式(I)の化合物のコハク酸水素酸またはマロン酸水素塩を投与することを含む、物質乱用、例えばニコチン、アルコールまたはコカイン乱用を治療する方法に関する。
【0112】
本発明の塩または調合物は適当な方法、例えば経口、口腔内、舌下または非経口で投与することができ、前記塩は前記投与のために適した形態で、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤または液剤または注射用の分散剤の形態で存在することができる。1つの実施態様において、本発明の塩は固体の薬剤、適切には錠剤またはカプセル剤の形態で投与される。
【0113】
固体の医薬調合物の製造方法は当業者に公知である。従って、錠剤は活性成分を通常のアジュバント、充填剤および希釈剤と混合し、引き続き前記混合物を慣用の打錠機において圧縮することにより製造することができる。アジュバント、充填剤および希釈剤の例としては、コーンスターチ、ラクトース、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、ラクトース、増粘剤(gums)等が挙げられる。その他の任意のアジュバント、または着色剤、香料、保存料等のような添加剤も、活性成分と適合することを条件として使用することができる。
【0114】
注射用液剤は、本発明の塩および使用可能な添加物を注射用液剤、好ましくは無菌水の一部に溶解させ、液剤を所望の容積に調節し、該液剤を滅菌して適当なアンプルまたはバイアルに充填することにより製造することができる。等張化剤、保存料、抗酸化剤、可溶化剤等のような本技術分野において一般的に使用される適当な添加剤を添加することができる。
【0115】
前記式(I)の化合物の1日あたりの用量は、遊離塩基として計算して、適切には1.0〜160mg/日、より適切には1〜100mg/日、例えば好ましくは2〜55mgまたは3〜55mgである。
【0116】
本明細書において疾患または障害に関連して使用される「治療」という語句には、場合によっては予防も含まれる。
【0117】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0118】
化合物の製造
<解析>
実施例1aにおける化合物(Va)のエナンチオマー過剰率は、40℃でCHIRALCEL(R)ODカラム、0.46cm ID X 25cm L、10μmを用いるキラルHPLCにより測定した。n−ヘキサン/エタノール95:5(vol/vol)を1.0ml/minの流速で移動相として使用し、検出を220nmでUV検出器を用いて行った。
【0119】
実施例1bに使用される変換率のHPLC解析:
カラム:Lichrospher RP−8カラム、250×4mm(5mmの粒度)。
【0120】
溶出液:1.1mlのEtNを150mlの水に添加し、10%HPO(水溶液)をpH=7まで添加し、そして全体が200mlとなるまで水を添加する。この混合物に1.8LのMeOHを添加して調製した緩衝MeOH/水を使用。
【0121】
実施例1bにおける化合物(Va)のエナンチオマー過剰率は、21℃でCHIRALPAK(R)ADカラム、0.46cm ID X 25cmL、10μmを用いるキラルHPLCにより測定した。ヘプタン/エタノール/ジエチルアミン89.9:10:0.1(vol/vol/vol)を1.0ml/minの流速で移動相として使用し、検出を220nmでUV検出器を用いて行った。
【0122】
化合物Iのエナンチオマー過剰率は、以下の条件:キャピラリー:50μm ID X 64.5cmL、泳動用緩衝液:25mMのリン酸二水素ナトリウムにおける1.25mMのβシクロデキストリン(pH1.5)、電圧:16kV、温度:22℃、注入:50mbarで5秒間、検出:192nmでのカラムダイオードアレイ検出、サンプル濃度:500μg/mlを用いて石英ガラスキャピラリー電気泳動(CE)により測定した。この系において、化合物Iは約33分の保持時間を有し、他方のエナンチオマーは約35分の保持時間を有する。
【0123】
H NMRスペクトルは、Bruker製Avance DRX500装置における500.13MHzで、またはBruker製AC 250装置における250.13MHzで記録した。クロロホルム(99.8%D)またはジメチルスルホキシド(99.8%D)を溶剤として使用し、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として使用した。
【0124】
化合物IおよびVIIのシス/トランス比は、H NMRを用いて「Bogeso et al., J. Med. Chem. 1995, 38, 4380−4392(4388ページ、右の段)」に記載されているように測定した。化合物VIのシス/トランス比も、シス異性体に対する5.3ppmのシグナルおよびトランス異性体に対する5.5ppmのシグナルの積分を用いて、クロロホルムにおけるH NMRにより測定した。一般に、NMRにより約1%の含有量の不要な異性体を検出することができる。
【0125】
