トランス
【課題】トランスの放熱性を高め冷却効果を高めるととともに、トランスの漏れインダクタンスを任意の最適値に調整自在とし、さらに場席をとらず設置スペースの限られた場所にトランスを搭載できるようにする。
【解決手段】1次コイルを、絶縁性を有する1次コイル用拘束部材によって拘束する。2次コイルを、絶縁性を有する2次コイル用拘束部材によって拘束する。コアの連結部の内側底面から1次コイルの下面までの高さと内側底面から前記2次コイルの下面までの高さとが異なる高さに当該1次コイルおよび2次コイルが位置決めされ、かつ内側底面から1次コイルの下面までの間および内側底面から2次コイルの下面までの間が空隙を形成するように、当該1次コイルおよび2次コイルをコア内で保持する。充填剤を、少なくとも内側底面と1次コイルおよび2次コイルとの間の空隙に充填する。
【解決手段】1次コイルを、絶縁性を有する1次コイル用拘束部材によって拘束する。2次コイルを、絶縁性を有する2次コイル用拘束部材によって拘束する。コアの連結部の内側底面から1次コイルの下面までの高さと内側底面から前記2次コイルの下面までの高さとが異なる高さに当該1次コイルおよび2次コイルが位置決めされ、かつ内側底面から1次コイルの下面までの間および内側底面から2次コイルの下面までの間が空隙を形成するように、当該1次コイルおよび2次コイルをコア内で保持する。充填剤を、少なくとも内側底面と1次コイルおよび2次コイルとの間の空隙に充填する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次コイルと2次コイルを備えたトランスの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンと電動機の二つの動力源を備え、エンジンの駆動により電動機を発電作用させ、発生した電力を蓄電器に蓄え、蓄えられた電力で旋回体や走行体に備えられた他の電動機を力行駆動させるような構成を備えたハイブリッド自動車やハイブリッド建設機械が知られている。ハイブリッド建設機械として、ハイブリッド油圧ショベルが知られている。ハイブリッド油圧ショベルは、主に下部走行体と上部旋回体と作業機から成り立ち、上部旋回体を上記のように電動機(旋回用電動機)の力行駆動によって旋回させ、旋回制動時にはその電動機が回生駆動により発電作用し、発電された電力を蓄電器に蓄える形態の物がみられる。そこで、ハイブリッド建設機械の蓄電器に蓄えられた電力を旋回用電動機に供給するために、蓄電器の電圧を昇圧したり、旋回用電動機で発電された電力を蓄電器に供給するために、電圧を降圧したりするためにトランスが搭載されている。そのトランスは、主に1次コイルと2次コイルとコア(鉄心)を備えている。例えば、トランスは、トランス結合型昇圧器というタイプの昇圧器に適用される。トランス結合型昇圧器とは、低圧側インバータと高圧側インバータとがトランスを介して結合されされたものである。
【0003】
トランスは、1次コイル、2次コイルを構成する導線に流れる電流によるジュール熱(銅損)、コア(鉄心)で生じる渦電流によるジュール熱(鉄損)、コア(鉄心)のヒステリシスなどによって発熱する。そこで、トランスを構成する部品の発熱による損傷を防止するためにトランス自身の放熱性が高く冷却効果を高めた構造とすることが求められる。
【0004】
(従来技術1)
下記特許文献1には、トランスのコア内に、ボビンの軸に巻回された1次コイルと、1次コイルの外周面から所定の間隙だけ離間されて1次コイルと同心状に巻回された2次コイルとを収容するトランスの構成において、ボビンに貫通孔を形成し、貫通孔に樹脂材を充填することで、特に1次コイルの放熱性を高めて冷却効果を高めるという発明が記載されている。
【0005】
また、通常のトランスでは漏れインダクタンスが小さいほどよいと考えられている。しかし、ハイブリッド建設機械に搭載されるトランスでは、漏れインダクタンスを任意の値に調整する必要がある。すなわち、トランス結合型昇圧器では、昇圧器の出力電力は、トランスの漏れインダクタンスが大きくなるほど出力電力が小さくなる。また昇圧器の損失は、トランスの漏れインダクタンスが小さくなるほど大きくなる。よってトランスの出力電力を大きくし、かつ損失を小さくするためにトランスの漏れインダクタンスをトランス結合型昇圧器のスペックに応じた最適な値に調整する必要がある。
【0006】
(従来技術2)
下記特許文献1および特許文献2には、1次コイルと2次コイルとの間の間隙を、スペーサを用いて調整することで、トランスの漏れインダクタンスを任意に調整するという発明が記載されている。
【0007】
ここで、1次コイルと2次コイルとの間の間隙(以下、適宜、両コイル間隙という)をd1とし、トランスの漏れインダクタンスをLとすると、下式(1)、
L∝d1 …(1)
に示すように、両コイル間隙d1が大きくなるほど、トランスの漏れインダクタンスLが大きくなるという関係が成立する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−153293号公報
【特許文献2】WO2007−60998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ハイブリッド建設機械にトランスを搭載するうえで、上述した冷却効果を高めた構造が求められるという要求や漏れインダクタンスを任意の最適値に調整するという要求以外に解決しなければならない課題がある。それはトランスの場席を小さくするという課題である。すなわち、ハイブリッド建設機械に搭載される電気機器の設置スペースには限りがある。このためトランスは、場席をとらない容積の小さな構造であることが求められる。ハイブリッド建設機械は、エンジンや油圧ポンプといった、通常の建設機械に必要な機器に加えてハイブリッド建設機械に特有の電気機器を車体に搭載しなければならないからである。この課題については、ハイブリッド建設機械ではない、電動式の建設機械(エンジンを搭載せず、電動機のみを動力源とする建設機械)においてもトランスは必要なため同様であって、場席をとらない容積の小さな構造であることが求められる。
【0010】
しかし、従来技術2を適用すると、1次コイルと2次コイルとの間の間隙を、スペーサを用いて調整すれば、トランスの漏れインダクタンスを任意の最適に調整できるものの、1次コイルと2次コイルとの間の間隙の大きさに比例してトランス(コア)の横幅が広がり、トランスの設置面積が広くなり場席がかさむという問題が発生する。
【0011】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、トランスの放熱性を高め冷却効果を高めるととともに、トランスの漏れインダクタンスを任意の最適値に調整自在とし、さらに場席をとらず設置スペースの限られた場所にトランスを搭載できるようにすることを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明は、
中脚部と、外脚部と、前記中脚部と前記外脚部とを連結し内側底面を有する連結部とが設けられたコアと、前記連結部の内側底面の上方にあって前記中脚部の周囲に巻回された1次コイルと、前記連結部の内側底面の上方にあって前記1次コイルの外周面から所定の間隙だけ離間されて前記1次コイルと同心状に巻回された2次コイルとが備えられたトランスにおいて、
電流および磁束を絶縁する絶縁性を有する1次コイル用拘束部材によって拘束された1次コイルと、前記絶縁性を有する2次コイル用拘束部材によって拘束された2次コイルとが前記コア内に収容され、前記内側底面から前記1次コイルの下面までの高さと前記内側底面から前記2次コイルの下面までの高さとが異なる高さに当該1次コイルおよび2次コイルが位置決めされ、かつ前記内側底面から前記1次コイルの下面までの間および前記内側底面から前記2次コイルの下面までの間が空隙を形成するように、当該1次コイルおよび前記2次コイルが前記コア内で保持され、空気よりも熱伝導率の高い熱伝導性を有する充填剤が、少なくとも前記内側底面と前記1次コイルおよび前記2次コイルとの間の空隙に充填されてなる構造であることを特徴とする。
【0013】
第2発明は、第1発明において
前記1次コイルの外周面と前記2次コイルの内周面との間に空隙が形成され、当該空隙に前記充填剤が充填されてなる構造であることを特徴とする。
【0014】
第3発明は、第1発明または第2発明において、
前記1次コイル用拘束部材は、前記1次コイルの内周面から前記中脚部側に所定の厚みを有する部材であって、当該1次コイルの周方向に点在して配置されており、前記1次コイル用拘束部材が前記中脚部に固着されることで、前記1次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする。
【0015】
第4発明は、第1発明から第3発明において、
前記2次コイルの外周面が前記外脚部に、前記絶縁性を有する接着剤にて接着されることで、前記2次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする。
【0016】
第5発明は、第1発明から第3発明において、
前記2次コイルの外周面に、テープを貼着した上で、前記絶縁性を有する接着剤によって前記外脚部に固着することで、前記2次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする。
【0017】
第6発明は、第1発明から第5発明において、
前記絶縁性を有する1次コイル用スペーサが、前記内側底面と前記1次コイルとの間に介在され、かつ当該1次コイルの周方向に点在して配置されることで、前記1次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする。
【0018】
第7発明は、第1発明から第6発明において、
前記絶縁性を有する2次コイル用スペーサが、前記内側底面と前記2次コイルとの間に介在され、かつ当該2次コイルの周方向に点在して配置されることで、前記2次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする。
【0019】
第8発明は、第6発明または第7発明において、
前記充填剤は、前記1次コイル用スペーサまたは/および前記2次コイル用スペーサよりも熱伝導率が高い材質で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、1次コイル用拘束部材によって拘束された1次コイルと、2次コイル用拘束部材によって拘束された2次コイルとがコア内に収容されて、コア内で保持される構造となっている。このため、従来技術1では、必要とされていたボビンが不要となる。したがって、ボビンによって占められていた容積分だけコアの場席を小さくすることができる。部品点数が削減され、製造コストを低くおさえることができる。
【0021】
また、本発明によれば、コアの連結部材の内側底面から1次コイルの下面までの間および同内側底面から2次コイルの下面までの間が空隙となり、この空隙に充填剤が充填される。ここで、従来技術1と比較すると、従来技術1にあっては、コア内にボビンが存在し、その部分には充填剤を供給できず、貫通孔に充填剤が充填されるとはいえ、充填剤が供給できない部分の熱伝導性は、ボビンの材質に影響し熱伝導性がよくないため、各コイルで発生する熱を外部に放熱させることが十分とはいえない。しかし、本発明では、従来技術1ではボビンが存在していた部分、つまり1次コイルとコア連結部の内側底面との間および2次コイルとコア連結部の内側底面との間が空隙となりその空隙に充填剤を供給できるようになることから、トランス自身の放熱性が従来技術1に較べて更に高まり、トランス自身の冷却効果を更に高めることができる。
【0022】
また、本発明によれば、コアの連結部の内側底面から1次コイルの下面までの高さと同内側底面から2次コイルの下面までの高さとが異なる高さに1次コイルおよび2次コイルが位置決めされる。ここで、両者の高さの差(以下、適宜、両コイル段差という)d2とすると、下式(2)、
L∝d2 …(2)
に示すように、両コイル段差d2が大きくなるほど、トランスの漏れインダクタンスLが大きくなるという関係が成立する。この(2)式と前述した(1)式と合わせると、
L∝d1、d2 …(3)
のような関係となる。すなわち、従来技術2に示される(1)式(L∝d1)と比較して、漏れインダクタンスLの調整パラメータが増えた分だけ、漏れインダクタンスLの調整の自由度が広がり、従来技術1と比較して両コイル間隙d1を広い範囲で調整せずとも両コイル段差d2を調整することで、同等の範囲で漏れインダクタンスLを調整することが可能となる。よって、両コイル間隙d1を所望の寸法までにとどめておいた状態で漏れインダクタンスLを任意の適切な値に調整することが可能となる。このようにして両コイル間隙d1の寸法を大きくせず、さらに上述したようにボビンが不要になったことも相まって、コアの外形の横幅方向の場席、つまりはトランス全体の場席を、従来技術1のトランスに比して極めて小さくすることができる。
【0023】
以上のように本発明によれば、トランス自身のの放熱性が高められ冷却効果が高まる。またトランスの漏れインダクタンスを任意の最適値に調整自在でありながらも、場席をとらず設置スペースの限られた場所にトランスを搭載できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、第1実施例のトランスの外観を示す正面図である。
【図2】図2は、図1に示したトランスの上面図である。
【図3】図3は、図1に示したトランスの縦断面図である。
【図4】図4は、1次コイル用拘束部材によって拘束された1次コイルを示す図で、図4(a)は、1次コイルの上面図で、図4(b)は、1次コイルの側面図である。
【図5】図5は、2次コイル用拘束部材によって拘束された2次コイルを示す図で、図5(a)は、2次コイルの上面図で、図5(b)は、2次コイルの側面図である。
【図6】図6は、下コア内に、1次コイル、2次コイルが収容された状態を示す図で、図6(a)は、下コアの上面図で、図6(b)は、下コアの側面図である。
【図7】図7は、トランスを構成するコアのうち下コアを上面からみた際の下コアの底面を示す図である。
【図8】図8は、第2実施例の構成を示す図である。
【図9】図9は、第3実施例の構成を示す図である。
【図10】図10は、第4実施例の構成を示す図である。
【図11】図11は、第5実施例の構成を示す図である。
【図12】図12は、第6実施例の構成を示す図である。
【図13】図13は、第7実施例の構成を示す図である。
【図14】図14は、各実施形態で用いられるコアの外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明に係るトランスの実施形態について説明する。
【0026】
なお、以下に述べる各実施形態のトランスは、例えば図示しないハイブリッド建設機械に搭載され、トランス結合型昇圧器の構成部品として用いられる。なお、各実施形態のトランスは、通常の油圧ショベルの上部旋回体や作業機あるいは下部走行体を電動機の動力によって駆動させるようなハイブリッド油圧ショベルやエンジンを搭載せずに、電動機の動力で上部旋回体や作業機あるいは下部走行体を駆動するような電動式油圧ショベルに適用できる。また、通常のホイールローダの走行車輪を電動機によって駆動させるようなハイブリッドホイールローダにも適用できる。すなわち、トランスを必要とするハイブリッド建設機械や電動式建設機械に本発明は適用可能である。
【0027】
(第1実施例)
図1は、第1実施例のトランス10の外観を示す正面図である。図2は、図1に示したトランスの上面図である。図3は、図1に示したトランスの縦断面図である。
【0028】
まず、図1、図2、図3を併せ参照して説明する。以下では、図1における図中上方向を「上」と呼び、図中下方向を「下」と呼ぶこととする。なお、トランス内での高さ方向とは、図中上方向および図中下方向を意味する。
【0029】
