説明

トリアジノン類および鉄を含有する製剤

本発明は、動物およびヒトにおけるコクシジウム感染および鉄欠乏症を制御するための製剤における、トルトラズリル、ポナズリルまたはジクラズリルなどのトリアジン類および鉄化合物の同時適用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動物におけるコクシジウム症および貧血状態の同時制御に適当であるトリアジノン類および鉄化合物(鉄の塩および錯化合物)を含有する製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
経済的に成功している食肉生産操作は、現在、高度に集約的な農業、即ち繁殖目的を最適化するために具体的に選択された多数の動物を飼育することを特徴とする。これらの農場は例えば多数の機械装置の使用、栄養補助食品のさらなる給餌、および可能な限り少ないスタッフの関与を特徴とする。仔ブタの育成農場の場合、これは仔ブタの同腹仔数を高くするために繁殖される多数の雌ブタを適当に大きなブタ小屋中で飼育することを意味する。給餌の最適化および繁殖過程における適当な選択により、仔ブタを迅速に成長させることが可能になる。
【0003】
このタイプの動物飼育は、頻繁に、ある種の典型的な疾患および欠乏症の数が増える原因である。とりわけ集約的に飼育されたブタが非常に影響を受けやすいストレスに加えて、かかる現象は若年のブタでは原虫感染(コクシジウム症)および貧血状態であり、とりわけその双方はすでに薬物の予防的使用により制御されていなければならない。
【0004】
コクシジウム症は頻繁に発生する動物における寄生虫感染症である。故に、例えばアイメリア(Eimeria)、イソスポーラ(Isospora)、ネオスポラ(Neospora)、住肉胞子虫(Sarcosporidia)およびトキソプラズマ(Toxoplasma)属の原生動物は、世界中でコクシジウム症を引き起こしている。経済的に重要なコクシジウム症の実例は:イソスポーラ属のコクシジウムによるブタの感染、またはアイメリア属のコクシジウムによるウシの感染である。イソスポーラ・スイス(Isospora suis)での感染は仔ブタの下痢の原因としてつい最近に認識され、そして集中的に研究されている。概して感染は環境から仔ブタに、または仔ブタから仔ブタに、オーシストを介して進み、それは2個ずつのスポロゾイトを含むスポロシストを2個ずつ含有する。小腸絨毛の上皮細胞で寄生虫段階は増殖する。この疾患の臨床像には、絨毛萎縮を伴う腸上皮細胞の壊死性、炎症性破壊、並びに、結果的に、吸収および消化不全が含まれる。急性疾患の特徴は液状の白色から黄色の下痢であり、それはたいてい2週齢から3週齢で発生する。感染した仔ブタの体重増加は低減する。疾患の処置および治療は今までのところ不十分である。抗生物質は無効である;スルホンアミド類がコクシジウム症の処置に関して承認されているが、その効果には疑問があり、そして頻繁に繰り返される投与は、いずれの場合でも実行するには不適当である。その他の可能な処置には疑問がある:例えばモネンシン、アンプロリウムまたはフラゾリドンの投与は実験的に感染させた仔ブタにおける疾患の防止に成功していない。さらに最近の研究では、イソスポーラ・スイスは、良好な衛生にもかかわらず、いくつかの農場の全同腹仔の92%までで同定されている。このタイプの疾患はブタのみならず、多くのその他の動物種において、例えば家禽生産において、仔ウシ、仔ヒツジにおいて、または小動物(ウサギ)において発生する。
【0005】
欠乏症の実例は新生仔ブタにおける鉄欠乏症である。生後数日間は急速に成長するために、身体の鉄貯蔵は急速に枯渇し、そして外部の供給源により代償されなければならない。授乳ブタの数が多いために、雌ブタの乳を摂取することによるこの代替えを十分な程度で行うことができない。さらに動物をコンクリートまたはプラスチック上で飼育する場合、仔ブタは地中のルーティングにより鉄化合物を摂取することもできない。仔ブタは貧血になる。血液のヘモグロビン含量が80g/l未満まで低下している場合、臨床的に有意な貧血状態が存在する。NRC推奨(National Research Council, Nutrient Requirements of Domestic Animals, No. 2, Nutrient Requirements of Swine, National Academy of Sciences, Washington DC, 1973)は、仔ブタが健康に成長し、そして貧血の徴候を示さない最低ヘモグロビン値として90g/lを明記している。しかしながら、体重減少または発育不全のような顕著な病徴は、血液のヘモグロビン含量が80g/lを下回る値まで低下している場合にのみ観察される。鉄供給に関するその他の指標は、ヘマトクリットおよび単位容量あたりの赤血球数である。重篤な鉄欠乏性貧血は、また、若年のブタの死亡にも至る。
【0006】
上記の疾患および欠乏症を制御するための製剤は既に利用可能である。
トリアジノン群由来の有効成分を投与することにより、コクシジウム症の制御に成功することができる。この目的で、トリアジンジオン類(代表例は、有効成分クラズリル(clazuril)、ジクラズリル(diclazuril)、レトラズリル(letrazuril)である)とトリアジントリオン類(有効成分トルトラズリル(toltrazuril)、トルトラズリルスルホキシドおよびポナズリル(ponazuril))とを区別する。トリアジン類、とりわけトルトラズリル、ポナズリルまたはジクラズリル、およびコクシジウムに対するその作用は一連の出版物から公知であり、とりわけDE−A 27 18 799およびDE−A 24 137 22を参照されたい。WO99/62519は、トルトラズリルスルホン(ポナズリル)の半固体水性製剤を開示している。特にトルトラズリルがブタにおけるコクシジウム症(例えばイソスポーラ・スイス)を処置するのに適当であることも公知である。例えば以下の出版物もまた参照されたい:Don't forget coccidiosis, update on Isosporosis in piglets. Part I, Pig Progress volume 17, No. 2, 12-14; Mundt., H.-C., A. Daugschies, V. Letkova (2001): be aware of piglet coccidiosis diagnostics. Part II, Pig Progress volume 17, No. 4, 18-20; Mundt, H.-C., G.-Pl Martineau, K. Larsen (2001): control of coccidiosis Part III, Pig Progress volume 17, No. 6, 18-19。
【0007】
種々の病原性アイメリア種(例えば、アイメリア・ボビス(E. bovis)およびアイメリア・ズルニ(E. zuernii))による感染の結果であるウシにおけるコクシジウム症は、死亡を伴う血性下痢までの様々な重篤度の下痢として現れる。
WO96/38140、DE10049468、DE19958388、WO00/19964、WO99/62519またはWO00/37063およびDE102006038292.7は、動物におけるコクシジウム症に対する組成物を記載している。その他の投与経路に加えて、一般的な形態での経口投与もそこで言及されている。
DE19603984は経口投与用の顆粒を含む。DE19824483は動物の処置のための半固体水性製剤(ペースト)を記載している。EP0116175は、経口適用することができる液剤を記載している。
【0008】
家禽育成の部門では、飲料水に可溶性である製剤または飲用可能な液剤が頻繁に用いられるが、大型動物が飼育される農場では、有効成分を試料に添加するか、またはアプリケーターを用いて懸濁液としてそれを経口投与する(水薬)傾向があるであろう。市場で重要な製品の実例は、試料に混合するためのジクラズリル(2,6−ジクロロ−α−(4−クロロフェニル)−4−(4,5−ジヒドロ−3,5−ジオキソ−1,2,4−トリアジン−2(3H)−イル)ベンゼンアセトニトリル;CAS番号101831−37−2)(CLINACOX(商標)0.5%、Janssen Animal Health;VECOXAN(商標)、Biokema SA)およびトルトラズリル(1−メチル−3−[3−メチル−4−[4−[(トリフルオロメチル)チオ]フェノキシ]フェニル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン;CAS番号69004−03−1)である。トルトラズリルは、例えば家禽用の飲料水製剤として、そして、とりわけ哺乳ブタの処置のための経口用懸濁製剤として、市場で入手可能である。仔ブタには生後3−5日に20mg/kg体重の用量を投与することが推奨される。
【0009】
上述の抗コクシジウム剤(anticoccidial)(幾分不正確であるが時に静コクシジウム剤(coccidiostat)とも称される)の経口投与における不利な点は、比較的面倒であることである:仔ブタを捕まえなければならず、そして製品をアプリケーターまたは水薬用ガンを利用して咽頭に投与する。さらに、その方法は仔ブタに少なからぬストレスを引き起こす。
【0010】
化合物のタイプ並びに適用の形式およびバイオアベイラビリティの双方で異なる一連の全く異なる鉄製剤が、鉄欠乏性貧血の防止に利用可能である。(I)単純な無機Fe(2+)塩、(IIa)Fe(2+)と有機配位子、例えば乳酸との錯化合物、または(IIb)Fe(3+)と有機配位子、例えばクエン酸との錯化合物、および(III)赤金鉱型のFe(3+)オキソ−ヒドロキソ複合体β−FeO(OH)と、炭水化物/多糖類、具体的には例えばデキストラン、またはデキストリン/ポリマルトースのようなオリゴマー性またはポリマー性炭水化物化合物との、ポリマー型錯化合物が区別される。本明細書では、以後、ポリマー性炭水化物/炭水化物化合物および多糖類は、オリゴマー性およびポリマー性化合物の双方を意味すると理解される。
【0011】
例えば飼料添加物としての鉄塩の使用のような、経口的に投与されるべき(I)型の製剤は通例的であり、そして以前から公知である。これらの化合物における鉄は、鉄(2+)イオンの形態で、例えば硫酸鉄FeSO4として存在する。これらの製品を繁殖させている雌のブタの飼料に添加するか、またはそうでなければ経口経路を介して仔ブタに直接投与することができる。たいていの場合、相対的に低いバイオアベイラビリティを代償するために、複数の単回用量を、成長期間の、生まれて数日間の間に仔ブタに投与するであろう。多回適用を回避するための代替的経路は、後の時点で追加の鉄含有飼料(プレスターターおよびスターター試料)を与えることである。無機鉄(2+)塩中の鉄イオンは解離により急速に遊離するが、鉄(2+)錯化合物における放出は幾分遅延する。鉄塩からの遊離Fe(2+)イオンの吸収は上部小腸で生じる。上部小腸の生理学的条件下でのFe(2+)の溶解性は、Fe(3+)の溶解性を10の数乗まで上回る(Forth, W., in: Duenndarm, Handbuch der inneren Medizin, Vol. 3 Verd. Org. Part 3(A);W.F. Caspary, Ed;, Springer 1983)。さらに遊離の鉄(3+)イオンは、腸内容物の環境において、システイン、グルタチオン、アスコルビン酸およびその他の物質により還元されてFe(2+)を生じ、そして腸粘膜の上皮細胞からそれ自体吸収される。しかしながら、この還元が粘膜の細胞への取り込みに必要な前提条件であるか否かは異論のあるところである。Fe(2+)のバイオアベイラビリティがより高い理由は、恐らく、Fe(2+)の高い溶解性の結果としての濃度勾配である。現在の見解は、Fe(2+)イオンがタンパク質モビルフェリン(mobilferrin)に最初に結合し、そこでFe(3+)に再酸化され、そして粘膜貯蔵タンパク質フェリチンに結合するというものである。身体が鉄を必要とする場合、これらのFe(3+)は血漿に放出され、ここでそれらは再度フェリオキシダーゼ(ferrioxidase)により還元されてFe(2+)を生じ、そして生物の鉄結合輸送タンパク質であるタンパク質アポトランスフェリンに結合する。