説明

トランスポートストリーム記録装置及びトランスポートストリーム記録方法

【課題】TSがヌルパケットを含まない場合でも、再多重化処理ができるトランスポートストリーム記録装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、テレビジョン受像機1は、パケット変換部31と、ヌルパケットレジスタ34と、ヌルパケット挿入部32と、再多重化処理部20とを有する。パケット変換部31は、入力された第1のTS中のTSパケットの入力クロックの周波数よりも高い周波数の出力クロックで、TSパケットを出力するようにTSパケットを変換する。ヌルパケット挿入部32は、パケット変換部31において変換されたTSパケット間に、ヌルパケットレジスタ34に格納されたヌルパケットを挿入し、かつヌルパケットを挿入する第1のTSの位置は指定可能である。再多重化処理部20は、ヌルパケット挿入部32において挿入されたヌルパケットをセクションTSパケットに置き換えた第2のTSを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、トランスポートストリーム記録装置及びトランスポートストリーム記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放送のデジタル化が進み、テレビジョン受像機等の放送受信装置もデジタル放送対応になっている。デジタル放送においては、一般に動画を圧縮して放送しており、圧縮方式の国際標準としてはいわゆるMPEG(Motion Picture Expert Group)方式におけるいわゆるトランスポートストリーム(Transport Stream:以下TSとも略すこともある)方式が採用されている。
【0003】
デジタル放送では多数のチャンネルを含み、チャンネル毎に異なる内容の番組が放送され、視聴者は、多くの番組を高画質な映像で視聴することができる。また、視聴者は、レコーダ、レコーダ機能付きのテレビジョン受像機等を利用してデジタル放送に含まれる番組の中から所望の番組をハードディスク装置等の記憶装置あるいは記録媒体に録画、すなわち記録することができる。
【0004】
ところで、コンテンツを記憶装置等に記録するときに、セクション情報を、例えばPSI(Program Specific Information:番組特定情報)、SI(Service Information:サービス情報)、データなどを、TS中のヌルパケット(Null Packet)に含ませるような再多重化処理を行って、そのコンテンツを、パーシャルTSとして記録する場合がある。このような再多重化処理によってコンテンツデータに含まれたコンテンツに関する各種情報は、記録されたコンテンツの再生処理、管理等に利用することができる。
しかし、受信したTSがヌルパケットを含まない場合は、このような再多重化処理を行うことができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−529296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、実施形態は、TSがヌルパケットを含まない場合でも、再多重化処理ができるトランスポートストリーム記録装置及びトランスポートストリーム記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、入力された第1のトランスポートストリーム中のトランスポートストリームパケットの入力クロックの周波数よりも高い周波数の出力クロックで、前記トランスポートストリームパケットを出力するように、前記トランスポートストリームパケットを変換するパケット変換部と、ヌルパケットを格納する格納部と、前記パケット変換部において変換されたトランスポートストリームパケット間に、前記格納部に格納された前記ヌルパケットを挿入し、かつ前記ヌルパケットを挿入する前記第1のトランスポートストリーム中の位置は指定可能であるヌルパケット挿入部と、前記ヌルパケット挿入部において挿入された前記ヌルパケットを前記セクション情報を有するパケットに置き換えた第2のトランスポートストリームを出力するトランスポートストリーム出力部と、を有するトランスポートストリーム記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係わるテレビジョン受像機の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係わるTS出力部13の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係わるTS出力部13の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態に係わる、受信したTSが再多重化されるまでのタイムチャートである。