図1に示すように、トランス10は、主に、コア20と、コア20内に収容された1次コイル11と、同じくコア20内に収容された2次コイル12と、これら1次コイル11および2次コイル12が収容されたコア20を収納するケース8と、ケース8内に充填された充填剤9とからなる。充填剤9は、空気よりも熱伝導率の高い材料であってコア20内の後述する各部空隙に充填されることで当該空隙を埋めトランス10で発生した熱を外部に放熱させることができる材料、例えばシリコン樹脂が用いられる。また、ケース8は、アルミニウムなどの材料が用いられ、トランス10で発生した熱を外部に放熱する機能を有する。よって、アルミニウムに限らず、熱伝導率が高い材料で、外部に図示しない冷却フィンなどを設けて放熱性を高める構造であっても良い。なお、ケース8とトランス10とは、電気的な絶縁を確保するために、ケース8とトランス10との間隙には充填剤9が充填される。
【0030】
コア20は、下コア20Aと、上コア20Bとからなる。トランス10は、下コア20Aがトランス内の高さ方向(鉛直方向)における下側となるように設置される。
【0031】
図3あるいは図14に示すように、コア20は、断面E字形状の下コア20Aと同じく断面E字形状の上コア20Bとが、「E」の字の開放側同士が突き合わせられるように、両者が電磁気的に接続されてなるものであり、「E型コア」と称されるものである。下コア20Aは、中脚部21と、外脚部22と、中脚部21と外脚部22とを連結し内側底面23aを有する連結部23とが設けられてなるものである。上コア20Bについても中脚部21と、外脚部22と、連結部23とからなる。
【0032】
図3に図2を併せ、さらに図14とを参照して示すように、中脚部21は、トランス10の上下方向が長手方向となる円柱状にて形成されている。図2あるいは図14に示すように、外脚部22は、中脚部21を中心にして左右それぞれの対称位置に、横断面が、中脚部21を中心とする円弧状に形成されてなるものである。連結部23は、中脚部21を中心にして左右に延設されてなるものであり、中脚部21側から外脚部22側に向かうにつれ徐々に扇形のように横幅が拡がり、その横幅が外脚部22で丁度、外脚部22の円弧幅と一致するように、これら中脚部21および外脚部22と一体に形成されてなるものである。
【0033】
図3に示すように、下コア20Aの連結部23は、コア20の内側を臨む平面状の内側底面23aを有している。下コア20Aの中脚部21と上コア20Bの中脚部21の端面同士および下コア20Aの外脚部22と上コア20Bの外脚部22の端面同士がそれぞれ、物理的に接合されることで、閉磁路が形成される。
【0034】
なお、コア20の材質としては、強磁性体の材料、例えば鉄を主成分とする材料が用いられる。具体的な材質として、フェライトが用いられる。
【0035】
図4は、1次コイル用拘束部材1によって拘束された1次コイル11を示す図で、図4(a)は、1次コイル11の上面図で、図4(b)は、1次コイル11の側面図である。また、図5は、2次コイル用拘束部材2によって拘束された2次コイル12を示す図で、図5(a)は、2次コイル12の上面図で、図5(b)は、2次コイル12の側面図である。また、図6は、下コア20A内に、1次コイル11、2次コイル12が収容された状態を示す図で、図6(a)は、下コア20Aの上面図で、図6(b)は、下コア20Aの側面図である。図6(b)では、図6(a)のA−A断面を一部破断図にて示している。
【0036】
図4に示すように、1次コイル11は、導線4がコイル状に巻かれてなるものである。同じく2次コイル12は、図5に示すように導線4がコイル状に巻いてなるものであり、1次コイル11の径よりも大きい径となるように導線4が巻かれている。なお、導線4としては、例えば銅を主成分とする線状の導電性のよい導体が用いられる。具体的には、導線4は、リッツ線とよばれるエナメル線を複数本撚りあわせたものが用いられる。なお、本実施例では、1次コイル11、2次コイル12ともに、導線4はトランス10の上下方向の中心軸に対して径方向に二層に巻かれている。なお、1次コイル11の巻線数(ターン)および2次コイル12の巻線数(ターン数)は、トランス10の変圧比(昇圧比)などトランス10の仕様に応じて適宜定められる。
【0037】
図6に示すように、1次コイル11は、コア20内に収容された状態では、下コア20Aの連結部23の内側底面23aの上方にあって中脚部21の周囲に巻回されたものとなる。
【0038】
また、2次コイル12は、同じくコア20内に収容された状態では、下コア20Aの連結部23の内側底面23aの上方にあって1次コイル11の外周面から所定の間隙(両コイル間隙)d1分だけ離間されて1次コイル11と同心状に巻回されたものとなる。すなわち、2次コイル12は、その内周面から1次コイル11の外周面までの距離が丁度、両コイル間隙d1となるようなコイル径に設定されている。なお、1次コイル11および2次コイルのそれぞれの内周面の内径および形状の形成は、図示しない円柱状の治工具(1次コイル用と2次コイル用の2種)を用い、導線4を治工具の円筒面に巻きつけることで行われる。この円柱状の治工具の円柱部の半径は、1次コイル11の内周面の半径あるいは2次コイル12の内周面の半径とほぼ同等の寸法で作られている。
【0039】
図4に戻り、1次コイル11は、1次コイル用拘束部材1によって導線4の巻線状態が拘束され形状を保っている。1次コイル用拘束部材1は、コア20との間の電気的な絶縁を確保するために絶縁性を有する絶縁材料で構成されている。1次コイル用拘束部材1としては、例えばフッ素ポリマで構成された結束バンドが用いられる。
【0040】
図4と図6を併せ参照してわかるように、1次コイル用拘束部材1は、1次コイル11の内周面からコア20の中脚部21側に所定の厚みd3を有する部材であって、1次コイル11の周方向に点在して配置されている。1次コイル11は、その内周面からコア20の中脚部21までの距離が丁度、1次コイル用拘束部材1の厚みd3となるようなコイル径に設定されている。
【0041】
図5に示すように、同じく2次コイル12は、2次コイル用拘束部材2によって導線4の巻線状態が拘束され形状を保っている。2次コイル用拘束部材2についても2次コイル12の周方向に点在して配置されている。2次コイル用拘束部材2は、1次コイル用拘束部材1と同様の絶縁材料、例えばフッ素ポリマで構成されており、例えば結束バンドが用いられる。
【0042】
1次コイル11および2次コイル12をコア20内に収容するにあたっては、前述のように、予め図示しない治工具により導線4を巻いておく。そして、1次コイル11については、1次コイル用拘束部材1によって導線4の巻き状態の形状を保持できるように拘束しておく。同様に、2次コイル12についても、前述のように、予め図示しない治工具により導線4を巻いておき、2次コイル用拘束部材2によって導線4の巻き状態の形状を保持できるように拘束しておく。
【0043】
図4に示すように1次コイル11の導線4の巻き始め箇所11sには、延長導線を介して外部端子11aが電気的に接続されているとともに、導線4の巻き終わり箇所11eには、延長導線を介して外部端子11bが接続されている。なお、延長導線は、外部との電気的な接触を回避し損傷から保護するための被覆保護材11c、たとえシリコンチューブによって被覆されている。なお被覆保護材11cの1次コイル11側端部は、1次コイル用拘束部材1によって導線4とともに拘束しておくことが望ましい。
【0044】
図5に示すように、同じく、2次コイル12の導線4の巻き始め箇所12sには、延長導線を介して外部端子12aが電気的に接続されているとともに、導線4の巻き終わり箇所12eには、延長導線を介して外部端子12bが接続されており、延長導線は、被覆保護材11cと同様の被覆保護材12c、たとえシリコンチューブによって被覆されている。なお被覆保護材12cの2次コイル12側端部は、2次コイル用拘束部材2によって導線4とともに拘束しておくことが望ましい。
【0045】
図5に図6を併せ参照してわかるように、2次コイル12の外周面のうち外脚部22の内周面に対向する部位には、2次コイル12とコア20との間の電気的な絶縁を確保するために絶縁性を有する絶縁材料で構成された絶縁テープ19によって覆われている。絶縁テープ19としては、例えばメタ系アラミド繊維を基材に粘着剤をつけたテープが用いられる。
【0046】
図6に示すように、1次コイル用拘束部材1によって拘束された1次コイル11は、その内側にコア20の中脚部21が挿通されて、中脚部21の外径寸法と1次コイル11の内径寸法(この場合は、1次コイル用拘束部材1の厚みd3によって決められる内径寸法)とが、ほぼ同寸法となることで1次コイルは位置決めされて、コア20内に収容される。また2次コイル用拘束部材2によって拘束された2次コイル12は、その内周面が、1次コイル11の外周面から両コイル間隙d1だけ離間され、その外周面が絶縁テープ19を介して外脚部22の内周面に当接される位置に位置決めされて、コア20内に収容される。すなわち、絶縁テープ19を覆うことで決められた2次コイル12の外径寸法と外脚部22の内周面の内径寸法とが、ほぼ同寸法となることで2次コイル12は位置決めされる。なお、図1および図2に示すように外部端子11a、11b、12a、12bは、外部の電気機器と電気的に接続することが可能となるように、トランス10(コア20)の外部に配置される。
【0047】
図3に戻り、1次コイル11および2次コイル12は、コア20内の所定箇所に位置決めされ保持される。
【0048】
すなわち、1次コイル11および2次コイル12は、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから1次コイル11の下面までの高さと同内側底面23aから2次コイル12の下面までの高さとが異なる高さ、つまり両コイル間段差d2を生じる高さとなる位置に位置決めされ、かつ内側底面23aから1次コイル11の下面までの間および内側底面23aから2次コイル12の下面までの間が空隙を形成するように、コア20内で保持されている。
【0049】
以下、コア20内で1次コイル11および2次コイル12を保持する手段について説明する。ここで述べる保持する手段とは、部品の選択や接着面の選択あるいはそれら部品と接着の組み合わせである。
【0050】
(1次コイル用スペーサ)
図7は、トランス10を構成するコア20のうち下コア20Aを上面からみた際の下コア20Aの底面を示す図である。
【0051】
図7に図3を併せ参照してわかるように、下コア20Aの連結部23の内側底面23aには、1次コイル用スペーサ5、5が中脚部21の外周方向、つまり1次コイル11の周方向に点在して配置されている。本実施例では、1次コイル用スペーサ5、5が左右の連結部23、23に配置された場合を例示している。
【0052】
1次コイル用スペーサ5は、1次コイル11とコア20との間の電気的絶縁性を確保するために絶縁性を有する絶縁材料で構成されている。1次コイル用スペーサ5としては、例えばガラスエポキシ樹脂で構成され、所定の高さ(トランス上下方向)d5を有する立方体形状の部材が用いられる。なお、1次コイル用スペーサ5は、立方体形状に限らず、所定の高さd5を有するものであれば、円柱形(円の直径がd5に相当するもの)や直方体形状であってもよい。
【0053】
1次コイル用スペーサ5、5は、下コア20Aの中脚部21を中心とする左右内側底面23a、23a上の左右対称位置であって、1次コイル11の下面を支持することができる位置にそれぞれ、接着剤にて固着される。望ましくは、1次コイル用スペーサ5の中心軸5aが中脚部21を中心とする半径方向に揃う位置に1次コイル用スペーサ5を固着する。
【0054】
1次コイル用スペーサ5は、中脚部21および外脚部22から離間された位置に固着される。これは熱応力による割れ等の損傷を回避するためである。また、1次コイル用スペーサ5は、充填剤9の充填容積を出来る限り大きくしてトランス自身の放熱性を高めるために、連結部23の内側底面23aの面積に比して極めて小さい占有面積の部材であることが望ましい。また、1次コイル用スペーサ5は、充填剤9の充填容積を出来る限り大きくしてトランス自身の放熱性を高めるために、1次コイル11と1次コイル用スペーサ5との接触面積は極めて小さい部材であることが望ましい。充填剤9は、1次コイル用スペーサ5の熱伝導率よりも高い材料を用いる。1次コイル用スペーサ5の占有面積(投影面積)あるいは1次コイル11との接触面積が広いと、1次コイル11で発生した熱が1次コイル用スペーサ5を伝熱して外部に放熱させるための伝熱面積が広いことになり冷却効果がよくない。したがって、充填剤9に伝熱をできるだけ負担させトランス10自身の冷却効果を高めるため、1次コイル用スペーサ5は小さな占有面積であるほうがよい。具体的には、1次コイル用スペーサ5は、前述のように円柱形とすれば、連結部23の内側底面23aの面積に比して極めて小さい占有面積(内側底面23aとは線接触)となり、1次コイル11と1次コイル用スペーサ5との接触面積は極めて小さい(線接触)ものとなり、有用である。なお、接着剤としては、1次コイル用スペーサ5と同様の絶縁性を有する材料で構成されたものが望ましい。例えば接着剤としては、2液混合型のエポキシ樹脂を主成分としたものを使用することができる。なお、本実施形態で、以下において「接着剤」というときは、特に断りのない限り、かかる絶縁性を有する接着剤を意味するものとするが、1次コイル11とコア20との電気的絶縁、あるいは、2次コイル12とコア20との電気的絶縁は、1次コイル用スペーサ5や2次コイル用スペーサ6によって確保できるため、本実施形態においては、接着剤に対して絶縁性を有する特性は強く求められない。
【0055】
(2次コイル用スペーサ)
また、図7に図3を併せ参照してわかるように、下コア20Aの連結部23の内側底面23aには、2次コイル用スペーサ6、6、6、6が中脚部21の外周方向、つまり2次コイル12の周方向に点在して配置されている。本実施例では、2次コイル用スペーサ6、6、6、6が左右の連結部23、23に配置された場合を例示している。
【0056】
2次コイル用スペーサ6は、1次コイル用スペーサと同様の絶縁材料、例えばガラスエポキシ樹脂で構成され、所定の高さ(トランス上下方向)d6を有する直方体形状の部材が用いられる。ここで、本実施例では、2次コイル用スペーサ6の高さd6は、1次コイル用スペーサ5の高さd5よりも低い値に設定している。よって、これら高さの差d5−d6が両コイル間段差d2となる。なお、トランス10の用途に応じて、2次コイル用スペーサ6の高さd6を、1次コイル用スペーサ5の高さd5よりも高い値に設定する実施も可能である。
【0057】
2次コイル用スペーサ6、6、6、6は、下コア20Aの中脚部21を中心とする左右内側底面23a、23a上の左右対称位置であって、2次コイル12の下面を支持することができる位置にそれぞれ、接着剤にて固着される。望ましくは、2次コイル用スペーサ6の中心軸(長手方向中心軸)6aが中脚部21を中心とする半径方向に揃う位置に2次コイル用スペーサ6を固着する。
【0058】
2次コイル用スペーサ6は、中脚部21および外脚部22から離間された位置に固着される。これは熱応力による割れ等の損傷を回避するためである。また、2次コイル用スペーサ6は、充填剤9の充填容積を出来る限り大きくしてトランス自身の放熱性を高めるために、連結部23の内側底面23aの面積に比して極めて小さい占有面積の部材であることが望ましい。また、2次コイル用スペーサ6は、直方体形状に限らず、所定の高さd6を有するものであれば、円柱形(円の直径がd6に相当するもの)や立方体形状であってもよい。また、2次コイル用スペーサ6は、充填剤9の充填容積を出来る限り大きくしてトランス自身の放熱性を高めるために、2次コイル12と2次コイル用スペーサ6との接触面積は極めて小さい部材であることが望ましい。充填剤9は、2次コイル用スペーサ6の熱伝導率よりも高い材料を用いる。2次コイル用スペーサ6の占有面積(投影面積)あるいは2次コイル12との接触面積が広いと、2次コイル12で発生した熱が2次コイル用スペーサ6を伝熱して外部に放熱させるための伝熱面積が広いと冷却効果がよくない。したがって、充填剤9に伝熱をできるだけ負担させトランス10自身の冷却効果を高めるため、2次コイル用スペーサ6は小さな占有面積であるほうがよい。具体的には、2次コイル用スペーサ6は、前述のように円柱形とすれば、連結部23の内側底面23aの面積に比して極めて小さい占有面積(内側底面23aとは線接触)となり、2次コイル12と2次コイル用スペーサ6との接触面積は極めて小さい(線接触)ものとなり、有用である。
