説明

トリアザスマネン類、及び、その製造方法

【課題】ヘテロフラーレン類の合成原料、電子材料等の工業用材料、及び、ヘテロフラーレン類のモデル化合物等として様々な分野への応用が期待でき、また、新規な化合物であるトリアザスマネン類、及び、その有機合成的手法による製造方法を提供すること。
【解決手段】下記式(I)〜(V)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩、また、それらの製造方法。下記式中、R1〜R3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a及びR3bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、また、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアザスマネン類、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
60やC70に代表されるフラーレン(Fullerene)及びカーボンナノチューブと呼ばれる一群の炭素同族体(以下、「フラーレン類」ともいう。)は、その特異な物性から、様々な可能性を秘めた次世代材料として注目される。フラーレン類は、C60やC70以外にも種々の構造のものが知られており、それぞれが固有の物性を有している。それらを化学修飾することにより、多様な機能を付加しようとする研究も全世界的に活発に行われている。
【0003】
【化1】

【0004】
しかし、現状では、化学修飾されたフラーレン類の製造方法は、特許文献1等に記載されているように、フラーレン類自体から化学修飾を行う方法であり、フラーレン類の炭素骨格自体を有機合成の手法で製造した例はまだ報告されていない。
【0005】
有機合成の手法により、フラーレン類を合成することができれば、出発物質等の容易な変換により、フラーレン類への置換基の導入、及び、フラーレン類の炭素骨格へのヘテロ原子の導入等が容易に実現でき、従来は入手困難であった化学修飾フラーレン類も自由に得ることができると考えられる。さらに、種々の新規な化学修飾フラーレン類の製造方法を提供することにより、新規材料の設計に大きな変化をもたらすことができると考えられる。例えば、フラーレン類の炭素原子の一部をヘテロ原子で置き換えたヘテロフラーレン類は、理論研究によりその挙動が注目されている(例えば、非特許文献1等参照)が、C59N(非特許文献2参照)やBNC58(特許文献2参照)等のごく一部の化合物を除いて未だ製造されておらず、その有機合成の手法による製造方法の確立が期待される。
しかしながら、現在、フラーレン類を有機合成の手法により合成する試みは世界各地で盛んに行われているが、フラッシュ・バキューム・パイロリシス(FVP)による合成例があるのみである(非特許文献3参照)。C60の部分的構造である非平面共役系炭素骨格を含む化合物を、様々な官能基を容易に導入可能な有機合成的手法により合成すべく研究が進められている。
上記非平面共役系炭素骨格を含む化合物として、近年、これまで合成例の報告のなかった化合物であるスマネン(Sumanene)の合成方法が報告された(特許文献3)。
【0006】
【化2】

【0007】
上記スマネンの合成方法では、スマネンのベンジル位にはヘテロ原子の導入は可能であるが、芳香環の炭素骨格にヘテロ原子を導入することはできなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2005−15470号公報
【特許文献2】特開2002−60211号公報
【特許文献3】国際公開第04/67446号パンフレット
【非特許文献1】M. Riad Manaa, David W. Sprehn, and Heather A. Ichord, J. Am. Chem. Soc., vol.124, p.13990-13991 (2002)
【非特許文献2】JC Hummelen, B. Knight, J. Pavlovich, R. Gonzalez, and F. Wudl, Science, vol.269, p.1554-1556 (1995)
【非特許文献3】Lawrence T. Scott, Margaret M. Boorum, Brandon J. McMahon, Stefan Hagen, James Mack, Jarred Blank, Hermann Wegner, and Armin de Meijere, Science, vol.295, p.1500-1503 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ヘテロフラーレン類の合成原料、電子材料等の工業用材料、及び、ヘテロフラーレン類のモデル化合物等として様々な分野への応用が期待でき、また、新規な化合物であるトリアザスマネン類、及び、その有機合成的手法による製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明が解決しようとする上記課題は、以下に示す<1>、<3>、<5>、<7>、<9>、<11>、<12>、<15>及び<16>により解決された。好ましい実施態様である<2>、<4>、<6>、<8>、<10>、<13>及び<14>と共に以下に示す。
<1> 下記式(I)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
【0011】
【化3】

(式(I)中、R1〜R3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
<2> R1〜R3が水素原子又は塩素原子であり、L1〜L3がメチレン基(−CH2−)である上記<1>に記載の化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
<3> 下記式(II)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
【0012】
【化4】

(式(II)中、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a及びR3bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、また、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
<4> R1a、R1b、R2a、R2b、R3a及びR3bがそれぞれ独立に水素原子又は塩素原子であり、L1〜L3がメチレン基(−CH2−)である上記<3>に記載の化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
<5> 下記式(III)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
【0013】
【化5】

(式(III)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
<6> L1〜L3がメチレン基(−CH2−)である上記<5>に記載の化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
<7> 下記式(IV)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
【0014】
【化6】

(式(IV)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
<8> L1〜L3がメチレン基(−CH2−)である上記<7>に記載の化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
<9> 下記式(V)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
【0015】
【化7】

(式(V)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
<10> L1〜L3がメチレン基(−CH2−)である上記<9>に記載の化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
<11> 上記<1>〜<10>のいずれか1つに記載の化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩を含む金属錯体。
<12> 下記式(VI)又は式(VII)で表される化合物のうち3分子を結合し下記式(V)で表される化合物を得る3量化工程、下記式(V)で表される化合物のアミド交換反応により下記式(IV)で表される化合物を得るアミド交換工程、及び、下記式(IV)で表される化合物を芳香化し下記式(I)で表される化合物を得る芳香化工程を含むことを特徴とする下記式(I)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩の製造方法。
【0016】
【化8】

(式(I)中、R1〜R3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0017】
【化9】

(式(IV)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0018】
【化10】

(式(V)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0019】
【化11】

(式(VI)及び式(VII)中、L4は二価の有機基を表し、P4は水素原子又は一価の有機基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、OCORx、OPO(ORx2又はOSO2CF3を表し、また、Rxはアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基又はフッ素置換アリール基を表す。)
<13> 前記芳香化工程が、前記式(IV)で表される化合物のアミド基を還元し下記式(II)で表される化合物を得る工程、及び、下記式(II)で表される化合物を芳香化し前記式(I)で表される化合物を得る工程を含む上記<12>に記載の前記式(I)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩の製造方法。
【0020】
【化12】

(式(II)中、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a及びR3bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、また、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
<14> 前記芳香化工程が、前記式(IV)で表される化合物を酸化し下記式(III)で表される化合物を得る工程、及び、下記式(III)で表される化合物を脱保護し前記式(I)で表される化合物を得る工程を含む上記<12>に記載の前記式(I)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩の製造方法。
【0021】
【化13】

(式(III)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
<15> 下記式(VI)又は式(VII)で表される化合物のうち3分子を結合し下記式(V)で表される化合物を得る3量化工程、及び、下記式(V)で表される化合物のアミド交換反応により下記式(IV)で表される化合物を得るアミド交換工程を含むことを特徴とする下記式(IV)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩の製造方法。
【0022】
【化14】

(式(IV)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0023】
【化15】

(式(V)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0024】
【化16】

(式(VI)及び式(VII)中、L4は二価の有機基を表し、P4は水素原子又は一価の有機基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、OCORx、OPO(ORx2又はOSO2CF3を表し、また、Rxはアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基又はフッ素置換アリール基を表す。)
<16> 下記式(VI)又は式(VII)で表される化合物のうち3分子を結合し下記式(V)で表される化合物を得る3量化工程を含むことを特徴とする下記式(V)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩の製造方法。
【0025】
【化17】

(式(V)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0026】
【化18】

(式(VI)及び(VII)中、L4は二価の有機基を表し、P4は水素原子又は一価の有機基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、OCORx、OPO(ORx2又はOSO2CF3を表し、また、Rxはアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基又はフッ素置換アリール基を表す。)
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、新規な化合物であるトリアザスマネン類、及び、その製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、トリアザスマネン類の合成に世界で初めて成功したものであり、下記式(I)で表される本発明の化合物(すなわち、トリアザスマネン及びその誘導体)とその製造方法とを確立した。また、本発明の製造方法により、トリアザスマネン類を温和な条件で大量に合成することができる。さらに本発明によって汎用可能なトリアザスマネン類の合成ルートを確立できたことにより、原料として様々な化合物を用いたり、公知の官能基導入法や変換法を用いて、種々のトリアザスマネン類を合成することが可能である。
また、本発明のトリアザスマネン類を合成原料として、未知のヘテロフラーレン類等の合成も可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
【化19】

