説明

トリアゾール誘導体の製造方法

【課題】安全で、簡便で、安価で、収率に優れ、重金属廃液処理の問題を生じることのないトリアゾール誘導体の製造方法を提供すること。
【解決手段】水溶性有機溶媒と水との共存下においてニトロ基の還元剤としてアルカリ金属を含む硫黄化合物をニトロアゾ化合物に対して等モル以上用いて、ニトロアゾ化合物を還元し、トリアゾール誘導体を得る、トリアゾール誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアゾール誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリアゾール誘導体は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、腐蝕防止剤などとして有用な用途を有する化合物である。
【0003】
トリアゾール誘導体の製造方法としては、ニトロアゾ化合物を還元してN−オキシド体とし(1段階目の還元)、該N−オキシド体(N→O体)を更に還元してトリアゾール誘導体を得る(2段階目の還元)という、2段階の還元を行う方法が知られている。
特許文献1には、ニトロアゾ化合物を、水素化触媒及び塩基の存在下に水素で還元することによりN−オキシド体を製造する方法が記載されている。
特許文献2には、1段階目の還元と2段階目の還元を別々に行う方法が記載されている。
しかしながら、この方法では、中間体であるN−オキシド体を取り出すために分離などの操作を行う必要があり、また、1段階目の還元と2段階目の還元とでは条件を変えているため、工程が複雑になったり、生産性に劣るという問題があった。
特許文献3〜5には、1段階目の還元と2段階目の還元をワンポットで行うトリアゾール誘導体の製造方法が記載されている。
しかしながら、特許文献3においては、還元剤として亜鉛を使用するため、亜鉛を含む廃液の処理を行う必要があり、工程が複雑になったり、コストがかかったりするという問題がある。
特許文献4及び5においては、還元剤として白金及びパラジウムなどの高価な貴金属を使用するため、より安価な製造方法が求められている。また、重金属廃液処理の問題もある。
特許文献6には、還元剤として(NHSを用い、水溶媒中でニトロアゾ化合物からトリアゾール誘導体を製造する方法が記載されている。
特許文献7には、触媒としてジクロロナフトキノン、助触媒として亜硫酸水素ナトリウムを用い、イソプロパノールなどのアルコール中でニトロアゾ化合物からトリアゾール誘導体を製造する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献6に記載の方法では、硫化アンモニウム、アルカリスルフィド、亜鉛−塩酸系、亜鉛−アンモニア系、硫化水素−ナトリウム系などは前記還元反応の化学的還元剤として使用されているが、この方法は多量の亜硫酸塩又は亜鉛塩を生成するため、排水汚染の問題を生じるし、更に亜硫酸塩からは亜硫酸ガスが、また使用した硫化水素還元剤からは、有毒な硫化水素が発生するため、作業者の安全性確保や大気汚染の問題がある。
また、特許文献7に記載の方法では、一個以上の炭素を有するアルコールを使用し、アルカリ性で触媒に芳香族ジヒドロキシ又はジオキソ化合物を使用している。しかし、ニトロアゾ化合物、Nーオキシドをアルカリ性でレドックス触媒の存在のもとアルコールで還元する製造方法であるため、アルコールがケトン若しくはカルボン酸まで酸化されるのでこの副生成物の処理が出来れば環境を考慮した場合有利である。しかし、このアルコール−アルカリによる還元の製造方法は、最終のトリアゾール化反応は、(アルコール−水)濃度が稀釈されるにつれ、反応の活性が低下し、このため原料に高濃度のアルコールを大量に必要とし、単純に回収アルコールを繰り返し使用することは、最終生成物の収率が低下する問題がある。また、反応の後処理工程では、反応系に大量の水を投入して粗製品を取り出し、その濾液から高濃度アルコールを得るために大型の精密蒸留設備を要するなど問題がある。
また、特許文献8には、水と疎水性溶媒(トルエン、キシレン、シクロヘキサン等)と用いた2層系で、硫化水素ナトリウムを用いて、ニトロアゾ化合物からN−オキシド体を得ることが記載されているが、トリアゾール誘導体の製造方法については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−159267号公報
【特許文献2】特開2001−31658号公報
【特許文献3】米国特許第4041044号明細書
【特許文献4】特開平03−130268号公報
【特許文献5】特許3737152号公報
【特許文献6】米国特許第2362988号明細書
【特許文献7】特開昭60−6670号公報
【特許文献8】米国特許第4224451号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記従来の課題を解決し、安全で、簡便で、安価で、収率に優れ、重金属廃液処理の問題を生じることのないトリアゾール誘導体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、水溶性有機溶媒と水との共存下において還元剤としてアルカリ金属を含む硫黄化合物を原料であるニトロアゾ化合物に対して等モル以上用いることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
【0008】
[1]
