説明

トランスフォーミング増殖因子αHII

【課題】トランスフォーミング増殖因子αHIIポリペプチド、そのポリペプチドをコード
するポリヌクレオチド、組換え技術による該ポリペプチドの生産法、およびその使用法を提供する。
【解決手段】本発明の一側面によれば、新規成熟ポリペプチド並びにその類縁体及び生物学的に活性かつ診断又は治療に有用な断片が提供される。これは、トランスフォーミング増殖因子αHIIポリペプチドは創傷治癒の刺激、神経学的障害の治療、目の障害の治療、
腎障害と肝障害の治療及び胚形成と脈管形成の刺激などに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新たに同定されたポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドによってコ
ードされるポリペプチド、該ポリヌクレオチド及びポリペプチドの使用、及び該
ポリヌクレオチド及びポリペプチドの生産に関する。本発明のポリペプチドはヒ
トトランスフォーミング増殖因子α相同体であろうと同定された。より具体的に
述べると、本発明のポリペプチドは、トランスフォーミング増殖因子αHIIだろ
うと同定された。以下、これを「TGFα-HII」ということもある。本発明は、そ
のようなポリペプチドの作用を阻害することにも関係する。
【背景技術】
【0002】
細胞の成長と分化は、様々な刺激因子、阻害因子、共同作用因子及びホルモン
によって開始、促進、維持及び調節されているようである。細胞ホメオスタシス
機構の変化及び/又は破壊は、腫瘍形成を含む成長関連疾患の根本的な原因であ
ると思われる。成長モジュラー(modular)因子は、シグナル変換、細胞連絡、
成長と発生、胚形成、免疫応答、造血細胞の生存と分化、炎症、組織の修復と再
生、アテローム性動脈硬化及び癌を含む、極めて多様な病理学的及び生理学的過
程に関係する。特に、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子α
(TGFα)、ベータセルリン(betacellulin)、アンフィレグリン(amphireguli
n)及びワクシニア増殖因子は、種々の細胞タイプが正常な生理学的条件下に若
しくは外因性の刺激に応答して生産する成長及び分化調節タンパク質であり、EG
Fファミリーの構成要素である。
【0003】
これらのペプチド増殖因子は、自己分泌機構及び傍分泌機構によって創傷細胞
に影響を及ぼす。また、これらの増殖因子は、皮膚、角膜及び胃腸路のような組
織における創傷治癒にも重要な役割を果たし、3つの鎖間ジスルフィド結合の配
置が保存されていることを含めて、すべての因子が本質的なアミノ酸配列相同性
を共有する。さらに、このファミリーの因子はすべて、分子量170,000の膜貫通
型糖タンパク質受容体に結合し、その受容体の細胞質ドメインにあるチロシンキ
ナーゼ活性を活性化する(Buhrow, S.A.ら, J. Bio. Chem., 258:7824-7826(19
83))。
【0004】
これらの受容体は、皮膚ケラチン生成細胞、繊維芽細胞、血管内皮細胞及びGI
路の上皮細胞を含む多くのタイプの細胞に発現する。これらのペプチド増殖因子
は、創傷治療に関与するいくつかの細胞(血小板、ケラチン生成細胞及び活性化
マクロファージを含む)によって合成される。また、これらの増殖因子は、ある
種の細胞の成長及び分化の刺激(例えば腫瘍形成)にも関係付けられているし、
他のタイプの細胞の阻害にも関係付けられている。
【0005】
ベータセルリンは32キロダルトンの糖タンパク質であり、これはタンパク質加
水分解的切断によって、より大きい膜貫通型前駆体からプロセシングされるよう
である。ベータセルリンのカルボキシル末端ドメインは、ラットのトランスフォ
ーミング増殖因子αの対応部分と50%の配列類似性を持つ。ベータセルリンは、
レチナール色素上皮細胞と血管平滑筋細胞にとって、強力な有糸分裂促進物質で
ある。
【0006】
アンフィレグリンは、新生物細胞におけるDNA合成に対して強力な阻害活性を
示し、ある種の正常細胞の成長をも促進する、二作用性細胞増殖調節因子である
。アンフィレグリンには、創傷と癌の治療を含む種々の用途が挙げられている。
例えば、アンフィレグリンは、上皮由来の数種類のヒト癌細胞系に対して、試験
管内で強力な抗増殖作用を持つ。また、アンフィレグリンは、米国特許出願第5,
115,096号に示されるように、ヒト包皮繊維芽細胞の増殖を誘導する。
【0007】
TGFαは、多面発現性の生物学的作用を持つ。TGFαの構成要素のいくつかは、
発ガン的にトランスフォームした繊維芽細胞のいくつかによって(Ciardielloら
, J. Cell. Biochem., 42:45-57(1990))、また、腎臓癌、乳癌、偏平上皮癌
、黒色腫及び膠芽腫を含む種々の腫瘍によって(Derynck, R.ら, Cancer Res.,
47:707-712(1987))合成される。高レベルのTGFαを発現させる腫瘍細胞を持
つ形質転換マウスを分析することによって、TGFαの発現が、正常細胞が腫瘍形
成細胞に変換する際の原因因子でありうることが直接的に立証されている。TGF
α形質転換動物は、TGFα発現を制御するプロモーターの選択とマウスの株によ
って、種々の新生物病変を示す(Sandgrenら, Cell, 61:1121-1135(1990))。
【0008】
TGFαは、正常な胚の発生と成人の生理機能にもある役割を果たす(Derynck,
R. Adv. Cancer Res., 58:27-5(1992))。TGFαは、皮膚、脳、胃腸粘膜及び
活性化マクロファージを含む多くの組織で発現されている。したがって、TGFα
は、上皮細胞の成長を制御する重要な因子であり、創傷治療にも役割を果たす。
また、TGFαは、脈管形成性であることもわかっている(Schreiberら, Science,
232:1250-1253(1986))。
【0009】
本発明のポリペプチドは、トランスフォーミング増殖因子TGFα-HIIであろう
と同定された。この同定は、ヒトTGFαに対するアミノ酸相同性の結果としてな
された。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によれば、新規成熟ポリペプチド並びにその類縁体及び生物学
的に活性かつ診断又は治療に有用な断片が提供される。本発明のポリペプチドは
ヒト由来である。
【0011】
本発明のもう1つの側面によると、本発明のポリペプチドをコードする単離さ
れた核酸分子(mRNA、DNA、cDNA、ゲノムDNAを含む)並びに生物学的に活性かつ
診断又は治療に有用なその断片、類縁体及び断片が提供される。
【0012】
本発明のさらなる側面によれば、組換え技術によって上記ポリペプチドを生産
する方法であって、本発明ポリペプチドをコードする核酸配列を含有する組換え
原核及び/又は真核宿主細胞を培養することからなる方法が提供される。
【0013】
本発明のさらなる側面によれば、創傷治療を刺激して外傷又はAIDS痴呆後の正
常な神経学的機能を修復するため、目の障害を治療するため、ある種の細胞を標
的にするため、腎障害及び肝障害を治療するため、毛包の発育を促進するため、
火傷、潰瘍及び角膜切開の治療として血管形成を刺激するため、胚形成を刺激す
るためなどといった治療目的で、上記ポリペプチド又は上記ポリペプチドをコー
ドするポリヌクレオチドを使用する方法が提供される。
【0014】
本発明のさらなる側面によれば、本発明の核酸配列に特異的にハイブリッド形
成しうる長さを持つ核酸分子を含む核酸プローブも提供される。
【0015】
本発明のさらなる側面によれば、上記ポリペプチドに対する抗体が提供される
。 本発明のさらなる側面によれば、本発明ポリペプチドに対するアゴニスト(
作用薬)が提供される。
【0016】
本発明のさらなる側面によれば、上記ポリペプチドに対するアンタゴニスト(
拮抗薬)が提供される。これらのアンタゴニストは、例えば、角膜炎、新生組織
形成(腫瘍、癌など)及び乾癬の治療において、上記ポリペプチドの作用を阻害
するのに使用できる。
【0017】
本発明のさらなる側面によれば、本発明ポリペプチドの過剰発現及び上記ポリ
ペプチドをコードする核酸配列中の突然変異に関係する疾患を検出するための診
断的検定法が提供される。
【0018】
本発明のさらなる側面によれば、科学的研究、DNAの合成及びDNAベクターの製
造に関係する試験管内用途に、上記ポリペプチド又は上記ポリペプチドをコード
するポリヌクレオチドを使用する方法が提供される。
【0019】
当業者にとって、本発明のこれらの側面と他の側面は、本明細書の教示から明
らかなはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下の図面は本発明の実施態様を例示するものであって、請求の範囲が包含す
る本発明の範囲を限定するものではない。
【0021】
図1〜図6は、TGFα-HIIの推定アミノ酸配列に対応させたcDNA配列を表す。
アミノ酸には標準的な一文字略号を使用している。推定シグナル配列には下線を
引いておいた。
【0022】
図7〜図10は、ヒトベータセルリン、ヒトTGFα及びヒトTGFα-HII(第3列
)間のアミノ酸配列相同性を比較した図である。「*」は、本発明のポリペプチ
ドに保存されていることがわかった保存EGFモチーフを表す。下線はヒトTGFαの
成熟配列を表す。
【0023】
本発明の一側面によれば、図1〜図6の推定アミノ酸配列(配列番号2)を持
つ成熟ポリペプチド若しくは1995年5月24日にATCC寄託番号97160として寄託され
たクローンのcDNAによってコードされる成熟ポリペプチドをコードする単離され
た核酸(ポリヌクレオチド)が提供される。
【0024】
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ヒトの脳と初期段階
の脳組織から得ることができる。本発明のポリヌクレオチドは、2週齢の胚から
得たcDNAライブラリー中に発見された。これは、構造的にEGFファミリーに関係
している。このポリヌクレオチドは、374アミノ酸残基からなるタンパク質(そ
のうち45アミノ酸残基はリーダー配列と推定される)をコードする読み取り枠を
含有する。このタンパク質は、ヒトTGFαに対して最も高い相同性を示し、236ア
ミノ酸の範囲にわたって26%の同一性と46%の類似性を持つ。TGFα-HIIは、EGFフ
ァミリーの全構成要素に認められる6個の保存システイン残基すべてを含有する

