説明

トランプカードの検査装置

【課題】 トランプカードの組の中に所定の組を構成しない異常トランプカードが含まれていないかを検査(判別)することのできるトランプカードの検査装置を提供する。
【解決手段】 本発明では、真正なトランプカードの中に不正目的で混入された異常トランプカードを発見するために、所定の組を構成することを表す識別コードをトランプカードに設ける。そして、所定の組を構成する複数枚のトランプカードのそれぞれから識別コードを読取ることにより、真正なトランプカードであるか異常トランプカードであるかを判断する。識別コードは、通常の使用状態において人間の視覚により見ることのできない状態でトランプに与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランプカードの組の中に所定の組を構成しない異常トランプカードが含まれていないかを検査(判別)する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カジノの遊技場では、複数のコーナーが設けられており、各コーナーにおいてトランプカードを用いたゲームが行われる。このようなカジノ遊技場において、営業者はゲームにおいて不正が行われなかったかを監視している。悪質な不正行為者は、トランプカードを改ざんしたり自ら用意したトランプカードをゲームに持ち込んだりすることにより不正なカードを利用する。
【0003】
このような不正なカードを発見するために、従来は、人間の手作業による検査を行っていた。具体的には、人間がある一組を構成するトランプカードのスート(スペード、ハート、ダイヤ、クローバ)及びランク(A、2、・・・、10、J、Q、K)を確認することにより、その組の中に不正なカードが混入されていないかを検査していた。
【特許文献1】特開平11−267264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の検査方法では、ある組に不正カードが混入されただけの場合及び、ある組からトランプカードが抜き取られた場合には、その組を用いたゲームにおいて不正行為が行われたことを発見することができた。しかし、不正なカードがある組に混入されるとともに、その不正なカードに対応する正当なカード、即ち不正なカードとスート及びランクが同一であるカード、がその組から抜き取られていた場合には、その組を用いたゲームにおいて不正が行われたことを発見することはできない。通常は、不正カードは他のカードと見た目がほとんど同じであるからである。
【0005】
また、人間の手作業による検査作業では、人件費が嵩むとともに作業速度が遅いという問題がある。更に、検査作業を行う者自身が、検査作業において不正行為を行う可能性があり、検査の信頼性が低いという問題もある。
【0006】
特に、近年トランプカードの品質が向上して長期間、例えば2週間程度、使用できるようになったことにより、使用後のトランプカードを再使用するための検査が多くなり、その作業性の向上と信頼性の向上及びコストの削減が大きな課題となっている。
【0007】
そこで、本発明は、ある組に不正なカードが混入していないかを判定することが可能なトランプカードの検査技術を提供し、また、その検査技術に好適に利用されるトランプカードを提供することを目的とする。本発明は、特に、人間の見た目には正当なカードに見える不正なカードが混入されていることを適切に発見することが可能な検査技術を提供し、また、その検査技術に好適に利用されるトランプカードを提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、トランプカードの検査において、人件費を抑え、作業速度を向上させ、又は検査の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、検査装置は、トランプカードを検査する検査装置であって、トランプカードに設けられた識別コードであって所定の組を構成することを表す識別コードを読み取って読取データを生成するためのコード読取部と、前記読取データに基づいて、複数枚のトランプカードの中に所定の組を構成しない異常トランプカードが含まれていることを判定する判定部と、を有する。
【0010】
この検査装置により、不正行為者が不正なカードとして持ち込んだトランプカードは、異常トランプカードとして判別される。なお、この発明において、読取とは、イメージとして現れた識別コードを光学的に読み取ることのほか、トランプカードに磁気的に設けられた識別コード電磁気的に読み取ることなど、識別コードの内容を認識するためのすべての処理を含むものである。
【0011】
1デッキ若しくは複数デッキからなる所定の組ごとに異なる識別コードを設けたトランプカードを使用しているカジノ遊技場においてこの検査装置を導入すれば、そのカジノ遊技場の管理者は、その所定の組に属するべき複数枚のトランプカードの中に不正なカードが混入された場合に、そのような複数枚のトランプカードのセットを異常トランプカードが混入された異常なセットとして認識することができる。特に、不正行為者があるテーブルで使用されているトランプカードを盗んで異なるテーブルにおいて不正に利用する場合など、絵柄だけでは判定できない異常トランプカードの混入も、識別コードを読み取ることにより発見可能となる。
【0012】
識別コードによって分類される組の全トランプカードが一度の検査で検査されなくてもよい。例えば、1000デッキからなる組に対してある識別コードが与えられた場合に、その1000デッキのうちの数デッキのみを検査対象としてよい。この場合にもその検査対象たる複数枚のトランプカードの中にその組を構成しない異常トランプカードが含まれる場合には、その異常トランプカードが発見される。
【0013】
この検査装置により、トランプカードの検査作業の作業性が向上するとともに、その信頼性も向上し、さらにはコストの削減にも繋がる。
【0014】
好ましくは、前記識別コードは、通常の使用条件にて人間の視覚により見ることができない状態で前記トランプカードに設けられている。
【0015】
これにより、トランプカードの本来の使用に支障をきたすことなく、識別コードによる異常トランプカードの混入の判定が可能となる。つまり、表(おもて)面にはスート及びランクからなる種類表記、裏面には絵柄が見えるのみで従来のトランプカード何ら変わらなく見えるトランプカード、即ち見た目には全く同じであるが組を構成しないトランプカード、を利用することができるため、カジノ遊戯者は違和感なくトランプカードを利用することがき、カジノ経営者もこの技術を導入しやすくなる。
【0016】
なお、通常の使用条件にて人間の視覚により見ることができない状態とは、例えば、識別コードが所定の光を与えることによって始めて人間の目に見えるような特殊インクでトランプカード表面に印刷されている状態や、識別コードがトランプカードに磁気情報として与えられている状態などである。
【0017】
好ましくは、上記判定装置は、トランプカードに所定の光を与えるための光源を有し、前記識別コードは、前記所定の光を受けることにより前記コード読取部によって読取可能となる。
【0018】
好ましくは、上記検査装置は、前記判定部による判定の結果を報知する、報知部をさらに有する。
【0019】
これにより、検査装置の操作者は検査した複数枚のトランプカードに異常トランプカードが混入されていることを容易に知ることができる。報知の手段としては、操作者の視覚に訴えるもの(例えばモニタ表示により報知するもの)であっても、聴覚に訴えるもの(例えばブザー音によって報知するもの)であっても、その他の感覚に訴えるものであってもよい。
【0020】
好ましくは、上記検査装置は、トランプカードの種類表記を読み取る種類表記読取部をさらに有し、前記報知部は、前記判定の結果をモニタ表示するモニタであって、前記種類表記読取部により読み取られた種類をモニタ表示することにより異常トランプカードの種類をも報知する。
【0021】
これによれば、検査装置の操作者は、異常トランプカードが混入されていること及びその異常トランプカードを視覚により認識することができる。
【0022】
好ましくは、前記判定部は、前記コード読取部が前記複数枚のトランプカードのいずれかについて識別コードを読み取れない場合に、前記複数枚のトランプカードの中に所定の組を構成しない異常トランプカードが含まれていると判定する。
【0023】
これにより、不正者が識別コードが付されていないトランプカード即ちカジノ遊戯場の外部から持ち込んだ不正のトランプカードをも異常トランプカードとして判別することができる。
【0024】
好ましくは、上記検査装置は、前記所定の組に対応する正常識別コードを記憶する、正常識別コード記憶部をさらに有し、前記判定部は、前記コード読取部により読み取られた識別コードと前記正常識別コード記憶部に記憶された正常識別コードとを比較して、その識別コードと正常識別コードとが一致しない場合に、前記複数枚のトランプカードの中に前記所定の組を構成しない異常トランプカードが含まれていると判定する。