水溶性有機溶媒と水との共存下において、ニトロ基の還元剤としてアルカリ金属を含む硫黄化合物を下記一般式(I)で表される化合物に対して等モル以上用いて、下記一般式(I)で表される化合物を還元し、下記一般式(II)で表されるトリアゾール誘導体を得る、トリアゾール誘導体の製造方法。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(I)及び(II)中、X及びYは、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。XとYとが結合して環を形成していてもよい。Zは水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。)
[2]
前記水溶性有機溶媒が、多価アルコール類、多価アルコールエーテル類、含窒素有機溶媒類、一価アルコール類、含硫黄有機溶媒類、及び炭酸エステル類からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒である、上記[1]に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
[3]
前記水溶性有機溶媒が、少なくともヘテロ原子を2つ含む有機溶媒である、上記[1]又は[2]に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
[4]
前記ヘテロ原子が酸素原子である、上記[3]に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
[5]
前記水溶性有機溶媒の沸点が100℃以上280℃以下である、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
[6]
前記水溶性有機溶媒が、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、及びポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒である、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
[7]
前記一般式(I)で表される化合物が下記一般式(III)で表される化合物であって、前記一般式(II)で表されるトリアゾール誘導体が下記一般式(IV)で表されるベンゾトリアゾール誘導体である、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
【0011】
【化2】

【0012】
(一般式(III)及び(IV)中、Zは水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。R、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。)
[8]
前記一般式(III)で表される化合物が下記一般式(V)で表される化合物であって、前記一般式(IV)で表されるベンゾトリアゾール誘導体が下記一般式(VI)で表されるベンゾトリアゾール誘導体である、上記[7]に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
【0013】
【化3】

【0014】
(一般式(V)及び(VI)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。)
[9]
前記一般式(V)及び(VI)中、RがOH基、SH基、NHR10、NHCOR10基、又はNHSO11基(R10及びR11はそれぞれ独立に脂肪族基、芳香族基、炭素原子で結合する複素環基、NR1213基、又はOR14基を表す。R12、R13、及びR14はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。)である、上記[8]に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
[10]
前記硫黄化合物が無機硫黄化合物である、上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
[11]
前記硫黄化合物がアルカリ金属を含む無機硫黄化合物である、上記[1]〜[10]のいずれか1項に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
[12]
前記アルカリ金属硫黄化合物の使用量が前記一般式(I)で表される化合物の使用量に対して等モル以上10倍モル以下である、上記[1]〜[11]のいずれか1項に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
[13]
前記硫黄化合物が硫化水素ナトリウムである、上記[1]〜[12]のいずれか1項に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前記従来の課題を解決し、安全で、簡便で、安価で、収率に優れ、重金属廃液処理の問題を生じることのないトリアゾール誘導体の製造方法を提供することができる。
特に本発明のトリアゾール誘導体の製造方法によれば、ワンポットで反応を行うことができ、白金及びパラジウムなどの貴金属触媒を使用しないため、簡便で、安価であり、重金属廃液処理の問題が生じない。また、有毒ガスの発生がないため作業者にとって安全であり、大気汚染の問題がない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のトリアゾール誘導体の製造方法は、水溶性有機溶媒と水との共存下において、ニトロ基の還元剤としてアルカリ金属を含む硫黄化合物を下記一般式(I)で表される化合物に対して等モル以上用いて、下記一般式(I)で表される化合物を還元し、下記一般式(II)で表されるトリアゾール誘導体を得るものである。
【0017】
【化4】

【0018】