【0025】
配列番号2に記載の本発明の完全長ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸1か
らアミノ酸45までからなる推定シグナル配列を持ち、これは、このポリペプチド
の細胞からの分泌を促進する。配列番号2のアミノ酸46からアミノ酸214までは前
駆体配列と推定されるから、このポリペプチドはさらにプロセシングされて、こ
の部分が切り離される。さらに、アミノ酸264からアミノ酸344までは、膜貫通部
分であると推定される。この部分は、このポリペプチドを特定の標的部位に誘導
して、後述する生物学的機能を発揮するのに必要だと考えられる。この膜貫通部
分もこのペプチドから切り離されうるので、本発明ペプチドの推定可溶性部分は
、配列番号2のアミノ酸215〜アミノ酸264からなる。
【0026】
本発明のポリヌクレオチドはRNA型であってもよいし、cDNA、ゲノムDNA及び合
成DNAを含むDNA型であってもよい。DNAは二本鎖であってよいし、一本鎖であっ
てもよく、一本鎖の場合はコーディング鎖でもよいし、非コーディング(アンチ
センス)鎖でもよい。成熟ポリペプチドをコードするコーディング配列は、図1
〜図6に示すコーディング配列(配列番号1)又は上記寄託クローンのコーディ
ング配列と同一であってもよいし、その遺伝コードの重複性又は縮重性の結果と
して図1〜図6のDNA(配列番号1)又は上記寄託cDNAと同じ成熟ポリペプチドを
コードする、異なるコーディング配列であってもよい。
【0027】
図1〜図6の成熟ポリペプチド(配列番号2)をコードするポリヌクレオチド
又は上記寄託cDNAによってコードされる成熟ポリペプチドをコードするポリヌク
レオチドは、例えば、その成熟ポリペプチドのコーディング配列のみを含んでも
よいし、その成熟ポリペプチドのコーディング配列と付加的コーディング配列(
リーダー又は分泌配列など)若しくはプロタンパク質配列を含んでもよいし、或
いはその成熟ポリペプチド(付加的コーディング配列を伴ってもよい)と非コー
ディング配列(イントロンや成熟ポリペプチドに関するコーディング配列の5'及
び/又は3'側にある非コーディング配列など)とを含んでもよい(ただしこれら
に限られるわけではない)。
【0028】
したがって、「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、
そのポリペプチドのコーディング配列のみを含むポリヌクレオチドと、さらに付
加的なコーディング配列及び/又は非コーディング配列をも含むポリヌクレオチ
ドとを包含する。
【0029】
さらに本発明は、図1〜図6の推定アミノ酸配列(配列番号2)を持つポリペ
プチド若しくは上記寄託クローンのcDNAによってコードされるポリペプチドの断
片、類縁体及び誘導体をコードする、上述のポリヌクレオチドの変種にも関係す
る。このポリペプチドの変種は、上記ポリヌクレオチドの天然に存在する対立遺
伝子変種であってもよいし、上記ポリヌクレオチドの天然には存在しない変種で
あってもよい。
【0030】
したがって本発明は、図1〜図6に示す成熟ポリペプチド(配列番号2)又は
上記寄託クローンのcDNAによってコードされる成熟ポリペプチドと同じ成熟ポリ
ペプチドをコードするポリヌクレオチド、並びに図1〜図6のポリペプチド(配
列番号2)若しくは上記寄託クローンのcDNAによってコードされるポリペプチド
の断片、誘導体又は類縁体をコードする上記ポリヌクレオチドの変種を包含する
。そのようなヌクレオチド変種としては、欠失変種、置換変種及び付加又は挿入
変種が挙げられる。
上述のように、本発明のポリヌクレオチドは、図1〜図6に示すコーディング
配列(配列番号1)若しくは上記寄託クローンのコーディング配列の天然に存在
する対立遺伝子変種であるコーディング配列を持ってもよい。当該技術分野で知
られているように、対立遺伝子変種は、コードされるポリペプチドの機能を実質
的に変えない1以上のヌクレオチドの置換、欠失又は付加を持ちうる代替型のポ
リヌクレオチド配列である。
【0031】
本発明は、上記成熟ポリペプチドのコーディング配列が宿主細胞によるポリペ
プチドの発現と分泌を促進するポリヌクレオチド配列(例えばポリペプチドの細
胞からの輸送を制御するための分泌配列として機能するリーダー配列)に同じ読
み枠で融合しているポリヌクレオチドをも包含する。リーダー配列を持つポリペ
プチドはプレタンパク質であり、そのリーダー配列は宿主によって切断されて、
そのポリペプチドの成熟型を形成しうる。本発明ポリヌクレオチドは、成熟タン
パク質に5'アミノ酸残基が追加されたプロタンパク質をコードしてもよい。プロ
配列を持つ成熟タンパク質はプロタンパク質であり、そのタンパク質の不活性型
である。そのプロ配列が切断されると、活性な成熟タンパク質が残る。
【0032】
したがって、本発明のポリヌクレオチドは、成熟タンパク質、プロ配列を持つ
タンパク質、又はプロ配列とプレ配列(リーダー配列)の両方を持つタンパク質
をコードできる。
【0033】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明ポリペプチドの精製に利用されるマーカ
ー配列にインフレーム(in frame)融合したコーディング配列を持ってもよい。
細菌宿主の場合は、pQE-9ベクターによって供給されるヘキサヒスチジン標識を
マーカー配列にして、そのマーカーに融合した成熟ポリペプチドの精製に備える
ことができ、また、COS-7細胞のような哺乳類宿主を使用する場合は、例えば血
球凝集素(HA)標識をマーカー配列にすることができる。HA標識は、インフルエ
ンザ血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応する(Wilson, I.ら, Cell,
37:767(1984))。
【0034】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖の生産に関与するDNAの区分を意味
し、コーディング配列の前後の領域(リーダー及びトレーラー)と、個々のコー
ディング部分(エクソン)間の介在配列(イントロン)とを含む。
【0035】
完全長TGFα-HII遺伝子の断片をcDNAライブラリー用のハイブリッド形成プロ
ーブとして用いることにより、その完全長遺伝子そのものや、その遺伝子に対す
る高い配列類似性又は類似の生物学的活性を持つ他の遺伝子を単離することがで
きる。このタイプのプローブは、少なくとも30塩基からなることが好ましく、50
塩基以上を含んでもよい。また、このプローブは、完全長転写物に相当するcDNA
クローン、ゲノムクローン、若しくは調節及びプロモーター領域、エクソン並び
にイントロンを含む完全なTGFα-HII遺伝子を含有するクローンを同定するため
にも使用できる。スクリーニングの一例では、オリゴヌクレオチドプローブの合
成に既知のDNA配列を用いることによって、上記遺伝子のコーディング領域を単
離する。本発明遺伝子の配列に相補的な配列を持つ標識オリゴヌクレオチドを用
いて、ヒトのcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリーをスクリーニングし、そ
のプローブがハイブリッド形成するライブラリーの構成要素
を決定する。
【0036】
さらに、本発明は、配列間に少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%、より
好ましくは少なくとも95%の同一性がある場合に上述の配列にハイブリッド形成
する、ポリヌクレオチドに関する。特に本発明は、厳密な条件下で上述のポリヌ
クレオチドにハイブリッド形成するポリヌクレオチドに関する。本明細書で使用
する「厳密な条件」という用語は、配列間に少なくとも95%、好ましくは少なく
とも97%の同一性がある場合にのみ、ハイブリッド形成が起こることを意味する
。好ましい態様として、上述のポリヌクレオチドにハイブリッド形成するポリヌ
クレオチドは、図1〜図6のcDNA(配列番号1)又は上記寄託cDNAによってコー
ドされる成熟ポリペプチドと実質上同じ生物学的機能又は活性を保持するポリペ
プチドをコードする。
【0037】
また、上記ポリヌクレオチドは、上述のように、本発明のポリヌクレオチドに
ハイブリッド形成し、かつ、該ポリヌクレオチドに対して同一性を持つ(活性は
保持しても、保持しなくてもよい)、少なくとも20塩基、好ましくは30塩基、よ
り好ましくは少なくとも50塩基を含んでもよい。このようなポリヌクレオチドは
、例えば、配列番号1のポリヌクレオチドに関する(例えば回収用)プローブや
、PCRプライマーとして使用できる。
【0038】
したがって、本発明は、配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオ
チドに対して少なくとも70%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より
好ましくは少なくとも95%の同一性を持つポリヌクレオチド、及び少なくとも30
塩基、好ましくは少なくとも50塩基からなるその断片、並びにそのようなポリヌ
クレオチドによってコードされるポリペプチドに関する。
【0039】
本明細書で言及する寄託物は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関す
るブダペスト条約に基づいて維持される。これらの寄託物は当業者の利便のため
に提供されるに過ぎず、これが35U.S.C§112で求められる寄託であると認めるわ
けではない。寄託物に含まれるポリヌクレオチドの配列とそれによってコードさ
れるポリペプチドのアミノ酸配列は、参考として本明細書の一部を構成し、万一
、本明細書に記載する配列の説明と矛盾する場合は、これが支配的となる。上記
寄託物を製造、使用又は販売するには承諾が必要な場合があり、本明細書はその
ような承諾を与えるものではない。
【0040】
さらに本発明は、図1〜図6の推定アミノ酸配列(配列番号2)を持つポリペ
プチド又は上記寄託cDNAによってコードされるアミノ酸配列を持つポリペプチド
、及びそのようなポリペプチドの断片、類縁体及び誘導体に関する。
【0041】
図1〜図6のポリペプチド(配列番号2)又は上記寄託cDNAによってコードさ
れるポリペプチドに関して「断片」、「誘導体」及び「類縁体」という場合、こ
れらの用語は、そのようなポリペプチドと実質上同じ生物学的機能又は活性を保
持するポリペプチドを意味する。したがって類縁体には、プロタンパク質部分の
切断によって活性化されて活性な成熟ポリペプチドを生成しうるプロタンパク質
が含まれる。 本発明のポリペプチドは、組換えポリペプチド、天然のポリペプ
チド及び合成ポリペプチドのいずれであってもよく、組換えポリペプチドが好ま
しい。
【0042】
図1〜図6のポリペプチド(配列番号2)又は上記寄託cDNAによってコードさ
れるポリペプチドの断片、誘導体又は類縁体は、(i)1以上のアミノ酸残基が保
存的又は非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)で置換されて
いるもの(その置換アミノ酸残基は遺伝コードによってコードされるものであっ
てもよいし、そうでなくてもよい)であってもよいし、(ii)1以上のアミノ酸
残基が置換基を含有するものであってもよく、或いは(iii)成熟ポリペプチド
がもう1つの化合物(例えばそのポリペプチドの半減期を増大させるための化合
物(ポリエチレングリコールなど))に融合しているものや、(iv)リーダー又
は分泌配列や、成熟ポリペプチド又はプロタンパク質配列の精製に使用される配
列などといった付加的アミノ酸が成熟ポリペプチドに融合しているものであって
もよい。そのような断片、誘導体及び類縁体は、本明細書の教示から、当業者の
範囲に含まれると考えられる。
【0043】
本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドは、単離型で提供されることが好
ましく、また、均一に精製されることが好ましい。
【0044】
「単離された」という用語は、その物質がその当初の環境(例えばそれが天然
物ならばその自然環境)から取り出されていることを意味する。例えば、生きた
動物中に存在する天然のポリヌクレオチド又はポリペプチドは「単離された」と
は言えないが、その天然系中に共在する物質の一部又は全部から分離されたその
ポリヌクレオチド又はポリペプチドは「単離された」と言える。そのようなポリ
ヌクレオチドがベクターの一部であったり、かつ/または、そのようなポリヌク
レオチド又はポリペプチドが組成物の一部であっても、そのようなベクター又は
組成物がその自然環境の一部でないという点で、「単離された」と言える。
【0045】
本発明のポリペプチドは、配列番号2のポリペプチド(特にその成熟ポリペプ
チド)及び配列番号2のポリペプチドに対して少なくとも70%の類似性(好ましく
は70%の同一性)、より好ましくは配列番号2のポリペプチドに対して少なくとも
90%の類似性(より好ましくは90%の同一性)、さらに好ましくは配列番号2のポ
リペプチドに対して少なくとも95%の類似性(さらに好ましくは90%の同一性)を
持つポリペプチドを包含し、また、一般的には少なくとも30アミノ酸、より好ま
しくは少なくとも50アミノ酸を含有する上記ポリぺプチドの一部をも包含する。
【0046】
当該技術分野では知られているように、2つのポリペプチド間の「類似性」は
、一方のポリペプチドのアミノ酸配列と保存的アミノ酸置換を、他方のポリペプ
チドの配列と比較することによって決定される。
本発明ポリペプチドの断片又は一部を用いて、対応する完全長ポリペプチドを
、ペプチド合成によって生産することができる。つまり、これらの断片は、完全
長ポリペプチドを生産するための中間体として使用できる。本発明ポリヌクレオ
チドの断片又は一部は、本発明の完全長ポリヌクレオチドの合成に使用できる。
【0047】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、本発明のベクターで遺
伝子操作された宿主細胞、及び組換え技術による本発明ポリペプチドの生産にも
関係する。
【0048】
宿主細胞は、本発明のベクター(例えばクローニングベクターであってもよい
し、発現ベクターであってもよい)によって遺伝子操作(形質導入又は形質転換
若しくはトランスフェクション)される。ベクターは、例えばプラスミド、ウイ
ルス粒子、ファージなどの形態をとりうる。操作された宿主細胞は、プロモータ
ーの活性化、形質転換体の選択若しくは本発明遺伝子の増幅に適した改良が施さ
れた従来の栄養培地で培養できる。温度やpHなどといった培養条件は、発現用に
選択したその宿主細胞に対して過去に用いられた条件であり、当業者には明らか
だろう。
【0049】
本発明のポリヌクレオチドは、組換え技術によってポリペプチドを生産するた
めに使用できる。したがって、例えば、そのポリヌクレオチドは、ポリペプチド
発現用の種々の発現ベクターのいずれにも組込むことができる。そのようなベク
ターとしては、染色体DNA配列、非染色体DNA配列及び合成DNA配列、例えばSV40
の誘導体、細菌性プラスミド、ファージDNA、バクロウイルス、酵母プラスミド
、プラスミドとファージDNAの組み合わせに由来するベクター、ウイルスDNA(例
えばワクシニア、アデノウイルス、家禽ポックスウイルス、偽性狂犬病ウイルス
)などが挙げられる。ただし、その他のベクターであっても、それがその宿主内
で複製可能かつ生存可能であるかぎり、使用できる。
【0050】
適当なDNA配列は、種々の手法によってベクターに挿入できる。一般的には、
当該技術分野で知られる手法で、適当な制限部位にDNA配列を挿入する。そのよ
うな手法その他は、当業者の範囲に含まれると考えられる。
【0051】
発現ベクター中のDNA配列は、mRNA合成を指令する適当な発現制御配列(プロ
モーター)に作動可能に連結される。そのようなプロモーターの代表例としては
、LTR又はSV40プロモーター、大腸菌lac又はtrp、ファージλPプロモーター、
及び原核細胞、真核細胞若しくはそれらのウイルス中の遺伝子の発現を制御する
ことが知られているその他のプロモーターを挙げることができる。発現ベクター
は、翻訳開始用のリボソーム結合部位と転写終結区(ターミネーター)をも含有
する。またベクターは、発現の増幅に適した配列を含んでもよい。
【0052】
さらに発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択に利用できる表現型特
徴を与えるための1以上の選択可能マーカー遺伝子(例えば真核細胞培養用のネ
オマイシン耐性やジヒドロ葉酸レダクターゼ、大腸菌におけるテトラサイクリン
耐性やアンピシリン耐性など)を含有することが好ましい。
【0053】
上述の適当なDNA配列と適当なプロモーター又は制御配列とを含有するベクタ
ーを、適当な宿主の形質転換に使用することによって、その宿主にそのタンパク
質を発現させることができる。
【0054】
適当な宿主の代表例としては、大腸菌、ストレプトミセス、ネズミチフス菌な
どの細菌細胞、酵母などの真菌細胞、キイロショウジョウバエS2及びSpodoptera
Sf9などの昆虫細胞、CHO、COS又はボーズ黒色腫などの動物細胞、アデノウイル
ス、植物細胞などを挙げることができる。適当な宿主の選択は、本明細書の教示
から、当業者の範囲に含まれると考えられる。
【0055】
より具体的に述べると、本発明は、上に広く記述した配列の1以上を含む組換
え構築物をも包含する。これらの構築物は、本発明の配列が正方向又は逆方向に
挿入されているベクター(プラスミドやウイルスベクターなど)を含む。この態
様の好ましい側面では、上記構築物がさらに、上記配列に作動可能に連結した調
節配列(プロモーターなどを含む)をも含有する。好適なベクターとプロモータ
ーは当業者に多数知られており、市販されている。次に挙げるベクターはその例
である。細菌用:pQE70、pQE60、pQE-9(Qiagen)、pBS、pD10、phagescript、p
siX174、pbluescriptSK、pbsks、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratagene
)、ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5(Pharmacia)。真核細胞用
:pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG、pS
VL(Pharmacia)。ただし、他のプラスミド又はベクターであっても、それがそ
の宿主内で複製可能かつ生存可能である限り、使用できる。
【0056】
プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベク
ターや、選択可能マーカーを持つ他のベクターを用いて、任意の所望の遺伝子か
ら選択できる。適当なベクターはPKK232-8とpCM7である。特に有名な細菌プロモ
ーターとしては、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、λP、P及びtrpが挙げられる。
真核プロモーターとしては、CMV即時型初期、HSVチミジンキナーゼ、初期及び後
期SV40、レトロウイルスのLTR、マウスメタロチオネイン-Iが挙げられる。適当
なベクターとプロモーターの選択は、当該技術分野の通常の技術水準に十分含ま
れる。
【0057】
さらなる態様として、本発明は、上述の構築物を含有する宿主細胞に関する。
本発明の宿主細胞は、哺乳類細胞のような高等真核細胞であってもよいし、酵母
細胞のような下等真核細胞であってもよく、また、細菌細胞のような原核細胞で
あってもよい。宿主細胞への上記構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフ
ェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、又はエレクトロポ
レーションによって達成できる(Davis, L., Dibner, M. Battey, I., Basic Me
thods in Molecular Biology(1986))。
【0058】
宿主細胞中の構築物を従来のように使用することによって、その組換え配列に
よってコードされる遺伝子産物を生産することができる。別法として、本発明の
ポリペプチドを従来のペプチド合成装置で合成することもできる。
【0059】
成熟タンパク質は、適当なプロモーターの制御下に、哺乳類細胞、酵母、細菌
その他の細胞中で発現させることができる。本発明のDNA構築物から得られるRNA
を用いて上記タンパク質を生産するには、無細胞翻訳系も使用できる。原核宿主
及び真核宿主での使用に適したクローニングベクターと発現ベクターは、Sambro
okら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第2版,ニューヨーク州コール
ドスプリングハーバー(1989))に記述されており、その開示は参考文献として
本明細書の一部を構成する。
【0060】
本発明のポリペプチドをコードするDNAの高等真核生物による転写は、そのベ
クターにエンハンサー配列を挿入することによって増大する。エンハンサーはDN
Aのシス作用性要素であり、通常10〜300bpで、プロモーターに作用してその転写
を増大させる。複製起点の後期側100〜270bpにあるSV40エンハンサー、サイトメ
ガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側にあるポリオー
マエンハンサー及びアデノウイルスエンハンサーなどがその例である。
【0061】
一般的に、組換え発現ベクターは、複製起点、その宿主細胞の形質転換を可能
にする選択可能マーカー(例えば大腸菌のアンピシリン耐性遺伝子やサッカロミ
セス・セレビシェTRP1遺伝子)及び下流構造配列の転写を指令する高発現遺伝子
由来のプロモーターを含むだろう。そのようなプロモーターは、なかんずく、3-
ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)のような解糖系酵素、α-因子、酸性ホスフ
ァターゼ又は熱ショックタンパク質をコードするオペロンから得ることができる
。異種構造配列は、翻訳開始配列と終止配列及び好ましくは翻訳されたタンパク
質の周辺腔又は細胞外培地への分泌を指令することのできるリーダー配列に対し
て適当な位相で、組み立てられる。任意に、その異種配列が、発現した組換え産
物の安定化や簡便な精製などといった所望の特徴を付与するN-末端同定ペプチド
(identification peptide)を含む融合タンパク質をコードしてもよい。
【0062】
細菌の使用に有用な発現ベクターは、所望のタンパク質をコードする構造DN
A配列を、適当な翻訳開始シグナル及び翻訳終止シグナルと共に、機能的プロモ
ーターに対して作動可能な解読位相(reading phase)に挿入することによって
、構築される。ベクターは、そのベクターの維持を保証し、かつ、所望であれば
、その宿主内での増幅を提供するために、1以上の表現型選択可能マーカーと複
製起点とを含むだろう。形質転換に好適な原核宿主としては、大腸菌、枯草菌、
ネズミチフス菌並びにシュードモナス属、ストレプトミセス属及びスタフィロコ
ッカス属に属する様々な種が挙げられる。ただし、他の宿主も選択肢として使用
できる。
【0063】
細菌の使用に有用な発現ベクターの典型例として、周知のクローニングベクタ
ーpBR322(ATCC37017)の遺伝要素を含む市販のプラスミドに由来する、選択可
能マーカーと細菌性複製起点とを含むものを挙げることができる(ただしこれに
限られるわけではない)。そのような市販ベクターとしては、例えばpKK223-3(
Pharmacia Fine Chemicals,スウェーデン国ウプサラ)及びGEM1(Promega Biote
c.,米国ウィスコンシン州マディソン)が挙げられる。これらのpBR322「骨格」
部分を、適当なプロモーター及び発現させようとする構造配列と組み合わせる。
【0064】
適当な宿主株を形質転換し、その宿主株を適当な細胞密度まで成長させた後、
選択したプロモーターを適当な手段(例えば温度変化や化学誘導)によって誘導
し、細胞をさらに培養する。
【0065】
典型的には、細胞を遠心分離によって収集し、物理的又は化学的手段によって
破壊し、得られた粗抽出物をさらなる精製のために確保する。
【0066】
タンパク質の発現に使用する微生物細胞は、凍結−融解サイクル、超音波処理
、機械的破壊又は細胞溶解剤の使用などといった任意の便利な方法で破壊でき、
そのような方法は当業者にはよく知られている。
【0067】
組換えタンパク質の発現には、種々の哺乳類細胞培養系も使用できる。哺乳類
発現系の例としては、Gluzman, Cell, 23:175(1981)に記載のサル腎繊維芽細
胞のCOS-7系や、適合するベクターを発現させることのできる他の細胞系(例え
ばC127、3T3、CHO、HeLa及びBHK細胞系)が挙げられる。哺乳類発現ベクターは
、複製起点、適当なプロモーター及びエンハンサーを含み、さらに必要なリボソ
ーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与部位とスプライス受容部位
、転写終止配列及び5'隣接非転写配列をも含むだろう。必要な非転写遺伝要素を
提供するには、SV40のスプライス部位とポリアデニル化部位に由来するDNA配列
を使用できる。
【0068】
本発明ポリペプチドは、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イ
オン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィ
ー、疎水相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒ
ドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを含
む方法によって、組換え細胞培養から回収、精製できる。必要とあれば、成熟タ
ンパク質の配置の完成に、タンパク質再生段階を使用できる。最後に、最終的な
精製段階として、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用できる。
【0069】
本発明のポリペプチドは、天然の精製産物であってもよいし、化学合成法の生
成物であってもよく、また組換え技術によって原核宿主又は真核宿主(例えば培
養された細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞及び哺乳類細胞など)か
ら生産されるものであってもよい。組換え生産法に使用する宿主によって、本発
明のポリペプチドはグリコシル化されることもあるし、グリコシル化されないこ
ともある。本発明のポリペプチドは、開始メチオニンアミノ酸残基を含んでもよ
い。
【0070】
本発明のポリヌクレオチドとポリペプチドは、ヒト疾患の治療法又は診断法を
発見するための研究用試薬及び研究材料として使用できる。
【0071】
本発明のポリペプチドは、受容体の特徴づけに使用できる。現在、EGFファミ
リー受容体には、EGFR1、EGFR2、EGFR3、EGFR4と呼ばれる4種類のEGF受容体が含
まれる。EGFR2受容体はERB-2とも呼ばれ、この分子は様々な診断的又は治療的適
応に有用である(Prignet, S.A.及びLemoine, N.R.,Prog. Growth Factor Res.,
4:1-24(1992))。TGFα-HIIポリペプチドは、おそらくこれら受容体の1以上
のリガンドであり、さらに同定される新しいEGF型受容体のリガンドでもあるだ
ろう。TGFα-HIIの使用は、そのような受容体の同定、特徴づけ及びクローニン
グに役立ちうる。例えば、EGF受容体遺伝子は、鳥類赤芽球症ウイルスのv-erb-B
癌遺伝子の細胞相同体である。EGF受容体の過剰発現や、そのタンパク質のキナ
ーゼ調節部分の欠失は、細胞の腫瘍形成性トランスフォーメーションを引き起こ
しうる(Manjusri, D.ら, Human Cytokines, 364及び381(1991))。
【0072】
本発明のポリペプチドは、外傷やその他の損傷性病状(例えばAIDS痴呆、老人
性痴呆など)の結果として減少した神経学的機能の回復又は増進にも使用できる
。TGFαとその相同体は、脳のほとんどの部分で、EGF/TGFα受容体に対する最も
豊富なリガンドであることがわかっている(Kaserら, Brain Res Mol Brain Res
:16:316-322(1992))。EGFが小さく不連続な領域にしか存在しないのに対して
、TGFαは脳の様々な領域に広く分布しているようである。このことは、TGFαが
脳組織において生理学的な役割を果たしているのかもしれないことを示唆してい
る。脳内にTGFαに対する受容体部位がこれほど数多く存在することは、TGFが正
常な脳細胞の分化と機能の促進に関して重要な効用を持つことを示唆している。
したがって、神経学的機能が減少している場合は、本発明のポリペプチドを投与
することによって、脳を刺激し、適正な神経学的機能を高めることができる。
【0073】
TGFα-HII又はその可溶型は、目の障害(例えば角膜炎)の治療にも使用でき
る。様々な実験によって、このような病状にTGFα遺伝子ファミリーの構成要素
が関連付けられている。最近の報文に、これらの増殖因子が目の疾患に果たす役
割に関するデータのいくつかが要約されている(Mannら, Cell 73:249-261(199
3))。最近の実験では、TGFα遺伝子を欠くいくつかのマウスが、目の固有質に
対する白血球その他の細胞の浸潤による角膜炎を示すことがわかっている。
【0074】
さらに、TGFα増殖因子の標的細胞に対する特異性を、標的細胞を破壊するた
めの仕組みとして活用することもできる。例えば、TGFα-HII又はその可溶型を
毒性分子(例えば標的細胞を不活化する放射性医薬)に(種々の方法で)カップ
リングすることができる。これらの増殖因子−毒素融合物は標的細胞を殺す(場
合によっては、種々の「傍観者(bystander)」作用によって、隣接細胞をも殺
す)。このような毒素融合物遺伝子の最近の例は、Mesriら, J. Biol. Chem. 26
8:4853-62(1993)に公表されている。TGFα-HIIとその関連分子をリポソームに
封入したり、腫瘍又は細胞特異的抗原を認識、結合する抗体と共役させることに
よって、細胞を「標的にする(targeting)」手段を与えることもできる。
【0075】
同じ方法で、TGFα-HIIを抗新生物化合物として使用することもできる。EGFフ
ァミリーの構成要素はトランスフォームした細胞に対して抗増殖作用を示すから
である。生体内で使用する場合、本発明のポリプチドは、注射、注入、局所投与
、非経口投与など(ただしこれらに限られない)、種々の方法で投与できる。投
与は、生理学的に許容できる任意の担体(リン酸緩衝食塩水、食塩水、滅菌水な
ど)を使用して行なうことができる。
【0076】
TGFα-HIIポリペプチド断片も、ある種の腎疾患の治療に使用できる。これら
の増殖因子が腎臓で発現することがわかっているからである。したがって、これ
らの因子は、この器官の適正な生理学的維持に必要なのだろう。
【0077】
TGFαとその相同体及び肝細胞増殖因子は、部分的肝切除及び急性肝細胞壊死
後の肝細胞再生を引き起こすので(Masuhara, M.ら, Hepatology 16:1241-1249
(1992))、肝再生又は肝不全に関する処置も可能である。
【0078】
TGFα-HIIを必要とする重要な処置は、創傷治癒に関する処置である。本発明
の組成物は、実質上あらゆる皮膚創傷、角膜創傷及び上皮で裏打ちされた身体の
中空器官を含む、様々な創傷の処置に使用できる。処置に適した創傷としては、
火傷、擦傷、切り傷などの外傷によるものと、外科的切開及び皮膚移植などの手
術によるものが挙げられる。本発明ポリペプチドによる処置に適した他の状態と
しては、慢性潰瘍、糖尿病性潰瘍などの慢性病や、非治癒(non-healing)(栄
養)状態が挙げられる。
【0079】
TGFα-HIIやその可溶性断片は、患部に適用するための生理学的に許容できる
担体に組込むことができる。担体の性質は、意図する適用部位によって大きく異
なる。皮膚への適用には、通常、クリーム基剤や軟膏基剤が好ましい。好適な基
剤としては、ラノリン、シルバジン(Marion)(特に火傷の治療用)、アクアフ
ォア(Aquaphor; Duke Laboratories,コネチカット州サウスノーウォーク)など
が挙げられる。所望であれば、TGFα-HII含有組成物を包帯その他の創傷用治療
材料に組込むことによって、創傷を本発明ペプチドに継続してさらすこともでき
る。エアロゾルの適用も用途があるだろう。
【0080】
治療組成物中のTGFα-HII濃度は決定的な問題ではないが、上皮細胞増殖を誘
導するに足る濃度でなければならない。本発明組成物は、患部に局所的に(一般
的には点眼剤として目に、若しくはクリーム、軟膏又はローションとして皮膚に
)適用できる。目の場合、頻繁な処置が好ましく、通常は、4時間未満の間隔で
適用する。皮膚には、1日に2〜4回若しくはそれ以上頻繁に治療組成物を適用し
ながら、治癒中は継続して患部に治療組成物を保持することが望ましい。
【0081】
本発明ポリペプチドの使用量は、投与法、他の活性化合物の使用などによって
変動するが、一般的には、約1μg〜100μgの範囲である。本発明ポリペプチドは
、食塩水、リン酸緩衝食塩水などといった生理学的に許容できる担体と共に使用
できる。使用する化合物の量は、試験管内での細胞の応答や本発明ポリペプチド
又は本発明ポリペプチドを含有する製剤に対する実験動物の応答に基づいて、実
験的に決定されるだろう。
【0082】
TGFα-HIIやその可溶性断片は、血管形成、骨再吸収、免疫応答、シナプスエ
フェクター機能及びニューロンエフェクター機能の調節に使用できる。TGFα-HI
Iは、アラキドン酸カスケードの調節にも使用できる。
【0083】
TGFα-HIIやその可溶性断片は、最終分化に関する応用にも使用できる。多く
のTGFα因子とそれらの相同体は、それらの標的細胞における最終分化を誘導す
る。この性質は、その因子を投与し、標的細胞の死を誘導することによって、生
体内で活用できる。この方法は、医学的に望ましくない細胞タイプ(癌など)の
過剰増殖に関係する障害や他の増殖性障害(例えば炎症、乾癬など)について検
討されている。生体内投与に加えて、試験管内投与が正当な場合も種々ある。例
えば、骨髄の場合は、細胞を増殖因子及び/又はその誘導体で処理することによ
って、骨髄から望ましくない細胞集団を除去することができる。
【0084】
また、脱毛症、抜け毛、その他毛包の発育に影響を与える皮膚状態に関する応
用もある。TGFα増殖因子がそのような状態に関与することは、数系統の証拠が
示唆している。上述のように、TGFα遺伝子にヌル(無効)突然変異を含有する
ように操作された「ノックアウト」マウスは、量的及び質的毛髪合成に関して異
常を示す。さらに、マウスにおけるマッピング研究によって、毛髪の成長に影響
を与えるいくつかの突然変異がTGFα遺伝子座にマッピングされることがわかっ
ている(Mannら, Cell 73:249-261(1993))。いくつかの形態の脱毛症と抜け
毛の治療には、TGFα-HII又はその誘導体の局所的又は全身的投与を使用するこ
とができ、これらの主張は本発明の範囲に包含される。
【0085】
ある種の疾患病理は、TGFα-HII増殖因子の全身的臨床投与によって、部分的
又は完全に改善できる。この投与は、遺伝子療法(下記参照)の形態をとること
もできるし、TGFα-HII DNAの組換え構築物又はペプチド化学合成によって合成
されたペプチド又はタンパク質の投与によって行なうこともできる(Wooら, Pro
tein Engineering 3:29-37(1989))。
【0086】
本発明は、本発明のポリペプチドに対するアゴニスト化合物又はアンタゴニス
ト化合物を同定するための化合物スクリーニング法を提供する。例えば、TGFα-
HII受容体を発現させる哺乳類細胞又は膜調製物を、候補化合物と共にインキュ
ベートし、その受容体から第2シグナルを発生させる(その化合物の)能力を測
定することによって、それが有効なアゴニストであるかどうかを決定する。その
ような第2伝達子(メッセンジャー)系としては、cAMPグアニル酸環化酵素、イ
オンチャンネル又はホスホイノシチド加水分解が挙げられるが、これらに限られ
るわけではない。有効なアンタゴニストは、上述の方法で、受容体に結合するが
、第2メッセンジャー応答を引き出さず、したがってその受容体をTGFα-HIIから
遮断するアンタゴニスト化合物を検出することによって決定される。
【0087】
本発明ポリペプチドに対する受容体に特異的な潜在的アンタゴニストを同定す
るためのもう1つの検定法は、競争検定法である。この競争検定法では、本発明
ポリペプチドに対する受容体を過剰に発現する原形質膜(例えばヒトA431癌細胞
)を単離する。10nM 125I-TGFα-HIIを含有する培地で連続希釈した試験試料
(体積は約10μl)を、潜在的アンタゴニスト化合物の存在下に、上記原形質膜5
μgに加え、4℃で4時間インキュベートする。その反応混合物を希釈し、直ちに
ミリポアフィルターに通す。次にそのフィルターをすばやく洗浄し、結合した放
射活性をガンマカウンターで測定する。次に、結合したTGFα-HIIの量を測定す
る。上記化合物の不在下に対照検定をも行なって、そのアンタゴニストが、結合
したTGFα-HIIの量を減少させるかどうかを決定する。
【0088】
潜在的アンタゴニスト化合物としては、そのポリペプチドに結合する抗体や(
場合によっては)オリゴペプチドが挙げられる。また、密接に関係するタンパク
質であって、その受容体に結合するが、そのポリペプチドの不活性型であるので
、本発明ポリペプチドの作用を妨害するものも、潜在的アンタゴニストになりう
る。
【0089】
もう1つのアンタゴニスト化合物は、アンチセンス技術を用いて作成されるア
ンチセンス構築物である。アンチセンス技術は、アンチセンスDNA又はRNA若しく
は三重らせん形成による遺伝子発現の制御に使用でき、これらの方法は共に、DN
A又はRNAに対するポリヌクレオチドの結合に基づく。例えば、本発明の成熟ポリ
ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の5'コーディング部分を用いて、約
10〜40塩基対長のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを設計する。DNAオリゴヌ
クレオチドは、転写に関与する遺伝子の領域に相補的になるように設計されるの
で(三重らせん−Leeら, Nucl. Acids. Res., 6:3073(1979);Cooneyら, Scie
nce, 241:456(1988);Dervanら, Science, 251:1360(1991)を参照)、本発
明ポリペプチドの転写と生産を妨害する。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチド
は生体内でmRNAにハイブリッド形成し、そのmRNA分子の本発明ポリペプチドへの
翻訳を遮断する(アンチセンス−Okano, J. Neurochem., 56:560(1991);Olig
odeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression, CRC Press,
フロリダ州ボカラトン(1988)を参照)。アンチセンスRNA又はDNAが生体内で発
現して、本発明ポリペプチドの生産を阻害しうるように、上述のオリゴヌクレオ
チドを細胞に送達することもできる。
【0090】
本発明ポリペプチドに結合し、受容体におけるその作用を遮断することによっ
て、正常な生物学的活性を妨害する小分子も、アンタゴニスト化合物である。小
分子が、本発明ポリペプチドに対する受容体を結合してもよい。そのような小分
子の例としては、小ペプチド又は小さいペプチド様分子が挙げられるが、これら
に限られるわけではない。
【0091】
上記アンタゴニストは、新生組織形成(例えば癌や腫瘍)の治療に使用できる
。腫瘍細胞によるEGFファミリー構成要素の分泌又は生産を阻害すると、腫瘍が
緩解することが知られている。
【0092】
本発明ポリペプチドに対するアンタゴニストは、ある種の皮膚障害(例えば乾
癬)の処置にも治療的に使用できる。乾癬障害などの疾患から採取した皮膚生検
におけるこの増殖因子ファミリーの構成要素の発現レベルは、上昇していること
がわかっている(Cookら, Cancer Research, 52:3224-3227(1992))。上記ア
ンタゴニストは、後述のような医薬的に許容できる担体との組成物として使用で
きる。
【0093】
本発明ポリペプチド、アゴニスト化合物又はアンタゴニスト化合物は、適当な
医薬担体と組み合わせて使用できる。そのような組成物は、治療有効量の上記ペ
プチド又は化合物と、医薬的に許容できる担体又は賦形剤とを含有する。そのよ
うな担体としては、塩水、緩衝塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタ
ノール及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限られるわけではない
。製剤は投与法に適するものとする。
【0094】
本発明は、本発明医薬組成物の1以上の成分で満たされた1以上の容器を含む医
薬パック又はキットをも提供する。そのような容器には、医薬品又は生物学的製
品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式で、ヒト投
与に関する製造、使用又は販売の該機関による認可を反映する情報を付すことが
できる。さらに、本発明のポリペプチド又は化合物を他の治療用化合物と共に使
用してもよい。
【0095】
上記医薬組成物は、経口経路、局所経路、静脈内経路、腹腔内経路、筋肉内経
路、皮下経路、鼻孔内経路又は皮内経路など、都合の良い方法で投与できる。上
記医薬組成物は、特定の適応症の処置及び/又は予防に有効な量で投与される。
一般的には、少なくとも約10μg/kg-体重の量で投与され、ほとんど場合は、約8
mg/kg-体重/日を超えない量で投与されるだろう。ほとんどの場合、日用量は、
投与経路、症状などを考慮して、約10μg/kg〜約1mg/kg-体重である。
【0096】
本発明のポリペプチドと、ポリペプチドであるアゴニスト及びアンタゴニスト
を、本発明に従って使用する場合は、それを生体内における上記ポリペプチドの
発現によってすることもできる。これはしばしば「遺伝子療法」と呼ばれる。
【0097】
