説明

トランスポンダ糸およびそれを使用した製品

布(40a)へのトランスポンダ(4a)の設置けを簡素化するために、トランスポンダが、チップ(6)とそれに接続されたアンテナ(8、10)とを含むトランスポンダ糸として構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのトランスポンダを有するトランスポンダ糸およびトランスポンダ糸の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスポンダは周知の送受信機器であり、情報を担持し、信号応答システムに従って作動し、移動読取機器または固定読取機器と協動する。トランスポンダはチップとアンテナとを含んでいる。好適なチップはトランスポンダとして機能する超小型電子部品である。受動トランスポンダは能動トランスポンダとは異なり電源を必要とせず、従って事実上無制限の寿命を有する。
【0003】
このようなトランスポンダは多種多様な機能を有し、例えば携帯者の所在地識別や販売店での製品盗難防止等の多種多様な目的に役立つ。トランスポンダが製品用に特殊なデータを含み、これらのデータがさらに倉庫管理部に転送されねばならないとき、トランスポンダは倉庫管理にも利用することができる。
【0004】
このようなトランスポンダと織成または編成繊維布との結合は公知である。トランスポンダチップと繊維布との結合、そして信号の送信および/または受信に必要なアンテナの配置は諸問題を生じる。繊維布にアンテナを配設した後、そのアンテナにチップを固着する方法が公知である。そのような製造方法は、特にミリメートルオーダあるいはそれ以下の微小オーダの超小型部品である理由から極めて困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、繊維布へのトランスポンダの設置を簡素化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、チップと接続されたアンテナとからなる少なくとも1つのトランスポンダを含む請求項1記載のトランスポンダ糸によって解決される。このようなトランスポンダ糸は次に、例えば織成または編成によって繊維布と簡単に結合することができ、織成過程後または編成過程後に繊維布、例えばラベルは、既に利用可能状態にある。チップを追加的にアンテナに取付けることは省かれる。それに応じて本発明の対象はさらに、少なくとも1つのトランスポンダがラベルに配設されているような、請求項13記載のトランスポンダ糸のラベルでの使用である。
【0007】
本発明の有利な諸構成は請求項2〜12および14〜16に述べられている。
【0008】
トランスポンダは、一体なアンテナを備えたチップを有することができる。しかしトランスポンダ糸は主に、アンテナが2つのアンテナ部分からなり、アンテナ部分の間にチップが配設されているように構成されている。
【0009】
トランスポンダ糸は、請求項3によれば、それぞれチップと接続されたアンテナとを備えて直列に配設される複数のトランスポンダを有することができ、トランスポンダ糸は通常の糸と同様に織成または編成に使用することができる。トランスポンダ糸は、請求項4によれば、並べられた複数のトランスポンダのみで構成することができ、チップはいわば真珠のネックレスのようにアンテナ上に並んで出現する。請求項5によれば、トランスポンダは、主に繊維製の基材の内部または表面に配設しておくこともできる。請求項7によりトランスポンダがそれらのチップの間に一体に延びるアンテナ部分を有する場合、これらのアンテナ部分はトランスポンダ糸の継続加工時に切断されねばならない。請求項6によれば、個々のトランスポンダは互いに独立して配設することもできる。請求項8によれば、アンテナは1つの導電性糸で構成することができる。請求項9によれば、アンテナを編組導電性糸で形成することが可能である。請求項10によればさらに、アンテナを糸芯の周りに配設することが可能である。
【0010】
トランスポンダ糸は多種多様な形状とすることができ、例えば円形横断面、または請求項11により扁平横断面とすることができる。最後に指摘した事例では、チップとアンテナとを有するトランスポンダは基材の側面に配設することができる。その際、請求項12によりトランスポンダ糸がその中心線に沿ってジグザグに配設され、基材がトランスポンダ及びそのチップとアンテナを包覆することが有利である。
【0011】
ラベルの製造時、請求項14によりトランスポンダ糸は経糸として配設することができる。請求項15によれば、トランスポンダ糸を緯糸として配設することも可能である。トランスポンダ糸の配設は織成または編成によって行うことができる。しかし、請求項16によれば、トランスポンダ糸を模様緯糸としてラベルの裏面に浮かせて配設することも可能である。
【0012】
本発明の実施形態について図面を基に以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示すトランスポンダ糸2は、真珠のネックレスのように互いに連結されたトランスポンダ4a、4bを有する。各トランスポンダがそれぞれ1つのチップ6を含み、相反する側でこのチップにアンテナ部分8、10が配設されており、アンテナ部分はそれぞれ隣接トランスポンダのアンテナ部分と一体に結合されている。アンテナ部分8、10は例えば単一の導電性糸、または相互に撚り合わされた糸で構成され、円形横断面を有し、基材から露出しており、すなわち基材に埋め込まれていない。
【0014】
図2に示す他のトランスポンダ糸12は、列設された複数のトランスポンダ14a、14bを有し、それぞれのチップ16とアンテナ18、20は、基材22に埋め込まれている。このような基材は例えば紡糸した糸またはプラスチック製カバーで構成することができる。
【0015】
図3に示す帯状トランスポンダ糸24は、帯状基材26を有し、この基材にトランスポンダ28a、28bが配設されている。帯状基材は例えば不織布または例えばルレックス(登録商標)糸等のプラスチック帯で構成することができる。基材26の所定の長さよりも長い長さのアンテナを収容するために、アンテナ部分30、32はチップ34の間にジグザグ状に配設されている。このようなアンテナは、例えば基材に被着した金属層のエッチングによって形成しておくことができる。
【0016】
