説明

トランスポゼース

【課題】 新規トランスポゼースおよびこれをコードする遺伝子を提供すること。
【解決手段】 トランスポゾンdTdic1を転移する活性を有するトランスポゼースが開示される。本発明のトランスポゼースは、カーネーション由来の特定のアミノ酸配列を有する。トランスポゾンdTdic1は高い確率で遺伝子のコーディング領域に挿入される性質を有するため、本発明のトランスポゼース、またはこれをコードする遺伝子を含むベクターは、タギング法による遺伝子機能の研究ならびに植物の育種に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物の育種技術に関する。より詳細には、本発明は、新規トランスポゼースおよびこれをコードする遺伝子、ならびにこれらを用いる植物遺伝子操作技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に遺伝子は染色体上の一定の座位に存在していて、染色体と行動をともにし、染色体の組換えや転座、欠失など染色体の構造的変異によって座位を変えることがあっても、遺伝子が単独で染色体から分離したり、他の染色体に移ることは考えられない。しかしB.McClintock(1951)は、トウモロコシの種子や植物体に含まれるアントシアニン遺伝子や、胚乳の黄色デンプンの遺伝子などの発現を変化させる制御遺伝子(control element)が、一つの染色体から他の染色体に移動していること、すなわち単独で染色体上を移動する遺伝子が存在することを明らかにした。
【0003】
このような遺伝子は転移因子(動く遺伝子)といわれ、近年、植物をはじめ生物のゲノムのダイナミズムに関わり、進化に重要な役割を果たしているものとして注目されている。転移因子にはDNAのままで転移するDNA型と、転移の中間体として生じたRNAが逆転写酵素によりcDNAとなって転移するレトロ型に大別される。レトロ型は、さらに転移因子の構造上などの違いから、ウイルスポゾンと非ウイルスポゾンにわけられる。
【0004】
DNA型転移因子(以下トランスポゾンと称する)に関する研究は、分子生物学的手法が確立された1980年代以降から盛んに行われ、1983年にトウモロコシのWx遺伝子座に挿入されていたAc/Dsが単離、塩基配列が決定され、生物から初めてトランスポゾンが見い出された。1984年にはキンギョソウからアントシアニン合成系遺伝子niveaに挿入されていたTam1が単離、その塩基配列が決定されるなど、多くのトランスポゾンが様々な植物種から単離、同定された。現在も塩基配列を含めた構造解析などのトランスポゾンに関する研究が盛んに行なわれている。
【0005】
トランスポゾンにはトランスポゾン内に活性のある転移酵素(トランスポゼース)遺伝子をもち、自ら転移ができる自律性因子と、核内に自律性因子が共存し、トランスポゼースがトランスに作用することによってはじめて転移できる非自律性因子が存在する。トランスポゾンには共通して、ターミナル・インバーテッド・リピート(TIR)、サブターミナル・リピート(STR)、さらに挿入の際に生じるターゲット・サイト・デュープリケーション(TSD)と呼ばれる構造的配列が存在する。トランスポゼースはこれらの配列を認識、結合し、DNA−蛋白結合体となり、トランスポゾンを切り出し、挿入させることが明らかとなっている。そのなかでもAc/Dsファミリーは TIRにCAまたはTAの配列、8bpのTSDをもつ転移因子群である。しかしトランスポゾンの転移機構や、特に転移の頻度がどのように調節されているのか、また転移因子の役割などについては未だ解明されていない。
【0006】
古の時代より植物の観賞法として、その花卉が織り成す色と模様があった。この模様の中には花弁に条や斑といった易変性変異も含まれていおり、これらの多くはトランスポゾンによる体細胞変異であることが知られている。花弁の斑入りは、色素合成酵素をコードしている遺伝子にトランスポゾンが挿入することによつて生じる。つまり、トランスポゾンが挿入された遺伝子は機能しないため、それによって色素合成は出来なくなり、花色は正常とは異なるものになる。しかし、トランスポゾンが脱離すると、その遺伝子は正常な機能を回復し、再び色素合成を行なうようになる。正常な機能が回復した遺伝子を含む細胞が多ければ大きい斑が生じ、そのような細胞が少なければ、斑の大きさも小さくなる。様々な植物において花弁の斑入りといった模様を造り出すためにトランスポゾン(遺伝子)を用いた育種が行なわれるようになった。これまでの遺伝学的研究から、カーネーションは様々な色彩をもつ植物であると同時に、非常に高頻度で転移するトランスポゾンが存在し、しかもそのトランスポゾンが遺伝子を効率よく破壊していることが明らかにされている。しかしその分子生物学的実体は未解明のままであった。