粉末X線ディフラクトグラムは、CuKα1線を用いるPANalytical製X’Pert PRO X線回折装置で記録した。5〜40°の2θ範囲において反射モードで測定した。
【0126】
融点は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定した。装置は、融点が開始値(onset value)となるように5°/分でキャリブレーションを行ったTA−Instruments社製のDSC−2920である。
【0127】
<主要な開始物質の合成>
化合物Vは「Bogeso J. Med. Chem. 1983, 26, 935」に記載される方法に従って、溶剤としてエタノールを使用し、反応を約0℃で行う、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を用いた還元によりIVから合成した。両化合物とも「Bogeso et al. J. Med. Chem. 1995, 38, 4380−4392」に記載されている。化合物IVは、IIおよびその合成についても記載されている「Sommer et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 4822」に記載されている一般的な方法を用いてIIから合成した。
【0128】
(実施例1a キラルクロマトグラフィーを用いた(1S,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−オール(Va)の合成)
ラセミ体のシス−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−オール(V)(492グラム)を40℃で、CHIRALPAK(R)ADカラム、10cm ID X 50cmL、10mmを用いる分取クロマトグラフィーにより分割した。メタノールを流速190ml/minで移動相として使用し、UV検出器を用いて287nmで検出を行った。前記ラセミアルコール(V)を50,000ppmのメタノール溶液として注入し、28分の間隔で90mlを注入した。表題化合物を98%以上のエナンチオマー過剰率で含む全ての画分を合わせ、乾燥のためにロータリーエバポレータを用いて留去して、引き続き「減圧下において」40℃で乾燥した。収量は固体として220グラムである。元素分析およびNMRにおいて構造が一致し、キラルHPLCによるエナンチオマー過剰率は98%よりも高かった。[α]20+44.5°(c=1.0,メタノール)。
【0129】
(実施例1b 酵素的分割の使用による(1S,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−オール(Va)の合成)
【0130】
【化17】

【0131】
化合物V(5g,20.4mmol)を150mlの無水トルエンに溶解させる。0.5gのノボザイム435(カンジダアンタルクチカリパーゼB)(Novozymes A/S, Fluka製、カタログ番号73940)を添加し、引き続きビニルブチレート(13ml,102.2mmol)を添加する。該混合物をメカニカルスターラーを用いて21℃で撹拌する。1日後、追加で0.5gのノボザイム435を添加する。4日後、54%の変換において前記混合物をろ過し、減圧下で濃縮することにより、(1R,3R)−シス−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−オール−ブチレートエステルおよび99.2%のエナンチオマー過剰率を有する所望の化合物Vaの混合物を含む油状物を得る(99.6%の化合物Vaおよび0.4%の(1R,3R)−シス−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−オール)。
【0132】
<(I)の合成、および(I)のフマル酸水素塩の沈殿によるシスジアステレオ異性体の形態の不純物の除去>
(実施例2 (1S,3S)−3,5−ジクロロ−1−フェニルインダン(VI,LG=Cl)の合成)
実施例1aの記載のようにして得られたシス−(1S,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−オール(Va)(204グラム)をTHF(1500ml)に溶解させ、−5℃に冷却する。1時間かけて塩化チオニル(119グラム)をTHF(500ml)溶液として滴加する。該混合物を室温で一晩撹拌する。氷(100g)を前記反応混合物に添加する。氷が溶けたら水相(A)および有機相(B)を分離し、前記有機相(B)を飽和重炭酸ナトリウム(200ml)で2回洗浄する。重炭酸ナトリウム相を水相Aと合わせ、水酸化ナトリウム(28%)でpH9に調節し、再度有機相Bを洗浄するために使用する。その結果得られる水相(C)および有機相Bを分離し、水相Cを酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル相を前記有機相Bと合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥のためにロータリーエバポレータを用いて留去して、油状物として表題化合物を得る。収量は240グラムであり、これを実施例5に直接使用する。NMRにおけるシス/トランス比は77:23である。