【図5】第1の実施形態に係わる、PIDフィルタ14と再多重化処理部20における処理の流れの例を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施形態に係るテレビジョン受像機1Aの構成を示すブロック図である。
【図7】第2の実施形態に係るTS出力部13Aの構成を示すブロック図である。
【図8】第2の実施形態に係る、TS出力部13Aの処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態に係る、PIDフィルタ14Aにおける処理の流れの例を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態に係る、受信したTSが再多重化されるまでのタイムチャートである。
【図11】第1及び第2の実施形態に係る、nが3の場合を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係わるテレビジョン受像機の構成を示すブロック図である。テレビジョン受像機1は、デジタル放送受信装置であり、トランスポートストリーム(TS)を受信して、ユーザが所望のチャンネルを視聴し、かつ録画できる装置である。ユーザは、リモコン2を操作することにより、トランスポートストリーム記録装置でもあるテレビジョン受像機1に対して各種機能の実行を指示することができる。
【0010】
テレビジョン受像機1は、放送受信用のインターフェース(I/F)11、受信部12、トランスポートストリーム出力部(以下、TS出力部という)13、PID(パケットID)フィルタ14、デコーダ15、映像出力インターフェース(I/F)16、音声出力インターフェース(I/F)17、表示装置18、スピーカ19、再多重化処理部20、受信したコンテンツのパーシャルTSを記録する蓄積装置21、制御部22、受光部23などを含んで構成される。
【0011】
なお、テレビジョン受像機1は、地上波デジタル放送だけでなく、IP(Internet Protocol)放送を受信可能なテレビジョン受像機である。IP放送は、インターネット等のIPネットワークを利用した放送である。図1では、IP放送の受信に係わる回路を示し、一般的な地上波デジタル放送などの受信回路については、省略している。
【0012】
放送受信用のインターフェース11は、インターネットなどのネットワークNWに接続され、受信部12は、インターフェース11を介して、放送信号を受信する。受信部12は、受信バッファに12aを含み、TSを受信し、受信したTSに含まれる複数のTSパケット(以下、単にパケットともいう)を、受信バッファに12aに一時記憶する。
【0013】
TS出力部13は、受信バッファ12aに記憶された受信パケットを順次読み出し、予め決められた高いクロック周波数のパケットを生成し、後述するように、パケット間にヌルパケットを挿入して、出力する。
【0014】
PIDフィルタ14は、入力されたパケットから目的のPIDのパケットを抽出し、出力する。なお、PIDフィルタ14は、後述するように、ヌルパケットの削除は行わない。すなわち、PIDフィルタ14は、ヌルパケット挿入部32で挿入されたヌルパケットを削除しないで、TS出力部13から出力されたTSパケットを入力して、PIDフィルタリングを行うフィルタである。
【0015】
デコーダ15は、PIDフィルタ14から出力されたパケットからヌルパケットを削除した後、パケットをデコードして、映像信号は、インターフェース16を介して表示装置18に出力し、音声信号は、インターフェース17を介してスピーカ19に出力する。
【0016】
なお、PIDフィルタ14は、デコーダ15へ出力するパケットにはヌルパケットが含まれないように、TS出力部13から出力されたパケットからヌルパケットを削除してデコーダ15へパケットを送出し、デコーダ15では、PIDフィルタ14から出力されたパケットからヌルパケットを削除しないようにしてもよい。
【0017】
再多重化処理部20は、制御部22により用意された、パーシャルTSのためのセクション情報を含むパケットで、ヌルパケットを置き換え、かつ置き換える必要のないヌルパケットを削除したパーシャルTSを、蓄積装置21へ出力する。セクション情報には、PSI,SI等の種々の情報があるが、パーシャルTSに含ませるセクション情報は、予め決められている。
蓄積装置21は、ハードディスクドライブなどの記憶装置を含み、入力されたパーシャルTSを記録する機能を有する装置である。
【0018】
