説明

トリカルボン酸エステル系の軟質熱可塑性ポリウレタン

本発明は、少なくとも有機ジイソシアネート(a)とイソシアネートと反応する化合物(b)とから製造される熱可塑性ポリウレタンであって、該ポリウレタンがトリカルボン酸(g)の少なくとも一種のアルコール(h)のエステル(i)を含み、該トリカルボン酸(g)の全酸基がアルコール(h)でエステル化されていることを特徴とする熱可塑性ポリウレタンに関する。本発明はまた、この熱可塑性ポリウレタンを含むポリウレタン生成物の製造方法、また該トリカルボン酸エステルの熱可塑性ポリウレタン中での可塑剤としての利用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に機械的強度が高く加工性のよい非常に軟かな熱可塑性ポリウレタンに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は古くから知られている。優れた機械的性質に加えて安価に熱可塑的加工が可能であることなどの利点のため、これらは工業的に重要である。異なる化学構成成分を使用することにより、広い機械的性質を達成することができる。TPUとその特性や用途の総説が、例えば、Hans−Georg Wussow: “Thermoplastic Elastomers”, Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Electronic Release, 7th ed., chap. 2 “熱可塑性ポリウレタンエラストマー(thermoplastic Polyurethane Elastomers),” Wiley VCH、Weinheim (2004)に見られる。
【0003】
ショア硬度が70A未満であっても工業産業資材として扱え、従来の方法で加工可能である軟質熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、従来非常に大きな技術的経費あるいは非常に高価な原料でもってのみ生産が可能であった。高い需要があるにも係らず、ショア硬度が70A未満の可塑剤非含有TPUが市場に実質的にないという事実は、市場で生き残るにはプロセスが高コストでありすぎるか、これらの材料の機械的性質が不十分であったかを示している。
【0004】
代わりに可塑剤を用いてショア硬度が50A未満のTPUを得ようとする研究がなされた。しかしながら、現在のところ可塑剤を含むTPUで、満足できる機械的強度をもつ軟質TPUとなるものはない。この一つの理由は、可塑剤とTPUとの間の混合性が悪いことである。また、製造プロセス中で加えられる可塑剤は、実質的にいつもモル質量の増加を抑制するため、このようにして得られるTPUの機械的性質が不満足となり、及び/又は射出成型や押出成型などの従来の熱可塑的な加工方法での製造がもはや経済的に実施不可能となる。
【0005】
これらの可塑剤は、ポリエステルポリウレタン(EP1556433)用にはフタル酸エステルや安息香酸エステルであり、ポリエーテルTPU(EP134455)用には燐酸エステルである。多くの場合、毒性的な視点からは、市場で用いられている可塑剤にまったく問題はない。加工、特に安息香酸エステルの加工は、安息香酸エステルが反応の進行に影響を与えモル質量の増加を阻害するため好ましくない。特に、ポリウレタンの製造の際に、好ましくは熱可塑性ポリウレタンの製造の際にこれらの可塑剤を直接添加するとこの問題が発生する。
【0006】
EP1108735に記載のような、アジピン酸エステルや水添フタール酸エステル、脂肪酸の群に含まれる他の可塑剤やポリオレフィン類も、ポリウレタンと充分に混合しない。燐酸エステル系の可塑剤は酸を含み、この酸基がエステルの開裂を引き起こすことがあるため、エステルポリオール系のポリウレタン中での使用には適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来の原料と従来の製造方法を用いて、70ショアA未満の硬度範囲で優れた機械的性質を示し、また射出成型または押出成型により実用的な加工サイクルで最終製品に成型可能な軟質TPUを製造可能とする熱可塑性ポリウレタン(TPU)配合物を開発することである。
【0008】
可塑剤を使用するに当り、これが容易にTPUに導入されること、ほんの少量のみが移動及び/又は気化して放出されること、ポリウレタンの特性、例えば加工性や熱安定性やUV安定性に悪影響を及ぼさないこと、TPUの劣化を促進しないこと、液体媒体に対して安定であること、特に食品または人の体の一部に接触する部品に使用する材料として適当であること確認しておく必要がある。同時に、類似の可塑剤の使用と較べて、TPUの機械的性質が、例えば摩耗性や弾性が低下しないようにする必要がある。このTPUは、それ自体軟らかくて、金型から容易に外すことのできる成型組成物を与え、低収縮で優れた低温特性を示す必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、驚くべきことに、少なくとも有機ジイソシアネート(a)とイソシアネートと反応する化合物(b)とから製造される熱可塑性ポリウレタンであって、該ポリウレタンがトリカルボン酸(g)の少なくとも一種のアルコール(h)のエステル(i)を含み、該トリカルボン酸(g)の全酸基がアルコール(h)でエステル化されていることを特徴とする熱可塑性ポリウレタンで達成された。
【0010】
本発明はまた、少なくとも有機ジイソシアネート(a)とイソシアネートと反応する化合物(b)とから製造されたTPUを、好ましくは少なくとも一種の有機ジイソシアネート(a)と、イソシアネートと反応し、分子量が0.5kg/mol〜8kg/molである化合物(b)、好ましくはポリオール、より好ましくはポリマージオールと、分子量が0.06kg/mol〜0.5kg/molで、トリカルボン酸(g)の少なくとも一種のアルコール(h)とのエステル(トリカルボン酸の全酸基がアルコール(h)でエステル化されている)を含む少なくとも一種の鎖延長剤(c)とから製造された熱可塑性TPUを50重量%〜99重量%の量で含むTPUを提供する。
【0011】
本発明はまた、本発明のTPUの製造方法、それにより製造された生成物、さらにはPU中でのトリカルボン酸エステルのT可塑剤としての利用を提供する。
【0012】
好ましくは可塑剤として働くトリカルボン酸エステルを含む熱可塑性ポリウレタンは、これらのトリカルボン酸エステルが従来の可塑剤に較べて毒性的な問題がかなり小さいため、食品に接触する用途にも好適であるという長所をもっている。このトリカルボン酸エステルは容易に導入可能であり、移動が少なく、気化して放出されることも少なく、また同時にTPUの加工性や熱安定性やUV安定性などの性質を改善し、プラスチックの劣化を促進しない。
【0013】
本発明のTPUのもう一つの長所は、食品分野での利用、また食品に直接接触しての、あるいは体又は体の一部の表面に直接接触しての使用の可能性である。また、TPUは高耐熱性であり、いろいろな熱可塑成型加工方法が応用可能である。
【0014】
ある側面の各実施様態と他の側面の各実施様態とのすべての組み合わせが以下に述べられてはいないが、以下の明細書は、いろいろな側面について示された実施様態のあらゆる可能な組み合わせを暗示的に含んでいる。したがって、例えば、ある好ましい側面とある特に好ましい側面との組み合わせやある特に好ましい側面とさらに説明されなかったある側面との組合せも、これらの組合せが明確に記載されてないとしても、暗示的に含まれている。
【0015】
ある好ましい実施様態においては、本願発明は、
A)50〜99重量%の量の、
1)少なくとも一種の有機ジイソシアネート(a)と、
2)イソシアネートと反応し分子量が0.5kg/mol〜8kg/molである少なくとも一種の化合物(b)と、
3)分子量が0.06kg/mol〜0.5kg/molである少なくとも一種の鎖延長剤(c)と、
4)必要なら、触媒(b)及び/又は従来の助剤(e)及び/又は添加物(f)と
から製造産される熱可塑性ポリウレタンと、
B)1〜50重量%の量のトリカルボン酸(g)の少なくとも一種のアルコール(h)のエステル(トリカルボン酸(g)のすべての酸基がアルコール(h)でエステル化されてトリエステルを形成している)とを含むTPUを提供する。なお、トリエステルは異なるアルコール(h)でできていても同じアルコール(h)でできていてもよいが、同じアルコール(h)の方が好ましい。
【0016】
有機ジイソシアネート(a)とイソシアネートと反応する化合物(b)と鎖延長剤(c)の成分は、構成成分(j)とも呼ぶ。
【0017】
このトリカルボン酸(g)の少なくとも一種のアルコール(h)とのエステルで、トリカルボン酸(g)のすべての酸基がアルコール(h)でエステル化されたものは、熱可塑性ポリウレタン中に、構成成分(j)の総重量に対して1重量%〜50重量%の量で、好ましくは5重量%〜40重量%、特に15重量%〜35重量%の量で含まれている。
