説明

トリアジン誘導体、その製造方法、及びそれを構成成分とする有機電界発光素子

【課題】
本発明の目的は、有機電界発光素子において電子輸送材料として用いることで、駆動電圧を低減すると同時に高耐熱性を有する化合物を提供することにある。
【解決手段】
一般式(1)
【化1】


(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。)で示されるトリアジン誘導体を製造し、これを構成成分とする有機電界発光素子を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多環芳香族基を有するトリアジン誘導体とその製造方法、及びそれを含有する有機電界発光素子に関する。さらに詳しくは、有機電界発光素子の構成成分として有用なナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基を有するトリアジン誘導体とその製造方法に関し、これらを有機化合物層の少なくとも一層に用いた低電圧並びに高耐熱性の有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、発光材料を含有する発光層を、正孔輸送層と電子輸送層で挟み、さらにその外側に陽極と陰極を取付け、発光層に注入された正孔及び電子の再結合により生ずる励起子が失活する際の光の放出(蛍光又はりん光)を利用する素子であり、ディスプレー等へ応用されている。
【0003】
特許文献1には1,3,5−トリアジン誘導体を有機電界発光素子に用いた例が開示されているが、これらは多環芳香族基を有せず、本発明のトリアジン誘導体とは異なる。
【0004】
多環芳香族基を有する1,3,5−トリアジン誘導体を有機電界発光素子に用いる例が特許文献2及び3に開示されているが、特許文献2に記載されているトリアジン誘導体は多環芳香族基の立体障害に起因する構造異性が生ずるものに限られており、本発明のトリアジン誘導体とは異なる。また、特許文献3に記載されているトリアジン誘導体は、1,3,5−トリアジンに結合しているフェニル基が2つの2〜4環の芳香族炭化水素基を有する実施例は記載されていない。更に、これらの文献には電子移動度に関する記載はない。また、これらの文献は1,3,5−トリアジンの2,4,6位に全て等しい置換基を有する実施例しか記載されておらず、ガラス転移温度(Tg)に関する具体的な実施例もない。また、有機電界発光素子に用いられる為には薄膜状態で凹凸のないアモルファス性が重要であり、対称性の高い骨格をもつトリアジン誘導体は結晶性が高いという問題点がある。本発明のトリアジン誘導体は、1,3,5−トリアジンの2,4,6位に異なる置換基を配することで膜の結晶化を制御することを特徴としており、分子骨格に起因する材料の性質が対称型トリアジン誘導体とは異なる。
【0005】
特許文献4に記載されている化合物6−13は、1,3,5−トリアジンとピレニル基を有する化合物について言及されているが、具体的な実施例はなく、またTg及び移動度に関する記載もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−280330号公報
【特許文献2】特開2001−143869号公報
【特許文献3】特開2004−22334号公報
【特許文献4】特開2004−2297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の有機電界発光素子は、十分な発光を得るための駆動電圧が高く、また高い駆動電圧による発熱は有機電界発光材料の分解を促進するため、素子の短寿命化を起こす原因となる。
【0008】
高い駆動電圧を必要とする理由としては、有機電界発光素子を構成する材料、特に電子輸送材料の電子移動度が低いことが挙げられる。また、素子の耐久性の向上のためには材料の耐熱性が重要であり、構成材料は高いTgを示すことが要求される。よって電子輸送材料は、高移動度かつ高Tgを持つことが必要となるが、これら従来の化合物の中には高Tgかつ高移動度を満たしているものはない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、先の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明の非対称型のトリアジン誘導体(1)が、真空蒸着及びスピンコートのいずれの方法でも非晶質の薄膜形成が可能であり、またこれらを電子輸送層として用いた有機電界発光素子が、汎用の有機電界発光素子に比べて高い耐熱性を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
非対称型のトリアジン誘導体とは、1,3,5−トリアジンに結合している置換基が全て同一ではないトリアジン誘導体のことである。
【0011】
すなわち本発明は、一般式(1)
【0012】
【化1】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。)で示されるトリアジン誘導体に関するものである。
【0013】
また本発明は、一般式(2a)
【0014】
【化2】

(式中、Arは置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。Mは、ZnR、MgR、Sn(R、B(ORを表す。但し、R及びRは、各々独立に塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Rは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、Rは水素原子、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。また、2つのORは結合するホウ素原子と一体となって環を形成することができる。)で示される化合物と、一般式(3)
【0015】
【化3】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。X及びXは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、互いに同一でも異なっても構わない。)で示される化合物を、場合によっては塩基の存在下に、パラジウム触媒の存在下でカップリング反応させることを特徴とする、一般式(1a)
【0016】
【化4】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Arは置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。)で示されるトリアジン誘導体の製造方法に関するものである。
【0017】
また本発明は、一般式(2a)
【0018】
【化5】

(式中、Arは置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。Mは、ZnR、MgR、Sn(R、B(ORを表す。但し、R及びRは、各々独立に塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Rは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、Rは水素原子、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。また、2つのORは結合するホウ素原子と一体となって環を形成することができる。)で示される化合物と、一般式(3)
【0019】
【化6】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。X及びXは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、互いに同一でも異なっても構わない。)で示される化合物を、場合によっては塩基の存在下に、パラジウム触媒の存在下でカップリング反応させて一般式(4)
【0020】
【化7】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Arは置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で示される化合物を得、次いで化合物(4)と一般式(2b)
【0021】
【化8】

(式中、Arは置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。Mは、ZnR、MgR、Sn(R、B(ORを表す。但し、R及びRは、各々独立に塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Rは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、Rは水素原子、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。また、2つのORは結合するホウ素原子と一体となって環を形成することができる。)で示される化合物を、場合によっては塩基の存在下に、パラジウム触媒の存在下でカップリング反応させることを特徴とする、一般式(1)
【0022】
【化9】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。)で示されるトリアジン誘導体の製造方法に関するものである。
【0023】
また本発明は、一般式(5)
【0024】
【化10】

