説明

トリアセチルセルロース積層体、これを用いた光学フィルム及び光学部材

【課題】トリアセチルセルロース基材と偏光板とを粘着層を介して積層し、偏光板の表面にさらにガラス基材を積層した際に、高温多湿下であっても、過酸化物を使用することなく、トリアセチルセルロース基材の収縮応力を緩和でき、TAC基材の粘着フィルムが被着体から浮くことを防止できる積層体を提供する。
【解決手段】本発明の積層体は、トリアセチルセルロース基材11上に粘着層12が形成され、この粘着層12は、アクリル系粘着剤と、イソシアネート系硬化剤と、アクリル共重合体とを含有し、粘着層12の60℃における損失正接と20℃における損失正接との比である、tanδ(60℃)/tanδ(20℃)は1.1以上1.3未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ等の画像表示装置に用いる光学部材に関し、さらに詳しくは、トリアセチルセルロース(以下、「TAC」ともいう。)基材と被着体とを粘着層を介して積層したときに、高温多湿下であっても、TAC基材の粘着フィルムが被着体から浮くことを防止できる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の画像表示装置を構成する光学フィルムとして、TACフィルムが用いられている。TACは偏光板を保護する等の役割を有しており、必要に応じてその表面に耐擦過性付与のためのハードコート層や、耐擦傷性はそのままに反射防止機能により液晶画面の見易さの向上に寄与する反射防止層等が形成されるタイプもある。
【0003】
TACフィルムは粘着層を介して偏光板やガラス基材と積層され、光学部材として使用される。しかし、一般にTACは湿熱条件で収縮する性質を有するため、高温多湿下では、TAC基材の粘着フィルムが被着体から浮くという問題が生じてしまう。
【0004】
この問題を解決するために、例えば特許文献1には、アクリル系粘着剤とイソシアネート系硬化剤の他に、過酸化物を含有させることによって、過酸化物による熱分解反応を併用し、充分な応力緩和性を維持することが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、粘着剤組成物からなる層を架橋して得られる粘着層の、23℃における貯蔵弾性率(G’)が32000〜70000Pa及び80℃における貯蔵弾性率(G’)が20000〜45000Paになるように、粘着剤組成物からなる層を加熱処理する工程、を含む光学部材用粘着層の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−183022号公報
【特許文献2】特開2006−316181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2の粘着剤は、その実施例から明らかなように、いずれも過酸化物を含有させることによって、過酸化物による熱分解反応を併用し、充分な応力緩和性を維持するものである。
【0008】
しかしながら、硬化剤以外の第3成分として過酸化物を含有させると、残留した過酸化物によって、その後経時で架橋反応が進行し粘着物性が変化してしまうという問題や、残留した過酸化物が光や熱で分解し、ラジカルを発生するため粘着剤が経時劣化してしまうという問題が生じる。このため、過酸化物を含有させずに浮きや剥れを抑制する方法が望まれていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、TAC基材と被着体とを粘着層を介して積層したときに、高温多湿下であっても、TAC基材の粘着フィルムが被着体から浮くことを防止できる積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねたところ、アクリル系粘着剤と、イソシアネート系硬化剤と、アクリル共重合体とを組み合わせることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0011】
(1)本発明は、トリアセチルセルロース基材上に粘着層が形成された積層体であって、前記粘着層は、アクリル系粘着剤と、イソシアネート系硬化剤と、アクリル共重合体とを含有し、前記粘着層の60℃における損失正接と20℃における損失正接との比である、tanδ(60℃)/tanδ(20℃)が1.1以上1.3未満である積層体である。
【0012】
(2)また、本発明は、前記アクリル共重合体がメタクリル酸エステル重合体ブロックとアクリル酸エステル重合体ブロックとからなる、(1)記載の積層体である。
【0013】
(3)また、本発明は、前記アクリル共重合体がメタクリル酸メチル重合体ブロック(M)とアクリル酸ブチル重合体ブロック(A)とからなる重量平均分子量10,000〜300,000のM−A−M型トリブロック共重合体である、(1)記載の積層体である。
【0014】
(4)また、本発明は、前記アクリル系粘着剤の重量平均分子量が80万以上200万以下である、(1)から(3)のいずれか記載の積層体である。
【0015】
(5)また、本発明は、前記イソシアネート系硬化剤が前記アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対して固形分換算で0.2質量部以上1.0質量部以下である、(1)から(4)のいずれか記載の積層体である。