【0025】
この検査装置によれば、まず参照基準とされる正常識別コードが特定され、検査対象となる複数枚のトランプカードがそれぞれその特定された正常識別コードと一致するか否かにより異常トランプカードの判別が行われる。
【0026】
好ましくは、前記記憶部は、前記コード読取部により読み取られた識別コードを正常識別コードとして記憶する。
【0027】
この検査装置によれば、コード読取部を、検査対象のトランプカードから識別コードを読取るための手段として用いる他、正常識別コードを特定するための手段として併用することができ、装置の構成が簡素化できる。
【0028】
好ましくは、前記正常識別コードとして記憶される識別コードは、前記複数枚のトランプカードから読み取られた識別コードのうちの最も多い識別コードである。
【0029】
この装置においては、検査対象である複数枚のトランプカードにおいて、最も多い識別コードを基準対象となる正常識別コードとする。したがって、ある複数枚のトランプカードについて、検査装置の操作者がその複数枚のトランプカードにおける正常識別コードを認識していないとしても、異常トランプカードが存在するか否かを判定することができる。つまり、検査を実施するに当たって、その操作者がその検査対象に対する正常識別コードを予め認識する必要がなくなる。
【0030】
好ましくは、前記正常識別コードとして記憶される識別コードは、前記複数枚のトランプカードについて最初に読み取られた識別コードである。
【0031】
検査対象たる複数枚のトランプカードは、その大多数が正常トランプカードでることが想定されるので、最初に読み取った識別コードを正常識別コードと考えることができる。
【0032】
なお、最初に異常トランプカードの識別コードを読み取り、そのコードを正常識別コードとしてしまった場合には、本来正常であるトランプカードが異常トランプカードとして判定されてしまうことになる。しかしながら、その場合にも、結果としては、その検査対象たる複数枚のトランプカードに不正に混入されたトランプカードが存在することは判定できることになる。
【0033】
なお、最初に読取られて正常識別コードとして記憶される識別コードを前記複数枚のトランプカードとは異なるサンプルカードから読み取られた識別コードとすれば、上記の問題は解消する。
【0034】
好ましくは、上記検査装置は、操作者が識別コードを入力するための入力部をさらに有し、前記正常識別コードとして記憶される識別コードは、前記入力部から入力された識別コードである。
【0035】
好ましくは、前記所定の組は複数のデッキから構成され、前記複数のデッキはそれぞれ異なる正常識別コードを有し、かつ、前記判定部は、前記コード読取部により読み取られた識別コードが前記それぞれのコードのいずれにも一致しない場合に、前記複数枚のトランプカードの中に前記所定の組を構成しない異常トランプカードが含まれていると判定してもよい。
【0036】
トランプカードは数デッキを一組として使用されることがある。この様な場合に、この検査装置によれば、各デッキがそれぞれ別の識別コードを持っていてもよい。例えば、検査対象たる複数枚のトランプカードが4デッキからなっており、デッキ毎に識別コードが異なっていたとしても、それら4つの識別コードを全て正常識別コードとして、その4つの識別コードのいずれをも有さないカードを異常トランプカードとして判別することができる。
【0037】
好ましくは、前記判定部は、前記コード読取部により前記複数枚のトランプカードからそれぞれ読み取られた識別コードを互いに比較することによりその複数枚のトランプカードの中に前記所定の組を構成しない異常トランプカードが含まれていると判定する。
【0038】
この検査装置によれば、検査対象である複数枚のトランプカードの識別コードがすべて一致する場合を除き、異常トランプカードが混入されていると判定される。
【0039】
好ましくは、上記検査装置は、前記所定の組を構成しない異常トランプカードを摘出する異常トランプカード摘出手段をさらに有する。
【0040】
これによれば、混入された異常トランプカードがどのトランプカードであるかを確認することができる。
【0041】
好ましくは、前記異常トランプカード摘出手段は、前記読取部による読み取りが終了した異常トランプカードを他のトランプカードとは異なる場所に配置することにより異常トランプカードを摘出する。
【0042】
この検査装置によれば、異常トランプカードを容易に取り出すことができる。
【0043】
好ましくは、上記検査装置は、前記複数枚のトランプカードを順に前記コード読取部に送る搬送部と、前記摘出手段は、前記判定手段により異常トランプカードが含まれていると判定した場合に前記搬送部の動作を停止させることにより異常トランプカードを摘出する。
【0044】
この検査装置によれば、異常トランプカードを容易に取り出せるとともに、検査にかかる時間を短縮することができる。
【0045】
本発明にかかる検査装置は、前記複数枚のトランプカードに表された絵柄を読み取る絵柄読取部をさらに有し、前記判定部は、さらに、前記絵柄読取部により読み取られた絵柄に基づいて、前記複数枚のトランプカードの中に前記所定の組を構成しない異常トランプカードが含まれていることを判定する。
【0046】
この装置によれば、識別コードと絵柄とによって異常トランプカードの混入を判定するので、異なる絵柄のトランプについては同一の識別コードを割り当てることができる。
【0047】
好ましくは、上記検査装置は、前記絵柄が表された面とは逆の面に表されたトランプカードの種類表記を読み取る種類表記読取部をさらに有し、前記コード読取部、前記絵柄読取部、及び前記種類表記読取部は、共通の読取装置であり、前記絵柄又は前記種類表記を前記共通の読取装置に向けて反射させるミラーをさらに有する。
【0048】
この装置によれば、ミラーを用いているので、本来それぞれ別々の面に表される絵柄と種類表記とを共通の読取装置によって読み取ることができる。したがって、片面ずつを読み取る読取部をそれぞれ設ける必要がなく、装置構成の簡略化及びコストダウンが図られる。なお、この場合において、識別コードはトランプカードのどちらの面に設けられていてもよい。識別コードが前記共通の撮像装置によって直接的に読み取れない場合には、この識別コードをも前記ミラーを用いて読み取ればよい。
【0049】
好ましくは、上記検査装置は、前記複数枚のトランプカードをスタックするスタッカと、少なくとも一対のローラを有し、前記一対のローラにより前記スタッカにスタックされるトランプカードを順に前記共通の読取装置に対向する位置に搬送する搬送部とをさらに有し、前記ミラーは、前記一対のローラにより片持ちされるトランプカードの自由端側の絵柄又は種類表記を前記共通の読取装置に向けて反射させる。
【0050】
この構成によって、装置の小型化が図られる。
【0051】
上記目的を達成するために、トランプカードは、通常の使用状態において人間の視覚によって見ることができないとともに所定の識別装置によって識別可能な識別コードであって、そのトランプカードが属する組を表す識別コードの情報が与えられている。
【0052】
このトランプカードにより、トランプカード自体は通常の使用状態では人間には従来のトランプと何ら見分けがつかないにもかかわらず、そのトランプカードの組に対して異常トランプカードが混入された場合には、所定の識別装置を用いることにより、そのような異常トランプカードの混入を判定することができる。したがって、このトランプカードを使用するカジノ遊技場においては、トランプカードの利用者(カジノの遊戯者)に違和感を与えることなく、また、通常のゲームに支障をきたすことなく、例えば、他のテーブルからトランプカードが不正に持ち込まれたことを発見することができる。また、このトランプカードによれば、同じ絵柄であって、かつ、すべてのスート及びランクが揃った複数枚のトランプカードであっても、その中に異常トランプカードが含まれている場合には、それを判定することができる。この点で、従来のように、単にスート及びランクがすべて揃っているか否かを判断するだけの検査装置と比較して、より巧妙な不正行為、即ち、不正なカードを混入させるとともにその混入したカードと同一のスート及びランクの正常カードを取り除く不正行為、をも発見できる。
【0053】
好ましくは、上記トランプカードにおいて、前記識別コードが少なくとも2つあり、それら2つの識別コードはトランプカードの中心に関して点対称である。
【0054】
このような構成にすることにより、トランプカードが上下どちらの向きであるかに関わらずトランプカードの所定位置において識別コードが認識される。なお、識別コードが少なくとも2つあれば、点対称の関係にない3つ目の識別コードが設けられていてもよいし、点対称の位置関係にある他の2つの識別コードが更に設けられていてもよい。
