説明

トリガー式液体噴出器

【課題】塗布対象部分がものの陰に隠れている場合等でも容易に塗布することができ、また、初期作動時に於ける空打ち回数の低減が図れてポンプ内のエア抜き操作を容易に行え、また、使用中には円滑で且つ均一な液の噴出が行えるトリガー式液体噴出器を提案する。
【解決手段】軸線aを中心に回動可能に本体Dに装着した長尺な首筒62の先端に、軸線aに対して噴出口88の開口方向を傾倒した状態でノズルJを装着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトリガー式液体噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
トリガー式液体噴出器は使用の簡便さから数多くの商品が提案され販売されて来た。そのなかで販売する側は商品の特徴を明確にして競合品との差別化を打ち出し、市場に於ける勝ち残りに凌ぎを削っている。その為トリガー式液体噴出器に対してもより高い機能の要求があり微細な均一安定した霧や切れの良い霧及び泡の供給が要求され、それに伴うトリガー式液体噴出器が提案されている。(例えば,特許文献1参照)
【0003】
上記液体噴出器は、操作レバーを繰り返し牽曳して容器体内の液体を吸引,加圧,圧送するポンプと、このポンプを一体的に備え該ポンプによって加圧,圧送された液体を通過させる送給経路を有するボディと、このボディの送給経路の末端に配置され送給経路を通って圧送された液体を外界に向けて噴出する噴射ノズルとを備え、ボディの送給経路内に、該送給経路を閉塞状態に常時保持し、液体の圧力が規定圧力に達したときにのみ送給経路を開放する蓄圧弁を設けている。
【0004】
この蓄圧弁は、弁体と弾性部材とから構成されている。弁体は、内部を送給経路の一部として構成した縦筒内に上下動可能に装着している。また、弾性部材は、弁体上部に於いて、弁体の開口から内部空間へと入りこみ縦筒内周に形成した上向き段部形態の弁座に弁体周囲の下向き段部形態のシール部を押し当てて縦筒内を閉塞状態に保持する一方、規定圧力に達したときのみ弁座から弁体を離反させる反発力を有する如く構成している。このトリガー式液体噴出器は、ボディの縦筒内に蓄圧弁を挿入し、配置するだけで蓄圧式の液体噴出器に変更することができ、設計変更するなどの余計な手間をかけることなしに液体の均一な噴出が可能な優れたものである。
【特許文献1】特開2006−205045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のトリガー式液体噴出器は、縦筒上端より前方へ射出筒を、その下方より前方へシリンダを、それぞれ延設した本体を備え、射出筒の先端にノズルを嵌着し、トリガー操作によりノズルの噴出口より液を噴出させる如く構成している。一方、この種の液体噴出器の収納液としては、洗浄剤,かび取り等の薬剤,化粧料等その種類は多岐にわたり、その使用形態もそれに伴って多様化しており、特に塗布対象位置が陰に隠れて直接の噴出が困難な部位である状態にも多く遭遇する。その様な場合には前記従来の射出筒の先端にノズルを嵌着したものであっては、好ましい塗布が行えない場合がある。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、塗布対象部位が陰に隠れた塗布の行い難い場所であっても簡単に対応できるトリガー式液体噴出器を提案する。また、液の噴出を防止した状態と、噴出が可能な状態とを簡単な操作で切り換えることができ、しかもその切り換えを噴出口の好ましい向きと連動したトリガー式液体噴出器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、本体D内部に備えた液流路の中途にシリンダ23を連通させるとともに、シリンダ23内を摺動するプランジャEの押し込み操作を行うトリガーFを備え、トリガーFの操作により容器体内の液を液流路終端のノズルJより噴出する如く構成したトリガー式液体噴出器に於いて、軸線aを中心に回動可能に本体Dに装着した長尺な首筒62の先端に、前記軸線aに対し噴出口88の開口方向を傾倒した状態でノズルJを装着した。
【0008】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、首筒62と一体に回動し、トリガーFの引き込み防止状態から、トリガーFの引き込み可能状態への回動が可能なストッパー67を設けた。
