説明

トリインフルエンザウイルス感染阻害剤

【課題】トリインフルエンザウイルスの感染を効果的に抑制できる天然素材由来のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤を提供すること。
【解決手段】カカオ豆から得られる物質を有効成分として含有するトリインフルエンザウイルス感染阻害剤であり、カカオ豆から得られる物質は、カカオニブ、カカオニブ加工物、カカオハスク、カカオハスク抽出物から選ばれた少なくとも1種以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カカオ豆から得られる物質を有効成分として含有するトリインフルエンザウイルス感染阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルスは、オルソミクソウイルス科に属するRNAウイルスであって、その抗原性の違いからA、B、Cの3つの型が知られている。インフルエンザウイルスは、その粒子表面に赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という2種類の糖蛋白がスパイク状に突き出しており、内部には8本に分節した遺伝子RNAが存在している。このウイルスの表面にあるHAとNAは変異が大きい。このため、インフルエンザウイルスは種類が多く、流行の要因となっている。なかでも、A型インフルエンザウイルスにはHAとNAの変異が特に多く、これまでHAに15種類、NAに9種類の大きな変異が見つかっており、その組み合わせの数の亜型が存在する。
【0003】
また、ヒトに感染しない亜型のウイルスは、鳥類や他の哺乳動物を宿主にしていると考えられている。特に水鳥ではHAとNAの組み合わせがすべて見つかっている。通常、これら、鳥類を宿主とするトリインフルエンザウイルスは、鳥から人への感染力は弱いと見られ、人への感染例は少ない。
【0004】
しかしながら、近年猛威をふるっている、宿主を死に至らしめるトリインフルエンザウイルスであるH5N1型のトリインフルエンザウイルスは、2005年12月現在において、鳥から人への感染例が確認されており、世界的な危機が高まりつつある。
【0005】
インフルエンザウイルスの感染経路は、主に空気感染によるものであるといわれている。咳による飛沫によって放出されたインフルエンザウイルスは鼻や口から侵入し、気道の粘膜上皮細胞に吸着し、細胞へ侵入後増殖を開始する。インフルエンザウイルスは気道粘膜上皮で感染、増殖することや、その年の流行型が正確には予想できないことから、ワクチンの効果は年により差が大きい。
【0006】
一方、近年、天然素材によるインフルエンザの感染抑制効果について研究がなされており、茶のポリフェノール成分(特許文献1参照)、茶サポニン(特許文献2参照)、カラギーナン由来のオリゴ糖(特許文献3参照)、バラ科植物の抽出物(特許文献4参照)、ラズベリー、ストロベリー、ブラックベリー、イチジク、アカザ、アグリモニー、ユーカリ、モモ、リンゴ、ヴァイオレット、クロモジ、ガラナ、ワタフジウツギ、ツユクサ、ナズナ、エンメイソウ、ワイルドストロベリー、ホアハウンド、マーシュマロ、オオバコ、レモンバーベナ、ヤロー、アイスランドモス、アマチャヅル、フキから得られた植物抽出物(特許文献5参照)、オレンジ、キャッツクロー、ベイベリー、ルー、エヴァーラスティング、リンデン、オールスパイス、カカオ、カリンから得られた植物抽出物(特許文献6参照)等がインフルエンザの感染抑制に効果を発揮することが報告されている。
【特許文献1】特開平03‐101623号公報
【特許文献2】特開平11‐193242号公報
【特許文献3】特開2001‐181188号公報
【特許文献4】特開2002‐145790号公報
【特許文献5】特開2004‐059463号公報
【特許文献6】特開2005‐343836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インフルエンザウイルスが生きた細胞の中で増殖するには、ウイルス表層のスパイク状糖蛋白質HAが、先ず細胞の表面にあるレセプターと呼ばれる特殊な場所に吸着する必要があるため、ウイルスが吸着出来ない細胞では、ウイルスは増殖できない。このため、トリインフルエンザウイルスが人には感染しにくいという理由は、トリインフルエンザウイルスが人の細胞に対して効率よく吸着できないためであると思われる。
【0008】
