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トランスフェクション系
説明

トランスフェクション系

【課題】本発明は、創傷治癒のため、ならびにヒトおよび動物組織を回復および再生するための組成物を調製するための方法を提供すること。
【解決手段】この方法は以下の工程を含む:a)組織の再生の進行中に正の効果を有する遺伝子をコードする実質的に純粋な形態のプラスミドDNAを提供する工程、b)自己硬化性のバイオポリマーの成分を提供する工程、およびc)再生を促進する細胞を有する細胞懸濁液を提供する工程であって、成分(a)、(b)および(c)は、このプラスミドおよびこの細胞懸濁液が、バイオポリマー成分の1つに均一に分散して得られるように、同時にまたは連続して、互いとインキュベートされることで特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリクス媒介トランスフェクション系に関し、ここで、このマトリクスは、自己硬化性バイオポリマーからなる。さらに、本発明は、プラスミドDNA、自己硬化性バイオポリマー材料の成分、トランスフェクトされる細胞の細胞懸濁液を含む調製物を産生する方法、調製物自体ならびに組織傷害および組織変化の処置のためのその使用に関する。
【0002】
詳細には、本発明は、創傷治癒、組織再生および組織修復を改善するための、細胞についてのフィブリン媒介トランスフェクション系に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
医学において、組織欠陥およびその処置は、重大な問題を呈している。外科的な介入および、また摩擦、外部影響(例えば、熱傷、発作などによって引き起こされる傷害)の結果としての両方において、組織の対応する外傷は、治癒および明白な再生が生じる。多くの疾病において、組織は、損傷を受けており、乾癬および関節炎が例として言及される。
【0004】
従って、これらの治癒および再生プロセスを改良および促進する、方法および可能な方法を開発することが目的である。特に広い領域の組織が損傷(例えば、皮膚の創傷、骨の創傷、軟骨の創傷)を受けた場合、または素因を有し、それ故その個人自身の再生および治癒の能力が制限されている個人において、この自然のプロセスを補助することが、特にまた、この再生がその天然の周辺環境とは異ならない(すなわち、非天然の増殖に起因して、組織の制限または変化(例えば、瘢痕形成)を引き起こさない)ようなものであるべきであるという観点から、必要である。この目的のために、とりわけ治癒プロセスにおいて補助することが意図されるマトリクスが使用される。これらのマトリクスはしばしば、治癒プロセスを正に補助する因子を放出するように構築される。
【0005】
従来の方法において、ケラチノサイトの移植は、例えば、広い領域の熱傷のために使用される。これらは、自己移植片または同種異系移植片として、創傷に適用される。これらの細胞は、いわゆるシートとして(すなわち、複数の細胞層として)創傷上に移植される。この目的のために、個体からケラチノサイトをあらかじめ回収し、次いで単離し、そしてこれらを支持的なマトリクスを含む複層細胞シートを形成するようにインビトロで培養して、その結果、これらが次いで創傷上に移植され得る。
【0006】
損傷した組織の再生を促進するさらなる可能な方法は、促進因子の外部投与である。一方では、これらの因子は、再生プロセスに関与する細胞の増殖を促進し得る。他方では、これらの因子はまた、迅速な再生を妨げるプロセスを阻害し得る。今までに、主に増殖因子であるこれらの因子は、多くの異なる方法(例えば、外部適用によって)で創傷した組織に供給されてきた。しかし、これは、高用量を供給しなければならなかったという不都合を有する。さらに、ほとんどの因子は、インビボでは短い半減期しか有さず、そのため複数回の投与が必要であった。因子を外部的に投与する場合、この因子は汚染物質を含みうるというリスクもある。天然の供給原から材料を精製する場合および因子の組換え産物の両方において、再生の進行に負の影響を与え得る汚染物質を含む調製物のリスクが存在する。従って、媒介物(例えば、増殖因子)の外部投与は、主に、いくつかの媒介物が外部的に全く投与され得ないとう観点からも、非効率的な系であることが判明した。
【0007】
従って、これらの増殖因子を、インビボで、細胞のトランスフェクション(遺伝子移入)によって産生することが最近試みられている。Andreeら(PNAS、91、12188〜12192頁、1994)は、ケラチノサイトにおける表皮についての増殖因子をコードする遺伝子を含むプラスミドのインビボ移入が、動物モデルにおいて創傷治癒を改善することを実証し得た。遺伝子移入は、いわゆる「遺伝子銃」によって、従来の方法で実行され、ここで、キャリアに結合したプラスミドは、創傷に適用され、そしてその中に存在する細胞中にもたらされる。続いて細胞は、プラスミドで非特異的にトランスフェクトされる。創傷の迅速な治癒にも関わらず、この因子が、この時点で創傷の端に存在した細胞中でのみ発現されることが、このトランスフェクション系で観察される。さらに、特異的なトランスフェクションは、この方法では不可能である。しかし、因子の体系的投与は望ましい。細胞のトランスフェクションはこの体系的投与に特に適する。
【0008】
しかし今までに、実質的に、DNAが外部キャリアによって細胞中に導入される細胞トランスフェクション方法のみが、公知であった。そうすることによって、キャリアはまた、負の結果を有し得る細胞中に入る。
【0009】
公知のトランスフェクション系としては、レトロウイルス、アデノウイルスまたは他のウイルスを用いるウイルストランスフェクションが挙げられる。真核生物細胞のトランスフェクションにおいて、最も重要な問題は、トランスフェクションの効率である。特にウイルスベクターに関して、それらの向性(すなわち、その特定の細胞型に関するその親和性)は、なお主要な問題である。この理由によって、アデノウイルスベクターはすでに使用されており、これは、広い屈性を有し、そしてまた細胞(例えば、筋細胞、肝細胞、滑膜細胞、上皮細胞、など)をトランスフェクトし得る。さらに、アデノウイルスは、分裂しない細胞をトランスフェクトし得る。
【0010】
なお、ウイルスベクターによる細胞のトランスフェクションはまた、いくつかの短所を有する。ベクターの取り込みの起こる位置が、無作為なので、これらの細胞は、トランスフェクションされ得、そして細胞の生活に重要である遺伝子は、変化し得る。ウイルスおよびウイルスベクターは、高い割合の多型を有し得、そしてこれは、不活性なベクターまたは遺伝子を導き得る。既に言及されているが、ウイルスベクターの屈性は、さらに問題である。
【0011】
アデノウイルス(非増殖細胞をトランスフェクションし得るが)はまた、ウイルスベクターの前述の短所を有する(すなわち、これらは、標的細胞のゲノムを無作為に組み込む)。それによって、他の重要なゲノムは、破壊され得る。ウイルスにおける多型の割合は、高く、最後ではあるが、重要なことには、これらの無作為に調製されたウイルスは、トランスフェクションのために増殖およびプロセスされなければならない。
【0012】