【0009】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれかの手段に於いて、一定液圧以上で開弁する蓄圧式の吐出弁94をノズルJ内に設けた。
【0010】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第3の手段のいずれかの手段に於いて、首筒62内に液の流通が可能に嵌着した充填棒Iを設けた。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトリガー式液体噴出器は、軸線aを中心に回動可能に本体Dに装着した長尺な首筒62の先端に、前記軸線aに対し噴出口88の開口方向を傾倒した状態でノズルJを装着しているので、塗布対象位置が物の陰に隠れて直接見えない位置であっても容易に塗布することができ、しかも、首筒62は長尺であるため、比較的奥まった場所でも容易に対処できる。
【0012】
首筒62と一体に回動し、トリガーFの引き込み防止状態から、トリガーFの引き込み可能状態への回動が可能なストッパー67を設けた場合には、不使用時にはトリガーの引き込み防止状態にしておけば、誤っての液の噴射を防止できる。また、ストッパー67は回動させるだけで引き込み可能状態となるため、その操作は極めて簡単であり、しかも、それと同時に噴出口88の開口方向も噴射に適した方向に変えることができる利点もある。
【0013】
一定液圧以上で開弁する蓄圧式の吐出弁94をノズルJ内に設けた場合には、液切れが良く、噴霧粒が小さく、また、円滑で且つ均一な噴出が可能となる。
【0014】
首筒62内に液の流通が可能に嵌着した充填棒Iを設けた場合には、首筒62内の液圧の安定化を図ることができ、液の流れの安定化を図ることができるものであり、それによって、蓄圧式の吐出弁94に送られる液圧も安定化し、圧力損失を減少してプライミングの回数を少なくでき、より均一な噴出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1及び図2は本発明のトリガー式液体噴出器1を示すもので、トリガー式液体噴出器1は、装着キャップAと、連結筒部材Bと、吸上げパイプCと、本体Dと、プランジャEと、トリガーFと、接続部材Gと、長首部材Hと、ノズルJと、吐出弁体Kとを備えている。
【0017】
装着キャップAは容器体の口頸部外周に嵌合させる周壁2上端縁より内方へフランジ状の頂板3を延設して構成している。
【0018】
連結筒部材Bは、頂板3下面に上面を係合させたフランジ10を下端開口の基筒部11外周より突設し、基筒部11内下部に下端を開口して上端を基筒部11の頂壁12を貫通してその上方へ縦筒13を立設している。縦筒13内上端部には吸込み弁14を設け、その下部には吸上げパイプCの上端部を嵌着し、その下端を容器体内下部に垂下する如く構成している。また、連結筒部材Bを容器体に装着する際は、基筒部11下端部を容器体口頸部内周に液密に嵌合させるとともに、フランジ10下面をパッキンpを介して口頸部上面に液密に当接させる。
【0019】
本体Dは、下面より垂設した嵌合筒20を基筒部11外周に嵌合させて連結筒部材Bに装着するとともに、縦筒13外周に嵌合させた外層縦筒21を備え、また、外層縦筒21の上部前面から射出筒22を、その下方からシリンダ23をそれぞれ前方へ突設している。また、本体Dと一体に形成したカバー24により本体D左右および後部を被覆している。
【0020】
シリンダ23は外筒23a と内筒23b とを備えており、外筒23a 内に同心円状に内筒23b を突設し、外筒23a より短い内筒23b 外面と外筒23a 内面との間をシリンダ室Rとして画成している。そして、シリンダ室R後端部の外層縦筒21に設けた透孔25と、外層縦筒21と縦筒13との間に形成した連通溝26とで、シリンダ室R内と射出筒22内とを連通させ、また、連通溝26と縦筒13の上端部に穿設した切欠き15とで、射出筒22内と吸込み弁14下流の縦筒13内とを連通させている。
【0021】
