説明

トリアミノ−及びフルオルアルキル−官能性オルガノシロキサン

【課題】トリアミノ−及びフルオルアルキル官能性オルガノシロキサンの提供。
【解決手段】 式I [NH(CHNH(CHNH]−(I)[その際、これは、C原子1〜4個を有するN−結合アルキレン基少なくとも1個を介して珪素原子少なくとも1個と結合しており、a及びbは同一又は異なる1〜6の整数であり、xは0又は1又は2であり、yは0又は1であり、zは0又は1又は2であり、(x+y+z)≦4の条件を有する]のトリアミノ基少なくとも1個及び式II FC(CF(CH−(II)
[式中、rは0〜18の整数であり、sは0又は2である]のSi−C−結合フルオルアルキル基少なくとも1個を有する、オルガノシロキサンによって解決された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規トリアミノ−及びフルオルアルキル官能性オルガノシロキサンに関する。更に本発明は、その製造、相応するオルガノシロキサンを含有する組成物又は薬剤並びにその使用に関する。
【0002】
特に本発明は、アミノアルキル−及びフルオルアルキル官能性、ヒドロキシ基及び/又はアルコキシ基含有のオルガノシロキサン、水、場合によりアルコールの含量及び場合により酸の含量を含有する組成物に関する。本特許明細書では、水性組成物中に含有されているヒドロキシ基−及び/又はアルコキシ基含有のオルガノシロキサンとは、化学的知識により完全に又は部分的に加水分解されている、即ち、平衡状態の範囲でヒドロキシ−又はアルコキシ基を含有することができるような化合物のことである。
【背景技術】
【0003】
フルオルアルキルアルコキシシラン又は相応する重縮合物を製造すること及び疎水剤並びに疎油剤として使用することは以前から公知である(例えばDE−PS834002、US3013066、GB935380、DE−OS3100555、EP0382557A1、EP0493747B1、EP0587667B1及びDE−OS19544763)。
【0004】
フルオルアルキルアルコキシシランは、非常に高価な製品であるために、通常は濃縮形で使用することはない。更にフルオルアルキルアルコキシシランは水に可溶性でない。
【0005】
フルオルアルキル官能性シラン並びに相応する共縮合体の十分に安定な溶液又は製剤を得るために、有機溶剤又は乳化剤も使用されている(例えばDE−OS3447636、DE−PS3613384、WO95/23830、WO95/23804、WO96/06895、WO97/23432、EP0846716A1)。
【0006】
溶剤−並びに乳化剤含有製剤並びに高い割合のアルコキシ基を有するオルガノシロキサンの欠点は、このような系が生態学的及び作業上の安全技術的理由から望ましくないことである。従って、できる限り僅かな揮発性有機化合物(略称:"VOC"="volatile organic compounds")割合を有する水性系を提供することが益々求められている。
【0007】
窒素含有又はアミノアルキル−及びフルオルアルキル官能性及び主としてアルコキシ基不含のオルガノシロキサンは、表面の撥水、撥油及び撥汚れ加工用の乳化剤−又は界面活性剤不含の薬剤中の水溶性成分として公知である(DE−OS1518551、EP0738771A1、EP0846717A1)。
【0008】
前記水性系では、良好な水溶性を確実なものとするために、常に比較的高いアミノアルキル基割合を使用せねばならない。高いアミノアルキル基割合は他方では逆効果である。それは、これが親水性を有し、従ってできる限り疎水性の作用を有する系を提供する試みとは相反することになるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE−PS834002
【特許文献2】US3013066
【特許文献3】GB935380
【特許文献4】DE−OS3100555
【特許文献5】EP0382557A1
【特許文献6】EP0493747B1
【特許文献7】EP0587667B1
【特許文献8】DE−OS19544763
【特許文献9】DE−OS3447636
【特許文献10】DE−PS3613384
【特許文献11】WO95/23830
【特許文献12】WO95/23804
【特許文献13】WO96/06895
【特許文献14】WO97/23432
