説明

トリアジン環含有重合体およびそれを含む膜形成用組成物

【課題】金属酸化物を添加しなくとも、ポリマー単独で高耐熱性、高透明性、高屈折率、高溶解性、低体積収縮を達成できるトリアジン環含有重合体、およびこれを含む膜形成用組成物を提供すること。
【解決手段】例えば、下記式(2)で表されるような、トリアジン環を有する繰り返し単位構造を含む重合体は、それ単独で高耐熱性、高透明性、高屈折率、高溶解性、および低体積収縮を発揮し得る。


(式中、Z1およびZ2は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキレン基等を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアジン環含有重合体およびそれを含む膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで高分子化合物を高機能化する試みが種々行われてきている。例えば、高分子化合物を高屈折率化する方法として、芳香族環、ハロゲン原子、硫黄原子を導入する試みがなされている。中でも、硫黄原子を導入したエピスルフィド高分子化合物およびチオウレタン高分子化合物は、眼鏡用高屈折率レンズとして実用化されている。
【0003】
しかしながら、ポリマー単独では屈折率1.6を超える材料設計が難しいことから、さらなる高屈折率化を達成し得る最も有力な方法として、無機の金属酸化物を用いる方法が知られている。
例えば、シロキサンポリマーと、ジルコニアまたはチタニアなどを分散させた微粒子分散材料とを混合してなるハイブリッド材料を用いて屈折率を高める手法が報告されている(特許文献1)。
さらに、シロキサンポリマーの一部に高屈折率な縮合環状骨格を導入する手法も報告されている(特許文献2)。
【0004】
また、高分子化合物に耐熱性を付与するための試みも数多くなされており、具体的には、芳香族環を導入することで、高分子化合物の耐熱性を向上し得ることがよく知られている。例えば、置換アリーレン繰り返し単位を主鎖に有するポリアリーレンコポリマーが報告され(特許文献3)、この高分子化合物は主として耐熱性プラスチックへの応用が期待されている。
【0005】
一方、メラミン樹脂は、トリアジン系の樹脂としてよく知られているが、黒鉛などの耐熱性材料に比べて遥かに分解温度が低い。
これまで炭素および窒素からなる耐熱性有機材料としては、芳香族ポリイミドや芳香族ポリアミドが主として用いられているが、これらの材料は直鎖構造を有しているため耐熱温度はそれほど高くない。
また、耐熱性を有する含窒素高分子材料としてトリアジン系縮合材料も報告されている(特許文献4)。
【0006】
ところで、近年、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、および有機薄膜トランジスタ(TFT)等の電子デバイスを開発する際に、高機能な高分子材料が要求されるようになってきた。
求められる具体的な特性としては、1)耐熱性、2)透明性、3)高屈折率、4)高溶解性、5)低体積収縮率などが挙げられる。
しかし、上述した眼鏡用高屈折率レンズ用材料は一般的に耐熱性が乏しく、200℃以下の温度範囲で作製する必要があるため、大気下、300℃で焼成するなどのプロセスには不向きである。
また、芳香族環やトリアジン環を導入した高分子化合物は、一般的に溶媒への溶解性が不足しているため、安全性溶剤であるレジスト溶剤には不溶であり、一方、高溶解性を示す材料は、透明性が低いのが一般的である。
【0007】
一方、無機金属酸化物を用いた材料は、屈折率と透明性とがトレードオフの関係にあるため、高屈折率を保持したまま透明性を向上することが困難である。
また、この材料は性質の異なる微粒子を含むことから、エッチングやアッシングなどのドライプロセスを経る場合、エッチレートが不安定となって均一な膜厚の被膜が得られにくく、デバイスを作製する際のプロセスマージンが狭くなるという問題もある。
【0008】
ところで、高分岐ポリマーは、ハイパーブランチポリマーとデンドリマーとに大別される。
ハイパーブランチポリマーとは、例えば、ABx型の多官能性モノマー(ここでAとBは互いに反応する官能基、Bの数Xは2以上)を重合させて得られる不規則な分岐構造を有する高分岐ポリマーである。
一方、デンドリマーとは、規則的な分岐構造を有する高分岐ポリマーである。ハイパーブランチポリマーは、デンドリマーより合成が容易であり、高分子量体も合成しやすいという特徴がある。
トリアジン環を有するハイパーブランチポリマーは難燃剤用途として合成された報告例がある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−246877号公報
【特許文献2】特開2008−24832号公報
【特許文献3】米国特許第5886130号明細書
【特許文献4】特開2000−53659号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ジャーナル オブ アプライド ポリマー サイエンス、第106巻、95−102頁(2007年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、金属酸化物を添加しなくとも、ポリマー単独で高耐熱性、高透明性、高屈折率、高溶解性、低体積収縮を達成できるトリアジン環含有重合体、およびこれを含む膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、トリアジン環および芳香環を有する繰り返し単位を含むハイパーブランチポリマーが、ポリマー単独で高耐熱性、高透明性、高屈折率、高溶解性、低体積収縮を達成でき、電子デバイスを作製する際の膜形成用組成物として好適であることを既に見出している(PCT/JP2010/057761)。
この知見をもとに、本発明者らはさらなる検討を重ね、芳香環部分をシロキサンオリゴマー構造とすることで、耐光性により優れた重合体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、
1. 下記式(1)で表される繰り返し単位構造を含むことを特徴とするトリアジン環含有重合体、
【化1】

(式中、R1〜R6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、またはWで置換されていてもよいナフチル基を表し、Y1およびY2は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、Z1およびZ2は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキレン基またはWで置換されていてもよいフェニレン基を表し、Wは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、またはヒドロキシ基を表し、nは、0または1以上の整数を表す。)
2. 前記R1〜R6が、炭素数1〜5のアルキル基である1のトリアジン環含有重合体、
3. 前記R1〜R6が、メチル基である2のトリアジン環含有重合体、
4. 前記Y1およびY2が、水素原子である1〜3のいずれかのトリアジン環含有重合体、
5. 前記Z1およびZ2が、炭素数1〜5のアルキレン基である1〜4のいずれかのトリアジン環含有重合体、
6. 前記繰り返し単位構造が、式(2)で示される1のトリアジン環含有重合体、
【化2】

(式中、Z1およびZ2は、炭素数1〜5のアルキレン基を表す。nは前記と同じ。)
7. 少なくとも1つの末端が、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、またはエステル基でキャップされている1〜6のいずれかのトリアジン環含有重合体、
8. 少なくとも1つのトリアジン環末端を有し、このトリアジン環末端が、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、またはエステル基でキャップされている7のトリアジン環含有重合体、
9. 1〜8のいずれかのトリアジン環含有重合体を含む膜形成用組成物、
10. 9の膜形成用組成物から得られる膜、
11. 1〜8のいずれかのトリアジン環含有重合体を含む膜、
