トランスフェリンレセプター抗体
本発明は、疾患および癌関連抗原、トランスフェリンレセプターのさらなる特徴付けを提供する。本発明は、また、トランスフェリンレセプターに結合する抗体の新規なファミリーを提供する。本発明は、また、トランスフェリンレセプターを発現する種々のヒトの癌および疾患を診断する方法を提供する。本発明は、また、トランスフェリンレセプターを発現する種々のヒトの癌および疾患を治療する方法を提供する。本発明は、実質的に精製された抗体を提供し、この抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター上のLUCA31エピトープに特異的に結合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学および免疫療法の分野に属する。より詳細には、疾患および癌関連の抗原トランスフェリンレセプター、および、トランスフェリンレセプターに結合するポリクローナルおよびモノクローナルの抗体および他のポリペプチドに関する。本発明はさらに抗トランスフェリンレセプター抗体を含むトランスフェリンレセプターに結合するアンタゴニスト、モジュレーターおよびペプチドを用いたトランスフェリンレセプターに関連する種々のヒトの疾患および癌の診断および/または治療を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
診断におけるその知られた使用のほかに、抗体は治療剤として有用であることがわかっている。例えば免疫療法、すなわち治療目的のための抗体の使用は癌を治療するために近年使用されている。受動免疫療法では癌の治療においてモノクローナル抗体を使用する。例えば非特許文献1を参照できる。これ等の抗体は腫瘍細胞の増殖または生存の直接の抑制および身体の免疫系の自然の細胞殺傷活性をリクルートするその能力の両方により、固有の治療上の生物学的活性を有することができる。これ等の因子は単独または放射線照射または化学療法剤と組み合わせて投与することができる。非ホジキンリンパ腫および乳癌の治療についてそれぞれ認可されているリツキシマブおよびトラスツズマブはそのような治療剤の2つの例である。或いは、抗体は、抗体が毒性の因子に連結され、そして、腫瘍に特異的に結合することによりその因子を腫瘍に指向させる、抗体コンジュゲートを生成するために使用できる。ゲムツズマブオゾガマイシンは白血病の治療のために使用される認可された抗体コンジュゲートの一例である。癌細胞に結合し、診断および治療のための潜在的用途を有するモノクローナル抗体が公開物に開示されている。例えば特に一部の分子量の標的タンパク質を開示している以下の特許出願、すなわち、特許文献1(200kD c−erbB−2(Her2)および大きさ40〜200KDの他の未知の抗原)および特許文献2(50kDおよび55kDの癌胎児タンパク質)を参照できる。臨床試験における、および/または、固形腫瘍の治療に関して認可された抗体の例はトラスツヅマブ(抗原:180kD、HER2/neu)、エドレコロマブ(抗原:40〜50kD、Ep−CAM)、抗ヒト乳脂肪小球(HMFG1)(抗原>200kD、HMWムチン)、セツキシマブ(抗原:150kDおよび170kD、EGFレセプター)、アレムツズマブ(抗原:21〜28kD、CD52)およびリツキシマブ(抗原:35kD、CD20)を包含する。
【0003】
乳癌を治療するために使用されるトラスツヅマブ(Her−2レセプター)および数種の癌の治療に関して臨床試験中のセツキシマブ(EGFレセプター)の抗原標的は皮膚、結腸、肺、卵巣、肝臓および膵臓を包含する多数の正常ヒト成人組織上にある程度検出可能な量で存在している。これ等の治療剤の使用における安全性の限界は、これ等の部位における抗体の発現の量または触容易性または活性の相違により恐らくは決定される。
【0004】
免疫療法の別の型は能動免疫療法、すなわち特定の癌上に存在する抗原、または、個体における免疫応答を後に惹起する抗原の発現を指向する、すなわち自身の癌に対抗する抗体を能動的に生産するように個体を誘導するDNAコンストラクトを用いた、ワクチン投与である。能動免疫療法は受動免疫療法または免疫毒素ほど頻繁には使用されていない。
【0005】
疾患(癌を含む)の進行の幾つかのモデルが示唆されている。理論は単一の感染性/形質転換性の事象による誘起から、究極的には完全に病原性または悪性の可能性をもたらす進行的に「疾患様」または「癌様」となる組織型の発生にまでわたっている。一部は例えば癌の場合は単一の突然変異の事象が悪性誘発のために十分であるとする説がある一方、その後の改変も必要であるとする説もある。他方では、増大する突然変異性の負荷および腫瘍の等級が、細胞レベルにおける突然変異選択の事象の継続を介した真生物形成の開始並びに進行の両方のために必要であることも示唆されている。癌の標的は腫瘍組織においてのみ存在するものもあるが、正常組織にも存在し、腫瘍組織でアップレギュレートおよび/または過剰発現されるものもある。このような状況において、一部の研究者等は過剰発現が悪性疾患の獲得に関連すると示唆しているが、別の研究者等によれば過剰発現は増大する疾患状態への過程に沿った傾向のマーカーに過ぎないと示唆されている。
【0006】
理想的な診断および/または治療用の抗体は多数の癌上に存在するが、如何なる正常組織上でも非存在または少量存在するのみである。癌に特異的に関連する新規な抗原の発見、特徴付けおよび単離は多くの方法において有用である。第1に、抗原は抗原に対抗するモノクローナル抗体を生成するために使用できる。抗体は理想的には癌細胞に対する生物学的活性を有し、そして外来性抗原に対する免疫系の応答をリクルートすることができる。抗体は治療剤単独として、または、現在の治療と組み合わせて投与でき、或いは、毒性物質に連結した免疫コンジュゲートを製造するために使用できる。単独で投与された場合に同じ特異性を有するが生物学的活性は低値か皆無である抗体はまた、その抗体が、コンジュゲート型が抗原含有細胞に毒素を指向することにより生物学的活性であるような放射性同位体、毒素、または化学療法剤または化学療法剤を含有するリポソームとの免疫コンジュゲートを生成することができる点において有用である。
【0007】
理想的な診断および/または治療用の抗体に望まれる1つの特徴は、種々の癌に関連する抗原の発見および特徴付けである。多数の型の癌上に発現される抗原(すなわち「汎癌」抗原)であって非癌細胞上での発現が限定されているものは少ない。このような抗原の単離および精製は抗原をターゲティングする抗体(例えば診断用または治療用)を生成するために有用である。「汎癌」抗原に結合する抗体は、癌の唯一特定の型にのみ関連する抗原に対する抗体とは対照的に、種々の組織中に存在する種々の癌をターゲティングすることができる。抗原はまた因子の発見(例えば低分子)のため、および、細胞の調節、増殖および分化をさらに特徴付けするために有用である。
【0008】
トランスフェリンレセプターはヒト腫瘍において広範に発現され(非特許文献2、そして、細胞の増殖および生存において重要な役割を果たしている。トランスフェリンレセプターに結合する抗体は動物腫瘍モデルにおいて有効であることが以前より解っている。CCRF−CEM細胞を用いた白血病異種移植片モデル(非特許文献3)において、および、M21ヒト黒色腫異種移植片(非特許文献4)において、トランスフェリンレセプター抗体はやはり腫瘍の進行を抑制していた。
【0009】
トランスフェリンレセプターはネイキッドの抗体、毒素コンジュゲート抗体およびトランスフェリン−毒素コンジュゲートを用いて1980年代より癌標的として研究(例えば非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)されており、例えばネズミIgA抗体42/6を用いた第I相臨床試験(非特許文献8)が包含される。トランスフェリンレセプターの発現は細胞増殖と相関しており、そしてこれはトランスフェリンレセプター抗体で陽性染色される腫瘍の高比率および正常組織の限定された染色を説明していると示唆されている(Gatter,1983)。トランスフェリンレセプター抗体は細胞内への鉄の取り込みを低減することにより細胞増殖を抑制すると一般的には受け入れられている(非特許文献9)。これは鉄負荷トランスフェリンとのトランスフェリンレセプターの相互作用をブロッキングすることにより、または、トランスフェリンレセプターサイクリングおよび細胞表面の呈示の動的状態を改変することにより達成することができる。腫瘍細胞内の鉄取り込みのブロッキングの作用は主にS期における細胞周期の停止とそれに続くG1期の細胞の蓄積として最初は顕在化する(White,1990)。鉄離脱の究極的終点は細胞性塞栓から細胞死の誘導まで変動するように観察されている。
【0010】
ネズミトランスフェリンレセプターを認識するラット誘導抗体が同系マウス白血病モデルにおいて試験された(非特許文献10)。この分子はコントロールと相対比較して生存性を向上させており、そして4週間の投与期間にわたって抗体により認識される正常組織に対する肉眼的毒性の兆候や損傷の兆候は無かった。さらに又赤血球または白血球の数にも変化はなかった。しかしながら、骨髄先祖細胞の分析によれば、CFU−e/106細胞の2倍の低減、および、CFU−eの低顕著化された低減を示した。トランスフェリンレセプターをブロッキングすることの作用に関する別の知見はマウス抗体42/6を用いて実施した第I相臨床試験の結果を評価することにより得ることができる。この試験においては、マウス抗体のより短い投与経過および貧弱な薬物動態にもかかわらず混合された腫瘍応答の兆候があった(Brooks,1995)。42/6を投与した患者の評価によれば、抗体投与後の低下した骨髄BFU−eの兆候を示したが、結果は統計学的に有意ではなかった。トランスフェリンレセプターは分化中の骨髄先祖細胞上に発現されることがわかっている(非特許文献11)ため、抗トランスフェリンレセプター抗体を組み込んだ治療剤は骨髄毒性の可能性を相殺する以上の潜在的治療効果を有することが望ましい。
【0011】
必要とされているものは、細胞表面の標的を特異的に認識する抗体および他の因子で疾患および/または癌を診断および治療するために使用してよいそのような疾患および/または癌の表面上の新しい標的である。さらに必要とされているものは、本明細書に開示した発見に基づけば、トランスフェリンレセプターの疾患誘発活性を低減または増強することのいずれかにより調節することができる細胞表面上の標的を特異的に認識する新規な抗体および他の因子である。本発明の目的はヒトトランスフェリンレセプターの疾患関連の活性を抑制することができるそのアンタゴニストを発見することである。本発明の別の目的は、トランスフェリンレセプターの試験において使用するため、および、免疫原として使用するため、または、抗ヒトトランスフェリンレセプター抗体を選択するための新規な化合物を提供することである。
【0012】
下記においてより詳細に説明する通り、本発明者等は、本明細書に記載した新規なアンタゴニスト、モジュレーターおよび抗体の抗原標的として発見されたヒトトランスフェリンレセプターの新規エピトープを発見した。
【特許文献1】米国特許6,054,561号明細書
【特許文献2】米国特許5,656,444号明細書
【非特許文献1】Cancer:Principles and Practice of Oncology,6th Edition (2001)Chapt.20pp.495−508
【非特許文献2】Gatter et al.,Transferrin receptors in human tissues: their distribution and possible clinical relevance,J Clin Pathol(1983)36,539−545
【非特許文献3】White et al.,Combinations of anti−transferrin receptor monoclonal antibodies inhibit human tumor cell growth in vitro and in vivo: evidence for synergistic antiproliferative effects、Cancer Res(1990)50,6295−6301
【非特許文献4】Trowbridge & Domingo,Anti−transferrin receptor monoclonal antibody and toxin−antibody conjugates affect growth of human tumor cells、Nature(1981)294,171−173
【非特許文献5】Griffin et al.,Combined antitumor therapy with the chemotherapeutic drug doxorubicin and an anti−transferrin receptor immunotoxin: In vitro and in vivo studies)、J Immunol(1992)11,12−18
【非特許文献6】Qian et al.,Targeted drug delivery via the transferrin receptor−mediated endocytosis pathway、Pharmacological Reviews(2002)54,561−587
【非特許文献7】Trowbridge & Collin et al.,Structure−function analysis of the human transferrin receptor: Effects of anti−receptor monoclonal antibodies on tumor growth、Curr Stud Hematol Blood Transf(1991)58,139−147
【非特許文献8】Brooks et al.,Phase Ia trial of murine immunoglobulin A antitransferrin receptor antibody、Clin Cancer Res(1995)1,1259−1265
【非特許文献9】Kemp,Iron deprivation and cancer: a view beginning with studies of monoclonal antibodies against the transferrin receptor、Histol Histopathol(1997)12,291−296
【非特許文献10】Savage,et al.,Effects of monoclonal antibodies that block transferrin receptor function on the in vivo growth of a syngeneic murine leukemia、Cancer Res(1987)47,747−753
【非特許文献11】Helm et al.,Characterization and phenotypic analysis of differentiating CD34+ human bone marrow cells in liquid culture、Eur J Haematol(1997)59,318−326
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はトランスフェリンレセプターのアンタゴニスト、モジュレーターおよび種々のヒト癌上に発現されるトランスフェリンレセプターに結合するモノクローナル抗体を提供する。1つの特徴において、本発明はトランスフェリンレセプターに結合するモノクローナル抗体のファミリーである。
【0014】
別の特徴において、本発明はPTA−6055のPatent Deposit Designationと共にAmerican Type Culture Collectionにおいて2004年6月8日に寄託された宿主細胞系統CA130.3.13C9.1A7により生産されるモノクローナル抗体抗トランスフェリンレセプターである。
【0015】
さらに別の特徴において本発明は(a)免疫原で宿主哺乳類を免疫化する工程;(b)哺乳類からリンパ球を得る工程;(c)リンパ球(b)をミエローマ細胞系統と融合させてハイブリドーマを生成する工程;(d)(c)のハイブリドーマを培養してモノクローナル抗体を生産する工程;および(e)疾患性および/または癌性の細胞または細胞系統には結合するが非癌性または正常細胞または細胞系統には結合しないか、低水準または異なる態様において正常細胞に結合する抗体のみを選択するように抗体をスクリーニングする工程を含む疾患性および/または癌性の細胞と反応するモノクローナル抗体抗トランスフェリンレセプターを生成する方法である。
【0016】
別の特徴において、本発明は抗トランスフェリンレセプター抗体を形成するための方法であり、これは、そのような抗体またはその子孫をコードする宿主細胞を抗体の製造が可能な条件下で培養する工程、および、抗トランスフェリンレセプター抗体を精製する工程を含む。
【0017】
別の特徴においては、本発明は適当な細胞において抗体をコードするポリヌクレオチド1つ以上を発現すること(これは単一の軽鎖または重鎖として別個に発現されてよく、または、軽鎖および重鎖の両方が1つのベクターから発現される)、その後、一般的には目的の抗体またはポリペプチドを回収および/または単離することによる、本明細書に記載した抗体(またはポリペプチド)のいずれかの生成方法を提供する。
【0018】
別の特徴において、本発明はトランスフェリンレセプターへの抗トランスフェリンレセプター抗体の優先的結合を競合的に抑制する抗トランスフェリンレセプター抗体またはポリペプチド(抗体であってもなくてもよい)である。一部の実施形態においては、本発明はLUCA31抗体と同じトランスフェリンレセプター上のエピトープに優先的に結合する抗体またはポリペプチド(抗体であってもなくてもよい)である。
【0019】
別の特徴において、本発明はトランスフェリンレセプターへの抗トランスフェリンレセプター抗体の優先的な結合を競合的に抑制するトランスフェリンレセプターモジュレーター(ポリペプチドであってもなくてもよい)である。一部の実施形態においては、本発明は他の抗トランスフェリンレセプター抗体と同じか異なるトランスフェリンレセプター上エピトープに優先的に結合する低分子または化学物質であることができる。
【0020】
さらに別の特徴において、本発明はトランスフェリンレセプターのエピトープに対して特異的な抗体により結合されたトランスフェリンレセプターを含む組成物である。1つの実施形態において、抗体は抗トランスフェリンレセプターである。他の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体2つ以上を投与し、その抗体はトランスフェリンレセプターの異なるエピトープ2つ以上をマッピングしている。一部の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体は治療剤または検出可能な標識に連結される。
【0021】
別の特徴において、本発明はLUCA31抗体のフラグメントまたは領域を含む抗体である。1つの実施形態において、フラグメントが抗体の軽鎖である。別の実施形態において、フラグメントは抗体の重鎖である。さらに別の実施形態においてフラグメントは抗体の軽鎖および/または重鎖の可変領域1つ以上を含有する。さらに別の実施形態において、フラグメントは抗体の軽鎖および/または重鎖の相補性決定領域(CDR)1つ以上を含有する。
【0022】
別の特徴において、本発明は、抗トランスフェリンレセプター抗体の、a)軽鎖または重鎖由来のCDR(またはそのフラグメント)1つ以上;b)軽鎖由来の3CDR;c)重鎖由来の3CDR;d)軽鎖由来の3CDRおよび重鎖由来の3CDR;e)軽鎖可変領域;f)重鎖可変領域、のいずれかを含むポリペプチドを提供する。好ましい実施形態においては、このようなポリペプチドはLUCA31抗体の配列から選択される。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、ヒト化抗体である。一部の実施形態においては、ヒト化抗体は非ヒト抗トランスフェリンレセプター抗体のCDR1つ以上を含む。一部の実施形態においては、ヒト化抗体は他のLUCA31と同じかまたは異なるエピトープに結合する。一般的に、本発明のヒト化抗体は元の非ヒト抗トランスフェリンレセプター抗体のCDRと同じ、および/または、それより誘導したCDR1つ以上(1、2、3、4、5、6またはそのフラグメント)を含む。一部の実施形態においては、ヒト抗体は他の抗トランスフェリンレセプター抗体と同じかまたは異なるエピトープに結合する。別の特徴において、本発明は、非ヒト抗トランスフェリンレセプター抗体の重鎖および軽鎖の可変領域から誘導された可変領域およびヒト抗体の重鎖および軽鎖の定常領域から誘導された定常領域を含むキメラ抗体である。
【0024】
別の特徴において、本発明は、ATCC No.PTA−6055の寄託番号を有する宿主細胞またはその子孫により生産される抗体LUCA31をコードする単離されたポリヌクレオチドである。本発明は、上記の通り特定した抗体のいずれかの固有の結合または生物学的活性を有する抗体ポリペプチドを包含する。別の特徴において、本発明は、抗体(抗体フラグメントを含む)のいずれか並びに本明細書に記載した他のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0025】
別の特徴において、本発明は、本明細書に記載したポリペプチド(本明細書に記載した抗体のいずれかを包含する)またはポリヌクレオチドのいずれかを含む薬学的組成物、例えば化学療法剤に連結した抗トランスフェリンレセプター抗体、抗トランスフェリンレセプター抗体のフラグメントを含む抗体、非ヒト抗トランスフェリンレセプター抗体のヒト化抗体、非ヒト抗トランスフェリンレセプター抗体の可変領域から誘導した可変領域およびヒト抗体の定常領域から誘導した定常領域を含むキメラ抗体、または、化学療法剤(例えば放射活性部分)に連結した本明細書に記載した非ヒト抗トランスフェリンレセプター抗体または抗トランスフェリンレセプター抗体のいずれかの特徴1つ以上を有するヒト抗体および薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物である。
【0026】
1つの特徴において、本発明は、疾患性または癌性の細胞上に存在するトランスフェリンレセプターに結合した抗トランスフェリンレセプター抗体を含む組成物である。好ましい実施形態においては、癌細胞は卵巣、肺、前立腺、膵臓、結腸および乳房の癌の細胞からなる群より選択される。一部の実施形態においては、癌細胞は単離される。一部の実施形態においては、癌細胞は生物学的試料である。一般的に、生物学的試料は個体、例えばヒトから得られる。
【0027】
別の特徴においては、本発明は、個体から得られた細胞の上のトランスフェリンレセプターを検出することによる個体における疾患、特に個体における炎症性または自己免疫性の応答に関連する疾患または障害を診断する方法である。本発明の別の特徴においては、方法は個体における炎症性または自己免疫性の応答を調節することを可能とする。本発明の組成物および方法を用いた治療に付してよい炎症および自己免疫障害に起因する疾患および状態は例えば多発性硬化症、髄膜炎、脳炎、卒中、他の大脳外傷、炎症性腸疾患、例えば潰瘍性結腸炎およびクローン病、重症筋無力症、狼瘡、慢性関節リューマチ、喘息、急性若年発症性糖尿病、エイズ痴呆、アテローム性動脈硬化症、腎炎、網膜炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、心筋虚血および急性白血球媒介肺傷害を包含するがこれ等に限定されない。本発明の抗体はこのような状態に対する治療の必要な個体への投与において用途を有している。
【0028】
本発明の抗体および他の治療剤の治療上の使用のさらに別の適応症は臓器または移植片の拒絶の危険性のある個体への投与などである。近年にわたり、組織および臓器、例えば皮膚、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓および骨髄の移植のための外科的手法の効率が大きく向上している。恐らくは主要な重要問題は移植された同種移植片または臓器に対するレシピエントにおける免疫寛容を誘導するための満足できる因子が存在しないことである。同種移植片の細胞または臓器を宿主に移植する(すなわち供与者および被供与者が同じ種の異なる個体である)場合、宿主の免疫系は移植片における外来性抗原への免疫応答を上昇(宿主対移植片疾患)させると考えられ、これが移植された組織の破壊をもたらす。本発明の抗体は臓器または移植片の拒絶の危険性のある個体への投与において用途を有している。
【0029】
別の特徴において、本発明は、個体に由来する選択された細胞上でトランスフェリンレセプターの発現があるかどうかを調べる工程を含む個体が癌を有しているかどうかを診断するための方法であり、ここで該細胞上のトランスフェリンレセプターの発現は該癌を示すものである。一部の実施形態においては、トランスフェリンレセプターの発現は抗トランスフェリンレセプター抗体を用いて測定する。一部の実施形態においては、方法は細胞からのトランスフェリンレセプターの発現の量を検出する工程を包含する。「検出」という用語は本明細書においては、コントロールの比較参照を行うか行わない定性的および/または定量的な検出(量の測定)を包含する。
【0030】
さらに別の特徴においては、本発明は、個体から得た細胞上、または細胞から放出されたトランスフェリンレセプターを検出することによる個体における癌の診断方法であり、ここで、癌は副腎腫瘍、エイズ関連癌、胞状軟部肉腫、星状細胞腫、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨癌(アダマンチノーム、動脈瘤性骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、色素嫌性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、線維形成性骨形成不全症(fibrogenesis imperfecta ossium)、線維性骨形成異常、胆嚢および胆管の癌、妊娠性栄養膜疾患、生殖細胞腫瘍、頭部および頚部の癌、ランゲルハンス島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性(lipomatous)腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪性腫瘍、肝臓癌(胚芽細胞腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌腫、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、ブドウ膜または眼内の黒色腫、希少な(rare)血液学的障害、腎転移癌、横紋筋様(rhabdoid)腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移癌および子宮癌(子宮頸癌、子宮内膜癌および平滑筋腫)からなる群より選択されるがこれ等に限定されない。
【0031】
別の特徴において、本発明は、個体から得た生物学的試料中のトランスフェリンレセプターの発現を測定する工程を含む個体における癌(例えば卵巣、肺、前立腺、膵臓、結腸または乳房の癌)の診断を支援するための方法である。一部の実施形態においては、トランスフェリンレセプターの発現は抗トランスフェリンレセプター抗体を用いて測定する。一部の実施形態においては、方法は細胞からのトランスフェリンレセプターの発現の量を検出する工程を包含する。癌から放出されたトランスフェリンレセプターは、トランスフェリンレセプターまたはその部分の上昇した量が体液(例えば血液、唾液または腸の粘膜の分泌物)中で検出可能となることに寄与する。
【0032】
さらに別の特徴において、本発明は、癌性の細胞の増殖を低減するために十分なトランスフェリンレセプターに結合する抗体の有効量を投与することによる癌の治療方法である。一部の実施形態においては、抗体は抗トランスフェリンレセプター抗体である。一部の実施形態においては癌性の細胞は副腎腫瘍、エイズ関連癌、胞状軟部肉腫、星状細胞腫、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨癌(アダマンチノーム、動脈瘤性骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、色素嫌性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、線維形成性骨形成不全症(fibrogenesis imperfecta ossium)、線維性骨形成異常、胆嚢および胆管の癌、妊娠性栄養膜疾患、生殖細胞腫瘍、頭部および頚部の癌、ランゲルハンス島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪性腫瘍、肝臓癌(胚芽細胞腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌腫、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、ブドウ膜または眼内の黒色腫、希少な血液学的障害、腎転移癌、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移癌および子宮癌(子宮頸癌、子宮内膜癌および平滑筋腫)からなる群より選択されるがこれ等に限定されない。特定の好ましい実施形態においては、癌性の細胞は固形腫瘍(例えば乳癌、結腸癌、前立腺癌、肺癌、肉腫、腎転移癌、甲状腺転移癌および明細胞癌)からなる群より選択される。
【0033】
さらに別の特徴において、本発明は、トランスフェリンレセプターに特異的に結合する抗体のファミリーの少なくとも1つの有効量を投与する工程を含む癌を有する個体における転移の発生を遅延させる方法である。1つの実施形態において、抗体は抗トランスフェリンレセプター抗体である。別の特徴においては、本発明は、細胞培養物または試料または個体に化学療法剤と会合(連結を含む)した抗トランスフェリンレセプター抗体を含む組成物の有効量を投与する工程を含むインビトロまたは個体内の癌細胞の増殖および/または増殖を抑制する方法である。
【0034】
さらに別の特徴において、本発明は、トランスフェリンレセプターに特異的に結合する抗体のファミリーの少なくとも1メンバーの有効量を個体に投与することにより個体内の癌性細胞に治療剤を送達する方法である。別の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体は別の治療剤と組み合わせ(連結を含む)て個体に送達される。
【0035】
一部の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体は本明細書に命名した抗体から誘導したヒト化抗体である(必然ではないが一般的には抗体の部分的または完全なCDR1つ以上を含む)。一部の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体は命名した抗体の特性1つ以上を有するヒト抗体である。一部の実施形態においては、化学療法剤(例えば毒素または放射性分子)を癌細胞に送達する(内在化する)。一部の実施形態においては、因子はサポリンである。
【0036】
別の特徴において、本発明は、個体に化学療法剤と会合(連結を含む)した抗トランスフェリンレセプター抗体を含む組成物の有効量を投与する工程を含む個体における癌の治療方法である。
【0037】
本発明は、さらに原形質シグナリング相手とのトランスフェリンレセプターの会合を、増強または低減することのいずれかにより調節するための方法を提供する。原形質シグナリング相手とのトランスフェリンレセプターの会合は、トランスフェリンレセプターへのシグナリング相手の結合を調節する因子に細胞表面上に呈示されたトランスフェリンレセプター分子を接触させることにより影響を与えることができる。トランスフェリンレセプターのその結合および/またはシグナリング相手との会合をブロックまたは低減する因子は、トランスフェリンレセプター媒介の炎症または免疫応答に関与する生物学的または病理学的な過程を調節するために使用できる。この作用が関与する病理学的過程は腫瘍関連細胞増殖を包含する。
【0038】
因子は結合パートナー、例えば抗トランスフェリンレセプターレセプター抗体とのトランスフェリンレセプターの会合をブロック、低減、増強または他の態様で調節するその能力について試験することができる。典型的には、結合パートナーおよび被験因子と共にトランスフェリンレセプター相互作用部位を含むペプチド(典型的には完全な生細胞上に存在する状態のそのネイティブなコンホーメーションとして)をインキュベートすること、およびトランスフェリンレセプターペプチドへの結合パートナーの結合を被験因子が低減または増強するかどうか調べることにより、上記相互作用を調節する能力について因子を試験することができる。
【0039】
トランスフェリンレセプター機能のアゴニスト、アンタゴニストおよび他のモジュレーターは表記上本発明の範囲に包含される。これ等のアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターはトランスフェリンレセプターの抗原決定部位1つ以上を含むか、このような部位のフラグメント、このような部位の改変体またはこのような部位のペプチドミメティックの1つ以上を含むポリペプチドである。これ等のアゴニスト、アンタゴニストおよびトランスフェリンレセプター調節化合物は線状または環化された形態で提供され、そして場合により天然には一般的に存在しないアミノ酸残基少なくとも1つ、または、アミド同配体少なくとも1つを含む。これらの化合物はグリコシル化してよい。本発明のトランスフェリンレセプター機能のアゴニスト、アンタゴニストおよび他のモジュレーターは望ましくは抗体に言及しながら上記した全ての実施形態および方法において使用される。
【0040】
本発明の他の特徴は、発見され、そして本明細書においてはLUCA31抗体に対する抗原と称されるトランスフェリンレセプターの新規エピトープに関する。この抗原は免疫原として使用するため、および、種々の研究、診断および治療目的のために適している。
【0041】
特定の特徴において、本発明は、(i)個体から得た血液または組織の試料中のトランスフェリンレセプターの存在を試験する工程;(ii)正常(非疾患)血液または組織の試料と相対比較した場合のトランスフェリンレセプターマーカーの増量を該試料が有するかどうか検出する工程;および(iii)疾患に関して、該マーカーの増量を陽性診断に相関させるか、または、該マーカーの増量の非存在を陰性診断に相関させる工程、を含む個体における疾患の診断において支援となるための方法である。特定の実施形態においては、マーカーは抗トランスフェリンレセプター抗体を用いて検出する。特定の実施形態においては、方法は放射性核種画像化、フローサイトメトリーおよび免疫組織化学からなる群より選択される手法により行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明は、新しいヒトトランスフェリンレセプターエピトープ(本明細書においてはLUCA31エピトープと称する)を提供し、これは例えば乳房、結腸、肺および前立腺の癌を包含する種々の組織型の癌性細胞上に発現される。さらに又、本発明は、このトランスフェリンレセプターエピトープに結合するモノクローナル抗体およびポリペプチド、および、トランスフェリンレセプターの発現および/または過剰発現に関連する種々の疾患およびヒトの癌を診断および治療するためのこれ等の抗体およびポリペプチドを生成および使用する方法を提供する。
【0043】
従来のトランスフェリンレセプター抗体に付随して生じる1つの問題は、これ等の抗体が結合するエピトープの組織分布の比較的広範にわたる特徴に起因している。本発明は、多くの固形腫瘍細胞系統において頑健な抗増殖活性を有する本明細書においては場合によりLUCA31抗体と称する抗体に関する。LUCA31抗体は他のトランスフェリンレセプター抗体よりも独特でより限定的な正常組織分布を示すヒトトランスフェリンレセプターの上のエピトープに結合することが解っている。通常はトランスフェリンレセプターがリッチ化されている組織である脳内皮の染色(例えばJefferies et al.,Transferrin receptor on endothelium of brain capillaries(脳毛細管の内皮上のトランスフェリンレセプター),Nature 312,162−163(1984);Orte,et al.,A comparison of blood−brain barrier and blood−nerve barrier endothelial cell markers(血液脳関門および血液神経関門の内皮細胞マーカーの比較),Anat Embryol 199,509−517(1999);Rothenberger et al.,Coincident expression and distribution of melanotransferrin and transferrin receptor in human brain capillary endothelium(ヒト脳毛細管内皮におけるメラノトランスフェリンおよびトランスフェリンレセプターの同時発現および分布),Brain Res 712,117−121(1996)参照)によれば極めて限定されたLUCA31反応性が示されている。島細胞を包含する膵臓はトランスフェリンレセプター抗体で陽性染色されることがわかっている(Gatter,1983)が、本発明者等はLUCA31では限定された膵臓組織染色を観察している。さらに又、公開されたデータによればトランスフェリンレセプターは肝臓内のクプファー細胞および肝細胞の両方に存在(Gatter,1983)するが、LUCA31を用いた分析では肝組織の染色は示されなかった。総括すれば、LUCA31エピトープの頑健な活性および独特の組織分布特性は、LUCA31および関連の抗体が他のトランスフェリンレセプター抗体とは異なり、そして顕著な治療上および商業上の利点をもたらすことの根拠を与えるものである。
【0044】
(I.一般的手法)
本発明の実施では、特段の記載が無い限り、当該分野で知られた分子生物学(組み換え手法を包含する)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の手法を使用する。このような手法は文献、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993−8)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988−1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995);およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVita et al.,eds.,J.B.Lippincott Company,1993)に詳細に説明されている。
【0045】
(II.定義)
「トランスフェリンレセプター」とは、本発明の抗体が対する相手となる約90kD〜100kDの分子量を有するポリペプチド抗原を指す。トランスフェリンレセプターは抗トランスフェリンレセプター抗体により決具される細胞表面タンパク質であり、そして結腸および十二指腸を包含する数種の正常組織および数種の型の癌に存在する。この抗原は1つより多い異なるエピトープを有する場合がある。抗体LUCA31が結合するヒトトランスフェリンレセプターの新しいエピトープは本明細書においてはLUCA31エピトープと称し、本発明において特に有利なものである。現時点では、トランスフェリンレセプターおよびLUCA31エピトープは該当正常組織対応物と比較して特定の癌細胞において過剰発現される場合があると考えられている。特定の実施形態においては、一般的にトランスフェリンレセプターの特性に言及する場合は特定して言及するものとする。
【0046】
トランスフェリンレセプター機能のアゴニスト、アンタゴニストおよび他のモジュレーターは表現上は本発明の範囲内に包含されるものとする。これ等のアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターはトランスフェリンレセプターの抗原決定部位1つ以上を含むか、または、1つ以上のこのような部位のフラグメント、このような部位の改変体、またはこのような部位のペプチドミメティックを含むポリペプチドである。これ等のアゴニスト、アンタゴニストおよびトランスフェリンレセプター調節化合物は線状または環化された形態において提供され、そして、場合により天然には一般的に存在しないアミノ酸残基少なくとも1つまたはアミド同配体少なくとも1つを含む。これ等の化合物はグリコシル化されていてよい。
【0047】
より詳細には、「トランスフェリンレセプターモジュレーター」という用語は、本明細書においては、(1)ヒトトランスフェリンレセプターおよびそのネイティブリガンドまたは抗トランスフェリンレセプター抗体の間の相互作用を妨害またはブロックすることができ;(2)ヒトトランスフェリンレセプターおよびそのネイティブのリガンドまたは抗トランスフェリンレセプター抗体に結合することができ;(3)ヒトトランスフェリンレセプターおよびそのネイティブのリガンドまたは抗トランスフェリンレセプター抗体に結合可能な抗体の生成において使用できる抗原性部位を含有し;(4)ヒトトランスフェリンレセプターおよびそのネイティブのリガンドまたは抗トランスフェリンレセプター抗体に結合可能な抗体のスクリーニングにおいて使用できる抗原性部位を含有し;(5)ヒトトランスフェリンレセプターおよびそのネイティブのリガンドまたは抗トランスフェリンレセプター抗体の間の相互作用を妨害またはブロックすることができる抗体の生成において使用できる抗原性部位を含有し;(6)ヒトトランスフェリンレセプターおよびそのネイティブのリガンドまたは抗トランスフェリンレセプター抗体の間の相互作用を妨害またはブロックすることができる抗体のスクリーニングにおいて使用できる抗原性部位を含有する、いずれかの化合物として定義される。トランスフェリンレセプターモジュレーターは、その能力が正常なトランスフェリンレセプターの生物学的活性を増強するか抑制するかに応じてそれぞれ「トランスフェリンレセプターアゴニスト」または「トランスフェリンレセプターアンタゴニスト」であってよい。
【0048】
トランスフェリンレセプターのアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターはトランスフェリンレセプターの改変体、トランスフェリンレセプターのペプチドアンタゴニスト、ペプチドミメティックおよび低分子、抗トランスフェリンレセプター抗体および免疫グロブリン改変体、ヒトトランスフェリンレセプターのアミノ酸改変体、例えばアミノ酸置換、欠失および付加改変体、またはこれ等のいずれかの組み合わせおよびキメラ免疫グロブリンを包含する。本発明のトランスフェリンレセプターアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターはヒトトランスフェリンレセプターのそのネイティブリガンドまたは抗トランスフェリンレセプター抗体への結合に関与するトランスフェリンレセプタードメインを本発明者等が発見したことに基づいている。すなわち、本発明は、ヒトトランスフェリンレセプターの抗トランスフェリンレセプター結合ドメインの1つ以上を複製または模倣する分子構造を有するトランスフェリンレセプターのアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターを提供する。
【0049】
本明細書においては、「トランスフェリンレセプター改変体」とはアミノ酸置換、欠失および付加の改変体またはそのいずれかの組み合わせを包含するヒトトランスフェリンレセプターのいずれかのアミノ酸改変体を指す。定義はキメラ分子、例えばヒトトランスフェリンレセプター/非ヒトキメラおよび他のハイブリッド分子を包含する。さらに包含されるものは分子の改変体またはハイブリッドの領域を含むトランスフェリンレセプター改変体分子のいずれかのフラグメントである。
【0050】
「抗体」とは、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する抗原認識部位少なくとも1つを介して標的、例えば炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド等に特異的に結合可能な免疫グロブリン分子である。本明細書においては、用語は未損傷のポリクローナルまたはモノクローナル抗体のみならず、そのフラグメント(例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、1本鎖(ScFv)、その改変体、天然に存在する改変体、必要な特異性の抗原認識部位を有する抗体タンパク質を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、および必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子のいずれかの他の修飾された配置も包含する。
【0051】
「モノクローナル抗体」とは、モノクローナル抗体が抗原の選択的結合に関与するアミノ酸(天然に存在するおよび天然に存在しない)からなる場合の均質な抗体集団を指す。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原性部位に対して指向している。「モノクローナル抗体」という用語は未損傷のモノクローナル抗体および完全長のモノクローナル抗体のみならず、そのフラグメント(例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、単鎖(ScFv)、その改変体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体および必要な特異性および抗原に結合する能力の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子のいずれかの他の修飾された配置も包含する。抗体の原料またはそれを生成する態様(例えばハイブリドーマ、ファージ選択、組み換え体発現、トランスジェニック動物等)に関しては限定する意図はない。用語は「抗体」の定義に関して上記した全体としての免疫グロブリン並びにフラグメント等を包含する。
【0052】
「ヒト化」抗体とは、非ヒト種の免疫グロブリンから誘導した抗原結合部位、および、ヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく分子の残余免疫グロブリン構造を有する、組み換え手法を用いて一般的に生成されたキメラ分子を指す。抗原結合部位は、定常領域に融合した完全な可変ドメインまたは可変ドメインの適切なフレームワーク領域内にグラフトした相補性決定領域(CDR)のみのいずれかを含んでよい。抗原結合部位は野生型またはアミノ酸置換1つ以上で修飾されていてよい。これによりヒト個体内の免疫原としての定常領域が排除されるが、外来の可変領域への免疫応答の可能性は残存する(LoBuglio,A.F. et al.,(1989)Proc Natl Acad Sci USA 86:4220−4224)。別の方法はヒト誘導定常領域を与えることのみならず、ヒトの型に可能な限り近似してそれらを再成型(reshape)できるように可変領域を修飾することにも着目している。重鎖および軽鎖の両方の可変領域は、所定の種において比較的保存されており、そして相補性決定領域(CDR)に対するスカホールドを与えると推定される4つのフレームワーク領域(FR)でフランキングされた、目的の抗原に応答して変動し、そして結合能力を決定する3つのCDRを含有していることが知られている。非ヒト抗体を特定の抗原に対して生成する場合は、可変領域は修飾すべきヒト抗体に存在するFR上の非ヒト抗体から誘導したCDRをグラフトすることにより「再成型」または「ヒト化」することができる。種々の抗体に対するこの試みの適用はSato,K.,et al.,(1993)Cancer Res 53:851−856,Riechmann,L.,et al.,(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyen,M.,et al.,(1988)Science 239:1534−1536;Kettleborough,C.A.,et al.,(1991)Protein Engineering 4:773−3783;Maeda H.,et al.,(1991)Human Antibodies Hybridoma 2:124−134;Gorman,S.D.,et al.,(1991)Proc Natl Acad Sci USA 88:4181−4185;Tempest,P.R.,et al.,(1991)Bio/Technology 9:266−271;Co,M.S.,et al.,(1991) Proc Natl Acad Sci USA 88:2869−2873;Carter,P.,et al.,(1992) Proc Natl Acad Sci USA 89:4285−4289;およびCo,M.S.et al.,(1992)J Immunol 148:1149−1154により報告されている。一部の実施形態においては、ヒト化抗体は全てのCDR配列を温存している(例えばマウス抗体由来の全ての6CDRを含有するヒト化マウス抗体)。他の実施形態においては、ヒト化抗体は、元の抗体由来のCDR1つ以上「から誘導された」CDR1つ以上とも称される、元の抗体に関して改変されているCDR1つ以上(1、2、3、4、5、6)を有する。
【0053】
抗体またはポリペプチドに「特異的に結合」または「優先的に結合」(本明細書では互換的に使用する)するエピトープは当該分野で十分理解されている用語であり、このような特異的または優先的な結合を調べるための方法も当該分野でよく知られている。分子は、それが特定の細胞または物質に対して、別の細胞または物質に対するよりも、より頻繁に、より急速に、より長い時間および/またはより大きい親和性で反応または会合する場合に「特異的結合」または「優先的結合」を示すとされる。抗体はそれが標的に対し、他の物質に対するよりも大きい親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い時間結合する場合に「特異的に結合」または「優先的に結合」する。例えば、トランスフェリンレセプターエピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、そのトランスフェリンレセプターエピトープへの結合が、別のトランスフェリンレセプターエピトープまたは非トランスフェリンレセプターエピトープへの結合よりも、大きい親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い時間行われる抗体である。この定義の解釈としてはさらに、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分またはエピトープ)は第2の標的に特異的または優先的に結合してもしなくてもよい。すなわち、「特異的結合」または「優先的結合」は排他的結合を(包含するが)必ずしも必要としない。一般的に、ただし必然ではなく、結合に言及する場合は優先的結合を意味する。
【0054】
エピトープの存在に言及する場合の「免疫学的に活性」または「免疫学的に活性であり続ける」という用語は、異なる条件下における、例えばエピトープが還元または変性の条件に付された後の、エピトープに結合する抗体(例えば抗トランスフェリンレセプター抗体)の能力を指す。
【0055】
種々の生物学的機能が抗トランスフェリンレセプター抗体に備わっており、例えばトランスフェリンレセプター(例えば、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、結腸癌または乳癌の細胞を包含する癌細胞上のトランスフェリンレセプター)に結合する能力;インビトロまたはインビボで生存細胞の表面上に露出されたトランスフェリンレセプターの部分に結合する能力;トランスフェリンレセプターを発現している癌性細胞(例えば、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、結腸癌または乳癌の細胞)に化学療法剤を送達する能力;トランスフェリンレセプターを発現している癌細胞内に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力等が挙げられる。本明細書において論じる場合は、本発明のポリペプチド(抗体を包含する)はこれ等の特徴のいずれか1つ以上を有してよい。
【0056】
「抗トランスフェリンレセプター等価抗体」または「抗トランスフェリンレセプター等価ポリペプチド」とは例えば結合特異性のような抗トランスフェリンレセプター抗体に備わっている生物学的機能1つ以上を有する抗体またはポリペプチドを指す。
【0057】
本明細書においては、「因子」とは生物学的、薬学的または化学的な化合物を指す。非限定的な例は、単物質または複合体の有機または無機の分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、ビタミン誘導体、炭水化物、毒素または化学療法化合物を包含する。種々の化合物、例えば低分子またはオリゴマー(例えばオリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチド)および合成の有機化合物を種々のコア構造に基づいて合成することができる。さらに又、種々の天然の原料、例えば植物または動物性の抽出液等がスクリーニングのための化合物を提供する。本発明の因子の構造的性質については制約がないことは当業者の知る通りである。
【0058】
本発明の方法において使用する因子は無作為に選択するか、または、合理的に選択または設計することができる。本明細書においては、因子は、トランスフェリンレセプターのそのネイティブ結合パートナーまたは既知抗体との会合に関与する特定の配列を考慮することなく因子が無作為に選択される場合に、無作為に選択されると称する。無作為に選択される因子の例は化学ライブラリまたはペプチドコンビナトリアルライブラリの使用である。
【0059】
本明細書においては、因子は、因子の作用との関連において標的部位の配列および/またはそのコンホーメーションを考慮する非無作為を基本に因子が選択される場合に、合理的に選択または設計されると称する。抗トランスフェリンレセプター因子に関しては、現時点では、抗体を惹起する対象となるトランスフェリンレセプター上には少なくとも3つのエピトープが存在し、従って、トランスフェリンレセプター/抗トランスフェリンレセプターの相互作用をブロックする因子の作用部位は少なくとも3つ存在すると考えられている。本発明は、また、トランスフェリンレセプターおよびそのネイティブの結合パートナーの間の相互作用の部位において作用する因子も包含するが、他のリガンドおよびその活性なトランスフェリンレセプター相互作用部位もまた、現時点で既知であるか後に発見されるかに関わらず、本発明の範囲に包含されるものとする。因子はレセプター/リガンドおよび/またはトランスフェリンレセプター/抗トランスフェリンレセプター抗体の複合体の接触部位を構成するペプチド配列を利用することにより、合理的に選択されるか合理的に設計できる。例えば合理的に選択されたペプチド因子はそのアミノ酸配列が、ネイティブの環境において生存細胞の表面上に露出されている状態でトランスフェリンレセプター上に生じているエピトープと同一であるペプチドであることができる。このような因子は、抗トランスフェリンレセプター抗体への、またはネイティブのリガンドへの結合により、所望に応じて、トランスフェリンレセプターとの抗トランスフェリンレセプター抗体の会合、またはトランスフェリンレセプターのそのネイティブのリガンドとの会合を低減またはブロックする。
【0060】
本明細書においては、「標識された」という用語は、抗体に関しては、検出可能な物質、例えば放射性物質または蛍光団(例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはフィコエリスリン(PE))を抗体にカップリング(すなわち物理的に連結)することによる抗体の直接の標識、並びに、検出可能な物質との反応性によるプローブまたは抗体の間接的な標識を包含するものとする。
【0061】
