説明

トランスミッションの出力検査装置

【課題】出力軸との連結作業を円滑に行うことで、出力検査を適正かつ低コストに行うことのできるトランスミッションの出力検査装置を提供する。
【解決手段】トランスミッションの出力検査装置10は、トランスミッション11の入力軸に連結される入力用モータ12と、出力軸13に連結される連結軸14と、連結軸14に設けられ、出力状態を検出する出力状態検出手段15,16と、連結軸14に設けられ、出力軸13に負荷を与えるブレーキ17と、連結軸14をその中心軸線まわりに回転させることで、出力軸13と連結軸14との連結部分に設けられたスプライン嵌合部18,19の位相合わせを行う位相合わせ手段20とを具備する。位相合わせ手段20は、連結軸14の外周に設けられた複数の歯部27と、歯部27と係合して、連結軸14を回転させる向きに歯部27を押動可能な押動部28と、押動部28を直線駆動させる直線駆動部29とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスミッションの出力検査装置に関し、特に、トランスミッションの出力軸と、これに連結可能な出力検査装置の連結軸とをスプライン嵌合で相互に連結した状態で出力検査を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用トランスミッションの製造工程においては、組立て完了後に、変速等の動作が正常に行われているか否かを評価するための出力検査工程が設けられている。この検査工程では、例えばトランスミッションの入力軸に連結される入力用モータと、トランスミッションの出力軸に連結されるトルク検出用の連結軸と、この連結軸に取り付けたトルクメータ等の出力状態検出手段とを具備した出力検査装置を用いるのが一般的である(例えば、下記特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、上記検査装置は、通常、出力軸の側に加速やブレーキのための負荷を与えるための出力用モータを具備しており、検査設備が大型化する、との問題があった。
【0004】
ここで、例えば下記特許文献2には、被測定対象となるモータの動力伝達軸にブレーキを取り付けると共に、この取り付けたブレーキとモータとの間にトルク検出手段を配設し、ブレーキを制御しながらトルク検出手段でモータの特性を測定可能とする測定装置が開示されている。
【0005】
従って、上記モータのトルク検出に用いられるブレーキを、トランスミッションの出力検査装置に適用すれば、換言すると、出力用モータの代わりにブレーキを採用すれば、検査設備の簡素化及び小型化を図りつつも、出力軸の側に適正な負荷を与えて出力検査を適正に行うことができるように思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−254482号公報
【特許文献2】特開平5−273062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記出力検査の実施に際しては、出力検査装置の連結軸をトランスミッションの出力軸に連結する必要があり、当該連結には、強度、伝達効率などの観点から、スプライン嵌合が採用される場合が多い。そのため、上記特許文献1に記載の如き出力用モータを具備した出力検査装置においては、連結軸をゆっくりと回転させながらその先端に設けたスプライン嵌合部をトランスミッションの出力軸のスプライン嵌合部に押し付けることで、両軸間のスプライン嵌合を図るようにしている。しかしながら、上述のように出力用モータをブレーキに変更したのでは、連結軸を回転駆動させることができないために、上記の連結手法を用いることができない。また、作業者が手作業でスプライン嵌合部の位相合わせを行うとなると非常に手間が掛かるため、実用向きではない。
【0008】
以上の事情に鑑み、本明細書では、検査設備の簡素化を図りつつも、出力軸との連結作業を円滑に行うことで、出力検査を適正かつ低コストに行うことのできるトランスミッションの出力検査装置を提供することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の解決は、本発明に係るトランスミッションの出力検査装置により達成される。すなわち、この出力検査装置は、トランスミッションの入力軸に連結される入力用モータと、トランスミッションの出力軸に連結される連結軸と、連結軸に設けられ、入力用モータから駆動力を入力した際の出力状態を検出する出力状態検出手段とを具備し、出力状態検出手段で検出した出力状態に基づき、トランスミッションの出力状態の良否を判定する出力検査装置において、出力軸と連結軸とは、スプライン嵌合により相互に連結され、連結軸に設けられ、出力軸に負荷を与えるブレーキと、連結軸をその中心軸線まわりに回転させることでスプライン嵌合部の位相合わせを行う位相合わせ手段とをさらに具備し、位相合わせ手段は、連結軸の外周に設けられた複数の歯部と、歯部と係合して、連結軸を回転させる向きに歯部を押動可能な押動部と、押動部を直線駆動させる直線駆動部とで構成されている点をもって特徴付けられる。