12. 基材と、この基材上に形成された10または11の膜とを備える電子デバイス、
13. 基材と、この基材上に形成された10または11の膜とを備える光学部材、
14. 10または11の膜を少なくとも1層備える、電荷結合素子または相補性金属酸化膜半導体からなる固体撮像素子、
15. 10または11の膜をカラーフィルター上の平坦化層として備える固体撮像素子、
16. 9の膜形成用組成物からなる、固体撮像素子用レンズ材料、平坦化材料または埋め込み材料
を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金属酸化物を用いることなく、単独で高耐熱性、高透明性、高屈折率、高溶解性、低体積収縮を達成し得るトリアジン環含有重合体を提供できる。
本発明の重合体骨格とすることで、1)2級アミンをポリマーのスペーサーとして用いる、2)末端に1級アミンが置換している、3)メチルシロキサン構造等のオルガノシロキサン構造を主鎖に有する、場合においても高屈折率、高耐熱性、高透明性を維持できる。
本発明のハイパーブランチポリマーが高屈折率を発現するのは、ハイパーブランチ型の構造にすることで、トリアジン環部分が密に集まっているためである。
また、高分子量の化合物であるにもかかわらず、各種有機溶媒に対する溶解性に優れるとともに、溶剤に溶解したときに低粘度であるため、ハンドリング性に優れる。
そして、金属酸化物を含まず、ポリマー単独で高屈折率を発現できることから、エッチングやアッシングなどのドライプロセスを経る場合でも、エッチレートが一定となり、均一な膜厚の被膜を得ることができ、デバイスを作製する際のプロセスマージンが拡大する。
以上のような特性を有する本発明のトリアジン環含有重合体を用いて作製した膜は、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜トランジスタ(TFT)などの電子デバイスを作製する際の一部材として好適に利用できる。
特に高屈折率が求められている固体撮像素子の部材である、フォトダイオード上の埋め込み膜および平坦化膜、カラーフィルター前後の平坦化膜、マイクロレンズ、マイクロレンズ上の平坦化膜およびコンフォーマル膜として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1で得られた高分子化合物[3]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図2】実施例2におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るトリアジン環含有重合体は下記式(1)で表される繰り返し単位構造を含むものである。
【0017】
【化3】

【0018】
上記式中R1〜R6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、またはWで置換されていてもよいナフチル基を表し、Y1およびY2は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、Z1およびZ2は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキレン基またはWで置換されていてもよいフェニレン基を表し、Wは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、またはヒドロキシ基を表し、nは、0または1以上の整数を表す。
【0019】
本発明において、アルキル基の炭素数は1〜10であるが、ポリマーの耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数1〜5がより好ましく、1〜3がより一層好ましい。
アルキル基の構造は、鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、1−メチル−シクロプロピル基、2−メチル−シクロプロピル基、n−ペンチル基、1−メチル−n−ブチル基、2−メチル−n−ブチル基、3−メチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−プロピル基、1,2−ジメチル−n−プロピル基、2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−n−プロピル基、シクロペンチル基、1−メチル−シクロブチル基、2−メチル−シクロブチル基、3−メチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロプロピル基、2,3−ジメチル−シクロプロピル基、1−エチル−シクロプロピル基、2−エチル−シクロプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、2−メチル−n−ペンチル基、3−メチル−n−ペンチル基、4−メチル−n−ペンチル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2−ジメチル−n−ブチル基、1,3−ジメチル−n−ブチル基、2,2−ジメチル−n−ブチル基、2,3−ジメチル−n−ブチル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−エチル−n−ブチル基、2−エチル−n−ブチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、1−エチル−1−メチル−n−プロピル基、1−エチル−2−メチル−n−プロピル基、シクロヘキシル基、1−メチル−シクロペンチル基、2−メチル−シクロペンチル基、3−メチル−シクロペンチル基、1−エチル−シクロブチル基、2−エチル−シクロブチル基、3−エチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロブチル基、1,3−ジメチル−シクロブチル基、2,2−ジメチル−シクロブチル基、2,3−ジメチル−シクロブチル基、2,4−ジメチル−シクロブチル基、3,3−ジメチル−シクロブチル基、1−n−プロピル−シクロプロピル基、2−n−プロピル−シクロプロピル基、1−イソプロピル−シクロプロピル基、2−イソプロピル−シクロプロピル基、1,2,2−トリメチル−シクロプロピル基、1,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、2,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、1−エチル−2−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−1−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−2−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−3−メチル−シクロプロピル基等が挙げられる。
【0020】
上記アルコキシ基の炭素数は、1〜10であるが、ポリマーの耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数1〜5がより好ましく、1〜3がより一層好ましい。また、そのアルキル部分の構造は、鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、1−メチル−n−ブトキシ基、2−メチル−n−ブトキシ基、3−メチル−n−ブトキシ基、1,1−ジメチル−n−プロポキシ基、1,2−ジメチル−n−プロポキシ基、2,2−ジメチル−n−プロポキシ基、1−エチル−n−プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、1−メチル−n−ペンチルオキシ基、2−メチル−n−ペンチルオキシ基、3−メチル−n−ペンチルオキシ基、4−メチル−n−ペンチルオキシ基、1,1−ジメチル−n−ブトキシ基、1,2−ジメチル−n−ブトキシ基、1,3−ジメチル−n−ブトキシ基、2,2−ジメチル−n−ブトキシ基、2,3−ジメチル−n−ブトキシ基、3,3−ジメチル−n−ブトキシ基、1−エチル−n−ブトキシ基、2−エチル−n−ブトキシ基、1,1,2−トリメチル−n−プロポキシ基、1,2,2−トリメチル−n−プロポキシ基、1−エチル−1−メチル−n−プロポキシ基、1−エチル−2−メチル−n−プロポキシ基等が挙げられる。