非ウイルスの組成物を用いる他のトランスフェクション系は、例えば、リポソーム媒介法(例えば、Lipofektin(登録商標))である。これらのリポソームの短所は、例えば、標的細胞に関してリポソームトランスフェクション剤の細胞毒性が残ることである。これは、トランスフェクションされるべき細胞(標的細胞)は、トランスフェクション剤それ自身によって損傷をうけ、これらを死滅させることを意味する。
【0013】
さらに、ポリカチオン性の系(カルシウム(カルシウム−リン酸−DNA沈降)、DEAE−デキストラントランスフェクションおよびその他を使用する系)を、記載している。
【0014】
細胞のトランスフェクションのための機械的な方法として、細胞のエレクトロポレーションまたは前述の遺伝子銃が、公知である。
【0015】
遺伝子銃法において、裸のDNAまたはリポソームに会合するDNAまたは他のキャリア分子に会合するDNAは、トランスフェクションされるべき細胞に直接的に撃たれ得る。この方法は、キャリアなしで細胞のトランスフェクションを部分的に可能にするが、しかし、これは、トランスフェクションされた材料の量を決定することが不可能である、細胞の無作為なトランスフェクションである。細胞の一過性のトランスフェクションにおいて主要な、系の特異性はない。エレクトロポレーションの手段によるトランスフェクションは、トランスフェクションが、特別な装置においてインビトロで実施されるという短所を有する。最初に、細胞を、増殖させなければならない。これは、種々の方法工程を必要とし、細胞懸濁物の夾雑物の危険が高い。補助剤の使用なしで細胞に直接的にDNAをトランスフェクトする試みはすでされている。このアプローチを用いてもなお、トランスフェクト効率は低すぎる。
【0016】
従って、上記の短所を克服する他のトランスフェクトの系を開発する必要がある。
【0017】
WO97/38729において、処置されるべき患者が、マトリクスと共にプラスミドを受ける場合、細胞の改善されたトランスフェクト効率は、達成される得ることが記載されている。このマトリクスが、プラスミドと共に適用される、損傷した領域に遊走された細胞は、次いで、より効果的なトランスフェクションを示す。この方法において、細胞が、プラスミドを取りこむようにマトリクスに遊走することが必要である。これはまた、損傷した領域の再生の間、細胞の相同な分布はないが、細胞は、前端からトランスフェクトされることを意味する。従って、細胞の同時トランスフェクトはない。
【0018】
DE197 16 098 A1において、外来遺伝子でトランスフェクトされた線維芽細胞は、創傷治癒を促進する因子をコードする外来遺伝子とともに、創傷の処置のために使用され得ることが記載される。なお、これらの線維芽細胞は、単に、創傷治癒を促進する因子の外部投与を避けるための媒体を構成する。
【0019】
投与される線維芽細胞それら自身は、それらが、もはや分裂できないように、照射される。従って、それら自身は、創傷治癒において細胞として参加しない。さらに、DE197 16 098に記載される線維芽細胞株は、プラスミドで永久にトランスフェクトされた不死化細胞株を構成する。しかし、細胞の持続的なトランスフェクションは、所望であるとは限らず、細胞の一過性のトランスフェクションの代わりに、プラスミドによってコードされる因子の発現が、特定の時期にのみ起こることが好ましい。創傷治癒が、終了した場合、この因子の連続的な発現は、所望ではない。反対に、これは、例えば、所望ではない組織構造の瘢痕形成および異常形成を促進し得る。
【0020】
最近、Horchら(Cell Transplantation,7,3,309〜317頁、1998)は、ヌードマウス動物モデルにおいて、培養したケラチン生成細胞の単一細胞懸濁液が、フィブリン接着の補助によって創傷に適用されることを記載している。この様式において、良質の表皮を再構築することが可能である。この方法を用いて、細胞の除去と増殖した細胞の移植との間の期間を短くすることが、可能となっている。
【0021】
従って、最小の時間必要条件およびできるだけ少ない外科的な介入を用いて、簡単に、即座に入手可能な系を、主要な(急性または慢性の)組織傷害を患う患者に提供することが本発明の目的であり、創傷治癒に陽性効果を及ぼす物質をコードする遺伝子をトランスフェクトされた細胞、特に自系の細胞が、提供される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
(発明の要旨)
本発明は、創傷治癒のための組成物を調製するため、ならびに組織を修復および再生するための方法に関する。本発明に従って、これは、以下の工程:
a.実質的に純粋な形態において、組織の再生の進行に陽性効果を有する遺伝子をコードするプラスミドDNAを提供する工程、
b.自己硬化するバイオポリマーの成分/成分(複数)を提供する工程、および
c.再生を促進する細胞を細胞懸濁物に提供する工程、
によって達成される成分(a)、(b)および(c)は、プラスミドおよび細胞懸濁液が、バイオポリマー成分のうちの1つにおいて相同的に分布されるように、同時にまたは連続的にお互いにインキュベートされるという点で特徴的である。
【0023】
本発明のさらなる局面は、創傷治癒のための、および損傷組織それ自身の修復および再生のための組成物に関する。この組成物は、以下を含む:
a.実質的に純粋な形態において、創傷治癒ならびに組織の修復および再生の過程に陽性効果を有する遺伝子をコードするプラスミドDNA;
b.自己硬化するバイオポリマーの成分、そして
c.創傷治癒ならびに損傷組織の修復および再生に関与する細胞の細胞懸濁物。
【0024】
本発明のさらなる局面において、この調製物は、損傷組織の処置および創傷の処置のために使用される得る。さらに本発明は、以下を含むキットに関する:創傷治癒プロセスおよび損傷組織の再生プロセスに陽性効果を有する、物質、好ましくは、タンパク質をコードする遺伝子を含むプラスミド、損傷組織の再生に関与する細胞の細胞懸濁物および自己硬化するバイオポリマーの成分ならびに必要に応じて、硬化または固体化を促進するために必要なこのバイオポリマーの第2の成分。
さらに、本発明は、本発明に従って調製される組成物を使用して組織欠損を処置するための方法、本明細書中において定義される薬学的組成物または本発明に従うキットに関する。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1) 創傷の治癒、ならびに哺乳動物の組織の修復および再生のための組成物を調製する方法であって、該方法は、以下の工程:
a.該組織の再生の進行中に正の効果を有する遺伝子をコードする実質的に純粋な形態のプラスミドDNAを提供する工程;
b.自己硬化性のバイオポリマーの成分を提供する工程;および
c.再生を促進する細胞を有する細胞懸濁液を提供する工程
を包含し、成分(a)、(b)および(c)は、該プラスミドおよび該細胞懸濁液が、該バイオポリマーの1つに均一に分散して得られるように、同時にまたは連続して、互いとインキュベートされることで特徴付けられる、方法。
(項目2) 項目1に記載の方法であって、前記バイオポリマーが、フィブリン接着剤、コラーゲン、ゼラチン、アルギナート、ヒアルロン酸、多糖類、有機ポリマー、もしくはこれらの誘導体またはこれらの組み合わせから選択されることで特徴付けられる、方法。
