トリアセカヒセルロースフィルムの選択的アルカリ鹸化処理法

【課題】トリアセチルセルロース(TAC)フィルムの鹸化処理において、表面が高機能付与加工された面を苛性アルカリ浴に浸すことなく、他方の偏光子と接着するTACフィルム面側を選択的に苛性アルカリで鹸化処理する。
【解決手段】TACフィルム鹸化に必要濃度苛性アルカリ液に水溶性ポリマーを混じてTACフィルムの鹸化面にこの液をコートする。水溶性ポリマーの粘性によりアルカリ液を安定にTACフィルム上に保持させ、加熱乾燥時鹸化反応を行う。乾燥残渣を洗い落とし、苛性アルカリ液コート面を選択的にアルカリ鹸化処理を完結させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
この発明は、TACフィルムの片面を選択的にアルカリ性鹸化を可能にする法並びにそのアルカリ溶液組成物に関する。
【0002】
具体的には水溶性ポリマーを0.01%以上含有した苛性ソーダ(NaOH)又は苛性カリ(KOH)水溶液をTACフィルム表面に塗付した後塗付面を加熱乾燥して水分を除去した後、乾燥残渣を水洗除去し再度フィルムを乾燥してTACフィルムの片面だけを選択的に鹸化処理する方法である。
【TACアルカリ加水分解の目的】
【0003】
TACフィルムは液晶表示などに用いられる偏光フィルムを構成する主要材料の一つである。すなわち、TACフィルムは沃素などにより染色、延伸したポリビニルアルコール(PVA)フィルムを偏光子とし、主として両側から(稀に片側だけ)偏光子を保護する目的でラミネートする材料の90%以上を占める。ラミネートする際の接着剤の主剤としてはPVAの水溶液が用いられるがTACフィルムを偏光子である延伸PVAフィルムと接着するためにTACフィルムの表面を苛性アルカリ等によるケン化処理により−OCOCH3基の一部又は大部分を親水基である−OHに加水分解する必要がある。
【0004】
具体的にはアルカリ水溶液のTACフィルム接触角を40°以下、好ましくは20°以下になるようTACフィルム表面をアルカリ性鹸化により親水性に処理する必要がある。
【これまでのTACアルカリ鹸化処理法】
【0005】
これまでのTACフィルム鹸化処理法はNaOH又はKOH等の苛性アルカリの1N〜4Nの水溶液(30℃〜60℃)中にTACフィルムを数分間潜らせた後、水洗して遊離アルカリ分を除去後、必要に応じ乾燥する方法が用いられている。
【従来型ケン化処理法の問題点】
【0006】
偏光フィルムを構成するTACフィルムは主として表示品質を向上させる目的で、少なくとも偏光子をラミネートする両側の2枚のTACフィルムのうちの少なくとも片方のTACフィルムの偏光子と接着しない面(表面)を樹脂類及びその他の薬剤をバインダーと共に塗付加工する場合が多い。
具体的には、ハード(HC)コート、アンチグレア(AG)コート、アンチリフレクテヴ(AR)コート、帯電防止(AS)コート、視野角改善(WV)のためのフィルム表面加工などがそれに当る(以後、これ等を機能付与加工と総称する)。
【0007】
これ等の機能付与加工はTAC表面との密着性を保つ意味から上述の苛性アルカリによる鹸化処理前に行うのが一般的である。しかし、従来のTACフィルム表面をアルカリ鹸化処理条件では機能付与加工面がダメージを受ける場合が少なくなく、TACフィルムと偏光子との接着面だけを選択的にケン化処理することが望まれている。
【0008】
TACフィルムの未加工面を選択的にアルカリ鹸化処理する方法として機能付与加工面を酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリエステル等のフィルムを仮接着して保護し、アルカリ水溶液が機能付与加工面に直接触れない方法が既に提案されている。しかし、本法は材料コスト及び加工コストアップの要因になっている他、アルカリ鹸化条件によっては保護フィルムと機能付与加工面の間の剥離や剥離による2次的フィルム表面損傷の原因になる等、新たな品質問題発生の要因になっている。
【0009】
又、従来法の苛性アルカリ浴槽にTACフィルムを継続的に潜らせる法では苛性アルカリ濃度が暫減し、且つTACフィルム中の可塑剤が蓄積して加水分解能が暫時低下して来る為、TACフィルム表面の加水分解程度が変化するため、TACフィルムと偏光子の接着強度バラツキの原因になる。その為アルカリ浴初期濃度は3N前後の非常に高濃度とし、且つ20〜30万mのTACフィルム処理ごとにアルカリ浴液全体を新しく入替える必要があった。
【本発明の詳細と利点】
【0010】
本発明の要点は苛性アルカリ水に強アルカリに安定な水溶性ポリマーを加え、鹸化処理が必要なTACフィルム表面に必要アルカリ量を保持させ、加熱乾燥しTACフィルム表面の加水分解反応を促進させた後乾燥残渣を水で洗い落とし、水切りし乾燥することによりTACフィルムの片面だけを選択的に鹸化するという目的を達成するものである。従来のフィルム全体を加温苛性液に浸染する法に勝るとも劣らない生産性を維持しつつ、且つ生産コストの大幅な削減を可能に出来た。
【水溶性ポリマー】
【0011】
水溶性ポリマーとしてはポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ヒドロキシエチルセルロース、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合物、ポリアクリル酸及びその塩、ポリアクリル酸アマイドなどが挙げられる。
加熱処理後の易洗浄性、材料コスト、廃液処理事情及びコストにより適切な増粘性水溶性ポリマーが選択される。
【0012】
〔0010〕に記載する水溶性ポリマーのうち、加工条件並びに効果からポリアクリル酸ソーダ又はそのエステル強重合物が最も有効である。これ等の重合度は特に規定されないが平均分子量で10000以上使用可能であるが望ましくは増粘剤を目的として市販されている平均重合度7000〜10000のものが効果的で0.2%〜2%の添加で目的が効果的に達成できる。