トランスフェリンが既に細胞の粘膜に存在するかどうか、および、それらがそこで少なくとも部分的に鉄を受け取るかどうかは議論の主題である。トランスフェリンの複合体形成定数はlogK約30−31と非常に大きいので、トランスフェリンの鉄結合能力を超えない限り、生物において遊離の鉄が存在する場所はない。これが、鉄塩の突然過剰供給の結果として生じ得る毒性効果の理由であり、それはそれらの使用において不利である。次いで、鉄は血液およびリンパ管を介して骨髄中のヘモグロビン合成部位まで輸送される(E. Kolb, U. Hofmann "Anwendungen von Eisenverbindungen beim Schwein" Tieraertzl. Umschau 60, (2005) 365-371 and Forth, W., "Eisen und Eisenversorgung des Warmblueterorganismus", Naturwissenschaften 74, (1987) 175-180 and John, A.; "Neue Moeglichkeiten der Eisenversorgung neugeborener Ferkel unter Beachtung biochemischer Aspekte" in: Traechtigkeit und Geburt beim Schwein, 8th Bernburger Biotechnology Workshop 2002, 89-94 参照)。必要とされない鉄は粘膜の細胞中に貯蔵されたままであるが、それらが死亡した後、もはや利用可能ではない。それ故に、経口鉄化合物のバイオアベイラビリティが実際の鉄要求、給餌状態(初乳)および健康状態(下痢:粘膜の上部細胞の成熟前喪失)のようなその他の要因に大きく依存することが理解可能である。特定の鉄製剤の利点および欠点を理解し、評価するために、メカニズムを理解することが重要である。
【0012】
キレート様の様式で複合体形成されるFe(2+)およびFe(3+)化合物の第2群(II)からの化合物が、さらに使用されている。これらの化合物は、胃酸により部分的にしかイオンに分解されない、相対的に安定した鉄複合体を形成する。その間のバイオアベイラビリティは、粘膜の細胞での、または細胞中での鉄と配位子との部分的な交換の結果であり、それは複合体の形成定数に依存する。分解されない複合体は、それらのより高い親油性の結果として、上皮の膜系を通過することが可能であり、そして必ず代謝される。このことは、有機低分子量複合体がより緩徐なバイオアベイラビリティを有するが、一方でより持続する効果を有する理由を説明する(H. Dietzfelbinger; "Bioavailability of Bi- and Trivalent Oral Iron Preparations"; Arzneim.-Forsch./Drug. Res 37(1), No. 1a, (1989) 107-112 and E.B. Kegley et al., "Iron Methionin as a Source of Iron for the Neonatal Pig", Nutrition Research 22 (2002) 1209-1217)。
【0013】
主に非経口的に、そしてわずかな程度で経口的に適用される化合物の第3群は、複合体が結合したポリマー性炭水化物を伴うポリβ−FeO(OH)型のかなり安定した化合物からなる。商業的な重要性は、独占的ではないが、主に、鉄(III)デキストラン(CAS番号9004−66−4)、水酸化鉄(III)ポリマルトース(水酸化鉄(III)デキストリン;CAS番号53858−86−9)、鉄(III)スクロース(鉄(III)スクロース、鉄(III)「糖」CAS番号8047−67−4)およびスクロース溶液中のナトリウム/鉄(III)グルコン酸複合体(CAS番号34089−81−1)により得られる。文献ではこれらの化合物を異なる名で表す。これに関して、鉄(III)デキストラン、鉄(III)ポリマルトース、鉄(III)デキストリン、鉄(III)スクロース、グルコン酸鉄(III)、糖のような化合物は、鉄(3+)イオンと、水酸化物イオン(OH)、水部分(HO)および酸素(O)との複合体を意味すると理解され、その複合体はオリゴマーまたはポリマー形態で存在し、そしてその配位圏で、上述の1種またはそれ以上のオリゴマー性およびポリマー性炭水化物化合物と、複合体の形態で会合している。これが、これらの化合物が水酸化鉄(III)多糖類または鉄(III)オキシ−ヒドロキシ多糖類とも称される理由であり、ここで、多糖類は上記のオリゴ−およびポリマー性炭水化物化合物またはそれらの誘導体を意味するか、または、一般的に、オリゴマー性またはポリマー性炭水化物の群からの化合物を意味する。このタイプの多核鉄(III)複合体は、例えば(D.S. Kudasheva et al., "Structure of Carbohydrate-bound Polynuclear Oxyhydroxide Nanoparticles in Parenteral Formulation", J. Inorg. Biochem. 98 (2004) 1757-1769; I. Erni et al., "Chemical Characterization of Iron(III) Hydroxide-Dextrin Complexes" Arzneim.-Forsch./Drug Res. 34 (II) (1984) 1555-1559; F. Funk et al., "Physical and Chemical Characterization of Therapeutic Iron Containing Materials", Hyperfine Interactions 136 (2001) 73-95; E. London "The Molecular Formula and Proposed Structure of the Iron-Dextran Complex, IMFERON", J. Pharm. Sci. 93 (2004) 1838-1846; A. John "Neue Moeglichkeiten der Eisenversorgung neugeborener Ferkel unter Beachtung biochemischer Aspekte", Traechtigkeit und Geburt beim Schwein: 8th Bernburger Biotechnology Workshop, Bernburg (2002) 89-94)に記載されている。多くの場合、これらの化合物の組成は定量的な用語で記載されず、そしてまた製剤のタイプに応じて化合物内で変動し得るので、これらの多核鉄(III)多糖類化合物は、当業者に公知である上記のクラスの化合物の全ての複合体を意味すると理解される。
【0014】
これらの鉄化合物は、ヒトおよび獣医学のための注射用製剤の製造においてほとんど独占的に使用される。しかしながら、獣医学では少数の経口投与用製剤もまた使用されている。これらの複合体は、一般的には高い安定性を特徴とし、そして主にその分子量に関して(30kDから400kDaまで変動し得る)、そして、複合体結合の強さにおいて異なる。水性溶液中では、それらは粒子サイズ7−35nmのコロイド分散物として存在する。経口投与の場合、バイオアベイラビリティに決定的であることは、第1に、胃酸の影響下での沈殿形成および鉄コアの加水分解の程度であり、そして第2に、酸性還元条件下での複合体の安定性である。生物への取り込みおよび生物学的鉄化合物への変換のメカニズムは未だに十分には解明されておらず、そしていくつかの事例では依然として文献において議論されている。しかしながら、作用メカニズムに関するいくつかの一般的な主張を述べることはできる。複合体がより安定であるほど、修飾を伴わずに胃を通過する化合物の割合が大きくなり、そして遊離の鉄イオンの割合が小さくなる。次には、複合体の安定性は合成方法に依存する。高分子量鉄(III)ポリマルトースおよび鉄(III)デキストランはかなり安定であることが判明している。対照的に、鉄を輸送経路のタンパク質に放出することが必要である。天然には、この移動は複合体の安定性の増大に伴って低下するであろう。これらの関係性は酸、還元剤を用いる、および錯体化剤を用いる種々の実験により確認されている(R. Lawrence "Development and Comparison of Iron Dextran Products"; PDA J Pharm. Sci. Techn. 52(5) (1998) 190-197; F. Funk et al., "Physical and Chemical Characterization of Therapeutic Iron Containing Materials"; Hyperfine Interactions 136 (2001) 73-95; I. Erni et al., "Chemical Characterization of Iron(III) Hydroxide-Dextrin Complexes" Arzneim.-Forsch./Drug Res. 34(II) 11 (1984) 1555-1559)。
【0015】
これらの考察は、一般的にFe(3+)化合物、とりわけ鉄(III)デキストランのような多核化合物は、経口適用に適当ではないという学説を生んでいる(H. Dietzfelbinger "Bioavailability of Bi- and Trivalent Oral Iron Preparations" Arzneim.-Forsch./Drug Res. 37(I), No. 1(a) (1987) 107-112)。
【0016】
多核Fe(3+)複合体、とりわけ鉄(III)デキストランを経口的に使用することに不本意であることのさらなる理由は、腸管におけるβ−FeO(OH)複合体の特異的な取り込み経路である。これらの化合物はピノサイトーシスにより腸粘膜上皮細胞に取り込まれ、そして次に必ずリンパ系を介して生物に放出され、リンパ節に貯蔵され、そして最終的に血流に輸送される(Kolb, Hofmann;Forth;John による上記の出版物もまた参照)。前記で説明した通り、それらはかなり安定であるので、バイオアベイラビリティは、その後、代謝およびリソソーム酵素による複合体の酵素的分解に依存するであろう。ポリビニルピロリドン、デキストランでの、および、各々の場合で異なる分子量を有する色素標識された鉄(III)デキストランでの実験により、哺乳ブタでは、生まれて数日間は、これらのポリマー性複合体を回腸および上部小腸の上皮細胞を介してピノサイトーシスにより取り込むことができることが実証されている(R.M. Clarke, R.N. Hardy "Histological Changes in the Small Intestine of the Young Pig and Their Relation to Macromolecular Uptake"; J. Anat. 108(1), (1971) 63-7; K. Thoren-Tolling, L. Joensson "Cellular Distribution of Orally and Intramuscularly Administered Iron Dextran in Newborn Piglets", Can. J. Comp. Med. 41 (1977) 318-325; K. Martinsson, L. Joensson "On the Mechanism of Intestinal Absorption of Macromolecules in Piglets Studied with Dextran Blue", Zbl. Vet. Med. A 22 (1975) 276-282)。しかしながら、この仔ブタの粘膜の細胞からリンパ系および血流への高分子量化合物の移行は、生後直ぐに妨害がない場合のみ可能であることも公知である。このメカニズムは、生後直ぐに雌ブタの初乳を摂取することにより、仔ブタが免疫グロブリンおよび抗体を確実に供給され得るようにする。