したがって、例えば、患者から得た細胞を、生体外で、ポリペプチドをコード
するポリヌクレオチド(DNA又はRNA)で操作し、そのポリペプチドで処置しよう
とする患者に、操作したその細胞を与えることができる。このような方法は当該
技術分野では良く知られており、本明細書の教示から明らかである。例えば、本
発明のポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルスプラスミドベク
ターを使用して、細胞を操作することができる。
【0098】
さらに、生体内でポリペプチドを発現させるために、例えば当該技術分野で知
られる手法によって、生体内で細胞を操作することもできる。例えば、本発明ポ
リペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルスプラスミドベクターをパ
ッケージング細胞に形質導入すると、そのパッケージング細胞が目的の遺伝子を
含有する感染性ウイルス粒子を生産するようになる。生体内で細胞を操作し、生
体内で本発明のポリペプチドを発現させるには、これらの生産細胞を患者に投与
すればよい。そのような方法による本発明ポリペプチドの上記その他の投与法は
、本発明の教示から、当業者には明らかなはずである。
【0099】
上述のレトロウイルスプラスミドベクターの供給源となりうるレトロウイルス
としては、モロニーネズミ白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルスや、ラウス肉腫ウ
イルス、ハーヴェー肉腫ウイルス、鳥類白血病ウイルス、テナガザル白血病ウイ
ルス、ヒト免疫不全症ウイルス、アデノウイルス、脊髄増殖性肉腫ウイルス及び
乳癌ウイルスなどのレトロウイルスが挙げられるが、これらに限られるわけでは
ない。一態様として、レトロウイルスプラスミドベクターをモロニーネズミ白血
病ウイルスから得る。
【0100】
ベクターは1又はそれ以上のプロモーターを含む。使用できる好適なプロモー
ターとしては、レトロウイルスLTR、SV40プロモーター、Millerら, Biotechniqu
es,第7巻,第9号, 980-990(1989)に記載のヒトサイトメガロウイルス(CMV)プ
ロモーター、その他のプロモーター(例えばヒストンプロモーター、pol IIIプ
ロモーター、β-アクチンプロモーター(ただしこれらに限らない)のような真
核細胞プロモーターなどの細胞性プロモーター)が挙げられるが、これらに限ら
れるわけではない。使用できるその他のウイルスプロモーターとしては、アデノ
ウイルスプロモーター、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター及びB19パルボウ
イルスプロモーターが挙げられるが、これらに限られるわけではない。適当なプ
ロモーターの選択は、本明細書の教示から、当業者には明らかだろう。
【0101】
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列は、好適なプロモーターの制御下
にある。使用できる好適なプロモーターとしては、アデノウイルスプロモーター
(アデノウイルス主要後期プロモーターなど)、異種プロモーター(サイトメガ
ロウイルス(CMV)プロモーターなど)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)プロモー
ター、誘導性プロモーター(MMTプロモーターやメタロチオネインプロモーター
など)、熱ショックプロモーター、アルブミンプロモーター、ApoAIプロモータ
ー、ヒトグロビンプロモーター、ウイルスチミジンキナーゼプロモーター(単純
ヘルペスチミジンキナーゼプロモーターなど)、レトロウイルスLTR(上述の修
飾レトロウイルスLTRを含む)、β-アクチンプロモーター、ヒト成長ホルモンプ
ロモーターが挙げられるが、これらに限るわけではない。プロモーターは、本発
明ポリペプチドをコードする遺伝子を制御する天然のプロモーターであってもよ
い。
【0102】
上記レトロウイルスプラスミドベクターでパッケージング細胞を形質導入する
ことによって、生産細胞系を作成する。トランスフェクションできるパッケージ
ング細胞の例としては、Miller, Human Gene Therapy,第1巻, 5-14(1990)(こ
の刊行物の全内容は参考文献として本明細書の一部を構成する)に記載のDAN、P
E501、PA317、ψ-2、ψ-AM、PA12、T19-14X、VT-19-17-H2、ψCRE、ψCRIP、GP+
E-86及びGP+envAm12細胞系が挙げられるが、これらに限るわけではない。ベクタ
ーは、当該技術分野で知られる任意の手段で、パッケージング細胞に導入される
。そのような手段としては、エレクトロポレーション、リポソームの使用及びリ
ン酸カルシウム沈降法が挙げられるが、これらに限るわけではない。もう1つの
方法として、レトロウイルスプラスミドベクターをリポソームに封入するか、脂
質にカップリングした後、宿主に投与してもよい。
【0103】
上記生産細胞系は、本発明ポリペプチドをコードする核酸配列を含む感染性レ
トロウイルスベクター粒子を生成する。このようなレトロウイルスベクター粒子
は、試験管内又は生体内で、真核細胞の形質導入に使用できる。形質導入された
真核細胞は、本発明ポリペプチドをコードする核酸配列を発現させるだろう。形
質導入できる真核細胞としては、胚幹細胞、胚癌細胞、造血幹細胞、肝細胞、繊
維芽細胞、筋芽細胞、ケラチン生成細胞、内皮細胞及び気管支上皮細胞が挙げら
れるが、これらに限られるわけではない。
【0104】
本発明は、診断薬としての本発明遺伝子の使用にも関係する。本発明遺伝子の
突然変異型の検出は、本発明ポリペプチドの過少発現がもたらす疾患(例えば不
適当な創傷治癒、不適当な神経学的機能、目の障害、腎障害、肝障害、毛包発育
、血管形成、胚形成など)又はその疾患に対する罹病性の診断を可能にする。
【0105】
本発明のヒト遺伝子に突然変異を持つ個体は、種々の技術によってDNAレベル
で検出できる。診断用の核酸は、血液、尿、唾液、組織生検及び検死体などとい
った患者の細胞から得ることができる。ゲノムDNAは、検出に直接使用してもよ
いし、分析に先立って、PCRを用いて酵素的に増幅してもよい(Saikiら, Nautre
, 324:163-166(1986))。RNAやcDNAも同じ目的に使用できる。例えば、本発明
ポリペプチドをコードする核酸に相補的なPCRプライマーを使用して、その突然
変異を同定及び分析することができる。例えば、欠失や挿入は、増幅産物のサイ
ズが正常な遺伝子型とは異なることによって検出できる。点変異は、放射線で標
識したRNA配列若しくは放射線で標識したアンチセンスDNA配列に、増幅したDNA
をハイブリッド形成させることによって同定できる。完全に一致する配列は、RN
aseA消化若しくは融解温度の相違によって、ミスマッチを持つ二本鎖分子と識別
することができる。
【0106】
参照遺伝子と突然変異を持つ遺伝子の間の配列の相違は、直接DNA配列決定法
によって明らかにできる。さらに、クローン化したDNA部分をプローブとして使
用することにより、特定のDNA部分を検出することもできる。この方法の感度は
、PCRと組み合わせると、著しく増大する。例えば、配列決定プライマーを、改
良PCRによって生成した二本鎖PCR産物又は一本鎖鋳型分子と共に使用する。配列
決定は、放射線標識ヌクレオチドを用いる従来の手法か、蛍光標識を用いる自動
配列決定法によって行なう。
【0107】
DNA配列の相違に基づく遺伝子試験は、変性剤を含む(若しくは含まない)ゲ
ルにおけるDNA断片の電位泳動移動度の変化を検出することによって、達成でき
る。小さい配列の欠失と挿入は、高分解能ゲル電気泳動によって可視化できる。
配列が異なるDNA断片は、変性ホルムアミド勾配ゲルで識別できる。この場合、
異なるDNA断片の移動度は、それぞれの融解温度又は部分的融解温度に従って、
ゲル中の異なる位置で遅延する(例えばMyersら, Science, 230:1242(1985)を
参照のこと)。
【0108】
特定の位置における配列の変化は、化学的切断法や、RNase及びS1保護などの
ヌクレアーゼ保護検定法でも明らかにできる(例えばCottonら, PNAS, USA, 85:
4397-4401(1985)を参照)。
【0109】
したがって、特定のDNA配列の検出は、ハイブリッド形成、RNase保護、化学的
切断、直接DNA配列決定などの方法、若しくは制限酵素の使用(例えば制限断片
長多形(Restriction Fragment Length Polymorphisms;RFLP))及びゲノムDNA
のサザンブロッティングによって達成できる。
より従来的なゲル電気泳動とDNA配列決定に加えて、インシチュー分析でも突
然変異を検出することができる。
【0110】
また、本発明は、種々の組織における本発明ポリペプチドのレベルの変化を検
出する診断的検定法に関する。正常な対照組織試料に比べて本発明タンパク質の
発現が過剰であることは、新生組織形成、皮膚障害、目の障害及び炎症などとい
ったある種の疾患状態の存在を示しうるからである。宿主から得た試料中の本発
明ポリペプチドのレベルを検出するのに使用する検定法は、当業者には良く知ら
れており、ラジオイムノアッセイ、競争結合検定、ウェスタンブロット分析、そ
して好ましくはELISA検定が挙げられる。ELISA検定法では、先ず、本発明ポリペ
プチドの抗原に特異的な抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を調製する。さ
らに、そのモノクローナル抗体に対するリポーター抗体を調製する。リポーター
抗体には、放射活性や蛍光などの検出可能な試薬(この例では西洋ワサビペルオ
キシダーゼ酵素)を結合する。次に、宿主から試料を取り出し、その試料中のタ
ンパク質を結合する固体支持体(例えばポリスチレン皿)上でインキュベートす
る。次に、非特異的タンパク質(ウシ血清アルブミンなど)と共にインキュベー
トすることによって、皿上の遊離のタンパク質結合部位をすべて覆う。次に、上
記モノクローナル抗体をその皿中でインキュベートする。この間に、モノクロー
ナル抗体は、ポリスチレン皿に結合した本発明ポリペプチドのすべてに結合する
。未結合のモノクローナル抗体を緩衝液で洗い流す。次に、西洋ワサビペルオキ
シダーゼに結合したリポーター抗体をその皿に入れ、本発明ポリペプチドに結合
したモノクローナル抗体にレポーター抗体を結合させる。次に、未結合のリポー
ター抗体を洗い流す。次に、ペルオキシダーゼ基質をその皿に加える。与えられ
た期間中に発色する色の量を標準曲線と比較すれば、与えられた体積の患者試料
中に存在するタンパク質量の測定値が得られる。
【0111】
競争検定法を用いて、宿主から得た試料中の本発明ポリペプチドのレベルを決
定することもできる。この検定法では、本発明ポリペプチドに対する受容体を過
剰発現させる原形質膜を単離する。次に、標識された本発明ポリペプチドを含有
する試験試料をその原形質膜に加え、規定の時間インキュベートする。その反応
混合物には、本発明ポリペプチドを含有すると思われる宿主から得た試料も加え
る。次に、その反応混合物をフィルターに通し、そのフィルターをすばやく洗浄
した後、結合した放射活性を測定することによって、受容体に関する競争量(し
たがってその試料中の本発明ポリペプチドの量)を決定する。
【0112】
TGFα-HIIに対する抗体は、癌の診断と治療に使用できる。癌細胞の多くは、
新生組織形成又は過形成の過程で、種々のTGFαファミリー構成要素を上方調節
するからである。これらの抗体はTGFα-HIIに結合して、それを不活化する。TGF
α-HII(及び/又はそのファミリー構成要素)に対するモノクローナル抗体は、
ある種の障害(例えば過形成及び新生組織形成増殖異常など(ただしこれに限ら
れない))の診断と治療に、臨床的に用いられる。新生物組織による増殖因子発
現の上方調節は、患者の血液中の増殖因子の増大を検出する種々の血清検定法の
基礎をなす。これらの検定法は、通常、診断的に応用されるばかりでなく、予後
(手術や化学療法などに続いて、ごく微量な腫瘍細胞の存在を検出するため)に
も応用される。
【0113】
また、TGFα-HII受容体を発現させる悪性細胞は、標識したTGFα-HIIを受容体
結合検定法で用いるか、若しくはTGFα-HII受容体自体に対する抗体を使用する
ことによって検出できる。細胞はTGFα-HIIに対する受容体の存在と密度によっ
て識別できるので、これは、TGFα-HIIの生物学的活性に対するそのような細胞
の感受性を予測する手段となる。
【0114】
本発明の配列は、染色体同定にも有効である。本発明の配列は、個々のヒト染
色体上の特定の位置に特異的に誘導され、それにハイブリッド形成できる。また
、染色体上の特定の部位を同定することは、現在必要とされていることでもある
。現在のところ、染色体位置の標識に利用できる、実際の配列データ(反復多形
(repeat polymorphisms))に基づく染色体標識試薬はほとんどない。本発明に
よる染色体に対するDNAのマッピングは、それらの配列を疾患に関係する遺伝子
と相関させる重要な第1段階である。
【0115】
簡単に述べると、配列は、そのcDNAからPCRプライマー(15〜25bpが好ましい
)を調製することによって、染色体に対してマッピングできる。ゲノムDNA中の2
エクソン以上にまたがることによって増幅過程を複雑にすることのないプライマ
ーをすばやく選択するには、3'非翻訳領域のコンピューター分析を用いる。次に
、個々のヒト染色体を含有する体細胞ハイブリッドのPCRスクリーニングに、こ
れらのプライマーを用いる。そのプライマーに対応するヒト遺伝子を含有するハ
イブリッドのみが、増幅断片を生成するだろう。
【0116】
体細胞ハイブリッドのPCRマッピングは、特定のDNAを特定の染色体に割り当て
る迅速な方法である。同じオリゴヌクレオチドプライマーで本発明を用いると、
同様の方法で、特定の染色体に由来する断片のパネル若しくは大きいゲノムクロ
ーンのプールで、サブマッピング(sublocalization)を達成できる。染色体に
対するマッピングに同様に使用できる他のマッピング法としては、インシチュー
ハイブリッド形成、染色体特異的cDNAライブラリーを構築するためのハイブリッ
ド形成による予備選択及び標識フロー選別(labeled flow-sorted)染色体によ
る予備スクリーニングが挙げられる。
【0117】
中期染色体に対するcDNAクローンの蛍光インシチューハイブリッド形成(FISH
)を用いると、1段階で正確な染色体位置を得ることができる。この技術は50又
は60塩基程度のcDNAでも使用できる。この技術の総説としては、Vermaら, Human
Chromosomes: a Manual of Basic Techniques, Pergamon Press,ニューヨーク
(1988)を参照のこと。
【0118】
配列を正確な染色体位置にマッピングしたら、その配列の染色体上の物理的位
置を遺伝子マップデータと相関させることができる。そのようなデータは、例え
ばV. McKusick, Mendelian Inheritance in Man(ジョーンズホプキンス大学ウ
ェルチ医学図書館からオンラインで入手できる)に認められる。次に、同じ染色
体領域にマッピングされた疾患と遺伝子の関係を連鎖分析(linkage analysis)
(物理的に隣接する遺伝子の同時遺伝)によって同定する。
【0119】
次に、患者と非患者の間で、そのcDNA又はゲノム配列の相違を決定する必要が
ある。ある突然変異がその患者の一部又は全部に観測され、正常な個体には観測
されない場合、その突然変異はその疾患の原因因子であるかもしれない。
【0120】
物理的マッピング技術と遺伝子マッピング技術の現在の解像度では、その疾患
に関係する染色体領域に正確にその位置が特定されるcDNAは、50〜500個の潜在
的原因因子のうちの一つであろう(1メガ塩基マッピング解像度と20kbにつき1遺
伝子と仮定)。
【0121】
本発明ポリペプチド、その断片その他の誘導体、その類縁体、若しくはそれら
を発現させる細胞は、それらに対する抗体を生産するための免疫原として使用で
きる。これらの抗体は、例えばポリクローナル抗体やモノクローナル抗体であり
うる。本発明は、キメラ抗体、一本鎖抗体、擬人化抗体及びFab断片又はFab発現
ライブラリーの産物をも包含する。このような抗体及び断片の生産法は、当該技
術分野で種々知られている。
【0122】
本発明の配列に対応するポリペプチドに対して生じる抗体は、動物(好ましく
はヒト以外の動物)にそのポリペプチドを直接注射するか、投与することによっ
て得ることができる。そのようにして得た抗体は、そのポリペプチド自体に結合
するだろう。この方法では、そのペプチドの断片のみをコードする配列を使用し
て、その全天然ポリペプチドを結合する抗体を生成させることもできる。そのよ
うな抗体は、そのポリペプチドを発現させる組織からそのポリペプチドを単離す
るために使用できる。
【0123】
モノクローナル抗体の製造には、連続的継代細胞系培養によって生産される抗
体を与える任意の技術を使用できる。その例としては、ハイブリドーマ技術(Ko
hler及びMilstein, 1975, Nature, 256:495-497)、トリオーマ(trioma)技術
、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら, 1983, Immunology Today 4:72)及
びヒトモノクローナル抗体を生産するためのEBVハイブリドーマ技術(Coleら, 1
985, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., 77-96
頁)が挙げられる。
【0124】
一本鎖抗体の生産について記述した技術(米国特許4,946,778)は、本発明の
免疫原性ポリペプチド産物に対する一本鎖抗体の生産に適合させることができる
。また、形質転換マウスを用いて、本発明の免疫原性ポリペプチド産物に対する
擬人化抗体を発現させることもできる。
【0125】
以下の実施例を参照して、本発明をさらに説明する。ただし、本発明はこれら
の実施例に限定されないと理解すべきである。特に指定しない限り、割合や量は
すべて重量に基づく。
【0126】
以下の実施例の理解を容易にするため、頻繁に使用する方法及び/又は用語を
いくつか説明しておく。
【0127】
「プラスミド」は、小文字pとその前後の大文字及び/又は数字で指定する。本
明細書における出発プラスミドは市販されているか、公に無制限に入手できるか
、若しくは入手できるプラスミドから公表された方法に従って構築できる。さら
に、当該技術分野では、本明細書に記述するプラスミドと等価なプラスミドが知
られており、それらは当業者には明らかだろう。
【0128】
DNAの「消化」とは、そのDNA中の特定の配列でのみ作用する制限酵素によるDN
Aの触媒的切断を意味する。本明細書で使用する種々の制限酵素は市販されてお
り、それらの反応条件、補因子その他の必要条件は、当業者に知られているであ
ろうものを使用した。分析には、通常、1μgのプラスミド又はDNA断片を約2単位
の酵素と共に約20μlの緩衝溶液中で使用する。プラスミド構築用のDNA断片を単
離する場合は、通常、より大きい体積中で、5〜50μgのDNAを20〜250単位の酵素
で消化した。特定の制限酵素に適した緩衝液と基質の量は、製造者によって指定
される。通常は37℃で約1時間のインキュベーション時間を使用するが、これは
供給者の指示に従って変えることができる。消化後、その反応液をポリアクリル
アミドゲルで直接電気泳動して、所望の断片を単離する。
【0129】
切断した断片のサイズ分離は、Goeddel, D.ら, Nucleic Acids Res., 8:4057
(1980)に記載の8%ポリアクリルアミドゲルを用いて行なう。
【0130】
「オリゴヌクレオチド」とは、化学的に合成できる一本鎖ポリデオキシヌクレ
オチド又は2本の相補的ポリデオキシヌクレオチド鎖を意味する。そのような合
成オリゴヌクレオチドは5'リン酸基を持たないので、キナーゼの存在下にATPで
リン酸基を付加しないと、もう1つのオリゴヌクレオチドには連結しないだろう
。合成オリゴヌクレオチドは、脱リン酸化されていない断片に連結するだろう。
【0131】
「連結」とは、2本の二本鎖核酸断片間のリン酸ジエステル結合の形成過程を
いう(Maniatis, T.ら,同上,146頁)。特に規定しない限り、連結は、既知の緩
衝液と条件を用いて、連結すべきほぼ等モル量のDNA断片0.5μgにつき10単位のT
4 DNAリガーゼ(「リガーゼ」)で、達成することができる。
特に明言しない限り、形質転換はGraham, F.及びVan der Eb, A., Virology,
52:456-457(1973)の方法で行なった。
【0132】
実施例1:可溶型TGFα-HIIの細菌発現と精製
TGFα-HIIをコードするDNA配列(ATCC番号97160)を、まず、プロセシングさ
れたTGFα-HIIタンパク質(シグナルペプチド配列を欠く)の5'配列に対応するP
CRオリゴヌクレオチドプライマーと、TGFα-HII遺伝子の3'側にあるベクター配
列に対応するPCRオリゴヌクレオチドプライマーとを用いて増幅した。TGFα-HII
に対応する追加のヌクレオチドを、その5'配列と3'配列のそれぞれに付加した。
5'オリゴヌクレオチドプライマーは、
【数1】