(一般式(I)及び(II)中、X及びYは、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。XとYとが結合して環を形成していてもよい。Zは水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。)
【0019】
[一般式(I)で表される化合物、及び一般式(II)で表されるトリアゾール誘導体]
本発明においては、前記一般式(I)で表される化合物(ニトロアゾ化合物)を、前記一般式(II)で表される化合物(トリアゾール誘導体)を合成するための出発物質として用いる。
【0020】
前記一般式(I)中、X及びYは、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。該1価の置換基としては、例えば、下記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。
【0021】
(置換基群A)
ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、例えばメチル基、エチル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20のアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基)、アラルキル基(好ましくは炭素数1〜20のアラルキル基、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナルチルエチル基)、ヒドロキシル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基)、置換又は無置換のカルバモイル基(例えばカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基)、アルキルカルボニル基(例えばアセチル基)、アリールカルボニル基(例えばベンゾイル基)、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基(例えばアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、置換スルホアミノ基)、アシルアミノ基(例えばアセトアミド基、エトキシカルボニルアミノ基)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド基)、イミド基(例えばスクシンイミド基、フタルイミド基)、イミノ基(例えばベンジリデンアミノ基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(炭素数1〜20のアルコキシ基、例えばメトキシ基)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ基)、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ基)、アリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ基)、スルホ基、置換又は無置換のスルファモイル基(例えばスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基)、チオシアネート基、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル基)、ヘテロ環基(炭素数4〜20のヘテロ環基、例えばピリジル基、モルホリノ基)。
【0022】
X及びYにおける1価の置換基は、更に置換されていても良く、該更なる置換基の例としては、上述の置換基群Aから選ばれる置換基を挙げることができる。
【0023】
XとYとが結合して環を形成していてもよい。該形成される環としては、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が好ましく、5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環がより好ましく、6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が更に好ましい。また、芳香族複素環としては、含窒素芳香族複素環が好ましい。具体的には、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられ、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾール環が好ましく、ベンゼン環又はピリジン環がより好ましく、ベンゼン環が更に好ましい。
【0024】
XとYとが結合して形成される環は、更に置換されていても良く、該更なる置換基の例としては、上述の置換基群Aから選ばれる置換基を挙げることができ、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシ基、スルホ基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基がより好ましく、ハロゲン原子が更に好ましく、塩素原子が更に好ましい。
【0025】
入手性容易の観点から、X及びYとしては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又はXとYとが結合して環を形成することが好ましく、アルキル基、又はXとYとが結合して環を形成することがより好ましい。アルキル基としては炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。XとYとが結合して形成する環の好ましい範囲は前記の通りである。
【0026】
一般式(I)中、Zは水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。