制御部22は、中央処理装置(CPU)等を含み、テレビジョン受像機1の全体を制御する制御部である。ユーザが操作するリモコン2からの赤外線のコマンドが受光部23において受信されて、制御部22は、受光部23で受信したコマンドに応じた機能を実現するように、テレビジョン受像機1内の各種回路を制御する。
【0019】
例えば、ユーザが、あるチャンネルの放送を視聴するコマンドを指示すると、PIDフィルタ14は、その指定されたチャンネルのパケットを選択して出力する。デコーダ15は、PIDフィルタ14から出力されたパケットからヌルパケットを削除してからデコードし、映像信号は、インターフェース16を出力され、音声信号は、インターフェース17に出力される。
【0020】
また、ユーザが、あるチャンネルの放送番組のコンテンツを録画するコマンドを指示すると、再多重処理部20は、記録するパケット中のヌルパケットを、制御部22により用意されたセクション情報に置き換えて、パーシャルTSとして、蓄積装置21に出力する。
【0021】
図2は、TS出力部13の構成を示すブロック図である。TS出力部13は、パケット変換部31と、ヌルパケット挿入部32と、パケット出力部33と、ヌルパケットレジスタ34とを含む。さらに、ヌルパケット挿入部32は、タイムスタンプ演算部35を含む。
【0022】
なお、ここでは、受信したパケットを、伝送クロックを上げたパケットに変換した後にヌルパケットを挿入しているが、ヌルパケットを挿入した後に、高い伝送クロックのパケットに変換するようにしてもよい。
【0023】
TS出力部13には、受信バッファ12aから受信パケットPinが順次入力される。パケット変換部31は、受信パケットの伝送レートは変更せずに、伝送クロックの周波数を上げて、受信パケットを出力する回路である。より具体的には、パケット変換部31は、入力されたTSの受信パケットを変換して、受信パケットPinの伝送クロックよりも高い伝送クロックで受信パケットを出力する。
【0024】
ここでは、パケット変換部31は、受信パケットの出力クロックを、受信パケットPinの伝送クロックのn倍(nは、正の整数)、ここでは2倍、のクロックに変換して、受信パケットを出力する。例えば、受信パケットPinが18Mhzの伝送クロック周波数f1でTS出力部18に入力される場合、パケット変換部31は、36Mhzの伝送クロック周波数f2で受信パケットを出力する。
【0025】
ここでは、出力される受信パケットの伝送クロック周波数f2が受信パケットの伝送クロック周波数f1の2倍である例を説明するが、出力パケットの伝送クロック周波数f2は、受信パケットの伝送クロック周波数f1の3倍、4倍などでもよい。
【0026】
以上のように、パケット変換部31は、入力されたTS中のTSパケットである受信パケットPinの入力クロックの周波数よりも高い周波数の出力クロックで、TSパケットを出力するように、受信パケットを変換するパケット変換部である。
【0027】
ヌルパケット挿入部32は、パケット変換部31で変換された受信パケット間に、ヌルパケットを挿入する処理部である。ヌルパケットレジスタ32は、ヌルパケットを格納する格納部としての回路である。
なお、ここでは、ヌルパケットを格納する回路として、レジスタを用いているが、メモリでもよい。
【0028】
2倍の伝送クロックの受信パケットがヌルパケット挿入部32に入力されるので、ヌルパケット挿入部32は、連続する2つの受信パケット間に、ヌルパケットレジスタ34に格納されたヌルパケットを、挿入して出力する。すなわち、ヌルパケット挿入部32は、ヌルパケットを格納するヌルパケットレジスタ32に格納されたヌルパケットを、パケット変換部31において変換されたTSパケット間に挿入する処理部である。
【0029】
なお、ヌルパケット挿入部32に含まれるタイムスタンプ演算部35は、受信パケットがタイムスタンプを含むパケットである場合に、ヌルパケットに付加するタイムスタンプを算出する回路である。
パケット出力部33は、2つの受信パケット間にヌルパケットが挿入された出力パケットPoutを、TSとして出力する。
【0030】
図3は、TS出力部13の処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、受信パケットがタイムスタンプを含む場合を説明する。なお、受信パケットがタイムスタンプを含まない場合は、タイムスタンプに関する処理は、行われない。
【0031】
図3に示すように、処理が開始されると、パケット変換部31は、受信バッファ12aから受信パケットPinを入力し(S1)、受信パケットPinを、高い伝送クロックを有する受信パケットP1に変換する(S2)。