【0021】
Wで置換されていてもよいフェニル基の具体例としては、フェニル基、o−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基等が挙げられる。
Wで置換されていてもよいナフチル基の具体例としては、α−ナフチル基、β−ナフチル基等が挙げられる。
【0022】
上記アルキレン基の炭素数は1〜10であるが、ポリマーの耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数1〜5がより好ましく、1〜3がより一層好ましい。また、その構造は、鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。
【0023】
Wで置換されていてもよいフェニレン基の具体例としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基や、これらのフェニレン基が有する水素原子の少なくとも1つが、Wで置換、すなわち、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ヒドロキシ基で置換されたものが挙げられる。
【0024】
上記式(1)において、R1〜R6としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基が最適である。
1およびY2は、水素原子が好ましい。
1およびZ2は、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基がより好ましい。
nは、0または1以上の整数であれば、特に限定されるものではないが、好ましくは0または1〜8の整数である。
【0025】
本発明における、好適な繰り返し単位構造としては、以下の各式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
【化4】

(式中、nは上記と同じ。)
【0027】
本発明のトリアジン環含有重合体の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、500〜500,000が好ましく、500〜100,000がより好ましく、より耐熱性を向上させるとともに、収縮率を低くするという点から、2,000以上が好ましく、より溶解性を高め、得られた溶液の粘度を低下させるという点から、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、10,000以下がさらに好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)分析による標準ポリスチレン換算で得られる平均分子量である。
【0028】
本発明のトリアジン環含有重合体(ハイパーブランチポリマー)の製造法について一例を挙げて説明する。
本発明のトリアジン環含有重合体は、ハロゲン化シアヌルと、両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物とを反応させて得ることができ、例えば、下記スキーム1に示されるように、繰り返し構造(2)を有するハイパーブランチポリマーは、ハロゲン化シアヌル(4)、および両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物(5)を適当な有機溶媒中で反応させて得ることができる。
なお、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられる。
【0029】
【化5】

(式中、Xは、互いに独立してハロゲン原子を表す。Z1、Z2およびnは上記と同じ意味を表す。)
【0030】
また、下記スキーム2に示されるように、繰り返し構造(2)を有するハイパーブランチポリマーは、ハロゲン化シアヌル(4)および両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物(5)を適当な有機溶媒中で等量用いて反応させて得られる化合物(6)から合成することもできる。
【0031】
【化6】

(式中、X、Z1、Z2およびnは上記と同じ意味を表す。)
【0032】
両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物(5)としては、従来公知の方法によって両末端にアミノ基を導入したオルガノシロキサン化合物を適宜用いることができる。
その具体例としては、例えば、信越化学工業(株)製のPAM−E、KF−8010、X−22−161A、X−22−161B、KF−8012、KF−8008、X−22−1660B−3等が挙げられる。
【0033】
以上の方法を用いることで、本発明のハイパーブランチポリマーを、安価に、しかも簡便かつ安全に製造することができる。この製造方法は、一般的なポリマーを合成する際の反応時間よりも著しく短いことから、近年の環境への配慮に適合した製造方法であり、CO2排出量を低減できる。また、製造スケールを大幅に増加させても安定製造することが可能であり、工業化レベルでの安定供給体制を損なわない。
【0034】
上記スキーム1の方法において、各原料の仕込み量としては、目的とする重合体が得られる限りにおいて任意であるが、ハロゲン化シアヌル(4)1当量に対し、両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物(5)0.01〜10当量が好ましいが、ハロゲン化シアヌル(4)2当量に対して、両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物(5)3当量用いることを避けることが好ましい。官能基の当量をずらすことで、ゲル化物の生成を防ぐことができる。
種々の分子量のトリアジン環末端を有する高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)を得るために、ハロゲン化シアヌル(4)2当量に対して、両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物(5)3当量未満の量で用いることが好ましい。
一方、種々の分子量のアミン末端を有する高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)を得るために、両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物(5)3当量に対して、ハロゲン化シアヌル(4)2当量未満の量で用いることが好ましい。
このように、両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物(5)やハロゲン化シアヌル(4)の量を適宜調節することで、得られる高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)の分子量を容易に調節することができる。
また、スキーム2の方法の場合、各原料の仕込み量としては、目的とするハイパーブランチポリマーが得られる限りにおいて任意であるが、ハロゲン化シアヌル(4)1当量に対し、両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物(5)0.01〜10当量が好ましい。
【0035】
上記有機溶媒としては、この種の反応において通常用いられる種々の溶媒を用いることができ、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピペリドン、N,N−ジメチルエチレン尿素、N,N,N’,N’−テトラメチルマロン酸アミド、N−メチルカプロラクタム、N−アセチルピロリジン、N,N−ジエチルアセトアミド、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピオン酸アミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、N−メチルホルムアミド、N,N’−ジメチルプロピレン尿素等のアミド系溶媒、およびそれらの混合溶媒が挙げられる。