【0016】
(6)また、本発明は、前記粘着層の厚さが5μm以上100μm以下である、(1)から(5)のいずれか記載の積層体である。
【0017】
(7)また、本発明は、前記粘着層がアジピン酸エステル系可塑剤又はフタル酸エステル系可塑剤をさらに含有する、(1)から(6)のいずれか記載の積層体である。
【0018】
(8)また、本発明は、(1)から(7)のいずれか記載の積層体における前記トリアセチルセルロース基材の前記粘着層と反対側の面に、ハードコート層及び反射防止層が形成された光学フィルムである。
【0019】
(9)また、本発明は、(8)記載の光学フィルムにおける前記粘着層を介して前記トリアセチルセルロース基材と偏光板とが積層されている光学部材である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の積層体によれば、TAC基材と被着体とを粘着層を介して積層した際に、高温多湿下であっても、過酸化物を使用することなく、TAC基材の収縮応力を緩和でき、TAC基材の粘着フィルムが被着体から浮くことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る光学部材の構成を模式的に示す光学部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0023】
<トリアセチルセルロース積層体>
本発明のトリアセチルセルロース積層体は、トリアセチルセルロース基材上に粘着層が形成され、この粘着層は、主剤としてのアクリル系粘着剤と、イソシアネート系硬化剤と、アクリル共重合体とを必須成分とする。以下、これらの構成要素について説明する。
【0024】
[トリアセチルセルロース基材]
トリアセチルセルロース(TAC)は、不燃性、透明性、表面外観、電気絶縁性に優れる点において光学フィルムの基材として好ましい。TACは湿熱環境下において収縮する性質があるが、粘着層が一定の厚みと弾性を有する場合、TAC基材の収縮応力を緩和して、TAC基材の粘着フィルムが被着体から浮くことを防止できる。
【0025】
TAC基材の厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができる。通常50μm以上150μm以下であるが、好ましくは50μm以上100μm以下である。上記範囲より薄いと、機械的強度が不十分であり、また湿熱条件下における反りによって破断を生じる場合があり、上記範囲より厚いと、過剰性能でコスト高になる場合がある。
【0026】
TAC基材の形成方法は、特に限定されず、例えば、溶液流延法、溶融押出法、カレンダー法等の従来公知の製膜方法を用いることができる。また、上記方法によりあらかじめフィルム状に製膜された市販の基材を使用してもよい。
【0027】
なお、基材には、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理等の公知の易接着処理を行ってもよい。
【0028】
[アクリル系粘着剤]
続いて、アクリル系粘着剤について説明する。好ましいアクリル系粘着剤としては、例えば、アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させたアクリル酸エステル共重合体が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、アクリル酸グリシジル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明では、上記アクリル酸エステルの中でも、アクリル酸−n−ブチル及びアクリル酸−2−エチルヘキシルが、耐熱性、耐湿熱性、耐久性、透明性に優れる点において好ましい。他の単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸ヒドロキシルエチル、メタクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−tert−ブチルアミノエチル、メタクリル酸−n−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明では、上記他の単量体の中でも、(メタ)アクリル酸−n−ブチルが好ましい。
【0029】
アクリル系粘着剤として用いられるアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、80万以上200万以下の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量が80万未満であると、粘着層が軟らかくなり、TAC基材の収縮量には十分追従するが、高温多湿の長期条件下で繰り返される内部応力に耐えることができず、重量平均分子量が200万を超えると粘着層が硬くなり、TAC基材の収縮量と粘着層の変化量の差が大きくなるため収縮応力が生じ、いずれの場合もTAC基材の収縮応力を適度に緩和することができないので好ましくない。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の値である。
【0030】
なお、上記アクリル系粘着剤の市販品としては、例えば、OC3949(サイデン化学社製)等を好適に用いることができる。ここで、OC3949は、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチルからなるアクリル系粘着剤である。