(式(I)中、R1〜R3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0030】
(トリアザスマネン類)
本発明において、トリアザスマネン類とは、上記式(I)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩を表す。
式(I)において、R1〜R3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)又は一価の有機基を表す。R1〜R3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
1〜R3における一価の有機基とは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜60、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基である)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜60、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基である)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜60、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜12のアルキニル基である)、アリール基(好ましくは炭素数4〜60、より好ましくは炭素数4〜30、特に好ましくは炭素数4〜12のアリール基である)、アラルキル基(好ましくは炭素数5〜60、より好ましくは炭素数5〜30、特に好ましくは炭素数5〜12のアラルキル基である)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12のアミノ基である)、
【0032】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜60、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である)、アリーロキシ基(好ましくは炭素数6〜60、より好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数6〜12のアリーロキシ基である)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、さらに好ましくは2〜12のアルコキシカルボニル基である)、アリーロキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアリーロキシ基である)、アシル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは2〜12のアシル基である)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは2〜10のアシルオキシ基である)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基である)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基である)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基である)、アルキルスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルスルホニルアミノ基である)、アリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアリールスルホニルアミノ基である)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルスルファモイル基である)、アリールスルファモイル基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアルキルスルファモイル基である)、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルキルカルバモイル基である)、アリールカルバモイル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールカルバモイル基である)、
【0033】
アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルスルホニル基である)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールスルホニル基である)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルスルフィニル基である)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールスルフィニル基である)、ヒドロキシ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドラジノ基、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基である)、シロキシ基(好ましくは、炭素数3〜60、より好ましくは炭素数3〜40、特に好ましくは、炭素数3〜24のシロキシ基である)が好ましく挙げられる。
これらの一価の有機基は、置換基を有していてもよく、また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
なお、前記アリール基とは、芳香族炭化水素基でも複素環基でもよく、また、単環であっても多環であってもよい。
置換基としては、ハロゲン原子、上記一価の有機基、アルキリデン基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、ヒドロキシイミノ基(=N−OH)、R4−イミノ基(=N−R4)等が挙げられる。上記R4は、前記一価の有機基におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は、アラルキル基を表し、好ましい範囲も同様である。
また、これらの置換基は、可能な限りさらに置換基を有していてもよい。
【0034】
式(I)におけるR1〜R3としては、水素原子、ハロゲン原子、又は、置換基を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基若しくはアルコキシカルボニル基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子、又は、置換基を有していてもよい、アルキル基、アリール基若しくはアルコキシカルボニル基であることがより好ましく、水素原子、無置換若しくは置換フェニル基、無置換若しくは置換ピリジル基、炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、又は、ヒドロキシメチル基であることが更に好ましく、水素原子又は塩素原子であることが特に好ましい。
【0035】
式(I)において、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表す。また、L1〜L3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
二価の有機基とは、下記のA−1〜A−10に示す構造の基を表す。
【0036】
【化20】

【0037】
前記R5及びR6は、前記R1〜R3と同義であり、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
7及びR8は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アシル基、カルボキシル基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、又は、シロキシ基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、R7とR8とが結合し、環状構造を形成してもよい。
9は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、又は、アシルオキシ基を表す。
10は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、又は、アシル基を表す。
なお、R7〜R10におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基アリーロキシカルボニル基、アシル基、カルボキシル基、シリル基、及び、シロキシ基の好ましい範囲は、前記一価の有機基における好ましい範囲と同様である。
【0038】
式(I)におけるL1〜L3としては、前記A−1、A−3、A−6又はA−7の構造の基であることが好ましく、前記A−1がより好ましく、メチレン基(−CH2−)が特に好ましい。
【0039】
本発明の式(I)で表される化合物に、配座異性体等の立体異性体が存在する場合は、それら異性体も本発明の化合物に含まれる。
また、本発明の化合物が、平衡状態として互変異性体を有する場合は、その互変異性体も本発明の化合物に含まれる。本発明の化合物における互変異性体の一例としては、下記の化合物が例示できる。
【0040】
【化21】

【0041】
また、本発明の式(I)で表される化合物は、光学活性な化合物である。光学活性体の一例として、トリアザスマネンの2つの光学活性体を下記に示す。
【0042】
【化22】

【0043】
トリアザスマネン類は、室温付近において下記に示すようなBowl-to-Bowl Inversionは起こらず、光学活性な分子である。なお、モデル化合物としてトリアザスマネンを用い、計算レベルB3LYP/6−31+G*を用いた分子軌道計算により計算を行ったところ、Bowl-to-Bowl Inversionに必要なエネルギーΔGは、36.6kcal/molであり、室温付近ではBowl-to-Bowl Inversionは起こらないことが計算結果からも示唆される。
【0044】
【化23】

【0045】
また、本発明の化合物が塩を形成しうる場合、その塩も本発明の化合物に含まれる。前記塩は特に限定されず、例えば、酸付加塩でも塩基付加塩でもよい。前記酸付加塩を形成する酸としては、無機酸でも有機酸でもよく、前記塩基付加塩を形成する塩基としては、無機塩基でも有機塩基でもよい。
前記無機酸としては、特に制限はないが、例えば、硫酸、亜硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、HBF4、HB(C654、HPF6及びHSbF6等が挙げられる。
前記有機酸としては、特に制限はないが、例えば、カルボン酸、スルホン酸及び炭酸等が挙げられ、具体的には、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シュウ酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、及び、酢酸等が挙げられる。
前記無機塩基としては、特に制限はないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩、並びに、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩等が挙げられ、具体的には、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム及び炭酸カルシウム等が挙げられる。
前記有機塩基としては、特に制限はないが、例えば、アミン類が挙げられ、具体的には、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミン及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノアミン等が挙げられる。
また、本発明の化合物の塩には、本発明の化合物の水素原子を1個又は複数個引き抜いて一価又は多価アニオンとした塩も含まれる。このような塩の対カチオンとしては、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+等が挙げられる。
本発明の化合物の塩の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、本発明の化合物に前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる方法や、本発明の化合物に塩基を作用させ、水素原子を引き抜いて形成する方法等が挙げられる。
【0046】
(式(II)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩)
本発明の式(II)で表される化合物は、下記の化合物である。
【0047】
【化24】

(式(II)中、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a及びR3bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、また、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0048】
式(II)において、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a及びR3bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表す。また、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a及びR3bはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R1a、R1b、R2a、R2b、R3a及びR3bはそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子であることが好ましい。
1a、R1b、R2a、R2b、R3a及びR3bにおける一価の有機基とは、前記式(I)における一価の有機基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(II)において、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表す。また、L1〜L3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
二価の有機基とは、前記式(I)における二価の有機基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0049】
式(II)において、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表す。また、P1〜P3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
1〜P3における一価の有機基は、公知の一価の保護基であることが好ましく、「Protective Groups in Organic Synthesis」(3rd Edition、Theodora. D. Greene and Peter G. M. Wuts著、Wiley, John & Sons社発行、1999年刊)等に記載のアミドの窒素原子上の保護基がより好ましく挙げられ、その中でも、ベンジル系の保護基がさらに好ましく、ベンジル基、オルトトリルメチル基又はパラメトキシベンジル(PMB)基が特に好ましい。
【0050】
本発明の式(II)で表される化合物に、配座異性体等の立体異性体が存在する場合は、それら異性体も本発明の式(II)で表される化合物に含まれる。また、本発明の式(II)で表される化合物が、平衡状態として互変異性体を有する場合は、その互変異性体も本発明の式(II)で表される化合物に含まれる。
本発明の式(II)で表される化合物が塩を形成しうる場合、その塩も本発明の化合物に含まれる。前記塩は特に限定されず、例えば、酸付加塩でも塩基付加塩でもよい。酸付加塩及び塩基付加塩としては、前記式(I)で表される化合物で挙げたものを用いることができる。
また、本発明の式(II)で表される化合物の塩には、本発明の式(II)で表される化合物の水素原子を1個又は複数個引き抜いて一価又は多価アニオンとした塩も含まれる。このような塩の対カチオンとしては、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+等が挙げられる。
本発明の化合物の塩の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、本発明の化合物に前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる方法や、本発明の化合物に塩基を作用させ、水素原子を引き抜いて形成する方法等が挙げられる。
【0051】
(式(III)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩)
本発明の式(III)で表される化合物は、下記の化合物である。
【0052】
【化25】

(式(III)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0053】
式(III)において、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表す。また、L1〜L3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
二価の有機基とは、前記式(I)における二価の有機基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(III)において、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表す。また、P1〜P3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(III)中のP1〜P3における一価の有機基は、式(II)中のP1〜P3における一価の有機基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0054】
本発明の式(III)で表される化合物に、配座異性体等の立体異性体が存在する場合は、それら異性体も本発明の式(II)で表される化合物に含まれる。また、本発明の式(III)で表される化合物が、平衡状態として互変異性体を有する場合は、その互変異性体も本発明の式(III)で表される化合物に含まれる。
本発明の式(III)で表される化合物が塩を形成しうる場合、その塩も本発明の化合物に含まれる。前記塩は特に限定されず、例えば、酸付加塩でも塩基付加塩でもよい。酸付加塩及び塩基付加塩としては、前記式(I)で表される化合物で挙げたものを用いることができる。
また、本発明の式(III)で表される化合物の塩には、本発明の式(III)で表される化合物の水素原子を1個又は複数個引き抜いて一価又は多価アニオンとした塩も含まれる。このような塩の対カチオンとしては、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+等が挙げられる。
本発明の化合物の塩の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、本発明の化合物に前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる方法や、本発明の化合物に塩基を作用させ、水素原子を引き抜いて形成する方法等が挙げられる。
【0055】
(式(IV)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩)
本発明の式(IV)で表される化合物は、下記の化合物である。
【0056】
【化26】