【0055】
好ましくは、上記トランプカードにおいて、前記識別コードは、所定の光を受けることにより可視化される塗料で印刷されている。
【0056】
トランプカードに識別コードの情報を与える手法は、種々あるが、このように塗料で印刷する手法は最も製造コストを低く抑えられる手法の一つである。
【0057】
好ましくは、上記のトランプカードにおいて、前記識別コードは、バーコードとして印刷されている。
【0058】
この構成より、識別コードの読取りが容易かつ確実になる。
【0059】
好ましくは、上記トランプカードにおいて、前記識別コードは、トランプカードの種類表記と重ならない位置に印刷されている。
【0060】
この構成により、種類表記も読み取りたい場合には識別コードも種類表記も明確に読み取ることができる。
【0061】
好ましくは、上記のトランプカードにおいて、前記識別コードは、前記組に固有の組情報と、その組の製造年月日の情報とを有する。
【0062】
この構成によれば、製造年月日が異なる組について同一の組情報を与えた場合にも、識別コード全体としては特定の組を表すこととなる。
【0063】
好ましくは、上記のトランプカードにおいて、前記識別コードは、そのトランプカードが使用されるカジノに固有のカジノ情報を有する。
【0064】
また、上記目的を達成するために、検査方法は、数枚のトランプカードを検査対象として検査する検査方法であって、所定の組を構成するそれぞれのトランプカードにその組を表すコードとして設けられた識別コードを読み取る工程と、前記読み取りの結果に基づいて、検査対象たる複数枚のトランプカードの中に所定の組を構成しない異常トランプカードが含まれていることを判定する工程とを有する。
【発明の効果】
【0065】
本発明によれば、トランプカードの検査作業の作業性が向上するとともに、その信頼性も向上し、さらにはコストの削減にも繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0067】
〔トランプカード〕
図1は、トランプカードの表(おもて)面の通常の使用状態における概観図である。また、図2は、図1のトランプカードに特殊光線としての紫外線を照射したときの概観図である。トランプカード10の表(おもて)面には、通常の使用状態では人間の視覚では見ることのできない状態で識別コードが記録さている識別コード記録部11と、スートとしてスペード、ハート、ダイヤ、クローバのいずれか、ランク(ヴァリュ)としてA、2、・・・10、J、Q、Kのいずれか、がそれぞれ表記された種類表記部12とが設けられている。
【0068】
なお、本明細書及び請求の範囲において、「種類」とは、トランプカードのスートとランクとを意味し、「種類表記」とは、トランプカードの表(おもて)面に表されたスートとランクとを示す表記を意味する。また、「絵柄」とは、トランプカードの裏面に表された柄を意味する。1デッキを構成するトランプカードでは、それぞれ表面の種類表記が異なるとともに、すべて裏面の絵柄が同じである。通常のトランプゲームでは1デッキのみを用いるが、カジノでは、同一絵柄同士の複数デッキを用いてゲームを行うことがある。
【0069】
識別コード記録部11は、トランプカードの長方向の端方に設けられている。その識別コード記録部11には、識別コードとしてのバーコード110が設けられている。バーコード110は、紫外線(ブラックライト)が当たると発色して人間の肉眼でも見ることができる紫外線発色インクでトランプカード10に印刷されている。
【0070】
また、図1に示すように、識別コード記録部11は、種類表記部12と重ならないように設けられている。なお、図1及び図2に示すように、トランプカードは、従来のトランプカードと同様に、ランクの数だけのスートマークを用いて種類を表記している。これを種類表記部として用いることも可能である。
【0071】
図3は、他の例のトランプカードの表(おもて)面の通常の使用状態における概観図である。また、図4は、図3のトランプカードに紫外線を照射したときの概観図である。図3及び図4の例では、識別コード記録部11がトランプカード10の両長辺の近くに設けられている。トランプカード10には、カード本体の短方向の両端方に対向するように、2つのバーコード110が印刷されている。
【0072】
識別コード記録部11は、トランプカード10の中心に関して点対称な位置に2つあり、両識別コード記録部11には同じ識別コードが与えられる。
【0073】
ここで、識別コード記録部11が1個所にしか設けられていないとすれば、後述する検査装置により検査をする際には、使用後にその上下向きがバラバラになってしまっている複数枚のトランプカードをまず、その単一の識別コードが所定の位置にくるように向きをそろえなければならない。そして、このような作業は煩雑である。ましてや識別コードは通常の使用状態において見えないのであるから、単一の識別コードの位置が揃うように向きをそろえることは困難である。さらに、トランプカードには、上下の区別のないデザインがされているカードもあるので(例えばダイヤの4など)、そのようなトランプカードについてはデザインを頼りに向きをそろえることもできない。
【0074】
これに対して、単一の識別コードのみを設けたトランプカードについて、その向きによっていずれかに存在するという2個所から識別コードを読取り(必ずどちらか一方からしか読取れない)読取れた方の読取識別コードを採用することもできるが、検査装置の構成が複雑になるという点で好ましくない。
【0075】
そこで、図3及び図4に示すトランプカード10では、2つの識別コード110をトランプカードの中心に関して点対称な位置に設けている。これにより、検査されるそれぞれのトランプカードが上下いずれの方向を向いていたとしても、検査装置は、所定の位置に識別コードを見出すことができる。この構成によれば、検査作業の煩雑さを伴うことなく、また検査装置を複雑にすることなく、識別コードの読取りに基づく検査を行うことができるという利点がある。
【0076】
なお、点対称な位置関係にある2つの識別コード以外に、同じ識別コードを更に別の位置に設けてもよいし、点対称な位置関係にある他の2つの識別コードの組を更に設けてもよい。
【0077】
検査装置によりバーコード110、110を読み取る場合は、両方を読み取って、一方が読取不可能でも一方が読取り可能であれば、正常カードと判別されるようにしてもよい。また、バーコードを構成するコード内容が多い場合に、2箇所に分けて印刷し、両方のコードデータを一つのデータとしてもよい。
【0078】
識別コードは紫外線により可視化されるインクの他、赤外線により可視化されるインクなど他のインクで印刷されてもよい。さらに、上記の例では、バーコードを通常の使用状態において人間の視覚により見えないインクで印刷することとしたが、これに限らず、通常の使用状態において人間の視覚により見える可視インクで印刷してもよい。このような可視インクによってバーコード110が印刷されているとその使用者にとっては違和感があるが、ゲームそのものに影響を与えることはない。従って、カードを安価に出来るという点では効果的である。
【0079】
また、識別コードを磁気的に設ける場合には、磁化された部分が黒くカード表面に現れてもよい。この場合にも人間は通常の使用状態において何らかの識別コードが与えられていることは視覚により判断できるが、その識別コードが何であるのかを見ることはできない。つまり、人間の視覚によっては、ある識別コードの情報が与えられた磁化部分と他の識別コードの情報が与えられた磁化部分とを区別することはできない。このような状態も「通常の使用状態において人間の視覚により見ることができない」状態である。
【0080】
また、図1〜図4の例の他、識別コード記録部11は、トランプカード10の裏面に設けられていてもよい。更に、トランプカードに内蔵されたICチップに識別コードの情報を与えるなどにより、識別コード部11をトランプカード10の中に設けてもよい。
【0081】
識別コードは、バーコードだけでなく、数字や記号等で構成されていてもよく、また、それらを混合して使用してもよい。
【0082】
図5は、トランプカード10に含まれる情報を模式的に表した図である。各トランプカード10は、それに含まれる情報として、そのトランプカードが所属する組を表す識別コード情報110Jと、そのトランプカードの種類を表す種類情報12Jと、トランプカードの絵柄を表す絵柄情報13Jとを有する。なお、1デッキのトランプカードによって一つの組が構成される場合には、組を表す識別コード情報110Jは各デッキ毎に異なり、複数デッキのトランプカードによって一つの組が構成される場合には、組を表す識別コード情報110Jは、その組を構成する複数デッキについて共通である。
【0083】