【0018】
ある好ましい実施様態においては、このトリカルボン酸(g)は分岐した脂肪族構造をとり、3個のカルボキシル基の炭素原子も含めて4〜30個の炭素原子をもち、より好ましくは4〜20個の炭素原子、特に好ましくは5〜10個の炭素原子、極めて好ましくは6個の炭素原子をもつ。これらの炭素原子は、分岐脂肪族構造中で一重結合または二重結合で相互に直接結合している。この脂肪族構造は、好ましくは炭素原子間に一重結合のみをもつ。
【0019】
他の好ましい実施様態においては、このトリカルボン酸(g)が、少なくとも一個のヒドロキシル基をもつ。この少なくとも一個のヒドロキシル基は、脂肪族構造の3個の酸基に加えてこの少なくとも一個のヒドロキシル基が結合するように、トリカルボン酸(g)の上記の脂肪族構造の炭素原子に直接的に結合している、トリカルボン酸(g)の脂肪族構造上に一個のヒドロキシル基があることが特に好ましい。特に好ましいトリカルボン酸(g)はクエン酸である。
【0020】
トリカルボン酸(g)の3個の酸基のすべてとエステル(i)を形成するアルコール(h)は、芳香族構造及び/又は脂肪族構造をもっていてもよい。1〜30個の炭素原子をもつアルコールが好ましく、1〜20個の炭素原子をもつものがさらに好ましく、1〜10個の炭素原子をもつものがさらに好ましく、1〜8個の炭素原子をもつものがさらに好ましく、1〜6個の炭素原子をもつものが特に好ましい。
【0021】
脂肪族構造をもつアルコール(h)の使用が好ましく、線状の脂肪族構造をもつアルコール(h)がより好ましく、二重結合を含まない脂肪族構造が特に好ましい。他の好ましい実施様態においては、このアルコール(h)が、偶数の炭素原子を、即ち2、4、6、8、10、12、14、16個等の炭素原子をもつ。
【0022】
極めて好ましい実施様態においては、このアルコール(h)がエタノールである。第二の極めて好ましい実施様態においては、このアルコール(h)がブタノールであり、好ましくはn−ブタノールである。トリカルボン酸(g)の3個の酸基のすべてが同じアルコール(h)でエステル化されていることがより好ましい。極めて好ましい実施様態においては、エステル(i)が2−アセトキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸トリブチルである。
【0023】
他の好ましい実施様態においては、トリカルボン酸(g)の少なくとも一個のヒドロキシル基が、カルボン酸でエステル化されている。このカルボン酸は、1〜40個の炭素原子をもつ芳香族または脂肪族カルボン酸から選ばれることが好ましく、より好ましくは1〜30個の炭素原子のもの、特に好ましくは2〜22個の炭素原子のもの、特に炭素原子数が好ましくは2の倍数であるものから選ばれることが好ましく、最も好ましいのは酢酸である。
【0024】
他の好ましい実施様態においては、トリカルボン酸(g)の少なくとも一個のヒドロキシル基がエーテル化されている。トリカルボン酸のヒドロキシル基の酸素から始まるこのエーテル基は、1〜40個の炭素原子を含み、より好ましくは1〜30個の炭素原子、特に好ましくは2〜22個の炭素原子を含み、特に好ましい実施様態では、炭素原子数が2の倍数である。他の好ましい実施様態においては、このエーテルが、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールであり、特に好ましくはポリエチレングリコールである。
【0025】
他の実施様態においては、トリカルボン酸(g)が少なくとも一個のアミン基をもつ。好ましい実施様態においては、このアミン基がカルボン酸が反応してアミドを形成する。このカルボン酸は、炭素原子数が1〜40個の、より好ましくは1〜30個の、特に好ましくは1〜22の芳香族または脂肪族カルボン酸から選ばれ、特に好ましい実施様態においては、カルボン酸の炭素原子数が2の倍数である。
【0026】
他の好ましい実施様態においては、トリカルボン酸(g)の少なくとも一個のアミン基が、少なくとも一種の基R’と2級アミンを形成するか、第二の基R”と第三級アミンを形成する。これらの基R’とR”は、それぞれ独立して1〜40個の炭素原子をもち、より好ましくは1〜30個の炭素原子、特に好ましくは2〜22個の炭素原子をもち、特に好ましい実施様態においては、炭素原子数が2の倍数である。他の好ましい実施様態においては、この基が、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールであり、特に好ましくはポリエチレングリコールである。
【0027】
TPUの製造方法は公知である。例えば、TPUは、(a)イソシアネートを(b)数平均分子量が0.5kg/mol〜6kg/molであるイソシアネートと反応する化合物と(c)数平均分子量が0.05kg/mol〜0.5kg/molである鎖延長剤と、必要なら(d)触媒及び/又は(e)通常の助剤及び/又は(f)添加物の存在下で、反応させて製造できる。可塑剤としても作用するエステル(i)を、TPUの製造前または製造中にイソシアネートと反応する化合物(b)に添加することができ、あるいはできたTPUに、例えば溶融または軟化TPUに添加することができる。
【0028】
熱可塑性ポリウレタンを用いる一つ利点は、TPUが可塑剤の効果を失うことなく熱可塑的に加工可能であることである。TPUの製造で従来より使用されている成分(a)と(b)と(c)、また必要なら成分(d)及び/又は(e)及び/又は(f)を、例として以下に記載する。
【0029】
用いる有機ジイソシアネート(a)は、既存の脂肪族、環状脂肪族、芳香脂肪族及び/又は芳香族イソシアネートであり、例えば、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン及び/又はオクタメチレンジイソシアネートや、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、ブチレン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキサン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4−、2,4−及び/又は2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDl)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネートがあげられ、好ましくはジフェニルメタン2,2’−、2,4−及び/又は4,4−ジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタン4,4’−、2,4−及び/又は2,2’−ジイソシアネート及び/又はヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)があげられる。
【0030】
特に好ましい実施様態においては、この有機ジイソシアネートが、少なくとも90重量%の、より好ましくは少なくとも95重量%、特に好ましくは少なくとも99重量%のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含むイソシアネートである。
【0031】
公知のイソシアネートと反応する化合物を、上記イソシアネートと反応する化合物(b)として使用でき、その例としては、数平均分子量が0.5kg/mol〜8kg/molの範囲である、好ましくは0.6kg/mol〜6kg/mol、特に0.8kg/mol〜3kg/molの範囲であるポリエステルオール、ポリエーテルオール及び/又はポリカーボネートジオール(これらは通常、一括して「ポリオール(b1)」と呼ばれる)があげられる。ポリオール(b1)のジイソシアネート(a)に対する平均官能価は、1.7〜2.3の範囲であり、より好ましくは1.8〜2.2、より好ましくは1.9〜2.1、より好ましくは1.95〜2.05、さらに好ましくは1.98〜2.02、特に好ましくは1.99〜2.01であり、極めて好ましくは2である。
【0032】
ポリオール(b1)は、特に好ましくは線状でヒドロキシル末端のポリオール(b1)である。製造上の理由のため、これらのポリオール(b1)は少量の非線形化合物を含むことが多い。したがって、これらはよく「実質的に線状のポリオール」とよばれる。ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールまたはこれらの混合物が好ましい。
【0033】
用いるポリオール(b1)は、好ましくはポリエーテルポリオールであり、例えば一般的には既知の出発物質と通常使用されるアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、エピクロロヒドリン、プロピレンオキシド及び/又は2,3−ブチレンオキシドとから得られるものであり、好ましくは1,2−プロピレンオキシドとエチレンオキシド系のポリエーテルオールである。ポリオキシテトラメチレングリコールが極めて好ましい。これらのアルキレンオキシドは個別に用いることもできるし、続けてあるいは混合して用いることもできる。