そして、ヌルパケット挿入部32は、受信パケットPinに含まれるタイムスタンプから、挿入するヌルパケットのタイムスタンプを計算し、タイムスタンプを付けたヌルパケットを、受信パケット間に挿入する(S3)。
【0032】
そして、パケット出力部33は、受信パケットP1とヌルパケットを含む出力パケットPoutを出力する(S4)。
【0033】
なお、上述したように、受信したパケットPinを、伝送クロックを上げたパケットに変換した後にヌルパケットを挿入するのではなく、受信したパケットPin間にヌルパケットを挿入した後に、高い伝送クロックの受信パケットに変換する場合は、上記のS2とS3の処理の順番は、入れ替わる。
以上のS1からS4の処理が、繰り返される。
【0034】
図4は、受信したTSが再多重化されるまでのタイムチャートである。なお、図4は、nが2の場合、すなわち、受信パケットPinの伝送クロックの2倍で、受信パケットP1が生成される場合を示す図である。
【0035】
まず、受信部12からの受信パケットPinは、受信パケットPinの伝送レートに応じたクロックに基づいて入力される。図4では、受信パケットPinが、0(ゼロ)から順番にTS出力部13に入力されることが示されている。
【0036】
パケット変換部31により、その受信パケットPinは、受信パケットPinの伝送クロックの2倍の出力クロックCLKの受信パケットP1に変換されて、ヌルパケット挿入部32に出力される。
【0037】
図4に示すように、受信パケットP1間にスペースができるので、ヌルパケット挿入部32により、受信パケットP1間にヌルパケット(Null)が挿入され、パケット出力部33により、受信パケットP1とヌルパケットを含む出力パケットPoutが出力される。
【0038】
なお、ここでは、連続する2つの受信パケット間の全てにヌルパケットが挿入されているが、連続する2つの受信パケット間の全てにヌルパケットを挿入しないようにしてもよい。例えば、録画モードなどのモードに応じて、連続する2つの受信パケット間の、1つ置きあるいは2つ置き等のような、指定された位置に、ヌルパケットを挿入するようにしてもよい。この場合、パーシャルTSに含ませるセクション情報の量が、モードに応じて異なっている場合もあるので、モードに応じて、ヌルパケット挿入部32では、ヌルパケットを挿入するTS中の位置を指定可能となっている。よって、ヌルパケット挿入部32は、ヌルパケットの挿入位置を指定する指定機能を有する。従って、このような場合、ヌルパケット挿入部32は、ヌルパケットを挿入するTS中の位置が指定可能となっている。
【0039】
また、ヌルパケット挿入部32では、ヌルパケットにタイムスタンプ、すなわち時刻情報、を含ませるために、前回受信したパケットPinと、今回受信したパケットPinのタイムスタンプの値から、ヌルパケットに含ませるべきタイムスタンプの値を算出し、算出したタイムスタンプをヌルパケットに含ませる。なお、図2では、タイムスタンプ算出部35は、ヌルパケット挿入部32に含まれているが、ヌルパケット挿入部32とは別に設けられていてもよい。
【0040】
タイムスタンプ算出部35では、例えば、次のようにしてタイムスタンプを算出する。
【0041】
前回受信したパケットPinのタイムスタンプの値をts1、今回受信したパケットのタイムスタンプの値をts2、先のパケットから数えたヌルパケットの挿入回数をkとすると、挿入するヌルパケットのタイムスタンプの値tscは、次の式(1)から算出される。
【0042】
tsc=ts1+((ts2−ts1)/n)*k ・・・(1)
なお、入力ビットレートから算出したタイムスタンプの差分値を、先のパケットのタイムスタンプに加算する等により、挿入するヌルパケットのタイムスタンプの値tscを算出するようにしてもよい。
【0043】
図5は、PIDフィルタ14と再多重化処理部20における処理の流れの例を示すフローチャートである。
図5に示すように、PIDフィルタ14は、TS出力部13からの出力パケットPoutを入力し(S11)、ヌルパケットの削除はしないで、PIDフィルタリングを行う(S12)。PIDフィルタリングにより、所望のチャンネルのパケットのみが選択されて出力される。
【0044】
再多重化処理部20は、PIDフィルタ14から入力される各パケットをチェックして、ヌルパケットであるか否かを判定する(S13)。入力されたパケットがヌルパケットであるとき(S13:YES)、再多重化処理部20は、再多重化処理を行う(S14)。
【0045】