中でもTHF、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドおよびそれらの混合溶媒が好ましく、特に、1,4−ジオキサンが好適である。
【0036】
スキーム1の反応およびスキーム2の第2段階の反応において、反応温度は、用いる溶媒の融点から溶媒の沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、特に、0〜150℃程度が好ましく、60〜100℃がより好ましい。
特にスキーム1の反応では、リニア性を抑え、分岐度を高めるという点から、反応温度は60〜150℃が好ましく、80〜150℃が好ましく、80〜120℃が好ましい。
スキーム2の第1段階の方法において、反応温度は、用いる溶媒の融点から溶媒の沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、特に、−50〜50℃程度が好ましく、−20〜50℃程度がより好ましく、−10〜50℃程度がより一層好ましく、−10〜10℃がさらに好ましい。
特にスキーム2の方法では、第1段階の反応にて、−50〜50℃で反応させる第1工程と、この工程に続いて60〜150℃で反応させる第2工程とからなる2段階工程を採用することが好ましい。
【0037】
上記各反応において、各成分の配合順序は任意であるが、スキーム1の反応においては、ハロゲン化シアヌル(4)または両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物(5)および有機溶媒を含む溶液を60〜150℃、好ましくは80〜150℃に加熱し、この温度で、当該溶液中に、両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物(5)またはハロゲン化シアヌル(4)を加える方法が最適である。
この場合、予め溶媒に溶かしておく成分および後から加える成分はどちらでもよいが、両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物(5)の加熱溶液中に、ハロゲン化シアヌル(4)を添加する手法が好ましい。
また、スキーム2の反応において、予め溶媒に溶かしておく成分および後から加える成分はどちらでもよいが、ハロゲン化シアヌル(4)の冷却溶液中に、両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物(5)を添加する手法が好ましい。
後から加える成分は、ニートで加えても、上述したような有機溶媒に溶かした溶液で加えてもよいが、操作の容易さや反応のコントロールのし易さなどを考慮すると、後者の手法が好適である。
また、添加は、滴下等によって徐々に加えても、全量一括して加えてもよい。
スキーム1において、加熱した状態で、両化合物を混合した後は、(段階的に温度を上げることなく)一段階で反応させた場合でも、ゲル化することなく、目的とするトリアジン環含有重合体を得ることができる。
【0038】
また、上記スキーム1の反応およびスキーム2の第2段階の反応では、重合時または重合後に通常用いられる種々の塩基を添加してもよい。
この塩基の具体例としては、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムエトキシド、酢酸ナトリウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、酸化リチウム、酢酸カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化バリウム、リン酸三リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、フッ化セシウム、酸化アルミニウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N−メチルモルホリン等が挙げられる。
塩基の添加量は、ハロゲン化シアヌル(4)1当量に対して1〜100当量が好ましく、1〜10当量がより好ましい。なお、これらの塩基は水溶液にして用いてもよい。
得られるポリマーには、原料成分が残存していないことが好ましいが、本発明の効果を損なわなければ一部の原料が残存していてもよい。
いずれのスキームの方法においても、反応終了後、生成物は再沈法等によって容易に精製できる。
【0039】
なお、本発明においては、少なくとも1つの末端トリアジン環のハロゲン原子の一部を、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、エステル基等でキャップしてもよい。
これらの中でも、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基が好ましく、アルキルアミノ基、アリールアミノ基がより好ましく、アリールアミノ基がさらに好ましい。
エステル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられ、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基としては上述した基と同様のものが挙げられる。
これらの基は、トリアジン環上のハロゲン原子を対応する置換基を与える化合物で置換することで容易に導入することができ、例えば、下記式スキーム3に示されるように、アニリンを加えて反応させることで、少なくとも1つの末端にフェニルアミノ基を有するハイパーブランチポリマー(7)が得られる。
【0040】
【化7】

(式中、X、Z1、Z2およびnは上記と同じ意味を表す。)
【0041】
この際、有機モノアミンの同時仕込みを行う、すなわち、有機モノアミンの存在下で、ハロゲン化シアヌル化合物と、両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物とを反応させることで、ハイパーブランチポリマーの剛直性が緩和された、分岐度の低い柔らかいハイパーブランチポリマーを得ることができる。
この手法によって得られたハイパーブランチポリマーは、溶剤への溶解性(凝集抑制)や、架橋剤との架橋性に優れたものとなるため、後述する架橋剤と組み合わせた組成物として用いる場合に特に有利である。
ここで、有機モノアミンとしては、アルキルモノアミン、アラルキルモノアミン、アリールモノアミンのいずれを用いることもできる。
【0042】
アルキルモノアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、1−メチル−n−ブチルアミン、2−メチル−n−ブチルアミン、3−メチル−n−ブチルアミン、1,1−ジメチル−n−プロピルアミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン、2,2−ジメチル−n−プロピルアミン、1−エチル−n−プロピルアミン、n−ヘキシルアミン、1−メチル−n−ペンチルアミン、2−メチル−n−ペンチルアミン、3−メチル−n−ペンチルアミン、4−メチル−n−ペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、1,1−ジメチル−n−ブチルアミン、1,2−ジメチル−n−ブチルアミン、1,3−ジメチル−n−ブチルアミン、2,2−ジメチル−n−ブチルアミン、2,3−ジメチル−n−ブチルアミン、3,3−ジメチル−n−ブチルアミン、1−エチル−n−ブチルアミン、2−エチル−n−ブチルアミン、1,1,2−トリメチル−n−プロピルアミン、1,2,2−トリメチル−n−プロピルアミン、1−エチル−1−メチル−n−プロピルアミン、1−エチル−2−メチル−n−プロピルアミン、2−エチルヘキシルアミン等が挙げられる。
【0043】
アラルキルモノアミンの具体例としては、ベンジルアミン、p−メトキシカルボニルベンジルアミン、p−エトキシカルボニルベンジルアミン、p−メチルベンジルアミン、m−メチルベンジルアミン、o−メトキシベンジルアミン等が挙げられる。