この供給が確実になると直ぐに、輸送メカニズムが機能しなくなる。さらなる成長過程の間のこの「腸封鎖(intestinal closure)」は、微生物および毒素での感染を回避するために、生物学的に意味のあるものである(K. Martinsson, L. Joensson "The Uptake of Macromolecules in the Ileum of Piglets after Intestinal Closure", Zbl. Vet. Med. A 23 (1976) 277-282)。それ故に、誕生と腸封鎖の間の期間は、仔ブタの栄養状態に大いに依存する。飢餓の仔ブタでは、この移動は生後4日間まで依然として生じ得る(J.G. Lecce, D.O. Morgan "Effect of Dietary Regimen on Cessation of Intestinal Absorption of Large Molecules (Closure) in the Neonatal Pig and Lamb", J. Nutrition 78 (1962) 263-268)。しかしながら、繁殖場での現在の飼育条件は自然に哺乳させているので、複数回の投与を回避しようとするならば、経口経路を介して高分子量鉄複合体を仔ブタに十分に供給することは、有意義な方法では生後数時間にのみ可能であることが、現在の知識であり、そして一般的に医学的に認められている。経口適用の時機に関して鉄(III)デキストランの有効性を体系的に研究している数少ない著者は、生後24−72時間に鉄(III)デキストランを投与する場合の実質的な活性の低減に関して報告している(L. Blomgren, N. Lanneck "Prevention of Anaemia in Piglets by a Single Oral Dose of Iron Dextran", Nord. Vet.-Med. 23 (1971) 529-536)。しかしながら、飼育および給餌条件によっては、生後2日目の投与により依然として十分に良好な結果が得られるであろう(S. Kadis, "Relationship of Iron Administration to Susceptibility of Newborn Pigs to Enterotoxic Colibacillosis"; Am. J. Vet. Res. 45(2), (1984) 255-259)。対照的に、生後72−96時間に鉄デキストランを投与する場合、有効性は既に大いに低減される(Ueda H. "Prevention of Piglet Anaemia by Oral Administration of Iron Dextran", Nicchiku Kaiho 56(11), 1985, 872-877)。これが、多核鉄複合体を含む経口鉄代替製品がわずかしか市場に普及していない理由である(Ursoferran 150 p.o.; Serumwerke Bernburg - Eisen(III)-Dextran; Ferrum Hausmann Syrup(登録商標) Hausmann Laboratories Inc., St. Gallen; - Eisen(III)-hydroxid-polymaltose)。仔ブタの繁殖における経口使用のための現代の鉄デキストラン製剤では、鉄デキストランは、それらのバイオアベイラビリティを改善するために、液滴のサイズが1−2μmのマイクロエマルジョンの乳化剤に結合している(Bioveyxin FeVit(商標), Veyx-Pharma GmbH, Schwarzenborn;SintaFer(商標), Sinta GmbH, Schwarzenborn)。この微細に分散された状態、および、それらが親油性担体に結合しているという事実は、上皮細胞への取り込みおよび生物への移動を促進することを意図するものである。しかしながら、これらの製剤でさえも、製造者は最適な効果を達成するために、それらを生後わずか8−10時間までに使用することを推奨している。このことは、繁殖する雌ブタの連続的な監視を必要とし、それは非常に多くの労力を意味する。
【0017】
一般的に、十分に高い活性を確実にするために、仔ブタ1匹あたり、および単位用量あたり、活性鉄100−200mgの投薬量率が経口鉄製剤に関して推奨される。しかし、実際には高用量のみが単回投与での管理を可能にする。
【0018】
経口適用の場合の上記の評価不能性(imponderability)を避けるために、注射を用いて多核鉄(III)複合体を筋肉内に投与することが、ブタ育成においてより従来的である。これは、概して生後3日目に活性鉄100−200mgを注射することにより実施する。注射部位からの輸送はリンパ系および細網組織球系(reticulohistiocytary)の細胞を介して行われる。複合体は肝臓および脾臓に貯蔵され、そこから必要により遊離され、そして酵素的に代謝される。遊離Fe(3+)は最終的には再度トランスフェリンに結合し、そして骨髄における使用の部位まで輸送される。
【0019】
しかしながら、この非経口的適用形態も、一連の不利な点を有する:若年のブタへの筋肉内適用(筋肉内注射による)の顕著な不利な点は、有害な影響がより頻繁に生じるということである。筋肉出血、筋線維の変化、炎症および浮腫の発達が、注射部位でより頻繁に引き起こされる。これらは、局所的なスタンスの損傷である。しかしながら、とりわけビタミンEの同時欠乏がある場合、心筋への損傷も観察される。これらの場合、血漿中のカリウム含量における顕著な増加を観察することができ、それが心筋に重篤な損傷を引き起こし、そして仔ブタの死亡に至り得る。微量の遊離Fe(2+)イオンが、有機分子、例えば脂質過酸化化合物とのフリーラジカル化合物の形成に寄与し、それが血液中の高カリウム含量に関連する。ビタミンEはフリーラジカル捕捉剤として作用し、そして特定の様式でこれらの有害な反応を緩衝することが可能であるが、これは頻繁に身体の許容量を超える(これは、ビタミンEが既述の経口製剤にも添加される理由であり、ここで鉄(III)デキストランはマイクロエマルジョン液滴に結合している)。しかしながら、この点で筋肉内適用にさらなる不利な点がある:血液中のマクロファージが多核鉄複合体を負荷されるので、鉄(III)デキストランが投与された後、免疫系の性能における特定の低減が必ず予測される。細菌感染に対する防衛が低減される。上記の筋肉内投与の不利な点の概説は、文献中に見出される(E. Kolb, U. Hofmann "Zur Frage der zweckmaessigen Form der Anwendung von Fe-Dextran, seiner Verwertung sowie des Mechanismus einer moeglichen Schaedigung der Ferkel"; Mh. Vet.-Med 44 (1989) 497-501)。
【0020】
要約すると、現在市場で入手可能である哺乳ブタにおける貧血予防の方法の各々は、一連の不利な点を有すると言える:
1. 文献によれば、(I)および(II)型のFe(II)化合物を経口適用する場合、通常、顕著に低いバイオアベイラビリティが観察され得る。これらの製剤を反復して投与することが推奨され、それは集約的動物飼育の場合、非常に多くの労力を伴い、そして経済的に不利な点である。
【0021】
2. (III)型の多核Fe(III)化合物、とりわけ鉄(III)デキストランの経口投与はより良好な結果に至り、活性鉄約200mgの単回投薬量率は概して仔ブタへの十分な鉄供給を確実にするのに十分であるが、ここで決定的に不利な点は、現在の学説によると、十分な活性は、鉄(III)デキストランを仔ブタに生後8−10時間内に投与できる場合にのみ達成できるという点である。育成農場における誕生が24時間体制で監視された場合にのみ、これを確実にでき、それは非常に多くの労力を必要とするので可能でないことが多い。この時点を逃すと、頻繁に仔ブタの実質的な喪失に至る。
【0022】
3. 生後1日目から3日目までの期間における投与が非常に良好な結果を導くので、筋肉内に投与されるべき鉄製剤が使用に関してさらに有利である。しかしながら、毒性の副作用の結果として仔ブタを損傷する可能性、および、免疫系の短期的脆弱化は、不利である。経口製剤は、この不利な点を有さない。
【0023】
4. さらに、頻繁に必要である、例えばトルトラズリルまたは類似の化合物での、コクシジウム症の処置を考慮すると、仔ブタの育成に成功するために、2つの経路、即ち、(1)生後1日目に仔ブタを捕まえ、そして例えば鉄(III)デキストランを投与し、次いで、3日目に仔ブタを再度捕まえ、そして購入できるトルトラズリルの懸濁液製剤を経口投与すること;または、(2)3日目に仔ブタを捕まえ、そして購入できる経口投与用のトルトラズリルの懸濁剤および鉄(III)デキストランの注射用の製剤(上記の不利な点を伴う)を別個に投与することが、非常に頻繁に必要とされることが明らかになる。
【0024】
それ故に、上記の不利な点を伴わずに、即ち、有害な副作用を伴わずに、2つの経路を組み合わせることを可能にし、一方で信頼でき、そして高度に有効である、利用可能な製剤を有することは、非常に有利であろう。適当な製剤は、例えば、生後1−3日の期間に仔ブタに経口投与するための有効成分トルトラズリルおよび鉄(III)デキストランの製剤であろう。しかしながら、2つの経路を組み合わせた製剤は、一連の条件に合致しなければならないだろう:
【0025】
・十分量の有効成分:1つの単位用量は、薬理的活性に十分な量の抗コクシジウム物質、通常20−70mg、例えば30mg、44mgまたは50mgのトルトラズリル、および、貧血予防のために、少なくとも100mg、しかし、より良好には少なくとも150mg、好ましくは200−250mgの活性鉄(例えば、多核鉄(III)複合体400−600mgに相当する)を含有しなければならず、それは、トルトラズリル20mg/kg体重および仔ブタ1匹あたり活性鉄200mgの推奨される投薬量率に相当する。これは、製剤中2−7%(m/v)の抗コクシジウム物質および10−25%(m/v)の活性鉄の濃度に相当する(%m/vは、100ml容量あたりの問題の構成要素のg表記の質量を意味すると理解される)。
【0026】
・経口適用のための低投与容量:例えば、哺乳ブタの場合、容量が顕著に多いと、仔ブタによる完全な摂取が確実でないことが頻繁であるので、約1mlの投与容量が最適である。液体の量が多くなると、頻繁に口から漏れ出るか、または嘔吐される。
【0027】
・適当な粘稠度:粘度は、水薬用ガンまたはシリンジを介する投与を可能にする範囲、例えば、10ないし2500mPasであるべきである。粘稠度があまりに液性である場合、製剤は適用後に動物の口から漏れ出るかもしれず;それがあまりに高い場合、シリンジまたは水薬用ガンを用いる大規模投与は使用者にとってあまりに厳しく、そして動物、とりわけ仔ブタは嚥下が困難である。
【0028】
・製剤の品質:物理的および化学的安定性、並びに、薬理的活性は、確実でなければならない。故に、例えば、鉄イオンが抗コクシジウム物質の化学的安定性に悪影響を及ぼさないことを確実にすべきである。さらに、懸濁液製剤の場合、分散された有効成分粒子の凝固または実際には凝集は不利であるので、できるだけ微細に分散された有効成分の分布が保持されることを確実にすべきである。溶解速度、および故に腸における粒子からの有効成分の遊離は、より小さい表面面積の結果として低減されるので、このことは、例えば薬理的活性に悪影響を及ぼすであろう。
【0029】
・生後より長期間での投与時の活性:とりわけ単回適用の場合に、生後1日目から3日目までの期間に投与されるときの、コクシジウム症および貧血に対する十分な活性。
【0030】
・単回適用時の十分な貧血予防:上述の組み合わせ製剤の小投与容量で投与される鉄の量は、単回適用後の通常の飼育条件下で仔ブタの鉄要求を補うのに十分であるために、十分に高くあるべきである。
【0031】
適当な製剤中のトリアジノン類および鉄製剤の組み合わせは今日まで記載されていない。
【発明の概要】
【0032】
本発明は:
1. 式(I)または(II):
【化1】