【0133】
(実施例3 3,3−ジメチルピペラジン−2−オンの合成)
炭酸カリウム(390グラム)およびエチレンジアミン(1001グラム)をトルエン(1.50L)とともに撹拌する。エチル2−ブロモイソブチレート(500グラム)のトルエン(750ml)溶液を添加する。該懸濁液を一晩環流のために加熱し、そしてろ過する。ろ過ケーキをトルエン(500ml)で洗浄する。合わせたろ液(容積4.0L)を水浴で加熱し、クライゼン装置を用いて0.3気圧で蒸留して;最初の1200mlの蒸留液を35℃(混合物中における温度は75℃)で回収する。さらにトルエン(600ml)を添加し、新たに1200mlの蒸留液を76℃(混合物中における温度は80℃)で回収する。トルエン(750ml)を再度添加し、1100mlの蒸留液を66℃(混合物中における温度は71℃)で回収する。混合物を氷浴上で撹拌し、注入することにより生成物が沈殿する。前記生成物をろ過により単離し、トルエンで洗浄して、真空オーブン中において50℃で一晩乾燥する。3,3−ジメチルピペラジン−2−オンの収量は171g(52%)である。NMRは構造と一致した。
【0134】
(実施例4 2,2−ジメチルピペラジンの合成)
3,3−ジメチルピペラジン−2−オン(8.28kg,64.6mol)およびテトラヒドロフラン(THF)(60kg)の混合物を50〜60℃に加熱し、わずかに不透明な溶液を得る。THF(50kg)を窒素下で撹拌し、そしてLiAlH(250g、溶解性プラスチックバッグ中、Chemetall製)を添加することにより気体がゆっくりと発生する。気体の発生が終わった後に、さらにLiAlHを添加すると(全体で3.0kg、79.1molを使用)、発熱(exoterm)のために温度が22℃から50℃まで上昇する。3,3−ジメチルピペラジン−2−オンの溶液を41〜59℃で2時間かけてゆっくりと添加する。該懸濁液を59℃(ジャケット温度60℃)でもう1時間撹拌する。該混合物を冷却し、温度を25℃以下(0℃のジャケット温度で冷却する必要がある)に保ちながら水(3L)を2時間かけて添加する。その後、水酸化ナトリウム(15%,3.50kg)を必要な場合は冷却しながら23℃で20分かけて添加する。さらに水(9L)を30分かけて添加し(必要な場合は冷却しながら)、該混合物を窒素下で一晩撹拌する。ろ過剤のセリット(Celit)(4kg)を添加し、前記混合物をろ過する。ろ過ケーキをTHF(40kg)で洗浄する。合わせたろ液を、リアクターの温度が800mbarで70℃(蒸留温度66℃)になるまでリアクターにおいて濃縮する。残留物(remanence)(12.8kg)をさらにロータリーエバポレータ(rotavapor)で約10Lまで濃縮する。最後に該混合物を大気圧で分留し(fractionally distilled)、生成物を163〜4℃で回収する。収量5.3kg(72%)。NMRは構造と一致する。
【0135】
(実施例5 トランス−1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−3,3−ジメチルピペラジン(VII)の合成)
シス−(1S,3S)−3,5−ジクロロ−1−フェニルインダン(VI,LG=Cl)(240g)をブタン−2−オン(1800ml)に溶解させる。炭酸カリウム(272g)および2,2−ジメチルピペラジン(実施例4で製造)(113g)を添加し、該混合物を環流温度で40時間加熱する。反応混合物にジエチルエーテル(2L)および塩酸(1M,6L)を直接添加する。相を分離し、水相のpHを濃塩酸で8から1まで下げる。前記水相を、全ての生成物が水相にあることを確実にするために再度有機相を洗浄するのに使用する。水酸化ナトリウム(28%)をpHが10になるまで前記水相に添加し、前記水相をジエチルエーテル(2L)で2回抽出する。該ジエチルエーテル抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして乾燥のためにロータリーエバポレータを用いて留去する。油状物として251グラムの表題化合物が得られ、これは次の実施例に直接使用される。NMRによるシス/トランス比は82:18である。
【0136】
(実施例6 トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジニウム(I)フマル酸水素塩の合成)