アリールモノアミンの具体例としては、アニリン、p−メトキシカルボニルアニリン、p−エトキシカルボニルアニリン、p−メトキシアニリン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、アントラニルアミン、1−アミノピレン、4−ビフェニリルアミン、o−フェニルアニリン、4−アミノ−p−ターフェニル、2−アミノフルオレン等が挙げられる。
【0044】
この場合、有機モノアミンの使用量は、ハロゲン化シアヌル化合物1当量に対して、0.05〜500当量が好ましく、0.05〜120当量がより好ましく、0.05〜50当量がより一層好ましい。
この場合の反応温度も、リニア性を抑え、分岐度を高めるという点から、60〜150℃が好ましく、80〜150℃が好ましく、80〜120℃が好ましい。
ただし、有機モノアミン、ハロゲン化シアヌル化合物、両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物の3成分の混合は、低温下で行ってもよく、その場合の温度としては、−50〜50℃程度が好ましく、−20〜50℃程度がより好ましく、−20〜10℃がさらに好ましい。低温仕込み後は、重合させる温度まで一気に(一段階で)昇温して反応を行うことが好ましい。
また、ハロゲン化シアヌル化合物と両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物の2成分の混合を低温下で行ってもよく、その場合の温度としては、−50〜50℃程度が好ましく、−20〜50℃程度がより好ましく、−20〜10℃がさらに好ましい。低温仕込み後、有機モノアミンを加え、重合させる温度まで一気に(一段階で)昇温して反応を行うことが好ましい。
また、このような有機モノアミンの存在下で、ハロゲン化シアヌル化合物と、両末端アミノ基変性オルガノシロキサン化合物とを反応させる反応は、上述と同様の有機溶媒を用いて行ってもよい。
【0045】
上述した本発明の重合体は、他の化合物と混合した組成物として用いることができ、例えば、レベリング剤、界面活性剤、架橋剤、樹脂等との組成物が挙げられる。
これらの組成物は、膜形成用組成物として用いることができ、各種の溶剤に溶かした膜形成用組成物(ポリマーワニスともいう)として好適に使用できる。
重合体を溶解するのに用いる溶剤は、重合時に用いた溶媒と同じものでも別のものでもよい。この溶剤は、重合体との相溶性を損なわなければ特に限定されず、1種でも複数種でも任意に選択して用いることができる。
このような溶剤の具体例としては、トルエン、p−キシレン、o−キシレン、m−キシレン、エチルベンゼン、スチレン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコ−ルモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、1−オクタノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチレングリコール、1−メトキシ−2−ブタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルノーマルブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノーマルプロピル、酢酸イソブチル、酢酸ノーマルブチル、乳酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、アリルアルコール、ノーマルプロパノール、2−メチル−2−ブタノール、イソブタノール、ノーマルブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、1−メトキシ−2−プロパノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、N−シクロヘキシル−2−ピロリジノン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0046】
この際、膜形成組成物中の固形分濃度は、保存安定性に影響を与えない範囲であれば特に限定されず、目的とする膜の厚みに応じて適宜設定すればよい。具体的には、溶解性および保存安定性の観点から、固形分濃度0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20質量%である。
【0047】
本発明の膜形成用組成物では、本発明の効果を損なわない限りにおいて、トリアジン環含有重合体および溶剤以外のその他の成分、例えば、レベリング剤、界面活性剤、架橋剤等が含まれていてもよい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、商品名エフトップEF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製(旧(株)ジェムコ製)、商品名メガファックF171、F173、R−08、R−30、F−553、F−554(DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、商品名アサヒガードAG710,サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、BYK−302、BYK−307、BYK−322、BYK−323、BYK−330、BYK−333、BYK−370、BYK−375、BYK−378(ビックケミー・ジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0048】
これらの界面活性剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の使用量は、トリアジン環含有重合体100質量部に対して0.0001〜5質量部が好ましく、0.001〜1質量部がより好ましく、0.01〜0.5質量部がより一層好ましい。
【0049】
架橋剤としては、本発明のトリアジン環含有重合体と反応し得る置換基を有する化合物であれば特に限定されるものではない。
そのような化合物としては、メチロール基、メトキシメチル基などの架橋形成置換基を有するメラミン系化合物、置換尿素系化合物、エポキシ基またはオキセタン基などの架橋形成置換基を含有する化合物、ブロック化イソシアナートを含有する化合物、酸無水物を有する化合物、(メタ)アクリル基を有する化合物、フェノプラスト化合物等が挙げられるが、耐熱性や保存安定性の観点からエポキシ基、ブロックイソシアネート基、(メタ)アクリル基を含有する化合物が好ましい。
また、ブロックイソシアネート基は、尿素結合で架橋し、カルボニル基を有するため屈折率が低下しないという点からも好ましい。
なお、これらの化合物は、ポリマーの末端処理に用いる場合は少なくとも1個の架橋形成置換基を有していればよく、ポリマー同士の架橋処理に用いる場合は少なくとも2個の架橋形成置換基を有する必要がある。
【0050】
エポキシ化合物としては、エポキシ基を一分子中2個以上有し、熱硬化時の高温に曝されると、エポキシが開環し、本発明のトリアジン環含有重合体との間で付加反応により架橋反応が進行するものである。
架橋剤の具体例としては、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−4−(エポキシエチル)シクロヘキサン、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、1,1,3−トリス[p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、4,4’−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0051】
