説明

トランスノルセルトラリンの製剤、塩、及び多形体、並びにその使用

トランスノルセルトラリンを含む医薬組成物、トランスノルセルトラリンの塩及び多形形態、前記組成物を製造する方法、並びに鬱病をはじめとするCNS疾患の治療のためのその使用方法を本明細書で提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年12月4日に出願された米国仮特許出願第61/266,864号の恩典を主張するものであり、この文献の全体は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(1.分野)
トランスノルセルトラリンを含む医薬組成物、トランスノルセルトラリンの塩及び多形形態、該組成物を作製する方法、並びに鬱病をはじめとするCNS疾患の治療のためのその使用方法を本明細書で提供する。
【背景技術】
【0003】
(2.背景)
(2.1 トランスノルセルトラリン)
トランスノルセルトラリン、すなわち、(1R,4S)-トランス-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2-3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンアミン及び(1S,4R)-トランス-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2-3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンアミンは、例えば、米国特許第7,087,785 B2号(「‘785号特許」;その全体が引用により本明細書に組み込まれる)に記載されており、それぞれ、以下の化学構造を有する。
【化1】

【0004】
情動障害及び他の様々なCNS障害の治療、予防、又は管理におけるトランスノルセルトラリンの使用も‘785号特許に開示されている。そのような疾患としては、鬱病、気分障害、不安障害、行動障害、摂食障害、薬物濫用障害、及び性機能障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0005】
(2.2 塩及び多形形態)
結晶性であるか又は非晶質であるかを問わず、医薬化合物の潜在的な固体形態は、単一成分固体及び多成分固体を含む。単一成分固体は、他の化合物の非存在下の医薬化合物から本質的になる。単一成分結晶物質間の多様性は、例えば、多形の現象から潜在的に生じる可能性があり、その場合、多数の3次元配置が特定の医薬化合物について存在する(例えば、S. R. Byrnらの文献、Solid State Chemistry of Drugs,(1999) SSCI, West Lafayetteを参照されたい)。
【0006】
化合物の塩、結晶形態、例えば、多形形態などの固体形態は、医薬分野において、例えば、化合物の溶解性、安定性、流動性、フラクタビリティ(fractability)、及び圧縮性、並びに化合物に基づく薬物製品の安全性及び効力に影響を及ぼすことが知られている(例えば、Knapman, K.の文献Modern Drug Discoveries, 2000:53を参照されたい)。
【0007】
多形体を研究する重要性は、軟ゼラチンカプセルとして調剤されたHIVプロテアーゼ阻害剤であるリトナビルの症例で強調された。この製品が発売されてから約2年後、製剤中の新たな、溶解しにくい多形体の予期せぬ沈殿のために、より一貫性のある製剤を開発することができるまで、市場からのこの製品の撤退が余儀なくされた(例えば、S. R. Chemburkarらの文献、Org. Process Res. Dev.,(2000) 4:413-417を参照されたい)。このように、固体形態の調製は、安全で、効果的で、安定で、かつ市場性のある医薬化合物の開発において非常に重要である。
【0008】
トランスノルセルトラリンの新しい塩及び多形形態は、CNS疾患の治療、予防、又は管理のための製剤の開発をさらに改良することができる。
【0009】
(2.3 神経障害の治療)
セロトニン、すなわち5-HTは、様々なCNS障害の治療において重要な役割を果たすことが知られている。とりわけ、5-HT1A(セロトニン1A)受容体は、脳内の5-HT放出を制御する重要な機構を提供する。これらの受容体は、縫線核では前シナプスに位置し、そこで自己受容体として機能して5-HTニューロンの発火率を抑制する。5-HT1A受容体は、皮質辺縁系領域では後シナプスにも位置し、そこでやはり5-HTニューロンの発火活性を低下させる。選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)又はセロトニンノルエピネフリン再取込み阻害剤(SNRI)による治療の開始時に、5-HT1A自己受容体は5-HTにより活性化され、5-HTニューロン発火の低下をもたらす。しかしながら、SSRI又はSNRI治療が続くにつれ、5-HT1A自己受容体は脱感作されるようになり、発火活性が回復する。この適応的な変化は、少なくとも部分的に、様々な神経障害の治療におけるSSRI及びSNRIの効力の遅れの一因となると考えられている。
【0010】
したがって、5-HT受容体の脱感作を最小限に抑えることができ、かつ5-HTニューロン発火の増加を維持することができる、様々な神経障害の治療、予防、又は管理の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(3.概要)
トランスノルセルトラリンを含む医薬組成物、トランスノルセルトラリンの塩及び多形形態、該塩及び多形形態を含む組成物を作製する方法、並びに鬱病をはじめとするCNS疾患の治療のためのその使用方法を本明細書で提供する。
【0012】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物の安定医薬組成物及び/又は製剤を本明細書で提供する。
【0013】
別の実施態様では、塩酸塩、酢酸塩、L-リンゴ酸塩、ベシル酸塩、安息香酸塩、トシル酸塩、フマル酸塩、臭化水素酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、L-酒石酸塩、D-酒石酸塩、S-マンデル酸塩、及びピログルタミン酸塩からなる群から選択されるトランスノルセルトラリンの塩を本明細書で提供する。
【0014】
一実施態様では、塩は塩酸塩である。一実施態様では、トランスノルセルトラリンの塩酸塩は固体無水物である。別の実施態様では、トランスノルセルトラリンの塩酸塩は、一水和物として存在する。
【0015】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン塩酸塩は、(1R,4S)-トランスノルセルトラリン塩酸塩、すなわち、(1R,4S)-トランス-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンアミン塩酸塩である。別の実施態様では、トランスノルセルトラリン塩酸塩は、(1S,4R)-トランスノルセルトラリン塩酸塩、すなわち、(1S,4R)-トランス-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンアミン塩酸塩である。
【0016】
対象(例えば、患者)に本明細書で開示されているようなトランスノルセルトラリンの製剤、塩又は多形体を投与することを含む、神経障害を治療、予防、又は管理する方法も本明細書で提供する。本明細書に記載された方法により治療、予防、又は管理し得る神経障害は、本明細書の別の場所で詳細に記載されている。
【0017】
いくつかの実施態様では、トランスノルセルトラリンの製剤、塩、又は多形体を、1以上のさらなる治療剤、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、もしくは立体異性体と組み合わせて投与する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
(4.図面の簡単な説明)
【図1A】トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の晶癖を示す。
【図1B】トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物の晶癖を示す。
【図2】トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の計算上のXRPDパターンを示す。
【図3】トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の実験によるXRPDパターンを示す。
【図4】トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物のORTEP図を示す。
【図5】トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物の計算上のXRPDパターンを示す。
【図6】トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物の実験によるXRPDパターンを示す。
【図7】トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物のORTEP図を示す。
【図8】実施例6.27のトランスノルセルトラリン塩酸塩1mg錠の典型的なHPLCクロマトグラムである。
【図9】実施例6.31の安定性試験から得たHPLCクロマトグラムの重ね合わせである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(5.詳細な説明)
トランスノルセルトラリンを含む医薬組成物、トランスノルセルトラリンの塩及び多形形態、該塩及び多形形態を含む組成物を作製する方法、並びに鬱病をはじめとするCNS疾患の治療のためのその使用方法を本明細書で提供する。
【0020】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物の安定医薬組成物及び/又は製剤を本明細書で提供する。
【0021】
一実施態様では、トランスノルセルトラリンの安定医薬組成物及び/又は製剤は、約3重量%未満の式(II)の化合物を含む。
【化2】

【0022】
別の実施態様では、トランスノルセルトラリンの安定医薬組成物及び/又は製剤は、約1.5重量%未満又は約1重量%未満の式(II)の化合物を含む。
【0023】
別の実施態様では、トランスノルセルトラリンの安定医薬組成物及び/又は製剤は、約4重量%未満の式(III)の化合物を含む。
【化3】