【0059】
図3に示すように、1次コイル用スペーサ5および2次コイル用スペーサ6は、コア20の連結部材23の内側底面23aから1次コイル11の下面までの間および同内側底面23aから2次コイル12の下面までの間に充填剤9が充填されるべき空隙d2を形成する機能を有する。さらに、1次コイル用スペーサ5および2次コイル用スペーサ6は、所定の高さd5、d6に応じてトランス10の漏れインダクタンスLを任意の最適値に調整する機能を有する。また、1次コイル用スペーサ5および2次コイル用スペーサ6は、1次コイル11および2次コイル12を下面で支持しコア20内でこれら1次コイル11および2次コイル12のトランス上下方向についての相対位置を保持する機能を有する。
【0060】
以上のような1次コイル用スペーサ5および2次コイル用スペーサ6の上に1次コイル11および2次コイル12をそれぞれ配置することで、両コイル間段差d2をもって1次コイル11および2次コイル12をコア20内で保持することができる。
【0061】
(1次コイル用スペーサと1次コイルとの接着、2次コイル用スペーサと2次コイルとの接着)
望ましくは、1次コイル用スペーサ5と1次コイル11とを接着剤にて接着するとともに、2次コイル用スペーサ6と2次コイル12とを接着剤にて接着する。これによりコア20内で1次コイル11および2次コイル12を保持する効果を高めることができる。なお、前述のように、図6に示すように、1次コイル用拘束部材1によって拘束された1次コイル11は、その内側にコア20の中脚部21が挿通されて、中脚部21の外径寸法と1次コイル11の内径寸法(この場合は、1次コイル用拘束部材1の厚みd3によって決められる内径寸法)とが、ほぼ同寸法となることで1次コイルは位置決めされて、コア20内に収容される。また2次コイル用拘束部材2によって拘束された2次コイル12は、その内周面が、1次コイル11の外周面から両コイル間隙d1だけ離間され、その外周面が絶縁テープ19を介して外脚部22の内周面に当接される位置に位置決めされて、コア20内に収容される。すなわち、絶縁テープ19を覆うことで決められた2次コイル12の外径寸法と外脚部22の内周面の内径寸法とが、ほぼ同寸法となることで2次コイル12は位置決めされる。したがって、1次コイル11と2次コイル12のコア20との位置関係は、寸法上の拘束を受け、さらには充填剤9がトランス10内の空隙を充填するように占有するため1次コイル11と2次コイル12は充填剤9による拘束を受ける。よって、必ずしも1次コイル用スペーサ5と1次コイル11とを接着剤にて接着する必要はなく、2次コイル用スペーサ6と2次コイル12とを接着剤にて接着する必要もない。しかし、他の保持手段で保持機能が十分に担保されれば、いずれか一方または両方ともに接着剤で接着しない実施も可能である。
【0062】
(中間スペーサ)
また、図3に図6(a)を併せ参照してわかるように、1次コイル11と2次コイル12との間の両コイル間隙d1には、中間スペーサ7が介在されている。
【0063】
中間スペーサ7は、厚さd1の厚みを有する角柱状の部材であり、長手方向が図3の図中上下方向となり、厚み方向が中脚部21を中心とする半径方向になるように1次コイル11の外周面および2次コイル12の内周面に当接されている。中間スペーサ7、7…は、1次コイル11および2次コイル12の周方向に点在して配置されている。これにより両コイル11、12間に距離d1の空隙を形成している。本実施例では、図6(a)に示すように、中間スペーサ7、7…が、例えば4個配置された場合を例示している。
【0064】
中間スペーサ7は、1次コイル用スペーサ5および2次コイル用スペーサ6と同様の絶縁材料、例えばガラスエポキシ樹脂で構成されている。
【0065】
また、中間スペーサ7は、充填剤9の充填容積を出来る限り大きくしてトランス10自身の放熱性を高めるために、図6(a)に示される、1次コイル11と2次コイル12との間の円筒状の空隙に比して極めて小さい占有面積の部材であることが望ましい。言い換えれば、中間スペーサ7は、1次コイル11あるいは2次コイル12との接触面積が極めて小さい部材であることが望ましい。これは、前述のように充填剤9が中間スペーサ7よりも熱伝導率が高く、1次コイル11あるいは2次コイル12で発生した熱を中間スペーサ7を伝熱して外部に放熱させるための伝熱面積が広いと冷却効果がよくない。したがって、中間スペーサ7も、例えば円柱形とすれば、中間スペーサ7と1次コイル11と2次コイル12との接触面積は極力小さくなり、充填剤9に伝熱をできるだけ負担させトランス10自身の冷却効果を高めることができる。よって、中間スペーサ7も小さな占有面積であるほうがよい。
【0066】
中間スペーサ7は、1次コイル11と2次コイル12との間に充填剤9が充填されるべき空隙d1を形成する機能を有する。さらに、中間スペーサ7は、設定厚さd1に応じてトランス10の漏れインダクタンスLを任意の最適値に調整する機能を有する。また、中間スペーサ7は、1次コイル11の外周面および2次コイル12の内周面を支持しコア20内でこれら1次コイル11および2次コイル12のトランス10の中心軸に対する半径方向の相対位置を保持する機能を有する。
【0067】
以上のような中間スペーサ7を1次コイル11と2次コイル12との間に配置することで、両コイル間隙d1をもって1次コイル11および2次コイル12をコア20内で保持することができる。なお、1次コイル11と2次コイル12の位置決めを行うために、中間スペーサ7を用いずに、コア20に対する1次コイル11あるいは2次コイル12の位置に応じた寸法で機械加工されて作られた位置決め治具を用いて充填剤9を充填すれば、中間スペーサ7を用いずとも両コイル間隙d1をもって1次コイル11および2次コイル12をコア20内で保持することができる。また、以下のように1次コイル11と2次コイル12を位置決めすれば、中間スペーサ7を用いなくてもよい。前述のように、図6に示すように、1次コイル用拘束部材1によって拘束された1次コイル11は、その内側にコア20の中脚部21が挿通されて、中脚部21の外径寸法と1次コイル11の内径寸法(この場合は、1次コイル用拘束部材1の厚みd3によって決められる内径寸法)とが、ほぼ同寸法となることで1次コイルは位置決めされて、コア20内に収容される。また2次コイル用拘束部材2によって拘束された2次コイル12は、その内周面が、1次コイル11の外周面から両コイル間隙d1だけ離間され、その外周面が絶縁テープ19を介して外脚部22の内周面に当接される位置に位置決めされて、コア20内に収容される。すなわち、絶縁テープ19を覆うことで決められた2次コイル12の外径寸法と外脚部22の内周面の内径寸法とが、ほぼ同寸法となることで2次コイル12は位置決めされる。
【0068】
(中間スペーサと1次コイルとの接着、中間スペーサと2次コイルとの接着)
望ましくは、図3に示すように、中間スペーサ7と1次コイル11の外周面とを接着剤にて接着するとともに、中間スペーサ7と2次コイル12の内周面とを接着剤にて接着する。これによりコア20内で1次コイル11および2次コイル12の相対位置を保持する効果を高めることができる。しかし、他の保持手段で保持機能が十分に担保されれば、いずれか一方または両方ともに接着剤で接着しない実施も可能である。
【0069】
(1次コイル用拘束部材と中脚部との接着)
望ましくは、図3に示すように、1次コイル用拘束部材1とコア20の中脚部21とを接着剤にて接着する。これによりコア20内で1次コイル11の位置を保持する効果を高めることができる。
【0070】
1次コイル用拘束部材1は、1次コイル11と中脚部21との間に充填剤9が充填されるべき空隙d3を形成する機能を有する。さらに、1次コイル用拘束部材1は、1次コイル11の内周面及び外周面の形状を保持しコア20内で1次コイル11の位置を保持する機能を有する。しかし、他の保持手段で保持機能が十分に担保されれば、接着剤で接着しない実施も可能である。
【0071】
(2次コイルと外脚部との接着)
絶縁テープ19で覆われた2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とを接着剤にて接着し2次コイル12を外脚部22に固着する。これによりコア20内で2次コイル12の位置を保持する効果を高めることができる。ここで、絶縁テープ19の代わりに絶縁性のない両面テープなどの一般的なテープ(接着テープ)を用いてもよい。この場合、2次コイル12の外周面にテープを貼着した上で、絶縁性のある接着剤によって外脚部22の内周面に固着させることで、2次コイル12とコア20との電気的な絶縁は確保できる。なお、絶縁テープ19を省略し、2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とのクリアランスを所望の絶縁性を有した接着剤のみで埋めることで2次コイル12を外脚部22に固着してもよい。
【0072】
しかし、他の保持手段で保持機能が十分に担保されれば、接着剤で接着しない実施も可能である。
【0073】
第1実施例によれば、つぎのような作用効果が得られる。
【0074】
第1実施例では、1次コイル用拘束部材1によって拘束された1次コイル11と、2次コイル用拘束部材2によって拘束された2次コイル12とがコア20内に収容されて、コア20内で保持される構造となっている。このため、従来技術1では、必要とされていたボビンが不要となる。したがって、ボビンによって占められていた容積分だけコア20の場席を小さくすることができる。ボビンを用いないことから部品点数の削減による製造コストの抑制を図ることができる。
【0075】
また、第1実施例によれば、下コア20Aの連結部材23の内側底面23aから1次コイル11の下面までの間および同内側底面23aから2次コイル12の下面までの間が空隙となり、この空隙に充填剤9が充填される。ここで、従来技術1と比較すると、従来技術1にあっては、コア内にボビンが存在し、ボビンの貫通孔に充填剤が供給されるとはいえ、それ以外の部分には充填剤を供給できず、充填剤が供給できない部分(ボビンの構造をなしている部分)の熱伝導性は悪化することになっていた。しかし、本第1実施例では、従来技術1ではボビンが存在していた部分、つまり1次コイル11とコア連結部23の内側底面23aとの間および2次コイル12とコア連結部23の内側底面23aとの間が空隙となりその空隙にボビンよりも熱伝導率が高い充填剤9を供給できるようになることから、熱伝導性が従来技術1に比べて更に高まり、トランス10自身の冷却効果を更に高めることができる。また、従来技術1では、1次コイル11や2次コイル12、あるいはコア20とボビンが面接触していたのであるが、流動性をもった充填剤9を用いることで、1次コイル11や2次コイル12、あるいはコア20の発熱面や伝熱面に満遍なく充填剤9がいきわたり、熱伝導を行うためトランス10自身の冷却効果を高めることができる。
【0076】
また、本第1実施例によれば、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから1次コイル11の下面までの高さd5と同内側底面23aから2次コイル12の下面までの高さd6とが異なる高さとなっており、1次コイル11および2次コイル12がトランス10の上下方向に対する位置決めがなされる。両者の高さの差である両コイル間段差d2(=d5−d6)に応じて、上記(2)式(L∝d2)にしたがいトランス10の漏れインダクタンスLが変化する。よって本第1実施例では、前述の(3)式(L∝d1、d2)のごとく、両コイル間隙d1のみならず両コイル間段差d2によってもトランス10の漏れインダクタンスLを調整することができるようになる。したがって、従来技術2に示される(1)式(L∝d1)と比較して、漏れインダクタンスLの調整パラメータが増えた分だけ、漏れインダクタンスLの調整の自由度が広がり、従来技術1と比較して両コイル間隙d1を広い範囲で調整せずとも両コイル間段差d2を調整することで、トランス10の漏れインダクタンスLを調整することが可能となる。よって、両コイル間隙d1を所望の寸法までにとどめておいた状態で漏れインダクタンスLを任意の適切な値に調整することが可能となる。このようにして両コイル間隙d1の寸法を大きくせず、さらに上述したようにボビンが不要になったことも相まって、トランス10(コア20)の横幅方向の場席、つまりはトランス全体の場席を、従来技術1のトランスに比して極めて小さくすることができる。
【0077】
以上のように本第1実施例によれば、トランス10自身の放熱性が高められ冷却効果が高いトランス10を提供することができる。またトランス10の漏れインダクタンスLを任意の最適値に調整自在でありながらも、場席をとらず設置スペースの限られた場所に搭載できるトランス10を提供することができる。なお、トランス10を設計、製造するにあたっては、実験、シミュレーションを行い、LCRメータで漏れインダクタンス値Lを計測して、その計測値が最適な所望値となるように両コイル間隙d1および両コイル間段差d2を調整して、最適な値d1、d2を定めればよい。したがって、本第1実施例で示したように、場席をとらないようなトランス10を設計、製造する際は、前述のように両コイル間隙d1を所望の寸法までにとどめておき、制限範囲内の場席を確保するようにしておき、両コイル間段差d2を調整して所望の漏れインダクタンス値Lを確保できたことを実験やシミュレーションで確認し、d1、d2を決定する。
【0078】
(第2実施例)
第1実施例では、コア20内で1次コイル11および2次コイル12を保持する保持手段として、「1次コイル用スペーサ」、「2次コイル用スペーサ」、「1次コイル用スペーサと1次コイルとの接着」、「2次コイル用スペーサと2次コイルとの接着」、「中間スペーサ」、「中間スペーサと1次コイルとの接着、中間スペーサと2次コイルとの接着」、「1次コイル用拘束部材と中脚部との接着」、「2次コイルと外脚部との接着」の各手段を用いているが、これらの各手段を適宜省略する実施も可能である。
【0079】
以下では、第1実施例の図3と同様のトランス10の縦断面図を掲げ、同じ符号は同一構成要素であるとして適宜説明を省略して説明する。
【0080】
図8は、第2実施例の構成を示す図である。
【0081】
第2実施例では、1次コイル用スペーサ5、2次コイル用スペーサ6、中間スペーサ7を用いていない。よって、第1実施例における保持手段のうち、「1次コイル用スペーサ」、「2次コイル用スペーサ」、「1次コイル用スペーサと1次コイルとの接着」、「2次コイル用スペーサと2次コイルとの接着」、「中間スペーサ」、「中間スペーサと1次コイルとの接着、中間スペーサと2次コイルとの接着」の各手段が省略されており、「1次コイル用拘束部材と中脚部との接着」、「2次コイルと外脚部との接着」の各保持手段により、コア20内で1次コイル11および2次コイル12の相対位置が保持される。
【0082】
同図8に示すように、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから1次コイル11の下面までの高さがd5となる高さに位置決めした状態で、1次コイル用拘束部材1とコア20の中脚部21とを接着剤にて接着する。
【0083】
また、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから2次コイル11の下面までの高さがd6となる高さ、つまり所望する両コイル間段差d2(=d5−d6)が得られる高さに位置決めするとともに、1次コイル11と2次コイル12との間が所望する両コイル間隙d1となる距離に位置決めした状態で、絶縁テープ19で覆われた2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とを接着剤にて接着し2次コイル12を外脚部22に固着する。ここで、絶縁テープ19の代わりに絶縁性のない両面テープなどの一般的なテープ(接着テープ)を用いてもよい。この場合、2次コイル12の外周面にテープを貼着した上で、絶縁性のある接着剤によって外脚部22の内周面に固着させることで、2次コイル12とコア20との電気的な絶縁は確保できる。なお、絶縁テープ19を省略し、2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とのクリアランスを接着剤のみで埋めることで2次コイル12を外脚部22に固着してもよい。なお、1次コイル11と2次コイル12のトランス10の上下方向に対する位置決めを行う際は、図示しない治具を用いる。1次コイル11と2次コイル12がコア20と接着剤にて固着され、接着剤が接着力を確保できる状態に硬化した後に治具を取り外すことで本第2実施形態のトランス10を組み立てることができる。