識別コード情報110Jは、トランプカード10が所属する組に対して固有に与えられた組コード情報1101、製造年月日コード情報1102、製造元コード情報1103、カジノコード情報1104及び製造ロットコード情報1105からなっている。
【0084】
ここで、組コード1101は例えば100デッキ若しくは1000デッキのトランプカードに対して共通に与えられてもよいし、デッキ毎に固有に与えられてもよい。即ち、組は例えば1000デッキにより構成されてもよいし、1デッキにより構成されてもよい。
【0085】
更に、実際の検査においては、後述するように、例えば1デッキ、4デッキ又は8デッキなどのトランプカードが検査の対象となり、その検査対象となる複数枚のトランプカードは、必ずしも識別コードにより分類される組とは一致しない。例えば1000デッキのトランプカードに対して共通の識別コードが与えられている場合に、その1000デッキのうちの8デッキのみを一組として検査の対象とすることがある。また、1デッキのトランプカードに対してそのデッキに固有の識別コードが与えられたときに、それぞれ識別コードの異なる4デッキを一組として検査の対象とすることがある。いずれの場合にも、後述する検査処理により、識別コードに基づく検査が可能である。
【0086】
組コード情報1101については、少なくとも同じ製造年月日コード内においては一組一組に違う組コードとされる。これにより、識別コード全体としては、その組に固有のコードが与えられることとなる。
【0087】
種類情報12Jには、種類表記部12が有するスート情報121及びランク情報122と、識別コード110と同様に通常の使用状態において不可視な状態で記録された種類コード情報1106とからなる。なお、種類コード情報1106は、識別コード110と同じ場所に設けられていてもよいし、また、識別コード110の中に含まれていてもよい。
【0088】
絵柄情報13Jは、トランプカード10の裏面の絵柄自身が有する画像情報である。
【0089】
〔第1の検査装置〕
図6は、検査装置の第1の形態を表す概略側面図である。また、図7は、図6の検査装置の概略平面図である。図6及び図7に示される検査装置1は、図3及び図4のタイプのトランプカード10を検査するための装置として設計されている。
【0090】
トランプカードの検査装置1は、検査対象たるトランプカード10の束100を置くためのカードセット台14と、トランプカード10をカードセット台14の底側から一枚ずつ送り出すための送出ローラ15とを有する。検査対象たるトランプカード10は、スート及びランクが表記され、識別コードが印刷された表(おもて)面を上向きにしてカードセット台14にセットされる。
【0091】
また、検査装置1は、カードセット台14から送り出されたトランプカード10を搬送するための、適宜な間隔をあけて設けられた搬送ローラ16及び17と、搬送ローラ16と搬送ローラ17の間の上方に設けられトランプカード10の識別コード記録部11に紫外線(ブラックライト)を照射するための紫外線ランプ19と、紫外線ランプ19の間に設けられ紫外線により発色したバーコード110を読み取って読取データを生成するための紫外線センサ20と、トランプカード10の種類表記を読み取って読取データを生成するためのCCDカメラ21と、搬送ローラ16と搬送ローラ17の間の下方に設けられトランプカード12の絵柄の形態を読み取るためのCCDカメラ22とを有する。
【0092】
なお、上記の紫外線センサ20を、紫外線ランプ19によって紫外線を照射された識別コード部11を撮影するCCDカメラとしてもよい。紫外線センサ20は上記のように識別コードがバーコードである場合の読取りに適しており、一方、CCDカメラは上記の識別コードが上記の特殊なインクによって数字や記号として印刷されている場合の読取りに適している。
【0093】
送出ローラ15によりカードセット台14から送り出されたトランプカード10は、搬送ローラ16によって紫外線センサ20などと対向する位置に搬送される。紫外線センサ20、CCDカメラ21及びCCDカメラ22は適宜なタイミングでトランプカード10の所定部分を読み取る。
【0094】
さらに、検査装置1は、異常カードを摘出するために、上下に回動して正常カードと異常カードの進行方向を切り換える仕分け片24と、その仕分け片24を回動駆動するロータリソレノイド25と、正常カードをストックする正常カードストッカ27と、異常カードをストックする異常カードストッカ28とを有する。正常カードストッカ27と異常カードストッカ28とには、それぞれトランプカード10を抜き取りやすくするための指通し切欠32、33が設けられている。
【0095】
また、検査装置1は、紫外線センサ20、CCDカメラ21及びCCDカメラ22により生成された読取データを記憶して正常カードと異常カードとの判別をするなどの種々の処理を行うための制御部31を有する。制御部31は、コンピュータによって構成され、記憶判定ユニット29と、記憶判定ユニット29の判定結果を報知するモニタ30とを有する。モニタ30は、タッチパネル式のオペレーションパネルとなっており、操作者からの入力を受け付ける機能も有する。
【0096】
図8は、検査装置1の機能的な構成を表すブロック図である。検査装置1は、制御部31と、摘出部50と、読取部60と、搬送部70とを有する。摘出部50は、図6及び図7における仕切り片24、ロータリソレノイド25、正常カードストッカ27及び異常カードストッカ28に対応し、異常カードであると判定されたトランプカードを特定できるように摘出する機能を担う。
【0097】
また、読取部60は、紫外線センサ20、CCDカメラ21及び22に対応し、トランプカード10の特定個所を読み取り、読取データを生成して制御部31に送る機能を担う。具体的に、読取部60においては、紫外線センサ20が識別コードを読取ることにより識別コード読取データが生成され、CCDカメラ21が種類表記を読取ることによって種類読取データが生成され、CCDカメラ22が絵柄を読取ることによって絵柄読取データが生成される。
【0098】
さらに、搬送部70は、送出ローラ15、搬送ローラ16及び17並びにそれらの駆動モータに対応し、カードセット台14にセットされたトランプカード10から識別コードなどを読み取るために一枚ずつ順に搬送する機能を担う。
【0099】
摘出部50、読取部60及び搬送部70は制御部31に電気的に接続されており、制御部31により制御されてその機能を発揮する。
【0100】
制御部31は、記憶判定部290と入出力部300とを有する。記憶判定部290は記憶判定ユニット29に対応する。記憶判定部290は、さらに、記憶部291と判定部292とに分けられる。記憶部291には、基準コードとしての正常識別コードを記憶する正常識別コード記憶部2911と、基準となる絵柄画像データとしての比較絵柄データを記憶する比較絵柄データ記憶部2912と、基準となる種類画像データを比較種類データとしてすべてのスート及びランクについて記憶している比較種類データ記憶部2913とを有する。
【0101】
また、判定部292は、読取部60の紫外線センサ20において生成され送られてきた識別コード読取データと正常識別コード記憶部2911に記憶された正常識別コードとを比較することにより、トランプカード10が正常であるか異常であるかを判定する識別コード判定部2921と、読取部60のCCDカメラ22において生成され送られてきた絵柄読取データと比較絵柄データ記憶部2912に記憶された比較絵柄データとを比較することにより、トランプカード10が正常であるか異常であるかを判定する絵柄判定部2922と、読取部60のCCDカメラ21において生成され送られてきた種類読取データと比較種類データ記憶部2913に記憶された比較種類データとを照合することにより、読み取ったトランプカード10の種類を特定する種類判定部2923とを有する。
【0102】
なお、判定部292は読取部60から送られてきた各読取データを解析して読取った識別コードを認識する処理も行う。ここで、紫外線センサ20によって識別コードと判断される像が検出されない場合には、判定部292は、エラーを表す識別コード(エラーコード)を認識する。つまり、識別コードを持たないトランプカード(外部から持ち込まれたカード)や識別コードが破損してしまったトランプカードが読取部60により読取られた場合には、エラーコードと認識される。このエラーコードは、現に使用されているどの識別コードとも一致しないものである。
【0103】
入出力部300は、タッチパネル方式のオペレーションパネルも兼ねるモニタ30に対応し、機能的には出力部301と入力部302とを含む。出力部301では、検査の結果やタッチパネルとしてのボタンなどを表示し、また、入力部では、出力部301での出力内容と対応させて操作者からの入力を受け付ける。なお、本明細書においてオペレーションパネルとして機能するモニタ30を「オペレーションパネル30」と称呼することがある。