【0024】
別の実施態様では、トランスノルセルトラリンの安定医薬組成物及び/又は製剤は、約2重量%未満又は約1重量%未満の式(III)の化合物を含む。
【0025】
別の実施態様では、トランスノルセルトラリンの安定医薬組成物及び/又は製剤は、約3重量%未満の式(II)の化合物及び約4重量%未満の式(III)の化合物を含む。
【0026】
別の実施態様では、トランスノルセルトラリンの安定医薬組成物及び/又は製剤は、約1.5重量%未満の式(II)の化合物及び約2重量%未満の式(III)の化合物を含む。
【0027】
別の実施態様では、トランスノルセルトラリンの安定医薬組成物及び/又は製剤は、各々約1重量%未満の式(II)及び(III)の化合物を含む。
【0028】
特定の実施態様では、任意の特定の理論に束縛されるものではないが、式(II)の化合物は、マンノースの存在下、医薬剤形(例えば、錠剤)中でトランスノルセルトラリン(transnorsertaline)の分解により形成されるトランスノルセルトラリンの付加物であると考えられる。
【0029】
特定の実施態様では、任意の特定の理論に束縛されるものではないが、式(III)の化合物は、第二リン酸カルシウム(例えば、A-TAB)の存在下、医薬剤形(例えば、錠剤)中でトランスノルセルトラリンの分解により形成されるトランスノルセルトラリン(transnorsertaline)の酸化的分解生成物であると考えられる。
【0030】
一実施態様では、本明細書で提供される安定医薬組成物は、即時放出剤形である。
【0031】
別の実施態様では、本明細書で提供される安定医薬組成物は、制御放出剤形である。
【0032】
一実施態様では、医薬組成物は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物、及びマンニトール、キシリトール、又はそれらの組合せを含む。一実施態様では、医薬組成物は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物、及び少なくとも約5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、85重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、又は98重量%のマンニトール又はキシリトールを含む。
【0033】
別の実施態様では、医薬組成物は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物、及びマンニトールを含む。一実施態様では、医薬組成物は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物、及び少なくとも約5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、85重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、又は98重量%のマンニトールを含む。
【0034】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物、及びマンニトールを含む安定医薬組成物を本明細書で提供し、ここで、該安定医薬組成物は、マンニトール100mg当たり約1μg〜約100μg未満のマンノースを含有する。別の実施態様では、該安定医薬組成物は、マンニトール100mg当たり約10μg〜約100μg未満のマンノースを含有する。別の実施態様では、該安定医薬組成物は、マンニトール100mg当たり約1μg〜約50μg未満のマンノースを含有する。別の実施態様では、該安定医薬組成物は、マンニトール100mg当たり約1μg〜約20μg未満のマンノースを含有する。別の実施態様では、該安定医薬組成物は、マンニトール100mg当たり約10μg未満又は約5μg未満のマンノースを含有する。
【0035】
一実施態様では、少なくとも約5〜約30週間安定である医薬組成物を本明細書で提供する。別の実施態様では、該組成物は、約20℃〜約50℃の温度で、少なくとも約5〜約30週間安定である。別の実施態様では、該組成物は、約20℃〜約50℃の温度、約35%〜約85%の相対湿度で、少なくとも約5〜約30週間安定である。
【0036】
別の実施態様では、医薬組成物がマンニトールを含む場合、該組成物中の賦形剤の組合せは、活性成分がないとき、密封包装中、約20℃〜約50℃の温度、及び約35%〜約85%の相対湿度での、約5〜約30週間の貯蔵により、マンニトールの重量に対して約0.05%未満のマンノースを含有又は生成する。別の実施態様では、貯蔵は約24週間である。別の実施態様では、温度は約30℃である。別の実施態様では、温度は約40℃である。別の実施態様では、相対湿度は約65℃である。別の実施態様では、相対湿度は約75℃である。別の実施態様では、医薬組成物は、マンニトールの重量に対して約0.02%未満のマンノース;又は約0.01%未満のマンノースを含有又は生成する。
【0037】
一実施態様では、医薬組成物は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、又はステアリン酸をさらに含む。一実施態様では、医薬組成物は、少なくとも0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%、0.75重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、3重量%、又は5重量%のステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、又はステアリン酸をさらに含む。
【0038】
一実施態様では、医薬組成物は、タルク、カオリン、又はベントナイトをさらに含む。一実施態様では、医薬組成物は、少なくとも0.5重量%、1重量%、2重量%、3重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、30重量%、又は40重量%のタルク、カオリン、又はベントナイトをさらに含む。
【0039】
別の実施態様では、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物、マンニトール、ステアリン酸マグネシウム、タルク、及びデンプングリコール酸ナトリウムを含む医薬組成物を本明細書で提供する。
【0040】
別の実施態様では、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物、10〜98重量%のマンニトール、ステアリン酸マグネシウム、タルク、及びデンプングリコール酸ナトリウムを含む医薬組成物を本明細書で提供する。
【0041】
別の実施態様では、医薬組成物は、50〜98重量%のマンニトールを含む。
別の実施態様では、医薬組成物は、80〜98重量%のマンニトールを含む。
別の実施態様では、医薬組成物は、85〜98重量%のマンニトールを含む。
別の実施態様では、医薬組成物は、86〜98重量%のマンニトールを含む。
【0042】
一実施態様では、医薬組成物は、カプセルシェル中にトランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物、マンニトール、タルク、デンプングリコール酸ナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを含むカプセルである。該カプセルは、0.5、1.0、又は2.0mg強度のトランスノルセルトラリンで調製することができる。該カプセルは、100、150、200、又は300mgの充填重量のカプセルとして調製することができる。
【0043】
別の実施態様では、医薬組成物は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物、マンニトール、タルク、デンプングリコール酸ナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを含む錠剤である。該錠剤は、コーティングされていても、コーティングされていなくてもよい。該錠剤は、0.5、1.0、又は2.0mg強度のトランスノルセルトラリンにして調製することができる。該錠剤は、100、150、200、又は300mgの重量の錠剤として調製することができる。
【0044】
特定の実施態様では、本明細書で提供される組成物の調製で用いられるマンニトールは、Pearlitol 160Cである。
【0045】
特定の実施態様では、本明細書で提供される組成物の調製で用いられるデンプングリコール酸ナトリウムは、Primojelである。
【0046】
本明細書で提供されるトランスノルセルトラリン製剤中での使用に対する賦形剤又は賦形剤の組合せの適合性を決定する方法も本明細書で提供する。一実施態様では、該方法は、本明細書で提供されるマンニトール又はマンニトール含有製剤の試料中のマンノースのレベルの決定を含み、ここで、マンニトール中の約0.1重量%以下のマンノースのレベルは、安定なトランスノルセルトラリン製剤中での使用に好適であることを示す。
【0047】
別の実施態様では、マンニトール中の約0.05重量%以下のマンノースのレベルは、安定なトランスノルセルトラリン製剤中での使用に対する適合性を示す。
別の実施態様では、マンニトール中の約0.02重量%以下のマンノースのレベルは、安定なトランスノルセルトラリン製剤中での使用に対する適合性を示す。
別の実施態様では、マンニトール中の約0.01重量%以下のマンノースのレベルは、安定なトランスノルセルトラリン製剤中での使用に対する適合性を示す。
【0048】
一実施態様では、本明細書で提供されるマンニトール又はマンニトール含有製剤中のマンノースのレベルを決定する方法は、HPLC(高圧液体クロマトグラフィー)機器の使用を含む。別の実施態様では、該HPLC機器は、コロナ荷電化エアゾール検出器を含む。
【0049】
別の実施態様では、本明細書で提供されるマンニトール又はマンニトール含有製剤中のマンノースのレベルを決定する方法は、イオンクロマトグラフィー(IC)の使用を含む。
【0050】
塩酸塩、酢酸塩、L-リンゴ酸塩、ベシル酸塩、安息香酸塩、トシル酸塩、フマル酸塩、臭化水素酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、L-酒石酸塩、D-酒石酸塩、S-マンデル酸塩、及びピログルタミン酸塩からなる群から選択されるトランスノルセルトラリンの塩も本明細書で提供する。
【0051】
一実施態様では、塩は塩酸塩である。一実施態様では、トランスノルセルトラリンの塩酸塩は、固体無水物である。別の実施態様では、トランスノルセルトラリンの塩酸塩は、一水和物として存在する。
【0052】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン塩酸塩は、(1R,4S)-トランスノルセルトラリン塩酸塩、すなわち、(1R,4S)-トランス-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンアミン塩酸塩である。別の実施態様では、トランスノルセルトラリン塩酸塩は、(1S,4R)-トランスノルセルトラリン塩酸塩、すなわち、(1S,4R)-トランス-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンアミン塩酸塩である。
【0053】
一実施態様では、トランスノルセルトラリンの塩酸塩は、本質的に水を含まない。
【0054】
一実施態様では、トランスノルセルトラリンの塩酸塩は、結晶性無水物である。
【0055】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン無水物の塩酸塩は、約14.9、17.8、19.2、23.3、24.6、及び25.2度の2θでのピークを含むX線粉末回折パターンを有する。別の実施態様では、トランスノルセルトラリン無水物の塩酸塩は、約5.0及び21.8度の2θでのピークをさらに含むX線粉末回折パターンを有する。
【0056】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン無水物の塩酸塩は、単結晶を用いて約173Kで収集したデータに基づく、約5.0、15.0、18.0、19.5、22.0、23.5、24.8、及び25.4度の2θでのピークを含む計算上のX線粉末回折パターンを有する。
【0057】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン無水物の塩酸塩は、以下の近似単位胞寸法を有する。
a=16.8Å、b=5.2Å、c=19.1Å、α=90.0°、β=113.1°、及びγ=90.0°
【0058】
別の実施態様では、トランスノルセルトラリン無水物の塩酸塩は、約173Kで測定したとき、以下の近似単位胞寸法を有する。
a=16.83Å、b=5.23Å、c=19.06Å、α=90.00°、β=113.10°、及びγ=90.00°。
【0059】
別の実施態様では、近似単位胞寸法は、以下の通りである。
a=16.834Å、b=5.226Å、c=19.059Å、α=90.00°、β=113.10°、及びγ=90.00°
【0060】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン無水物の塩酸塩は、空間群C2(no. 5)を有する。
【0061】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン無水物の塩酸塩は、4つのトランスノルセルトラリン塩酸塩(Z=4)を含有する単位胞を有する。
【0062】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン無水物の塩酸塩は、約1.4g cm-3の密度を有する。
【0063】
一実施態様では、トランスノルセルトラリンの塩酸塩は一水和物である。
【0064】
別の実施態様では、トランスノルセルトラリン一水和物の塩酸塩は結晶性である。
【0065】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン一水和物の塩酸塩は、約12.1、13.0、16.8、17.8、20.4、23.4、24.2、及び27.1度の2θでのピークを含むX線粉末回折パターンを有する。別の実施態様では、トランスノルセルトラリン一水和物の塩酸塩は、約20.9、21.1、及び26.2度の2θでのピークをさらに含むX線粉末回折パターンを有する。
【0066】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン一水和物の塩酸塩は、単結晶を用いて約150Kで収集したデータに基づく、約12.1、13.1、16.9、17.9、20.5、21.0、21.3、23.6、24.3、26.3、及び27.2度の2θでのピークを含む計算上のX線粉末回折パターンを有する。
【0067】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン一水和物の塩酸塩は、以下の近似単位胞寸法を有する。
a=7.3Å、b=7.6Å、c=15.3Å、α=90.0°、β=90.1°、及びγ=90.0°
【0068】
別の実施態様では、トランスノルセルトラリン一水和物の塩酸塩は、約150Kで測定したとき、以下の近似単位胞寸法を有する。
a=7.30Å、b=7.56Å、c=15.29Å、α=90.00°、β=90.09°及びγ=90.00°
【0069】
別の実施態様では、近似単位胞寸法は、以下の通りである。
a=7.296Å、b=7.557Å、c=15.287Å、α=90.00°、β=90.09°、及びγ=90.00°
【0070】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン一水和物の塩酸塩は、空間群P21(no. 4)を有する。
【0071】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン一水和物の塩酸塩は、2つのトランスノルセルトラリン塩酸塩(Z=2)を含有する単位胞を有する。
【0072】
一実施態様では、トランスノルセルトラリン一水和物の塩酸塩は、約1.4g cm-3の密度を有する。
【0073】
神経障害を治療、予防、又は管理する方法であって、治療的又は予防的有効量のトランスノルセルトラリン塩酸塩、又は医薬として許容し得るその溶媒和物もしくは立体異性体を患者に投与することを含む方法も本明細書で提供する。
【0074】
一実施態様では、神経障害を治療、予防、又は管理する方法であって、治療的又は予防的有効量のトランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、もしくは立体異性体を含む本明細書で提供される組成物を患者に投与することを含む方法を本明細書で提供する。
【0075】
一実施態様では、神経障害は、鬱病、認知障害、線維筋痛症、疼痛、睡眠関連疾患、慢性疲労症候群、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、レストレスレッグ症候群、統合失調症、不安神経症、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、季節性情動障害(SAD)、月経前不機嫌、閉経後の血管運動症状、神経変性疾患、躁状態、気分変調性障害、気分循環性障害、肥満、又は薬物濫用もしくは薬物依存症である。
【0076】
一実施態様では、本方法は、本明細書で提供される治療的又は予防的有効量のトランスノルセルトラリン組成物を補助療法として患者に投与することを含む。
【0077】
一実施態様では、本方法は、治療的又は予防的有効量の1種以上のさらなる活性剤を患者に投与することをさらに含む。
【0078】
(5.1 定義)
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」という用語は、疾患もしくは障害、又は該疾患もしくは障害と関連する1以上の症状の根絶又は改善を意味する。特定の実施態様では、該用語は、そのような疾患又は障害を有する対象への1種以上の予防剤又は治療剤の投与から生じる、疾患又は障害の拡大又は悪化を最小化することを意味する。いくつかの実施態様では、該用語は、他の追加の活性薬剤の有無にかかわらず、特定の疾患の症状の発症後の、本明細書で提供される化合物の投与を意味する。
【0079】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「予防する(prevent)」、「予防する(preventing)」、及び「予防(prevention)」という用語は、疾患もしくは障害、又はその1以上の症状の発症、再発、又は拡大の予防を意味する。特定の実施態様では、該用語は、他の追加の活性化合物の有無にかかわらず、症状の発症前の、特に本明細書で提供される疾患又は障害のリスクがある患者への、本明細書で提供される化合物による治療又は該化合物の投与を意味する。該用語は、特定の疾患の症状の阻害又は軽減を包含する。特に疾患の家族歴のある患者は、特定の実施態様における予防レジメンの候補である。さらに、症状再発の病歴を持つ患者も、予防の潜在的候補である。この点で、「予防」という用語は、「予防的治療」という用語と互換的に用いることができる。
【0080】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「管理する(manage)」、「管理する(managing)」、及び「管理(management)」という用語は、疾患もしくは障害、又はその1以上の症状の進行、拡大、又は悪化の予防又は緩徐化を意味する。多くの場合、予防剤及び/又は治療剤から対象が得る有利な効果は、該疾患又は障害の治癒をもたらさない。この点で、「管理」という用語は、該疾患の再発を予防又は最小化するための、特定の疾患に既に罹患している患者の治療を包含する。
【0081】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、化合物の「治療的有効量」は、疾患もしくは障害の治療もしくは管理において治療的利益を与えるのに十分な量、又は該疾患もしくは障害と関連する1以上の症状を遅延又は最小化するのに十分な量である。化合物の治療的有効量は、該疾患又は障害の治療又は管理において治療的利益を与える、単独又は他の療法と組み合わせた治療剤の量を意味する。「治療的有効量」という用語は、療法全体を改善する量、疾患もしくは障害の症状もしくは原因を低減もしくは回避する量、又は別の治療剤の治療効力を増強する量を包含することができる。
【0082】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、化合物の「予防的有効量」は、疾患もしくは障害を予防するか、又はその再発を予防するのに十分な量である。化合物の予防的有効量は、該疾患の予防において予防的利益を与える、単独又は他の薬剤と組み合わせた治療剤の量を意味する。「予防的有効量」という用語は、予防全体を改善する量、又は別の予防剤の予防効力を増強する量を包含することができる。
【0083】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「対象」という用語は、限定するものではないが、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどをはじめとする、哺乳動物などの動物を含むように本明細書で定義される。具体的な実施態様では、対象はヒトである。
【0084】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「安定」という用語は、容易には分解しない又は化学的組成もしくは物理的状態が変化しない化合物又は組成物を指す。本明細書で提供される安定組成物又は製剤は、通常の製造又は貯蔵条件下ではそれほど分解しない。
【0085】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「医薬として許容し得る塩」という用語は、無機酸及び有機酸を含む、医薬として許容し得る非毒性の酸から調製される塩を意味する。好適な非毒性の酸としては、限定するものではないが、酢酸、アルギン酸、アントラニル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、フロ酸、グルコン酸、グルタミン酸、グルコレン酸(glucorenic)、ガラクツロン酸、グリシド酸、臭化水素酸、塩化水素酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸(例えば、L-リンゴ酸)、マンデル酸(例えば、S-マンデル酸)、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、プロピオン酸、リン酸、ピログルタミン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、硫酸、酒石酸(例えば、L-酒石酸及びD-酒石酸)、p-トルエンスルホン酸などの、無機酸及び有機酸が挙げられる。
【0086】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「溶媒和物」という用語は、本明細書で提供される化合物又はその塩であって、非共有結合の分子間力により結合した化学量論的又は非化学量論的量の溶媒をさらに含むものを意味する。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物である。
【0087】
本明細書で使用されるときの、「固体形態(solid form)」、「固体形態(solid forms)」という用語、及び関連用語は、トランスノルセルトラリン又はその塩を含む物理的形態であって、液体又は気体状態にはないものを意味する。固体形態は、結晶性、非晶質、部分結晶性、及び/又は部分非晶質であることができる。
【0088】
物質、成分、又は生成物を説明するために使用されるときの、本明細書で使用される「結晶性」という用語及び関連用語は、X線回折で測定したときに、該物質、成分、又は生成物が実質的に結晶性であることを意味する。例えば、レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第18版、Mack Publishing, Easton PA, 173(1990);米国薬局方(The United States Pharmacopeia)、第23版、1843-1844(1995)を参照されたい。
【0089】
本明細書中の「結晶形態」という用語及び関連用語は、単一成分結晶形態及び多成分結晶形態を含み、かつ限定するものではないが、多形体、溶媒和物、水和物、共結晶、及び他の分子複合体、並びに塩、塩の溶媒和物、塩の水和物、塩の他の分子複合体、並びにそれらの多形体を含む、所与の物質を含む様々な結晶性変化を意味する。特定の実施態様では、物質の結晶形態は、非晶質形態及び/又は他の結晶形態を実質的に含んでいなくてもよい。他の実施態様では、物質の結晶形態は、重量及び/又はモルベースで、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、又は約50%の1種以上の非晶質形態及び/又は他の結晶形態を含有していてもよい。
【0090】
異なる結晶形態は、結晶格子中の分子もしくはイオンの配置もしくは構造の結果として、例えば、融解温度、融解熱、溶解度、溶解速度、及び/又は振動スペクトルなどの、異なる物理的特性を有することができる。結晶形態によって示される物理的特性の違いは、貯蔵安定性、圧縮性、及び密度(製剤及び製品の製造において重要である)、並びに溶解速度(バイオアベイラビリティにおける重要因子)などの薬学的パラメータに影響を及ぼす。安定性の違いは、化学反応性の変化(例えば、ある結晶形態から構成される場合に、別の結晶形態から構成される場合よりも剤形がより速やかに変色するような差次的酸化)、又は機械的変化(例えば、ある結晶形態が別の結晶形態に変換されると、錠剤は貯蔵中に崩壊する)、又は両方(例えば、ある結晶形態の錠剤は高い湿度でより崩壊しやすい)に起因することがある。溶解度/溶解の違いの結果として、極端な場合、結晶形態の遷移によって、効力が失われることもあるし、又は別の極端な場合、毒性が生じることもある。さらに、結晶形態の物理的特性は、処理する上で重要な場合がある;例えば、ある結晶形態は、溶媒和物を形成する可能性が高く、又は濾過及び洗浄して不純物を含まないようにすることが困難である場合がある(例えば、粒子の形状及び径分布が結晶形態間で異なる場合がある)。
【0091】
物質の結晶形態は、当技術分野で公知のいくつかの方法により得ることができる。そのような方法としては、融解再結晶化、融解冷却、溶媒再結晶化、限定空間内(例えば、ナノ細孔もしくはキャピラリー中など)での再結晶化、表面もしくは鋳型上(例えば、ポリマー上など)での再結晶化、添加物(例えば、共結晶対分子など)の存在下での再結晶化、脱溶媒和、脱水、急速な蒸発、急速な冷却、緩徐な冷却、蒸気拡散、昇華、破砕、溶媒滴破砕、マイクロ波誘導沈殿、超音波誘導沈殿、レーザー誘導沈殿、及び超臨界流体からの沈殿が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
結晶形態及び非晶質形態を特徴付けるための技術としては、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)、X線粉末回折法(XRPD)、単結晶X線回折法、振動分光法、例えば、赤外線(IR)及びラマン分光法、固体核磁気共鳴(NMR)分光法、光学顕微鏡法、ホットステージ光学顕微鏡法、走査電子顕微鏡法(SEM)、電子線結晶学、並びに定量分析、粒径分析(PSA)、表面積分析、溶解度試験、及び溶解試験が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
本明細書中の「多形体」、「多形形態」という用語、及び関連用語は、別の結晶形態と同じ分子(molecule)、分子(molecules)、及び/又はイオンからなる結晶形態を指す。本明細書で使用される「非晶質」、「非晶質形態」という用語、及び関連用語は、X線回折で決定したときに、問題になっている物質、成分、又は生成物が実質的に結晶性ではないことを意味する。特定の実施態様では、物質の非晶質形態は、他の非晶質形態及び/又は結晶形態を実質的に含んでいなくてもよい。他の実施態様では、物質の非晶質形態は、重量及び/又はモルベースで、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、又は約50%の1以上の他の非晶質形態及び/又は結晶形態を含有していてもよい。物質の非晶質形態は、当技術分野で公知のいくつかの方法により得ることができる。そのような方法としては、加熱、融解冷却、急速な融解冷却、溶媒蒸発、急速な溶媒蒸発、脱溶媒和、昇華、破砕、凍結破砕、及びフリーズドライが挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「約(about)」及び「約(approximately)」という用語は、組成物又は剤形の成分の用量、量、又は重量パーセントとの関連で使用されるとき、特定の用量、量、又は重量パーセントから得られる薬理学的効果と同等の薬理学的効果を提供することが当業者により認識される用量、量、又は重量パーセントを意味する。具体的に、この文脈で使用されるときの「約(about)」及び「約(approximately)」という用語は、特定の用量、量、又は重量パーセントの15%以内、より具体的には10%以内、より具体的には5%以内の用量、量、又は重量パーセントを想定している。
【0095】
本明細書で使用される場合、結晶格子中の水及び/又は溶媒を「本質的に含まない」結晶形態は、従来の固体分析技術、例えば、本明細書に記載の技術を用いて測定したときに、該結晶格子中の溶媒及び/又は水について、特定の実施態様では、約検出限界近くであり、他の実施態様では、約検出限界であり、また、他の実施態様では、約検出限界未満である分量の該結晶格子中の水及び/又は溶媒を有する。特定の実施態様では、結晶格子中の水及び/又は溶媒の分量を測定するために用いられる固体分析技術は、熱重量分析である。他の実施態様では、結晶格子中の水及び/又は溶媒の分量を測定するために用いられる固体分析技術は、カール・フィッシャー分析である。他の実施態様では、結晶格子中の水及び/又は溶媒を「本質的に含まない」結晶形態は、結晶形態の総重量の約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.9%未満、約0.8%未満、約0.7%未満、約0.6%未満、約0.5%未満、約0.4%未満、約0.3%未満、約0.2%未満、約0.1%未満、又は約0.01%未満である分量の水及び/又は溶媒を有する。
【0096】
本明細書で使用される場合、「純粋」である、すなわち、他の結晶形態又は非晶質形態を実質的に含まない結晶形態又は非晶質形態は、約10重量パーセント未満の1種以上の他の結晶形態又は非晶質形態、好ましくは約5重量パーセント未満の1種以上の他の結晶形態又は非晶質形態、より好ましくは約3重量パーセント未満の1種以上の他の結晶形態又は非晶質形態、最も好ましくは約1重量パーセント未満の1種以上の他の結晶形態又は非晶質形態を含有する。
【0097】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、化合物を「実質的に含まない」組成物は、該組成物が、約20重量パーセント未満、より好ましくは約10重量パーセント未満、さらにより好ましくは約5重量パーセント未満、及び最も好ましくは約3重量パーセント未満の化合物を含有することを意味する。
【0098】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「神経障害」という用語は、哺乳動物の中枢神経系又は末梢神経系の任意の疾病を意味する。「神経障害」という用語は、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、及び筋萎縮性側索硬化症)、神経精神病(例えば、統合失調症、及び全般性不安障害などの不安神経症)、並びに情動障害(例えば、鬱病及び注意欠陥障害)を含むが、これらに限定されない。例示的な神経障害には、MLS(小脳性運動失調症)、ハンチントン病、ダウン症候群、多発梗塞性認知症、てんかん発作重積状態(status epilecticus)、挫傷(例えば、脊髄損傷及び頭部損傷)、ウイルス感染誘発性神経変性(例えば、AIDS、脳症)、てんかん、良性健忘、非開放性頭部損傷、睡眠障害、鬱病、認知症、運動障害、精神病、アルコール依存症、心的外傷後ストレス障害などが含まれるが、これらに限定されない。「神経障害」には、該障害と関連する任意の疾病も含まれる。例えば、神経変性障害を治療する方法は、神経変性障害と関連する記憶喪失及び/又は認知喪失を治療する方法を含む。例示的な方法は、神経変性障害に特徴的なニューロン機能の喪失の治療又は予防も含む。「神経障害」には、少なくとも部分的にモノアミン(例えば、ノルエピネフリン)シグナル伝達経路に関与する任意の疾患又は疾病(例えば、心血管疾患)も含まれる。
【0099】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「情動障害」という用語は、鬱病、注意欠陥障害、多動性を伴う注意欠陥障害、双極状態性及び躁状態(例えば、双極性障害)などを含む。「注意欠陥障害(ADD)」及び「多動性を伴う注意欠陥障害(ADDH)」又は注意欠陥/多動性障害(ADHD)という用語は、「精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」、第4版、American Psychiatric Association(1997年)(DSM-IV(商標))に見られる認められた意味に準拠して本明細書で用いられる。
【0100】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「鬱病」という用語は、限定するものではないが、大鬱病性障害(MDD)、季節性情動障害(SAD)、及び気分変調症を含む、全ての形態の鬱病を含む。「大鬱病性障害」は、本明細書では、「単極性鬱」及び「大鬱病」と互換的に用いられる。「鬱病」には、全ての形態の疲労(例えば、慢性疲労症候群)及び認知障害などの、鬱病と関連することが多い任意の疾病も含まれ得る。
【0101】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「強迫性障害」、「薬物濫用」、「月経前症候群」、「不安神経症」、「摂食障害」、及び「偏頭痛」という用語は、当技術分野でのその認められた意味と一致した形で、本明細書で用いられる。例えば、DSM-IV(商標)を参照されたい。例えば、本明細書で使用される「摂食障害」という用語は、摂食を避ける異常な欲望、又は異常に大量の食品を消費する制御不可能な衝動を意味する。これらの障害は、患者の社会的な健康だけでなく、身体的な健康にも影響を及ぼす可能性がある。摂食障害の例としては、神経性無食欲症、過食症、及び気晴らし食いが挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「疼痛」という用語は、不快な感覚体験及び感情体験を意味する。本明細書で使用される「疼痛」という用語は、全ての範疇の疼痛を意味し、これには、刺激又は神経応答に関して記載される疼痛、例えば、体性痛(有害刺激に対する正常な神経応答)及び神経因性疼痛(明確な有害入力がないことが多い、損傷を受けた又は変化を受けた感覚経路の異常な応答);時間に関して分類される疼痛、例えば、慢性疼痛及び急性疼痛;例えば、軽度、中等度、又は重度のような、重症度に関して分類される疼痛;並びに疾患状態又は症候群の症状又は結果である疼痛、例えば、炎症性疼痛、癌性疼痛、AIDSの疼痛、関節症、偏頭痛、三叉神経痛、心臓虚血、及び糖尿病性末梢神経因性疼痛が含まれる。例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、「ハリソン内科学原理(Harrison's Principles of Internal Medicine)」、93〜98ページ(Wilsonら編、第12版、1991年);Williamsらの文献、J. Med. Chem. 42:1481-1485(1999)を参照されたい。「疼痛」は、混合病因による疼痛、二重機構疼痛、異痛症、カウザルギー、中枢性疼痛、知覚過敏、痛感過敏、感覚異常、及び痛覚過敏を含むことも意図される。さらに、「疼痛」という用語は、神経系の機能不全から生じる疼痛、すなわち、神経因性疼痛の臨床的特徴と、可能性のある一般的な病態生理学的機構とを併せ持つが、神経系の任意の部分における特定可能な病変によって引き起こされるのではない器質性疼痛状態を含む。
【0103】
本明細書で使用される「体性痛」という用語は、損傷又は病気、例えば、外傷、火傷、感染、炎症、又は癌などの疾患過程などの有害刺激に対する正常な神経応答を意味し、皮膚痛(例えば、皮膚、筋肉、又は関節に由来するもの)、及び内臓痛(例えば、臓器に由来するもの)の両方を含む。
【0104】
本明細書で使用される「神経因性疼痛」という用語は、神経系の傷害から生じる異質な神経学的状態の群を意味する。該用語は、末梢及び/又は中枢感覚経路の損傷又は機能不全、並びに神経系の機能不全から生じる疼痛も意味し、該疼痛は、明白な有害入力がなくても発生又は持続することが多い。これには、末梢性神経障害に関連する疼痛、及び中枢神経因性疼痛も含まれる。よく見られるタイプの末梢性神経因性疼痛としては、糖尿病性神経障害(糖尿病性末梢神経因性疼痛、又はDN、DPN、もしくはDPNPとも呼ばれる)、ヘルペス後神経痛(PHN)、及び三叉神経痛(TGN)が挙げられる。脳又は脊髄の傷害を含む中枢神経因性疼痛は、脳卒中、脊髄損傷後、及び多発性硬化症の結果として起こることがあり、これもまた、該用語に包含される。神経因性疼痛の定義に含まれることが意図される他のタイプの疼痛としては、神経因性癌性疼痛から生じる疼痛、HIV/AIDS誘発性疼痛、幻肢痛、及び複合性局所疼痛症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
該用語は、限定するものではないが、感覚喪失、異痛症(非有毒な刺激が生み出す疼痛)、痛覚過敏、及び痛感過敏(遅延性の知覚、加重、及び有痛性の残感覚)をはじめとする、神経因性疼痛の一般的な臨床的特徴も含む。疼痛は、例えば、機械的脊椎痛と神経根症又は脊髄症のように、侵害受容性タイプと神経因性タイプの組合せであることが多い。
【0106】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「急性疼痛」という用語は、典型的には侵襲性の処置、外傷、及び疾患と関連する有毒な化学的、熱的、又は機械的刺激に対する、正常な、予測される生理的応答を意味する。それは、通常、時限的であり、組織損傷の恐れがあり、かつ/又は組織損傷をもたらす刺激に対する適切な応答とみなすことができる。該用語は、短い期間又は突然の発症によって特徴付けられる疼痛も意味する。
【0107】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「慢性疼痛」という用語は、広範囲の障害、例えば、外傷、悪性腫瘍、及び関節リウマチなどの慢性炎症性疾患で起こる疼痛を包含する。慢性疼痛は、約6カ月よりも長く続くことがある。さらに、慢性疼痛の強度は、有毒刺激又は基礎過程の強度と不釣り合いであることがある。該用語は、慢性障害と関連する疼痛、又は基礎障害の消散もしくは損傷の治癒を過ぎても持続し、かつ多くの場合、該基礎過程から予測されるよりも強い疼痛も意味する。それは、頻繁に再発しやすい。
【0108】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「炎症性疼痛」という用語は、組織の損傷及びその結果として生じる炎症過程に応答した疼痛である。炎症性疼痛は、治癒を促進する生理的応答を誘発する点で適応性である。しかしながら、炎症は、ニューロン機能に影響を及ぼすこともある。COX2酵素により誘導されるPGE2、ブラジキニン、及び他の物質をはじめとする炎症メディエーターは、痛みを伝達するニューロン表面の受容体に結合してその機能を変え、その興奮性を高め、それにより痛覚を増大させる。慢性疼痛の多くが炎症成分を有する。該用語は、炎症又は免疫系障害の症状又は結果として生じる疼痛も意味する。
【0109】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「内臓痛」という用語は、内臓に位置する疼痛を意味する。
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「混合病因による疼痛」という用語は、炎症性成分と神経因性成分の両方を含む疼痛を意味する。
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「二重機構疼痛」という用語は、末梢性感作と中枢性感作の両方により増幅及び維持される疼痛を意味する。
【0110】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「カウザルギー」という用語は、外傷性神経損傷後の持続性の灼熱痛、異痛症、及び痛感過敏の症候群を意味し、血管運動機能不全及び発汗機能不全、並びに後に起こる栄養変化を併発することが多い。
【0111】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「中枢性疼痛」という用語は、中枢神経系の一次損傷又は機能不全によって引き起こされる疼痛を意味する。
【0112】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「知覚過敏」という用語は、特殊感覚を除き、刺激に対する感受性の増加を意味する。
【0113】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「痛感過敏」という用語は、刺激、特に反復性の刺激に対する異常な有痛性反応、及び閾値の上昇を特徴とする有痛症候群を意味する。それは、異痛症、知覚過敏、痛覚過敏、又は感覚異常とともに起こることがある。
【0114】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「感覚異常」という用語は、自発性か誘発性かを問わず、不快な異常感覚を意味する。特定の実施態様では、感覚異常には、痛覚過敏及び異痛症が含まれる。
【0115】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「痛覚過敏」という用語は、通常有痛性である刺激に対する増加した応答を意味する。それは、閾上刺激に対する増大した疼痛を反映する。
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「異痛症」という用語は、通常は疼痛を引き起こさない刺激による疼痛を意味する。
【0116】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、糖尿病性神経障害、DN、又は糖尿病性末梢神経障害とも呼ばれる「糖尿病性末梢神経因性疼痛(DPNP)」という用語は、糖尿病に関連する神経障害によって起こる慢性疼痛を意味する。DPNPの典型的な症状は、「灼熱痛」又は「電撃痛」としてだけでなく、重度のうずく痛みとしても説明することができる脚の疼痛又は刺痛である。稀にではあるが、患者は、該疼痛を、痒み、引き裂くような痛みとして、又は歯痛のように説明することがある。該疼痛は、異痛症及び痛覚過敏を伴うことがあり、しびれなどの症状がないこともある。
【0117】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「帯状疱疹後神経痛(PHN)」とも呼ばれる「ヘルペス後神経痛」という用語は、神経繊維及び皮膚を冒す有痛性の疾病を意味する。特定の理論に限定されるものではないが、それは帯状疱疹の合併症であり、最初に水痘を生じさせる水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の第2の発病である。
【0118】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「神経因性癌性疼痛」という用語は癌の結果としての末梢神経因性疼痛を意味し、腫瘍による神経の浸潤又は圧迫によって直接起こることも、放射線療法及び化学療法などの癌の治療によって間接的に起こる(化学療法誘発性神経障害)こともある。
【0119】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「HIV/AIDS末梢神経障害」又は「HIV/AIDS関連神経障害」という用語は、急性又は慢性の炎症性脱髄性神経障害(それぞれ、AIDP及びCIDP)などの、HIV/AIDSによって引き起こされる末梢神経障害、並びにHIV/AIDSの治療に用いられる薬剤の副作用として生じる末梢神経障害を意味する。
【0120】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「幻肢痛」という用語は、切断された肢のあった箇所から来るように感じられる疼痛を意味する。幻肢痛は、麻痺の後(例えば、脊髄損傷後)の肢に起こることもある。「幻肢痛」は、通常、慢性の性質である。
【0121】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「三叉神経痛(TN)」という用語は、神経の枝が分布している顔の部分(唇、目、鼻、頭皮、額、上顎、及び下顎)に、強い、刺すような電撃様の痛みの発現を引き起こす、第5脳神経(三叉神経)の障害を意味する。それは「自殺病」としても知られる。