【0007】
本発明者らは、先に、カーネーションの花色に関与する遺伝子の発現を制御するトランスポゾンとして、トランスポゾンdTdic1を同定した(Plant Cell Physilogy,2002,Vol.43,No.5,578−585)。白地に紫色の条が見える花色を有するカーネーションの「ラプソディ(Rhapsody)」を材料として用い、ゲノム遺伝子の解析および花弁における遺伝子発現の分析を行ったところ、色素合成系遺伝子であるDFR遺伝子にAc/Ds型のトランスポゾンが挿入されていることが見いだされた(図3)。さらに、このトランスポゾンdTdic1の挿入によって色素合成系遺伝子が不活性化され、脱離することによって再活性化されること、このことにより斑入りなどの複雑な花色が生ずること、およびdTdic1は遺伝子のエクソンに挿入して遺伝子破壊を引き起こすという、他のトランスポゾンにはない極めて珍しい特性をもっていることが明らかとなった。
【0008】
しかし、このdTdic1には、転移する際にトランスポゼースが結合するサブターミナル・リピート(SR)がいくつか存在するが、内部にトランスポゼースをコードするORFは見い出されなかった。すなわち、dTdic1は転移酵素を内部にコードしない非自律性因子であり、カーネーションゲノム内に存在する自律性因子からトランスポゼースがトランスに作用することによって、dTdic1が転移することがわかった。したがって、dTdic1を転移させることができるトランスポゼースを同定して、その機能を明らかにすることが求められていた。
【非特許文献1】Plant Cell Physilogy, 2002, Vol. 43, No. 5, 578-585
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新規トランスポゼースおよびこれをコードする遺伝子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、トランスポゾンdTdic1を転移する活性を有する新規トランスポゼースを同定し、Tdicと命名した。本発明は、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有するトランスポゼースを提供する。本発明はまた、配列番号1に記載されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつトランスポゾンdTdic1を転移する活性を有する蛋白質を提供する。
【0011】
別の観点においては、本発明は、上述のトランスポゼースをコードする遺伝子を提供する。好ましくは、本発明の遺伝子は配列番号2に記載される塩基配列を有する。本発明はまた、上述のトランスポゼースをコードする遺伝子を含む、植物細胞中で複製可能なベクターを提供する。
【0012】
さらに別の観点においては、本発明は、本発明のトランスポゼースを植物細胞に導入することにより、植物細胞の遺伝子上でトランスポゾンdTdic1を転移させる方法を提供する。本発明はまた、本発明のトランスポゼースをコードする遺伝子を含むベクターを植物細胞に導入することにより、植物細胞の遺伝子上でトランスポゾンdTdic1を転移させる方法を提供する。さらに、本発明は、本発明のトランスポゼースをコードする遺伝子を含むベクターとトランスポゾンdTdic1とを含む、植物細胞の遺伝子操作用キットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の新規トランスポゼースのアミノ酸配列は図1(配列番号1)に記載される。本発明のトランスポゼースは、トランスポゾンdTdic1を転移する活性を有する。ここで、転移とは、遺伝子中にトランスポゾンを挿入させること、および挿入されているトランスポゾンを切り出すことの両方を含む。また、トランスポゾンdTdic1とは、ターミナル・インバーテッド・リピートとして、5'-CAGGGTT-------AACCCTG-3'を有するAc/Ds型トランスポゾンである。
【0014】