【0104】
〔第1の検査処理〕
図9は、検査装置1を用いて複数枚のトランプカード10の束100を検査する第1の検査処理(検査処理1)のフローチャートである。検査処理1においては、まず、正常識別コードを特定し(ステップS1)、検査対象たる複数枚のトランプカードについて、ステップS1で特定された正常識別コードに基づいて各トランプカードが正常であるか異常であるかの判定をし(ステップS2)、その判定結果を報知する(ステップS3)。異常であると判断された組は廃棄処分するとともに、正常と判断された組は再使用することができる。
【0105】
なお、以下では、主として、ごちゃ混ぜにされた状態の4デッキ分のトランプカードからなる束を一組として検査する場合の処理として、検査処理1を説明する。
【0106】
ステップS1で特定された正常識別コードは正常識別コード記憶部2911に記憶される。ここで、識別コードは4デッキのトランプカードからなる一組に対して一つだけ与えられていてもよいし、また、4デッキの各々について互いに異なる識別コードが与えられていてもよい。前者の場合には、特定される正常識別コードは1つのみであり、後者の場合には、4つの正常識別コードが特定されることになる。
【0107】
ステップS1において正常識別コードを特定し、ステップS2において判定を行うまでの処理については種々の形態があるので、以下、順に説明する。
【0108】
〔第1の検査処理における形態1〕
形態1では、まず、検査対象たる複数枚のトランプカード10から識別コード110をそれぞれ読み取り、最も多いコードを正常識別コードと特定する。そして、再びその複数枚のトランプカード10から識別コード110を読み取り、先に特定した正常識別コードと一致するか否かを判断することにより、各トランプカード10が正常か異常かの判定を行う。
【0109】
図10は、形態1における正常識別コード特定処理(正常識別コード特定処理1)のフローチャートであり、図11は形態1における判定処理(判定処理1)のフローチャートであり、図12は、形態1におけるモニタ30の表示例である。
【0110】
正常識別コード特定処理1においては、まず、操作者が検査対象となる4デッキ分のトランプカード束100をカードセット台14上にセットする(ステップS111)。そして、オペレーションパネル30の読取判定スタートボタン303を押すことにより開始を指示する(ステップS112)。すると、入力部302によりこれを受けた制御部31は搬送部70としての送出ローラ15や搬送ローラ16及び17を駆動する(ステップS113)。そして、セットされたトランプカード束100から送出ローラ15によってトランプカード10を一枚ずつ送り出す。このローラ駆動の開始と同時に紫外線ランプ19が点灯する。なお、この時、仕切り片24は常時上を向いており、搬送ローラ17に搬送されたトランプカード10は全て正常カードストッカ27にストックされる。
【0111】
制御部31は、搬送されるトランプカード10から読取られた識別コードを記憶部291に記憶する(ステップS114)。ここで、紫外線ランプ19が点灯しているので、識別コードのインクが発色ており、紫外線センサ20を用いて識別コードを読取ることができる。
【0112】
次に、4デッキのすべてのトランプカードについて読取りを行ったかを判断する(ステップS115)。全て終了していない場合には(ステップS115でNO)、次のカードについて識別コードの読取り・記憶を行うべくステップS114に戻る。すべてについて読み取りが終了した場合(ステップS115でYES)には、記憶した識別コードの中で最も多いコードを正常識別コードと特定し、正常識別コード記憶部2911に記憶して(ステップS117)正常識別コード特定処理を終了する。
【0113】
ここで、4デッキについて識別コードが1つである場合には、最も多い識別コードをそのまま1つだけ正常識別コードとして特定する。一方、4デッキのそれぞれの識別コードが異なる場合には、読み取られた回数の上位4番目までのコードを正常識別コードとして特定する。
【0114】
判定処理1では、まず、操作者が正常識別コード特定処理1によりストッカ27にストックされたトランプカード束100を再びカードセット台14にセットする(ステップS211)。次に、操作者がオペレーションパネル30の異常カード摘出スタートボタン304を押すことにより開始を指示する(ステップS212)。この開始指示に応答して送出ローラ15、搬送ローラ16及び17が駆動される(ステップS213)。このローラ駆動開始と同時に紫外線ランプ19が点灯する。なお、この時点で仕切り片24は上を向いており、搬送ローラ17に搬送されたトランプカードは正常カードストッカ27に搬送されるようになっている。
【0115】
読取部60は、一枚ずつ搬送されるトランプカード10から識別コード、種類表記、絵柄をそれぞれ読み取り、各読取データを生成する。判定部292では、識別コード判定部2921によって識別コード読取データと正常識別コード記憶部291に記憶された正常識別コードとを比較する(ステップS214)。
【0116】
そして、識別コード読取データと正常識別コードとが一致するか否かを判断し(ステップS215)、一致しない場合(ステップS215でNO)には、ロータリソレノイド25を駆動してそのトランプカードを異常カードストッカ28に導く(ステップS216)。そして、すべてのトランプカードについて検査が終了したか否かが判断される(ステップS217)。ここでは、検査装置1のカードセット台14に設けられた図示しないセンサによってカードセット台14に残っているトランプカードの有無によりすべてのトランプカードについて検査が終了したかいなかが判断される。なお、識別コードを有しないカードについては、識別コード読取データはエラーコードと認識されるので、ステップS215では必ずNOとなり、ロータリソレノイドが駆動する(ステップS216)。
【0117】
一方、ステップS215において一致する、即ち正常トランプカードであると判定された場合(ステップS215でYES)には、ロータリソレノイド25を駆動することなく全て終了したか否かが判断され(ステップS217)る。全て終了していると判断されたら(ステップS217でYES)送出ローラ15や搬送ローラ16及び17の駆動を停止して(ステップS218)判定処理を終了する。一方、すべてが終了していない場合(ステップS216でNO)、ステップS214に戻り、次のトランプカードについて読取り・比較処理を行う。
【0118】
なお、この判定処理では、異常トランプカードの判定と並行して、読み取った識別コードに含まれる組情報、製造年月日情報、製造元情報、カジノ情報、及び製造ロット情報を解析しモニタ30に表示する。また、種類コード、種類表記、及び絵柄を読み取ってその結果もモニタ30に表示する。
【0119】
これらの処理のために、モニタ30には、上述した読取判定スタートボタン303及び異常トランプカード摘出スタートボタン304と、読み取ったコードや情報が何であるかを報知表示する読取データ表示部305と、読み取ったトランプカード10の種類とその枚数を表示する種類表示部306とを有する。
【0120】
種類表示部39は右側部のS行はスペード、D行はダイヤ、C行はクローバ、H行はハート、N行はジョーカーを示し、上部A〜K列はランクを示す。種類表示部306の各セグメントには、種類表記を読み取ることにより生成された種類読取データに基づいて、読み取られた枚数をそれぞれ表示する。図12の例は1デッキを一組として検査を行った場合の表示であり、HのJには2と表示されており、HのJが一枚多い異常状態を示している。また、HのKには0が表示されており、HのKが一枚足りない異常状態を示している。この2箇所は色が変わり点滅し、音により異常があることを報知するようになっている。4デッキのトランプカードについて検査を行った場合には、正常な状態として4が表示され、3や5などが表示されている状態が異常状態となる。
【0121】
また、モニタ30に更にコード表示ボタンを設けて、そのコード表示ボタンが押されることにより識別コードと異常コードの内容を示した画面が表示され、異常コード内容にはカードの種類も表示されるようにしてもよい。このようにすることにより、異常トランプカードが本来属するべき組を特定し、該本来属する組に戻し正常組としての再使用をすることが可能となる。
【0122】
上述したように、ステップS214では、識別コードを比較することにより、正常トランプカードであるか異常トランプカードであるかを判定したが、この判定と並行して絵柄による判定を行ってもよい。この場合には、読取部60でCCDカメラ22により生成された絵柄読取データと比較絵絵柄データ記憶部2912に記憶された比較絵柄データとを絵柄判定部2922により比較し、両者が一致するかを判定する。一致しない場合には、ロータリソレノイドを駆動してそのトランプカードを異常カードストッカ28に導く。