再多重化処理では、ヌルパケットを、パーシャルTSのためのセクション情報を含むパケット(以下、セクションTSパケットともいう)で、置き換える処理が実行される。再多重化処理により、ヌルパケットに代わって挿入されるセクションTSパケット(図10中の「Remux」で示す)は、TSの先頭にのみ挿入されるもの、周期的に挿入されるもの等があるため、全てのヌルパケットがセクションTSパケットによって置き換えられるわけではない。よって、再多重化処理では、全てのヌルパケットを、セクションTSパケットで置き換えるのではなく、置き換える必要のないヌルパケットは、削除する処理が行われる。すなわち、ヌルパケットは、パーシャルTSの生成のための仮パケットであり、再多重化処理部20は、PIDフィルタ14から出力されたTSパケットに含まれる複数の仮パケットの全てあるいは一部を、セクション情報を有するパケットに置き換えるトランスポートストリーム出力部を構成する。
【0046】
再多重化処理部20は、再多重化処理されたパケットを、蓄積装置21へ出力して記録する(S15)。なお、再多重化処理部20は、PIDフィルタ14から入力されるパケットをチェックして、ヌルパケットでないとき(S13:NO)、入力されたパケットを蓄積装置21へ出力して記録する(S15)。
【0047】
以上のように、再多重化処理部20は、TSパケットについてのセクション情報を有するパケットが、パケット変換部31において変換されたTSパケット間に挿入されたTSを出力するトランスポートストリーム出力部を構成する。そして、再多重化処理部20は、仮パケット挿入部であるヌルパケット挿入部32により挿入された仮パケットをセクション情報を有するパケットに置き換えてTSを出力するトランスポートストリーム出力部である。
【0048】
図4を参照すると、出力パケットPoutは、受信パケットP1とヌルパケットを交互に含むものである。PIDフィルタ14は、TS出力部13から入力される出力パケットPoutの中から、ユーザにより視聴したいあるいは録画したいとして指定されたチャンネルのPIDのパケットを選択して出力すると共に、ヌルパケットを削除しない。
【0049】
再多重化処理部20は、PIDフィルタ14からの出力パケットPout中のヌルパケットを、セクションTSパケットで置き換えて出力する。
その結果、図4に示すように、再多重化処理部20は、受信パケットP1と、セクションTSパケットとを出力する。セクションTSパケットで置き換えられなかったヌルパケットは、再多重化処理部20で削除される。
なお、再多重化処理部20において置き換えられるヌルパケットの位置は、セクション情報の内容によって異なっている。
【0050】
テレビジョン受像機1のユーザが、所望の番組を試聴するときにも、上述したヌルパケットの挿入と伝送クロックの変換は行われるが、PIDフィルタ14においてヌルパケットは削除されて、デコーダ15に供給されるので、ユーザは、従来通りの番組の視聴をすることができ、さらに、上述したヌルパケットの挿入と伝送クロックの変換が常に行われているので、ユーザが視聴中に、録画処理が開始される場合にも迅速に録画処理に対応することができる。
【0051】
以上のように、上述した実施形態に係るテレビジョン受像機1によれば、IPTV等のヌルパケットを含まないTSを、通常の地上波デジタル放送などの同様に、その再多重化処理により、セクション情報を含むパケットを含ませて、パーシャルTSとして記録することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、受信パケットの伝送レートのクロック周波数よりも高いクロック周波数を有する受信パケットを生成し、生成された受信パケット間にヌルパケットを挿入し、再多重処理部20において、ヌルパケットを、セクション情報を含むパケットに置き換えている。これに対して、第2の実施形態では、TS出力部が、受信パケットの伝送レートのクロック周波数よりも高いクロック周波数を有する受信パケットを生成し、生成された受信パケット間に、セクション情報を含むパケットを直接挿入する。
【0053】
図6は、第2の実施形態に係るテレビジョン受像機1Aの構成を示すブロック図である。なお、第2の実施形態のテレビジョン受像機1Aの構成及び処理は、第1の実施形態のテレビジョン受像機1と略同様であり、第2の実施の形態において、第1の実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付して説明は省略する。
【0054】
テレビジョン受像機1Aにおいて、TS出力部13Aは、受信部12から受信パケットを入力する。TS出力部13Aの出力は、PIDフィルタ14Aに入力され、PIDフィルタ14Aの出力は、デコーダ15と蓄積装置21へ供給される。
【0055】