(式中、Arは置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で示される化合物と、一般式(6)
【0025】
【化11】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Rは水素原子、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。また、2つのORは結合するホウ素原子と一体となって環を形成することができる。)で示される化合物を、場合によっては塩基の存在下に、パラジウム触媒の存在下でカップリング反応させることにより製造することを特徴とする、一般式(1a)
【0026】
【化12】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Arは置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。)で示されるトリアジン誘導体の製造方法に関するものである。
【0027】
さらに本発明は、一般式(1)
【0028】
【化13】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。)で示されるトリアジン誘導体を構成成分とすることを特徴とする有機電界発光素子に関するものである。以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
Ar及びArで表される各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、置換されていてもよいフェニル基又は置換されていてもよいナフチル基等が挙げられる。
【0030】
Ar及びArで表される置換されていてもよいフェニル基としては、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、メシチル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、3−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、2,4−ジプロピルフェニル基、3,5−ジプロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2,4−ジイソプロピルフェニル基、3,5−ジイソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、3−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、2,4−ジブチルフェニル基、3,5−ジブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、4−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、2−ビフェニリル基、2−メチルビフェニル−4−イル基、3−メチルビフェニル−4−イル基、2’−メチルビフェニル−4−イル基、4’−メチルビフェニル−4−イル基、2,2’−ジメチルビフェニル−4−イル基、2’,4’,6’−トリメチルビフェニル−4−イル基、6−メチルビフェニル−3−イル基、5−メチルビフェニル−3−イル基、2’−メチルビフェニル−3−イル基、4’−メチルビフェニル−3−イル基、6,2’−ジメチルビフェニル−3−イル基、2’,4’,6’−トリメチルビフェニル−3−イル基、5−メチルビフェニル−2−イル基、6−メチルビフェニル−2−イル基、2’−メチルビフェニル−2−イル基、4’−メチルビフェニル−2−イル基、6,2’−ジメチルビフェニル−2−イル基、2’,4’,6’−トリメチルビフェニル−2−イル基、2−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル基、3−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル基、2’−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル基、4’−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル基、6−トリフルオロメチルビフェニル−3−イル基、5−トリフルオロメチルビフェニル−3−イル基、2’−トリフルオロメチルビフェニル−3−イル基、4’−トリフルオロメチルビフェニル−3−イル基、5−トリフルオロメチルビフェニル−2−イル基、6−トリフルオロメチルビフェニル−2−イル基、2’−トリフルオロメチルビフェニル−2−イル基、4’−トリフルオロメチルビフェニル−2−イル基、3−エチルビフェニル−4−イル基、4’−エチルビフェニル−4−イル基、2’,4’,6’−トリエチルビフェニル−4−イル基、6−エチルビフェニル−3−イル基、4’−エチルビフェニル−3−イル基、5−エチルビフェニル−2−イル基、4’−エチルビフェニル−2−イル基、2’,4’,6’−トリエチルビフェニル−2−イル基、3−プロピルビフェニル−4−イル基、4’−プロピルビフェニル−4−イル基、2’,4’,6’−トリプロピルビフェニル−4−イル基、6−プロピルビフェニル−3−イル基、4’−プロピルビフェニル−3−イル基、5−プロピルビフェニル−2−イル基、4’−プロピルビフェニル−2−イル基、2’,4’,6’−トリプロピルビフェニル−2−イル基、3−イソプロピルビフェニル−4−イル基、4’−イソプロピルビフェニル−4−イル基、2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル−4−イル基、6−イソプロピルビフェニル−3−イル基、4’−イソプロピルビフェニル−3−イル基、5−イソプロピルビフェニル−2−イル基、4’−イソプロピルビフェニル−2−イル基、2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル−2−イル基、3−ブチルビフェニル−4−イル基、4’−ブチルビフェニル−4−イル基、2’,4’,6’−トリブチルビフェニル−4−イル基、6−ブチルビフェニル−3−イル基、4’−ブチルビフェニル−3−イル基、5−ブチルビフェニル−2−イル基、4’−ブチルビフェニル−2−イル基、2’,4’,6’−トリブチルビフェニル−2−イル基、3−tert−ブチルビフェニル−4−イル基、4’−tert−ブチルビフェニル−4−イル基、2’,4’,6’−トリ−tert−ブチルビフェニル−4−イル基、6−tert−ブチルビフェニル−3−イル基、4’−tert−ブチルビフェニル−3−イル基、5−tert−ブチルビフェニル−2−イル基、4’−tert−ブチルビフェニル−2−イル基、2’,4’,6’−トリ−tert−ブチルビフェニル−2−イル基等が挙げられる。有機電界発光素子用材料としての性能がよい点で、置換されていてもよいフェニル基としては、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基が望ましく、合成が容易である点でフェニル基、p−トリル基、3−ビフェニリル基がさらに望ましい。
【0031】
またAr及びArで表される置換されていてもよいナフチル基としては、1−ナフチル基、4−メチルナフタレン−1−イル基、4−トリフルオロメチルナフタレン−1−イル基、4−エチルナフタレン−1−イル基、4−プロピルナフタレン−1−イル基、4−ブチルナフタレン−1−イル基、4−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、5−メチルナフタレン−1−イル基、5−トリフルオロメチルナフタレン−1−イル基、5−エチルナフタレン−1−イル基、5−プロピルナフタレン−1−イル基、5−ブチルナフタレン−1−イル基、5−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、2−ナフチル基、6−メチルナフタレン−2−イル基、6−トリフルオロメチルナフタレン−2−イル基、6−エチルナフタレン−2−イル基、6−プロピルナフタレン−2−イル基、6−ブチルナフタレン−2−イル基、6−tert−ブチルナフタレン−2−イル基、7−メチルナフタレン−2−イル基、7−トリフルオロメチルナフタレン−2−イル基、7−エチルナフタレン−2−イル基、7−プロピルナフタレン−2−イル基、7−ブチルナフタレン−2−イル基、7−tert−ブチルナフタレン−2−イル基等が挙げられる。有機電界発光素子用材料としての性能がよい点で、置換されていてもよいナフチル基としては、1−ナフチル基、4−メチルナフタレン−1−イル基、4−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、5−メチルナフタレン−1−イル基、5−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、2−ナフチル基、6−メチルナフタレン−2−イル基、6−tert−ブチルナフタレン−2−イル基、7−メチルナフタレン−2−イル基又は7−tert−ブチルナフタレン−2−イル基が望ましく、分子量が低い点で1−ナフチル基がさらに望ましい。
【0032】
Ar及びArで表される各々独立に置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基としては、例えば、置換されていてもよいナフチル基、置換されていてもよいアントリル基、置換されていてもよいフェナントリル基又は置換されていてもよいピレニル基等が挙げられる。
【0033】