本発明のトランスポゼースは、トランスポゾンdTdic1を転移する活性を有する限り、配列番号1に記載されるアミノ酸配列において1もしくはそれ以上のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有していてもよい。このようなアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を作製する方法は当該技術分野においてよく知られており、例えば、Sambrookら,”Molecular Cloning;A Laboratory Manual”,第2版,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkに記載される部位特異的塩基配列置換を利用することができる。このような変異体は、好ましくは、上述のアミノ酸配列と、少なくとも80%、好ましくは90%またはそれ以上、より好ましくは95%またはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0015】
本発明のトランスポゼースは、植物細胞の遺伝子にトランスポゾンdTdic1を挿入し、およびトランスポゾンdTdic1が挿入されている遺伝子からこれを切り出す活性を有するため、トランスポゾンdTdic1を利用して植物の遺伝子を操作するための有用なツールとして用いることができる。
【0016】
本発明はまた、本発明のトランスポゼースをコードする遺伝子を提供する。好ましくは、トランスポゼースをコードする遺伝子は図2(配列番号2)に記載される塩基配列を有する。本発明のトランスポゼースをコードする遺伝子は、植物細胞中で複製可能なベクター中に組み込んで、植物細胞中に導入して植物細胞を形質転換することにより、植物の遺伝子を操作するための有用なツールとして用いることができる。(なお図2(配列番号2)に記載される塩基配列においては1475番目から1569番目までがイントロンとなっていることが核ゲノム配列から確認されており、図2(配列番号2)に記載される塩基配列は不完全なスプライシングのためイントロンが除去されていない。)本発明において、植物細胞の形質転換に用いられるベクターは、該細胞内で挿入遺伝子を発現させることが可能なものであれば特に制限はないが、挿入遺伝子を過剰発現させることが可能なベクターであることが好ましい。好ましくは、ベクターは、導入された細胞内でDNAが転写され、トランスポゼースが適切に発現されるような様式で配列された、プロモーター領域、開始コドン、終止コドンおよびターミネーター領域等を含む。例えば、植物細胞内で恒常的に遺伝子を発現させるためのプロモーター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター)を有するベクターや、外的な刺激により誘導的に活性化されるプロモーターを有するベクターを用いることもできる。例えば、バイナリーベクターpBI 101(Jeffersonら1987)などこれらの改変ベクターを使用することができる。
【0017】
また、上記「植物細胞」には、種々の形態の植物細胞、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどが含まれる。
【0018】
植物細胞へのベクターの導入には、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法、マイクロインジェクション法など、当業者に公知の種々の方法を用いることができる。
【0019】
形質転換植物細胞からの植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能である。例えば、高等植物において形質転換植物体を作出する手法については、組織からプロトプラストを単離し、最適培養密度に調整した後に、植物ホルモンを添加したMS培地でカルスを誘導し、これを脱分化させることによって植物体を再生させる方法など、いくつかの技術が既に確立し、本願発明の技術分野において広く用いられている。本発明においては、これらの方法を好適に用いることができる。
【0020】
ゲノム内に本発明のトランスポゼースをコードする遺伝子が導入された形質転換植物体がいったん得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることができる。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラストなど)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。
【0021】
また、本発明の形質転換植物体やその子孫あるいはクローンから切り花を生産することも可能である。本発明は、このような切り花もまた提供するものである。切り花とは、一般的には枝や茎のついたまま切りとった花を指すが、本発明における切り花には、枝や茎のついていない花も含む。
【0022】