本明細書においては、「会合」という用語は、抗体に関しては、因子(例えば化学療法剤)への共有結合的および非共有結合的な連結または結合を包含する。抗体が結合し、そしてその内部では因子は抗体が結合するものと同じ癌性細胞にターゲティングされないか、または因子の力価が低減しないように生理学的条件下において抗体および因子が実質的に解離しない、癌性細胞への因子の局在化を抗体が指向できるように、抗体は直接または共通のプラットホームへの連結を介して間接的に因子(例えば化学療法剤)と会合することができる。
【0062】
「生物学的試料」とは個体から得た種々の試料の型を包含し、診断またはモニタリングの試験において使用できる。定義に包含されるものは、唾液、血液および他の生体起源の液体試料、固体組織試料、例えば生検標本または組織培養物またはそれから誘導した細胞、およびその子孫、例えば癌を有していることがうたがわれる個体から採取した組織試料から、好ましい実施形態においては卵巣、肺、前立腺、膵臓、結腸および乳房の組織から得た細胞である。定義には又取得後にいずれかの方法において、例えば試薬による処理、可溶化、タンパク質またはポリヌクレオチドのような特定の成分のリッチ化、または切片化目的のための半固体または固体のマトリックス内への包埋により操作された試料も包含される。「生物学的試料」という用語は臨床試料を包含し、そしてさらに培養中の細胞、細胞上澄み、細胞溶解物、血清、血漿、生体液および組織試料も包含する。
【0063】
「宿主細胞」とはポリヌクレオチドインサートの取り込みのためのベクターに対するレシピエントであることができる、またはレシピエントであった個々の細胞または細胞培養物を包含する。宿主細胞は単一の宿主細胞の子孫を包含し、子孫は自然、偶発または意図的な突然変異により元の親細胞に必ずしも完全同一(形態学的またはゲノムDNA補体において)ではなくなっていてもよい。宿主細胞は本発明のポリヌクレオチドでインビボにおいてトランスフェクトされた細胞を包含する。
【0064】
本明細書においては、「転移の発生を遅滞させること」とは、転移の発生を変化、遮蔽、緩徐化、遅延、安定化、および/または、延期させることを意味する。この遅滞は癌の病歴および/または治療すべき個体に応じて、種々の長さの時間であることができる。当業者のよく知る通り、十分または有意義な遅滞は、事実上は個体が転移を発症しないという点において予防も包含することができる。
【0065】
1つの実施形態において、薬学的組成物の「有効量」とは有益または所望の結果、例えば腫瘍の大きさを縮小すること(癌に関しては、例えば乳癌または前立腺癌)、癌性細胞の増殖の遅延、転移の発生を遅滞させること、疾患に起因する症状を低減すること、疾患に罹患した者のクオリティーオブライフを向上させること、疾患を治療するために必要な他の医薬の用量を低減すること、ターゲティングおよび/または内在化等により別の医薬の作用を増強すること、疾患の進行を遅滞させること、および/または、個体の生存を延長すること等を起こすために十分な量である。有効量は投与1回以上において投与することができる。本発明の目的のためには因子、化合物または薬学的組成物の有効量は直接、または間接的に、癌性の細胞の増殖低減(または破壊)のため、および、癌性の細胞の転移の発生または増殖を低減および/または遅滞させるために十分な量である。一部の実施形態においては、因子、化合物または薬学的組成物の有効量は、他の因子、化合物または薬学的組成物と組み合わせて達成してもしなくてもよい。すなわち、「有効量」とは、化学療法剤1つ以上を投与するという意味において考えてよく、そして単一の因子は、他の因子1つ以上と組み合わせた場合に所望の結果が達成されるかその可能性がある場合には有効量として与えられると考えてよい。個体の必要性は変動するが、各成分の有効量の至適範囲の決定は当業者のよく知る通りである。典型的な用量は0.1〜100mg/kg体重を包含する。好ましい用量は1〜100mg/kg体重を包含する。最も好ましい用量は10〜100mg/kg体重を包含する。
【0066】
本明細書においては、核酸分子または因子、抗体、組成物または細胞等は、その核酸分子、因子、抗体、組成物または細胞等がその起源原料に由来する夾雑する核酸分子、抗体、因子、組成物または細胞等から実質的に分離されている場合に「単離された」と称する。
【0067】
「個体」は脊椎動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。哺乳類は例えば牧場動物、競技用動物、ペット、霊長類、マウスおよびラットを包含する。
【0068】
「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は本明細書においては互換的に使用し、いずれかの長さのアミノ酸の重合体を指す。重合体は直鎖または分枝鎖であってよく、それは修飾されたアミノ酸を含んでよく、そして非アミノ酸が介在していてもよい。用語はさらに、自然に、または介入により、例えばジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、ホスホリル化または標識化合物とのコンジュゲート形成のような他の操作または修飾により、修飾されているアミノ酸重合体を包含する。定義に包含されるものはさらに、例えば、アミノ酸の類縁体(例えば非天然のアミノ酸等)1つ以上並びに当該分野で知られた他の修飾を含有するポリペプチドである。本発明のポリペプチドは抗体を基にしているため、ポリペプチドは1本鎖または会合した鎖として存在できると理解される。
【0069】
本発明の範囲内に包含されるものはさらに、本明細書に記載したトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーター(抗トランスフェリンレセプター抗体を包含する)のペプチドミメティックである。このようなペプチドミメティックはアミノ酸残基少なくとも1つが一般的に天然には存在しないアミノ酸残基、例えばアミノ酸のD異性体またはアミノ酸のNアルキル化物質種で置換されているペプチドを包含する。別の実施形態においてはペプチドミメティックはアミド同配体でトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーター中のアミド結合(−C(=O)−NH−)少なくとも1つを置き換えることにより構築される。適当なアミド同配体は−CH2−NH−、−CH2−S−、−CH2−S(O)n−(nは1または2)、−CH2−CH2−、−CH=CH−(EまたはZ)、−C(=O)−CH2−、−CH(CN)−NH−、−C(OH)−CH2−および−O−C(=O)−NH−を包含する。アミド同配体との置き換えのための適当な候補であるトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターにおけるアミド結合はトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターの投与を意図する対象の内因性のエステラーゼまたはプロテアーゼにより加水分解される結合を包含する。
【0070】
本明細書においては、「実質的に純粋」とは少なくとも50%純粋(すなわち夾雑物を含有しない)、より好ましくは少なくとも90%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、より好ましくは少なくとも98%純粋、より好ましくは少なくとも99%純粋かそれより高純度の物質を指す。
【0071】
「毒素」とは細胞内部において有害応答を起こすいずれかの物質を指す。例えば癌性の細胞に指向された毒素は癌性の細胞に対して有害な、場合により害毒となる作用を有する。毒素の例は放射性同位体、カリシアマイシンおよびメイタンシノイド類を包含する。
【0072】
本明細書において、「治療」または「治療すること」とは、有益または所望の結果、例えば、そして好ましくは臨床結果を得るための方法である。本発明の目的のためには、有益または所望の臨床結果は例えば、癌性の細胞または他の疾患細胞の増殖を低減(または破壊)すること、癌に存在する癌性の細胞の転移を低減すること、腫瘍の大きさを縮小すること、疾患に起因する症状を低減すること、疾患に罹患した者のクオリティーオブライフを向上させること、疾患を治療するために必要な他の医薬の用量を低減すること、疾患の進行を遅滞させること、および/または、個体の生存を延長することの1つ以上を包含する。
【0073】
(III.抗体およびポリペプチドの生成方法)
モノクローナル抗体の生成方法は当該分野で知られている。使用してよい1つの方法はKohler and Milstein,Nature 256:495−497(1975)の方法またはその変法であってよい。典型的には、モノクローナル抗体は非ヒトの種、例えばマウスにおいて形成する。一般的にマウスまたはラットが免疫化のために使用されるが、他の動物も使用してよい。抗体はヒトトランスフェリンレセプターを含有する細胞、細胞抽出液またはタンパク質調製物の免疫原性の量でマウスを免疫化することにより製造する。免疫原は例えば一次細胞、培養細胞系統、癌性細胞、核酸または組織であることができる。1つの実施形態において、培養されたヒト腫瘍細胞系統を使用する。別の実施形態においてはヒト膀胱または膵臓の先祖細胞を使用する。免疫化のために使用される細胞、例えばヒト胎児腎臓、膀胱細胞またはヒト膵臓先祖細胞は免疫原として使用する前の一定時間(少なくとも24時間)培養してよい。細胞(例えばヒト胎児腎臓、膀胱細胞またはヒト膵臓先祖細胞)はそれ自体として、または非変性アジュバント、例えばRibiと組み合わせて免疫原として使用してよい。一般的に細胞は免疫原として使用する際には未損傷のまま、好ましくは生存状態で保持する。未損傷の細胞は破壊された細胞よりも良好に、抗原が免疫化動物により検出されるようにする。変性または過酷処理用のアジュバント、例えばフロイントのアジュバントを使用することはヒト胎児腎臓または他の細胞を破壊する場合があり、従って推奨できない。免疫原は複数回、周期的間隔において、例えば週2回、週1回投与してよく、または、動物における(例えば組織組み換え体における)生存性を維持するような態様で投与してよい。実施例2は抗トランスフェリンレセプター抗体を形成するために使用される方法を説明しており、そして、トランスフェリンレセプターに結合する他のモノクローナル抗体を形成するために使用してよい。
【0074】
1つの実施形態において、トランスフェリンレセプターに結合するモノクローナル抗体は免疫原としてトランスフェリンレセプターを過剰発現する宿主細胞を用いることにより得る。このような細胞は、例えばヒト胎児腎細胞およびヒト結腸癌細胞を包含する。
【0075】
抗体の応答をモニタリングするためには、少量の生物学的試料(例えば血液)を動物から採取し、免疫原に対する抗体力価を試験する。脾臓および/または数種の大型のリンパ節を摘出し、解離させて単細胞とする。所望により、脾細胞は細胞懸濁液を抗原コーティングしたプレートまたはウェルに適用することによりスクリーニングしてよい(非特異的付着細胞を除去後)。抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB細胞はプレートに結合し、そして懸濁液の残余と共に洗浄除去されることはない。得られるB細胞または解離した脾細胞を次に、ミエローマ細胞(例えばX63−Ag8.653およびSalk Institute,Cell Distribution Center,San Diego,CAより入手できるもの)と融合することができる。ポリエチレングリコール(PEG)を用いて脾細胞またはリンパ球をミエローマ細胞と融合させることによりハイブリドーマが形成される。次にハイブリドーマを選択培地(例えばヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地、「HAT培地」としても知られている)中で培養する。得られたハイブリドーマを次に限界希釈によりプレーティングし、FACSまたは免疫組織化学(IHCスクリーニング)を用いて免疫原(例えばヒト胎児腎細胞表面、癌細胞系統表面、Ag−トランスフェリンレセプター、胎児膀胱切片等)に特異的に結合する抗体の生産について調べる。選択されたモノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを次にインビトロ(例えば組織培養ビンまたは中空糸反応器)またはインビボ(例えばマウス腹水)で培養する。実施例3は抗トランスフェリンレセプター抗体を得てスクリーニングするために利用される方法に関するさらに詳細な説明である。
【0076】
細胞融合の手法の別の代替法として、EBV不朽化B細胞を使用して本発明のモノクローナル抗体を生成してよい。ハイブリドーマを増殖させ、そして所望によりサブクローニングし、そして上澄みを従来の試験操作法(例えばFACS、IHC、ラジオイムノアッセイ、酵素免疫試験、蛍光免疫試験等)により抗免疫原活性に関して試験する。
【0077】
別の代替法においては、モノクローナル抗体抗LUCA31およびいずれかの他の等価な抗体を配列決定し、当該分野で知られているいずれかの手段(例えばヒト化、完全ヒト抗体の製造のためのトランスジェニックマウスの使用、ファージディスプレイ技術等)により組み換え的に製造することができる。1つの実施形態において、抗トランスフェリンレセプターモノクローナル抗体を配列決定し、次にポリヌクレオチド配列を発現または増殖用のベクター内にクローニングする。目的の抗体をコードする配列を宿主細胞内のベクター中に維持してよく、そして次に宿主細胞を増殖させ、将来の使用のために凍結する。
【0078】
実施例4はネイティブシグナル配列を包含する抗トランスフェリンレセプターモノクローナル抗体LUCA31のカッパ軽鎖の核酸および相当する翻訳タンパク質配列を示す。
【0079】
実施例4はまた抗トランスフェリンレセプターモノクローナル抗体LUCA31のG1重鎖の核酸および相当する翻訳タンパク質配列を示す。
【0080】
モノクローナル抗体LUCA31およびいずれかの他の等価な抗体のポリヌクレオチド配列を遺伝子操作のために使用することにより「ヒト化」抗体を形成したり、親和性または他の抗体の特徴を向上させたりしてよい。抗体のヒト化における一般的な原理は抗体の抗原結合部分の基本配列を保持しつつ、ヒト抗体配列との抗体の非ヒト残余部の交換を行うことを包含する。モノクローナル抗体をヒト化するためには4つの一般的工程が存在する。それらは(1)開始抗体軽鎖および重鎖可変ドメインのヌクレオチドおよび予測アミノ酸配列を決定すること、(2)ヒト化抗体を設計すること、すなわちヒト化過程においてどの抗体フレームワーク領域を使用すべきか決定すること、(3)実際のヒト化方法/手法、および、(4)ヒト化抗体のトランスフェクションおよび発現である。例えば米国特許4,816,567;5,807,715;5,866,692および6,331,415を参照できる。
【0081】
非ヒト免疫グロブリンから誘導された抗原結合部位を含む多くの「ヒト化」抗体分子が報告されており、例えばげっ歯類または修飾げっ歯類V領域を有するキメラ抗体、および、ヒト定常ドメインに融合したその関連の相補性決定領域(CDR)が挙げられる。例えばWinter et al.,Nature 349:293−299(1991),Lobuglio et al. Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:4220−4224(1989),Shaw et al. J.Immunol.138:4534−4538(1987)およびBrown et al. Cancer Res.47:3577−3583(1987)を参照できる。他の参考文献は適切なヒト抗体定常ドメインとの融合の前にヒトサポートフレームワーク領域(FR)にグラフトさせたげっ歯類CDRを記載している。例えばRiechmann et al. Nature 332:323−327(1988),Verhoeyen et al. Science 239:1534−1536(1988)およびJones et al. Nature 321:522−525(1986)を参照できる。他の参考文献は組み換え生成されたげっ歯類フレームワーク領域によりサポートされたげっ歯類CDRを記載している。例えば欧州特許公開519,596を参照できる。これ等の「ヒト化」分子は、ヒトレシピエントにおけるこれ等の部分の治療用途の持続時間および有効性を制限するげっ歯類抗ヒト抗体分子に対する望ましくない免疫学的応答を最小限にするように設計されている。同様に利用してよい抗体をヒト化する他の方法はDaugherty et al.,Nucl.Acids Res.,19:2471−2476(1991)および米国特許6,180,377;6,054,297;5,997,867および5,866,692に開示されている。
【0082】
本発明は、又LUCA31のような本発明の抗体の1本鎖可変領域フラグメント(「scFv」)を包含する。1本鎖可変領域フラグメントは短い連結ペプチドを用いて軽鎖および/または重鎖の可変領域を連結することにより生成する。Bird et al.(1988)Science 242:423−426は1つの可変領域のカルボキシ末端と別の可変領域のアミノ末端の間の約3.5nmを架橋する連結ペプチドの例を記載している。他の配列のリンカーも設計され使用されている(Bird et al.(1988))。リンカーも同様に、因子の連結または固体支持体の連結など、付加的機能のために修飾できる。1本鎖改変体は組み換えまたは合成により製造できる。scFvの合成による製造のためには自動合成装置を使用できる。scFvの組み換え生産のためには、scFvをコードするポリヌクレオチドを含有する適当なプラスミドを真核生物、例えばコウボ、植物、昆虫または哺乳類細胞、または原核生物、例えばE.coliのような適当な宿主細胞内に導入することができる。目的のscFvをコードするポリヌクレオチドはポリヌクレオチドのライゲーションのような日常的な操作により生成できる。得られたscFvは標準的なタンパク質精製手法を用いて単離することができる。
【0083】
本発明は、その特性を大きく損なわない抗体の機能的等価物およびポリペプチドを含むトランスフェリンレセプターアゴニスト、アンタゴニスト、モジュレーターおよび抗体に対する修飾、および増強または低減された活性を有する改変体を包含する。ポリペプチドの修飾は当該分野における日常的慣行であり、本明細書において詳細に説明する必要はない。修飾されたポリペプチドの例は、アミノ酸残基の保存的な置換、機能的活性を大きく悪変させないアミノ酸の欠失または付加1つ以上、または、化学的類縁体の使用を行ったポリペプチドを包含する。相互に保存的に置換できるアミノ酸残基は例えば、グリシン/アラニン;バリン/イソロイシン/ロイシン;アスパラギン/グルタミン;アスパラギン酸/グルタミン酸;セリン/スレオニン;リジン/アルギニン;およびフェニルアラニン/チロシンを包含する。これ等のポリペプチドはまたグリコシル化および非グリコシル化されたポリペプチド、ならびに、異なる糖によるグリコシル化、アセチル化およびホスホリル化のような他の翻訳後の修飾を有するポリペプチドも包含する。好ましくはアミノ酸の置換は保存的であり、すなわち置換されたアミノ酸は元のアミノ酸と同様の化学的特性を有する。このような保存的置換は当該分野で知られており、例は上記した通りである。アミノ酸の修飾はアミノ酸1つ以上の変化または修飾から可変領域のような領域の完全な再設計にわたることができる。可変領域の変化は結合親和性および/または特異性を改変する場合がある。修飾の他の方法は当該分野で知られたカップリング手法、例えば酵素的手段、酸化的置換およびキレート形成の使用を包含する。修飾はイムノアッセイ用の標識の結合、例えばラジオイムノアッセイ用の放射性部分の結合のために使用できる。修飾されたポリペプチドは当該分野で知られた確立された操作法を用いて生成し、そして、当該分野で知られた標準的な試験を用いてスクリーニングすることができる。
【0084】
本発明は、また本発明のポリペプチドおよび抗体のフラグメントまたは領域1つ以上を含む融合タンパク質を包含する。1つの実施形態において、融合ポリペプチドは可変軽鎖領域の少なくとも10連続アミノ酸および可変重鎖領域の少なくとも10アミノ酸を含むものが提供される。別の実施形態においては、融合タンパク質は非相同免疫グロブリン定常領域を含有する。別の実施形態においては、融合タンパク質は本明細書に記載したATCCに寄託されたハイブリドーマから生成された抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含有する。本発明の目的のためには、抗体融合タンパク質は抗トランスフェリンレセプターポリペプチド1つ以上および、それがネイティブの分子においては結合していない別のアミノ酸配列、例えば別の領域に由来する非相同の配列または相同の配列を含有する。
【0085】
抗トランスフェリンレセプターポリペプチドおよび他のトランスフェリンレセプターアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターは当該分野で知られた方法、例えば合成または組み換えにより生成することができる。トランスフェリンレセプターアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターを製造する1つの方法では、ポリペプチドの化学合成、次いでネイティブのコンホーメーション、すなわち正しいジスルフィド結合を得るために適切な酸化条件下の処理を行う。これは当業者のよく知る方法を用いて達成することができる(Kelley,R.F.&Winkler,M.E.,Genetic Engineering Principles and Methods,Setlow,J.K.,ed.,Plenum Press,N.Y.,vol.12,pp 1−19(1990);Stewart,J.M.&Young,J.D.Solid Phase Peptide Synthesis Pierce Chemical Co.Rockford,Ill.(1984)を参照でき、さらに米国特許4,105,603;3,972,859;3,842,067および3,862,925も参照できる)。
【0086】
本発明のポリペプチドは固相ペプチド合成法を用いて好都合に製造してよい(Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,85;2149(1964);Houghten,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5132(1985))。
【0087】
さらに別の代替例においては、特定のヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作されている市販のマウスを用いて完全なヒト抗体を得てよい。より望ましい(例えば完全ヒト抗体)またはより頑健な免疫応答を得るために設計されたトランスジェニック動物もまたヒト化またはヒト抗体の生成のために使用してよい。このような技術の例は、Abgenix,Inc.(Fremont,CA)のXenomouseTMおよびMedarex,Inc.(Princeton,NJ)のHuMAb−Mouse(登録商標)およびTC MouseTMである。
【0088】
別の例においては、抗体は当該分野で知られたいずれかの方法を用いて組み換えにより生成し、発現させてよい。宿主動物から生成した抗体をまず単離し、遺伝子配列を獲得し、そして遺伝子配列を用いて宿主細胞(例えばCHO細胞)内で抗体を組み換え発現させることにより、抗体を組み換え生産してよい。使用してよい別の方法は植物(例えばタバコ)またはトランスジェニック乳汁中で抗体配列を発現することである。植物または乳汁中で組み換えにより抗体を発現させるための方法は開示されている。例えばPeeters,et al.(2001)Vaccine 19:2756;Lonberg,N.and D.Huszar(1995)Int.Rev.Immunol 13:65;およびPollock,et al.(1999)J Imunol Methods 231:147を参照できる。抗体の誘導体、例えばヒト化1本鎖等を生成するための方法は当該分野で知られている。別の代替例においては、抗体はファージディスプレイ技術により組み換え生産してよい。例えば米国特許5,565,332;5,580,717;5,733,743;6,265,150およびWinter et al.,Annu.Rev.Immunol.12:433−455(1994)を参照できる。
【0089】
目的の抗体またはタンパク質は当該分野でよく知られているEdman分解による配列決定に付してよい。質量スペクトル分析またはEdman分解から得られたペプチドの情報を用いて目的のタンパク質をクローニングするために使用されるプローブまたはプライマーを設計することができる。
【0090】
目的のタンパク質をクローニングする別の方法は目的の抗体またはタンパク質を発現する細胞に対する精製されたトランスフェリンレセプターまたはその部分を使用する「パニング」によるものである。「パニング」の操作法は目的の抗体またはタンパク質を発現する組織または細胞からcDNAライブラリを得ること、第2の細胞型においてcDNAを過剰発現させること、およびトランスフェリンレセプターに特異的な結合について第2の細胞型のトランスフェクトされた細胞をスクリーニングすることにより実施する。「パニング」により細胞表面タンパク質をコードする哺乳類遺伝子をクローニングする際に使用される方法の詳細な説明は当該分野で報告されている。例えばAruffo,A.and Seed,B. Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,8573−8577(1987)およびStephan,J.et al.,Endocrinology 140:5841−5854(1999)を参照することができる。
【0091】
抗トランスフェリンレセプター抗体および他のトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターをコードするcDNAは当該分野における標準的な方法に従って特定の細胞型からmRNAを逆転写することにより得ることができる。特にmRNAは上記したSambrook等の記載した操作法に従って種々の分解酵素または化学溶液を用いて単離するか、または、市販の核酸結合樹脂により製造元(例えばQiagen,Invitrogen,Promega)の添付説明書に従って抽出することができる。合成されたcDNAを次に発現ベクターに導入して第2の型の細胞内で目的の抗体またはタンパク質を生産する。発現ベクターはエピソームとして、または染色体DNAの統合された部分として、宿主細胞内で複製できるものでなければならない。適当な発現ベクターはプラスミド、ウィルスベクター、例えばアデノウィルス、アデノ関連ウィルス、レトロウィルスおよびコスミドを包含する。
【0092】
目的のポリヌクレオチドを含有するベクターはエレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAEデキストランまたは他の物質を用いたトランスフェクション;マイクロプロジェクタイルボンバードメント;リポフェクション;および感染(例えばベクターがワクシニアウィルスのような感染性物質である場合)を包含する多くの適切な手段のいずれかにより宿主細胞内に導入できる。ベクターまたはポリヌクレオチドの導入の選択は宿主細胞の特徴による場合が多い。
【0093】
非相同DNAを過剰発現できるいずれかの宿主細胞を目的の抗体、ペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子を単離する目的のために使用できる。哺乳類宿主細胞の非限定的な例は、COS、HeLaおよびCHO細胞を包含する。好ましくは、宿主細胞は、宿主細胞内に相当する内因性の目的抗体またはタンパク質が存在する場合はそれよりも約5倍高値、より好ましくは10倍高値、さらに好ましくは20倍高値の水準でcDNAを発現する。トランスフェリンレセプターへの特異的結合に関する宿主細胞のスクリーニングはイムノアッセイまたはFACSにより行う。目的の抗体またはタンパク質を過剰発現する細胞を発見することができる。
【0094】
親トランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーター分子と相対比較した場合の得られたタンパク質のアミノ酸配列の付加、欠失または変化をコードする改変体のトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターを生成するために現在使用してよい多くの手法が存在する。
【0095】
本発明は、本発明の抗体のアミノ酸配列を含むポリペプチドを包含する。本発明のポリペプチドは当該分野で知られた操作法により生成できる。ポリペプチドは抗体のタンパク質分解または他の分解により、上記した組み換え法(すなわち単一または融合のポリペプチド)により、または化学合成により製造することができる。抗体のポリペプチド、特に約50アミノ酸までのより短いポリペプチドは化学合成により好都合に生成される。化学合成の方法は当該分野で知られており、市販されている。例えば抗トランスフェリンレセプターポリペプチドは固相法を用いた自動ポリペプチド合成装置により製造できる。
【0096】
(IV.ポリペプチドおよびモノクローナル抗体のスクリーニングのための方法)
数種の方法を用いてトランスフェリンレセプターに結合するポリペプチドおよびモノクローナル抗体をスクリーニングしてよい。「結合」とは、生物学的または免疫学的に該当する結合、すなわち免疫グロブリン分子がコードされている対象となる、または、ポリペプチドが指向されている対象となる独特の抗原に対して特異的な結合を指すものとする。非特異的標的に対して極めて高濃度で免疫グロブリンが使用される場合に起こりえる非特異的な結合を指すものではない。1つの実施形態において、モノクローナル抗体は標準的なスクリーニング手法を用いてトランスフェリンレセプターに対する結合に関してスクリーニングされる。この態様においては、抗トランスフェリンレセプターモノクローナル抗体が得られた。ブダペスト条約に従って、抗トランスフェリンレセプターモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマはPTA−6055のPatent Deposit Designationと共に2004年7月8日にAmerican Type Culture Collection(ATCC)10801 University Blvd.,Manassas VA 20110−2209に寄託されている。
【0097】
トランスフェリンレセプターに結合するモノクローナル抗体は癌性の組織および非癌性の細胞への結合に関してスクリーニングする。1つの実施形態において、トランスフェリンレセプターに結合し、そしてヒトの癌性の細胞または組織とも交差反応性を有するが正常な細胞または組織に対してはそれと同程度の反応性を有さないモノクローナル抗体を選択する。スクリーニングのために使用してよい1つの方法は免疫組織化学(IHC)である。標準的な免疫組織化学の手法は平均的な当業者のよく知る通りである。例えばAnimal Cell Culture Methods(J.P.Mather and D.Barnes,eds.,Academic Press,Vol.57,Ch.18 and 19,pp.314−350,1998)を参照できる。生物学的試料(例えば組織)は生検試料、剖検試料または検死試料から得てよい。トランスフェリンレセプターが癌性の細胞上にのみ存在することを確認するためには、抗トランスフェリンレセプター抗体を用いて癌保有個体由来の組織上のトランスフェリンレセプターの存在を検出してよく、一方で癌に罹患した個体に由来する他の非癌性の組織または癌を保有しない個体に由来する組織をコントロールとして使用する。組織は凍結の間の損傷を防止する固体または半固体の物質(例えばアガロースゲルまたはOCT)中に包埋し、次に切片化して染色することができる。種々の臓器および異なる等級の癌をモノクローナル抗体のスクリーニングのために使用できる。スクリーニング目的のために使用してよい組織の例は、卵巣、乳房、肺、前立腺、結腸、腎臓、皮膚、甲状腺、脳、心臓、肝臓、胃、神経、血管、骨、上部消化管および膵臓を包含する。スクリーニング目的のために使用してよい種々の癌の型の例は、癌腫、腺癌、肉腫、腺肉腫、リンパ腫および白血病を包含する。
【0098】
さらに別の代替例においては、癌性の細胞系統、例えばBT474(ATCC#HTB−20)、MCF7(ATCC#HTB−22)、MDA−175(ATCC#HB−25)、MDA−361(ATCC#HB−27)、SK−BR−3(ATCC#HTB−30)、A549(ATCC#CCL−185)、CaLu3(ATCC#HTB−55)、SKMES1(ATCC#HTB−58)、ES−2(ATCC#CRL−1978)、SKOV3(ATCC#HTB−77)、AsPC−1(ATCC#CRL−1682)、HPAFII(ATCC#CRL−1997)、Hs700T(ATCC#HTB−147)、Colo205(ATCC#CCL−222)、HT29(ATCC#HTB−38)、SW480(ATCC#CCL−228)、SW948(ATCC#CCL−237)、293(ATCC#CRL−1573)、786−O(ATCC#CRL−1932)、A498(ATCC#HTB−44)、Caki2(ATCC#HTB−47)、Cos7(ATCC#CRL−1651)、RL65(ATCC#CRL−10345)、SVT2(ATCC#CCL−163.1)、22Rv1(ATCC#CRL 2505)、DU145(ATCC#HTB−81)、LNCaP(ATCC#CRL−1740)、PC3(ATCC#CRL−1435)、Hs746T(ATCC#HTB135)、TDH−1(Raven biotechnologies,inc.において開発された専売の前立腺癌細胞系統)、Rav CA130(Raven biotechnologies,inc.において開発された専売の肺癌細胞系統)、Rav9979(Raven biotechnologies,inc.において開発された専売の肺癌細胞系統)、Rav9926(Raven biotechnologies,inc.において開発された専売の膵臓癌細胞系統)およびNCI−N87(ATCC#CRL−5822)およびその該当する組織に由来する正常細胞を用いて癌性組織に特異的なモノクローナル抗体を得るためにスクリーニングしてよい。種々の臓器の正常組織由来の一次、または低継代の細胞培養物、例えば卵巣、乳房、肺、前立腺、結腸、腎臓、皮膚、甲状腺、大動脈平滑筋および内皮細胞をネガティブとして使用できる。癌性または非癌性の細胞はスライドガラスまたはカバーガラス上で、または、プラスチック面上で増殖させることができ、またはWO 01/43869に記載の通りCellArrayTM中に製造することができ、そして組織に関して上記した通りIHCを用いて抗体の結合に関してスクリーニングすることができる。或いは、非タンパク質分解的な手段を用いて増殖表面から細胞を採取し、遠心分離してペレット化し、次にこれを上記したIHC分析用の組織と同様に包埋して処理してよい。細胞は免疫不全動物に接種し、腫瘍を増殖させ、次にこの腫瘍を回収し、包埋し、そしてIHC分析用の組織原料として使用してよい。別の代替例においては、単細胞は一次抗体、蛍光分子に連結した二次「レポーター」抗体と共にインキュベートし、次に蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)機器を用いて分析することによりスクリーニングしてよい。
【0099】
数種の検出系を利用して組織切片への抗体の結合を検出してよい。典型的には、免疫組織化学では一次抗体の組織への結合を行い、次いで一次抗体由来の物質種に対して反応性の二次抗体を生成し、そして検出可能なマーカー(例えばセイヨウワサビパーオキシダーゼ、HRP、またはジアミノベンジジン、DAB)にコンジュゲートした。使用してよい1つの代替法はポリクローナル鏡像相補抗体、すなわちpolyMICAである。D.C.ManghamおよびP.G.Isaacson(Histopathology(1999)35(2):129−33)の記載したpolyMICA(ポリクローナル鏡像相補抗体)の手法は、一次抗体(例えば抗トランスフェリンレセプター抗体)の正常および癌性の組織への結合を試験するために使用できる。数種のpolyMICATM検出キットがThe Binding Site Limited(P.O.Box 4073 Birmingham B29 6AT England)より販売されている。製品番号HK004.DはDABクロマゲンを使用しているpolyMICATM検出キットである。製品番号HK004.AはAECクロマゲンを使用しているpolyMICATM検出キットである。或いは、一次抗体を検出可能なマーカーで直接標識してもよい。
【0100】
適切な抗体を選択するためのIHCスクリーニングにおける第1の工程は免疫原(例えば細胞または組織の試料)1つ以上へのマウス中に形成した一次抗体(例えば抗トランスフェリンレセプター抗体)の結合である。1つの実施形態において、組織の試料は種々の臓器に由来する凍結組織の切片である。細胞または組織の試料は癌性または非癌性のいずれかであることができる。
【0101】
当該分野でよく知られている多くの方法のいずれかにより、凍結組織を生成し、固定または未固定で切片化し、そしてIHCを実施する。例えばStephan et al. Dev.Biol.212:264−277(1999)およびStephan et al. Endocrinology 140:5841−54(1999)を参照できる。
【0102】
(V.抗トランスフェリンレセプター抗体を特徴付けする方法)
数種の方法を用いて抗トランスフェリンレセプター抗体を特徴付けすることができる。1つの方法はそれが結合するエピトープを発見することである。エピトープマッピングは種々の入手元、例えばPepscan Systems(Edelhertweg 15,8219 PH Lelystad,The Netherlands)から販売されている。エピトープマッピングは抗トランスフェリンレセプター抗体が結合する配列を決定するために使用できる。エピトープは線状のエピトープである、すなわちアミノ酸の単一のストレッチ内に含有されることができ、或いは、単一のストレッチに含有されなくてもよいアミノ酸の三次元相互作用により形成されるコンホーメーションエピトープであることができる。種々の長さ(例えば少なくとも4〜6アミノ酸長)のペプチドを単離または合成(例えば組み換えによる)し、そして抗トランスフェリンレセプター抗体との結合試験に使用することができる。抗トランスフェリンレセプター抗体が結合するエピトープは細胞外配列より誘導したオーバーラッピングペプチドを用い、そして抗トランスフェリンレセプター抗体による結合を測定することにより、系統的スクリーニングにおいて決定することができる。
【0103】
抗トランスフェリンレセプター抗体を特徴付けするために使用できるさらに別の方法は、同じ抗原、例えばトランスフェリンレセプターに結合することが解っている他の抗体を用いた競合試験を用いて抗トランスフェリンレセプター抗体が他の抗体と同じエピトープに結合するかどうか調べることである。トランスフェリンレセプターに対する市販抗体の例を使用してよく、そして、本明細書に記載した結合試験を用いて発見してよい。競合試験は当該分野でよく知られており、そしてそのような操作法および説明のためのデータは実施例においてさらに詳述する。抗トランスフェリンレセプター抗体はさらにそれが結合する組織、癌の型または腫瘍の型に関して特徴付けすることができる。
【0104】
抗トランスフェリンレセプター抗体を特徴付けする別の方法はそれが結合する抗原によるものである。抗トランスフェリンレセプター抗体は種々のヒト癌由来の細胞溶解物を用いたウェスタンブロットにおいて使用した。当該分野でよく知られており、ウェスタンブロットでは変性または非変性ゲル上で細胞溶解物および/または細胞画分を泳動し、ニトロセルロース紙にタンパク質を移行させ、そして次に抗体(例えば抗トランスフェリンレセプター抗体)を用いてブロットをプローブすることによりどのタンパク質が抗体により結合されたかを調べる。この操作法は実施例において詳述する。抗トランスフェリンレセプター抗体が結合しているバンドを単離し、質量スペクトルを用いてさらに分析した。抗トランスフェリンレセプター抗体が結合している抗原はトランスフェリンレセプターであることが解った。トランスフェリンレセプターは種々の組織の種々のヒトの癌、例えば結腸、肺、乳房、前立腺、卵巣、膵臓、腎臓並びに他の型の癌、例えば肉腫に伴っている。トランスフェリンレセプターに関する説明はさらに後述する実施例において行う。
【0105】
(VI.抗トランスフェリンレセプター抗体およびトランスフェリンレセプターモジュレーターを用いた癌の診断の方法)
本明細書に記載した方法により生成されたトランスフェリンレセプターに対するモノクローナル抗体を用いて診断目的のために種々の組織、例えば卵巣、乳房、肺、前立腺、結腸、腎臓、膵臓、皮膚、甲状腺、脳、心臓、肝臓、胃、神経、血管、骨および上部消化管における癌性細胞の存在または非存在を発見してよい。本明細書に開示した方法により生成されたトランスフェリンレセプターに対するモノクローナル抗体はまた固形腫瘍から放出された後に血中を循環している癌性の細胞の存在または非存在、またはその量を調べるために使用してよい。このような循環している抗原は未損傷のトランスフェリンレセプター抗原、または本発明に記載した方法で検出されるべき能力を温存しているそのフラグメントであってよい。このような検出は当該分野で一般的に使用されている標準的な方法を用いてFACS分析により行ってよい。
【0106】
これ等の使用においてはトランスフェリンレセプターとトランスフェリンレセプターに特異的に結合する抗体との間の複合体の形成を行うことができる。このような抗体の例は、PTA−6055の標記を有するATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産される抗トランスフェリンレセプターモノクローナル抗体を包含する。このような複合体の形成はインビトロまたはインビボで行うことができる。理論に制約されないが、モノクローナル抗体の抗トランスフェリンレセプターはトランスフェリンレセプターの細胞外ドメインを介してトランスフェリンレセプターに結合することができ、そしてその後内在化すると考えられる。
【0107】
本発明の診断方法の好ましい実施形態においては、抗体は検出可能な標識を担持する。使用してよい標識の例は放射活性物質または蛍光団、例えばフルオロイソチオシアネートまたはフィコエリスリンを包含する。
【0108】
診断および治療目的のための商業的に使用されている他の知られた抗体の場合と同様、本発明の標的抗原は正常組織において広範に発現される。一部の腫瘍においてはアップレギュレートされる。従って、診断または治療剤のために使用される場合の本発明の抗体の送達の特定の用量および経路は対象となる特定の腫瘍または疾患並びに治療すべき特定の個体に適合される。
【0109】
診断のために抗体を使用する1つの方法は放射活性または放射線不透明の物質に抗体を連結すること、抗体を個体に投与すること、および、X線または他の画像化装置を用いて抗原を発現している癌細胞の表面の標識された抗体の局在化を可視化することによる、インビボの腫瘍の画像化である。抗体は生理学的条件において結合を促進する濃度において投与する。
【0110】
トランスフェリンレセプターの検出のためのインビトロの手法は当該分野で日常的なものであり、酵素連結免疫吸着試験(ELISA)、免疫沈降、免疫蛍光、酵素免疫試験(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)およびウェスタンブロット分析を包含する。
【0111】
本発明の特徴において、腫瘍または新生物の放射線画像化、または、放射標識抗体を用いた治療方法の有効性の測定の方法は、放射標識腫瘍特異的抗体を本発明の実施に従って固体に投与する工程を含む。放射標識された抗体は、好ましくはテクネチウム−99m、インジウム−111、ヨウ素−131、レニウム−186、レニウム−188、サマリウム−153、ルテチウム−177、銅−64、スカンジウム−47、イットリウム−90からなる群より選択される放射標識を含むモノクローナルまたはポリクローナル抗体であってよい。抗体の免疫反応性を犠牲にせず、そしてインビボで分解されないヨウ素−131、レニウム−188、ホルミウム−166、サマリウム−153およびスカンジウム−47のような治療用の放射性核種で標識されたモノクローナル抗体が特に好ましい。当業者の知るとおり、他の放射性同位体も知られており、特定の用途に適している場合がある。放射線画像化は単一光子発光コンピューター断層撮影(SPECT)、陽電子発光断層撮影(PET)、コンピューター断層撮影(CT)または磁気共鳴画像化(MRI)を用いて実施してよい。放射線免疫画像化により位置特定される転移の位置のより解剖学的な解像度を可能にする相関性画像化も意図される。
【0112】
別の方法においては、癌性の細胞を摘出し、当該分野でよく知られた方法により免疫組織化学用に組織を調製する(例えば凍結用化合物中に包埋し、凍結し、そして固定化を行うか行うことなく切片化する;固定化および抗原の開腹および逆染色の種々の方法を用いるか用いることなく包埋する)。モノクローナル抗体はまた発生の種々の段階における癌性の細胞を発見するために使用してよい。抗体は又、どの個体の腫瘍が予め決定された量でその表面に抗原を発現し、そしてそのため、該抗原に対して指向された抗体を用いた免疫療法のための候補となりえるかを調べるために使用してよい。抗体はトランスフェリンレセプターを発現する卵巣、前立腺および膵臓の原発癌および転移癌の両方および肺の原発癌を認識してよい。本明細書においては、検出は定性的および/または定量的な検出を包含してよく、そして測定された量を癌性の細胞におけるトランスフェリンレセプターの発現の増大した量に関して正常細胞と比較することを包含してよい。
【0113】
本発明は、またトランスフェリンレセプターに結合するいずれかの抗体を用いて個体における癌(例えば卵巣癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸癌または乳癌)の診断を支援する方法、および、トランスフェリンレセプター発現の量を決定するために使用できる他の方法を提供する。本明細書においては、「診断を支援する」ための方法とは、これ等の方法が癌の分類または性質に関する臨床的判断を行う場合に補助を行うことを意味し、そして、最終的診断に関して決定的であってもなくてもよい。従って、癌の診断を支援する方法は個体から得た生物学的試料中のトランスフェリンレセプターの量の検出および/または試料中のトランスフェリンレセプターの発現の量の測定の工程を含むことができる。抗原またはその部分を認識する抗体もまた血液、唾液、尿、肺の流体または腹水を包含する体液中の生存または死滅している癌細胞から放出または分泌された抗原を検出するための診断イムノアッセイを考案するために使用してよい。
【0114】
目的の特定の腫瘍中の細胞が全てトランスフェリンレセプターを発現するわけではなく、他の組織の癌性の細胞がトランスフェリンレセプターを発現する場合があり、すなわち、個体は個体における免疫療法の有用性を調べるために癌性の細胞上のトランスフェリンレセプターの存在または非存在についてスクリーニングしなければならない。本明細書に記載した方法で生成された抗トランスフェリンレセプター抗体は癌を有すると診断された個体がトランスフェリンレセプターに対して指向された抗体を用いた免疫療法の対象候補と推定してよいかどうかを決定するために使用してよい。1つの実施形態において、癌性の腫瘍または生検試料はトランスフェリンレセプターに対して指向された抗体を用いてトランスフェリンレセプターの発現に関して試験してよい。トランスフェリンレセプターを発現する癌細胞を有する個体はトランスフェリンレセプターに対して指向された抗体を用いた免疫療法の対象候補として適している。抗トランスフェリンレセプター抗体による染色もまた、正常組織から癌性組織を判別するために使用してよい。
【0115】
診断目的のために抗トランスフェリンレセプター抗体を使用する方法は抗癌治療のいずれかの形態、例えば化学療法または放射線療法の前および後の両方において、どの腫瘍が所定の治療に応答する可能性が最も高いかについて、癌を有する個体の予後について、腫瘍のサブタイプまたは転移疾患の起源について、そして、疾患の予後または治療への応答について判断するために有用である。
【0116】
本発明の組成物は又他の疾患(非癌)細胞に適用する一般的に上記した方法を用いた癌以外の疾患状態の診断のためにも適している。本発明の方法において使用するために適する疾患状態は例えば個体における炎症または自己免疫の応答に関連する疾患または障害を包含する。上記した方法は個体における炎症または自己免疫の応答を調節するために使用してよい。本発明の組成物および方法を用いた診断および/または治療に付してよい炎症および自己免疫の障害に起因する疾患および状態は、例えば、多発性硬化症、髄膜炎、脳炎、卒中、他の大脳外傷、炎症性腸疾患、例えば潰瘍性結腸炎およびクローン病、重症筋無力症、狼瘡、慢性関節リューマチ、喘息、急性若年発症性糖尿病、エイズ痴呆、アテローム性動脈硬化症、腎炎、網膜炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、心筋虚血および急性白血球媒介肺傷害を包含する。
【0117】
本発明の抗体および他の治療剤の診断および/または治療上の使用のためのさらに別の適応症は臓器または移植片の拒絶の危険性を有する個体への投与を包含する。近年にわたり、組織および臓器、例えば皮膚、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓および骨髄の移植のための外科的手法の効率が大きく向上している。恐らくは主要な重要問題は移植された同種移植片または臓器に対するレシピエントにおける免疫寛容を誘導するための満足できる因子が存在しないことである。同種移植片の細胞または臓器を宿主に移植する(すなわち供与者および被供与者が同じ種の異なる個体である)場合、宿主の免疫系は移植片における外来性抗原への免疫応答を上昇(宿主対移植片疾患)させると考えられ、これが移植された組織の破壊をもたらす。
【0118】
抗トランスフェリンレセプター抗体に対する使用について言及する場合の本出願に記載された使用はまた、本明細書に記載した他のトランスフェリンレセプターのアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターの使用を包含する。そのような実施形態において、トランスフェリンレセプターのアゴニスト、アンタゴニストまたは他の非抗体モジュレーターは上記した工程におけるトランスフェリンレセプター抗体の代替となり、当業者の技術の範囲内の改変は代替トランスフェリンレセプター調節組成物に対して方法を適合させるために行われる。
【0119】
(VII.本発明の組成物)
本発明は、また抗トランスフェリンレセプター抗体、抗トランスフェリンレセプター抗体から誘導したポリペプチド、抗トランスフェリンレセプター抗体をコードするポリヌクレオチド、および本明細書に記載した他の物質を含む薬学的組成物を包含する組成物も包含する。本明細書においては、組成物はさらに、トランスフェリンレセプター、トランスフェリンレセプターアゴニスト、アンタゴニスト、モジュレーターに結合する抗体、ポリペプチドおよび/またはタンパク質の1つ以上、および/または、トランスフェリンレセプターに結合する抗体、ポリペプチドおよびタンパク質の1つ以上をコードする配列を含むポリヌクレオチドの1つ以上を含む。
【0120】
本発明は、さらに、いずれかのトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターと特定のトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターの意図する機能を支援する別の化学的構造とのコンジュゲートを提供する。これ等のコンジュゲートは本明細書において考察する診断、スクリーニングまたは精製の操作法において使用されるいずれかの不溶性の固体支持体マトリックスのような巨大分子と共有結合したトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターを包含する。適当なマトリックス物質は、化学的に不活性であり、高い多孔性を有し、ペプチドリガンドと共有結合を形成できる官能基多数を有するいずれかの物質を包含する。マトリックス物質およびマトリックス−リガンドコンジュゲートの製造のための操作法の例は、Dean et al.(eds)Affinity Chromatography:A practical Approach,IRL Press(1985);Lowe,” An Introduction to Affinity Chromatography,” Work et al.(eds)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Vol.7,Part II,Notrh−Holland(1979);Porath et al.,”Biospecific Affinity Chromatography,” Neurath et al.(eds),The Proteins,3rd ed.,Vol.1,pp.95−178(1975);およびSchott,Affinity Chromatography,Dekker(1984)に記載されている。
【0121】
本発明は、さらに本明細書において考察する診断の操作法において使用されるトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターといずれかのレポーター部分とのコンジュゲートを提供する。
【0122】
抗トランスフェリンレセプター抗体を包含する本発明のトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターの因子、ポリペプチドおよびタンパク質はさらに、以下の基準、すなわち、(a)トランスフェリンレセプター(卵巣、前立腺、膵臓、肺、結腸または乳癌細胞を包含する癌細胞上のトランスフェリンレセプターを包含する)に結合する能力;(b)元の抗体が優先的に結合するものと同じトランスフェリンレセプターエピトープに優先的に結合する能力を包含するトランスフェリンレセプターへの既知抗トランスフェリンレセプター抗体の優先的結合を競合的に抑制する能力;(c)インビボまたはインビトロで生存細胞の表面上に露出しているトランスフェリンレセプターの部分に結合する能力;(d)卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、結腸癌または乳癌の細胞を包含する生存癌細胞の表面上に露出しているトランスフェリンレセプターの部分に結合する能力;(e)トランスフェリンレセプターを発現している癌性の細胞(例えば卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、結腸癌または乳癌の細胞)に化学療法剤または検出可能なマーカーを送達する能力;(f)トランスフェリンレセプターを発現している癌性の細胞(例えば卵巣癌の細胞)に治療剤を送達する能力のいずれか(1つ以上)により発見および特徴付けされる。
【0123】
一部の実施形態においては、本発明の抗体は寄託番号ATCC No.PTA−6055を有する宿主細胞またはその子孫により生産される抗体である。本発明は、又、これ等の寄託されたハイブリドーマにより生産される抗体および等価な抗体またはポリペプチドのフラグメント(例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fc等)、キメラ抗体、1本鎖(ScFv)、その改変体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、および、必要な特異性の抗原(トランスフェリンレセプター)認識部位を含むこれらおよび等価な抗体のいずれかの他の修飾された配置の種々の製剤を包含する。本発明は、又、抗トランスフェリンレセプターファミリーメンバーの生物学的特性1つ以上をディスプレイするヒト抗体を提供する。抗トランスフェリンレセプターファミリー(ヒト化抗体およびヒト抗体を包含する)の等価な抗体、ポリペプチドフラグメントおよびこれ等のフラグメントのいずれかを含むポリペプチドは上記した5つの基準のいずれか(1つ以上)により発見し、特徴付けする。
【0124】