Ar及びArで表される置換されていてもよいナフチル基としては、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルナフタレン−1−イル基、4−トリフルオロメチルナフタレン−1−イル基、4−エチルナフタレン−1−イル基、4−プロピルナフタレン−1−イル基、4−ブチルナフタレン−1−イル基、4−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、5−メチルナフタレン−1−イル基、5−トリフルオロメチルナフタレン−1−イル基、5−エチルナフタレン−1−イル基、5−プロピルナフタレン−1−イル基、5−ブチルナフタレン−1−イル基、5−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、6−メチルナフタレン−2−イル基、6−トリフルオロメチルナフタレン−2−イル基、6−エチルナフタレン−2−イル基、6−プロピルナフタレン−2−イル基、6−ブチルナフタレン−2−イル基、6−tert−ブチルナフタレン−2−イル基、7−メチルナフタレン−2−イル基、7−トリフルオロメチルナフタレン−2−イル基、7−エチルナフタレン−2−イル基、7−プロピルナフタレン−2−イル基、7−ブチルナフタレン−2−イル基、7−tert−ブチルナフタレン−2−イル基等が挙げられる。有機電界発光素子用材料としての性能がよい点で、置換されていてもよいナフチル基としては、1−ナフチル基、4−メチルナフタレン−1−イル基、4−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、5−メチルナフタレン−1−イル基、5−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、2−ナフチル基、6−メチルナフタレン−2−イル基、6−tert−ブチルナフタレン−2−イル基、7−メチルナフタレン−2−イル基又は7−tert−ブチルナフタレン−2−イル基が好ましく、合成が容易な点で1−ナフチル基がさらに好ましい。
【0034】
Ar及びArで表される置換されていてもよいアントリル基としては、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、2−メチルアントラセン−1−イル基、3−メチルアントラセン−1−イル基、4−メチルアントラセン−1−イル基、9−メチルアントラセン−1−イル基、10−メチルアントラセン−1−イル基、2−フェニルアントラセン−1−イル基、3−フェニルアントラセン−1−イル基、4−フェニルアントラセン−1−イル基、5−フェニルアントラセン−1−イル基、6−フェニルアントラセン−1−イル基、7−フェニルアントラセン−1−イル基、8−フェニルアントラセン−1−イル基、9−フェニルアントラセン−1−イル基、10−フェニルアントラセン−1−イル基、1−メチルアントラセン−2−イル基、3−メチルアントラセン−2−イル基、4−メチルアントラセン−2−イル基、9−メチルアントラセン−2−イル基、10−メチルアントラセン−2−イル基、1−フェニルアントラセン−2−イル基、3−フェニルアントラセン−2−イル基、4−フェニルアントラセン−2−イル基、5−フェニルアントラセン−2−イル基、6−フェニルアントラセン−2−イル基、7−フェニルアントラセン−2−イル基、8−フェニルアントラセン−2−イル基、9−フェニルアントラセン−2−イル基、10−フェニルアントラセン−2−イル基、2−メチルアントラセン−9−イル基、3−メチルアントラセン−9−イル基、4−メチルアントラセン−9−イル基、10−メチルアントラセン−9−イル基、2−フェニルアントラセン−9−イル基、3−フェニルアントラセン−9−イル基、4−フェニルアントラセン−9−イル基、1−フェニルアントラセン−9−イル基、10−フェニルアントラセン−9−イル基等が挙げられる。有機電界発光素子用材料としての性能がよい点で、置換されてもよいアントリル基としては、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、4−フェニルアントラセン−1−イル基、4−フェニルアントラセン−9−イル基が好ましく、分子量が低い点で、9−アントリル基がさらに好ましい。
【0035】
Ar及びArで表される置換されていてもよいフェナントリル基としては、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、2−フェニルフェナントレン−1−イル基、3−フェニルフェナントレン−1−イル基、4−フェニルフェナントレン−1−イル基、9−フェニルフェナントレン−1−イル基、1−フェニルフェナントレン−2−イル基、3−フェニルフェナントレン−2−イル基、4−フェニルフェナントレン−2−イル基、8−フェニルフェナントレン−2−イル基、8−フェニルフェナントレン−3−イル基、9−フェニルフェナントレン−2−イル基、1−フェニルフェナントレン−3−イル基、2−フェニルフェナントレン−3−イル基、4−フェニルフェナントレン−3−イル基、9−フェニルフェナントレン−3−イル基、1−フェニルフェナントレン−4−イル基、2−フェニルフェナントレン−4−イル基、3−フェニルフェナントレン−4−イル基、9−フェニルフェナントレン−4−イル基、1−フェニルフェナントレン−9−イル基、2−フェニルフェナントレン−9−イル基、3−フェニルフェナントレン−9−イル基、4−フェニルフェナントレン−9−イル基等が挙げられる。有機電界発光素子用材料としての性能がよい点で、置換されていてもよいフェナントリル基としては、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、8−フェニルフェナントレン−2−イル基、8−フェニルフェナントレン−3−イル基が好ましく、分子量が低い点で、2−フェナントリル基、9−フェナントリル基がさらに好ましい。
【0036】
Ar及びArで表される置換されていてもよいピレニル基としては、1−ピレニル基、2−ピレニル基のほか、6−フェニルピレン−1−イル基、7−フェニルピレン−1−イル基、8−フェニルピレン−1−イル基、6−フェニルピレン−2−イル基、7−フェニルピレン−2−イル基、8−フェニルピレン−2−イル基等が挙げられる。有機電界発光素子用材料としての性能がよい点で、置換されていてもよいピレニル基としては、1−ピレニル基、2−ピレニル基、7−フェニルピレン−2−イル基が好ましく、分子量が低い点で、1−ピレニル基がさらに好ましい。
【0037】
Ar及びArで表される置換されていてもよいトリフェニレニル基としては、1−トリフェニレニル基、2−トリフェニレニル基、2−メチルトリフェニレン−1−イル基、3−メチルトリフェニレン−1−イル基、4−メチルトリフェニレン−1−イル基、5−メチルトリフェニレン−1−イル基、6−メチルトリフェニレン−1−イル基、7−メチルトリフェニレン−1−イル基、8−メチルトリフェニレン−1−イル基、9−メチルトリフェニレン−1−イル基、10−メチルトリフェニレン−1−イル基、11−メチルトリフェニレン−1−イル基、12−メチルトリフェニレン−1−イル基、1−メチルトリフェニレン−2−イル基、3−メチルトリフェニレン−2−イル基、4−メチルトリフェニレン−2−イル基、5−メチルトリフェニレン−2−イル基、6−メチルトリフェニレン−2−イル基、7−メチルトリフェニレン−2−イル基、8−メチルトリフェニレン−2−イル基、9−メチルトリフェニレン−2−イル基、10−メチルトリフェニレン−2−イル基、11−メチルトリフェニレン−2−イル基、12−メチルトリフェニレン−2−イル基、2−フェニルトリフェニレン−1−イル基、3−フェニルトリフェニレン−1−イル基、4−フェニルトリフェニレン−1−イル基、5−フェニルトリフェニレン−1−イル基、6−フェニルトリフェニレン−1−イル基、7−フェニルトリフェニレン−1−イル基、8−フェニルトリフェニレン−1−イル基、9−フェニルトリフェニレン−1−イル基、10−フェニルトリフェニレン−1−イル基、11−フェニルトリフェニレン−1−イル基、12−フェニルトリフェニレン−1−イル基、1−フェニルトリフェニレン−2−イル基、3−フェニルトリフェニレン−2−イル基、4−フェニルトリフェニレン−2−イル基、5−フェニルトリフェニレン−2−イル基、6−フェニルトリフェニレン−2−イル基、7−フェニルトリフェニレン−2−イル基、8−フェニルトリフェニレン−2−イル基、9−フェニルトリフェニレン−2−イル基、10−フェニルトリフェニレン−2−イル基、11−フェニルトリフェニレン−2−イル基、12−フェニルトリフェニレン−2−イル基等が挙げられる。有機電界発光素子用材料としての性能がよい点で、置換されていてもよいトリフェニレニル基としては、1−トリフェニレニル基、2−トリフェニレニル基、6−フェニルトリフェニレン−1−イル基が好ましく、分子量が低い点で、1−トリフェニレニル基、2−トリフェニレニル基がさらに好ましい。
【0038】
次に本発明の製造方法について説明する。本発明のトリアジン誘導体(1a)は次の反応式
【0039】
【化14】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Arは置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。Mは、ZnR、MgR、Sn(R、B(ORを表す。但し、R及びRは、各々独立に塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Rは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、Rは水素原子、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。また、2つのORは結合するホウ素原子と一体となって環を形成することができる。X及びXは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、互いに同一でも異なっても構わない。)で示した方法により製造することができる。
【0040】
一般式(2a)で示される化合物の好ましい例としては、次の(I)から(XV)の基本骨格を例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
【化15】