【特許文献15】EP0846716A1
【特許文献16】DE−OS1518551
【特許文献17】EP0738771A1
【特許文献18】EP0846717A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の根底をなす課題は、その他の水溶性のアミノアルキル−及びフルオルアルキル官能性オルガノシロキサンを提供することである。特に本発明の課題は、アミノアルキル基の数と比べてできる限り多い数のフルオルアルキル基を有するオルガノシロキサンを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明により特許請求項の記載により解決することができる。
【0012】
本発明は、一般式I
[NH(CHNH(CHNH]− (I)
[その際、これは、C原子1〜4個を有するN−結合アルキレン基少なくとも1個を介して珪素原子少なくとも1個と結合しており、a及びbは同一又は異なるものであり、1〜6の整数を表わし、xは0又は1又は2であり、yは0又は1であり、zは0又は1又は2であり、(x+y+z)≦4の条件を有する]のトリアミノ基少なくとも1個
及び一般式II
C(CF(CH− (II)
[式中、rは0〜18の整数を表わし、sは0又は2である]のSi−C−結合フルオルアルキル基少なくとも1個を特徴とする、オルガノシロキサンである。
【0013】
また、本発明は、オルガノシロキサンが、一般式I
[NH(CHNH(CHNH]− (I)
[その際、これは、C原子1〜4個を有するN−結合アルキレン基少なくとも1個を介して珪素原子少なくとも1個と結合しており、a及びbは同一又は異なるものであり、1〜6の整数を表わし、xは0又は1又は2であり、yは0又は1であり、zは0又は1又は2であり、(x+y+z)≦4の条件を有する]のトリアミノ基少なくとも1個
及び一般式II
C(CF(CH− (II)
[式中、rは0〜18の整数を表わし、sは0又は2である]のSi−C−結合フルオルアルキル基少なくとも1個を有することを特徴とする、ヒドロキシ基及び/又はアルコキシ基含有オルガノシロキサン少なくとも1種及び水を含有する組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
さて、意外にも、水溶性のトリアミノ−及びフルオルアルキル官能性、ヒドロキシ基−及び/又はアルコキシ基含有のオルガノシロキサン又は相応するオルガノシロキサンの混合物、水、場合によりアルコールの含量及び場合により酸の含量から成る、低粘性の、即ち有利には<100mPasの、通常透明から僅かに白濁した、水と希釈する際でも有利に数ヶ月間貯蔵安定性の組成物が、
i)一般式IIIa
NH(CHNH(CHNH(CHSi(R’)(OR)(3−j) (IIIa)
[式中、R及びR’は同一又は異なるものであり、C原子1〜4個を有する線状又は枝分れアルキル基を表わし、jは0又は1である]
及び/又は
一般式IIIb
[NH(CHN(CHSi(R’)(OR)(3−k) (IIIb)
[式中、R及びR’は同一又は異なるものであり、C原子1〜4個を有する線状又は枝分れアルキル基を表わし、kは0又は1である]のアミノアルキルアルコキシシラン少なくとも1種
及び/又は
一般式IIIc
[NH(CHNH(CHNH]・[(CHSi(R’)(OR)(3−d) (IIIc)
[式中、R及びR’は同一又は異なるものであり、C原子1〜4個を有する線状又は枝分れアルキル基を表わし、aは1〜6の整数を表わし、bは1、2、3、4、5又は6であり、cは1、2、3又は4であり、dは0又は1であり、eは1、2、3、4又は5であり、xは0又は1又は2であり、yは0又は1であり、zは0又は1又は2でありかつ(x+y+z)≦4の条件を有し、その際、eは(x+y+z)=0の場合には数値5であり、(x+y+z)=1の場合にはe=4であり、(x+y+z)=2の場合にはe=3であり、(x+y+z)=3の場合にはe=2であり、(x+y+z)=4の場合にはe=1である]の"ビスプロダクト"又は"ビスプロダクト"の混合物
及び
ii)一般式IV
C(CF(CHSi(R")(OR)(3−t) (IV)