または
【化2】

(式中:
は、R−SO−またはR−S−を表し、
は、アルキル、アルコキシ、ハロゲンまたはSON(CHを表し、そして、
はハロアルキルを表し、
およびRは、互いに独立して水素またはClを表し、そして、
はフッ素または塩素を表す)
のトリアジノン類またはその生理的に許容し得る塩;並びに、
(a)鉄(II)カルボン酸塩、鉄(II)カルボン酸錯化合物およびアミノ酸との鉄(II)キレート複合体;
(b)鉄(III)カルボン酸塩、鉄(III)カルボン酸錯化合物およびアミノ酸との鉄(III)キレート複合体;および、
(c)多核鉄(III)多糖類錯化合物;
の中から選択される鉄(2+)または鉄(3+)化合物;
を含有する組成物;
に関する。
【0033】
式(I)および(II)では、個々の置換基は、好ましくは、そして特に好ましくは、以下の意味を有する:
は、好ましくは各々の場合で1個ないし4個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルコキシを表すか、または、フッ素、塩素、臭素もしくはSON(CHを表し;Rは、特に好ましくは、C1−4−アルキルを表す。
は、好ましくは1個ないし4個の炭素原子を有するフルオロアルキル、特に好ましくは、トリフルオロメチルを表す。
【0034】
トリアジノン類は、それ自体、コクシジウム感染に対する有効成分として周知であり;例えばトルトラズリルおよびポナズリルのようなトリアジントリオン類、並びに、例えばクラズリル、ジクラズリルおよびレトラズリルのようなトリアジンジオン類に言及し得る。
【0035】
トリアジンジオン類は、式(II)により表される:
クラズリル(式(II)中、R=Cl、R=H、R=Cl)
レトラズリル(式(II)中、R=Cl、R=Cl、R=F)および、
ジクラズリル(式(II)中、R=Cl、R=Cl、R=Cl)。
これらの1,2,4−トリアジンジオン類のうち、ジクラズリルが最も好ましい。
【0036】
本発明に従って有効成分として特に好ましいのは、式(I)のトリアジントリオン類であり、式中RおよびRは以下の好ましい、そして特に好ましい意味を有する:
は、好ましくは、各々の場合で4個までの炭素原子を有するアルキルもしくはアルコキシ、特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルを表す。
は、好ましくは、1から3個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル、特に好ましくはトリフルオロメチルまたはペンタフルオロエチルを表す。
【0037】
好ましいトリアジントリオン類は、式(I)により表される:
トルトラズリル(R=R−S−、R=CH、R=CF
ポナズリル(R=R−SO−、R=CH、R=CF
【0038】
トリアジノンの投薬量率は、前記で例証された通り、動物種によって異なり得る。従来的な投薬量率は、1日あたり、処置されるべき動物の体重kgあたり、有効成分1ないし60mg(mg/kg)、好ましくは5ないし40mg/kg、特に好ましくは10ないし30mg/kgである。
【0039】
経口投与の場合、トルトラズリル用量は通常以下のとおりである:
ブタ:20mg/kg体重
ウシ:15mg/kg体重
ヒツジ:20mg/kg体重
家禽:15mg/kg体重
家禽を除いて、トルトラズリルは、唯一処置あたり1回投与され、例えばブタ、ウシおよびヒツジの場合、記述された投薬量率が1日あたりおよび処置あたりの双方に適用される。
【0040】
適当な鉄(2+)または鉄(3+)化合物は:
(a)鉄(2+)カルボン酸塩、鉄(2+)カルボン酸錯化合物およびアミノ酸との鉄(2+)キレート複合体;
(b)鉄(3+)カルボン酸塩、鉄(3+)カルボン酸錯化合物およびアミノ酸との鉄(3+)キレート複合体;
(c)多核鉄(3+)多糖類錯化合物;
である。
【0041】
言及され得るタイプ(a)の鉄化合物の実例は:乳酸鉄(II)(FeC10)、グルコン酸鉄(II)(FeC122214)、フマル酸鉄(II)(FeC)、並びに、例えばビスグリシン酸鉄(II)(Fe(CNO)、メチオン酸鉄(II)(Fe(C10NOS))およびその水和化合物のような鉄とアミノ酸とのキレート複合体;である。
言及され得るタイプ(b)の鉄化合物の実例は:クエン酸鉄(III)(FeC)、クエン酸鉄(III)アンモニウムおよび必要に応じてその水和化合物;である。
【0042】
これに関して、群(c)の鉄化合物は、オリゴマーまたはポリマー形態で存在し、そしてそれらの配位圏で1個以上の前記のオリゴマー性およびポリマー性炭水化物化合物との複合体として会合している、鉄(3+)イオンと、水酸化物イオン(OH)、水部分(HO)および酸素(O)との複合体を意味すると理解される。これが、これらの化合物が水酸化鉄(III)多糖類または鉄(III)オキシヒドロキシ多糖類とも称される理由であり、ここで、多糖類は対応するオリゴマー性およびポリマー性炭水化物化合物またはそれらの誘導体を表す。このタイプの多核鉄(III)複合体は、例えば(D.S. Kudasheva et al., "Structure of Carbohydrate-bound Polynuclear Oxyhydroxide Nanoparticles in Parenteral Formulation", J. Inorg. Biochem. 98 (2004) 1757-1769; I. Erni et al "Chemical Characterization of Iron(III) Hydroxide-Dextrin Complexes" Arzneim.-Forsch./Drug Res. 34 (II) (1984) 1555-1559; F. Funk et al., "Physical and Chemical Characterization of Therapeutic Iron Containing Materials", Hyperfine Interactions 136 (2001) 73-95; E. London "The Molecular Formula and Proposed Structure of the Iron-Dextran Complex, IMFERON", J. Pharm. Sci. 93 (2004) 1838-1846; A. John "Neue Moeglichkeiten der Eisenversorgung neugeborener Ferkel unter Beachtung biochemischer Aspekte", Traechtigkeit und Geburt beim Schwein: 8th Bernburger Biotechnology Workshop, Bernburg (2002) 89-94)に記載されている。多くの場合、これらの化合物の正確な組成は定量的な用語で記載されず、そしてまた製剤のタイプに応じて化合物内で変動し得るので、これらの多核鉄(III)多糖類化合物は、当業者がこのクラスの化合物とみなす全ての化合物を意味すると理解される。
【0043】
言及され得るタイプ(c)の鉄化合物の実例は:多核β−FeO(OH)核複合体が遊離の配位部位で会合したポリマー性炭水化物化合物を含有する多核鉄(III)多糖類錯化合物、例えば鉄(III)デキストラン、鉄(III)ヒドロキシポリマルトース(鉄(III)デキストリン)、β−FeO(OH)の糖およびオリゴ糖との不定比化合物「鉄(III)スクロース」「鉄(III)「糖」」;である。
【0044】
上述の鉄化合物のうち好ましく用いられるその他の化合物は、タイプ(b)およびタイプ(c)のものであり、後者が特に好ましい。特に好ましい実例として、鉄(III)デキストランに言及し得る。
【0045】
動物に適する本発明による製剤の剤形は、好ましくは液剤、懸濁剤またはペースト剤、ゲルである。懸濁剤またはペースト剤が好ましい。
【0046】
液剤は、有効成分または複数の有効成分を適当な溶媒または溶媒混合物中に溶解させることにより製造される。必要に応じて、可溶化剤、抗酸化剤、保存剤、増粘剤、接着剤、pH調節剤、紫外線安定剤または着色剤のような佐剤を添加する。
【0047】
言及され得る溶媒は:水、アルコール類、例えば一価アルカノール類(例えばエタノールまたはn−ブタノール)、多価アルコール類、例えばグリコール類(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラグリコール/グリコフロール)、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類、グリセロール;芳香族置換アルコール類、例えばベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェノキシエタノール;エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸ベンジル、オレイン酸エチル;エーテル類、例えばアルキレングリコールアルキルエーテル類(例えばジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル);ケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン;芳香族および/または脂肪族炭化水素、植物油または合成油;グリセロールホルマール、ソルケタール(solketal)(2,2−ジメチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオクソラン)、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、グリコフロール、ジメチルイソソルビトール、ラウログリコール(lauroglycol)、炭酸プロピレン、オクチルドデカノール、ジメチルホルムアミドおよび上述の溶媒の混合物;のような生理的に許容し得る溶媒である。
【0048】
言及され得る可溶化剤は:主要な溶媒中の有効成分の溶解を促進する、またはその沈殿を防御する溶媒である。実例は、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチル化ヒマシ油、ポリオキシエチル化ソルビタンエステル類である。
【0049】
抗酸化剤は、亜硫酸またはメタ重亜硫酸塩、例えば、メタ重亜硫酸カリウムもしくはメタ重亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウムもしくは二亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、没食子酸エステル類、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールまたはトコフェロール類である。
これらの抗酸化剤の共力薬は:アミノ酸(例えばアラニン、アルギニン、メチオニン、システイン)、クエン酸、酒石酸、エデト酸もしくはそれらの塩、リン酸誘導体またはポリアルコール類(ポリエチレングリコール)であり得る。
【0050】
保存剤は:ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、トリクロロブタノール、p−ヒドロキシ安息香酸、n−ブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、フェノール、安息香酸、クエン酸、酒石酸またはソルビン酸である。
【0051】
増粘剤は:無機増粘剤、例えばベントナイト類、コロイド状シリカ、ステアリン酸アルミニウム、有機増粘剤、例えばセルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース4000、ポリビニルアルコール類およびそのコポリマー類、キサンタン、アクリル酸塩およびメタクリル酸塩、カルボキシメチルセルロースおよびその塩である。
【0052】
接着剤は、例えばセルロース誘導体、デンプン誘導体、ポリアクリル酸塩、天然ポリマー類、例えばアルギン酸塩、ゼラチンである。
増粘特性も有する接着剤を、増粘剤として同様に用いることができる。
【0053】
pH調節剤は、医薬的に通例的な酸または塩基である。塩基には、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物(例えばNaOH、KOH)、塩基性の塩、例えば塩化アンモニウム、塩基性アミノ酸、例えばアルギニン、コリン、メグルミン、エタノールアミン類、または、他にバッファー類、例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、クエン酸バッファー類またはリン酸バッファー類が含まれる。酸には、例えば塩酸、酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、アジピン酸、メタンスルホン酸、オクタン酸、リノレン酸、グルコノラクトン、および、酸性アミノ酸、例えばアスパラギン酸が含まれる。
【0054】
紫外線安定剤は、例えば、ベンゾフェノン類のクラスからの物質、またはノバンチソール酸(novantisolic acid)である。
着色剤は、ヒトまたは動物における使用に関して承認されており、そして溶解または懸濁し得る全ての着色剤である。
【0055】
懸濁剤は、担体液体中、必要に応じて、湿潤剤、着色剤、吸収促進剤、増粘剤、接着剤、保存剤、抗酸化剤、紫外線安定剤または消泡剤のようなさらなる補助剤の添加を伴って、有効成分または複数の有効成分を懸濁することにより製造する。
【0056】
言及され得る担体液体は、全ての均一な溶媒および溶媒混合物である。
以下は湿潤剤(分散剤)として言及され得る:
界面活性剤(乳化剤および湿潤剤を含む)、例えば、
1. 陰イオン性界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸アルコールエーテル硫酸塩、モノ/ジアルキルポリグリコールエーテルオルトリン酸エステル類のモノエタノールアミン塩またはリグノスルホネートもしくはジオクチルスルホスクシネート;
2. 陽イオン性界面活性剤、例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウム;
3. 両性界面活性剤、例えば、N−ラウリル−β−イミノ−ジプロピオン酸二ナトリウムまたはレシチン;
4. 非イオン性界面活性剤、例えば、ポリオキシエチル化ヒマシ油、ポリオキシエチル化モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、エチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸ポリオキシエチレン、アルキルフェノールポリグリコールエーテル類、Pluronic(登録商標)
【0057】
適当な消泡剤は、好ましくはシリコンをベースとするもの、例えばジメチコンまたはシメチコンである。
言及され得るさらなる補助剤は、前記でさらに詳記されたものである。
【0058】
好ましいのは、懸濁剤およびペースト剤であり、ペースト剤の中でも低粘度ペースト剤が好ましい。通常、ペースト剤は、相応して高い粘度を有する懸濁液の形態を取る。懸濁剤およびペースト剤は、好ましくは経口投与される。
【0059】
本発明による製剤は、トリアジノン有効成分を0.1ないし30%(m/v)(1ないし300mg/mlに相当する)、好ましくは2ないし25%(m/v)(20ないし250mg/mlに相当する)、特に好ましくは3ないし15%(m/v)(30ないし150mg/mlに相当する)、とりわけ3ないし7%(m/v)(1ml中トリアジノン30−70mgに相当する)の濃度で含む。
【0060】
トリアジノン類の溶解性が乏しい結果として、後者はしばしば、微細に分割された形態で本発明による製剤中に存在する。ここで、分散されたトリアジノンは、d(v,90)30μm、好ましくはd(v,90)20μm、特に好ましくはd(v,90)10μm、および極めて特に好ましくはd(v,90)7μmの粒子サイズを有する(レーザー回折、Malvern Mastersizer(登録商標)2000により測定)。
【0061】