一般式(2a)で示される化合物は、例えば、特開2001−335516号公報に開示されている方法を用いて製造することができる。
【0042】
Mで表されるZnR、MgRとしては、ZnCl、ZnBr、ZnI、MgCl、MgBr、MgI等が例示できる。収率がよい点でZnClが好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが配位しているZnCl(TMEDA)がより好ましい。
【0043】
Mで表されるSn(Rとしては、Sn(Me)、Sn(Bu)等が例示できる。
【0044】
Mで表されるB(ORとしては、B(OH)、B(OMe)、B(OPr)、B(OBu)等が例示できる。
【0045】
Mで表されるB(ORにおいて、2つのORが一体となって環を形成した場合のB(ORの例としては、次の(XVI)から(XXI)で示される基が例示でき、収率がよい点で(XVII)で示される基が望ましい。
【0046】
【化16】

一般式(3)で示される化合物は、例えば、特開2006−62962号公報の方法に従って製造することができる。
【0047】
及びXは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。合成が容易な点で臭素原子、塩素原子が好ましい。
【0048】
「工程1」は、化合物(2a)を、場合によっては塩基の存在下に、パラジウム触媒の存在下に化合物(3)と反応させて本発明のトリアジン誘導体(1a)を製造する方法であり、鈴木−宮浦反応、根岸反応、玉尾−熊田反応、スティレ反応等の、一般的なカップリング反応の反応条件を適用することにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0049】
「工程1」で用いることのできるパラジウム触媒としては、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硝酸パラジウム等の塩を例示できる。さらに、π−アリルパラジウムクロリドダイマー、パラジウムアセチルアセトナト、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及びジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム等の錯化合物を例示できる。入手容易であり、収率がよい点で、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムが望ましい。中でも、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体は反応収率がよい点でさらに好ましい。なお、これらのパラジウム触媒は、パラジウム塩又は錯化合物に第三級ホスフィンを添加し、反応系中で調整することもできる。
【0050】
パラジウム塩又は錯化合物に添加できる第三級ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、tert−ブチルジフェニルホスフィン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、2−(ジフェニルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリス(2,5−キシリル)ホスフィン、(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル等が例示できる。入手容易であり、収率がよい点で、トリフェニルホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィンが好ましい。
【0051】
また、「工程1」で用いる第三級ホスフィンとパラジウム触媒とのモル比は、1:10から10:1が望ましく、収率がよい点で1:2から5:1がさらに望ましい。反応に用いるパラジウム触媒と化合物(3)とのモル比は、1:200から1:2が望ましく、収率がよい点で1:100から1:10がさらに望ましい。
【0052】
「工程1」で用いることのできる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等を例示することができ、収率がよい点で炭酸セシウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウムが望ましい。塩基と化合物(2a)とのモル比は、1:2から10:1が望ましく、収率がよい点で1:1から3:1がさらに望ましい。
【0053】
「工程1」で用いる化合物(2a)と化合物(3)とのモル比は、1:1から5:1が望ましく、収率がよい点で2:1から3:1がさらに望ましい。
【0054】
「工程1」で用いることのできる溶媒として、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル又はキシレン等が例示でき、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。収率がよい点でテトラヒドロフランを用いることが望ましい。
【0055】
「工程1」の反応は、0℃から150℃から適宜選ばれた温度で実施することができ、収率がよい点で40℃から80℃で行うことがさらに望ましい。
【0056】
トリアジン誘導体(1a)は、「工程1」の終了後に通常の処理をすることで得られる。必要に応じて、再結晶、カラム又は昇華等で精製してもよい。
【0057】
次に、「工程2」及び「工程3」について説明する。「工程2」及び「工程3」は、次の式で表される。
【0058】
【化17】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。Mは、ZnR、MgR、Sn(R、B(ORを表す。但し、R及びRは、各々独立に塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Rは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、Rは水素原子、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。また、2つのORは結合するホウ素原子と一体となって環を形成することができる。X及びXは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、互いに同一でも異なっても構わない。)
一般式(2b)で示される化合物の好ましい例としては、上述の一般式(2a)で示される化合物の好ましい例と同様であり、製造方法についても一般式(2a)で示される化合物の製造方法と同様である。
【0059】
「工程2」は、化合物(3)を、場合によっては塩基の存在下に、パラジウム触媒の存在下に化合物(2a)と反応させて化合物(4)を得る方法であり、「工程3」は、化合物(4)を、場合によっては塩基の存在下に、パラジウム触媒の存在下に化合物(2b)と反応させて本発明のトリアジン誘導体(1)を得る方法である。
【0060】
「工程2」は、化合物(2a)を、場合によっては塩基の存在下に、パラジウム触媒の存在下に化合物(3)と反応させて化合物(4)を製造する方法であり、鈴木−宮浦反応、根岸反応、玉尾−熊田反応、スティレ反応等の、一般的なカップリング反応の反応条件を適用することにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0061】
また、「工程3」は、化合物(2b)を、場合によっては塩基の存在下に、パラジウム触媒の存在下に化合物(4)と反応させて本発明のトリアジン誘導体(1)を製造する方法であり、鈴木−宮浦反応、根岸反応、玉尾−熊田反応、スティレ反応等の、一般的なカップリング反応の反応条件を適用することにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0062】
「工程2」及び「工程3」で用いることのできるパラジウム触媒としては、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硝酸パラジウム等の塩を例示できる。さらに、π−アリルパラジウムクロリドダイマー、パラジウムアセチルアセトナト、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及びジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム等の錯化合物を例示できる。入手容易であり、収率がよい点で、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムが望ましい。これらのパラジウム触媒は、パラジウム塩又は錯化合物に第三級ホスフィンを添加し、反応系中で調整することもできる。
【0063】
パラジウム塩又は錯化合物に添加できる第三級ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、tert−ブチルジフェニルホスフィン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、2−(ジフェニルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリス(2,5−キシリル)ホスフィン、(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル等が例示できる。入手容易であり、収率がよい点で、トリフェニルホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニルが好ましい。「工程2」で用いるパラジウム触媒と化合物(3)とのモル比は、1:200から1:2が望ましく、収率がよい点で1:100から1:10がさらに望ましい。「工程3」で用いるパラジウム触媒と化合物(4)とのモル比も、1:200から1:2が望ましく、収率がよい点で1:100から1:10がさらに望ましい。
【0064】
また、「工程2」及び「工程3」で用いる第三級ホスフィンとパラジウム触媒とのモル比は、1:10から10:1が望ましく、収率がよい点で1:2から5:1がさらに望ましい。
【0065】
「工程2」及び「工程3」で用いることのできる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等を例示することができ、収率がよい点で炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウムが望ましい。塩基と化合物(2)とのモル比は、1:2から10:1が望ましく、収率がよい点で1:1から3:1がさらに望ましい。
【0066】
「工程2」で用いる化合物(2a)と化合物(3)とのモル比は、1:1から5:1が望ましく、収率がよい点で1:1から3:1がさらに望ましく、「工程3」で用いる化合物(2b)と化合物(4)とのモル比も、1:1から5:1が望ましく、収率がよい点で1:1から3:1がさらに望ましい。
【0067】
「工程2」及び「工程3」で用いることのできる溶媒として、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル又はキシレン等が例示でき、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。収率がよい点で、トルエン及びメタノールの混合溶媒、テトラヒドロフランを用いることが望ましい。
【0068】
「工程2」及び「工程3」の反応は、0℃から150℃から適宜選ばれた温度で実施することができ、収率がよい点で40℃から100℃で行うことがさらに望ましい。
【0069】
化合物(4)及びトリアジン誘導体(1)は、「工程2」あるいは「工程3」の終了後に通常の処理をすることで得られる。また、化合物(4)は反応後単離してもよいが、単離せずに「工程3」に供してもよい。必要に応じて、再結晶、カラム又は昇華等で精製してもよい。
【0070】
さらに、本発明のトリアジン誘導体(1a)は、次の反応式
【0071】
【化18】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Arは置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。Rは水素原子、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。また、2つのORは結合するホウ素原子と一体となって環を形成することができる。Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で示した方法によっても製造することができる。
【0072】
一般式(5)で示される化合物の好ましい例としては、次の(XXII)から(XXXVI)の基本骨格を例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
【化19】