プランジャEは、前端閉塞で後端開口の筒状をなす基部30を備え、外筒23a 内周を液密摺動する前後一対のスカート状をなす外側摺動部31を基部30外周に突設し、内筒23b 外周を液密摺動する内側摺動部32を基部30内周に突設して構成しており、コイルスプリングs1により前方へ付勢させている。
【0022】
トリガーFは、射出筒22の先端部両側に上端部を回動可能に連結してシリンダ23の前方へ揺動可能に垂下させており、プランジャEの先端部に上部を連繋させて係止しており、後方への引き込みによりプランジャEをコイルスプリングs1の付勢力に抗して後方へ移行させる如く構成している。
【0023】
接続部材Gは、射出筒22の先端面に裏面を当接する基板50の裏面より後方へ突設した嵌合筒51を射出筒22外周に嵌合させて装着しており、基板50の前面からは長首部材Hを回動可能に嵌合させる支筒52を突設し、その中央部に透孔53を穿設している。
【0024】
長首部材Hは、支筒52外周に抜け出しを防止して回動可能に装着筒部60を嵌合させており、装着筒部60の先端より中心側へ延設したフランジ61を介して前方へ首筒62を延設している。従って、首筒62はその軸線aを中心に回動可能に装着されている。また、フランジ61の裏面より支筒52内周に液密摺動可能に嵌合させたシール筒63を突設している。首筒62はノズルJを本体Dより離間した前方に位置させるためのものであり、その長さとしては、この種のトリガー式液体噴出器の一般的な大きさを考慮すれば、例えば、10cm〜30cm位の長さが参考として挙げられるが当然これに限られず、用途等により種々選択することができる。
【0025】
首筒62の先端にはノズルJを嵌着させるための支持筒64を基板65を介して突設している。基板65はノズルJの噴出口を傾倒させるために首筒62に対して下方へ傾いて形成されており、支持筒64は基板65と直交して突設している。また、基板65の前面には蓄圧式の吐出弁体を装着するための小径シリンダ部66を突設している。また、首筒62の内部に充填棒Iを嵌着している。充填棒Iは、首筒62内の液圧の安定化を図り、液の流れの安定化を図るためのものであり、リブ70により首筒62内面との間に液の流路を確保している。
【0026】
装着筒部60の下面からはストッパー67を一体に延設している。ストッパー67は装着筒部60下面中央部より垂設した基板部67a の後縁下部より側方へ伸びる横板67b を延設し、横板67b の外側縁より後方へ支持板67c を延設し、支持板67c の前後方向中間部より内方へトリガーFの後面に当接係止する第1係止板67d を、後端縁よりシリンダ23の外筒23a 前面に当接する第2係止板67e をそれぞれ突設して構成している。従って、ストッパー67は接続部材Gとの接続部分に於ける抗力だけでなく、シリンダ23前面に於ける抗力が働き、二重の抗力により、確実にトリガーFの引き込みを防止できる。
【0027】
ノズルJは、支持筒64の外周に抜け出しを防止して周壁80を嵌合させて長首部材Hに嵌着しており、周壁80の前端縁より内方へ延設したフランジ部81より後方へ大径シリンダ部82を延設しており、フランジ部81の内周縁より前方へチップ嵌合筒83を延設している。また、 フランジ部81の内周縁部には吐出弁座84を形成している。チップ嵌合筒83内には周囲を周方向複数のリブ85により支持されることにより周囲に液の流通が可能な隙間をあけて支持された芯棒86を設けており、芯棒周囲から前面に亘りスピン形成用の公知のチップ87を嵌着している。このチップ87中央の噴出口88は、軸線aに対して下方に傾倒下状態で開口している。
【0028】
吐出弁体Kは、小径シリンダ部66に摺動可能に嵌合させた環状小径摺動部90と、大径シリンダ部82に摺動可能に嵌合させた環状の大径摺動部91とをそれぞれ環状基部92の後部および前部より突設し、また、環状基部92の先端に環状基部92との間の液の流通が可能に弁部93を突設し、コイルスプリングs2により常時前方へ付勢され、弁部93を吐出弁座84に圧接してこの部分に吐出弁94を形成している。
【0029】
上記の如く構成されたトリガー式液体噴出器1は、図1の状態からストッパー67を回動させるとトリガーFの引き込みが可能となり、また、その際、首筒62が回転するとともに、ノズルJが回転して図2に示す如く上方を向く。次いで、トリガーFを引きプランジャEを後方へ押し込むとシリンダ室R内の加圧液が射出筒22から首筒62を介してノズルJ内に導入される。ここで、大径摺動部91と小径摺動部90との径差で生じる圧力により吐出弁体Kが上流側に押圧されコイルスプリングs2の付勢力に抗して吐出弁94を開いて噴出口88から外部へ噴出される。