(項目3) 項目1または2に記載の方法であって、前記バイオポリマーが、フィブリン接着剤であることで特徴付けられる、方法。
(項目4) 項目1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、前記プラスミドおよび前記細胞が、前記フィブリン接着剤のトロンビン成分中にあることで特徴付けられる、方法。
(項目5) 項目1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、前記バイオポリマーが、液体または凍結乾燥形態で提供されることで特徴付けられる、方法。
(項目6) 項目1〜5のいずれか1項に記載の方法であって、前記バイオポリマー成分に対する前記プラスミドの割合が、5〜25μg/mlであり、好ましくは10〜20μg/mlであることで特徴付けられる、方法。
(項目7) 項目1〜6のいずれか1項に記載の方法であって、前記バイオポリマー成分に対する前記プラスミドの割合が、25〜100μg/mlであり、好ましくは約50μg/mlであることで特徴付けられる、方法。
(項目8) 項目1〜7のいずれか1項に記載の方法であって、前記割合が、25,000〜75,000細胞/μgのプラスミドであることで特徴付けられる、方法。
(項目9) 項目1〜7のいずれか1項に記載の方法であって、前記割合が、75,000〜100,000細胞/μgのプラスミドであり、好ましくは約50,000細胞/μgであることで特徴付けられる、方法。
(項目10) 項目1〜9のいずれか1項に記載の方法であって、前記バイオポリマー成分の1ml当たりの細胞数が、200,000〜5,000,000であり、好ましくは、3,000,000であることで特徴付けられる、方法。
(項目11) 項目1〜10のいずれか1項に記載の方法であって、前記細胞懸濁液が、ケラチノサイト、軟骨細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、シュワン細胞、骨芽細胞および破骨細胞から選択される細胞の懸濁液であることで特徴付けられる、方法。
(項目12) 組織の再生の進行中に正の効果を有する遺伝子をコードする実質的に純粋な形態のプラスミドDNA、自己硬化性のバイオポリマーの成分ならびに再生を促進する細胞を有する細胞懸濁液の成分を含み、そしてさらなるトランスフェクション促進物質もトランスフェクション媒介物質もいずれも含まない、トランスフェクション系。
(項目13) 組織の再生の進行中に正の効果を有する遺伝子をコードする実質的に純粋な形態のプラスミドDNA、自己硬化性のバイオポリマーの成分、再生を促進する細胞を有する細胞懸濁液、ならびに必要に応じて、さらなる薬学的に受容可能なキャリアを含み、そしてさらなるトランスフェクション促進物質もトランスフェクション調節物質も含まない、細胞懸濁液の成分む、薬学的組成物。
(項目14) 組織欠陥を処置するための治療的キットであって、該キットは、以下:
組織の再生の進行中に正の効果を有する遺伝子をコードする実質的に純粋な形態のプラスミドDNA、
自己硬化性のバイオポリマーの成分、ならびに
前記再生を促進する細胞を含み、そしてさらなるトランスフェクション促進物質もトランスフェクション媒介物質も含まない、細胞懸濁液
を含む、キット。
(項目15) 項目1〜11のいずれか1項に記載の方法によって入手可能な組成物を含む、治療的キット。
(項目16) 組織欠損の処置のために、項目12〜15のいずれか1項に記載のトランスフェクション系、薬学的組成物、または治療的キットの使用。
(項目17) 項目16に記載の使用であって、該使用が、熱傷、骨、筋肉、神経もしくは軟骨の欠損、慢性創傷または組織増強の処置、好ましくは、皮膚の創傷治癒のためである、使用。
(項目18) 項目16または17のいずれか1項に記載の使用であって、前記組成物が、組織欠陥上にスプレーされる、使用。
(項目19) 組織欠陥の処置のために、項目1〜11のいずれか1項に記載の方法に従って入手可能な薬学的組成物を含有するゲルの使用。
(項目20) 項目1〜11のいずれか1項に従って調製された組成物、項目12に記載の系、項目13に記載の薬学的組成物、または項目14または15に記載のキットを使用する、組織欠損の処置のための方法。
(項目21) 項目20に記載の処置のための方法であって、該方法が、熱傷、骨、筋肉、神経もしくは軟骨の欠損、慢性創傷または組織増強の処置、好ましくは、皮膚の熱傷のためである、方法。
(項目22) 項目20または21に記載の方法であって、該方法が、皮膚における創傷治癒のためである、方法。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に従うトランスフェクション系を使用することによってEGF−プラスミドと共に培養したヒトケラチノサイトのインビトロトランスフェクション。この細胞を、トロンビン成分中のヒトEGF−プラスミド(群1a)またはトロンビンなしのEGF−プラスミド(群2a)またはプラスミドおよびトロンビンなしの細胞(群3a)と共に3時間インキュベートした。EGFタンパク質レベルを、1日目、3日目、5日目、7日目、10日目および14日目において測定した。
【図2】本発明に従うトランスフェクション系を使用してEGF−プラスミドと共に培養していないヒトケラチノサイトのインビトロトランスフェクション。この細胞を、トロンビン成分中のヒトEGF−プラスミド(群1b)またはトロンビンなしのEGF−プラスミド(群2b)またはプラスミドおよびトロンビンなしの細胞(群3b)と共に3時間インキュベートした。EGFタンパク質レベルを、1日目、2日目、3日目、4日目および5日目において測定した。
【図3】本発明に従うトランスフェクション系を使用するhEGF−プラスミドと共に培養したヒトケラチノサイトのインビトロトランスフェクション。群1aにおいて、細胞を、EGFと共にインキュベートし、連続してフィブリン接着のトロンビン成分において懸濁し、そしてヌードマウスの全層創傷に移植した。生検を、1日目、3日目、5日目および7日目において実施し、そしてホモジナイズした創傷におけるタンパク質レベルを、ELISAの手段によって決定した。コントロール創傷(群2a)を、ヒトβガラクトシダーゼプラスミドと共にプレインキュベートした細胞で処置した。
【図4】ヒトEGF−プラスミドと共に培養していないヒトケラチノサイトのインビボトランスフェクション。群1bにおいて、細胞を、EGFと共にインキュベートし、連続してフィブリン接着のトロンビン成分において懸濁し、そしてヌードマウスに全層創傷に移植した。生検を、1日目、3日目、5日目および7日目において実施し、そしてホモジナイズした創傷におけるタンパク質レベルを、ELISAの手段によって決定した。コントロール創傷(群2b)を、ヒトβガラクトシダーゼプラスミドと共にプレインキュベートした細胞で処置した。
【図5】図5は、最適ケラチノサイト濃度の決定。異なる数のケラチノサイトを、5.7μlのPBS緩衝液中の200μgのEGF−プラスミドでトランスフェクトし、そして3時間プレインキュベートした。血餅容積は、333μlであり、EGF発現を、1日目、3日目、5日目および7日目後測定した。