【0084】
なお、2次コイル12を先に接着して後から1次コイル11を接着する実施も当然可能である。
【0085】
第2実施例によれば、第1実施例と同様の効果が得られる。さらに第2実施例によれば、1次コイル用スペーサ5、2次コイル用スペーサ6、中間スペーサ7を省略することができる。これらの部品(1次コイル用スペーサ5、2次コイル用スペーサ6、中間スペーサ7)を用いないことから、部品点数が削減され、製造コストを低く抑えることができる。
【0086】
(第3実施例)
図9は、第3実施例の構成を示す図である。
【0087】
第3実施例では、2次コイル用スペーサ6、中間スペーサ7を用いず、1次コイル用スペーサ5が設けられている。よって、第1実施例における保持手段のうち、「2次コイル用スペーサ」、「2次コイル用スペーサと2次コイルとの接着」、「中間スペーサ」、「中間スペーサと1次コイルとの接着、中間スペーサと2次コイルとの接着」の各手段が省略されており、「1次コイル用スペーサ」、「1次コイル用スペーサと1次コイルとの接着」、「1次コイル用拘束部材と中脚部との接着」、「2次コイルと外脚部との接着」の各保持手段により、コア20内で1次コイル11および2次コイル12の相対位置が保持される。
【0088】
同図9に示すように、下コア20Aの連結部23の内側底面23aに、高さd5の1次コイル用スペーサ5を接着し、1次コイル用スペーサ5の上に1次コイル11を配置し、1次コイル用拘束部材1とコア20の中脚部21とを接着剤にて接着する。なお、1次コイル用拘束部材1とコア20の中脚部21とは接着剤にて接着しなくてもよい。また、1次コイル用スペーサ5と1次コイル11は接着剤にて接着してもしなくてもよい。
【0089】
また、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから2次コイル12の下面までの高さがd6となる高さ、つまり所望する両コイル間段差d2(=d5−d6)が得られる高さに位置決めするとともに、1次コイル11と2次コイル12との間が所望する両コイル間隙d1となる距離に位置決めした状態で、絶縁テープ19で覆われた2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とを接着剤にて接着し2次コイル12を外脚部22に固着する。ここで、絶縁テープ19の代わりに絶縁性のない両面テープなどの一般的なテープ(接着テープ)を用いてもよい。この場合、2次コイル12の外周面にテープを貼着した上で、絶縁性のある接着剤によって外脚部22の内周面に固着させることで、2次コイル12とコア20との電気的な絶縁は確保できる。なお、絶縁テープ19を省略し、2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とのクリアランスを接着剤のみで埋めることで2次コイル12を外脚部22に固着してもよい。
【0090】
なお、2次コイル12を先にコア20内に配置し後から1次コイル11をコア20内に配置してもよい。また、1次コイル11と2次コイル12のトランス10の上下方向に対する位置決めを行う際、第2実施例と同様に図示しない治具を用いてトランス10を組み立てることができる。
【0091】
第3実施例によれば、第1実施例と同様の効果が得られる。さらに第3実施例によれば、2次コイル用スペーサ6、中間スペーサ7を省略することができる。これらの部品(2次コイル用スペーサ6、中間スペーサ7)を用いないことから、部品点数が削減され、製造コストを低く抑えることができる。
【0092】
(第4実施例)
図10は、第4実施例の構成を示す図である。
【0093】
第4実施例では、1次コイル用スペーサ5、中間スペーサ7が省略され、2次コイル用スペーサ6が設けられている。よって、第1実施例における保持手段のうち、「1次コイル用スペーサ」、「1次コイル用スペーサと1次コイルとの接着」、「中間スペーサ」、「中間スペーサと1次コイルとの接着、中間スペーサと2次コイルとの接着」の各手段が省略されており、「2次コイル用スペーサ」、「2次コイル用スペーサと2次コイルとの接着」、「1次コイル用拘束部材と中脚部との接着」、「2次コイルと外脚部との接着」の各保持手段により、コア20内で1次コイル11および2次コイル12の相対位置が保持される。
【0094】
同図10に示すように、下コア20Aの連結部23の内側底面23aに、高さd6の2次コイル用スペーサ6を接着し、2次コイル用スペーサ6の上に2次コイル12を配置する。2次コイル用スペーサ6と2次コイル12は接着剤にて接着してもしなくてもよい。
【0095】
さらに絶縁テープ19で覆われた2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とを接着剤にて接着し2次コイル12を外脚部22に固着する。ここで、絶縁テープ19の代わりに絶縁性のない両面テープなどの一般的なテープ(接着テープ)を用いてもよい。この場合、2次コイル12の外周面にテープを貼着した上で、絶縁性のある接着剤によって外脚部22の内周面に固着させることで、2次コイル12とコア20との電気的な絶縁は確保できる。なお、絶縁テープ19を省略し、2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とのクリアランスを接着剤のみで埋めることで2次コイル12を外脚部22に固着してもよい。
【0096】
なお、2次コイル12と外脚部22とを接着剤にて接着しない実施も可能である。
【0097】
また、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから1次コイル11の下面までの高さがd5となる高さ、つまり所望する両コイル間段差d2(=d5−d6)が得られる高さに位置決めするとともに、1次コイル11と2次コイル12との間が所望する両コイル間隙d1となる距離に位置決めした状態で、1次コイル用拘束部材1とコア20の中脚部21とを接着剤にて接着する。なお、1次コイル11を先にコア20内に配置し後から2次コイル12をコア20内に配置してもよい。また、1次コイル11と2次コイル12のトランス10の上下方向に対する位置決めを行う際、第2実施例と同様に図示しない治具を用いてトランス10を組み立てることができる。
【0098】
第4実施例によれば、第1実施例と同様の効果が得られる。さらに第4実施例によれば、1次コイル用スペーサ5、中間スペーサ7を省略することができる。これらの部品(1次コイル用スペーサ5、中間スペーサ7)を用いないことから、部品点数が削減され、製造コストを低く抑えることができる。
【0099】
(第5実施例)
図11は、第5実施例の構成を示す図である。
【0100】
第5実施例では、1次コイル用スペーサ5、2次コイル用スペーサ6が省略され、中間スペーサ7が設けられている。よって、第1実施例における保持手段のうち、「1次コイル用スペーサ」、「2次コイル用スペーサ」、「1次コイル用スペーサと1次コイルとの接着」、「2次コイル用スペーサと2次コイルとの接着」の各手段が省略されており、「中間スペーサ」、「中間スペーサと1次コイルとの接着、中間スペーサと2次コイルとの接着」、「1次コイル用拘束部材と中脚部との接着」、「2次コイルと外脚部との接着」の各保持手段により、コア20内で1次コイル11および2次コイル12の相対位置が保持される。
【0101】
同図11に示すように、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから1次コイル11の下面までの高さがd5となる高さに位置決めした状態で、1次コイル用拘束部材1とコア20の中脚部21とを接着剤にて接着する。
【0102】
また中間スペーサ7を1次コイル11の外周面に接着剤にて接着する。
【0103】
また、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから2次コイル11の下面までの高さがd6となる高さ、つまり所望する両コイル間段差d2(=d5−d6)が得られる高さに位置決めするとともに、1次コイル11と2次コイル12との間が所望する両コイル間隙d1となる距離に位置決めした状態で、2次コイル12の内周面を中間スペーサ7に接着剤にて接着する。また、1次コイル11と2次コイル12のトランス10の上下方向に対する位置決めを行う際、第2実施例と同様に図示しない治具を用いてトランス10を組み立てることができる。
【0104】
また、絶縁テープ19で覆われた2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とを接着剤にて接着し2次コイル12を外脚部22に固着する。ここで、絶縁テープ19の代わりに絶縁性のない両面テープなどの一般的なテープ(接着テープ)を用いてもよい。この場合、2次コイル12の外周面にテープを貼着した上で、絶縁性のある接着剤によって外脚部22の内周面に固着させることで、2次コイル12とコア20との電気的な絶縁は確保できる。なお、絶縁テープ19を省略し、2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とのクリアランスを接着剤のみで埋めることで2次コイル12を外脚部22に固着してもよい。
【0105】
なお、中間スペーサ7の1次コイル11への接着、中間スペーサ7の2次コイル12への接着のうち、いずれか一方あるいは両方の接着を省略する実施も可能である。また1次コイル用拘束部材1が中脚部21に接着され中間スペーサ7が1次コイル11および2次コイル12の両方に接着されていれば、2次コイル12の外周面の外脚部22への接着を省略してもよい。また、2次コイル12の外周面が外脚部22に接着され、中間スペーサ7が1次コイル11および2次コイル12の両方に接着されていれば、1次コイル用拘束部材1の中脚部22への接着を省略することができる。つまり、1次コイル11とスペーサ7と2次コイル12の三部品相互の相対位置が定められ、その三部品が一体化した物とコア20との相対位置が、両コイル間段差d2(=d5−d6)の寸法にしたがってトランス10を組み立てることができれば、いずれかの接着を省略できるということである。
【0106】
また、2次コイル12を先にコア20内に配置してから中間スペーサ7を配置し、その後で1次コイル11をコア20内に配置してもよく、先に1次コイル11および2次コイル12をコア20内に配置し後から中間スペーサ7を配置してもよい。
【0107】
第5実施例によれば、第1実施例と同様の効果が得られる。さらに第5実施例によれば、1次コイル用スペーサ5、2次コイル用スペーサ6を省略することができる。これらの部品(1次コイル用スペーサ5、2次コイル用スペーサ6)を用いないことから、部品点数が削減され、製造コストを低く抑えることができる。
【0108】
(第6実施例)
第6実施例では、1次コイル用スペーサ5が省略され、2次コイル用スペーサ6、中間スペーサ7が設けられている。
【0109】
図12は、第6実施例の構成を示す図である。すなわち、2次コイル用スペーサ6が設けられた第4実施例の構成に中間スペーサ7を追加した構成、あるいは中間スペーサ7が設けられた第5実施例の構成に2次コイル用スペーサ6を追加した構成である。よって、第4実施例、第5実施例と説明が重複するのでその説明は省略する。
【0110】
第6実施例によれば、第1実施例と同様の効果が得られる。さらに第6実施例によれば、1次コイル用スペーサ5を省略することができる。この部品(1次コイル用スペーサ5)を用いないことから、部品点数が削減され、製造コストを低く抑えることができる。
【0111】
(第7実施例)
第7実施例では、2次コイル用スペーサ6が省略され、1次コイル用スペーサ5、中間スペーサ7が設けられている。
【0112】
図13は、第7実施例の構成を示す図である。すなわち、1次コイル用スペーサ5が設けられた第3実施例の構成に中間スペーサ7を追加した構成、あるいは中間スペーサ7が設けられた第5実施例の構成に2次コイル用スペーサ5を追加した構成である。よって、第3実施例、第5実施例と説明が重複するのでその説明は省略する。
【0113】
第7実施例によれば、第1実施例と同様の効果が得られる。さらに第7実施例によれば、2次コイル用スペーサ6を省略することができる。この部品(2次コイル用スペーサ6)を用いないことから、部品点数が削減され、製造コストを低く抑えることができる。
【符号の説明】
【0114】
10 トランス、20 E型コア、20A 下コア、21 中脚部、
【0115】
22 外脚部、23 連結部、23a 内側底面、11 1次コイル、12 2次コイル、1 1次コイル用拘束部材、2 2次コイル用拘束部材、9 充填剤、5 1次コイ
ル用スペーサ、2次コイル用スペーサ、7 中間スペーサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次コイルと2次コイルを備えたトランスの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンと電動機の二つの動力源を備え、エンジンの駆動により電動機を発電作用させ、発生した電力を蓄電器に蓄え、蓄えられた電力で旋回体や走行体に備えられた他の電動機を力行駆動させるような構成を備えたハイブリッド自動車やハイブリッド建設機械が知られている。ハイブリッド建設機械として、ハイブリッド油圧ショベルが知られている。ハイブリッド油圧ショベルは、主に下部走行体と上部旋回体と作業機から成り立ち、上部旋回体を上記のように電動機(旋回用電動機)の力行駆動によって旋回させ、旋回制動時にはその電動機が回生駆動により発電作用し、発電された電力を蓄電器に蓄える形態の物がみられる。そこで、ハイブリッド建設機械の蓄電器に蓄えられた電力を旋回用電動機に供給するために、蓄電器の電圧を昇圧したり、旋回用電動機で発電された電力を蓄電器に供給するために、電圧を降圧したりするためにトランスが搭載されている。そのトランスは、主に1次コイルと2次コイルとコア(鉄心)を備えている。例えば、トランスは、トランス結合型昇圧器というタイプの昇圧器に適用される。トランス結合型昇圧器とは、低圧側インバータと高圧側インバータとがトランスを介して結合されされたものである。
【0003】
トランスは、1次コイル、2次コイルを構成する導線に流れる電流によるジュール熱(銅損)、コア(鉄心)で生じる渦電流によるジュール熱(鉄損)、コア(鉄心)のヒステリシスなどによって発熱する。そこで、トランスを構成する部品の発熱による損傷を防止するためにトランス自身の放熱性が高く冷却効果を高めた構造とすることが求められる。
【0004】
(従来技術1)
下記特許文献1には、トランスのコア内に、ボビンの軸に巻回された1次コイルと、1次コイルの外周面から所定の間隙だけ離間されて1次コイルと同心状に巻回された2次コイルとを収容するトランスの構成において、ボビンに貫通孔を形成し、貫通孔に樹脂材を充填することで、特に1次コイルの放熱性を高めて冷却効果を高めるという発明が記載されている。
【0005】
また、通常のトランスでは漏れインダクタンスが小さいほどよいと考えられている。しかし、ハイブリッド建設機械に搭載されるトランスでは、漏れインダクタンスを任意の値に調整する必要がある。すなわち、トランス結合型昇圧器では、昇圧器の出力電力は、トランスの漏れインダクタンスが大きくなるほど出力電力が小さくなる。また昇圧器の損失は、トランスの漏れインダクタンスが小さくなるほど大きくなる。よってトランスの出力電力を大きくし、かつ損失を小さくするためにトランスの漏れインダクタンスをトランス結合型昇圧器のスペックに応じた最適な値に調整する必要がある。