【0031】
[硬化剤]
上記粘着層において、硬化剤は、TAC基材への密着性が良好であるという理由から、イソシアネート系硬化剤を用いることが好ましい。イソシアネート系硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物の3量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られるイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、該ウレタンプレポリマーの3量体等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,5−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4′−ジイソシアネート、リジンイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
上記粘着層における上記イソシアネート系硬化剤の含有量は、アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対して固形分換算で0.2質量部以上1.0質量部以下であることが好ましい。配合量が0.2質量部よりも少なくなると、高温での弾性率が低下するため十分な応力緩和性が発現されにくく、耐久性が得られない場合がある点で好ましくない。一方で、含有量が1.0質量部よりも多くなると、弾性率が高くなり、高温での被着体収縮に追従しにくくなる上に粘着力が低下するため、浮きや剥れが発生しやすくなる場合がある点で好ましくない。上記範囲であれば、適度な弾性率を有する粘着層を形成することができ、TAC基材の収縮応力を緩和して、高温多湿下であってもTAC基材の粘着フィルムが被着体から浮くことを防止できる。
【0033】
[アクリル共重合体]
上記粘着層において、アクリル共重合体は、高温でのTAC基材への密着性が向上することや、粘着層の凝集性が向上するため、高温での弾性率が低下しにくいことから、トリブロック共重合体系硬化剤を用いることが好ましい。トリブロック共重合体は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)とアクリル酸ブチル重合体ブロック(A)とからなり、アクリル酸ブチル重合体ブロック(A)の占める割合は70質量%以上であり、トリブロック共重合体の重量平均分子量は10,000〜300,000である。
【0034】
上記の重量平均分子量とアクリル酸ブチル重合体ブロック(A)の占める割合とを満たすトリブロック共重合体としては、特に限定されないが、具体的には、例えばLA2330、LA2140、LA4285(クラレ社製)、M51、M52、M53、M52N、M22N(アルケマ社製)の商品名で市販されているものを好適に使用することができる。
【0035】
アクリル共重合体の配合量は、アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対して固形分換算で0.1〜10質量部であることが好ましく、1〜3質量部であることがより好ましい。配合量が0.1質量部よりも少なくなると、高温での弾性率が低下して十分な応力緩和性が発現されにくく、耐久性が得られない場合がある点で好ましくない。一方で、含有量が10質量部よりも多くなると、アクリル系粘着剤との相溶性が悪化し、透明性が低下する場合がある点で好ましくない。上記範囲であれば、高温多湿の条件下であってもTAC基材の粘着フィルムが被着体から浮くことを防止できる。
【0036】
[可塑剤]
上記アクリル共重合体に加え、可塑剤を併用することがより好適である。可塑剤を併用することで、高温多湿の条件下であってもTAC基材の粘着フィルムが被着体から浮くことをよりいっそう防止できる積層体を提供できる。粘着層に含まれる可塑剤としては、フタル酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物などが挙げられる。
【0037】
粘着層に含まれるフタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ヘプチルノニル(HNP)、フタル酸ジ−n−オクチル(DNOP)、フタル酸ジ−i−オクチル(DCapP)、フタル酸ジイソノニル(DINP),フタル酸ジ−i−デシル(DIDP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)、フタル酸ブチルベンジル(BDP)、エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)、ブチルフタリルブチルグリコレート(BPBG)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用してもよい。
【0038】
また、粘着剤に含まれるアジピン酸エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アジピン酸ジメチル(DMA)、アジピン酸ジエチル(DEA)、アジピン酸ジイソプロピル(DIPA)、アジピン酸ジプロピル(DPA)、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジブチル(DBA)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用してもよい。