は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。合成が容易な点で臭素原子が好ましい。
【0074】
「工程4」は、化合物(6)を、塩基及びパラジウム触媒の存在下に化合物(5)と反応させて本発明のトリアジン誘導体(1)を製造する工程であり、一般的な鈴木−宮浦反応の反応条件を適用することで、収率良く目的物を得ることができる。
【0075】
「工程4」で用いることのできるパラジウム触媒としては、「工程1」で例示したパラジウム触媒を例示することができるが、入手容易であり、収率がよい点で、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、が好ましい。これらのパラジウム触媒は、パラジウム塩又は錯化合物に第三級ホスフィンを添加し、反応系中で調整することもできる。
【0076】
パラジウム塩又は錯化合物に添加できる第三級ホスフィンとしては、「工程1」で例示した第三級ホスフィンを例示することができるが、入手容易であり、収率がよい点で、トリフェニルホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニルが好ましい。パラジウム触媒と化合物(6)とのモル比は、1:200から1:2が望ましく、収率がよい点で1:100から1:10がさらに望ましい。第三級ホスフィンとパラジウム触媒とのモル比は、1:10から10:1が望ましく、収率がよい点で1:2から5:1がさらに望ましい。
【0077】
「工程4」で用いることのできる塩基としては、「工程1」で例示した塩基を例示することができるが、収率がよい点で水酸化ナトリウムが特に好ましい。塩基と化合物(6)とのモル比は、1:2から10:1が望ましく、収率がよい点で1:1から3:1がさらに望ましい。
【0078】
「工程4」で用いる化合物(5)と化合物(6)とのモル比は、2:1から5:1が望ましく、収率がよい点で2:1から3:1がさらに望ましい。
【0079】
「工程4」で用いることのできる溶媒として、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル又は、キシレン等が例示でき、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。収率がよい点でテトラヒドロフランを用いることが望ましい。
【0080】
「工程4」の反応は、0℃から150℃から適宜選ばれた温度で実施することができ、収率がよい点で50℃から80℃で行うことがさらに望ましい。
【0081】
トリアジン誘導体(1a)は、「工程4」の終了後に通常の処理をすることで得られる。必要に応じて、再結晶、カラム又は、昇華等で精製してもよい。
【0082】
次に、本発明のトリアジン誘導体(1a)を製造する「工程4」の原料である化合物(6)は、例えば、次の反応式
【0083】
【化20】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Rは水素原子、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。また、2つのORは結合するホウ素原子と一体となって環を形成することができる。X及びXは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、互いに同一でも異なっても構わない。)で示した方法により製造することができる。
【0084】
「工程5」は、化合物(3)を、塩基及びパラジウム触媒の存在下にヒドロホウ素化合物(7)又はジボロン化合物(8)と反応させることにより、「工程5」で用いる化合物(6)を製造する工程であり、例えばJournal of Organic Chemistry,60巻,7508−7510,1995年又はJournal of Organic Chemistry,65巻,164−168,2000年に開示されている反応条件を適用することで、収率良く目的物を得ることができる。得られたこれらの化合物(6)は、反応後単離してもよいが、単離せずに「工程4」に供してもよい。
【0085】
「工程5」で用いることのできるパラジウム触媒としては、「工程1」で例示したパラジウム触媒を例示することができるが、入手容易であり、収率がよい点で、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムが好ましい。また、このような第三級ホスフィンとしては、「工程1」で例示した第三級ホスフィンを例示することができるが、入手容易であり、収率がよい点で、トリフェニルホスフィン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンが好ましい。パラジウム触媒と化合物(3)とのモル比は、1:200から1:2が望ましく、収率がよい点で1:100から1:10がさらに望ましい。第三級ホスフィンとパラジウム触媒とのモル比は、1:10から10:1が望ましく、収率がよい点で1:2から5:1がさらに望ましい。
【0086】
「工程5」で用いることのできる塩基としては、「工程1」で例示した塩基を例示することができるが、収率がよい点で酢酸カリウムが特に好ましい。塩基と化合物(3)とのモル比は、1:2から10:1が望ましく、収率がよい点で1:1から3:1がさらに望ましい。
【0087】
「工程5」で用いるヒドロホウ素化合物(7)又はジボロン化合物(8)と化合物(3)とのモル比は、1:1から5:1が望ましく、収率がよい点で2:1から4:1がさらに望ましい。
【0088】
「工程5」で用いることのできる溶媒として、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル又は、キシレン等が例示でき、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。収率がよい点でテトラヒドロフランを用いることが望ましい。
【0089】
「工程5」の反応は、0℃から150℃から適宜選ばれた温度で実施することができ、収率がよい点で50℃から120℃で行うことがさらに望ましい。
【0090】
化合物(6)は、「工程5」の終了後に通常の処理をすることで得られる。必要に応じて、再結晶、カラム又は、昇華等で精製してもよい。
【0091】
本発明のトリアジン誘導体(1)から成る有機電界発光素子用薄膜の製造方法に特に限定はないが、真空蒸着法による成膜が可能である。真空蒸着法による成膜は、汎用の真空蒸着装置を用いることにより行うことができる。真空蒸着法で膜を形成する際の真空槽の真空度は、有機電界発光素子作製の製造タクトタイムや製造コストを考慮すると、一般的に用いられる拡散ポンプ、タ−ボ分子ポンプ、クライオポンプ等により到達し得る1×10−2〜1×10−5Pa程度が望ましい。蒸着速度は、形成する膜の厚さによるが0.005〜1.0nm/秒が望ましい。また、トリアジン誘導体(1)は、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、酢酸エチル又は、テトラヒドロフラン等に対する溶解度が高いため、汎用の装置を用いたスピンコ−ト法、インクジェット法、キャスト法又は、ディップ法等による成膜も可能である。
【発明の効果】
【0092】
本発明のトリアジン誘導体(1)から成る薄膜は、高い表面平滑性、アモルファス性、耐熱性、電子輸送能、正孔ブロック能、酸化還元耐性、耐水性、耐酸素性、電子注入特性等をもつため、有機電界発光素子の材料として有用であり、とりわけ電子輸送材、正孔ブロック材、発光ホスト材等として用いることができる。またワイドバンドギャップ化合物なため、従来の蛍光素子用途のみならず、燐光素子への応用も十分可能である。従って、本発明のトリアジン誘導体(1)から成る薄膜は、有機電界発光素子の構成成分としての利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施の形態で作製した有機電界発光素子の断面図である。
【実施例】
【0094】
以下、実験例、試験例及び参考例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実験例−1
【0095】
【化21】