【0034】
可能な開始剤分子は、例えば、水や、N−メチルジエタノールアミンなどのN−アルキルジエタノールアミンなどのアミノアルコール、あるいはエチレングリコールや1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオールである。適当なら、開始剤分子の混合物を使うこともできる。他の適当なポリエーテルオールは、ヒドロキシル基を含有するテトラヒドロフランの重合生成物である。
【0035】
特に好ましくは、このポリオール(b1)がアジピン酸とブタンジオール及び/又はエチレングリコールのポリマーである。他の特に好ましい実施様態においては、このポリオールがアジピン酸とブタンジオールとヘキサンジオールのポリマーであり、この特に好ましいポリオール(b1)の実施様態ではその数平均分子量が0.8kg/mol〜2.5kg/molの範囲である。
【0036】
ポリオール(b1)がブタンジオールとアジピン酸由来のポリマーである場合は、その数平均分子量は、0.8kg/mol〜2.5kg/molの範囲であり、より好ましくは0.8kg/mol〜2kg/molの範囲である。
【0037】
ポリオール(b1)がエチレングリコールとアジピン酸由来のものである場合は、このポリオール(b1)の好ましい数平均分子量は1kg/mol〜2.5kg/molであり、より好ましくは1.5kg/mol〜2.5kg/mol、特に好ましくは1.8〜2.3kg/molの範囲である。
【0038】
このポリオール(b1)がエチレングリコールとブタンジオールとアジピン酸に由来するものである場合は、この数平均分子量が好ましくは1kg/mol〜2.5kg/molの範囲である。ポリオール(b1)中のエチレングリコールのブタンジオールに対するモル比は、好ましくは1:4〜4:1の範囲であり、より好ましくは3:1〜1:3、さらに好ましくは1:2〜2:1の範囲であり、特に好ましくは1:1である。
【0039】
ポリオール(b1)がアジピン酸とブタンジオールとヘキサンジオールに由来するものである場合は、その数平均分子量は、好ましくは1kg/mol〜2.5kg/molであり、このポリオール(b1)中のブタンジオールのヘキサンジオールに対するモル比が、より好ましくは1:4〜4:1の範囲であり、より好ましくは3:1〜1:3、より好ましくは1:2〜2:1の範囲であり、特に好ましくは1:1である。
【0040】
また、低レベルの不飽和性をもつポリエーテルオールを上記ポリエーテルオールとして用いることもできる。本発明の目的では、低レベルの不飽和をもつポリオールとは、特に不飽和化合物含量が0.02meq/g未満の、好ましくは0.01meq/g未満のポリエーテルアルコールである。このようなポリエーテルアルコールは、通常アルキレンオキシドを、特にエチレンオキシド、プロピレンオキシド及びこれらの混合物を、高活性触媒の存在下で上記のジオールまたはトリオールに添加して製造される。
【0041】
このような高活性触媒は、例えば、水酸化カリウムまたは水酸化セシウムと多金属シアン化物触媒、いわゆるDMC触媒である。よく用いられるDMC触媒はヘキサシアナトコバルト酸亜鉛である。このDMC触媒は、反応後もポリエーテルアルコール中の残留させることができるが、通常は、例えば沈降または濾過により除かれる。
【0042】
ポリオール(b1)に代えて、いろいろなポリオールの混合物が使用可能であり、これも同様にポリオール(b1)と表す。本発明の熱可塑性ポリウレタンは、特に好ましくはそのポリオール(b1)が、分子量が0.6kg/mol〜2kg/molの範囲の、好ましくは0.8kg/mol〜1.4kg/mol、特に好ましくは0.95kg/mol〜1.05kg/molの範囲のポリテトラヒドロフラン系のものである。
【0043】
鎖延長剤(c)として、一般的には既知の分子量が0.06kg/mol〜0.5kg/molの脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は環状脂肪族化合物が使用可能であり、好ましくは二官能性の化合物、例えばジアミン及び/又はアルキレン基中に2〜10個の炭素原子をもつアルカンジオール(特に、1,4−ブタンジオールや1,6−ヘキサンジオール)及び/又は3〜8個の炭素原子をもつジアルキレン、トリアルキレン、テトラアルキレン、ペンタアルキレン、ヘキサアルキレン、ヘプタアルキレン、オクタアルキレン、ノナアルキレン及び/又はデカアルキレングリコールが使用可能であり、好ましくは相当するオリゴプロピレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールが使用可能であり、また鎖延長剤の混合物の使用も可能である。
【0044】
1,2−エタンジオール(1,2−エチレンジオールともいう)を鎖延長剤として使用することが好ましい。1,2−エタンジオールは、TPU用に使用可能な鎖延長剤としてよく知られている。しかし、このジオールは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)または他のイソシアネートと共に形成する硬質相の熱安定性が低く、したがって従来の熱可塑的加工にはあまり適していないため、使用されない。しかしながら、驚くべきことに、改善された機械的性質をもつ材料を得るために、硬度がショア70A未満の、好ましくはショア60A未満、より好ましくはショア50A未満、特に好ましくはショア40A未満の軟質材料中に微量の硬質相を使用することができる。これらの機械的性質は、ポリオール(b1)を用いて、好ましくはアジピン酸系のもの、特に以下に述べるものを使って改善できる。また、トリカルボン酸(g)のエステル(i)を好ましくは可塑剤として使用する場合は、これにより、非常に容易に工業的加工が可能で、好ましくは「ワンショット」法で加工可能で上記のショア硬度を与える材料を製造することができる。
【0045】
ある好ましい実施様態においては、1,2−エチレンジオールが、有機ジイソシアネート(a)とイソシアネートと反応する化合物(b)と鎖延長剤(c)を含む構成成分(j)の総重量に対して2重量%〜5重量%の量で用いられる。より好ましくは、1,2−エチレンジオールが、このように2.1重量%〜4重量%の量で、より好ましくは2.5重量%〜3.5重量%、特に好ましくは2.5重量%〜3重量%の量で使用される。
【0046】
好適な触媒(d)、特に有機ジイソシアネート(a)のNCO基と構成成分(b)と(c)のヒドロキシル基との反応を加速するものは、先行技術に既知で従来から使用されている、トリエチルアミンやジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の第三級アミンであり、また特に、チタン酸エステルや、鉄(III)アセチルアセトネートなどの鉄化合物、スズジアセテートやスズジオクトエート、スズジラウレートなどのスズ化合物、またはジブチルスズジアセテートやジブチルスズジラウレートなどの脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩などの有機金属化合物である。これらの触媒は通常、100重量部のポリヒドロキシル化合物(9b)に対して0.0001〜0.1重量部の量で使用される。スズ系の触媒、特にスズジオクトエートの使用が好ましい。
【0047】
触媒(d)に加えて、従来から使用されている助剤(e)及び/又は添加物(f)をトリカルボン酸(g)のエステル(i)に、好ましくは可塑剤として用いられるものに、構成成分(a)〜(c)として添加することができる。助剤(f)としては、例えば表面活物質や難燃剤、核剤、酸化安定剤、潤滑剤や離型剤、染顔料、例えば加水分解や光、熱または変色に対する安定化剤、添加物(f)があげられ、また例えば無機及び/又は有機の充填材や強化材があげられる。加水分解阻害剤としては、オリゴマー状及び/又はポリマー状の脂肪族または芳香族カルボジイミドが好ましい。本発明のTPUの老化に対する安定化のために、安定剤をTPUに添加することが好ましい。本発明の目的において、安定剤は有害な環境の影響からプラスチックまたはプラスチック混合物を保護する添加物である。その例としては、第一級及び第二級の酸化防止剤や「ヒンダードアミン光安定剤」、UV吸収剤、加水分解阻害剤、ラジカル捕捉剤、難燃剤があげられる。市販の安定剤の例が、Plastics Additive Handbook, 5th Edition, H. Zweifel, ed., Hanser Publishers, Munich, 2001 ([1]), p. 98−136にあげられている。
【0048】