粗トランス−1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−3,3−ジメチルピペラジン(VII)(250グラム)をホルムアルデヒド(水において37%、300ml)およびギ酸(366グラム)と混合し、該混合物をゆっくりと環流のために加熱する。前記混合物を3.5時間環流で撹拌し、室温に冷却した後に水(1200ml)を添加する。前記混合物をエーテル(1200ml)で2回抽出し、その後水相を水酸化ナトリウム(28%、約500ml)の添加によりアルカリ性にする。前記水相をエーテル(900ml)で3回抽出する。有機相を合わせ、ブライン(brine)(650ml)で洗浄し、水(500ml)で2回洗浄した。前記有機相を硫酸ナトリウムにより乾燥し、ろ過して、乾燥のためにロータリーエバポレータで留去する。収量:油状物として212グラムのトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン遊離塩基(I)、NMRにおいて19%のシスジアステレオ異性体を有する。前記化合物を1−プロパノール(3.18L)に溶解させ、該混合物を50℃に加熱して透明な溶液を得る。フマル酸(69.3グラム)を添加し透明な溶液を得る。該混合物を冷却することにより、表題化合物が沈殿する。生成物をろ過により単離し、1−プロパノールで洗浄して「減圧下において」60℃で乾燥する。収量:182グラム、NMRにおいて1%より少ないシスジアステレオ異性体を含む。元素分析およびNMRは構造と一致する。キラルキャピラリー電気泳動(CE)におけるエナンチオマー過剰率は99%以上である。[α]20=−22.8°(c=1.0,メタノール)。
【0137】
<フマル酸水素塩からの(I)の遊離アミンの遊離およびコハク酸水素塩およびマロン酸水素塩としての再沈殿>
(実施例7 4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン遊離塩基(I)の合成)
トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジニウム(I)フマル酸水素塩(25.0グラム)をトルエン(125ml)に懸濁する。25%アンモニア水(75ml)を添加する。3つの相を全ての固体が見えなくなるまで撹拌する。有機相を分離し、そして水相をトルエン(25ml)で洗浄する。合わせたトルエン相を水(25ml)で洗浄する。水相を捨て、有機相を硫酸ナトリウム乾燥剤(sodium sulphate sicc.)(35グラム)により乾燥し、スラリーをろ過して、そしてろ液を乾燥のためにロータリーエバポレータで留去することにより、油状物として表題化合物を得る。該粗遊離塩基(15グラム)をさらに精製することなく使用する。
【0138】
(実施例8 トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジニウム(I)コハク酸水素塩の合成)
実施例7における記載のようにして得られた粗トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(I)(8.50グラムの油状物)を、アセトン(30ml)に溶解させる。コハク酸(3.25グラム)のアセトン(32ml)における懸濁液を調製し、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(I)溶液を添加すると、前記コハク酸が溶解し、そのすぐ後にトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジニウム(I)コハク酸水素塩が沈殿する。沈殿物を遠心分離により単離する前に、該懸濁液を0℃で90分間冷却する。上清を捨て、沈殿物をアセトン(20ml)で洗浄する。スラリーを遠心分離して上清を捨て、沈殿を「減圧下において」50℃で乾燥する。収量8.56グラム。
【0139】
この工程を初めて実施した場合には、単離される生成物はベータ型であり、その後繰り返すことによりさらに安定な化合物Iコハク酸水素塩のアルファ型が形成した。上述の実験におけるアセトンはアセトン水溶液(95%)により置き換えることができ、その結果もまた化合物Iコハク酸水素塩のアルファ型が形成する。
【0140】
示差走査熱量測定(DSC)は、140℃の開始温度およびアルファ型に対応する141℃におけるピークを有する吸熱を示す。XRPDディフラクトグラムはアルファ型と一致する。
【0141】
(実施例9 トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジニウム(I)マロン酸水素塩)
実施例7の記載のようにして得られた粗トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(I)(1.0グラム、2.81mmol)を2−プロパノール(5ml)に溶解させる。マロン酸(0.291グラム、2.46mmol)の2−プロパノール溶液(5ml)を調製し、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン溶液を添加することにより、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジニウムマロン酸水素塩が沈殿する。前記沈殿物を遠心分離により単離する前に、該懸濁液を室温に冷却する。上清を捨て、沈殿物を2−プロパノール(5ml)で洗浄する。スラリーを遠心分離し、上清を捨て、そして沈殿物を「減圧下において」50℃で乾燥する。収量:0.98グラム(84%)。元素分析は構造と一致する。図3に示すように、X線ディフラクトグラムはマロン酸水素塩のディフラクトグラムと一致する。
【0142】
<(I)の合成、(VII)のシスジアステレオ異性体を除去するための(VII)の塩の生成、および粗(I)からのコハク酸水素塩の生成>