【0123】
〔第1の検査処理における形態2〕
形態1では、いわば多数決方式で正常識別コードを特定したのに対し、形態2においては、サンプルカードを読み取ることにより正常識別コードを特定する。サンプルカードは、一又は複数のデッキからなる組に対して少なくとも1枚用意されている。複数デッキから組を構成する場合に、各デッキ同士で識別コードが異なるときにはデッキ毎にサンプルカードが用意され、組内の各デッキ同士で識別コードが共通であるときにはその組に一枚のサンプルカードが用意される。サンプルカードは通常のカードゲームにおいては使用されず、この検査処理において正常識別コードを特定するために用いられるものである。
【0124】
図13は、形態2における正常識別コード特定処理(正常識別コード特定処理2)のフローチャートである。また、図14は、形態2におけるモニタ30の表示例である。
【0125】
正常識別コード特定処理2においては、まず、サンプルカードのみをカードセット台14にセットする(ステップS121)。このとき、正常識別コードが4デッキのそれぞれについて互いに異なっている場合には、それら4枚のサンプルカードをセットする。そして、操作者はオペレーションパネル30のサンプル読取スタートボタン307を押すことにより開始を指示されたら(ステップS122)、ローラ駆動を開始し(ステップs123)、サンプルカードの識別コードを読み取り、記憶する(ステップS124)。また、この時、紫外線ランプ19を点灯させる。
【0126】
サンプルカードが複数枚ある場合、即ち4デッキのそれぞれについて識別コードが異なる場合には、サンプルカードについての読取り・記憶を繰り返す(ステップS125でNO)。すべてのサンプルカードの読取が終了したら(ステップS125でYES)、ローラの駆動を停止して(ステップS126)正常識別コード特定処理を終了する。
【0127】
判定処理については、図11に示す判定処理1と同様に行う。なお、ステップS212の開始指示は、図14の判定処理スタートボタン308を押すことにより行う。また、判定の結果は、結果表示部309にテキスト表示される。
【0128】
〔第1の検査処理における形態3〕
形態3では、操作者の手入力によって正常識別コードが特定される。各デッキを表す識別コード又は4デッキからなる組を表す識別コードは、例えばそのトランプカード束を収容するためのケースに表記されており、操作者はその表記を見ることによりその組に対応する識別コードを知ることができる。
【0129】
図15は、形態3における正常識別コード特定処理(正常識別コード特定処理3)のフローチャートである。また、図16は、形態3におけるモニタ30の表示例である。正常識別コード特定処理3では、操作者はモニタ30に表示されたテンキー310により正常識別コードを入力し、確定ボタン311を押す(ステップS131)。これにより、正常識別コードが特定され、次に判定処理1と同様の判定処理を行う。
【0130】
ここで、形態3における判定処理では、ステップS212において、操作者はモニタ30に表示されたスタートボタン312を押すことにより、開始を指示する。また、形態3では、形態2と同様に、判定結果は結果表示部313にテキスト表示される。
【0131】
〔第1の検査処理における形態4〕
形態4では、判定処理において異常カードがあると判断された場合には、その時点でローラの駆動を停止し、それ以降のカードの読取りを中止する。
【0132】
検査対象たる複数枚のトランプカードの中に異常トランプカードが含まれているときにはその複数枚のトランプカードをすべて廃棄処分にするとの運用を採用しているカジノ遊技場にとっては、このように異常カードの存在が判明した時点で検査を中止すれば、検査処理を短時間で行えることになる。
【0133】
なお、異常カードの存在により検査を中止した後にその異常カードを取り除き、いまだ検査がされていない残りのトランプカードについて検査処理を再開してもよい。この操作を繰り返すことにより、検査対象たる複数枚のトランプカードの中から異常カードをすべて取り除くことができる。
【0134】
図17は、形態4における判定処理(判定処理2)のフローチャートである。形態4では、上記形態1乃至形態3のいずれかにおける正常識別コード特定処理又は、他の正常識別コード特定処理によって識別コードを特定する。判定処理2において、ステップS221においてカードをセットしてから異常トランプカードがなく判定処理を終了するステップS227までの処理は、図11に示した判定処理1のステップS211からステップS217までの処理と同じであるので説明を省略する。
【0135】
判定処理2においては、読取識別コードと正常識別コードとが一致しない場合(ステップS225でNO)には、送出ローラ15、搬送ローラ16及び17の駆動を停止し(ステップS227)、判定処理を終了する。
【0136】
〔第1の検査処理における形態5〕
形態5では、検査対象たる複数枚のトランプカードのうち、最初のトランプカードから読取った識別コード(初識別コード)を正常識別コードとみなし、2枚目以降のトランプカードについては、この初識別コードとそれらの識別コードとが一致するか否かにより正常か異常かを判断する。
【0137】
また、モニタ30には識別コードの読取結果をそのトランプカードの種類と関連付けて随時表示していく。これによりどの種類のトランプカードが正常であり、どの種類のトランプカードが異常であるかを特定することができる。
【0138】
図18は、形態5における正常識別コード特定処理(正常識別コード特定処理4)のフローチャートである。また、図19は、形態5における判定処理(判定処理3)のフローチャートである。また、図20は、形態5におけるモニタ30の表示例である。
【0139】
正常識別コード特定処理4において、操作者はまず、カードセット台14に検査対象たる複数のトランプカードの束100をセットする(ステップS141)。そして、オペレーションパネル30のスタートボタン314を押すことにより開始を指示する(ステップS142)。これによりローラの駆動が開始される(ステップS143)。なお、このとき紫外線ランプ19も同時に点灯する。そして、トランプカード束100の一番下のトランプカード10が搬送され、識別コード、種類表記、絵柄がそれぞれ読取られる。読取られた識別コードは、正常識別コードとして正常識別コード記憶部2911に記憶される(ステップS144)。また、このとき読取られた種類表記によって種類判定部2923において種類を判定し、モニタ30の表示内容を更新する。
【0140】
その後、ローラの駆動を停止させることなく、続く2枚目以降のトランプカードについての判定処理が開始される。判定処理3では、トランプカードの識別コードを読取り、正常識別コード記憶部2911に記憶された正常識別コードとの比較をし(ステップS231)、一致/不一致を判定する。そして、種類表記の読取に基づき種類判定部2923で判定された種類に対応するセグメントの数字をインクリメントさせる(ステップS232)。この時、読取った識別コードと正常識別コードとが一致しなかった場合には、そのセグメントの数字の色を変え、点滅させるなどする。
【0141】
そして、すべてのトランプカードについて判定が終了したかを判断し(ステップS233)、終了したら(ステップS233でYES)ローラの駆動を停止して(ステップS234)判定処理を終了する。すべての判定が終了していない場合(ステップS233でNO)は、ステップS231、S232を繰り返す。
【0142】
判定処理が終了したら、オペレーションパネルの結果表示部313に結果を表示する。
なお、4デッキがそれぞれ異なる識別コードを有する場合には、最初の4枚のトランプカードの識別コードをそのまま正常識別コードとするのではなく、最初に認識された識別コードをまず正常識別コードとして特定し、以降は既に正常識別コードとして特定された識別コードとは異なる識別コードが読取られた場合にそれらを順次正常識別コードとして特定する。これを正常識別コードが4つになるまで行う。
【0143】
〔形態5の変形例〕
上述した形態5において、最初に読取られるカード、即ちカードセット台14に一番下にセットされるカードをサンプルカードとしてもよい。4デッキがそれぞれ異なる識別コードを有する場合には、最初の4枚(下から4枚)のカードをサンプルカードとすればよい。
【0144】
〔第2の検査処理〕
第1の検査処理では、最初に正常識別コードを特定した上で、検査対象たるトランプカードから読取られた識別コードがその正常識別コードと一致するか否かを判断することによりそのトランプカードが正常であるか異常であるかを判定した。これに対し、第2の検査処理では、基準となる正常識別コードを特定することなく、いわば相対的な比較により、検査対象たる複数枚のトランプカードの中に異常トランプカードが含まれているか否かを判断する。この第2の検査処理においては、複数デッキからなる組の中で識別コードが共通である。