【0006】
(従来技術2)
下記特許文献1および特許文献2には、1次コイルと2次コイルとの間の間隙を、スペーサを用いて調整することで、トランスの漏れインダクタンスを任意に調整するという発明が記載されている。
【0007】
ここで、1次コイルと2次コイルとの間の間隙(以下、適宜、両コイル間隙という)をd1とし、トランスの漏れインダクタンスをLとすると、下式(1)、
L∝d1 …(1)
に示すように、両コイル間隙d1が大きくなるほど、トランスの漏れインダクタンスLが大きくなるという関係が成立する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−153293号公報
【特許文献2】WO2007−60998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ハイブリッド建設機械にトランスを搭載するうえで、上述した冷却効果を高めた構造が求められるという要求や漏れインダクタンスを任意の最適値に調整するという要求以外に解決しなければならない課題がある。それはトランスの場席を小さくするという課題である。すなわち、ハイブリッド建設機械に搭載される電気機器の設置スペースには限りがある。このためトランスは、場席をとらない容積の小さな構造であることが求められる。ハイブリッド建設機械は、エンジンや油圧ポンプといった、通常の建設機械に必要な機器に加えてハイブリッド建設機械に特有の電気機器を車体に搭載しなければならないからである。この課題については、ハイブリッド建設機械ではない、電動式の建設機械(エンジンを搭載せず、電動機のみを動力源とする建設機械)においてもトランスは必要なため同様であって、場席をとらない容積の小さな構造であることが求められる。
【0010】
しかし、従来技術2を適用すると、1次コイルと2次コイルとの間の間隙を、スペーサを用いて調整すれば、トランスの漏れインダクタンスを任意の最適に調整できるものの、1次コイルと2次コイルとの間の間隙の大きさに比例してトランス(コア)の横幅が広がり、トランスの設置面積が広くなり場席がかさむという問題が発生する。
【0011】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、トランスの放熱性を高め冷却効果を高めるととともに、トランスの漏れインダクタンスを任意の最適値に調整自在とし、さらに場席をとらず設置スペースの限られた場所にトランスを搭載できるようにすることを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明は、
中脚部と、外脚部と、前記中脚部と前記外脚部とを連結し内側底面を有する連結部とが設けられたコアと、前記連結部の内側底面の上方にあって前記中脚部の周囲に巻回された1次コイルと、前記連結部の内側底面の上方にあって前記1次コイルの外周面から所定の間隙だけ離間されて前記1次コイルと同心状に巻回された2次コイルとが備えられたトランスにおいて、
電流および磁束を絶縁する絶縁性を有する1次コイル用拘束部材によって拘束された1次コイルと、前記絶縁性を有する2次コイル用拘束部材によって拘束された2次コイルとが前記コア内に収容され、前記内側底面から前記1次コイルの下面までの高さと前記内側底面から前記2次コイルの下面までの高さとが異なる高さに当該1次コイルおよび2次コイルが位置決めされ、かつ前記内側底面から前記1次コイルの下面までの間および前記内側底面から前記2次コイルの下面までの間が空隙を形成するように、当該1次コイルおよび前記2次コイルが前記コア内で保持され、空気よりも熱伝導率の高い熱伝導性を有する充填剤が、少なくとも前記内側底面と前記1次コイルおよび前記2次コイルとの間の空隙に充填されてなる構造であることを特徴とする。
【0013】
第2発明は、第1発明において
前記1次コイルの外周面と前記2次コイルの内周面との間に空隙が形成され、当該空隙に前記充填剤が充填されてなる構造であることを特徴とする。
【0014】
第3発明は、第1発明または第2発明において、
前記1次コイル用拘束部材は、前記1次コイルの内周面から前記中脚部側に所定の厚みを有する部材であって、当該1次コイルの周方向に点在して配置されており、前記1次コイル用拘束部材が前記中脚部に固着されることで、前記1次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする。
【0015】
第4発明は、第1発明から第3発明において、
前記2次コイルの外周面が前記外脚部に、前記絶縁性を有する接着剤にて接着されることで、前記2次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする。
【0016】
第5発明は、第1発明から第3発明において、
前記2次コイルの外周面に、テープを貼着した上で、前記絶縁性を有する接着剤によって前記外脚部に固着することで、前記2次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする。
【0017】
第6発明は、第1発明から第5発明において、
前記絶縁性を有する1次コイル用スペーサが、前記内側底面と前記1次コイルとの間に介在され、かつ当該1次コイルの周方向に点在して配置されることで、前記1次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする。
【0018】
第7発明は、第1発明から第6発明において、
前記絶縁性を有する2次コイル用スペーサが、前記内側底面と前記2次コイルとの間に介在され、かつ当該2次コイルの周方向に点在して配置されることで、前記2次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする。
【0019】
第8発明は、第6発明または第7発明において、
前記充填剤は、前記1次コイル用スペーサまたは/および前記2次コイル用スペーサよりも熱伝導率が高い材質で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、1次コイル用拘束部材によって拘束された1次コイルと、2次コイル用拘束部材によって拘束された2次コイルとがコア内に収容されて、コア内で保持される構造となっている。このため、従来技術1では、必要とされていたボビンが不要となる。したがって、ボビンによって占められていた容積分だけコアの場席を小さくすることができる。部品点数が削減され、製造コストを低くおさえることができる。
【0021】
また、本発明によれば、コアの連結部材の内側底面から1次コイルの下面までの間および同内側底面から2次コイルの下面までの間が空隙となり、この空隙に充填剤が充填される。ここで、従来技術1と比較すると、従来技術1にあっては、コア内にボビンが存在し、その部分には充填剤を供給できず、貫通孔に充填剤が充填されるとはいえ、充填剤が供給できない部分の熱伝導性は、ボビンの材質に影響し熱伝導性がよくないため、各コイルで発生する熱を外部に放熱させることが十分とはいえない。しかし、本発明では、従来技術1ではボビンが存在していた部分、つまり1次コイルとコア連結部の内側底面との間および2次コイルとコア連結部の内側底面との間が空隙となりその空隙に充填剤を供給できるようになることから、トランス自身の放熱性が従来技術1に較べて更に高まり、トランス自身の冷却効果を更に高めることができる。
【0022】
また、本発明によれば、コアの連結部の内側底面から1次コイルの下面までの高さと同内側底面から2次コイルの下面までの高さとが異なる高さに1次コイルおよび2次コイルが位置決めされる。ここで、両者の高さの差(以下、適宜、両コイル段差という)d2とすると、下式(2)、
L∝d2 …(2)
に示すように、両コイル段差d2が大きくなるほど、トランスの漏れインダクタンスLが大きくなるという関係が成立する。この(2)式と前述した(1)式と合わせると、
L∝d1、d2 …(3)
のような関係となる。すなわち、従来技術2に示される(1)式(L∝d1)と比較して、漏れインダクタンスLの調整パラメータが増えた分だけ、漏れインダクタンスLの調整の自由度が広がり、従来技術1と比較して両コイル間隙d1を広い範囲で調整せずとも両コイル段差d2を調整することで、同等の範囲で漏れインダクタンスLを調整することが可能となる。よって、両コイル間隙d1を所望の寸法までにとどめておいた状態で漏れインダクタンスLを任意の適切な値に調整することが可能となる。このようにして両コイル間隙d1の寸法を大きくせず、さらに上述したようにボビンが不要になったことも相まって、コアの外形の横幅方向の場席、つまりはトランス全体の場席を、従来技術1のトランスに比して極めて小さくすることができる。
【0023】
以上のように本発明によれば、トランス自身のの放熱性が高められ冷却効果が高まる。またトランスの漏れインダクタンスを任意の最適値に調整自在でありながらも、場席をとらず設置スペースの限られた場所にトランスを搭載できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、第1実施例のトランスの外観を示す正面図である。
【図2】図2は、図1に示したトランスの上面図である。
【図3】図3は、図1に示したトランスの縦断面図である。
【図4】図4は、1次コイル用拘束部材によって拘束された1次コイルを示す図で、図4(a)は、1次コイルの上面図で、図4(b)は、1次コイルの側面図である。
【図5】図5は、2次コイル用拘束部材によって拘束された2次コイルを示す図で、図5(a)は、2次コイルの上面図で、図5(b)は、2次コイルの側面図である。
【図6】図6は、下コア内に、1次コイル、2次コイルが収容された状態を示す図で、図6(a)は、下コアの上面図で、図6(b)は、下コアの側面図である。
【図7】図7は、トランスを構成するコアのうち下コアを上面からみた際の下コアの底面を示す図である。
【図8】図8は、第2実施例の構成を示す図である。
【図9】図9は、第3実施例の構成を示す図である。
【図10】図10は、第4実施例の構成を示す図である。
【図11】図11は、第5実施例の構成を示す図である。
【図12】図12は、第6実施例の構成を示す図である。
【図13】図13は、第7実施例の構成を示す図である。
【図14】図14は、各実施形態で用いられるコアの外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明に係るトランスの実施形態について説明する。
【0026】
なお、以下に述べる各実施形態のトランスは、例えば図示しないハイブリッド建設機械に搭載され、トランス結合型昇圧器の構成部品として用いられる。なお、各実施形態のトランスは、通常の油圧ショベルの上部旋回体や作業機あるいは下部走行体を電動機の動力によって駆動させるようなハイブリッド油圧ショベルやエンジンを搭載せずに、電動機の動力で上部旋回体や作業機あるいは下部走行体を駆動するような電動式油圧ショベルに適用できる。また、通常のホイールローダの走行車輪を電動機によって駆動させるようなハイブリッドホイールローダにも適用できる。すなわち、トランスを必要とするハイブリッド建設機械や電動式建設機械に本発明は適用可能である。
【0027】
(第1実施例)
図1は、第1実施例のトランス10の外観を示す正面図である。図2は、図1に示したトランスの上面図である。図3は、図1に示したトランスの縦断面図である。
【0028】
まず、図1、図2、図3を併せ参照して説明する。以下では、図1における図中上方向を「上」と呼び、図中下方向を「下」と呼ぶこととする。なお、トランス内での高さ方向とは、図中上方向および図中下方向を意味する。
【0029】
図1に示すように、トランス10は、主に、コア20と、コア20内に収容された1次コイル11と、同じくコア20内に収容された2次コイル12と、これら1次コイル11および2次コイル12が収容されたコア20を収納するケース8と、ケース8内に充填された充填剤9とからなる。充填剤9は、空気よりも熱伝導率の高い材料であってコア20内の後述する各部空隙に充填されることで当該空隙を埋めトランス10で発生した熱を外部に放熱させることができる材料、例えばシリコン樹脂が用いられる。また、ケース8は、アルミニウムなどの材料が用いられ、トランス10で発生した熱を外部に放熱する機能を有する。よって、アルミニウムに限らず、熱伝導率が高い材料で、外部に図示しない冷却フィンなどを設けて放熱性を高める構造であっても良い。なお、ケース8とトランス10とは、電気的な絶縁を確保するために、ケース8とトランス10との間隙には充填剤9が充填される。
【0030】
コア20は、下コア20Aと、上コア20Bとからなる。トランス10は、下コア20Aがトランス内の高さ方向(鉛直方向)における下側となるように設置される。
【0031】
図3あるいは図14に示すように、コア20は、断面E字形状の下コア20Aと同じく断面E字形状の上コア20Bとが、「E」の字の開放側同士が突き合わせられるように、両者が電磁気的に接続されてなるものであり、「E型コア」と称されるものである。下コア20Aは、中脚部21と、外脚部22と、中脚部21と外脚部22とを連結し内側底面23aを有する連結部23とが設けられてなるものである。上コア20Bについても中脚部21と、外脚部22と、連結部23とからなる。
【0032】
図3に図2を併せ、さらに図14とを参照して示すように、中脚部21は、トランス10の上下方向が長手方向となる円柱状にて形成されている。図2あるいは図14に示すように、外脚部22は、中脚部21を中心にして左右それぞれの対称位置に、横断面が、中脚部21を中心とする円弧状に形成されてなるものである。連結部23は、中脚部21を中心にして左右に延設されてなるものであり、中脚部21側から外脚部22側に向かうにつれ徐々に扇形のように横幅が拡がり、その横幅が外脚部22で丁度、外脚部22の円弧幅と一致するように、これら中脚部21および外脚部22と一体に形成されてなるものである。
【0033】
図3に示すように、下コア20Aの連結部23は、コア20の内側を臨む平面状の内側底面23aを有している。下コア20Aの中脚部21と上コア20Bの中脚部21の端面同士および下コア20Aの外脚部22と上コア20Bの外脚部22の端面同士がそれぞれ、物理的に接合されることで、閉磁路が形成される。
【0034】
なお、コア20の材質としては、強磁性体の材料、例えば鉄を主成分とする材料が用いられる。具体的な材質として、フェライトが用いられる。
【0035】
図4は、1次コイル用拘束部材1によって拘束された1次コイル11を示す図で、図4(a)は、1次コイル11の上面図で、図4(b)は、1次コイル11の側面図である。また、図5は、2次コイル用拘束部材2によって拘束された2次コイル12を示す図で、図5(a)は、2次コイル12の上面図で、図5(b)は、2次コイル12の側面図である。また、図6は、下コア20A内に、1次コイル11、2次コイル12が収容された状態を示す図で、図6(a)は、下コア20Aの上面図で、図6(b)は、下コア20Aの側面図である。図6(b)では、図6(a)のA−A断面を一部破断図にて示している。
【0036】
図4に示すように、1次コイル11は、導線4がコイル状に巻かれてなるものである。同じく2次コイル12は、図5に示すように導線4がコイル状に巻いてなるものであり、1次コイル11の径よりも大きい径となるように導線4が巻かれている。なお、導線4としては、例えば銅を主成分とする線状の導電性のよい導体が用いられる。具体的には、導線4は、リッツ線とよばれるエナメル線を複数本撚りあわせたものが用いられる。なお、本実施例では、1次コイル11、2次コイル12ともに、導線4はトランス10の上下方向の中心軸に対して径方向に二層に巻かれている。なお、1次コイル11の巻線数(ターン)および2次コイル12の巻線数(ターン数)は、トランス10の変圧比(昇圧比)などトランス10の仕様に応じて適宜定められる。
【0037】
図6に示すように、1次コイル11は、コア20内に収容された状態では、下コア20Aの連結部23の内側底面23aの上方にあって中脚部21の周囲に巻回されたものとなる。
【0038】