(式(IV)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0057】
式(IV)において、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表す。また、L1〜L3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
二価の有機基とは、前記式(I)における二価の有機基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(IV)において、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表す。また、P1〜P3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(IV)中のP1〜P3における一価の有機基は、式(II)中のP1〜P3における一価の有機基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0058】
本発明の式(IV)で表される化合物に、配座異性体等の立体異性体が存在する場合は、それら異性体も本発明の式(II)で表される化合物に含まれる。また、本発明の式(III)で表される化合物が、平衡状態として互変異性体を有する場合は、その互変異性体も本発明の式(IV)で表される化合物に含まれる。
本発明の式(IV)で表される化合物が塩を形成しうる場合、その塩も本発明の化合物に含まれる。前記塩は特に限定されず、例えば、酸付加塩でも塩基付加塩でもよい。酸付加塩及び塩基付加塩としては、前記式(I)で表される化合物で挙げたものを用いることができる。
また、本発明の式(IV)で表される化合物の塩には、本発明の式(IV)で表される化合物の水素原子を1個又は複数個引き抜いて一価又は多価アニオンとした塩も含まれる。このような塩の対カチオンとしては、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+等が挙げられる。
本発明の化合物の塩の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、本発明の化合物に前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる方法や、本発明の化合物に塩基を作用させ、水素原子を引き抜いて形成する方法等が挙げられる。
【0059】
(式(V)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩)
本発明の式(V)で表される化合物は、下記の化合物である。
【0060】
【化27】

(式(V)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0061】
式(V)において、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表す。また、L1〜L3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
二価の有機基とは、前記式(I)における二価の有機基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0062】
式(V)において、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表す。また、P1〜P3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(V)における一価の有機基とは、前記式(II)のP1〜P3における一価の有機基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0063】
本発明の式(V)で表される化合物に、配座異性体や光学異性体等の立体異性体が存在する場合は、それら異性体も本発明の式(V)で表される化合物に含まれる。また、本発明の式(V)で表される化合物が、平衡状態として互変異性体を有する場合は、その互変異性体も本発明の式(V)で表される化合物に含まれる。
本発明の式(V)で表される化合物が塩を形成しうる場合、その塩も本発明の化合物に含まれる。前記塩は特に限定されず、例えば、酸付加塩でも塩基付加塩でもよい。酸付加塩及び塩基付加塩としては、前記式(I)で表される化合物で挙げたものを用いることができる。
また、本発明の式(V)で表される化合物の塩には、本発明の式(V)で表される化合物の水素原子を1個又は複数個引き抜いて一価又は多価アニオンとした塩も含まれる。このような塩の対カチオンとしては、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+等が挙げられる。
本発明の化合物の塩の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、本発明の化合物に前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる方法や、本発明の化合物に塩基を作用させ、水素原子を引き抜いて形成する方法等が挙げられる。
【0064】
(金属錯体)
式(I)〜(V)で表される化合物、その立体異性体、互変異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩は、非共有電子対を有する窒素原子を分子内に有しているため、容易に金属へ配位することができ、金属錯体を形成することができる。
本発明の金属錯体は、式(I)〜(V)で表される化合物、その立体異性体、互変異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩を含む金属錯体であり、2以上の前記化合物や2以上の金属原子が1つの錯体を形成していてもよい。また、本発明の金属錯体は、前記化合物以外の他の配位子を有していてもよい。他の配位子としては、公知の中性配位子、陽イオン、及び、陰イオンが例示でき、単座又は一価配位子あっても、多座又は多価配位であってもよい。
本発明の金属錯体の中心金属は、式(I)〜(V)で表される化合物、その立体異性体、互変異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩と錯体を形成することができる金属であれば特に制限はなく、遷移金属(周期律表における3〜11族の元素)であることが好ましく、10族元素及びランタノイド類であることがより好ましく、Cu(II)、Pd(II)、Ce(III)及びYb(III)がさらに好ましい。
また、本発明の金属錯体における中心金属の対アニオンは、前述のように特に制限は無いが、反応性などの面から求核性の小さなアニオン(例えば、BF4-、PF6-、F3CSO3-など)であることが好ましい。
本発明の金属錯体としては、新規な配位形状のbowl型配位子となる点から、式(I)又は(II)で表される化合物、その立体異性体、互変異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩を含む金属錯体が好ましい。
本発明の金属錯体の製造方法は、特に制限はなく、公知の錯形成法や配位子交換法と同様に製造することができる。
【0065】
(トリアザスマネン類の製造方法)
本発明のトリアザスマネン類の製造方法は、下記式(VI)又は(VII)で表される化合物のうち3分子を結合し前記式(V)で表される化合物を得る3量化工程、前記式(V)で表される化合物のアミド交換反応により前記式(IV)で表される化合物を得るアミド交換工程、及び、前記式(IV)で表される化合物を芳香化し前記式(I)で表される化合物を得る芳香化工程を含むことを特徴とする。
【0066】
【化28】

(式(VI)及び式(VII)中、L4は二価の有機基を表し、P4は水素原子又は一価の有機基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、OCORx、OPO(ORx2又はOSO2CF3を表し、また、Rxはアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基又はフッ素置換アリール基を表す。)
【0067】
本発明のトリアザスマネン類の製造方法の一例として、以下のScheme1に式(V)で表される化合物を用いた場合の製造方法を示す。
【0068】
【化29】

【0069】
式(VI)及び(VII)中、L4は二価の有機基を表し、P4は水素原子又は一価の有機基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、OCORx、OPO(ORx2又はOSO2CF3を表し、また、Rxはアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基又はフッ素置換アリール基を表す。
4における二価の有機基とは、前記式(I)における二価の有機基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
4における一価の有機基とは、前記式(IV)のP1〜P3における一価の有機基と同義であり、好ましい範囲も同様であり、また、それらに加えて、t−ブトキシカルボニル(Boc)基、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル(TEOC)基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル(Troc)基、9−フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)基、トシル(Ts)基又はメシル(Ms)基であることもさらに好ましく、t−ブトキシカルボニル(Boc)基であることも特に好ましい。
Xとしては、脱離能の高い置換基であることが好ましく、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又はOSO2CF3であることがより好ましく、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることがより好ましく、臭素原子であることが特に好ましい。
XにおけるOCORx及びOPO(ORx2中のRxは、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基又はフッ素置換アリール基を表し、メチル基、エチル基、フェニル基、及び、それらのフッ素置換された基であることが好ましい。また、OPO(ORx2における2つのRxは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(VI)及び(VII)で表される化合物には、その光学異性体が含まれ、例えば、以下の構造式の異性体が挙げられる。
【0070】
【化30】

【0071】
式(VI)又は(VII)で表される化合物の製造方法としては、例えば、下記Scheme2に示す方法により製造することができる。
下記Scheme2に示すように、まず、モノヒドロキシ−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オンのN−保護体を用い、ヒドロキシ基を酸化してカルボニル基とする。さらに、得られたカルボニル基をヒドラゾンを経由するBarton法によりビニルハライドへと変換する方法、又は、得られたカルボニル基を塩基によりエノール化しエステルとして捕捉する方法により式(VI)又は(VII)で表される化合物を得ることができる。
【0072】
【化31】

【0073】
モノヒドロキシ−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オンのN−保護体の製造方法としては、例えば、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, Vol.7, p.1299-1302 (1997)等に記載の方法により得ることができる。
上記酸化反応としては、公知の酸化反応を用いることができ、例えば、Swern酸化等が挙げられる。
上記カルボニル基のビニルハライド化反応としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記Barton法(Derek H. R. Barton et al., Tetrahedron, Vol.44, p.147-162 (1988)等参照)などが挙げられる。
上記カルボニル基のエノールエステル化反応としては、公知の方法を用いることができ、例えば、塩基により生じさせたエノールに、ClCORx、ClPO(ORx2、ClSO2CF3、これらの酸塩化物に対応する酸無水物又は混合酸無水物等を作用させる方法等が挙げられる。
【0074】
また、式(VI)又は(VII)で表される化合物は、ラセミ体を用いても、光学純度の高い(キラルな)化合物を用いてもよい。
キラルな式(VI)又は(VII)で表される化合物の製造方法としては、特に制限はなく、上記方法で、キラルな出発物質を用いてもよく、いずれかの段階でキラルカラムや再結晶等の公知の手法により光学分割を行ってもよい。また、公知の光学活性触媒やリパーゼ等を用いて反応を行い、所望のキラル化合物を得てもよい。
以下に具体的な合成例の一例をScheme3として示すが、本発明はこれに限定されない。
【0075】
【化32】

【0076】
<3量化工程>
本発明における3量化工程は、前記式(VI)又は(VII)で表される化合物のうち3分子を結合し前記式(V)で表される化合物を得る工程である。
3量化工程において、3量化する3分子は、前記式(VI)又は(VII)で表される化合物であれば、それぞれ異なる分子を用いてもよいが、同一の3分子を用いることが好ましく、光学活性体としても同一な3分子を用いることがより好ましい。
3量化工程では、2量化続いてもう1分子を反応させるというような段階的な3量化でもよく、一段階で3量化を行ってもよい。
前記式(VI)又は(VII)で表される化合物の3量化を行う手段としては、特に制限はないが、例えば、遷移金属触媒を用いたカップリング反応が好ましく挙げられる。遷移金属触媒を用いたカップリング反応としては、パラジウム触媒を用いた反応がより好ましく挙げられる。
同一の3分子を用いた場合、遷移金属触媒を用いたカップリング反応を用いた3量化をワンポットで行うことができ、また、C3対称のトリアザスマネン類を得ることができ好ましい。
また、非対称の3量化体を製造する方法としては、例えば、前記式(VI)又は(VII)で表される化合物のXをそれぞれCl、Br、及び、I等とし、反応性の違いを利用して合成する方法等が好ましく挙げられる。
遷移金属触媒を用いたカップリング反応としては、例えば、Heck型反応等が挙げられ、また、「Comprehensive Organometallic Chemistry II」E. W. Abel et al. (1995)等を参照することができる。下記Scheme4に示すように、式(VI)で表される化合物3分子が遷移金属触媒により、2量化、続く3量化が起こり、式(V)で表される化合物である化合物(V-A)が得られる。
【0077】
【化33】