本発明のTPUが使用中に熱酸化的ダメージに曝らされる場合には、酸化防止剤を添加してもよい。フェノール性酸化防止剤の使用が好ましい。フェノール性酸化防止剤の例が、Plastics Additive Handbook, 5th edition, H. Zweifel, ed, Hanser Publishers, Munich, 2001, pages 98−107 and p. 116−121に見られる。
【0049】
分子量が0.7kg/molより大きなフェノール性酸化防止剤が好ましい。好ましく用いられるフェノール性酸化防止剤の一例が、ペンタエリスリチルテトラキス(3−(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(イルガノックス(R)1010)である。これらのフェノール性酸化防止剤は、一般的には0.1重量%〜5重量%の濃度で、好ましくは0.1重量%〜2重量%、特に0.5重量%〜1.5重量%の濃度で使用される。
【0050】
紫外光に曝らされるTPUは、さらにUV吸収剤で安定化させることが好ましい。UV吸収剤は、一般的には高エネルギー紫外光を吸収しそのエネルギーを放出する分子であるとされている。従来工業的に利用されているUV吸収剤は、例えば、シンナミックエステルやジフェニルシアノアクリレート、ホルムアミジン、ベンジリデンマロネート、ジアリールブタジエン、トリアジン、ベンゾトリアゾールの群に属す。市販のUV吸収剤の例が、Plastics Additive Handbook, 5th edition, H. Zweifel, ed, Hanser Publishers, Munich, 2001, p. 116−122に見出される。
【0051】
ある好ましい実施様態においては、これらのUV吸収剤の数平均分子量が0.3kg/molより大きく、特に0.39kg/molより大きい。また、好ましく用いられるUV吸収剤の分子量は5kg/mol以下であり、特に好ましくは2kg/mol以下である。
【0052】
特に有用なUV吸収剤がベンゾトリアゾール類である。特に好適なベンゾトリアゾールの例としては、チヌビン(R)213やチヌビン(R)328、チヌビン(R)571、チヌビン(R)384、またEversorb(R)82があげられる。これらのUV吸収剤は、通常TPUの総重量に対して0.01〜5重量%の量で添加され、好ましくは0.1〜2.0重量%、特に0.2〜0.5重量%の量で添加される。
【0053】
上記の酸化防止剤とUV吸収剤によるUV安定化では、UV光の悪影響に対して本発明のTPUを充分に安定とするには不十分であることが多い。この場合、本発明のTPUの酸化防止剤とUV吸収剤にヒンダードアミン光安定剤(HALS)を添加することができる。HALS化合物の活性は、ポリマーの酸化メカニズムを阻害するニトロキシル基を形成する能力による。HALSは多くのポリマーに対して高効率的なUV安定剤である。
【0054】
HALS化合物は一般的に既知であり市販されている。市販のHALSの例が、
Plastics Additive Handbook, 5th edition, H. Zweifel, Hanser Publishers, Munich, 2001, p. 123−136に見出される。ヒンダードアミン光安定剤としては、数平均分子量が0.5kg/molより大きな「ヒンダードアミン光安定剤」が好ましい。また、好ましいHALS化合物の分子量は10kg/mol以下である必要があり、特に好ましくは5kg/mol以下である。
【0055】
特に好ましい「ヒンダードアミン光安定剤」は、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)セバケート(チヌビン(R)765、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)と1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−ヒドロキシピペリジンとコハク酸の縮合生成物(チヌビン(R)622)である。生成物のチタン含量が<150ppmの時、好ましくは<50ppm、特に<10ppmの時には、1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとコハク酸の縮合生成物(チヌビン(R)622)が極めて好ましい。HALS化合物は、好ましくは0.01〜5重量%の濃度で使用され、特に好ましくは0.1〜1重量%、特に0.15〜0.3重量%の濃度で使用される。
【0056】
特に好ましいUV安定化は、フェノール性安定剤とベンゾトリアゾールとHALS化合物との混合物を上記の好ましい量で含んでいる。
【0057】
上述の助剤や添加物に関する他の詳細が、専門文献中に、例えばPlastics Additive Handbook, 5th edition, H. Zweifel, ed, Hanser Publishers, Munich, 2001に見出される。
【0058】
この文献中に示されるすべての分子量の単位は[kg/mol]であり、特に断りのない限り、数平均分子量(Mn)である。
【0059】
TPUの硬度の調整のために、イソシアネートと反応する構成成分化合物(b)と鎖延長剤(c)を、比較的広い範囲のモル比で変更することができる。用いる鎖延長剤(c)の総計に対する成分(b)のモル比が10:1〜1:10であることが、特に1:1〜1:4であることが有用であることが明らかとなった。なお、TPUの硬度は、(c)の含量の増加と共に増加する。この反応は、従来の指数で、好ましくは指数が60〜120で、特に好ましくは指数が80〜110で実施できる。なお、この指数は、反応に用いる成分(a)の総イソシアネート基の成分(b)と(c)のイソシアネートと反応する基、即ち活性水素に対する比率と定義される。指数が100の時、成分(a)のイソシアネート基一つ当り、成分(b)と(c)のイソシアネートと反応する基が一つある。100を超える指数では、OH基を超える量のイソシアネート基が存在する。
【0060】
このTPUは、既知の方法で、例えば反応押出機またはベルトによりワンショット法またはプレポリマー法で連続的に製造でき、あるいはプレポリマー方法で回分的に製造できる。これらの方法において、成分(a)と(b)と(c)、また使用の場合は反応成分(d)及び/又は(e)を、逐次的または同時に相互に混合し、直ちに反応を開始させることができる。押出機法では、構成成分(a)と(b)と(c)、また使用の場合は成分(d)及び/又は(e)が、個別にまたは混合物として押出機中に導入され、例えば100℃〜280℃の温度で、好ましくは140℃〜250℃の温度で反応させられ、得られるTPUを押し出し冷却してペレット化する。本発明のTPUは、「ワンショット」方法で製造することが特に好ましく、その場合、TPUの全構成成分が混合室内で混合されて、次いで反応して所望のTPUを与える。
【0061】
より好ましくは、ワンショット方法で製造されたTPUを、反応を最後にまで進めるためにベルト装置上に置き、次いで好ましくはペレットに加工し、好ましくはこのベルト装置に直結した押出機によりペレットに加工し、そのTPUを溶融押出してストランドとする。ペレットを製造するには、このストランドを機械的に粉砕してペレットとする。ある同様に好ましい実施様態においては、押出機のダイプレートから溶融物が出ると、直ちにこのストランドが直接、好ましくは水中で切断される。
【0062】
また、この反応混合物は、二軸押出機中で「ワンショット」法で反応させてTPUを合成し、次いで上述のようにしてペレット化することが好ましい。
【0063】
本発明のTPUの製造は、以下の成分を用いて「ワンショット」法で行うことが特に好ましい:
A)50〜99重量%の、
1)少なくとも一種の有機ジイソシアネート(a)と、
2)少なくとも一種の、イソシアネートと反応し分子量が0.5kg/mol〜8kg/molである化合物(b)と、
3)分子量が0.06kg/mol〜0.5kg/molである鎖延長剤と、
4)必要なら、触媒(d)及び/又は従来から使用されている助剤(e)及び/又は添加物(f)とから製造される熱可塑性ポリウレタンと、
B)1〜50重量%のトリカルボン酸(g)の少なくとも一種のアルコール(h)のエステル(トリカルボン酸のすべての酸基がアルコール(h)でエステル化されたもの)。
【0064】
このようにして製造される生成物では、最初に述べた本発明のTPUの長所が特に強化される。
【0065】
トリカルボン酸(g)エステル(i)を含むTPUは、DIN53505により求めたショア硬度として80ショアA未満であることが好ましく、より好ましくは70ショアA未満、より好ましくは60ショアA未満、さらに好ましくは50ショアA未満、特に好ましくは40ショアA未満である。他の好ましい実施様態においては、TPUのDIN53504により求めた引張強度が5MPaを超え、好ましくは8MPaを超え、特に好ましくは10MPaを超える。他の好ましい実施様態においては、本発明のTPUのDIN53516により求めた耐磨耗性が、200mm3未満、好ましくは150mm3未満、特に好ましくは100mm3未満である。
【0066】