【0039】
なお、本発明では、環境規制物質の観点から、フタル酸エステル系可塑剤よりも、アジピン酸エステル系可塑剤を使用した方が好ましい。また、アジピン酸エステル系可塑剤の中でも、汎用性や樹脂への相溶性の観点から、アジピン酸ジオクチル(DOA)を用いることが好ましい。
【0040】
可塑剤の配合量は、アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対して固形分換算で0.1〜10質量部であることが好ましく、1〜7質量部であることがより好ましい。配合量が0.1質量部よりも少なくなると、得られる粘着層の弾性率が低下しないため、伸縮する被着体への追従性が不足し、被着体からの浮きや剥がれが発生し得る点で好ましくない。一方で、含有量が10質量部よりも多くなると、粘着力が大幅に低下し、浮きや剥れが発生しやすくなる点で好ましくない。上記範囲であれば、高温多湿下であってもTAC基材の粘着フィルムが被着体から浮くことを防止できる。
【0041】
[金属キレート剤]
上記粘着層において、金属キレート剤を用いることで、粘着剤を基材フィルムに塗布後、粘着剤に含まれる溶剤を揮発させる乾燥の際に、初期段階(被着体を貼り合わせる前)の架橋が行われる。金属キレート剤としては、例えば、チタンアセチルアセトネート、チタンオクチルグリコレート、チタントリエタノールアミネート、テトラ−n−ブチルチタネート、アルミニウムジイソプロポキシドモノエチルアセテート、アルミニウム ジ−n−ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウム ジ−i−ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウム ジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウム ジ−sec−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウム トリス(アセチルアセトナート)、アルミニウム トリス(エチルアセトアセトナート)、アルミニウム モノ−アセチルアセトナートビス(エチルアセトアセトナート)、ジルコニウムアセチルアセトネート及びアセチルアセトンジルコニウムブチレート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いられる。
【0042】
上記粘着層における上記金属キレート剤の含有量は、アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対して固形分換算で0.01〜1質量部であることが好ましく、0.05〜0.3質量部であることがより好ましい。配合量が0.01質量部よりも少なくなると、高温での弾性率が低下して十分な応力緩和性が発現されにくく、耐久性が得られない場合がある点で好ましくない。一方で、含有量が1質量部よりも多くなると、粘着層や被着体中のイオン不純物と錯体を形成し黄変するため、透明性が低下する場合がある点で好ましくない。
【0043】
[他の添加剤]
その他の添加剤は、粘着層に対して、耐候性、耐光性、耐熱性、耐湿性、難燃性等を付与するために必要に応じて添加される。また、添加剤は、コーティング液の安定性、塗工性、乾燥性、アンチブロッキング性等を向上させるためにも必要に応じて添加される。その他の添加剤としては、特に、上記の粘着剤、硬化剤、アクリル共重合体、可塑剤及び金属キレート剤に加えて、シランカップリング剤を併用、添加することにより、TAC基材と被接着物との接着性をさらに高めることができる。
【0044】
シランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−フェニルアミノフロピルトリメトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド系シランカップリング剤;ビニルエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のビニル系シランカップリング剤;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のメタクリレート系シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、等のエポキシ系シランカップリング剤;γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤;ポリエトキシジメチルシロキサン、ポリエトキシジメチルシロキサン等のポリマー型シランカップリング剤;N−(N−ベンジル−β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等のカチオン型シランカップリング剤等が挙げられる。
【0045】
また、分散剤、消泡剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤等を添加してもよい。これらは、公知のものを特に制限なく使用することができ、コーティング液や粘着層に求められる性能に応じて、適宜選択される。