[式中、rは0〜18の整数であり、sは0又は2であり、tは0又は1であり、R及びR"は同一又は異なるものであり、C原子1〜4個を有する線状又は枝分れアルキル基を表わす]のフルオルアルキルアルコキシラン少なくとも1種を混合し、場合によりアルコール、水又は水/アルコール混合物並びに場合により触媒を添加し、反応させ又は成分を反応させ、即ち、場合により前加水分解し、加水分解し、共縮合させ、アルコールを完全にか又は部分的に、即ち有利には残量を5質量%より少なくなるよう、除去し、場合により得られた生成物混合物を無機又は有機酸の添加によりpH<12に調整することにより得られることを見出した。組成物がpH値<11を有するのが好適である。
【0015】
更に本発明による組成物は、相応して処理された鉱物表面のなお改善された撥液体特性−親水性並びに疎水性の標準試験液体を使用下で(DuPont社の"TeflonR specification test kit"による試験)−を生じる。これに関しては実施例を参照にされたい。
【0016】
特に、1:≦3.5、有利には1:3〜1:0.5、特に有利には1:3〜1;1、極めて特に有利には1:3〜1:2の、式IIIb又は式IIIcによるN−[N’−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピルトリアルコキシシラン又はアミノアルキルアルコキシシラン対式IVによるフルオルアルキルアルコキシシランの使用物質モル比により、本発明による水溶性共縮合体中の特に高いフルオルアルキル基含量を得ることができる。
【0017】
本発明による組成物は任意の比で水で有利に希釈することができる。その際、完全に加水分解された系では、通常付加的な加水分解アルコールが全く生じない。通常本発明による組成物並びに希釈した系は、6ヶ月以上にわたって非常に貯蔵安定性である。
【0018】
従って、ヒドロキシ基−及び/又はアルコキシ基含有のオルガノシロキサン少なくとも1種及び水を含有する組成物も本発明の目的であり、オルガノシロキサンが、 一般式I
[NH(CHNH(CHNH]− (I)
[その際、トリアミノ基は、C原子1〜4個を有するN−結合アルキレン基少なくとも1個を介して珪素原子少なくとも1個と結合しており、a及びbは同一又は異なるものであり、1〜6の整数を表わし、xは0又は1又は2であり、yは0又は1であり、zは0又は1又は2であり、(x+y+z)≦4の条件を有する]のトリアミノ基少なくとも1個
及び一般式II
C(CF(CH− (II)
[式中、rは0〜18の整数を表わし、sは0又は2である]のSi−C−結合フルオルアルキル基少なくとも1個を有することを特徴とする。
【0019】
一般式I
[NH(CHNH(CHNH]− (I)
[その際、トリアミノ基は、C原子1〜4個を有するN−結合アルキレン基少なくとも1個を介して珪素原子少なくとも1個と結合しており、a及びbは同一又は異なるものであり、1〜6の整数を表わし、xは0又は1又は2であり、yは0又は1であり、zは0又は1又は2であり、(x+y+z)≦4の条件を有する]のトリアミノ基少なくとも1個
及び一般式II
C(CF(CH− (II)
[式中、rは0〜18の整数を表わし、sは0又は2である]のSi−C−結合フルオルアルキル基少なくとも1個を含有する、オルガノシロキサンも本発明の目的である。
【0020】
本発明によるオルガノシロキサンは通常、当業者に公知であるような、いわゆる[M]−、[D]−並びに[T]−構造単位をベースとし、その際、オリゴマー又はポリマーのオルガノシロキサン単位は凝結体を形成してもよい。
【0021】
このようなオルガノシロキサンは通常、本発明のよる官能性基の他に、その他の官能基としてヒドロキシ基及び/又はアルコキシ基を有する。ヒドロキシ−又はアルコキシ基の存在は通常製造で供給される水量及びアルコール分離の完全性により調整することができる。更に本発明によるオルガノシロキサンは付加的な官能基としてC原子1〜16個を有するアルキル基を含有、即ち有することができる。
【0022】
特に本発明によるオルガノシロキサンは、水で非常に良好に希釈することができる。その際、通常低粘性の僅かに白濁した液体が得られる。しかし本発明よるオルガノシロキサンはアルコール中にも溶解させることができ又は水溶性乳濁液中に混入させることもできる。
【0023】
更にオルガノシロキサン含有組成物の製法も本発明の目的であり、これは、
i)一般式IIIa
NH(CHNH(CHNH(CHSi(R’)(OR)(3−j) (IIIa)