という配列を持ち、BamHI制限酵素部位(太字部分)と、それに続く、プロセシ
ングされたタンパク質コドンの推定末端アミノ酸から始まるTGFα-HIIコーディ
ング配列の21ヌクレオチドとを含有する。3'配列(5'GGGAAGCTTTTAATACTGAAATCG
TACAGGAC3';配列番号4)は、HindIII部位に相補的な配列を含有し、それに、TG
Fα-HIIの23ヌクレオチドが続いている。これらの制限酵素部位は、細菌発現ベ
クターpQE-9(Quiagen, Inc.,カリフォルニア州91311チャッツワース)上の制限
酵素部位に対応する。pQE-9は抗生物質耐性(Amp)、細菌性複製起点(ori)
、IPTGで制御できるプロモーターオペレーター(P/O)、リボソーム結合部位(R
BS)、6-His標識及び制限酵素部位をコードする。pQE-9をBamHIとHindIIIで消化
した。増幅した配列をpQE-9中に連結し、ヒスチジン標識及びRBSと枠を合わせて
挿入した。次に、その連結混合物を用いて、Sambrook, J.ら, Molecular Clonin
g: A Laboratory Manual, Cold Harbor Laboratory Press(1989)に記載の手法
で、大腸菌M15/rep4株(Qiagen, Inc.)を形質転換した。M15/rep4は、lacI抑制
因子を発現し、かつ、カナマイシン耐性(Kan)を付与するプラスミドpREP4の
複数コピーを含有する。LBプレート上で成長するそれらの能力によって形質転換
体を同定し、アンピシリン/カナマイシン耐性コロニーを選択した。プラスミドD
NAを単離し、制限分析によってそれを確認した。所望の構築物を含有するクロー
ンを、Amp(100μg/ml)とKan(25μg/ml)の両方を補足したLB液体培地で、終
夜(O/N)培養した。そのO/N培養物を、1:100〜1:250の比率で、大きい培養に接
種した。光学密度600(O.D.600)が0.4〜0.6になるまで細胞を生育した。次
に、IPTG(「イソプロピル-(-D-チオガラクトピラノシド」)を最終濃度1mMで加
えた。IPTGは、lacI抑制因子を不活化することによって、P/Oをきれいにし、遺
伝子発現の増大を誘導する。細胞をさらに3〜4時間生育した。次に、遠心分離に
よって細胞を収集した。細胞ペレットをカオトロピック剤6M塩酸グアニジン中で
可溶化した。清浄化の後、この溶液から、6-His標識を含有するタンパク質によ
る強固な結合が可能な条件下に、ニッケル-キレートカラムでのクロマトグラフ
ィーによって、可溶化したTGFα-HIIを精製した(Hochuli, E.ら, J. Chromatog
raphy 411:177-184(1984))。TGFα-HII(純度85%)を6M塩酸グアニジンpH5.0
でカラムから溶出させ、再生のために、3M塩酸グアニジン、100mMリン酸ナトリ
ウム、10mMグルタチオン(還元型)及び2mMグルタチオン(酸化型)に調節した
。この溶液を12時間インキュベートした後、タンパク質を10mMリン酸ナトリウム
に対して透析した。
【0133】
実施例2:バクロウイルス発現系によるTGFα-HIIのクローニングと発現
完全長TGFα-HIIタンパク質をコードするDNA配列(ATCC番号97160)を、その
遺伝子の5'及び3'配列に対応するPCRオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増
幅した。
三組のプライマーを使用した。
第1のプライマー対は、
【数2】