【0046】
[粘着層]
粘着層の厚みは、通常、5μm以上100μm以下であるが、好ましくは15μm以上40μm以下である。厚みが5μm未満であると、TACの収縮に粘着層の大部分が追従してしまい、TAC基材の収縮応力を緩和することができない。100μmを超えると、応力緩和特性について問題はないが、光線透過率等の光学特性に悪影響を及ぼす場合があり好ましくない。
【0047】
粘着層の粘性については、上記粘着層の60℃における損失正接と20℃における損失正接との比である、tanδ(60℃)/tanδ(20℃)が1.1以上1.3未満であることが好ましく、上記粘着層の80℃における損失正接と20℃における損失正接との比である、tanδ(80℃)/tanδ(20℃)が1.1以上1.3未満であることがより好ましい。tanδは、粘着層の粘性を反映し、応力緩和挙動(力が加わった場合の変形の遅れ)を示すパラメーターの1つである。tanδは、例えば、測定装置として、ティー・エイ・インスツルメント社製の固体粘弾性アナライザーRSA−IIIを用い、JIS K7244−1に準拠した動的粘弾性測定法(アタッチメントモード:圧縮モード,周波数:1Hz,温度:−50〜150℃、昇温温度:5℃/分)にて測定することができる。本発明は、高温多湿下であっても、TAC基材の粘着フィルムが被着体から浮かないようにすること、さらにはフィルムの端部が被着体から僅かにでも剥がれないようにすることを目的とするため、高温下(60℃)における損失正接tanδと室温(20℃)における損失正接tanδとの比等を指標とした。tanδの比が1.1未満であると、TAC基材の変形に対する粘着剤層の緩和挙動が速すぎるため、高温多湿下においてTAC基材の粘着フィルムが被着体から浮く可能性がある点で好ましくない。tanδの比が1.3以上であると、TAC基材の変形に対する粘着剤層の緩和挙動が遅すぎるため、この場合も高温多湿下においてTAC基材の粘着フィルムが被着体から浮く可能性がある点で好ましくない。
【0048】
これらに加え、tanδ(80℃)がtanδ(60℃)よりも大きいと、さらに好ましい。tanδ(80℃)がtanδ(60℃)よりも小さいと、高温での粘着剤の流動性が増加し、TAC基材の変形にかかる応力を緩和できないため、好ましくない。
【0049】
[TAC積層体の製造方法]
本発明のTAC積層体の製造方法は、上記粘着剤組成物の調製以外の点においては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。一例として、剥離フィルム上に、上記粘着剤組成物をアプリケータ等により全面塗工、乾燥後、粘着層が形成された面に、TAC基材をラミネートすることにより製造することができる。
【0050】
<光学フィルム>
上記TAC積層体におけるTAC基材の粘着層と反対側の面に、ハードコート層、反射防止層等をさらに形成することにより、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ、ELディスプレイ、電界放出ディスプレイ等の各種画像表示装置において、反射防止、表面の保護、防眩等の目的で使用される光学フィルムとして好適に用いることができる。ハードコート層はアクリル系の紫外線硬化型樹脂による硬化皮膜をTAC基材の表面に付加する方式等にて形成することができる。反射防止層はシリカ等の微粒子の添付により形成することができる。
【0051】
<光学部材>
図1は、本発明の光学部材1の構成の一例を示す。本発明の光学部材1は、TAC基材11の一方の面では、粘着層12を介してTAC基材11と偏光板13とが貼着されるとともに第2の粘着層14を介して偏光板13とガラス基材15とが貼着されている。また、TAC基材11の他方の面では、ハードコート層16及び反射防止層17が順次積層されている。本発明のTAC用粘着剤組成物からなる粘着層は、図1の粘着層12に相当する。この粘着層12を介してTAC基材11と偏光板13とを貼着する方法としては、特に限定されないが、通常、圧着方式が用いられる。なお、ガラス基材15は近年0.5mm程度まで薄型化の傾向があり、本発明の粘着層12は、ガラス基材15の厚さが0.1mmから0.7mmの場合に好適に用いられる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
<実施例1>
アクリル系粘着剤(商品名「OC3949」,重量平均分子量:120万,固形分:19.5%,サイデン化学社製)100質量部と、イソシアネート系硬化剤(商品名「K−130」,固形分:80%,サイデン化学社製)0.05質量部と、シランカップリング剤(商品名「S−1」,固形分:6.3%,サイデン化学社製)1質量部と、アルミニウムキレート剤(商品名「M2」,固形分:5%,サイデン化学社製)0.46質量部と、アクリルコポリマー(商品名「LA2330」,固形分:100%,メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)とアクリル酸ブチル重合体ブロック(A)とからなる重量平均分子量160,000のM−A−M型トリブロック共重合体,クラレ社製)をトルエンにて溶解し、固形分が40%となるように調整したアクリルコポリマー溶液1.22質量部と、アジピン酸エステル系可塑剤(商品名「DOA」,アジピン酸ジオクチル,固形分:100%,ジェイプラス社製)0.488質量部とを、トルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(商品名:KT−11,質量費1:1、DICグラフィクス社製)25質量部に溶解させて粘着剤組成物を得た。