図7は、TS出力部13Aの構成を示すブロック図である。TS出力部13Aは、パケット変換部31と、セクションTSパケット挿入部32Aと、パケット出力部33と、格納部としてのセクションTSパケットレジスタ34Aとを含む。セクションTSパケットレジスタ34Aは、セクション情報を有するパケットを格納するレジスタである。さらに、セクションTSパケット挿入部32Aは、タイムスタンプ演算部35を含む。セクションTSパケット挿入部32Aは、セクションTSパケットレジスタ34Aに格納されたセクション情報を有するパケットを、パケット変換部31において変換されたTSパケット間に挿入する。
【0056】
図8は、TS出力部13Aの処理の流れを示すフローチャートである。図8において、S2の後に、セクションTSパケット挿入部32Aは、タイムスタンプ演算部35により、挿入するセクションTSパケットのタイムスタンプを計算し、その計算して得られたタイムスタンプを付したセクションTSパケットを、受信パケットP1間に挿入する処理を行う(S21)。
【0057】
そして、パケット出力部33は、受信パケットP1とセクションTSパケットを含む出力パケットPoutを出力する(S22)。すなわち、セクションTSパケット挿入部32Aとパケット出力部33は、TSパケットについてのセクション情報を有するパケットが、パケット変換部31において変換されたTSパケット間に挿入されたTSを出力するトランスポートストリーム出力部を構成する。
【0058】
なお、ここにおいても、受信したパケットPinを、伝送クロックを上げたパケットに変換した後にセクションTSパケットを挿入するのではなく、セクションTSパケットを挿入した後に、高い伝送クロックのパケットに変換する場合は、上記のS2とS21の処理の順番は、入れ替わる。
以上のS1からS22の処理が、繰り返される。
【0059】
図9は、PIDフィルタ14Aにおける処理の流れの例を示すフローチャートである。
S11の後、PIDフィルタ14は、PIDフィルタリングを行う(S31)。ここでは、PIDフィルタリングにより、所望のチャンネルのパケットのみが選択されて出力されて出力されるが、セクションTSパケットの削除は行われない。そして、PIDフィルタ14Aは、出力パケットPoutすなわち記録パケットPrを、デコーダ15と蓄積装置21へ出力する(S32)。
【0060】
図10は、受信したTSが再多重化されるまでのタイムチャートである。図10に示すように、TS出力部13Aで受信パケット間に挿入されたセクションTSパケットは、PIDフィルタ14Aによって削除されずに、デコーダ15と蓄積装置21に供給される。
よって、ユーザは、所望の番組を視聴し、かつ所望の番組を録画することができる。
【0061】
以上のように、上述した実施形態に係るテレビジョン受像機1Aによれば、IPTV等のヌルパケットを含まないTSを、通常の地上波デジタル放送などの同様に、その再多重化処理により、セクション情報を含むパケットを含ませて、パーシャルTSとして記録することができる。
【0062】
以上のように、上述した各実施形態によれば、TSがヌルパケットを含まない場合でも、再多重化処理ができるトランスポートストリーム記録装置及びトランスポートストリーム記録方法を提供することができる。
【0063】
なお、上述した各実施形態では、nが2の場合、すなわち受信パケットPinの伝送クロックの2倍の場合を説明したが、nは、2を超えてもよい。
図11は、nが3の場合を説明するためのタイムチャートである。図11に示すように、受信パケットPinの伝送クロックの3倍で、受信パケットP1が生成される。受信パケットP1間の隙間に、ヌルパケット(Null)が挿入されている。記録パケットPrは、セクションTSパケット(図11中の「Rem」で示す)を含むパーシャルTSとなっている。
なお、挿入されるヌルパケットのタイムスタンプは、上述した式(1)等の演算により算出することができる。
【0064】
図11は、nが3の場合であるが、nが4等の場合も、受信パケットP1間に挿入されるヌルパケット(Null)の数が3つになるという相違はあるが、他は、nが3の場合と同様である。
【0065】
また、図11は、第1の実施形態に対応する例であるが、第2の実施形態に対応する場合も、図11における出力パケットPoutではなく、記録パケットPrがTS出力部13Aから出力される。
【0066】