トリカルボン酸(g)エステル(i)を含む本発明のTPUの加工は、従来の方法で、例えば射出成型、カレンダ法、粉末焼成または押出により行われる。本発明のTPUは、通常ペレット状または粉末状で存在し、上述の方法で加工されて、フィルムや繊維や成型物、塗膜、減衰部品、シール、ベローズ、繊維、建物や輸送用フローリング、ケーブル、ケーブルプラグ、ケーブル被覆、ラミネート、プロファイル材、ベルト、ローラー、ホース、牽引ケーブル、靴底、太陽電池モジュール、プラグ接続、自動車のトリムまたはワイパーブレードなどの生成物を与える。好ましいのは、自動車部品、繊維、フィルム、ケーブル、ホースまたは靴である。また、本発明の熱可塑性ポリウレタンは、熱可塑性記録材料の改質剤として使用される。
【0067】
本発明はまた、トリカルボン酸(g)の少なくとも一種のアルコール(h)のエステル(そのエステル(i)の全酸基がアルコール(h)でエステル化されている)の、熱可塑性ポリウレタン中での可塑剤としての利用、より好ましくはDIN53505により求めた硬度が80ショアA未満である、好ましくは70ショアA未満、より好ましくは60ショアA未満、さらに好ましくは50ショアA未満、特に好ましくは40ショアA未満である熱可塑性ポリウレタン中の可塑剤としての利用を提供する。
【0068】
他の好ましい実施様態においては、化学発泡剤及び/又は物理発泡剤またはガスが、本発明の熱可塑性ポリウレタンに加えられる。このようにして発泡生成物が製造される。これらは、上述の製品以外に、特に靴やハンドルやダンパーとなりうる。
【実施例】
【0069】
ポリウレタンの機械的性質を以下の実施例で実証する。本発明のすべての材料または混合物は、反応押出機でワンショット法で製造した。
【0070】
実施例1
600gのジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートと、169.25gの1,4−ブタンジオールと1000gの数平均モル質量が2kg/molの、アジピン酸と1,2−エタンジオールと1,4−ブタンジオール(質量比が1:1)由来のポリマージオールでを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、8gの加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状カルボジイミド)と5.36gの酸化防止剤(テトラメチルキシレンとポリエチレングリコール由来のヒンダードフェノール)と3.58gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)をそこに添加する。このようにして得られるTPUペレットを射出成型で成型して試験試料を得て、これを打ち抜いて得たS2試験棒(DIN53504に準ずる)を機械的試験にかけた。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は210℃である。
【0071】
実施例2
308.12g(15重量%)の2−アセトキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸トリブチルを実施例1の配合物に加えた。
【0072】
実施例3
558.18g(25重量%)の2−アセトキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸トリブチルを実施例1の配合物に加えた。
【0073】
実施例4
600gの4,4’−MDIと169.25gの1,4−ブタンジオールと1000gの数平均モル質量が2kg/molである、アジピン酸と1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオール(質量比が1:1)に由来するポリマージオールを反応押出機中で処理して、TPUを合成する。また、8gの加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状のカルボジイミド−テトラメチルキシリルジイソシアネート)と5.36gの酸化防止剤(テトラメチルキシレンとポリエチレングリコール由来のヒンダードフェノール)と3.58gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)を添加する。このようにして得られるTPUペレットを射出成型で成型して試験試料を得て、これを打ち抜いて得たS2試験棒(DIN53504に準ずる)を機械的試験にかける。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は210℃である。
【0074】
実施例5
308.12g(15重量%)の2−アセトキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸トリブチルを実施例4の配合物に加えた。
【0075】
実施例6
558.18g(25重量%)の2−アセトキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸トリブチルを実施例4の配合物に加えた。
【0076】
実施例7
700gのジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートと161.97gの1,4−ブタンジオールと1000gの数平均モル質量が1kg/molのポリテトラヒドロフランを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、18.85gの酸化防止剤(テトラメチルキシレンとポリエチレングリコール由来のヒンダードフェノール)と3.77gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)を添加する。このようにして得られるTPUペレットを射出成型で成型して試験試料を得て、これを打ち抜いて得たS2試験棒(DIN53504に準ずる)を機械的試験にかける。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は210℃である。
【0077】
実施例8
325.09g(15重量%)の2−アセトキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸トリブチルを実施例7の配合物に加えた。
【0078】
実施例9
588.93g(25重量%)の2−アセトキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸トリブチルを実施例7の配合物に加えた。
【0079】
実施例10(比較例)
325.09g(15重量%)の水添フタール酸エステル群に属する可塑剤(シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル)を実施例7の配合物に加えた。
【0080】
実施例11(比較例)
588.93g(25重量%)の燐酸エステル群の可塑剤(ジフェニルクレジルホスフェート)を実施例7の配合物に加えた。
【0081】
実施例12
機械的試験は、DIN53505(ショア)、53504(引張強度、破断伸度)とDIN53516(摩耗)に準じて行う。上記実施例のS2試験棒(DIN53504に準ずる)は、よりよい比較のために製造後100℃で15時間保存した。
【0082】
【表1】

【0083】
表より、実施例9と実施例10との直接比較により、本発明の可塑剤は、熱可塑性ポリウレタン中で、市販の可塑剤と少なくとも同等な程度有効であることがわかる。
【0084】
本発明の可塑剤は低ショア硬度のTPUの製造にも使用できる。以下の実施例では、実施例1の配合物を、例としてより柔らかな配合物として示す。
【0085】
実施例13
350gのジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)と76.92gの1,4−ブタンジオールと1000gの平均モル質量が2kg/molで、アジピン酸と1,2−エタンジオールと1,4−ブタンジオール(質量比が1:1である)に由来するポリマージオールを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、8gのa加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状カルボジイミド)と3.21gの酸化防止剤(テトラメチルキシレンとポリエチレングリコール由来のヒンダードフェノール)と3.21gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)と160.2g(10重量%)の上記可塑剤の2−アセトキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸トリブチルを添加する。このTPUペレットを射出成型で成型して試験試料を得て、これを打ち抜いて得たS2試験棒(DIN53504に準ずる)を機械的試験にかける。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は210℃である。