アルゴン気流下、9−フェナントレンボロン酸(1.37g、6.16mmol)、2−(3,5−ジブロモフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(1.20g、2.57mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(72.1mg、0.103mmol)をテトラヒドロフラン(75mL)に懸濁し、70℃に昇温した。これに4NのNaOH水溶液(4.81mL、19.3mmol)をゆっくりと滴下した後、5時間還流した。室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を留去した後、メタノールを加え、析出した固体をろ別した。得られた粗生成物をo−キシレンで再結晶を行い、目的物の2−[3,5−ジ(9−フェナントリル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンの灰色固体(収量1.13g、収率66%)を得た。
【0096】
H−NMR(CDCl):δ.7.56(t,J=7.1Hz,4H),7.61(t,J=7.3Hz,2H),7.66(t,J=8.2Hz,2H),7.70(t,J=8.0Hz,2H),7.75(t,J=8.4Hz,2H),7.76(t,J=8.3Hz,2H),7.97(s,2H),8.02(d,J=8.0Hz,2H),8.03(s,1H),8.18(d,J=8.1Hz,2H),8.79(d,J=8.3Hz,4H),8.81(d,J=8.4Hz,2H),8.87(d,J=8.4Hz,2H),9.09(s,2H).
融点及びTgを表1に示した。
実験例−2
【0097】
【化22】

アルゴン気流下、9−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アントラセン(1.00g、3.28mmol)、2−(3,5−ジブロモフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(0.64g、1.37mmol)、酢酸パラジウム(15.38mg、0.069mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン(0.21mmol)を含むトルエン溶液(0.21mL)をテトラヒドロフラン(65mL)に懸濁し、70℃に昇温した。これに4NのNaOH水溶液(2.57mL、10.3mmol)をゆっくりと滴下した後、3時間還流した。室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を留去した後、メタノールを加え、析出した固体をろ別した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:クロロホルム=5:1〜2:1)で精製し、目的物の2−[3,5−ジ(9−アントリル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンの白色固体(収量0.39g、収率43%)を得た。
【0098】
H−NMR(CDCl):δ.7.49−7.57(m,14H),7.82(s,1H),8.04(d,J=8.7Hz,4H),8.13(d,J=8.2Hz,4H),8.61(s,2H),8.72(d,J=8.7Hz,4H),9.08(s,2H).
融点及びTgを表1に示した。
実験例−3
【0099】
【化23】

アルゴン気流下、1−ピレンボロン酸(1.26g、5.13mmol)、2−(3,5−ジブロモフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(1.00g、2.14mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(60.1mg、0.081mmol)をテトラヒドロフラン(75mL)に懸濁し、70℃に昇温した。これに4NのNaOH水溶液(4.01mL、16.1mmol)をゆっくりと滴下した後、3時間還流した。室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を留去した後、メタノールを加え、析出した固体をろ別した。得られた粗生成物をo−キシレンで再結晶を行い、目的物の2−[3,5−ジ(1−ピレニル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンの灰色固体(収量1.23g、収率81%)を得た。
【0100】
H−NMR(CDCl):δ.7.55(t,J=7.0Hz,4H),7.60(t,J=7.1Hz,2H),8.08(t,J=7.6,2H),8.11−8.21(m,7H),8.24(d,J=7.5Hz,2H),8.27(d,J=8.7Hz,2H),8.31(d,J=8.1Hz,2H),8.38(d,J=7.8Hz,2H),8.48(d,J=9.3Hz,2H),8.80(d,J=7.2Hz,4H),9.20(s,2H).
融点及びTgを表1に示した。
実験例−4
【0101】
【化24】

アルゴン気流下、9−フェナントレンボロン酸(1.29g、5.81mmol)、2−(3,5−ジブロモフェニル)−4,6−ジ−p−トリル−1,3,5−トリアジン(1.20g、2.42mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(67.9mg、0.097mmol)をテトラヒドロフラン(108mL)に懸濁し、70℃に昇温した。これに4NのNaOH水溶液(4.53mL、18.2mmol)をゆっくりと滴下した後、2時間還流した。さらに、9−フェナントレンボロン酸を(0.11g、0.50mmol)を加えて2時間還流し還流した。室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を留去した後、メタノールを加え、析出した固体をろ別した。得られた粗生成物をo−キシレンで再結晶を行い、目的物の2−[3,5−ジ(9−フェナントリル)フェニル]−4,6−ジ−p−トリル−1,3,5−トリアジンの灰色固体(収量0.74g、収率44%)を得た。
【0102】
H−NMR(CDCl):δ.2.47(s,6H),7.34(d,J=8.0Hz,4H),7.65(t,J=7.6Hz,2H),7.69(t,J=7.4Hz,2H),7.75(t,J=6.9Hz,4H),7.97(s,2H),8.01(s,1H),8.02(d,J=7.4Hz,2H),8.18(d,J=8.1Hz,2H),8.66(d,J=8.2Hz,4H),8.81(d,J=8.3Hz,2H),8.87(d,J=8.2Hz,2H),9.07(s,2H).
融点及びTgを表1に示した。
実験例−5
【0103】
【化25】

アルゴン気流下、9−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アントラセン(1.35g、4.44mmol)、2−(3,5−ジブロモフェニル)−4,6−ジ−p−トリル−1,3,5−トリアジン(1.00g、2.02mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(56.7mg、0.081mmol)を100mLのテトラヒドロフランに懸濁し、70℃に昇温した。これに4NのNaOH水溶液(3.78mL、15.1mmol)をゆっくりと滴下した後、23.5時間還流した。さらに、9−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アントラセン(0.20g、0.66mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(14mg、0.02mmol)を加えて4時間還流した。続いて、9−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アントラセン(0.20g、0.66mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(14mg、0.02mmol)を加えて1時間還流した。室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を留去した後、メタノールを加え、析出した固体をろ別した。得られた粗生成物をo−キシレンで再結晶を行い、目的物の2−[3,5−ジ(9−アントリル)フェニル]−4,6−ジ−p−トリル−1,3,5−トリアジンの灰色固体(収量0.55g、収率39%)を得た。
【0104】
H−NMR(CDCl):δ.2.44(s,6H),7.29(d,J=8.6Hz,4H),7.48−7.56(m,8H),7.80(s,1H),8.04(d,J=8.0Hz,4H),8.13(d,J=8.0Hz,4H),8.60(d,J=8.2Hz,4H),8.60(s,2H),9.07(s,2H).
融点を表1に示した。また、明確なTgは観測されなかった。
実験例−6
【0105】
【化26】