[式中、R及びR’は同一又は異なるものであり、C原子1〜4個を有する線状又は枝分れアルキル基を表わし、jは0又は1である]
及び/又は
一般式IIIb
[NH(CHN(CHSi(R’)(OR)(3−k) (IIIb)
[式中、R及びR’は同一又は異なるものであり、C原子1〜4個を有する線状又は枝分れアルキル基を表わし、kは0又は1である]のアミノアルキルアルコキシシラン少なくとも1種
及び/又は
一般式IIIc
[NH(CHNH(CHNH]・[(CHSi(R′)(OR)(3−d) (IIIc)
[式中、R及びR’は同一又は異なるものであり、C原子1〜4個を有する線状又は枝分れアルキル基を表わし、aは1〜6の整数を表わし、bは1、2、3、4、5又は6であり、cは1、2、3又は4であり、dは0又は1であり、eは1、2、3、4又は5であり、xは0又は1又は2であり、yは0又は1であり、zは0又は1又は2でありかつ(x+y+z)≦4の条件を有し、その際、eは(x+y+z)=0の場合には数値5であり、(x+y+z)=1の場合にはe=4であり、(x+y+z)=2の場合にはe=3であり、(x+y+z)=3の場合にはe=2であり、(x+y+z)=4の場合にはe=1である]の"ビスプロダクト"又は"ビスプロダクト"の混合物
及びii)一般式IV
C(CF(CHSi(R")(OR)(3−t) (IV)
[式中、rは0〜18の整数であり、sは0又は2であり、tは0又は1であり、R及びR"は同一又は異なるものであり、C原子1〜4個を有する線状又は枝分れアルキル基を表わす]のフルオルアルキルアルコキシラン少なくとも1種を混合し、水又は水/アルコール混合物並びに場合により触媒を添加し、反応させ、アルコールを完全にか又は部分的に除去することを特徴とする。こうして得た生成物混合物を無機又は有機酸の添加によりpH値<12に調整することが有利である。その際pH値を4〜7に調整することが有利である。
【0024】
更に、本発明の方法により得られる組成物も本発明の目的である。本発明によるトリアミノ−及びフルオルアルキル官能性オルガノシロキサン、特に本発明の方法により得られるその混合物も本発明の目的である。
【0025】
本発明による方法で式IIIaによる成分i)としてN−[N’−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(DYNASYLAN(R)TRIAMO)を使用するのが有利である。
【0026】
式IIIbによる成分の例として、
(HN−CHCHN−(CHSi(OCH
が挙げられる。
【0027】
"ビスプロダクト"とは本発明では、一般式IIIcから想定されるような化合物、従って例えば、
(HCO)Si(CHNH(CHNH(CHNH(CHSi(OCH
のようなものである。
【0028】
しかし本発明による方法でトリアミノアルキル−官能性アルコキシシランから成る混合物を使用することもできる。
【0029】
一般式IVのフルオルアルキルアルコキシシランとして本発明による方法では有利には、トリデカフルオル−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン又はトリデカフルオル−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(DYNASYLAN(R)F8261)を使用する。しかし数種のフルオルアルキルアルコキシシランの混合物を使用することもできる。
【0030】
本発明による方法で使用するアルコキシシランには、メトキシ−又はエトキシシランが挙げられる。方法の間にアルコールを添加する限り、相応するメタノール及び/又はエタノールを使用することができる。
【0031】
触媒として特にプロトン酸又はプロトン酸から成る混合物が好適である。即ち、本発明による方法では例えば蟻酸、酢酸並びに塩化水素を使用することができる。更に前記酸は本発明による組成物のpH値の調整用に使用することもできる。
【0032】
本発明による方法で、i)一般式IIIaからIIIc)によるトリアミノシラン少なくとも1種及びii)一般式IVのフルオルアルキルシラン少なくとも1種をi/iiのモル比≧0.29、有利には0.3〜2、特に有利には0.33〜0.5で使用する。
【0033】
更に本発明による水溶液中のオルガノシロキサン濃度を作用物質含量<50質量%に調整する。50質量%より上の作用物質含量によりゲル化又は強力な混濁が生じる恐れがある。