【0122】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)としてかつて知られていた「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」という用語は、時間経過とともに好転することなく、むしろ悪化する、損傷の重症度と釣り合わない連続した強い痛みが主な症状である慢性疼痛状態を意味する。該用語は、末梢神経以外の組織損傷によって引き起こされる疾病を含む1型CRPS、及び主要神経損傷によって症状が誘発され、カウザルギーと呼ばれることもある2型CRPSを包含する。
【0123】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「線維筋痛症」という用語は、疲労及び様々な他の症状を伴う、びまん性又は特異的な筋肉、関節、又は骨の痛みを特徴とする慢性疾病を意味する。かつて、線維筋痛症は、線維炎、慢性筋肉痛症候群、心因性リウマチ、及び緊張性筋肉痛などの他の名前で知られていた。
【0124】
本明細書で使用される場合、他に特に規定がなければ、「痙攣」という用語は、神経障害の1つを意味し、「発作」と互換的に用いられるが、発作には多くの種類があり、そのいくつかは、痙攣でなく、軽微又は軽度の症状を有する。全種類の発作は、脳内での無秩序で突然の電気的活動によって起こり得る。いくつかの実施態様では、痙攣は、筋肉が収縮と緩和を繰り返す、急速で制御不可能な震えである。
【0125】
本明細書で提供される実施態様は、非限定的な実施態様を例示することが意図される、以下の詳細な説明及び例示的実施例を参照することによって、より完全に理解することができる。
【0126】
(5.2 医薬組成物)
一実施態様では、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物;及び医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含む、医薬組成物を本明細書で提供する。
【0127】
トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物の固体剤形は、対象及び患者に投与しやすくするために、並びに病院の外で製剤を投与しやすくするために望ましい。これらの剤形は、自動化装置で製造可能であり、かつ1年を超過することができる許容し得る化学的及び物理的安定性を有するべきである。これらのトランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物の固体剤形は、開発用途、臨床用途、及び商業用途に望ましい。
【0128】
トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物を含む多くの賦形剤混合物は、化学的に安定でない。例えば、Zoloft(登録商標)(セルトラリン)錠剤中に見られる賦形剤と組み合わせたトランスノルセルトラリン塩酸塩を含有する硬ゼラチンカプセルから、化学的安定性が乏しく、かつ特に複数の酸化生成物を含む製剤が得られた。これらの賦形剤は、第二リン酸カルシウム二水和物、微結晶性セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、及びこれらの錠剤のコーティング中にある可能性が高い他の賦形剤である。Zoloft(登録商標)(セルトラリン)については、医師用卓上参考書(Physician's Desk Reference)の項目を参照されたい。
【0129】
したがって、特定の実施態様では、本明細書で提供されるトランスノルセルトラリン組成物の安定性を改善するために、他の一般的なサッカリド賦形剤(例えば、ラクトース又はセルロース)ではなく、賦形剤のマンニトール又はキシリトールを用いることができる。マンニトール又はキシリトール以外のサッカリドの使用は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物の分解を促進する。
【0130】
いくつかの実施態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、10〜98重量%のマンニトール又はキシリトールを含む。他の実施態様では、本明細書で提供される医薬組成物中で用いられるさらなる賦形剤として、ステアリン酸マグネシウム、タルク、及びデンプングリコール酸ナトリウムを挙げることができる。ステアリン酸マグネシウム、タルク、及びデンプングリコール酸ナトリウムは、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物と適合性があることが分かっており、そのため、これらの賦形剤は、マンニトール及びキシリトールに加えて好ましい。
【0131】
トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物、及び上記の賦形剤を含む製剤は、以下のプロセスに従って調製することができる。
【0132】
トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物を含有するカプセル製剤用のブレンドは、まず、トランスノルセルトラリン塩酸塩をタルクとブレンドし;次に、この混合物を、等比級数的に希釈したマンニトールと混合するプロセスを用いて製造することができる。残りのマンニトール及びデンプングリコール酸ナトリウムを該混合物とブレンドし;最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0133】
該プロセスは、まず、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルクの一部+マンニトールとブレンドし;次に、この混合物をさらなるマンニトールとブレンドするように改変することができる。次に、残りのマンニトール及びデンプングリコール酸ナトリウムを該混合物とブレンドし;最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0134】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルクの一部+マンニトールとブレンドし;次に、この混合物をマンニトール+デンプングリコール酸ナトリウムの混合物とブレンドし;最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドすることによって実施することができる。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0135】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルク+マンニトール+デンプングリコール酸ナトリウムの混合物とブレンドし;次に、この混合物を残りの賦形剤(ステアリン酸マグネシウムを除く)とブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0136】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルク+デンプングリコール酸ナトリウムの混合物とブレンドし;次に、この混合物をマンニトールとブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0137】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルクとブレンドし;次に、この混合物をマンニトールとブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0138】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルク+マンニトールの混合物とブレンドし;次に、この混合物を残りのマンニトールとブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0139】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をマンニトールとブレンドし;次に、この混合物をタルク+マンニトールの混合物とブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0140】
該プロセスの別の改変は、上記のプロセスの各々において、ステアリン酸マグネシウムの一部をトランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物とブレンドすることによって実施することができる。最後に、残りのステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0141】
トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物を含有する錠剤製剤用のブレンドは、まず、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルクとブレンドし;次に、この混合物を、等比級数的に希釈したマンニトールと混合するプロセスを用いて製造することができる。次に、残りのマンニトール及びデンプングリコール酸ナトリウムを該混合物とブレンドし;最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0142】
非コーティング錠を製造するプロセスは、まず、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルクの一部+マンニトールとブレンドし;次に、この混合物をさらなるマンニトールとブレンドするように、改変することができる。次に、残りのマンニトール及びデンプングリコール酸ナトリウムを該混合物とブレンドし;最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0143】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルクの一部+マンニトールとブレンドし;次に、この混合物をマンニトール+デンプングリコール酸ナトリウムの混合物とブレンドし;最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドすることによって実施することができる。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0144】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルク+マンニトール+デンプングリコール酸ナトリウムの混合物とブレンドし;次に、この混合物を残りの賦形剤(ステアリン酸マグネシウムを除く)とブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0145】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルク+デンプングリコール酸ナトリウムの混合物とブレンドし;次に、この混合物をマンニトールとブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0146】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルクとブレンドし;次に、この混合物をマンニトールとブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0147】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルク+マンニトールの混合物とブレンドし;次に、この混合物を残りのマンニトールとブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0148】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をマンニトールとブレンドし;次に、この混合物をタルク+マンニトールの混合物とブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0149】
該プロセスの別の改変は、上記のプロセスの各々において、ステアリン酸マグネシウムの一部をトランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物とブレンドすることによって実施することができる。最後に、残りのステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドすることができる。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0150】
上記の錠剤の各々をコーティング錠として製造することもできる。該コーティングは、3つのタイプのうちの1つであることができ;これらには、圧縮コーティング、フィルムコーティング、又はゼラチンコーティングが含まれる。該コーティングは各々、着色剤を含んでいても、含んでいなくてもよく;これらの着色剤は、二酸化チタン、並びに/又は色素などの可溶性染料、並びに/又はレーキ及び/もしくは着色した酸化鉄などの不溶性染料であってもよい。
【0151】
カプセル又は錠剤形態中のトランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物の特定の製剤を以下に提供する。同様の又は様々なパーセンテージの賦形剤を用いて、カプセル又は錠剤用の他の重量の製剤を調製することもできる。
【0152】
300.0mgのカプセルは、1.125mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、2.875mgのタルク、275.0mgのPearlitol 160C(マンニトール)、18.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、3.0mgのステアリン酸マグネシウム、及びサイズ#1のSwedish Orangeカプセルシェル# 4188を用いて調製することができる。
【0153】
あるいは、300.0mgのカプセルは、Primojelなしで、1.125mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、2.875mgのタルク、293.0mgのPearlitol 160C(マンニトール)、3.0mgのステアリン酸マグネシウム、及びサイズ#1のSwedish Orangeカプセルシェル# 4188を用いて調製することができる。
【0154】
150.0mgのカプセルは、0.5625mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、137.5mgのPearlitol 160C(マンニトール)、9.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、1.5mgのステアリン酸マグネシウム、及びサイズ#1のSwedish Orangeカプセルシェル# 4188を用いて調製することができる。
【0155】
あるいは、150.0mgのカプセルは、Primojelなしで、0.5625mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、146.5mgのPearlitol 160C(マンニトール)、1.5mgのステアリン酸マグネシウム、及びサイズ#1のSwedish Orangeカプセルシェル# 4188を用いて調製することができる。
【0156】
300.0mgのカプセルは、2.25mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、4.75mgのタルク、272.0mgのPearlitol 160C(マンニトール)、18.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、3.0mgのステアリン酸マグネシウム、及びサイズ#1のSwedish Orangeカプセルシェル# 4188を用いて調製することもできる。
【0157】
あるいは、300.0mgのカプセルは、Primojelなしで、2.25mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、4.75mgのタルク、290.0mgのPearlitol 160C(マンニトール)、3.0mgのステアリン酸マグネシウム、及びサイズ#1のSwedish Orangeカプセルシェル# 4188を用いて調製することができる。
【0158】
様々なカプセルシェルサイズ中に0.5mg強度のトランスノルセルトラリンを有する100.0、150.0、及び200.0mgの充填重量のカプセルは、以下のように調製することができる。
【0159】
100.0mgのカプセルは、0.5625mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、91.0mgのマンニトール、6.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、1.0mgのステアリン酸マグネシウム、及びサイズ#4の硬ゼラチンカプセルシェルを用いて調製することができる。
【0160】
150.0mgのカプセルは、0.5625mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、137.5mgのマンニトール、9.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、1.5mgのステアリン酸マグネシウム、及びサイズ#3の硬ゼラチンカプセルシェルを用いて調製することができる。
【0161】
200.0mgのカプセルは、0.5625mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、184.0mgのマンニトール、12.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、2.0mgのステアリン酸マグネシウム、及びサイズ#2の硬ゼラチンカプセルシェルを用いて調製することができる。
【0162】
様々なカプセルシェルサイズ中に1.0mg強度のトランスノルセルトラリンを有する100.0、150.0、及び200.0mgの充填重量のカプセルは、以下のように調製することができる。
【0163】
100.0mgのカプセルは、1.125mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、90.44mgのマンニトール、6.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、1.0mgのステアリン酸マグネシウム、及びサイズ#4の硬ゼラチンカプセルシェルを用いて調製することができる。
【0164】
150.0mgのカプセルは、1.125mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、136.94mgのマンニトール、9.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、1.5mgのステアリン酸マグネシウム、及びサイズ#3の硬ゼラチンカプセルシェルを用いて調製することができる。
【0165】
200.0mgのカプセルは、1.125mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、183.44mgのマンニトール、12.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、2.0mgのステアリン酸マグネシウム、及びサイズ#2の硬ゼラチンカプセルシェルを用いて調製することができる。
【0166】
様々なカプセルシェルサイズ中に2.0mg強度のトランスノルセルトラリンを有する100.0、150.0、及び200.0mgの充填重量のカプセルは、以下のように調製することができる。
【0167】
100.0mgのカプセルは、2.25mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、4.75mgのタルク、86.0mgのマンニトール、6.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、1.0mgのステアリン酸マグネシウム、及びサイズ#4の硬ゼラチンカプセルシェルを用いて調製することができる。
【0168】
150.0mgのカプセルは、2.25mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、4.75mgのタルク、132.5mgのマンニトール、9.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、1.5mgのステアリン酸マグネシウム、及びサイズ#3の硬ゼラチンカプセルシェルを用いて調製することができる。
【0169】
200.0mgのカプセルは、2.25mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、4.75mgのタルク、179.0mgのマンニトール、12.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、2.0mgのステアリン酸マグネシウム、及びサイズ#2の硬ゼラチンカプセルシェルを用いて調製することができる。
【0170】
0.5mg強度のトランスノルセルトラリンを有する100.0、150.0、及び200.0mgの重量の錠剤は、以下のように調製することができる。
【0171】
100.0mgの錠剤は、0.5625mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、91.0mgのマンニトール、6.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、及び1.0mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製される。
【0172】
100.0mgの錠剤は、Primojelなしで、0.5625mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、97.0mgのマンニトール、及び1.0mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することもできる。
【0173】
150.0mgの錠剤は、0.5625mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、137.5mgのマンニトール、9.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、及び1.5mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することができる。
【0174】
150.0mgの錠剤は、Primojelなしで、0.5625mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、146.5mgのマンニトール、及び1.5mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することもできる。
【0175】
200.0mgの錠剤は、0.5625mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、184.0mgのマンニトール、12.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、及び2.0mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することができる。
【0176】
200.0mgの錠剤は、Primojelなしで、0.5625mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、196.0mgのマンニトール、及び2.0mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することもできる。
【0177】
1.0mg強度のトランスノルセルトラリンを有する100.0、150.0、及び200.0mgの重量の錠剤は、以下のように調製することができる。
【0178】
100.0mgの錠剤は、1.125mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、90.44mgのマンニトール、6.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、及び1.0mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することができる。
【0179】
100.0mgの錠剤は、Primojelなしで、1.125mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、96.44mgのマンニトール、及び1.0mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することもできる。
【0180】
150.0mgの錠剤は、1.125mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、136.94mgのマンニトール、9.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、及び1.5mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することができる。
【0181】
150.0mgの錠剤は、Primojelなしで、1.125mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、145.94mgのマンニトール、及び1.5mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することもできる。
【0182】
200.0mgの錠剤は、1.125mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、183.44mgのマンニトール、12.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、及び2.0mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することができる。
【0183】
200.0mgの錠剤は、Primojelなしで、1.125mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、1.4375mgのタルク、195.44mgのマンニトール、及び2.0mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することもできる。
【0184】
2.0mg強度のトランスノルセルトラリンを有する100.0、150.0、及び200.0mgの重量の錠剤は、以下のように調製することができる。
【0185】
100.0mgの錠剤は、2.25mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、4.75mgのタルク、86.0mgのマンニトール、6.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、及び1.0mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することができる。
【0186】
100.0mgの錠剤は、Primojelなしで、2.25mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、4.75mgのタルク、92.0mgのマンニトール、及び1.0mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することもできる。
【0187】
150.0mgの錠剤は、2.25mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、4.75mgのタルク、132.5mgのマンニトール、9.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、及び1.5mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することができる。
【0188】
150.0mgの錠剤は、Primojelなしで、2.25mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、4.75mgのタルク、141.5mgのマンニトール、及び1.5mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することもできる。
【0189】
200.0mgの錠剤は、2.25mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、4.75mgのタルク、179.0mgのマンニトール、12.0mgのPrimojel(デンプングリコール酸ナトリウム)、及び2.0mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することができる。
【0190】
200.0mgの錠剤は、Primojelなしで、2.25mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物、4.75mgのタルク、191.0mgのマンニトール、及び2.0mgのステアリン酸マグネシウムを用いて調製することもできる。
【0191】
他の重量のカプセル及び錠剤は、10%〜98%のマンニトール、0.1%〜5%のステアリン酸マグネシウム、0.5%〜40%のタルク、及び0%〜10%のデンプングリコール酸ナトリウムを用いて調製することができる。
【0192】
他の重量のカプセル及び錠剤は、5%〜99%のマンニトール、0.05%〜15%のステアリン酸マグネシウム、0%〜50%のタルク、及び0%〜40%のデンプングリコール酸ナトリウムを用いて調製することもできる。
【0193】
他の重量のカプセル及び錠剤は、5%〜99%のマンニトール、0%〜15%のステアリン酸マグネシウム、0.5%〜50%のタルク、及び0%〜40%のデンプングリコール酸ナトリウムを用いて調製することもできる。
【0194】
いくつかの実施態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、1種以上の他の活性剤を任意に含むことができる。好適な薬剤の例は、本明細書中の他の場所で提供される。
【0195】
特定の医薬組成物は、患者への経口、粘膜(例えば、鼻腔内、舌下、膣内、頬側、気管、気管支、もしくは直腸)、非経口(例えば、皮下、静脈内、ボーラス注入、筋肉内、もしくは動脈内)、又は経皮投与に好適な単一単位剤形である。剤形の例としては、錠剤;カプレット剤;軟弾性ゼラチンカプセルもしくは硬ゼラチンカプセルなどのカプセル剤;カシェ剤;トローチ剤;ロゼンジ剤;分散剤;坐剤;軟膏;パップ剤(湿布);ペースト剤;散剤;単位投薬バイアル(UDV)噴霧液剤;包帯剤;クリーム剤;膏薬;液剤;パッチ剤;エアゾール(例えば、鼻スプレー又は吸入器);ゲル剤;懸濁剤(例えば、水性又は非水性液体懸濁剤、水中油型乳剤、又は油中水型乳剤)、液剤、及びエリキシル剤;患者への非経口投与に好適な液体剤形;及び再構成して患者への非経口投与に好適な液体剤形を提供することができる滅菌固体(例えば、結晶性固体又は非晶質固体)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0196】
一実施態様では、剤形は経口剤形である。別の実施態様では、経口剤形は、カプセル剤、錠剤、又はシロップ剤である。別の実施態様では、剤形は非経口剤形である。
【0197】
製剤は、投与様式に適合すべきである。例えば、経口投与は、投与された化合物が消化管内で分解されないように保護する腸溶性コーティングを必要とすることがある。別の例では、化合物をリポソーム製剤で投与して、該化合物を分解酵素から遮蔽し、循環系での輸送を促進し、細胞膜を通した細胞内部位への送達をもたらすことができる。
【0198】
剤形の組成、形状、及び種類は、通常、その用途によって異なる。例えば、疾患の急性治療で用いられる剤形は、それが含む1種以上の活性成分を、同じ疾患の慢性治療で用いられる剤形よりも大量に含むことができる。同様に、非経口剤形は、それが含む1種以上の活性成分を、同じ疾患の治療に用いられる経口剤形よりも少量に含むことができる。具体的な剤形が互いに異なるこのような方法及び他の方法は、当業者には容易に明らかとなるであろう。例えば、「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、第18版、Mack Publishing, Easton PA(1990年)を参照されたい。
【0199】
本明細書で提供される医薬組成物の選択される投薬レベル及び投与頻度は、投与経路、投与の時間、治療剤の排泄速度、治療期間、患者に利用される他の薬物、化合物、及び/又は物質、治療される患者の年齢、性別、体重、疾病、全般的な健康、及び以前の病歴、並びに医学分野において周知の類似の因子をはじめとする、種々の因子によって決まる。例えば、投薬計画は、健常な成人と比べて、妊婦、授乳中の母親、及び子供では異なる可能性が高い。当該技術分野の通常の技量を有する医師は、要求される治療的有効量の医薬組成物を容易に決定し、処方することができる。
【0200】
本明細書で提供される医薬組成物は、医薬として許容し得る担体をさらに含むことができる。「医薬として許容し得る担体」という用語は、1種以上の医薬として許容し得る賦形剤を意味する。そのような賦形剤の例は当技術分野で周知であり、引用によりその全体が本明細書に組み込まれるUSP(XXI)/NF(XVI)に収載されており、限定するものではないが、結合剤、希釈剤、充填剤、崩壊剤、超崩壊剤、滑沢剤、界面活性剤、粘着防止剤、安定化剤などを含む。「添加剤」という用語は、本明細書で使用される「賦形剤」という用語と同義である。
【0201】
「医薬として許容し得る」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題もしくは合併症を伴わずに、ヒト及び動物に投与し、かつその組織及び体液に接触するように用いるのに好適であり、妥当な医学的に健全なベネフィット/リスク比に釣り合う、化合物、物質、組成物、及び/又は剤形を意味する。
【0202】
さらに、「医薬として許容し得る賦形剤」という用語は、所与の剤形の活性成分と賦形剤成分のいずれかとの間に、不都合な化学的又は物理的不適合性が全くないことを意味するために用いられる。例えば、不都合な化学反応は、本明細書で提供される方法及び組成物で用いられる化合物の効力が、1種以上の賦形剤の添加により有害に増加又は減少するものである。不都合な化学反応の別の例は、剤形が受け入れがたくなるほど、剤形の味が過度に甘くなる、酸っぱくなるなどのものである。各々の賦形剤は、製剤の他の成分と適合性があり、患者に有害でないという意味で、「許容し得る」ものでなくてはならない。
【0203】
物理的不適合性は、剤形の様々な成分とその任意の賦形剤(複数可)との間の不適合性を意味する。例えば、賦形剤(複数可)と活性成分(複数可)の組合せは、剤形(例えば、錠剤、トローチ剤など)の所望の形状、その安定性などを、望み通りの所定の投薬計画に従って剤形を投与することができるほど十分には維持することができない程度に、過度に吸湿性の混合物又は過度に分離された混合物を形成することがある。
【0204】
カプセルシェルを例外として、本明細書で提供される医薬組成物又は剤形で用いられる賦形剤は全て、好ましくは、USP/NFにおける医薬成分及びその組合せの基準を満たすか、又はそれを上回ることに留意する。USP/NFの目的は、医術の実施に用いられる材料及び物質及びその調製物に対して当局の基準及び仕様を提供することである。USP/NFは、同一性、品質、強度、純度、包装、及び表示に関する表題、定義、説明、及び基準を確立し、また、実施可能である場合、バイオアベイラビリティ、安定性、適切な取扱い及び貯蔵の手順、並びにそれらの検査の方法、及びそれらの製品又は調製物の製法を提供する。
【0205】
医薬製品の安定性は、特定の製剤が、特定の容器中で、例外はあるものの、物理的、化学的、微生物的、治療的、及び毒性学的な仕様の範囲内にとどまり、表示された効力レベルの少なくとも約80%、好ましくは約90%、より好ましくは約95%を維持する能力と定義することができる。したがって、例えば、有効期限は、推奨条件下で貯蔵したときに、医薬製品が安定した状態を保つ時間と定義される。
【0206】
治療成分(複数可)の安定性、治療成分と不活性成分との潜在的な相互作用などを含む、多くの因子が医薬製品の安定性に影響を及ぼす。熱、光、及び湿気などの物理的因子は、化学反応を開始又は加速することがある。
【0207】
(5.2.1 経口剤形)
経口投与に好適な本明細書で提供される医薬組成物は、個別の剤形、例えば、限定するものではないが、錠剤(例えば、チュアブル錠)、カプレット剤、カプセル剤、及び液剤(例えば、味付きシロップ剤)などとして提示することができる。そのような剤形は所定量の活性成分を含み、当業者に周知の薬学の方法により調製することができる。一般的には、「レミントン:薬学の科学及び実務(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)」、第20版(2000年)を参照されたい。
【0208】
典型的な経口剤形は、従来の医薬配合技術に従って、活性成分を少なくとも1種の賦形剤と均密に混合して組み合わせることによって調製される。賦形剤は、投与に望ましい調製物の形態に応じて、多種多様な形態を取ることができる。
【0209】
投与の容易さのために、錠剤及びカプセル剤は、最も有利な経口投薬単位形態であり、その場合には、固体の賦形剤が利用される。望ましい場合、錠剤は、標準的な水性又は非水性技術によってコーティングすることができる。そのような剤形は、薬学の方法のいずれかによって調製することができる。一般に、医薬組成物及び剤形は、活性成分を、液体担体、微粉砕された固体担体、又は両方と均一かつ均密に混合し、その後、必要に応じて、製品を所望の体裁に成形することによって調製される。
【0210】
本開示による医薬組成物又は剤形の大量生産は、治療薬成分の他に、賦形剤又は添加剤、例えば、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、香料、甘味剤など、又はそれらの混合物を必要とすることがある。これらの添加剤及び他の添加剤を組み入れることによって、種々の剤形(例えば、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、トローチ剤など)を製造することができる。これらには、例えば、硬ゼラチンカプセル、カプレット剤、糖衣錠、作用を遅延させる腸溶性コーティング錠、多重圧縮錠、持効性錠、溶解用錠剤、発泡錠、バッカル錠及び舌下錠、トローチ剤などが含まれる。
【0211】
したがって、トローチ剤、錠剤、又はカプセル剤などの、本明細書で提供される医薬組成物の単位用量形態又は単位投薬量製剤は、所望量の活性成分の各々を、1種以上の医薬として適合性のある又は医薬として許容し得る賦形剤と、医薬として適合性のある量で、以下に記載の通りに組み合わせて、所望量の各々の活性成分を含む単位用量投薬量製剤を生じさせることにより形成させることができる。用量形態又は投薬量製剤は、当技術分野で周知の方法により形成させることができる。
【0212】
錠剤は、患者に与えられる利点(例えば、投薬量の正確さ、小型であること、携帯性、味がしないこと、及び投与の容易さ)と、製造業者に与えられる利点(例えば、製造の簡潔さ及び経済性、安定性、並びに包装、輸送、及び分配の簡便さ)の両方のために、好ましい剤形であることが多い。錠剤は、治療原薬を好適な添加剤とともに、又は添加剤なしで含む固体の医薬剤形である。
【0213】
錠剤は、通常、成型、圧縮、又は一般に認められている錠剤形成法によって製造される。したがって、圧縮錠は、通常、大規模生産法によって調製されるが、成型錠は、多くの場合、小規模の操作を含む。例えば、3つの一般的な錠剤調製方法がある:(1)湿式造粒法;(2)乾式造粒法;及び(3)直接打錠。これらの方法は当業者に周知である。「レミントン:薬学の科学及び実務(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)」、第20版(2000年)を参照されたい。米国薬局方XXI(U.S. Pharmacopeial Convention社, Rockville, Md.(1985))も参照されたい。
【0214】
様々な錠剤製剤は、本明細書で提供される方法及び組成物に合わせて作製することができる。これらには、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶性コーティング錠、多重圧縮錠、持効性錠などの錠剤剤形が含まれる。糖衣錠(SCT)は、糖のコーティングを含む圧縮錠である。そのようなコーティングは着色されていてもよく、不快な味又は臭いのある原薬を被覆し、酸化しやすい物質を保護するのに有益である。フィルムコーティング錠(FCT)は、水溶性物質の薄い層又はフィルムによって被覆されている圧縮錠である。フィルム形成特性を有するいくつかのポリマー物質を用いることができる。フィルムコーティングは、糖のコーティングと同じ一般的特徴を付与し、コーティング操作に要する時間の大幅な低減という利点が追加される。腸溶性コーティング錠も、本明細書で提供される方法及び組成物での使用に好適である。腸溶性コーティング錠(ECT)は、胃液中での溶解に耐えるが、腸内で崩壊する物質をコーティングした圧縮錠である。腸溶性コーティングは、胃の中で不活化又は分解される原薬を含む錠剤に、粘膜を刺激する錠剤に、又は薬剤の遅延放出の手段として用いることができる。
【0215】
多重圧縮錠(MCT)は、層状錠剤又はプレスコーティング錠などの、2回以上の圧縮サイクルによって製造された圧縮錠である。層状錠剤は、予め圧縮された顆粒に追加の錠剤顆粒を圧縮することにより調製される。操作を繰り返して、2層、3層、又はそれより多くの層の多層錠を産生することができる。通常、層状錠剤を製造するためには、特殊な錠剤プレスが必要である。例えば、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,213,738号を参照されたい。
【0216】
プレスコーティング錠は、多重圧縮錠の別の形態である。そのような錠剤は、有核錠とも呼ばれ、先に圧縮された錠剤を打錠機に入れ、予め形成された錠剤の周りに別の顆粒層を圧縮することにより調製される。これらの錠剤は、圧縮錠の全ての利点、すなわち、スロッティング、モノグラミング、崩壊の速度などを有する一方で、コア錠剤中の原薬の味をマスキングする点で糖衣錠の特性を保持している。プレスコーティング錠を用いて、不適合性の原薬を分離することもできる。さらに、それらを用いて、コア錠剤を腸溶性コーティングすることもできる。両方のタイプの錠剤(すなわち、層状錠及びプレスコーティング錠)は、例えば、持効性剤形のデザインにおいて用いることができる。
【0217】
持効性錠の形態で本明細書で提供される医薬組成物又は単位剤形は、長期にわたって薬剤を提供する形で原薬を放出するよう調剤された圧縮錠を含むことができる。原薬の放出が、投与後のある期間、又は特定の生理的条件が存在するまで妨げられる遅延作用錠を含む、いくつかの錠剤タイプがある。完全な用量の原薬を胃腸液に定期的に放出する複効錠を形成させることができる。また、含まれる原薬の増分を胃腸液に連続的に放出する延長放出錠を形成させることもできる。
【0218】
賦形剤の有無に関わらず、本明細書で提供される薬物又は治療成分が、利用可能な装置を用いて、圧力によって固体剤形(例えば、錠剤)へと製造されるためには、結晶形態か又は粉末形態かのいずれかの物質が、いくつかの物理的特性を有することが必要である。これらの特性としては、例えば、自由に流動する能力、粉末としては圧縮されて凝集する能力、及び道具から容易に放出される能力を挙げることができる。ほとんどの物質は、これらの性質を全く持たないか、又は一部しか持たないので、錠剤の調剤及び調製の方法は、圧縮して錠剤又は類似の剤形になるべき物質に、これらの望ましい特性を提供するように開発されてきた。
【0219】
述べたように、薬物又は治療成分に加えて、錠剤及び類似の剤形は、賦形剤又は添加剤と呼ばれるいくつかの物質を含むことができる。これらの添加剤は、それらが錠剤、カプレット剤、カプセル剤、トローチ剤などの剤形の製剤において果たす役割によって分類される。添加剤の1つ群には、結合剤、希釈剤(充填剤)、崩壊剤、滑沢剤、及び界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。一実施態様では、希釈剤、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤は同じではない。
【0220】