本明細書における各「部」は、実施形態の各機能に対応する概念的なもので、必ずしも特定のハードウエアやソフトウエア・ルーチンに1対1には対応しない。従って、本明細書では、以下、実施の形態の各機能を有する仮想的回路ブロック(部)を想定して実施の形態を説明した。また、各実施形態における各手順の各ステップは、その性質に反しない限り、実行順序を変更し、複数同時に実行し、あるいは実行毎に異なった順序で実行してもよい。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として例示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1、1A テレビジョン受像機、2 リモコン、11、16,17 インターフェース、12 受信部、12a 受信バッファ、13,13A TS出力部、14,14A PIDフィルタ、15 デコーダ、18 表示装置、19 スピーカ、20 再多重化処理部、21 蓄積装置、22 制御部、23 受光部、31 パケット変換部、32 ヌルパケット挿入部、32A セクションTSパケット挿入部、33 パケット出力部、34 ヌルパケットレジスタ、34A セクションTSパケットレジスタ、35 タイムスタンプ演算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された第1のトランスポートストリーム中のトランスポートストリームパケットの入力クロックの周波数よりも高い周波数の出力クロックで、前記トランスポートストリームパケットを出力するように、前記トランスポートストリームパケットを変換するパケット変換部と、
ヌルパケットを格納する格納部と、
前記パケット変換部において変換されたトランスポートストリームパケット間に、前記格納部に格納された前記ヌルパケットを挿入し、かつ前記ヌルパケットを挿入する前記第1のトランスポートストリーム中の位置は指定可能であるヌルパケット挿入部と、
前記ヌルパケット挿入部において挿入された前記ヌルパケットを前記セクション情報を有するパケットに置き換えた第2のトランスポートストリームを出力するトランスポートストリーム出力部と、
を有するトランスポートストリーム記録装置。
【請求項2】
入力された第1のトランスポートストリーム中のトランスポートストリームパケットの入力クロックの周波数よりも高い周波数の出力クロックで、前記トランスポートストリームパケットを出力するように、前記トランスポートストリームパケットを変換するパケット変換部と、
前記トランスポートストリームパケットについてのセクション情報を有するパケットが、前記パケット変換部において変換されたトランスポートストリームパケット間に挿入された第2のトランスポートストリームを出力するトランスポートストリーム出力部と、
を有するトランスポートストリーム記録装置。
【請求項3】
前記パケット変換部において変換されたトランスポートストリームパケット間に、仮パケットを挿入する仮パケット挿入部を有し、
前記トランスポートストリーム出力部は、前記仮パケット挿入部により挿入された前記仮パケットを前記セクション情報を有するパケットに置き換えて前記第2のトランスポートストリームを出力する請求項2に記載のトランスポートストリーム記録装置。
【請求項4】
前記仮パケット挿入部において前記仮パケットを挿入する前記第1のトランスポートストリーム中の位置は、指定可能である請求項3に記載のトランスポートストリーム記録装置。
【請求項5】
前記仮パケットを格納する格納部を有し、
前記仮パケット挿入部は、前記仮パケットを格納する格納部に格納された前記仮パケットを、前記パケット変換部において変換されたトランスポートストリームパケット間に挿入する請求項3又は4に記載のトランスポートストリーム記録装置。
【請求項6】
前記仮パケットは、ヌルパケットである請求項3から5のいずれか1つに記載のトランスポートストリーム記録装置。
【請求項7】
前記セクション情報を有するパケットを格納する格納部を有し、
前記トランスポートストリーム出力部は、前記セクション情報を有するパケットを格納する格納部に格納された前記セクション情報を有するパケットを、前記パケット変換部において変換されたトランスポートストリームパケット間に挿入する請求項2に記載のトランスポートストリーム記録装置。
【請求項8】
パケット変換部により、入力された第1のトランスポートストリーム中のトランスポートストリームパケットの入力クロックの周波数よりも高い周波数の出力クロックで、前記トランスポートストリームパケットを出力するように、前記トランスポートストリームパケットを変換し、
前記変換されたトランスポートストリームパケット間に、前記トランスポートストリームパケットについてのセクション情報を有するパケットを挿入した第2のトランスポートストリームを出力する、トランスポートストリームの記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−98721(P2013−98721A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239214(P2011−239214)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】