本発明の目的上、d(v,90)は、全粒子の90%がこの値以下の寸法(直径)を有する、容積に関する粒子サイズ分布を意味すると理解されるべきである。通常、この情報はd(90)と称されるが、それが容積に関する粒子サイズ分布であることを明らかにするために、さらに正確な用語d(v,90)を選択し得る。d(v,50)、d(v,10)等の名称は相応して理解されるべきである。有効成分粒子の屈折率は分からないので、本明細書で示される粒子サイズを、Malvern の Mastersizer 2000 装置(分散ユニット Hydro 2000G)を使用して、そして、Fraunhofer 回折評価形式を使用して、レーザー回折方法で決定した。ここでは、適量の試料溶液を分散媒体(0.1%ジオクチルナトリウムスルホスクシネート水溶液)2−3mlと共に撹拌して予め分散させる。次いで、分散物を装置の分散ユニットに入れ、撹拌(300rpm)および再循環(900rpm)して、ここでそれを測定する。評価ソフトウェアにより、粒子サイズがd(0.5)、d(0.9)値等として得られる。
【0062】
大きな動物農場における鉄欠乏症状態の処置のための経口製剤では、これらの鉄化合物を、通常、単回または多回投与として、単位用量あたり活性鉄100mgないし活性鉄200mgの濃度で適用する。家禽を太らせる操作において鉄を供給するための飲用溶液では、用量を単位用量あたり活性鉄100mg未満の量にもできる。
【0063】
本発明による製剤は、通常、製剤の10%(m/v)ないし30%(m/v)の活性鉄(1ml中活性鉄100ないし300mgに相当)、好ましくは11.4%(m/v)ないし25%(m/v)(1ml中活性鉄114ないし250mgに相当)、しかし特に好ましくは20%(m/v)ないし25%(m/v)(1ml中活性鉄200ないし250mgに相当)の濃度で鉄化合物を含有する。活性鉄は、鉄複合体の形態で製剤中に存在する鉄のパーセンテージを指す。概して、鉄化合物は製剤中に溶解して、またはコロイド形態で存在する。微細に分割された鉄化合物は、本発明による製剤ではあまり好ましくない。
【0064】
本発明による製剤は、好ましくは「水をベースとする」ものである。これは、概して、それらが10ないし90重量%、好ましくは20ないし80重量%、特に好ましくは30ないし50重量%の水を含有することを意味する。例えば、上述の製剤は、さらに水混和性溶媒を含み得る。例として言及され得るさらなる水混和性溶媒は、好ましくは、多価脂肪族アルコール類、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロールであり;これらの中でも、プロピレングリコールが特に好ましい。このようなさらなる水混和性溶媒は、通常、1ないし45重量%、好ましくは1ないし20重量%、特に好ましくは5ないし10重量%の濃度で存在する。かかる多価脂肪族アルコールの添加は、製剤の凝固点を低下させるという利点も有する。
【0065】
投与あたりに適用されるべき製剤の量は、各々の場合でトリアジノンおよび鉄がどのくらいの量で投与されるべきかによって決まる。容易に経口適用でき、そして動物種に応じて異なる、相対的に小さい容量を目指す;例えば、哺乳ブタには、0.3ないし2ml、好ましくは0.5ないし1mlの適用容量を目指す。
【0066】
本発明による製剤が、例えば通例的な補助器具、例えばシリンジ、アプリケーターまたは水薬用ガンを用いる容易な適用を許容する場合、そして、この目的のために、それらが流体を有する場合、10から2500mPasまでの範囲、好ましくは20から1500mPasまでの範囲、特に好ましくは50ないし500mPas、および極めて特に好ましくは20ないし250mPasの範囲の粘度(コーンプレート型レオメーター(Thermo Scientific RheoStress 600;コーン直径35°;コーン角度4°;定速形式)で、剪断速度128/秒および256/秒で、20℃で測定された粘度値の平均を得ることにより測定される)を示す、わずかに濃厚な、またはわずかにペースト状の粘稠度が有利である。適当な粘度範囲に設定するために、本発明の製剤は、必要に応じて、前記で既に指名された適当な物質(増粘剤)を含む。
【0067】
通常、本発明による製剤は、3ないし8、好ましくは4ないし7、特に好ましくは4ないし6のpHを有する。pHを調節するために適当な物質の実例は、前記で既に示されている。pH調節に好ましく用いられる物質は、有機酸、例えばクエン酸または酒石酸、鉱酸、例えば塩酸、好ましくは希塩酸、例えば0.1N HCl、または、塩基、例えば水酸化ナトリウム溶液(例えば1N NaOH)である。
【0068】
前記の本発明による製剤は、さらに、必要に応じて共力薬として公知であるものと組み合わせて、保存剤を含有できる。保存剤は、通常0.01−5重量%、特に0.05−1重量%の濃度で存在する。
【0069】
必要な場合、言及された製剤中に用いられ得る抗酸化剤は、好ましくはBHAまたはBHTである。十分な保存性を確実にするために、保存剤を単独で、またはそうでなければ共力薬として公知であるものと組み合わせて用い得る。クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸またはエデト酸のナトリウム塩などの共力薬は、通常0.01−1重量%、特に0.05−0.15重量%の濃度で存在する。
必要に応じて、本発明による製剤は、通例的な消泡剤を0.01−1重量%の濃度で含有し得る。
【0070】
本発明による製剤は、好ましくは、最初に溶媒、好ましくは水を導入し、そして必要に応じて、例えば共溶媒、保存剤、抗酸化剤および粘度調節性添加剤などの補助剤および/または添加剤を予備溶解または分散することにより製造する。好ましい方法では、第2工程はこの最初の溶液に、場合によっては既成の分散濃縮物の形態のトリアジノンを導入し、強力なホモジナイザーを使用し、そして微細に分割された懸濁液が得られるまで混合物を均質化することを伴う。次いで、好ましくは粉末の形態の鉄化合物をこの分散物に導入し、その過程で混合物を再度均質化する。最後の工程では、最終的に、適当なpH調節剤の添加により望ましいpHに調節する。個々のまたは全ての補助剤および/または添加剤を、必要に応じて、最後の均質化工程の後に添加してもよい;これは、例えば、均質化過程によりその構造が破壊されるある種の増粘剤の場合に得策であり得る。
【0071】
本発明による製剤は、とりわけ動物における、コクシジウムおよび鉄欠乏症の組み合わされた制御に適当である。製剤を使用して、単純な様式で動物に抗コクシジウム性トリアジノン類および鉄を同時に投与することが可能である。製剤を家畜としての動物飼育および動物繁殖、動物の繁殖、動物園の動物、研究室の動物、実験動物並びに愛玩動物に使用できる。トリアジノン類の作用スペクトルは原理的には周知である。個々に言及され得るコクシジウムは、以下のものである:
【0072】
鞭毛虫(Mastigophora)(鞭毛虫(Flagellata))、例えば、トリパノソーマ科、例えばトリパノソーマ・ブルセイ(brucei)、T. ガンビエンス(gambiense)、T. ローデシエンス(rhodesiense)、T. コンゴレンス(congolense)、T. クルージ(cruzi)、T. エバンス(evansi)、T. エキナム(equinum)、T. ルイス(lewisi)、T. ペルカエ(percae)、T. シミアエ(simiae)、T. ビバックス(vivax)、リーシュマニア・ブラジリエンシス(Leishmania brasiliensis)、L. ドノバニ(donovani)、L. トロピカ(tropica)、例えば、トリコモナス科(Trichomonadidae)、例えばジアルジア・ランブリア(Giardia lamblia)、G. カニス(canis)。
【0073】
有毛根足虫(根足虫上綱(Rhizopoda))、例えば、エントアメーバ科、例えば赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、ハルトマネラ科、例えばアカントアメーバ属およびハルトマネラ(Hartmanella)属。
【0074】
アピコンプレクサ(胞子虫)、例えば、エイメリア科(Eimeridae)、例えば、エイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)、E. アデノイデス(adenoides)、E. アラバメンシス(alabahmensis)、E. アナチス(anatis)、E. アンセリス(anseris)、E. アロインギ(arloingi)、E. アシャタ(ashata)、E. オーブルネンシス(auburnensis)、E. ボビス(bovis)、E. ブルネッティ(brunetti)、E. カニス(canis)、E. チンチラエ(chinchillae)、E. クルペアラム(clupearum)、E. コランバエ(columbae)、E. コントルタ(contorta)、E. クランダリス(crandalis)、E. デブリエキ(debliecki)、E. ジスペルサ(dispersa)、E. エリプソイダレス(ellipsoidales)、E. ファルシホルミス(falciformis)、E. ファウレイ(faurei)、E. フラベセンス(flavescens)、E. ガロパボニス(gallopavonis)、E. ハガニ(hagani)、E. インテスティナリス(intestinalis)、E. イロクオイナ(iroquoina)、E. イレシデュア(irresidua)、E. ラベアナ(labbeana)、E. ロイカルティ(leucarti)、E. マグナ(magna)、E. マクシマ(maxima)、E. メディア(media)、E. メレアグリディス(meleagridis)、E. メレアグリミティス(meleagrimitis)、E. ミティス(mitis)、E. ネカトリックス(necatrix)、E. ニナコーリアキモバエ(ninakohlyakimovae)、E. オビス(ovis)、E. パルバ(parva)、E. パボニス(pavonis)、E. ペルホランス(perforans)、E. ファサニ(phasani)、E. ピリホルミス(piriformis)、E. プラエコックス(praecox)、E. レシデュア(residua)、E. スカブラ(scabra)、E. 属、E. スティーダイ(stiedai)、E. スイス、E. テネラ(tenella)、E. トランカタ(truncata)、E. トルッタエ(truttae)、E. ズエルニ(zuernii)、グロビジウム(Globidium)属、イソスポラ・ベリ(belli)、I. カニス、I. フェリス(felis)、I. オーイオエンシス(ohioensis)、I. リボルタ(rivolta)、I. 属、I. スイス、ネオスポラ・カニナム(caninum)、N. フゲシ(hugesi)、シストイソスポラ(Cystisospora)属、クリプトスポリジウム属、例えば、トキソプラズマ科(Toxoplasmadidae)、例えばトキソプラズマ・ゴンディ(gondii)、例えば、ウマニクホウシムシ科、例えばサルコシスティス・ボビカニス(bovicanis)、S. ボビホミニス(bovihominis)、S. ニューロナ(neurona)、S. オビカニス(ovicanis)、S. オビフェリス(ovifelis)、S. 属およびS. スイホミニス(suihominis)、例えば、ロイコゾ科(Leucozoidae)、例えばロイコザイトゾーン・サイモンディ(Leucozytozoon simondi)、例えば、プラスモディウム科(Plasmodiidae)、例えばネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei)、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、卵形マラリア原虫(P. ovale)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、P. 属、例えば、ピロプラズマ(Piroplasmea)、例えばバベシア・アルゼンティナ(Babesia argentina)、B. ボビス、B. カニス、B. 属、タイレリア・パルバ(Theileria parva)、タイレリア属、例えば、アデレア(Adeleina)、例えばヘパトゾーン(Hepatozoon)・カニス、H. 属。
【0075】
さらに、粘液胞子虫(Myxospora)および微胞子虫(Microspora)、例えば、グルゲア属(Glugea spec.)およびノゼマ属(Nosema spec.)。
さらに、ニューモシスチス・カリニ(pneumocystis carinii)、および、繊毛虫(Ciliophora)(繊毛虫(Ciliata))、例えば、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、イクチオフチリウス(Ichthiophthirius)属、トリコジナ(Trichodina)属、エピスチリス(Epistylis)属。
【0076】
ブタで無症候性または臨床的感染を導く原生動物の属および種は、特にことさら強調されなければならず、特に:エイメリア・デブリエキ、E. スイス、E. スカブラ、E. ペルミヌタ(perminuta)、E. スピノサ(spinosa)、E. ポリタ(polita)、E. ポルシ(porci)、E. ネオデブリエキ(neodebliecki)、イソスポラ・スイス、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)、トキソプラズマ・ゴンディ、サルコシスティス・ミエシェリアナ(miescheriana)、S. スイホミニス(suihominis)、バベシア・トラウトマンニ(trautmanni)、B. ペルロンシトイ(perroncitoi)、大腸バランチジウムである。
【0077】
家畜および繁殖動物には、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラクダ、スイギュウ、ロバ、ウサギ、ダマジカ、トナカイ、毛皮動物、例えばミンク、チンチラ、アライグマ、鳥類、例えばニワトリ、ガチョウ、シチメンチョウ、アヒル、ハト、ダチョウ、愛玩動物および動物園の動物として飼育される鳥類の種が含まれる。
研究室および実験動物には、マウス、ラット、モルモット、ゴールデンハムスター、イヌおよびネコが含まれる。
愛玩動物にはイヌおよびネコが含まれる。
ブタにおける使用が特に好ましい。
【0078】
本発明による製剤は、好ましくは若年動物、とりわけ生後間もなく、好ましくは哺乳ブタに適用される。通常、本発明による製剤(組み合わされた鉄/トリアジノン製剤)は、1回適用されるだけである。本発明による特に好ましい製剤は、0.7ml−1.3ml、好ましくは0.7ml−1.0mlの製剤の単回経口投与により、それが生後3日目であっても、仔ブタへの生後4週間の十分な鉄供給を達成できるような方式で、仔ブタの経口処置を可能にし、ここで、少なくとも8g/100ml血液、好ましくは9g/100ml血液を超えるヘモグロビン値は、十分な供給の指標と考えられ得る。加えて、トリアジノン部分は、コクシジウムの制御に成功することが意図される。
【0079】
本発明による製剤は、さらなる有効成分または構成要素、例えば、栄養素(例えば、代謝および免疫刺激に適当であるビタミン類、ミネラル類およびリン化合物を含む)を、単独で、または適する組み合わせで、含有できる:
ビタミン類、例えばビタミンE、B群からのビタミン、例えばビタミンB12、ビタミンC。
ミネラル類、好ましくはカルシウムまたはマグネシウム塩、とりわけ例えばグルコン酸カルシウム、グルコヘプタン酸カルシウムまたはサッカリン酸カルシウム。
リン化合物、とりわけ代謝刺激剤および強壮薬として適当である、薬理的に許容し得る有機ホスホン酸誘導体。言及され得る好ましい実例は、化合物トルジムホスおよび、とりわけ既に長きにわたって公知であるブタホスファンである。
【0080】
本発明の主題および好ましい実施態様:
1. 式(I)または(II):
【化3】