【0056】
この粘着剤組成物を用いて実施例1の積層体を作製した。積層体は、TACを基材とした市販の光学フィルムであるAR5.5(Sony Chemical & Information Device)を用いて作製した。AR5.5の構成は、図1に示した光学部材1と同様、TAC基材11の一方の面にハードコート層16、反射防止層17を順次積層したものである。上記粘着剤組成物を、アプリケータを用いて剥離フィルムであるPETフィルム(東レフィルム加工社製セラピールBX9A(RX)PET38μm)に92℃2分の乾燥条件にて乾燥後の粘着層膜厚が25μmとなるように塗布し、この剥離フィルムの粘着層が形成された面に、上記AR5.5の反射防止層17が形成されている面とは反対側の面をラミネートし、実施例1の積層体を作製した。反射防止層の厚さは0.1μm、ハードコート層の厚さは10μm、TAC基材の厚さは80μmである。
【0057】
また、実施例1の積層体を用いて実施例1の光学部材を作製した。光学部材の作製にあたっては、上記粘着層とは異なる第2の粘着層が表面に形成された偏光板(品名「F1205DU」,日東電工社製」)と、ガラス基材(品名「ゴリラガラス#1737」,厚み:0.7mm,コーニング社製」)とを用いた。実施例1の積層体が有する面のうち、上記粘着層が形成されている面を、偏光板が有する面のうち、上記第2の粘着層が形成されている面とは反対側の面にラミネートした。続いて、偏光板の上記第2の粘着層が形成されている面をガラス基材にラミネートした。これによって、実施例1の光学部材を作製した。
【0058】
<実施例2>
上記アジピン酸エステル系可塑剤の量を0.975質量部にしたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例2の積層体及び光学部材を得た。
【0059】
<実施例3>
上記アジピン酸エステル系可塑剤の量を0.293質量部にしたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例3の積層体及び光学部材を得た。
【0060】
<実施例4>
上記イソシアネート系硬化剤の量を0.1質量部にしたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例2の積層体及び光学部材を得た。
【0061】
<実施例5>
上記イソシアネート系硬化剤の量を0.1質量部にしたこと、及び上記アジピン酸エステル系可塑剤の代わりにフタル酸エステル系可塑剤(商品名「DOP」,フタル酸ビス(2−エチルヘキシル),固形分:100%,ジェイプラス社製)0.975質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例5の積層体及び光学部材を得た。
【0062】
<実施例6>
上記イソシアネート系硬化剤の量を0.2質量部にしたこと、及び上記アジピン酸エステル系可塑剤の代わりに上記フタル酸エステル系可塑剤0.975質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例6の積層体及び光学部材を得た。
【0063】
<実施例7>
上記イソシアネート系硬化剤の量を0.2質量部にし、上記アルミニウムキレート剤及び上記アジピン酸エステル系可塑剤を加えなかったこと以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例7の積層体及び光学部材を得た。
【0064】
<実施例8>
上記イソシアネート系硬化剤の量を0.2質量部にし、上記アルミニウムキレート剤を加えなかったこと、及び上記アジピン酸エステル系可塑剤の代わりに上記フタル酸エステル系可塑剤0.975質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例8の積層体及び光学部材を得た。
【0065】
<実施例9>
上記イソシアネート系硬化剤の量を0.2質量部にし、上記アジピン酸エステル系可塑剤を加えなかったこと以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例9の積層体及び光学部材を得た。
【0066】
<比較例1>
上記イソシアネート系硬化剤の量を0.2質量部にし、上記アクリルコポリマー及び上記アジピン酸エステル系可塑剤を加えなかったこと以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例1の積層体及び光学部材を得た。
【0067】
<比較例2>
上記イソシアネート系硬化剤の量を0.2質量部にし、上記アルミニウムキレート剤及び上記アクリルコポリマーを加えなかったこと、及び上記アジピン酸エステル系可塑剤の代わりに上記フタル酸エステル系可塑剤0.975質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例2の積層体及び光学部材を得た。
【0068】
<比較例3>