【0010】
このように、本発明は、従来、出力軸に負荷を付与すると共に、出力軸と連結軸とのスプライン嵌合を図るために用いられてきた出力用モータに代えて、ブレーキと位相合わせ手段を新たに設けたことを特徴とする。すなわち、検査時の出力軸への負荷付与手段としてブレーキを用いることで、モータなどの特別の駆動手段を使用しなくても、適正な出力検査を行うことができる。また、トランスミッションの取り付けに関し、連結軸を回転させてスプライン嵌合部の位相合わせを可能とする位相合わせ手段を設けたので、仮にスプライン嵌合部の凸部同士が当ってしまい、嵌り合わない場合であっても、位相合わせ手段により、連結軸のスプライン嵌合部と出力軸のスプライン嵌合部の一方の凸部と他方の凹部の円周方向位置を合わせて、円滑にスプライン嵌合を図ることができる。また、位相合わせの際の回転位相量は、例えばスプラインの単位ピッチレベルの量で足りるため、押動部の駆動手段に、例えばシリンダなどの直線駆動部を用いることができる。よって、押動部の駆動手段を含む位相合わせ手段を簡素化、小型化することができる。以上より、本発明によれば、出力用モータを用いなくても、出力軸と連結軸とのスプライン嵌合を円滑に図って、トランスミッションの出力検査を適正に行うことができる。また、出力用モータの如き大型かつ高価な駆動手段を使用せずに済み、かつシリンダ等の比較的小型で廉価なもので足りるので、出力検査装置を小型化でき、また低コストに製作することができる。
【0011】
また、位相合わせ手段を構成する歯部と押動部とが、ラチェット機構を構成していてもよい。
【0012】
上述のように、位相合わせ手段を具備した出力検査装置であれば、連結軸を軸回転させることでスプライン嵌合部の位相合わせを行うことができるが、実際の位相のずれは、ワークごとに異なる。そのため、1回の位相合わせ作業では位相が合わないこともあり、その場合には、上記位相合わせ作業を再度行う必要がある。ここで、位相合わせ手段を構成する歯部と押動部とで、ラチェット機構を構成するようにすれば、歯部(連結軸)は押動部に対して一方向にのみ回転し、他方向への回転は規制される。言い換えると、歯部と押動部とは一方向にのみ係合し、他方向へは自由に移動できる。そのため、歯部を押動した後、直線駆動部で押動部を押動方向とは逆方向に移動させることで、押動部を引っ掛かりなく押動する前の位置に戻すことができる。従って、位相合わせが適正になされるまで、押動部の往復動による位相合わせ作業を何度でも繰り返し実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明に係る出力検査装置によれば、検査設備の簡素化を図りつつも、出力軸との連結作業を円滑に行うことで、出力検査を適正かつ低コストに行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るトランスミッションの出力検査装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図であって、本出力検査装置におけるスプライン嵌合部の位相合わせ手段を示す要部拡大断面図である。
【図3】本出力検査装置によるスプライン嵌合部の位相合わせの一例を説明するための要部拡大図であって、歯部と押動部との係合及び押動態様を説明する図である。
【図4】本出力検査装置によるスプライン嵌合部の位相合わせの一例を説明するための要部拡大図であって、(a)は位相合わせ前における双方のスプライン嵌合部の位置関係を示す軸方向図、(b)は位相合わせ後における双方のスプライン嵌合部の位置関係を示す軸方向図である。
【図5】本出力検査装置によるスプライン嵌合部の位相合わせの他の例を説明するための要部拡大図であって、歯部のピッチが比較的大きい場合の回転位相量のばらつきを示す図である。
【図6】本出力検査装置によるスプライン嵌合部の位相合わせの他の例を説明するための要部拡大図であって、歯部のピッチが比較的小さい場合の回転位相量のばらつきを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る出力検査装置の一実施形態を図面に基づき説明する。この実施形態では、自動車用トランスミッションの出力状態を検出し、その良否判定を行う場合を例にとって説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る出力検査装置10の平面図を示している。この出力検査装置10は、例えばCVTなどの自動車用のトランスミッション11の変速等の動作の良否を、その出力状態を検出することで評価するための装置であって、上記トランスミッション11の入力軸に連結される入力用モータ12と、トランスミッション11の出力軸13に連結される連結軸14と、連結軸14に設けられ、入力用モータ12から駆動力を入力した際の出力状態を検出する出力状態検出手段としてのトルクメータ15及びタコメータ16と、同じく連結軸14に設けられ、出力軸13に負荷を与えるためのブレーキ17と、連結軸14をその中心軸線まわりに回転させることで、出力軸13と連結軸14との連結部分となるスプライン嵌合部18,19の位相合わせを行う位相合わせ手段20とを具備する。