または
【化4】

(式中:
は、R−SO−またはR−S−を表し、
は、アルキル、アルコキシ、ハロゲンまたはSON(CHを表し、そして
はハロアルキルを表し、
およびRは、互いに独立して水素またはClを表し、そして、
はフッ素または塩素を表す)
のトリアジノン類またはその生理的に許容し得る塩;並びに
(a)鉄(II)カルボン酸塩、鉄(II)カルボン酸錯化合物およびアミノ酸との鉄(II)キレート複合体;
(b)鉄(III)カルボン酸塩、鉄(III)カルボン酸錯化合物およびアミノ酸との鉄(III)キレート複合体;および、
(c)多核鉄(III)多糖類錯化合物;
の中から選択される鉄(2+)または鉄(3+)化合物;
を含有する製剤。
【0081】
2. 1ないし30%(m/v)、好ましくは3−7%(m/v)のトリアジノンを含有する、項目1に記載の製剤。
3. 分散されたトリアジノンがd(v,90)30μm以下、好ましくはd(v,90)20μm以下、特に好ましくはd(v,90)10μm以下の粒子サイズを有する、項目1から2のうちの1つに記載の製剤。
4. 活性鉄10%(m/v)ないし30%(m/v)、好ましくは11.4%(m/v)ないし25%(m/v)、しかし特に好ましくは20%(m/v)ないし25%(m/v)の鉄化合物濃度を伴う、先行する項目の1つに記載の製剤。
5. 10から2500mPasまでの範囲、好ましくは20から1500mPasまでの範囲の、コーンプレート型レオメーターで、剪断速度128/秒および256/秒で測定された値の平均を得ることにより測定される粘度を伴う、項目1から4のうちの1つに記載の製剤。
6. 水をベースとするものである、項目1に記載の製剤。
7. 少なくとも1種の多価脂肪族アルコールを含有する、項目1に記載の製剤。
【0082】
8. 群(c)からの多核鉄(III)多糖類錯化合物を含有し、その多核鉄コアがβ−FeO(OH)単位からなり、そしてそれはさらなる配位圏に多糖類分子を含有するものである、先行する項目の1つに記載の製剤。
9. 鉄(III)デキストラン、鉄(III)ヒドロキシポリマルトース/鉄(III)デキストリン並びに多核β−FeO(OH)およびスクロースおよびオリゴ糖からなる不定比化合物から選択される多核鉄(III)多糖類錯化合物を含有する、項目8に記載の製剤。
10. 群(b)の鉄化合物として、クエン酸鉄化合物、好ましくはクエン酸鉄(III)アンモニウムを含有する、項目1ないし7の1つに記載の製剤。
11. トリアジノンとしてトリアジントリオンを含有する、先行する項目の1つに記載の製剤。
12. トリアジントリオンとして、トルトラズリル、ポナズリルまたはトルトラズリルスルホキシドを含有する、項目11に記載の製剤。
13. トリアジノンがトルトラズリルであり、そして多核鉄(III)多糖類錯化合物が鉄(III)デキストランである、項目1ないし8および11ないし12のいずれかに記載の製剤。
14. トリアジノンとしてトリアジンジオン、とりわけクラズリル、ジクラズリルまたはレトラズリルを含有する、項目1ないし10の1つに記載の製剤。
【0083】
15. 医薬の製造のための、先行する項目の1つに記載の製剤の使用。
16. コクシジウム感染および鉄欠乏症を同時に処置するための医薬の製造のための、項目15に記載の使用。
17. 経口処置用の医薬を製造するための、項目15または16に記載の使用。
18. 哺乳ブタの経口処置用の医薬を製造するための、項目17に記載の使用。
19. 誕生から生後10日までの期間、好ましくは誕生から生後3日までの期間の仔ブタの経口処置用の医薬を製造するための、項目17または18のうちの1つに記載の使用。
20. さらに1種またはそれ以上の栄養素を含有する、項目1ないし14の1つに記載の製剤。
21. さらにカルシウム塩またはマグネシウム塩を含有する、項目20に記載の製剤。
22. ブタホスファンを含有する、項目20または21に記載の製剤。
【実施例】
【0084】
以下の実施例は本発明を例証することを意図するものであるが、限定することを意図するものではない:
製造実施例
実施例1
38.4%(m/m)鉄(III)デキストラン粉末の使用
哺乳ブタにおける経口使用のための鉄デキストラン/トルトラズリル分散物(22.8%(m/v)活性鉄+5%(m/v)トルトラズリル)10lの製造のためのバッチ
【表1】