結合剤は、錠剤機で用いたときに物質が流動するよう、錠剤成分のミックスから自由流動性粉末を提供するために用いられる。結合剤はまた、錠剤にまとまりを提供する。結合剤が少なすぎると、流動の問題が生じ、一体性を維持しない錠剤が得られるが、多すぎると、錠剤からの薬物又は活性成分の放出(溶出速度)に悪影響を及ぼすことがある。したがって、錠剤からの薬物成分の溶出速度に悪影響を及ぼすことなく、自由流動性の錠剤成分ミックスを提供するためには、十分な量の結合剤を錠剤に組み込むべきである。低用量錠剤の場合、良好な圧縮性の必要性は、圧縮助剤と呼ばれる好適な希釈賦形剤の使用により、ある程度は取り除くことができる。使用される結合剤の量は、製剤の種類及び投与の様式によって異なり、当業者にとって容易に認識し得る。
【0221】
本明細書で提供される投薬製剤とともに使用するのに好適な結合剤としては、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、又は他のデンプン、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギネート、粉末化トラガカント、グアーガムなどの天然ゴム及び合成ゴム、セルロース及びその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、番号2208、2906、2910)、微結晶性セルロース、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好適な形態の微結晶性セルロースとしては、例えば、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、及びAVICEL-PH-105として販売されている物質(FMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, Pa., U.S.A.から入手可能)を挙げることができる。
【0222】
充填剤又は希釈剤は、許容し得る大きさの錠剤、カプセル剤、又は他の望ましい剤形が生成されるよう、(例えば、錠剤又はカプセル剤中の)散剤に嵩を与えるために用いられる。通常、治療成分は、それとともに希釈剤を組み入れることによって好適な大きさの好都合な剤形で形成される。結合剤を含めると、薬物(複数可)と充填剤との結合が生じて、バイオアベイラビリティに影響を及ぼすことがある。したがって、充填剤を含む剤形からの薬物成分の放出に悪影響を及ぼすことなく、所望の希釈比率を達成するためには、十分な量の充填剤を使用すべきである。さらに、剤形の治療成分(複数可)と物理的及び化学的に適合性のある充填剤を使用すべきである。使用される充填剤の量は、製剤の種類及び投与の様式によって異なり、当業者にとって容易に認識し得る。充填剤の例としては、ラクトース、グルコース、スクロース、フルクトース、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒もしくは粉末)、微結晶性セルロース、粉末化セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、キシリトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0223】
崩壊剤は、水性環境に曝したときに投与形態(例えば、錠剤)を崩壊させるために用いられる。崩壊剤が多すぎると、大気中の水分によってボトル中で崩壊し得る錠剤が生成される。少なすぎると、崩壊を起こすには不十分なことがあり、そのため、剤形からの薬物(複数可)又は活性成分(複数可)の放出の速度及び程度が変化することがある。したがって、本明細書で提供される剤形を形成させるためには、薬物成分の放出を有害に変化させるには少なすぎず多すぎない十分な量の崩壊剤を使用すべきである。使用される崩壊剤の量は、製剤の種類及び投与の様式に基づいて異なり、当業者にとって容易に認識し得る。崩壊剤の例としては、寒天-寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモデンプンもしくはタピオカデンプン、他のデンプン、アルファ化デンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ゴム類、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0224】
対象への投与時に、例えば、対象の胃の中でかなり迅速に溶解する投与形態が望ましい場合、限定するものではないが、クロスカルメロースナトリウム又はデンプングリコール酸ナトリウムなどの超崩壊剤を用いることができる。本明細書で使用される「超崩壊剤」という用語は、経口投与後に胃の中で薬物又は活性成分の迅速な崩壊をもたらす崩壊剤を意味する。超崩壊剤を使用は、薬物又は活性成分(複数可)の迅速な吸収を促進することができ、より迅速な作用開始をもたらすことができる。
【0225】
ブレンダー壁、ホッパー、スクリーン、移送容器、並びに限定するものではないが、製造機械(例えば、打錠機)のパンチ及びカプセル製造機械のドセイター(dosator)をはじめとする、全ての機器表面への剤形成分の付着を最小限に抑えるか、又は理想的には避けなければならない。付着は、本明細書で提供される組成物にとって特別な問題である。例えば、薬物がパンチ表面に蓄積すると、錠剤表面にくぼみができ、そのため、許容できなくなる。また、薬物又は賦形剤がこのように粘着すると、錠剤をダイから外すときに不必要に高い押出し力が必要になる。過剰な押出し力は高い破損率につながり、ダイの過剰な磨滅は言うまでもなく、製造コストを上昇させる可能性がある。実際には、湿塊化(wet-massing)によるか、又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び抗付着性賦形剤の使用によって、粘着を軽減することが可能である。しかしながら、良好な抗付着特性を有する薬物塩を選択することによって、この問題を最小限に抑えることもできる。
【0226】
述べたように、滑沢剤は、錠剤化粉末ミックスの錠剤機への流れを促進し、錠剤が圧縮された後、錠剤がダイ中で粘着するのを防止するために用いられる。滑沢剤が少なすぎると、満足のいく錠剤が製造できなくなり、多すぎると、水不浸透性疎水性コーティングを有する錠剤が製造される。この水不浸透性疎水性コーティングは、滑沢剤が、通常、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどの疎水性物質であるために形成され得る。さらに、水不浸透性疎水性コーティングは、錠剤の崩壊及び薬物成分(複数可)の溶解を阻害することがある。したがって、薬物成分(複数可)の望ましい崩壊及び/又は溶解を有害に妨害する水不浸透性疎水性コーティングを形成することなく、圧縮錠をダイから容易に放出させる十分な量の滑沢剤を使用すべきである。
【0227】
本明細書で提供される組成物とともに使用するのに好適な滑沢剤の例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる滑沢剤としては、例えば、シロイドシリカゲル(AEROSIL 200、メリーランド州ボルチモアのW.R. Grace社製)、合成シリカの凝固したエアゾール(テキサス州プラノのDeaussa社が販売)、CAB-O-SIL(マサチューセッツ州ボストンのCabot社が販売している発熱性二酸化ケイ素製品)、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0228】
界面活性剤は、湿潤性を向上させ、かつ/又は溶解を促進するために剤形に用いられ、難溶性又は不溶性の薬物(複数可)又は活性成分を含む医薬組成物又は剤形で特に有用である。界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、TWEENとして市販されているもの(例えば、Tween 20及びTween 80)、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンステアレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマー(block co-polyers)、例えば、ポロキサマー(例えば、PLURONICとして市販)、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドのエチレンジアミンへの連続付加から誘導される四官能性ブロックコポリマー、例えば、ポリキサミン(例えば、TETRONIC(BASF)として市販)、デキストラン、レシチン、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、例えば、Aerosol OT、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルアリールポリエーテルスルホネートもしくはアルコール、例えば、TRITON X-200もしくはチロキサポール、p-イソノニルフェノキシポリ(グリシドール)(例えば、Olin-10GもしくはSurfactant 10-G(Olin Chemicals))、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。医薬として許容し得る他の界面活性剤は当技術分野で周知であり、医薬賦形剤のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)に詳細に記載されている。
【0229】
本明細書で提供される医薬組成物又は剤形とともに使用される他の種類の添加剤としては、凝固防止剤又は付着防止剤、抗微生物防腐剤、コーティング剤、着色剤、乾燥剤、香味料及び香料、可塑剤、粘度増加剤、甘味剤、緩衝剤、保湿剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0230】
凝固防止剤の例としては、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0231】
抗微生物防腐剤の例としては、塩化ベンザルコニウム溶液、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クレゾール、デヒドロ酢酸、エチルパラベン、メチルパラベン、フェノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、ソルビン酸カリウム、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメルソル(thimersol)、チモール、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0232】
本明細書で提供される組成物とともに使用される着色剤の例としては、医薬として許容し得る染料及びレーキ、カラメル、赤色酸化第二鉄、黄色酸化第二鉄、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。乾燥剤の例としては、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、シリカゲル、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0233】
使用可能な香味料の例としては、アラビアゴム、トラガカント、アーモンド油、アネトール、アニス油、ベンズアルデヒド、キャラウェイ、キャラウェイ油、カルダモン油、カルダモンの種子、複合カルダモンチンキ、チェリー果汁、シナモン、シナモン油、クローブ油、ココア、コリアンダー油、エリオジクチオン、エリオジクチオン流動エキス、酢酸エチル、エチルバニリン、ユーカリ油、フェンネル油、カンゾウ、純カンゾウエキス、カンゾウ流動エキス、ラベンダー油、レモン油、メントール、サリチル酸メチル、グルタミン酸一ナトリウム、ナツメグ油、オレンジ花油、オレンジ花水、オレンジ油、スイートオレンジピールチンキ、複合オレンジ酒、ペパーミント、ペパーミント油、ペパーミント酒、マツ葉油、ローズ油、ストロンガーローズウォーター(stronger rose water)、スペアミント、スペアミント油、チモール、トルーバルサムチンキ、バニラ、バニラチンキ、及びバニリン、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0234】
甘味剤の例としては、アスパルテーム、デキストレート、マンニトール、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、ソルビトール、ソルビトール溶液、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0235】
本明細書で提供される組成物とともに使用される例示的な可塑剤としては、ヒマシ油、ジアセチル化モノグリセリド、フタル酸ジエチル、グリセリン、モノアセチル化モノグリセリド及びジアセチル化モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、並びにトリアセチン、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好適な粘度増加剤としては、アラビアゴム、寒天、アラミン酸(alamic acid)、モノステアリン酸アルミニウム、ベントナイト、ベントナイトマグマ、カルボマー934、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム12、カラギーナン、セルロース、微結晶性セルロース、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(番号2208;2906;2910)、マグネシウムアルミニウムシリケート、メチルセルロース、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポビドン、シリカゲル、コロイド状二酸化ケイ素、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、及びキサンタンガム、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0236】
本明細書で提供される組成物に使用可能な緩衝剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなど、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。保湿剤の例としては、グリセロール、他の保湿剤、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0237】
本明細書で提供される剤形は、以下のもののうちの1種以上をさらに含むことができる:(1)パラフィンなどの溶解遅延剤;(2)4級アンモニウム化合物などの吸収加速剤;(3)例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(4)カオリン及びベントナイト粘土などの吸収剤;(5)酸化防止剤、例えば、水溶性酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど)、油溶性酸化防止剤(例えば、パルミチン酸アスコルビル、ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど);並びに(6)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
【0238】
錠剤又はカプレット剤などの、本明細書で提供される剤形は、任意にコーティングすることができる。不活性コーティング剤は、通常、好適な溶媒に分散した不活性なフィルム形成剤を含み、着色剤及び可塑剤などの医薬として許容し得る他の補助剤をさらに含むことができる。好適な不活性コーティング剤、及びコーティングの方法は当技術分野で周知であり、限定するものではないが、水性又は非水性のフィルムコーティング技術又はマイクロカプセル化を含む。フィルム形成剤又はコーティング剤の例としては、ゼラチン、製薬用グレーズ、シェラック、スクロース、二酸化チタン、カルナウバ蝋、微結晶蝋、セルロース類、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、番号2208、2906、2910)、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、番号200731、220824)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、任意に架橋されていてもよいエチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム;ポリビニルピロリジオン、ポリ酢酸フタル酸ビニルなどのビニル類;ポリエチレングリコールなどのグリコール類;アクリル類、例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリレート酸エステルコポリマー、及びエチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー;並びに他の炭水化物ポリマー、例えば、マルトデキストリン及びポリデキストロース、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。使用されるコーティング剤及び担体ビヒクル(水性又は非水性)の量は、製剤の種類及び投与の様式によって異なり、当業者にとって容易に認識し得る。
【0239】
フィルム形成性ポリマーのコーティングは、従来のコーティングパン、Accelacota、High-Cola、又はWorsterエアサスペンションカラムなどの、いくつかの種類の装置のうち1つを用いることによって、錠剤又はカプレット剤(例えば、カプセル状錠剤)に任意に適用することができる。そのような装置は、通常、ダスト及び溶媒又は水蒸気を除去して迅速乾燥を促進する排気システムを有する。噴霧銃又は他の好適な噴霧装置をコーティングパンに導入して、錠剤床の迅速で均一な被覆を促進する噴霧様式を提供することができる。通常、熱せられた又は冷たい乾燥空気を、フィルムコーティング溶液の乾燥を促進する噴霧サイクルで、錠剤床に連続的に又は交互に導入する。
【0240】
コーティング溶液は、連続的又は間欠的噴霧乾燥サイクルで正の空気置換又は蠕動ポンプシステムを用いることによって噴霧することができる。特定の種類の噴霧塗布が、コーティングパンの乾燥効率に応じて選択される。ほとんどの場合、コーティング材料は、錠剤が所望の厚さまで均一にコーティングされ、錠剤の所望の外観が得られるまで噴霧される。腸溶性コーティング、徐放性コーティング、又は速効錠用の迅速溶解型のコーティングなどの、多くの異なる種類のコーティングを塗布することができる。好ましくは、活性成分をより迅速に放出させ、開始を早めるために、迅速溶解型のコーティングが用いられる。例えば、錠剤に塗布されるフィルム形成性ポリマーのコーティングの厚さは、様々に異なり得る。しかしながら、厚さによって、ゼラチンカプセルの外観、感覚(触感及び食感)、並びに機能をシミュレートすることが好ましい。治療剤(複数可)のより迅速な放出又はより遅延した放出が望ましい場合、当業者であれば、もしあるとすれば、フィルムの種類及び厚さを容易に認識し、活性成分の所望の血中濃度、放出速度、活性成分の溶解度、及び剤形の所望の性能などの特性に基づいて使用するであろう。
【0241】
錠剤などの最終剤形をコーティングするのに用いられるいくつかの好適なフィルム形成剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(PHARMACOAT 606 6cps)、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、エチルセルロース(ETHOCEL 10cps)、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルの様々な誘導体、酢酸フタル酸セルロース、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0242】
調製の方法、及び剤形(例えば、錠剤又はカプレット剤)に組み込むべき賦形剤又は添加剤は、製造の容易さ(例えば、錠剤の迅速な圧縮)を考慮しながら、望ましい物理的特性を錠剤製剤に与えるように選択される。製造後、投与形態は、好ましくは、いくつかの追加の属性を有するべきであり、例えば、錠剤では、そのような属性として、外観、硬さ、崩壊能力、及び均一性が挙げられ、これらは、調製の方法と錠剤製剤中に存在する添加剤の両方による影響を受ける。
【0243】
さらに、本明細書で提供される医薬組成物の錠剤又は他の剤形は、その貯蔵寿命の間、通常の取扱い及び貯蔵条件下で、その元の大きさ、形状、重量、及び色を保持すべきであることに留意する。したがって、例えば、容器の底の過剰な粉末又は固体粒子、錠剤表面のひび割れ又は欠片、錠剤表面又は容器壁への結晶の出現は、コーティングしていない錠剤の物理的な不安定性を示すものである。そのため、錠剤の軽度で、均一で、かつ再現性のある振盪及び転動の効果を保証して、錠剤が十分な物理的安定性を有することを確実にすべきである。錠剤の硬さは、市販の硬度計により測定することができる。さらに、活性成分のインビトロでのアベイラビリティは、時間とともに感知できるほど変化すべきではない。
【0244】
錠剤、及び本明細書で提供される医薬組成物の他の剤形、例えば、糖衣丸、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤は、任意に切れ目を付けるか、又は腸溶性コーティング及び医薬製剤分野で周知の他のコーティングなどの、コーティング及びシェルとともに調製することができる。
【0245】
(5.2.2 非経口剤形)
非経口剤形は、限定するものではないが、皮下、静脈内(ボーラス注入を含む)、筋肉内、及び動脈内を含む、様々な経路によって患者に投与することができる。その投与は、通常、汚染物質に対する患者の自然な防御機構を迂回するので、非経口剤形は、滅菌性であるか、又は患者への投与の前に滅菌可能であることが好ましい。非経口剤形の例としては、注射可能な溶液、注射用の医薬として許容し得るビヒクルにすぐに溶解又は懸濁可能な乾燥製品、注射可能な懸濁液、及び乳剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0246】
本明細書で提供される非経口剤形を提供するために使用することができる好適なビヒクルは当業者に周知である。例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない;USP注射用水;限定するものではないが、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、及び乳酸リンゲル注射液などの水性ビヒクル;限定するものではないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなどの水混和性ビヒクル;並びに限定するものではないが、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルなどの非水性ビヒクル。
【0247】
本明細書で開示される1種以上の活性成分(すなわち、本明細書で提供される方法及び組成物で用いられる化合物)の溶解度を高める化合物も非経口剤形に組み込むことができる。
【0248】
(5.2.3 経皮、局所、及び粘膜剤形)
本明細書で提供される経皮、局所、及び粘膜剤形としては、点眼剤、スプレー剤、エアゾール剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ゲル剤、液剤、乳剤、懸濁剤、又は当業者に公知の他の形態が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、第16版及び第18版、Mack Publishing, Easton PA(1980 & 1990);並びに「医薬剤形入門(Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms)」、第4版、Lea & Febiger, Philadelphia(1985)を参照されたい。経皮剤形は、「リザーバータイプ」又は「マトリックスタイプ」のパッチを含み、これらは、皮膚に貼布して特定の期間着用し、所望量の活性成分の浸透を可能にするものである。
【0249】
本明細書で提供される経皮、局所、及び粘膜剤形を提供するために使用することができる好適な賦形剤(例えば、担体及び希釈剤)並びに他の物質は製薬分野の当業者に周知であり、所与の医薬組成物又は剤形が適用される特定の組織によって決まる。
【0250】
治療すべき具体的な組織によっては、追加の成分を、本明細書で提供される活性成分による治療の前に、該治療と同時に、又は該治療の後に用いることができる。例えば、浸透促進剤を用いて、活性成分の組織への送達を助けることができる。
【0251】
医薬組成物もしくは剤形のpH、又は医薬組成物もしくは剤形が適用される組織のpHを調整して、1種以上の活性成分の送達を向上させることもできる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度、又は張性を調整して、送達を向上させることができる。送達を向上させるために、ステアレートなどの化合物を医薬組成物又は剤形に添加して、1種以上の活性成分の親水性又は親油性を有利に変化させることもできる。この点に関して、ステアレートは、製剤用の脂質ビヒクルとして、乳化剤又は界面活性剤として、及び送達促進剤もしくは浸透促進剤として機能することができる。活性成分の様々な塩又は溶媒和物(例えば、水和物)を用いて、得られる組成物の性質をさらに調整することができる。
【0252】
(5.2.4 安定性が向上した組成物)
特定の賦形剤の適合性は、剤形中の特定の活性成分によって決まることもある。例えば、活性成分、例えば、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物の分解を、特定の賦形剤によって加速させることができる。特定のサッカリド、特にモノサッカリド又はジサッカリドは、本明細書で提供される組成物の活性成分の分解を加速させることができる。例えば、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物を含む組成物は、あるとしても、ラクトース、マンノース、キシロース、又は微結晶性セルロースをわずかしか含まないものであるべきである。
【0253】
水は一部の化合物の分解を促進することがあるので、活性成分を含む無水の医薬組成物及び剤形をさらに提供する。例えば、水(例えば、5%)の添加は、貯蔵寿命又は経時的な製剤の安定性などの特性を決定するために、長期の貯蔵をシミュレートする手段として医薬分野で広く認められている。例えば、Jens T. Carstensenの文献、「薬物の安定性:原理及び実際(Drug Stability:Principles & Practice)」、第2版、Marcel Dekker, NY, NY, 1995, 79-80を参照されたい。実際に、水及び熱は、一部の化合物の分解を加速させる。したがって、製剤に対する水の影響は非常に重要である可能性があるが、それは、水分及び/又は湿気が、製剤の製造、取扱い、包装、貯蔵、輸送、及び使用の間によく見られるからである。
【0254】
本明細書で提供される無水の医薬組成物及び剤形は、無水又は低水分含有成分、及び低水分又は低湿度条件を用いて調製することができる。本明細書で提供される無水の医薬組成物及び剤形は、製造、包装、及び/又は貯蔵の間に水分及び/又は湿気へのかなりの接触が予想される場合、無水とすることができる。
【0255】
無水の医薬組成物は、その無水の性質が維持されるように製造及び貯蔵すべきである。したがって、無水の組成物は、好適な製剤キットに含めることができるように、水への曝露を防ぐことが知られている材料を用いて包装されていることが好ましい。好適な包装の例としては、密封ホイル、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0256】
活性成分が分解する速度を低下させる1種以上の化合物を含む医薬組成物及び剤形も本発明で提供する。そのような化合物は、本明細書では「安定化剤」と呼ばれ、アスコルビン酸などの酸化防止剤、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤を含むが、これらに限定されない。
【0257】
安定医薬組成物の具体的で非限定的な実施例を、本明細書中、実施例6.1〜6.13で提供する。
【0258】
賦形剤の量及び種類と同様、剤形中の活性成分の量及び具体的な種類も、限定するものではないが、患者に投与しようとする経路などの因子によって異なり得る。
【0259】
(5.2.5 遅延放出剤形)
本明細書で提供される方法及び組成物で使用される活性成分は、制御放出手段によるか、又は当業者に周知の送達装置によって投与することができる。例としては、各々引用により本明細書に組み込まれる米国特許第3,845,770号;同第3,916,899号;同第3,536,809号;同第3,598,123号;及び同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号、及び同第5,733,566号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。そのような剤形を用いて、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過膜、浸透システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、微小球、又はこれらの組合せを用いて1種以上の活性成分の緩徐放出又は制御放出を提供し、所望の放出プロファイルを様々な割合で提供することができる。本明細書で提供される方法及び組成物で使用される化合物とともに使用するために、本明細書に記載されているものを含む、当業者に公知の好適な制御放出製剤を容易に選択することができる。したがって、限定するものではないが、制御放出に適している錠剤、カプセル剤、ゲルキャップ剤、及びカプレット剤などの経口投与に好適な単一単位剤形を本明細書で提供する。
【0260】
制御放出医薬製品は全て、非制御の対応物によって達成されるよりも薬物療法を向上させるという共通の目標を有する。理想的には、医療における最適に設計された制御放出調製物の使用には、最小限の時間での疾病の治癒又は制御のために最小限の原薬が使用されるという特徴がある。制御放出製剤の利点としては、薬物の活性延長、投薬頻度の減少、及び患者のコンプライアンス向上が挙げられる。さらに、制御放出製剤を用いて、作用の発現の時間又は薬物の血中濃度などの他の特性に影響を及ぼすことができ、したがって、副作用(例えば、有害作用)の発生に影響を及ぼすことができる。
【0261】
ほとんどの制御放出製剤は、所望の治療効果を素早く生み出す量の薬物(活性成分)を最初に放出し、長期間にわたってこのレベルの治療効果又は予防効果を維持する他の量の薬物を徐々にかつ継続的に放出するように設計されている。体内でのこの一定の薬物レベルを維持するために、薬物は、代謝されて体から排泄される薬物の量を補う速度で剤形から放出されなければならない。活性成分の制御放出は、限定するものではないが、pH、温度、酵素、水、又は他の生理的条件又は化合物を含む、様々な条件によって刺激することができる。
【0262】
(5.2.6 キット)
場合により、本明細書で提供される方法及び組成物で使用される活性成分は、同時に、又は同じ投与経路で患者に投与されないことが好ましい。そのため、開業医が使用するときに、患者への適量の活性成分の投与を簡略化することができるキットを提供する。
【0263】
一実施態様では、キットは、本明細書で提供される方法及び組成物で使用される化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、もしくは立体異性体の単一単位剤形、及びこれらの化合物と組み合わせて使用し得る別の薬剤の単一単位剤形を含む。本明細書で提供されるキットは、活性成分の投与に使用される装置をさらに含むことができる。そのような装置の例としては、シリンジ、点滴バッグ、パッチ、及び吸入器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0264】
本明細書で提供されるキットは、1種以上の活性成分の投与に使用することができる医薬として許容し得るビヒクルをさらに含むことができる。例えば、活性成分が、非経口投与のために再構成されなければならない固体形態で提供される場合、キットは、活性成分を溶解させて、非経口投与に好適な無粒子滅菌溶液を形成させることができる好適なビヒクルの密封容器を含むことができる。医薬として許容し得るビヒクルの例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない;USP注射用水;限定するものではないが、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、及び乳酸リンゲル注射液などの水性ビヒクル;限定するものではないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなどの水混和性ビヒクル;並びに限定するものではないが、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルなどの非水性ビヒクル。
【0265】
特定の実施態様は、以下の非限定的な実施例で例示されている。材料と方法の両方に対する多くの改変が、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく実施可能であることが、当業者には明白であろう。
【0266】
(5.3 治療、予防、及び管理の方法)
一実施態様では、中枢神経系障害を治療、予防、又は管理する方法であって、対象(例えば、患者)に、本明細書で開示したような治療的又は予防的有効量のトランスノルセルトラリンの塩又は多形体の製剤を投与することを含む方法を本明細書で提供する。
【0267】
一実施態様では、抗鬱様効果をもたらす方法を本明細書で提供する。本方法は、対象に本明細書で開示したような治療的有効量のトランスノルセルトラリンの製剤、塩、又は多形体を投与することを含む。抗鬱様効果は、疾患の動物モデル、例えば、当技術分野で公知のもの及び本明細書に記載のものを用いて測定することができる。
【0268】
他の実施態様では、神経障害は、鬱病(例えば、大鬱病性障害、双極性鬱、単極性障害、気分変調症、及び季節性情動障害);認知障害;線維筋痛症;疼痛(例えば、神経因性疼痛);精神医学的状態によりもたらされる睡眠障害を含む睡眠関連疾患(例えば、睡眠時無呼吸、不眠症、発作性睡眠、脱力発作);慢性疲労症候群;注意欠陥障害(ADD);注意欠陥多動性障害(ADHD);レストレスレッグ症候群;;統合失調症;不安神経症(例えば、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害);強迫性障害;心的外傷後ストレス障害;季節性情動障害(SAD);月経前不機嫌;閉経後の血管運動症状(例えば、一過性熱感、寝汗);神経変性疾患(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、及び筋萎縮性側索硬化症);躁状態;気分変調性障害;気分循環性障害;肥満;並びに薬物濫用又は薬物依存症(例えば、コカイン中毒、ニコチン中毒)である。別の実施態様では、本明細書で提供される化合物は、認知障害及び鬱病などの、併存する2つ以上の疾病/障害を治療するのに有用である。
【0269】
特定の実施態様では、神経障害としては、限定するものではないが、老年性認知症、アルツハイマー型認知症、認知、記憶喪失、健忘症/健忘症候群、てんかん、意識の撹乱、昏睡、注意力低下、発話障害、レノックス症候群、自閉症、及び多動症候群をはじめとする、大脳機能障害が挙げられる。
【0270】
神経因性疼痛としては、限定するものではないが、ヘルペス後(又は帯状疱疹後)神経痛、反射性交感神経性ジストロフィー/カウザルギー又は神経の外傷、幻肢痛、手根管症候群、及び末梢神経障害(例えば、糖尿病性神経障害又は慢性的なアルコール使用から生じる神経障害)が挙げられる。
【0271】
本明細書で提供される方法及び/又は組成物を用いて治療、予防、及び/又は管理し得る他の例示的な疾患及び疾病としては、肥満;偏頭痛又は偏頭痛性の頭痛;限定するものではないが、不随意性の排尿、尿滴下又は尿漏れ、腹圧性尿失禁(SUI)、切迫性尿失禁、労作性尿失禁、反射性失禁、受動性失禁、及び溢流性失禁をはじめとする尿失禁;並びに限定するものではないが、心理的及び/又は生理的な要因により引き起こされる性機能障害、勃起障害、早漏、膣の乾燥、性的興奮の欠如、オルガスム達成喪失をはじめとする男性又は女性における性機能障害、及び限定するものではないが、抑制された性欲、抑制された性的興奮、抑制された女性のオルガスム、抑制された男性のオルガスム、機能性性交疼痛症、機能性膣痙及び非定型性の精神的性機能障害をはじめとする精神的性機能障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0272】
一実施態様では、神経障害は鬱病である。別の実施態様では、神経障害は不安障害である。別の実施態様では、神経障害は疼痛である。別の実施態様では、神経障害は神経因性疼痛である。別の実施態様では、神経因性疼痛は糖尿病性神経障害である。
【0273】
一実施態様では、神経障害は神経変性疾患である。一実施態様では、神経変性疾患はパーキンソン病である。別の実施態様では、神経変性疾患はアルツハイマー病である。
【0274】
一実施態様では、神経障害は失禁、例えば、尿失禁である。別の実施態様では、神経障害は性機能障害である。
【0275】
一実施態様では、神経障害は肥満であり、患者に供給する化合物の治療的有効量は、該患者が満腹感を抱くのに十分な程度である。
【0276】
一実施態様では、本明細書に記載の化合物は、該化合物に対する中毒を引き起こすことなく、中枢神経障害を治療、予防、及び/又は管理する。
【0277】
いくつかの実施態様では、本明細書で提供される方法は、他の活性剤の1種以上の投与を任意に含むことができる。そのような他の薬剤としては、本明細書で提供される神経障害の治療、予防、及び/又は管理に通常用いられる薬物又は療法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0278】
患者に治療的又は予防的有効用量の活性成分を提供するための任意の好適な投与経路を利用することができる。例えば、経口、粘膜(例えば、鼻腔、舌下、口腔、直腸、膣)、非経口(例えば、静脈内、筋肉内)、経皮、及び皮下経路を利用することができる。例示的な投与経路としては、経口、経皮、及び粘膜が挙げられる。そのような経路のための好適な剤形としては、経皮パッチ、点眼剤、スプレー剤、及びエアゾール剤が挙げられるが、これらに限定されない。経皮用組成物は、クリーム剤、ローション剤、及び/又は乳剤の形態を取ることもでき、これらは、皮膚に貼布するための適当な接着剤に含めることができ、又はこの目的のために当技術分野で標準的なマトリックスタイプもしくはリザーバータイプの経皮パッチに含めることができる。例示的な経皮剤形には、「リザーバータイプ」又は「マトリックスタイプ」パッチがあり、これは、皮膚に貼布して特定の期間着用し、所望量の活性成分の浸透を可能にするものである。該活性成分を患者に絶えず投与する必要がある場合は、該パッチを新しいパッチと交換することができる。
【0279】
本明細書に記載の障害を治療、予防、及び/又は管理するために対象(例えば、患者)に投与すべき量は、利用される特定の化合物の活性、投与経路、投与の時間、利用される特定の化合物の排泄又は代謝速度、治療期間、利用される特定の化合物と併用される他の薬物、化合物、及び/又は物質、治療される患者の年齢、性別、体重、疾病、全般的な健康、及び以前の病歴、並びに医療技術分野で周知の同様の因子をはじめとする、種々の因子によって決まる。
【0280】
当技術分野の通常の技術を有する医師又は獣医は、必要とされる有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、該医師又は獣医であれば、利用される化合物の用量を、所望の治療効果を達成するのに必要とされるレベルよりも少ないレベルで開始し、その投薬量を、所望の効果が達成されるまで徐々に増加させることができるであろう。
【0281】
一般に、本明細書で提供される化合物の好適な日用量は、治療的又は予防的効果を生むのに有効な最小用量となる化合物の量である。そのような有効用量は、通常、上に記載した因子によって決まる。通常、患者用に本明細書で提供される化合物の経口、静脈内、脳室内、及び皮下用量は、1日に体重1キログラム当たり約0.005mg〜約5mgの範囲である。一実施態様では、本明細書で提供される化合物の経口用量は、1日当たり約0.05mg〜約5g範囲である。一実施態様では、本明細書で提供される化合物の経口用量は、1日当たり約0.1mg〜約3gの範囲である。一実施態様では、本明細書で提供される化合物の経口用量は、1日当たり約0.25mg〜約2gの範囲である。一実施態様では、本明細書で提供される化合物の経口用量は、1日当たり約0.5mg〜約1gの範囲である。一実施態様では、本明細書で提供される化合物の経口用量は、1日当たり約1mg〜約500mgの範囲である。別の実施態様では、本明細書で提供される化合物の経口用量は、1日当たり約2mg〜約250mgの範囲である。別の実施態様では、本明細書で提供される化合物の経口用量は、1日当たり約3mg〜約300mgの範囲である。一実施態様では、本明細書で提供される化合物の経口用量は、1日当たり約5mg〜約300mgの範囲である。別の実施態様では、本明細書で提供される化合物の経口用量は、1日当たり約10mg〜約100mgの範囲である。別の実施態様では、本明細書で提供される化合物の経口用量は、1日当たり約25mg〜約50mgの範囲である。別の実施態様では、本明細書で提供される化合物の経口用量は、1日当たり約30mg〜約200mgの範囲である。上に記載した投薬量範囲の各々は、単回又は複数回単位投薬量製剤として調剤することができる。
【実施例】
【0282】
(6.実施例)
(6.1 トランスノルセルトラリンの安定製剤)
トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物の固体剤形は、対象及び患者に投与しやすくするために、並びに病院の外で製剤を投与しやすくするために望ましい。これらの剤形は、自動化装置で製造可能であり、かつ1年を超過することができる許容し得る化学的及び物理的安定性を有するべきである。
【0283】
トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物を含む多くの賦形剤混合物を調製し、化学的安定性及び製造の実現可能性について評価した。これらの賦形剤には、数種の希釈剤:第二リン酸カルシウム無水物、第二リン酸カルシウム二水和物、アルファ化デンプン、微結晶性セルロース、ラクトース、及びマンニトール;崩壊剤:クロスカルメロースナトリウム、アルファ化デンプン、及びデンプングリコール酸ナトリウム;流動促進剤:タルク、コロイド状シリカ、及びフュームドシリカ;並びに数種の滑沢剤:ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、硬化植物油、及びステアリン酸マグネシウムが含まれた。ほとんどの組合せは、化学的安定性の乏しさのために許容されず;ブレンドの均一性の乏しさ、カプセル中の薬物含有量の低さ、及びカプセル中の薬物含有量の変動を含む、製造特性の乏しさのために許容されない組合せもあった。
【0284】
例えば、硬ゼラチンカプセルを調剤したとき、Zoloft(登録商標)(セルトラリン)錠剤中に見られるトランスノルセルトラリン塩酸塩と賦形剤との組合せにより、化学的安定性が乏しく、かつ特に複数の酸化生成物を含む製剤が得られることが分かった。これらの賦形剤は、第二リン酸カルシウム二水和物、微結晶性セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、及びこれらの錠剤のコーティング中にある可能性が高い他の賦形剤である。Zoloft(登録商標)(セルトラリン)については、医師用卓上参考書(Physician's Desk Reference)の項目を参照されたい。
【0285】
さらに、上記の賦形剤を用いて試験した組合せの大半は、化学的安定性の乏しさのために許容されなかった。ブレンドの均一性の乏しさ、カプセル中の薬物含有量の低さ、及びカプセル中の薬物含有量の変動を含む、製造特性の乏しさのために許容されない組合せもあった。安定な組合せは、透明な又は着色した硬ゼラチンカプセルシェル中にマンニトール、デンプングリコール酸ナトリウム、タルク、及びステアリン酸マグネシウムを含んでいた。
【0286】
(安定性試験の結果)
以下のブレンド又はブレンド・イン・カプセル(blends-in-capsules)を調製する一方で、安定なトランスノルセルトラリン塩酸塩カプセル製剤を開発した。場合により、試験の長さは異なっている。しかしながら、全ての試料について、統一的な分析方法を用いた。分解は、該製剤のHPLC分析による面積%に基づく総不純物として報告されている。これは、そのような結果を、分解の完全な特徴付けの前に変化があるときに報告する場合に一般的である。分解率は、典型的かつ所要の貯蔵条件である、40℃/75%相対湿度での貯蔵の後に測定した。
【表1】