【0034】
本発明による組成物中でオルガノシロキサンの含量は、0.005〜40質量%、有利には0.01〜20質量%、特に有利には0.05〜15質量%、極めて特に有利には0.1〜5質量%である。
【0035】
本発明による方法は通常、一般式IIIaからIIIcのアミノアルキルアルコキシシラン及び一般式IVのフルオルアルキルアルコキシシランを混合し−場合によりアルコールを添加し−、一緒に加水分解し、共縮合させ、加水分解アルコールも含めてアルコールを蒸留により除去するようにして行う。アルコキシシランの混合は、使用するシランの凝固点と沸点の間の温度範囲で行うことができる。加水分解を実施するために通常シラン混合物に過剰の水を添加する。その際、通常ヒドロキシ官能性オルガノシロキサンが得られる。しかし加水分解又は共縮合を化学量論的又は化学量論より下の量の水を用いて行うこともできる。反応に供給する水の量を使用するSi−化合物1モル当たり水3モルより少なく制限する限り、主としてアルコキシ含有の本発明によるオルガノシロキサンを製造することができる。反応で本発明によるオルガノシロキサンは通常は混合物として生じる。
【0036】
本発明による反応は通常は0〜100℃の範囲の温度で行う。本発明による反応をpH値4〜12で行うのが好適である。加水分解を温度<100℃、特に有利には<90℃、極めて特に有利には<60℃で行うのが有利である。その際通常、例えば攪拌により良好な混合が行われるように留意する。本明細書に記載の反応は更に触媒の存在で行うことができる。
【0037】
本発明による方法で通常アルコール又は加水分解アルコールを蒸留により除去し、その際、蒸留を有利には温度<90℃、特に有利には<60℃並びに好適には−生成物保護作用があるので−減圧下で行う。その際、組成物中のアルコール含量を下げて5質量%より少なく、有利には1質量%より少なく、特に有利には0.5質量%より少なくするのが好適である。
【0038】
蒸留は有利には蒸留塔を用いて行い、塔の頭頂部でもはやアルコールが確認されなくなるまで行うことができ、その際、たまり液中に所望の生成物が沈殿し、場合により更に後処理することができる。混濁物質が生じる場合には、これを濾過、沈降、遠心分離又は類似の標準方法を用いて生成物から除去することができる。
【0039】
本発明による組成物の塗布は、50%溶液又は希釈した溶液から行うことができる。希釈剤として例えば水を使用することができる。しかし基本的には本発明による組成物を相応するアルコールで希釈してもよい。
【0040】
本発明によるオルガノシロキサンを含有する薬剤、例えば−これだけに限定するものではないが−表面の疎水化及び/又は疎油化、"アンチグラファイト"加工、"イージー トゥ クリーン"加工(例をニ三挙げたにすぎないが)用に使用されるようなものも本発明の目的である。
【0041】
従って本発明による組成物は、表面の疎水化及び/又は疎油化用の薬剤として、建造物保護剤として、コンクリート、鉱物性天然物並びに釉薬処理又は釉薬未処理セラミック製品の処理用薬剤として、表面加工用製剤中の添加物として、"アンチ−グラファイト"加工用並びに"アンチ−グラファイト"加工用薬剤中へ、"イージートゥクリーン"加工用並びに"イージートゥクリーン"加工用薬剤中へ、水溶性接着助剤として、塗料系並びに腐蝕防止剤中の成分として、表面の殺生物加工、木材の処理、皮革、皮革製品及び毛皮の処理、ガラス表面処理、板ガラス処理、プラスチック表面処理、製薬及び化粧品製造、ガラス−及び鉱物表面並びにガラス−及び鉱物繊維表面の変性、人造石の製造、廃水処理、顔料の表面変性及び処理用に並びに着色料及びラッカー中の成分として、非常に有利に使用することができる。
【実施例】
【0042】
次に本発明を実施例に付き詳説する。
【0043】
例1
モル比1:3のDYNASYLAN(R)TRIAMO及びDYNASYLAN(R)F8261からの水溶性縮合物の製造
装置
蒸留装置、内部温度計、添加装置を有する加熱可能な攪拌反応器
バランスシート
物質使用量
m(DYNASYLAN(R)TRIAMO)= 26.5g 0.1モル
m(DYNASYLAN(R)F8261) =153.0g 0.3モル
m(エタノール) = 60.0g
m(水) = 10.9g 1.5モル/Siモル (前加水分解)
m(蟻酸) = 16.3g 0.3モル
(Biesterfeld、85%)