一部の実施形態においては、トランスフェリンレセプターに結合する本発明の抗体、ポリペプチドおよびタンパク質はトランスフェリンレセプターへの本明細書に特定した抗トランスフェリンレセプター抗体の優先的結合を競合的に抑制する抗体、ポリペプチドおよびタンパク質である。一部の実施形態においては、抗体、ポリペプチドおよびタンパク質は抗体LUCA31が優先的に結合するものと同じトランスフェリンレセプター上エピトープに優先的に結合する。
【0125】
従って、本発明は、(a)上記の寄託番号を有する宿主細胞またはその子孫により生産される抗体;(b)そのような抗体のヒト化形態;(c)そのような抗体の軽鎖および/または重鎖1つ以上を含む抗体;(d)そのような抗体の重鎖および軽鎖の可変領域と相同またはそれより誘導された可変領域およびヒト抗体の重鎖および軽鎖の定常領域と相同またはそれより誘導された定常領域を含むキメラ抗体;(e)そのような抗体の軽鎖および/または重鎖のCDRの1つ以上(少なくとも1、2、3、4、5または6つ)を含む抗体;(f)そのような抗体の重鎖および/または軽鎖を含む抗体;(g)そのような抗体に等価なヒト抗体のいずれか(またはこれ等のいずれかを含む薬学的組成物を包含する)を提供する。抗体のヒト化形態は元の抗体または上記寄託番号を有する宿主細胞により生産される抗体と同一のCDRを有していてもいなくてもよい。CDR領域の決定は当該分野でよく知られている。一部の実施形態において、本発明は、上記寄託ハイブリドーマの1つにより生産される抗体、または、上記寄託番号を有する宿主細胞により生産される抗体の少なくとも1つのCDR、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つのCDRに実質的に相同である(或いは、一部の実施形態においては、これ等の抗体の1つの、またはこれ等の抗体の1つより誘導された、全6CDRに実質的に相同である)CDR少なくとも1つを含む抗体を提供する。他の実施形態は本明細書に記載した寄託されたハイブリドーマから生産された抗体の、またはそのような抗体から誘導されたCDR少なくとも2,3、4、5または6つに実質的に相同であるCDR少なくとも2,3、4、5または6つを有する抗体を包含する。本発明の目的のためには、結合特異性および/または全体的活性(癌細胞の増殖および/または増殖を低減するため、癌細胞のアポトーシス細胞死を誘導するため、転移の発生を遅滞させるために化学療法剤を送達すること、および/または、待機的に治療することという意味におけるものであってよい)は一般的に保持されるが、活性の範囲は寄託ハイブリドーマにより生産される抗体と比較して変動してよい(増減してよい)。本発明は、又これ等の抗体のいずれかを生成する方法を提供する。抗体の生成方法は当該分野で知られており、本明細書に記載する通りである。
【0126】
本発明は、又本発明の抗体のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。一部の実施形態においては、ポリペプチドは抗体の軽鎖および/または重鎖の可変領域1つ以上を含む。一部の実施形態においては、ポリペプチドは抗体の軽鎖および/または重鎖のCDR1つ以上を含む。一部の実施形態においては、ポリペプチドは抗体の軽鎖および/または重鎖のCDR3つを含む。一部の実施形態においては、ポリペプチドは、元の抗体の配列の少なくとも5連続アミノ酸、少なくとも8連続アミノ酸、少なくとも約10連続アミノ酸、少なくとも約15連続アミノ酸、少なくとも約20連続アミノ酸、少なくとも約25連続アミノ酸、少なくとも約30連続アミノ酸のいずれかを有する抗体のアミノ酸配列を含み、ここでアミノ酸の少なくとも3つは抗体の可変領域由来である。1つの実施形態において、可変領域は元の抗体の軽鎖に由来する。別の実施形態においては、可変領域は抗体の重鎖に由来する。別の実施形態においては、5つ(またはそれより多い)の連続アミノ酸が抗体の相補性決定領域(CDR)に由来する。
【0127】
本発明の一部の実施形態においてはトランスフェリンレセプター、トランスフェリンレセプターの部分、抗トランスフェリンレセプター抗体または本発明の他のトランスフェリンレセプター結合ポリペプチドを発現する本発明の細胞を個体に直接投与することにより、そのインビボのトランスフェリンレセプター生物学的活性を調節する。
【0128】
(VIII.治療目的のためにトランスフェリンレセプターモジュレーターおよび抗トランスフェリンレセプター抗体を使用する方法)
トランスフェリンレセプターに対するモノクローナル抗体は、癌または他の疾患を有する個体において治療目的のために使用してよい。抗トランスフェリンレセプター抗体を用いた治療では上記した通りインビトロおよびインビボの両方で複合体を形成することができる。1つの実施形態において、モノクローナル抗体抗トランスフェリンレセプターを癌性の細胞に結合させ、その増殖を低減することができる。抗体は生理学的(例えばインビボ)条件において結合を促進する濃度において投与するものとする。別の実施形態においては、トランスフェリンレセプターに対するモノクローナル抗体を結腸、肺、乳房、前立腺、卵巣、膵臓、腎臓および他の型の癌、例えば肉腫のような種々の組織の癌性の細胞に指向させた免疫療法のために使用できる。別の実施態様においては、モノクローナル抗体抗トランスフェリンレセプター単独を癌細胞に結合させて、その細胞分裂を低減することができる。別の実施形態においてはモノクローナル抗体抗トランスフェリンレセプターを癌性の細胞に結合させて、転移の発生を遅滞させることができる。さらに別の実施形態においては、癌を有する個体に抗トランスフェリンレセプター抗体を用いた待機的治療を行う。癌個体の待機的治療では、疾患の有害な症状または癌の進行に直接影響しない疾患に対して行われる別の治療に起因する医原性の症状を治療または縮小させる。これには疼痛の軽減、栄養補給、性的問題、心理学的苦痛、抑鬱、疲労、精神障害、嘔気、嘔吐等の治療が包含される。
【0129】
そのような状況において、抗トランスフェリンレセプター抗体は個体自身の免疫応答を増強または指向する因子、例えばADCCを強化する因子と共に投与してよい。
【0130】
さらに別の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体を放射性分子、毒素(例えばカリケミシン)、化学療法剤分子、リポソームまたは化学療法化合物を含有する他の小胞とコンジュゲートまたは会合させ、そしてこのような治療を必要とする個体に投与することにより、これ等の化合物を、抗体により認識される抗原を含有する癌細胞にターゲティングし、これにより、癌性または疾患の細胞を排除する。特定の理論に制約されないが、抗トランスフェリンレセプター抗体は表面にトランスフェリンレセプターを担持した細胞により内在化され、これによりコンジュゲート部分を細胞に送達して治療効果を誘導する。さらに別の実施形態においては、抗体は転移の発生を遅滞させるために抗原を発現する癌の外科的除去の際に補助的治療として使用できる。抗体は又、腫瘍の大きさを低減し、これにより手術の単純化、手術中の組織の節約および/または生じる傷跡の低減のために、抗原を発現する腫瘍を有する個体における手術の前に投与することもできる(ネオアジュバント療法)。
【0131】
細胞周期の投与は本発明の実施において意図される。このような実施形態において、化学療法剤を使用することにより、所定の段階において腫瘍または他の標的疾患細胞の細胞周期と同調する。その後、本発明の抗トランスフェリンレセプター抗体(単独または別の治療部分と共に)の投与を行う。別の実施形態においては、第2ラウンドの治療の前に細胞周期と同調し、細胞分裂を低減するために抗トランスフェリンレセプター抗体を使用し;第2ラウンドは抗トランスフェリンレセプター抗体および/または別の治療部分の投与であってよい。
【0132】
化学療法剤は放射性分子、細胞毒または細胞毒性の因子とも称される毒素を包含し、これには癌性の細胞の生存性を妨害するいずれかの因子、および化学療法化合物を含有するリポソームまたは他の小胞が包含される。適当な化学療法剤の例は、1−デヒドロテストステロン、5−フルオロウラシルデカバジン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、アルデスロイキン、アルキル化剤、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、アンスラマイシン(AMC)、抗有糸分裂剤、シスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、ジアミノジクロロ白金、アントラサイクリン、抗生物質、代謝拮抗物質、アスパラギナーゼ、BCG生菌(嚢内)、ベタメタゾンナトリウムホスフェートおよびベタメタゾンアセテート、ビカルタミド、ブレオマイシンスルフェート、ブスルファン、カルシウムロイクオリン、カリケマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BSNU)、クロランブシル、シスプラチン、クラドリビン、コルヒチン、コンジュゲートエストロゲン、シクロホスファミド、シクロソスファミド、シタラビン、シタラビン、シトカラシンB、ダカルバジン、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、塩酸ダウノルビシン、クエン酸ダウノルビシン、デニロイキンジフチトックス、デキスラゾキサン、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラシンジオン、ドセタキセル、ドラセトロンメシレート、塩酸ドキソルビシン、ドロナビノール、E.coli L−アスパラギナーゼ、エメチン、エポエチンアルファ、エルウィニアL−アスパラギナーゼ、エステル化エストロゲン、エストラジオール、エストラムスチンホスフェートナトリウム、臭化エチジウム、エチニルエストラジオール、エチドロネート、エトポシドシトロロラム因子、エトポシドホスフェート、フィルグラスチン、フロクスウリジン、フルコナゾール、フルダラビンホスフェート、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、塩酸ゲムシタビン、グルココルチコイド、ゴセレリンアセテート、グラミシジンD、塩酸グラニセトロン、ヒドロキシ尿素、塩酸イダルビシン、イフォスファミド、インターフェロンアルファ−2b、塩酸イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、ロイプロリドアセテート、塩酸レバミソール、リドカイン、ロムスチン、マイタンシノイド、塩酸メクロレタミン、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲストロールアセテート、塩酸メルファラン、メルカプチプリン、メスナ、メトトレキセート、メチルテストステロン、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、オクレオチドアセテート、塩酸オンダンセトロン、パクリタキセル、パミドロネート2ナトリウム、ペントスタチン、塩酸ピロカルピン、プリマイシン、カルムスチンインプラントを有するポリフェプロサン20、ポリフィマーナトリウム、プロカイン、塩酸プロカルバジン、プロプラノロール、リツキシマブ、サルグラモスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、テノポシド、テストラクトン、テトラカイン、チオエパクロラムブシル、チオグアニン、チオテパ、塩酸トポテカン、トレミフェンシトレート、トラスツズマブ、トレチノイン、バルルビシン、ビンブラスチンスルフェート、ビンクリスチンスルフェートおよびビノレルビンタータレートを包含する。
【0133】
好ましい実施形態においては、非分裂細胞が相対的に毒性作用から免れるように、細胞毒は分裂または急速分裂の細胞において特に有効となる。
【0134】
本発明の抗体はそれらが結合する疾患または癌腫の細胞内に内在化することができ、従って治療用途のため、例えば有害な活性のために内在化が必要である毒素を細胞内に送達するために特に有用である。このような毒素の例はサポリン、カリケアマイシン、オーリスタチンおよびマイタンシノイドを包含する。
【0135】
本発明の抗体またはポリペプチドは放射性分子、毒素、または他の治療剤、または共有結合的または非共有結合的、直接または間接的に治療剤を含有するリポソームまたは他の小胞に会合(コンジュゲートまたは連結を包含する)させることができる。抗体は抗体がその標的トランスフェリンレセプターに結合可能な限り抗体の如何なる位置においても放射性分子、毒素、または化学療法剤分子に連結させてよい。
【0136】
毒素または化学療法剤は直接または間接的に(例えばリンカー基を介するか、または適切な結合部位を有する連結分子、例えば米国特許5,552,391に記載のプラットホーム分子を介して)適当なモノクローナル抗体にカップリング(例えば共有結合)させてよい。本発明の毒素または化学療法剤は当該分野で知られた方法を用いて特定のターゲティングタンパク質に直接カップリングできる。例えば、因子と抗体との間の直接の反応は、各々が他方と反応することができる置換基を保有している場合に可能である。例えば一方の上にある親核基、例えばアミノまたはスルフィドリル基は他方の上にあるカルボニル含有基、例えば無水物またはハロゲン化酸と、または、良好な脱離基(例えばハライド)を含有するアルキル基と反応することができる。
【0137】
抗体またはポリペプチドは又マイクロキャリアを介して化学療法剤に連結できる。マイクロキャリアは水中で不溶性であり、そして約150、120または100mm未満の大きさ、より一般的には約50〜60μm未満、好ましくは約10、5、2.5、2または1.5μm未満の大きさを有する生体分解性または非生体分解性の粒子を指す。マイクロキャリアは約1μm未満、好ましくは約500nm未満の大きさを有する「ナノキャリア」を包含する。このような粒子は当該分野で知られている。固相マイクロキャリアは生体適合性のある天然に存在する重合体、合成の重合体または合成の共重合体から形成された粒子であり、アガロースまたは交差結合アガロース並びに当該分野で知られた他の生体分解性の物質から形成されたマイクロキャリアを包含しても除外してもよい。生体分解性の固相マイクロキャリアは、哺乳類の生理学的条件下において分解性(例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)およびその共重合体)または腐食性(例えばポリ(オルトエステル)例えば3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(DETOSU)またはポリ(無水物)例えばセバシン酸のポリ(無水物))である重合体から形成してよい。マイクロキャリアは又、液相(例えば油脂系または脂質系)、そのようなリポソーム、抗原を含有しないiscom(免疫刺激複合体、すなわちコレステロールおよびリン脂質、アジュバント活性サポニンの安定な複合体)、または、液相マイクロキャリアが生体分解性である限りo/wまたはw/oエマルジョン中に存在する液滴またはミセルであってもよい。生体分解性の液相のマイクロキャリアは典型的には生体分解性の油脂を配合しており、これ等の多くは当該分野で知られており、スクワレンおよび植物油を包含する。マイクロキャリアは典型的には球状であるが、球状から外れたマイクロキャリアも許容される(例えば楕円、棒状等)。その不溶性の性質(水に関して)のため、マイクロキャリアは水および水系(水性)溶液から濾別することができる。
【0138】
本発明の抗体またはポリペプチドコンジュゲートは毒性の因子または化学療法剤にカップリングすることができる基および抗体にカップリングすることができる基の両方を含有する2官能性のリンカーを含んでよい。リンカーは結合能力の妨害とならないように因子から抗体を隔たらせるためのスペーサーとして機能してよい。リンカーは切断性または非切断性であることができる。リンカーは又因子または抗体上の置換基の化学的反応性を増大させ、これによりカップリング効率を上昇させる役割を果たす。化学的反応性の増大はさらに、通常ではありえない因子または因子上の官能基の使用を容易にする。2官能性のリンカーは当該分野で知られた手段により抗体にカップリングできる。例えば活性エステル部分、例えばN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを含有するリンカーはアミド結合を介して抗体中のリジン残基にカップリングするために使用できる。別の実施例においては、親核アミンまたはヒドラジン残基を含有するリンカーを、抗体の炭水化物残基の解糖酸化により生成するアルデヒド基に結合させることができる。これ等の直接的なカップリング方法のほかに、リンカーはアミノデキストランのような中間キャリアを用いて抗体に間接的にカップリングすることができる。これ等の実施形態においては、修飾された結合はリジン、炭水化物または中間キャリアを介する。1つの実施形態において、リンカーはタンパク質の遊離のチオール残基に部位特異的にカップリングする。タンパク質上のチオール基への選択的カップリングに適する部分は当該分野でよく知られている。例としてはジスルフィド化合物、α−ハロカルボニルおよびα−ハロカルボキシル化合物およびマレイミドが包含される。親核アミン官能基がα−ハロカルボニルまたはカルボキシル基と同じ分子中に存在する場合は、アミンの分子内アルキル化を介して環化が起こる可能性が存在する。この問題を回避するための方法は当該分野でよく知られており、例えば望ましくない環化を立体化学的に不利とするようなアリール基またはトランスアルカンのような非柔軟性の基によりアミンとα−ハロ官能基が分離されている分子の製造によるなどしてよい。ジスルフィド部分を介したマイタンシノイドと抗体のコンジュゲートの製造に関しては例えば米国特許6,441,163を参照できる。
【0139】
抗体−因子コンジュゲートの製造のために使用できる切断可能なリンカーの1つは、レセプター媒介エンドサイトーシスの間に遭遇するエンドソームおよびリソソームのような異なる細胞内コンパートメントの酸性環境を利用したシス−アコニット酸に基づく酸不安定性リンカーである。例えば巨大分子キャリアとのダウノルビシンのコンジュゲートの製造に関してはShen et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun. 102:1048−1054(1981);抗黒色腫抗体へのダウノルビシンのコンジュゲートの製造に関してはYang et al.,J.Natl.Canc.Inst.80:1154−1159(1988);抗T細胞抗体とのダウノルビシンのコンジュゲートを製造するための同様の態様における酸不安定性リンカーの使用に関してはDillman et al.,Cancer Res.48:6097−6102(1988);ペプチドスペーサーアームを介した抗体へのダウノルビシンの連結に関してはTrouet et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.79:626−629(1982)を参照できる。
【0140】
本発明の抗体(またはポリペプチド)は当該分野で知られたいずれかの方法により放射性分子にコンジュゲート(連結)してよい。抗体を放射標識するための方法に関する考察は”Cancer Therapy with Monoclonal AntibodiesT,” D.M.Goldenberg ed.(CRC Press,Boca Raton,1995)を参照できる。
【0141】
或いはSegalの米国特許4,676,980に記載の通り、抗体を第2の抗体にコンジュゲートして抗体ヘテロコンジュゲートを形成することができる。交差結合抗体の形成は特定の細胞型、例えばトランスフェリンレセプターを発現する癌または疾患の細胞に免疫系をターゲティングすることができる。
【0142】
本発明は、化学療法剤に連結した抗トランスフェリンレセプター抗体またはトランスフェリンレセプターに結合する他の実施形態を用いて癌(例えば前立腺癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膵臓癌または結腸癌)を有する個体における転移の発生を遅滞させる方法を提供する。一部の実施形態においては、抗体は非ヒト抗トランスフェリンレセプター抗体のヒト化またはキメラの形態である。
【0143】
さらに別の実施形態においては、抗体は転移の発生を遅滞させるために抗原を発現する癌の外科的摘出の時点において補助的治療として使用することができる。抗体または化学療法剤に結合した抗体は又、腫瘍の大きさを低減し、これにより手術の単純化、手術中の組織の節約および/または生じる傷跡の低減のために、抗原を発現する腫瘍を有する個体における手術の前に投与することもできる(ネオアジュバント療法)。
【0144】
さらに別の実施形態においては、本明細書に記載したトランスフェリンレセプター結合実施形態のいずれかをトランスフェリンレセプター発現癌性細胞に結合させ、トランスフェリンレセプターを発現する癌性細胞に対する能動免疫応答を誘導することができる。一部の場合において、能動免疫応答は癌性細胞の死滅を誘発(例えばアポトーシスによる細胞死を誘導する癌細胞への抗体の結合)、または、癌性細胞の増殖を抑制(例えば細胞周期の進行をブロック)することができる。他の場合においては、本明細書に記載したいずれかの新しい抗体を癌性の細胞に結合させ、そして抗体依存性細胞毒性(ADCC)は抗トランスフェリンレセプターが結合する癌性細胞を排除することができる。従って、本発明は、本明細書に記載した組成物のいずれかを投与することを含む免疫応答を刺激する方法を提供する。
【0145】
一部の場合において、抗体の結合はまた細胞性および体液性の免疫応答の両方を活性化してより多くのナチュラルキラー細胞または個体の免疫系をさらに活性化して癌性細胞を破壊するサイトカイン(例えばIL−2、IFN−g、IL−12、TNF−a,TNF−b等)の増大した生産をリクルートすることができる。さらに別の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体は癌性細胞に結合することができ、そしてマクロファージまたは他の貪食細胞が癌性細胞をオプソニン作用に付すことができる。
【0146】
抗トランスフェリンレセプター抗体またはそのフラグメントの種々の製剤を投与のために使用してよい。一部の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体またはそのフラグメントをそのまま投与してよい。薬学的に活性な因子のほかに、本発明の組成物は、薬理学的に有効な物質の投与を促進するか、または、作用部位への送達のために薬学的に使用できる製剤への活性化合物の加工を容易にする、当該分野でよく知られており、比較的不活性な物質を含む適当な薬学的に受容可能なキャリアを含有してよい。例えば、賦形剤は形状または一体性を与え、或いは、希釈剤として機能する。適当な賦形剤は、安定化剤、水和および乳化剤、浸透圧調節のための塩類、カプセル化剤、緩衝剤および皮膚浸透性増強剤を包含する。
【0147】
非経腸投与のための適当な製剤は水溶性の形態、例えば水溶性の塩としての活性化合物の水溶液を包含する。さらに又、油性の注射懸濁液のために適切な活性化合物の懸濁液も投与してよい。適当な親油性の溶媒またはベヒクルは油脂類、例えばゴマ油、または合成の脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルまたはトリグリセリドを包含する。水性の注射用懸濁液は懸濁液の粘度を増大させるための物質を含有してよく、そして例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを包含する。場合により、懸濁液は又安定化剤を含有してよい。リポソームはまた細胞内への送達のために因子をカプセル化するために使用できる。
【0148】
本発明の全身投与のための医薬品製剤は経腸、非経腸または局所投与用に製剤してよい。実際、製剤の3種類全てを同時に使用して活性成分の全身投与を達成してよい。非経腸および経腸の因子送達のための賦形剤並びに製剤はRemington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing(2000)に記載されている。
【0149】
経口投与用の適当な製剤はハードまたはソフトゼラチンカプセル、丸薬、錠剤、例えばコーティングされた錠剤、エリキシル、懸濁液、シロップまたは吸入剤およびそれらの制御放出形態を包含する。
【0150】
一般的に、これ等の因子は注射(例えば腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内等)による投与のために製剤されるが、他の投与形態(例えば経口、粘膜など)も使用できる。従って、抗トランスフェリンレセプター抗体は好ましくは薬学的に受容可能なベヒクル、例えば生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液等と組み合わせる。
【0151】
特定の用量用法、すなわち、投与量、時期および反復度は特定の個体およびその個体の病歴により変動する。一般的に少なくとも約100ug/kg体重、より好ましくは少なくとも約250ug/kg体重、さらに好ましくは少なくとも約750ug/kg体重、さらに好ましくは少なくとも約3mg/kg体重、さらに好ましくは少なくとも約5mg/kg体重、さらに好ましくは少なくとも約10mg/kg体重の用量を投与する。
【0152】
実験的な検討事項、例えば半減期は一般的に用量の決定に寄与する。ヒト免疫系と適合する抗体、例えばヒト化抗体または完全ヒト抗体は、抗体の半減期を延長し、そして宿主の免疫系による抗体が攻撃されることを防止するために使用してよい。投与の頻度は治療の過程にわたって決定され調整されてよく、そして癌性細胞の数の低減、癌性細胞の低減の維持、癌性細胞の増殖の低減、または、転移の発生の遅滞に基づくものである。或いは、抗トランスフェリンレセプター抗体の除放持続性の製剤が適している場合がある。除放性を達成するための種々の製剤および考案物が当該分野で知られている。
【0153】
1つの実施形態において、抗トランスフェリンレセプター抗体の投与量は投与を一回以上受けている個体において実験的に決定してよい。個体は抗トランスフェリンレセプター抗体の漸増量を投与される。抗トランスフェリンレセプター抗体の薬効を評価するためには、特定の癌の疾患状態のマーカーを追跡することができる。これ等には触診または目視による観察を介した腫瘍の大きさの直接の測定、X線または他の画像化手法による腫瘍サイズの間接的測定;腫瘍試料の直接の腫瘍生検および顕微鏡観察により評価される改善度;間接的な腫瘍マーカー(例えば前立腺癌のPSA)の測定、疼痛または麻痺の低減;会話、視野、呼吸または他の腫瘍に関連する障害の改善;食欲の改善;または許容性試験により測定されるクオリティーオブライフの上昇または延命が包含される。当業者が知る通り、用量は個体、癌の種類、癌の段階、癌が個体の他の位置への転移を開始しているかどうか、および過去および現在併用中の治療により変動する。
【0154】
他の製剤はリポソームのような当該分野で知られた適当な送達形態を包含する。例えばMahato et al.(1997)Pharm.Res.14:853−859を参照できる。リポソーム製剤は例えばサイトフェクチン、多層小胞および単層小胞を包含する。
【0155】
一部の実施形態においては、1つより多い抗体が存在してよい。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであることができる。このような組成物は癌腫、腺癌、肉腫または腺肉腫に対して反応性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つの異なる抗体を含有してよい。抗トランスフェリンレセプター抗体は例えば卵巣、乳房、肺、前立腺、結腸、腎臓、皮膚、甲状腺、骨、上部消化管および膵臓のような臓器における癌腫、腺癌、肉腫または腺肉腫に対して反応性の抗体1つ以上と混合することができる。1つの実施形態において、異なる抗トランスフェリンレセプター抗体の混合物を使用する。抗体の混合物は、当該分野でしばしば指摘される通り、より広い個体集団を治療する場合に特に有用である。
【0156】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、限定するものではない。
【実施例】
【0157】
以下の実施例において言及する特定の材料および方法は本セクションの終わりにおいて提示する。
【0158】
(実施例1.免疫原としての癌細胞系統の生成)
組織または細胞培養物から単離した全細胞を特定の細胞型を代表する表面抗原に対して特異的であるモノクローナル抗体を生成するための免疫原として使用した。本発明の実施のために適するそのような方法は米国特許6,541,225に記載されている。一般的に特定の細胞型の細胞表面抗原に指向したモノクローナル抗体を生成するためには、その型の生存未損傷細胞で、好ましくは自身の表面が血清非含有である細胞で、非形質転換B細胞を免疫化することが望ましい。抗原トランスフェリンレセプター、例えば、LUCA31に対するモノクローナル抗体を生成するために適する細胞系統は、BT−474(ATCC#HTB−20)、MDA−MB−175VII(ATCC#HB−25)、MDA−MB−361(ATCC#HB−27)、SKBR3(ATCC#HTB−30)、SKMES−1(ATCC#HTB−58)、ES−2(ATCC#CRL−1978)、SKOV3(ATCC#HTB−77)、HPAFII(ATCC#CRL−1997)、Hs700T(ATCC#HTB−147)、Colo205(ATCC#CCL−222)、HT29(ATCC#HTB−38)、SW480(ATCC#CCL−228)、SW948(ATCC#CCL−237)、A498(ATCC#HTB−44)およびCaki−2(ATCC#HTB−47)を包含する。
【0159】
成長因子を添加し血清非含有の適切な栄養培地中で細胞を増殖させた。血清添加培地中で増殖させておいた細胞による免疫化は究極的な不都合を有する場合がある。血清は活性不明の小型および大型の生体分子の複雑な混合物を含有する。これ等の生体分子は細胞表面に付着し、これにより特異的な細胞型を代表しない分子と交差反応する抗体の形成をもたらす場合がある。さらに又、血清中の生体分子の細胞表面への結合は所望の細胞表面の抗原標的のマスキングをもたらす場合がある。多くの血清非含有の培地調製品が商業的に知られており、公的に入手可能であり、例えば以下の添加剤、すなわちインスリン(10μg/ml終濃度)、表皮成長因子(EGF)(5ng/ml終濃度)、セレン酸(2.5x10−8M終濃度)およびブタ下垂体抽出物(PPE)(5μl/ml終濃度)を含有するF12/DME(1:1)栄養培地を挙げることができる。
【0160】
細胞を回収するために、細胞の単層をカルシウムおよびマグネシウム非含有のHanks生理食塩溶液で1回洗浄し、15分間37℃でHanks生理食塩溶液中10mM EDTA中でインキュベートした。穏やかにピペッティングすることにより培養表面から細胞を脱着させた。細胞懸濁液を5分間1000xgで遠心分離することにより沈殿させた。上澄みを除去し、細胞を適宜非変性アジュバントを含有する血清非含有培地に再懸濁した。
【0161】
(実施例2.モノクローナル抗体の生成)
非変性アジュバント(Ribi、R730、Corixa,Hamilton MT)をリン酸塩緩衝食塩水中2mlとなるように再水和させた。次にこの再水和アジュバント100μlを次に免疫化に使用する実施例1の細胞ペレットの一部と穏やかに混合した。マウス当たり約106個のヒト胎児腎細胞をBalb/cマウスに脚部手掌を介して概ね週1または2回注射した。厳密な免疫化の日程は、以下の通りとした。第0日、免疫化+Ribi。第3日、免疫化+Ribi。第7日、免疫化+Ribi。第24日、免疫化−Ribi。第29日、免疫化−Ribi。第32日、免疫化−Ribi。第36日、免疫化−Ribi。第44日、免疫化−Ribi。第51日、免疫化−Ribi。第69日、力価試験用採血。第71日、免疫化+Ribi。第74日、免疫化+Ribi。第81日、免疫化+Ribi。第91日、灌流ブースト(Ribi非存在)。第104日、融合用の結節回収。
【0162】
第69日において、各免疫化動物の尾部から血液を一滴採取し、FACS分析を用いて免疫化するために使用した細胞系統に対する抗体の力価を試験した。力価が1:2000に達した時点で、マウスをCO2で屠殺し、その後断首した。リンパ節を採取してハイブリドーマの調製に付した。
【0163】
マウスのリンパ球は35%ポリエチレングリコール4000を用いてマウスミエローマ系統X63−Ag8.653と融合させた。融合後の第10日に、ハイブリドーマの上澄みを、免疫化細胞特異的モノクローナル抗体の存在について、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を用いてスクリーニングした。各ハイブリドーマのコンディショニングした培地を少量のヒト胎児腎細胞と共に30分間インキュベートした。インキュベーションの後、細胞試料を洗浄し、0.1ml希釈液中に再懸濁し、そして4℃で30分間ヤギ抗マウスIgGのFITCコンジュゲートF(ab’)2フラグメント1μg/mlとともにインキュベートした。細胞を洗浄し0.2mlのFACS希釈液中に再懸濁し、FACScan(tm)細胞分析器(Becton Dickinson;San Jose,CA)を用いて分析した。さらに増殖、クローニングおよびFACSによるヒト胎児腎細胞の表面へのその結合に基づいた特徴付けのためにハイブリドーマクローンを選択した。Agトランスフェリンレセプターと命名された抗原およびAgトランスフェリンレセプター1と命名されたその抗原上のエピトープに結合するLUCA31と命名されたモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを選択した。
【0164】
(実施例3.LUCA31を包含する抗トランスフェリンレセプター抗体の精製)
SKMES−1、786−OおよびColo205細胞系統などを包含するヒト癌細胞を10.0mMのEDTAの存在下に組織培養フラスコから脱着させ、5分間1400rpmで遠心分離し、1%BSAおよび2mM EDTAを含有するPBS(FACS希釈液)中に再懸濁した。細胞を計数し、107個/mlに調節した。約0.1mlの細胞を37℃で30分間100μlのFACS希釈液と共にインキュベートした。ヒト癌細胞系統に結合するモノクローナル抗体をタンパク質Gアフィニティークロマトグラフィーを用いて組織培養上澄みから精製した。抗体精製過程には以下の物質、すなわち、ハイブリドーマ組織培養上澄み、Immunopure(G)IgG結合緩衝液(Pierce #21011 Rockford,IL)、Immunopure IgG溶出緩衝液(Pierce #21009)、濃塩酸(pH調節用)、Corning 1リットルPES(ポリエーテルスルホン)、0.22μmフィルター(Corning #431098、Corning,NY)、Amersham Pharmacia AKTA Explorer System(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)、タンパク質Gセファロース4 Fast Flow(Amersham Biosciences #17−0618−03)、3Mチオシアン酸カリウム/50mM Tris pH7.8およびPBS(リン酸塩緩衝食塩水)、3M Tris pH9.0からなるストリッピング緩衝液を使用した。
【0165】
本明細書においてはLUCA31と称するマウス抗ヒトトランスフェリンレセプター抗体を精製するために、上澄みの容量を測定し、等しい容量の結合緩衝液を上澄みに添加した。混合物を室温で平衡化させた。上澄みを0.22μmフィルターを通して清澄化した。AKTA Explorer system(Amersham Biosciences)を用いて上澄みをタンパク質Gセファロースカラムにロードし、次に結合緩衝液5〜10カラム容量を用いて洗浄した。モノクローナル抗体を溶出緩衝液で溶離させ、画分を採取した。試験管を空にするため(画分の1/60の容量)3M Tris,pH9.0を添加しながら溶離したところ画分は中和された。モノクローナル抗体を含有するピーク画分をプールした。プールした試料を予め湿潤させたスライデアライザーカセット(10,000MWカットオフ;Pierce #66810)に注入し、4℃で1xPBS中透析した(交換当たり透析最小4時間の3緩衝液交換)。精製されたモノクローナル抗体を濾過滅菌(0.2μmAcrodisc)し、2〜8℃で保存した。
【0166】
精製された抗体の試料はUV吸光度(A280)およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)による濃度の測定のために採取する。SDS−PAGEは分子量の分析、モノクローナル抗体の典型的なバンドパターンの同定、および、純度の評価のために非還元および還元条件下の両方において泳動する。
【0167】
ハイブリドーマ上澄みからのLUCA31モノクローナル抗体の精製の後、これはヒト胎児腎細胞への結合に関して再度試験した。細胞試料を上記した通り生成し、種々の濃度において精製された抗体と共にインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、0.1ml希釈液中に再懸濁し、そして4℃で30分間ヤギ抗マウスIgGのFITCコンジュゲートF(ab’)2フラグメント1μgと共にインキュベートした。細胞を洗浄し0.5mlのFACS希釈液中に再懸濁し、FACScanセルソーター(Beckton Dickinson,San Jose,CA)を用いて分析した。FACScanヒストグラムの右側へのシフトは精製された抗体がなおヒト胎児腎細胞に結合していることを示していた。
【0168】
他の実験において、トランスフェリンレセプターへのLUCA31抗体の結合は生細胞ELISAを用いて試験した。当該分野で一般的に知られている他の方法も適用可能であるが以下の方法を用いた。細胞(HT−29、SKOV3、SKMES−1、SW480、SKBR−3およびHPAFII)を組織培養処理96穴プレート(Falcon)上でコンフルエントとなるまで10%ウシ胎児血清(FBS)含有培地中で増殖させた。細胞をPBSで洗浄し、次に室温で1時間1%BSAおよび0.1%アジ化ナトリウムを含有するHank’s Balanced Salt Solution(HBSS)中で所望の濃度の所望の抗体50μlと共にインキュベートした。次に細胞をHBSSウェル当たり100μlで3回洗浄した後に、室温で30分間セイヨウワサビパーオキシダーゼ(HRP)二次抗体(HBSS中希釈してウェル当たり50μl)と共にインキュベートした。細胞は最終的にHBSSで3回洗浄し、変色基質(TMB基質、KPL)をウェル当たり100μlで各ウェルに添加した。変色反応は1Mリン酸をウェル当たり100μl添加することにより停止した。次にプレートをOD450nmで読み取った。
【0169】
(実施例4.LUCA31の配列決定)
材料および方法のセクションで列挙した変性オリゴを用いたRT−PCRによれば、重鎖に対してMVHfwd9と共にMVHrev1およびrev2を用いて個別のバンドが得られた。軽鎖に対しては、MVHfwd2およびfwd5にMVLrevを組み合わせて生成物を得た。使用したPCRプログラムはTopoクローニングにおいて使用するための72℃における10分間インキュベートとした。PCR産物は製造元のプロトコルに従ってpCR2.1 Topo TAクローニングベクターにライゲーションした。各ライゲーションの20コロニーをミニプレップで釣菌し、正しいサイズのインサートを有するものをM13およびM13revを用いた配列決定のためのマイクロ化学法に付した。
【0170】
コンセンサス配列はBLAST検索において使用される各PCR産物に対して誘導し、代表的なミニプレップを選択してクローニングを進めた。
【0171】
LUCA31軽鎖:
MVLrevおよびMVLfwd2を用いて生成したLUCA31のLCは不完全なV領域を有していた。MVLfwd5を用いて生成したLCは完全であった。クローン5.19をクローニングの次の工程における鋳型として使用するために選択した。PCRプライマーはVL領域の5’末端にHindIII部位および至適Kozakおよび3’末端にBbsI部位を取り込むように設計した。
【0172】
【化1】
PCRはLCクローン5.19に対して実施し、得られたバンドをゲル抽出し、HindIIおよびBbsIで消化し、次に8.5kbのpDEF2B/Kappaベクターフラグメントにライゲーションし、同じ酵素で消化し、pDEF2B/Luca31.L.C.を得た。ミニプレップをプライマー96−91およびCM−KRを用いて配列決定し、正しいクローンを選択してマキシプレップ培養物に播種した。
【0173】
軽鎖発現ベクターはpDEF2B/Luca31.LC由来の1776bpのNotI−XbaI LCフラグメントを11.7kbのpNEF32または19.4kbのpNEF5のNotI−XbaIベクターフラグメントにライゲーションしてpNEF32/Luca31.LCおよびpNEF5/Luca31.LCを生成することにより生成した。
【0174】
LUCA31重鎖:
MVHrev1およびrev2は相互に僅かにずれが合ったことから、LUCA31.HC PCR産物はその3’末端においてのみ異なっていた。コンセンサス配列を生成し、2つの希少なコドンを含有させるがこれ等の部位においてDNA配列は明確である。クローン9R1.1をクローニングの次の工程における鋳型として使用するために選択した。PCRプライマーはVH領域の5’末端にHindIII部位および至適Kozakおよび3’末端にNheI部位を取り込むように設計した。
【0175】
【化2】
PCRはHCクローン9R1.1に対して実施し、得られたバンドをゲル抽出し、HindIIIおよびNheIで消化し、次に9.3kbのpICFSP.IgG1.NHまたはpICFSP.IgG4.NHのHindIII−NheIベクターフラグメントにライゲーションし、pICFSP.Luca31.G1またはG4.HCをそれぞれ生成した。
【0176】
重鎖発現ベクターはpICFSP.Luca31.G1またはG4.HC由来の3.2 NotI−XbaI HCフラグメントを12kbのpDEF32または19.7kbのpDEF14のNotI−XbaIベクターフラグメントにライゲーションしてpDEF32/Luca31.G1.HC、pDEF14/Luca31.G1.HC、pDEF32/Luca31.G4.HCおよびpDEF14/Luca31.G4.HCを生成することにより生成した。
【0177】
オールインワンの発現ベクター:
pDEF14オールインワン発現ベクターは19.7kbのpDEF14 NotI−XbaIベクターフラグメントを3.4kbのBglII−XbaI pDEF2B/Luca31.LC軽鎖フラグメントおよび6.5kb NotI−BamHI pICFSP/Luca31.G1にライゲーションしてpDEF14/Luca31.1を生成することにより生成した。
【0178】
以下の配列を決定した:
コンティグ「コンセンサスアライメントTopo LC5」の総括図
【0179】
【化3】
コンティグ「Luca31 VHコンセンサス」の総括図
【0180】
【化4】
(実施例5.癌細胞系統SW480におけるトランスフェリンレセプター発現のウェスタンブロット分析)
腎細胞癌の細胞SW480(ATCC#CCL−228)を175cm2の培養皿上でコンフルエントとなるまで増殖させた。コンフルエントの単層をHank’s Balanced Salt Solution(重炭酸ナトリウムまたはフェノールレッド非含有のHBSS+、10mM HEPESで緩衝、pH7.4;Sigma Chemicals)で3回洗浄し、室温で30分間スルホ−NHS−LC−ビオチン(Pierce Endogen)200μgでビオチニル化した。次に細胞を0.1M Tris含有のHBSS+、pH7.4(Sigma Chemicals)で洗浄し、室温で15分間0.1M Tris含有HBSS+、pH7.4中でインキュベートした。最後に細胞をHBSS+で3回洗浄し、そして溶解緩衝液(2% Triton X−100、2mM PMSF、0.1%アジ化ナトリウムおよび溶解緩衝液5ml当たり1錠のEDTA非含有完全ミニプロテアーゼカクテル(Roche Molecular Biochemicals)を含有するHBSS+)中氷上で5分間インキュベートすることにより溶解した。
【0181】
細胞を溶解緩衝液中で掻き取り、溶解物を収集した。溶解物は4℃で1時間14000xgで遠心分離した。清澄化した溶解物を次にヒトIgGコンジュゲート(1mg/ml)CNBr 4MBセファロースビーズ(Amersham Pharmacia)5μlと共に4℃で2時間予備清浄化した。ヒトIgGビーズを遠心分離して除去し、次に予備清浄化した溶解物を4℃で2時間CNBr 4MBセファロースビーズにコンジュゲートしたモノクローナル抗体LUCA31(1mg/mlでコンジュゲート)と共にインキュベートした。2時間のインキュベーションの後にLUCA31ビーズを遠心分離して除去した。ヒトIgGおよびLUCA31ビーズの両方を個々に3回溶解緩衝液1mlで洗浄し、次に1mlのHBSS+で3回洗浄した。洗浄したビーズはSDS−PAGE試料緩衝液30μlを添加し5分間99℃で煮沸することにより溶出させた。
【0182】
次に試料を4〜20%Novex勾配ゲル(Invitrogen)上で分割し、0.2μmのニトロセルロースメンブレン(Invitrogen)上に移行させ、セイヨウワサビパーオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートストレプトアビジン(Pierce Endogen)で可視化するか、またはLUCA31 5μ/ブロットを用いてウェスタンブロットに付した。
【0183】
HRPコンジュゲートストレプトアビジンを検出するためには、ニトロセルロースをまずブロッキング緩衝液(0.05%Tween−20含有Tris緩衝食塩水(TBST)中5%無脂肪乾燥乳)で1時間ブロッキングした。HRPコンジュゲートストレプトアビジンを1μg/mlでTBST中に希釈し、室温で30分間ニトロセルロースに曝露した。ニトロセルロースを3回TBSTで洗浄した後、ECL+(Amersham)で可視化した。
【0184】
LUCA31を用いたウェスタンブロットのために、ニトロセルロースをブロッキング緩衝液中で1時間同様にブロッキングした。次にニトロセルロースをブロッキング緩衝液中希釈した5μg/mlのLUCA31を1mlを含有するヒートシールしたプラスチック袋中でインキュベートした。ニトロセルロースをTBSTで3回洗浄した後、室温で1時間、1μg/mlのHRPコンジュゲートロバ抗マウスIgG(重鎖および軽鎖特異的、ウシ、ニワトリ、ヤギ、モルモット、シリアンハムスター、ウマ、ヒト、ウサギ、ヒツジの血清タンパク質に対して交差吸着;Jackson Immunoresearch Cat.#709−035−149)10mlと共にインキュベートした。最後にニトロセルロースを3回TBSTで洗浄し、ECL+(Amersham)で可視化した。
【0185】
図1はLUCA31を用いたSW480細胞溶解物の免疫沈降とその後のLUCA31抗体を用いたウェスタンブロットを示している。矢印は90〜100kDaの概ねの分子量を有する独特のバンドを指している。
【0186】
(実施例6.免疫組織化学的方法)
癌患者より得た凍結組織試料をOCT化合物に包埋し、ドライアイスを用いてイソペンタン中急速凍結した。低温切片はLeica 3050 CMミクロトームを用いて厚み8〜10μmとなるように切り出し、SuperFrost Plusスライド(VWR#48311−703)上に解凍搭載した。切片は75%アセトン/25%エタノールを用いて10℃で固定し、室温で2〜4時間風乾した。固定したセクションは使用時まで−80℃で保存した。
【0187】
免疫組織学的分析のためには、組織の切片を回収し、Trisで緩衝させた0.05%Tween(TB−T)中で洗浄し、室温で30分間ブロッキング緩衝液(TB−T、5%正常ヤギ血清および100μg/mlアビジン)中ブロッキングした。次にスライドを室温で60〜90分間ブロッキング緩衝液中希釈(1μg/ml)した抗トランスフェリンレセプターおよびコントロールモノクローナル抗体と共にインキュベートした。次に切片を3回ブロッキング緩衝液で洗浄した。結合したモノクローナル抗体は0.1M酢酸ナトリウム緩衝液pH5.05および0.003%過酸化水素(Sigma cat.No.H1009)中ヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)F(ab’)2−パーオキシダーゼコンジュゲートおよびパーオキシダーゼ基質のジアミノベンジジン(1mg/ml、Sigma cat.No.D5637)を用いて検出した。染色したスライドはヘマトキシリンで逆染色してNikon顕微鏡下に観察した。
【0188】
一部の場合においては、適切な抗原回収法を使用した後に、パラフィン包埋ホルムアルデヒド固定組織を免疫組織化学的分析に用いた。このような抗原回収法の1つはMangham and Isaacson,Histopathology 35:129−33(1999)に記載されている。抗原回収および/または検出の別の方法も当業者の知る通り使用してよい。凍結組織、または回収およびポリMICA検出と共に適宜固定組織を用いて抗原回収およびポリMICA検出と共に実施した同様の実験の結果を実施した。種々の正常および癌の組織への抗トランスフェリンレセプター抗体の結合を試験した。全ての場合においてコントロールの固定組織における抗体の結合は凍結組織のものと相関していた。凍結組織の結果は2者がコントロールにおいて合致しない場合にのみ使用した。
【0189】
簡便のために、異なる原料から得た凍結外科的組織を用いた数種の実験の複合的結果をまとめて表1および表2に示す。
【0190】
【表2】
【0191】
【表1】
(実施例7.免疫組織化学的結果)
モノクローナル抗体LUCA31を使用して組織の種々の型に由来する種々の細胞系統に対する反応性を試験した。結果は弱い陽性染色に対しては「+」、中等度の陽性染色に対しては「++」、強度の陽性染色に対しては「+++」そして陰性染色に対しては「−」と評点した。
【0192】
免疫組織化学的結果はWO 01/43869に記載の通りCellArrayTM技術を用いて得た。種々の樹立細胞系統由来の細胞をプロテアーゼを用いることなく増殖表面より採取し、充填し、OCT化合物中に包埋した。細胞を凍結して切片化し、次に標準的なIHCプロトコルを用いて染色した。
【0193】
種々の樹立ヒト正常および腫瘍細胞系統へのLUCA31抗体の結合を表3に簡便のために集約した。表3に示した実験は本明細書に記載した方法を用いたLive−cell ELISAおよびCallArrayTM結合実験を包含する。
【0194】
【表3】
モノクローナル抗体LUCA31を使用してグリオーマ誘導細胞系統に対する反応性を試験した。免疫組織化学的結果はCellArrayTM技術に関する上記のプロトコルと同様にして得た。グリオーマ誘導細胞系統をプロテアーゼを用いることなく増殖表面より採取し、充填し、OCT化合物中に包埋した。細胞を凍結して切片化し、次に標準的なIHCプロトコルを用いて染色した。LUCA31はスクリーニングした25のグリオーマ誘導細胞系統中21で陽性であった。染色の強度は+/−〜2+染色の範囲であった。
【0195】
(実施例8.別のLUCA細胞系統のスクリーニング)
腫瘍細胞系統分布の分析。LUCA31エピトープ発現を結腸直腸癌、非小細胞胚癌および膵臓癌を代表する32のヒト腫瘍細胞系統のパネルを用いて評価した。標的細胞へのLUCA31の結合は内標準の抗体(抗EGFレセプター)に相対比較しながら測定し、データは平均蛍光強度の関数としてプロットした。LUCA31染色の分布は図2に示す通りである。エピトープ発現実験の結果によれば、LUCA31は細胞パネルにわたって広範な染色強度を示していた。
【0196】
(実施例9.細胞増殖試験)
LUCA31抗体の生物学的活性を調べるために、本発明者等はトリチウム化チミジン取り込みを測定する本明細書に記載した細胞増殖試験においてこれを試験した。試験はFACSアレイにおいて呈示された32細胞系統と同様のもの、および、本抗体により認識されることを本発明者等が以前に示している別の5細胞系統に対して実施した。本発明者等は標準(10%)および低値(0.5%)の血清条件の両方を使用しながら活性について抗体を試験した。両方の血清条件を用いて活性を試験するという決定は低減された血清の条件を用いた場合に活性となるのみであるマウスEGFレセプター抗体225(セツキシマブのネズミ前駆体)を用いた実験に基づいたものであった。
【0197】
各抗体は抗体の5段階濃度(10、5、2.5、1.25および0.6ug/ml)を用いて試験し、そして結果を非抗体コントロールと比較した。各試験は3連で実施した。細胞の一次スクリーンの結果は表4に総括する通りであり、そしてLUCA31がこの細胞系統パネルにおいて広範に活性であることを示していた。斜線の細胞は陽性の評点を示し、数は細胞増殖の最大抑制を示している(すなわち90=90%増殖抑制)。
【0198】
40%以上の細胞増殖の抑制を陽性と評点した。この閾値は、共に本試験において細胞増殖の40〜50%低下を誘導したトラスツズマブおよびEGFレセプター抗体225を用いた実験と合致して、抗体が内因性の生物学的活性を示したことを表している。LUCA31抗体は特にこの試験において活性であり、低血清条件下で細胞増殖を大きく低減した。本抗体の活性に対する血清濃度の影響はASPC−1またはA431細胞を用いた場合にEGFR抗体225に関して観察されたものと同様である。
【0199】
【表4】
(実施例10.さらなるIHC分析)
LUCA31は正常(脳、結腸、心臓、肝臓、腎臓、肺、膵臓、小腸、脾臓)および腫瘍(乳房、結腸、肺、膵臓)の組織のパネルを用いて材料および方法で記載した通り評価した。染色はまず染色陽性としてRavenにより発見された組織を用いて至適化した。至適化の後、組織の免疫反応性をパーオキシダーゼコンジュゲート二次抗体を用いて評価し、強度を評点した。0.1ug/mlでLUCA31を用いた場合に得られたIHCデータの総括を表5に示す。LUCA31については正常組織における最強の染色は結腸および小腸において観察され、他の組織では限定的な染色が観察された。
【0200】
【表5】
(実施例11.トランスフェリンレセプター抗原の単離および特徴付け)
LUCA31が反応性となる抗原を発見するために、免疫沈降(Ippt)実験を実施した。Ipptのためには、SW480細胞の175cm2フラスコ30本を溶解緩衝液30mlで溶解した。溶解緩衝液の組成は2% Triton X−100、プロテアーゼ阻害剤カクテル(溶解緩衝液5ml当たり1錠のRoche Molecular Biochemicals製の完全ミニEDTA非含有プロテアーゼカクテル)、0.1%アジ化ナトリウムおよび2mM PMSFを添加したHank’s Balanced Salt Solution(HBSS+)とした。細胞溶解物は4℃で30分間24000xgで清澄化した後に、1mlのタンパク質G(Amersham Pharmacia)からなるカラムを通過させた。予備清浄化したSW480溶解物を次に、4℃で2時間、タンパク質G吸収トランスフェリンレセプター(5μlのタンパク質Gと共に室温で30分間トランスフェリンレセプター10μgを予備インキュベートした)と共にインキュベートした。ビーズ(予備清浄化タンパク質Gビーズおよびタンパク質G吸収トランスフェリンレセプタービーズの両方)を次に3回溶解緩衝液で洗浄し、その後、30μlのSDS試料緩衝液(3%SDS、20%グリセロール、10mM DTT、2%ブロモフェノールブルー、0.1M Tris,pH8.0)で溶離した。25マイクロリットルの溶離液を次にSDS−PAGEで分割し、クーマシー染色により可視化した。5マイクロリットルの溶離液をSDS−PAGEで分割し、さらにウェスタンブロット用のニトロセルロースに転移させた。
【0201】
次にブロットをLUCA31でプローブし、そしてウェスタンブロットキット(Invitrogen Cat.No.WB7103)を用いて発色させ、抗原の認識を確認した。トランスフェリンレセプターおよびトランスフェリンレセプターに対するマウスIgG溶離液をウェスタンブロットに付したところ、トランスフェリンレセプター溶離液に独特のタンパク質(90〜100kDa)が観察された。クーマシー染色によれば、〜100kDにおいてトランスフェリンレセプターに独特のタンパク質であることが観察された。NuPAGEゲルの染色タンパク質バンドを清浄なメスで切り出し、清浄なエッペンドルフ試験管に入れた。切り出したバンドは質量スペクトルによるタンパク質の確認のための使用時まで−20℃で保存する。