また、2次コイル12は、同じくコア20内に収容された状態では、下コア20Aの連結部23の内側底面23aの上方にあって1次コイル11の外周面から所定の間隙(両コイル間隙)d1分だけ離間されて1次コイル11と同心状に巻回されたものとなる。すなわち、2次コイル12は、その内周面から1次コイル11の外周面までの距離が丁度、両コイル間隙d1となるようなコイル径に設定されている。なお、1次コイル11および2次コイルのそれぞれの内周面の内径および形状の形成は、図示しない円柱状の治工具(1次コイル用と2次コイル用の2種)を用い、導線4を治工具の円筒面に巻きつけることで行われる。この円柱状の治工具の円柱部の半径は、1次コイル11の内周面の半径あるいは2次コイル12の内周面の半径とほぼ同等の寸法で作られている。
【0039】
図4に戻り、1次コイル11は、1次コイル用拘束部材1によって導線4の巻線状態が拘束され形状を保っている。1次コイル用拘束部材1は、コア20との間の電気的な絶縁を確保するために絶縁性を有する絶縁材料で構成されている。1次コイル用拘束部材1としては、例えばフッ素ポリマで構成された結束バンドが用いられる。
【0040】
図4と図6を併せ参照してわかるように、1次コイル用拘束部材1は、1次コイル11の内周面からコア20の中脚部21側に所定の厚みd3を有する部材であって、1次コイル11の周方向に点在して配置されている。1次コイル11は、その内周面からコア20の中脚部21までの距離が丁度、1次コイル用拘束部材1の厚みd3となるようなコイル径に設定されている。
【0041】
図5に示すように、同じく2次コイル12は、2次コイル用拘束部材2によって導線4の巻線状態が拘束され形状を保っている。2次コイル用拘束部材2についても2次コイル12の周方向に点在して配置されている。2次コイル用拘束部材2は、1次コイル用拘束部材1と同様の絶縁材料、例えばフッ素ポリマで構成されており、例えば結束バンドが用いられる。
【0042】
1次コイル11および2次コイル12をコア20内に収容するにあたっては、前述のように、予め図示しない治工具により導線4を巻いておく。そして、1次コイル11については、1次コイル用拘束部材1によって導線4の巻き状態の形状を保持できるように拘束しておく。同様に、2次コイル12についても、前述のように、予め図示しない治工具により導線4を巻いておき、2次コイル用拘束部材2によって導線4の巻き状態の形状を保持できるように拘束しておく。
【0043】
図4に示すように1次コイル11の導線4の巻き始め箇所11sには、延長導線を介して外部端子11aが電気的に接続されているとともに、導線4の巻き終わり箇所11eには、延長導線を介して外部端子11bが接続されている。なお、延長導線は、外部との電気的な接触を回避し損傷から保護するための被覆保護材11c、たとえシリコンチューブによって被覆されている。なお被覆保護材11cの1次コイル11側端部は、1次コイル用拘束部材1によって導線4とともに拘束しておくことが望ましい。
【0044】
図5に示すように、同じく、2次コイル12の導線4の巻き始め箇所12sには、延長導線を介して外部端子12aが電気的に接続されているとともに、導線4の巻き終わり箇所12eには、延長導線を介して外部端子12bが接続されており、延長導線は、被覆保護材11cと同様の被覆保護材12c、たとえシリコンチューブによって被覆されている。なお被覆保護材12cの2次コイル12側端部は、2次コイル用拘束部材2によって導線4とともに拘束しておくことが望ましい。
【0045】
図5に図6を併せ参照してわかるように、2次コイル12の外周面のうち外脚部22の内周面に対向する部位には、2次コイル12とコア20との間の電気的な絶縁を確保するために絶縁性を有する絶縁材料で構成された絶縁テープ19によって覆われている。絶縁テープ19としては、例えばメタ系アラミド繊維を基材に粘着剤をつけたテープが用いられる。
【0046】
図6に示すように、1次コイル用拘束部材1によって拘束された1次コイル11は、その内側にコア20の中脚部21が挿通されて、中脚部21の外径寸法と1次コイル11の内径寸法(この場合は、1次コイル用拘束部材1の厚みd3によって決められる内径寸法)とが、ほぼ同寸法となることで1次コイルは位置決めされて、コア20内に収容される。また2次コイル用拘束部材2によって拘束された2次コイル12は、その内周面が、1次コイル11の外周面から両コイル間隙d1だけ離間され、その外周面が絶縁テープ19を介して外脚部22の内周面に当接される位置に位置決めされて、コア20内に収容される。すなわち、絶縁テープ19を覆うことで決められた2次コイル12の外径寸法と外脚部22の内周面の内径寸法とが、ほぼ同寸法となることで2次コイル12は位置決めされる。なお、図1および図2に示すように外部端子11a、11b、12a、12bは、外部の電気機器と電気的に接続することが可能となるように、トランス10(コア20)の外部に配置される。
【0047】
図3に戻り、1次コイル11および2次コイル12は、コア20内の所定箇所に位置決めされ保持される。
【0048】
すなわち、1次コイル11および2次コイル12は、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから1次コイル11の下面までの高さと同内側底面23aから2次コイル12の下面までの高さとが異なる高さ、つまり両コイル間段差d2を生じる高さとなる位置に位置決めされ、かつ内側底面23aから1次コイル11の下面までの間および内側底面23aから2次コイル12の下面までの間が空隙を形成するように、コア20内で保持されている。
【0049】
以下、コア20内で1次コイル11および2次コイル12を保持する手段について説明する。ここで述べる保持する手段とは、部品の選択や接着面の選択あるいはそれら部品と接着の組み合わせである。
【0050】
(1次コイル用スペーサ)
図7は、トランス10を構成するコア20のうち下コア20Aを上面からみた際の下コア20Aの底面を示す図である。
【0051】
図7に図3を併せ参照してわかるように、下コア20Aの連結部23の内側底面23aには、1次コイル用スペーサ5、5が中脚部21の外周方向、つまり1次コイル11の周方向に点在して配置されている。本実施例では、1次コイル用スペーサ5、5が左右の連結部23、23に配置された場合を例示している。
【0052】
1次コイル用スペーサ5は、1次コイル11とコア20との間の電気的絶縁性を確保するために絶縁性を有する絶縁材料で構成されている。1次コイル用スペーサ5としては、例えばガラスエポキシ樹脂で構成され、所定の高さ(トランス上下方向)d5を有する立方体形状の部材が用いられる。なお、1次コイル用スペーサ5は、立方体形状に限らず、所定の高さd5を有するものであれば、円柱形(円の直径がd5に相当するもの)や直方体形状であってもよい。
【0053】
1次コイル用スペーサ5、5は、下コア20Aの中脚部21を中心とする左右内側底面23a、23a上の左右対称位置であって、1次コイル11の下面を支持することができる位置にそれぞれ、接着剤にて固着される。望ましくは、1次コイル用スペーサ5の中心軸5aが中脚部21を中心とする半径方向に揃う位置に1次コイル用スペーサ5を固着する。
【0054】
1次コイル用スペーサ5は、中脚部21および外脚部22から離間された位置に固着される。これは熱応力による割れ等の損傷を回避するためである。また、1次コイル用スペーサ5は、充填剤9の充填容積を出来る限り大きくしてトランス自身の放熱性を高めるために、連結部23の内側底面23aの面積に比して極めて小さい占有面積の部材であることが望ましい。また、1次コイル用スペーサ5は、充填剤9の充填容積を出来る限り大きくしてトランス自身の放熱性を高めるために、1次コイル11と1次コイル用スペーサ5との接触面積は極めて小さい部材であることが望ましい。充填剤9は、1次コイル用スペーサ5の熱伝導率よりも高い材料を用いる。1次コイル用スペーサ5の占有面積(投影面積)あるいは1次コイル11との接触面積が広いと、1次コイル11で発生した熱が1次コイル用スペーサ5を伝熱して外部に放熱させるための伝熱面積が広いことになり冷却効果がよくない。したがって、充填剤9に伝熱をできるだけ負担させトランス10自身の冷却効果を高めるため、1次コイル用スペーサ5は小さな占有面積であるほうがよい。具体的には、1次コイル用スペーサ5は、前述のように円柱形とすれば、連結部23の内側底面23aの面積に比して極めて小さい占有面積(内側底面23aとは線接触)となり、1次コイル11と1次コイル用スペーサ5との接触面積は極めて小さい(線接触)ものとなり、有用である。なお、接着剤としては、1次コイル用スペーサ5と同様の絶縁性を有する材料で構成されたものが望ましい。例えば接着剤としては、2液混合型のエポキシ樹脂を主成分としたものを使用することができる。なお、本実施形態で、以下において「接着剤」というときは、特に断りのない限り、かかる絶縁性を有する接着剤を意味するものとするが、1次コイル11とコア20との電気的絶縁、あるいは、2次コイル12とコア20との電気的絶縁は、1次コイル用スペーサ5や2次コイル用スペーサ6によって確保できるため、本実施形態においては、接着剤に対して絶縁性を有する特性は強く求められない。
【0055】
(2次コイル用スペーサ)
また、図7に図3を併せ参照してわかるように、下コア20Aの連結部23の内側底面23aには、2次コイル用スペーサ6、6、6、6が中脚部21の外周方向、つまり2次コイル12の周方向に点在して配置されている。本実施例では、2次コイル用スペーサ6、6、6、6が左右の連結部23、23に配置された場合を例示している。
【0056】
2次コイル用スペーサ6は、1次コイル用スペーサと同様の絶縁材料、例えばガラスエポキシ樹脂で構成され、所定の高さ(トランス上下方向)d6を有する直方体形状の部材が用いられる。ここで、本実施例では、2次コイル用スペーサ6の高さd6は、1次コイル用スペーサ5の高さd5よりも低い値に設定している。よって、これら高さの差d5−d6が両コイル間段差d2となる。なお、トランス10の用途に応じて、2次コイル用スペーサ6の高さd6を、1次コイル用スペーサ5の高さd5よりも高い値に設定する実施も可能である。
【0057】
2次コイル用スペーサ6、6、6、6は、下コア20Aの中脚部21を中心とする左右内側底面23a、23a上の左右対称位置であって、2次コイル12の下面を支持することができる位置にそれぞれ、接着剤にて固着される。望ましくは、2次コイル用スペーサ6の中心軸(長手方向中心軸)6aが中脚部21を中心とする半径方向に揃う位置に2次コイル用スペーサ6を固着する。
【0058】
2次コイル用スペーサ6は、中脚部21および外脚部22から離間された位置に固着される。これは熱応力による割れ等の損傷を回避するためである。また、2次コイル用スペーサ6は、充填剤9の充填容積を出来る限り大きくしてトランス自身の放熱性を高めるために、連結部23の内側底面23aの面積に比して極めて小さい占有面積の部材であることが望ましい。また、2次コイル用スペーサ6は、直方体形状に限らず、所定の高さd6を有するものであれば、円柱形(円の直径がd6に相当するもの)や立方体形状であってもよい。また、2次コイル用スペーサ6は、充填剤9の充填容積を出来る限り大きくしてトランス自身の放熱性を高めるために、2次コイル12と2次コイル用スペーサ6との接触面積は極めて小さい部材であることが望ましい。充填剤9は、2次コイル用スペーサ6の熱伝導率よりも高い材料を用いる。2次コイル用スペーサ6の占有面積(投影面積)あるいは2次コイル12との接触面積が広いと、2次コイル12で発生した熱が2次コイル用スペーサ6を伝熱して外部に放熱させるための伝熱面積が広いと冷却効果がよくない。したがって、充填剤9に伝熱をできるだけ負担させトランス10自身の冷却効果を高めるため、2次コイル用スペーサ6は小さな占有面積であるほうがよい。具体的には、2次コイル用スペーサ6は、前述のように円柱形とすれば、連結部23の内側底面23aの面積に比して極めて小さい占有面積(内側底面23aとは線接触)となり、2次コイル12と2次コイル用スペーサ6との接触面積は極めて小さい(線接触)ものとなり、有用である。
【0059】
図3に示すように、1次コイル用スペーサ5および2次コイル用スペーサ6は、コア20の連結部材23の内側底面23aから1次コイル11の下面までの間および同内側底面23aから2次コイル12の下面までの間に充填剤9が充填されるべき空隙d2を形成する機能を有する。さらに、1次コイル用スペーサ5および2次コイル用スペーサ6は、所定の高さd5、d6に応じてトランス10の漏れインダクタンスLを任意の最適値に調整する機能を有する。また、1次コイル用スペーサ5および2次コイル用スペーサ6は、1次コイル11および2次コイル12を下面で支持しコア20内でこれら1次コイル11および2次コイル12のトランス上下方向についての相対位置を保持する機能を有する。
【0060】
以上のような1次コイル用スペーサ5および2次コイル用スペーサ6の上に1次コイル11および2次コイル12をそれぞれ配置することで、両コイル間段差d2をもって1次コイル11および2次コイル12をコア20内で保持することができる。
【0061】
(1次コイル用スペーサと1次コイルとの接着、2次コイル用スペーサと2次コイルとの接着)
望ましくは、1次コイル用スペーサ5と1次コイル11とを接着剤にて接着するとともに、2次コイル用スペーサ6と2次コイル12とを接着剤にて接着する。これによりコア20内で1次コイル11および2次コイル12を保持する効果を高めることができる。なお、前述のように、図6に示すように、1次コイル用拘束部材1によって拘束された1次コイル11は、その内側にコア20の中脚部21が挿通されて、中脚部21の外径寸法と1次コイル11の内径寸法(この場合は、1次コイル用拘束部材1の厚みd3によって決められる内径寸法)とが、ほぼ同寸法となることで1次コイルは位置決めされて、コア20内に収容される。また2次コイル用拘束部材2によって拘束された2次コイル12は、その内周面が、1次コイル11の外周面から両コイル間隙d1だけ離間され、その外周面が絶縁テープ19を介して外脚部22の内周面に当接される位置に位置決めされて、コア20内に収容される。すなわち、絶縁テープ19を覆うことで決められた2次コイル12の外径寸法と外脚部22の内周面の内径寸法とが、ほぼ同寸法となることで2次コイル12は位置決めされる。したがって、1次コイル11と2次コイル12のコア20との位置関係は、寸法上の拘束を受け、さらには充填剤9がトランス10内の空隙を充填するように占有するため1次コイル11と2次コイル12は充填剤9による拘束を受ける。よって、必ずしも1次コイル用スペーサ5と1次コイル11とを接着剤にて接着する必要はなく、2次コイル用スペーサ6と2次コイル12とを接着剤にて接着する必要もない。しかし、他の保持手段で保持機能が十分に担保されれば、いずれか一方または両方ともに接着剤で接着しない実施も可能である。
【0062】
(中間スペーサ)
また、図3に図6(a)を併せ参照してわかるように、1次コイル11と2次コイル12との間の両コイル間隙d1には、中間スペーサ7が介在されている。
【0063】
中間スペーサ7は、厚さd1の厚みを有する角柱状の部材であり、長手方向が図3の図中上下方向となり、厚み方向が中脚部21を中心とする半径方向になるように1次コイル11の外周面および2次コイル12の内周面に当接されている。中間スペーサ7、7…は、1次コイル11および2次コイル12の周方向に点在して配置されている。これにより両コイル11、12間に距離d1の空隙を形成している。本実施例では、図6(a)に示すように、中間スペーサ7、7…が、例えば4個配置された場合を例示している。
【0064】
中間スペーサ7は、1次コイル用スペーサ5および2次コイル用スペーサ6と同様の絶縁材料、例えばガラスエポキシ樹脂で構成されている。
【0065】