【0085】
保存剤プロピオン酸ナトリウムおよび安息香酸ナトリウム、各々の場合で17.00gを別個の容器中で重量測定して、溶媒プロピレングリコール1000.00gに入れ、撹拌しながら溶解させる。水全量をステンレススチール容器(Koruma Disho;装置型:DH V100/45)に導入する。必要とされるものおよび最終生成物の望ましい粘度に応じて、粘度調節補助剤(増粘剤として公知)をこの量の水に溶解または組み込むことができる。実施例1ではこれを省く。ステンレススチール容器に導入されているものにプロピレングリコール予混合物を添加し、そして撹拌しながら均質化する(20−40分間)。次の工程では、予め重量測定した30%濃度トルトラズリル分散濃縮物1666.67gを混合物に添加し、そしてその混合物を30−40分間撹拌し、そして同時にロータリーホモジナイザー(ローター/ステーターシステム)を使用して2500rpmで20分間均質化する。懸濁液の外観に応じて、上述の撹拌および均質化時間を延長または短縮し得る。混合物の温度を20−30℃に保つために適当な冷却システムを使用することが有利である。次の工程では、鉄(III)デキストラン粉末6015.83gを分散物に数回に分けて添加する。添加の間に、混合物を連続的に撹拌し、そしてロータリーホモジナイザーを2500rpmで使用して均質化しなければならない。冷却装置を作動させることにより温度を20−30℃に維持する。全ての鉄(III)デキストラン粉末を添加した後、クエン酸(85.90g)を混合物に添加し、そして溶解させる。pH4.1−4.4を確立する。全ての構成要素が組み込まれた後、撹拌を20分間継続し、そして後続の均質化(post-homogenation)を2500rpmで同時に実施する。この後続の撹拌期の間、冷却により分散物の温度を室温に保つ。完成した分散物をステンレススチール容器から0.1mmメッシュのふるいを通して適当な貯蔵用の入れ物に移す。特定の貯蔵期間の後、pHは4.8ないし5.2の値まで上昇する。
【0086】
分散物の品質を決定するためのパラメータは、pH、粒子サイズ分布(Malvern Mastersizer 2000 を使用するレーザー回折を用いて測定)および粘度である。粘度を剪断速度128および256/秒でコーン/プレート測定型を使用して測定する(RheoStress 600;Thermo Haake)。測定された粘度値の平均を参照として使用する。これらの粘度データは、水薬用ガンを介して放出される場合、かかる懸濁液の流動抵抗を特徴解析するために適当であることが判明している。原理的には、有効成分のバイオアベイラビリティを高レベルに保つために、可能な限り最も微細な分布を伴う分散物を目指す。記載の通りに製造された懸濁液は、以下のパラメータを生じる:
【0087】
【表2】

【0088】
実施例2
36.8%(m/m)鉄(III)デキストラン粉末の使用
哺乳ブタにおける経口使用のための鉄デキストラン/トルトラズリル分散物(23.6%(m/v)活性鉄+5.3%(m/v)トルトラズリル)1000mlの製造のためのバッチ
【表3】

【0089】
保存剤プロピオン酸ナトリウムおよび安息香酸ナトリウム、各々の場合で1.89gを別個の容器中で重量測定して、溶媒プロピレングリコール106.38gに入れ、撹拌しながら溶解させる。水全量を容器(1lガラスビーカー)に導入する。必要とされるものおよび最終生成物の望ましい粘度に応じて、粘度調節補助剤(増粘剤として公知)をこの量の水に溶解または組み込むことができる。実施例2ではこれを省く。ガラスビーカーに導入されているものにプロピレングリコール予混合物を添加し、そして撹拌しながら均質化する(10分間)。次の工程では、予め重量測定した30%濃度トルトラズリル分散濃縮物177.34gを混合物に添加し、そしてディソルバーディスク(dissolver disk)を利用してその混合物を30−40分間撹拌する。懸濁液の外観に応じて、上述の撹拌時間を延長または短縮し得る。次の工程では、鉄(III)デキストラン粉末639.98gを分散物に数回に分けて撹拌しながら添加し、そして添加が完了したときに、ディソルバーディスクを利用して懸濁液をさらに20分間撹拌する。全ての鉄(III)デキストラン粉末を添加した後、クエン酸(7.59g)を混合物に添加し、そして溶解させる。pH4.1−4.4を確立する。特定の貯蔵期間の後、pHは4.8ないし5.2の値まで上昇する。
【0090】
【表4】

【0091】
実施例3
27.5%(m/m)鉄(III)デキストラン溶液の使用
哺乳ブタにおける経口使用のための鉄デキストラン/トルトラズリル分散物(21.0%(m/v)活性鉄+5%(m/v)トルトラズリル)10lの製造のためのバッチ
【表5】

【0092】
保存剤プロピオン酸ナトリウムおよび安息香酸ナトリウム、各々の場合で17.00gを別個の容器中で重量測定して、溶媒プロピレングリコール1000.00gに入れ、撹拌しながら溶解させる。鉄(III)デキストラン溶液11229.00g全てをステンレススチール容器(Koruma Disho;装置型:DH V100/45)に導入する。必要とされるものおよび最終生成物の望ましい粘度に応じて、粘度調節補助剤(増粘剤として公知)をこの導入されているものに溶解または組み込むことができる。実施例3ではこれを省く。ステンレススチール容器に導入されているものにプロピレングリコール予混合物を添加し、そして撹拌しながら均質化する(20−40分間)。懸濁液の外観に応じて、上述の撹拌時間を延長または短縮し得る。次の工程では、予め重量測定した30%濃度トルトラズリル分散濃縮物1666.67gを混合物に添加し、そしてその混合物を30−40分間撹拌し、そして同時にロータリーホモジナイザー(ローター/ステーターシステム)を使用して2500rpmで20分間均質化する。混合物の温度を20−30℃に保つために適当な冷却システムを使用することが有利である。次の工程では、クエン酸(150.33g)を添加し、そして溶解させる。添加の間、ホモジナイザーを1800rpmでスイッチを入れ、また冷却装置を作動させることにより温度を室温で維持する。pH4.1−4.4を確立する。撹拌および均質化時間は平均であり、そしてそれらを懸濁液の外観に応じて、延長または短縮し得る。この過程の間、冷却装置を作動させたままにする。完成した分散物をステンレススチール容器から0.1mmメッシュのふるいを通して適当な貯蔵用の入れ物に移す。数日から数週間内に、pHは4.8−5.2の値で平衡になる。
【0093】
【表6】

【0094】
実施例4
35.9%(m/m)鉄(III)糖(iron (III) sugar)粉末の使用
鉄(III)(水酸化)サッカレート複合体である鉄(III)糖(Dr. Paul Lohmann GmbH KG より)と称される化合物を使用した。
哺乳ブタにおける経口使用のための鉄糖(iron sugar)/トルトラズリル分散物(22.8%(m/v)活性鉄+5%(m/v)トルトラズリル)10lの製造のためのバッチ
【表7】

【0095】
保存剤プロピオン酸ナトリウムおよび安息香酸ナトリウム、各々の場合で17.00gを別個の容器中で重量測定して、溶媒プロピレングリコール1000.00gに入れて撹拌しながら溶解させる。水全量をステンレススチール容器(Koruma Disho;装置型:DH V100/45)に導入する。必要とされるものおよび最終生成物の望ましい粘度に応じて、粘度調節補助剤(増粘剤として公知)をこの量の水に溶解または組み込むことができる。この実施例4ではこれを省く。ステンレススチール容器に導入されているものにプロピレングリコール予混合物を添加し、そして撹拌しながら均質化する(20−40分間)。次の工程では、予め重量測定した30%濃度トルトラズリル分散濃縮物1666.67gを混合物に添加し、そしてその混合物を30−40分間撹拌し、そして同時にロータリーホモジナイザー(ローター/ステーターシステム)を2500rpmで使用して20分間均質化する。適当な冷却システムを用いて混合物の温度を20−30℃に維持することが有利である。次の工程では、鉄(III)糖粉末6350.98gを分散物に数回に分けて添加する。添加の間に、混合物を連続的に撹拌し、そしてロータリーホモジナイザーを2500rpmで使用して均質化しなければならない。製剤の外観に応じて、言及されている懸濁液の撹拌および均質化時間を延長または短縮し得る。冷却装置を作動させることにより温度を20−30℃に維持する。全ての鉄(III)糖粉末を添加した後、クエン酸(400.00g)を混合物に添加し、そして撹拌しながら溶解させる。全ての構成要素が組み込まれた後、撹拌を20分間継続し、そして後続の均質化を2500rpmで実施する。この後続の撹拌期の間、冷却により分散物の温度を室温に保つ。短時間の後にpH5が得られる。完成した分散物をステンレススチール容器から0.1mmメッシュのふるいを通して適当な貯蔵用の入れ物に移す。
【0096】
【表8】

【0097】
実施例5
32.0%(m/m)鉄(III)ポリマルトース粉末の使用
哺乳ブタにおける経口使用のための鉄糖/トルトラズリル分散物(22.8%(m/v)活性鉄+5%(m/v)トルトラズリル)10lの製造のためのバッチ
【表9】

【0098】
保存剤プロピオン酸ナトリウムおよび安息香酸ナトリウム、各々の場合で17.00gを別個の容器中で重量測定して、溶媒プロピレングリコール1000.00gに入れて撹拌しながら溶解させる。水全量をステンレススチール容器(Koruma Disho;装置型:DH V100/45)に導入する。必要とされるものおよび最終生成物の望ましい粘度に応じて、粘度調節補助剤(増粘剤として公知)をこの量の水に溶解または組み込むことができる。この実施例5ではこれを省く。ステンレススチール容器に導入されているものにプロピレングリコール予混合物を添加し、そして撹拌しながら均質化する(20−40分間)。次の工程では、予め重量測定した30%濃度トルトラズリル分散濃縮物1666.67gを混合物に添加し、そしてその混合物を30−40分間撹拌し、そして同時にロータリーホモジナイザー(ローター/ステーターシステム)を2500rpmで使用して20分間均質化する。適当な冷却システムを用いて混合物の温度を20−30℃に維持することが有利である。次の工程では、鉄(III)ポリマルトース粉末7125.00gを分散物に数回に分けて添加する。添加の間に、混合物を連続的に撹拌し、そしてロータリーホモジナイザーを2500rpmで使用して均質化しなければならない。冷却装置を作動させることにより温度を20−30℃に維持する。全ての鉄(III)ポリマルトース粉末を添加した後、クエン酸(604.69g)を混合物に添加し、そして撹拌しながら溶解させる。全ての構成要素が組み込まれた後、撹拌を20分間続け、そして後続の均質化を2500rpmで同時に実施する。製剤の外観に応じて、上述の撹拌および均質化時間を延長または短縮し得る。この後続の撹拌期の間、冷却により分散物の温度を室温に保つ。完成した分散物をステンレススチール容器から0.1mmメッシュのふるいを通して適当な貯蔵用の入れ物に移す。数日から数週間までの貯蔵時間の後、pHは4.8−5.2の値まで上昇する。
【0099】
【表10】

【0100】
実施例6
粘度調節補助剤を使用する37.9%(m/m)鉄(III)デキストラン粉末の使用
哺乳ブタにおける経口使用のための鉄糖/トルトラズリル分散物(22.8%(m/v)活性鉄+5%(m/v)トルトラズリル)10lの製造のためのバッチ
【表11】