【0030】
トリガーFをある程度まで引いて液の噴出が一定量行われるとコイルスプリングs2の付勢力により吐出弁94が閉じ、次いでトリガーIの押圧を解除すれば、コイルスプリングs1の作用でプランジャEが押圧されシリンダ室R内が負圧化され、吸込み弁14が開いて容器体内の液をシリンダ室R内に導入する。
【0031】
図4は他の例を示すもので、図1の例に於いて、ノズルJの先端に開閉可能な蓋板89を設けている。他は図1の例と同様であるため説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】トリガー式液体噴出器の縦断面図である。(実施例1)
【図2】トリガー式液体噴出器の液噴出態勢の縦断面図である。(実施例1)
【図3】ノズル部分の要部拡大断面図である。(実施例1)
【図4】トリガー式液体噴出器の縦断面図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0033】
1…トリガー式液体噴出器
A…装着キャップ
2…周壁,3…頂板
B…連結筒部材
10…フランジ,11…基筒部,12…頂壁,13…縦筒,14…吸込み弁,15…切欠き,
p…パッキン
C…吸上げパイプ
D…本体
20…嵌合筒,21…外層縦筒,22…射出筒,23…シリンダ,23a …外筒,
23b …内筒,24…カバー,25…透孔,26…連通溝,R…シリンダ室
E…プランジャ
30…基部,31…外側摺動部,32…内側摺動部,s1…コイルスプリング
F…トリガー
G…接続部材
50…基板,51…嵌合筒,52…支筒,53…透孔
H…長首部材
60…装着筒部,61…フランジ,62…首部,63…シール部,64…支持筒,65…基板, 66…小径シリンダ部,67…ストッパー,67a …基板部,67b …横板,
67c …支持板,67d …第1係止板,67e …第2係止板
I…充填棒
70…リブ
J…ノズル
80…周壁,81…フランジ部,82…大径シリンダ,83…チップ嵌合筒,
84…吐出弁座,85…リブ,86…芯棒,87…チップ,88…噴出口,89…蓋板
K…吐出弁体
90…小径摺動部,91…大径摺動部,92…環状基部,93…弁部,94…吐出弁,
s2…コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体D内部に備えた液流路の中途にシリンダ23を連通させるとともに、シリンダ23内を摺動するプランジャEの押し込み操作を行うトリガーFを備え、トリガーFの操作により容器体内の液を液流路終端のノズルJより噴出する如く構成したトリガー式液体噴出器に於いて、軸線aを中心に回動可能に本体Dに装着した長尺な首筒62の先端に、前記軸線aに対し噴出口88の開口方向を傾倒した状態でノズルJを装着したことを特徴とするトリガー式液体噴出器。
【請求項2】
首筒62と一体に回動し、トリガーFの引き込み防止状態から、トリガーFの引き込み可能状態への回動が可能なストッパー67を設けた請求項1記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項3】
一定液圧以上で開弁する蓄圧式の吐出弁94をノズルJ内に設けた請求項1又は請求項2のいずれかに記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項4】
首筒62内に液の流通が可能に嵌着した充填棒Iを設けた請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のトリガー式液体噴出器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−11885(P2009−11885A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173228(P2007−173228)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】