【0287】
安定性試験の結果として、以下の製剤を選択した。トランスノルセルトラリン塩酸塩のカプセル製剤をカプセル当たり1.0mg強度(フリーベースに基づく)で調製した。該カプセル製剤は、着色した硬ゼラチンカプセルシェル中にマンニトール、デンプングリコール酸ナトリウム、タルク、及びステアリン酸マグネシウムを含む。
【0288】
(6.2 トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の1.0mg強度カプセル製剤)
【表2】

トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物(1.125mgのHCl塩)の安定な1.0mg強度(フリーベースに基づく)カプセルを製剤1に準じて調製した。最初、該製剤を手動で調製したところ、許容し得るブレンド及びカプセル均一性が示され;安定性試験では、他の製剤と比べて、これらのカプセルの改善された化学的安定性が示された。製剤1のバッチを通常の製薬設備で製造したとき、製造の実現可能性が示され;このバッチについて、許容し得るブレンド及びカプセル均一性、並びに改善された化学的安定性が示された。
【0289】
製剤1のバッチを通常の製薬設備で製造したとき、製造の実現可能性がより大きいブレンドサイズで示され;このバッチについて、許容し得るブレンド及びカプセル均一性、並びに改善された化学的安定性が示された。製剤2に準じて、別のカプセルを調製することができ、その場合、デンプングリコール酸ナトリウムは存在しない。
【0290】
(6.3 トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の0.5mg強度カプセル製剤)
【表3】

トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物(0.5625mgのHCl塩)の安定な0.5mg強度(フリーベースに基づく)カプセルを製剤1に準じて調製した。製剤1のバッチを通常の製薬設備で製造したとき、製造の実現可能性がより大きいブレンドサイズで示され;このバッチについて、許容し得るブレンド及びカプセル均一性、並びに改善された化学的安定性が示された。製剤2に準じて、別のカプセルを調製することができ、その場合、デンプングリコール酸ナトリウムは存在しない。
【0291】
(6.4 トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物2.0mg強度カプセル製剤)
【表4】

トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物(2.25mgのHCl塩)の安定な2.0mg強度(フリーベースに基づく)カプセルを製剤1に準じて調製した。製剤1のバッチを通常の製薬設備で製造したとき、製造の実現可能性がより大きいブレンドサイズで示され;このバッチについて、許容し得るブレンド及びカプセル均一性、並びに改善された化学的安定性が示された。製剤2に準じて、別のカプセルを調製することができ、その場合、デンプングリコール酸ナトリウムは存在しない。
【0292】
(6.5 様々なカプセルサイズのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の0.5mg強度カプセル製剤)
【表5】

トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物(0.5625mg)の代表的な0.5mg強度(フリーベースに基づく)カプセルを、上で示したような様々なサイズのカプセルについて、200.0mg、150.0mg、及び100.0mgの3つの充填重量で調製することができる。
【0293】
(6.6 様々なカプセルサイズのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の1.0mg強度カプセル製剤)
【表6】

トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物(1.125mgのHCl塩)の代表的な1.0mg強度(フリーベースに基づく)カプセルを、上で示したような様々なサイズのカプセルについて、200.0mg、150.0mg、及び100.0mgの3つの充填重量で調製することができる。
【0294】
(6.7 様々なカプセルサイズのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の2.0mg強度カプセル製剤)
【表7】

トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物(2.25mgのHCl塩)の代表的な2.0mg強度(フリーベースに基づく)カプセルを、上で示したような様々なサイズのカプセルについて、200.0mg、150.0mg、及び100.0mgの3つの充填重量で調製することができる。
【0295】
上の実施例において、トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の代わりにトランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物を用いる場合、1.0mgのトランスノルセルトラリンフリーベースに相当する1.186mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物という変換係数を各製剤に適用することができる。
【0296】
(6.8 トランスノルセルトラリンのカプセル製剤の製造プロセス)
トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物を含むカプセル製剤のブレンドは、まず、トランスノルセルトラリン塩酸塩をタルクとブレンドし;次に、この混合物を等比級数的に希釈したマンニトールと混合するプロセスを用いて製造することができる。残りのマンニトール及びデンプングリコール酸ナトリウムを該混合物とブレンドし;最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0297】
該プロセスは、まず、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルクの一部+マンニトールとブレンドし;次に、この混合物をさらなるマンニトールとブレンドするように、改変することができる。次に、残りのマンニトール及びデンプングリコール酸ナトリウムを該混合物とブレンドし;最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0298】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルクの一部+マンニトールとブレンドし;次に、この混合物をマンニトール+デンプングリコール酸ナトリウムの混合物とブレンドし;最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドすることによって実施することができる。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0299】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルク+マンニトール+デンプングリコール酸ナトリウムの混合物とブレンドし;次に、この混合物を残りの賦形剤(ステアリン酸マグネシウムを除く)とブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0300】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルク+デンプングリコール酸ナトリウムの混合物とブレンドし;次に、この混合物をマンニトールとブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0301】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルクとブレンドし;次に、この混合物をマンニトールとブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0302】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルク+マンニトールの混合物とブレンドし;次に、この混合物を残りのマンニトールとブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0303】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をマンニトールとブレンドし;次に、この混合物をタルク+マンニトールの混合物とブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0304】
該プロセスの別の改変は、上記のプロセスの各々において、ステアリン酸マグネシウムの一部をトランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物とブレンドすることによって実施することができる。最後に、残りのステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、手動式、半自動式、又は全自動式のカプセル充填機械又はカプセル充填装置で封入することができる。
【0305】
(6.9 様々な錠剤サイズのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の0.5mg強度錠剤製剤)
【表8】

【表9】

トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物(0.5625mgのHCl塩)の代表的な0.5mg強度(フリーベースに基づく)錠剤を、デンプングリコール酸ナトリウム(Primojel)を用いて、又は用いないで、上で示したような3つのサイズで調製することができる。
【0306】
(6.10 様々な錠剤サイズのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の1.0mg強度錠剤製剤)
【表10】

【表11】

トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物(1.125mgのHCl塩)の代表的な1.0mg強度(フリーベースに基づく)錠剤を、デンプングリコール酸ナトリウム(Primojel)を用いて、又は用いないで、上で示したような3つのサイズで調製することができる。
【0307】
(6.11 様々な錠剤サイズのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の2.0mg強度錠剤製剤)
【表12】

【表13】

トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物(2.25mgのHCl塩)の代表的な2.0mg強度(フリーベースに基づく)錠剤を、デンプングリコール酸ナトリウム(Primojel)を用いて、又は用いないで、上で示したような3つのサイズで調製することができる。
【0308】
上の実施例において、トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の代わりにトランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物を用いる場合、1.0mgのトランスノルセルトラリンフリーベースに相当する1.186mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物という変換係数を適用することができる。
【0309】
(6.12 トランスノルセルトラリンの非コーティング錠製剤の製造プロセス)
トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物を含有する錠剤製剤用のブレンドは、まず、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルクとブレンドし;次に、この混合物を、等比級数的に希釈したマンニトールと混合するプロセスを用いて製造することができる。次に、残りのマンニトール及びデンプングリコール酸ナトリウムを該混合物とブレンドし;最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0310】
非コーティング錠の製造プロセスは、まず、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルクの一部+マンニトールとブレンドし;次に、この混合物をさらなるマンニトールとブレンドするように、改変することができる。次に、残りのマンニトール及びデンプングリコール酸ナトリウムを該混合物とブレンドし;最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0311】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルクの一部+マンニトールとブレンドし;次に、この混合物をマンニトール+デンプングリコール酸ナトリウムの混合物とブレンドし;最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドすることによって実施することができる。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0312】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルク+マンニトール+デンプングリコール酸ナトリウムの混合物とブレンドし;次に、この混合物を残りの賦形剤(ステアリン酸マグネシウムを除く)とブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0313】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルク+デンプングリコール酸ナトリウムの混合物とブレンドし;次に、この混合物をマンニトールとブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0314】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルクとブレンドし;次に、この混合物をマンニトールとブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドを錠剤プレス又は錠剤機で圧縮する。
【0315】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をタルク+マンニトールの混合物とブレンドし;次に、この混合物を残りのマンニトールとブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0316】
該プロセスの別の改変は、トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物をマンニトールとブレンドし;次に、この混合物をタルク+マンニトールの混合物とブレンドすることによって実施することができる。最後に、ステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0317】
該プロセスの別の改変は、上記のプロセスの各々において、ステアリン酸マグネシウムの一部をトランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物とブレンドすることによって実施することができる。最後に、残りのステアリン酸マグネシウムを先の混合物とブレンドする。該ブレンドは、錠剤プレス又は錠剤機で圧縮することができる。
【0318】
(6.13 トランスノルセルトラリンのコーティング錠の製造プロセス)
上記の錠剤の各々をコーティング錠として製造することもできる。該コーティングは、3つのタイプのうちの1つであることができ;これらには、圧縮コーティング、フィルムコーティング、又はゼラチンコーティングが含まれる。該コーティングは各々、着色剤を含んでいても、含んでいなくてもよく;これらの着色剤は、二酸化チタン、並びに/又は色素などの可溶性染料、並びに/又はレーキ及び/もしくは着色した酸化鉄などの不溶性染料であってもよい。
【0319】
(6.14 トランスノルセルトラリン塩の固体形態)
結晶形態のトランスノルセルトラリンの塩を同定するために、偏光顕微鏡法(PSM)を用いて、トランスノルセルトラリンの16種の塩:塩酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、L-酒石酸塩、ベシル酸塩、トシル酸塩、L-リンゴ酸塩、S-マンデル酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、臭化水素酸塩、及びピログルタミン酸塩を調べた。
【0320】
試料を、Nikon Microphot偏光顕微鏡を用いて観察した。試料を、1.600の屈折率を有するカーギル液中で調製した。試料を、交差偏光を用いて観察し、4分の1波長板とともに交差偏光を用いてイメージングした。トランスノルセルトラリン塩の結晶化度の最初の決定は、交差偏光下での直接的な観察により行なった(表2)。試験した塩で、交差偏光下で観察したときに複屈折性を欠く固形物を含むものは、非晶質又は部分非晶質固体を示すものであるが、これらはいずれも除外した。
【表14】

【0321】
各々の塩は、コハク酸塩を除いて、交差偏光下で良好な複屈折性を示し、結晶性固体を示した。晶癖は、細い針状から大きな板状まで多岐にわたっていた(表2)。
【0322】
(6.15 トランスノルセルトラリン塩の熱特性)
実施例6.14のトランスノルセルトラリンの塩の各々を、直接走査熱量測定(DSC)又はホットステージ法を用いて分析した。DSC分析は全て、Perkin Elmer DSC 7示差走査熱量計を用いて実施した。各々の試料を、窒素パージ下、10℃/分の速度で、25℃の出発温度から325℃の最終温度まで加熱し、ピンホール付きのクリンプパン(crimped pan)で分析した。ホットステージ試料は、Linkam Hotstage THMS 600を備えたNikon Microphot偏光顕微鏡を用いて分析した。ホットステージ炉(hotstage furnace)の上に位置し、2つの層(層の間に空気のスペースを含む2枚のカバーガラス)とホットステージカバーの分だけ上から隔離されたカバーガラスの上に、各々の試料を置き、10℃/分の速度で加熱した。DSC及びホットステージ法の結果を表3に示す。
【表15】

【0323】
(6.16 トランスノルセルトラリン塩の水分含有量及び吸湿性)
実施例6.14のトランスノルセルトラリンの16種の塩を水分含有量及び吸湿性について分析した。水含有量を決定するために、各々の塩を、EM Scientific Aquastar C3000滴定装置を用いた電量滴定により分析した。試料サイズは、18mg〜134mgの範囲であった。各々の塩は、Perkin Elmer TGA 7熱重量分析計(TGA)を用いて分析した。試料は、10℃/分の速度で、25℃の初期温度から325℃まで加熱した。VTI SGA-100対称蒸気吸着分析計を用いて、各々の塩の水分収着等温線を作成した。試料は、分析前に乾燥させることなく、受け取った通りの状態で用いた。平衡基準は、各々の相対湿度(RH)段階における5分又は180分での0.01wt%変化のうちの悪い方とした。温度は25℃に固定し、相対湿度段階(25〜95%〜25%)は5%ずつ高くした。各々の試料について、連続分析で分析を繰り返した(試料を分析装置から取り除かなかった)。試料サイズは、18mg〜35mgの範囲であった。
【0324】
VTI水分等温線データ、水分含有量(KF)、及びTGAデータを表4にまとめる。
【表16】

【0325】
VTIは、トランスノルセルトラリンのクエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、L-酒石酸塩、S-マンデル酸塩、及びピログルタミン酸塩が、25〜95%のRHで顕著な吸湿(2.7〜17.3%)を示すことを示した(表4)。
【0326】
(6.17 トランスノルセルトラリン塩の水溶解度)
トランスノルセルトラリンの12種の塩:塩酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、L-酒石酸塩、ベシル酸塩、トシル酸塩、L-リンゴ酸塩、酢酸塩、及び安息香酸塩を水への溶解度について調べた。各々の塩について、脱イオン水中に過剰な固体を含む飽和溶液を、スクリューキャップ付きの20mL透明ガラスシンチレーションバイアル中で調製した。全ての試料を、平衡に達するまで最大9日間、周囲条件で、300rpmで振盪させた。HPLC法を用いて溶解度を決定した(表5)。
【表17】

【0327】
試験した塩のうち、塩酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、ベシル酸塩、L-リンゴ酸塩、及び酢酸塩は、水への十分な溶解度を示した塩であった(0.99〜5.49mgA/mL)。
【0328】
(6.18 水性緩衝液中でのトランスノルセルトラリン塩の溶解度)
実施例6.4のトランスノルセルトラリンの12種の塩を、以下の水性緩衝液系へのその溶解度について調べた:疑似胃液(SGF)、0.05M酢酸塩緩衝液(pH4.5)、及び疑似腸液(SIF)。過剰な固体を含む飽和溶液を20mL透明ガラスシンチレーションバイアル中で調製した。USP28(USP28 試液(Test Solutions) p2855、滴定溶液(Volumetric Solutions) p2863)に従って、疑似胃液(pH1.0、約0.1N HCl、0.03M NaCl、酵素なし)、疑似腸液(pH6.8、0.05M KH2PO4、約0.02N NaOH、酵素なし)、及び酢酸塩緩衝液(pH4.5、0.02M酢酸ナトリウム、0.03M酢酸)を調製した。全ての試料を、平衡に達するまで最大9日間、周囲条件で、300rpmで振盪させた。HPLC法を用いて溶解度を決定した(表6)。
【表18】

【表19】

【表20】

【0329】
(6.19 溶解度実験から回収されたトランスノルセルトラリン塩の特徴付け)
溶解度実験の懸濁液(実施例6.17及び6.18)から回収された固体を真空濾過し、40℃で一晩乾燥させた。各々の試料を、Perkin Elmer DSC 7示差走査熱量計を用いて分析した。各々の試料を、窒素パージ下、10℃/分の速度で、25℃の出発温度から325℃の最終温度まで、ピンホール付きのクリンプパンで加熱した。表7を参照されたい。
【0330】
表7に示すように、トランスノルセルトラリンの塩酸塩は、固体を脱イオン(DI)水及びSGF中で平衡化した場合に、一水和物形態へと変換するようであった。該塩酸塩一水和物塩のDSCは、100℃前後での吸熱と、その後の(ホットステージ法で確認される)約300℃での無水昇華物の融解を示した。この水和は、棒状から板状への晶癖の変化によっても示された。図1A及び1Bを参照されたい。試験したさらなる塩は、SGF中での溶解度実験の間に、HCl一水和物へと変換するようであった(表7)。SGFは、次に一水和物へと変換し得る塩酸塩を形成するのに十分な塩酸(0.23M)を含むので、この変換は予想外というわけではなかった。酢酸塩緩衝液中での溶解度実験から回収された固体は、そのもとの塩形態から変化しないようであった。該塩の一部(酢酸塩、マレイン酸塩、ベシル酸塩、及びL-リンゴ酸塩)は全て、SIF中で類似の形態へと変換するようである(表7)。この未知の形態のDSCは、わずかな融解熱(29〜49J/g)を伴う、100℃前後での単一吸熱を示す。
【表21】

【0331】
(6.20 塩酸塩、酢酸塩、及びL-リンゴ酸塩の反復実験)
以下の実験を反復した。さらなるロットのトランスノルセルトラリンの塩酸塩、酢酸塩、及びL-リンゴ酸塩を、(i)熱特性の一貫性については、DSC及び/又はホットステージ法によって、かつ(ii)水分特性の一貫性については、KF、TGA、及びVTIデータによって検討した。
【0332】
上記の実施例6.2の手順に従ってホットステージ法で測定したとき、第2のロットのトランスノルセルトラリンの塩酸塩は166℃で昇華し、昇華物は249℃で融解した。これらの結果は、(170℃で昇華し、昇華物が250℃で融解した)第1のロットの結果と十分に一致した。
【0333】
上記実施例6.15の手順に従ってDSCで測定したとき、第2及び第3のロットのトランスノルセルトラリン酢酸塩は、第1の酢酸塩ロットと同様の熱特性を示した(表8)。
【表22】

【0334】
DSCで測定したとき、第2のロットのトランスノルセルトラリンL-リンゴ酸塩は、第1の酢酸塩ロットと同様の熱特性を示したが、第3のロットは、他のロットよりも約8℃低く融解した(表9)。実験は全て、上記の実施例6.15の手順に従って実施した。
【表23】

【0335】
第2のロットのトランスノルセルトラリンの塩酸塩を、吸湿性について、上記の実施例6.16の手順に従ってVTIで分析した。第1の塩酸塩ロットと比べて、結果はよく似ていた(25〜95%相対湿度で0.01%重量増のVTI吸着;95%〜25%相対湿度で0.01%重量減のVTI脱離)。
【0336】
トランスノルセルトラリンの第2及び3のロットの酢酸塩及びL-リンゴ酸塩も分析し、上記の実施例6.3の手順に従って第1のロットの結果と比較した。結果を表10に示す。25〜95%相対湿度で他のL-リンゴ酸塩ロットよりも>5%多く水分を吸着したL-リンゴ酸塩ロット3を除き、試験した第2及び第3のロットは全て、第1のロットと同様の水分等温線を有していた。
【表24】