【0145】
図21は、第2の検査処理(検査処理2)のフローチャートである。検査処理2では、操作者はまず検査対象たる複数枚のトランプカードをカードセット台14にセットする(ステップS11)。そして、オペレーションパネルによって開始を指示し(ステップS12)ローラ駆動を開始させる(ステップS13)。検査装置はまず一枚目のトランプカードについて識別コードを読取り(ステップS14)、それを記憶する(ステップS15)。
【0146】
そして、次のトランプカードの識別コードを読取り(ステップS16)、先に記憶された識別コードと一致するか否かを判断する(ステップS17)。一致しない場合(ステップS17でNO)には、その旨を報知し(ステップS18)、ローラを停止させる(ステップS21)。一致する場合には、すべてのトランプカードについて検査が終了したかを判断し(ステップS19)、終了していない場合(ステップS19でNO)には、ステップS15で記憶された識別コードをステップS16で読取った識別コードに更新し(ステップS20)、次のトランプカードの識別コードを読取る(ステップS16)。
【0147】
このように、識別コードの読取り、判断、記憶の更新を繰り返していくことにより、検査対象たる複数枚のトランプカードについてすべての識別コードが一致するか否かを判断する。ステップS19においてすべてのトランプカードについて検査が終了した場合(ステップS19でYES)には、ローラを停止して(ステップS21)検査処理を終了する。
【0148】
〔第2の検査装置〕
図22は、検査装置の第2の形態を表す概略側面図である。トランプカードの検査装置2では、トランプカードの検査装置1の送出ローラ15、搬送ローラ16、17に変えて送出ベルト34が傾斜させて設けられている。また、第2の形態では、トランプカード10の種類を読み取るためのCCDカメラ及び絵柄を読み取るためのCCDカメラはない。更に、異常カードを摘出するための仕切り片やロータリソレノイドもない。このような構成にすることにより、第1の形態と比較して、装置の小型化が図れる。
【0149】
送出ベルト34の上に置かれたトランプカードの束100は、自重により送出ベルト34の傾斜にしたがって壁部材35に当接する。壁部材35の下端部と送出ベルト34との間にはトランプカード10が一枚通る隙間があり、送出ベルト34の回転にしたがって、トランプカード束100の一番下のカードが紫外線センサ20と対向する位置に搬送される。トランプカード10は、送出ベルト34によってさらに送り出されることにより、送出ベルト34から離れてストッカ36に落下する。第2の形態においても、第1の形態と同様に、記憶判定ユニット29とモニタ30とを含む制御部31、及び紫外線ランプ19を有する。
【0150】
〔第3の検査装置(2ローラ対タイプ)〕
第3の検査装置は、識別コード等を読取る際にトランプカードを保持しつつ搬送する搬送ローラ対を2組備えるタイプの検査装置である。
【0151】
図23は、検査装置の第3の形態を表す概略側面図である。第3の形態にかかる検査装置3は、検査対象たるトランプカード束100をセットするためのカードセット台14と、壁部材35と、送出ローラ15とを有する。第3の形態では、検査対象たるトランプカード10は、識別コードが印刷された面が下を向くようにカードセット台14にセットされる。
【0152】
カードセット台14は、トランプカード10を送出ローラ15に案内するように上側が湾曲しており、これによりトランプカード束100は壁部材35に当接する。送出ローラ15は、単独で用いられ、図中の矢印の方向に回転駆動され、トランプカード束100の一番下のトランプカード10を送り出す。
【0153】
送出ローラ15の上部には、定位置で回転自在な鉄球おもり13が設けられている。カードセット台14の最下のトランプカード10は、鉄球おもり13により送出ローラ15に押さえつけられる。これによりトランプカード10が確実に一枚ずつ送り出される。なお、検査装置3では、検査対象たるトランプカード10は、裏面即ち絵柄が表された面を上にしてセットされる。
【0154】
検査装置3は、さらに、所定の間隔を隔てて設けられた搬送ローラ16及び17を有し、両搬送ローラの下側には紫外線ランプ19、CCDカメラ20及びミラー38が設けられている。搬送ローラ16対及び搬送ローラ対17は、トランプカード10の識別コード等が読取られる際にそのトランプカード10を保持しつつ搬送するローラである。また、搬送ローラ対16及び17の上側には、トランプカード10の裏面の絵柄を読み取り、また、ミラー38を用いてトランプカード10の表面の種類表記を読み取るためのCCDカメラ37が設けられている。
【0155】
送出ローラ15により一枚ずつ送り出されたトランプカード10は、搬送ローラ対16及び17によって順にCCDカメラ20やCCDカメラ37と対向する位置に搬送される。CCDカメラ20及びCCDカメラ37は、トランプカード10の搬送に伴う適宜のタイミングでセンシングを行う。
【0156】
検査装置3では、CCDカメラ37が絵柄を直接読み取るとともに、ミラー38を用いて表(おもて)面の種類表記をもCCDカメラ37で読み取ることとしているので、それぞれを読み取るためのCCDカメラを2つ設けている第1の形態と比較して装置の簡略化及び小型化が図られる。
【0157】
検査装置3は、また、検査を終えたトランプカード10をストックするためのストッカ36と、ストッカ36に積まれるトランプカード10の枚数に応じてストッカ36を上下動させるためのモータ39とを有する。また、検査装置3も検査装置1や2と同様に、記憶判定ユニット29とモニタ30とを含む制御部31を有する。
【0158】
〔第4の検査装置(1ローラ対タイプ)〕
第3の検査装置が搬送ローラ対を2組備えていたのに対して、第4の検査装置は搬送ローラ対を1組だけ設け、その1組の搬送ローラ対に保持されているトランプカードから識別コードを読取る。
【0159】
図24は、検査装置の第4の形態を表す概略側面図である。第4の形態にかかる検査装置4は、検査装置3と同様に、検査対象たるトランプカード束100をセットするためのカードセット台14と、壁部材35と、送出ローラ15とを有する。第4の形態では、検査対象たるトランプカード10は、識別コードが印刷された面が上を向くようにしてカードセット台14にセットされる。
【0160】
送出ローラ15の搬送路先方には、搬送ローラ16が設けられている。なお、検査装置4においては、検査装置3の搬送ローラ17に対応する搬送ローラはない。つまり、トランプカードは搬送ローラ16のみによって保持されている状態で識別コード等を読取られる。また、検査装置4では、紫外線ランプ19は、まだ搬送ローラ16を通過していないトランプカード10の部分に紫外線を照射するように、両ローラの間に設けられている。
【0161】
更に、検査装置4では、トランプカード10の下面をCCDカメラ40に向けて反射するようにミラー38が設けられている。したがって、CCDカメラ40は、搬送ローラ16のみによって支持されるトランプカード10の識別コード、種類表記、及び絵柄をすべて読取ることができる。CCDカメラ40は、搬送ローラ16によって片持ちされたトランプカードの、識別コードと種類表記とを直接センシングし、下面の絵柄はミラー38により反射された像をセンシングする。
【0162】
ストッカ36やモータ39の構成については、検査装置3と同様である。また、記憶判定部29及びモニタ30を含む制御部を有する点も検査装置3と同様である。
【0163】
なお、上述の実施の形態では、識別コードは各デッキに固有に与えられたものとして説明したが、これに限られない。識別コードは、例えば、トランプカードの一枚一枚に固有に与えられるものであってもよい。この場合には、検査装置は、4デッキのトランプカードを検査するときには、212(53枚×4デッキ)種類のコードを正常識別コード、即ち、所定の組を構成する正常トランプカードが有する識別コード、として認識すればよい。
【0164】
また、上述の実施の形態で説明した検査装置は、カジノ遊技場の各コーナーにおいてトランプカードをシャッフルするためのシャッフル装置に組み込まれてもよい。多くのシャッフル装置は、トランプカードを一枚ずつ移送する機構を備えている。シャッフル装置に組み込まれる検査装置は、このシャッフル装置の移送機構により移送されるトランプカードから識別コード及び必要に応じて他の情報を読取る。この形態によれば、シャッフル装置のカード移送機構がトランプをシャッフルするためだけでなく、検査をするためにも用いられる。したがって、検査装置を安価に提供できる。更に、この形態によれば、ゲーム中に検査を行うことができ、ゲームの信頼性が向上し、ゲームの回転も速くなる。また、ゲーム中にカードの点検を客の前で行う場合、異常があれば異常内容を知りたいと思う客の心理は当然のことであり、この要求にもこたえることができる。少なくとも、負け客は、異常カードが混入しているイカサマがあったかもしれないゲームにおいては納得しないであろう。ゲームの内容にもよるが、どの種類のカードをどの客が持っていたかは、ゲーム中にゲーム者やリーダー、見物者により認識されている。したがって、異常カードの種類を特定することにより、どの客に渡っていたカードなのかを特定することが可能となる。