【苛性アルカリ】
【0013】
本法に用いる苛性アルカリとしてはNaOHおよびKOHが挙げられる。
意図する鹸化処理程度並びにそれを達成する薬剤おあよび加工条件よって決められるが、生産性、ケン化TACフィルムの品質維持、塗付加工に好ましい粘度等から苛性アルカリ濃度は5〜20%が望ましい。
【0014】
苛性アルカリ液をTACフィルムにコートする方法、および塗付液の量は任意であるが、生産性と安定した表面加水分解を得るため塗付厚20〜100μが望ましい。
【0015】
アルカリ液塗付後加熱処理熱源の種類は問わないが、機能付与加工面への影響、フィルムカール等を考慮して、熱源が限定される場合がある。
【0015】
塗付厚を均一に保ち塗り残りを起さないようにレベリング剤を使用することは有効である。レベリング剤の種類としてはアニオン系、ノニオン系であればよい。
【発明の効果】
【0016】
TACフィルムの鹸化処理必要な表面だけを従来の両面を浸潜させる方より常に一定した鹸化度合いで処理可能。
従来法より材料費で約1/2にコスト低減が可能と試算された。
処理時間が早くなり偏光フィルムラインへのインライン化が容易と推定される。
以下、実施例により本発明の詳細を説明する。
【実施例1】
【0017】
アクリル共重合体増粘剤ビニゾール1029(大同化成工業社製、メタアクリル酸を主体とした共重合物で固形成分約30%エマルジョン)10重量部を秤取し、攪拌下81.6部の水を加える。次いでフレーク状固体苛性カリ8.4重量部を少量づつ加え固形分が完全に溶解するまで攪拌する。粘度31(mPa・s/25℃)のKOH溶液が得られる。
このKOH水溶液を市販のスポンジ状ペイント塗りロールでTAC巻きロールを巻出しながら糊状KOH水溶液をTACフィルムの片面に塗った。
糊の厚さは平均約0.4mmであった。フィルムは引き続いて温度80℃にセットされた乾燥箱に導き乾燥した。乾燥箱中滞在距離は2m滞在時間は60秒である。
乾燥箱を出てきたフィルムはほぼ乾燥状態で処理フィルムの表面には乾燥残渣が付着している。これを40℃イオン交換水で洗い落とし引き続いて水きりロールで表面に付着した水を搾り取った。更に60℃乾燥箱に導き乾燥し処理フィルムを巻き取った。
こうして得られてTACフィルムの表面に水滴を落としフィルムとの接触角度を測定し同じフィルムの未処理側のそれと比較した。(表1)
尚、延伸偏光子との本発明の片面アルカリケン化TACフィルムの処理側とのラミネートを試みた。使用した接着剤は3.5%PVA(株式会社クラレ製、#117)水溶液である。初期接着を含め何ら問題は見られなかった。
【実施例2】
【0018】
ポリアクリル酸ソーダの市販品ハイモロックSS190(ハイモ株式会社製、推定分子量12万)0.1重量部を89.9重両部の水に溶解した。完溶後、10部のフレーク状苛性カリをこの溶液に投入溶解しアルカリ鹸化処理液を調製した。粘度は4.75 mPa.s/25℃であった。本液をグラビアコータを用い厚さ80μmのTACフィルムの片面に20±1μ厚に塗付し、60℃乾燥続いて90℃乾燥炉に各々60秒乾燥した。続いて40℃温浴に60秒潜らせた後コート側に付着する付着残渣を水洗シャワーで洗い落とした。水切りロールで表面付着水を除去し80℃で乾燥した後片面処理TACフィルムをロールに巻き取った。処理側TACフィルム接触角測定し(表1)た。2枚の本処理TACの処理面で1枚の延伸PVAフィルムを両側から挟む形でラミネートした。
接着剤にPVA#117(株式会社クラレ製、加水分解度99%以上)4%水溶液を用いた。80℃で4分乾燥し、総厚約190μmのTACを保護フィルムとする延伸PVAラミネートが得られた。本ラミネート品の60℃温水試験等〔実施例1〕と同様偏光フィルムに要求される接着強度試験を満足するものであった。
【実施例3】
【0019】
株式会社クラレ社製ポリビニルアルコールPVA117を2重両部を91部の温水に溶解した。これに固形NaOHを7部攪拌下投入溶解した。更にノニオン性レベリング剤を0.1部を加え均一に攪拌した。以下、実施例2と同様にグラビアコーターを用いコートし片面アルカリ鹸化フィルムを作成した。処理フィルムの接触角度を測定し同様にアルカリ鹸化が効率的に促進することを確認した(表1)。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】TACフィルムの片面を選択的に鹸化処理する製造装置である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリマーを0.01%以上を含有しる苛性アルカリ水溶液をトリアセチルセルロース(TAC)フィルムの片面に塗付し、塗付面を加熱乾燥し大部分の水分を除去後、塗付面の固形残渣を水洗除去してTACフィルムの片面だけを選択的にアルカリ鹸化する法。
【請求項2】
請求項1において苛性ソーダ又は苛性カリ水溶液濃度が0.03N〜6N範囲であるアルカリ鹸化処理液。

【図1】
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【公開番号】特開2008−43932(P2008−43932A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242123(P2006−242123)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(598116440)
【出願人】(501212575)西工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】