【0202】
(実施例12.質量スペクトル(MS/MS)を用いたLUCA31が結合する抗原の特徴付け)
LUCA31が結合する抗原は実施例11に記載する通り単離し、Kane et al.J Bio Chem.2002 June 21;277(25):22115−8,Epub May 06の方法に従ってTandem質量スペクトルに付した。タンパク質をSDS−PAGEで分離し、ゲルをコロイド状クーマシーブルー試薬(Invitrogen)で染色した。目的のタンパク質はトリプシンでゲル中消化した。トリプシン処理ペプチドはWu et al.,Nature 405:477−482(2000)に記載の通りイオントラップ質量スペクトル分析器(Thermo−Finnigan LCDQ DECA XP)上でマイクロキャピラリー液体クロマトグラフィーMS/MSにより配列決定した。この結果、トランスフェリンレセプターのフラグメントと合致する質量を有する1つのポリペプチドが得られた。
【0203】
LUCA31がトランスフェリンレセプターに結合することを確認するために、本発明者等はヒト胎盤から誘導した精製されたトランスフェリンレセプターの調製物を用いて実験を行った。図3に示す通り、別の抗トランスフェリンレセプター抗体、LUCA29および市販のトランスフェリンレセプター抗体BER−T9は共に、精製されたトランスフェリンレセプターに結合するが、LUCA31は結合しない。トランスフェリンレセプターの異なる調製物を用いてこの実験を反復した場合にも同様の結果が得られた(データ示さず)。
【0204】
本発明者等はこれ等のデータは、LUCA31がトランスフェリンレセプターと相互作用するタンパク質に結合するか、または、精製された物質の試料中に十分呈示されないエピトープに結合するかのいずれかを示しているものと解釈した。LUCA31標的の本発明者等の理解を精査するために、本発明者等は以下の実験を実施した。
a.抗体競合分析。本発明者等はHCT15細胞への結合に関してLUCA31と競合する既知トランスフェリンレセプター抗体能力を評価した。この実験の結果を図4、AおよびBに示す。本発明者等はHCT15細胞に結合するビオチニル化LUCA31の能力は抗体42/6により完全に抑制され、そして、OVCA26、LUCA29およびKID21により部分的に抑制されたことを発見した。OVCA18抗体は細胞へのLUCA31の結合を増大させ、そして他のトランスフェリンレセプター抗体はLUCA31の結合に影響するようには観察されなかった。図4Bはネガティブの抗体1B7.11はLUCA31の結合に対する作用を有さず、そして、非ビオチニル化LUCA31はビオチニル化抗体の結合を完全にブロックすることを示している。これ等の観察結果に基づいて本発明者等はLUCA31はOVCA18抗体により安定化または誘導されるエピトープを認識し、そして、このエピトープはトランスフェリンの結合部位に機能的に連結されることを提案する。この観察結果を特に興味深いものとしていることは、OVCA18は細胞増殖も促進し(データ示さず)、そしてトランスフェリンの細胞への結合も促進する(以下の図6参照)という点である。総括すれば、これ等のデータは、LUCA31はトランスフェリンレセプターに結合しているという考えと合致しているが、トランスフェリンレセプター抗体のサブセットと結合部位を共有している関連因子に抗体が結合していたかもしれないという可能性を排除するものではない。
b.CHO細胞におけるトランスフェリンレセプターの発現。LUCA31のエピトープをさらに明確化するために、本発明者等は材料および方法において記載した通り完全長ヒトトランスフェリンレセプターをクローニングし、CHO細胞において発現させた。図5に示す通り、CHO細胞のLUCA31染色のFACS分析は二次抗体単独で観察された染色の水準と同等であった。これとは対照的に、トランスフェリンレセプターコンストラクトでトランスフェクトしたCHO細胞は二次抗体試薬と相対比較してLUCA31による実質的染色を示した。これ等のデータは抗体競合試験の結果と合わせると、LUCA31がトランスフェリンレセプターに直接結合することを示している。
c.推定作用機序。本発明者等の現時点でのデータはLUCA31はトランスフェリンレセプターに直接結合するが、トランスフェリンレセプターに特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)により共通して認識されないエピトープと相互作用するかもしれないという考えと合致している。トランスフェリンレセプター抗体は以前よりトランスフェリンレセプターのエンドサイトーシスの混乱を介して鉄の輸送を制限することにより、または、レセプターへのトランスフェリンの結合をブロックすることにより細胞の増殖をブロックすることが解っている。レセプターへの結合に関してLUCA31とトランスフェリンが競合するかどうかを調べるために、本発明者等はLUCA31とトランスフェリンの相互作用を細胞結合試験において調べた。トランスフェリンの漸増濃度は細胞へのLUCA31の結合に明確に影響しなかったが、基準物質のトランスフェリンレセプター抗体42/6の結合は低減した(図6A)。興味深いことに、LUCA31の添加により細胞へのトランスフェリンの結合は増大したが、基準物質の抗体42/6はトランスフェリンの結合を抑制した(図6B)。これ等の結果は、42/6とは異なり、LUCA31はトランスフェリンの結合と重複しない部位に結合することを示している。これは42/6が細胞へのLUCA31の結合を抑制するという観察結果を考慮すると興味深いことである。本発明者等はさらに、細胞へのLUCA31の結合に対するその作用を鑑みて、これ等の試験におけるOVCA18抗体の作用を検討した。LUCA31と同様、OVCA18抗体もまた細胞へのトランスフェリンの結合を増大させたが、その程度はより低値であった。
【0205】
(実施例13.別の組織結合試験)
標的発現および分布。本発明者等のデータはLUCA31がトランスフェリンレセプター上に存在するエピトープに結合するという考えと合致していたため、本発明者等はトランスフェリンレセプターと比較しながらLUCA31エピトープの組織分布および発現を評価することが重要であると考えた。以前の試験によればLUCA31は肝臓、膵臓または脳の切片は染色せず、そしてこれらの組織は通常はトランスフェリンレセプターmAbにより認識されることが示されている。これから派生して、本発明者等はこれらの組織の各々の3試料を使用しながら、そして比較コントロール組織としての結腸も含めて、3種の既知のトランスフェリンレセプター抗体(H68.4、BERT9およびDF1513)およびLUCA31の染色パターンを分析した。この実験の総括を表6に示す。
【0206】
【表6】
本実験の結果は前回の試験と合致しており、LUCA31がプロトタイプのトランスフェリンレセプター抗体と同じ組織染色パターンをもたらさないことを示している。これらの結果は他のトランスフェラーゼレセプター抗体により認識されるエピトープとは異なるパターンにおいて分布するエピトープをLUCA31抗体が認識し、そして他のトランスフェリンレセプター抗体よりも望ましい治療指数をもたらすということを裏付けている。しかしながら10ug/mlで染色された膵臓および脳はLUCA31エピトープがこれらの組織に存在するが結腸および一部の腫瘍試料ほどは豊富ではないことを示唆している。
【0207】
本発明者等はまた癌におけるエピトープの発現の発生率をより明確化するためにLUCA31を用いて別の腫瘍組織の染色を調べた。以前において、この抗体はヒト結腸癌、ヒト膵臓癌およびヒト肺癌上において陽性であることが示されている。本試験においては本発明者等は本抗体の陽性反応性の発生率を明確化するために別の肺、膵臓および結腸の癌試料を評価した。LUCA31は4結腸癌患者中4人;2膵臓癌患者中2人:および2肺癌患者中2人において陽性であった(表7)。全腫瘍は1ug/mlおよび10ug/mlの両方において陽性であった。結腸および肺癌は1ug/mlにおいて強い強度の染色を示したのに対し、膵臓癌は抗体1ug/mlにおいて弱い強度の染色および10ug/mlにおいて中等度の強度の染色を示した。これらの結果はLUCA31エピトープが腫瘍組織において発現されることを示す別のデータと合致している。
【0208】
【表7】
(実施例14.RBC、血小板および白血球のFACS分析)
赤血球、血小板および白血球のLUCA31染色の分析を実施することにより血液コンパートメント中の抗原発現を評価した。これらの細胞集団の何れにおいても染色は観察されなかった。これもまた単球およびリンパ球集団におけるトランスフェリンレセプター発現に関する公開された報告とは矛盾している。しかしながら、トランスフェリンレセプター発現は非増殖リンパ球と相対比較して刺激されたリンパ球において誘導されるため(Neckers & Cossman,Transferrin receptor induction in mitogen−stimulated human T lymphocytes is required for DNA synthesis and cell division and is regulated by interleukin 2(有糸分裂誘発物質刺激ヒトTリンパ球におけるトランスフェリンレセプター誘導はDNA合成および細胞分裂に必要であり、そしてインターロイキン2により調節される)、Proc Natl Acad Sci USA 80,3494−3498(1983))、本発明者等はLUCA31を用いながらPHAにより刺激されたTリンパ球の染色を調べることにより本発明者等の分析をさらに進めた(表8)。比較コントロールとして、本発明者等はトランスフェリンレセプター抗体LUCA29およびBERT9並びにリンパ球染色に関する標準物質としてアルファ2およびベータ1インテグリン抗体を使用した。組織試料の本発明者等の分析とは異なり、本試験においてはLUCA31と他のトランスフェリンmAbとの間の差は観察されなかった。
【0209】
【表8】
注記:
−特段の記載が無い限り、全集団は記載された染色水準を有していた。
−「sub」という略記はある特定のサブ集団が活性を示し、残余が陰性であったことを示す。
−「B」細胞は本表ではCD3陰性リンパ球を表す。
−「T」細胞は本表ではCD3陽性リンパ球を表す。
【0210】
トランスフェリンレセプターは分化中の骨髄先祖細胞上に発現されることがわかっている(Helm et al.,Characterization and phenotypic analysis of differentiating CD34+ human bone marrow cells in liquid culture(液体培養における分化中のCD34+ヒト骨髄細胞の特徴付けおよび表現型の分析)、Eur J Haematol 59,318−326(1997))ため、本発明者等はLUCA31エピトープが骨髄誘導細胞においても発現されるかどうか調べるために実験を行った。これを行うために本発明者等はCD34リッチ化骨髄細胞を入手し、それをLUCA31および異なる特異性を有する別の抗体KID20を用いてFACSにより評価した。
【0211】
この実験で得られたデータは表9に示す通りであり、これはヒト骨髄先祖細胞の他の抗体による染色を示している。未刺激および成長因子刺激細胞の両方の抗体染色はFACSにより測定し、結果は抗体染色細胞のパーセントとして表示した。未投与細胞においてはLUCA31染色はトランスフェリンレセプター抗体BERT9を用いて得られた結果と極めてよく似ていた。細胞を成長因子、例えばGM−CSF、SCF、IL−3およびEPOの存在下に72時間培養した場合、LUCA31およびBERT9染色細胞の比率は上昇した。これらの結果は増殖中のリンパ球を用いながら本発明者等が観察したものと同様であり、LUCA31エピトープが成長因子刺激骨髄先祖細胞集団においても発現されることを示している。
【0212】
【表9】
先祖細胞刺激条件、
5ng/ml rGM−CSF、
50ng/ml rSCF、
5ng/ml rIL−3、
5単位/ml EPO。
【0213】
(実施例15.活性試験)
本分子の活性をさらに十分特徴付けするため、本発明者等は異種移植片腫瘍モデル(ヒト異種移植片細胞パネル)において有効化されている細胞のパネルを試験し、そして、抗体が単独で、そして化学療法剤と組み合わせて高度に活性であることを明らかにした。本発明者等はLUCA31がトランスフェリンレセプターと相互作用することを示しているため、本発明者等は十分試験されたIgAトランスフェリンレセプター抗体42/6(Trowbridge & Lopez,1982)と相対比較した場合のその活性を基準とした。表10に示す通り、LUCA31は本発明者等が優先した異種移植片パネルにおける細胞系統全てにおいて活性であり、抗トランスフェリンレセプター抗体42/6と良好な同等性を示していた。
【0214】
【表10】
LUCA31抗体はまた、化学療法剤カンプトテシン、カルボプラチン、ドキソルビシン、ゲンシタビンおよびパクリタキセルと組み合わせて異種移植片細胞パネルにおいて試験した。各因子につき、LUCA31の添加は付加的効果をもたらし、抗体が腫瘍溶解剤の作用に拮抗しない可能性があることを示している。HCT116細胞における化学療法剤とのLUCA31の組み合わせに関する代表的データを図7に示す。LUCA31化学療法剤組み合わせ試験の結果はHer2ターゲティング抗体トラスツズマブと対にした化学療法を本発明者等が検討した場合に得られた結果に匹敵するものであった。
【0215】
LUCA31の活性は低血清条件において最大となり、ウシ胎児血清(FBS)中で使用される成分が細胞増殖をブロックする本抗体の能力を減衰することを示唆している。42/6抗体が固形腫瘍細胞系統の増殖をブロックする能力はまた低血清条件において最大となることがわかっており、そしてこれは抗体とトランスフェリンとの間の競合によるものである(Taetle,R.,and Honeysett,J.M.(1987))、Effects of monoclonal anti−transferrin receptor antibodies on in vitro growth of human solid tumor cells(ヒト固形腫瘍細胞のインビトロの増殖に対するモノクローナル抗トランスフェリンレセプター抗体の作用)Cancer Res 47,2040−2044)。LUCA31はトランスフェリンレセプターの結合に関してはトランスフェリンと競合するとは考えられないが、本発明者等は10%FBS中のLUCA31の低下した活性が細胞培養用培地中の増大したトランスフェリンの結果であるかどうかを調べるために実験を行った。
【0216】
この問題を対象とするために、本発明者等は低血清培地中に鉄負荷トランスフェリンを添加し、そして、異種移植片腫瘍細胞系統パネルを用いながらLUCA31と42/6の両方の活性を調べた。本発明者等は細胞培養用培地にホロトランスフェリンを添加した場合にLUCA31と42/6の両方の活性が低下することを発見した。図8はLUCA31に対して最も感受性の高い3細胞系統、すなわち0および100ug/mlトランスフェリンにおけるHCT15、HCT116およびLOVOに関するデータを示す。HCT15細胞においては、LUCA31は添加トランスフェリンの存在下において良好な活性を保持していた。
【0217】
これは10%血清中においてもこの抗体が活性を維持する能力と合致している。総括すれば、これらのデータは細胞増殖をブロックするLUCA31の能力はトランスフェリンにより減衰することができることを示唆しており、そして、10%血清含有細胞培養条件におけるこの抗体の限定された活性が増大したトランスフェリン濃度に起因するものであるという考えを裏付けている。高血清における抗体42/6の低減された活性の兆候にも関わらず、上記および他のトランスフェリンレセプター抗体は動物の癌モデルにおいて活性であることがわかっており、インビボで機能する分子の能力は血清中トランスフェリンの量により相殺されないことを示唆している。
【0218】
(実施例16.細胞周期の分析)
LUCA31の作用機序をさらに明確化するために、本発明者等は細胞周期を経るHCT15細胞の過程に対しどのように抗体が影響するのかを調べた。図9に示す通り、24時間LUCA31をHCT15細胞に投与したところ、2N含有(G1)細胞の比率が低下し、S期停止と合致するDNA含量を有する細胞の集団が増大した。さらに又LUCA31を投与したHCT15細胞は細胞死と合致するDNA含量<2Nの細胞集団の増大を示した。この作用は投与コントロール抗体や未投与の細胞では観察されなかった。これ等のデータはLUCA31がHCT15細胞のサブ集団において細胞増殖停止ではなく細胞死を誘導し、そして、LUCA31曝露に対してこれらの細胞が最も感受性である根拠を与えることを示唆している。
【0219】
(実施例17.腫瘍細胞系統に対するLUCA31の作用)
別の腫瘍型における本分子の潜在的活性を調べるために、前立腺(DU145、LNCap)および乳房(MCF7、MDA−MB−231、MDA−MB−435、ADR−Res)から誘導した固形腫瘍細胞系統においてLUCA31を試験した(図10)。LUCA31エピトープの発現は細胞系統の各々において同様であったが、LUCA31はMCF7細胞において最も活性であるように観察された。これらの結果は結腸、肺および膵臓の癌を用いて得られたデータに匹敵するものであった。
【0220】
固形腫瘍細胞系統のほかに、本発明者等はリンパ腫、白血病および多発性骨髄腫から誘導した細胞を用いてLUCA31の活性を調べた。本発明者等がこれを重要であると考えた理由は、基準となるトランスフェリンレセプター抗体(42−6)を使用して報告されている試験の大部分が血液学的癌細胞系統を用いて実施されていることであった(例えばSavage,1987;Trowbridge & Lopez,Monoclonal antibody to transferrin receptor blocks transferrin binding and inhibits human tumor cell growth in vitro(トランスフェリンレセプターに対するモノクローナル抗体はトランスフェリンの結合をブロックし、インビトロのヒト腫瘍細胞増殖を抑制する),Proc Natl Acad Sci USA 79,1175−1179(1982);White,1990参照)。図11に示すこれらの実験の結果はLUCA31エピトープがCCRF−CEM細胞系統において最も高度に発現されたが、試験した他の細胞系統においても検出されたことを示している(図11A)。LUCA31はこれらの細胞系統の各々において活性であり、一部の場合はコントロール値の10%まで細胞増殖を低減した(図11B)。この活性は基準抗体42−6よりも優れており(データ示さず)、そして低血清において最大であった。
【0221】
(実施例18.癌細胞系統786−O、SKMES−1、MDA−MB−175VIIおよびColo205に対するLUCA31の作用)
単層として増殖させた場合のインビトロの細胞数を低減させる抗体の能力は被験またはコントロールの精製抗体の種々の量の存在下または非存在下において増殖させた細胞単層を用いて評価することができ、そして細胞数の変化はMTTを用いて評価できる。MTTはミトコンドリア酵素の活性を測定する染料であり、そして相対的生細胞数と相関している。96穴プレートに10%ウシ胎児血清を添加したF12/DMEM(1:1)増殖培地中に目的の細胞をプレーティングして増殖させた。以下の細胞系統を96穴のディッシュの3連のウェル中に以下の密度、すなわち786−O、Colo205、MDA−MB−175VIIおよびSKMES−1をそれぞれ1800、1500、2500および1500個/ウェルでプレーティングした。プレーティング直後にLUCA31を添加した。細胞は5日間5%CO2/空気において湿潤インキュベーター中で37℃でインキュベートした。試験終了時にMTTをPBSに溶解(5mg/ml)し、1:10希釈度でウェルに直接添加した。プレートは4時間インキュベーターに戻した。インキュベーションの後、培地を除去し、100μlのDMSOを添加してMTT沈殿物を溶解した。プレートはOD540nmで読み取った。
【0222】
20μg/mlにおいてLUCA31は腎細胞腺癌786−Oを54%(3実験の平均)、結腸直腸腺癌Colo205を37%(4実験の平均)、乳管癌MDA−MB−175VIIを35%(2実験の平均)および肺扁平上皮癌SKMES−1を45%(3実験の平均)増殖抑制した。
【0223】
LUCA31の作用の代表的なグラフによる結果は図12に示す通りである。図12Aは786−O細胞に対するLUCA31の作用の代表的なグラフによる結果である。図12BはColo205細胞に対するLUCA31の作用の代表的なグラフによる結果である。図12CはSKMES−1細胞に対するLUCA31の作用の代表的なグラフによる結果である。
【0224】
(実施例19.LUCA31および毒素コンジュゲート抗マウスIgGの内在化)
Ma−ZAP(Advanced Targeting Systems,San Diego,CA)はタンパク質合成を抑制する毒素であるサポリンにコンジュゲートした抗マウスIgGである。この毒素は細胞膜を通過できない。内在化できる細胞表面抗原にモノクローナル抗体を結合すれば、毒素コンジュゲートは結合モノクローナルに結合することができ、これにより内在化して最終的には細胞を殺傷できる。毒性活性の提示のための内在化に依存して、Mab−ZAPはある表面抗原が細胞毒性作用を発現するために内在化に依存したいずれかの毒素のための適当な標的として機能するかどうかを評価するために使用できる。すなわち、Mab−ZAPはマイタンシノイドおよびカリケマイシンのようなこのような内在化依存性毒素のためのモデルとして機能する。
【0225】
腫瘍細胞によるLUCA31およびサポリンコンジュゲート抗マウスIgGの内在化およびサポリン内在化後に腫瘍細胞を殺傷する作用を試験するために、ヒト結腸腫瘍細胞Colo205を10mM EDTAを用いて保存フラスコより採取し、遠心分離した。細胞は適切な培地中50000/mlで再懸濁し、そして96穴プレートにウェル当たり100μlをプレーティングした。抗体LUCA31を10倍濃縮物として適切なウェルに即座に添加し、終濃度10ug/mlとした。室温で15分の後、Mab−ZAP(Cat.#IT−04,Advanced Targeting Systems,San Diego,CA)を10倍濃縮物として適切なウェルに添加し、終濃度0.001nM〜10nMとした。4日間増殖させた後、MTTを37℃で4時間添加した(保存溶液5mg/ml PBS;ウェル中1:10希釈)。次に培地を全ウェルから除去し、100μl/ウェルのDMSOを添加した。プレートを穏やかに振とうして青色のMTT沈殿を安定化させ、プレートをOD540nmで読み取った。
【0226】
LUCA31非存在下と比較してLUCA31存在下においてColo205細胞のMTT染色が低減した。これはColo205細胞の増殖がLUCA31およびMab−ZAPの存在下で抑制されたことを示しており、そしてこれらの結果はLUCA31および毒素コンジュゲート抗マウスIgGがColo205細胞中に内在化されたことを示すものである。
【0227】
本実施例の方法に従った内在化実験の結果は図13に示す通りである。
【0228】
(実施例20.リンパ球および骨髄細胞による活性)
LUCA31によるリンパ球および骨髄先祖細胞の染色がこれらの細胞における抗増殖活性を予測するものであるかどうかを調べるために、本発明者等はヒト末梢血液白血球およびCD34選択骨髄先祖細胞を用いたトリチウム化チミジン系細胞増殖試験を開発した。これらの細胞集団の両方につき、本発明者等はLUCA31エピトープ染色を測定するために用いたものと同じサイトカインカクテルを使用した。ヒト白血球に対するLUCA31の作用を試験するために、本発明者等はPHA/IL−2単独で、または種々の量のコントロールIgG1抗体またはLUCA31の存在下に単離PBMCを刺激した。この実験の結果によれば(図14)、LUCA31は増殖中の白血球集団においてトリチウム化チミジンの取り込みを強力に抑制し、細胞増殖の約90%抑制をもたらした。
【0229】
骨髄先祖細胞に対するLUCA31の作用を評価するために本発明者等は同様の試験を今回はEPO、IL−3、SCFおよびGM−CSFを含有するサイトカイン/成長因子カクテルで刺激したCD34選択ヒト骨髄誘導細胞を用いて実施した。この実験のために本発明者等は2段階の異なる細胞播種密度を用いてコントロールIgG1抗体1B7.11とLUCA31を比較した。この実験の結果(図15)はLUCA31がコントロールの水準の20%まで細胞増殖を低下させたことを示している。これと比較してコントロール抗体は中等度の作用を有していた。総括すれば、これ等の実験はLUCA31が両方の腫瘍細胞並びに末梢血液および骨髄コンパートメントの両方から誘導した正常細胞の増殖を強力に抑制することができることを示している。
【0230】
骨髄誘導細胞に対するLUCA31の作用は潜在的な毒性に対する感受性を考慮すれば特筆すべきものである。上記した通り、トランスフェリンレセプター抗体42−6のヒト第I相治験において骨髄抑制の一部の兆候が観察された(Brooks et al.,1995)。本発明者等のデータはLUCA31が他のトランスフェリンレセプター抗体と同様、腫瘍の増殖を抑制できるが、骨髄先祖細胞集団の増殖にも影響する場合があるという考えに合致している。しかしながら、以前より知られているトランスフェリンレセプター抗体と相対比較してLUCA31は有意に低減された毒性を有すると考えられる。
【0231】
(実施例21.インビボの生物学的特徴)
腫瘍誘導細胞系統による本発明者等のインビトロの試験の結果は本発明者等がLUCA31が異種移植片モデルに翻訳した細胞系統のパネル内で広範な活性を有している。LUCA31は結腸癌細胞系統HCT15の増殖のブロッキングにおいて特に活性であった。これ等の結果に基づいて、本発明者等は樹立されたHCT15腫瘍異種移植片モデル単独およびゲンシタビンとの組み合わせにおいてLUCA31の作用を試験することとした。この試験においてはマウス15匹の群に4週間抗体500ugを週二回投与した。ゲンシタビンはほぼMTDである120mg/kgでq3dx2の日程で投与した。投与は腫瘍容量が平均70mm3となった時点で開始した。試験の結果は図16に示す。図16Aにおいては中央値の腫瘍容量を示し、そして図16Bにおいてはエラーバーと共に平均の腫瘍容量を示す。この実験においては、LUCA31抗体は生理食塩水コントロールと相対比較して14日より長い腫瘍増殖の遅滞をもたらした。ゲンシタビンは20日の腫瘍増殖遅滞をもたらし、LUCA31とゲンシタビンの組み合わせはゲンシタビン単独と比較して18日の腫瘍増殖遅滞をもたらした。
【0232】
この実験の結果はLUCA31抗体がこの腫瘍モデルにおいて活性であり、そして、データが結腸直腸腫瘍モデルのセツキシマブと良好な同等性を有することを示している。本発明者等によるLUCA31の理解に基づけば、そして特定の機序に制約されなければ、現時点では腫瘍細胞に対する本抗体の作用はトランスフェリンレセプターとのその相互作用により媒介される内因性の活性により主に駆動されていると考えられる。LUCA31はマウスIgG1分子であり、そしてこのアイソタイプのFcドメインはFcレセプターに対して低い親和性を有しているため、腫瘍細胞のADCC媒介破壊は腫瘍増殖の遅滞に実質的に寄与していないと考えられる。
【0233】
マウスFcレセプターに対する増強した親和性を有する抗体はレセプターの交差連結を介して、並びに増強された免疫エフェクター機能を介して、腫瘍増殖の対処においてより有効であると考えられる。この概念に着目して、ヒトIgG1 Fcドメインを含有するヒトキメラLUCA31分子が生成されている。
【0234】
(実施例において参照される材料および方法)
(LUCA31 V領域のクローニングおよび発現ベクターの構築)
導入:LUCA31のRNAはマウス抗体を発現するハイブリドーマ細胞系統から抽出し、重鎖および軽鎖の可変領域をcDNAからRT−PCRにより引出した。V領域をCHEF1哺乳類発現ベクター内に挿入した。
【0235】
(材料および方法)
RNA抽出:
QIAGEN RNeasy Mini Kit(Cat No 74106)を用いて凍結ハイブリドーマ細胞ペレットからRNAを抽出した。
【0236】
cDNA:
Rocheの「RT−PCR用1stStrand cDNA合成キット(AMV)」(Cat No 1 483 188)を用いてcDNAを形成した。PCR反応のネガティブを得るために反応はRTの存在下および非存在下において実施した。
【0237】
RT−PCR:
PCRはcDNA鋳型上において、Padmaの「ShortPCR」プログラムおよびClontechのAdvantage PCRキットを用いながら実施した。
【0238】
2μl cDNA反応
5μl 10X緩衝液
2μl各プライマー
1μl dNTPミックス
1μl Advantageポリメラーゼ
dH2O全量50μl相当量。
【0239】
ネガティブ(RTcDNA非存在)は各プライマー組み合わせにつき実施した。使用した変性プライマーは単にV領域のCH1ドメインではなくシグナル配列に関する配列を含有するものとした。
【0240】
(マウス抗体V領域に関する変性プライマー)
【0241】
【化5】
(ベクターの構築)
使用した制限酵素類およびリガーゼはRoche、NEBまたはPromegaより購入した。ライゲーションはStratageneから入手した化学的にコンピテントなXL10−Gold細胞内に形質転換し、LBM/Carbアガロースプレート上にプレーティングした。コロニーはミニプレップ用の100または50μg/mlのいずれかのカルベニシリンを用いてLBM内に釣菌した。
【0242】
ミニプレップおよびマキシプレップはQIAGENのキットを用いて実施した。大型ベクター(pDEF14およびpNEF5)のマキシプレップ用には、200mlの一夜培養物を増殖させ、細胞をペレット化した。QIAGENのプロトコルに従い、2x100ml培養物を調製するように、全ての容量のP1、P2およびP3を2倍にした。第1回目の遠心分離の後、全ての上澄みを1つのカラムに適用し、DNA収量分を効率的に濃縮した。発現ベクターはコード領域を通して配列決定した後にCHO細胞にトランスフェクトし、そして制限酵素消化により分析した。
【0243】
(LUCA31染色の組織分析)
LUCA31および市販のトランスフェリンレセプター抗体は凍結組織切片を用いながら試験した。組織切片を−20℃で100%アセトン中に10分間固定し、次に洗浄緩衝液に入れ、そして第1ブロッキング溶液工程に付した。洗浄緩衝液=1X TBSに0.05%Tween20添加/希釈液=洗浄緩衝液中20%ヒト血清、2%BSA。
【0244】
(染色プロトコル)
1)H2O2ブロック:DAKOパーオキシダーゼブロッキング試薬、cat#003715、15分間
2)タンパク質ブロック:洗浄緩衝液中20%ヒト血清、2%BSA
3)アビジン/ビオチンブロック:ベクターcat#sp−2001、15分間アビジン(A)濯処理X2洗浄/15分
4)ビオチン(B)ブロットオフおよび一次抗体添加
5)1°抗体:(表参照)1時間
6)洗浄X3、1°後
7)3°(表参照)30分/洗浄X3
8)DAB:DAKO DAB+、Cat#K3468、提供緩衝液ml当たりDAB 1滴(パッケージの説明書)。発色時に水で反応停止。
【0245】
9)逆染色:Gillsのヘマトキシリン、1回迅速浸積後に数回濯処理。水道水中青色5分間
10)キシレンで脱水しマウント用培地とともにカバーガラス適用。
【0246】
【表11】
(抗体バイオアッセイ)
アッセイは96穴の平底組織培養プレートにて実施する。
【0247】
第1日:
細胞使用準備:#細胞を細胞系統に応じてプレーティングする(1000〜6000/ウェル);細胞を200ul RPMI1640+10%ウシ胎児血清(FBS)中ウェルに添加する
一夜37℃でインキュベートする。
【0248】
第2日
ウェルから培地を吸引し、150ulの完全培地、次に50ulの4x抗体希釈物(10ug/ml、5ug/ml、2.5ug/ml、1.25ug/ml、0.6ug/ml)またはネガティブを添加する。抗体希釈は3連で行う。
一夜37℃でインキュベートする。
【0249】
第3日は48時間37℃でインキュベートを継続する。
【0250】
第5日
注記−パルシングの前に、半付着細胞(例えばColo25)と共にプレートを遠心分離する。
1uCiの3Hチミジンでパルシングする(20ulの完全増殖培地中)。
6時間〜一夜インキュベートする。
【0251】
第6日
0.5%SDS(D−PBS中に調製)20ulをウェルに添加し、SDS終濃度を0.05%とする。
約60分間−80℃の冷凍庫で細胞を冷凍する。
採取し、細胞内DNA中のトリチウム化チミジンの取り込みを計数する。
【0252】
(CHO細胞におけるヒトトランスフェリンレセプターの発現およびLUCA31による染色)
ヒトトランスフェリンレセプターを以下のプライマー:
5’−GAA TTC TGC AGG GGA TCC GCC ACC ATG ATG GAT CAA GCT AGA TCA GCA TTC TC−3’
5’−CTC GAG CGG CCG CCA CTG TTA AAA CTC ATT GTC AAT GTC CC−3’
を用いてヒトcDNAからPCR増幅し、そして完全長トランスフェリンレセプター遺伝子を修飾pDEF2ベクターにクローニングすることにより発現ベクターTFRC−pDEF99TORAを生成した。TFRC−pDEF99TORA発現コンストラクトをMirus TransITトランスフェクション試薬を用いながら、そして、Pvu I消化線状プラスミドを用いたエレクトロポレーションによりCHO細胞にトランスフェクトした。細胞は限界希釈により選択した。米国特許5,888,809に開示されている該当する方法を参考として本明細書に援用する。
【0253】
LUCA31染色を評価するために細胞系統をFACSおよび蛍光顕微鏡観察に付した。細胞の小区分を100ng/mlに希釈したLUCA31抗体と共に30分間氷上でインキュベートし、洗浄し、次にFITCコンジュゲート抗マウス抗体の1:200希釈物と共にインキュベートした。次に洗浄した細胞をFACSで評価するか、または、蛍光顕微鏡を用いて直接観察した。未トランスフェクトCHO細胞またはベクター単独でトランスフェクトしたCHO細胞には蛍光染色は検出されなかった。発現ベクター単独と相対比較してTFRC−pDEF99TORAでトランスフェクトした細胞においてはFACSによりFL1チャンネルを用いた場合にバックグラウンドより50倍高値のシグナルが検出された。
【0254】
(FACS分析)
FACS緩衝液(D;PBS+.1%BSA)
BSA(内毒素非含有)
−マウスIgG FITCコンジュゲート(Sigma#F−2883_FACS緩衝液中1:200希釈)
1%ホルムアルデヒド(D−PBS中)
FACS試験管(Falcon#2052)
96穴ポリスチレン丸底細胞培養プレート(Corning/Costar#3799)
プロトコル
−200_l D−PBS中に細胞を再懸濁する。
−穏やかに回転混合する。
−50_lの適切な試薬(抗体、アイソタイプコントロール、培地・・)を各ウェルに添加し、穏やかに回転混合する。
−30分間氷上でインキュベートする。
−遠心分離(1100RPM/5分)し、培地を除去する(振り払い)。
−穏やかに回転混合する。
−200_l D−PBS中で1回洗浄する(遠心分離、振り払い、穏やかに回転混合)。
−200_l_−マウスIgG FITCコンジュゲート(FACS緩衝液中1:200希釈)中に再懸濁し、
穏やかに回転混合する。
−暗所(ホイル)氷上で30分間インキュベートする。
−遠心分離(1100RPM/5分)し、培地を除去する(振り払い)。
−穏やかに回転混合する。
−200_l D−PBS中で1回洗浄する(遠心分離、振り払い、穏やかに回転混合)。
−200_l 1%ホルムアルデヒド(D−PBS中)中に再懸濁し、FACS試験管に移す。
−FACS上でFL1蛍光強度を読み取る。
【0255】
本明細書に記載した実施例および実施形態は説明目的のみであり、それを参照しながら種々の改変または変更が当業者には示唆されるが、それは本出願の精神および範囲に包含されるものである。本明細書において引用した全ての出版物、特許および特許出願は、個々の出版物、特許および特許出願が特別に、そして個別に参照により組み込まれるように指示される程度と同じ範囲まで、全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0256】
【図1】図1はSW480細胞溶解物上のLUCA31モノクローナル抗体を用いた免疫沈降、次いでLUCA31モノクローナル抗体を用い、ECL+検出システム(Amersham)を用いて可視化したウェスタンブロットを示す。
【図2】図2は32細胞系統FACSアレイのLUCA31(斜線)およびEGF(白)のレセプター抗体染色を示す。
【図3】図3は精製されたトランスフェリンレセプターの試料にLUCA31が結合しないことを示している。矢印はゲル中のトランスフェリンレセプターの位置を示す。
【図4】図4は既知のトランスフェリンレセプター抗体の存在下におけるHCT15細胞へのLUCA31の結合の分析を示す。
【図5】図5はLUCA31を用いたCHO細胞のFACS分析を示す。細胞はpDEFベクター単独(左パネル)またはヒトトランスフェリンレセプターを含有するpDEFベクター(右パネル)でトランスフェクトした。
【図6】図6AはHCT15細胞へのLUCA31の結合に対するトランスフェリンの作用を示す。図6BはHCT15細胞へのトランスフェリンの結合に対するLUCA31の作用を示す。
【図7】図7はパクリタキセル単独またはパクリタキセルおよび5ug/mlのLUCA31抗体の組み合わせを用いた化学療法複合試験の結果を示す。細胞の増殖はトリチウム化チミジン取り込みにより測定した。
【図8】図8はHCT15(A)、HCT116(B)およびLOVO(C)細胞におけるLUCA31および42/6の活性に対する100ug/mlトランスフェリンの作用を示す。
【図9】図9はHCT15の細胞周期の進行に対する5ug/ml LUCA31の作用を示す。投与およびコントロール細胞のDNA含有量はプロピジウムにより測定した。矢印はS期の停止および細胞死を示すヒストグラムの領域を示す。
【図10】図10はヒト腫瘍細胞系統パネルにおけるLUCA31の活性を示す。図10Aは乳癌および前立腺癌から誘導した細胞系統に結合するLUCA31のFACS分析を示す。データは平均蛍光強度の関数としてプロットし、そしてEGFR染色を標準物質として使用した。図10Bは乳癌および前立腺癌の細胞系統におけるLUCA31の最大活性(0.5%血清中で測定)を示す。データ値は10ug/ml〜0.6ug/mlの抗体の5点用量力価を用いて観察された細胞増殖の最大抑制を示す。
【図11】図11はヒト血液腫瘍細胞系統パネルにおけるLUCA31の活性を示す。図11Aは血液癌系統から誘導した細胞系統に結合するLUCA31のFACS分析を示す。図11Bは血液癌系統におけるLUCA31の最大活性(0.5%血清中で測定)を示す。
【図12】図12Aは786−O細胞系統の増殖に対するLUCA31のインビトロの活性を示すグラフである。図12BはSKMES−1細胞系統に対するLUCA31のインビトロの活性を示すグラフである。図2CはSKBR3細胞系統に対するLUCA31のインビトロの活性を示すグラフである。図2DはColo205細胞系統に対するLUCA31のインビトロの活性を示すグラフである。
【図13】図13はヒト結腸癌細胞系統Colo205の増殖に対するLUCA31およびMab−ZAP(サポリンへの抗IGGコンジュゲート)の作用を示すグラフである。
【図14】図14は白血球の増殖に対するLUCA31の作用を示す。LUCA31およびコントロールのIgG1抗体1B7.11を正常ヒト白血球増殖試験において比較した。細胞はPHAを用いて刺激し、細胞増殖に対する作用はトリチウム化チミジン取り込みにより測定した。データは抗体濃度に対するパーセント抑制(非抗体コントロールと相対比較)の関数としてプロットした。
【図15】図15はCD34+骨髄先祖細胞に対するLUCA31の作用を示す。LUCA31およびコントロールのIgG1抗体1B7.11を骨髄先祖細胞の2段階の播種密度を用いて細胞増殖試験において比較した。
【図16】図16はHCT15腫瘍の増殖に対するLUCA31の作用を示す。図16Aはメジアンの腫瘍容量測定値を示す。図16Bはエラーバー付の平均腫瘍容量測定値を示す。各実験群につき、データは最初の動物が1000mm3超の腫瘍を有するまでプロットする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学および免疫療法の分野に属する。より詳細には、疾患および癌関連の抗原トランスフェリンレセプター、および、トランスフェリンレセプターに結合するポリクローナルおよびモノクローナルの抗体および他のポリペプチドに関する。本発明はさらに抗トランスフェリンレセプター抗体を含むトランスフェリンレセプターに結合するアンタゴニスト、モジュレーターおよびペプチドを用いたトランスフェリンレセプターに関連する種々のヒトの疾患および癌の診断および/または治療を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
診断におけるその知られた使用のほかに、抗体は治療剤として有用であることがわかっている。例えば免疫療法、すなわち治療目的のための抗体の使用は癌を治療するために近年使用されている。受動免疫療法では癌の治療においてモノクローナル抗体を使用する。例えば非特許文献1を参照できる。これ等の抗体は腫瘍細胞の増殖または生存の直接の抑制および身体の免疫系の自然の細胞殺傷活性をリクルートするその能力の両方により、固有の治療上の生物学的活性を有することができる。これ等の因子は単独または放射線照射または化学療法剤と組み合わせて投与することができる。非ホジキンリンパ腫および乳癌の治療についてそれぞれ認可されているリツキシマブおよびトラスツズマブはそのような治療剤の2つの例である。或いは、抗体は、抗体が毒性の因子に連結され、そして、腫瘍に特異的に結合することによりその因子を腫瘍に指向させる、抗体コンジュゲートを生成するために使用できる。ゲムツズマブオゾガマイシンは白血病の治療のために使用される認可された抗体コンジュゲートの一例である。癌細胞に結合し、診断および治療のための潜在的用途を有するモノクローナル抗体が公開物に開示されている。例えば特に一部の分子量の標的タンパク質を開示している以下の特許出願、すなわち、特許文献1(200kD c−erbB−2(Her2)および大きさ40〜200KDの他の未知の抗原)および特許文献2(50kDおよび55kDの癌胎児タンパク質)を参照できる。臨床試験における、および/または、固形腫瘍の治療に関して認可された抗体の例はトラスツヅマブ(抗原:180kD、HER2/neu)、エドレコロマブ(抗原:40〜50kD、Ep−CAM)、抗ヒト乳脂肪小球(HMFG1)(抗原>200kD、HMWムチン)、セツキシマブ(抗原:150kDおよび170kD、EGFレセプター)、アレムツズマブ(抗原:21〜28kD、CD52)およびリツキシマブ(抗原:35kD、CD20)を包含する。
【0003】
乳癌を治療するために使用されるトラスツヅマブ(Her−2レセプター)および数種の癌の治療に関して臨床試験中のセツキシマブ(EGFレセプター)の抗原標的は皮膚、結腸、肺、卵巣、肝臓および膵臓を包含する多数の正常ヒト成人組織上にある程度検出可能な量で存在している。これ等の治療剤の使用における安全性の限界は、これ等の部位における抗体の発現の量または触容易性または活性の相違により恐らくは決定される。
【0004】
免疫療法の別の型は能動免疫療法、すなわち特定の癌上に存在する抗原、または、個体における免疫応答を後に惹起する抗原の発現を指向する、すなわち自身の癌に対抗する抗体を能動的に生産するように個体を誘導するDNAコンストラクトを用いた、ワクチン投与である。能動免疫療法は受動免疫療法または免疫毒素ほど頻繁には使用されていない。
【0005】
疾患(癌を含む)の進行の幾つかのモデルが示唆されている。理論は単一の感染性/形質転換性の事象による誘起から、究極的には完全に病原性または悪性の可能性をもたらす進行的に「疾患様」または「癌様」となる組織型の発生にまでわたっている。一部は例えば癌の場合は単一の突然変異の事象が悪性誘発のために十分であるとする説がある一方、その後の改変も必要であるとする説もある。他方では、増大する突然変異性の負荷および腫瘍の等級が、細胞レベルにおける突然変異選択の事象の継続を介した真生物形成の開始並びに進行の両方のために必要であることも示唆されている。癌の標的は腫瘍組織においてのみ存在するものもあるが、正常組織にも存在し、腫瘍組織でアップレギュレートおよび/または過剰発現されるものもある。このような状況において、一部の研究者等は過剰発現が悪性疾患の獲得に関連すると示唆しているが、別の研究者等によれば過剰発現は増大する疾患状態への過程に沿った傾向のマーカーに過ぎないと示唆されている。
【0006】
理想的な診断および/または治療用の抗体は多数の癌上に存在するが、如何なる正常組織上でも非存在または少量存在するのみである。癌に特異的に関連する新規な抗原の発見、特徴付けおよび単離は多くの方法において有用である。第1に、抗原は抗原に対抗するモノクローナル抗体を生成するために使用できる。抗体は理想的には癌細胞に対する生物学的活性を有し、そして外来性抗原に対する免疫系の応答をリクルートすることができる。抗体は治療剤単独として、または、現在の治療と組み合わせて投与でき、或いは、毒性物質に連結した免疫コンジュゲートを製造するために使用できる。単独で投与された場合に同じ特異性を有するが生物学的活性は低値か皆無である抗体はまた、その抗体が、コンジュゲート型が抗原含有細胞に毒素を指向することにより生物学的活性であるような放射性同位体、毒素、または化学療法剤または化学療法剤を含有するリポソームとの免疫コンジュゲートを生成することができる点において有用である。
【0007】
理想的な診断および/または治療用の抗体に望まれる1つの特徴は、種々の癌に関連する抗原の発見および特徴付けである。多数の型の癌上に発現される抗原(すなわち「汎癌」抗原)であって非癌細胞上での発現が限定されているものは少ない。このような抗原の単離および精製は抗原をターゲティングする抗体(例えば診断用または治療用)を生成するために有用である。「汎癌」抗原に結合する抗体は、癌の唯一特定の型にのみ関連する抗原に対する抗体とは対照的に、種々の組織中に存在する種々の癌をターゲティングすることができる。抗原はまた因子の発見(例えば低分子)のため、および、細胞の調節、増殖および分化をさらに特徴付けするために有用である。
【0008】
トランスフェリンレセプターはヒト腫瘍において広範に発現され(非特許文献2、そして、細胞の増殖および生存において重要な役割を果たしている。トランスフェリンレセプターに結合する抗体は動物腫瘍モデルにおいて有効であることが以前より解っている。CCRF−CEM細胞を用いた白血病異種移植片モデル(非特許文献3)において、および、M21ヒト黒色腫異種移植片(非特許文献4)において、トランスフェリンレセプター抗体はやはり腫瘍の進行を抑制していた。
【0009】
トランスフェリンレセプターはネイキッドの抗体、毒素コンジュゲート抗体およびトランスフェリン−毒素コンジュゲートを用いて1980年代より癌標的として研究(例えば非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)されており、例えばネズミIgA抗体42/6を用いた第I相臨床試験(非特許文献8)が包含される。トランスフェリンレセプターの発現は細胞増殖と相関しており、そしてこれはトランスフェリンレセプター抗体で陽性染色される腫瘍の高比率および正常組織の限定された染色を説明していると示唆されている(Gatter,1983)。トランスフェリンレセプター抗体は細胞内への鉄の取り込みを低減することにより細胞増殖を抑制すると一般的には受け入れられている(非特許文献9)。これは鉄負荷トランスフェリンとのトランスフェリンレセプターの相互作用をブロッキングすることにより、または、トランスフェリンレセプターサイクリングおよび細胞表面の呈示の動的状態を改変することにより達成することができる。腫瘍細胞内の鉄取り込みのブロッキングの作用は主にS期における細胞周期の停止とそれに続くG1期の細胞の蓄積として最初は顕在化する(White,1990)。鉄離脱の究極的終点は細胞性塞栓から細胞死の誘導まで変動するように観察されている。
【0010】
ネズミトランスフェリンレセプターを認識するラット誘導抗体が同系マウス白血病モデルにおいて試験された(非特許文献10)。この分子はコントロールと相対比較して生存性を向上させており、そして4週間の投与期間にわたって抗体により認識される正常組織に対する肉眼的毒性の兆候や損傷の兆候は無かった。さらに又赤血球または白血球の数にも変化はなかった。しかしながら、骨髄先祖細胞の分析によれば、CFU−e/106細胞の2倍の低減、および、CFU−eの低顕著化された低減を示した。トランスフェリンレセプターをブロッキングすることの作用に関する別の知見はマウス抗体42/6を用いて実施した第I相臨床試験の結果を評価することにより得ることができる。この試験においては、マウス抗体のより短い投与経過および貧弱な薬物動態にもかかわらず混合された腫瘍応答の兆候があった(Brooks,1995)。42/6を投与した患者の評価によれば、抗体投与後の低下した骨髄BFU−eの兆候を示したが、結果は統計学的に有意ではなかった。トランスフェリンレセプターは分化中の骨髄先祖細胞上に発現されることがわかっている(非特許文献11)ため、抗トランスフェリンレセプター抗体を組み込んだ治療剤は骨髄毒性の可能性を相殺する以上の潜在的治療効果を有することが望ましい。
【0011】
必要とされているものは、細胞表面の標的を特異的に認識する抗体および他の因子で疾患および/または癌を診断および治療するために使用してよいそのような疾患および/または癌の表面上の新しい標的である。さらに必要とされているものは、本明細書に開示した発見に基づけば、トランスフェリンレセプターの疾患誘発活性を低減または増強することのいずれかにより調節することができる細胞表面上の標的を特異的に認識する新規な抗体および他の因子である。本発明の目的はヒトトランスフェリンレセプターの疾患関連の活性を抑制することができるそのアンタゴニストを発見することである。本発明の別の目的は、トランスフェリンレセプターの試験において使用するため、および、免疫原として使用するため、または、抗ヒトトランスフェリンレセプター抗体を選択するための新規な化合物を提供することである。
【0012】
下記においてより詳細に説明する通り、本発明者等は、本明細書に記載した新規なアンタゴニスト、モジュレーターおよび抗体の抗原標的として発見されたヒトトランスフェリンレセプターの新規エピトープを発見した。
【特許文献1】米国特許6,054,561号明細書
【特許文献2】米国特許5,656,444号明細書
【非特許文献1】Cancer:Principles and Practice of Oncology,6th Edition (2001)Chapt.20pp.495−508
【非特許文献2】Gatter et al.,Transferrin receptors in human tissues: their distribution and possible clinical relevance,J Clin Pathol(1983)36,539−545
【非特許文献3】White et al.,Combinations of anti−transferrin receptor monoclonal antibodies inhibit human tumor cell growth in vitro and in vivo: evidence for synergistic antiproliferative effects、Cancer Res(1990)50,6295−6301
【非特許文献4】Trowbridge & Domingo,Anti−transferrin receptor monoclonal antibody and toxin−antibody conjugates affect growth of human tumor cells、Nature(1981)294,171−173
【非特許文献5】Griffin et al.,Combined antitumor therapy with the chemotherapeutic drug doxorubicin and an anti−transferrin receptor immunotoxin: In vitro and in vivo studies)、J Immunol(1992)11,12−18
【非特許文献6】Qian et al.,Targeted drug delivery via the transferrin receptor−mediated endocytosis pathway、Pharmacological Reviews(2002)54,561−587
【非特許文献7】Trowbridge & Collin et al.,Structure−function analysis of the human transferrin receptor: Effects of anti−receptor monoclonal antibodies on tumor growth、Curr Stud Hematol Blood Transf(1991)58,139−147
【非特許文献8】Brooks et al.,Phase Ia trial of murine immunoglobulin A antitransferrin receptor antibody、Clin Cancer Res(1995)1,1259−1265
【非特許文献9】Kemp,Iron deprivation and cancer: a view beginning with studies of monoclonal antibodies against the transferrin receptor、Histol Histopathol(1997)12,291−296
【非特許文献10】Savage,et al.,Effects of monoclonal antibodies that block transferrin receptor function on the in vivo growth of a syngeneic murine leukemia、Cancer Res(1987)47,747−753
【非特許文献11】Helm et al.,Characterization and phenotypic analysis of differentiating CD34+ human bone marrow cells in liquid culture、Eur J Haematol(1997)59,318−326
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はトランスフェリンレセプターのアンタゴニスト、モジュレーターおよび種々のヒト癌上に発現されるトランスフェリンレセプターに結合するモノクローナル抗体を提供する。1つの特徴において、本発明はトランスフェリンレセプターに結合するモノクローナル抗体のファミリーである。
【0014】
別の特徴において、本発明はPTA−6055のPatent Deposit Designationと共にAmerican Type Culture Collectionにおいて2004年6月8日に寄託された宿主細胞系統CA130.3.13C9.1A7により生産されるモノクローナル抗体抗トランスフェリンレセプターである。
【0015】
さらに別の特徴において本発明は(a)免疫原で宿主哺乳類を免疫化する工程;(b)哺乳類からリンパ球を得る工程;(c)リンパ球(b)をミエローマ細胞系統と融合させてハイブリドーマを生成する工程;(d)(c)のハイブリドーマを培養してモノクローナル抗体を生産する工程;および(e)疾患性および/または癌性の細胞または細胞系統には結合するが非癌性または正常細胞または細胞系統には結合しないか、低水準または異なる態様において正常細胞に結合する抗体のみを選択するように抗体をスクリーニングする工程を含む疾患性および/または癌性の細胞と反応するモノクローナル抗体抗トランスフェリンレセプターを生成する方法である。
【0016】