【0165】
以上説明したトランプカードの検査技術は、カジノ遊技場において行われた不正行為を発見するだけでなく、監視カメラなどと併用することにより不正行為者の特定にも寄与する。例えば、異常トランプカードを含む組がどのテーブルで使用されていたのかを特定し、そのテーブルに設置されていた監視カメラによる映像からその異常トランプカードを扱っていた者を見つけ出すことで不正行為者を特定することができる。
【0166】
〔付記〕
以下、検査技術の概略を付記として述べる。上述の説明から明らかなように、以下の技術は、これまで説明してきた実施形態と対応している。また、図25〜27は以下の検査技術と対応している。
【0167】
1.(図25)この検査技術では、カード本体の表側に印刷などにより設けてなるトランプカードの前記識別コードを、読取手段(識別コード読取部)と記憶判定部と報知部とを有するトランプカード判別装置が読取り記憶していく。その識別コードは、1組(1又は複数のデッキからなる)を構成するトランプカードであることを示すコードであって、光センサや磁気センサやカメラなどの読取手段により読取ることができると共に、通常の使用条件においては人間の肉眼では可視不可能な組コードである。その識別コードは、例えば数字、記号、バーコード等からなる。読取った識別コードのすべてが一致した場合にはその組は正常組と判定され、読取ったあるいは読取っていく識別コードと相違(読取不可、バーコード等無しを含む。)のものがある場合には異常組と判定される。読取った1組が正常組あるいは異常組であることが報知手段により報知される。例えば、正常組又は正常カードは再使用され、異常組又は異常カードは廃棄処分される。
【0168】
2.(図26)好ましくは、最初に読取られたカードの識別コードが初識別コードとされる。この初識別コードと、それに続いて読取られた識別コードが全て一致した場合には素の組は正常組と判断される。一方、読取ったあるいは読取っていく識別コードの中に初識別コードと相違(読取不可、バーコード無しを含む)するものがある場合には、その組は異常組と判断される。
【0169】
初識別コードが異常である場合もありうる。典型的には、最初に異常なトランプカードが読取られた場合である。この場合、正常識別コードと一致しない識別コードが連続して読取られる。初識別コードが異常である場合も、その組は異常組と判定される。
【0170】
3.(図27)好ましくは、すべてのカードの識別コードが読取り記憶され、最も多い識別コードが正常識別コードとして特定される。この正常識別コードとは相違する異常コード(識別コード無しや読取不可能を含む)や不足カード、超過カードが検出された場合には、前記報知手段は前記1組を構成するトランプカードに異常があることを報知する。
好ましくは、トランプカード判別装置はトランプカードの種類を判別する種類判別手段を有する。識別コードの読取記憶内容に前記種類の読取結果が加えられる。報知部は異常カードの種類を報知するモニタである。
【0171】
好ましくは、識別コードは、紫外線などの特殊光線が当たると発色ないし発光をするとともに、その特殊光線の影響がなくなると肉眼では見えない状態となる特殊光線発色(又は発光)インクによりトランプカードに印刷されている。
【0172】
好ましくは、識別コードはバーコードである。また、識別コードは組コードと製造年月日コードとからなる。さらに、識別コードにはカジノコードが加えられる。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明は、カジノ業界において好適に利用される。具体的には、本発明は、カジノ遊戯場において、真正なトランプカードの中に不正目的で混入された異常トランプカードを発見するための技術に関する。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】図1は、紫外線を照射しない状態(通常の使用状態)のトランプカードの概観図である。
【図2】図2は、図1のトランプカードに紫外線を照射した場合の概観図である。
【図3】図3は、紫外線を照射しない状態(通常の使用状態)のトランプカードの他の例の概観図である。
【図4】図4は、図3のトランプカードに紫外線を照射した場合の概観図である。
【図5】図5は、トランプカードに含まれる情報を模式的に表した図である。
【図6】図6は、検査装置の第1の形態を表す概略側面図である。
【図7】図7は、図6の検査装置の概略平面図である。
【図8】図8は、検査装置の機能的な構成を表すブロック図である。
【図9】図9は、第1の検査処理のフローチャートである。
【図10】図10は、第1の正常識別コード特定処理のフローチャートである。
【図11】図11は、第1の判定処理のフローチャートである。
【図12】図12は、オペレーションパネルの第1の表示例を表す図である。
【図13】図13は、第2の正常識別コード特定処理のフローチャートである。
【図14】図14は、オペレーションパネルの第2の表示例を表す図である。
【図15】図15は、第3の正常識別コード特定処理のフローチャートである。
【図16】図16は、オペレーションパネルの第3の表示例を表す図である。
【図17】図17は、第2の判定処理のフローチャートである。
【図18】図18は、第4の正常識別コード特定処理のフローチャートである。
【図19】図19は、第3の判定処理のフローチャートである。
【図20】図20は、オペレーションパネルの第4の表示例を表す図である。
【図21】図21は、第2の検査処理のフローチャートである。
【図22】図22は、検査装置の第2の形態を表す概略側面図である。
【図23】図23は、検査装置の第3の形態を表す概略側面図である。
【図24】図24は、検査装置の第4の形態を表す概略側面図である。
【図25】図25は、トランプカードの半別方法の概念図である。
【図26】図26は、トランプカードの半別方法の概念図である。
【図27】図27は、トランプカードの半別方法の概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランプカードに設けられた識別コードであって所定の組を構成することを表す識別コードを読み取って読取データを生成するためのコード読取部と、
前記読取データに基づいて、複数枚のトランプカードの中に所定の組を構成しない異常トランプカードが含まれていることを判定する判定部と、
を有するトランプカードの検査装置であって、
前記複数枚のトランプカードの数字が書かれている面とは逆の面である裏面に表された絵柄を読み取る絵柄読取部をさらに有し、
前記判定部は、さらに、前記絵柄読取部により読み取られた絵柄に基づいて、前記複数枚のトランプカードの中に前記所定の組を構成しない異常トランプカードが含まれていることを判定することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記絵柄が表された面とは逆の面に表されたトランプカードの種類表記を読み取る種類表記読取部をさらに有し、
前記コード読取部、前記絵柄読取部、及び前記種類表記読取部は、共通の読取装置であり、
前記絵柄又は前記種類表記を前記共通の読取装置に向けて反射させるミラーをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記複数枚のトランプカードをスタックするスタッカと、
少なくとも一対のローラを有し、前記一対のローラにより前記スタッカにスタックされるトランプカードを順に前記単一の読取装置に対向する位置に搬送する搬送部とをさらに有し、
前記ミラーは、前記一対のローラにより片持ちされるトランプカードの自由端側の絵柄又は種類表記を前記単一の読取装置に向けて反射させることを特徴とする請求項2に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2008−93470(P2008−93470A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340421(P2007−340421)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【分割の表示】特願2002−564014(P2002−564014)の分割
【原出願日】平成14年2月6日(2002.2.6)
【出願人】(000103301)エンゼル商事株式会社 (13)