【0078】
遷移金属触媒としては、カップリング反応が進行しさえすれば特に制限はないが、パラジウム触媒であることが好ましく、パラジウムナノ粒子を触媒として用いることがより好ましい。
前記パラジウムナノ粒子が反応系中で生じる条件としては、例えば、溶媒としてジオキサンを用い、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)1モル当量に対し、トリフェニルホスフィン(PPh3)を2モル当量添加し、さらに添加剤としてテトラブチルアンモニウムアセテート(Bu4NOAc)、塩基として炭酸ナトリウムを用いることでパラジウムナノ粒子が生成する。
【0079】
反応溶媒としては、カップリング反応に用いる公知の溶媒であればよく、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の高極性溶媒等が好ましく挙げられる。
反応溶媒は、1種のみを用いても、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよく、反応に影響がない限り、少量の水分や不純物を含んでいてもよい。
用いる塩基としては、カップリング反応に用いる公知の塩基であればよく、無機塩基であっても、有機塩基であってもよい。
また、反応時間や反応温度に関しても、反応が進行する限り特に制限はない。
【0080】
<アミド交換工程>
本発明におけるアミド交換工程は、前記式(V)で表される化合物のアミド交換反応により前記式(IV)で表される化合物を得る工程である。
アミド交換工程は、式(V)で表される化合物中の環を形成する3つのアミド基を加水分解し、熱力学的に安定な環構造を形成するよう再度アミド化し、式(IV)で表される化合物を得る工程である。
式(V)で表される化合物と式(IV)で表される化合物とを比較すると、式(V)の化合物では環状アミド基がアザビシクロヘプテノン環部位であるため、式(IV)の化合物がより熱力学的に安定であり、環を形成する3つのアミド基を加水分解した後、熱力学支配の反応条件で再度アミド化すると式(IV)で表される化合物が得られる。
アミド交換工程の概要を、以下のScheme5に示す。
【0081】
【化34】

【0082】
アミドを加水分解する方法としては、公知の方法を用いればよく、酸性下の加水分解であっても、塩基性下の加水分解であってもよい。
加水分解後、再度アミド化する方法としては、公知の方法を用いればよいが、カルボン酸を活性化して反応させる公知の方法を用いることが好ましい。例えば、カルボジイミドやホスフィネート化合物による活性化方法がより好ましく、具体的には、カルボジイミドとしてDCC(N,N-Dicyclohexylcarbodiimide)やEDC(N-(3-Dimethylaminopropyl)-N'-ethylcarbodiimido hydrochloride)を用い、添加剤としてHOBt(1-Hydroxybenzotriazole)やHOAt(7-Aza-1-hydroxy-1,2,3-benzotriazole)を用いる方法や、塩基存在下ホスフィネート化合物としてペンタフルオロフェニルジフェニルフォスフィネート((C652P(O)OC65)を用いる方法等がさらに好ましく挙げられる。
【0083】
<芳香化工程>
本発明における芳香化工程とは、前記式(IV)で表される化合物を芳香化し前記式(I)で表される化合物を得る工程である。
前記式(IV)で表される化合物を芳香化する方法としては、特に限定されないが、例えば、下記Scheme6に示すように、前記式(IV)で表される化合物における環状アミド基の窒素原子上の置換基P1〜P3を脱離させて(脱保護)、窒素原子上が一置換の環状アミド基とし、その後、環状アミド基を芳香化する方法が挙げられる。
【0084】
【化35】

【0085】
上記Scheme6に示す方法では、P1〜P3を一度に全てを脱保護してもよく、順次P1〜P3のうちの1つ又は2つを脱保護してもよい。また、P1〜P3のうちの1つ又は2つを脱保護した場合、脱保護した環状アミド基を先に芳香化した後、残りのP1〜P3を脱保護してもよい。脱保護の方法としては、特に制限はないが、前記した「Protective Groups in Organic Synthesis」に記載の方法を用いることが好ましい。
1〜R3の導入は、芳香化工程で導入しても、式(I)で表される化合物(例えば、無置換のトリアザスマネンなど)を得た後、他の式(I)で表される化合物へ公知の官能基変換方法を用い誘導してもよい。上記公知の官能基変換方法としては、特にピリジン環の2位での官能基変換反応を参照できる。
【0086】
また、本発明における芳香化工程としては、前記式(IV)で表される化合物のアミド基を還元し下記式(II)で表される化合物を得る工程、及び、下記式(II)で表される化合物を芳香化し前記式(I)で表される化合物を得る工程を含むことも好ましい。
【0087】
【化36】

(式(II)中、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a及びR3bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、また、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0088】
アミド基をアミノ基へ還元する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、リチウムアルミニウムヒドリドやボラン等の還元剤を用いる方法が好ましく挙げられる。
式(II)で表される化合物を芳香化する方法としては、公知のテトラヒドロピリジン環やジヒドロピリジン環の芳香化方法を用いることができ、例えば、酸化による芳香化方法が好ましく挙げられる。
芳香化工程におけるテトラヒドロピリジン環やジヒドロピリジン環の酸化剤としては、公知の酸化剤を用いることができ、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン等のキノン系酸化剤、硝酸アンモニウムセリウム(IV)等の金属一電子酸化剤、及び、二酸化マンガン等の金属酸化剤等が好ましく例示できる。
【0089】
また、本発明における芳香化工程としては、下記Scheme7に示すように、式(II-A)又は式(II-B)で表される化合物を中間体として経由し、酸化等により芳香化する方法も挙げられる。
【0090】
【化37】

【0091】
式(II-A)及び式(II-B)中、R1〜R3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。
式(II-A)及び式(II-B)中、R1〜R3における一価の有機基とは、前記式(I)における一価の有機基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(II-A)及び式(II-B)中、L1〜L3における二価の有機基とは、前記式(I)における二価の有機基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
なお、式(II-A)及び式(II-B)で表される化合物は、空気中室温で安定性がよくなく、酸素等により酸化され式(I)で表される化合物へ変化したり、式(II-A)及び/又は式(II-B)で表される化合物同士が不均化して、式(I)で表される化合物及び式(III)で表される化合物へ変化したりする。
【0092】
また、本発明における芳香化工程としては、前記芳香化工程が、前記式(IV)で表される化合物を酸化し下記式(III)で表される化合物を得る工程、及び、下記式(III)で表される化合物を脱保護し前記式(I)で表される化合物を得る工程を含むことも好ましい。
【0093】
【化38】

(式(III)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0094】
前記式(IV)で表される化合物を酸化する方法としては、公知の酸化法を用いることができ、下記Scheme8に示すような、前記式(IV)で表される化合物の架橋部を直接酸化する方法、前記式(IV)で表される化合物におけるアミド基のα位にフェニルセレノ基等の官能基を導入し、酸化する方法が好ましく例示できる。
【0095】
【化39】

(Scheme8中、Oxはフェニルセレノ基等の式(III)で表される化合物への酸化を進行させるための公知の官能基を表す。)
【0096】
式(III)で表される化合物から窒素原子上の保護基P1〜P3を脱保護の方法としては、特に制限はないが、前記した「Protective Groups in Organic Synthesis」に記載の方法を用いることが好ましい。
【0097】
本発明のトリアザスマネン類の製造方法での前記3量化工程、アミド交換工程及び芳香化工程の前後において、例えば、環状アミド基の窒素原子上の置換基P1〜P3を他のP1〜P3に適宜変換しても、化合物中の官能基を適宜変換してもよく、また、光学分割やラセミ化を行ってもよい。
官能基変換について特に制限はなく、公知の方法を参照して行うことができる。
光学分割の方法についても特に制限はなく、優先晶出法、ジアステレオマー法、キラルカラムクロマトグラフィー、及び、酵素を用いる方法等の公知の方法を用いることができる。また、光学純度を上げるため、上記方法や、再結晶等を行ってもよい。
【0098】
(式(IV)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩の製造方法)
本発明の前記式(IV)で表される化合物、その立体異性体、及び、それらの塩の製造方法は、前記式(VI)又は(VII)で表される化合物のうち3分子を結合し前記式(V)で表される化合物を得る3量化工程、及び、前記式(V)で表される化合物のアミド交換反応により前記式(IV)で表される化合物を得るアミド交換工程を含むことを特徴とする。
3量化工程及びアミド工程は、前記トリアザスマネン類の製造方法における3量化工程及びアミド工程と同義であり、好ましい方法等も同様である。
また、前記トリアザスマネン類の製造方法と同様に、前記3量化工程及びアミド交換工程の前後において、例えば、環状アミド基の窒素原子上の置換基P1〜P3を他のP1〜P3に適宜変換しても、化合物中の官能基を適宜変換してもよく、また、光学分割を行ってもよい。
【0099】
(式(V)で表される化合物、その立体異性体、及び、それらの塩の製造方法)
本発明の前記式(V)で表される化合物、その立体異性体、及び、それらの塩の製造方法は、前記式(VI)又は(VII)で表される化合物のうち3分子を結合し前記式(V)で表される化合物を得る3量化工程を含むことを特徴とする。
3量化工程は、前記トリアザスマネン類の製造方法における3量化工程と同義であり、好ましい方法等も同様である。
また、前記トリアザスマネン類の製造方法と同様に、前記3量化工程の前後において、例えば、環状アミド基の窒素原子上の置換基P1〜P3を他のP1〜P3に適宜変換しても、化合物中の官能基を適宜変換してもよく、また、光学分割を行ってもよい。
【実施例】
【0100】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
また、以下の実施例で用いる器具及び装置等は、特に断りのない限り、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、市販又は公知の器具及び装置を適宜用いることができる。
【0101】
以下の実施例で用いた溶媒は、特に断りがない限り、全て関東化学(株)製脱水溶媒をそのまま用いた。また、抽出操作等の溶媒は、同じく関東化学(株)製一級溶媒を使用した。
試薬は、特に断りがない限り、汎用無機試薬に関してはナカライテスク(株)製のものを、汎用有機試薬に関しては東京化成工業(株)製試薬を用いていた。
また、カラムクロマトグラフィーはMerck silica gel 60、薄層クロマトグラフィーはWAKO gel BF-5を用いた。
NMRの測定には、400MHzのNMR(日本電子(株)製JEOL LA400)を使用した。
【0102】
(合成例1)
<(±)-(1R*,4S*,6R*)-2-(4-methoxybenzyl)-6-hydroxy-2-aza-bicyclo[2.2.1]heptan-3-one((±)−2)の合成>
【0103】
【化40】