別の特徴において、本発明は抗トランスフェリンレセプター抗体を形成するための方法であり、これは、そのような抗体またはその子孫をコードする宿主細胞を抗体の製造が可能な条件下で培養する工程、および、抗トランスフェリンレセプター抗体を精製する工程を含む。
【0017】
別の特徴においては、本発明は適当な細胞において抗体をコードするポリヌクレオチド1つ以上を発現すること(これは単一の軽鎖または重鎖として別個に発現されてよく、または、軽鎖および重鎖の両方が1つのベクターから発現される)、その後、一般的には目的の抗体またはポリペプチドを回収および/または単離することによる、本明細書に記載した抗体(またはポリペプチド)のいずれかの生成方法を提供する。
【0018】
別の特徴において、本発明はトランスフェリンレセプターへの抗トランスフェリンレセプター抗体の優先的結合を競合的に抑制する抗トランスフェリンレセプター抗体またはポリペプチド(抗体であってもなくてもよい)である。一部の実施形態においては、本発明はLUCA31抗体と同じトランスフェリンレセプター上のエピトープに優先的に結合する抗体またはポリペプチド(抗体であってもなくてもよい)である。
【0019】
別の特徴において、本発明はトランスフェリンレセプターへの抗トランスフェリンレセプター抗体の優先的な結合を競合的に抑制するトランスフェリンレセプターモジュレーター(ポリペプチドであってもなくてもよい)である。一部の実施形態においては、本発明は他の抗トランスフェリンレセプター抗体と同じか異なるトランスフェリンレセプター上エピトープに優先的に結合する低分子または化学物質であることができる。
【0020】
さらに別の特徴において、本発明はトランスフェリンレセプターのエピトープに対して特異的な抗体により結合されたトランスフェリンレセプターを含む組成物である。1つの実施形態において、抗体は抗トランスフェリンレセプターである。他の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体2つ以上を投与し、その抗体はトランスフェリンレセプターの異なるエピトープ2つ以上をマッピングしている。一部の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体は治療剤または検出可能な標識に連結される。
【0021】
別の特徴において、本発明はLUCA31抗体のフラグメントまたは領域を含む抗体である。1つの実施形態において、フラグメントが抗体の軽鎖である。別の実施形態において、フラグメントは抗体の重鎖である。さらに別の実施形態においてフラグメントは抗体の軽鎖および/または重鎖の可変領域1つ以上を含有する。さらに別の実施形態において、フラグメントは抗体の軽鎖および/または重鎖の相補性決定領域(CDR)1つ以上を含有する。
【0022】
別の特徴において、本発明は、抗トランスフェリンレセプター抗体の、a)軽鎖または重鎖由来のCDR(またはそのフラグメント)1つ以上;b)軽鎖由来の3CDR;c)重鎖由来の3CDR;d)軽鎖由来の3CDRおよび重鎖由来の3CDR;e)軽鎖可変領域;f)重鎖可変領域、のいずれかを含むポリペプチドを提供する。好ましい実施形態においては、このようなポリペプチドはLUCA31抗体の配列から選択される。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、ヒト化抗体である。一部の実施形態においては、ヒト化抗体は非ヒト抗トランスフェリンレセプター抗体のCDR1つ以上を含む。一部の実施形態においては、ヒト化抗体は他のLUCA31と同じかまたは異なるエピトープに結合する。一般的に、本発明のヒト化抗体は元の非ヒト抗トランスフェリンレセプター抗体のCDRと同じ、および/または、それより誘導したCDR1つ以上(1、2、3、4、5、6またはそのフラグメント)を含む。一部の実施形態においては、ヒト抗体は他の抗トランスフェリンレセプター抗体と同じかまたは異なるエピトープに結合する。別の特徴において、本発明は、非ヒト抗トランスフェリンレセプター抗体の重鎖および軽鎖の可変領域から誘導された可変領域およびヒト抗体の重鎖および軽鎖の定常領域から誘導された定常領域を含むキメラ抗体である。
【0024】
別の特徴において、本発明は、ATCC No.PTA−6055の寄託番号を有する宿主細胞またはその子孫により生産される抗体LUCA31をコードする単離されたポリヌクレオチドである。本発明は、上記の通り特定した抗体のいずれかの固有の結合または生物学的活性を有する抗体ポリペプチドを包含する。別の特徴において、本発明は、抗体(抗体フラグメントを含む)のいずれか並びに本明細書に記載した他のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0025】
別の特徴において、本発明は、本明細書に記載したポリペプチド(本明細書に記載した抗体のいずれかを包含する)またはポリヌクレオチドのいずれかを含む薬学的組成物、例えば化学療法剤に連結した抗トランスフェリンレセプター抗体、抗トランスフェリンレセプター抗体のフラグメントを含む抗体、非ヒト抗トランスフェリンレセプター抗体のヒト化抗体、非ヒト抗トランスフェリンレセプター抗体の可変領域から誘導した可変領域およびヒト抗体の定常領域から誘導した定常領域を含むキメラ抗体、または、化学療法剤(例えば放射活性部分)に連結した本明細書に記載した非ヒト抗トランスフェリンレセプター抗体または抗トランスフェリンレセプター抗体のいずれかの特徴1つ以上を有するヒト抗体および薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物である。
【0026】
1つの特徴において、本発明は、疾患性または癌性の細胞上に存在するトランスフェリンレセプターに結合した抗トランスフェリンレセプター抗体を含む組成物である。好ましい実施形態においては、癌細胞は卵巣、肺、前立腺、膵臓、結腸および乳房の癌の細胞からなる群より選択される。一部の実施形態においては、癌細胞は単離される。一部の実施形態においては、癌細胞は生物学的試料である。一般的に、生物学的試料は個体、例えばヒトから得られる。
【0027】
別の特徴においては、本発明は、個体から得られた細胞の上のトランスフェリンレセプターを検出することによる個体における疾患、特に個体における炎症性または自己免疫性の応答に関連する疾患または障害を診断する方法である。本発明の別の特徴においては、方法は個体における炎症性または自己免疫性の応答を調節することを可能とする。本発明の組成物および方法を用いた治療に付してよい炎症および自己免疫障害に起因する疾患および状態は例えば多発性硬化症、髄膜炎、脳炎、卒中、他の大脳外傷、炎症性腸疾患、例えば潰瘍性結腸炎およびクローン病、重症筋無力症、狼瘡、慢性関節リューマチ、喘息、急性若年発症性糖尿病、エイズ痴呆、アテローム性動脈硬化症、腎炎、網膜炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、心筋虚血および急性白血球媒介肺傷害を包含するがこれ等に限定されない。本発明の抗体はこのような状態に対する治療の必要な個体への投与において用途を有している。
【0028】
本発明の抗体および他の治療剤の治療上の使用のさらに別の適応症は臓器または移植片の拒絶の危険性のある個体への投与などである。近年にわたり、組織および臓器、例えば皮膚、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓および骨髄の移植のための外科的手法の効率が大きく向上している。恐らくは主要な重要問題は移植された同種移植片または臓器に対するレシピエントにおける免疫寛容を誘導するための満足できる因子が存在しないことである。同種移植片の細胞または臓器を宿主に移植する(すなわち供与者および被供与者が同じ種の異なる個体である)場合、宿主の免疫系は移植片における外来性抗原への免疫応答を上昇(宿主対移植片疾患)させると考えられ、これが移植された組織の破壊をもたらす。本発明の抗体は臓器または移植片の拒絶の危険性のある個体への投与において用途を有している。
【0029】
別の特徴において、本発明は、個体に由来する選択された細胞上でトランスフェリンレセプターの発現があるかどうかを調べる工程を含む個体が癌を有しているかどうかを診断するための方法であり、ここで該細胞上のトランスフェリンレセプターの発現は該癌を示すものである。一部の実施形態においては、トランスフェリンレセプターの発現は抗トランスフェリンレセプター抗体を用いて測定する。一部の実施形態においては、方法は細胞からのトランスフェリンレセプターの発現の量を検出する工程を包含する。「検出」という用語は本明細書においては、コントロールの比較参照を行うか行わない定性的および/または定量的な検出(量の測定)を包含する。
【0030】
さらに別の特徴においては、本発明は、個体から得た細胞上、または細胞から放出されたトランスフェリンレセプターを検出することによる個体における癌の診断方法であり、ここで、癌は副腎腫瘍、エイズ関連癌、胞状軟部肉腫、星状細胞腫、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨癌(アダマンチノーム、動脈瘤性骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、色素嫌性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、線維形成性骨形成不全症(fibrogenesis imperfecta ossium)、線維性骨形成異常、胆嚢および胆管の癌、妊娠性栄養膜疾患、生殖細胞腫瘍、頭部および頚部の癌、ランゲルハンス島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性(lipomatous)腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪性腫瘍、肝臓癌(胚芽細胞腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌腫、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、ブドウ膜または眼内の黒色腫、希少な(rare)血液学的障害、腎転移癌、横紋筋様(rhabdoid)腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移癌および子宮癌(子宮頸癌、子宮内膜癌および平滑筋腫)からなる群より選択されるがこれ等に限定されない。
【0031】
別の特徴において、本発明は、個体から得た生物学的試料中のトランスフェリンレセプターの発現を測定する工程を含む個体における癌(例えば卵巣、肺、前立腺、膵臓、結腸または乳房の癌)の診断を支援するための方法である。一部の実施形態においては、トランスフェリンレセプターの発現は抗トランスフェリンレセプター抗体を用いて測定する。一部の実施形態においては、方法は細胞からのトランスフェリンレセプターの発現の量を検出する工程を包含する。癌から放出されたトランスフェリンレセプターは、トランスフェリンレセプターまたはその部分の上昇した量が体液(例えば血液、唾液または腸の粘膜の分泌物)中で検出可能となることに寄与する。
【0032】
さらに別の特徴において、本発明は、癌性の細胞の増殖を低減するために十分なトランスフェリンレセプターに結合する抗体の有効量を投与することによる癌の治療方法である。一部の実施形態においては、抗体は抗トランスフェリンレセプター抗体である。一部の実施形態においては癌性の細胞は副腎腫瘍、エイズ関連癌、胞状軟部肉腫、星状細胞腫、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨癌(アダマンチノーム、動脈瘤性骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、色素嫌性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、線維形成性骨形成不全症(fibrogenesis imperfecta ossium)、線維性骨形成異常、胆嚢および胆管の癌、妊娠性栄養膜疾患、生殖細胞腫瘍、頭部および頚部の癌、ランゲルハンス島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪性腫瘍、肝臓癌(胚芽細胞腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌腫、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、ブドウ膜または眼内の黒色腫、希少な血液学的障害、腎転移癌、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移癌および子宮癌(子宮頸癌、子宮内膜癌および平滑筋腫)からなる群より選択されるがこれ等に限定されない。特定の好ましい実施形態においては、癌性の細胞は固形腫瘍(例えば乳癌、結腸癌、前立腺癌、肺癌、肉腫、腎転移癌、甲状腺転移癌および明細胞癌)からなる群より選択される。
【0033】
さらに別の特徴において、本発明は、トランスフェリンレセプターに特異的に結合する抗体のファミリーの少なくとも1つの有効量を投与する工程を含む癌を有する個体における転移の発生を遅延させる方法である。1つの実施形態において、抗体は抗トランスフェリンレセプター抗体である。別の特徴においては、本発明は、細胞培養物または試料または個体に化学療法剤と会合(連結を含む)した抗トランスフェリンレセプター抗体を含む組成物の有効量を投与する工程を含むインビトロまたは個体内の癌細胞の増殖および/または増殖を抑制する方法である。
【0034】
さらに別の特徴において、本発明は、トランスフェリンレセプターに特異的に結合する抗体のファミリーの少なくとも1メンバーの有効量を個体に投与することにより個体内の癌性細胞に治療剤を送達する方法である。別の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体は別の治療剤と組み合わせ(連結を含む)て個体に送達される。
【0035】
一部の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体は本明細書に命名した抗体から誘導したヒト化抗体である(必然ではないが一般的には抗体の部分的または完全なCDR1つ以上を含む)。一部の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体は命名した抗体の特性1つ以上を有するヒト抗体である。一部の実施形態においては、化学療法剤(例えば毒素または放射性分子)を癌細胞に送達する(内在化する)。一部の実施形態においては、因子はサポリンである。
【0036】
別の特徴において、本発明は、個体に化学療法剤と会合(連結を含む)した抗トランスフェリンレセプター抗体を含む組成物の有効量を投与する工程を含む個体における癌の治療方法である。
【0037】
本発明は、さらに原形質シグナリング相手とのトランスフェリンレセプターの会合を、増強または低減することのいずれかにより調節するための方法を提供する。原形質シグナリング相手とのトランスフェリンレセプターの会合は、トランスフェリンレセプターへのシグナリング相手の結合を調節する因子に細胞表面上に呈示されたトランスフェリンレセプター分子を接触させることにより影響を与えることができる。トランスフェリンレセプターのその結合および/またはシグナリング相手との会合をブロックまたは低減する因子は、トランスフェリンレセプター媒介の炎症または免疫応答に関与する生物学的または病理学的な過程を調節するために使用できる。この作用が関与する病理学的過程は腫瘍関連細胞増殖を包含する。
【0038】
因子は結合パートナー、例えば抗トランスフェリンレセプターレセプター抗体とのトランスフェリンレセプターの会合をブロック、低減、増強または他の態様で調節するその能力について試験することができる。典型的には、結合パートナーおよび被験因子と共にトランスフェリンレセプター相互作用部位を含むペプチド(典型的には完全な生細胞上に存在する状態のそのネイティブなコンホーメーションとして)をインキュベートすること、およびトランスフェリンレセプターペプチドへの結合パートナーの結合を被験因子が低減または増強するかどうか調べることにより、上記相互作用を調節する能力について因子を試験することができる。
【0039】
トランスフェリンレセプター機能のアゴニスト、アンタゴニストおよび他のモジュレーターは表記上本発明の範囲に包含される。これ等のアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターはトランスフェリンレセプターの抗原決定部位1つ以上を含むか、このような部位のフラグメント、このような部位の改変体またはこのような部位のペプチドミメティックの1つ以上を含むポリペプチドである。これ等のアゴニスト、アンタゴニストおよびトランスフェリンレセプター調節化合物は線状または環化された形態で提供され、そして場合により天然には一般的に存在しないアミノ酸残基少なくとも1つ、または、アミド同配体少なくとも1つを含む。これらの化合物はグリコシル化してよい。本発明のトランスフェリンレセプター機能のアゴニスト、アンタゴニストおよび他のモジュレーターは望ましくは抗体に言及しながら上記した全ての実施形態および方法において使用される。
【0040】
本発明の他の特徴は、発見され、そして本明細書においてはLUCA31抗体に対する抗原と称されるトランスフェリンレセプターの新規エピトープに関する。この抗原は免疫原として使用するため、および、種々の研究、診断および治療目的のために適している。
【0041】
特定の特徴において、本発明は、(i)個体から得た血液または組織の試料中のトランスフェリンレセプターの存在を試験する工程;(ii)正常(非疾患)血液または組織の試料と相対比較した場合のトランスフェリンレセプターマーカーの増量を該試料が有するかどうか検出する工程;および(iii)疾患に関して、該マーカーの増量を陽性診断に相関させるか、または、該マーカーの増量の非存在を陰性診断に相関させる工程、を含む個体における疾患の診断において支援となるための方法である。特定の実施形態においては、マーカーは抗トランスフェリンレセプター抗体を用いて検出する。特定の実施形態においては、方法は放射性核種画像化、フローサイトメトリーおよび免疫組織化学からなる群より選択される手法により行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明は、新しいヒトトランスフェリンレセプターエピトープ(本明細書においてはLUCA31エピトープと称する)を提供し、これは例えば乳房、結腸、肺および前立腺の癌を包含する種々の組織型の癌性細胞上に発現される。さらに又、本発明は、このトランスフェリンレセプターエピトープに結合するモノクローナル抗体およびポリペプチド、および、トランスフェリンレセプターの発現および/または過剰発現に関連する種々の疾患およびヒトの癌を診断および治療するためのこれ等の抗体およびポリペプチドを生成および使用する方法を提供する。
【0043】
従来のトランスフェリンレセプター抗体に付随して生じる1つの問題は、これ等の抗体が結合するエピトープの組織分布の比較的広範にわたる特徴に起因している。本発明は、多くの固形腫瘍細胞系統において頑健な抗増殖活性を有する本明細書においては場合によりLUCA31抗体と称する抗体に関する。LUCA31抗体は他のトランスフェリンレセプター抗体よりも独特でより限定的な正常組織分布を示すヒトトランスフェリンレセプターの上のエピトープに結合することが解っている。通常はトランスフェリンレセプターがリッチ化されている組織である脳内皮の染色(例えばJefferies et al.,Transferrin receptor on endothelium of brain capillaries(脳毛細管の内皮上のトランスフェリンレセプター),Nature 312,162−163(1984);Orte,et al.,A comparison of blood−brain barrier and blood−nerve barrier endothelial cell markers(血液脳関門および血液神経関門の内皮細胞マーカーの比較),Anat Embryol 199,509−517(1999);Rothenberger et al.,Coincident expression and distribution of melanotransferrin and transferrin receptor in human brain capillary endothelium(ヒト脳毛細管内皮におけるメラノトランスフェリンおよびトランスフェリンレセプターの同時発現および分布),Brain Res 712,117−121(1996)参照)によれば極めて限定されたLUCA31反応性が示されている。島細胞を包含する膵臓はトランスフェリンレセプター抗体で陽性染色されることがわかっている(Gatter,1983)が、本発明者等はLUCA31では限定された膵臓組織染色を観察している。さらに又、公開されたデータによればトランスフェリンレセプターは肝臓内のクプファー細胞および肝細胞の両方に存在(Gatter,1983)するが、LUCA31を用いた分析では肝組織の染色は示されなかった。総括すれば、LUCA31エピトープの頑健な活性および独特の組織分布特性は、LUCA31および関連の抗体が他のトランスフェリンレセプター抗体とは異なり、そして顕著な治療上および商業上の利点をもたらすことの根拠を与えるものである。
【0044】
(I.一般的手法)
本発明の実施では、特段の記載が無い限り、当該分野で知られた分子生物学(組み換え手法を包含する)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の手法を使用する。このような手法は文献、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993−8)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988−1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995);およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVita et al.,eds.,J.B.Lippincott Company,1993)に詳細に説明されている。
【0045】
(II.定義)
「トランスフェリンレセプター」とは、本発明の抗体が対する相手となる約90kD〜100kDの分子量を有するポリペプチド抗原を指す。トランスフェリンレセプターは抗トランスフェリンレセプター抗体により決具される細胞表面タンパク質であり、そして結腸および十二指腸を包含する数種の正常組織および数種の型の癌に存在する。この抗原は1つより多い異なるエピトープを有する場合がある。抗体LUCA31が結合するヒトトランスフェリンレセプターの新しいエピトープは本明細書においてはLUCA31エピトープと称し、本発明において特に有利なものである。現時点では、トランスフェリンレセプターおよびLUCA31エピトープは該当正常組織対応物と比較して特定の癌細胞において過剰発現される場合があると考えられている。特定の実施形態においては、一般的にトランスフェリンレセプターの特性に言及する場合は特定して言及するものとする。
【0046】
トランスフェリンレセプター機能のアゴニスト、アンタゴニストおよび他のモジュレーターは表現上は本発明の範囲内に包含されるものとする。これ等のアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターはトランスフェリンレセプターの抗原決定部位1つ以上を含むか、または、1つ以上のこのような部位のフラグメント、このような部位の改変体、またはこのような部位のペプチドミメティックを含むポリペプチドである。これ等のアゴニスト、アンタゴニストおよびトランスフェリンレセプター調節化合物は線状または環化された形態において提供され、そして、場合により天然には一般的に存在しないアミノ酸残基少なくとも1つまたはアミド同配体少なくとも1つを含む。これ等の化合物はグリコシル化されていてよい。
【0047】
より詳細には、「トランスフェリンレセプターモジュレーター」という用語は、本明細書においては、(1)ヒトトランスフェリンレセプターおよびそのネイティブリガンドまたは抗トランスフェリンレセプター抗体の間の相互作用を妨害またはブロックすることができ;(2)ヒトトランスフェリンレセプターおよびそのネイティブのリガンドまたは抗トランスフェリンレセプター抗体に結合することができ;(3)ヒトトランスフェリンレセプターおよびそのネイティブのリガンドまたは抗トランスフェリンレセプター抗体に結合可能な抗体の生成において使用できる抗原性部位を含有し;(4)ヒトトランスフェリンレセプターおよびそのネイティブのリガンドまたは抗トランスフェリンレセプター抗体に結合可能な抗体のスクリーニングにおいて使用できる抗原性部位を含有し;(5)ヒトトランスフェリンレセプターおよびそのネイティブのリガンドまたは抗トランスフェリンレセプター抗体の間の相互作用を妨害またはブロックすることができる抗体の生成において使用できる抗原性部位を含有し;(6)ヒトトランスフェリンレセプターおよびそのネイティブのリガンドまたは抗トランスフェリンレセプター抗体の間の相互作用を妨害またはブロックすることができる抗体のスクリーニングにおいて使用できる抗原性部位を含有する、いずれかの化合物として定義される。トランスフェリンレセプターモジュレーターは、その能力が正常なトランスフェリンレセプターの生物学的活性を増強するか抑制するかに応じてそれぞれ「トランスフェリンレセプターアゴニスト」または「トランスフェリンレセプターアンタゴニスト」であってよい。
【0048】
トランスフェリンレセプターのアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターはトランスフェリンレセプターの改変体、トランスフェリンレセプターのペプチドアンタゴニスト、ペプチドミメティックおよび低分子、抗トランスフェリンレセプター抗体および免疫グロブリン改変体、ヒトトランスフェリンレセプターのアミノ酸改変体、例えばアミノ酸置換、欠失および付加改変体、またはこれ等のいずれかの組み合わせおよびキメラ免疫グロブリンを包含する。本発明のトランスフェリンレセプターアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターはヒトトランスフェリンレセプターのそのネイティブリガンドまたは抗トランスフェリンレセプター抗体への結合に関与するトランスフェリンレセプタードメインを本発明者等が発見したことに基づいている。すなわち、本発明は、ヒトトランスフェリンレセプターの抗トランスフェリンレセプター結合ドメインの1つ以上を複製または模倣する分子構造を有するトランスフェリンレセプターのアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターを提供する。
【0049】
本明細書においては、「トランスフェリンレセプター改変体」とはアミノ酸置換、欠失および付加の改変体またはそのいずれかの組み合わせを包含するヒトトランスフェリンレセプターのいずれかのアミノ酸改変体を指す。定義はキメラ分子、例えばヒトトランスフェリンレセプター/非ヒトキメラおよび他のハイブリッド分子を包含する。さらに包含されるものは分子の改変体またはハイブリッドの領域を含むトランスフェリンレセプター改変体分子のいずれかのフラグメントである。
【0050】
「抗体」とは、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する抗原認識部位少なくとも1つを介して標的、例えば炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド等に特異的に結合可能な免疫グロブリン分子である。本明細書においては、用語は未損傷のポリクローナルまたはモノクローナル抗体のみならず、そのフラグメント(例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、1本鎖(ScFv)、その改変体、天然に存在する改変体、必要な特異性の抗原認識部位を有する抗体タンパク質を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、および必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子のいずれかの他の修飾された配置も包含する。
【0051】
「モノクローナル抗体」とは、モノクローナル抗体が抗原の選択的結合に関与するアミノ酸(天然に存在するおよび天然に存在しない)からなる場合の均質な抗体集団を指す。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原性部位に対して指向している。「モノクローナル抗体」という用語は未損傷のモノクローナル抗体および完全長のモノクローナル抗体のみならず、そのフラグメント(例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、単鎖(ScFv)、その改変体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体および必要な特異性および抗原に結合する能力の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子のいずれかの他の修飾された配置も包含する。抗体の原料またはそれを生成する態様(例えばハイブリドーマ、ファージ選択、組み換え体発現、トランスジェニック動物等)に関しては限定する意図はない。用語は「抗体」の定義に関して上記した全体としての免疫グロブリン並びにフラグメント等を包含する。
【0052】
「ヒト化」抗体とは、非ヒト種の免疫グロブリンから誘導した抗原結合部位、および、ヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく分子の残余免疫グロブリン構造を有する、組み換え手法を用いて一般的に生成されたキメラ分子を指す。抗原結合部位は、定常領域に融合した完全な可変ドメインまたは可変ドメインの適切なフレームワーク領域内にグラフトした相補性決定領域(CDR)のみのいずれかを含んでよい。抗原結合部位は野生型またはアミノ酸置換1つ以上で修飾されていてよい。これによりヒト個体内の免疫原としての定常領域が排除されるが、外来の可変領域への免疫応答の可能性は残存する(LoBuglio,A.F. et al.,(1989)Proc Natl Acad Sci USA 86:4220−4224)。別の方法はヒト誘導定常領域を与えることのみならず、ヒトの型に可能な限り近似してそれらを再成型(reshape)できるように可変領域を修飾することにも着目している。重鎖および軽鎖の両方の可変領域は、所定の種において比較的保存されており、そして相補性決定領域(CDR)に対するスカホールドを与えると推定される4つのフレームワーク領域(FR)でフランキングされた、目的の抗原に応答して変動し、そして結合能力を決定する3つのCDRを含有していることが知られている。非ヒト抗体を特定の抗原に対して生成する場合は、可変領域は修飾すべきヒト抗体に存在するFR上の非ヒト抗体から誘導したCDRをグラフトすることにより「再成型」または「ヒト化」することができる。種々の抗体に対するこの試みの適用はSato,K.,et al.,(1993)Cancer Res 53:851−856,Riechmann,L.,et al.,(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyen,M.,et al.,(1988)Science 239:1534−1536;Kettleborough,C.A.,et al.,(1991)Protein Engineering 4:773−3783;Maeda H.,et al.,(1991)Human Antibodies Hybridoma 2:124−134;Gorman,S.D.,et al.,(1991)Proc Natl Acad Sci USA 88:4181−4185;Tempest,P.R.,et al.,(1991)Bio/Technology 9:266−271;Co,M.S.,et al.,(1991) Proc Natl Acad Sci USA 88:2869−2873;Carter,P.,et al.,(1992) Proc Natl Acad Sci USA 89:4285−4289;およびCo,M.S.et al.,(1992)J Immunol 148:1149−1154により報告されている。一部の実施形態においては、ヒト化抗体は全てのCDR配列を温存している(例えばマウス抗体由来の全ての6CDRを含有するヒト化マウス抗体)。他の実施形態においては、ヒト化抗体は、元の抗体由来のCDR1つ以上「から誘導された」CDR1つ以上とも称される、元の抗体に関して改変されているCDR1つ以上(1、2、3、4、5、6)を有する。
【0053】
抗体またはポリペプチドに「特異的に結合」または「優先的に結合」(本明細書では互換的に使用する)するエピトープは当該分野で十分理解されている用語であり、このような特異的または優先的な結合を調べるための方法も当該分野でよく知られている。分子は、それが特定の細胞または物質に対して、別の細胞または物質に対するよりも、より頻繁に、より急速に、より長い時間および/またはより大きい親和性で反応または会合する場合に「特異的結合」または「優先的結合」を示すとされる。抗体はそれが標的に対し、他の物質に対するよりも大きい親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い時間結合する場合に「特異的に結合」または「優先的に結合」する。例えば、トランスフェリンレセプターエピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、そのトランスフェリンレセプターエピトープへの結合が、別のトランスフェリンレセプターエピトープまたは非トランスフェリンレセプターエピトープへの結合よりも、大きい親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い時間行われる抗体である。この定義の解釈としてはさらに、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分またはエピトープ)は第2の標的に特異的または優先的に結合してもしなくてもよい。すなわち、「特異的結合」または「優先的結合」は排他的結合を(包含するが)必ずしも必要としない。一般的に、ただし必然ではなく、結合に言及する場合は優先的結合を意味する。
【0054】
エピトープの存在に言及する場合の「免疫学的に活性」または「免疫学的に活性であり続ける」という用語は、異なる条件下における、例えばエピトープが還元または変性の条件に付された後の、エピトープに結合する抗体(例えば抗トランスフェリンレセプター抗体)の能力を指す。
【0055】
種々の生物学的機能が抗トランスフェリンレセプター抗体に備わっており、例えばトランスフェリンレセプター(例えば、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、結腸癌または乳癌の細胞を包含する癌細胞上のトランスフェリンレセプター)に結合する能力;インビトロまたはインビボで生存細胞の表面上に露出されたトランスフェリンレセプターの部分に結合する能力;トランスフェリンレセプターを発現している癌性細胞(例えば、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、結腸癌または乳癌の細胞)に化学療法剤を送達する能力;トランスフェリンレセプターを発現している癌細胞内に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力等が挙げられる。本明細書において論じる場合は、本発明のポリペプチド(抗体を包含する)はこれ等の特徴のいずれか1つ以上を有してよい。
【0056】
「抗トランスフェリンレセプター等価抗体」または「抗トランスフェリンレセプター等価ポリペプチド」とは例えば結合特異性のような抗トランスフェリンレセプター抗体に備わっている生物学的機能1つ以上を有する抗体またはポリペプチドを指す。
【0057】
本明細書においては、「因子」とは生物学的、薬学的または化学的な化合物を指す。非限定的な例は、単物質または複合体の有機または無機の分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、ビタミン誘導体、炭水化物、毒素または化学療法化合物を包含する。種々の化合物、例えば低分子またはオリゴマー(例えばオリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチド)および合成の有機化合物を種々のコア構造に基づいて合成することができる。さらに又、種々の天然の原料、例えば植物または動物性の抽出液等がスクリーニングのための化合物を提供する。本発明の因子の構造的性質については制約がないことは当業者の知る通りである。
【0058】
本発明の方法において使用する因子は無作為に選択するか、または、合理的に選択または設計することができる。本明細書においては、因子は、トランスフェリンレセプターのそのネイティブ結合パートナーまたは既知抗体との会合に関与する特定の配列を考慮することなく因子が無作為に選択される場合に、無作為に選択されると称する。無作為に選択される因子の例は化学ライブラリまたはペプチドコンビナトリアルライブラリの使用である。
【0059】
本明細書においては、因子は、因子の作用との関連において標的部位の配列および/またはそのコンホーメーションを考慮する非無作為を基本に因子が選択される場合に、合理的に選択または設計されると称する。抗トランスフェリンレセプター因子に関しては、現時点では、抗体を惹起する対象となるトランスフェリンレセプター上には少なくとも3つのエピトープが存在し、従って、トランスフェリンレセプター/抗トランスフェリンレセプターの相互作用をブロックする因子の作用部位は少なくとも3つ存在すると考えられている。本発明は、また、トランスフェリンレセプターおよびそのネイティブの結合パートナーの間の相互作用の部位において作用する因子も包含するが、他のリガンドおよびその活性なトランスフェリンレセプター相互作用部位もまた、現時点で既知であるか後に発見されるかに関わらず、本発明の範囲に包含されるものとする。因子はレセプター/リガンドおよび/またはトランスフェリンレセプター/抗トランスフェリンレセプター抗体の複合体の接触部位を構成するペプチド配列を利用することにより、合理的に選択されるか合理的に設計できる。例えば合理的に選択されたペプチド因子はそのアミノ酸配列が、ネイティブの環境において生存細胞の表面上に露出されている状態でトランスフェリンレセプター上に生じているエピトープと同一であるペプチドであることができる。このような因子は、抗トランスフェリンレセプター抗体への、またはネイティブのリガンドへの結合により、所望に応じて、トランスフェリンレセプターとの抗トランスフェリンレセプター抗体の会合、またはトランスフェリンレセプターのそのネイティブのリガンドとの会合を低減またはブロックする。
【0060】
本明細書においては、「標識された」という用語は、抗体に関しては、検出可能な物質、例えば放射性物質または蛍光団(例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはフィコエリスリン(PE))を抗体にカップリング(すなわち物理的に連結)することによる抗体の直接の標識、並びに、検出可能な物質との反応性によるプローブまたは抗体の間接的な標識を包含するものとする。
【0061】
本明細書においては、「会合」という用語は、抗体に関しては、因子(例えば化学療法剤)への共有結合的および非共有結合的な連結または結合を包含する。抗体が結合し、そしてその内部では因子は抗体が結合するものと同じ癌性細胞にターゲティングされないか、または因子の力価が低減しないように生理学的条件下において抗体および因子が実質的に解離しない、癌性細胞への因子の局在化を抗体が指向できるように、抗体は直接または共通のプラットホームへの連結を介して間接的に因子(例えば化学療法剤)と会合することができる。
【0062】
「生物学的試料」とは個体から得た種々の試料の型を包含し、診断またはモニタリングの試験において使用できる。定義に包含されるものは、唾液、血液および他の生体起源の液体試料、固体組織試料、例えば生検標本または組織培養物またはそれから誘導した細胞、およびその子孫、例えば癌を有していることがうたがわれる個体から採取した組織試料から、好ましい実施形態においては卵巣、肺、前立腺、膵臓、結腸および乳房の組織から得た細胞である。定義には又取得後にいずれかの方法において、例えば試薬による処理、可溶化、タンパク質またはポリヌクレオチドのような特定の成分のリッチ化、または切片化目的のための半固体または固体のマトリックス内への包埋により操作された試料も包含される。「生物学的試料」という用語は臨床試料を包含し、そしてさらに培養中の細胞、細胞上澄み、細胞溶解物、血清、血漿、生体液および組織試料も包含する。
【0063】
「宿主細胞」とはポリヌクレオチドインサートの取り込みのためのベクターに対するレシピエントであることができる、またはレシピエントであった個々の細胞または細胞培養物を包含する。宿主細胞は単一の宿主細胞の子孫を包含し、子孫は自然、偶発または意図的な突然変異により元の親細胞に必ずしも完全同一(形態学的またはゲノムDNA補体において)ではなくなっていてもよい。宿主細胞は本発明のポリヌクレオチドでインビボにおいてトランスフェクトされた細胞を包含する。
【0064】
本明細書においては、「転移の発生を遅滞させること」とは、転移の発生を変化、遮蔽、緩徐化、遅延、安定化、および/または、延期させることを意味する。この遅滞は癌の病歴および/または治療すべき個体に応じて、種々の長さの時間であることができる。当業者のよく知る通り、十分または有意義な遅滞は、事実上は個体が転移を発症しないという点において予防も包含することができる。
【0065】
1つの実施形態において、薬学的組成物の「有効量」とは有益または所望の結果、例えば腫瘍の大きさを縮小すること(癌に関しては、例えば乳癌または前立腺癌)、癌性細胞の増殖の遅延、転移の発生を遅滞させること、疾患に起因する症状を低減すること、疾患に罹患した者のクオリティーオブライフを向上させること、疾患を治療するために必要な他の医薬の用量を低減すること、ターゲティングおよび/または内在化等により別の医薬の作用を増強すること、疾患の進行を遅滞させること、および/または、個体の生存を延長すること等を起こすために十分な量である。有効量は投与1回以上において投与することができる。本発明の目的のためには因子、化合物または薬学的組成物の有効量は直接、または間接的に、癌性の細胞の増殖低減(または破壊)のため、および、癌性の細胞の転移の発生または増殖を低減および/または遅滞させるために十分な量である。一部の実施形態においては、因子、化合物または薬学的組成物の有効量は、他の因子、化合物または薬学的組成物と組み合わせて達成してもしなくてもよい。すなわち、「有効量」とは、化学療法剤1つ以上を投与するという意味において考えてよく、そして単一の因子は、他の因子1つ以上と組み合わせた場合に所望の結果が達成されるかその可能性がある場合には有効量として与えられると考えてよい。個体の必要性は変動するが、各成分の有効量の至適範囲の決定は当業者のよく知る通りである。典型的な用量は0.1〜100mg/kg体重を包含する。好ましい用量は1〜100mg/kg体重を包含する。最も好ましい用量は10〜100mg/kg体重を包含する。
【0066】
本明細書においては、核酸分子または因子、抗体、組成物または細胞等は、その核酸分子、因子、抗体、組成物または細胞等がその起源原料に由来する夾雑する核酸分子、抗体、因子、組成物または細胞等から実質的に分離されている場合に「単離された」と称する。
【0067】
「個体」は脊椎動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。哺乳類は例えば牧場動物、競技用動物、ペット、霊長類、マウスおよびラットを包含する。
【0068】
「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は本明細書においては互換的に使用し、いずれかの長さのアミノ酸の重合体を指す。重合体は直鎖または分枝鎖であってよく、それは修飾されたアミノ酸を含んでよく、そして非アミノ酸が介在していてもよい。用語はさらに、自然に、または介入により、例えばジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、ホスホリル化または標識化合物とのコンジュゲート形成のような他の操作または修飾により、修飾されているアミノ酸重合体を包含する。定義に包含されるものはさらに、例えば、アミノ酸の類縁体(例えば非天然のアミノ酸等)1つ以上並びに当該分野で知られた他の修飾を含有するポリペプチドである。本発明のポリペプチドは抗体を基にしているため、ポリペプチドは1本鎖または会合した鎖として存在できると理解される。
【0069】
本発明の範囲内に包含されるものはさらに、本明細書に記載したトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーター(抗トランスフェリンレセプター抗体を包含する)のペプチドミメティックである。このようなペプチドミメティックはアミノ酸残基少なくとも1つが一般的に天然には存在しないアミノ酸残基、例えばアミノ酸のD異性体またはアミノ酸のNアルキル化物質種で置換されているペプチドを包含する。別の実施形態においてはペプチドミメティックはアミド同配体でトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーター中のアミド結合(−C(=O)−NH−)少なくとも1つを置き換えることにより構築される。適当なアミド同配体は−CH2−NH−、−CH2−S−、−CH2−S(O)n−(nは1または2)、−CH2−CH2−、−CH=CH−(EまたはZ)、−C(=O)−CH2−、−CH(CN)−NH−、−C(OH)−CH2−および−O−C(=O)−NH−を包含する。アミド同配体との置き換えのための適当な候補であるトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターにおけるアミド結合はトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターの投与を意図する対象の内因性のエステラーゼまたはプロテアーゼにより加水分解される結合を包含する。
【0070】
本明細書においては、「実質的に純粋」とは少なくとも50%純粋(すなわち夾雑物を含有しない)、より好ましくは少なくとも90%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、より好ましくは少なくとも98%純粋、より好ましくは少なくとも99%純粋かそれより高純度の物質を指す。
【0071】
「毒素」とは細胞内部において有害応答を起こすいずれかの物質を指す。例えば癌性の細胞に指向された毒素は癌性の細胞に対して有害な、場合により害毒となる作用を有する。毒素の例は放射性同位体、カリシアマイシンおよびメイタンシノイド類を包含する。
【0072】
本明細書において、「治療」または「治療すること」とは、有益または所望の結果、例えば、そして好ましくは臨床結果を得るための方法である。本発明の目的のためには、有益または所望の臨床結果は例えば、癌性の細胞または他の疾患細胞の増殖を低減(または破壊)すること、癌に存在する癌性の細胞の転移を低減すること、腫瘍の大きさを縮小すること、疾患に起因する症状を低減すること、疾患に罹患した者のクオリティーオブライフを向上させること、疾患を治療するために必要な他の医薬の用量を低減すること、疾患の進行を遅滞させること、および/または、個体の生存を延長することの1つ以上を包含する。
【0073】
(III.抗体およびポリペプチドの生成方法)
モノクローナル抗体の生成方法は当該分野で知られている。使用してよい1つの方法はKohler and Milstein,Nature 256:495−497(1975)の方法またはその変法であってよい。典型的には、モノクローナル抗体は非ヒトの種、例えばマウスにおいて形成する。一般的にマウスまたはラットが免疫化のために使用されるが、他の動物も使用してよい。抗体はヒトトランスフェリンレセプターを含有する細胞、細胞抽出液またはタンパク質調製物の免疫原性の量でマウスを免疫化することにより製造する。免疫原は例えば一次細胞、培養細胞系統、癌性細胞、核酸または組織であることができる。1つの実施形態において、培養されたヒト腫瘍細胞系統を使用する。別の実施形態においてはヒト膀胱または膵臓の先祖細胞を使用する。免疫化のために使用される細胞、例えばヒト胎児腎臓、膀胱細胞またはヒト膵臓先祖細胞は免疫原として使用する前の一定時間(少なくとも24時間)培養してよい。細胞(例えばヒト胎児腎臓、膀胱細胞またはヒト膵臓先祖細胞)はそれ自体として、または非変性アジュバント、例えばRibiと組み合わせて免疫原として使用してよい。一般的に細胞は免疫原として使用する際には未損傷のまま、好ましくは生存状態で保持する。未損傷の細胞は破壊された細胞よりも良好に、抗原が免疫化動物により検出されるようにする。変性または過酷処理用のアジュバント、例えばフロイントのアジュバントを使用することはヒト胎児腎臓または他の細胞を破壊する場合があり、従って推奨できない。免疫原は複数回、周期的間隔において、例えば週2回、週1回投与してよく、または、動物における(例えば組織組み換え体における)生存性を維持するような態様で投与してよい。実施例2は抗トランスフェリンレセプター抗体を形成するために使用される方法を説明しており、そして、トランスフェリンレセプターに結合する他のモノクローナル抗体を形成するために使用してよい。
【0074】
1つの実施形態において、トランスフェリンレセプターに結合するモノクローナル抗体は免疫原としてトランスフェリンレセプターを過剰発現する宿主細胞を用いることにより得る。このような細胞は、例えばヒト胎児腎細胞およびヒト結腸癌細胞を包含する。
【0075】
抗体の応答をモニタリングするためには、少量の生物学的試料(例えば血液)を動物から採取し、免疫原に対する抗体力価を試験する。脾臓および/または数種の大型のリンパ節を摘出し、解離させて単細胞とする。所望により、脾細胞は細胞懸濁液を抗原コーティングしたプレートまたはウェルに適用することによりスクリーニングしてよい(非特異的付着細胞を除去後)。抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB細胞はプレートに結合し、そして懸濁液の残余と共に洗浄除去されることはない。得られるB細胞または解離した脾細胞を次に、ミエローマ細胞(例えばX63−Ag8.653およびSalk Institute,Cell Distribution Center,San Diego,CAより入手できるもの)と融合することができる。ポリエチレングリコール(PEG)を用いて脾細胞またはリンパ球をミエローマ細胞と融合させることによりハイブリドーマが形成される。次にハイブリドーマを選択培地(例えばヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地、「HAT培地」としても知られている)中で培養する。得られたハイブリドーマを次に限界希釈によりプレーティングし、FACSまたは免疫組織化学(IHCスクリーニング)を用いて免疫原(例えばヒト胎児腎細胞表面、癌細胞系統表面、Ag−トランスフェリンレセプター、胎児膀胱切片等)に特異的に結合する抗体の生産について調べる。選択されたモノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを次にインビトロ(例えば組織培養ビンまたは中空糸反応器)またはインビボ(例えばマウス腹水)で培養する。実施例3は抗トランスフェリンレセプター抗体を得てスクリーニングするために利用される方法に関するさらに詳細な説明である。
【0076】
細胞融合の手法の別の代替法として、EBV不朽化B細胞を使用して本発明のモノクローナル抗体を生成してよい。ハイブリドーマを増殖させ、そして所望によりサブクローニングし、そして上澄みを従来の試験操作法(例えばFACS、IHC、ラジオイムノアッセイ、酵素免疫試験、蛍光免疫試験等)により抗免疫原活性に関して試験する。
【0077】
別の代替法においては、モノクローナル抗体抗LUCA31およびいずれかの他の等価な抗体を配列決定し、当該分野で知られているいずれかの手段(例えばヒト化、完全ヒト抗体の製造のためのトランスジェニックマウスの使用、ファージディスプレイ技術等)により組み換え的に製造することができる。1つの実施形態において、抗トランスフェリンレセプターモノクローナル抗体を配列決定し、次にポリヌクレオチド配列を発現または増殖用のベクター内にクローニングする。目的の抗体をコードする配列を宿主細胞内のベクター中に維持してよく、そして次に宿主細胞を増殖させ、将来の使用のために凍結する。
【0078】
実施例4はネイティブシグナル配列を包含する抗トランスフェリンレセプターモノクローナル抗体LUCA31のカッパ軽鎖の核酸および相当する翻訳タンパク質配列を示す。
【0079】
実施例4はまた抗トランスフェリンレセプターモノクローナル抗体LUCA31のG1重鎖の核酸および相当する翻訳タンパク質配列を示す。
【0080】
モノクローナル抗体LUCA31およびいずれかの他の等価な抗体のポリヌクレオチド配列を遺伝子操作のために使用することにより「ヒト化」抗体を形成したり、親和性または他の抗体の特徴を向上させたりしてよい。抗体のヒト化における一般的な原理は抗体の抗原結合部分の基本配列を保持しつつ、ヒト抗体配列との抗体の非ヒト残余部の交換を行うことを包含する。モノクローナル抗体をヒト化するためには4つの一般的工程が存在する。それらは(1)開始抗体軽鎖および重鎖可変ドメインのヌクレオチドおよび予測アミノ酸配列を決定すること、(2)ヒト化抗体を設計すること、すなわちヒト化過程においてどの抗体フレームワーク領域を使用すべきか決定すること、(3)実際のヒト化方法/手法、および、(4)ヒト化抗体のトランスフェクションおよび発現である。例えば米国特許4,816,567;5,807,715;5,866,692および6,331,415を参照できる。
【0081】
非ヒト免疫グロブリンから誘導された抗原結合部位を含む多くの「ヒト化」抗体分子が報告されており、例えばげっ歯類または修飾げっ歯類V領域を有するキメラ抗体、および、ヒト定常ドメインに融合したその関連の相補性決定領域(CDR)が挙げられる。例えばWinter et al.,Nature 349:293−299(1991),Lobuglio et al. Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:4220−4224(1989),Shaw et al. J.Immunol.138:4534−4538(1987)およびBrown et al. Cancer Res.47:3577−3583(1987)を参照できる。他の参考文献は適切なヒト抗体定常ドメインとの融合の前にヒトサポートフレームワーク領域(FR)にグラフトさせたげっ歯類CDRを記載している。例えばRiechmann et al. Nature 332:323−327(1988),Verhoeyen et al. Science 239:1534−1536(1988)およびJones et al. Nature 321:522−525(1986)を参照できる。他の参考文献は組み換え生成されたげっ歯類フレームワーク領域によりサポートされたげっ歯類CDRを記載している。例えば欧州特許公開519,596を参照できる。これ等の「ヒト化」分子は、ヒトレシピエントにおけるこれ等の部分の治療用途の持続時間および有効性を制限するげっ歯類抗ヒト抗体分子に対する望ましくない免疫学的応答を最小限にするように設計されている。同様に利用してよい抗体をヒト化する他の方法はDaugherty et al.,Nucl.Acids Res.,19:2471−2476(1991)および米国特許6,180,377;6,054,297;5,997,867および5,866,692に開示されている。
【0082】