(実施例10 トランス−1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−3,3−ジメチルピペラジニウム(VII)マレイン酸水素塩の合成)
実施例2および5を繰り返し、粗トランス−1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−3,3−ジメチルピペラジン(VII)(約20グラム)を油状物として得て、それをさらにシリカゲルにおけるフラッシュクロマトグラフィー(溶出:酢酸エチル/エタノール/トリエチルアミン90:5:5)により精製し、引き続き乾燥のためにロータリーエバポレータで留去する。12グラムの表題化合物を油状物として得る(シス/トランス比はNMRにおいて90:10である)。前記油状物をエタノール(100ml)に溶解させ、この溶液にマレイン酸のエタノール溶液をpH3になるまで添加する。その結果得られる混合物を室温で16時間室温で撹拌し、生成する沈殿物をろ過により回収する。エタノールの量を減らし、もう1回分の沈殿物を回収する。3.5グラムの固体の表題化合物を得る(NMRにおいては、シス異性体が検出されたない)。融点175〜178℃。
【0143】
(実施例11 トランス−1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−3,3−ジメチルピペラジン(VII))
トランス−1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−3,3−ジメチルピペラジニウムマレイン酸水素塩(VII)(9.9グラム)、濃アンモニア水(100ml)、ブライン(150ml)および酢酸エチル(250ml)の混合物を室温で30分間撹拌する。相を分離し、そして水相を酢酸エチルでもう1度抽出する。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して、乾燥のために減圧下で留去する。7.5グラムの油状物を得る。
【0144】
(実施例12 トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン遊離塩基(I)の製造)
トランス−1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−3,3−ジメチルピペラジン(8.9グラム)(VII)をギ酸(10.5ml)に溶解させ、該溶液にホルムアルデヒド(10.5ml)を添加する。60℃に加熱し、2.5時間この温度を維持する。反応混合物を冷却した後に、水(50ml)およびヘキサン(50ml)を添加する。NaOH(27%,33ml)でpHをpH>12に調節する。ヘキサン相をNaCl水溶液(20ml)および水(20ml)で洗浄する。ヘキサ
ンを共沸によりアセトン(90ml)と交換し、混合物を濃縮する。アセトン(10ml)における粗な遊離塩基をさらに精製することなく使用する。
【0145】
(実施例13 トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジニウム(I)コハク酸水素塩)
アセトン溶液(10ml)における粗トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(I)。アセトン(20ml)におけるコハク酸(3.4グラム)の懸濁液を調製し、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(I)溶液を添加して、該混合物を環流のために加熱した(55℃)。コハク酸が溶解し、そして溶液を冷却する間にトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジニウム(I)コハク酸水素塩が沈殿し始める。懸濁液は沈殿させるために一晩置かれる。トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジニウムコハク酸水素塩をろ過により単離し、アセトン(20ml)で洗浄する。生成物を「減圧下において」60℃で乾燥する。
【0146】
収量:7.9グラム。
【0147】
示差走査熱量測定は、140℃の開始温度およびアルファ型に対応する141℃におけるピークを有する吸熱を示す。XRPDディフラクトグラムはアルファ型と一致する。[α]20=−22.04°(c=1.0,メタノール)。
【0148】
<1,2,2−トリメチルピペラジンを用いるIの合成>
(実施例14 3,3,4−トリメチルピペラジン−2−オンの合成)
3,3−ジメチルピペラジン−2−オン(50グラム)を1,2−ジメトキシエタン(DME)(150ml)に懸濁し、炭酸カリウム(70グラム)を添加する。ヨウ化メチル(66.4グラム)を30分間で添加し、混合物を温度が50℃になるようにわずかに冷却する。前記混合物を油浴において40〜45℃で9時間撹拌し、サンプルをNMRのために回収したところ、NMRによりまだ8%の開始物質(2.8ppmにおけるシグナル)が残っていることが示される。さらにヨウ化メチル(4.6グラム)を添加し、該混合物をさらに40℃で2.5時間撹拌すると、新しいNMRサンプルは完全な変換を示す。混合物をろ過し、ろ過ケーキをDMEで洗浄する。ろ液を留去して乾燥することにより41グラムの表題化合物を得る。NMRは構造と一致する。