【0101】
保存剤プロピオン酸ナトリウムおよび安息香酸ナトリウム、各々の場合で17.00gを別個のステンレススチール容器中で重量測定して、溶媒プロピレングリコール1000.00gに入れて撹拌しながら溶解させる。保存剤を溶解させる場合、キサンタンガム30.0gを添加し、そして約10分間撹拌する。その後ロータリーホモジナイザー(ローター/ステーターシステム;研究室用 Ultra-Turrax)を使用して混合物を13.500rpmで約5分間均質化して、分散物から小塊を無くする。
【0102】
水全量3290.0gをステンレススチール容器(Koruma Disho;装置型:DH V100/45)に導入する。その後、ベントナイト20gを振り入れる。この混合物を今度は穏やかに撹拌しながら(ロータリースターラーで50rpm)78℃まで加温する。温度を78℃で約5−10分間維持すべきであり、次いで、撹拌および冷却システムの操作により、混合物を35℃まで冷却すべきである。次いで撹拌を20−40分間続け、そしてロータリーホモジナイザーを2500rpmで使用して、冷却を続けながら、後続の均質化を同時に実施する。その後プロピレングリコール中のキサンタンガムの分散物を、一定に撹拌しながら、ベントナイト/水混合物に添加する。次いで、50rpmでさらに20−40分間、および同時にロータリーホモジナイザーで2500rpmで10分間撹拌することにより、混合物の後続の均質化を実施する。再度、必要とされることおよび分散物の外観に応じて、上述の撹拌および均質化時間を延長または短縮し得る。
【0103】
次の工程では、予め重量測定した30%濃度トルトラズリル分散濃縮物1666.67gを混合物に添加し、そしてその混合物を30−40分間撹拌し、そして同時にロータリーホモジナイザーを使用して2500rpmで20分間均質化する。この過程の間、冷却システムを作動させることにより温度を20−30℃に維持する。全ての鉄(III)デキストラン粉末を添加した後、クエン酸(70.0g)を混合物に添加し、そして撹拌および均質化しながら溶解させる。pH4.1−4.4を確立する。全ての構成要素が組み込まれた後、撹拌を20分間続け、そして後続の均質化を2500rpmで実施する。この後続の撹拌期の間、冷却により分散物の温度を室温で維持する。完成した分散物をステンレススチール容器から0.1mmメッシュのふるいを通して適当な貯蔵用の入れ物に移す。
【0104】
【表12】

【0105】
実施例7
粘度調節補助剤を使用する38.6%(m/m)鉄(III)デキストラン粉末の使用
哺乳ブタにおける経口使用のための鉄デキストラン/トルトラズリル分散物(20%(m/v)活性鉄+3%(m/v)トルトラズリル)1lの製造のためのバッチ
【表13】

【0106】
保存剤プロピオン酸ナトリウムおよび安息香酸ナトリウム、各々の場合で1.80gを別個のガラスビーカー中で重量測定して、溶媒プロピレングリコール100.00gに入れて撹拌しながら溶解させる。保存剤を溶解させるときに、キサンタンガム2.00gを添加し、そして約10分間撹拌を続けて、分散物から小塊を無くする。
【0107】
水約100gをガラスビーカーに導入し、そして70−80℃まで加温する。その後ベントナイト1.33gを撒き入れ、そして温度を約5−10分間維持する。得られたベントナイト粘液を撹拌しながら冷却し、そして残りの水(506.42gである)を続いて添加する。ベントナイト/水混合物をディソルバーディスクを利用して270rpmで撹拌し、そしてプロピレングリコール中のキサンタンガムの分散物を一定に撹拌しながら添加する。次いで、撹拌しながらさらに5−10分間、混合物の後続の均質化を実施する。再度、必要とされることおよび分散物の外観に応じて、上述の撹拌時間を延長または短縮し得る。
【0108】
次の工程では、予め重量測定した30%トルトラズリル分散濃縮物100.00gを混合物に添加し、そしてその混合物を460rpmの速度で30−40分間撹拌する。その後、一定に撹拌しながら鉄(III)デキストラン粉末518.13gを分散物に数回に分けて添加する。全ての鉄(III)デキストラン粉末を添加した後、クエン酸(8.67g)を混合物に添加し、そして撹拌しながら溶解させる。pH4.1−4.4を確立する。全ての構成要素が組み込まれた後、ローターステーターホモジナイザーを利用して9500rpmで20分間、懸濁液の後続の均質化を実施する。完成した分散物を適当なPEフラスコに移す。
【0109】
【表14】

【0110】
実施例1−7の分散物に関するデータにより、非常に微細な固体の構成要素を伴う本発明による製剤を製造できることが実証される。望ましくない凝集物の形成は観察されない。さらに哺乳ブタにおける使用に必要とされる、トルトラズリル35−44mgおよび活性鉄200mgの成分は、実施例の懸濁剤における分散物0.9ml中に見出される。
【0111】
実施例1−7の分散物の粘度を10−2500mPasの広い範囲にわたって確立することができる。例えば仔ブタによる嚥下の場合に問題を引き起こすことが少ないので、20−1500mPas、好ましくは50−500mPas、極めて特に好ましくは20−250mPasのより低い粘度範囲が有利である。
【0112】
生物学的実施例
実施例2および3の製剤での臨床試験の結果
全部で270匹の仔ブタを産んだ30匹の繁殖雌ブタを臨床実験に利用できた。動物を4群に分け、各々の場合で同腹仔を分け、そして各半分を異なる群に割り当てた。故に、わずかに異なる一腹産仔数および出産時間の結果として、60匹ないし75匹の仔ブタを1つの処置群に割り当てた。各々の場合で生後3日目に製剤0.9mlを仔ブタに経口投与した。投与当日および7、14および21日目に血液試料を仔ブタから採取した。赤血球数(RBC100万個の細胞/μl)、ヘマトクリット(Ht%)、ヘモグロビン値(Hb g/100ml)および仔ブタの体重(kg)を、製剤の有効性に関する基準として使用した。結果を、生後3日目に適用された、購入できる注射用鉄(III)デキストラン製剤(Hierrox 200)を受容した対照群のものと比較した。結果を表5に示す。
【0113】
経口的に適用された実施例2(鉄(III)デキストラン粉末から製造)および実施例3(鉄(III)デキストラン溶液から製造)の製剤の双方により、生後7、14および21日目にヘモグロビン値>9g/100mlがもたらされ、従って、欠乏性貧血を回避するために有効であることが判明した。さらに、生後14および21日目の>10g/100mlの値により、製剤のバイオアベイラビリティが高かったことが実証される。さらに、RBC、HTおよび体重増加の基準は、注射用の製剤よりも不利な点は示さなかった。
【0114】
故に、本発明による製剤中のトルトラズリルと組み合わされた鉄(III)デキストランからの活性鉄200mgの単回経口投与が、驚くべきことに、学説および利用可能な先行技術に反し、生後3日に投与した場合でさえも哺乳ブタにおける欠乏性貧血に対して良好な予防を可能にすることを実証できる。
【0115】
オーシストに関する仔ブタの糞便の分析により、全体にわたって陰性の知見が得られた。これにより、上述の製剤はコクシジウム症を引き起こす病原体に対してまさに劣らず有効であることが実証される。
【0116】
さらに、例えば下痢のような、高用量の鉄化合物の経口投与の場合により頻繁に観察され得るような、有害な関連病徴は全く何も見出されなかった。故に、本発明に従って製造された製剤は非常に良好に耐容されることが判明した。
【0117】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)または(II):
【化1】

または
【化2】

(式中:
は、R−SO−またはR−S−を表し、
は、アルキル、アルコキシ、ハロゲンまたはSON(CHを表し、そして、
はハロアルキルを表し、
およびRは、互いに独立して水素またはClを表し、そして、
はフッ素または塩素を表す)
のトリアジノン化合物またはそれらの生理的に許容し得る塩;並びに、
(a)鉄(II)カルボン酸塩、鉄(II)カルボン酸錯化合物およびアミノ酸との鉄(II)キレート複合体;
(b)鉄(III)カルボン酸塩、鉄(III)カルボン酸錯化合物およびアミノ酸との鉄(III)キレート複合体;および、
(c)多核鉄(III)多糖類錯化合物;
の中から選択される鉄(2+)または鉄(3+)化合物;
を含有する製剤。
【請求項2】
1から30%(m/v)、好ましくは3ないし7%(m/v)のトリアジノンを含有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
分散されたトリアジノンがd(v,90)30μm以下、好ましくはd(v,90)20μm以下、特に好ましくはd(v,90)10μm以下の粒子サイズを有する、請求項1または請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
活性鉄10%(m/v)ないし30%(m/v)、好ましくは11.4%(m/v)ないし25%(m/v)、しかし特に好ましくは20%(m/v)ないし25%(m/v)の鉄化合物濃度を伴う、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の製剤。
【請求項5】
10から2500mPasまでの範囲、好ましくは20から1500mPasまでの範囲の、コーンプレート型レオメーターで、剪断速度128/秒および256/秒で測定された値の平均を得ることにより測定される粘度を有する、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の製剤。
【請求項6】
水をベースとするものである、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
少なくとも1種の多価脂肪族アルコールを含有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
群(c)からの多核鉄(III)多糖類錯化合物を含有し、その多核鉄コアがβ−FeO(OH)単位からなり、そしてそれはさらなる配位圏に多糖類分子を含有するものである、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の製剤。
【請求項9】
鉄(III)デキストラン、鉄(III)ヒドロキシポリマルトース/鉄(III)デキストリン並びに多核β−FeO(OH)およびスクロースおよびオリゴ糖からなる不定比化合物から選択される多核鉄(III)多糖類錯化合物を含有する、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
トリアジノンとしてトリアジントリオンを含有する、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の製剤。
【請求項11】
トリアジノンがトルトラズリルであり、そして多核鉄(III)多糖類錯化合物が鉄(III)デキストランである、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の製剤。
【請求項12】
1種またはそれ以上の栄養素を含有する、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の製剤。
【請求項13】
医薬の製造のための、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の製剤の使用。
【請求項14】
コクシジウム感染および鉄欠乏症を同時に処置するための医薬の製造のための、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
経口処置用の医薬を製造するための、請求項13または請求項14に記載の使用。
【請求項16】
哺乳ブタの経口処置用の医薬を製造するための、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
誕生から生後10日までの期間、好ましくは誕生から生後3日までの期間の仔ブタの経口処置用の医薬を製造するための、請求項15に記載の使用。

【公表番号】特表2010−528996(P2010−528996A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509712(P2010−509712)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004040
【国際公開番号】WO2008/145281
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(508270727)バイエル・アニマル・ヘルス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (32)
【氏名又は名称原語表記】BAYER ANIMAL HEALTH GMBH
【Fターム(参考)】