【0086】
実施例14(比較例)
市販のジプロピレングリコールジベンゾエート(160.2g、10重量%)を可塑剤として用いて、実施例13の方法を繰り返す。
【0087】
実施例15
248.63g(15重量%)の上記可塑剤を添加して、実施例13の方法を繰り返す。
【0088】
実施例16
345.92g(20重量%)の上記可塑剤を添加して、実施例13の方法を繰り返す。
【0089】
実施例17(比較例)
市販のジプロピレングリコールジベンゾエート(345.92g、20重量%)を可塑剤として用いて、実施例13の方法を繰り返す。
【0090】
実施例18
360gの4,4’−MDIと91.2gの1,4−ブタンジオールと1000gの数平均モル質量が2.4kg/molで、アジピン酸と1,4−ブタンジオールに由来するポリマージオールを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、8gの加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状カルボジイミド)と3.21gのn酸化防止剤(テトラメチルキシレンとポリエチレングリコール由来のヒンダードフェノール)と3.21gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)と252.8gの可塑剤(15重量%)の2−アセトキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸トリブチルを加えた。
【0091】
実施例19(比較例)
市販のジプロピレングリコールジベンゾエート(160.2g、10重量%)を可塑剤として用いて、またこれを351.75g(20重量%)添加して実施例13の方法を繰り返す。
【0092】
実施例20
機械的試験は、DIN53505(ショア)、53504(引張強度、破断伸度)とDIN53516(摩耗)に準じて行う。上記実施例のS2試験棒(DIN53504に準ずる)は、よりよい比較のために製造後100℃で15時間保存した。
【0093】
【表2】

【0094】
機械的試験データから、本発明の材料が有用なTPUであり、市販の可塑剤と比較して優れた性質をもつTPUであることがわかる。
【0095】
いろいろなTPUの機械的データを実施例21〜33で比較する。硬度が50ショアA未満である非常に軟らかい材料の場合、従来の方法で加工可能で測定可能なこの種の材料が今までなかったため、従来配合物に対する比較データがない。比較のために、EP1277773B1に記載の方法でTPUを製造した。なお、この文献を引用として本明細書に組み込む。EP1277773B1を引用として、本明細書の構成要素として組み込む。
【0096】
本発明の材料はすべて反応押出機でワンショット法で製造されたものであり、得られるペレットは、射出成型で2mm厚の試験板とし、ここからDIN53504に準ずるS2棒を打ち抜き、これを次いで機械的試験にかけた。
【0097】
実施例21
408gのジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート)と51.02gの1,2−エタンジオールと1600gの数平均モル質量が2000g/molであり、アジピン酸と1,2−エタンジオール1,4−ブタンジオール(モル比が1:1である)由来するポリマージオールを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、12.8gの加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状カルボジイミド)と6.25gの酸化防止剤(テトラメチルキシレンとポリエチレングリコール由来のヒンダードフェノール)と4.16gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)をそこに添加する。このTPUペレットを射出成型で成型して試験試料とし、機械的試験にかける。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は215℃である。
【0098】
実施例22
336gのジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートと49.35gの1,2−エタンジオールと1600gの数平均モル質量が3000g/molである、アジピン酸と1,3−メチルプロパンジオールと1,4−ブタンジオール(質量比が1:1のもの)に由来するポリマージオールを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、12.8gの加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状カルボジイミド)と、6.02gの酸化防止剤(テトラメチルキシレンとポリエチレングリコール由来のヒンダードフェノール)と4.02gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)をそこに添加する。このTPUペレットを射出成型で成型して試験試料とし、機械的試験にかける。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は215℃である。
【0099】
実施例23
550.2gのジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートと49.6gの1,2−エタンジオールと1400gの数平均モル質量が1000g/molで、アジピン酸と1,4−ブタンジオールに由来するポリマージオールを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、11.2gの加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状カルボジイミド))と6.06gのn酸化防止剤(テトラメチルキシレンとポリエチレングリコール由来のヒンダードフェノール)と4.04gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)をそこに添加する。このTPUペレットを射出成型で成型して試験試料とし、機械的試験にかける。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は215℃である。
【0100】
実施例24
408gのジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートと51.02gの1,2−エタンジオールと1600gの数平均モル質量が2000g/molで、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオール(モル比が1:1である)に由来するポリマージオールを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、12.8gの加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状カルボジイミド)と6.25gの酸化防止剤(テトラメチルキシレンとポリエチレングリコール由来のヒンダードフェノール)と4.16gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)をそこに添加する。このTPUペレットを射出成型で成型して試験試料とし、機械的試験にかける。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は215℃である。
【0101】
実施例25
368gのジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートと49.94gの1,2−エタンジオールと1600gの数平均モル質量が2500g/molで、アジピン酸と1,4−ブタンジオールに由来するポリマージオールを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、12.8gの加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状カルボジイミド)と6.12gの酸化防止剤(テトラメチルキシレンとポリエチレングリコール由来のヒンダードフェノール)と4.08gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)をそこに添加する。このTPUペレットを射出成型で成型して試験試料とし、機械的試験にかける。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は215℃である。
【0102】
実施例26
370gのジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート)と50.63gの1,2−エタンジオールと1600gの数平均モル質量が2200g/molであり、アジピン酸と1,2−エタンジオール由来するポリマージオールを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、12.8gの加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状カルボジイミド)と6.12gの酸化防止剤(テトラメチルキシレンとポリエチレングリコール由来のヒンダードフェノール)と4.14gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)をそこに添加する。このTPUペレットを射出成型で成型して試験試料とし、機械的試験にかける。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は205℃である。
【0103】
比較例27
EP1277773B1に記載の市販のポリエステルTPU、二段階重合方法で生産されたTPU(データシートElastolian C 60 A 10 HPM)。
【0104】
比較例28
EP1338614B1の詳細、二段階プレポリマー方法で生産されたTPU。EP1338614B1を、参照として構成要素として本明細書に組み込む。
【0105】
表3
機械的試験は、DIN53505(ショア)、53504(引張強度、破断伸度)とDIN53516(摩耗)に準じて行う。試験試料は、よりよい比較のために製造後100℃で15時間保存した。
【0106】
他の脂肪族ジオールを鎖延長剤として用いる比較例は示していない。これらは結晶性が悪く、射出成型で有用な試験試料が得られなかったためである。
【0107】
【表3】

【0108】
この機械的試験データから、本発明の材料が、低硬度であるに係らず非常に優れた機械的性質を示す高品質のTPUであることがわかる。
【0109】
大きなモル質量をもつブタンジオールアジペートを軟質相としてもち、軟質相結晶化を起こしやすいTPUに関する実施例25は、表中で目立っている。したがって、この生成物は使用温度でかなりの後硬化を起こす。軟らかい生成物を得るには、結晶化しにくいポリマージオールを選ぶ必要がある。
【0110】
以下の実施例(28〜33)では、鎖延長剤としての1,2−エタンジオールと可塑剤とを用いる適当な配合物が、非常に軟らかくまた機械性能のよいTPUを与えうることを示す。
【0111】
実施例28
370gのジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートと57.72gの1,2−エタンジオールと1000gの数平均モル質量が2000g/molであり、アジピン酸と1,2−エタンジオールと1,4−ブタンジオール(モル比が1:1である)に由来するポリマージオールを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、10gの加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状カルボジイミド)と3.4gの酸化防止剤(テトラメチルキシレンとポリエチレングリコール由来のヒンダードフェノール)と3.4gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)と254.91g(15重量%)の上記可塑剤の2−アセトキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸トリブチルをそこに添加する。このTPUペレットを射出成型で成型して試験試料とし、機械的試験にかける。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は215℃である。
【0112】
比較例29
350gのジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートと、76.74gの1,4−ブタンジオールと1000gの数平均モル質量が2000g/molであり、アジピン酸と1,2−エタンジオールと1,4−ブタンジオール(質量比が1:1のもの)に由来するポリマージオールを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、10gの加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状カルボジイミド)と、3.4gの酸化防止剤(テトラメチルキシレンとポリエチレングリコール由来のヒンダードフェノール)と3.4gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)と254.74g(15重量%)の上記可塑剤の2−アセトキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸トリブチルをそこに添加する。このTPUペレットを射出成型で成型して試験試料とし、機械的試験にかける。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は215℃である。
【0113】
実施例30
260gのジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートと32.33gの1,2−エタンジオールと1000gの数平均モル質量が2000g/molであり、アジピン酸と1,2−エタンジオールと1,4−ブタンジオール(質量比が1:1のもの)に由来するポリマージオールを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、10gの加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状カルボジイミド)と3.08gの酸化防止剤(テトラメチルキシレンとポリエチレングリコール由来のヒンダードフェノール)と3.08gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)と230.89g(15重量%)の上記可塑剤の2−アセトキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸トリブチルをそこに添加する。このTPUペレットを射出成型で成型して試験試料とし、機械的試験にかける。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は215℃である。
【0114】
実施例31
260gのジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートと33.87gの1,2−エタンジオールと1000gの数平均モル質量が2000g/molであり、アジピン酸と1,2−エタンジオールと1,4−ブタンジオール(質量比が1:1のもの)に由来するポリマージオールを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、10gの加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状カルボジイミド)と3.08gの酸化防止剤(テトラメチルキシレンとポリエチレングリコール由来のヒンダードフェノール)と3.08gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)と230.89g(15重量%)の上記可塑剤の2−アセトキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸トリブチルをそこに添加する。このTPUペレットを射出成型で成型して試験試料とし、機械的試験にかける。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は215℃である。
【0115】
実施例32
260gのジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートと34.23gの1,2−エタンジオールと1000gの数平均モル質量が2000g/molであり、アジピン酸と1,2−エタンジオールと1,4−ブタンジオール(質量比が1:1のもの)に由来するポリマージオールを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、10gの加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状カルボジイミド)と3.09gの酸化防止剤(テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン)と4.63gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)と231.52g(15重量%)の上記可塑剤のジプロピレングリコールジベンゾエートをそこに添加する。このTPUペレットを射出成型で成型して試験試料とし、機械的試験にかける。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は215℃である。