上記イソシアネート系硬化剤の量を0.2質量部にし、上記アクリルコポリマーを加えなかったこと、及び上記アジピン酸エステル系可塑剤の代わりに上記フタル酸エステル系可塑剤0.975質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例3の積層体及び光学部材を得た。
【0069】
<比較例4>
上記アルミニウムキレート剤及び上記アジピン酸エステル系可塑剤を溶解させなかったこと以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例4の積層体及び光学部材を得た。
【0070】
<比較例5>
上記イソシアネート系硬化剤の量を0.3質量部にしたこと、及び上記アジピン酸エステル系可塑剤の代わりに上記フタル酸エステル系可塑剤0.975質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例5の積層体及び光学部材を得た。
【0071】
<比較例6>
上記アクリル系粘着剤の代わりにアクリル系粘着剤(商品名「EG−655」,重量平均分子量:100万,固形分:23.5%,トーヨーケム社製)100質量部を用い、上記イソシアネート系硬化剤の代わりにイソシアネート系硬化剤(商品名「BXX5627」,固形分:50%,トーヨーケム社製)0.02質量部を用い、上記シランカップリング剤、上記アルミニウムキレート剤、上記アクリルコポリマー及び上記アジピン酸エステル系可塑剤を加えなかったこと以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例6の積層体及び光学部材を得た。
【0072】
<比較例7>
上記アクリル系粘着剤の代わりにアクリル系粘着剤(商品名「SK1811L」,重量平均分子量:60万,固形分:23%,綜研化学社製)100質量部を用い、上記イソシアネート系硬化剤の代わりにイソシアネート系硬化剤(商品名「TD−75」,固形分:75%,綜研化学社製)0.4質量部を用い、上記シランカップリング剤の代わりにシランカップリング剤(商品名「A−50」,固形分:50%,綜研化学社製)0.4質量部を用い、上記アルミニウムキレート剤、上記アクリルコポリマー及び上記アジピン酸エステル系可塑剤を加えなかったこと以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例7の積層体及び光学部材を得た。
【0073】
<比較例8>
上記アクリル系粘着剤の代わりにアクリル系粘着剤(商品名「SK2403」,重量平均分子量:50万,固形分:29.3%,綜研化学社製)100質量部を用い、上記イソシアネート系硬化剤の代わりにイソシアネート系硬化剤(商品名「L−45」,固形分:45%,綜研化学社製)7.7質量部を用い、上記シランカップリング剤、上記アルミニウムキレート剤、上記アクリルコポリマー及び上記アジピン酸エステル系可塑剤を加えなかったこと以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例8の積層体及び光学部材を得た。
【0074】
<比較例9>
上記アクリル系粘着剤の代わりにアクリル系粘着剤(商品名「SK2403」,重量平均分子量:50万,固形分:29.3%,綜研化学社製)100質量部を用い、上記イソシアネート系硬化剤の代わりにイソシアネート系硬化剤(商品名「L−45」,固形分:45%,綜研化学社製)7.7質量部を用い、上記アジピン酸エステル系可塑剤の代わりにフタル酸エステル系可塑剤(商品名「DINP」,フタル酸ジイソノニル),固形分:100%,ジェイプラス社製)2.93質量部を用い、上記シランカップリング剤、上記アルミニウムキレート剤及び上記アクリルコポリマーを加えなかったこと以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例9の積層体及び光学部材を得た。
【0075】
<応力緩和特性の検討>
以下の試験を行うことによって、本発明のTAC積層体の応力緩和特性について、その粘着層の粘弾性の面から検証した。
【0076】
各実施例・比較例の積層体を用いて、各実施例・比較例の粘着層について、室温(20℃)のときの損失正接tanδと、第1の高温状態(60℃)のときの損失正接tanδと、第2の高温状態(80℃)のときの損失正接tanδとを測定した。そして、(I)第1の高温状態でのtanδの室温状態でのtanδに対する比tanδ(60℃)/tanδ(20℃)と、(II)第2の高温状態でのtanδの室温状態でのtanδに対する比tanδ(80℃)/tanδ(20℃)と、(III)第2の高温状態でのtanδと第1の高温状態でのtanδとの差tanδ(80℃)−tanδ(60℃)とを算出した。損失正接tanδの測定はティー・エイ・インスツルメント社製の固体粘弾性アナライザーRSA−IIIを用い、JIS K7244−1に準拠した動的粘弾性測定法(アタッチメントモード:圧縮モード,周波数:1Hz,温度:−50〜150度、昇温速度:5度/分)にて行った。測定の結果を表3に示す。上記(I)及び(II)については、tanδの比が1.1以上1.3未満である場合を“○”とし、そうでない場合を“×”とした。上記(III)については、tanδの差が0以上である場合を“○”とし、そうでない場合を“×”とした。
【0077】
<耐久試験の評価>
各実施例・比較例の光学部材を高温多湿(60℃、90%RH)の条件下で、500時間保存してから、TAC基材の粘着フィルムが偏光板から浮いたか否かを目視で測定した。評価基準は以下の通りである。