【0337】
(6.21 トランスノルセルトラリン塩の固体安定性)
トランスノルセルトラリンの塩を様々な条件下での固体安定性について試験した。該HCl塩の固体試料を、HDPE蓋で閉じられた、二重ポリエチレン(polyehylene)ライニングされた高密度ポリエチレン(HDPE)容器に入れ、25℃/60%相対湿度又は40℃/75%相対湿度で貯蔵した。試料をHPLCで分析した。トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物は、両方の条件で少なくとも6カ月間、及び25℃/60%相対湿度で2年間安定であり、それぞれ、0.05%未満及び0.1%未満の不純物を示した。
【0338】
(6.22 トランスノルセルトラリン塩酸塩の多形変換研究)
トランスノルセルトラリン塩酸塩は少なくとも2つの結晶形態で存在する。形態Aは結晶性無水物質であり、形態Bは結晶性一水和物である。偏光顕微鏡画像から、この2つの結晶形態は、異なる晶癖を有することが示されている。該無水形態は、細長い刃状を示すが(図1A)、該水和物形態は、ほぼ四角の薄板状を示す(図1B)。ステージを回転させたとき、両試料とも、交差偏光子下で複屈折性を示して、消衰する。
【0339】
水性媒体中でのトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の水和物形態への変換の研究を、インサイチュ・ラマンモニタリングを用いて調べた。このシステムは、ラマンモニタリングに好適であることが示され、70mg/mLの水中の無水/水和物スラリー中の水和物形態の検出限界は、5.7%未満であった。
【0340】
ラマン分光法は、オンライン又はインサイチュでの反応モニタリング用のKaiser Optical Systems社の分散型RamanRXN3を用いて実施した。RamanRXN3システムは、外部キャビティを安定化したダイオードレーザーを用いて、785nmの励起波長を利用する。"浸漬プローブを用い、プローブの先端を約100mWのレーザー出力にして、全てのスペクトルを取得した。異なる露光時間及びスペクトル積算回数を、2つの乾燥試料の分析に用いた。露光時間4秒、積算2回を、全ての形態変換実験のモニタリングに用いた。波長及びレーザー波長の較正は、それぞれ、内部ネオン標準、及びダイヤモンドラマンシフト標準を用いて行なった。強度の較正は、Kaiser Raman較正付属器を用いて行なった。
【0341】
この2つの形態について2850〜3150cm-1及び200〜1600cm-1領域で取得したラマンスペクトルは、この2つの形態がRaman法により識別可能であることを示した。特に、領域660〜715cm-1及び1430〜1490cm-1は、各々の形態に特徴的なピークがほとんど重ならないことを示している。実験結果から、領域660〜720cm-1及び1430〜1490cm-1のピークはいずれも、トランスノルセルトラリン塩酸塩の2つの結晶形態間の変換の後に生じる関心対象のピークとは重ならない可能性が高いことが確認された。
【0342】
トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の一水和物形態への変換を水中でモニタリングした。トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の水スラリーについて、ピーク比I(677cm-1)/I(695cm-1)を観測した。ピーク強度比I(677cm-1)/I(695cm-1)を基にすると、該変換の開始前に、約1.1時間の誘導時間が見られた。該変換の最後は、スラリーの開始から約2時間と推定された。ラマン領域660〜710cm-1は、該水和物形態に特徴的なピークの出現、及びトランスノルセルトラリン塩酸塩の無水形態に特徴的なピークの消失を示した。該変換のラマンモニタリングの最後(約2時間10分後)に回収された固体のXRPD分析は、該水和物形態と一致し、少量の無水形態が検出された。この少量の無水形態は、変換しなかった容器の壁に存在する固体によるものである可能性がある。さらに、混合物中の該無水形態のラマン検出限界は推定されなかった。
【0343】
水、酵素を含まない疑似胃液(SGF)及び疑似腸液(SIF)、並びに0.1N HCl中におけるトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の該水和物形態への変換を37℃でモニタリングした。水、SGF、及び0.1N HCl中における形態変換は、約1.3時間(水及びSGF)〜2時間(0.1N HCl)後に始まることが示され、3〜4時間以内に終了した。該形態変換は、SIF中で顕著により遅く、小規模の場合、約10時間で、及び大規模の場合、19時間で始まり、約12.5時間(小規模)〜36時間(大規模)後に終わった。
【0344】
全体としては、水及び疑似胃液でも同様の結果が得られ、形態変換の開始は約1.3時間で検出され、水と比べると、疑似胃液中における変換はわずかに速かった。完全な変換は、この2つの媒体中で3〜4時間以内に起こると推定された。わずかにより長い誘導時間が0.1N HClで観察され、大規模の場合、約2〜2.3時間であった。完全変換は約4時間で観察された。結果は、疑似腸液中におけるトランスノルセルトラリン塩酸塩の形態変換が非常に遅く、小規模の場合、10時間で、及び大規模の場合、19時間と推定され、約12.5時間(小規模)〜36時間(大規模)後に終わることを示唆する。各実験の最後に回収された固体のXPRD分析は、該水和物形態と一致し、少しの無水形態が存在する場合も、存在しない場合もあった。この少量の無水形態は、スラリーの時点で容器の壁に残存する固体によるものである可能性がある。
【0345】
(6.23 結晶性トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の特徴付け)
トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物(形態A)の試料を単結晶構造解析に供した。構造は単結晶X線回折により決定した。データ収集、整約、及び構造決定は、cGMP仕様に準拠しないで実施した。
【0346】
(実験)
約0.29×0.08×0.02mmの寸法を有する、無色細針状のC16H16Cl3Nを、Paratone Nオイルでコーティングし、小ファイバーループ中に浮遊させ、ランダムな配向で冷却窒素ガス流中に入れた。予備検査及びデータ収集は、Bruker D8 APEX II CCD密封管回折装置でCu Kα線(λ=1.54178Å)を用いて行なった。
【0347】
データ収集、インデキシング、及び最初の胞の精密化は全て、APEX IIを用いて行なった。APEX II, 2005, Bruker AXS社, Analytical X-ray Systems, 5465 East Cheryl Parkway, Madison WI 53711-5373を参照されたい。フレーム積分及び最終的な胞の精密化は、SAINTソフトウェアを用いて行なった。精密化は、SHELXTLを用いてPCで行なった。SAINTバージョン6.45A, 2003, Bruker AXS社, Analytical X-ray Systems, 5465 East Cheryl Parkway, Madison WI 53711-5373;SHELXTL V6.12, 2002, Bruker AXS社, Analytical X-ray Systems, 5465 East Cheryl Parkway, Madison WI 53711-5373を参照されたい。
【0348】
データ収集のための最終的な胞パラメータ及び配向行列は、5.26°<θ<58.04°の範囲の1553の反射に対する最小二乗精密化から決定した。プログラムXPREPにより、空間群はC2(no. 5)と決定された。SHELXTLバージョン6.12, Bruker AXS社, Madison, Wisconsin, USA, 2002におけるBruker, XPREPを参照されたい。
【0349】
データは、173±2Kの温度で、30秒間のフレーム露光及び0.5°のフレーム幅で、一連のファイ及びオメガスキャンの組合せを用いて収集した。データは、116.08°の最大2θ値まで収集した。
【0350】
合計2910の反射を回収し、そのうち1533が固有であった。該データにローレンツ補正及び偏光補正を適用した。Cu Kα線について、線形吸収係数は52.75cm-1である。SADABSを用いた実験による吸収補正を適用した。Blessing, R. H.の文献、「SADABS、Blessing R.に基づく、Siemens CCDを用いた吸収補正のためのプログラム(SADABS, Program for absorption correction using Siemens CCD. Based on Blessing R.)」(Acta Cryst. 1995, A51, 33) を参照されたい。透過係数は0.3099〜0.9018の範囲であった。等価反射の強度を平均化した。強度に基づくと、平均化のための同意係数は4.1%であった。
【0351】
(構造の解明及び精密化)
構造は、SHELXS-97を用いる直接法により解明した。Sheldrick, G. M.の文献、「SHELX97、結晶構造の解明のためのプログラム(SHELX97, A Program for the Solution of Crystal Structure)」(University of Gottingen, Germany, 1997)を参照されたい。水素原子は、HFIXコマンドを用いてその予想される化学的位置に置かれたか、又は最終差フーリエで位置が特定され、それらが結合している原子に関する等方性Uijを用いる最小二乗の最終サイクルに含められた。非水素原子は全て異方性に精密化された。構造は、関数:
Σw(|FO2-|FC2)2
を最小化することにより、全行列最小二乗法で精密化した。重量wは、1/[σ2(Fo2)+(0.0450P)2+(0.3158P)]と定義され、ここで、P=(Fo2+2Fc2)/3である。散乱係数は、「結晶学の国際表(International Tables for Crystallography)」(International Tables for Crystallography, Vol. C, Kluwer Academic Publishers:Dordrecht, The Netherlands, 1992)の表4.2.6.8及び6.1.1.4から取った。精密化に用いた3171の反射のうち、Fo2>2σ(Fo2)の反射のみをRの計算に用いた。合計1553の反射を計算に用いた。精密化の最終サイクルは、可変パラメータを含み、以下の非加重同意係数及び加重同意係数に収束した(最大パラメータシフトは、その推定標準偏差と本質的に等しかった)。
【数1】

単位重量の観測値の標準偏差は1.074であった。最終差フーリエにおける最大ピークは高さ1.115e/Å3であった。最小負ピークは高さ-0.288e/Å3であった。絶対構造の決定のための因子は0.04(4)まで精密化された。Flack, H. D.らの文献(Acta Cryst. 1983, A39, 876)を参照されたい。
【0352】
(結果)
単斜晶胞パラメータ及び計算体積は:a=16.834(3)、b=5.2264(9)、c=19.059(3)Å、α=90.00、β=113.103(6)、γ=90.00°、V=1542.4(4)Å3である。トランスノルセルトラリンの式量は328.65g/molで、Z=4であり、計算密度は1.415g cm-3である。空間群はC2(no. 5)と決定された。結晶データ及び結晶学的データ収集パラメータの概要を表11に示す。
【0353】
0.0566(5.66%)というR値が示すように、得られた構造の品質は、中等度〜高いと考えられる。この構造のR値は、最も正確に決定された構造に付けられる0.02〜0.06というR値のちょうど内側にある。Glusker, Jenny Pickworth;Trueblood, Kenneth N.の文献、「結晶構造解析:プライマー、第2版(Crystal Structure Analysis:A Primer, 2nd ed)」(Oxford University press:New York, 1985;p.87)。
【表25】

【0354】
(計算上のX線粉末回折パターン)
Cu線について、計算上のX線粉末回折パターン(XRPD)のパターンを、PowderCell 2.3、並びに単結晶データから得た原子座標、空間群、及び単位胞パラメータを用いて作成した。Kraus, W.;Nolze, G.の文献、「Windowsバージョン2.3のためのPowderCell(PowderCell for Windows Version 2.3)」(Federal Institute for Materials Research and Testing, Berlin Germany, EU, 1999)を参照されたい。
【0355】
トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の計算上のXRPDパターンを図2に示す。実験によるXRPDパターンを図3に示す。実験によるパターン中のピークは全て、計算上のXRPDパターンで示されており、バルク原料が単相である可能性が高いこと示している。XRPDパターンにおける計算上の強度と観測された強度の差は、優先配向によるものである可能性が高い。優先配向とは、通常板状又は針状の結晶が、ある程度の秩序をもって整列する傾向のことである。優先配向は、XRPDパターンにおけるピーク強度に影響を及ぼし得るが、ピーク位置には影響を及ぼさない。ピーク位置のわずかなシフトは、温度の関数としての単位胞パラメータのわずかなシフトの結果である可能性が高い。計算上のXRPDパターンは、173Kで収集された単結晶データから作成されたが、実験による粉末パターンは周囲温度で収集された。構造の品質を向上させるために、単結晶分析では通常、低温でのデータ収集が用いられる。
【0356】
(ORTEP及び充填図)
ORTEP図は、ORTEP IIIを用いて作成した。Johnson, C. K.の文献、「ORTEPIII、レポートORNL-6895(ORTEPIII, Report ORNL-6895)」(Oak Ridge National Laboratory, TN, U.S.A. 1996)、Farrugia, L.J.の文献、「Windows V1.05のためのOPTEP-3(OPTEP-3 for Windows V1.05)」(J. Appl. Cryst. 1997, 30, 565)を参照されたい。原子は、50%確率の異方性熱振動楕円体で表されている。充填図は、CAMERONモデリングソフトウェアを用いて作成した。Watkin, D. J.;Prout, C .K.;Pearce, L. J.の文献、「CAMERON」(Chemical Crystallography Laboratory, University of Oxford, Oxford, 1996)を参照されたい。さらなる図は、Mercury 1.3モデリングソフトウェアを用いて作成した。Bruno, I. J. Cole, J. C. Edgington, P. R. Kessler, M. K. Macrae, C. F. McCabe, P. Pearson, J.、及びTaylor, R.の文献(Acta Crystallogr., 2002 B58, 389)を参照されたい。水素結合は破線で表示されている。
【0357】
トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物のORTEP図を図4に示す。図4に示す非対称単位は、単プロトン化トランスノルセルトラリン分子及び塩素アニオンを含む。
【0358】
(絶対配置)
トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の絶対配置は、結晶による異常X線散乱の解析によって決定することができる。次に、異常散乱の強度の差を、各エナンチオマーについての計算上の散乱強度と比較する。次に、これらの測定された強度及び計算上の強度をFlack因子というパラメータに当てはめることができる。Flack, H. D.;Bernardinelli, G.の文献(Acta Cryst. 1999, A55, 908);Flack, H. D.;Bernardinelli, G. J.の文献(Appl. Cryst. 2000, 33, 1143)を参照されたい。構造を解明した後、データの質をその反転-識別能力(inversion-distinguishing power)について評価する。これは、Flackパラメータの標準不確かさの検証により行なわれる。トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物について、該標準不確かさ(u)は0.07であり、これは、エナンチオピュア的に十分な識別能力と分類される。図4に示すトランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の結晶構造の測定されたFlack因子は-0.13であり、標準不確かさは0.04である。該分子は、それぞれ、S配置及びR配置と指定された、C7及びC14に位置する2つの不斉中心を含む(図4参照)。
【0359】
(6.24 トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物のX線粉末回折分析)
120°の2θ範囲を有するCPS(湾曲位置感受性)検出器を備えたInel XRG-3000回折装置を用いて、トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物のX線粉末回折(XRPD)分析を実施した。0.03°の2θの分解能で約4°の2θから開始するCu-Kα線を用いて、リアルタイムデータを収集した。管電圧及び管電流は、それぞれ、40kV及び30mAに設定した。モノクロメータスリットを160μmずつ5mmに設定した。パターンは2.5〜40°の2θで表示される。分析のために、薄壁ガラスキャピラリー中に充填することによって試料を調製した。各キャピラリーは、データ取得中のキャピラリーの回転を可能にするようモーターが取り付けられた、ゴニオメータのヘッドに搭載された。試料を300秒間分析した。シリコン参照標準を用いて機器の較正を行なった。実験によるXRPDパターンは、cGMP仕様に準拠して収集した。表12は、トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の観測されたXRPDピークを示す。
【表26】

【0360】
表13は、トランスノルセルトラリン塩酸塩無水物の顕著なXRPDピークを示す。計算上のピークと実験によるピークの差は、優先配向及び粒子統計効果によるものである。
【表27】

【0361】
(6.25 結晶性トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物の特徴付け)
トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物(形態B)の試料を単結晶構造分析に供した。単結晶データ収集、構造解明、及び精密化は、cGMP仕様に準拠しないで実施した。
【0362】
(実験)
約0.60×0.40×0.07mmの寸法を有する、無色針状のトランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物、C16H18Cl3NO[Cl,C16H16Cl2N,H2O]を、ランダムな配向でガラスファイバー上に載せた。予備検査及びデータ収集は、グラファイト結晶の入射ビームモノクロメータを備えたNonius KappaCCD回折装置でMo Kα線(λ=0.71073Å)を用いて行なった。精密化は、SHELX97を用いてLINUX PCで行なった。Sheldrick, G. M.の文献、「SHELX97、結晶構造精密化のためのプログラム(SHELX97, A Program for Crystal Structure Refinement)」(University of Gottingen, Germany, 1997)を参照されたい。
【0363】
データ収集のための胞定数及び配向行列は、3°<θ<27°の範囲の6712の反射の設定角度を用いて最小二乗精密化から得られた。DENZO/SCALEPACKからの精密化されたモザイク性は0.47°であり、良好な結晶品質を示した。Otwinowski, Z.;Minor, W.の文献(Methods Enzymol., 1997, 276, 307)を参照されたい。空間群は、ABSENプログラムにより決定した。McArdle, P. C. J.の文献(Appl. Cryst. 1996, 29, 306)を参照されたい。以下の条件:0k0 k=2nの系統的存在から、及びその後の最小二乗精密化から、空間群はP21(no. 4)と決定された。これは、キラル空間群である。データは、150±1Kの温度で、54.92°の最大2θ値まで収集した。
【0364】
DENZO-SMNを用いてフレームを積分した。Otwinowski, Z.;Minor, W.の文献(Methods Enzymol., 1997, 276, 307)を参照されたい。合計6712の反射を収集し、そのうち3171が固有であった。該データにローレンツ補正及び偏光補正を適用した。Mo Kα線について、線形吸収係数は0.543mm-1である。SCALEPACKを用いた実験による吸収補正を適用した。上掲書を参照されたい。透過係数は0.892〜0.963の範囲であった。等価反射の強度を平均化した。強度に基づくと、平均化のための同意係数は4.5%であった。
【0365】
(構造の解明及び精密化)
構造は、SIR2004を用いる直接法により解明した。Burlaらの文献(J. Appl. Cryst. 2005, 38, 381)を参照されたい。残りの原子は、その後の差フーリエ合成で位置が特定された。水素原子は、精密化に含められたが、それらが結合している原子に乗るように制限された。構造は、関数:
Σw(|FO2-|FC2)2
を最小化することにより、全行列最小二乗法で精密化した。重量wは、1/[σ2(Fo2)+(0.0450P)2+(0.3158P)]と定義され、ここで、P=(Fo2+2Fc2)/3)である。散乱係数は、「結晶学の国際表(International Tables for Crystallography)」(International Tables for Crystallography, Vol. C, Kluwer Academic Publishers:Dordrecht, The Netherlands, 1992)の表4.2.6.8及び6.1.1.4から取った。精密化に用いた3171の反射のうち、Fo2>2σ(Fo2)の反射のみをRの計算に用いた。合計2757の反射を計算に用いた。精密化の最終サイクルは、210個の可変パラメータを含み、以下の非加重同意係数及び加重同意係数に収束した(最大パラメータシフトは、その推定標準偏差と本質的に等しかった)。
【数2】

単位重量の観測値の標準偏差は1.04であった。最終差フーリエにおける最大ピークは高さ0.35e/3であった。最小負ピークは高さ-0.37e/3であった。絶対構造の決定のための因子は-0.13(7)まで精密化された。Flack, H. D.らの文献(Acta Cryst. 1983, A39, 876)を参照されたい。
【0366】
(結果)
単斜晶胞パラメータ及び計算体積は:a=7.2962(2)Å、b=7.5569(2)Å、c=15.2870(5)Å、α=90.00、β=90.0852(14)、γ=90.00°、V=842.87(4)Å3である。該一水和物について、式量は346.69g/molで、Z=2であり、1.366g cm-3の計算密度が得られる。空間群は、P21(no. 4)と決定された。これは、キラル空間群である。結晶データ及び結晶学的データ収集パラメータの概要を表14に示す。0.041(4.1%)というR値が示すように、得られた構造の品質は高い。通常、0.02〜0.06の範囲のR値は、最も正確に決定された構造に付けられる。Glusker, Jenny Pickworth;Trueblood, Kenneth N.の文献、「結晶構造解析:プライマー、第2版(Crystal Structure Analysis:A Primer, 2nd ed)」(Oxford University press:New York, 1985;p.87)。
【表28】

【0367】
(計算上のX線粉末解析パターン)
Cu線について、計算上のX線粉末回折パターン(XRPD)のパターンを、PowderCell 2.3、並びに単結晶データからの原子座標、空間群、及び単位胞パラメータを用いて作成した。Kraus, W.;Nolze, G.の文献、「Windowsバージョン2.3のためのPowderCell(PowderCell for Windows Version 2.3)」(Federal Institute for Materials Research and Testing, Berlin Germany, EU, 1999)を参照されたい。
【0368】
トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物の計算上のXRPDパターンを図5に示す。実験によるXRPDパターンを図6に示す。実験によるパターン中のピークは全て、計算上のXRPDパターンで示されており、バルク原料が単相である可能性が高いこと示している。ピーク位置のわずかなシフトは、温度の関数としての単位胞パラメータのわずかなシフトの結果である可能性が高い。計算上のXRPDパターンは、150Kで収集された単結晶データから作成されたが、実験による粉末パターンは周囲温度で収集された。構造の品質を向上させるために、単結晶分析では通常、低温でのデータ収集が用いられる。
【0369】
(ORTEP及び充填図)
ORTEP図は、ORTEP IIIを用いて作成した。Johnson, C. K.の文献、「ORTEPIII、レポートORNL-6895(ORTEPIII, Report ORNL-6895)」(Oak Ridge National Laboratory, TN, U.S.A. 1996)、Farrugia, L.J.の文献、「Windows V1.05のためのOPTEP-3(OPTEP-3 for Windows V1.05)」(J. Appl. Cryst. 1997, 30, 565)を参照されたい。原子は、50%確率の異方性熱振動楕円体で表されている。充填図は、CAMERONモデリングソフトウェアを用いて作成した。Watkin, D. J.;Prout, C .K.;Pearce, L. J.の文献、「CAMERON」(Chemical Crystallography Laboratory, University of Oxford, Oxford, 1996)を参照されたい。さらなる図は、Mercury 1.4.1を用いて作成した。Bruno, I. J. Cole, J. C. Edgington, P. R. Kessler, M. K. Macrae, C. F. McCabe, P. Pearson, J.、及びTaylor, R.の文献(Acta Crystallogr., 2002 B58, 389)を参照されたい。水素結合は破線で表示されている。
【0370】
トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物のORTEP図を図7に示す。示された非対称単位は、単プロトン化トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物分子、塩素アニオン、及び完全に占められた水和水(water of hydration)を含む。塩形成は、フーリエ地図から直接、一級アミン及び水分子上の水素原子の位置を特定することにより確認された。
【0371】
(絶対配置)
トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物の絶対配置は、結晶による異常X線散乱の解析によって決定することができる。次に、異常散乱の強度の差を、各エナンチオマーについての計算上の散乱強度と比較する。次に、これらの測定強度及び計算上の強度をFlack因子というパラメータに当てはめることができる。Flack, H. D.;Bernardinelli, G.の文献(Acta Cryst. 1999, A55, 908);Flack, H. D.;Bernardinelli, G. J.の文献(Appl. Cryst. 2000, 33, 1143)を参照されたい。構造を解明した後、データの質をその反転-識別能力について評価する。これは、Flackパラメータの標準不確かさの検証により行なわれる。図7に示されるトランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物結晶構造の測定されたFlack因子は-0.13であり、標準不確かさは0.07である。トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物について、該標準不確かさ(u)は0.07であり、これは、エナンチオピュア的に十分な識別能力と分類される。この大きさの誤差は、化合物が真にエナンチオピュアであることを示し、かつ絶対構造決定が妥当であることを示すために、先験的な生物学的、化学的、又は物理的証拠が必要であることを意味する。測定されたFlack因子は、結晶学的データのみに基づく検証を可能にする範囲の外側にあるが、絶対配置は、トランスノルセルトラリン塩酸塩分子との比較によって無水結晶構造から確認することができる。したがって、図7中のモデルの絶対配置は正確である。トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物分子は、それぞれ、S配置及びR配置と指定された、C7及びC14に位置する2つの不斉中心を含む(図7参照)。
【0372】
(6.26 トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物のX線粉末回折分析)
120°の2θ範囲を有するCPS(湾曲位置感受性)検出器を備えたInel XRG-3000回折装置を用いて、トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物のX線粉末回折(XRPD)分析を行なった。0.03°の2θの分解能で約4°の2θから開始するCu-Kα線を用いて、リアルタイムデータを収集した。管電圧及び管電流は、それぞれ、40kV及び30mAに設定した。モノクロメータスリットを160μmずつ5mmに設定した。パターンは2.5〜40°の2θで表示される。分析のために、薄壁ガラスキャピラリー中に充填することによって試料を調製した。各キャピラリーは、データ取得中のキャピラリーの回転を可能にするようモーターが取り付けられた、ゴニオメータのヘッドに搭載された。試料を300秒間分析した。シリコン参照標準を用いて機器の較正を行なった。実験によるXRPDパターンは、cGMP仕様に準拠して収集した。表15は、トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物の観測されたXRPDピークを示す。
【表29】