【0149】
(実施例15 1,2,2−トリメチルピペラジンの合成)
水素化リチウムアルミニウムのテトラヒドロフラン(THF)溶液(1.0M、Aldrich製 カタログ番号21,277−6、90ml)を油浴上で50℃に加熱する。粗3,3,4−トリメチルピペラジン−2−オン(10g)をTHFに懸濁し、ゆっくりと添加すると気体が発生する。その結果得られる混合物を45〜56℃で4時間撹拌すると、NMRにおいても表題化合物に完全に変換されている(開始物質由来の1.2ppmにおけるシグナルがない)。混合物を冷却し、水(3.3ml)を添加すると気体が発生する。その後、水酸化ナトリウム水溶液(15%,3.3ml)を添加するとさらに気体が発生し、最後に水(10ml)を添加する。該混合物をろ過し、ろ過ケーキをTHF(100ml)で洗浄する。ろ液をロータリーエバポレータで濃縮する(0.3気圧および水浴において60℃)。残渣をTHF(200ml)に溶解させ、硫酸ナトリウムで乾燥し、その後混合物をろ過して、ろ液をロータリーエバポレータで濃縮する(0.2気圧および水浴において60℃)ことにより6.4グラムの表題化合物を得る。NMRは構造と一致し、物質はいくらかのTHFを含む。
【0150】
(実施例16 化合物VIからのトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジニウム(I)フマル酸水素塩の合成)
実施例5に記載される方法を用いて、シス−(1S,3S)−3,5−ジクロロ−1−フェニルインダン(LG=ClであるVI)(17.8グラム)を、蒸留した1,2,2−トリメチルピペラジン(VIII)(8.7グラム)と結合させる。6%のシス異性体を含む遊離アミンの未精製生成物(15.7グラム)を、実施例6における方法を用いてフマル酸水素塩を形成させるために使用する。15.7グラムの表題化合物を得る;NMRは構造と一致し、シス異性体は観察されない。
【0151】
<ベータ型結晶である化合物Iコハク酸水素塩の合成>
(実施例17 トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジニウム(I)コハク酸水素塩,ベータ型の合成)
化合物Iコハク酸水素塩(50mg)を水(1ml)に懸濁し、3日間平衡化させる。不溶物質をろ過により除去する。化合物Iコハク酸水素塩のベータ型が溶剤の自然留去の間に生成する。前記ベータ体は溶剤を完全に留去した後に、XRPDおよびDSCにより解析する。
【0152】
解析結果:示唆走査熱量測定(DSC)は135.6℃の開始温度およびベータ型に対応する137.5℃におけるピークを有する吸熱を示す。XRPDはベータ型と一致する。
【0153】
<塩の特性評価>
(実施例18 式(I)の化合物の塩の溶解度)
塩の水における溶解度を、過剰量(50mg)の塩を2mlの水に添加することにより測定した。懸濁液を少なくとも24時間回転子で混合(rotarmix)し、その後pHを測定して、濃度をHPLCにより測定した。固体の沈殿物を単離し、実験室に置くことにより乾燥させた。結果を表1にまとめた。
【0154】
表1:室温での塩の水における溶解度
【0155】
【表2】

【0156】
(実施例19 式(I)の化合物の塩の安定性)
塩の安定性を以下の環境下で調べた。
【0157】
熱,60℃/80%RH:サンプルを60℃、80%RHで1週間保管した。その後それらを溶解し、HPLCにより解析した。
【0158】
熱,90℃:サンプル(〜10mg)を水を1滴含む密閉した容器において90℃で保管した。その後それらを溶解し、HPLCにより解析した。
【0159】
光:サンプルを250w/mの光キャビネット(light cabinet)内に24時間置いた。その後それらを溶解し、HPLCにより解析した。
【0160】
前記物質または酸に対応するピーク以外のクロマトグラムにおけるピークの面積をまとめた。本発明のコハク酸塩は分解を全く示さない。
【0161】
【表3】

【0162】
(実施例20 式(I)の化合物の塩の吸湿性)
前記フマル酸塩、コハク酸塩(アルファ型)およびマロン酸塩の吸湿性を動的水蒸気吸着量(DVS)により調べた。前記フマル酸塩およびコハク酸塩は非吸湿性であることがわかった。前記マロン酸塩は相対湿度が95%に上昇すると、1%まで徐々に水を吸収したが、ヒステリシスはなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン]
の化合物のコハク酸塩またはマロン酸塩。
【請求項2】
式(I)の化合物のコハク酸水素塩である、請求項1記載のコハク酸塩。
【請求項3】
請求項1記載の化合物Iの結晶質コハク酸水素塩。
【請求項4】
結晶形アルファである、請求項3記載の塩。
【請求項5】
結晶形が図1のディフラクトグラムと一致する粉末X線ディフラクトグラムによって特徴付けられる、請求項3または4のいずれか1つに記載の塩。