【0116】
比較例33
325gのジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートと73.83gの1,4−ブタンジオールと1000gの数平均モル質量が2000g/molで、アジピン酸と1,2−エタンジオールと1,4−ブタンジオール(質量比が1:1のもの)に由来するポリマージオールを、反応押出機中で処理してTPUを合成する。また、10gのa加水分解安定剤(TMDXI由来のオリゴマー状カルボジイミド)と3.78gのn酸化防止剤(テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル− 4−ヒドロキシヒドロシンナメート)と5.67gの潤滑剤(部分加水分解モンタン酸エステル)と472.76g(25重量%)の上記可塑剤のジプロピレングリコールジベンゾエートをそこに添加する。このTPUペレットを射出成型で成型して試験試料とし、機械的試験にかける。試験試料の製造の際の溶融物の最高温度は215℃である。
【0117】
表4
機械的試験は、DIN53505(ショア)、53504(引張強度、破断伸度)とDIN53516(摩耗)に準じて行う。試験試料は、よりよい比較のために製造後100℃で15時間保存した。
【0118】
【表4】

【0119】
表4の数値より、本発明の配合物によりTPU用の通常の原料を用いてワンショット方法で、可塑剤を含む非常に軟らかいTPUが得られることがわかる。ショア硬度が40A未満であり、射出成型で成型して工業用部品を与えるTPUは、文献中に見当たらず、このため比較例は記載していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機ジイソシアネート(a)とイソシアネートと反応する化合物(b)とから製造される熱可塑性ポリウレタンであって、該ポリウレタンがトリカルボン酸(g)の少なくとも一種のアルコール(h)のエステル(i)を含み、該トリカルボン酸(g)の全酸基がアルコール(h)でエステル化されていることを特徴とする熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
A)50〜99重量%の、
1)少なくとも一種の有機ジイソシアネート(a)と、
2)イソシアネートと反応し、分子量が0.5kg/mol〜8kg/molである少なくとも一種の化合物(b)と、
3)分子量が0.06kg/mol〜0.5kg/molである少なくとも一種の鎖延長剤(c)と、
4)必要なら、触媒(d)及び/又は通常使用される助剤(e)及び/又は添加物(f)とから製造される熱可塑性ポリウレタンと
B)1〜50重量%の上記エステル(i)とを含む請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
トリカルボン酸(g)が、分岐状で、且つ4〜30個の炭素原子をもつ、より好ましくは4〜20個の炭素原子、特に好ましくは5〜10個の炭素原子、極めて好ましくは6個の炭素原子をもつ脂肪族構造をとる請求項1または2に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
トリカルボン酸(g)が少なくとも一個のヒドロキシル基を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
トリカルボン酸(g)がクエン酸である請求項4に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
トリカルボン酸(g)の全酸基が同一のアルコール(h)でエステル化されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
エステル(i)が2−アセトキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸トリブチルである請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項8】
上記ポリカルボン酸のヒドロキシル基が、1〜40個の炭素原子をもつ、好ましくは1〜30個の炭素原子、さらに好ましくは2〜22個の炭素原子、特に好ましくは2個の炭素原子をもつ脂肪酸でエステル化されている請求項4〜6のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項9】
上記有機ジイソシアネートの少なくとも90重量%がジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)である請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項10】
上記イソシアネートと反応する化合物がポリオール(b1)である請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項11】
ポリオール(b1)が、アジピン酸とブタンジオール及び/又はエチレングリコールから構成され、その数平均分子量が0.8kg/mol〜2.5kg/molの範囲であるポリマーである請求項10に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項12】
ポリオール(b1)が、アジピン酸とブタンジオールとヘキサンジオールから構成され、ポリオール(b1)の数平均分子量が0.8kg/mol〜2.5kg/molの範囲にあるポリマーである請求項10に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項13】
1,2−エチレンジオールが鎖延長剤(c)として使用されている請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項14】
1,2−エチレンジオールが、有機ジイソシアネート(a)とイソシアネートと反応する化合物(b)と鎖延長剤(c)の総重量に対して2重量%〜5重量%の量で、好ましくは2.1重量%〜4重量%、より好ましくは2.5重量%〜3.5重量%、特に好ましくは2.5重量%〜3重量%の量で使用される請求項1〜13のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項15】
DIN53505に準じて求めたショアA硬度が、80未満である、好ましくは70未満、より好ましくは60未満、さらに好ましくは50未満、極めて好ましくは40未満である請求項1〜14のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項16】
上記ポリウレタンが、以下の成分:
A) 50〜99重量%の、
1)少なくとも一種の有機ジイソシアネート(a)と、
2)イソシアネートと反応し、分子量が0.5kg/mol〜8kg/molである少なくとも一種の化合物(b)と
3)分子量が0.06kg/mol〜0.5kg/molである鎖延長剤(c)と、
4)必要なら、触媒(d)及び/又は通常用いられる助剤(e)及び/又は添加物(f)とから製造される熱可塑性ポリウレタンと、
B)1〜50重量%のトリトリカルボン酸(g)の少なくとも一種のアルコール(h)とのエステル(i)で、そのトリカルボン酸の全酸基がアルコール(h)でエステル化されているものと
からワンショット方法で製造される請求項1〜14のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタンを含む生成物。
【請求項18】
トリカルボン酸(g)の少なくとも一種のアルコール(h)のエステル(i)で、該エステル(i)の全酸基がアルコール(h)でエステル化されているものを、熱可塑性ポリウレタン中の可塑剤として、好ましくはDIN53505に準じて求めた硬度が80ショアA未満である、好ましくは70ショアA未満、より好ましくは60ショアA未満、より好ましくは50ショアA未満、特に好ましくは40ショアA未満である熱可塑性ポリウレタンの製造のために熱可塑性ポリウレタン中の可塑剤として使用する方法。

【公表番号】特表2012−525455(P2012−525455A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507699(P2012−507699)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055490
【国際公開番号】WO2010/125009
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】