【図6】実施例1に記載されるような全層創傷の再上皮形成の組織像を、異なる処置後に作製した(群1〜4)。全てのこれらの調査に関して、使用されたフィブリンの量は、333μlであり、そしてEGFプラスミドの量は、200μgであり、そして生検は、12日目に採取された。使用した倍率は、2.5であった。 フィブリンおよびEGF−プラスミドを用いた全層創傷の処置(群1)。
【図7】実施例1に記載されるような全層創傷の再上皮形成の組織像を、異なる処置後に作製した(群1〜4)。全てのこれらの調査に関して、使用されたフィブリンの量は、333μlであり、そしてEGFプラスミドの量は、200μgであり、そして生検は、12日目に採取された。使用した倍率は、2.5であった。 フィブリンおよびケラチノサイトを用いた全層創傷の処置(群2)。
【図8】実施例1に記載されるような全層創傷の再上皮形成の組織像を、異なる処置後に作製した(群1〜4)。全てのこれらの調査に関して、使用されたフィブリンの量は、333μlであり、そしてEGFプラスミドの量は、200μgであり、そして生検は、12日目に採取された。使用した倍率は、2.5であった。 フィブリン、EGF−プラスミドおよび内皮細胞を用いた全層創傷の処置(群3)。
【図9】実施例1に記載されるような全層創傷の再上皮形成の組織像を、異なる処置後に作製した(群1〜4)。全てのこれらの調査に関して、使用されたフィブリンの量は、333μlであり、そしてEGFプラスミドの量は、200μgであり、そして生検は、12日目に採取された。使用した倍率は、2.5であった。 フィブリン、EGF−プラスミドおよびケラチノサイトを用いた全層創傷の処置(群4)。
【図10】図9と同様であるが、倍率が10。
【図11】本発明に従うトランスフェクト系を用いる種々の細胞型のトランスフェクション。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(本発明において使用される用語の定義)
本明細書中の「組織欠損」は、全層創傷(例えば、広範囲の火傷において生じるような創傷など)と他の皮膚傷害ならびに骨、軟骨、神経および他の組織の損傷の両方を含む。
【0027】
「自己硬化するバイオポリマー」は、第2の成分の添加または存在によって自身で硬化または固定化する本発明に従う生物学的分解可能な、生体適合性ポリマーである。これは、天然の組成物と合成物質の両方を含む。
【0028】
損傷組織または欠損組織の再生において「陽性効果を有する遺伝子」は、タンパク質またはポリペプチドだけでなく、アンチセンス分子としてまたはリボザイとして翻訳される場合、再生における促進した効果を有する全てのDNA配列を含む。
【0029】
「創傷治癒に関与する細胞」は、組織を新しく形成する細胞それら自身と陰性因子を示し得る細胞の両方を含む。
【0030】
「修復細胞」は、適切な創傷治癒および/または修復プロセスに能動的に関与する細胞ならびに本発明に従うトランスフェクション系を使用して刺激および/または活性化され得る細胞である。
【0031】
「支持細胞」は、適切な創傷治癒および/または修復プロセスに直接的にもまたは能動的にも関与する細胞ではない。
【0032】
皮膚修復において、例えば、再上皮形成のこのプロセスを促進するための、適切な修復細胞/支持細胞の組は、ケラチノサイト/上皮細胞である。適切な修復細胞/支持細胞の他の組は、治癒、修復および/または再生されるべき創傷/組織に従って、定義される。
【0033】
(発明の詳細な説明)
本発明は、インビトロにおける細胞のトランスフェクションのための余剰な構成成分(すなわち、補助的な手段(例えば、ウイルスベクター、リポソームなど))または例えば、エレクトロポレーションのような方法を必要としない新規の方法を提供する。さらに、トランスフェクション媒介物質(例えば、ポリリジンなど)を必要としない。プラスミドによる細胞のトランスフェクションのための本発明に従う方法は、自己硬化性(self−hardening)バイオポリマーマトリクスによって達成される。このトランスフェクションは、インビトロおよびインビボの両方で実施され得るが、好ましくは、このトランスフェクションはエキソビボで実施される。決定的なことは、上述した構成成分、すなわち、細胞、プラスミドおよび自己硬化性バイオポリマーマトリクスまたはこれらの構成成分をそれぞれ含む組成物は、ともに損傷領域上またはそれらに対して適用されるということである。それらを行う場合に、この細胞は、損傷領域にこの組成物を移植する前にトランスフェクトされるか、またはこのトランスフェクションが損傷組織に対する組成物の投与の直後に起こるかのいずれかであり、好ましくは、細胞のトランスフェクションは、エキソビボで起こり、その結果、一様に分布した細胞がトランスフェクトされた状態で存在する。この自己硬化性バイオポリマーは、損傷組織領域または組織欠損部に対して投与される場合に、すでに硬化または固化またはゲル化し得る。さらに、硬化は、処置されるべき領域にこの組成物を投与した後に、等しく起こり得る。しかし、この組成物はまた2つの構成成分で存在し得、1つの構成成分は自己硬化性バイオポリマー、細胞、およびプラスミドを含み、その一方で第2の構成成分は、このバイオポリマーの硬化のためのさらなる化合物を含む。しかし、この第2の構成成分はまた、処置を必要とする組織自体によって、例えば、フィブリン接着剤におけるトロンビンのように、いわばインビボで提供され得、これが次にインビボのバイオポリマーの硬化を可能にする。後者の実現可能性は、さらに好ましい形態である。
【0034】
さらに、本発明は一過性トランスフェクション系を提供する。この系は、組織再生の進行において正の効果を有する遺伝子をコードするプラスミドDNA、トランスフェクトされる細胞の懸濁物および自己硬化性バイオポリマーを含む。特に、本発明は、創傷治癒ならびに組織欠損(特に、皮膚)の再生および修復に関与する細胞、発現されるべき物質をコードする遺伝子をコードするプラスミド、ならびに自己硬化性バイオポリマー(例えば、フィブリン接着剤の構成成分)を含むトランスフェクション系に関する。
【0035】
この自己硬化性バイオポリマーの構成成分によって、より良いプラスミド侵入/細胞による取りこみが可能となる。非結合プラスミドは細胞によってより容易に取り込まれ、トランスフェクション速度は、さらなるトランスフェクション促進物質またはトランスフェクション媒介物質を使用することなしに高度に改善される。
【0036】
トランスフェクション系の補助によって、さらに、損傷領域のトランスフェクトされた細胞に対して均質に適用することが可能であり、これによって創傷治癒および損傷組織の再生を加速する。このことによって、例えば、全層創傷のような損傷領域を完全に覆うことが可能であり、故に創傷治癒および損傷組織または欠損組織の治癒が迅速に生じる。この例において、トランスフェクトされた細胞に発現される物質は治癒を加速する。
【0037】
本発明に従うこのトランスフェクション系はまた、バイオポリマー構成成分以外のトランスフェクション促進物質またはトランスフェクション媒介物質を使用することなしに、生きている細胞構築物すなわち、トランスフェクトされた細胞のエキソビボ産生を可能にする。
【0038】