上記特許文献1〜6に開示されているように、天然素材によるインフルエンザウイルス感染抑制作用は、種々報告されているが、これまで報告されている天然素材によるインフルエンザウイルス感染抑制作用とは、主にヒトインフルエンザウイルスを対象としたものであって、トリインフルエンザウイルスに対する感染抑制作用については報告されておらず、また、トリインフルエンザウイルス感染抑制作用を有する天然素材について、これまで特に知られていない。
【0009】
また、抗インフルエンザウイルス剤として実際にヒトに対し臨床応用されている化学療法剤のアマンタジンは、A型ウイルスには効果があるが、B型ウイルスには効果を有していないことが知られている。このように、同じヒトインフルエンザウイルスに属していても、薬剤によって効果の程度が大きく異なる。更に、主にインフルエンザウイルスが宿主の細胞に感染する際に必要なHAの抗原性の違い(種類の違い)によると考えられるが、ヒトインフルエンザウイルスを中和(感染阻害)できる抗体が必ずしもトリインフルエンザウイルスを中和できるとは限らない。つまり、ヒトインフルエンザウイルスに対する感染阻害効果を有している素材や成分が、トリインフルエンザウイルスに対する感染阻害効果を同時に有していることを想定することは難しい。
【0010】
したがって、本発明の目的は、トリインフルエンザウイルスの感染を効果的に抑制できる天然素材由来のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、カカオ豆由来成分の生理機能を研究する中で、意外にもカカオ豆から得られる物質がトリインフルエンザウイルスの増殖を抑制する効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤は、カカオ豆から得られる物質を有効成分として含有する。
【0013】
本発明において、前記カカオ豆から得られる物質が、カカオニブ、カカオニブ加工物、カカオハスク、カカオハスク抽出物から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
また、本発明において、前記カカオニブ加工物が、カカオマス、ココアパウダー、カカオ抽出物から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
また、本発明においては、カカオニブ及び/又はその加工物を固形分換算で0.01〜100質量%含有する、あるいは、カカオハスク及び/又はその抽出物を固形分換算で1〜100質量%含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤は、トリインフルエンザウイルスの増殖を効果的に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤は、カカオ豆から得られる物質を有効成分として含有する組成物であって、好ましくは、カカオニブ、カカオニブ加工物、カカオハスク、カカオハスク抽出物から選ばれた少なくとも1種を含有する組成物である。
【0018】
上記カカオ豆から得られる物質は、例えば、以下のようにして得ることができる。すなわち、カカオの果実からカカオ豆を取り出し、通常、約30℃の条件下で4〜7日間発酵させた後、乾燥させる。そして、乾燥させたカカオ豆をクリーナーで選別して金属や石等の異物を除去した後、セパレータで砕いて皮や胚芽等を取り除くことによりカカオニブを得ることができる。なお、このとき、取り除かれた皮がカカオハスクである。
【0019】
得られたカカオニブは、必要に応じて、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤を、カカオニブの重量に対して0〜5質量%、好ましくは2〜4質量%含む溶液に浸漬し、50〜100℃で0〜150分間、好ましくは80〜100℃で60〜120分間アルカリ処理を行ってもよい。このアルカリ処理により、カカオ豆の苦味や渋味を除去することができる。
【0020】
また、カカオニブ加工物としては、一般的にチョコレートやココア飲料に使用されているカカオマス、ココアパウダー、カカオ抽出物を用いることができ、例えば、以下のようにして得ることができる。すなわち、上記のようにして得られたカカオニブを、100〜150℃で20〜120分間焙焼し、グラインダーで磨砕することによりカカオマスを得ることができる。更に、得られたカカオマスをココアプレスで搾油してココアバターを分離し、ココアミルで粉砕して細かい粉末にすることにより、ココアパウダー(通常、ココアバター含量8〜25%程度)を得ることができる。本発明においては、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」で規定されるココアパウダー(ココアバター含量8%以上)だけでなく、上記規約上、ココアパウダーとは言えない脱脂ココア(ココアバター含量8%未満)も用いることができる。また、カカオ抽出物は、カカオニブ、カカオマス、ココアパウダーを、例えば、水、アルコール等の溶媒、好ましくは熱水、エタノール等の溶媒を用いて抽出することにより調製できる。本発明において、カカオニブ加工物としては、ココアが特に好ましい。