【0104】
アルゴン雰囲気下、3−シクロペンテン−1−カルボン酸1(5.0g,44.6mmol)のジクロロメタン溶液(50ml)に塩化オキザリル((COCl)2,4.28ml,49.1mmol)を0℃で加え、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF,5滴)を加えた。室温で3時間撹拌後、ジクロロメタン(CH2Cl2,50ml)を加え、ピリジン(70ml)を0℃でゆっくり加えた。4−メトキシベンジルアミン(PMB−NH2,7.57ml,58.0mmol)と4−ジメチルアミノピリジン(DMAP,545mg,4.46mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。0℃に冷却して水を加え、酢酸エチル(200ml×3)で抽出した。有機層を水(200ml×2)、1M塩酸(200ml)、飽和食塩水で洗った後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、セライト濾過した。有機溶媒を減圧留去してアミド体を粗生成物として得た。
このアミド体をジクロロメタン(200ml)に溶解し、69%の純度のm−クロロ過安息香酸(MCPBA,13.4g,53.5mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。ジクロロメタンを減圧留去したのち、水を加え、酢酸エチル(100ml×3)で抽出した。有機層を1M水酸化ナトリウム水溶液(100ml×3)、水(100ml)、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、セライト濾過した。有機溶媒を減圧留去し、エポキシドを粗生成物として得た。
このエポキシドをアルゴン雰囲気下、tert−ブタノール(t−BuOH,200ml)に溶解し、カリウムtert−ブトキシド(t−BuOK,10.0g,89.2mmol)を室温で加えた。80℃で6時間撹拌後、0℃に冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液、水を加えた後、酢酸エチル(200ml×3)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗った後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、セライト濾過した。有機溶媒を減圧留去して得られた組成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン、濃度勾配:酢酸エチル:ヘキサン=9:1→10:0)で精製し、アルコール(±)−2(5.4g、4段階収率49%)を得た。
なお、3−シクロペンテン−1−カルボン酸1は、J. Org. Chem. 1984, vol.49, p.928-931に従って調製した。また、3−シクロペンテン−1−カルボン酸1はAldrich社等からも市販されている。
【0105】
(±)-(1R*,4S*,6R*)-2-(4-methoxybenzyl)-6-hydroxy-2-aza-bicyclo[2.2.1]heptan-3-one((±)−2):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.14 (2H, d, J = 8.3 Hz), 6.84 (2H, d, J = 8.3 Hz), 4.44 (1H, d, J = 14.9 Hz), 4.02 (1H, d, J = 14.9 Hz), 3.94 (1H, m), 3.78 (3H, s), 3.48 (1H, s), 2.73 (1H, m), 2.08 (1H, ddd, J = 2.0, 6.8, 13.2 Hz), 1.86 (1H, m), 1.82 (1H, m), 1.53 (1H, ddd, J = 2.4, 4.1, 13.2 Hz).
【0106】
(合成例2)
<(±)-(1R*,4S*)-6-(4-methoxybenzyl)-6-aza-bicyclo[2.2.1]heptane-2,5-dione((±)−3)の合成>
【0107】
【化41】

【0108】
アルゴン雰囲気下、塩化オキザリル(1.32ml,15.2mmol)のジクロロメタン溶液(100ml)に−78℃でジメチルスルホキシド(DMSO,2.15ml,30.3mmol)のジクロロメタン溶液(10ml)を5分間かけて滴下し、その後、10分間撹拌した。アルコール(±)−2(2.50g,10.1mmol)のジクロロメタン溶液(100ml)を−78℃で20分間かけて滴下し、更に10分撹拌した。トリエチルアミン(7.04ml,50.5mmol)を加え、−78℃で撹拌した後、撹拌しながら室温まで昇温した。0℃で水を加え、ジクロロメタン(100ml×3)で抽出し、有機層を飽和食塩水で洗った後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、セライト濾過した。有機溶媒を減圧留去して得た粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=7:3)で精製し、ケトン(±)−3(2.48g,収率100%)を得た。
【0109】
(±)-(1R*,4S*)-6-(4-methoxybenzyl)-6-aza-bicyclo[2.2.1]heptane-2,5-dione((±)−3):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.13 (2H, d, J = 8.5 Hz), 6.82 (2H, d, J = 8.5 Hz), 4.66 (1H, d, J = 14.9 Hz), 3.85 (1H, d, J = 14.9 Hz), 3.76 (3H, s), 3.53 (1H, m), 2.99 (1H, m), 2.22 (1H, m), 2.15 (2H, m), 1.83 (1H, d, J = 10.7 Hz).
【0110】
(合成例3)
<(±)-(1R*,4S*,6S*)-2-(4-methoxybenzyl)-6-hydroxy-2-aza-bicyclo[2.2.1]heptan-3-one((±)−4)>
【0111】
【化42】

【0112】
ケトン(±)−3(1.00g,4.08mmol)のメタノール溶液(40ml)に水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4,77.1mg,2.04mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。0℃で飽和塩化アンモニウム水溶液(5ml)を加えた後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と水を加え、酢酸エチル(200ml×3)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗った後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、セライト濾過した。有機溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン、濃度勾配:酢酸エチル:ヘキサン=9:1→10:0)で精製し、アルコール(±)−4(880mg,収率87%)を得た。
【0113】
(±)-(1R*,4S*,6S*)-2-(4-methoxybenzyl)-6-hydroxy-2-aza-bicyclo[2.2.1]heptan-3-one((±)−4):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.18 (2H, d, J = 8.2 Hz), 6.83 (2H, d, J = 8.2 Hz), 4.93 (1H, d, J = 15.0 Hz), 4.53 (1H, ddd, J = 2.7, 2.7, 8.3 Hz), 4.07 (1H, d, J = 15.0 Hz), 3.75 (3H, s), 3.64 (1H, s), 2.74 (1H, m), 2.24 (1H, J = 3.9, 8.3, 13.1 Hz), 1.76 (1H, m), 1.40 (1H, d, J = 9.5 Hz), 1.34 (1H, ddd, J = 2.7, 2.7, 13.1 Hz).
【0114】
(合成例4)
<(1R,4S,6S)-2-(4-methoxybenzyl)-6-hydroxy-2-aza-bicyclo[2.2.1]heptan-3-one((1R,4S,6S)−4)及び(1S,4R,6R)-2-(4-methoxybenzyl)-6-acetoxy-2-aza-bicyclo[2.2.1]heptan-3-one((1S,4R,6R)−5)の合成>
【0115】
【化43】