アルゴン気流下、1−ピレンボロン酸(1.20g、4.87mmol)、2−(3,5−ジブロモフェニル)−4,6−ジ−p−トリル−1,3,5−トリアジン(1.50g、3.03mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(57mg、0.081mmol)をテトラヒドロフラン(135mL)に懸濁し、70℃に昇温した。これに4NのNaOH水溶液(3.81mL、15.2mmol)をゆっくりと滴下した後、2時間還流した。さらに、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(29mg、0.041mmol)を加えて2時間還流し、1−ピレンボロン酸(0.20g、0.81mmol)を加えて2時間還流した。室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を留去した後、メタノールを加え、析出した固体をろ別した。得られた粗生成物をo−キシレンで再結晶を3回繰り返し、目的物の2−[3,5−ジ(1−ピレニル)フェニル]−4,6−ジ−p−トリル−1,3,5−トリアジンの灰色固体(収量1.14g、収率51%)を得た。
【0106】
H−NMR(CDCl):δ.2.46(s,6H),7.33(d,J=8.0Hz,4H),8.08(t,J=7.6Hz,2H),8.16(d,J=9.3Hz,2H),8.19(d,J=3.7Hz,4H),8.21(s,1H),8.24(d,J=7.4Hz,2H),8.27(d,J=9.0Hz,2H),8.29(d,J=8.0Hz,2H),8.37(d,J=7.9Hz,2H),8.48(d,J=9.3Hz,2H),8.67(d,J=8.2Hz,4H),9.18(s,2H).
融点及びTgを表1に示した。
実験例―7
【0107】
【化27】

アルゴン気流下、9−フェナントレンボロン酸(0.52g、2.36mmol)、2−(3−ブロモ−5−クロロフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(0.91g、2.15mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(24.8mg、0.022mmol)をトルエン(80mL)およびエタノール(10mL)の混合溶媒に懸濁し、60℃に昇温した。これに1MのKCO水溶液(6.45mL、6.45mmol)をゆっくりと滴下した後、18時間還流した。室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を留去した後、メタノールを加え、析出した固体をろ別した。得られた粗生成物をクロロホルムに溶解させてセライト濾過し、濾液の低沸点成分を留去することにより中間体である2−[3−クロロ−5−(9−フェナントリル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンの灰色固体(収量1.02g、収率91%)を得た。
【0108】
続いてアルゴン気流下、上記で得られた2−[3−クロロ−5−(9−フェナントリル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(0.5g、0.96mmol)、1−ナフタレンボロン酸(0.38g、1.73mmol)、酢酸パラジウム(12.9mg、0.058mmol)、炭酸セシウム(1.13g、3.46mmol)をテトラヒドロフラン(50mL)に懸濁し、70℃に昇温して40時間還流した。室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を留去した後、メタノールを加え、析出した固体をろ別した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的物の2−[3−(1−ナフチル)−5−(9−フェナントリル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンの灰色固体(収量0.56g、収率95%)を得た。
【0109】
H−NMR(CDCl):δ.7.53−7.77(m,15H),7.96(d,J=9.0Hz,2H),8.00(t,J=7.7Hz,2H),8.15(d,J=4.3Hz,1H),8.16(d,J=4.8Hz,1H),8.78(d,J=7.0Hz,4H),8.81(d,8.5Hz,1H),8.87(d,J=8.2Hz,1H),9.05(d,7.7Hz,2H).
実験例−8
【0110】
【化28】

アルゴン気流下、9−ブロモアントラセン(0.62g、2.13mmol)、2−[3,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(0.50g、0.89mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(18.7mg、0.027mmol)、をテトラヒドロフラン(40mL)に懸濁し、70℃に昇温した。これに4NのNaOH水溶液(1.34mL、5.34mmol)をゆっくりと滴下した後、3時間還流した。室温まで冷却後、減圧下で低沸点成分を留去した後、メタノールを加え、析出した固体をろ別した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:クロロホルム=5:1〜2:1)で精製し、目的物の2−[3,5−ジ(9−アントリル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンの白色固体(収量0.32g、収率54%)を得た。
【0111】
H−NMR(CDCl):δ.7.49−7.57(m,14H),7.82(s,1H),8.04(d,J=8.7Hz,4H),8.13(d,J=8.2Hz,4H),8.61(s,2H),8.72(d,J=8.7Hz,4H),9.08(s,2H).
試験例−1
最初に移動度素子の作製法について説明する。基板には2mm幅のITO(酸化インジウム錫)膜がストライプ状にパターンされた、ITO透明電極付きガラス基板を用いた。この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。洗浄後の基板に、真空蒸着法で移動度を測定する有機材料の真空蒸着を行い、移動度測定素子を作製した。以下にその詳細を述べる。
【0112】
真空蒸着槽内を3.6×10−6Torrまで減圧した後、抵抗加熱方式により加熱した2−[3,5−ジ(1−ピレニル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンを3〜5Å/SECの蒸着レートで前記基板上に真空蒸着した。触針式膜厚測定計(DEKTAK)で測定した成膜後の膜厚1.8μmであった。次にこの基板上にITOストライプと直交するように、メタルマスクを配して、2mm幅のAl膜を100nmの膜厚で真空蒸着した。これによって、移動度測定用の2mm角の動作エリアが得られた。この基板を酸素・水分濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス内で封止した。封止は、エポキシ型紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス社製)を用いた。
【0113】
次に前記移動度素子の移動度測定法を説明する。電荷輸送材料の移動度測定は任意の方法で測定することが出来るが、今回は一般的な測定方法であるタイムオブフライト移動度測定法を用いた。移動度測定装置は、株式会社オプテル社製を用いた。測定は室温で行い、窒素レーザをITO透明電極側から照射した時に発生した電荷のAl電極への移動速度から移動度を求めた。
【0114】
その結果、2−[3,5−ジ(1−ピレニル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンの移動度は7.6×10−5cm/V・SECであった。この値は、特開2002−158091記載の電子輸送材料として一般的なヒドロキシキノリンアルミニウム錯体(Alq)の1×10−6cm/V・SECと比較して高いものであった。
試験例−2
試験例−1と同様の方法で、2−[3,5−ジ(9−フェナントリル)フェニル]−4,6−ジ−p−トリル−1,3,5−トリアジンの移動度の測定を行なった。移動度は2.4×10−5cm/V・SECであった。
試験例−3
試験例−1と同様の方法で、2−[3,5−ジ(1−ピレニル)フェニル]−4,6−ジ−p−トリル−1,3,5−トリアジンの移動度の測定を行なった。移動度は6.0×10−5cm/V・SECであった。
試験例−4
試験例−1と同様の方法で、2−[3,5−ジ(9−アントリル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンの移動度の測定を行なった。移動度は2.9×10−4cm/V・SECであった。
参考例
本発明である、トリアジン誘導体は、特開2008−280330号公報に記載されているトリアジン誘導体の融点及びTgと比較しても高い値となった。
【0115】
例えば、2−[4,4’’−ジ(2−ピリジル)−1,1’;3’,1’’−テルフェニル−5’−イル]−4,6−ジ−p−トリル−1,3,5−トリアジンの融点及びTgは以下の通りである。
【0116】
【化29】