Zが脂肪族基を表す場合、該脂肪族基としては、アルキル基又はシクロアルキル基が好ましい。該アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。該シクロアルキル基としては、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましく、炭素数6〜10のシクロアルキル基がより好ましく、シクロヘキシル基が更に好ましい。
Zが芳香族基を表す場合、該芳香族基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基がより好ましく、フェニル基又はナフチル基が更に好ましく、フェニル基が特に好ましい。
Zが複素環基を表す場合、該複素環基としては、炭素数2〜20の複素環基が好ましく、炭素数3〜10の複素環基がより好ましく、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フラニル基、チエニル基が好ましく、ピリジル基がより好ましい。
ただし、Zが複素環基を表す場合、該複素環基は炭素原子で一般式(I)における窒素原子と結合する。
【0027】
Zが脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す場合、Zは更に置換されていても良く、該更なる置換基の例としては、上述の置換基群Aから選ばれる置換基を挙げることができる。
該更なる置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシ基、スルホ基が好ましく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基がより好ましい。
【0028】
本発明においては、前記一般式(I)で表される化合物から前記一般式(II)で表されるトリアゾール誘導体を得るため、前記一般式(II)におけるX、Y、及びZは一般式(I)におけるX、Y、及びZと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0029】
本発明においては、前記一般式(I)で表される化合物が下記一般式(III)で表される化合物であって、前記一般式(II)で表されるトリアゾール誘導体が下記一般式(IV)で表されるベンゾトリアゾール誘導体であることが好ましい。
【0030】
【化5】

【0031】
(一般式(III)及び(IV)中、Zは水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。R、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。)
【0032】
一般式(III)及び(IV)におけるZは、前記一般式(I)におけるZと同義であり、具体例及び好ましい範囲も同様である。また、Zが有しても良い置換基も同様である。
【0033】
一般式(III)及び(IV)におけるR、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。該1価の置換基としては、前記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。また、該1価の置換基は、更に置換されていても良く、該更なる置換基の例としては、上述の置換基群Aから選ばれる置換基を挙げることができる。
一般式(III)及び(IV)におけるR、R、R、及びRは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシ基、スルホ基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、より好ましくは塩素原子)、アルキル基、アリール基、アラルキル基がより好ましく、水素原子又はハロゲン原子が更に好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0034】
本発明においては、前記一般式(I)又は(III)で表される化合物が下記一般式(V)で表される化合物であって、前記一般式(II)又は(IV)で表されるトリアゾール誘導体が下記一般式(VI)で表されるベンゾトリアゾール誘導体であることが好ましい。
【0035】
【化6】

【0036】
(一般式(V)及び(VI)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。)
【0037】
一般式(V)及び(VI)におけるR、R、R、及びRは前記一般式(III)及び(IV)におけるR、R、R、及びRと同義であり、具体例及び好ましい範囲も同様である。
【0038】
一般式(V)及び(VI)におけるR、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。該1価の置換基としては、前記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。また、該1価の置換基は、更に置換されていても良く、該更なる置換基の例としては、上述の置換基群Aから選ばれる置換基を挙げることができる。
一般式(V)及び(VI)におけるR、R、R、R、及びRとしては、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシ基、スルホ基が好ましく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基がより好ましい。
【0039】