(ただし、式中の絶対配置は推定である。)
【0116】
アルゴン雰囲気下、セラミック固定化リパーゼ PS−CアマノII(天野エンザイム(株)製,500mg)にアルコール(±)−4(1.00g,4.04mmol)のジクロロメタン溶液(40ml)、酢酸ビニル(3.70ml,40.4mmol)を加え、35℃で41時間撹拌した。反応溶液を吸引濾過した後、有機溶媒を減圧留去し、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン、濃度勾配:酢酸エチル:ヘキサン=0:1→1:0)で精製して、アルコール(1R,4S,6S)−4(1.50g,収率100%)とエステル(1S,4R,6R)−5(1.76g,収率100%)を得た。
【0117】
(1R,4S,6S)-2-(4-methoxybenzyl)-6-hydroxy-2-aza-bicyclo[2.2.1]heptan-3-one((1R,4S,6S)−4):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.18 (2H, d, J = 8.2 Hz), 6.83 (2H, d, J = 8.2 Hz), 4.93 (1H, d, J = 15.0 Hz), 4.53 (1H, ddd, J = 2.7, 2.7, 8.3 Hz), 4.07 (1H, d, J = 15.0 Hz), 3.75 (3H, s), 3.64 (1H, s), 2.74 (1H, m), 2.24 (1H, J = 3.9, 8.3, 13.1 Hz), 1.76 (1H, m), 1.40 (1H, d, J = 9.5 Hz), 1.34 (1H, ddd, J = 2.7, 2.7, 13.1 Hz).
【0118】
(1S,4R,6R)-2-(4-methoxybenzyl)-6-acetoxy-2-aza-bicyclo[2.2.1]heptan-3-one((1S,4R,6R)−5):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.14 (2H, d, J = 8.6 Hz), 6.84 (2H, d, J = 8.6 Hz), 5.23 (1H, ddd, J = 3.0, 3.0, 8.5 Hz), 4.99 (1H, d, J = 14.9 Hz), 3.82 (1H, m), 3.78 (1H, d, J = 14.9 Hz), 3.77 (3H, s), 2.81 (1H, m), 2.35 (1H, ddd, J = 4.1, 8.5, 13.7 Hz), 2.04 (3H, s), 1.81 (1H, m), 1.49 (1H, ddd, J=3.0, 3.0, 13.7 Hz), 1.45 (1H, d, J = 10.0 Hz).
【0119】
(合成例5)
<(1S,4R,6R)−5からの(1S,4R,6R)-2-(4-methoxybenzyl)-6-hydroxy-2-aza-bicyclo[2.2.1]heptan-3-one((1S,4R,6R)−(4))の合成>
【0120】
【化44】

【0121】
(1S,4R,6R)−5(1.78g,6.14mmol)のメタノール(30ml)と水(30ml)の混合溶液に0℃で炭酸カリウム(K2CO3:1.70g,12.3mmol)を加え、0℃で3時間撹拌した。ジクロロメタンで抽出した後、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、セライト濾過した。有機溶媒を減圧留去して、(1S,4R,6R)−4(1.39g,91%)を得た。
(1S,4R,6R)−4:[α]23D = 124.40 (c=1.00).
【0122】
(合成例6)
<(1R,4S)-6-(4-methoxybenzyl)-6-aza-bicyclo[2.2.1]heptane-2,5-dione((1R,4S)−3)の合成>
【0123】
【化45】

【0124】
アルゴン雰囲気下、塩化オキザリル(0.790ml,9.11mmol)のジクロロメタン溶液(30ml)に−78℃でジメチルスルホキシド(1.29ml,18.2mmol)のジクロロメタン溶液(5ml)を5分間かけて徐々に滴下し、その後、10分間撹拌した。アルコール(1R,4S,6S)−4(1.50g,6.07mmol)のジクロロメタン溶液(25ml)を−78℃で10分間かけて徐々に滴下し、更に10分間撹拌した。トリエチルアミン(4.23ml,30.4mmol)を加え、−78℃で撹拌した後、室温まで撹拌しながら昇温した。0℃で水を加え、ジクロロメタン(50ml×3)で抽出し、有機層を飽和食塩水で洗った後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、セライト濾過した。有機溶媒を減圧留去して得た粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン、濃度勾配:酢酸エチル:ヘキサン=1:1→4:1)で精製し、ケトン(1R,4S)−3(1.45g,収率97%)を得た。
【0125】
(1R,4S)-6-(4-methoxybenzyl)-6-aza-bicyclo[2.2.1]heptane-2,5-dione((1R,4S)−3):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.13 (2H, d, J = 8.5 Hz), 6.82 (2H, d, J = 8.5 Hz), 4.66 (1H, d, J = 14.9 Hz), 3.85 (1H, d, J = 14.9 Hz), 3.76 (3H, s), 3.53 (1H, m), 2.99 (1H, m), 2.22 (1H, m), 2.15 (2H, m), 1.83 (1H, d, J = 10.7 Hz).
【0126】
(合成例7)
<(1R,4S)-2-(4-methoxybenzyl)-6-bromo-2-aza-bicyclo[2.2.1]hept-5-en-3-one((1R,4S)−6)の合成>
【0127】
【化46】

【0128】
アルゴン雰囲気下、ケトン(1R,4S)−3(852mg,3.47mmol)のメタノール溶液(17ml)にヒドラジン一水和物(337μl,4.94mmol)を加え、室温で12時間撹拌した後、メタノールを減圧留去してヒドラゾンの粗生成物を得た。アルゴン雰囲気下、−20℃に冷却した臭化銅(II)(6.20g,27.8mmol)とトリエチルアミン(1.90ml,13.9mmol)のメタノール溶液(30ml)にヒドラゾンの粗生成物のメタノール溶液(5ml)を加え、−20℃で10分間撹拌した。アンモニア水、水を加えた後、酢酸エチル(100ml×3)で抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、有機溶媒を減圧留去して、臭化物の粗生成物を得た。
アルゴン雰囲気下、上記臭化物の粗生成物のテトラヒドロフラン溶液(30ml)にカリウムtert−ブトキシド(685mg,6.10mmol)を0℃で加え、10分間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液、水を加え、酢酸エチル(30ml×3)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、セライト濾過した。有機溶媒を減圧留去した後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン、濃度勾配:酢酸エチル:ヘキサン=1:4→2:3)で精製し、(1R,4S)−6(528mg,収率50%)を得た。
【0129】
(1R,4S)-2-(4-methoxybenzyl)-6-bromo-2-aza-bicyclo[2.2.1]hept-5-en-3-one((1R,4S)−6):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.16 (2H, d, J = 8.7 Hz), 6.85 (2H, d, J = 8.7 Hz), 6.59 (1H, m), 4.51 (1H, d, J = 14.6 Hz), 3.98 (1H, m), 3.97 (1H, d, J = 14.6 Hz), 3.79 (3H, s), 3.36 (1H, m), 2.32 (1H, m), 2.28 (1H, m).
【0130】
(実施例1)
<3量化体(3S,4R,7S,8R,11S,12R)-3,4,7,8,11,12-Hexahydro-1,5,9-tri(4-methozybenzyl)-1,5,9-triaza-3,12:4,7:8,11-trimethanotriphenylene-2,6,10-trione((3S,4R,7S,8R,11S,12R)−7)の合成>
【0131】
【化47】

【0132】
アルゴン雰囲気下、テトラブチルアンモニウムアセテート(Bu4NOAc,5.17g,17.1mmol)、モレキュラーシーブス4A(MS4A,500mg)、炭酸ナトリウム(Na2CO3,3.62g,34.2mmol)、トリフェニルホスフィン(PPh3,44.9mg,0.171mmol)の1,4−ジオキサン懸濁液(22ml)を100℃に加熱し、(1R,4S)−6(528mg,1.71mmol)の1,4−ジオキサン溶液(8ml)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2,19.2mg,0.086mmol)の1,4−ジオキサン溶液(4ml)を加え、100℃で5時間撹拌した。反応溶液をセライト、シリカゲルで濾過し、有機溶媒を減圧留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=65:35)で精製し、(3S,4R,7S,8R,11S,12R)−7(140mg,収率36%)を得た。
【0133】
(3S,4R,7S,8R,11S,12R)-3,4,7,8,11,12-Hexahydro-1,5,9-tri(4-methozybenzyl)-1,5,9-triaza-3,12:4,7:8,11-trimethanotriphenylene-2,6,10-trione((3S,4R,7S,8R,11S,12R)−7):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.45 (6H, d, J = 8.5 Hz), 6.93 (6H, d, J = 8.5 Hz), 4.68 (3H, d, J = 14.8 Hz), 4.47 (3H, m), 3.84 (3H, m), 3.82 (9H, s), 3.34 (3H, d, J = 14.8 Hz), 2.54 (3H, d, J = 8.8 Hz), 2.21 (3H, d, J = 8.8 Hz).
【0134】
(実施例2)
<アミド交換体(10S,11R,12S,13R,14S,15R)-10,11,12,13,14,15-Hexahydro-1,4,7-tri-(4-methozybenzy)-1,4,7-triaza-sumanene-2,5,8-trione((10S,11R,12S,13R,14S,15R)−8)の合成>
【0135】
【化48】

【0136】
(3S,4R,7S,8R,11S,12R)−7(30.0mg,44.0μmol)の酢酸(AcOH)溶液(4.5ml)に12M塩酸(1.5ml)を室温で加え、60℃で3時間撹拌した。溶媒を減圧留去して、アミノカルボン酸の粗生成物を得た。この粗生成物をアルゴン雰囲気下、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF,6.8ml)に溶解し、0℃でペンタフルオロフェニルジフェニルフォスフィネート((C652P(O)OC65,169mg,440μmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(2.0ml)とジイソプロピルアミン(DIPEA,153μl,880μmol)を加え、0℃で4時間、30℃で4時間、60℃で10時間撹拌した。0℃に冷却した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水を加え、ジクロロメタン(5ml×3)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、セライト濾過した。有機溶媒を減圧留去した後、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ジクロロメタン=3:7)で精製し、(10S,11R,12S,13R,14S,15R)−8(22.6mg,2段階収率75%)を得た。
【0137】
(10S,11R,12S,13R,14S,15R)-10,11,12,13,14,15-Hexahydro-1,4,7-tri(4-methozybenzy)-1,4,7-triaza-sumanene-2,5,8-trione((10S,11R,12S,13R,14S,15R)−8):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.27 (6H, d, J = 8.5 Hz), 6.88 (6H, d, J = 8.5 Hz), 5.51 (3H, d, J = 14.6 Hz), 5.01 (3H, m), 4.02 (3H, m), 3.80 (9H, s), 3.70 (3H, d, J = 14.6 Hz), 3.26 (3H, ddd, J = 7.2, 7.2, 12.7 Hz), 1.87 (3H, ddd, J = 9.0, 9.0, 12.7 Hz).
【0138】
(実施例3)
<PhSe基(C65Se−)導入体(10R,11R,12R,13R,14R,15R)-11,13,14-Hexahydro-10,12,14-tri(phenylseleno)-1,4,7-tri(4-methozybenzy)-1,4,7-triaza-sumanene-2,5,8-trione(9)の合成>
【0139】
【化49】