本発明のトランスポゼースをコードする遺伝子は、好ましくは、トランスポゾンdTdic1とともに植物細胞中に導入する。トランスポゼースがトランスに作用して、トランスポゾンdTdic1が植物細胞中の遺伝子に挿入され、このことによりその遺伝子の機能を破壊または変更することができる。あるいは、既にトランスポゾンdTdic1を有する植物細胞に本発明のトランスポゼースをコードする遺伝子を導入してもよい。
【0023】
一般に、トランスポゾンは、その挿入によって遺伝子破壊を生じさせるために、遺伝子の発現を抑制・失活するのに有用である。これを利用した遺伝子解析法がトランスポゾン・タギングである。トランスポゾンを遺伝子導入ベクターに結合して、これを内在性の転移因子による変異体が見い出されていないような植物に遺伝子導入し、この外部から導入したトランスポゾンを転移させて未知遺伝子内に挿入させる。次に、トランスポゾンをプローブとしてこの未知遺伝子を単離・同定することができる。このようなトランスポゾンを用いたタギング法によって、植物においてこれまでに様々な有用遺伝子がクローニングされてきた。また、遺伝子破壊することによって機能を調べる機能喪失(loss of function)の手法として、トランスポゾンを用いたタギング法は最も有効な方法である。
【0024】
特に、トランスポゾンdTdic1は、高い確率で遺伝子のコーディング領域に挿入される性質を有するため、本発明のトランスポゼースを用いて、タギング法による遺伝子機能の研究を効率よく行うことが可能である。さらに、トランスポゾンdTdic1は、特定の遺伝子中に挿入されたときに,その遺伝子の発現を完全に消失させない性質を有する。このことから、これまでの方法では単離することが不可能であった、生育に直接関与する遺伝子など、不活性化されると致死に至るような遺伝子の単離にも有用である。
【0025】
また、実施例2に示されるように、様々な花色を示すカーネーションからRNAを抽出し、RT−PCRを行なった結果、本発明のトランスポゼースはカーネーション花弁において特異的に発現していることが認められた(図4)。このことから、本発明のトランスポゼースは、花形成および色素合成関与遺伝子のタギングに特に適している。
【0026】
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
トランスポゼースTdicのクローニング
カーネーション(Dianthus caryophyllus)の栽培品種の、赤花をつける「シンフォーニーローズ(Symphony Rose)」および複色花「ラプソディー(Rhapsody)」、「982352−28」を千葉県、長野県の農場で栽培し、適宜、4つの発育段階の花弁および葉、茎、根に分離した。組織を秤量し、液体窒素中で凍結して、−80℃で保存した。
【0028】
全DNAは、CTAB−CsCl超遠心法を用いて、上記品種である「ラプソディー(Rhapsody)」および「982352−28」の葉より調製し、PCRのテンプレートとして使用した。PCR増幅には、先にカーネーションから見い出されたトランスポゾンdTdic1の配列(Plant Cell Physilogy,2002,Vol.43,No.5,578−585)をもとに設計した。
リバースプライマー:
5'-CAGGGGTTTTAAATATCGGTATCG-3'
および
5'-CCGTCGGCCAGGGTTCAAAATCTCGGCCGAGTTGACTCGT-3';
フオワードプライマー:
5'-AATGTTACAGGTAACCGAGATG-3'
および
5'-CACATATATCGACCCAACCGAGAT-3'
【0029】
DNA混合物1μlとプライマー2pmolを含むLA−PCR混合物(10μl)を、供給者の推奨に従って調製した。混合物は92℃にて1分間インキュベートし、その後0.5ユニットのTaKaRaLA−TaqDNAポリメラーゼを加えた。PCRは40回の増幅サイクルを実施した(92℃にて30秒;55℃にて45秒;72℃にて1分)。増幅した断片をpBluscriptSK中にクローニングして、Aloka DNA Sequencer model 4000LとともにThermoSequenaseサイクルシークエンシングキット(usb)を使用して配列決定を行った。
【0030】