【0021】
また、カカオハスクは、前述のように、カカオ豆からカカオニブを採取する際、副産物として得ることができる。なお、カカオニブはチョコレート原料やココア原料として使用されているが、カカオハスクは、特に有用な用途が無いため、現在その殆どが廃棄処分されている。
【0022】
本発明において、カカオハスクは、ロースト処理して用いることが好ましい。ロースト処理を施すことで殺菌すると同時に、カカオ香味を向上させることができる。ロースト処理は、70℃以上で、30分間以上焙煎することが好ましい。
【0023】
カカオハスクをそのまま用いる場合においては、未粉砕のまま使用することができ、また、用途に応じて十数μmになるように粉砕処理したものを使用することもできる。
【0024】
また、カカオハスク抽出物は、カカオハスクを、例えば、水、アルコール等の溶媒、好ましくは熱水、エタノール等の溶媒を用いて抽出することにより調製できる。具体的には、上記溶媒を用いて、カカオハスクを20℃以上の溶媒中15分〜2時間抽出すればよい。その際、加圧下で行うことが好ましく、例えば、1.1〜3.0気圧の加圧下で抽出することが好ましい。抽出には、カカオハスクを未粉砕のものから、十数μm程度に粉砕したもののいずれも使用できるが、0.1〜5mmに粉砕したものが好ましい。カカオハスクの粒径が0.1mm未満であると、抽出した後濾去する際に、目詰まりが生じやすいため濾過効率が悪く、また、5mmを超えると抽出効率が悪くなる。そして、こうして得られた抽出液を濾過して抽出溶媒を留去した後、濾液を減圧下に濃縮し、濃縮液として用いてもよく、凍結乾燥や噴霧乾燥を行い、乾燥粉末として用いてもよい。
【0025】
本発明のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤は、カカオニブ及び/又はその加工物を固形分換算で0.01〜100質量%、あるいは、カカオハスク及び/又はその抽出物を固形分換算で1〜100質量%含むことが好ましい。そして、本発明のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤においては、上記カカオ豆から得られる物質として、人に投与する場合は、カカオニブ及び/又はその加工物を使用することが、家禽・家畜類に投与する場合は、カカオハスク及び/又はカカオハスク抽出物を使用することが、従来不要物として扱われていたものの有効利用の観点からも望ましいが、使用形態、使用方法等により適宜選択できる。なお、本発明においては、カカオニブ、カカオニブ加工物、カカオハスク、及びカカオハスク抽出物を、それぞれそのまま本トリインフルエンザウイルス感染阻害剤として用いることもできる。
【0026】
また、本発明のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤は、上記の基本的成分以外に、糖質、ビタミン類、ミネラル類、賦形剤、乳製品、香料等を含むことができる。
【0027】
本発明のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤は、医薬品、食品等の各種分野で用いられ、医薬の有効成分、食品原料等として使用することができる。
【0028】
例えば、医薬品の分野では、本発明のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤は、薬学的に許容される基材や担体と共に製剤化し、医薬組成物として提供することができる。この医薬組成物には、基材や担体の他、薬学的に許容されることを限度として、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、保存剤、保湿剤、抗菌剤、防腐剤、香料、顔料、界面活性剤、安定剤、溶解補助剤等の添加剤を任意に配合してもよい。そして、当該医薬組成物の形態としては、内用形態、外用形態のいずれであってもよい。例えば、内用形態で投与される医薬組成物としては、丸剤、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、ゼリー剤、トローチ剤等の剤型が例示できる。また、外用形態で投与される医薬組成物としては、軟膏剤、液剤、乳剤、懸濁剤、貼付剤、スプレー剤、噴霧剤等の剤型が例示できる。
【0029】