【0140】
アルゴン雰囲気下、アミド交換体8(10.0mg,14.7μmol)のテトラヒドロフラン(0.5ml)溶液に0℃で、リチウムテトラメチルピペリジンアミド(LiTMP,14.7μmol)のテトラヒドロフラン(100μl)溶液、塩化フェニルセレニド(PhSeCl,14.7μmol)のテトラヒドロフラン(100μl)溶液を交互に各々4回加えた。飽和塩化アンモニウム水溶液、水を加えた後、ジクロロメタン(1ml×3)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、セライト濾過した。有機溶媒を減圧留去した後、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(60%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、PhSe基導入体9(3.9mg,収率23%)を得た。
【0141】
(10R,11R,12R,13R,14R,15R)-11,13,14-Hexahydro-10,12,14-tri(phenylseleno)-1,4,7-tri-(4-methozybenzy)-1,4,7-triaza-sumanene-2,5,8-trione(9):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.35-7.30 (12H, m), 7.10-7.00 (9H, m), 7.00-6.90 (6H, m), 5.26 (3H, d, J = 14.5 Hz), 4.14 (3H, dd, J = 6.4, 8.1 Hz), 3.85 (9H, s), 3.55 (3H, d, J = 14.5 Hz), 2.90 (3H, dd, J = 6.4, 13.4 Hz), 2.02 (3H, dd, J = 8.1, 13.4 Hz).
【0142】
(実施例4)
<酸化体1,4,7-tri(4-methozybenzy)-1,4,7-triazasumanene-2,5,8-trione(10)の合成>
【0143】
【化50】

【0144】
PhSe基導入体9のジクロロメタン溶液にアルゴン雰囲気下、−78℃で400mol%のm−クロロ過安息香酸(m−CPBA)を加え、その後反応溶液をゆっくり室温まで上げ、3時間撹拌した。反応溶媒を留去し、酸化体10を得た。ガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所社製GC−QP2010)を用いて分析を行ったところ、酸化体10の質量数675のピークが得られたが、酸化体10は不安定であり、単離することはできなかった。
【0145】
(実施例5)
<脱保護体(10S,11R,12S,13R,14S,15R)-1,4,7,10,11,12,13,14,15-Nonahydro-1,4,7-triaza-sumanene-2,5,8-trione(11)の合成>
【0146】
【化51】

【0147】
アミド交換体8(10.7mg,15.7μmol)にアルゴン雰囲気下、無水トリフルオロ酢酸(109μl、785μmol)、トリフルオロ酢酸(0.8ml)、メトキシベンゼン(34.1μl、314μmol)を加え、75℃で4日間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、酢酸と水を加え、再び減圧濃縮した。粗生成物にジクロロメタンを加え、生じた沈殿をシリンジフィルター(PTFE、0.2μm pore size)で濾別した。濾別されたフィルター上の沈殿を酢酸で溶出し、酢酸を減圧留去して、脱保護体11(3.7mg、収率73%)を得た。
【0148】
(10S,11R,12S,13R,14S,15R)-1,4,7,10,11,12,13,14,15-Nonahydro-1,4,7-triaza-sumanene-2,5,8-trione:1H NMR (CD3CO2D, 2.03 ppm) δ(ppm) = 5.31 (3H, m), 4.23 (3H, m), 3.23 (3H, ddd, J = 7.6, 7.6, 12.7 Hz), 1.74 (3H, ddd, J = 8.6, 8.6, 12.7 Hz).
【0149】
(合成例8)
<(1R,4S)-2-Benzyl-6-bromo-2-aza-bicyclo[2.2.1]hept-5-en-3-one((1R,4S)−15)の合成>
前記合成例1における4−メトキシベンジルアミン(PMB−NH2)を当モル量のベンジルアミン(Bn−NH2)に代えた以外は、合成例1〜4、6及び7と同様の方法により、下記化合物12〜14を経由し、下記(1R,4S)−15を得た。
【0150】
【化52】

【0151】
(±)-(1R*,4S*,6R*)-2-Benzyl-6-hydroxy-2-aza-bicyclo[2.2.1]heptan-3-one((±)−(1R*,4S*,6R*)−12):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.35-7.20 (5H, m), 4.56 (1H, d, J = 15.4 Hz), 4.03 (1H, d, J = 15.4 Hz), 3.98 (1H, m), 3.50 (1H, s), 2.74 (1H, m), 2.10 (1H, ddd, J = 13.2, 7.0, 2.1 Hz), 1.88 (1H, m), 1.84 (1H, m), 1.55 (1H, ddd, J = 13.2, 4,1, 2.3 Hz).
【0152】
【化53】

【0153】
(±)-(1R*,4S*)-6-Benzyl-6-aza-bicyclo[2.2.1]heptane-2,5-dione((±)−(1R*,4S*)−13):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.35-7.20 (5H, m), 4.77 (1H, d, J = 15.1 Hz), 3.91 (1H, d, J = 15.1 Hz), 3.56 (1H, m), 3.03 (1H, m), 2.27 (1H, m), 2.20-2.16 (2H, m), 1.86 (1H,d, J = 10.7 Hz).
【0154】
【化54】

【0155】
(1R,4S,6S)-2-Benzyl-6-hydroxy-2-aza-bicyclo[2.2.1]heptan-3-one((1S,4R,6R)−14):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.36-7.22 (5H, m), 5.02 (1H, d, J = 14.9 Hz), 4.56 (1H, ddd, J = 8.5, 2.9, 2.9 Hz), 4.14 (1H, d, J = 14.9 Hz), 3.66 (1H, s), 2.78 (1H, m), 2.28 (1H, ddd, J = 13.2, 8.5, 4.4 Hz), 1.83 (1H, m), 1.43 (1H, d, J = 10.0 Hz), 1.34 (1H, ddd, J = 13.2, 2.9, 2.9 Hz).
(1S,4R,6R)−14:[α]23D = 130.16 (c=1.00).
【0156】
【化55】

【0157】
(1R,4S)-2-Benzyl-6-bromo-2-aza-bicyclo[2.2.1]hept-5-en-3-one((1R,4S)−15):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.36-7.20 (5H, m), 6.61 (1H, m), 4.60 (1H, d, J = 15.1 Hz), 4.00 (1H, d, J = 15.1 Hz), 3.99 (1H, m), 3.38 (1H, m), 2.36-2.28 (2H, m).
【0158】
(実施例6)
<3量化体(3S,4R,7S,8R,11S,12R)-3,4,7,8,11,12-Hexahydro-1,5,9-tribenzyl-1,5,9-triaza-3,12:4,7:8,11-trimethanotriphenylene-2,6,10-trione(16)の合成>
【0159】
【化56】

【0160】
(1R,4S)−6の代わりに(1R,4S)−15を用いた以外は実施例1と同様に反応を行い、(3S,4R,7S,8R,11S,12R)−16を得た。
【0161】
(3S,4R,7S,8R,11S,12R)-3,4,7,8,11,12-Hexahydro-1,5,9-tribenzyl-1,5,9-triaza-3,12:4,7:8,11-trimethanotriphenylene-2,6,10-trione((3S,4R,7S,8R,11S,12R)−16):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.55-7.25 (15H, m), 4.75 (3H, d, J = 15.1 Hz), 4.49 (3H, m), 3.85 (3H, m), 3.43 (3H, d, J = 15.1 Hz), 2.58 (3H, d, J = 8.8 Hz), 2.23 (3H, d, J = 8.8 Hz). MS(MALDI-TOF): m/z = 592.26 [MH+].
【0162】
(実施例7)
<アミド交換体(10S,11R,12S,13R,14S,15R)-10,11,12,13,14,15-Hexahydro-1,4,7-tribenzyl-1,4,7-triaza-sumanene-2,5,8-trione(17)の合成>
【0163】
【化57】

【0164】
(3S,4R,7S,8R,11S,12R)−7の代わりに(3S,4R,7S,8R,11S,12R)−16を用いた以外は実施例2と同様に反応を行い、(10S,11R,12S,13R,14S,15R)−17を得た。
【0165】
(10S,11R,12S,13R,14S,15R)-10,11,12,13,14,15-Hexahydro-1,4,7-tribenzyl-1,4,7-triaza-sumanene-2,5,8-trione(10S,11R,12S,13R,14S,15R)−17:1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.20-7.50 (15H, m), 5.59 (3H, d, J = 14.9 Hz), 5.03 (3H, m), 4.05 (3H, m), 3.77 (3H, m), 3.26 (3H, ddd, J = 12.4, 7.6, 7.6 Hz), 1.90 (3H, ddd, J = 12.4, 8.8, 8.8 Hz).
【0166】
(実施例8)
<還元体(10S,11R,12S,13R,14S,15R)-2,5,8,10,11,12,13,14,15-nonahydro-1,4,7-tribenzyl-1,4,7-triaza-sumanene(18)の合成>
【0167】
【化58】