【請求項6】
結晶形が、CuKα1線(λ=1.5406Å)を用いて得られ、以下の2θ角:9.36;10.23;11.81;13.45;16.21;16.57;17.49;18.89;19.20;19.63;20.01;20.30;21.15;21.53;21.93;22.34;24.37;25.34;27.27;29.65にピークを示す粉末X線ディフラクトグラムによって特徴付けられる、請求項3〜5のいずれか1つに記載の塩。
【請求項7】
結晶形が約139〜141℃で開始する吸熱を示すDSCトレースを有することによって特徴付けられる、請求項3〜6のいずれか1つに記載の塩。
【請求項8】
式(I)の化合物のマロン酸水素塩である、請求項1記載のマロン酸塩。
【請求項9】
請求項1記載の化合物Iの結晶質マロン酸水素塩。
【請求項10】
結晶形が図3に示される粉末X線ディフラクトグラムによって特徴付けられる、請求項9記載の結晶質塩。
【請求項11】
結晶形が、CuKα1線(λ=1.5406Å)を用いて得られ、以下の2θ角:8.3;10.6;11.5;12.8;14.2;14.5;14.7;15.8;16.5;17.4;17.6;18.0;18.6;19.2;21.2;22.0;22.9;23.7;24.7;28.8にピークを示す粉末X線ディフラクトグラムによって特徴付けられる、請求項9または10のいずれか1つに記載の結晶質塩。
【請求項12】
少なくとも1種の薬学的に許容されるキャリアー、充填剤または希釈剤と一緒に請求項1〜11のいずれか1つに記載の塩を含む医薬調合物。
【請求項13】
薬剤として使用するための請求項1〜11のいずれか1つに記載の塩。
【請求項14】
精神病の症状、不安障害、うつ病を含む情動障害、睡眠障害、片頭痛、神経遮断薬によって引き起こされる振せん麻痺、または乱用障害、例えばコカイン乱用、ニコチン乱用またはアルコール乱用を含む疾患からなる群から選択される疾患治療用の医薬の製造において、請求項1〜11のいずれか1つに記載の塩を使用する方法。
【請求項15】
統合失調症またはその他の精神病性障害治療用の医薬の製造において、請求項1〜11のいずれか1つに記載の塩を使用する方法。
【請求項16】
統合失調症、分裂病様障害、統合失調性感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病障害および双極性障害における躁病からなる群から選択される疾患治療用の医薬の製造において、請求項1〜11のいずれか1つに記載の塩を使用する方法。
【請求項17】
統合失調症の陽性症状、陰性症状および抑うつ症状のうちの1つまたはそれ以上を治療するための医薬の製造において、請求項1〜11のいずれか1つに記載の塩を使用する方法。
【請求項18】
4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(式I)またはその塩を製造する方法であって、この方法が、シス構造にある式Vaの化合物を、式Iの化合物に変換することを含み、式IおよびVaが以下の式:
【化2】

で表される、前記製造方法。
【請求項19】
式Vaのシス−アルコールのアルコール基を適当な脱離基LGに変換することを含み、その結果として式VI
【化3】

で表される化合物が得られる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
LGがハロゲン、例えばClまたはBr、好ましくはCl、またはスルホネートである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
化合物VIを適当な溶剤から沈殿させる、請求項19または20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
LGがハロゲン、好ましくはClであり、前記溶剤がアルカン、例えばヘプタンである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
化合物VIを2,2−ジメチルピペラジンと反応させることにより、式VII
【化4】

で表される化合物が得られる、請求項19〜22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
第2級アミンにおけるメチル化により式Iの化合物の遊離塩基を得ることを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
式VIIの化合物を適当な塩、例えば有機二塩基酸のような有機酸の塩として沈殿させる、請求項23または24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
生成する塩が化合物VIIのフマル酸水素塩またはマレイン酸水素塩である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
化合物VIを1,2,2−トリメチルピペラジン(式VIII)
【化5】

と反応させることにより式(I)の化合物の遊離塩基が得られる、請求項19〜22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