そして、本発明のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤を医薬品内用組成物として用いる場合には、その有効投与量としては、カカオニブ換算で一日当り50〜500mg/体重kgであり、好ましくは100〜300mg/体重kgであるか、カカオハスク換算で一日当り200〜5000mg/体重kgであり、好ましくは500〜3000mg/体重kgである。また、医薬品外用組成物として用いる場合には、カカオニブ換算で一日当り0.01〜100mg/cmであり、好ましくは0.1〜10mg/cmであるか、カカオハスク換算で一日当り0.1〜1000mg/cmであり、好ましくは1〜100mg/cmである。
【0030】
本発明のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤を医薬組成物として用いる場合において、該医薬組成物における本発明のトリインフルエンザ感染阻害剤の配合割合は、上記有効量、該医薬組成物の剤型、投与形態等に応じて設定される。
【0031】
例えば、内用形態で投与される医薬組成物の場合においては、該医薬組成物の総量に対して、カカオニブ換算で0.01〜100質量%、好ましくは0.1〜100質量%、更に好ましくは1〜50質量%となる割合、又は、カカオハスク換算で0.1〜100質量%、好ましくは1〜100質量%、更に好ましくは10〜100質量%となる割合が挙げられる。また、外用形態で投与される医薬組成物の場合、該医薬組成物の総量に対して、カカオニブ換算で、0.01〜100質量%、好ましくは0.1〜100質量%、更に好ましくは1〜50質量%となる割合、又は、カカオハスク換算で0.1〜100質量%、好ましくは1〜100質量%、更に好ましくは10〜100質量%となる割合が挙げられる。なお、本発明のトリインフルエンザ感染阻害剤を医薬組成物として用いる場合においては、カカオ豆から得られる物質として、カカオニブ及び/又はその加工物を用いることが好ましい。
【0032】
また、飲食品の分野では、本発明の本発明のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤は、一般の食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品等に配合して用いることができる。このような食品としては、例えば、チョコレート、ビスケット、ガム、キャンディー、クッキー、グミ、打錠菓子等の菓子類;シリアル;粉末飲料、清涼飲料、乳飲料、栄養飲料、炭酸飲料等の飲料;アイスクリーム、シャーベットなどの冷菓が挙げられる。また、特定保健用食品や栄養補助食品等の場合であれば、粉末、顆粒、カプセル、シロップ、タブレット、糖衣錠等の形態のものであってもよい。
【0033】
飲食品の分野で用いる場合において、本発明のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤の配合割合は、上記有効量や食品形態等に応じて適宜設定される。一例として、食品の総量に対して、カカオニブ換算で0.1〜100質量%、好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは3〜50質量%となる割合、又は、カカオハスク換算で1〜100質量%、好ましくは10〜100質量%となる割合が挙げられる。なお、本発明のトリインフルエンザ感染阻害剤を飲食品の分野で用いる場合においては、カカオ豆から得られる物質として、カカオニブ及び/又はその加工物を用いることが好ましい。
【0034】
また、本発明のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤は、医薬品、飲食品への用途以外にも利用でき、例えば、家禽・家畜類の飼料、床敷、マスク等のフィルターとして用いることもできる。なお、本発明のトリインフルエンザ感染阻害剤を家禽・家畜類の飼料、床敷、マスク等のフィルター等の分野で用いる場合においては、カカオ豆から得られる物質として、カカオハスク及び/又はその抽出物を用いることが好ましい。
【実施例】
【0035】
[ココア抽出物の調製]
5〜500μmに粉砕調整されたココアに、溶剤として熱水を用いてココアから抽出液を取出し、5%濃度のココア抽出液を得た。
[カカオハスク抽出物の調製]
10〜50μmに粉砕処理されたカカオハスクに、溶剤として熱水を用いてカカオハスクから抽出液を取出し、5%濃度のカカオハスク抽出液を得た。
【0036】
(試験例1)
上記ココア抽出液及び上記カカオハスク抽出液による抗トリインフルエンザウイルス効果について、FFU assay(Focus Forming Unit Assay)により阻害率を測定し評価した。対象としたウイルスは、H5N1のトリインフルエンザウイルス(A/Kyoto/04)を用いた。