図1〜図3に示すトランスポンダ糸は、通常の糸と同様に繊維布内に挿入することができ、例えば、緯糸または経糸として、あるいは編糸として挿入することができる。2つのチップの間で連続するアンテナ部分はふつう半分の長さに切断する必要があり、これが一点鎖線の分離線36によって図示されている。
【0017】
製造されるべき繊維布、特にこのようなトランスポンダ糸を有するラベルの構成は、アンテナ部分の長さに関して、トランスポンダ糸の区域内に存在するトランスポンダが、チップの十分な機能を保証する長さ、すなわちチップに調整された長さのアンテナを有するようになされている。例えばUHF範囲内のトランスポンダ用には約17cmのアンテナ長が必要となる。
【0018】
図4が示す各ラベル40a、40bでは、例えば、前記トランスポンダ糸が緯糸42または経糸44として配設されている。しかし、異なる目的のための異なる性質を有する2つ以上のトランスポンダを1つのラベルに備えることも可能である。その場合、例えば1つのトランスポンダを盗難防止に利用し、別のトランスポンダを資材管理に利用するようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】チップとアンテナ部分のみからなる第1実施形態のトランスポンダ糸を平面図で示す。
【図2】円形基材内に配設されるトランスポンダを有する第2実施形態のトランスポンダ糸を縦断面図で示す。
【図3】扁平基材に配設されるトランスポンダを有する第3実施形態のトランスポンダ糸を平面図で示す。
【図4】糸状トランスポンダ糸を有するラベルを平面図で示す。
【符号の説明】
【0020】
2 トランスポンダ糸
4a トランスポンダ
4b トランスポンダ
6 チップ
8 アンテナ部分
10 アンテナ部分
12 トランスポンダ糸
14a トランスポンダ
14b トランスポンダ
16 チップ
18 アンテナ部分
20 アンテナ部分
22 基材
24 トランスポンダ糸
26 基材
28a トランスポンダ
28b トランスポンダ
30 アンテナ部分
32 アンテナ部分
34 チップ
36 分離線
40a ラベル
40b ラベル
42 緯糸
44 経糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ(6、16、34)と前記チップに接続されたアンテナ(8,10、18、20、30、32)とからなる少なくとも1つのトランスポンダ(4a、4b、14a、14b、28a、28b)を含むことを特徴とするトランスポンダ糸。
【請求項2】
前記アンテナが、2つのアンテナ部分(8、10、18、20、30、32)で構成され、前記チップ(6、16、34)が前記2つのアンテナ部分の間に配設されていることを特徴とする請求項1記載のトランスポンダ糸。
【請求項3】
それぞれが、前記チップ(6、16、34)と前記チップに接続された前記アンテナ(8,10、18、20、30、32)とからなる、直列に配設された複数のトランスポンダ(4a、4b、14a、14b、28a、28b)を含むことを特徴とする請求項1または2記載のトランスポンダ糸。
【請求項4】
単数または複数の前記トランスポンダ(4a、4b)のみからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のトランスポンダ糸。
【請求項5】
単数または複数の前記トランスポンダ(14a、14b)が、主に繊維製の基材(22)内に配設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のトランスポンダ糸。
【請求項6】
前記複数のトランスポンダが、互いに独立して配設されていることを特徴とする請求項6記載のトランスポンダ糸。
【請求項7】
前記複数のトランスポンダ(4a、4b、14a、14b、28a、28b)が、それぞれのチップ(6、16、34)の間に一体に延びるアンテナ部分(8、10、18、20、30、32)を有し、これらのアンテナ部分がトランスポンダ糸の後加工時に切断(36)されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のトランスポンダ糸。
【請求項8】
前記アンテナ(18、20)が1つの導電性糸からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のトランスポンダ糸。
【請求項9】
前記アンテナ(8、10)が編組導電性糸からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のトランスポンダ糸。
【請求項10】
前記アンテナが、基材の糸芯の周りに配設されていることを特徴とする請求項5記載のトランスポンダ糸。
【請求項11】
扁平に形成され、前記チップ(34)と前記アンテナ(30、32)とを有する前記トランスポンダ(28a、28b)が、扁平に構成された基材(26)の側面に配設されていることを特徴とする請求項5記載のトランスポンダ糸。
【請求項12】
中心線に沿ってジグザグに配設されていることを特徴とする請求項11記載のトランスポンダ糸。
【請求項13】
少なくとも1つの前記トランスポンダ(4a、4b、14a、14b、28a、28b)がラベル(40a、40b)に配設されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載のトランスポンダ糸のラベル内での使用。
【請求項14】
前記トランスポンダ糸(2、12、24)が経糸(44)として配設されていることを特徴とする請求項13記載の使用。
【請求項15】
前記トランスポンダ糸(2、12、24)が緯糸(42)として配設されていることを特徴とする請求項13記載の使用。
【請求項16】
前記トランスポンダ糸(2、12、24)が前記ラベルの裏面に浮かせて配設されていることを特徴とする請求項13記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−532122(P2008−532122A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556474(P2007−556474)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000040
【国際公開番号】WO2006/089439
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(500031009)テクスティルマ・アクチェンゲゼルシャフト (22)
【Fターム(参考)】