と、5'GCGTCTAGACTAGTATAGAACACTGTAGTCC3'(配列番号6)
である。この構築物は、配列番号1のヌクレオチド321に始まってヌクレオチド12
48で終わり、推定リーダー配列を含む。
第2のプライマー対は、
【数3】



と、5'GCGTCTAGACTAGTATAGAACACTGTAGTCC3'(配列番号8)
である。この構築物は、配列番号1のヌクレオチド402に始まってヌクレオチド12
48で終わり、推定リーダー配列を含まない。
第3のプライマー対は、
【数4】



と、5'GCGTCTAGACTAGTATAGAACACTGTAGTCC3'(配列番号10)
である。この構築物は、配列番号1のヌクレオチド1100に始まってヌクレオチド1
248で終わり、本発明ポリペプチドの推定可溶性部分である。上記3種類の5'プラ
イマーはすべて、BamHI制限酵素部位(太字部分)を持ち、その部分に、真核細
胞における翻訳開始の効率のよいシグナルに似たヌクレオチド(Kozak, M., J.
Mol. Biol., 196:947-950(1987))が続いている(翻訳開始コドン「ATG」には
下線を引いた)。第3のプライマー対については、バクロウイルスシグナルペプ
チド配列をpA2GPベクターに組込んだ。
【0134】
上記3'プライマーは、制限エンドヌクレアーゼXbaIの切断部位を含有し、TGFα-
HII遺伝子の3'TGFαドメインに相補的なヌクレオチドを持つ。増幅された配列を
、市販のキット(「Geneclean」, BIO 101 Inc.,カリフォルニア州ラジョラ)を
用いて、1%アガロースゲルから単離した。次に、その断片をエンドヌクレアーゼ
BamHIとXbaIで消化した後、1%アガロースゲルで再び精製した。この断片をF2と
命名した。
【0135】
第1及び第2のプライマー対にはベクターpA2を使用し、第3のプライマー対には
pA2GPベクターを使用した。バクロウイルス発現系(総説としてはSummers, M.D.
及びSmith, G.E., 1987, A manual of methods for baculovirus vectors and i
nsect cell culture procedures, Texas Agricultural Experimental Station B
ulletin No. 1555を参照のこと)によるTFGα-HIIタンパク質の発現には、pA2ベ
クター(pVL941ベクターを改良したもの、後述)を使用した。この発現ベクター
は、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)の強力なポリヘドリ
ン(polyhedrin)プロモーターと、それに続く制限エンドヌクレアーゼ認識部位
とを含有する。効率のよいポリアデニル化のために、シミアンウイルス(SV)40
のポリアデニル化部位を使用した。組換えウイルスを簡単に選択するため、大腸
菌由来の(-ガラクトシダーゼ遺伝子を、ポリヘドリン遺伝子のポリアデニル化シ
グナルに先行するポリヘドリンプロモーターと同じ方向に挿入した。ポリヘドリ
ン配列の両端には、同時にトランスフェクションされる野生型ウイルスDNAの細
胞媒介相同組換え用のウイルス配列を隣接させた。pRG1の代わりに、pAc373、pV
L941及びpAcIM1(Luckow, V.A.及びSummers, M.D., Virology, 170:31-39)など
といった他の多くのバクロウイルスベクターも使用できる。
【0136】
上記プラスミドを制限酵素BamHIとXbaIで消化した後、ウシ腸ホスファターゼ
を用いて、当該技術分野で知られる手法で、脱リン酸化した。次に、市販のキッ
ト(「Geneclean」, BIO 101 Inc.,カリフォルニア州ラジョラ)を用いて、その
DNAを1%アガロースゲルから単離した。このベクターをV2と命名した。
【0137】
断片F2と脱リン酸化プラスミドV2をT4 DNAリガーゼで連結した。次に、大腸菌
HB101細胞を形質転換し、TGFα-HII遺伝子を持つプラスミド(pBacTGFα-HII)
を含有する細菌を、制限酵素BamHIとXbaIを用いて同定した。クローン化された
断片の配列をDNA配列決定によって確認した。
【0138】
リポフェクション法(Felgnerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:7413-741
7(1987))を用いて、5μgのプラスミドpBacTGFα-HIIを、市販の直鎖化したバ
クロウイルス(「BaculoGoldTMbaculovirus DNA」, Pharmingen,カリフォル
ニア州サンディエゴ)1.0μgと同時にトランスフェクションした。
【0139】
1μgのBaculoGoldTMウイルスDNAと5μgのプラスミドpBac-TGFα-HIIを、血
清非含有グレース培地(Life Technologies Inc.,メリーランド州ガイサースブ
ルク)50μlの入ったマイクロタイタープレートの滅菌ウェル中で混合した。そ
の後、リポフェクチン10μlとグレース培地90μlを加え、混合し、室温で15分間
インキュベートした。次に、血清を含まないグレース培地1mlが入っている35mm
組織培養プレートに接種したSf9昆虫細胞(ATCC CRL1711)に、上記トランスフ
ェクション混合物を滴下した。プレートを前後にゆすって、新たに加えた溶液を
混合した。次に、そのプレートを27℃で5時間培養した。5時間後、トランスフェ
クション溶液をプレートから取り除き、10%ウシ胎児血清を補足したグレース昆
虫培地1mlを加えた。そのプレートを培養器に戻し、培養を27℃で4日間続けた。
【0140】
4日後、上清を集め、Summers及びSmith(上記)の記述と同様に、プラーク検
定を行なった。改良点として、「Blue Gal」(Life Technologies Inc.,ガイサ
ースブルク)を含むアガロースゲルを使用した。これは、青く染色したプラーク
の単離を容易にする。「プラーク検定」に関する詳細な説明は、Life Technolog
ies Inc.(ガイサースブルク)が発行している昆虫細胞培養とバクロウイルス学
に関するユーザーズガイドの9-10頁にも認められる。
【0141】
連続希釈の4日後、ウイルスを細胞に加え、青く染色したプラークをエッペン
ドルフピペットのチップで拾った。次に、組換えウイルスを含有する寒天を、グ
レース培地200μlの入ったエッペンドルフチューブ中に再懸濁した。短い遠心分
離によって寒天を除去し、組換えバクロウイルスを含有する上清を用いて、35mm
皿に接種したSf9細胞を感染させた。4日後、これらの培養皿の上清を収集し、4
℃で保存した。
【0142】
Sf9細胞を、10%熱不活化FBSを補足したグレース培地で生育した。その細胞を
組換えバクロウイルスV-TGFα-HIIに感染多重度(MOI)2で感染させた。6時間後
、培地を除去し、メチオニンとシステインを欠くSF900 II培地(Life Technolog
ies Inc.,ガイサースブルク)に置換した。42時間後、5μCiの35S-メチオニン
と5μCiの35S-システイン(Amersham)を加えた。細胞をさらに16時間培養し
た後、遠心分離によって収集し、標識されたタンパク質をSDS-PAGEとオートラジ
オグラフィーで可視化した。
【0143】
実施例3:COS細胞における組換えTGFα-HIIの発現
プラスミド、TGFα-HII HAの発現は、1)SV40複製起点、2)アンピシリン耐性
遺伝子、3)大腸菌複製起点、4)CMVプロモーターとそれに続くポリリンカー領
域、SV40イントロン及びポリアデニル化部位を含有するベクターpcDNA3/Amp(In
vitrogen)によった。全TGFα-HII前駆体と、その3'末端にインフレーム(in fr
ame)融合したHA標識とをコードするDNA断片を、上記ベクターのポリリンカー領
域にクローニングした。したがって、その組換えタンパク質の発現はCMVプロモ
ーターに制御される。HA標識は、既に記述したように、インフルエンザ血球凝集
素タンパク質に由来するエピトープに対応する(I. Wilson, H. Niman, R. Heig
hten, A. Cherenson, M. Connolly及びR. Lerner, Cell, 37:767(1984))。標
的タンパク質にHA標識を融合すると、HAエピトープを認識する抗体で組換えタン
パク質を容易に検出できるようになる。
【0144】
プラスミド構築法は次の通りである。
TGFα-HIIをコードするDNA配列(ATCC番号97160)を、次の2つのプライマーを
用いて、クローン化した原型EST(the original EST cloned)に対するPCRによ
って構築した。5'プライマー
【数5】