より具体的には、本発明は、簡単な、即座に利用可能である系を提供する。この系によって、最小の時間的要求および可能な限り少ない外科的介入で、大きな火傷または慢性創傷に苦しむ患者において、タンパク質またはペプチドをそれぞれコードする遺伝子でトランスフェクトされるか、またはトランスフェクトされた自己細胞が提供され、この細胞は、創傷治癒についての正の効果を有する。
【0039】
本発明の利点は、細胞欠損を修復する効力を有し、そして必要とされる物質を、最適な形態おいては自己合成によって同時に提供する、トランスフェクトされた、自己/同種異系の細胞の迅速な利用可能性として存在する。さらに、このトランスフェクトされた細胞の均質な分布によって、治療効果を迅速に達成することが可能である。これは特に、皮膚の創傷治癒において特に真である。
【0040】
この系の補助によって、トランスフェクトされた細胞のこの迅速な利用可能性は、実験技術の事前の複雑な工程および時間のかかる培養および選択法(これらは、さらに夾雑の危険性をはらみそして多大な時間的損失を意味する)を必要とすることなしに増加される。さらに、本発明は、このトランスフェクション系の構成成分すなわちプラスミド(組織再生において正の効果を有する物質、特にタンパク質/ペプチドをコードする遺伝子を含む)、トランスフェクトされた標的細胞、ならびに自己硬化性ポリマーまたはこれらの構成成分をそれぞれ備えるキットを包含する。
【0041】
本発明に従った方法によって得られる調製物は、損傷組織または欠損組織、特に、例えば、皮膚の全層創傷の処置のために使用され得る。これはまたは、損傷組織または欠損組織および特に皮膚の全層創傷に苦しむヒトおよび動物の処置を可能にする。好ましくは、処置される疾患または障害の例としては、以下:火傷、骨欠損、筋肉欠損、神経欠損、または軟骨欠損、慢性創傷または組織増強(tissue augmentations)が挙げられるが、特に好ましいのは皮膚における創傷治癒の方法である。
【0042】
本発明に従って得られた組成物は、負傷した組織または欠損した組織の迅速な治療的処置を可能にする。トランスフェクトされた細胞の均質な分布に特に起因して、全層創傷を即時にかつ均質に処置することが可能である。特に、全層創傷に伴う審美的でない瘢痕形成は軽減される得るか、または回避され得る。
【0043】
可能な代替物に従うと、本発明に従うトランスフェクション系によってトランスフェクトされる標的細胞は、トランスフェクト形態でマトリクスにすでに存在する。これらの細胞は、このマトリクス中で均質に分布しており、故に均質な治癒が生じ得る。従って、本発明に従うと、マトリクスは損傷組織に適用される。このマトリクスは、エキソビボでトランスフェクトされた標的細胞を含み、この細胞は、立ち代わって、欠損した組織の再生について正の効果を有する物質をコードする遺伝子を含む。しかし、さらなる代替的なものに従うと、細胞のトランスフェクションはまた、マトリックス中の適用後に起こり得る。プラスミドおよびこれらの細胞の均質な分布によって、細胞の均質なランスフェクションが可能である。次いで、これは、再生の進行について正の効果を有する因子の均質な発現をもたらす。
【0044】
細胞のトランスフェクションについて、例えば、緩衝液、緩衝液濃度、時間、または緩衝液の自己硬化性ポリマー構成成分に対する比のような幾つかのパラメータは、異なる細胞型について最適化され得る。特に低量で使用されときの、CaClの存在は、トランスフェクション効率に影響を与えないことが特に見出された。
【0045】
本発明に従って、「自己硬化性ポリマー」は、特に、所謂硬化後に、変化した物理学的性質(例えば、異なった粘度)を有する物質として理解される。
【0046】
従って、硬化後の自己硬化性ポリマーは、例えばゲルとして存在し、その一方で硬化前において、この物質は異なった(特に、より低い)粘度を有する。
【0047】
特に、以下の化合物は、自己硬化性かつ生分解性であり得るバイオポリマーとして言及され得る:フィブリン接着剤またはこの構成成分、コラーゲン、ゼラチン、アルギネート、ヒアルロン酸、ポリサッカリド、有機ポリマー(例えば、PEG,PGA、PLA)、これらの誘導体およびこれらのそれぞれの物質の様々な組み合わせ。
【0048】
フィブリノーゲンに基づく組織接着剤は、例えば、AT−B−359 653、AT−B−359 652およびAT−B−369 990から知られている。フィブリノーゲンに加え、これらは、フィブリノーゲンをフィブリンへと変換する因子を含有する。これは、例えば、トロンビンであり得る。トロンビンの作用によって、含まれるフィブリノーゲンは、フィブリンに変換される。組織接着剤に必要に応じて含まれる第XIII因子は活性化されて、第XIIIa因子になる。後者は、形成されたフィブリンを、ハイポリマー(high polymer)へと架橋する。必要とされるトロンビン活性は、トロンビンおよびCa2+イオン含有溶液の形態でフィブリノーゲンに対して加えられる。さらに、フィブリノーゲンは、さらなるタンパク質(例えば、フィブロネクチン、プラスミノゲンおよびアルブミン)を含み得る。
【0049】
この組織接着剤は、例えば、DE 195 21 324またはEP 0 345 246に記載されたような接着剤であり得る;特に好ましいのは、Baxter,Germanyから商標 Tissucol(登録商標)のもと入手可能なフィブリン接着剤である。
【0050】
好ましくは、このプラスミドDNAはフィブリン接着剤のこのトロンビン構成成分へ混合される。同様に、この細胞は、好ましくは、トロンビン構成成分へ添加され、混合される。なぜなら、フィブリノーゲン構成成分はより高い粘度を有するからである。しかし、このプラスミドDNAおよび細胞懸濁物はまた、フィブリノーゲン構成成分へ混合され得る。プラスミドDNAおよび細胞懸濁物は、フィブリノーゲン構成成分へ混合され、このトロンビンは処置を必要とする組織自体によって(すなわち、インビボで)提供され得る。
【0051】
この本発明に従ったバイオポリマーはトランスフェクション効率を上昇させるが、同時に、これはこの細胞のための培養マトリクスとして使用される。これは、トランスフェクションおよび培養がインビボで同じマトリクス中にて生じ、そしてさらなる精製工程および単離工程を必要とせず、さらなるトランスフェクション促進手段も必要としないことを意味する。特に、例えば、マトリクスとプラスミドとの間の「メディエーター」として作用する、ポリリジンのようなトランスフェクション媒介物質を必要としない。換言すると、このプラスミドは、マトリクスに結合して存在せず、遊離プラスミドとして存在する。
【0052】
このマトリクス構成成分は、様々な形態、凍結乾燥形態および液体形態の両方で、乾燥粉末、微粒子またはナノ粒子として存在し得る。さらに、バイオポリマーが、均質な分布のトランスフェクトされた細胞およびプラスミドを含む、硬化したマトリクス(例えば、ゲル様塊)として既に存在することは可能である。
【0053】
プラスミド−バイオポリマーの組み合わせが、共にまたは順次のいずれかで、それぞれの組織に適用され得、特にこれらは噴霧され得る。
【0054】