また、市販品として、少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂である、YH−434、YH434L(東都化成(株)製)、シクロヘキセンオキサイド構造を有するエポキシ樹脂である、エポリードGT−401、同GT−403、同GT−301、同GT−302、セロキサイド2021、同3000(ダイセル化学工業(株)製)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、エピコート(現、jER)1001、同1002、同1003、同1004、同1007、同1009、同1010、同828(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である、エピコート(現、jER)807(ジャパンエポキシレジン(株)製)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂である、エピコート(現、jER)152、同154(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPPN201、同202(以上、日本化薬(株)製)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である、EOCN−102、同103S、同104S、同1020、同1025、同1027(以上、日本化薬(株)製)、エピコート(現、jER)180S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)、脂環式エポキシ樹脂である、デナコールEX−252(ナガセケムテックス(株)製)、CY175、CY177、CY179(以上、CIBA−GEIGY A.G製)、アラルダイトCY−182、同CY−192、同CY−184(以上、CIBA−GEIGY A.G製)、エピクロン200、同400(以上、DIC(株)製)、エピコート(現、jER)871、同872(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、ED−5661、ED−5662(以上、セラニーズコーティング(株)製)、脂肪族ポリグリシジルエーテルである、デナコールEX−611、同EX−612、同EX−614、同EX−622、同EX−411、同EX−512、同EX−522、同EX−421、同EX−313、同EX−314、同EX−321(ナガセケムテックス(株)製)等を用いることもできる。
【0052】
酸無水物化合物としては、2分子のカルボン酸を脱水縮合させたカルボン酸無水物であり、熱硬化の際の高温に曝されると、無水物環が開環し、本発明のトリアジン環含有重合体との間で付加反応により架橋反応が進行するものである。
また、酸無水物化合物の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、オクチル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸等の分子内に1個の酸無水物基を有するもの;1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等の分子内に2個の酸無水物基を有するもの等が挙げられる。
【0053】
(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル基を一分子中2個以上有し、そして熱硬化時の高温に曝されると、本発明のトリアジン環含有重合体との間で付加反応により架橋反応が進行するものである。
(メタ)アクリル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化グリセリントリメタクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリグリセリンモノエチレンオキサイドポリアクリレート、ポリグリセリンポリエチレングリコールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート等が挙げられる。
【0054】
上記(メタ)アクリル基を有する化合物は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、NKエステルA−200、同A−400、同A−600、同A−1000、同A−TMPT、同UA−53H、同1G、同2G、同3G、同4G、同9G、同14G、同23G、同ABE−300、同A−BPE−4、同A−BPE−6、同A−BPE−10、同A−BPE−20、同A−BPE−30、同BPE−80N、同BPE−100N、同BPE−200、同BPE−500、同BPE−900、同BPE−1300N、同A−GLY−3E、同A−GLY−9E、同A−GLY−20E、同A−TMPT−3EO、同A−TMPT−9EO、同ATM−4E、同ATM−35E(以上、新中村化学工業(株)製)、KAYARAD(登録商標)DPEA−12、同PEG400DA、同THE−330、同RP−1040(以上、日本化薬(株)製)、M−210、M−350(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD(登録商標)DPHA、同NPGDA、同PET30(以上、日本化薬(株)製)、NKエステル A−DPH、同A−TMPT、同A−DCP、同A−HD−N、同TMPT、同DCP、同NPG、同HD−N(以上、新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0055】
ブロック化イソシアネートを含有する化合物としては、イソシアネート基(−NCO)が適当な保護基によりブロックされたブロック化イソシアネート基を一分子中2個以上有し、熱硬化時の高温に曝されると、保護基(ブロック部分)が熱解離して外れ、生じたイソシアネート基が樹脂との間で架橋反応を起こすものであり、例えば、下記式で示される基を一分子中2個以上(なお、これらの基は同一のものでも、また各々異なっているものでもよい)有する化合物が挙げられる。
【0056】
【化8】

(式中、Rbはブロック部の有機基を表す。)
【0057】
このような化合物は、例えば、一分子中2個以上のイソシアネート基を有する化合物に対して適当なブロック剤を反応させて得ることができる。
一分子中2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネートや、これらの二量体、三量体、および、これらとジオール類、トリオール類、ジアミン類、またはトリアミン類との反応物などが挙げられる。
ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−エトキシヘキサノール、2−N,N−ジメチルアミノエタノール、2−エトキシエタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;フェノール、o−ニトロフェノール、p−クロロフェノール、o−、m−またはp−クレゾール等のフェノール類;ε−カプロラクタム等のラクタム類、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類;ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール等のピラゾール類;ドデカンチオール、ベンゼンチオール等のチオール類などが挙げられる。
【0058】
ブロック化イソシアネートを含有する化合物は、市販品としても入手が可能であり、その具体例としては、B−830、B−815N、B−842N、B−870N、B−874N、B−882N、B−7005、B−7030、B−7075、B−5010(以上、三井化学ポリウレタン(株)製)、デュラネート(登録商標)17B−60PX、同TPA−B80E、同MF−B60X、同MF−K60X、同E402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、カレンズMOI−BM(登録商標)(以上、昭和電工(株)製)等が挙げられる。
【0059】
アミノプラスト化合物としては、メトキシメチレン基を一分子中2個以上有し、そして熱硬化時の高温に曝されると、本発明のトリアジン環含有重合体との間で脱メタノール縮合反応により架橋反応が進行するものである。
メラミン系化合物としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン CYMEL(登録商標)303、テトラブトキシメチルグリコールウリル 同1170、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン 同1123(以上、日本サイテックインダストリーズ(株)製)等のサイメルシリーズ、メチル化メラミン樹脂であるニカラック(登録商標)MW−30HM、同MW−390、同MW−100LM、同MX−750LM、メチル化尿素樹脂である同MX−270、同MX−280、同MX−290(以上、(株)三和ケミカル製)等のニカラックシリーズ等が挙げられる。