本発明は、又LUCA31のような本発明の抗体の1本鎖可変領域フラグメント(「scFv」)を包含する。1本鎖可変領域フラグメントは短い連結ペプチドを用いて軽鎖および/または重鎖の可変領域を連結することにより生成する。Bird et al.(1988)Science 242:423−426は1つの可変領域のカルボキシ末端と別の可変領域のアミノ末端の間の約3.5nmを架橋する連結ペプチドの例を記載している。他の配列のリンカーも設計され使用されている(Bird et al.(1988))。リンカーも同様に、因子の連結または固体支持体の連結など、付加的機能のために修飾できる。1本鎖改変体は組み換えまたは合成により製造できる。scFvの合成による製造のためには自動合成装置を使用できる。scFvの組み換え生産のためには、scFvをコードするポリヌクレオチドを含有する適当なプラスミドを真核生物、例えばコウボ、植物、昆虫または哺乳類細胞、または原核生物、例えばE.coliのような適当な宿主細胞内に導入することができる。目的のscFvをコードするポリヌクレオチドはポリヌクレオチドのライゲーションのような日常的な操作により生成できる。得られたscFvは標準的なタンパク質精製手法を用いて単離することができる。
【0083】
本発明は、その特性を大きく損なわない抗体の機能的等価物およびポリペプチドを含むトランスフェリンレセプターアゴニスト、アンタゴニスト、モジュレーターおよび抗体に対する修飾、および増強または低減された活性を有する改変体を包含する。ポリペプチドの修飾は当該分野における日常的慣行であり、本明細書において詳細に説明する必要はない。修飾されたポリペプチドの例は、アミノ酸残基の保存的な置換、機能的活性を大きく悪変させないアミノ酸の欠失または付加1つ以上、または、化学的類縁体の使用を行ったポリペプチドを包含する。相互に保存的に置換できるアミノ酸残基は例えば、グリシン/アラニン;バリン/イソロイシン/ロイシン;アスパラギン/グルタミン;アスパラギン酸/グルタミン酸;セリン/スレオニン;リジン/アルギニン;およびフェニルアラニン/チロシンを包含する。これ等のポリペプチドはまたグリコシル化および非グリコシル化されたポリペプチド、ならびに、異なる糖によるグリコシル化、アセチル化およびホスホリル化のような他の翻訳後の修飾を有するポリペプチドも包含する。好ましくはアミノ酸の置換は保存的であり、すなわち置換されたアミノ酸は元のアミノ酸と同様の化学的特性を有する。このような保存的置換は当該分野で知られており、例は上記した通りである。アミノ酸の修飾はアミノ酸1つ以上の変化または修飾から可変領域のような領域の完全な再設計にわたることができる。可変領域の変化は結合親和性および/または特異性を改変する場合がある。修飾の他の方法は当該分野で知られたカップリング手法、例えば酵素的手段、酸化的置換およびキレート形成の使用を包含する。修飾はイムノアッセイ用の標識の結合、例えばラジオイムノアッセイ用の放射性部分の結合のために使用できる。修飾されたポリペプチドは当該分野で知られた確立された操作法を用いて生成し、そして、当該分野で知られた標準的な試験を用いてスクリーニングすることができる。
【0084】
本発明は、また本発明のポリペプチドおよび抗体のフラグメントまたは領域1つ以上を含む融合タンパク質を包含する。1つの実施形態において、融合ポリペプチドは可変軽鎖領域の少なくとも10連続アミノ酸および可変重鎖領域の少なくとも10アミノ酸を含むものが提供される。別の実施形態においては、融合タンパク質は非相同免疫グロブリン定常領域を含有する。別の実施形態においては、融合タンパク質は本明細書に記載したATCCに寄託されたハイブリドーマから生成された抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含有する。本発明の目的のためには、抗体融合タンパク質は抗トランスフェリンレセプターポリペプチド1つ以上および、それがネイティブの分子においては結合していない別のアミノ酸配列、例えば別の領域に由来する非相同の配列または相同の配列を含有する。
【0085】
抗トランスフェリンレセプターポリペプチドおよび他のトランスフェリンレセプターアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターは当該分野で知られた方法、例えば合成または組み換えにより生成することができる。トランスフェリンレセプターアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターを製造する1つの方法では、ポリペプチドの化学合成、次いでネイティブのコンホーメーション、すなわち正しいジスルフィド結合を得るために適切な酸化条件下の処理を行う。これは当業者のよく知る方法を用いて達成することができる(Kelley,R.F.&Winkler,M.E.,Genetic Engineering Principles and Methods,Setlow,J.K.,ed.,Plenum Press,N.Y.,vol.12,pp 1−19(1990);Stewart,J.M.&Young,J.D.Solid Phase Peptide Synthesis Pierce Chemical Co.Rockford,Ill.(1984)を参照でき、さらに米国特許4,105,603;3,972,859;3,842,067および3,862,925も参照できる)。
【0086】
本発明のポリペプチドは固相ペプチド合成法を用いて好都合に製造してよい(Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,85;2149(1964);Houghten,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5132(1985))。
【0087】
さらに別の代替例においては、特定のヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作されている市販のマウスを用いて完全なヒト抗体を得てよい。より望ましい(例えば完全ヒト抗体)またはより頑健な免疫応答を得るために設計されたトランスジェニック動物もまたヒト化またはヒト抗体の生成のために使用してよい。このような技術の例は、Abgenix,Inc.(Fremont,CA)のXenomouseTMおよびMedarex,Inc.(Princeton,NJ)のHuMAb−Mouse(登録商標)およびTC MouseTMである。
【0088】
別の例においては、抗体は当該分野で知られたいずれかの方法を用いて組み換えにより生成し、発現させてよい。宿主動物から生成した抗体をまず単離し、遺伝子配列を獲得し、そして遺伝子配列を用いて宿主細胞(例えばCHO細胞)内で抗体を組み換え発現させることにより、抗体を組み換え生産してよい。使用してよい別の方法は植物(例えばタバコ)またはトランスジェニック乳汁中で抗体配列を発現することである。植物または乳汁中で組み換えにより抗体を発現させるための方法は開示されている。例えばPeeters,et al.(2001)Vaccine 19:2756;Lonberg,N.and D.Huszar(1995)Int.Rev.Immunol 13:65;およびPollock,et al.(1999)J Imunol Methods 231:147を参照できる。抗体の誘導体、例えばヒト化1本鎖等を生成するための方法は当該分野で知られている。別の代替例においては、抗体はファージディスプレイ技術により組み換え生産してよい。例えば米国特許5,565,332;5,580,717;5,733,743;6,265,150およびWinter et al.,Annu.Rev.Immunol.12:433−455(1994)を参照できる。
【0089】
目的の抗体またはタンパク質は当該分野でよく知られているEdman分解による配列決定に付してよい。質量スペクトル分析またはEdman分解から得られたペプチドの情報を用いて目的のタンパク質をクローニングするために使用されるプローブまたはプライマーを設計することができる。
【0090】
目的のタンパク質をクローニングする別の方法は目的の抗体またはタンパク質を発現する細胞に対する精製されたトランスフェリンレセプターまたはその部分を使用する「パニング」によるものである。「パニング」の操作法は目的の抗体またはタンパク質を発現する組織または細胞からcDNAライブラリを得ること、第2の細胞型においてcDNAを過剰発現させること、およびトランスフェリンレセプターに特異的な結合について第2の細胞型のトランスフェクトされた細胞をスクリーニングすることにより実施する。「パニング」により細胞表面タンパク質をコードする哺乳類遺伝子をクローニングする際に使用される方法の詳細な説明は当該分野で報告されている。例えばAruffo,A.and Seed,B. Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,8573−8577(1987)およびStephan,J.et al.,Endocrinology 140:5841−5854(1999)を参照することができる。
【0091】
抗トランスフェリンレセプター抗体および他のトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターをコードするcDNAは当該分野における標準的な方法に従って特定の細胞型からmRNAを逆転写することにより得ることができる。特にmRNAは上記したSambrook等の記載した操作法に従って種々の分解酵素または化学溶液を用いて単離するか、または、市販の核酸結合樹脂により製造元(例えばQiagen,Invitrogen,Promega)の添付説明書に従って抽出することができる。合成されたcDNAを次に発現ベクターに導入して第2の型の細胞内で目的の抗体またはタンパク質を生産する。発現ベクターはエピソームとして、または染色体DNAの統合された部分として、宿主細胞内で複製できるものでなければならない。適当な発現ベクターはプラスミド、ウィルスベクター、例えばアデノウィルス、アデノ関連ウィルス、レトロウィルスおよびコスミドを包含する。
【0092】
目的のポリヌクレオチドを含有するベクターはエレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAEデキストランまたは他の物質を用いたトランスフェクション;マイクロプロジェクタイルボンバードメント;リポフェクション;および感染(例えばベクターがワクシニアウィルスのような感染性物質である場合)を包含する多くの適切な手段のいずれかにより宿主細胞内に導入できる。ベクターまたはポリヌクレオチドの導入の選択は宿主細胞の特徴による場合が多い。
【0093】
非相同DNAを過剰発現できるいずれかの宿主細胞を目的の抗体、ペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子を単離する目的のために使用できる。哺乳類宿主細胞の非限定的な例は、COS、HeLaおよびCHO細胞を包含する。好ましくは、宿主細胞は、宿主細胞内に相当する内因性の目的抗体またはタンパク質が存在する場合はそれよりも約5倍高値、より好ましくは10倍高値、さらに好ましくは20倍高値の水準でcDNAを発現する。トランスフェリンレセプターへの特異的結合に関する宿主細胞のスクリーニングはイムノアッセイまたはFACSにより行う。目的の抗体またはタンパク質を過剰発現する細胞を発見することができる。
【0094】
親トランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーター分子と相対比較した場合の得られたタンパク質のアミノ酸配列の付加、欠失または変化をコードする改変体のトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターを生成するために現在使用してよい多くの手法が存在する。
【0095】
本発明は、本発明の抗体のアミノ酸配列を含むポリペプチドを包含する。本発明のポリペプチドは当該分野で知られた操作法により生成できる。ポリペプチドは抗体のタンパク質分解または他の分解により、上記した組み換え法(すなわち単一または融合のポリペプチド)により、または化学合成により製造することができる。抗体のポリペプチド、特に約50アミノ酸までのより短いポリペプチドは化学合成により好都合に生成される。化学合成の方法は当該分野で知られており、市販されている。例えば抗トランスフェリンレセプターポリペプチドは固相法を用いた自動ポリペプチド合成装置により製造できる。
【0096】
(IV.ポリペプチドおよびモノクローナル抗体のスクリーニングのための方法)
数種の方法を用いてトランスフェリンレセプターに結合するポリペプチドおよびモノクローナル抗体をスクリーニングしてよい。「結合」とは、生物学的または免疫学的に該当する結合、すなわち免疫グロブリン分子がコードされている対象となる、または、ポリペプチドが指向されている対象となる独特の抗原に対して特異的な結合を指すものとする。非特異的標的に対して極めて高濃度で免疫グロブリンが使用される場合に起こりえる非特異的な結合を指すものではない。1つの実施形態において、モノクローナル抗体は標準的なスクリーニング手法を用いてトランスフェリンレセプターに対する結合に関してスクリーニングされる。この態様においては、抗トランスフェリンレセプターモノクローナル抗体が得られた。ブダペスト条約に従って、抗トランスフェリンレセプターモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマはPTA−6055のPatent Deposit Designationと共に2004年7月8日にAmerican Type Culture Collection(ATCC)10801 University Blvd.,Manassas VA 20110−2209に寄託されている。
【0097】
トランスフェリンレセプターに結合するモノクローナル抗体は癌性の組織および非癌性の細胞への結合に関してスクリーニングする。1つの実施形態において、トランスフェリンレセプターに結合し、そしてヒトの癌性の細胞または組織とも交差反応性を有するが正常な細胞または組織に対してはそれと同程度の反応性を有さないモノクローナル抗体を選択する。スクリーニングのために使用してよい1つの方法は免疫組織化学(IHC)である。標準的な免疫組織化学の手法は平均的な当業者のよく知る通りである。例えばAnimal Cell Culture Methods(J.P.Mather and D.Barnes,eds.,Academic Press,Vol.57,Ch.18 and 19,pp.314−350,1998)を参照できる。生物学的試料(例えば組織)は生検試料、剖検試料または検死試料から得てよい。トランスフェリンレセプターが癌性の細胞上にのみ存在することを確認するためには、抗トランスフェリンレセプター抗体を用いて癌保有個体由来の組織上のトランスフェリンレセプターの存在を検出してよく、一方で癌に罹患した個体に由来する他の非癌性の組織または癌を保有しない個体に由来する組織をコントロールとして使用する。組織は凍結の間の損傷を防止する固体または半固体の物質(例えばアガロースゲルまたはOCT)中に包埋し、次に切片化して染色することができる。種々の臓器および異なる等級の癌をモノクローナル抗体のスクリーニングのために使用できる。スクリーニング目的のために使用してよい組織の例は、卵巣、乳房、肺、前立腺、結腸、腎臓、皮膚、甲状腺、脳、心臓、肝臓、胃、神経、血管、骨、上部消化管および膵臓を包含する。スクリーニング目的のために使用してよい種々の癌の型の例は、癌腫、腺癌、肉腫、腺肉腫、リンパ腫および白血病を包含する。
【0098】
さらに別の代替例においては、癌性の細胞系統、例えばBT474(ATCC#HTB−20)、MCF7(ATCC#HTB−22)、MDA−175(ATCC#HB−25)、MDA−361(ATCC#HB−27)、SK−BR−3(ATCC#HTB−30)、A549(ATCC#CCL−185)、CaLu3(ATCC#HTB−55)、SKMES1(ATCC#HTB−58)、ES−2(ATCC#CRL−1978)、SKOV3(ATCC#HTB−77)、AsPC−1(ATCC#CRL−1682)、HPAFII(ATCC#CRL−1997)、Hs700T(ATCC#HTB−147)、Colo205(ATCC#CCL−222)、HT29(ATCC#HTB−38)、SW480(ATCC#CCL−228)、SW948(ATCC#CCL−237)、293(ATCC#CRL−1573)、786−O(ATCC#CRL−1932)、A498(ATCC#HTB−44)、Caki2(ATCC#HTB−47)、Cos7(ATCC#CRL−1651)、RL65(ATCC#CRL−10345)、SVT2(ATCC#CCL−163.1)、22Rv1(ATCC#CRL 2505)、DU145(ATCC#HTB−81)、LNCaP(ATCC#CRL−1740)、PC3(ATCC#CRL−1435)、Hs746T(ATCC#HTB135)、TDH−1(Raven biotechnologies,inc.において開発された専売の前立腺癌細胞系統)、Rav CA130(Raven biotechnologies,inc.において開発された専売の肺癌細胞系統)、Rav9979(Raven biotechnologies,inc.において開発された専売の肺癌細胞系統)、Rav9926(Raven biotechnologies,inc.において開発された専売の膵臓癌細胞系統)およびNCI−N87(ATCC#CRL−5822)およびその該当する組織に由来する正常細胞を用いて癌性組織に特異的なモノクローナル抗体を得るためにスクリーニングしてよい。種々の臓器の正常組織由来の一次、または低継代の細胞培養物、例えば卵巣、乳房、肺、前立腺、結腸、腎臓、皮膚、甲状腺、大動脈平滑筋および内皮細胞をネガティブとして使用できる。癌性または非癌性の細胞はスライドガラスまたはカバーガラス上で、または、プラスチック面上で増殖させることができ、またはWO 01/43869に記載の通りCellArrayTM中に製造することができ、そして組織に関して上記した通りIHCを用いて抗体の結合に関してスクリーニングすることができる。或いは、非タンパク質分解的な手段を用いて増殖表面から細胞を採取し、遠心分離してペレット化し、次にこれを上記したIHC分析用の組織と同様に包埋して処理してよい。細胞は免疫不全動物に接種し、腫瘍を増殖させ、次にこの腫瘍を回収し、包埋し、そしてIHC分析用の組織原料として使用してよい。別の代替例においては、単細胞は一次抗体、蛍光分子に連結した二次「レポーター」抗体と共にインキュベートし、次に蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)機器を用いて分析することによりスクリーニングしてよい。
【0099】
数種の検出系を利用して組織切片への抗体の結合を検出してよい。典型的には、免疫組織化学では一次抗体の組織への結合を行い、次いで一次抗体由来の物質種に対して反応性の二次抗体を生成し、そして検出可能なマーカー(例えばセイヨウワサビパーオキシダーゼ、HRP、またはジアミノベンジジン、DAB)にコンジュゲートした。使用してよい1つの代替法はポリクローナル鏡像相補抗体、すなわちpolyMICAである。D.C.ManghamおよびP.G.Isaacson(Histopathology(1999)35(2):129−33)の記載したpolyMICA(ポリクローナル鏡像相補抗体)の手法は、一次抗体(例えば抗トランスフェリンレセプター抗体)の正常および癌性の組織への結合を試験するために使用できる。数種のpolyMICATM検出キットがThe Binding Site Limited(P.O.Box 4073 Birmingham B29 6AT England)より販売されている。製品番号HK004.DはDABクロマゲンを使用しているpolyMICATM検出キットである。製品番号HK004.AはAECクロマゲンを使用しているpolyMICATM検出キットである。或いは、一次抗体を検出可能なマーカーで直接標識してもよい。
【0100】
適切な抗体を選択するためのIHCスクリーニングにおける第1の工程は免疫原(例えば細胞または組織の試料)1つ以上へのマウス中に形成した一次抗体(例えば抗トランスフェリンレセプター抗体)の結合である。1つの実施形態において、組織の試料は種々の臓器に由来する凍結組織の切片である。細胞または組織の試料は癌性または非癌性のいずれかであることができる。
【0101】
当該分野でよく知られている多くの方法のいずれかにより、凍結組織を生成し、固定または未固定で切片化し、そしてIHCを実施する。例えばStephan et al. Dev.Biol.212:264−277(1999)およびStephan et al. Endocrinology 140:5841−54(1999)を参照できる。
【0102】
(V.抗トランスフェリンレセプター抗体を特徴付けする方法)
数種の方法を用いて抗トランスフェリンレセプター抗体を特徴付けすることができる。1つの方法はそれが結合するエピトープを発見することである。エピトープマッピングは種々の入手元、例えばPepscan Systems(Edelhertweg 15,8219 PH Lelystad,The Netherlands)から販売されている。エピトープマッピングは抗トランスフェリンレセプター抗体が結合する配列を決定するために使用できる。エピトープは線状のエピトープである、すなわちアミノ酸の単一のストレッチ内に含有されることができ、或いは、単一のストレッチに含有されなくてもよいアミノ酸の三次元相互作用により形成されるコンホーメーションエピトープであることができる。種々の長さ(例えば少なくとも4〜6アミノ酸長)のペプチドを単離または合成(例えば組み換えによる)し、そして抗トランスフェリンレセプター抗体との結合試験に使用することができる。抗トランスフェリンレセプター抗体が結合するエピトープは細胞外配列より誘導したオーバーラッピングペプチドを用い、そして抗トランスフェリンレセプター抗体による結合を測定することにより、系統的スクリーニングにおいて決定することができる。
【0103】
抗トランスフェリンレセプター抗体を特徴付けするために使用できるさらに別の方法は、同じ抗原、例えばトランスフェリンレセプターに結合することが解っている他の抗体を用いた競合試験を用いて抗トランスフェリンレセプター抗体が他の抗体と同じエピトープに結合するかどうか調べることである。トランスフェリンレセプターに対する市販抗体の例を使用してよく、そして、本明細書に記載した結合試験を用いて発見してよい。競合試験は当該分野でよく知られており、そしてそのような操作法および説明のためのデータは実施例においてさらに詳述する。抗トランスフェリンレセプター抗体はさらにそれが結合する組織、癌の型または腫瘍の型に関して特徴付けすることができる。
【0104】
抗トランスフェリンレセプター抗体を特徴付けする別の方法はそれが結合する抗原によるものである。抗トランスフェリンレセプター抗体は種々のヒト癌由来の細胞溶解物を用いたウェスタンブロットにおいて使用した。当該分野でよく知られており、ウェスタンブロットでは変性または非変性ゲル上で細胞溶解物および/または細胞画分を泳動し、ニトロセルロース紙にタンパク質を移行させ、そして次に抗体(例えば抗トランスフェリンレセプター抗体)を用いてブロットをプローブすることによりどのタンパク質が抗体により結合されたかを調べる。この操作法は実施例において詳述する。抗トランスフェリンレセプター抗体が結合しているバンドを単離し、質量スペクトルを用いてさらに分析した。抗トランスフェリンレセプター抗体が結合している抗原はトランスフェリンレセプターであることが解った。トランスフェリンレセプターは種々の組織の種々のヒトの癌、例えば結腸、肺、乳房、前立腺、卵巣、膵臓、腎臓並びに他の型の癌、例えば肉腫に伴っている。トランスフェリンレセプターに関する説明はさらに後述する実施例において行う。
【0105】
(VI.抗トランスフェリンレセプター抗体およびトランスフェリンレセプターモジュレーターを用いた癌の診断の方法)
本明細書に記載した方法により生成されたトランスフェリンレセプターに対するモノクローナル抗体を用いて診断目的のために種々の組織、例えば卵巣、乳房、肺、前立腺、結腸、腎臓、膵臓、皮膚、甲状腺、脳、心臓、肝臓、胃、神経、血管、骨および上部消化管における癌性細胞の存在または非存在を発見してよい。本明細書に開示した方法により生成されたトランスフェリンレセプターに対するモノクローナル抗体はまた固形腫瘍から放出された後に血中を循環している癌性の細胞の存在または非存在、またはその量を調べるために使用してよい。このような循環している抗原は未損傷のトランスフェリンレセプター抗原、または本発明に記載した方法で検出されるべき能力を温存しているそのフラグメントであってよい。このような検出は当該分野で一般的に使用されている標準的な方法を用いてFACS分析により行ってよい。
【0106】
これ等の使用においてはトランスフェリンレセプターとトランスフェリンレセプターに特異的に結合する抗体との間の複合体の形成を行うことができる。このような抗体の例は、PTA−6055の標記を有するATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産される抗トランスフェリンレセプターモノクローナル抗体を包含する。このような複合体の形成はインビトロまたはインビボで行うことができる。理論に制約されないが、モノクローナル抗体の抗トランスフェリンレセプターはトランスフェリンレセプターの細胞外ドメインを介してトランスフェリンレセプターに結合することができ、そしてその後内在化すると考えられる。
【0107】
本発明の診断方法の好ましい実施形態においては、抗体は検出可能な標識を担持する。使用してよい標識の例は放射活性物質または蛍光団、例えばフルオロイソチオシアネートまたはフィコエリスリンを包含する。
【0108】
診断および治療目的のための商業的に使用されている他の知られた抗体の場合と同様、本発明の標的抗原は正常組織において広範に発現される。一部の腫瘍においてはアップレギュレートされる。従って、診断または治療剤のために使用される場合の本発明の抗体の送達の特定の用量および経路は対象となる特定の腫瘍または疾患並びに治療すべき特定の個体に適合される。
【0109】
診断のために抗体を使用する1つの方法は放射活性または放射線不透明の物質に抗体を連結すること、抗体を個体に投与すること、および、X線または他の画像化装置を用いて抗原を発現している癌細胞の表面の標識された抗体の局在化を可視化することによる、インビボの腫瘍の画像化である。抗体は生理学的条件において結合を促進する濃度において投与する。
【0110】
トランスフェリンレセプターの検出のためのインビトロの手法は当該分野で日常的なものであり、酵素連結免疫吸着試験(ELISA)、免疫沈降、免疫蛍光、酵素免疫試験(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)およびウェスタンブロット分析を包含する。
【0111】
本発明の特徴において、腫瘍または新生物の放射線画像化、または、放射標識抗体を用いた治療方法の有効性の測定の方法は、放射標識腫瘍特異的抗体を本発明の実施に従って固体に投与する工程を含む。放射標識された抗体は、好ましくはテクネチウム−99m、インジウム−111、ヨウ素−131、レニウム−186、レニウム−188、サマリウム−153、ルテチウム−177、銅−64、スカンジウム−47、イットリウム−90からなる群より選択される放射標識を含むモノクローナルまたはポリクローナル抗体であってよい。抗体の免疫反応性を犠牲にせず、そしてインビボで分解されないヨウ素−131、レニウム−188、ホルミウム−166、サマリウム−153およびスカンジウム−47のような治療用の放射性核種で標識されたモノクローナル抗体が特に好ましい。当業者の知るとおり、他の放射性同位体も知られており、特定の用途に適している場合がある。放射線画像化は単一光子発光コンピューター断層撮影(SPECT)、陽電子発光断層撮影(PET)、コンピューター断層撮影(CT)または磁気共鳴画像化(MRI)を用いて実施してよい。放射線免疫画像化により位置特定される転移の位置のより解剖学的な解像度を可能にする相関性画像化も意図される。
【0112】
別の方法においては、癌性の細胞を摘出し、当該分野でよく知られた方法により免疫組織化学用に組織を調製する(例えば凍結用化合物中に包埋し、凍結し、そして固定化を行うか行うことなく切片化する;固定化および抗原の開腹および逆染色の種々の方法を用いるか用いることなく包埋する)。モノクローナル抗体はまた発生の種々の段階における癌性の細胞を発見するために使用してよい。抗体は又、どの個体の腫瘍が予め決定された量でその表面に抗原を発現し、そしてそのため、該抗原に対して指向された抗体を用いた免疫療法のための候補となりえるかを調べるために使用してよい。抗体はトランスフェリンレセプターを発現する卵巣、前立腺および膵臓の原発癌および転移癌の両方および肺の原発癌を認識してよい。本明細書においては、検出は定性的および/または定量的な検出を包含してよく、そして測定された量を癌性の細胞におけるトランスフェリンレセプターの発現の増大した量に関して正常細胞と比較することを包含してよい。
【0113】
本発明は、またトランスフェリンレセプターに結合するいずれかの抗体を用いて個体における癌(例えば卵巣癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸癌または乳癌)の診断を支援する方法、および、トランスフェリンレセプター発現の量を決定するために使用できる他の方法を提供する。本明細書においては、「診断を支援する」ための方法とは、これ等の方法が癌の分類または性質に関する臨床的判断を行う場合に補助を行うことを意味し、そして、最終的診断に関して決定的であってもなくてもよい。従って、癌の診断を支援する方法は個体から得た生物学的試料中のトランスフェリンレセプターの量の検出および/または試料中のトランスフェリンレセプターの発現の量の測定の工程を含むことができる。抗原またはその部分を認識する抗体もまた血液、唾液、尿、肺の流体または腹水を包含する体液中の生存または死滅している癌細胞から放出または分泌された抗原を検出するための診断イムノアッセイを考案するために使用してよい。
【0114】
目的の特定の腫瘍中の細胞が全てトランスフェリンレセプターを発現するわけではなく、他の組織の癌性の細胞がトランスフェリンレセプターを発現する場合があり、すなわち、個体は個体における免疫療法の有用性を調べるために癌性の細胞上のトランスフェリンレセプターの存在または非存在についてスクリーニングしなければならない。本明細書に記載した方法で生成された抗トランスフェリンレセプター抗体は癌を有すると診断された個体がトランスフェリンレセプターに対して指向された抗体を用いた免疫療法の対象候補と推定してよいかどうかを決定するために使用してよい。1つの実施形態において、癌性の腫瘍または生検試料はトランスフェリンレセプターに対して指向された抗体を用いてトランスフェリンレセプターの発現に関して試験してよい。トランスフェリンレセプターを発現する癌細胞を有する個体はトランスフェリンレセプターに対して指向された抗体を用いた免疫療法の対象候補として適している。抗トランスフェリンレセプター抗体による染色もまた、正常組織から癌性組織を判別するために使用してよい。
【0115】
診断目的のために抗トランスフェリンレセプター抗体を使用する方法は抗癌治療のいずれかの形態、例えば化学療法または放射線療法の前および後の両方において、どの腫瘍が所定の治療に応答する可能性が最も高いかについて、癌を有する個体の予後について、腫瘍のサブタイプまたは転移疾患の起源について、そして、疾患の予後または治療への応答について判断するために有用である。
【0116】
本発明の組成物は又他の疾患(非癌)細胞に適用する一般的に上記した方法を用いた癌以外の疾患状態の診断のためにも適している。本発明の方法において使用するために適する疾患状態は例えば個体における炎症または自己免疫の応答に関連する疾患または障害を包含する。上記した方法は個体における炎症または自己免疫の応答を調節するために使用してよい。本発明の組成物および方法を用いた診断および/または治療に付してよい炎症および自己免疫の障害に起因する疾患および状態は、例えば、多発性硬化症、髄膜炎、脳炎、卒中、他の大脳外傷、炎症性腸疾患、例えば潰瘍性結腸炎およびクローン病、重症筋無力症、狼瘡、慢性関節リューマチ、喘息、急性若年発症性糖尿病、エイズ痴呆、アテローム性動脈硬化症、腎炎、網膜炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、心筋虚血および急性白血球媒介肺傷害を包含する。
【0117】
本発明の抗体および他の治療剤の診断および/または治療上の使用のためのさらに別の適応症は臓器または移植片の拒絶の危険性を有する個体への投与を包含する。近年にわたり、組織および臓器、例えば皮膚、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓および骨髄の移植のための外科的手法の効率が大きく向上している。恐らくは主要な重要問題は移植された同種移植片または臓器に対するレシピエントにおける免疫寛容を誘導するための満足できる因子が存在しないことである。同種移植片の細胞または臓器を宿主に移植する(すなわち供与者および被供与者が同じ種の異なる個体である)場合、宿主の免疫系は移植片における外来性抗原への免疫応答を上昇(宿主対移植片疾患)させると考えられ、これが移植された組織の破壊をもたらす。
【0118】
抗トランスフェリンレセプター抗体に対する使用について言及する場合の本出願に記載された使用はまた、本明細書に記載した他のトランスフェリンレセプターのアゴニスト、アンタゴニストおよびモジュレーターの使用を包含する。そのような実施形態において、トランスフェリンレセプターのアゴニスト、アンタゴニストまたは他の非抗体モジュレーターは上記した工程におけるトランスフェリンレセプター抗体の代替となり、当業者の技術の範囲内の改変は代替トランスフェリンレセプター調節組成物に対して方法を適合させるために行われる。
【0119】
(VII.本発明の組成物)
本発明は、また抗トランスフェリンレセプター抗体、抗トランスフェリンレセプター抗体から誘導したポリペプチド、抗トランスフェリンレセプター抗体をコードするポリヌクレオチド、および本明細書に記載した他の物質を含む薬学的組成物を包含する組成物も包含する。本明細書においては、組成物はさらに、トランスフェリンレセプター、トランスフェリンレセプターアゴニスト、アンタゴニスト、モジュレーターに結合する抗体、ポリペプチドおよび/またはタンパク質の1つ以上、および/または、トランスフェリンレセプターに結合する抗体、ポリペプチドおよびタンパク質の1つ以上をコードする配列を含むポリヌクレオチドの1つ以上を含む。
【0120】
本発明は、さらに、いずれかのトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターと特定のトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターの意図する機能を支援する別の化学的構造とのコンジュゲートを提供する。これ等のコンジュゲートは本明細書において考察する診断、スクリーニングまたは精製の操作法において使用されるいずれかの不溶性の固体支持体マトリックスのような巨大分子と共有結合したトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターを包含する。適当なマトリックス物質は、化学的に不活性であり、高い多孔性を有し、ペプチドリガンドと共有結合を形成できる官能基多数を有するいずれかの物質を包含する。マトリックス物質およびマトリックス−リガンドコンジュゲートの製造のための操作法の例は、Dean et al.(eds)Affinity Chromatography:A practical Approach,IRL Press(1985);Lowe,” An Introduction to Affinity Chromatography,” Work et al.(eds)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Vol.7,Part II,Notrh−Holland(1979);Porath et al.,”Biospecific Affinity Chromatography,” Neurath et al.(eds),The Proteins,3rd ed.,Vol.1,pp.95−178(1975);およびSchott,Affinity Chromatography,Dekker(1984)に記載されている。
【0121】
本発明は、さらに本明細書において考察する診断の操作法において使用されるトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターといずれかのレポーター部分とのコンジュゲートを提供する。
【0122】
抗トランスフェリンレセプター抗体を包含する本発明のトランスフェリンレセプターペプチドアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターの因子、ポリペプチドおよびタンパク質はさらに、以下の基準、すなわち、(a)トランスフェリンレセプター(卵巣、前立腺、膵臓、肺、結腸または乳癌細胞を包含する癌細胞上のトランスフェリンレセプターを包含する)に結合する能力;(b)元の抗体が優先的に結合するものと同じトランスフェリンレセプターエピトープに優先的に結合する能力を包含するトランスフェリンレセプターへの既知抗トランスフェリンレセプター抗体の優先的結合を競合的に抑制する能力;(c)インビボまたはインビトロで生存細胞の表面上に露出しているトランスフェリンレセプターの部分に結合する能力;(d)卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、結腸癌または乳癌の細胞を包含する生存癌細胞の表面上に露出しているトランスフェリンレセプターの部分に結合する能力;(e)トランスフェリンレセプターを発現している癌性の細胞(例えば卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、結腸癌または乳癌の細胞)に化学療法剤または検出可能なマーカーを送達する能力;(f)トランスフェリンレセプターを発現している癌性の細胞(例えば卵巣癌の細胞)に治療剤を送達する能力のいずれか(1つ以上)により発見および特徴付けされる。
【0123】
一部の実施形態においては、本発明の抗体は寄託番号ATCC No.PTA−6055を有する宿主細胞またはその子孫により生産される抗体である。本発明は、又、これ等の寄託されたハイブリドーマにより生産される抗体および等価な抗体またはポリペプチドのフラグメント(例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fc等)、キメラ抗体、1本鎖(ScFv)、その改変体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、および、必要な特異性の抗原(トランスフェリンレセプター)認識部位を含むこれらおよび等価な抗体のいずれかの他の修飾された配置の種々の製剤を包含する。本発明は、又、抗トランスフェリンレセプターファミリーメンバーの生物学的特性1つ以上をディスプレイするヒト抗体を提供する。抗トランスフェリンレセプターファミリー(ヒト化抗体およびヒト抗体を包含する)の等価な抗体、ポリペプチドフラグメントおよびこれ等のフラグメントのいずれかを含むポリペプチドは上記した5つの基準のいずれか(1つ以上)により発見し、特徴付けする。
【0124】
一部の実施形態においては、トランスフェリンレセプターに結合する本発明の抗体、ポリペプチドおよびタンパク質はトランスフェリンレセプターへの本明細書に特定した抗トランスフェリンレセプター抗体の優先的結合を競合的に抑制する抗体、ポリペプチドおよびタンパク質である。一部の実施形態においては、抗体、ポリペプチドおよびタンパク質は抗体LUCA31が優先的に結合するものと同じトランスフェリンレセプター上エピトープに優先的に結合する。
【0125】
従って、本発明は、(a)上記の寄託番号を有する宿主細胞またはその子孫により生産される抗体;(b)そのような抗体のヒト化形態;(c)そのような抗体の軽鎖および/または重鎖1つ以上を含む抗体;(d)そのような抗体の重鎖および軽鎖の可変領域と相同またはそれより誘導された可変領域およびヒト抗体の重鎖および軽鎖の定常領域と相同またはそれより誘導された定常領域を含むキメラ抗体;(e)そのような抗体の軽鎖および/または重鎖のCDRの1つ以上(少なくとも1、2、3、4、5または6つ)を含む抗体;(f)そのような抗体の重鎖および/または軽鎖を含む抗体;(g)そのような抗体に等価なヒト抗体のいずれか(またはこれ等のいずれかを含む薬学的組成物を包含する)を提供する。抗体のヒト化形態は元の抗体または上記寄託番号を有する宿主細胞により生産される抗体と同一のCDRを有していてもいなくてもよい。CDR領域の決定は当該分野でよく知られている。一部の実施形態において、本発明は、上記寄託ハイブリドーマの1つにより生産される抗体、または、上記寄託番号を有する宿主細胞により生産される抗体の少なくとも1つのCDR、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つのCDRに実質的に相同である(或いは、一部の実施形態においては、これ等の抗体の1つの、またはこれ等の抗体の1つより誘導された、全6CDRに実質的に相同である)CDR少なくとも1つを含む抗体を提供する。他の実施形態は本明細書に記載した寄託されたハイブリドーマから生産された抗体の、またはそのような抗体から誘導されたCDR少なくとも2,3、4、5または6つに実質的に相同であるCDR少なくとも2,3、4、5または6つを有する抗体を包含する。本発明の目的のためには、結合特異性および/または全体的活性(癌細胞の増殖および/または増殖を低減するため、癌細胞のアポトーシス細胞死を誘導するため、転移の発生を遅滞させるために化学療法剤を送達すること、および/または、待機的に治療することという意味におけるものであってよい)は一般的に保持されるが、活性の範囲は寄託ハイブリドーマにより生産される抗体と比較して変動してよい(増減してよい)。本発明は、又これ等の抗体のいずれかを生成する方法を提供する。抗体の生成方法は当該分野で知られており、本明細書に記載する通りである。
【0126】
本発明は、又本発明の抗体のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。一部の実施形態においては、ポリペプチドは抗体の軽鎖および/または重鎖の可変領域1つ以上を含む。一部の実施形態においては、ポリペプチドは抗体の軽鎖および/または重鎖のCDR1つ以上を含む。一部の実施形態においては、ポリペプチドは抗体の軽鎖および/または重鎖のCDR3つを含む。一部の実施形態においては、ポリペプチドは、元の抗体の配列の少なくとも5連続アミノ酸、少なくとも8連続アミノ酸、少なくとも約10連続アミノ酸、少なくとも約15連続アミノ酸、少なくとも約20連続アミノ酸、少なくとも約25連続アミノ酸、少なくとも約30連続アミノ酸のいずれかを有する抗体のアミノ酸配列を含み、ここでアミノ酸の少なくとも3つは抗体の可変領域由来である。1つの実施形態において、可変領域は元の抗体の軽鎖に由来する。別の実施形態においては、可変領域は抗体の重鎖に由来する。別の実施形態においては、5つ(またはそれより多い)の連続アミノ酸が抗体の相補性決定領域(CDR)に由来する。
【0127】
本発明の一部の実施形態においてはトランスフェリンレセプター、トランスフェリンレセプターの部分、抗トランスフェリンレセプター抗体または本発明の他のトランスフェリンレセプター結合ポリペプチドを発現する本発明の細胞を個体に直接投与することにより、そのインビボのトランスフェリンレセプター生物学的活性を調節する。
【0128】
(VIII.治療目的のためにトランスフェリンレセプターモジュレーターおよび抗トランスフェリンレセプター抗体を使用する方法)
トランスフェリンレセプターに対するモノクローナル抗体は、癌または他の疾患を有する個体において治療目的のために使用してよい。抗トランスフェリンレセプター抗体を用いた治療では上記した通りインビトロおよびインビボの両方で複合体を形成することができる。1つの実施形態において、モノクローナル抗体抗トランスフェリンレセプターを癌性の細胞に結合させ、その増殖を低減することができる。抗体は生理学的(例えばインビボ)条件において結合を促進する濃度において投与するものとする。別の実施形態においては、トランスフェリンレセプターに対するモノクローナル抗体を結腸、肺、乳房、前立腺、卵巣、膵臓、腎臓および他の型の癌、例えば肉腫のような種々の組織の癌性の細胞に指向させた免疫療法のために使用できる。別の実施態様においては、モノクローナル抗体抗トランスフェリンレセプター単独を癌細胞に結合させて、その細胞分裂を低減することができる。別の実施形態においてはモノクローナル抗体抗トランスフェリンレセプターを癌性の細胞に結合させて、転移の発生を遅滞させることができる。さらに別の実施形態においては、癌を有する個体に抗トランスフェリンレセプター抗体を用いた待機的治療を行う。癌個体の待機的治療では、疾患の有害な症状または癌の進行に直接影響しない疾患に対して行われる別の治療に起因する医原性の症状を治療または縮小させる。これには疼痛の軽減、栄養補給、性的問題、心理学的苦痛、抑鬱、疲労、精神障害、嘔気、嘔吐等の治療が包含される。
【0129】
そのような状況において、抗トランスフェリンレセプター抗体は個体自身の免疫応答を増強または指向する因子、例えばADCCを強化する因子と共に投与してよい。
【0130】
さらに別の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体を放射性分子、毒素(例えばカリケミシン)、化学療法剤分子、リポソームまたは化学療法化合物を含有する他の小胞とコンジュゲートまたは会合させ、そしてこのような治療を必要とする個体に投与することにより、これ等の化合物を、抗体により認識される抗原を含有する癌細胞にターゲティングし、これにより、癌性または疾患の細胞を排除する。特定の理論に制約されないが、抗トランスフェリンレセプター抗体は表面にトランスフェリンレセプターを担持した細胞により内在化され、これによりコンジュゲート部分を細胞に送達して治療効果を誘導する。さらに別の実施形態においては、抗体は転移の発生を遅滞させるために抗原を発現する癌の外科的除去の際に補助的治療として使用できる。抗体は又、腫瘍の大きさを低減し、これにより手術の単純化、手術中の組織の節約および/または生じる傷跡の低減のために、抗原を発現する腫瘍を有する個体における手術の前に投与することもできる(ネオアジュバント療法)。
【0131】
細胞周期の投与は本発明の実施において意図される。このような実施形態において、化学療法剤を使用することにより、所定の段階において腫瘍または他の標的疾患細胞の細胞周期と同調する。その後、本発明の抗トランスフェリンレセプター抗体(単独または別の治療部分と共に)の投与を行う。別の実施形態においては、第2ラウンドの治療の前に細胞周期と同調し、細胞分裂を低減するために抗トランスフェリンレセプター抗体を使用し;第2ラウンドは抗トランスフェリンレセプター抗体および/または別の治療部分の投与であってよい。
【0132】
化学療法剤は放射性分子、細胞毒または細胞毒性の因子とも称される毒素を包含し、これには癌性の細胞の生存性を妨害するいずれかの因子、および化学療法化合物を含有するリポソームまたは他の小胞が包含される。適当な化学療法剤の例は、1−デヒドロテストステロン、5−フルオロウラシルデカバジン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、アルデスロイキン、アルキル化剤、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、アンスラマイシン(AMC)、抗有糸分裂剤、シスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、ジアミノジクロロ白金、アントラサイクリン、抗生物質、代謝拮抗物質、アスパラギナーゼ、BCG生菌(嚢内)、ベタメタゾンナトリウムホスフェートおよびベタメタゾンアセテート、ビカルタミド、ブレオマイシンスルフェート、ブスルファン、カルシウムロイクオリン、カリケマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BSNU)、クロランブシル、シスプラチン、クラドリビン、コルヒチン、コンジュゲートエストロゲン、シクロホスファミド、シクロソスファミド、シタラビン、シタラビン、シトカラシンB、ダカルバジン、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、塩酸ダウノルビシン、クエン酸ダウノルビシン、デニロイキンジフチトックス、デキスラゾキサン、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラシンジオン、ドセタキセル、ドラセトロンメシレート、塩酸ドキソルビシン、ドロナビノール、E.coli L−アスパラギナーゼ、エメチン、エポエチンアルファ、エルウィニアL−アスパラギナーゼ、エステル化エストロゲン、エストラジオール、エストラムスチンホスフェートナトリウム、臭化エチジウム、エチニルエストラジオール、エチドロネート、エトポシドシトロロラム因子、エトポシドホスフェート、フィルグラスチン、フロクスウリジン、フルコナゾール、フルダラビンホスフェート、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、塩酸ゲムシタビン、グルココルチコイド、ゴセレリンアセテート、グラミシジンD、塩酸グラニセトロン、ヒドロキシ尿素、塩酸イダルビシン、イフォスファミド、インターフェロンアルファ−2b、塩酸イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、ロイプロリドアセテート、塩酸レバミソール、リドカイン、ロムスチン、マイタンシノイド、塩酸メクロレタミン、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲストロールアセテート、塩酸メルファラン、メルカプチプリン、メスナ、メトトレキセート、メチルテストステロン、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、オクレオチドアセテート、塩酸オンダンセトロン、パクリタキセル、パミドロネート2ナトリウム、ペントスタチン、塩酸ピロカルピン、プリマイシン、カルムスチンインプラントを有するポリフェプロサン20、ポリフィマーナトリウム、プロカイン、塩酸プロカルバジン、プロプラノロール、リツキシマブ、サルグラモスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、テノポシド、テストラクトン、テトラカイン、チオエパクロラムブシル、チオグアニン、チオテパ、塩酸トポテカン、トレミフェンシトレート、トラスツズマブ、トレチノイン、バルルビシン、ビンブラスチンスルフェート、ビンクリスチンスルフェートおよびビノレルビンタータレートを包含する。
【0133】
好ましい実施形態においては、非分裂細胞が相対的に毒性作用から免れるように、細胞毒は分裂または急速分裂の細胞において特に有効となる。
【0134】
本発明の抗体はそれらが結合する疾患または癌腫の細胞内に内在化することができ、従って治療用途のため、例えば有害な活性のために内在化が必要である毒素を細胞内に送達するために特に有用である。このような毒素の例はサポリン、カリケアマイシン、オーリスタチンおよびマイタンシノイドを包含する。
【0135】
本発明の抗体またはポリペプチドは放射性分子、毒素、または他の治療剤、または共有結合的または非共有結合的、直接または間接的に治療剤を含有するリポソームまたは他の小胞に会合(コンジュゲートまたは連結を包含する)させることができる。抗体は抗体がその標的トランスフェリンレセプターに結合可能な限り抗体の如何なる位置においても放射性分子、毒素、または化学療法剤分子に連結させてよい。
【0136】
毒素または化学療法剤は直接または間接的に(例えばリンカー基を介するか、または適切な結合部位を有する連結分子、例えば米国特許5,552,391に記載のプラットホーム分子を介して)適当なモノクローナル抗体にカップリング(例えば共有結合)させてよい。本発明の毒素または化学療法剤は当該分野で知られた方法を用いて特定のターゲティングタンパク質に直接カップリングできる。例えば、因子と抗体との間の直接の反応は、各々が他方と反応することができる置換基を保有している場合に可能である。例えば一方の上にある親核基、例えばアミノまたはスルフィドリル基は他方の上にあるカルボニル含有基、例えば無水物またはハロゲン化酸と、または、良好な脱離基(例えばハライド)を含有するアルキル基と反応することができる。
【0137】
抗体またはポリペプチドは又マイクロキャリアを介して化学療法剤に連結できる。マイクロキャリアは水中で不溶性であり、そして約150、120または100mm未満の大きさ、より一般的には約50〜60μm未満、好ましくは約10、5、2.5、2または1.5μm未満の大きさを有する生体分解性または非生体分解性の粒子を指す。マイクロキャリアは約1μm未満、好ましくは約500nm未満の大きさを有する「ナノキャリア」を包含する。このような粒子は当該分野で知られている。固相マイクロキャリアは生体適合性のある天然に存在する重合体、合成の重合体または合成の共重合体から形成された粒子であり、アガロースまたは交差結合アガロース並びに当該分野で知られた他の生体分解性の物質から形成されたマイクロキャリアを包含しても除外してもよい。生体分解性の固相マイクロキャリアは、哺乳類の生理学的条件下において分解性(例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)およびその共重合体)または腐食性(例えばポリ(オルトエステル)例えば3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(DETOSU)またはポリ(無水物)例えばセバシン酸のポリ(無水物))である重合体から形成してよい。マイクロキャリアは又、液相(例えば油脂系または脂質系)、そのようなリポソーム、抗原を含有しないiscom(免疫刺激複合体、すなわちコレステロールおよびリン脂質、アジュバント活性サポニンの安定な複合体)、または、液相マイクロキャリアが生体分解性である限りo/wまたはw/oエマルジョン中に存在する液滴またはミセルであってもよい。生体分解性の液相のマイクロキャリアは典型的には生体分解性の油脂を配合しており、これ等の多くは当該分野で知られており、スクワレンおよび植物油を包含する。マイクロキャリアは典型的には球状であるが、球状から外れたマイクロキャリアも許容される(例えば楕円、棒状等)。その不溶性の性質(水に関して)のため、マイクロキャリアは水および水系(水性)溶液から濾別することができる。
【0138】
本発明の抗体またはポリペプチドコンジュゲートは毒性の因子または化学療法剤にカップリングすることができる基および抗体にカップリングすることができる基の両方を含有する2官能性のリンカーを含んでよい。リンカーは結合能力の妨害とならないように因子から抗体を隔たらせるためのスペーサーとして機能してよい。リンカーは切断性または非切断性であることができる。リンカーは又因子または抗体上の置換基の化学的反応性を増大させ、これによりカップリング効率を上昇させる役割を果たす。化学的反応性の増大はさらに、通常ではありえない因子または因子上の官能基の使用を容易にする。2官能性のリンカーは当該分野で知られた手段により抗体にカップリングできる。例えば活性エステル部分、例えばN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを含有するリンカーはアミド結合を介して抗体中のリジン残基にカップリングするために使用できる。別の実施例においては、親核アミンまたはヒドラジン残基を含有するリンカーを、抗体の炭水化物残基の解糖酸化により生成するアルデヒド基に結合させることができる。これ等の直接的なカップリング方法のほかに、リンカーはアミノデキストランのような中間キャリアを用いて抗体に間接的にカップリングすることができる。これ等の実施形態においては、修飾された結合はリジン、炭水化物または中間キャリアを介する。1つの実施形態において、リンカーはタンパク質の遊離のチオール残基に部位特異的にカップリングする。タンパク質上のチオール基への選択的カップリングに適する部分は当該分野でよく知られている。例としてはジスルフィド化合物、α−ハロカルボニルおよびα−ハロカルボキシル化合物およびマレイミドが包含される。親核アミン官能基がα−ハロカルボニルまたはカルボキシル基と同じ分子中に存在する場合は、アミンの分子内アルキル化を介して環化が起こる可能性が存在する。この問題を回避するための方法は当該分野でよく知られており、例えば望ましくない環化を立体化学的に不利とするようなアリール基またはトランスアルカンのような非柔軟性の基によりアミンとα−ハロ官能基が分離されている分子の製造によるなどしてよい。ジスルフィド部分を介したマイタンシノイドと抗体のコンジュゲートの製造に関しては例えば米国特許6,441,163を参照できる。