化合物VIをPGが保護基である1位が保護された2,2−ジメチルピペラジン(IX)と反応させ、それによって式Xの化合物を得ること;および化合物Xの脱保護により化合物VIIを得るか、または化合物Xを直接化合物Iに変換することを含み、化合物IXおよびXが以下の式:
【化6】

で表される、請求項20〜24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
前記保護基PGがフェニルメトキシカルボニル、tert−ブチルオキシカルボニル、エトキシカルボニルおよびベンジルからなる群から選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
式VIaの化合物(すなわちLGがClである化合物VI)を2,2−ジメチルピペラジンと反応させ、それによって式VIIの化合物を得て、引き続き第2級アミンにおいてメチル化することを含む、式Iの化合物またはその塩を製造する方法。
【請求項31】
式VIa
【化7】

で表される化合物(すなわちLGがClである化合物VI)の塩基の存在下における2,2−ジメチルピペラジンとの反応、それに続くホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサンまたはジエトキシメタンのような適当な試薬を用いる還元的アミノ化、それに続く式Iの化合物の遊離塩基としての、またはその塩としての単離を含む、式Iの化合物を製造する方法。
【請求項32】
4−((1R,3S)−(6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(式I)またはその塩を製造する方法であって、この方法が式VIIの化合物の式Iの化合物への変換を含み、式VIIが請求項23において定義される、前記製造方法。
【請求項33】
所望でないシスジアステレオ異性体を除去するために、式(I)の化合物を適当な塩、例えば有機二塩基酸のような有機酸の塩として沈殿させる、請求項18〜32のいずれか1つに記載の方法。
【請求項34】
生成する塩が化合物Iのフマル酸水素塩である、請求項34記載の方法。
【請求項35】
請求項1〜7記載のコハク酸塩を製造することを含む、請求項18〜34のいずれか1つに記載の方法。
【請求項36】
化合物Iのコハク酸水素塩がケトン溶剤、好ましくはアセトン、例えばアセトン水溶液中で製造される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
請求項1または請求項8〜11のいずれか1つに記載のマロン酸塩を製造することを含む、請求項18〜34のいずれか1つに記載の方法。
【請求項38】
化合物Iのマロン酸水素塩がアルコール溶剤、例えば2−プロパノール中で製造される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
式(I)の化合物の遊離塩基を請求項1〜14のいずれか1つに記載の塩に変換することを含む、請求項18〜38のいずれか1つに記載の方法。
【請求項40】
得られる式(I)の塩基が最初にそのフマル酸塩として単離され、場合により1回またはそれ以上再結晶化され、その後に前記フマル酸塩が式(I)の化合物の遊離塩基を遊離するために塩基で処理されて、その後にそのコハク酸塩またはマロン酸塩に変換される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
引き続いて、式Iの化合物を遊離塩基として、またはその塩として、例えば、請求項1〜7のいずれか1つに記載のコハク酸塩として、または請求項8〜11のいずれか1つに記載のマロン酸塩として単離する、請求項18〜39のいずれか1つに記載の方法。
【請求項42】
以下の構造:
【化8】

を有する化合物(Va)。
【請求項43】
LGが例えば、ハロゲン、例えばBrまたはCl、好ましくはCl、またはスルホネートからなる群から選択される、潜在的な脱離基である、以下の構造:
【化9】

を有する化合物(VI)。
【請求項44】
以下のような構造:
【化10】

を有する化合物(VII)またはその塩。
【請求項45】
化合物が実質的に純粋である、請求項42〜44のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項46】
化合物Vaが化合物Vの酵素的分割によって得られる、請求項18〜31または請求項33〜41のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−201924(P2011−201924A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−154382(P2011−154382)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【分割の表示】特願2006−523528(P2006−523528)の分割
【原出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】