m(水) =860.0g
最終質量
m(蒸留物) = 113.0g
m(生成物) =1020.0g
方法
TRIAMO26.5g及びF8261 153.0g及びエタノール60gを前装入し、還流(約80℃)で2時間攪拌する。引き続き、約50℃で前加水分解用の水を添加する。反応混合物を8時間還流(約78℃)で加水分解する。その後、蟻酸(85%)16.3gを約50℃で添加し、水860gを添加する。その後生成物は僅かに混濁している。
【0044】
生じた加水分解アルコール及びエタノール60gを真空下で蒸留により除去する。
圧力: 160〜130ミリバール
内部温度:48〜50℃
29−Si−NMR−分析による生成物の試験から下記が判明した:
Siの12.9モル%−モノマーのシラン(トリアミノ官能性)及びM−構造
(トリアミノ官能性)
Siの9.2モル%− M−構造(フルオルアルキル官能性)及びD−構造
(トリアミノ官能性)、
Siの68.1モル%− D−構造(フルオルアルキル官能性)及びT−構造
(トリアミノ官能性)。
【0045】
更に、0.0374μmの平均粒度D50(レーザー光線)が判明した。
【0046】
例2
例1からの生成物を水で希釈して最初に使用したフルオルアルキルトリアルコキシシランの濃度a)1%、b)0.1%、c)0.05%にする。
【0047】
比較用に欧州特許第0846716A2号明細書に記載の共縮合物をアミノプロピルトリエトキシシラン及びDYNASYLAN(R)F8261から製造し(欧州特許第0846716A2号明細書の例2参照)、水で同じフルオルシラン含量に希釈する:溶液d)、e)、f)。
【0048】
多孔性鉱物支持体への試験
前記溶液中に、1辺の長さ約10cmの石灰砂岩試験体を各々10秒間浸す。約1時間空気中で乾燥後、試験体を水及び鉱物油(Kaydol、CAS8012−95−1)に関して撥液体特性を比較試験する。
【0049】
水に関する撥液体試験は全ての場合(aからf)に優れている。ロールオフ角(=特定の大きさの水1滴を転がすために必要な傾斜−視覚試験:ロールオフ角が小さければ小さい程、撥液体性は良好である)は、勿論a)、b)及びc)で相応する比較溶液d)、e)及びf)より著しく僅か(従って良好)である。特に疎油性の観察で相違が著しい。試験体表面上に塗布した鉱物油(Kaydol)の水滴はa)及びb)では30秒間の作用時間後に全く斑点を生じず、c)では僅かな斑点形成が観察される(これは油の多孔性鉱物試験体への浸透開始を表わすものである)。d)の場合には同じ操作方法で僅かな斑点形成が認められ、e)及びf)の場合には強力な斑点形成又は油滴の完全な吸収が認められる。
【0050】
結果:本発明による組成物は、公知技術による比較可能な生成物に比して、多孔性鉱物支持体上により良好な疎水及び疎油性特性を付与する。
【0051】
ガラス上での試験
ガラス製スライドガラス(約76×26mm、直ちに使用できるようにきれいにした、Menzel−Glaeser、商品番号011101)を各々1分間溶液a)又はd)中に浸す。乾燥後、水に対する静的接触角をDIN EN 828により測定する。
【0052】
溶液a)で処理したガラス板は接触角104°を示し、溶液d)で処理したガラス板は接触角87°しか示さない。未処理ガラス板は接触角<30°を示す。
【0053】
従って本発明による例1からの生成物は、公知技術による比較可能な生成物に対して平滑な表面(ガラス)に対してもより良好な撥液体特性を有する。
【0054】
例3
モル比1:2:1のDYNASYLAN(R)TRIAMO、DYNASYLAN(R)F8261及びヘキサデシルトリメトキシシラン(DYNASYLAN(R)9116)からの水溶性縮合物の製造
装置
蒸留装置、内部温度計、添加装置を有する加熱可能な攪拌反応器
バランスシート
物質使用量
m(DYNASYLAN(R)TRIAMO)= 5.3g 0.02モル
m(DYNASYLAN(R)F8261) = 20.4g 0.04モル
m(DYNASYLAN(R)9116) = 3.5g 0.02モル
m(エタノール) = 12.0g
m(水) = 2.16g
m(蟻酸) = 3.2g
(Biesterfeld、85%)
m(水) =170.0g
最終質量
m(蒸留物) = 97.9g
m(生成物) =118.5g
方法