本発明に従って調製物を生成する方法において使用され、従って、本発明に従う組成物に含まれる細胞は、組織再生に正の効果を有する全ての型の細胞を含む。特に、これらは、ケラチノサイト、血小板、骨芽細胞、破骨細胞、線維芽細胞、上皮細胞および内皮細胞、筋細胞、脂肪細胞、筋芽細胞、シュヴァン細胞、他の結合組織細胞、またはこれらの前駆体などである。特に好ましいのは、皮膚の創傷治癒において実質的な役割を果たす細胞(例えば、ケラチノサイト)である。
【0055】
好ましくは、これらの細胞は自己細胞または同種異系の細胞である。本発明に従う使用されるときの細胞は、予め培養され得るかまたは新たに単離され得る(すなわち、培養されていない)。
【0056】
組織再生において正の効果を有する物質をコードする遺伝子を含むプラスミドは、発現プラスミドであり得、例えば、真核生物細胞における遺伝子の発現のために従来使用される発現プラスミドであり得る。
【0057】
プラスミドに含まれる、遺伝子またはDNAのそれぞれは、組織再生において正の効果を有する、タンパク質またはペプチドをそれぞれコードし得る。特に、この遺伝子は、以下のような因子をコードする:増殖因子、サイトカイン、治療タンパク質、ホルモンおよびホルモンのペプチドフラグメント、サイトカインインヒビター、ペプチド性増殖因子およびペプチド性分化因子。例として、以下はここで言及される:TGF−βスーパーファミリーの分子(例えば、様々なTGF−βのアイソフォーム;ケラチノサイト、肝細胞、表皮の増殖因子、PDGF、EGF、VEGF;NGF、エリスロポエチン、TPA、FGF−1およびFGF−2。さらに、ホルモン(例えば、成長ホルモン、PTHなど)、レセプターい対してアゴニスト活性もしくはアンタゴニスト活性を有するペプチド、または変化した発現による病理学的プロセスにおいて役割を果たす他の分子。
【0058】
これらの因子は、個別にまたは組み合わせて使用され得る。
【0059】
このプラスミドは、1つまたはいくつかの上記の因子をコードする1つまたはいくつかのDNA配列を含み得る。
【0060】
しかし、本発明に従って、これはまた、次いで創傷治癒を妨害する因子を阻害するアンチセンスRNAまたはリボザイム−RNAをコードし得る。
【0061】
本発明に従う調製物および本発明に従うキットは特に、治療適用に使用され得る。これらは、損傷組織または欠損組織(例えば、損傷したまたは欠損した、骨、軟骨、筋肉、神経部分または皮膚部分)の処置において適切であり、特にこれらは、皮膚の創傷治癒に適切である。従って、本発明のさらなる局面は、欠損した組織を処置するための薬学的組成物の供給であって、自己硬化性バイオポリマー、上記に示した性質を有したプラスミド、および標的、特に、欠損組織の再生プロセス(特に、皮膚の創傷治癒)に関与する修復細胞を含む。
【0062】
これらの薬学的組成物はいくつかの構成成分で存在し得る。薬学的調製物が使用される直前に添加される標的細胞は除いて、この薬学的組成物は液体形態、凍結乾燥形態、または急速冷凍形態で提供され得る。
【0063】
この薬学的組成物の使用の分野は特に、ヒト医薬、獣医薬および歯科医薬を含む。
【0064】
プラスミド、バイオポリマー成分および細胞の相対量は、それぞれ、処置される組織型に依存して正確に調整、または変更され得る。例えば、バイオポリマー成分に対するプラスミドの割合は、少なくとも5μg/mlであり、好ましくは5〜100μg/mlの間の範囲にある。特に好ましい範囲は、5〜25μg/mlであり、そして特に好ましいレベルは、およそ50μg/mlである。
【0065】
プラスミドに対する細胞の割合は、例えば、1μgのプラスミドあたり25,000〜2,500,000細胞の範囲にある。好ましい範囲は、1μgのプラスミドあたり、25,000から75,000細胞、75,000〜100,000細胞および250,000〜750,000細胞である。
【0066】
バイオポリマー成分に対する細胞の割合もまた、処置される各細胞型および/または創傷/組織に従って調製され得、そしてこれらについて最適化され得る。1mlのバイオポリマーに対する細胞数は、広範に変化し得る(例えば、1mlのバイオポリマー成分あたり100,000〜8,000,000細胞の間)。
【0067】
ケラチノサイトについて好ましい範囲は、バイオポリマー成分1mlあたり200,000〜6,000,000細胞、特に好ましくは、バイオポリマー成分1mlあたりおよそ3,000,000細胞量(=2成分の1:1混合物によって形成されるクロット(clot)1mlあたり6,000,000細胞)である。
【0068】
特に、これらの割合はまた、実施されるトランスフェクションがインビトロでかまたはインビボでかのいずれによるかに依存する。特に、インビボとは、エキソビボでマトリクスに添加された細胞のトランスフェクションを意味し、細胞は、均質に分配されたプラスミドDNAと同様に、マトリクス中に均質に分配される。従って、例えば、インビボでのトランスフェクションにおけるバイオポリマー成分1mlあたりの細胞の割合は、インビトロでのトランスフェクションよりも、3〜10倍、好ましくは4〜6倍高い。
【0069】
本発明は、ここで、以下の実施例によってより詳細に記載される。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
自己硬化バイオポリマーの存在によるトランスフェクション率の増加。
【0071】
発現プラスミド:本実施例において、発現プラスミドとして、pCMVβ−GalおよびCMVhEGFを用いた(既に、Andreeら(前出)によって先に記載されている)。EGF発現プラスミドは、CMVの前初期転写プロモーターから構成され、そしてインフレーム融合物におけるヒト増殖因子(hGF)分泌シグナルペプチドおよび成熟EGFポリペプチドをコードする。
【0072】
Baxter,Heidelberg,GermanyのTissucol(登録商標)を、フィブリン接着剤として用いた。この2成分フィブリン接着剤は、異種のヒト血漿タンパク質画分(フィブリノーゲン成分およびトロンビン成分)から構成される。フィブリノーゲン成分は、フィブリノーゲン、血漿フィブロネクチン、第VIII因子、プラスミノーゲン、アプロチニンおよびヒトアルブミンを含む。トロンビン成分は、トロンビンおよび塩化カルシウムから構成される。
【0073】
これらの細胞の細胞調製物を、形成外科手術による皮膚のサンプルから得た。ケラチノサイトを、40℃にて2時間のインキュベーション後、0.3%のディスパーゼ(Boehringer,Mannheim,Germany)を用いて真皮から分離した。続いて、上皮細胞を、37℃にて30分間、0.05%のトリプシンおよび0.02%のEDTA(GIBCO,Germany)を用いて単一細胞懸濁液として得、そして無血清培地中に再懸濁した。細胞を、直接用いるか、または標準プロトコル(Horchら、前出)に従って培養した。
【0074】
(群1)
培養したヒトケラチノサイト(群1a)および培養していないヒトケラチノサイト(群1b)を、3時間、CMVh EGFプラスミドと混合し、続いてトロンビン成分中に再懸濁した。トロンビン中に再懸濁後、フィブリン接着剤を24ウェルプレート中に配置し、そして2mlの無血清培地を添加した。
【0075】
培地を24時間ごとに交換し、そして−70℃にて凍結ショックを与えた。
【0076】
(群2)