【0168】
アルゴン雰囲気下、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4:14.5mg,382μmol)と塩化アルミニウム(AlCl3:50.8mg,381μmol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(5ml)に室温でアミド17(15.0mg,25.4μmol)を加えた後、5時間還流した。0℃で水を加え、酢酸エチル(3ml×3)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、セライト濾過した。有機溶媒を減圧留去し、還元体18(13.0mg)を得た。
【0169】
(10S,11R,12S,13R,14S,15R)-2,5,8,10,11,12,13,14,15-nonahydro-1,4,7-tribenzyl-1,4,7-triaza-sumanene((10S,11R,12S,13R,14S,15R)−18):1H NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 7.50-7.20 (15H, m), 4.07 (3H, brs), 3.80 (3H, d, J = 13.7 Hz), 3.50 (3H, d, J = 13.7 Hz), 3.20 (3H, brs), 2.72 (3H, brs), 2.34 (3H, m), 2.09 (3H, brs), 1.25 (3H, m). MS(ESI): m/z = 550 [M+H+], 566 [M+Na+].
【0170】
(実施例9)
<2,5,8-Trichloro-1,4,7-triazasumanene(19)の合成>
【0171】
【化59】

【0172】
アルゴン雰囲気下、脱保護体11(1.0mg,3.1μmol)に塩化オキザリル(0.3ml)を加え、60℃で7時間撹拌した。反応溶液に2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ:6.4mg,28μmol)のトルエン溶液(0.4ml)を加え、110℃で5時間撹拌した後、有機溶媒を減圧留去し、トリクロロトリアザスマネン19を得た。
【0173】
2,5,8-Trichloro-1,4,7-triazasumanene(19):1H-NMR (CDCl3, 7.24 ppm) δ(ppm) = 3.79 (3H, d, J = 15.1 Hz), 3.42 (3H, d, J = 15.1 Hz).
【0174】
(実施例10)
<1,4,7-Triazasumanene(20)の合成>
【0175】
【化60】

【0176】
トリクロロトリアザスマネン19に対し、遷移金属触媒及び水素源を用いて水素化反応を行うことにより、トリクロロトリアザスマネン19における3つの塩素原子を水素原子に置き換えたトリアザスマネン20を得ることができる。
水素化反応としては、公知の方法を用いることができ、一例としては、Bull. Korean Chem. Soc., 21, 211-214 (1999)に記載の方法を挙げることができる。
遷移金属触媒としては、水素化反応が可能なものであれば特に制限はなく、パラジウム触媒やロジウム触媒、チタン触媒等が例示できる。水素源としては、水素化反応において遷移金属触媒へ水素供与可能なものであれば特に制限はなく、シクロヘキサジエンや水素分子、トリアルキルシラン、アルミニウムヒドリド等が例示できる。
【0177】
(実施例11:トリアザスマネンにおけるピリジン環上窒素原子のα位への置換基導入)
下記Scheme9に一例を示すように、脱保護体11を公知の試薬によりクロロイミデート化し、クロスカップリング反応、続いて酸化反応を行うことにより、ピリジン環上の窒素原子のα位に置換基を導入することができる。
【0178】
【化61】

(Scheme9中、Ra〜Rcはそれぞれ独立に導入可能な任意の置換基を表す。)
【0179】
(実施例12:トリアザスマネンにおけるピリジン環上窒素原子のα位への置換基導入)
下記Scheme10に一例を示すように、脱保護体11の窒素原子をt−ブトキシカルボニル(Boc)基で保護し、さらにエノールホスファート化、エノールトリフラート化若しくはビニルクロロ化し、クロスカップリング反応、脱保護、酸化反応を行うことにより、ピリジン環上の窒素原子のα位に置換基を導入することができる。
【0180】
【化62】

(Scheme10中、Ra〜Rcはそれぞれ独立に導入可能な任意の置換基を表す。)
【0181】
(実施例13:トリアザスマネン環のベンジル位への置換基導入)
H. Sakurai et al., J. Am. Chem. Soc., 127, 11580-11581 (2005)に記載の方法と同様な方法で、トリアザスマネンに塩基を作用させ、求電子剤を反応させることにより、トリアザスマネンのベンジル位(トリアザスマネン環の飽和炭素)に種々の官能基を導入することができる。なお、前記塩基としては、ベンジル位にアニオンを生成することができるものであれば特に制限はないが、トリアザスマネンに対しリチウムジイソプロピルアミドを作用させることが好ましい。前記求電子剤としては、ベンジル位に生成したアニオンに反応する公知の求電子剤であれば特に制限はないが、モノハロゲノシラン類やアルデヒド類が好ましく挙げられる。また、トリアザスマネン環のベンジル位への置換基導入法は、上記一例に限定されるものではなく、公知の方法を応用して用いることができる。
【0182】
(実施例14:金属錯体の形成)
トリアザスマネンに対し、公知の錯体形成方法により、金属を配位させ、トリアザスマネンに金属原子が配位した金属錯体を形成することができる。金属の一例としては、Cu(II)のBF4塩、Pd(II)のBF4塩、Ce(III)のトリフラート塩、又は、Yb(III)のトリフラート塩が例示できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
【化1】

(式(I)中、R1〜R3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
1〜R3が水素原子又は塩素原子であり、L1〜L3がメチレン基(−CH2−)である請求項1に記載の化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
【請求項3】
下記式(II)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
【化2】

(式(II)中、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a及びR3bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、また、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
1a、R1b、R2a、R2b、R3a及びR3bがそれぞれ独立に水素原子又は塩素原子であり、L1〜L3がメチレン基(−CH2−)である請求項3に記載の化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
【請求項5】
下記式(III)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
【化3】

(式(III)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項6】
1〜L3がメチレン基(−CH2−)である請求項5に記載の化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
【請求項7】
下記式(IV)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
【化4】

(式(IV)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項8】
1〜L3がメチレン基(−CH2−)である請求項7に記載の化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
【請求項9】
下記式(V)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
【化5】

(式(V)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項10】
1〜L3がメチレン基(−CH2−)である請求項9に記載の化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩を含む金属錯体。
【請求項12】
下記式(VI)又は式(VII)で表される化合物のうち3分子を結合し下記式(V)で表される化合物を得る3量化工程、
下記式(V)で表される化合物のアミド交換反応により下記式(IV)で表される化合物を得るアミド交換工程、及び、
下記式(IV)で表される化合物を芳香化し下記式(I)で表される化合物を得る芳香化工程
を含むことを特徴とする
下記式(I)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩の製造方法。
【化6】

(式(I)中、R1〜R3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【化7】

(式(IV)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【化8】

(式(V)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【化9】

(式(VI)及び式(VII)中、L4は二価の有機基を表し、P4は水素原子又は一価の有機基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、OCORx、OPO(ORx2又はOSO2CF3を表し、また、Rxはアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基又はフッ素置換アリール基を表す。)
【請求項13】
前記芳香化工程が、
前記式(IV)で表される化合物のアミド基を還元し下記式(II)で表される化合物を得る工程、及び、
下記式(II)で表される化合物を芳香化し前記式(I)で表される化合物を得る工程
を含む請求項12に記載の前記式(I)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩の製造方法。
【化10】

(式(II)中、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a及びR3bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、また、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項14】
前記芳香化工程が、
前記式(IV)で表される化合物を酸化し下記式(III)で表される化合物を得る工程、及び、
下記式(III)で表される化合物を脱保護し前記式(I)で表される化合物を得る工程
を含む請求項12に記載の前記式(I)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩の製造方法。
【化11】

(式(III)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項15】
下記式(VI)又は式(VII)で表される化合物のうち3分子を結合し下記式(V)で表される化合物を得る3量化工程、及び、
下記式(V)で表される化合物のアミド交換反応により下記式(IV)で表される化合物を得るアミド交換工程
を含むことを特徴とする
下記式(IV)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩の製造方法。
【化12】

(式(IV)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【化13】

(式(V)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【化14】

(式(VI)及び式(VII)中、L4は二価の有機基を表し、P4は水素原子又は一価の有機基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、OCORx、OPO(ORx2又はOSO2CF3を表し、また、Rxはアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基又はフッ素置換アリール基を表す。)
【請求項16】
下記式(VI)又は式(VII)で表される化合物のうち3分子を結合し下記式(V)で表される化合物を得る3量化工程
を含むことを特徴とする
下記式(V)で表される化合物、その立体異性体、光学異性体及びラセミ体、並びに、それらの塩の製造方法。
【化15】

(式(V)中、L1〜L3はそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよく、P1〜P3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【化16】

(式(VI)及び(VII)中、L4は二価の有機基を表し、P4は水素原子又は一価の有機基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、OCORx、OPO(ORx2又はOSO2CF3を表し、また、Rxはアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基又はフッ素置換アリール基を表す。)

【公開番号】特開2009−46392(P2009−46392A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350574(P2005−350574)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(504261077)大学共同利用機関法人自然科学研究機構 (156)
【Fターム(参考)】