TRIAMO、F8261及びエタノールを前装入し、還流(約80℃)で2時間攪拌する。引き続き、約50℃で前加水分解用の水を添加する。反応混合物を8時間還流(約78℃)で加水分解する。その後蟻酸(85%)を約50℃で添加し、残りの水を添加する。その後生成物は僅かに混濁している。
【0055】
生じた加水分解アルコール及び付加的に添加したエタノールを真空下で蒸留により除去する。
圧力: 160〜130ミリバール
内部温度:48〜50℃
得られた生成物は、僅かに混濁しており、任意の比で水と混合可能である。
【0056】
生成物6.67gに水93.33gを加え、石灰砂岩表面に塗布する。乾燥後、優れた水に対する撥液体特性が観察される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
[NH(CHNH(CHNH]− (I)
[その際、これは、C原子1〜4個を有するN−結合アルキレン基少なくとも1個を介して珪素原子少なくとも1個と結合しており、a及びbは同一又は異なるものであり、1〜6の整数を表わし、xは0又は1又は2であり、yは0又は1であり、zは0又は1又は2であり、(x+y+z)≦4の条件を有する]のトリアミノ基少なくとも1個
及び一般式II
C(CF(CH− (II)
[式中、rは0〜18の整数を表わし、sは0又は2である]のSi−C−結合フルオルアルキル基少なくとも1個を特徴とする、オルガノシロキサン。
【請求項2】
オルガノシロキサンが、一般式I
[NH(CHNH(CHNH]− (I)
[その際、これは、C原子1〜4個を有するN−結合アルキレン基少なくとも1個を介して珪素原子少なくとも1個と結合しており、a及びbは同一又は異なるものであり、1〜6の整数を表わし、xは0又は1又は2であり、yは0又は1であり、zは0又は1又は2であり、(x+y+z)≦4の条件を有する]のトリアミノ基少なくとも1個
及び一般式II
C(CF(CH− (II)
[式中、rは0〜18の整数を表わし、sは0又は2である]のSi−C−結合フルオルアルキル基少なくとも1個を有することを特徴とする、ヒドロキシ基及び/又はアルコキシ基含有オルガノシロキサン少なくとも1種及び水を含有する組成物。
【請求項3】
オルガノシロキサン及び/又はオルガノシロキサン混合物中の式I及びIIによる基のモル比が1:≦3.5であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
オルガノシロキサンの含量が組成物に対して0.005〜40質量%であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
11より少ないpH値を特徴とする、請求項2から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
5質量%より少ないアルコール含量を特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載のオルガノシロキサン含有組成物を製造するに当たり、
i)一般式IIIa
NH(CHNH(CHNH(CHSi(R’)(OR)(3−j) (IIIa)
[式中、R及びR’は同一又は異なるものであり、C原子1〜4個を有する線状又は枝分れアルキル基を表わし、jは0又は1である]
及び/又は
一般式IIIb
[NH(CHN(CHSi(R’)(OR)(3−k) (IIIb)
[式中、R及びR’は同一又は異なるものであり、C原子1〜4個を有する線状又は枝分れアルキル基を表わし、kは0又は1である]のアミノアルキルアルコキシシラン少なくとも1種
及び/又は
一般式IIIc
[NH(CHNH(CHNH]・[(CHSi(R’)(OR)(3−d) (IIIc)
[式中、R及びR’は同一又は異なるものであり、C原子1〜4個を有する線状又は枝分れアルキル基を表わし、aは1〜6の整数を表わし、bは1、2、3、4、5又は6であり、cは1、2、3又は4であり、dは0又は1であり、eは1、2、3、4又は5であり、xは0又は1又は2であり、yは0又は1であり、zは0又は1又は2でありかつ(x+y+z)≦4の条件を有し、その際、eは(x+y+z)=0の場合には数値5であり、(x+y+z)=1の場合にはe=4であり、(x+y+z)=2の場合にはe=3であり、(x+y+z)=3の場合にはe=2であり、(x+y+z)=4の場合にはe=1である]の"ビスプロダクト"又は"ビスプロダクト"の混合物