【0139】
抗体−因子コンジュゲートの製造のために使用できる切断可能なリンカーの1つは、レセプター媒介エンドサイトーシスの間に遭遇するエンドソームおよびリソソームのような異なる細胞内コンパートメントの酸性環境を利用したシス−アコニット酸に基づく酸不安定性リンカーである。例えば巨大分子キャリアとのダウノルビシンのコンジュゲートの製造に関してはShen et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun. 102:1048−1054(1981);抗黒色腫抗体へのダウノルビシンのコンジュゲートの製造に関してはYang et al.,J.Natl.Canc.Inst.80:1154−1159(1988);抗T細胞抗体とのダウノルビシンのコンジュゲートを製造するための同様の態様における酸不安定性リンカーの使用に関してはDillman et al.,Cancer Res.48:6097−6102(1988);ペプチドスペーサーアームを介した抗体へのダウノルビシンの連結に関してはTrouet et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.79:626−629(1982)を参照できる。
【0140】
本発明の抗体(またはポリペプチド)は当該分野で知られたいずれかの方法により放射性分子にコンジュゲート(連結)してよい。抗体を放射標識するための方法に関する考察は”Cancer Therapy with Monoclonal AntibodiesT,” D.M.Goldenberg ed.(CRC Press,Boca Raton,1995)を参照できる。
【0141】
或いはSegalの米国特許4,676,980に記載の通り、抗体を第2の抗体にコンジュゲートして抗体ヘテロコンジュゲートを形成することができる。交差結合抗体の形成は特定の細胞型、例えばトランスフェリンレセプターを発現する癌または疾患の細胞に免疫系をターゲティングすることができる。
【0142】
本発明は、化学療法剤に連結した抗トランスフェリンレセプター抗体またはトランスフェリンレセプターに結合する他の実施形態を用いて癌(例えば前立腺癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膵臓癌または結腸癌)を有する個体における転移の発生を遅滞させる方法を提供する。一部の実施形態においては、抗体は非ヒト抗トランスフェリンレセプター抗体のヒト化またはキメラの形態である。
【0143】
さらに別の実施形態においては、抗体は転移の発生を遅滞させるために抗原を発現する癌の外科的摘出の時点において補助的治療として使用することができる。抗体または化学療法剤に結合した抗体は又、腫瘍の大きさを低減し、これにより手術の単純化、手術中の組織の節約および/または生じる傷跡の低減のために、抗原を発現する腫瘍を有する個体における手術の前に投与することもできる(ネオアジュバント療法)。
【0144】
さらに別の実施形態においては、本明細書に記載したトランスフェリンレセプター結合実施形態のいずれかをトランスフェリンレセプター発現癌性細胞に結合させ、トランスフェリンレセプターを発現する癌性細胞に対する能動免疫応答を誘導することができる。一部の場合において、能動免疫応答は癌性細胞の死滅を誘発(例えばアポトーシスによる細胞死を誘導する癌細胞への抗体の結合)、または、癌性細胞の増殖を抑制(例えば細胞周期の進行をブロック)することができる。他の場合においては、本明細書に記載したいずれかの新しい抗体を癌性の細胞に結合させ、そして抗体依存性細胞毒性(ADCC)は抗トランスフェリンレセプターが結合する癌性細胞を排除することができる。従って、本発明は、本明細書に記載した組成物のいずれかを投与することを含む免疫応答を刺激する方法を提供する。
【0145】
一部の場合において、抗体の結合はまた細胞性および体液性の免疫応答の両方を活性化してより多くのナチュラルキラー細胞または個体の免疫系をさらに活性化して癌性細胞を破壊するサイトカイン(例えばIL−2、IFN−g、IL−12、TNF−a,TNF−b等)の増大した生産をリクルートすることができる。さらに別の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体は癌性細胞に結合することができ、そしてマクロファージまたは他の貪食細胞が癌性細胞をオプソニン作用に付すことができる。
【0146】
抗トランスフェリンレセプター抗体またはそのフラグメントの種々の製剤を投与のために使用してよい。一部の実施形態においては、抗トランスフェリンレセプター抗体またはそのフラグメントをそのまま投与してよい。薬学的に活性な因子のほかに、本発明の組成物は、薬理学的に有効な物質の投与を促進するか、または、作用部位への送達のために薬学的に使用できる製剤への活性化合物の加工を容易にする、当該分野でよく知られており、比較的不活性な物質を含む適当な薬学的に受容可能なキャリアを含有してよい。例えば、賦形剤は形状または一体性を与え、或いは、希釈剤として機能する。適当な賦形剤は、安定化剤、水和および乳化剤、浸透圧調節のための塩類、カプセル化剤、緩衝剤および皮膚浸透性増強剤を包含する。
【0147】
非経腸投与のための適当な製剤は水溶性の形態、例えば水溶性の塩としての活性化合物の水溶液を包含する。さらに又、油性の注射懸濁液のために適切な活性化合物の懸濁液も投与してよい。適当な親油性の溶媒またはベヒクルは油脂類、例えばゴマ油、または合成の脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルまたはトリグリセリドを包含する。水性の注射用懸濁液は懸濁液の粘度を増大させるための物質を含有してよく、そして例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを包含する。場合により、懸濁液は又安定化剤を含有してよい。リポソームはまた細胞内への送達のために因子をカプセル化するために使用できる。
【0148】
本発明の全身投与のための医薬品製剤は経腸、非経腸または局所投与用に製剤してよい。実際、製剤の3種類全てを同時に使用して活性成分の全身投与を達成してよい。非経腸および経腸の因子送達のための賦形剤並びに製剤はRemington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing(2000)に記載されている。
【0149】
経口投与用の適当な製剤はハードまたはソフトゼラチンカプセル、丸薬、錠剤、例えばコーティングされた錠剤、エリキシル、懸濁液、シロップまたは吸入剤およびそれらの制御放出形態を包含する。
【0150】
一般的に、これ等の因子は注射(例えば腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内等)による投与のために製剤されるが、他の投与形態(例えば経口、粘膜など)も使用できる。従って、抗トランスフェリンレセプター抗体は好ましくは薬学的に受容可能なベヒクル、例えば生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液等と組み合わせる。
【0151】
特定の用量用法、すなわち、投与量、時期および反復度は特定の個体およびその個体の病歴により変動する。一般的に少なくとも約100ug/kg体重、より好ましくは少なくとも約250ug/kg体重、さらに好ましくは少なくとも約750ug/kg体重、さらに好ましくは少なくとも約3mg/kg体重、さらに好ましくは少なくとも約5mg/kg体重、さらに好ましくは少なくとも約10mg/kg体重の用量を投与する。
【0152】
実験的な検討事項、例えば半減期は一般的に用量の決定に寄与する。ヒト免疫系と適合する抗体、例えばヒト化抗体または完全ヒト抗体は、抗体の半減期を延長し、そして宿主の免疫系による抗体が攻撃されることを防止するために使用してよい。投与の頻度は治療の過程にわたって決定され調整されてよく、そして癌性細胞の数の低減、癌性細胞の低減の維持、癌性細胞の増殖の低減、または、転移の発生の遅滞に基づくものである。或いは、抗トランスフェリンレセプター抗体の除放持続性の製剤が適している場合がある。除放性を達成するための種々の製剤および考案物が当該分野で知られている。
【0153】
1つの実施形態において、抗トランスフェリンレセプター抗体の投与量は投与を一回以上受けている個体において実験的に決定してよい。個体は抗トランスフェリンレセプター抗体の漸増量を投与される。抗トランスフェリンレセプター抗体の薬効を評価するためには、特定の癌の疾患状態のマーカーを追跡することができる。これ等には触診または目視による観察を介した腫瘍の大きさの直接の測定、X線または他の画像化手法による腫瘍サイズの間接的測定;腫瘍試料の直接の腫瘍生検および顕微鏡観察により評価される改善度;間接的な腫瘍マーカー(例えば前立腺癌のPSA)の測定、疼痛または麻痺の低減;会話、視野、呼吸または他の腫瘍に関連する障害の改善;食欲の改善;または許容性試験により測定されるクオリティーオブライフの上昇または延命が包含される。当業者が知る通り、用量は個体、癌の種類、癌の段階、癌が個体の他の位置への転移を開始しているかどうか、および過去および現在併用中の治療により変動する。
【0154】
他の製剤はリポソームのような当該分野で知られた適当な送達形態を包含する。例えばMahato et al.(1997)Pharm.Res.14:853−859を参照できる。リポソーム製剤は例えばサイトフェクチン、多層小胞および単層小胞を包含する。
【0155】
一部の実施形態においては、1つより多い抗体が存在してよい。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであることができる。このような組成物は癌腫、腺癌、肉腫または腺肉腫に対して反応性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つの異なる抗体を含有してよい。抗トランスフェリンレセプター抗体は例えば卵巣、乳房、肺、前立腺、結腸、腎臓、皮膚、甲状腺、骨、上部消化管および膵臓のような臓器における癌腫、腺癌、肉腫または腺肉腫に対して反応性の抗体1つ以上と混合することができる。1つの実施形態において、異なる抗トランスフェリンレセプター抗体の混合物を使用する。抗体の混合物は、当該分野でしばしば指摘される通り、より広い個体集団を治療する場合に特に有用である。
【0156】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、限定するものではない。
【実施例】
【0157】
以下の実施例において言及する特定の材料および方法は本セクションの終わりにおいて提示する。
【0158】
(実施例1.免疫原としての癌細胞系統の生成)
組織または細胞培養物から単離した全細胞を特定の細胞型を代表する表面抗原に対して特異的であるモノクローナル抗体を生成するための免疫原として使用した。本発明の実施のために適するそのような方法は米国特許6,541,225に記載されている。一般的に特定の細胞型の細胞表面抗原に指向したモノクローナル抗体を生成するためには、その型の生存未損傷細胞で、好ましくは自身の表面が血清非含有である細胞で、非形質転換B細胞を免疫化することが望ましい。抗原トランスフェリンレセプター、例えば、LUCA31に対するモノクローナル抗体を生成するために適する細胞系統は、BT−474(ATCC#HTB−20)、MDA−MB−175VII(ATCC#HB−25)、MDA−MB−361(ATCC#HB−27)、SKBR3(ATCC#HTB−30)、SKMES−1(ATCC#HTB−58)、ES−2(ATCC#CRL−1978)、SKOV3(ATCC#HTB−77)、HPAFII(ATCC#CRL−1997)、Hs700T(ATCC#HTB−147)、Colo205(ATCC#CCL−222)、HT29(ATCC#HTB−38)、SW480(ATCC#CCL−228)、SW948(ATCC#CCL−237)、A498(ATCC#HTB−44)およびCaki−2(ATCC#HTB−47)を包含する。
【0159】
成長因子を添加し血清非含有の適切な栄養培地中で細胞を増殖させた。血清添加培地中で増殖させておいた細胞による免疫化は究極的な不都合を有する場合がある。血清は活性不明の小型および大型の生体分子の複雑な混合物を含有する。これ等の生体分子は細胞表面に付着し、これにより特異的な細胞型を代表しない分子と交差反応する抗体の形成をもたらす場合がある。さらに又、血清中の生体分子の細胞表面への結合は所望の細胞表面の抗原標的のマスキングをもたらす場合がある。多くの血清非含有の培地調製品が商業的に知られており、公的に入手可能であり、例えば以下の添加剤、すなわちインスリン(10μg/ml終濃度)、表皮成長因子(EGF)(5ng/ml終濃度)、セレン酸(2.5x10−8M終濃度)およびブタ下垂体抽出物(PPE)(5μl/ml終濃度)を含有するF12/DME(1:1)栄養培地を挙げることができる。
【0160】
細胞を回収するために、細胞の単層をカルシウムおよびマグネシウム非含有のHanks生理食塩溶液で1回洗浄し、15分間37℃でHanks生理食塩溶液中10mM EDTA中でインキュベートした。穏やかにピペッティングすることにより培養表面から細胞を脱着させた。細胞懸濁液を5分間1000xgで遠心分離することにより沈殿させた。上澄みを除去し、細胞を適宜非変性アジュバントを含有する血清非含有培地に再懸濁した。
【0161】
(実施例2.モノクローナル抗体の生成)
非変性アジュバント(Ribi、R730、Corixa,Hamilton MT)をリン酸塩緩衝食塩水中2mlとなるように再水和させた。次にこの再水和アジュバント100μlを次に免疫化に使用する実施例1の細胞ペレットの一部と穏やかに混合した。マウス当たり約106個のヒト胎児腎細胞をBalb/cマウスに脚部手掌を介して概ね週1または2回注射した。厳密な免疫化の日程は、以下の通りとした。第0日、免疫化+Ribi。第3日、免疫化+Ribi。第7日、免疫化+Ribi。第24日、免疫化−Ribi。第29日、免疫化−Ribi。第32日、免疫化−Ribi。第36日、免疫化−Ribi。第44日、免疫化−Ribi。第51日、免疫化−Ribi。第69日、力価試験用採血。第71日、免疫化+Ribi。第74日、免疫化+Ribi。第81日、免疫化+Ribi。第91日、灌流ブースト(Ribi非存在)。第104日、融合用の結節回収。
【0162】
第69日において、各免疫化動物の尾部から血液を一滴採取し、FACS分析を用いて免疫化するために使用した細胞系統に対する抗体の力価を試験した。力価が1:2000に達した時点で、マウスをCO2で屠殺し、その後断首した。リンパ節を採取してハイブリドーマの調製に付した。
【0163】
マウスのリンパ球は35%ポリエチレングリコール4000を用いてマウスミエローマ系統X63−Ag8.653と融合させた。融合後の第10日に、ハイブリドーマの上澄みを、免疫化細胞特異的モノクローナル抗体の存在について、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を用いてスクリーニングした。各ハイブリドーマのコンディショニングした培地を少量のヒト胎児腎細胞と共に30分間インキュベートした。インキュベーションの後、細胞試料を洗浄し、0.1ml希釈液中に再懸濁し、そして4℃で30分間ヤギ抗マウスIgGのFITCコンジュゲートF(ab’)2フラグメント1μg/mlとともにインキュベートした。細胞を洗浄し0.2mlのFACS希釈液中に再懸濁し、FACScan(tm)細胞分析器(Becton Dickinson;San Jose,CA)を用いて分析した。さらに増殖、クローニングおよびFACSによるヒト胎児腎細胞の表面へのその結合に基づいた特徴付けのためにハイブリドーマクローンを選択した。Agトランスフェリンレセプターと命名された抗原およびAgトランスフェリンレセプター1と命名されたその抗原上のエピトープに結合するLUCA31と命名されたモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを選択した。
【0164】
(実施例3.LUCA31を包含する抗トランスフェリンレセプター抗体の精製)
SKMES−1、786−OおよびColo205細胞系統などを包含するヒト癌細胞を10.0mMのEDTAの存在下に組織培養フラスコから脱着させ、5分間1400rpmで遠心分離し、1%BSAおよび2mM EDTAを含有するPBS(FACS希釈液)中に再懸濁した。細胞を計数し、107個/mlに調節した。約0.1mlの細胞を37℃で30分間100μlのFACS希釈液と共にインキュベートした。ヒト癌細胞系統に結合するモノクローナル抗体をタンパク質Gアフィニティークロマトグラフィーを用いて組織培養上澄みから精製した。抗体精製過程には以下の物質、すなわち、ハイブリドーマ組織培養上澄み、Immunopure(G)IgG結合緩衝液(Pierce #21011 Rockford,IL)、Immunopure IgG溶出緩衝液(Pierce #21009)、濃塩酸(pH調節用)、Corning 1リットルPES(ポリエーテルスルホン)、0.22μmフィルター(Corning #431098、Corning,NY)、Amersham Pharmacia AKTA Explorer System(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)、タンパク質Gセファロース4 Fast Flow(Amersham Biosciences #17−0618−03)、3Mチオシアン酸カリウム/50mM Tris pH7.8およびPBS(リン酸塩緩衝食塩水)、3M Tris pH9.0からなるストリッピング緩衝液を使用した。
【0165】
本明細書においてはLUCA31と称するマウス抗ヒトトランスフェリンレセプター抗体を精製するために、上澄みの容量を測定し、等しい容量の結合緩衝液を上澄みに添加した。混合物を室温で平衡化させた。上澄みを0.22μmフィルターを通して清澄化した。AKTA Explorer system(Amersham Biosciences)を用いて上澄みをタンパク質Gセファロースカラムにロードし、次に結合緩衝液5〜10カラム容量を用いて洗浄した。モノクローナル抗体を溶出緩衝液で溶離させ、画分を採取した。試験管を空にするため(画分の1/60の容量)3M Tris,pH9.0を添加しながら溶離したところ画分は中和された。モノクローナル抗体を含有するピーク画分をプールした。プールした試料を予め湿潤させたスライデアライザーカセット(10,000MWカットオフ;Pierce #66810)に注入し、4℃で1xPBS中透析した(交換当たり透析最小4時間の3緩衝液交換)。精製されたモノクローナル抗体を濾過滅菌(0.2μmAcrodisc)し、2〜8℃で保存した。
【0166】
精製された抗体の試料はUV吸光度(A280)およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)による濃度の測定のために採取する。SDS−PAGEは分子量の分析、モノクローナル抗体の典型的なバンドパターンの同定、および、純度の評価のために非還元および還元条件下の両方において泳動する。
【0167】
ハイブリドーマ上澄みからのLUCA31モノクローナル抗体の精製の後、これはヒト胎児腎細胞への結合に関して再度試験した。細胞試料を上記した通り生成し、種々の濃度において精製された抗体と共にインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、0.1ml希釈液中に再懸濁し、そして4℃で30分間ヤギ抗マウスIgGのFITCコンジュゲートF(ab’)2フラグメント1μgと共にインキュベートした。細胞を洗浄し0.5mlのFACS希釈液中に再懸濁し、FACScanセルソーター(Beckton Dickinson,San Jose,CA)を用いて分析した。FACScanヒストグラムの右側へのシフトは精製された抗体がなおヒト胎児腎細胞に結合していることを示していた。
【0168】
他の実験において、トランスフェリンレセプターへのLUCA31抗体の結合は生細胞ELISAを用いて試験した。当該分野で一般的に知られている他の方法も適用可能であるが以下の方法を用いた。細胞(HT−29、SKOV3、SKMES−1、SW480、SKBR−3およびHPAFII)を組織培養処理96穴プレート(Falcon)上でコンフルエントとなるまで10%ウシ胎児血清(FBS)含有培地中で増殖させた。細胞をPBSで洗浄し、次に室温で1時間1%BSAおよび0.1%アジ化ナトリウムを含有するHank’s Balanced Salt Solution(HBSS)中で所望の濃度の所望の抗体50μlと共にインキュベートした。次に細胞をHBSSウェル当たり100μlで3回洗浄した後に、室温で30分間セイヨウワサビパーオキシダーゼ(HRP)二次抗体(HBSS中希釈してウェル当たり50μl)と共にインキュベートした。細胞は最終的にHBSSで3回洗浄し、変色基質(TMB基質、KPL)をウェル当たり100μlで各ウェルに添加した。変色反応は1Mリン酸をウェル当たり100μl添加することにより停止した。次にプレートをOD450nmで読み取った。
【0169】
(実施例4.LUCA31の配列決定)
材料および方法のセクションで列挙した変性オリゴを用いたRT−PCRによれば、重鎖に対してMVHfwd9と共にMVHrev1およびrev2を用いて個別のバンドが得られた。軽鎖に対しては、MVHfwd2およびfwd5にMVLrevを組み合わせて生成物を得た。使用したPCRプログラムはTopoクローニングにおいて使用するための72℃における10分間インキュベートとした。PCR産物は製造元のプロトコルに従ってpCR2.1 Topo TAクローニングベクターにライゲーションした。各ライゲーションの20コロニーをミニプレップで釣菌し、正しいサイズのインサートを有するものをM13およびM13revを用いた配列決定のためのマイクロ化学法に付した。
【0170】
コンセンサス配列はBLAST検索において使用される各PCR産物に対して誘導し、代表的なミニプレップを選択してクローニングを進めた。
【0171】
LUCA31軽鎖:
MVLrevおよびMVLfwd2を用いて生成したLUCA31のLCは不完全なV領域を有していた。MVLfwd5を用いて生成したLCは完全であった。クローン5.19をクローニングの次の工程における鋳型として使用するために選択した。PCRプライマーはVL領域の5’末端にHindIII部位および至適Kozakおよび3’末端にBbsI部位を取り込むように設計した。
【0172】
【化1】
PCRはLCクローン5.19に対して実施し、得られたバンドをゲル抽出し、HindIIおよびBbsIで消化し、次に8.5kbのpDEF2B/Kappaベクターフラグメントにライゲーションし、同じ酵素で消化し、pDEF2B/Luca31.L.C.を得た。ミニプレップをプライマー96−91およびCM−KRを用いて配列決定し、正しいクローンを選択してマキシプレップ培養物に播種した。
【0173】
軽鎖発現ベクターはpDEF2B/Luca31.LC由来の1776bpのNotI−XbaI LCフラグメントを11.7kbのpNEF32または19.4kbのpNEF5のNotI−XbaIベクターフラグメントにライゲーションしてpNEF32/Luca31.LCおよびpNEF5/Luca31.LCを生成することにより生成した。
【0174】
LUCA31重鎖:
MVHrev1およびrev2は相互に僅かにずれが合ったことから、LUCA31.HC PCR産物はその3’末端においてのみ異なっていた。コンセンサス配列を生成し、2つの希少なコドンを含有させるがこれ等の部位においてDNA配列は明確である。クローン9R1.1をクローニングの次の工程における鋳型として使用するために選択した。PCRプライマーはVH領域の5’末端にHindIII部位および至適Kozakおよび3’末端にNheI部位を取り込むように設計した。
【0175】
【化2】
PCRはHCクローン9R1.1に対して実施し、得られたバンドをゲル抽出し、HindIIIおよびNheIで消化し、次に9.3kbのpICFSP.IgG1.NHまたはpICFSP.IgG4.NHのHindIII−NheIベクターフラグメントにライゲーションし、pICFSP.Luca31.G1またはG4.HCをそれぞれ生成した。
【0176】
重鎖発現ベクターはpICFSP.Luca31.G1またはG4.HC由来の3.2 NotI−XbaI HCフラグメントを12kbのpDEF32または19.7kbのpDEF14のNotI−XbaIベクターフラグメントにライゲーションしてpDEF32/Luca31.G1.HC、pDEF14/Luca31.G1.HC、pDEF32/Luca31.G4.HCおよびpDEF14/Luca31.G4.HCを生成することにより生成した。
【0177】
オールインワンの発現ベクター:
pDEF14オールインワン発現ベクターは19.7kbのpDEF14 NotI−XbaIベクターフラグメントを3.4kbのBglII−XbaI pDEF2B/Luca31.LC軽鎖フラグメントおよび6.5kb NotI−BamHI pICFSP/Luca31.G1にライゲーションしてpDEF14/Luca31.1を生成することにより生成した。
【0178】
以下の配列を決定した:
コンティグ「コンセンサスアライメントTopo LC5」の総括図
【0179】
【化3】
コンティグ「Luca31 VHコンセンサス」の総括図
【0180】
【化4】
(実施例5.癌細胞系統SW480におけるトランスフェリンレセプター発現のウェスタンブロット分析)
腎細胞癌の細胞SW480(ATCC#CCL−228)を175cm2の培養皿上でコンフルエントとなるまで増殖させた。コンフルエントの単層をHank’s Balanced Salt Solution(重炭酸ナトリウムまたはフェノールレッド非含有のHBSS+、10mM HEPESで緩衝、pH7.4;Sigma Chemicals)で3回洗浄し、室温で30分間スルホ−NHS−LC−ビオチン(Pierce Endogen)200μgでビオチニル化した。次に細胞を0.1M Tris含有のHBSS+、pH7.4(Sigma Chemicals)で洗浄し、室温で15分間0.1M Tris含有HBSS+、pH7.4中でインキュベートした。最後に細胞をHBSS+で3回洗浄し、そして溶解緩衝液(2% Triton X−100、2mM PMSF、0.1%アジ化ナトリウムおよび溶解緩衝液5ml当たり1錠のEDTA非含有完全ミニプロテアーゼカクテル(Roche Molecular Biochemicals)を含有するHBSS+)中氷上で5分間インキュベートすることにより溶解した。
【0181】
細胞を溶解緩衝液中で掻き取り、溶解物を収集した。溶解物は4℃で1時間14000xgで遠心分離した。清澄化した溶解物を次にヒトIgGコンジュゲート(1mg/ml)CNBr 4MBセファロースビーズ(Amersham Pharmacia)5μlと共に4℃で2時間予備清浄化した。ヒトIgGビーズを遠心分離して除去し、次に予備清浄化した溶解物を4℃で2時間CNBr 4MBセファロースビーズにコンジュゲートしたモノクローナル抗体LUCA31(1mg/mlでコンジュゲート)と共にインキュベートした。2時間のインキュベーションの後にLUCA31ビーズを遠心分離して除去した。ヒトIgGおよびLUCA31ビーズの両方を個々に3回溶解緩衝液1mlで洗浄し、次に1mlのHBSS+で3回洗浄した。洗浄したビーズはSDS−PAGE試料緩衝液30μlを添加し5分間99℃で煮沸することにより溶出させた。
【0182】
次に試料を4〜20%Novex勾配ゲル(Invitrogen)上で分割し、0.2μmのニトロセルロースメンブレン(Invitrogen)上に移行させ、セイヨウワサビパーオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートストレプトアビジン(Pierce Endogen)で可視化するか、またはLUCA31 5μ/ブロットを用いてウェスタンブロットに付した。
【0183】
HRPコンジュゲートストレプトアビジンを検出するためには、ニトロセルロースをまずブロッキング緩衝液(0.05%Tween−20含有Tris緩衝食塩水(TBST)中5%無脂肪乾燥乳)で1時間ブロッキングした。HRPコンジュゲートストレプトアビジンを1μg/mlでTBST中に希釈し、室温で30分間ニトロセルロースに曝露した。ニトロセルロースを3回TBSTで洗浄した後、ECL+(Amersham)で可視化した。
【0184】
LUCA31を用いたウェスタンブロットのために、ニトロセルロースをブロッキング緩衝液中で1時間同様にブロッキングした。次にニトロセルロースをブロッキング緩衝液中希釈した5μg/mlのLUCA31を1mlを含有するヒートシールしたプラスチック袋中でインキュベートした。ニトロセルロースをTBSTで3回洗浄した後、室温で1時間、1μg/mlのHRPコンジュゲートロバ抗マウスIgG(重鎖および軽鎖特異的、ウシ、ニワトリ、ヤギ、モルモット、シリアンハムスター、ウマ、ヒト、ウサギ、ヒツジの血清タンパク質に対して交差吸着;Jackson Immunoresearch Cat.#709−035−149)10mlと共にインキュベートした。最後にニトロセルロースを3回TBSTで洗浄し、ECL+(Amersham)で可視化した。
【0185】
図1はLUCA31を用いたSW480細胞溶解物の免疫沈降とその後のLUCA31抗体を用いたウェスタンブロットを示している。矢印は90〜100kDaの概ねの分子量を有する独特のバンドを指している。
【0186】
(実施例6.免疫組織化学的方法)
癌患者より得た凍結組織試料をOCT化合物に包埋し、ドライアイスを用いてイソペンタン中急速凍結した。低温切片はLeica 3050 CMミクロトームを用いて厚み8〜10μmとなるように切り出し、SuperFrost Plusスライド(VWR#48311−703)上に解凍搭載した。切片は75%アセトン/25%エタノールを用いて10℃で固定し、室温で2〜4時間風乾した。固定したセクションは使用時まで−80℃で保存した。
【0187】
免疫組織学的分析のためには、組織の切片を回収し、Trisで緩衝させた0.05%Tween(TB−T)中で洗浄し、室温で30分間ブロッキング緩衝液(TB−T、5%正常ヤギ血清および100μg/mlアビジン)中ブロッキングした。次にスライドを室温で60〜90分間ブロッキング緩衝液中希釈(1μg/ml)した抗トランスフェリンレセプターおよびコントロールモノクローナル抗体と共にインキュベートした。次に切片を3回ブロッキング緩衝液で洗浄した。結合したモノクローナル抗体は0.1M酢酸ナトリウム緩衝液pH5.05および0.003%過酸化水素(Sigma cat.No.H1009)中ヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)F(ab’)2−パーオキシダーゼコンジュゲートおよびパーオキシダーゼ基質のジアミノベンジジン(1mg/ml、Sigma cat.No.D5637)を用いて検出した。染色したスライドはヘマトキシリンで逆染色してNikon顕微鏡下に観察した。
【0188】
一部の場合においては、適切な抗原回収法を使用した後に、パラフィン包埋ホルムアルデヒド固定組織を免疫組織化学的分析に用いた。このような抗原回収法の1つはMangham and Isaacson,Histopathology 35:129−33(1999)に記載されている。抗原回収および/または検出の別の方法も当業者の知る通り使用してよい。凍結組織、または回収およびポリMICA検出と共に適宜固定組織を用いて抗原回収およびポリMICA検出と共に実施した同様の実験の結果を実施した。種々の正常および癌の組織への抗トランスフェリンレセプター抗体の結合を試験した。全ての場合においてコントロールの固定組織における抗体の結合は凍結組織のものと相関していた。凍結組織の結果は2者がコントロールにおいて合致しない場合にのみ使用した。
【0189】
簡便のために、異なる原料から得た凍結外科的組織を用いた数種の実験の複合的結果をまとめて表1および表2に示す。
【0190】
【表2】
【0191】
【表1】
(実施例7.免疫組織化学的結果)
モノクローナル抗体LUCA31を使用して組織の種々の型に由来する種々の細胞系統に対する反応性を試験した。結果は弱い陽性染色に対しては「+」、中等度の陽性染色に対しては「++」、強度の陽性染色に対しては「+++」そして陰性染色に対しては「−」と評点した。
【0192】
免疫組織化学的結果はWO 01/43869に記載の通りCellArrayTM技術を用いて得た。種々の樹立細胞系統由来の細胞をプロテアーゼを用いることなく増殖表面より採取し、充填し、OCT化合物中に包埋した。細胞を凍結して切片化し、次に標準的なIHCプロトコルを用いて染色した。
【0193】
種々の樹立ヒト正常および腫瘍細胞系統へのLUCA31抗体の結合を表3に簡便のために集約した。表3に示した実験は本明細書に記載した方法を用いたLive−cell ELISAおよびCallArrayTM結合実験を包含する。
【0194】
【表3】
モノクローナル抗体LUCA31を使用してグリオーマ誘導細胞系統に対する反応性を試験した。免疫組織化学的結果はCellArrayTM技術に関する上記のプロトコルと同様にして得た。グリオーマ誘導細胞系統をプロテアーゼを用いることなく増殖表面より採取し、充填し、OCT化合物中に包埋した。細胞を凍結して切片化し、次に標準的なIHCプロトコルを用いて染色した。LUCA31はスクリーニングした25のグリオーマ誘導細胞系統中21で陽性であった。染色の強度は+/−〜2+染色の範囲であった。
【0195】
(実施例8.別のLUCA細胞系統のスクリーニング)
腫瘍細胞系統分布の分析。LUCA31エピトープ発現を結腸直腸癌、非小細胞胚癌および膵臓癌を代表する32のヒト腫瘍細胞系統のパネルを用いて評価した。標的細胞へのLUCA31の結合は内標準の抗体(抗EGFレセプター)に相対比較しながら測定し、データは平均蛍光強度の関数としてプロットした。LUCA31染色の分布は図2に示す通りである。エピトープ発現実験の結果によれば、LUCA31は細胞パネルにわたって広範な染色強度を示していた。
【0196】
(実施例9.細胞増殖試験)
LUCA31抗体の生物学的活性を調べるために、本発明者等はトリチウム化チミジン取り込みを測定する本明細書に記載した細胞増殖試験においてこれを試験した。試験はFACSアレイにおいて呈示された32細胞系統と同様のもの、および、本抗体により認識されることを本発明者等が以前に示している別の5細胞系統に対して実施した。本発明者等は標準(10%)および低値(0.5%)の血清条件の両方を使用しながら活性について抗体を試験した。両方の血清条件を用いて活性を試験するという決定は低減された血清の条件を用いた場合に活性となるのみであるマウスEGFレセプター抗体225(セツキシマブのネズミ前駆体)を用いた実験に基づいたものであった。
【0197】
各抗体は抗体の5段階濃度(10、5、2.5、1.25および0.6ug/ml)を用いて試験し、そして結果を非抗体コントロールと比較した。各試験は3連で実施した。細胞の一次スクリーンの結果は表4に総括する通りであり、そしてLUCA31がこの細胞系統パネルにおいて広範に活性であることを示していた。斜線の細胞は陽性の評点を示し、数は細胞増殖の最大抑制を示している(すなわち90=90%増殖抑制)。
【0198】
40%以上の細胞増殖の抑制を陽性と評点した。この閾値は、共に本試験において細胞増殖の40〜50%低下を誘導したトラスツズマブおよびEGFレセプター抗体225を用いた実験と合致して、抗体が内因性の生物学的活性を示したことを表している。LUCA31抗体は特にこの試験において活性であり、低血清条件下で細胞増殖を大きく低減した。本抗体の活性に対する血清濃度の影響はASPC−1またはA431細胞を用いた場合にEGFR抗体225に関して観察されたものと同様である。
【0199】
【表4】
(実施例10.さらなるIHC分析)
LUCA31は正常(脳、結腸、心臓、肝臓、腎臓、肺、膵臓、小腸、脾臓)および腫瘍(乳房、結腸、肺、膵臓)の組織のパネルを用いて材料および方法で記載した通り評価した。染色はまず染色陽性としてRavenにより発見された組織を用いて至適化した。至適化の後、組織の免疫反応性をパーオキシダーゼコンジュゲート二次抗体を用いて評価し、強度を評点した。0.1ug/mlでLUCA31を用いた場合に得られたIHCデータの総括を表5に示す。LUCA31については正常組織における最強の染色は結腸および小腸において観察され、他の組織では限定的な染色が観察された。
【0200】
【表5】
(実施例11.トランスフェリンレセプター抗原の単離および特徴付け)
LUCA31が反応性となる抗原を発見するために、免疫沈降(Ippt)実験を実施した。Ipptのためには、SW480細胞の175cm2フラスコ30本を溶解緩衝液30mlで溶解した。溶解緩衝液の組成は2% Triton X−100、プロテアーゼ阻害剤カクテル(溶解緩衝液5ml当たり1錠のRoche Molecular Biochemicals製の完全ミニEDTA非含有プロテアーゼカクテル)、0.1%アジ化ナトリウムおよび2mM PMSFを添加したHank’s Balanced Salt Solution(HBSS+)とした。細胞溶解物は4℃で30分間24000xgで清澄化した後に、1mlのタンパク質G(Amersham Pharmacia)からなるカラムを通過させた。予備清浄化したSW480溶解物を次に、4℃で2時間、タンパク質G吸収トランスフェリンレセプター(5μlのタンパク質Gと共に室温で30分間トランスフェリンレセプター10μgを予備インキュベートした)と共にインキュベートした。ビーズ(予備清浄化タンパク質Gビーズおよびタンパク質G吸収トランスフェリンレセプタービーズの両方)を次に3回溶解緩衝液で洗浄し、その後、30μlのSDS試料緩衝液(3%SDS、20%グリセロール、10mM DTT、2%ブロモフェノールブルー、0.1M Tris,pH8.0)で溶離した。25マイクロリットルの溶離液を次にSDS−PAGEで分割し、クーマシー染色により可視化した。5マイクロリットルの溶離液をSDS−PAGEで分割し、さらにウェスタンブロット用のニトロセルロースに転移させた。
【0201】
次にブロットをLUCA31でプローブし、そしてウェスタンブロットキット(Invitrogen Cat.No.WB7103)を用いて発色させ、抗原の認識を確認した。トランスフェリンレセプターおよびトランスフェリンレセプターに対するマウスIgG溶離液をウェスタンブロットに付したところ、トランスフェリンレセプター溶離液に独特のタンパク質(90〜100kDa)が観察された。クーマシー染色によれば、〜100kDにおいてトランスフェリンレセプターに独特のタンパク質であることが観察された。NuPAGEゲルの染色タンパク質バンドを清浄なメスで切り出し、清浄なエッペンドルフ試験管に入れた。切り出したバンドは質量スペクトルによるタンパク質の確認のための使用時まで−20℃で保存する。
【0202】
(実施例12.質量スペクトル(MS/MS)を用いたLUCA31が結合する抗原の特徴付け)
LUCA31が結合する抗原は実施例11に記載する通り単離し、Kane et al.J Bio Chem.2002 June 21;277(25):22115−8,Epub May 06の方法に従ってTandem質量スペクトルに付した。タンパク質をSDS−PAGEで分離し、ゲルをコロイド状クーマシーブルー試薬(Invitrogen)で染色した。目的のタンパク質はトリプシンでゲル中消化した。トリプシン処理ペプチドはWu et al.,Nature 405:477−482(2000)に記載の通りイオントラップ質量スペクトル分析器(Thermo−Finnigan LCDQ DECA XP)上でマイクロキャピラリー液体クロマトグラフィーMS/MSにより配列決定した。この結果、トランスフェリンレセプターのフラグメントと合致する質量を有する1つのポリペプチドが得られた。
【0203】
LUCA31がトランスフェリンレセプターに結合することを確認するために、本発明者等はヒト胎盤から誘導した精製されたトランスフェリンレセプターの調製物を用いて実験を行った。図3に示す通り、別の抗トランスフェリンレセプター抗体、LUCA29および市販のトランスフェリンレセプター抗体BER−T9は共に、精製されたトランスフェリンレセプターに結合するが、LUCA31は結合しない。トランスフェリンレセプターの異なる調製物を用いてこの実験を反復した場合にも同様の結果が得られた(データ示さず)。
【0204】
本発明者等はこれ等のデータは、LUCA31がトランスフェリンレセプターと相互作用するタンパク質に結合するか、または、精製された物質の試料中に十分呈示されないエピトープに結合するかのいずれかを示しているものと解釈した。LUCA31標的の本発明者等の理解を精査するために、本発明者等は以下の実験を実施した。
a.抗体競合分析。本発明者等はHCT15細胞への結合に関してLUCA31と競合する既知トランスフェリンレセプター抗体能力を評価した。この実験の結果を図4、AおよびBに示す。本発明者等はHCT15細胞に結合するビオチニル化LUCA31の能力は抗体42/6により完全に抑制され、そして、OVCA26、LUCA29およびKID21により部分的に抑制されたことを発見した。OVCA18抗体は細胞へのLUCA31の結合を増大させ、そして他のトランスフェリンレセプター抗体はLUCA31の結合に影響するようには観察されなかった。図4Bはネガティブの抗体1B7.11はLUCA31の結合に対する作用を有さず、そして、非ビオチニル化LUCA31はビオチニル化抗体の結合を完全にブロックすることを示している。これ等の観察結果に基づいて本発明者等はLUCA31はOVCA18抗体により安定化または誘導されるエピトープを認識し、そして、このエピトープはトランスフェリンの結合部位に機能的に連結されることを提案する。この観察結果を特に興味深いものとしていることは、OVCA18は細胞増殖も促進し(データ示さず)、そしてトランスフェリンの細胞への結合も促進する(以下の図6参照)という点である。総括すれば、これ等のデータは、LUCA31はトランスフェリンレセプターに結合しているという考えと合致しているが、トランスフェリンレセプター抗体のサブセットと結合部位を共有している関連因子に抗体が結合していたかもしれないという可能性を排除するものではない。
b.CHO細胞におけるトランスフェリンレセプターの発現。LUCA31のエピトープをさらに明確化するために、本発明者等は材料および方法において記載した通り完全長ヒトトランスフェリンレセプターをクローニングし、CHO細胞において発現させた。図5に示す通り、CHO細胞のLUCA31染色のFACS分析は二次抗体単独で観察された染色の水準と同等であった。これとは対照的に、トランスフェリンレセプターコンストラクトでトランスフェクトしたCHO細胞は二次抗体試薬と相対比較してLUCA31による実質的染色を示した。これ等のデータは抗体競合試験の結果と合わせると、LUCA31がトランスフェリンレセプターに直接結合することを示している。
c.推定作用機序。本発明者等の現時点でのデータはLUCA31はトランスフェリンレセプターに直接結合するが、トランスフェリンレセプターに特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)により共通して認識されないエピトープと相互作用するかもしれないという考えと合致している。トランスフェリンレセプター抗体は以前よりトランスフェリンレセプターのエンドサイトーシスの混乱を介して鉄の輸送を制限することにより、または、レセプターへのトランスフェリンの結合をブロックすることにより細胞の増殖をブロックすることが解っている。レセプターへの結合に関してLUCA31とトランスフェリンが競合するかどうかを調べるために、本発明者等はLUCA31とトランスフェリンの相互作用を細胞結合試験において調べた。トランスフェリンの漸増濃度は細胞へのLUCA31の結合に明確に影響しなかったが、基準物質のトランスフェリンレセプター抗体42/6の結合は低減した(図6A)。興味深いことに、LUCA31の添加により細胞へのトランスフェリンの結合は増大したが、基準物質の抗体42/6はトランスフェリンの結合を抑制した(図6B)。これ等の結果は、42/6とは異なり、LUCA31はトランスフェリンの結合と重複しない部位に結合することを示している。これは42/6が細胞へのLUCA31の結合を抑制するという観察結果を考慮すると興味深いことである。本発明者等はさらに、細胞へのLUCA31の結合に対するその作用を鑑みて、これ等の試験におけるOVCA18抗体の作用を検討した。LUCA31と同様、OVCA18抗体もまた細胞へのトランスフェリンの結合を増大させたが、その程度はより低値であった。
【0205】
(実施例13.別の組織結合試験)
標的発現および分布。本発明者等のデータはLUCA31がトランスフェリンレセプター上に存在するエピトープに結合するという考えと合致していたため、本発明者等はトランスフェリンレセプターと比較しながらLUCA31エピトープの組織分布および発現を評価することが重要であると考えた。以前の試験によればLUCA31は肝臓、膵臓または脳の切片は染色せず、そしてこれらの組織は通常はトランスフェリンレセプターmAbにより認識されることが示されている。これから派生して、本発明者等はこれらの組織の各々の3試料を使用しながら、そして比較コントロール組織としての結腸も含めて、3種の既知のトランスフェリンレセプター抗体(H68.4、BERT9およびDF1513)およびLUCA31の染色パターンを分析した。この実験の総括を表6に示す。
【0206】
【表6】
本実験の結果は前回の試験と合致しており、LUCA31がプロトタイプのトランスフェリンレセプター抗体と同じ組織染色パターンをもたらさないことを示している。これらの結果は他のトランスフェラーゼレセプター抗体により認識されるエピトープとは異なるパターンにおいて分布するエピトープをLUCA31抗体が認識し、そして他のトランスフェリンレセプター抗体よりも望ましい治療指数をもたらすということを裏付けている。しかしながら10ug/mlで染色された膵臓および脳はLUCA31エピトープがこれらの組織に存在するが結腸および一部の腫瘍試料ほどは豊富ではないことを示唆している。
【0207】
本発明者等はまた癌におけるエピトープの発現の発生率をより明確化するためにLUCA31を用いて別の腫瘍組織の染色を調べた。以前において、この抗体はヒト結腸癌、ヒト膵臓癌およびヒト肺癌上において陽性であることが示されている。本試験においては本発明者等は本抗体の陽性反応性の発生率を明確化するために別の肺、膵臓および結腸の癌試料を評価した。LUCA31は4結腸癌患者中4人;2膵臓癌患者中2人:および2肺癌患者中2人において陽性であった(表7)。全腫瘍は1ug/mlおよび10ug/mlの両方において陽性であった。結腸および肺癌は1ug/mlにおいて強い強度の染色を示したのに対し、膵臓癌は抗体1ug/mlにおいて弱い強度の染色および10ug/mlにおいて中等度の強度の染色を示した。これらの結果はLUCA31エピトープが腫瘍組織において発現されることを示す別のデータと合致している。
【0208】
【表7】
(実施例14.RBC、血小板および白血球のFACS分析)
赤血球、血小板および白血球のLUCA31染色の分析を実施することにより血液コンパートメント中の抗原発現を評価した。これらの細胞集団の何れにおいても染色は観察されなかった。これもまた単球およびリンパ球集団におけるトランスフェリンレセプター発現に関する公開された報告とは矛盾している。しかしながら、トランスフェリンレセプター発現は非増殖リンパ球と相対比較して刺激されたリンパ球において誘導されるため(Neckers & Cossman,Transferrin receptor induction in mitogen−stimulated human T lymphocytes is required for DNA synthesis and cell division and is regulated by interleukin 2(有糸分裂誘発物質刺激ヒトTリンパ球におけるトランスフェリンレセプター誘導はDNA合成および細胞分裂に必要であり、そしてインターロイキン2により調節される)、Proc Natl Acad Sci USA 80,3494−3498(1983))、本発明者等はLUCA31を用いながらPHAにより刺激されたTリンパ球の染色を調べることにより本発明者等の分析をさらに進めた(表8)。比較コントロールとして、本発明者等はトランスフェリンレセプター抗体LUCA29およびBERT9並びにリンパ球染色に関する標準物質としてアルファ2およびベータ1インテグリン抗体を使用した。組織試料の本発明者等の分析とは異なり、本試験においてはLUCA31と他のトランスフェリンmAbとの間の差は観察されなかった。
【0209】
【表8】
注記:
−特段の記載が無い限り、全集団は記載された染色水準を有していた。
−「sub」という略記はある特定のサブ集団が活性を示し、残余が陰性であったことを示す。
−「B」細胞は本表ではCD3陰性リンパ球を表す。
−「T」細胞は本表ではCD3陽性リンパ球を表す。
【0210】
トランスフェリンレセプターは分化中の骨髄先祖細胞上に発現されることがわかっている(Helm et al.,Characterization and phenotypic analysis of differentiating CD34+ human bone marrow cells in liquid culture(液体培養における分化中のCD34+ヒト骨髄細胞の特徴付けおよび表現型の分析)、Eur J Haematol 59,318−326(1997))ため、本発明者等はLUCA31エピトープが骨髄誘導細胞においても発現されるかどうか調べるために実験を行った。これを行うために本発明者等はCD34リッチ化骨髄細胞を入手し、それをLUCA31および異なる特異性を有する別の抗体KID20を用いてFACSにより評価した。
【0211】
この実験で得られたデータは表9に示す通りであり、これはヒト骨髄先祖細胞の他の抗体による染色を示している。未刺激および成長因子刺激細胞の両方の抗体染色はFACSにより測定し、結果は抗体染色細胞のパーセントとして表示した。未投与細胞においてはLUCA31染色はトランスフェリンレセプター抗体BERT9を用いて得られた結果と極めてよく似ていた。細胞を成長因子、例えばGM−CSF、SCF、IL−3およびEPOの存在下に72時間培養した場合、LUCA31およびBERT9染色細胞の比率は上昇した。これらの結果は増殖中のリンパ球を用いながら本発明者等が観察したものと同様であり、LUCA31エピトープが成長因子刺激骨髄先祖細胞集団においても発現されることを示している。
【0212】
【表9】
先祖細胞刺激条件、
5ng/ml rGM−CSF、
50ng/ml rSCF、
5ng/ml rIL−3、
5単位/ml EPO。
【0213】
(実施例15.活性試験)
本分子の活性をさらに十分特徴付けするため、本発明者等は異種移植片腫瘍モデル(ヒト異種移植片細胞パネル)において有効化されている細胞のパネルを試験し、そして、抗体が単独で、そして化学療法剤と組み合わせて高度に活性であることを明らかにした。本発明者等はLUCA31がトランスフェリンレセプターと相互作用することを示しているため、本発明者等は十分試験されたIgAトランスフェリンレセプター抗体42/6(Trowbridge & Lopez,1982)と相対比較した場合のその活性を基準とした。表10に示す通り、LUCA31は本発明者等が優先した異種移植片パネルにおける細胞系統全てにおいて活性であり、抗トランスフェリンレセプター抗体42/6と良好な同等性を示していた。
【0214】
【表10】
LUCA31抗体はまた、化学療法剤カンプトテシン、カルボプラチン、ドキソルビシン、ゲンシタビンおよびパクリタキセルと組み合わせて異種移植片細胞パネルにおいて試験した。各因子につき、LUCA31の添加は付加的効果をもたらし、抗体が腫瘍溶解剤の作用に拮抗しない可能性があることを示している。HCT116細胞における化学療法剤とのLUCA31の組み合わせに関する代表的データを図7に示す。LUCA31化学療法剤組み合わせ試験の結果はHer2ターゲティング抗体トラスツズマブと対にした化学療法を本発明者等が検討した場合に得られた結果に匹敵するものであった。
【0215】
LUCA31の活性は低血清条件において最大となり、ウシ胎児血清(FBS)中で使用される成分が細胞増殖をブロックする本抗体の能力を減衰することを示唆している。42/6抗体が固形腫瘍細胞系統の増殖をブロックする能力はまた低血清条件において最大となることがわかっており、そしてこれは抗体とトランスフェリンとの間の競合によるものである(Taetle,R.,and Honeysett,J.M.(1987))、Effects of monoclonal anti−transferrin receptor antibodies on in vitro growth of human solid tumor cells(ヒト固形腫瘍細胞のインビトロの増殖に対するモノクローナル抗トランスフェリンレセプター抗体の作用)Cancer Res 47,2040−2044)。LUCA31はトランスフェリンレセプターの結合に関してはトランスフェリンと競合するとは考えられないが、本発明者等は10%FBS中のLUCA31の低下した活性が細胞培養用培地中の増大したトランスフェリンの結果であるかどうかを調べるために実験を行った。
【0216】
この問題を対象とするために、本発明者等は低血清培地中に鉄負荷トランスフェリンを添加し、そして、異種移植片腫瘍細胞系統パネルを用いながらLUCA31と42/6の両方の活性を調べた。本発明者等は細胞培養用培地にホロトランスフェリンを添加した場合にLUCA31と42/6の両方の活性が低下することを発見した。図8はLUCA31に対して最も感受性の高い3細胞系統、すなわち0および100ug/mlトランスフェリンにおけるHCT15、HCT116およびLOVOに関するデータを示す。HCT15細胞においては、LUCA31は添加トランスフェリンの存在下において良好な活性を保持していた。
【0217】
これは10%血清中においてもこの抗体が活性を維持する能力と合致している。総括すれば、これらのデータは細胞増殖をブロックするLUCA31の能力はトランスフェリンにより減衰することができることを示唆しており、そして、10%血清含有細胞培養条件におけるこの抗体の限定された活性が増大したトランスフェリン濃度に起因するものであるという考えを裏付けている。高血清における抗体42/6の低減された活性の兆候にも関わらず、上記および他のトランスフェリンレセプター抗体は動物の癌モデルにおいて活性であることがわかっており、インビボで機能する分子の能力は血清中トランスフェリンの量により相殺されないことを示唆している。
【0218】
(実施例16.細胞周期の分析)
LUCA31の作用機序をさらに明確化するために、本発明者等は細胞周期を経るHCT15細胞の過程に対しどのように抗体が影響するのかを調べた。図9に示す通り、24時間LUCA31をHCT15細胞に投与したところ、2N含有(G1)細胞の比率が低下し、S期停止と合致するDNA含量を有する細胞の集団が増大した。さらに又LUCA31を投与したHCT15細胞は細胞死と合致するDNA含量<2Nの細胞集団の増大を示した。この作用は投与コントロール抗体や未投与の細胞では観察されなかった。これ等のデータはLUCA31がHCT15細胞のサブ集団において細胞増殖停止ではなく細胞死を誘導し、そして、LUCA31曝露に対してこれらの細胞が最も感受性である根拠を与えることを示唆している。
【0219】
(実施例17.腫瘍細胞系統に対するLUCA31の作用)