【0017】
このうち、連結軸14は、連結軸本体21と、連結軸本体21のトランスミッション11側に設けられ、スプライン嵌合部18を有する連結軸嵌合部22とで構成されている。ここで、連結軸嵌合部22は、連結軸本体21に対して例えば図示しない弾性体を介して軸方向に往復動可能に支持され、かつ連結軸本体21と同期して回転できるように構成されている。上記構成の連結軸14は、連結軸本体21を内周に保持し、図示しない軸受で回転可能支持する支持部23と、連結軸14の外周に設けられ、連結軸14に対して軸方向にスライド可能なスライド部24と共に、連結軸ユニット25を構成している。ここで、支持部23は、図示しない基台上に設置されている。また、連結軸14を構成する連結軸嵌合部22は、スライド部24のスライド動作に伴ってスライド部24と一体的にスライド可能に構成されている。また、支持部23を含む連結軸ユニット25の接地側(固定側)には、スライド部24に軸方向のスライド力を付与するためのスライド駆動部26(例えばエアシリンダ)が取り付けられている。これにより、、スライド駆動部26を駆動してスライド部24及び連結軸嵌合部22を軸方向にスライドさせることで、この連結軸嵌合部22に設けられたスプライン嵌合部18が、トランスミッション11の出力軸13に設けられたスプライン嵌合部19と嵌合できるようになっている。
【0018】
位相合わせ手段20は、図2に示すように、連結軸本体21の外周に設けられた複数の歯部27と、歯部27と係合して、連結軸14を回転させる向きに歯部27を押動可能な押動部28と、押動部28を直線駆動させる直線駆動部29とで構成されている。この実施形態では、歯部27と押動部28とがラチェット機構を構成しており、歯部27はラチェット歯として、押動部28はラチェット爪としてそれぞれ機能する。すなわち、この図示例では、連結軸本体21からフランジ部30が外径側に突出して形成され、このフランジ部30の外周に複数の歯部27が形成されている。これら複数の歯部27は何れも円周方向一方(図2で言えば時計回りの向き)に傾いており、これとは逆向きに直線移動する押動部28と係合するようになっている。また、押動部28は、連結軸14(連結軸本体21)の中心軸線に直交する向きに移動するように配置されている。
【0019】
また、直線駆動部29は伸縮可能な伸縮部31を有しており、この伸縮部31に押動部28を取り付けることで、押動部28が直線往復運動するようになっている。押動部28は、支持軸32まわりに回転支持された状態で直線駆動部29の伸縮部31に取り付けられている。この場合、スプライン嵌合部18,19の位相合わせを行った後、直線駆動部29の伸縮部31を収縮して押動部28を歯部27から後退させることで、押動部28が支持軸32を支点に時計回りに回転して、歯部27の表面を滑りながら大径側に乗り上げる。これにより、押動部28を、円周方向に隣接する歯部27,27の間から逃がすことができるようになっている。
【0020】
以下、上記構成の出力検査装置10を用いたスプライン嵌合部18,19の位相合わせ作業の一例を説明する。
【0021】
まず、図1に示すように、出力検査装置10の入力用モータ12を、トランスミッション11の入力軸と連結する。そして、スライド駆動部26を駆動して、連結軸ユニット25のトランスミッション11側に位置するスライド部24を、連結軸本体21に対してスライドさせ、スライド部24の先端に設けたスプライン嵌合部18と、トランスミッション11の出力軸13先端に設けたスプライン嵌合部19との嵌合を試みる。ここで、図1のように、双方のスプライン嵌合部18,19が嵌り合えばよいが、位相が合わず、図4(a)に示すように、スプライン嵌合部18,19の凸部18a,19a同士が当ってしまう場合には、一旦スライド部24を後退させた上で、上記スプライン嵌合部18,19の位相合わせを行う。
【0022】