及び
ii)一般式IV
C(CF(CHSi(R")(OR)(3−t) (IV)
[式中、rは0〜18の整数であり、sは0又は2であり、tは0又は1であり、R及びR"は同一又は異なるものであり、C原子1〜4個を有する線状又は枝分れアルキル基を表わす]のフルオルアルキルアルコキシラン少なくとも1種を混合し、水又は水/アルコール混合物を添加し、反応させ、アルコールを完全にか又は部分的に除去することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のオルガノシロキサン含有組成物の製法。
【請求項8】
i)一般式IIIaからIIIcによるトリアミノシラン少なくとも1種及びii)一般式IVのフルオルアルキルシラン少なくとも1種をモル比i/ii≧0.29で使用することを特徴とする、請求項7に記載の製法。
【請求項9】
成分i)及びii)の他にC1〜C16−アルキルアルコキシシランを使用することを特徴とする、請求項7又は8に記載の製法。
【請求項10】
アルコキシシランから成る混合物に反応前にアルコールを添加することを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項に記載の製法。
【請求項11】
反応を温度<100℃で行うことを特徴とする、請求項7から10までのいずれか1項に記載の製法。
【請求項12】
反応を触媒としてプロトン酸の存在で行うことを特徴とする、請求項7から11までのいずれか1項に記載の製法。
【請求項13】
反応をpH値4〜12で行うことを特徴とする、請求項7から12までのいずれか1項に記載の製法。
【請求項14】
反応により得られた生成物混合物からアルコールを5質量%より少ない含量まで除去することを特徴とする、請求項7から13までのいずれか1項に記載の製法。
【請求項15】
生成物混合物をアルコールの除去後に無機又は有機酸の添加によりpH値<12にすることを特徴とする、請求項7から14までのいずれか1項に記載の製法。
【請求項16】
触媒として及び/又はpH値調整用の酸として塩化水素、酢酸又は蟻酸を使用することを特徴とする、請求項7から15までのいずれか1項に記載の製法。
【請求項17】
請求項7から16までのいずれか1項により得られる組成物。
【請求項18】
請求項7から16までのいずれか1項により得られる、トリアミノ−及びフルオルアルキル官能性オルガノシロキサン並びにその混合物。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか1項によるオルガノシロキサンを含有する薬剤。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか1項によるトリアミノ−及びフルオルアルキル官能性オルガノシロキサンの、表面の疎水化及び/又は疎油化用の薬剤として並びに薬剤中へ、建造物保護剤として、コンクリート、鉱物性天然物並びに釉薬処理又は釉薬未処理セラミック製品の処理用薬剤として並びに薬剤中へ、表面加工用製剤中の添加物として、"アンチ−グラファイト(Anti−Graffiti)"加工用並びに"アンチ−グラファイト"加工用薬剤中へ、"イージートゥクリーン(Easy to clean)"加工用の並びに"イージートゥクリーン"加工用薬剤中へ、水溶性接着助剤として、塗料系並びに腐蝕防止剤中の成分として、表面の殺生物加工用、木材の処理用、皮革、皮革製品及び毛皮の処理用、ガラス表面処理用、板ガラス処理用、プラスチック表面処理用、製薬及び化粧品製造用、ガラス−及び鉱物表面並びにガラス−及び鉱物繊維表面の変性用、人造石の製造用、廃水処理用、顔料の表面変性及び処理用並びに着色料及びラッカー中の成分としての使用。

【公開番号】特開2012−82205(P2012−82205A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257739(P2011−257739)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【分割の表示】特願2000−345062(P2000−345062)の分割
【原出願日】平成12年11月13日(2000.11.13)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】