培養したケラチノサイトおよび培養していないケラチノサイト(それぞれ、群2aおよび群2b)を2mlの培地中(CMVhEGFプラスミドを含む)に再懸濁し、そして3時間インキュベートした。続いて、細胞を24ウェルプレートに配置し、そして培地を24時間毎に交換して−70℃にて凍結ショックを与えた。
【0077】
(群3)
培養したケラチノサイト(3a)および培養していないケラチノサイト(3b)を2mlの培地に再懸濁し、次いで、24ウェルプレートに配置した。培地を24時間毎に交換し、そして−70℃にて適切に凍結ショックを与えた。
【0078】
プラスミドDNAの濃度は、トロンビン1mlあたり20μgに達した。発現タンパク質を、市販のELISAキット(Quantikin,R&D System,Minneapolis,USA)の補助によってインビトロで検出した。
【0079】
培養上清中のEGFタンパク質の測定結果を図1に示す。コントロール群(群2および群3)と比較して、群1のEGFタンパク質濃度は、100倍までの増加に達し得ることを示した。最大のEGF濃度を24時間後に測定した(それぞれ、群1a:102.14μg/ml;群1b:119.3μg/ml;コントロール5.1μg/mlおよび2.26μg/ml)。5日後、それぞれ23.3μg/mlおよび8.85μg/mlまでの減少を観察し得た。EGF濃度(インキュベーション後14日目に測定した)は、群1aについて2.24μg/ml(14日目)までさらなる減少を示した。
【0080】
トランスフェクション率のインビボ試験
試験動物として、6〜8週齢のヌードマウスを用いた。
【0081】
(創傷および移植方法)
2×2cmの大きさの全皮膚創傷(全層創傷)を、麻酔をしたヌードマウスの背中に作製した。これらの創傷を皮筋に達するまで作製し、そして創傷端を、創傷の収縮を防ぐために縫合した。
【0082】
ヒトケラチノサイト懸濁液(培養したかまたは培養していない)を、フィブリン接着剤のトロンビン部分中に再懸濁した。トロンビン成分は、pCMVβ−GalまたはEGF発現プラスミドのいずれかを含んだ。各群の7つの創傷を、培養したケラチノサイトまたは培養していないケラチノサイトのいずれかおよび種々のプラスミドを用いて覆った(表2)。創傷を半透性の接着フィルム(Op−site,Smith&Nephew,Largo,FL)を用いて覆い、次いで、このフィルムをこの部位に接着させて抗微生物軟膏を用いて覆った。
【0083】
日常点検をその被覆の完全性を確実にするために行った。実験群に、hEGFプラスミド(群1a n=7、群1b n=7)またはpCMVβ−Galプラスミド(群2a n=7、群2b n=7)のいずれかを用いて移植した。EGF導入遺伝子の発現を、創傷ホモジネートにおけるEGF濃度を測定することによって、1日目、3日目、5日目、および7日目にモニターした。1日目、3日目、5日目(1群あたり各2匹のマウス)および7日目(1群あたり1匹のマウス)に、生検を獲得し、これは、創傷のホモジネートを得て、このようにしてEGFタンパク質を実証するために、全創傷を含んだ。一方、免疫組織化学試験を、慣用的な組織化学法によって実施した。結果を図2に図示する。理解されるように、EGFプラスミドを用いた形質転換から24時間後、培養していないヒトケラチノサイトは、コントロールとしてpCMVβ−Galを用いてトランスフェクトした創傷と比較してEGF濃度の約181倍の増加を示した(図4)。EGF濃度を、全7日間の試験期間の間、検出した。なお最初の3日間、それらのEGF濃度は、急速に減少し、処置後1日目に180μg/mlから開始し、処置後7日目にはおよそ20μg/mlになった。
【0084】
フィブリンマトリクス(EGFプラスミドを含む)とともに再懸濁した培養したヒトケラチノサイトを移植した後、類似の濃度パターンをEGFタンパク質について得た(図3)(200.5μg/ml;7日目、20μg/ml)。
【0085】
(実施例2)
所定の緩衝液についての最適ケラチノサイト濃度の決定。EGFプラスミド、Tissucol(登録商標)および細胞調製物を、実施例1に記載されるように用いた。ケラチノサイトの量のみを、100,000、1,000,000、2,000,000と5,000,000との間で変更した。EGFの最高発現率を、フィブリンクロット333μlあたり2,000,000の細胞数(クロット1mlあたりおよそ6,000,000細胞に達する)を用いて得た(図5を参照のこと)。
【0086】
(実施例3)
ヌードマウスの全層創傷の処置のための遺伝子活性化マトリクスの最適化。ヌードマウスの全層創傷(1群あたり12匹のマウス)を異なる組み合わせ(群1〜4)で処置した。各場合において、フィブリンの量は333μl、プラスミドの量は200μgであった。各場合において、適切な細胞のプラスミドとのプレインキュベーションを、3時間、5.7μlのPBS中で実施した。用いたケラチノサイトの量は、2,000,000であった。生検を、1日目、3日目、5日目、7日目、9日目および12日目に獲得し、そして組織学を5日目に開始した。
【0087】
群1:フィブリンおよびEGFプラスミド
群2:フィブリンおよびケラチノサイト
群3:フィブリン、EGFプラスミドおよび内皮細胞(=支持細胞)
群4:フィブリン、EGFプラスミドおよびケラチノサイト(=修復細胞)
組織学の結果は、群4のみが、9〜11層の細胞からなる完全に再生した上皮を有する、ヌードマウスにおける全層創傷の完全な再上皮形成を引き起こすことを明確に示す(図9および図10を参照のこと)。
【0088】
全ての他の群(1〜3)では、創傷縁からのいくらかの再上皮形成のみが見られるのに対して、創傷の中央には再上皮形成が生じなかった(図6、図7および図8を参照のこと)。
【0089】
(実施例4)
種々の細胞型のトランスフェクション
200,000細胞(すなわち、筋細胞、シュヴァン細胞、内皮細胞、前脂肪細胞および線維芽細胞)を、各10μgのEGFプラスミドを用いてトランスフェクトし、用いたフィブリンの量は、333μlであった。EGFの発現を、1日後、2日後、3日後、4日後および5日後に測定した。これを図11に示す。
【0090】
(細胞の単離についての実施例)
(シュヴァン細胞)
細胞を、Shaharら(1989)の方法に従って改変を加えて調製し、ここで、シュヴァン細胞を新生仔ラットの坐骨神経から収集した。簡潔には、シュヴァン細胞を7mmセグメントの坐骨神経から収集した。神経をHBSS中に収集し、それらの神経上膜を剥ぎ、そして1mm片に刻んだ。この神経片を、37℃にて30分間、0.3%のトリプシンおよび0.1%のコラゲナーゼとともにそれらの塊(chunk)をインキュベートすることによって分離した。次いで、これらの細胞を粉砕し、洗浄し、そしてポリ−D−リジンでコートしたフラスコ上で10%のFCSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMDMを用いて培養した。次の日、ara−cを培養培地に48時間添加した後、フォルスコリンを含むマイトジェン培地に置換した。シュヴァン細胞がコンフルエントに達するまで、3日毎に培地を交換した。
【0091】
(ヒト微小血管内皮細胞)