上記位相合わせは、位相合わせ手段20を構成する押動部28を直線移動させて、押動部28を歯部27に係合させ、係合した状態からさらに歯部27を押動することで行われる。具体的には、図2に示すように、直線駆動部29を駆動させて、その伸縮部31を伸長させることで、伸縮部31に取り付けられた押動部28が歯部27と係合する(図3中、右側の二点鎖線)。そして、この状態からさらに歯部27を押込む向きに押動部28を直線移動させることで、歯部27を外周に設けた連結軸本体21がその中心軸線まわりに回転し始める。このようにして、連結軸本体21を所定の位相分r1だけ回転させることで、連結軸本体21のトランスミッション11側に配設された連結軸嵌合部22も同じ位相分r1だけ回転するので、連結軸嵌合部22に設けたスプライン嵌合部18の位相が、出力軸13のスプライン嵌合部19の位相に対してずれを生じる(図4(a)から図4(b)に示す位置にずれを生じる。)。このようにして、連結軸14の側に設けたスプライン嵌合部18を、出力軸13スプライン嵌合部19に対して所定の位相分r1だけずらした後、スライド部24を前進駆動させて、両者18,19のスプライン嵌合を再度試みる。これにより、スプライン嵌合がなされることで、スプライン嵌合部18,19の位相合わせ作業、並びに出力軸13と連結軸14との連結作業が完了する。
【0023】
また、1回の位相合わせでスプライン嵌合を図ることができない場合には、上述した位相合わせ作業及び嵌合作業を繰り返し行うことで、スプライン嵌合部18,19の位相合わせ、並びに出力軸13と連結軸14との連結を図る。この実施形態のように、歯部27と押動部28とがラチェット機構を構成している場合、直線駆動部29の伸縮部31を収縮させて押動部28を一旦後退させることで、図示は省略するが、押動部28が支持軸32まわりに回転して、歯部27の表面を滑りながら大径側に乗り上げる。これにより、押動部28を歯部27から逃がして、元の位置(図3中、実線で示す位置)に戻すことができる。よって、然る後、上述したように押動部28を直線駆動させることで、連結軸14(連結軸本体21、連結軸嵌合部22)を所定の位相分だけ回転させることができる。
【0024】
以上のようにして、出力検査装置10へのトランスミッション11の取り付けを終えた後、所定の出力検査を行う。具体的には、入力用モータ12から所定のトルクを入力した際に、トランスミッション11の出力軸13を介して連結軸14に出力されるトルク、その他の出力状態をトルクメータ15等の出力状態検出手段で検出する。そして、上述した検出作業を、ブレーキ17を作用させて連結軸14に負荷を与えた状態で行うことで、加速や制動を伴うトランスミッション11の変速動作が正常に行われているか否かを評価する。
【0025】
このように、本発明では、連結軸14にブレーキ17を設けて、出力検査時、出力軸13に負荷を付与するようにしたので、モータなどの高価な駆動手段を用いなくても、トランスミッション11に対して適正な出力検査を行うことができる。また、位相合わせ手段20により連結軸14(連結軸本体21、連結軸嵌合部22)を回転させてスプライン嵌合部18,19の位相合わせを行うようにしたので、出力検査装置10にトランスミッション11を設置したままの状態では、スプライン嵌合部18,19が嵌り合わない場合であっても、連結軸14の側に設けたスプライン嵌合部18と出力軸13の側に設けたスプライン嵌合部19との一方の凸部と他方の凹部の円周方向位置を合わせて、円滑にスプライン嵌合を図ることができる。また、位相合わせの際の回転位相量r1は、スプライン嵌合部18,19を構成するスプラインの単位ピッチレベルの量で足りるので、押動部28を直線駆動する直線駆動部29に、シリンダなどの小型かつ廉価な駆動手段を用いることができる。従って、出力用モータを用いなくても、出力軸13と連結軸14とのスプライン嵌合を円滑に図って、トランスミッション11の出力検査を適正に行うことができる。また、出力用モータの如き大型かつ高価な駆動手段を使用せずに済み、かつ押動部28の直線駆動部にはシリンダ等の比較的小型で廉価な駆動手段を用いることができるので、出力検査装置を小型化でき、また低コストに製作することができる。
【0026】
ここで、押動部28の直線移動量、すなわち、直線駆動部29の伸縮部31のストローク量Sは一定の大きさに設定される場合には、1回の位相合わせにより得られる連結軸14(連結軸本体21、連結軸嵌合部22)の回転位相量r1についても常に一定量となるように思われる。しかしながら、実際には、上記位相合わせ作業を行う度に、押動部28に対する歯部27の相対位置が変わってしまうために、仮に回転位相量r1が歯部27のピッチの整数倍に等しくなるように歯部27に対する押動部28の位置や、直線駆動部29のストローク量Sを設定したとしても、実際の回転位相量r1は変動する。この場合、位相合わせの度に、押動部28に対する歯部27の位置が異なるため、例えば図5に示すように、歯部27のピッチが比較的大きい場合には、押動部28と歯部27とが係合する位置、すなわち押動し始める位置が大きく異なり、結果、回転位相量が大きくばらつく傾向にある(R2>>r2)。これに対して、図6に示すように、歯部27のピッチが比較的小さい場合には、押動部28と歯部27との係合位置が歯部27のピッチに比べて小さくなるため、回転位相量のばらつき(R3−r3)も小さくなる。押動部28と歯部27との(円周方向)係合位置は、図5や図6からも分かる通り、最大で歯部27の1ピッチ分ずれるためである。