また、中間スペーサ7は、充填剤9の充填容積を出来る限り大きくしてトランス10自身の放熱性を高めるために、図6(a)に示される、1次コイル11と2次コイル12との間の円筒状の空隙に比して極めて小さい占有面積の部材であることが望ましい。言い換えれば、中間スペーサ7は、1次コイル11あるいは2次コイル12との接触面積が極めて小さい部材であることが望ましい。これは、前述のように充填剤9が中間スペーサ7よりも熱伝導率が高く、1次コイル11あるいは2次コイル12で発生した熱を中間スペーサ7を伝熱して外部に放熱させるための伝熱面積が広いと冷却効果がよくない。したがって、中間スペーサ7も、例えば円柱形とすれば、中間スペーサ7と1次コイル11と2次コイル12との接触面積は極力小さくなり、充填剤9に伝熱をできるだけ負担させトランス10自身の冷却効果を高めることができる。よって、中間スペーサ7も小さな占有面積であるほうがよい。
【0066】
中間スペーサ7は、1次コイル11と2次コイル12との間に充填剤9が充填されるべき空隙d1を形成する機能を有する。さらに、中間スペーサ7は、設定厚さd1に応じてトランス10の漏れインダクタンスLを任意の最適値に調整する機能を有する。また、中間スペーサ7は、1次コイル11の外周面および2次コイル12の内周面を支持しコア20内でこれら1次コイル11および2次コイル12のトランス10の中心軸に対する半径方向の相対位置を保持する機能を有する。
【0067】
以上のような中間スペーサ7を1次コイル11と2次コイル12との間に配置することで、両コイル間隙d1をもって1次コイル11および2次コイル12をコア20内で保持することができる。なお、1次コイル11と2次コイル12の位置決めを行うために、中間スペーサ7を用いずに、コア20に対する1次コイル11あるいは2次コイル12の位置に応じた寸法で機械加工されて作られた位置決め治具を用いて充填剤9を充填すれば、中間スペーサ7を用いずとも両コイル間隙d1をもって1次コイル11および2次コイル12をコア20内で保持することができる。また、以下のように1次コイル11と2次コイル12を位置決めすれば、中間スペーサ7を用いなくてもよい。前述のように、図6に示すように、1次コイル用拘束部材1によって拘束された1次コイル11は、その内側にコア20の中脚部21が挿通されて、中脚部21の外径寸法と1次コイル11の内径寸法(この場合は、1次コイル用拘束部材1の厚みd3によって決められる内径寸法)とが、ほぼ同寸法となることで1次コイルは位置決めされて、コア20内に収容される。また2次コイル用拘束部材2によって拘束された2次コイル12は、その内周面が、1次コイル11の外周面から両コイル間隙d1だけ離間され、その外周面が絶縁テープ19を介して外脚部22の内周面に当接される位置に位置決めされて、コア20内に収容される。すなわち、絶縁テープ19を覆うことで決められた2次コイル12の外径寸法と外脚部22の内周面の内径寸法とが、ほぼ同寸法となることで2次コイル12は位置決めされる。
【0068】
(中間スペーサと1次コイルとの接着、中間スペーサと2次コイルとの接着)
望ましくは、図3に示すように、中間スペーサ7と1次コイル11の外周面とを接着剤にて接着するとともに、中間スペーサ7と2次コイル12の内周面とを接着剤にて接着する。これによりコア20内で1次コイル11および2次コイル12の相対位置を保持する効果を高めることができる。しかし、他の保持手段で保持機能が十分に担保されれば、いずれか一方または両方ともに接着剤で接着しない実施も可能である。
【0069】
(1次コイル用拘束部材と中脚部との接着)
望ましくは、図3に示すように、1次コイル用拘束部材1とコア20の中脚部21とを接着剤にて接着する。これによりコア20内で1次コイル11の位置を保持する効果を高めることができる。
【0070】
1次コイル用拘束部材1は、1次コイル11と中脚部21との間に充填剤9が充填されるべき空隙d3を形成する機能を有する。さらに、1次コイル用拘束部材1は、1次コイル11の内周面及び外周面の形状を保持しコア20内で1次コイル11の位置を保持する機能を有する。しかし、他の保持手段で保持機能が十分に担保されれば、接着剤で接着しない実施も可能である。
【0071】
(2次コイルと外脚部との接着)
絶縁テープ19で覆われた2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とを接着剤にて接着し2次コイル12を外脚部22に固着する。これによりコア20内で2次コイル12の位置を保持する効果を高めることができる。ここで、絶縁テープ19の代わりに絶縁性のない両面テープなどの一般的なテープ(接着テープ)を用いてもよい。この場合、2次コイル12の外周面にテープを貼着した上で、絶縁性のある接着剤によって外脚部22の内周面に固着させることで、2次コイル12とコア20との電気的な絶縁は確保できる。なお、絶縁テープ19を省略し、2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とのクリアランスを所望の絶縁性を有した接着剤のみで埋めることで2次コイル12を外脚部22に固着してもよい。
【0072】
しかし、他の保持手段で保持機能が十分に担保されれば、接着剤で接着しない実施も可能である。
【0073】
第1実施例によれば、つぎのような作用効果が得られる。
【0074】
第1実施例では、1次コイル用拘束部材1によって拘束された1次コイル11と、2次コイル用拘束部材2によって拘束された2次コイル12とがコア20内に収容されて、コア20内で保持される構造となっている。このため、従来技術1では、必要とされていたボビンが不要となる。したがって、ボビンによって占められていた容積分だけコア20の場席を小さくすることができる。ボビンを用いないことから部品点数の削減による製造コストの抑制を図ることができる。
【0075】
また、第1実施例によれば、下コア20Aの連結部材23の内側底面23aから1次コイル11の下面までの間および同内側底面23aから2次コイル12の下面までの間が空隙となり、この空隙に充填剤9が充填される。ここで、従来技術1と比較すると、従来技術1にあっては、コア内にボビンが存在し、ボビンの貫通孔に充填剤が供給されるとはいえ、それ以外の部分には充填剤を供給できず、充填剤が供給できない部分(ボビンの構造をなしている部分)の熱伝導性は悪化することになっていた。しかし、本第1実施例では、従来技術1ではボビンが存在していた部分、つまり1次コイル11とコア連結部23の内側底面23aとの間および2次コイル12とコア連結部23の内側底面23aとの間が空隙となりその空隙にボビンよりも熱伝導率が高い充填剤9を供給できるようになることから、熱伝導性が従来技術1に比べて更に高まり、トランス10自身の冷却効果を更に高めることができる。また、従来技術1では、1次コイル11や2次コイル12、あるいはコア20とボビンが面接触していたのであるが、流動性をもった充填剤9を用いることで、1次コイル11や2次コイル12、あるいはコア20の発熱面や伝熱面に満遍なく充填剤9がいきわたり、熱伝導を行うためトランス10自身の冷却効果を高めることができる。
【0076】
また、本第1実施例によれば、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから1次コイル11の下面までの高さd5と同内側底面23aから2次コイル12の下面までの高さd6とが異なる高さとなっており、1次コイル11および2次コイル12がトランス10の上下方向に対する位置決めがなされる。両者の高さの差である両コイル間段差d2(=d5−d6)に応じて、上記(2)式(L∝d2)にしたがいトランス10の漏れインダクタンスLが変化する。よって本第1実施例では、前述の(3)式(L∝d1、d2)のごとく、両コイル間隙d1のみならず両コイル間段差d2によってもトランス10の漏れインダクタンスLを調整することができるようになる。したがって、従来技術2に示される(1)式(L∝d1)と比較して、漏れインダクタンスLの調整パラメータが増えた分だけ、漏れインダクタンスLの調整の自由度が広がり、従来技術1と比較して両コイル間隙d1を広い範囲で調整せずとも両コイル間段差d2を調整することで、トランス10の漏れインダクタンスLを調整することが可能となる。よって、両コイル間隙d1を所望の寸法までにとどめておいた状態で漏れインダクタンスLを任意の適切な値に調整することが可能となる。このようにして両コイル間隙d1の寸法を大きくせず、さらに上述したようにボビンが不要になったことも相まって、トランス10(コア20)の横幅方向の場席、つまりはトランス全体の場席を、従来技術1のトランスに比して極めて小さくすることができる。
【0077】
以上のように本第1実施例によれば、トランス10自身の放熱性が高められ冷却効果が高いトランス10を提供することができる。またトランス10の漏れインダクタンスLを任意の最適値に調整自在でありながらも、場席をとらず設置スペースの限られた場所に搭載できるトランス10を提供することができる。なお、トランス10を設計、製造するにあたっては、実験、シミュレーションを行い、LCRメータで漏れインダクタンス値Lを計測して、その計測値が最適な所望値となるように両コイル間隙d1および両コイル間段差d2を調整して、最適な値d1、d2を定めればよい。したがって、本第1実施例で示したように、場席をとらないようなトランス10を設計、製造する際は、前述のように両コイル間隙d1を所望の寸法までにとどめておき、制限範囲内の場席を確保するようにしておき、両コイル間段差d2を調整して所望の漏れインダクタンス値Lを確保できたことを実験やシミュレーションで確認し、d1、d2を決定する。
【0078】
(第2実施例)
第1実施例では、コア20内で1次コイル11および2次コイル12を保持する保持手段として、「1次コイル用スペーサ」、「2次コイル用スペーサ」、「1次コイル用スペーサと1次コイルとの接着」、「2次コイル用スペーサと2次コイルとの接着」、「中間スペーサ」、「中間スペーサと1次コイルとの接着、中間スペーサと2次コイルとの接着」、「1次コイル用拘束部材と中脚部との接着」、「2次コイルと外脚部との接着」の各手段を用いているが、これらの各手段を適宜省略する実施も可能である。
【0079】
以下では、第1実施例の図3と同様のトランス10の縦断面図を掲げ、同じ符号は同一構成要素であるとして適宜説明を省略して説明する。
【0080】
図8は、第2実施例の構成を示す図である。
【0081】
第2実施例では、1次コイル用スペーサ5、2次コイル用スペーサ6、中間スペーサ7を用いていない。よって、第1実施例における保持手段のうち、「1次コイル用スペーサ」、「2次コイル用スペーサ」、「1次コイル用スペーサと1次コイルとの接着」、「2次コイル用スペーサと2次コイルとの接着」、「中間スペーサ」、「中間スペーサと1次コイルとの接着、中間スペーサと2次コイルとの接着」の各手段が省略されており、「1次コイル用拘束部材と中脚部との接着」、「2次コイルと外脚部との接着」の各保持手段により、コア20内で1次コイル11および2次コイル12の相対位置が保持される。
【0082】
同図8に示すように、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから1次コイル11の下面までの高さがd5となる高さに位置決めした状態で、1次コイル用拘束部材1とコア20の中脚部21とを接着剤にて接着する。
【0083】
また、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから2次コイル11の下面までの高さがd6となる高さ、つまり所望する両コイル間段差d2(=d5−d6)が得られる高さに位置決めするとともに、1次コイル11と2次コイル12との間が所望する両コイル間隙d1となる距離に位置決めした状態で、絶縁テープ19で覆われた2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とを接着剤にて接着し2次コイル12を外脚部22に固着する。ここで、絶縁テープ19の代わりに絶縁性のない両面テープなどの一般的なテープ(接着テープ)を用いてもよい。この場合、2次コイル12の外周面にテープを貼着した上で、絶縁性のある接着剤によって外脚部22の内周面に固着させることで、2次コイル12とコア20との電気的な絶縁は確保できる。なお、絶縁テープ19を省略し、2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とのクリアランスを接着剤のみで埋めることで2次コイル12を外脚部22に固着してもよい。なお、1次コイル11と2次コイル12のトランス10の上下方向に対する位置決めを行う際は、図示しない治具を用いる。1次コイル11と2次コイル12がコア20と接着剤にて固着され、接着剤が接着力を確保できる状態に硬化した後に治具を取り外すことで本第2実施形態のトランス10を組み立てることができる。
【0084】
なお、2次コイル12を先に接着して後から1次コイル11を接着する実施も当然可能である。
【0085】
第2実施例によれば、第1実施例と同様の効果が得られる。さらに第2実施例によれば、1次コイル用スペーサ5、2次コイル用スペーサ6、中間スペーサ7を省略することができる。これらの部品(1次コイル用スペーサ5、2次コイル用スペーサ6、中間スペーサ7)を用いないことから、部品点数が削減され、製造コストを低く抑えることができる。
【0086】
(第3実施例)
図9は、第3実施例の構成を示す図である。
【0087】
第3実施例では、2次コイル用スペーサ6、中間スペーサ7を用いず、1次コイル用スペーサ5が設けられている。よって、第1実施例における保持手段のうち、「2次コイル用スペーサ」、「2次コイル用スペーサと2次コイルとの接着」、「中間スペーサ」、「中間スペーサと1次コイルとの接着、中間スペーサと2次コイルとの接着」の各手段が省略されており、「1次コイル用スペーサ」、「1次コイル用スペーサと1次コイルとの接着」、「1次コイル用拘束部材と中脚部との接着」、「2次コイルと外脚部との接着」の各保持手段により、コア20内で1次コイル11および2次コイル12の相対位置が保持される。
【0088】
同図9に示すように、下コア20Aの連結部23の内側底面23aに、高さd5の1次コイル用スペーサ5を接着し、1次コイル用スペーサ5の上に1次コイル11を配置し、1次コイル用拘束部材1とコア20の中脚部21とを接着剤にて接着する。なお、1次コイル用拘束部材1とコア20の中脚部21とは接着剤にて接着しなくてもよい。また、1次コイル用スペーサ5と1次コイル11は接着剤にて接着してもしなくてもよい。
【0089】
また、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから2次コイル12の下面までの高さがd6となる高さ、つまり所望する両コイル間段差d2(=d5−d6)が得られる高さに位置決めするとともに、1次コイル11と2次コイル12との間が所望する両コイル間隙d1となる距離に位置決めした状態で、絶縁テープ19で覆われた2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とを接着剤にて接着し2次コイル12を外脚部22に固着する。ここで、絶縁テープ19の代わりに絶縁性のない両面テープなどの一般的なテープ(接着テープ)を用いてもよい。この場合、2次コイル12の外周面にテープを貼着した上で、絶縁性のある接着剤によって外脚部22の内周面に固着させることで、2次コイル12とコア20との電気的な絶縁は確保できる。なお、絶縁テープ19を省略し、2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とのクリアランスを接着剤のみで埋めることで2次コイル12を外脚部22に固着してもよい。
【0090】
なお、2次コイル12を先にコア20内に配置し後から1次コイル11をコア20内に配置してもよい。また、1次コイル11と2次コイル12のトランス10の上下方向に対する位置決めを行う際、第2実施例と同様に図示しない治具を用いてトランス10を組み立てることができる。
【0091】
第3実施例によれば、第1実施例と同様の効果が得られる。さらに第3実施例によれば、2次コイル用スペーサ6、中間スペーサ7を省略することができる。これらの部品(2次コイル用スペーサ6、中間スペーサ7)を用いないことから、部品点数が削減され、製造コストを低く抑えることができる。
【0092】
(第4実施例)