○:浮きや剥れが生じた。
×:浮きや剥れが生じなかった。
測定の結果を表3に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
粘着層がアクリル系粘着剤と、イソシアネート系硬化剤と、アクリル共重合体とを含有し、tanδ(60℃)/tanδ(20℃)及びtanδ(80℃)/tanδ(20℃)のいずれもが1.1以上1.3未満であり、tanδの差が0以上であるTAC積層体を用いた光学部材は、TAC基材の収縮応力を適切に緩和でき、その結果、TAC基材の粘着フィルムが偏光板から浮くことを防止できることが確認された(実施例1〜9)。
【0080】
一方、粘着層がアクリル共重合体を含有しない場合、金属キレート剤を入れていたとしても、60℃での損失正接の方が80℃での損失正接よりも高くなってしまう。その結果、高温での粘着剤の流動性が増加し、TAC基材の変形にかかる応力を十分に緩和できない可能性があることがわかった。(比較例1)。
また、粘着層がアクリル共重合体を含有しない場合、フタル酸エステル系可塑剤の有無にかかわらず、tanδ(80℃)/tanδ(20℃)の値が1.3よりも大きく、TAC基材の変形に対する粘着剤層の緩和挙動が遅すぎるため、高温多湿下ではTAC基材の粘着フィルムが偏光板から浮く可能性があることが分かった(比較例2、4)。
また、粘着層がアクリル共重合体を含有しない場合、金属キレート剤とフタル酸エステル系可塑剤との両方を入れていたとしても、tanδ(60℃)/tanδ(20℃)の値、tanδ(80℃)/tanδ(20℃)の値のいずれもが1.1よりも小さく、TAC基材の変形に対する粘着剤層の緩和挙動が速すぎるため、高温多湿下ではTAC基材の粘着フィルムが偏光板から浮く可能性があることが分かった(比較例3)。
【0081】
また、イソシアネート系硬化剤の添加量がアクリル系粘着剤の固形分100質量部に対して固形分換算で1.0質量部を超える場合、粘着層がアクリル共重合体を含有していたとしても、TAC基材の変形に対する粘着剤層の緩和挙動が速すぎるため、高温多湿下ではTAC基材の粘着フィルムが偏光板から浮く可能性があることが分かった(比較例5)。
また、アクリル系粘着剤の重量平均分子量が80万以下であると、TAC基材の変形に対する粘着剤層の緩和挙動が速すぎるため、高温多湿下ではTAC基材の粘着フィルムが偏光板から浮く可能性があることが分かった(比較例6〜9)。
【符号の説明】
【0082】
1 光学部材
11 TAC基材
12 粘着層
13 偏光板
14 第2の粘着層
15 ガラス基材
16 ハードコート層
17 反射防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアセチルセルロース基材上に粘着層が形成された積層体であって、
前記粘着層は、アクリル系粘着剤と、イソシアネート系硬化剤と、アクリル共重合体とを含有し、
前記粘着層の60℃における損失正接と20℃における損失正接との比である、tanδ(60℃)/tanδ(20℃)が1.1以上1.3未満である積層体。
【請求項2】
前記アクリル共重合体は、メタクリル酸エステル重合体ブロックとアクリル酸エステル重合体ブロックとからなる、請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記アクリル共重合体は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)とアクリル酸ブチル重合体ブロック(A)とからなる重量平均分子量10,000〜300,000のM−A−M型トリブロック共重合体である、請求項1記載の積層体。
【請求項4】
前記アクリル系粘着剤の重量平均分子量が80万以上200万以下である、請求項1から3のいずれか記載の積層体。
【請求項5】
前記イソシアネート系硬化剤は、前記アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対して固形分換算で0.2質量部以上1.0質量部以下である、請求項1から4のいずれか記載の積層体。
【請求項6】
前記粘着層の厚さは5μm以上100μm以下である、請求項1から5のいずれか記載の積層体。
【請求項7】
前記粘着層は、アジピン酸エステル系可塑剤又はフタル酸エステル系可塑剤をさらに含有する、請求項1から6のいずれか記載の積層体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか記載の積層体における前記トリアセチルセルロース基材の前記粘着層と反対側の面に、ハードコート層及び反射防止層が形成された光学フィルム。
【請求項9】
請求項8記載の光学フィルムにおける前記粘着層を介して前記トリアセチルセルロース基材と偏光板とが積層されている光学部材。

【図1】
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【公開番号】特開2013−63631(P2013−63631A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247281(P2011−247281)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】