【0373】
表16は、トランスノルセルトラリン塩酸塩一水和物の顕著なXRPDピークを示す。計算上のピークと実験によるピークの差は、優先配向及び粒子統計効果によるものである。
【表30】

【0374】
(6.27 さらなるトランスノルセルトラリンHCl安定性試験)
通常の安定性試験では、活性薬物を用いて賦形剤ブレンド又は完成剤形を調製した。該材料は、密封容器、好ましくは、熱誘導ホイルで密封した高密度ポリエチレン(HDPE)ボトル中で貯蔵した。該試料が、約2週間〜約6カ月間、約40℃及び約75%相対湿度(RH)に曝露されるように、湿度を制御したオーブンに該材料を入れた。
【0375】
表17は、HPLCを用いた、6カ月の貯蔵を経た錠剤の検定及び不純物データを示す。典型的なHPLCクロマトグラムを図8に示す。t0では、検定が約93%であったのに対し、総不純物は0.89%であり、そのうち0.17%は、テトラロンによるものである可能性があった。未知不純物(RT約18分、0.67%)もt0分析時に検出された。30℃/65%RH及び25℃/60%RHで貯蔵した錠剤の検定値は、初期値93.4%から、6カ月の時点を経て、90%強のままであったが、40℃/75%RHで貯蔵した錠剤の検定値は、80%まで低下した。40℃/75%RHでは、主な分解物はテトラロンであり;レベルは、初期値0.17%から6カ月での4.63%に増加した。対照的に、25℃/60%RHでの未知不純物のレベルは、1カ月以内に初期値0.67%から1.84%に上昇し、その後、6カ月の時点で0.23%まで低下した。
【表31】

【0376】
分解物の構造は、そのHPLC保持時間、UVスペクトル、及びLC-MS結果により、式IIを有するものであると確認された。この分解物の分子量は454である。その化学構造を以下に示す。
【化4】

【0377】
さらなる試験からのデータにより、マンニトール中のマンノースの0.005%が、2週間で約0.12%の共役分解物形成を生じさせること、及びマンニトール中のマンノースの0.01%が、2週間で約0.25%の共役分解物形成を生じさせることが示された。共役分解物の量は約2週間で横ばいになり、その後、ストレス時間が増加するにつれてわずかに減少した。式IIの分解物の形成は温度にも左右される。より高い温度(例えば、>35℃)では、式IIの分解物は分解を受けた。
【0378】
(6.28 マンニトール賦形剤純度の分析)
カプセルに対するさらなる安定性試験から、Aclar(登録商標)(ポリクロロトリフルオロエチレンフィルム、Honeywell Int'l社)中に包装された錠剤中のブレンドが、開放皿条件でのブレンドよりも(約4倍)安定であることが示された。マンニトール中のマンノースの存在は、表18に示すようなHPLC-コロナ荷電化エアゾール検出器(HPLC-CAD)及びイオンクロマトグラフィー(IC)法を用いて決定した。
【表32】

【0379】
(HPLC-CAD法)
この方法では、以下の機器/条件を用いた。
カラム:Sugar SZ5532
カラムサイズ:6mm ID×150mm L
カラム温度:65℃
検出器:コロナCAD
移動相:水中の80%アセトニトリル
流速:1mL/分
注入量:100μL
【0380】
窒素を用いてHPLCカラム溶出液を噴霧し、液滴を乾燥させて、検体粒子を生成させる。窒素の二次ストリームが正電荷を帯びるようになり、電荷を検体粒子に移す。その後、電荷を測定し、存在する検体の分量に正比例するシグナルを発生させる。
【0381】
(イオンクロマトグラフィー(IC)法)
この方法では、以下の機器/条件を用いた。
【表33】

【0382】
IC法に用いた勾配プログラム:0分で100%移動相A;18分で100%移動相B;30分で100%移動相B。
【0383】
印加電位波形、IC法:
【表34】

【0384】
各方法の結果は概して同様であったが、HPLC-CAD法と比べて感度が高いため、さらなる分析にはICを選択した(試料濃度1mg/mL対100mg/mLマンニトール)。イオンクロマトグラフィー(IC)法の定量限界(QL)は、マンニトール中のマンノースの0.005%である。マンニトールのいくつかのロット(表18参照)を分析した。マンノース値を以下に示す。
【表35】

【0385】
上の表から用いたマンニトールの2つのロットのうち、噴霧乾燥ロット8(0.0115%マンノース)は共役分解物を形成したのに対し、結晶性マンニトールロット1(0.0009%マンノース、<QL)は共役分解物を形成しなかった。トランスノルセルトラリンHCl製剤で用いられたマンニトールのタイプ(すなわち、結晶と噴霧乾燥)ではなく、マンニトール中のマンノースの量が制御因子であるようであった。これは後に、トランスノルセルトラリンHCl製剤の安定性試験でマンノースをスパイクした再結晶化マンニトール試料を用いて得られる結果から確認された。
【0386】
(6.29 トランスノルセルトラリンHClカプセル安定性試験)
活性薬物を用いて賦形剤ブレンド又は完成剤形を調製した。該材料は、熱誘導ホイルで密封したHDPEボトルに貯蔵した。該試料が、約8週間、約40℃及び約75%RHに曝露されるように、湿度を制御したオーブンに該材料を入れた。カプセル試料を以下のように調製した。
【表36】

【0387】
試料希釈液を以下のように調製した。調製する各リットルに対して、600mLの水、200mLのTHF、及び200mLのアセトニトリルを好適な容器に正確に量り入れた。0.5mLのトリフルオロ酢酸を添加し、よく混合した。
【0388】
(HPLC分析法)
0.05%トリフルオロ酢酸の80:20水:アセトニトリル溶液(移動相A)の後、0.05%トリフルオロ酢酸の15:85水:アセトニトリル溶液(移動相B)を用いるZorban SB-CN 5μM、25cm×4.6mm分析カラムを用いた。カラム温度:30℃。流速:1.0mL/分。注入量:50μL。波長:220nm。最小実行時間:50分(15分の遅延)。移動相勾配:
【表37】

【0389】
HPLC試料調製のために、内容物を50mLの滴定フラスコに移した。60/20/20/0.05の比の水/アセトニトリル/THF/トリフルオロ酢酸混合物を試料希釈液として用いた。フラスコの満杯の4分の3を試料希釈液で満たし、それを手で激しく振盪させ、その後、30分間の手首作用振盪、20分間の超音波処理、及び再び30分間の手首作用振盪に供した。室温まで冷却した後、試料希釈液を用いて容量を50mLとし、よく混合し、直径25mmの0.45μm PTFE GD/Xシリンジフィルターを用いて、上清をHPLCバイアル中に濾過し、上で示したHPLC条件を用いて分析した。該試料中の活性の濃度は0.14mg/mLであった。
【0390】
表19は、同じ分解物が、異なる強度のカプセル中に異なる量で形成されることを示す。1mgカプセルは、5及び/又は10mg強度よりもより多くの総分解物を含んでいた。
【表38】

【0391】
同様の分解物が開放皿条件を用いて観察された。口の大きい開放皿容器(約20mLシンチレーションバイアル)を40℃及び約75%RHに3週間供した。7.88mgのトランスノルセルトラリンHCl及び適量の賦形剤(複数可)(1:1、1:124、及び/又は1:372の活性対賦形剤比)を該容器に量り入れた。
【表39】

【0392】
表19及び20に示した結果の比較から、同じ分解物が若干異なるレベルで形成されること、及び開放皿での分解の方が速いことが明らかになった。カプセル安定性試験及び開放皿試験について得られたHPLCクロマトグラムを図9に示す。
【0393】
1mgカプセルが最も多くの不純物/分解物を生成させたので、該試料中のトランスノルセルトラリン(活性)対賦形剤の比を、1mgカプセル中のトランスノルセルトラリン(活性)対賦形剤の比と同じになるように維持した(1mgのトランスノルセルトラリンは1.125mgのトランスノルセルトラリン塩酸塩に相当する)。
【表40】

【0394】
以下のロットの賦形剤を様々なロットの活性(例えば、「活性1」)とともに用いた。
【表41】

【0395】
(結果)
トランスノルセルトラリンHCl及びその賦形剤の適合性分解試験により、活性の表面積が大きければ大きいほど、分解の量が多いことが示された。1.0、5.0、及び10.0mgカプセル中に存在する5つの賦形剤のうち、A-TABの使用のみが、開発的カプセル(developmental capsules)それ自体に圧力をかけたときに観察されるのと同様の、トランスノルセルトラリンHClの分解を可能にし、A-TABによって引き起こされる分解の程度は、使用するロットに左右された。活性の分解は、A-TABの存在によって明らかに悪化するが、これをもたらす機序は明らかにされなかった。個々の分解物は、例えば、2gの活性3と248gのA-TAB 2の混合物を40℃/75%RHで3週間開放皿に置くことによって単離することができる。個々の分解物は、約5〜10mgの分量で単離された。
【0396】
(6.30 開放皿安定性試験の実施例)
トランスノルセルトラリンHCl(1)(「活性1」)を、それぞれ1mgカプセル強度中に存在する各賦形剤と混合した。該試料は、2つの異なる比(1:1及び1mgカプセルに見られる比)の活性及び賦形剤を含んでいた。
セット1a試料マトリックス
【表42】

セット1b試料マトリックス
【表43】

【0397】
セット1の実験について得られた結果を表6及び7に示す。
【表44】

【0398】
表22に示すように、活性1対賦形剤の比が1:1のとき、様々な賦形剤の存在のために、感知できるほどの不純物は形成されなかった。ごくわずかな量のテトラロンが観察された。
【0399】
この比を1mgカプセルと同様の比に変更したとき、デンプン、Ac-Di-Solを含む製剤、ステアリン酸マグネシウムなどの賦形剤は、テトラロン不純物のわずかな増加を示した(RRT 1.64、表7)。A-TAB 1は、最も多くの分解を引き起こすようであった。RRT 0.61、0.68、0.78、0.80、1.34、1.53、及び1.70の未知不純物/分解物は、この試料中、0.10%以上のレベルで存在し、いくつかの分解物は1.0%レベルに近かった。A-TAB 1の場合、合成不純物1、cis-ジアステレオマー、及びテトラロンなどの既知の不純物は、活性1のみよりも3〜4倍増加した。
【表45】

【0400】
セット2の実験については、3つの異なるロットの活性を、それぞれ、セット2a及びセット2bに示すように、3つの異なるロットのA-TABの各々と個別に、かつ3つの異なる比(1:124、1:372)混合した。
セット2a 試料マトリックス
【表46】

セット2b 試料マトリックス
【表47】

【0401】
活性及び賦形剤を1:124の比で含むセット2aの試料から得た結果を表24に示す。
【表48】

【0402】
表24の結果は、活性の量を固定しながらA-TABの量を変化させることにより、最も多くの分解が生じたことを示している。A-TABの量を固定しながら活性の量を変化させことにより、最も多くの不純物を提供する活性3が生じた。活性3とA-TAB 2の組合せは、最も多くの総不純物/分解を生じさせた。該ロットの活性の表面積は、活性3から活性4、活性2、活性1へと減少した。したがって、活性の表面積は、活性の分解しやすさに関与する可能性がある。
【0403】
粉末化したロットのA-TAB 4は、ごくわずかな量のテトラロンを生じさせた。活性対賦形剤の比を、1mgカプセル中に存在する比よりも3倍多い1:372に増加させたとき、形成される総不純物は、1:124比で見られたのとほぼ同じままであった。表24及び25を参照されたい。形成される総不純物は、一定の比の活性対賦形剤でプラトーに達したようである。
【表49】

【0404】
(6.31:式(III)の分解物の単離及び同定)
式(III)の分解物の調製及び単離に用いる試料は、以下のように調製した:500mLの褐色のガラス瓶に、2.25gの活性及び278gのA-TABを手で1分間混合した。得られた混合物を35メッシュのふるいに2回通し、ふるいに残る材料が最小限になるようにした。該試料を再び、Turbulaミキサーにて22rpmで20分間混合した。その後、該混合物を結晶化皿に移し、開放容器を40℃/75%RHに3週間置いた。該混合物のアリコートを2週間及び3週間で分析した。3週間後、該試料を加熱チャンバーから取り出し、冷凍保存した。
【0405】
分解した試料から、62gの混合物を1-Lエルレンマーヤーフラスコに量り入れた。500mLの容量のメタノールを添加し、磁気撹拌子を用いて室温で1時間撹拌した。撹拌した混合物を30分間静置しておいた。MAGNA社製の、ナイロンで裏打ちされた、無地の0.45μmフィルターを用いて、上清を真空濾過した。濾紙上の少量の粉末をメタノールで洗浄し、洗い流した液を合わせた。濾液を以下に記載するHPLC法を用いて分析した。試料希釈液はメタノールとした。活性のピーク面積と不純物のピーク面積を合わせて得られる総面積は、活性の標準溶液を用いて定量した。このようにして抽出された活性及び全不純物の量は369.2mgであった。エルレンマーヤーフラスコ中の固体をさらに500mLのメタノールで再び処理した。
【0406】
上で記載したのと同じ手順を繰り返すことにより、2回目に抽出された活性及び全不純物の量は38.5mgであった。この2つの濾液を合わせ、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを除去した。橙黄色の固体がフラスコの底に残った。6.5mLのメタノールと3mLの水の混合物を添加した。固体は溶解し、橙黄色の溶液を形成した。この溶液を室温で遠心分離し、透明な上清を10mLガラスバイアルに移し、冷凍保存した。
【0407】
(4つの主要分解物のHPLC分離)
上記のように調製した開放皿強制分解試料溶液から4つの主要不純物を分離するために、以下のセミ分取HPLC条件を開発し、使用した。
HPLCカラム:Zorbax SB-CN(Agilent)、9.2mm×250mm、5μm
移動相A:水中の0.1%ギ酸
移動相B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸
波長:220nm
注入量:10μL
流速:4mL/分
実行時間:44分
使用した勾配:
【表50】

【0408】
4つの主要不純物だけを分画回収した。活性及び他の不純物をカラムから洗い落とした。約35回注入し、各分解物の画分を個別にプールした。次に、HPLCを用いて、4つのプールの各々を分析した。この4つのプールの分析カラム分離を図9に示す。不純物1及び3は各々100%純粋であった。不純物2は98%純粋であった。画分4は、63:37の比で存在する不純物4と5の混合物であることが分かった。
【0409】
(式(III)の分解物の構造特定)
前述の開放皿分解試料とともに、セミ分取HPLC(Zorbax SB-SN、5um、9.2×250mm;移動相としての、0.1%ギ酸を含む20%ACN/H2O、4ml/分)を用いて、活性の分解生成物を単離した。これらの不純物を含む画分を、真空下で乾燥させる前に0.1M NH4OAcで中和して、起こり得る分解を防いだ。
【0410】
全ての不純物を、最初に、LC-MS、断片化、及び高分解能MS分析で分析した。分解物III-a及びIII-bは、ほぼ同一の質量スペクトル特性を示した。両化合物についてのm/z 308での[M+H]が観測されると同時に、その同位体パターンによって、これらの分子のbis-クロロ性が確認され、そのトランスノルセルトラリン起源が示された。トランスノルセルトラリンの分子量と分解物III-a及びIII-bの分子量における16質量単位の違いにより、両不純物が、ヒドロキシル基の形態のトランスノルセルトラリンの酸化生成物である可能性があることが示唆された。MS断片化におけるH2Oの損失(-18mu)により、該ヒドロキシル基が脂肪族環上にある可能性があることが示唆された。
【0411】
分解物III-aの単離の試みによって、少量の比較的純粋な化合物が得られた。ACN-d3中の分解物III-aの1H NMRスペクトルにより、(a)芳香族プロトンのシグナル及びパターンから明らかなように、トランスノルセルトラリンの芳香環が変化しないこと、並びに(b)4.16ppmで1つしか観察されないので、トランスノルセルトラリンのベンジルプロトンのうちの1つが置換されることが明らかになった。質量スペクトルデータから、この不純物中ではアミノ基は変化しないことが確認されていたので、ベンジルヒドロキシル基のための他の唯一の位置は4位である。したがって、分解物III-aは、4-ヒドロキシトランスノルセルトラリンと特定された。
【0412】
単離された分解物III-bは、その1H NMRスペクトルが極めてよく似たパターンを示した。すなわち、芳香環が変化せず、ベンジルプロトンが1つ消失した。この情報をその質量スペクトルデータと合わせて、不純物1及び不純物2が、4-ヒドロキシトランスノルセルトラリンのジアステレオマー対であるという結論が得られた。
【0413】
【化5】

【0414】
不純物3及び不純物4は、323という同じ分子量を共有し、ほぼ同一のMS断片化パターンを有する。単離及び乾燥プロセスの後、(HPLC保持時間、MSデータ、及び1H NMRスペクトルにより)不純物3及び不純物4が、それぞれ、不純物1及び不純物2に変換されることが分かった。上で述べたように、単離プロセス時の起こり得る分解を最小限に抑えるために、NH4OAcを用いて、回収した画分中のギ酸を中和したが、これにより、変換が生じた可能性がある。
【0415】
さらなる実験により、NH4OAcを用いずに新たに単離した分解物-III-c及びIII-d画分は、室温で数日経った後でも、比較的安定であることが示された。しかしながら、NH4OAcの存在下では、これらの化合物の50%近くが24時間後に変換された。さらに、真空下での乾燥によって、分解物III-c及びIII-dが、NH4OAcの存在とは無関係に、分解物III-a及びIII-bに変換されることが観察された。HR-MSで測定したとき、分解物III-cとIII-aの分子式の違いは酸素原子1つであったので、分解物II-c及びIII-dは、4-ヒドロペルオキシトランスノルセルトラリンのジアステレオマー対であると結論付けられた。不純物3及び分解物III-dから分解物III-a及びIII-bへの変換は、ヒドロペルオキシドの分解プロセスによる可能性がある。
【化6】

【0416】
(6.31:マンニトールを含むトランスノルセルトラリンの安定性試験)
その%マンノース値に基づいて、マンノースをスパイクした3つの再結晶化マンニトールロットをさらなる試験のために選択した。結晶性マンニトール、及び噴霧乾燥マンニトールを対照として用いた。使用するマンニトール(結晶性対噴霧乾燥)のタイプが重要であるかどうかを明らかにするために、再結晶化した噴霧乾燥マンニトールロットも試験で用いた。選択したマンニトールロットを用いてトランスノルセルトラリンHClブレンドを作製し、開放皿条件下、30℃/65%RHに置き、HPLCを用いて、最初とその後2、4、及び6週間とで分析した。結果を表26に示す。
【表51】

【0417】
本出願で言及された特許、特許出願、及び刊行物は全て、その全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願での参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が従来技術として利用可能であることを認めるものではない。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスノルセルトラリン、又は医薬として許容し得るその塩もしくは溶媒和物、及びマンニトール又はキシリトールを含む、医薬組成物。
【請求項2】
タルク、カオリン又はベントナイトをさらに含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、又はステアリン酸をさらに含む、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物が、トランスノルセルトラリンの塩酸塩又はその水和物、マンニトール、ステアリン酸マグネシウム、タルク、及びデンプングリコール酸ナトリウムを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
錠剤又はカプセル形態である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記組成物が、少なくとも10重量%のマンニトール又はキシリトールを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物が少なくとも10重量%のマンニトールを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項8】
約14.9、17.8、19.2、23.3、24.6、及び25.2度の2θでのピークを含むX線粉末回折パターンを有する、トランスノルセルトラリンの結晶塩酸塩又はその水和物。
【請求項9】
約5.0及び21.8度の2θでのピークをさらに含むX線粉末回折パターンを有する、請求項8記載の塩。
【請求項10】
単結晶を用いて約173Kで収集したデータに基づく、約5.1、15.0、18.0、19.5、22.0、23.5、24.8、及び25.4度の2θでのピークを含む、算出されたX線粉末回折パターンを有する、請求項9記載の塩。
【請求項11】
以下の近似単位胞寸法を有する請求項9記載の塩:
a=16.8Å、b=5.2Å、c=19.1Å、α=90.0°、β=113.1°、及びγ=90.0°。
【請求項12】
約173Kで測定したときに、以下の近似単位胞寸法を有する請求項9記載の塩:
a=16.83Å、b=5.23Å、c=19.06Å、α=90.00°、β=113.10°、及びγ=90.00°。
【請求項13】
前記近似単位胞寸法が以下である請求項12記載の塩:
a=16.834Å、b=5.226Å、c=19.059Å、α=90.00°、β=113.10°、及びγ=90.00°。
【請求項14】
空間群C2(no. 5)を有する、請求項11記載の塩。
【請求項15】
前記単位胞が、4つのトランスノルセルトラリン塩酸塩(Z=4)を含有する、請求項11記載の塩。
【請求項16】
約1.4g cm-3の密度を有する、請求項8記載の塩。
【請求項17】
前記組成物が約3重量%未満の式(II)の化合物を含む、請求項1記載の医薬組成物:
【化1】


【請求項18】
前記組成物が約4重量%未満の式(III)の化合物を含む、請求項1記載の医薬組成物:
【化2】


【請求項19】
神経障害を治療、予防、又は管理する方法であって、患者に治療的又は予防的有効量の請求項1〜18いずれか一項記載の化合物又は組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項20】
前記神経障害が、鬱病、認知障害、線維筋痛症、疼痛、睡眠関連疾患、慢性疲労症候群、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、レストレスレッグ症候群、統合失調症、不安神経症、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、季節性情動障害(SAD)、月経前不機嫌、閉経後の血管運動症状、神経変性疾患、躁状態、気分変調性障害、気分循環性障害、肥満、又は薬物濫用もしくは薬物依存症である、請求項19記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−512921(P2013−512921A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542211(P2012−542211)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/058831
【国際公開番号】WO2011/069032
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(511145546)スノビオン プハルマセウトイカルス インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】