オキセタン化合物としては、オキセタニル基を一分子中2個以上有し、そして熱硬化時の高温に曝されると、本発明のトリアジン環含有重合体との間で付加反応により架橋反応が進行するものである。
オキセタン基を有する化合物としては、例えば、オキセタン基を含有するOXT−221、OX−SQ−H、OX−SC(以上、東亜合成(株)製)等が挙げられる。
【0060】
フェノプラスト化合物としては、ヒドロキシメチレン基を一分子中2個以上有し、そして熱硬化時の高温に曝されると、本発明のトリアジン環含有重合体との間で脱水縮合反応により架橋反応が進行するものである。
フェノプラスト化合物としては、例えば、2,6−ジヒドロキシメチル−4−メチルフェノール、2,4−ジヒドロキシメチル−6−メチルフェノール、ビス(2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジヒドロキシメチルフェニル)プロパン、ビス(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)ホルミルメタン、α,α−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ホルミルトルエン等が挙げられる。
フェノプラスト化合物は、市販品としても入手が可能であり、その具体例としては、26DMPC、46DMOC、DM−BIPC−F、DM−BIOC−F、TM−BIP−A、BISA−F、BI25X−DF、BI25X−TPA(以上、旭有機材工業(株)製)等が挙げられる。
【0061】
これらの架橋剤は単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。架橋剤の使用量は、トリアジン環含有重合体100質量部に対して、1〜100質量部が好ましいが、溶剤耐性を考慮すると、その下限は、好ましくは10質量部、より好ましくは20質量部であり、さらには、屈折率をコントロールすることを考慮すると、その上限は好ましくは50質量部、より好ましくは30質量部である。
架橋剤を用いることで、架橋剤とトリアジン環含有重合体が有する反応性の末端置換基とが反応し、膜密度の向上、耐熱性の向上、熱緩和能力の向上などの効果を発現できる場合がある。
なお、上記その他の成分は、本発明の組成物を調製する際の任意の工程で添加することができる。
【0062】
本発明の膜形成用組成物は、基材に塗布し、その後、必要に応じて加熱することで所望の膜を形成することができる。
組成物の塗布方法は任意であり、例えば、スピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の方法を採用できる。
【0063】
また、基材としては、シリコン、インジウム錫酸化物(ITO)が成膜されたガラス、インジウム亜鉛酸化物(IZO)が成膜されたガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、プラスチック、ガラス、石英、セラミックス等からなる基材等が挙げられ、可撓性を有するフレキシブル基材を用いることもできる。
焼成温度は、溶媒を蒸発させる目的では特に限定されず、例えば40〜400℃で行うことができる。これらの場合、より高い均一製膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で2段階以上の温度変化をつけてもよい。
焼成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、大気、窒素等の不活性ガス、真空中等の適切な雰囲気下で蒸発させればよい。
焼成温度および焼成時間は、目的とする電子デバイスのプロセス工程に適合した条件を選択すればよく、得られる膜の物性値が電子デバイスの要求特性に適合するような焼成条件を選択すればよい。
【0064】
このようにして得られた本発明の組成物からなる膜は、高耐熱性、高透明性、高屈折率、高溶解性、および低体積収縮を達成できるため、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜トランジスタ(TFT)などの電子デバイスを作製する際の一部材として好適に利用できる。
【0065】
なお、本発明の組成物には、必要に応じてその他の樹脂(熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)を配合してもよい。
樹脂の具体例としては、特に限定されるものではない。熱可塑性樹脂としては、例えば、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)等のポリオレフィン系樹脂;PS(ポリスチレン)、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、MS(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体)等のポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;PMMA(ポリメチルメタクリレート)等の(メタ)アクリル樹脂;PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、PLA(ポリ乳酸)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート/アジペート等のポリエステル樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;変性ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリグルコール酸;変性でんぷん;酢酸セルロース、三酢酸セルロース;キチン、キトサン;リグニンなどが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その使用量は、上記トリアジン環含有重合体100質量部に対して、1〜10,000質量部が好ましく、より好ましくは1〜1,000質量部である。
【0066】
例えば、(メタ)アクリル樹脂との組成物は、(メタ)アクリレート化合物を組成物に配合し、(メタ)アクリレート化合物を重合させて得ることができる。
(メタ)アクリレート化合物の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
これらの(メタ)アクリレート化合物の重合は、光ラジカル開始剤や熱ラジカル開始剤の存在下、光照射または加熱して行うことができる。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン類等が挙げられる。
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(159頁、発行人:高薄一弘、発行所:(株)技術情報協会、1991年発行)に記載されている。
市販の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、チバ・ジャパン(株)製 商品名: イルガキュア 184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、ダロキュア 1116、1173、BASF社製 商品名:ルシリン TPO、UCB社製 商品名:ユベクリル P36、フラテツリ・ランベルティ社製 商品名:エザキュアー KIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B等が挙げられる。
【0068】
光重合開始剤は、(メタ)アクリレート化合物100質量部に対して、0.1〜15質部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