【0117】
【表1】

実施の形態
1,3,5−トリアジンを構成成分とする有機電界発光素子の作製と性能評価
基板には、2mm幅の酸化インジウム−スズ(ITO)膜がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用いる。この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行う。洗浄後の基板に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、断面図を図1に示すような発光面積が4mmの有機電界発光素子を作製する。まず、真空蒸着槽内に前記ガラス基板を導入し、1.0×10−4Paまで減圧する。その後、図1の1で示す前記ガラス基板上に有機化合物層として、正孔注入層2、正孔輸送層3、発光層4及び電子輸送層5を順次成膜し、その後陰極層6を成膜する。正孔注入層2としては、昇華精製したフタロシアニン銅(II)を25nmの膜厚で真空蒸着する。正孔輸送層3としては、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPD)を45nmの膜厚で真空蒸着する。発光層4としては、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルエテン−1−イル)ジフェニル(DPVBi)と4,4’−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)フェニルエテン−1−イル]ビフェニル(DPAVBi)を99:1質量%の割合で40nmの膜厚で真空蒸着する。電子輸送層5としては、本発明の1,3,5−トリアジン化合物もしくは既存材料のトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq)を20nmの膜厚で真空蒸着する。なお、各有機材料は抵抗加熱方式により成膜し、加熱した化合物を0.3nm/秒〜0.5nm/秒の成膜速度で真空蒸着する。最後に、ITOストライプと直交するようにメタルマスクを配し、陰極層6を成膜する。陰極層6は、フッ化リチウムとアルミニウムをそれぞれ0.5nmと100nmの膜厚で真空蒸着し、2層構造とする。それぞれの膜厚は、触針式膜厚測定計(DEKTAK)で測定することができる。さらに、この素子を酸素及び水分濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス内で封止することができる。封止は、ガラス製の封止キャップと前記成膜基板エポキシ型紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス社製)を用いることができる。
【0118】
作製した有機電界発光素子に直流電流を印加し、TOPCON社製のLUMINANCE METER(BM−9)の輝度計を用いて発光特性を評価する。発光特性として、電流密度20mA/cmを流した時の電圧(V)、輝度(cd/m)、電流効率(cd/A)、電力効率(lm/W)を測定し、連続点灯時の輝度半減時間を測定することができる。
【0119】
本発明の化合物を用いれば、既存材料に比較して、低消費電力化、長寿命化が期待される。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、有機電界発光素子の構成成分として有用な多環芳香族基を有するトリアジン誘導体とその製造方法、及びそれを含有する有機電界発光素子に関する。
【符号の説明】
【0121】
1.ITO透明電極付きガラス基板
2.正孔注入層
3.正孔輸送層
4.発光層
5.電子輸送層
6.陰極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。)で示されるトリアジン誘導体。
【請求項2】
Ar及びArが、各々独立に置換されていてもよいフェニル基又は置換されていてもよいナフチル基である請求項1に記載のトリアジン誘導体。
【請求項3】
Ar及びArが、置換されていてもよいナフチル基、置換されていてもよいアントリル基、置換されていてもよいフェナントリル基又は置換されていてもよいピレニル基である請求項1又は2に記載のトリアジン誘導体。
【請求項4】
一般式(2a)
【化2】

(式中、Arは置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。Mは、ZnR、MgR、Sn(R、B(ORを表す。但し、R及びRは、各々独立に塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Rは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、Rは水素原子、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。また、2つのORは結合するホウ素原子と一体となって環を形成することができる。)で示される化合物と、一般式(3)
【化3】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。X及びXは、各々独立に塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、互いに同一又は相異なっていてもよい。)で示される化合物を、場合によっては塩基の存在下に、パラジウム触媒の存在下でカップリング反応させる、一般式(1a)
【化4】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Arは、置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。)で示されるトリアジン誘導体の製造方法。
【請求項5】
一般式(2a)
【化5】

(式中、Arは置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。Mは、ZnR、MgR、Sn(R、B(ORを表す。但し、R及びRは、各々独立に塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Rは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、Rは水素原子、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。また、2つのORは結合するホウ素原子と一体となって環を形成することができる。)で示される化合物と、一般式(3)
【化6】

(式中、Ar及びArは、は、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。X及びXは、各々独立に塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、互いに同一又は相異なっていてもよい。)で示される化合物を、場合によっては塩基の存在下に、パラジウム触媒存在下にカップリング反応させ、一般式(4)
【化7】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Arは置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。Xは、各々独立に塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、互いに同一又は相異なっていてもよい。)で示される化合物を得、次いで化合物(4)と一般式(2b)
【化8】

(式中、Arは置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。Mは、ZnR、MgR、Sn(R、B(ORを表す。但し、R及びRは、各々独立に塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Rは、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、Rは水素原子、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。又、2つのORは一体となって酸素原子及びホウ素原子を含んで環を形成することもできる。)で示される化合物を、場合によっては塩基の存在下に、パラジウム触媒の存在下にカップリング反応させる、一般式(1)
【化9】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。)で示されるトリアジン誘導体の製造方法。
【請求項6】
一般式(5)
【化10】

(式中、Arは置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で示される化合物と、一般式(6)
【化11】

(式中、Ar及びArは、は、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Rは水素原子、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(ORの2つのRは同一又は異なっていてもよい。又、2つのORは一体となって酸素原子及びホウ素原子を含んで環を形成することもできる。)で示される化合物を、塩基及びパラジウム触媒の存在下でカップリング反応させる、一般式(1a)
【化12】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Arは、置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。)で示されるトリアジン誘導体の製造方法。
【請求項7】
パラジウム触媒が、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム触媒である請求項4〜6のいずれかに記載のトリアジン誘導体の製造方法。
【請求項8】
第三級ホスフィンが、トリフェニルホスフィン又はトリ−tert−ブチルホスフィンである請求項7に記載のトリアジン誘導体の製造方法。
【請求項9】
一般式(1)
【化13】

(式中、Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar及びArは、各々独立に置換されていてもよい2〜4環の芳香族炭化水素基を表す。)で示されるトリアジン誘導体を構成成分とする有機電界発光素子。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−121934(P2011−121934A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183147(P2010−183147)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(000173762)公益財団法人相模中央化学研究所 (151)
【Fターム(参考)】