図10は、第4実施例の構成を示す図である。
【0093】
第4実施例では、1次コイル用スペーサ5、中間スペーサ7が省略され、2次コイル用スペーサ6が設けられている。よって、第1実施例における保持手段のうち、「1次コイル用スペーサ」、「1次コイル用スペーサと1次コイルとの接着」、「中間スペーサ」、「中間スペーサと1次コイルとの接着、中間スペーサと2次コイルとの接着」の各手段が省略されており、「2次コイル用スペーサ」、「2次コイル用スペーサと2次コイルとの接着」、「1次コイル用拘束部材と中脚部との接着」、「2次コイルと外脚部との接着」の各保持手段により、コア20内で1次コイル11および2次コイル12の相対位置が保持される。
【0094】
同図10に示すように、下コア20Aの連結部23の内側底面23aに、高さd6の2次コイル用スペーサ6を接着し、2次コイル用スペーサ6の上に2次コイル12を配置する。2次コイル用スペーサ6と2次コイル12は接着剤にて接着してもしなくてもよい。
【0095】
さらに絶縁テープ19で覆われた2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とを接着剤にて接着し2次コイル12を外脚部22に固着する。ここで、絶縁テープ19の代わりに絶縁性のない両面テープなどの一般的なテープ(接着テープ)を用いてもよい。この場合、2次コイル12の外周面にテープを貼着した上で、絶縁性のある接着剤によって外脚部22の内周面に固着させることで、2次コイル12とコア20との電気的な絶縁は確保できる。なお、絶縁テープ19を省略し、2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とのクリアランスを接着剤のみで埋めることで2次コイル12を外脚部22に固着してもよい。
【0096】
なお、2次コイル12と外脚部22とを接着剤にて接着しない実施も可能である。
【0097】
また、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから1次コイル11の下面までの高さがd5となる高さ、つまり所望する両コイル間段差d2(=d5−d6)が得られる高さに位置決めするとともに、1次コイル11と2次コイル12との間が所望する両コイル間隙d1となる距離に位置決めした状態で、1次コイル用拘束部材1とコア20の中脚部21とを接着剤にて接着する。なお、1次コイル11を先にコア20内に配置し後から2次コイル12をコア20内に配置してもよい。また、1次コイル11と2次コイル12のトランス10の上下方向に対する位置決めを行う際、第2実施例と同様に図示しない治具を用いてトランス10を組み立てることができる。
【0098】
第4実施例によれば、第1実施例と同様の効果が得られる。さらに第4実施例によれば、1次コイル用スペーサ5、中間スペーサ7を省略することができる。これらの部品(1次コイル用スペーサ5、中間スペーサ7)を用いないことから、部品点数が削減され、製造コストを低く抑えることができる。
【0099】
(第5実施例)
図11は、第5実施例の構成を示す図である。
【0100】
第5実施例では、1次コイル用スペーサ5、2次コイル用スペーサ6が省略され、中間スペーサ7が設けられている。よって、第1実施例における保持手段のうち、「1次コイル用スペーサ」、「2次コイル用スペーサ」、「1次コイル用スペーサと1次コイルとの接着」、「2次コイル用スペーサと2次コイルとの接着」の各手段が省略されており、「中間スペーサ」、「中間スペーサと1次コイルとの接着、中間スペーサと2次コイルとの接着」、「1次コイル用拘束部材と中脚部との接着」、「2次コイルと外脚部との接着」の各保持手段により、コア20内で1次コイル11および2次コイル12の相対位置が保持される。
【0101】
同図11に示すように、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから1次コイル11の下面までの高さがd5となる高さに位置決めした状態で、1次コイル用拘束部材1とコア20の中脚部21とを接着剤にて接着する。
【0102】
また中間スペーサ7を1次コイル11の外周面に接着剤にて接着する。
【0103】
また、下コア20Aの連結部23の内側底面23aから2次コイル11の下面までの高さがd6となる高さ、つまり所望する両コイル間段差d2(=d5−d6)が得られる高さに位置決めするとともに、1次コイル11と2次コイル12との間が所望する両コイル間隙d1となる距離に位置決めした状態で、2次コイル12の内周面を中間スペーサ7に接着剤にて接着する。また、1次コイル11と2次コイル12のトランス10の上下方向に対する位置決めを行う際、第2実施例と同様に図示しない治具を用いてトランス10を組み立てることができる。
【0104】
また、絶縁テープ19で覆われた2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とを接着剤にて接着し2次コイル12を外脚部22に固着する。ここで、絶縁テープ19の代わりに絶縁性のない両面テープなどの一般的なテープ(接着テープ)を用いてもよい。この場合、2次コイル12の外周面にテープを貼着した上で、絶縁性のある接着剤によって外脚部22の内周面に固着させることで、2次コイル12とコア20との電気的な絶縁は確保できる。なお、絶縁テープ19を省略し、2次コイル12の外周面とコア20の外脚部22の内周面とのクリアランスを接着剤のみで埋めることで2次コイル12を外脚部22に固着してもよい。
【0105】
なお、中間スペーサ7の1次コイル11への接着、中間スペーサ7の2次コイル12への接着のうち、いずれか一方あるいは両方の接着を省略する実施も可能である。また1次コイル用拘束部材1が中脚部21に接着され中間スペーサ7が1次コイル11および2次コイル12の両方に接着されていれば、2次コイル12の外周面の外脚部22への接着を省略してもよい。また、2次コイル12の外周面が外脚部22に接着され、中間スペーサ7が1次コイル11および2次コイル12の両方に接着されていれば、1次コイル用拘束部材1の中脚部22への接着を省略することができる。つまり、1次コイル11とスペーサ7と2次コイル12の三部品相互の相対位置が定められ、その三部品が一体化した物とコア20との相対位置が、両コイル間段差d2(=d5−d6)の寸法にしたがってトランス10を組み立てることができれば、いずれかの接着を省略できるということである。
【0106】
また、2次コイル12を先にコア20内に配置してから中間スペーサ7を配置し、その後で1次コイル11をコア20内に配置してもよく、先に1次コイル11および2次コイル12をコア20内に配置し後から中間スペーサ7を配置してもよい。
【0107】
第5実施例によれば、第1実施例と同様の効果が得られる。さらに第5実施例によれば、1次コイル用スペーサ5、2次コイル用スペーサ6を省略することができる。これらの部品(1次コイル用スペーサ5、2次コイル用スペーサ6)を用いないことから、部品点数が削減され、製造コストを低く抑えることができる。
【0108】
(第6実施例)
第6実施例では、1次コイル用スペーサ5が省略され、2次コイル用スペーサ6、中間スペーサ7が設けられている。
【0109】
図12は、第6実施例の構成を示す図である。すなわち、2次コイル用スペーサ6が設けられた第4実施例の構成に中間スペーサ7を追加した構成、あるいは中間スペーサ7が設けられた第5実施例の構成に2次コイル用スペーサ6を追加した構成である。よって、第4実施例、第5実施例と説明が重複するのでその説明は省略する。
【0110】
第6実施例によれば、第1実施例と同様の効果が得られる。さらに第6実施例によれば、1次コイル用スペーサ5を省略することができる。この部品(1次コイル用スペーサ5)を用いないことから、部品点数が削減され、製造コストを低く抑えることができる。
【0111】
(第7実施例)
第7実施例では、2次コイル用スペーサ6が省略され、1次コイル用スペーサ5、中間スペーサ7が設けられている。
【0112】
図13は、第7実施例の構成を示す図である。すなわち、1次コイル用スペーサ5が設けられた第3実施例の構成に中間スペーサ7を追加した構成、あるいは中間スペーサ7が設けられた第5実施例の構成に2次コイル用スペーサ5を追加した構成である。よって、第3実施例、第5実施例と説明が重複するのでその説明は省略する。
【0113】
第7実施例によれば、第1実施例と同様の効果が得られる。さらに第7実施例によれば、2次コイル用スペーサ6を省略することができる。この部品(2次コイル用スペーサ6)を用いないことから、部品点数が削減され、製造コストを低く抑えることができる。
【符号の説明】
【0114】
10 トランス、20 E型コア、20A 下コア、21 中脚部、
【0115】
22 外脚部、23 連結部、23a 内側底面、11 1次コイル、12 2次コイル、1 1次コイル用拘束部材、2 2次コイル用拘束部材、9 充填剤、5 1次コイ
ル用スペーサ、2次コイル用スペーサ、7 中間スペーサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中脚部と、外脚部と、前記中脚部と前記外脚部とを連結し内側底面を有する連結部とが設けられたコアと、前記連結部の内側底面の上方にあって前記中脚部の周囲に巻回された1次コイルと、前記連結部の内側底面の上方にあって前記1次コイルの外周面から所定の間隙だけ離間されて前記1次コイルと同心状に巻回された2次コイルとが備えられたトランスにおいて、
電流および磁束を絶縁する絶縁性を有する1次コイル用拘束部材によって拘束された1次コイルと、前記絶縁性を有する2次コイル用拘束部材によって拘束された2次コイルとが前記コア内に収容され、前記内側底面から前記1次コイルの下面までの高さと前記内側底面から前記2次コイルの下面までの高さとが異なる高さに当該1次コイルおよび2次コイルが位置決めされ、かつ前記内側底面から前記1次コイルの下面までの間および前記内側底面から前記2次コイルの下面までの間が空隙を形成するように、当該1次コイルおよび前記2次コイルが前記コア内で保持され、空気よりも熱伝導率の高い熱伝導性を有する充填剤が、少なくとも前記内側底面と前記1次コイルおよび前記2次コイルとの間の空隙に充填されてなる構造であることを特徴とするトランス。
【請求項2】
前記1次コイルの外周面と前記2次コイルの内周面との間に空隙が形成され、当該空隙に前記充填剤が充填されてなる構造であることを特徴とする請求項1記載のトランス。
【請求項3】
前記1次コイル用拘束部材は、前記1次コイルの内周面から前記中脚部側に所定の厚みを有する部材であって、当該1次コイルの周方向に点在して配置されており、前記1次コイル用拘束部材が前記中脚部に固着されることで、前記1次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする請求項1または2に記載のトランス。
【請求項4】
前記2次コイルの外周面が前記外脚部に、前記絶縁性を有する接着剤にて接着されることで、前記2次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする請求項1から3に記載のトランス。
【請求項5】
前記2次コイルの外周面に、テープを貼着した上で、前記絶縁性を有する接着剤によって前記外脚部に固着することで、前記2次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする請求項1から3に記載のトランス。
【請求項6】
前記絶縁性を有する1次コイル用スペーサが、前記内側底面と前記1次コイルとの間に介在され、かつ当該1次コイルの周方向に点在して配置されることで、前記1次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする請求項1から5に記載のトランス。
【請求項7】
前記絶縁性を有する2次コイル用スペーサが、前記内側底面と前記2次コイルとの間に介在され、かつ当該2次コイルの周方向に点在して配置されることで、前記2次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする請求項1から6に記載のトランス。
【請求項8】
前記充填剤は、前記1次コイル用スペーサまたは/および前記2次コイル用スペーサよりも熱伝導率が高い材質で構成されていることを特徴とする請求項6または7に記載のトランス。
【請求項1】
中脚部と、外脚部と、前記中脚部と前記外脚部とを連結し内側底面を有する連結部とが設けられたコアと、前記連結部の内側底面の上方にあって前記中脚部の周囲に巻回された1次コイルと、前記連結部の内側底面の上方にあって前記1次コイルの外周面から所定の間隙だけ離間されて前記1次コイルと同心状に巻回された2次コイルとが備えられたトランスにおいて、
電流および磁束を絶縁する絶縁性を有する1次コイル用拘束部材によって拘束された1次コイルと、前記絶縁性を有する2次コイル用拘束部材によって拘束された2次コイルとが前記コア内に収容され、前記内側底面から前記1次コイルの下面までの高さと前記内側底面から前記2次コイルの下面までの高さとが異なる高さに当該1次コイルおよび2次コイルが位置決めされ、かつ前記内側底面から前記1次コイルの下面までの間および前記内側底面から前記2次コイルの下面までの間が空隙を形成するように、当該1次コイルおよび前記2次コイルが前記コア内で保持され、空気よりも熱伝導率の高い熱伝導性を有する充填剤が、少なくとも前記内側底面と前記1次コイルおよび前記2次コイルとの間の空隙に充填されてなる構造であることを特徴とするトランス。
【請求項2】
前記1次コイルの外周面と前記2次コイルの内周面との間に空隙が形成され、当該空隙に前記充填剤が充填されてなる構造であることを特徴とする請求項1記載のトランス。
【請求項3】
前記1次コイル用拘束部材は、前記1次コイルの内周面から前記中脚部側に所定の厚みを有する部材であって、当該1次コイルの周方向に点在して配置されており、前記1次コイル用拘束部材が前記中脚部に固着されることで、前記1次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする請求項1または2に記載のトランス。
【請求項4】
前記2次コイルの外周面が前記外脚部に、前記絶縁性を有する接着剤にて接着されることで、前記2次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする請求項1から3に記載のトランス。
【請求項5】
前記2次コイルの外周面に、テープを貼着した上で、前記絶縁性を有する接着剤によって前記外脚部に固着することで、前記2次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする請求項1から3に記載のトランス。
【請求項6】
前記絶縁性を有する1次コイル用スペーサが、前記内側底面と前記1次コイルとの間に介在され、かつ当該1次コイルの周方向に点在して配置されることで、前記1次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする請求項1から5に記載のトランス。
【請求項7】
前記絶縁性を有する2次コイル用スペーサが、前記内側底面と前記2次コイルとの間に介在され、かつ当該2次コイルの周方向に点在して配置されることで、前記2次コイルが前記コア内で保持されていることを特徴とする請求項1から6に記載のトランス。
【請求項8】
前記充填剤は、前記1次コイル用スペーサまたは/および前記2次コイル用スペーサよりも熱伝導率が高い材質で構成されていることを特徴とする請求項6または7に記載のトランス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−182220(P2012−182220A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42759(P2011−42759)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
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