前記一般式(V)及び(VI)中、Rが解離性プロトンを有する基であることが好ましく、RがOH基、SH基、NHR10、NHCOR10基、又はNHSO11基(R10及びR11はそれぞれ独立に脂肪族基、芳香族基、炭素原子で結合する複素環基、NR1213基、又はOR14基を表す。R12、R13、及びR14はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。)であることがより好ましい。
10及びR11はそれぞれ独立に脂肪族基、芳香族基、炭素原子で結合する複素環基、NR1213、又はOR14を表す。また、R12、R13、及びR14はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。
10、R11、R12、R13、及びR14が脂肪族基を表す場合、該脂肪族基としては、アルキル基又はシクロアルキル基が好ましい。該アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。該シクロアルキル基としては、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましく、炭素数6〜10のシクロアルキル基がより好ましく、シクロヘキシル基が更に好ましい。
10、R11、R12、R13、及びR14が芳香族基を表す場合、該芳香族基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基がより好ましく、フェニル基又はナフチル基が更に好ましく、フェニル基が特に好ましい。
10、R11、R12、R13、及びR14が複素環基を表す場合、該複素環基としては、炭素数2〜20の複素環基が好ましく、炭素数3〜10の複素環基がより好ましく、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フラニル基、チエニル基が好ましく、ピリジル基がより好ましい。
ただし、R10、R11、R12、R13、及びR14が複素環基を表す場合、該複素環基は炭素原子で一般式(I)における窒素原子と結合する。
【0040】
10、R11、R12、R13、及びR14は脂肪族基を表すことが好ましい。該脂肪族基の好ましい範囲は前記の通りである。
【0041】
は、該化合物の耐久性の観点から、OH基、NHCOR10基、又はNHSO11基であることが好ましい。R10及びR11の好ましい範囲は前記の通りである。
【0042】
前記一般式(I)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されない。
【0043】
【化7】

【0044】
前記一般式(II)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されない。
【0045】
【化8】

【0046】
また、特表2004−505954号公報、特表2004−509877号公報、特開平10−7655号公報、特表2004−505954号公報等にも一般式(I)又は一般式(II)で表される化合物の具体例が記載されている。
【0047】
前記一般式(1)で表される化合物は、対応するニトロアニリンと置換フェノールからアゾカップリングにより合成することができる。また、例えば、公知の文献に記載の方法でも合成することができる。公知の文献としては、例えば、特表2004−505954号公報、特表2004−509877号公報、特開平10−7655号公報、特表2004−505954号公報等が挙げられる。
【0048】
[水溶性有機溶媒]
本発明のトリアゾール誘導体の製造方法は、一般式(I)で表される化合物の還元を、水溶性有機溶媒と水との共存下において行う。
該水溶性有機溶媒と水とは、互いに溶解しあい均一な1層系をつくることが好ましい。
【0049】
本発明において、水溶性有機溶媒とは、水と混合した場合に相分離せずに、互いに相溶する有機溶媒をいう。
【0050】
水溶性有機溶媒は、水との相溶性の観点から、少なくともヘテロ原子を2つ含む有機溶媒であることが好ましい。該へテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
【0051】
水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコールエーテル類、含窒素有機溶媒類、一価アルコール類、含硫黄有機溶媒類、及び炭酸エステル類からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒であることが好ましい。
【0052】
具体的には、多価アルコール類として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
多価アルコールエーテル類として、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)等が挙げられる。
含窒素有機溶媒類として、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
一価のアルコール類として、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
含硫黄有機溶媒類として、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルオキシド等が挙げられる。
炭酸エステル類としては、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を挙げることができる。
【0053】
水溶性有機溶媒は上記のなかでも、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、及びポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒であることが好ましい。
本発明においては、ポリエチレングリコールの重合度は汎用されているものであれば特に制限はないが、操作上の観点から常温で液体であるものが好ましく、重合度1000以下のものが好ましい。後処理での有機溶媒との混和性の観点から重合度600以下のものがより好ましい。
本発明においては、市販品を用いることもでき、例えばPEG−200(日油株式会社製)、PEG−300(和光純薬社製)などが挙げられる。
【0054】
本発明の方法においては、最適な反応温度設定の観点から、好ましくは沸点が80℃以上300℃以下である水溶性有機溶媒が好ましく、より好ましくは沸点が100℃以上280℃以下である水溶性有機溶媒が好ましく、更に好ましくは沸点が120℃以上250℃以下である水溶性有機溶媒が好ましい。上記範囲に入り、また入手性も容易な溶媒としてはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0055】
[アルカリ金属を含む硫黄化合物]
本発明のトリアゾール誘導体の製造方法においては、ニトロ基の還元剤としてアルカリ金属を含む硫黄化合物を一般式(I)で表される化合物に対して等モル以上用いる。本発明では、還元剤として硫黄化合物を用いるため、重金属廃液処理等の問題を生じることがない。
アルカリ金属を含む硫黄化合物としては、アルカリ金属を含む無機硫黄化合物が好ましい。具体的には、硫化水素ナトリウム、硫化水素カリウム、ハイドロサルファイト、硫化ナトリウム、二硫化ナトリウム、二硫化カリウムが挙げられる。アルカリ金属を含む硫黄化合物としては、アルカリ金属を含む無機硫黄化合物が好ましく、硫化水素ナトリウム、又は硫化水素カリウムがより好ましく、硫化水素ナトリウムが更に好ましい。
本発明のトリアゾール誘導体の製造方法では、一般式(I)で表される化合物の還元を、ニトロアゾ化合物に対し等モル量以上のアルカリ金属を含む硫黄化合物を使用して行う。アルカリ金属を含む硫黄化合物の使用量は、収率、反応時間などの観点から、一般式(I)で表される化合物の量に対して、好ましくは等モル以上10倍モル以下、より好ましくは2倍モル以上10倍モル以下、更に好ましくは2倍モル以上8倍モル以下、特に好ましくは3倍モル以上7倍モル以下である。
本発明のトリアゾール誘導体の製造方法においては、ニトロ基の還元剤としてアルカリ金属を含む硫黄化合物を単独で用いることができる。
【0056】
[還元反応]
本発明では、水溶性有機溶媒と水との共存下において還元剤として硫黄化合物を用いて、上記一般式(I)で表される化合物を還元し、上記一般式(II)で表されるトリアゾール誘導体を得る。
還元反応における温度は、収率、反応時間の観点から、80℃〜150℃の範囲内が好ましく、80℃〜120℃の範囲内がより好ましい。
【0057】
水溶性有機溶媒の好ましい量は、収率、反応時間の観点から、一般式(I)で表される化合物に対して質量で1倍から20倍が好ましく、より好ましくは2倍から10倍、更に好ましくは3倍から8倍である。また、使用する水の量は、好ましくは水:水溶性有機溶媒が体積比で、1:0.1から1:10の間が好ましく、より好ましくは1:0.5から1:5の間で、更に好ましくは1:0.8から1:1.2の間である。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0059】
[実施例1]
<化合物(II−9)の合成>
冷却管を備えた200mL 3口フラスコに、既知の方法により得られた化合物(I−9)1g、エチレングリコール16mL、水2mL、硫化二ナトリウム・9水和物(NaSとして化合物(I−9)に対して2倍モル)を入れて120℃まで昇温した。その温度で3時間反応を行い、室温まで冷却した。そこにトルエン5mLと水5mLを加えて抽出し水層を除去した。更に水を5mL加えて抽出し水層を除去した。得られた有機層にメタノールを5mL加えて冷却し結晶をろ過、メタノールで洗浄することで目的とする化合物(II−9)を収率86%で得た。
MS:m/z 195
【0060】
[実施例2]
<化合物(II−25)の合成>
冷却管を備えた200mL 3口フラスコに、既知の方法により得られた化合物(I−25)1g、エチレングリコール16mL、水2mL、二硫化カリウム(KS、化合物(I−25)に対して2倍モル)を入れて120℃まで昇温した。その温度で2時間反応を行い、室温まで冷却した。そこにトルエン5mLと水5mLを加えて抽出し水層を除去した。更に水を5mL加えて抽出し水層を除去した。得られた有機層にメタノールを5mL加えて冷却し結晶をろ過、メタノールで洗浄することで目的とする化合物(II−25)を収率87%で得た。
MS:m/z 225
【0061】
[実施例3]
<化合物(II−8)の合成>
冷却管を備えた200mL 3口フラスコに、既知の方法により得られた化合物(I−8)1g、PEG−200(日油株式会社製)20mL、水2mL、ハイドロサルファイト(Na、化合物(I−8)に対して4倍モル)を入れて120℃まで昇温した。その温度で3時間反応を行い、室温まで冷却した。そこにトルエン10mLと水10mLを加えて抽出し水層を除去した。更に水を5mL加えて抽出し水層を除去した。得られた有機層にメタノールを5mL加えて冷却し結晶をろ過、メタノールで洗浄することで目的とする化合物(II−8)を収率83%で得た。
MS:m/z 226
【0062】
[実施例4]
<化合物(II−15)の合成>
冷却管を備えた200mL 3口フラスコに、既知の方法により得られた化合物(I−15)1g、1,3−プロパンジオール15mL、水2mL、硫化水素ナトリウム(NaSH、化合物(I−15)に対して5倍モル)を入れて120℃まで昇温した。その温度で2時間反応を行い、室温まで冷却した。そこにトルエン5mLと水5mLを加えて抽出し水層を除去した。更に水を5mL加えて抽出し水層を除去した。得られた有機層にメタノールを5mL加えて冷却し結晶をろ過、メタノールで洗浄することで目的とする化合物(II−15)を収率85%で得た。