重合に用いる溶剤は、上記膜形成用組成物で例示した溶剤と同様のものが挙げられる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた各測定装置は以下のとおりである。
1H−NMR]
装置:Varian NMR System 400NB(400MHz)
JEOL−ECA700(700MHz)
測定溶媒:DMSO−d6
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)(δ0.0ppm)
[GPC]
装置:東ソー(株)製 HLC−8320 GPC
カラム:Shodex KF−802.5L+KF−803L
カラム温度:40℃
溶媒:20mMトリエチルアミン添加テトラヒドロフラン
検出器:UV(254nm)
検量線:標準ポリスチレン
[エリプソメーター]
装置:ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製 多入射角分光エリプソメーターVASE
[示差熱天秤(TG−DTA)]
装置:(株)リガク製 TG−8120
昇温速度:10℃/分
測定温度:25℃−750℃
[DSC]
装置:NETZSCH DSC204 F1 Phenix
昇温速度:40K/min
【0070】
[実施例1]高分子化合物[3]の合成
【化9】

【0071】
窒素下、100mL四つ口フラスコにPAM−E(6.14g、信越化学工業(株)製)、アニリン(1.88g、0.02mol)、および1,4−ジオキサン(10.49g)を加えて還流させた。そこに1,4−ジオキサン(18.19g)に溶解した塩化シアヌル(3.67g、0.02mol、エボニック・デグサ社製)を滴下した。10分撹拌し、その後、イオン交換水20gに溶解させた酢酸ナトリウム(5.43g)を滴下した。1時間撹拌し、アニリン(3.97g、0.04mol)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液の水相を除去し、イオン交換水300gに再沈殿させた。同様に水相を除き、THF50mLに再溶解させ、イオン交換水300gに再沈させた。上澄みの水相を除去し、少量のTHFを加え希釈した後に、エバポレーターで濃縮、乾燥し、目的の高分子化合物[3](以下、TSi−P8とする)5.54gを得た。
TSi−P8の1H−NMRスペクトルの測定結果を図1に示す。得られたTSi−P8は式(1)で表される構造単位を有する化合物である。TSi−P8のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,400、多分散度Mw/Mnは3.70であった。
【0072】
[実施例2]TSi−P8の5%重量減少測定
実施例1で得られたTSi−P8 6.27mgを白金パンに加え、TG−DTAにより昇温速度15℃/minで測定を行った。その結果を図2に示す。5%重量減少は333℃であった。また、DSC測定によりガラス転移温度を測定したところ、42.4℃に転移点が観測された。
【0073】
[実施例3]屈折率測定
実施例1で得られたTSi−P8(0.1g)を、シクロヘキサノン0.9gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒間、2000rpmで30秒間スピンコートし、100℃で1分、300℃で5分間加熱して溶媒を除去し被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.611であった。
【0074】
[実施例4]屈折率調整、熱硬化試験
実施例1で得られたTSi−P8を架橋剤であるジペンタエリスリトール ヘキサアクリレート(日本化薬(株)製)に対して30、50、70質量%添加し、固形分10質量%のシクロヘキサノン溶液を調製し、ガラス基板に200rpm、5秒、1500rpm、30秒でスピンコートを行った。その後、100℃で1分、250℃で5分焼成を行い、溶媒を除去した。得られた塗膜について屈折率、膜厚をエリプソメーターにて測定した。その結果を表1に示す。
【0075】
[実施例5]
得られた塗膜をシクロヘキサノンに浸し、5分後、スピンドライを行い、実施例4と同様に膜厚の測定を行った。その結果を表1に併せて示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示されるように、熱硬化後、顕著な屈折率、膜厚の変化が見られていないことから、熱硬化性組成物として利用できることがわかる。また、ハイパーブランチポリマー(TSi−P8)の添加量の増加に伴い、屈折率の向上が確認でき、当該ポリマーが屈折率調整剤として利用できることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位構造を含むことを特徴とするトリアジン環含有重合体。
【化1】

(式中、R1〜R6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、またはWで置換されていてもよいナフチル基を表し、
1およびY2は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、
1およびZ2は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキレン基またはWで置換されていてもよいフェニレン基を表し、
Wは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、またはヒドロキシ基を表し、
nは、0または1以上の整数を表す。)
【請求項2】
前記R1〜R6が、炭素数1〜5のアルキル基である請求項1記載のトリアジン環含有重合体。
【請求項3】
前記R1〜R6が、メチル基である請求項2記載のトリアジン環含有重合体。
【請求項4】
前記Y1およびY2が、水素原子である請求項1〜3のいずれか1項記載のトリアジン環含有重合体。
【請求項5】
前記Z1およびZ2が、炭素数1〜5のアルキレン基である請求項1〜4のいずれか1項記載のトリアジン環含有重合体。
【請求項6】
前記繰り返し単位構造が、式(2)で示される請求項1記載のトリアジン環含有重合体。
【化2】

(式中、Z1およびZ2は、炭素数1〜5のアルキレン基を表す。nは前記と同じ。)
【請求項7】
少なくとも1つの末端が、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、またはエステル基でキャップされている請求項1〜6のいずれか1項記載のトリアジン環含有重合体。
【請求項8】
少なくとも1つのトリアジン環末端を有し、このトリアジン環末端が、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、またはエステル基でキャップされている請求項7記載のトリアジン環含有重合体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載のトリアジン環含有重合体を含む膜形成用組成物。
【請求項10】
請求項9記載の膜形成用組成物から得られる膜。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項記載のトリアジン環含有重合体を含む膜。
【請求項12】
基材と、この基材上に形成された請求項10または11記載の膜とを備える電子デバイス。
【請求項13】
基材と、この基材上に形成された請求項10または11記載の膜とを備える光学部材。
【請求項14】
請求項10または11記載の膜を少なくとも1層備える、電荷結合素子または相補性金属酸化膜半導体からなる固体撮像素子。
【請求項15】
請求項10または11記載の膜をカラーフィルター上の平坦化層として備える固体撮像素子。
【請求項16】
請求項9記載の膜形成用組成物からなる、固体撮像素子用レンズ材料、平坦化材料または埋め込み材料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−97176(P2012−97176A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245374(P2010−245374)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】