【0037】
まず、96穴マイクロプレートにココア抽出液、カカオハスク抽出液(試験標品)を、5%濃度からMEM培地で5倍段階希釈(2%、0.4%、0.08%、0.016%、0.0032%)したものを50μl入れた。次に、トリインフルエンザウイルスを約200FFU/50μl MEM加え、混和し30分静置した。そして、96穴マイクロプレートに培養したMDCK細胞に上記混液を加え、上記トリインフルエンザウイルスを感染させ、16時間培養した。その後、細胞をエタノールで固定し、抗A型NP(核蛋白質)モノクローナル抗体を用いて酵素抗体法により感染細胞(1FFU=1感染性ウイルス)を染色し、感染細胞数を数え、下記式(A)により、トリインフルエンザウイルスの感染率(%)を測定した。各濃度の試験標品による、トリインフルエンザウイルスの感染率の結果を図1、2に記す。
【0038】
【数1】

【0039】
図1の結果より、ココアは、トリインフルエンザウイルスに対して感染を阻害する作用を有しており、0.008%濃度のココア抽出液で、トリインフルエンザウイルスの感染率を15%以下に低減できた。
【0040】
また、カカオハスクは、トリインフルエンザウイルスに対して感染を阻害する作用を有しており、1%濃度のカカオハスク抽出液で、トリインフルエンザウイルスの感染率を10%以下に低減できた。
【0041】
(試験例2)
ココア抽出液及びカカオハスク抽出液による細胞毒性を、細胞のミトコンドリアに存在する酵素のデヒドロゲナーゼの活性を測定することにより細胞の生存性を評価する方法であるMTT法により評価した。
【0042】
MDCK細胞に、5倍段階希釈(2%、0.4%、0.08%、0.016%、0.0032%)したココア抽出液、カカオハスク抽出液を作用させ、16時間培養した後、デヒドロゲナーゼの基質であるMMT(3‐(4,5‐dimethylthiazol‐2‐yl)‐2,5‐diphenyltetrazolium bromide)を加え、3時間反応後細胞を界面活性剤で溶解し、紫色に変化した基質を比色分光光度計で吸光度を測定し、下式(B)から細胞毒性を算出した。結果を図3、4に記す。
【0043】
【数2】

【0044】
図3より、MDCK細胞を16時間培養する間に培養液中にココア抽出液を添加した場合、0.2%以下の濃度では細胞毒性は認められなかった。
【0045】
また、図4より、MDCK細胞を16時間培養する間に培養液中にカカオハスク抽出液を添加した場合、2%以下の濃度では細胞毒性は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ココア抽出液によるトリインフルエンザウイルスの感染率を示す図表である。
【図2】カカオハスク抽出液によるトリインフルエンザウイルスの感染率を示す図表である。
【図3】ココア抽出液による細胞毒性を示す図表である。
【図4】カカオハスク抽出液による細胞毒性を示す図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カカオ豆から得られる物質を有効成分として含有することを特徴とするトリインフルエンザウイルス感染阻害剤。
【請求項2】
前記カカオ豆から得られる物質が、カカオニブ、カカオニブ加工物、カカオハスク、カカオハスク抽出物から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤。
【請求項3】
前記カカオニブ加工物が、カカオマス、ココアパウダー、カカオ抽出物から選ばれた少なくとも1種である請求項2に記載のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤。
【請求項4】
カカオニブ及び/又はその加工物を固形分換算で0.01〜100質量%含有する請求項2又は3に記載のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤。
【請求項5】
前記カカオハスク及び/又はその抽出物を固形分換算で1〜100質量%含有する請求項2に記載のトリインフルエンザウイルス感染阻害剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−223970(P2007−223970A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48787(P2006−48787)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【Fターム(参考)】