このようにして得られたTdicの遺伝子配列をもとにTdic cDNAのクローニングを行なった。全RNAは、改良グアニジニウムチオシアネート−CsCl超心法を用いて、上記2品種の第二段階の閉じた蕾の花弁(Yoshimotoらの図5A、Plant Biotech,17:325−329,2000)より調製した。ポリ(A)+RNAは、oligotex−dT30<Super>(TaKaRa Biochemicals、日本)を用いて、供給者によるマニュアルに記載されているように全RNAから調製した。第一鎖cDNAは、第一鎖cDNA合成キット(Takara)を用いて、上記品種の花弁から調製したポリ(A)+RNAにより合成し、PCRのテンプレートとして使用した。全長cDNAは、GeneRacer(登録商標)Kit(Invitrogen、オランダ)を用いて調製した。Tdicの遺伝子配列データに基づいて、以下のフオワードおよびリバースプライマーを作成した。
リバースプライマー:
5'-AGTCTCTAGGAGTAAGTTGGTCACTAT-3'
および
5'-TGGTCGATGAAATGTGAAGTCACGACCA-3';
フオワードプライマー:
5'-TATCTATTGTTGATCACTTTGGT-3'
および
5'-GATTGGATGCAGTCCACATATCCG-3'
【0031】
cDNA混合物1μlとプライマー4pmolを含むLA−PCR混合物(10μl)を、供給者の推奨に従って調製した。混合物は92℃にて1分間インキュベートし、その後0.5ユニットのTaKaRaLA−TaqDNAポリメラーゼを加えた。PCRは40回の増幅サイクルを実施した(92℃にて30秒;55℃にて45秒;72℃にて1分)。増幅した断片を上記と同様に塩基配列の解析を行なった。
【実施例2】
【0032】
トランスポゼースTdicの発現分析
様々な花色を示すカーネーション数種から、実施例1と同様にして全RNAを調製し、1μgのポリ(A)+RNAから第一鎖cDNAを合成した。これをテンプレートとして使用して、RT−PCR解析によりトランスポゼースTdicの発現分析を行った。
【0033】
このcDNA混合物1μlとプライマー4pmolを含むLA−PCR混合物(10μl)を、供給者の推奨に従って調製した。混合物は94℃にて1分間インキュベートし、その後0.5ユニットのTaKaRaLA−TaqDNAポリメラーゼを加えた。PCRは20回の増幅サイクルを実施した(92℃にて30秒;53℃にて45秒;72℃にて1分)。プライマーとしては以下に示す配列のプライマーを用いた:
5'- AGTCTCTAGGAGTAAGTTGGTCACTAT-3'
5' -GAATATGAGCACTACATCTCATATGCAT-3'
【0034】
結果を図4に示す。トランスポゼースTdicは、カーネーション花弁において特異的に発現しており、葉では発現していないこと、および、花弁における発現量はカーネーションの種類によって異なることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1はトランスポゼースTdicのアミノ酸配列を示す。
【図2】図2はトランスポゼースTdicをコードする遺伝子の塩基配列を示す。
【図3】図3はトランスポゾンdTdic1の構造を示す。
【図4】図4はトランスポゼースTdicの発現分析を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有する蛋白質。
【請求項2】
配列番号1に記載されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつトランスポゾンdTdic1を転移する活性を有する蛋白質。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蛋白質をコードする遺伝子。
【請求項4】
配列番号2に記載される塩基配列を有する、請求項3記載の遺伝子。
【請求項5】
請求項3または4に記載の遺伝子を含む、植物細胞中で複製可能なベクター。
【請求項6】
請求項1または2に記載の蛋白質を植物細胞に導入することにより、植物細胞の遺伝子上でトランスポゾンdTdic1を転移させる方法。
【請求項7】
請求項5記載のベクターを植物細胞に導入することにより、植物細胞の遺伝子上でトランスポゾンdTdic1を転移させる方法。
【請求項8】
請求項5記載のベクターとトランスポゾンdTdic1とを含む、植物細胞の遺伝子操作用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−37407(P2007−37407A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221982(P2005−221982)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(801000072)農工大ティー・エル・オー株式会社 (83)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】