別の腫瘍型における本分子の潜在的活性を調べるために、前立腺(DU145、LNCap)および乳房(MCF7、MDA−MB−231、MDA−MB−435、ADR−Res)から誘導した固形腫瘍細胞系統においてLUCA31を試験した(図10)。LUCA31エピトープの発現は細胞系統の各々において同様であったが、LUCA31はMCF7細胞において最も活性であるように観察された。これらの結果は結腸、肺および膵臓の癌を用いて得られたデータに匹敵するものであった。
【0220】
固形腫瘍細胞系統のほかに、本発明者等はリンパ腫、白血病および多発性骨髄腫から誘導した細胞を用いてLUCA31の活性を調べた。本発明者等がこれを重要であると考えた理由は、基準となるトランスフェリンレセプター抗体(42−6)を使用して報告されている試験の大部分が血液学的癌細胞系統を用いて実施されていることであった(例えばSavage,1987;Trowbridge & Lopez,Monoclonal antibody to transferrin receptor blocks transferrin binding and inhibits human tumor cell growth in vitro(トランスフェリンレセプターに対するモノクローナル抗体はトランスフェリンの結合をブロックし、インビトロのヒト腫瘍細胞増殖を抑制する),Proc Natl Acad Sci USA 79,1175−1179(1982);White,1990参照)。図11に示すこれらの実験の結果はLUCA31エピトープがCCRF−CEM細胞系統において最も高度に発現されたが、試験した他の細胞系統においても検出されたことを示している(図11A)。LUCA31はこれらの細胞系統の各々において活性であり、一部の場合はコントロール値の10%まで細胞増殖を低減した(図11B)。この活性は基準抗体42−6よりも優れており(データ示さず)、そして低血清において最大であった。
【0221】
(実施例18.癌細胞系統786−O、SKMES−1、MDA−MB−175VIIおよびColo205に対するLUCA31の作用)
単層として増殖させた場合のインビトロの細胞数を低減させる抗体の能力は被験またはコントロールの精製抗体の種々の量の存在下または非存在下において増殖させた細胞単層を用いて評価することができ、そして細胞数の変化はMTTを用いて評価できる。MTTはミトコンドリア酵素の活性を測定する染料であり、そして相対的生細胞数と相関している。96穴プレートに10%ウシ胎児血清を添加したF12/DMEM(1:1)増殖培地中に目的の細胞をプレーティングして増殖させた。以下の細胞系統を96穴のディッシュの3連のウェル中に以下の密度、すなわち786−O、Colo205、MDA−MB−175VIIおよびSKMES−1をそれぞれ1800、1500、2500および1500個/ウェルでプレーティングした。プレーティング直後にLUCA31を添加した。細胞は5日間5%CO2/空気において湿潤インキュベーター中で37℃でインキュベートした。試験終了時にMTTをPBSに溶解(5mg/ml)し、1:10希釈度でウェルに直接添加した。プレートは4時間インキュベーターに戻した。インキュベーションの後、培地を除去し、100μlのDMSOを添加してMTT沈殿物を溶解した。プレートはOD540nmで読み取った。
【0222】
20μg/mlにおいてLUCA31は腎細胞腺癌786−Oを54%(3実験の平均)、結腸直腸腺癌Colo205を37%(4実験の平均)、乳管癌MDA−MB−175VIIを35%(2実験の平均)および肺扁平上皮癌SKMES−1を45%(3実験の平均)増殖抑制した。
【0223】
LUCA31の作用の代表的なグラフによる結果は図12に示す通りである。図12Aは786−O細胞に対するLUCA31の作用の代表的なグラフによる結果である。図12BはColo205細胞に対するLUCA31の作用の代表的なグラフによる結果である。図12CはSKMES−1細胞に対するLUCA31の作用の代表的なグラフによる結果である。
【0224】
(実施例19.LUCA31および毒素コンジュゲート抗マウスIgGの内在化)
Ma−ZAP(Advanced Targeting Systems,San Diego,CA)はタンパク質合成を抑制する毒素であるサポリンにコンジュゲートした抗マウスIgGである。この毒素は細胞膜を通過できない。内在化できる細胞表面抗原にモノクローナル抗体を結合すれば、毒素コンジュゲートは結合モノクローナルに結合することができ、これにより内在化して最終的には細胞を殺傷できる。毒性活性の提示のための内在化に依存して、Mab−ZAPはある表面抗原が細胞毒性作用を発現するために内在化に依存したいずれかの毒素のための適当な標的として機能するかどうかを評価するために使用できる。すなわち、Mab−ZAPはマイタンシノイドおよびカリケマイシンのようなこのような内在化依存性毒素のためのモデルとして機能する。
【0225】
腫瘍細胞によるLUCA31およびサポリンコンジュゲート抗マウスIgGの内在化およびサポリン内在化後に腫瘍細胞を殺傷する作用を試験するために、ヒト結腸腫瘍細胞Colo205を10mM EDTAを用いて保存フラスコより採取し、遠心分離した。細胞は適切な培地中50000/mlで再懸濁し、そして96穴プレートにウェル当たり100μlをプレーティングした。抗体LUCA31を10倍濃縮物として適切なウェルに即座に添加し、終濃度10ug/mlとした。室温で15分の後、Mab−ZAP(Cat.#IT−04,Advanced Targeting Systems,San Diego,CA)を10倍濃縮物として適切なウェルに添加し、終濃度0.001nM〜10nMとした。4日間増殖させた後、MTTを37℃で4時間添加した(保存溶液5mg/ml PBS;ウェル中1:10希釈)。次に培地を全ウェルから除去し、100μl/ウェルのDMSOを添加した。プレートを穏やかに振とうして青色のMTT沈殿を安定化させ、プレートをOD540nmで読み取った。
【0226】
LUCA31非存在下と比較してLUCA31存在下においてColo205細胞のMTT染色が低減した。これはColo205細胞の増殖がLUCA31およびMab−ZAPの存在下で抑制されたことを示しており、そしてこれらの結果はLUCA31および毒素コンジュゲート抗マウスIgGがColo205細胞中に内在化されたことを示すものである。
【0227】
本実施例の方法に従った内在化実験の結果は図13に示す通りである。
【0228】
(実施例20.リンパ球および骨髄細胞による活性)
LUCA31によるリンパ球および骨髄先祖細胞の染色がこれらの細胞における抗増殖活性を予測するものであるかどうかを調べるために、本発明者等はヒト末梢血液白血球およびCD34選択骨髄先祖細胞を用いたトリチウム化チミジン系細胞増殖試験を開発した。これらの細胞集団の両方につき、本発明者等はLUCA31エピトープ染色を測定するために用いたものと同じサイトカインカクテルを使用した。ヒト白血球に対するLUCA31の作用を試験するために、本発明者等はPHA/IL−2単独で、または種々の量のコントロールIgG1抗体またはLUCA31の存在下に単離PBMCを刺激した。この実験の結果によれば(図14)、LUCA31は増殖中の白血球集団においてトリチウム化チミジンの取り込みを強力に抑制し、細胞増殖の約90%抑制をもたらした。
【0229】
骨髄先祖細胞に対するLUCA31の作用を評価するために本発明者等は同様の試験を今回はEPO、IL−3、SCFおよびGM−CSFを含有するサイトカイン/成長因子カクテルで刺激したCD34選択ヒト骨髄誘導細胞を用いて実施した。この実験のために本発明者等は2段階の異なる細胞播種密度を用いてコントロールIgG1抗体1B7.11とLUCA31を比較した。この実験の結果(図15)はLUCA31がコントロールの水準の20%まで細胞増殖を低下させたことを示している。これと比較してコントロール抗体は中等度の作用を有していた。総括すれば、これ等の実験はLUCA31が両方の腫瘍細胞並びに末梢血液および骨髄コンパートメントの両方から誘導した正常細胞の増殖を強力に抑制することができることを示している。
【0230】
骨髄誘導細胞に対するLUCA31の作用は潜在的な毒性に対する感受性を考慮すれば特筆すべきものである。上記した通り、トランスフェリンレセプター抗体42−6のヒト第I相治験において骨髄抑制の一部の兆候が観察された(Brooks et al.,1995)。本発明者等のデータはLUCA31が他のトランスフェリンレセプター抗体と同様、腫瘍の増殖を抑制できるが、骨髄先祖細胞集団の増殖にも影響する場合があるという考えに合致している。しかしながら、以前より知られているトランスフェリンレセプター抗体と相対比較してLUCA31は有意に低減された毒性を有すると考えられる。
【0231】
(実施例21.インビボの生物学的特徴)
腫瘍誘導細胞系統による本発明者等のインビトロの試験の結果は本発明者等がLUCA31が異種移植片モデルに翻訳した細胞系統のパネル内で広範な活性を有している。LUCA31は結腸癌細胞系統HCT15の増殖のブロッキングにおいて特に活性であった。これ等の結果に基づいて、本発明者等は樹立されたHCT15腫瘍異種移植片モデル単独およびゲンシタビンとの組み合わせにおいてLUCA31の作用を試験することとした。この試験においてはマウス15匹の群に4週間抗体500ugを週二回投与した。ゲンシタビンはほぼMTDである120mg/kgでq3dx2の日程で投与した。投与は腫瘍容量が平均70mm3となった時点で開始した。試験の結果は図16に示す。図16Aにおいては中央値の腫瘍容量を示し、そして図16Bにおいてはエラーバーと共に平均の腫瘍容量を示す。この実験においては、LUCA31抗体は生理食塩水コントロールと相対比較して14日より長い腫瘍増殖の遅滞をもたらした。ゲンシタビンは20日の腫瘍増殖遅滞をもたらし、LUCA31とゲンシタビンの組み合わせはゲンシタビン単独と比較して18日の腫瘍増殖遅滞をもたらした。
【0232】
この実験の結果はLUCA31抗体がこの腫瘍モデルにおいて活性であり、そして、データが結腸直腸腫瘍モデルのセツキシマブと良好な同等性を有することを示している。本発明者等によるLUCA31の理解に基づけば、そして特定の機序に制約されなければ、現時点では腫瘍細胞に対する本抗体の作用はトランスフェリンレセプターとのその相互作用により媒介される内因性の活性により主に駆動されていると考えられる。LUCA31はマウスIgG1分子であり、そしてこのアイソタイプのFcドメインはFcレセプターに対して低い親和性を有しているため、腫瘍細胞のADCC媒介破壊は腫瘍増殖の遅滞に実質的に寄与していないと考えられる。
【0233】
マウスFcレセプターに対する増強した親和性を有する抗体はレセプターの交差連結を介して、並びに増強された免疫エフェクター機能を介して、腫瘍増殖の対処においてより有効であると考えられる。この概念に着目して、ヒトIgG1 Fcドメインを含有するヒトキメラLUCA31分子が生成されている。
【0234】
(実施例において参照される材料および方法)
(LUCA31 V領域のクローニングおよび発現ベクターの構築)
導入:LUCA31のRNAはマウス抗体を発現するハイブリドーマ細胞系統から抽出し、重鎖および軽鎖の可変領域をcDNAからRT−PCRにより引出した。V領域をCHEF1哺乳類発現ベクター内に挿入した。
【0235】
(材料および方法)
RNA抽出:
QIAGEN RNeasy Mini Kit(Cat No 74106)を用いて凍結ハイブリドーマ細胞ペレットからRNAを抽出した。
【0236】
cDNA:
Rocheの「RT−PCR用1stStrand cDNA合成キット(AMV)」(Cat No 1 483 188)を用いてcDNAを形成した。PCR反応のネガティブを得るために反応はRTの存在下および非存在下において実施した。
【0237】
RT−PCR:
PCRはcDNA鋳型上において、Padmaの「ShortPCR」プログラムおよびClontechのAdvantage PCRキットを用いながら実施した。
【0238】
2μl cDNA反応
5μl 10X緩衝液
2μl各プライマー
1μl dNTPミックス
1μl Advantageポリメラーゼ
dH2O全量50μl相当量。
【0239】
ネガティブ(RTcDNA非存在)は各プライマー組み合わせにつき実施した。使用した変性プライマーは単にV領域のCH1ドメインではなくシグナル配列に関する配列を含有するものとした。
【0240】
(マウス抗体V領域に関する変性プライマー)
【0241】
【化5】
(ベクターの構築)
使用した制限酵素類およびリガーゼはRoche、NEBまたはPromegaより購入した。ライゲーションはStratageneから入手した化学的にコンピテントなXL10−Gold細胞内に形質転換し、LBM/Carbアガロースプレート上にプレーティングした。コロニーはミニプレップ用の100または50μg/mlのいずれかのカルベニシリンを用いてLBM内に釣菌した。
【0242】
ミニプレップおよびマキシプレップはQIAGENのキットを用いて実施した。大型ベクター(pDEF14およびpNEF5)のマキシプレップ用には、200mlの一夜培養物を増殖させ、細胞をペレット化した。QIAGENのプロトコルに従い、2x100ml培養物を調製するように、全ての容量のP1、P2およびP3を2倍にした。第1回目の遠心分離の後、全ての上澄みを1つのカラムに適用し、DNA収量分を効率的に濃縮した。発現ベクターはコード領域を通して配列決定した後にCHO細胞にトランスフェクトし、そして制限酵素消化により分析した。
【0243】
(LUCA31染色の組織分析)
LUCA31および市販のトランスフェリンレセプター抗体は凍結組織切片を用いながら試験した。組織切片を−20℃で100%アセトン中に10分間固定し、次に洗浄緩衝液に入れ、そして第1ブロッキング溶液工程に付した。洗浄緩衝液=1X TBSに0.05%Tween20添加/希釈液=洗浄緩衝液中20%ヒト血清、2%BSA。
【0244】
(染色プロトコル)
1)H2O2ブロック:DAKOパーオキシダーゼブロッキング試薬、cat#003715、15分間
2)タンパク質ブロック:洗浄緩衝液中20%ヒト血清、2%BSA
3)アビジン/ビオチンブロック:ベクターcat#sp−2001、15分間アビジン(A)濯処理X2洗浄/15分
4)ビオチン(B)ブロットオフおよび一次抗体添加
5)1°抗体:(表参照)1時間
6)洗浄X3、1°後
7)3°(表参照)30分/洗浄X3
8)DAB:DAKO DAB+、Cat#K3468、提供緩衝液ml当たりDAB 1滴(パッケージの説明書)。発色時に水で反応停止。
【0245】
9)逆染色:Gillsのヘマトキシリン、1回迅速浸積後に数回濯処理。水道水中青色5分間
10)キシレンで脱水しマウント用培地とともにカバーガラス適用。
【0246】
【表11】
(抗体バイオアッセイ)
アッセイは96穴の平底組織培養プレートにて実施する。
【0247】
第1日:
細胞使用準備:#細胞を細胞系統に応じてプレーティングする(1000〜6000/ウェル);細胞を200ul RPMI1640+10%ウシ胎児血清(FBS)中ウェルに添加する
一夜37℃でインキュベートする。
【0248】
第2日
ウェルから培地を吸引し、150ulの完全培地、次に50ulの4x抗体希釈物(10ug/ml、5ug/ml、2.5ug/ml、1.25ug/ml、0.6ug/ml)またはネガティブを添加する。抗体希釈は3連で行う。
一夜37℃でインキュベートする。
【0249】
第3日は48時間37℃でインキュベートを継続する。
【0250】
第5日
注記−パルシングの前に、半付着細胞(例えばColo25)と共にプレートを遠心分離する。
1uCiの3Hチミジンでパルシングする(20ulの完全増殖培地中)。
6時間〜一夜インキュベートする。
【0251】
第6日
0.5%SDS(D−PBS中に調製)20ulをウェルに添加し、SDS終濃度を0.05%とする。
約60分間−80℃の冷凍庫で細胞を冷凍する。
採取し、細胞内DNA中のトリチウム化チミジンの取り込みを計数する。
【0252】
(CHO細胞におけるヒトトランスフェリンレセプターの発現およびLUCA31による染色)
ヒトトランスフェリンレセプターを以下のプライマー:
5’−GAA TTC TGC AGG GGA TCC GCC ACC ATG ATG GAT CAA GCT AGA TCA GCA TTC TC−3’
5’−CTC GAG CGG CCG CCA CTG TTA AAA CTC ATT GTC AAT GTC CC−3’
を用いてヒトcDNAからPCR増幅し、そして完全長トランスフェリンレセプター遺伝子を修飾pDEF2ベクターにクローニングすることにより発現ベクターTFRC−pDEF99TORAを生成した。TFRC−pDEF99TORA発現コンストラクトをMirus TransITトランスフェクション試薬を用いながら、そして、Pvu I消化線状プラスミドを用いたエレクトロポレーションによりCHO細胞にトランスフェクトした。細胞は限界希釈により選択した。米国特許5,888,809に開示されている該当する方法を参考として本明細書に援用する。
【0253】
LUCA31染色を評価するために細胞系統をFACSおよび蛍光顕微鏡観察に付した。細胞の小区分を100ng/mlに希釈したLUCA31抗体と共に30分間氷上でインキュベートし、洗浄し、次にFITCコンジュゲート抗マウス抗体の1:200希釈物と共にインキュベートした。次に洗浄した細胞をFACSで評価するか、または、蛍光顕微鏡を用いて直接観察した。未トランスフェクトCHO細胞またはベクター単独でトランスフェクトしたCHO細胞には蛍光染色は検出されなかった。発現ベクター単独と相対比較してTFRC−pDEF99TORAでトランスフェクトした細胞においてはFACSによりFL1チャンネルを用いた場合にバックグラウンドより50倍高値のシグナルが検出された。
【0254】
(FACS分析)
FACS緩衝液(D;PBS+.1%BSA)
BSA(内毒素非含有)
−マウスIgG FITCコンジュゲート(Sigma#F−2883_FACS緩衝液中1:200希釈)
1%ホルムアルデヒド(D−PBS中)
FACS試験管(Falcon#2052)
96穴ポリスチレン丸底細胞培養プレート(Corning/Costar#3799)
プロトコル
−200_l D−PBS中に細胞を再懸濁する。
−穏やかに回転混合する。
−50_lの適切な試薬(抗体、アイソタイプコントロール、培地・・)を各ウェルに添加し、穏やかに回転混合する。
−30分間氷上でインキュベートする。
−遠心分離(1100RPM/5分)し、培地を除去する(振り払い)。
−穏やかに回転混合する。
−200_l D−PBS中で1回洗浄する(遠心分離、振り払い、穏やかに回転混合)。
−200_l_−マウスIgG FITCコンジュゲート(FACS緩衝液中1:200希釈)中に再懸濁し、
穏やかに回転混合する。
−暗所(ホイル)氷上で30分間インキュベートする。
−遠心分離(1100RPM/5分)し、培地を除去する(振り払い)。
−穏やかに回転混合する。
−200_l D−PBS中で1回洗浄する(遠心分離、振り払い、穏やかに回転混合)。
−200_l 1%ホルムアルデヒド(D−PBS中)中に再懸濁し、FACS試験管に移す。
−FACS上でFL1蛍光強度を読み取る。
【0255】
本明細書に記載した実施例および実施形態は説明目的のみであり、それを参照しながら種々の改変または変更が当業者には示唆されるが、それは本出願の精神および範囲に包含されるものである。本明細書において引用した全ての出版物、特許および特許出願は、個々の出版物、特許および特許出願が特別に、そして個別に参照により組み込まれるように指示される程度と同じ範囲まで、全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0256】
【図1】図1はSW480細胞溶解物上のLUCA31モノクローナル抗体を用いた免疫沈降、次いでLUCA31モノクローナル抗体を用い、ECL+検出システム(Amersham)を用いて可視化したウェスタンブロットを示す。
【図2】図2は32細胞系統FACSアレイのLUCA31(斜線)およびEGF(白)のレセプター抗体染色を示す。
【図3】図3は精製されたトランスフェリンレセプターの試料にLUCA31が結合しないことを示している。矢印はゲル中のトランスフェリンレセプターの位置を示す。
【図4】図4は既知のトランスフェリンレセプター抗体の存在下におけるHCT15細胞へのLUCA31の結合の分析を示す。
【図5】図5はLUCA31を用いたCHO細胞のFACS分析を示す。細胞はpDEFベクター単独(左パネル)またはヒトトランスフェリンレセプターを含有するpDEFベクター(右パネル)でトランスフェクトした。
【図6】図6AはHCT15細胞へのLUCA31の結合に対するトランスフェリンの作用を示す。図6BはHCT15細胞へのトランスフェリンの結合に対するLUCA31の作用を示す。
【図7】図7はパクリタキセル単独またはパクリタキセルおよび5ug/mlのLUCA31抗体の組み合わせを用いた化学療法複合試験の結果を示す。細胞の増殖はトリチウム化チミジン取り込みにより測定した。
【図8】図8はHCT15(A)、HCT116(B)およびLOVO(C)細胞におけるLUCA31および42/6の活性に対する100ug/mlトランスフェリンの作用を示す。
【図9】図9はHCT15の細胞周期の進行に対する5ug/ml LUCA31の作用を示す。投与およびコントロール細胞のDNA含有量はプロピジウムにより測定した。矢印はS期の停止および細胞死を示すヒストグラムの領域を示す。
【図10】図10はヒト腫瘍細胞系統パネルにおけるLUCA31の活性を示す。図10Aは乳癌および前立腺癌から誘導した細胞系統に結合するLUCA31のFACS分析を示す。データは平均蛍光強度の関数としてプロットし、そしてEGFR染色を標準物質として使用した。図10Bは乳癌および前立腺癌の細胞系統におけるLUCA31の最大活性(0.5%血清中で測定)を示す。データ値は10ug/ml〜0.6ug/mlの抗体の5点用量力価を用いて観察された細胞増殖の最大抑制を示す。
【図11】図11はヒト血液腫瘍細胞系統パネルにおけるLUCA31の活性を示す。図11Aは血液癌系統から誘導した細胞系統に結合するLUCA31のFACS分析を示す。図11Bは血液癌系統におけるLUCA31の最大活性(0.5%血清中で測定)を示す。
【図12】図12Aは786−O細胞系統の増殖に対するLUCA31のインビトロの活性を示すグラフである。図12BはSKMES−1細胞系統に対するLUCA31のインビトロの活性を示すグラフである。図2CはSKBR3細胞系統に対するLUCA31のインビトロの活性を示すグラフである。図2DはColo205細胞系統に対するLUCA31のインビトロの活性を示すグラフである。
【図13】図13はヒト結腸癌細胞系統Colo205の増殖に対するLUCA31およびMab−ZAP(サポリンへの抗IGGコンジュゲート)の作用を示すグラフである。
【図14】図14は白血球の増殖に対するLUCA31の作用を示す。LUCA31およびコントロールのIgG1抗体1B7.11を正常ヒト白血球増殖試験において比較した。細胞はPHAを用いて刺激し、細胞増殖に対する作用はトリチウム化チミジン取り込みにより測定した。データは抗体濃度に対するパーセント抑制(非抗体コントロールと相対比較)の関数としてプロットした。
【図15】図15はCD34+骨髄先祖細胞に対するLUCA31の作用を示す。LUCA31およびコントロールのIgG1抗体1B7.11を骨髄先祖細胞の2段階の播種密度を用いて細胞増殖試験において比較した。
【図16】図16はHCT15腫瘍の増殖に対するLUCA31の作用を示す。図16Aはメジアンの腫瘍容量測定値を示す。図16Bはエラーバー付の平均腫瘍容量測定値を示す。各実験群につき、データは最初の動物が1000mm3超の腫瘍を有するまでプロットする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に精製された抗体であって、該抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター上のLUCA31エピトープに特異的に結合し、かつ該抗体は、
a.癌細胞上のトランスフェリンレセプターに結合する能力;
b.インビトロまたはインビボにて生存細胞の表面上に露出しているトランスフェリンレセプターの部分に結合する能力;
c.トランスフェリンレセプターを発現する癌細胞に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力;および、
d.トランスフェリンレセプターを発現する癌細胞中に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力、
のうちの少なくとも1つ以上を有する、抗体。
【請求項2】
請求項1に記載の精製された抗体であって、前記癌細胞は、副腎腫瘍、エイズ関連癌、胞状軟部肉腫、星状細胞腫、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨癌(アダマンチノーム、動脈瘤性骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、色素嫌性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、線維形成性骨形成不全症、線維性骨形成異常、胆嚢および胆管の癌、妊娠性栄養膜疾患、生殖細胞腫瘍、頭部および頚部の癌、ランゲルハンス島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪性腫瘍、肝臓癌(胚芽細胞腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌腫、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、ブドウ膜または眼内の黒色腫、希少な血液学的障害、腎転移癌、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移癌および子宮癌(子宮頸癌、子宮内膜癌および平滑筋腫)に由来する癌細胞からなる群より選択される、抗体。
【請求項3】
請求項1に記載の抗体をコードする、単離された核酸配列。
【請求項4】
前記核酸は、プロモーターに作動可能に連結している、請求項3に記載の核酸。
【請求項5】
前記プロモーターおよび前記核酸は、発現ベクター内に含有されている請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
前記抗体は、モノクローナル抗体である、請求項3に記載の核酸。
【請求項7】
請求項3の核酸を含有するベクターでトランスフェクト、形質転換または感染されている細胞系統。
【請求項8】
ヒトトランスフェリンレセプター上のLUCA31エピトープに特異的に結合する実質的に精製された抗体を生産する方法であって、該方法は、
a.請求項3の核酸で形質転換された細胞系統を、前記抗体が発現される条件下にて増殖させる工程;および、
b.発現された抗体を採取する工程;
を包含する、方法。
【請求項9】
前記細胞系統は、ハイブリドーマである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ハイブリドーマは、ATCC No.PTA−6055またはその子孫である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体は、モノクローナル抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体は、ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体は、前記ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される抗体の抗原結合フラグメントを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の抗体の治療有効量を、薬学的に受容可能なキャリアと共に含む、薬学的組成物。
【請求項15】
治療有効量の抗体を、薬学的に受容可能なキャリアと共に含む、薬学的組成物であって、
該抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター上のLUCA31エピトープに特異的に結合し、そして、該抗体は、
a.癌細胞上のトランスフェリンレセプターに結合する能力;
b.インビトロまたはインビボにて生存細胞の表面上に露出しているトランスフェリンレセプターの部分に結合する能力;
c.トランスフェリンレセプターを発現する癌細胞に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力;および、
d.トランスフェリンレセプターを発現する癌細胞中に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力、
のうちの少なくとも1つ以上を有する、組成物。
【請求項16】
さらなる治療部分を含む、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
ATCC No.PTA−6055またはその子孫からなる、単離された細胞系統。
【請求項18】
癌細胞に化学療法剤を送達するための方法であって、該方法は、
LUCA31エピトープに結合可能な抗体を該化学療法剤と共に含む組成物を、投与する工程;
を包含し、
該癌細胞は、副腎腫瘍、エイズ関連癌、胞状軟部肉腫、星状細胞腫、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨癌(アダマンチノーム、動脈瘤性骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、色素嫌性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、線維形成性骨形成不全症、線維性骨形成異常、胆嚢および胆管の癌、妊娠性栄養膜疾患、生殖細胞腫瘍、頭部および頚部の癌、ランゲルハンス島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪性腫瘍、肝臓癌(胚芽細胞腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌腫、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、ブドウ膜または眼内の黒色腫、希少な血液学的障害、腎転移癌、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移癌および子宮癌(子宮頸癌、子宮内膜癌および平滑筋腫)に由来する癌細胞からなる群より選択される、方法。
【請求項19】
前記化学療法剤は、個体に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体は、ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現された抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
個体における癌細胞の増殖を抑制する方法であって、該方法は、
LUCA31エピトープに結合可能な抗トランスフェリンレセプター抗体を化学療法剤と共に含む組成物の有効量を、該個体に投与する工程;
を包含し、
該癌細胞は、副腎腫瘍、エイズ関連癌、胞状軟部肉腫、星状細胞腫、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨癌(アダマンチノーム、動脈瘤性骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、色素嫌性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、線維形成性骨形成不全症、線維性骨形成異常、胆嚢および胆管の癌、妊娠性栄養膜疾患、生殖細胞腫瘍、頭部および頚部の癌、ランゲルハンス島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪性腫瘍、肝臓癌(胚芽細胞腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌腫、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、ブドウ膜または眼内の黒色腫、希少な血液学的障害、腎転移癌、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移癌および子宮癌(子宮頸癌、子宮内膜癌および平滑筋腫)に由来する癌細胞からなる群より選択される、方法。
【請求項22】
前記化学療法剤は、前記癌細胞に送達される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体は、ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
個体における癌細胞の存在または非存在を検出するための方法であって、該方法は、
該個体由来の細胞を、ヒトトランスフェリンレセプター上のLUCA31エピトープに結合可能な抗体に接触させる工程;および
該細胞由来のトランスフェリンレセプターと該抗体との複合体を、該複合体が存在する場合に検出する工程;
を包含し、
該癌細胞は、副腎腫瘍、エイズ関連癌、胞状軟部肉腫、星状細胞腫、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨癌(アダマンチノーム、動脈瘤性骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、色素嫌性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、線維形成性骨形成不全症、線維性骨形成異常、胆嚢および胆管の癌、妊娠性栄養膜疾患、生殖細胞腫瘍、頭部および頚部の癌、ランゲルハンス島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪性腫瘍、肝臓癌(胚芽細胞腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌腫、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、ブドウ膜または眼内の黒色腫、希少な血液学的障害、腎転移癌、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移癌および子宮癌(子宮頸癌、子宮内膜癌および平滑筋腫)に由来する癌細胞からなる群より選択される、方法。
【請求項25】
トランスフェリンレセプターとLUCA31エピトープに結合可能なトランスフェリンレセプター結合パートナーとの間の相互作用のうちの少なくとも1つをブロックする因子であって、該相互作用は、
a.癌細胞上のトランスフェリンレセプターに結合する能力;
b.インビトロまたはインビボにて生存細胞の表面上に露出しているトランスフェリンレセプターの部分に結合する能力;
c.トランスフェリンレセプターを発現する癌細胞に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力;および、
d.トランスフェリンレセプターを発現する癌細胞中に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力、
である、因子。
【請求項26】
請求項23に記載の因子の治療有効量を、薬学的に受容可能なキャリアと共に含む、薬学的組成物。
【請求項27】
トランスフェリンレセプターモジュレーターであって、該モジュレーターは、以下の特徴:
a.ヒトトランスフェリンレセプターとネイティブのトランスフェリンレセプターリガンドとの間の相互作用を妨害またはブロックする能力;
b.ヒトトランスフェリンレセプターと抗トランスフェリンレセプター抗体との間の相互作用を妨害またはブロックする能力;
c.ヒトトランスフェリンレセプターに結合する能力;
d.ヒトトランスフェリンレセプターに対するネイティブのリガンドに結合する能力;
e.抗トランスフェリンレセプター抗体に結合する能力;
f.LUCA31エピトープまたは抗LUCA31抗体に結合可能な抗体の惹起において使用され得る抗原性部位を含有する;
g.LUCA31エピトープまたは抗LUCA31抗体に結合可能な抗体のスクリーニングにおいて使用され得る抗原性部位を含有する;
h.LUCA31エピトープとネイティブLUCA31リガンドとの間、または、LUCA31エピトープとLUCA31との間の相互作用を妨害またはブロックすることが可能な抗体の惹起において使用され得る抗原性部位を含有する;
i.LUCA31エピトープとLUCA31の間の相互作用を妨害またはブロックすることが可能な抗体のスクリーニングにおいて使用され得る抗原性部位を含有する;
のうちの少なくとも1つを有する、モジュレーター。
【請求項28】
個体における癌細胞の増殖を抑制する方法であって、該方法は、
ヒトトランスフェリンレセプターのLUCA31レセプターに結合可能な抗体を含む組成物の有効量を該個体に投与する工程;
を包含し、
該癌細胞は、副腎腫瘍、エイズ関連癌、胞状軟部肉腫、星状細胞腫、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨癌(アダマンチノーム、動脈瘤性骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、色素嫌性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、線維形成性骨形成不全症、線維性骨形成異常、胆嚢および胆管の癌、妊娠性栄養膜疾患、生殖細胞腫瘍、頭部および頚部の癌、ランゲルハンス島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪性腫瘍、肝臓癌(胚芽細胞腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌腫、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、ブドウ膜または眼内の黒色腫、希少な血液学的障害、腎転移癌、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移癌および子宮癌(子宮頸癌、子宮内膜癌および平滑筋腫)に由来する癌細胞からなる群より選択される、方法。
【請求項29】
前記抗体は、ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記抗体は、ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される抗体の抗原結合フラグメントを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体は、ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される抗体の少なくとも1つの相補性決定領域を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される、抗体。
【請求項33】
ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される抗体の抗原結合フラグメントを含む、抗体。
【請求項34】
ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される抗体の少なくとも1つの相補性決定領域を含む、抗体。
【請求項35】
請求項32〜34のうちのいずれかに記載の抗体をコードする、DNA。
【請求項1】
実質的に精製された抗体であって、該抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター上のLUCA31エピトープに特異的に結合し、かつ該抗体は、
a.癌細胞上のトランスフェリンレセプターに結合する能力;
b.インビトロまたはインビボにて生存細胞の表面上に露出しているトランスフェリンレセプターの部分に結合する能力;
c.トランスフェリンレセプターを発現する癌細胞に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力;および、
d.トランスフェリンレセプターを発現する癌細胞中に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力、
のうちの少なくとも1つ以上を有する、抗体。
【請求項2】
請求項1に記載の精製された抗体であって、前記癌細胞は、副腎腫瘍、エイズ関連癌、胞状軟部肉腫、星状細胞腫、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨癌(アダマンチノーム、動脈瘤性骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、色素嫌性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、線維形成性骨形成不全症、線維性骨形成異常、胆嚢および胆管の癌、妊娠性栄養膜疾患、生殖細胞腫瘍、頭部および頚部の癌、ランゲルハンス島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪性腫瘍、肝臓癌(胚芽細胞腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌腫、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、ブドウ膜または眼内の黒色腫、希少な血液学的障害、腎転移癌、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移癌および子宮癌(子宮頸癌、子宮内膜癌および平滑筋腫)に由来する癌細胞からなる群より選択される、抗体。
【請求項3】
請求項1に記載の抗体をコードする、単離された核酸配列。
【請求項4】
前記核酸は、プロモーターに作動可能に連結している、請求項3に記載の核酸。
【請求項5】
前記プロモーターおよび前記核酸は、発現ベクター内に含有されている請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
前記抗体は、モノクローナル抗体である、請求項3に記載の核酸。
【請求項7】
請求項3の核酸を含有するベクターでトランスフェクト、形質転換または感染されている細胞系統。
【請求項8】
ヒトトランスフェリンレセプター上のLUCA31エピトープに特異的に結合する実質的に精製された抗体を生産する方法であって、該方法は、
a.請求項3の核酸で形質転換された細胞系統を、前記抗体が発現される条件下にて増殖させる工程;および、
b.発現された抗体を採取する工程;
を包含する、方法。
【請求項9】
前記細胞系統は、ハイブリドーマである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ハイブリドーマは、ATCC No.PTA−6055またはその子孫である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体は、モノクローナル抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体は、ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体は、前記ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される抗体の抗原結合フラグメントを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の抗体の治療有効量を、薬学的に受容可能なキャリアと共に含む、薬学的組成物。
【請求項15】
治療有効量の抗体を、薬学的に受容可能なキャリアと共に含む、薬学的組成物であって、
該抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター上のLUCA31エピトープに特異的に結合し、そして、該抗体は、
a.癌細胞上のトランスフェリンレセプターに結合する能力;
b.インビトロまたはインビボにて生存細胞の表面上に露出しているトランスフェリンレセプターの部分に結合する能力;
c.トランスフェリンレセプターを発現する癌細胞に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力;および、
d.トランスフェリンレセプターを発現する癌細胞中に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力、
のうちの少なくとも1つ以上を有する、組成物。
【請求項16】
さらなる治療部分を含む、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
ATCC No.PTA−6055またはその子孫からなる、単離された細胞系統。
【請求項18】
癌細胞に化学療法剤を送達するための方法であって、該方法は、
LUCA31エピトープに結合可能な抗体を該化学療法剤と共に含む組成物を、投与する工程;
を包含し、
該癌細胞は、副腎腫瘍、エイズ関連癌、胞状軟部肉腫、星状細胞腫、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨癌(アダマンチノーム、動脈瘤性骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、色素嫌性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、線維形成性骨形成不全症、線維性骨形成異常、胆嚢および胆管の癌、妊娠性栄養膜疾患、生殖細胞腫瘍、頭部および頚部の癌、ランゲルハンス島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪性腫瘍、肝臓癌(胚芽細胞腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌腫、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、ブドウ膜または眼内の黒色腫、希少な血液学的障害、腎転移癌、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移癌および子宮癌(子宮頸癌、子宮内膜癌および平滑筋腫)に由来する癌細胞からなる群より選択される、方法。
【請求項19】
前記化学療法剤は、個体に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体は、ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現された抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
個体における癌細胞の増殖を抑制する方法であって、該方法は、
LUCA31エピトープに結合可能な抗トランスフェリンレセプター抗体を化学療法剤と共に含む組成物の有効量を、該個体に投与する工程;
を包含し、
該癌細胞は、副腎腫瘍、エイズ関連癌、胞状軟部肉腫、星状細胞腫、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨癌(アダマンチノーム、動脈瘤性骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、色素嫌性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、線維形成性骨形成不全症、線維性骨形成異常、胆嚢および胆管の癌、妊娠性栄養膜疾患、生殖細胞腫瘍、頭部および頚部の癌、ランゲルハンス島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪性腫瘍、肝臓癌(胚芽細胞腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌腫、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、ブドウ膜または眼内の黒色腫、希少な血液学的障害、腎転移癌、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移癌および子宮癌(子宮頸癌、子宮内膜癌および平滑筋腫)に由来する癌細胞からなる群より選択される、方法。
【請求項22】
前記化学療法剤は、前記癌細胞に送達される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体は、ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
個体における癌細胞の存在または非存在を検出するための方法であって、該方法は、
該個体由来の細胞を、ヒトトランスフェリンレセプター上のLUCA31エピトープに結合可能な抗体に接触させる工程;および
該細胞由来のトランスフェリンレセプターと該抗体との複合体を、該複合体が存在する場合に検出する工程;
を包含し、
該癌細胞は、副腎腫瘍、エイズ関連癌、胞状軟部肉腫、星状細胞腫、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨癌(アダマンチノーム、動脈瘤性骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、色素嫌性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、線維形成性骨形成不全症、線維性骨形成異常、胆嚢および胆管の癌、妊娠性栄養膜疾患、生殖細胞腫瘍、頭部および頚部の癌、ランゲルハンス島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪性腫瘍、肝臓癌(胚芽細胞腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌腫、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、ブドウ膜または眼内の黒色腫、希少な血液学的障害、腎転移癌、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移癌および子宮癌(子宮頸癌、子宮内膜癌および平滑筋腫)に由来する癌細胞からなる群より選択される、方法。
【請求項25】
トランスフェリンレセプターとLUCA31エピトープに結合可能なトランスフェリンレセプター結合パートナーとの間の相互作用のうちの少なくとも1つをブロックする因子であって、該相互作用は、
a.癌細胞上のトランスフェリンレセプターに結合する能力;
b.インビトロまたはインビボにて生存細胞の表面上に露出しているトランスフェリンレセプターの部分に結合する能力;
c.トランスフェリンレセプターを発現する癌細胞に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力;および、
d.トランスフェリンレセプターを発現する癌細胞中に治療剤または検出可能なマーカーを送達する能力、
である、因子。
【請求項26】
請求項23に記載の因子の治療有効量を、薬学的に受容可能なキャリアと共に含む、薬学的組成物。
【請求項27】
トランスフェリンレセプターモジュレーターであって、該モジュレーターは、以下の特徴:
a.ヒトトランスフェリンレセプターとネイティブのトランスフェリンレセプターリガンドとの間の相互作用を妨害またはブロックする能力;
b.ヒトトランスフェリンレセプターと抗トランスフェリンレセプター抗体との間の相互作用を妨害またはブロックする能力;
c.ヒトトランスフェリンレセプターに結合する能力;
d.ヒトトランスフェリンレセプターに対するネイティブのリガンドに結合する能力;
e.抗トランスフェリンレセプター抗体に結合する能力;
f.LUCA31エピトープまたは抗LUCA31抗体に結合可能な抗体の惹起において使用され得る抗原性部位を含有する;
g.LUCA31エピトープまたは抗LUCA31抗体に結合可能な抗体のスクリーニングにおいて使用され得る抗原性部位を含有する;
h.LUCA31エピトープとネイティブLUCA31リガンドとの間、または、LUCA31エピトープとLUCA31との間の相互作用を妨害またはブロックすることが可能な抗体の惹起において使用され得る抗原性部位を含有する;
i.LUCA31エピトープとLUCA31の間の相互作用を妨害またはブロックすることが可能な抗体のスクリーニングにおいて使用され得る抗原性部位を含有する;
のうちの少なくとも1つを有する、モジュレーター。
【請求項28】
個体における癌細胞の増殖を抑制する方法であって、該方法は、
ヒトトランスフェリンレセプターのLUCA31レセプターに結合可能な抗体を含む組成物の有効量を該個体に投与する工程;
を包含し、
該癌細胞は、副腎腫瘍、エイズ関連癌、胞状軟部肉腫、星状細胞腫、膀胱癌(扁平上皮癌および移行上皮癌)、骨癌(アダマンチノーム、動脈瘤性骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、色素嫌性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、線維形成性骨形成不全症、線維性骨形成異常、胆嚢および胆管の癌、妊娠性栄養膜疾患、生殖細胞腫瘍、頭部および頚部の癌、ランゲルハンス島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪性腫瘍、肝臓癌(胚芽細胞腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌腫、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、ブドウ膜または眼内の黒色腫、希少な血液学的障害、腎転移癌、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移癌および子宮癌(子宮頸癌、子宮内膜癌および平滑筋腫)に由来する癌細胞からなる群より選択される、方法。
【請求項29】
前記抗体は、ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記抗体は、ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される抗体の抗原結合フラグメントを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体は、ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される抗体の少なくとも1つの相補性決定領域を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される、抗体。
【請求項33】
ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される抗体の抗原結合フラグメントを含む、抗体。
【請求項34】
ハイブリドーマATCC No.PTA−6055またはその子孫により発現される抗体の少なくとも1つの相補性決定領域を含む、抗体。
【請求項35】
請求項32〜34のうちのいずれかに記載の抗体をコードする、DNA。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2008−508904(P2008−508904A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527714(P2007−527714)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/020253
【国際公開番号】WO2005/121179
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(501250429)レイヴェン バイオテクノロジーズ, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/020253
【国際公開番号】WO2005/121179
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(501250429)レイヴェン バイオテクノロジーズ, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]