MS:m/z 239
【0063】
[実施例5]
<化合物(II−19)の合成>
冷却管を備えた200mL 3口フラスコに、既知の方法により得られた化合物(I−19)1g、1,4−ブタンジオール15mL、水2mL、硫化水素カリウム(KSH、化合物(I−19)に対して5倍モル)を入れて120℃まで昇温した。その温度で2時間反応を行い、室温まで冷却した。そこにトルエン5mLと水5mLを加えて抽出し水層を除去した。更に水を5mL加えて抽出し水層を除去した。得られた有機層にメタノールを5mL加えて冷却し結晶をろ過、メタノールで洗浄することで目的とする化合物(II−19)を収率85%で得た。
MS:m/z 255
【0064】
[実施例6]
<化合物(II−13)の合成>
冷却管を備えた200mL 3口フラスコに、既知の方法により得られた化合物(I−13)1g、エチレングリコール15mL、水2mL、硫化水素ナトリウム(NaSH、化合物(I−13)に対して5倍モル)を入れて120℃まで昇温した。その温度で1.5時間反応を行い、室温まで冷却した。そこにトルエン5mLと水5mLを加えて抽出し水層を除去した。更に水を5mL加えて抽出し水層を除去した。得られた有機層にメタノールを5mL加えて冷却し結晶をろ過、メタノールで洗浄することで目的とする化合物(II−13)を収率90%で得た。
MS:m/z 428
【0065】
[実施例7]
<化合物(II−11)の合成>
冷却管を備えた200mL 3口フラスコに、既知の方法により得られた化合物(I−11)1g、 PEG−300(和光純薬社製)20mL、水2mL、硫化カリウム(KS、化合物(I−11)に対して5倍モル)を入れて120℃まで昇温した。その温度で3時間反応を行い、室温まで冷却した。そこにトルエン5mLと水5mLを加えて抽出し水層を除去した。更に水を5mL加えて抽出し水層を除去した。得られた有機層にメタノールを5mL加えて冷却し結晶をろ過、メタノールで洗浄することで目的とする化合物(II−11)を収率89%で得た。
MS:m/z 252
【0066】
[実施例8]
<化合物(II−20)の合成>
冷却管を備えた200mL 3口フラスコに、既知の方法により得られた化合物(I−11)1g、DMAC(N,N−ジメチルアセトアミド)20mL、水2mL、硫化水素ナトリウム(NaSH、化合物(I−20)に対して6.5倍モル)を入れて120℃まで昇温した。その温度で3時間反応を行い、室温まで冷却した。そこにトルエン5mLと水5mLを加えて抽出し水層を除去した。更に水を5mL加えて抽出し水層を除去した。得られた有機層にメタノールを5mL加えて冷却し結晶をろ過、メタノールで洗浄することで目的とする化合物(II−20)を収率80%で得た。
MS:m/z 323
【0067】
[実施例9]
<化合物(II−17)の合成>
冷却管を備えた200mL 3口フラスコに、既知の方法により得られた化合物(I−17)1g、ジグリム20mL、水2mL、硫化水素ナトリウム(NaSH、化合物(I−17)に対して6.5倍モル)を入れて120℃まで昇温した。その温度で3時間反応を行い、室温まで冷却した。そこにトルエン5mLと水5mLを加えて抽出し水層を除去した。更に水を5mL加えて抽出し水層を除去した。得られた有機層にメタノールを5mL加えて冷却し結晶をろ過、メタノールで洗浄することで目的とする化合物(II−17)を収率85%で得た。
MS:m/z 323
【0068】
[実施例10]
<化合物(II−16)の合成>
冷却管を備えた200mL 3口フラスコに、既知の方法により得られた化合物(I−16)1g、エチレングリコール16mL、水2mL、硫化水素ナトリウム(NaSH、化合物(I−16)に対して6.5倍モル)を入れて120℃まで昇温した。その温度で1.5時間反応を行い、室温まで冷却した。そこにトルエン5mLと水5mLを加えて抽出し水層を除去した。更に水を5mL加えて抽出し水層を除去した。得られた有機層にメタノールを5mL加えて冷却し結晶をろ過、メタノールで洗浄することで目的とする化合物(II−16)を0.89g得た(収率96%)。
MS:m/z 441
NMR(重クロロホルム):δ11.4(1H),δ8.33−8.32(1H),δ7.86−7.80(2H),δ
7.62−7.61(1H),δ7.43−7.39(2H),δ7.29−7.24(4H),δ7.19−7.13(1H),δ1.83−1.80(8H),δ1.53(6H),δ0.84−0.81(9H)
【0069】
[実施例11]
<化合物(II−16)の合成>
実施例10と同様の操作で、硫化水素ナトリウムを使用する代わりに、硫化二ナトリウム・9水和物(NaSとして化合物(I−16)に対して1.5倍モル)を使用すること以外は実施例10に記載の通りに行い、化合物(II−16)を0.80g得た(収率86%)。
【0070】
[実施例12]
<化合物(II−27)の合成>
冷却管を備えた200mL 3口フラスコに、既知の方法により得られた化合物(I−27)1g、エチレングリコール18mL、水2mL、硫化水素ナトリウム(NaSH、化合物(I−27)に対して6.5倍モル)を入れて120℃まで昇温した。その温度で1.5時間反応を行い、室温まで冷却した。そこにトルエン5mLと水5mLを加えて抽出し水層を除去した。更に水を5mL加えて抽出し水層を除去した。得られた有機層にメタノールを5mL加えて冷却し結晶をろ過、メタノールで洗浄することで目的とする化合物(II−27)を収率95%で得た。
MS:m/z 385
【0071】
[比較例1]<化合物(II−16)の合成>