脂肪および表皮の除去後、真皮をおよそ4cmの大きさの切片に刻んだ。内皮細胞を、4℃にてディスパーゼ(2.4U/ml)中で一晩インキュベーション後、真皮と内皮との分離によって真皮から得た。真皮片を再切断し、そして37℃にて30分間トリプシンとともにインキュベートした。メスを用いて真皮小片に圧力を与えて内皮細胞を得た。次いで、ペートリ皿をEGM(5%)でリンスした。懸濁液をろ過した(70μm)。1300U/分にて5分間遠心分離後、そのペレットを5%のEGM中に再懸濁し、そしてゼラチンコートしたフラスコにプレートした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞をトランスフェクトする方法であって、以下の工程:
(a)組織の再生の進行に対して正の効果を有する遺伝子をコードする実質的に純粋な形態のプラスミドDNAを提供する工程;
(b)トロンビンを含むフィブリン接着剤を提供する工程;
(c)再生を促進する細胞を有する細胞懸濁液を提供する工程であって、該細胞が、該プラスミドDNAでトランスフェクトされていない、工程;
(d)(a)、(b)および(c)に記載の成分を混合することにより、エキソビボで、該プラスミドDNAによる該細胞のトランスフェクションを促進する工程;
をエキソビボで実施することを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記フィブリン接着剤が、液体形態または凍結乾燥形態で提供されることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記プラスミドに対する細胞の割合が、プラスミド1μgあたり25,000〜75,000細胞であることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記プラスミドに対する細胞の割合が、プラスミド1μgあたり75,000〜100,000細胞であることを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記プラスミドに対する細胞の割合が、プラスミド1μgあたり約50,000細胞であることを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記フィブリン接着剤の1ml当たりの細胞数が、フィブリン接着剤1mlあたり200,000〜5,000,000細胞であることを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記フィブリン接着剤の1ml当たりの細胞数が、フィブリン接着剤1mlあたり約3,000,000細胞であることを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記細胞懸濁液が、ケラチノサイト、軟骨細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、シュワン細胞、骨芽細胞および破骨細胞からなる群より選択される細胞の懸濁液であることを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記フィブリン接着剤がさらにフィブリノーゲンを含むことを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記フィブリノゲンに対する前記プラスミドの割合が、5〜25μg/mlであることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記フィブリノゲンに対する前記プラスミドの割合が、10〜20μg/mlであることを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法であって、前記フィブリノゲンに対する前記プラスミドの割合が、25〜100μg/mlであることを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記フィブリノゲンに対する前記プラスミドの割合が、約50μg/mlであることを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法であって、前記フィブリン接着剤がさらにカルシウムを含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記フィブリン接着剤がさらにフィブロネクチン、第VIII因子、プラスミノゲン、アプロチニンおよびアルブミンを含むことを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記プラスミドDNAがEGFをコードすることを特徴とする、方法。
【請求項17】
エキソビのボトランスフェクション系であって、以下:
組織の再生の進行に対して正の効果を有する遺伝子をコードする実質的に純粋な形態のプラスミドDNA;
トロンビンを含むフィブリン接着剤;および
該組織の再生を促進する細胞を有する細胞懸濁液であって、該細胞が、該プラスミドDNAでトランスフェクトされていない、細胞懸濁液、
を含む、トランスフェクション系。
【請求項18】
請求項17に記載のトランスフェクション系であって、該トランスフェクション系が、ヒトに対する薬学的な投与に適切となるように処方され、そしてさらに、薬学的に受容可能なキャリアを含むことを特徴とする、トランスフェクション系。
【請求項19】
請求項17に記載のトランスフェクション系であって、前記フィブリン接着剤がさらに、フィブロネクチン、第VIII因子、プラスミノゲン、アプロチニンおよびアルブミンを含むことを特徴とする、トランスフェクション系。
【請求項20】
患者の組織内欠損の処置のための組成物であって、該組成物は、請求項17に記載のトランスフェクション系を含む、組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の組成物であって、前記欠損が、熱傷、骨の欠損、筋肉の欠損、神経の欠損、軟骨の欠損、慢性創傷および組織増強からなる群より選択されることを特徴とする、組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の組成物であって、前記欠損が熱傷であることを特徴とする、組成物。
【請求項23】
請求項20に記載の組成物であって、前記欠損が皮膚創傷であることを特徴とする、組成物。
【請求項24】
請求項20に記載の組成物であって、前記トランスフェクション系が前記組織欠損上にスプレーされることを特徴とする、組成物。
【請求項25】
請求項20に記載の組成物であって、前記トランスフェクション系がゲルとして前記組織欠損に適用されることを特徴とする、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−21034(P2012−21034A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−239632(P2011−239632)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【分割の表示】特願2001−585834(P2001−585834)の分割
【原出願日】平成13年5月23日(2001.5.23)
【出願人】(501163750)ウニベルジテートスクリニクム フライブルク (3)
【Fターム(参考)】