【0027】
上記考察結果より、歯部27のピッチはなるべく小さくしたほうが、回転位相量r1のばらつきは小さくなるため好ましい。ただ、本発明のように、押動部28を直線移動させて歯部27を押動させる場合には、歯部27のピッチが小さいほど、その高さも小さくなるため、1回の位相合わせ作業により得られる回転位相量r1は小さくなる。また、スプライン嵌合部18,19の凸部18a,19a同士が当接する場合など、位相合わせの際には、最大でスプラインのピッチの2分の1に相当する量だけ位相をずらす必要がある。これらのことを考慮して歯部27のピッチを設定するのがよい。一例として、例えば図3に示すように、1回の位相合わせにより得られる回転位相量r1が歯部27の約2ピッチ分となる場合、歯部27のピッチと、スプライン嵌合部18,19を構成するスプラインのピッチとの比は、例えば1対4から1対6の間に設定される。言い換えると、歯部27の歯数は、スプラインの歯数の4倍から6倍の間に設定される。この場合、回転位相量r1は、スプラインのピッチの約2分の1から3分の1程度となる。
【0028】
なお、上記実施形態では、歯部27と押動部28とで、ラチェット機構を構成する場合を例示したが、もちろんこれ以外の形態を採ることも可能である。例えば、連結軸14のスライド部24と同期して歯部27を設けたフランジ部30がスライドするように構成した場合、押動部28は直線駆動部29に固定されていてもよい。押動し終わった位置(図3中、左側の二点鎖線で示す位置)から元の位置に向けて直線的に後退しても、歯部27と干渉しないためである。また、押動部28が歯部27と係合して、連結軸14(連結軸本体21)を回転させる向きに歯部27を押動可能な限りにおいて、歯部27の歯面の向き、形状や、押動部28の係合面の向き、あるいは歯部27に対する押動部28の直線移動方向など、自由に設定することが可能である。
【0029】
また、上記実施形態では、連結軸14を、連結軸本体21と連結軸嵌合部22とで構成すると共に、支持部23およびスライド部24とで連結軸ユニット25を構成し、連結軸ユニット25の一部(スライド部24、連結軸嵌合部22)のスライド移動により、スプライン嵌合を図るようにした場合を例示したが、特にこの形態に限る必要はない。例えば連結軸14のみならず、連結軸14に、又は連結軸14の周囲に配設される部材(支持部23、トルクメータ15、ブレーキ17など)を一体的にスライドさせて、トランスミッション11側のスプライン嵌合部19との嵌合を図るように構成すれば、部品点数の削減を図ることができる。
【符号の説明】
【0030】
10 出力検査装置
11 トランスミッション
12 入力用モータ
13 出力軸
14 連結軸
15 トルクメータ
16 タコメータ
17 ブレーキ
18,19 スプライン嵌合部
18a,19a 凸部(スプライン嵌合部)
20 位相合わせ手段
21 連結軸本体
22 連結軸嵌合部
23 支持部
24 スライド部
25 連結軸ユニット
26 スライド駆動部
27 歯部
28 押動部
29 直線駆動部
30 フランジ部
31 伸縮部
32 支持軸
1,r2,r3,R2,R3 回転位相量
S ストローク量(直線駆動部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッションの入力軸に連結される入力用モータと、前記トランスミッションの出力軸に連結される連結軸と、該連結軸に設けられ、前記入力用モータから駆動力を入力した際の出力状態を検出する出力状態検出手段とを具備し、前記出力状態検出手段で検出した出力状態に基づき、前記トランスミッションの出力状態の良否を判定する出力検査装置において、
前記出力軸と前記連結軸とは、スプライン嵌合により相互に連結され、
前記連結軸に設けられ、前記出力軸に負荷を与えるブレーキと、
前記連結軸をその中心軸線まわりに回転させることで前記スプライン嵌合部の位相合わせを行う位相合わせ手段とをさらに具備し、
前記位相合わせ手段は、前記連結軸の外周に設けられた複数の歯部と、前記歯部と係合して、前記連結軸を回転させる向きに前記歯部を押動可能な押動部と、該押動部を直線駆動させる直線駆動部とで構成されていることを特徴とする、トランスミッションの出力検査装置。
【請求項2】
前記歯部と前記押動部とで、ラチェット機構を構成している請求項1に記載のトランスミッションの出力検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−247310(P2012−247310A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119384(P2011−119384)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】