は、BamHI部位(太字部分)と、それに続く、開始コドンから始まるTGFα-HIIコ
ーディング配列の18ヌクレオチドとを含有する。3'配列(5'GCGCTCGAGGTATAGAAC
ACTGTAGTCC3';配列番号12)は、XhoI部位、TGFαドメインの最後の19ヌクレオ
チド並びにXhoI部位に相補的な配列を含有する。pcDNA3/Ampベクターは、BamHI/
XhoIクローニング部位を含み、このクローニング部位を利用すると、PCR挿入物
の読み枠が3'HA標識とそれに続く停止コドンの読み枠に合う。したがって、PCR
産物は、BamHI部位、936塩基対のコーディング配列、及びXhoI部位を含有する。
そのPCR増幅DNA断片とベクターpcDNA3/Ampを、BamHI及びXhoI制限酵素で消化し
、連結した。その連結混合物で大腸菌SURE株(Stratagene Cloning Systems,カ
リフォルニア州92037ラジョラ)を形質転換し、その形質転換培養をアンピシリ
ン培地プレートで培養して、耐性コロニーを選択した。プラスミドDNAを形質転
換体から単離し、制限分析によって正しい断片の存在を調べた。この組換えTGF
α-HIIを発現させるため、DEAE-デキストラン法(J. Sambrook, E. Fritsch, T.
Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Laborator
y Press(1989))によって、COS細胞を上記発現ベクターでトランスフェクショ
ンした。TGFα-HII HAタンパク質の発現は、放射線標識と免疫沈降法(E. Harlo
w, D. Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laborato
ry Press(1988))によって検出した。トランスフェクションの2日後に、細胞
35S-システインで8時間標識した。次に、培養培地を集め、細胞を界面活性
剤(RIPA緩衝液(150mM NaCl, 1%NP-40, 0.1%SDS, 1%NP-40, 0.5%DOC, 50mM Tri
s, pH7.5)で溶解した(Wilson, I.ら,同上, 37:767(1984))。細胞溶解液と
培養培地の両方を、HA特異的モノクローナル抗体で沈殿させた。沈殿したタンパ
ク質を15%SDS-PAGEゲルで分析した。
【0145】
実施例4:遺伝子療法による発現
皮膚生検によって対象から繊維芽細胞を得る。得られた組織を組織培養培地に
入れ、小片に分割する。少量の組織を組織培養フラスコの湿った表面に乗せる。
各フラスコに、約10片を入れる。そのフラスコを上下逆さにし、きつく密閉して
、室温に終夜放置する。室温で24時間後、そのフラスコを逆さにし、組織塊をフ
ラスコの底に固定したまま、新鮮な培地(例えば10%FBS、ペニシリン及びストレ
プトマイシンを含むハムF12培地)を加える。次に、これを37℃で約1週間培養す
る。この時点で、新鮮な培地を加え、以降、数日毎に交換する。さらに2週間培
養すると、繊維芽細胞の単層が生じる。その単層をトリプシン処理して、より大
きなフラスコに移す。
【0146】
モロニーネズミ肉腫ウイルスの長末端反復を伴うpMV-7(Kirschmeier, P.T.ら
, DNA, 7:219-25(1988))を、EcoRIとHindIIIで消化した後、ウシ腸ホスファ
ターゼで処理する。その直鎖ベクターをアガロースゲルで分画し、ガラスビーズ
を用いて精製する。
【0147】
本発明ポリペプチドをコードするcDNAを、それぞれ5'末端配列及び3'末端配列
に対応するPCRプライマーを用いて増幅する。その5'プライマーはEcoRI部位を含
有し、その3'プライマーはHindIII部位を含む。モロニーネズミ肉腫ウイルス直
鎖骨格と増幅したEcoRI及びHindIII断片を、T4 DNAリガーゼの存在下に、等量ず
つ混合する。得られた混合物を、上記2断片の連結に適した条件下に維持する。
その連結混合物を用いて細菌HB101を形質転換し、それを、カナマイシン含有寒
天上で培養することによって、目的の遺伝子がベクターに正しく挿入されている
ことを確認する。
【0148】
両種性pA317又はGP+am12パッケージング細胞を、10%ウシ血清(CS)、ペニシ
リン及びストレプトマイシンを含むダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)中、コ
ンフルエント密度まで組織培養する。次に、上記遺伝子を含有するMSVをその培
地に加え、パッケージング細胞をそのベクターで形質導入する。パッケージング
細胞は、上記遺伝子を含有する感染性ウイルス粒子を生産するようになる(この
パッケージング細胞を生産細胞と呼ぶ)。
【0149】
形質導入された生産細胞に新鮮な培地を加えた後、コンフルエント生産細胞の
10cmプレートから培地を収集する。感染性ウイルス粒子を含有するその消費済み
培地をミリポアフィルターに通して、剥離した生産細胞を除去し、その培地を用
いて、繊維芽細胞を感染させる。繊維芽細胞の亜コンフルエント(sub-confluen
t)プレートから培地を除去し、生産細胞から得た培地にすばやく置換する。こ
の培地を除去し、新鮮な培地で置換する。ウイルスの力価が高ければ、実質上全
ての繊維芽細胞が感染され、選択の必要はないだろう。力価が極めて低い場合は
、neoやhisなどの選択可能マーカーを持つレトロウイルスベクターを使用する必
要がある。
【0150】
次に、操作した上記繊維芽細胞を、そのまま、若しくはサイトデックス3ミク
ロキャリアービーズ(cytodex 3 microcarrier beads)上でコンフルエントに成
長させた後、宿主に注射する。その繊維芽細胞は、上記タンパク質産物を生産す
るようになっている。
【0151】
上の教示を考慮すれば、本発明には数多くの改良や変更を加えることができる
ので、詳しく説明した態様以外にも、添付の請求の範囲内で本発明を実施するこ
とができる。
【0152】
[配列表]
(1) 一般的情報:
(i) 出願人/発明者:ウェイ等
(ii) 発明の名称: トランスフォ−ミング増殖因子α HII
(iii) 配列の数: 12
(iv) 連絡先:
(A) 宛名:カレラ、バイアーン、ベイン、ジルフィラン、セッチ、
ステュワート・アンド・オルスタイン
(B) 通り:ベッカー・ファーム・ロード6番
(C) 市:ローズランド
(D) 州:ニュージャージー
(E) 国:アメリカ合衆国
(F) ZIP:07068
(v) コンピューター解読書式:
(A) 媒体型:3.5インチディスケット
(B) コンピューター:IBM PS/2適合
(C) オペレーティング・システム:MS−DOS
(D) ソフトウエア:ワード・パーフェクト5.1
(vi) 本出願のデータ:
(A) 出願番号:
(B) 出願日:
(C) 分類:
(vii) 優先権主張出願のデータ:
(A) 出願番号:なし
(B) 出願日:なし
(viii) 弁理士/代理人 情報:
(A) 氏名:フェラロ、グレゴリー・ディー
(B) 登録番号:36,134
(C) 参照/整理番号:325800−351
(ix) 電話連絡先情報:
(A) 電話番号:201−994−1700
(B) ファックス番号:201−994−1744
(2) 配列番号1の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 長さ:1695 塩基対
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii) 配列の種類:cDNA
(xi) 配列:配列番号1:
CACTCGTCTG CCCCTGGACT CCCGTCTCCT CCTGTCCTCC GGCTTCCCAG AGCTCCCTCC 60
TTATGGCAGC AGCTTCCCGC GTCTCCGGCG CAGTTCTCAG CGGACGACCC TCTCGCTCCG 120
GGGCTGAGCC CAGTCCCTGG ATGTTGCTGA AACTCTCGAG ATCATGCGCG GGTTTGGCTG 180
CTGCTTCCCC GCCGGGTGCC ACTGCCACCG CCGCCGCCTC TGCTGCCGCC GTCCGCGGGA 240
TGCTCAGTAG CCCGCTGCCC GGCCCCCGCG ATCCTGTGTT CCTCGGAAGC CGTTTGCTGC 300
TGCAGAGTTG CACGAACTAG TCATGGTGCT GTGGGAGTCC CCGCGGCAGT GCAGCAGCTG 360
GACACTTTGC GAGGGCTTTT GCTGGCTGCT GCTGCTGCCC GTCATGCTAC TCATCGTAGC 420
CCGCCCGGTG AAGCTCGCTG CTTTCCCTAC CTCCTTAAGT GACTGCCAAA CGCCCACCGG 480
CTGGAATTGC TCTGGTTATG ATGACAGAGA AAATGATCTC TTCCTCTGTG ACACCAACAC 540
CTGTAAATTT GATGGGGAAT GTTTAAGAAT TGGAGACACT GTGACTTGCG TCTGTCAGTT 600
CAAGTGCAAC AATGACTATG TGCCTGTGTG TGGCTCCAAT GGGGAGAGCT ACCAGAATGA 660
GTGTTACCTG CGACAGGCTG CATGCAAACA GCAGAGTGAG ATACTTGTGG TGTCAGAAGG 720
ATCATGTGCC ACAGATGCAG GATCAGGATC TGGAGATGGA GTCCATGAAG GCTCTGGAGA 780
AACTAGTCAA AAGGAGACAT CCACCTGTGA TATTTGCCAG TTTGGTGCAG AATGTGACGA 840
AGATGCCGAG GATGTCTGGT GTGTGTGTAA TATTGACTGT TCTCAAACCA ACTTCAATCC 900
CCTCTGCGCT TCTGATGGGA AATCTTATGA TAATGCATGC CAAATCAAAG AAGCATCGTG 960
TCAGAAACAG GAGAAAATTG AAGTCATGTC TTTGGGTCGA TGTCAAGATA ACACAACTAC 1020
AACTACTAAG TCTGAAGATG GGCATTATGC AAGAACAGAT TATGCAGAGA ATGCTAACAA 1080
ATTAGAAGAA AGTGCCAGAG AACACCACAT ACCTTGTCCG GAACATTACA ATGGCTTCTG 1140
CATGCATGGG AAGTGTGAGC ATTCTATCAA TATGCAGGAG CCATCTTGCA GGTGTGATGC 1200
TGGTTATACT GGACAACACT GTGAAAAAAA GGACTACAGT GTTCTATACG TTGTTCCCGG 1260
TCCTGTACGA TTTCAGTATG TCTTAATCGC AGCTGTGATT GGAACAATTC AGATTGCTGT 1320
CATCTGTGTG GTGGTCCTCT GCATCACAAG GAAATGCCCC AGAAGCAACA GAATTCACAG 1380
ACAGAAGCAA AATACAGGGC ACTACAGTTC GGACAATACA ACAAGAGCGT CCACGAGGTT 1440
AATCTAAAGG GAGCATGTTT CACAGTGGCT GGACTACCGA GAGCTTGGAC TACACAATAC 1500
AGTATTATAG ACAAAAGAAT AAGACAAGAG ATCTACACAT GTTGCCTTGC ATTTGTGGTA 1560
ATCTACACCA ATGAAAACAT GTACTACAGC TATATTTGAT TATGTATGGA TATATTTGAA 1620
ATAGTATACATTGTCTTGAT GTTTTTTCTG TAATGTAAAT AAACTATTTA TATCACACAA 1680
AAAAAAAAAA AAAAA 1695