実施例11と同様の操作で、エチレングリコールを使用する代わりに、トルエンを使用すること以外は実施例10に記載の通り反応を行うと、反応時間は10時間であり、中間体であるN→O体が90%で得られて、目的とする化合物(II−16)は0.4%生成した。
【0072】
[比較例2]
<化合物(II−16)の合成>
実施例11と同様の操作で、エチレングリコールを使用する代わりに、イソプロピルアルコールを使用し、反応温度を80℃で行うこと以外は実施例10に記載の通り反応を行うと、反応時間は10時間であり、中間体であるN→O体が93%で得られて、目的とする化合物(II−16)は4.5%生成した。
【0073】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性有機溶媒と水との共存下において、ニトロ基の還元剤としてアルカリ金属を含む硫黄化合物を下記一般式(I)で表される化合物に対して等モル以上用いて、下記一般式(I)で表される化合物を還元し、下記一般式(II)で表されるトリアゾール誘導体を得る、トリアゾール誘導体の製造方法。
【化1】

(一般式(I)及び(II)中、X及びYは、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。XとYとが結合して環を形成していてもよい。Zは水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。)
【請求項2】
前記水溶性有機溶媒が、多価アルコール類、多価アルコールエーテル類、含窒素有機溶媒類、一価アルコール類、含硫黄有機溶媒類、及び炭酸エステル類からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒である、請求項1に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記水溶性有機溶媒が、少なくともヘテロ原子を2つ含む有機溶媒である、請求項1又は2に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記ヘテロ原子が酸素原子である、請求項3に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
【請求項5】
前記水溶性有機溶媒の沸点が100℃以上280℃以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
【請求項6】
前記水溶性有機溶媒が、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、及びポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
【請求項7】
前記一般式(I)で表される化合物が下記一般式(III)で表される化合物であって、前記一般式(II)で表されるトリアゾール誘導体が下記一般式(IV)で表されるベンゾトリアゾール誘導体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
【化2】

(一般式(III)及び(IV)中、Zは水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。R、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。)
【請求項8】
前記一般式(III)で表される化合物が下記一般式(V)で表される化合物であって、前記一般式(IV)で表されるベンゾトリアゾール誘導体が下記一般式(VI)で表されるベンゾトリアゾール誘導体である、請求項7に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
【化3】

(一般式(V)及び(VI)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。)
【請求項9】
前記一般式(V)及び(VI)中、RがOH基、SH基、NHR10、NHCOR10基、又はNHSO11基(R10及びR11はそれぞれ独立に脂肪族基、芳香族基、炭素原子で結合する複素環基、NR1213基、又はOR14基を表す。R12、R13、及びR14はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。)である、請求項8に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
【請求項10】
前記硫黄化合物が無機硫黄化合物である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
【請求項11】
前記硫黄化合物がアルカリ金属を含む無機硫黄化合物である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
【請求項12】
前記アルカリ金属硫黄化合物の使用量が前記一般式(I)で表される化合物に対して等モル以上10倍モル以下である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。
【請求項13】
前記硫黄化合物が硫化水素ナトリウムである、請求項1〜12のいずれか1項に記載のトリアゾール誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2012−46474(P2012−46474A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192983(P2010−192983)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】