(2) 配列番号2の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 長さ:374アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(C) 鎖の数:
(D) トポロジー:直鎖状
(ii) 配列の種類:蛋白質
(xi) 配列:配列番号2:
Met Val Leu Trp Glu Ser Pro Arg Gln Cys Ser Ser Trp Thr Leu Cys
1 5 10 15

Glu Gly Phe Cys Trp Leu Leu Leu Leu Pro Val Met Leu Leu Ile Val
20 25 30

Ala Arg Pro Val Lys Leu Ala Ala Phe Pro Thr Ser Leu Ser Asp Cys
35 40 45

Gln Thr Pro Thr Gly Trp Asn Cys Ser Gly Tyr Asp Asp Arg Glu Asn
50 55 60

Asp Leu Phe Leu Cys Asp Thr Asn Thr Cys Lys Phe Asp Gly Glu Cys
65 70 75 80

Leu Arg Ile Gly Asp Thr Val Thr Cys Val Cys Gln Phe Lys Cys Asn
85 90 95

Asn Asp Tyr Val Pro Val Cys Gly Ser Asn Gly Glu Ser Tyr Gln Asn
100 105 110

Glu Cys Tyr Leu Arg Gln Ala Ala Cys Lys Gln Gln Ser Glu Ile Leu
115 120 125

Val Val Ser Glu Gly Ser Cys Ala Thr Asp Ala Gly Ser Gly Ser Gly
130 135 140

Asp Gly Val His Glu Gly Ser Gly Glu Thr Ser Gln Lys Glu Thr Ser
145 150 155 160

Thr Cys Asp Ile Cys Gln Phe Gly Ala Glu Cys Asp Glu Asp Ala Glu
165 170 175

Asp Val Trp Cys Val Cys Asn Ile Asp Cys Ser Gln Thr Asn Phe Asn
180 185 190

Pro Leu Cys Ala Ser Asp Gly Lys Ser Tyr Asp Asn Ala Cys Gln Ile
195 200 205
Lys Glu Ala SerCys Gln Lys Gln Glu Lys Ile Glu Val Met Ser Leu
210 215 220

Gly Arg Cys Gln Asp Asn Thr Thr Thr Thr Thr Lys Ser Glu Asp Gly
225 230 235 240

His Tyr Ala Arg Thr Asp Tyr Ala Glu Asn Ala Asn Lys Leu Glu Glu
245 250 255

Ser Ala Arg Glu His His Ile Pro Cys Pro Glu His Tyr Asn Gly Phe
260 265 270

Cys Met His Gly Lys Cys Glu His Ser Ile Asn Met Gln Glu Pro Ser
275 280 285

Cys Arg Cys Asp Ala Gly Tyr Thr Gly Gln His Cys Glu Lys Lys Asp
290 295 300

Tyr Ser Val Leu Tyr Val Val Pro Gly Pro Val Arg Phe Gln Tyr Val
305 310 315 320

Leu Ile Ala Ala Val Ile Gly Thr Ile Gln Ile Ala Val Ile Cys Val
325 330 335

Val Val Leu Cys Ile Thr Arg Lys Cys Pro Arg Ser Asn Arg Ile His
340 345 350

Arg Gln Lys Gln Asn Thr Gly His Tyr Ser Ser Asp Asn Thr Thr Arg
355 360 365

Ala Ser Thr Arg Leu Ile
370

(2) 配列番号3の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 長さ:30 塩基対
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii) 配列の種類:オリゴヌクレオチド
(xi) 配列:配列番号3:
CCCGGATCCG CACGAGACAT ACCTTGTCCG 30


(2) 配列番号4の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 長さ:32 塩基対
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii) 配列の種類:オリゴヌクレオチド
(xi) 配列:配列番号4:
GGGAAGCTTT TAATACTGAA ATCGTACAGG AC 32

(2) 配列番号5の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 長さ:33 塩基対
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii) 配列の種類:オリゴヌクレオチド
(xi) 配列:配列番号5:
CGCGGATCCG CCATCATGGT GCTGTGGGAG TCC 33

(2) 配列番号6の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 長さ:31 塩基対
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii) 配列の種類:オリゴヌクレオチド
(xi) 配列:配列番号6:
GCGTCTAGAC TAGTATAGAA CACTGTAGTC C 31

(2) 配列番号7の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 長さ:33 塩基対
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii) 配列の種類:オリゴヌクレオチド
(xi) 配列:配列番号7:
CGCGGATCCG CCATCATGCT ACTCATCGTA GCC 33

(2) 配列番号8の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 長さ:31 塩基対
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii) 配列の種類:オリゴヌクレオチド
(xi) 配列:配列番号8:
GCGTCTAGAC TAGTATAGAA CACTGTAGTC C 31

(2) 配列番号9の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 長さ:31 塩基対
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii) 配列の種類:オリゴヌクレオチド
(xi) 配列:配列番号9:
CGCGGATCCA GAACACCACA TACCTTGTCC G 31

(2) 配列番号10の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 長さ:31 塩基対
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii) 配列の種類:オリゴヌクレオチド
(xi) 配列:配列番号10:
GCGTCTAGAC TAGTATAGAA CACTGTAGTC C 31

(2) 配列番号11の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 長さ:33 塩基対
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii) 配列の種類:オリゴヌクレオチド
(xi) 配列:配列番号11:
CGCGGATCCG CCATCATGGT GCTGTGGGAG TCC 33

(2) 配列番号12の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 長さ:28 塩基対
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii) 配列の種類:オリゴヌクレオチド
(xi) 配列:配列番号12:
GCGCTCGAGG TATAGAACAC TGTAGTCC 28
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】TGFα-HIIの推定アミノ酸配列に対応させたcDNA配列を表す。
【図2】TGFα-HIIの推定アミノ酸配列に対応させたcDNA配列を表す。
【図3】TGFα-HIIの推定アミノ酸配列に対応させたcDNA配列を表す。
【図4】TGFα-HIIの推定アミノ酸配列に対応させたcDNA配列を表す。
【図5】TGFα-HIIの推定アミノ酸配列に対応させたcDNA配列を表す。
【図6】TGFα-HIIの推定アミノ酸配列に対応させたcDNA配列を表す。
【図7】ヒトベータセルリン、ヒトTGFα及びヒトTGFα-HII(第3列)間のアミノ酸配列相同性を比較した図である。
【図8】ヒトベータセルリン、ヒトTGFα及びヒトTGFα-HII(第3列)間のアミノ酸配列相同性を比較した図である。
【図9】ヒトベータセルリン、ヒトTGFα及びヒトTGFα-HII(第3列)間のアミノ酸配列相同性を比較した図である。
【図10】ヒトベータセルリン、ヒトTGFα及びヒトTGFα-HII(第3列)間のアミノ酸配列相同性を比較した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号2に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(b)配列番号2のアミノ酸46〜374を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(c)配列番号2のアミノ酸46〜309を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号2のアミノ酸260〜374を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(e)配列番号2のアミノ酸215〜329を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(f)(a)、(b)、(c)、(d)および(e)において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失または付加され、かつ、増殖因子活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる群より選択される要素を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
DNAである請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項3】
RNAである請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項4】
ゲノムDNAである請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号2に記載のポリペプチドをコードする請求項2のポリヌクレオチド。
【請求項6】
配列番号2に記載のアミノ酸46〜374を含むポリペプチドをコードする請求項2のポリヌクレオチド。
【請求項7】
配列番号2のアミノ酸46〜309を含むポリペプチドをコードする請求項2のポリヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号2のアミノ酸260〜374を含むポリペプチドをコードする請求項2のポリヌクレオチド。
【請求項9】
配列番号2のアミノ酸260〜309を含むポリペプチドをコードする請求項2のポリヌクレオチド。
【請求項10】
(a)ATCC寄託番号97160に含まれるDNAによって発現されるアミノ酸配列を持つ成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または
(b)(a)において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失または付加され、かつ、増殖因子活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる群より選択される要素を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項11】
配列番号1に記載の配列を持つ請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列番号1に記載のヌクレオチド321〜ヌクレオチド1248を含む請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項13】
配列番号1に記載のヌクレオチド402〜ヌクレオチド1248を含む請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項14】
配列番号1に記載のヌクレオチド1100〜ヌクオチド1248を含む請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項2のDNAを含有するベクター。
【請求項16】
請求項15のベクターで形質転換又はトランスフェクションされた宿主細胞。
【請求項17】
請求項16の宿主細胞から前記DNAによってコードされるポリペプチドを発現させることからなるポリペプチドの生産法。
【請求項18】
請求項15のベクターで細胞を遺伝子操作することからなる、ポリペプ
チドを発現できる細胞の生産法。
【請求項19】
(a)配列番号2の推定アミノ酸配列を持つポリペプチド、
(b)配列番号2に記載のアミノ酸46〜374を含むポリペプチド、
(c)配列番号2に記載のアミノ酸260〜374を含むポリペプチド、
(d)配列番号2に記載のアミノ酸260〜309を含むポリペプチド、
(e)配列番号2に記載のアミノ酸46〜309を含むポリペプチド、
(f)ATCC寄託番号97160に含まれるcDNAによってコードにされるポリペプチド、
(g)、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失または付加され、かつ、増殖因子活性を有するポリペプチドから選択される要素を含む、ポリペプチド。
【請求項20】
配列番号2のアミノ酸260〜アミノ酸309を含む請求項19のポリペプチド。
【請求項21】
請求項19のポリペプチドに対する抗体。
【請求項22】
TGFα−HII受容体を発現させる細胞タイプを含有する反応混合物とスクリーニングすべき化合物とを接触させその化合物が該受容体からのシグナルを生じさせるかどうかを決定することによって、その化合物が有効なアゴニストであるかどうかを同定することからなる、請求項19のポリペプチドに対するアゴニストとして活性な化合物の同定法。
【請求項23】
TGFα−HII受容体を発現させる細胞タイプを含有する反応混合物とスクリーニングすべき化合物とを接触させ、該化合物の結合後に該受容体から生成するシグナルの欠如を検出することによって、その化合物が有効なアゴニストであるかどうかを同定することからなる、請求項19のポリペプチドに対するアンタゴニストとして活性な化合物の同定法。
【請求項24】
ヘテロローガスなポリヌクレオチドと融合した請求項1〜14のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項25】
前記ヘテロローガスなポリヌクレオチドがヘテロローガスなポリペプチドをコードしている請求項24に記載のポリヌクレオチド。
【請求項26】
前記ヘテロローガスなポリペプチドが該ポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドと融合している請求項25に記載のポリヌクレオチド。
【請求項27】
該ポリヌクレオチドが調節的制御配列と機能性に連結している請求項15に記載のベクター。
【請求項28】
原核細胞、真核細胞、脊椎動物細胞、Cos細胞、CHO細胞、またはE.coli細胞である請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項29】
標識されるか、修飾され、またはポリエチレングリコールと融合している請求項19または20に記載のポリペプチド。
【請求項30】
ヘテロローガスなポリペプチドと融合している請求項19または20に記載のポリペプチド。
【請求項31】
N末端メチオニンを欠く請求項19または20に記載のポリペプチド。
【請求項32】
N末端メチオニンを有する請求項19または20に記載のポリペプチド。
【請求項33】
請求項19または20に記載のポリペプチドと特異的に結合する請求項21に記載の抗体。
【請求項34】
ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、一本鎖Fv、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはFab断片である請求項21または34に記載の抗体。
【請求項35】
請求項1〜14、および24〜26のいずれかに記載のポリヌクレオチドと担体を含む組成物。
【請求項36】
請求項19〜20および29〜32のいずれかに記載のポリペプチドと担体を含む組成物。
【請求項37】
請求項21および33〜34のいずれかに記載の抗体と担体を含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−100747(P2009−100747A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298834(P2008−298834)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【分割の表示】特願2005−348542(P2005−348542)の分割
【原出願日】平成7年5月19日(1995.5.19)
【出願人】(597018381)ヒューマン ジノーム サイエンシーズ, インコーポレイテッド (44)
【氏名又は名称原語表記】Human Genome Sciences, Inc.
【Fターム(参考)】