説明

トリクロロシランの製造方法

【課題】トリクロロシランとメチルジクロロシランの分離を容易化して高純度のトリクロロシランを得ること。
【解決手段】メチルジクロロシランとテトラクロロシランとトリクロロシランとを含む混合物を蒸留して蒸留前混合物よりもメチルジクロロシラン含有率が高い留分を分画し、この分画された留分を加熱してメチルジクロロシランとテトラクロロシランとの間で塩素の再分配を行ってメチルジクロロシランをメチルトリクロロシランに変換する。そして、このメチルトリクロロシランを含む再分配後の留分を蒸留精製して高純度なトリクロロシランを分離する。この方法では、沸点が蒸留精製の対象であるトリクロロシランの沸点(32℃)と近いために除去が困難であったメチルジクロロシラン(沸点41℃)を、テトラクロロシランとの間で塩素の再分配を行うことによりメチルトリクロロシラン(沸点66℃)に変換させることとして除去を容易なものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトリクロロシランの製造方法に関し、より詳細には、トリクロロシランとメチルジクロロシランの分離を容易化して高純度のトリクロロシランを得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリクロロシラン(HSiCl)は、シリコンウエハ等の製造に用いられる高純度多結晶シリコンの原料として古くから使用されてきた。トリクロロシランを得るための手法としては多くの合成方法が知られており、特開昭56−73617号公報(特許文献1)には、トリクロロシランの製造において副成物の四塩化珪素が効率よくトリクロロシランに変換されることを特長とするトリクロロシランの製造方法の発明が開示されている。
【0003】
また、他のトリクロロシランの製造方法としては、冶金級シリコンと塩化水素を約250℃以上の温度において接触させる直接法(特開平2−208217号公報(特許文献2)や特開平9−169514号公報(特許文献3)等参照)、四塩化ケイ素を冶金級シリコンの存在下で水素と反応させてトリクロロシランに還元する方法(特開昭60−36318号公報(特許文献4)参照)、上記冶金級シリコンの代わりに銅シリサイドを用い四塩化ケイ素を銅シリサイドの存在下で水素と反応させてトリクロロシランに還元する方法、(特開平10−29813号公報(特許文献5)参照)などが知られている。
【0004】
ところで、リンやホウ素等の不純物は、シリコン結晶中においてドナーやアクセプターとして作用するため、半導体製造用原料としての多結晶シリコンにこれらのドーパント成分が含まれていると最終製品としてのシリコンウエハ中に取り込まれてしまうことから、半導体グレードの多結晶シリコンを製造する際には、精密な蒸留を経て得られた高純度トリクロロシランが用いられる。
【0005】
このような高純度トリクロロシランの製造技術に関連して、トリクロロシランの蒸留前に予め、ゲッター等を用いて上述したドーパント成分を分離容易な形態に転換させて分離除去しておく方法も提案されている(例えば、特開2004−250317号公報(特許文献6)参照)。
【0006】
また、シリコン結晶中の炭素不純物は、バンドギャップ内に不純物準位を形成してキャリアのトラップとして作用したり、結晶内で酸素の析出核の形成を加速して半導体デバイスの製造プロセス中に欠陥を誘起するなどするため、半導体グレードの多結晶シリコンでは、炭素不純物の含有量も問題となる。
【0007】
多結晶シリコンへの炭素不純物の混入原因としては、多結晶シリコンを析出させる際に用いられるCVD反応器に使用されている炭素部材に派生する炭素含有化合物、水素やトリクロロシラン中に含まれている炭素含有化合物などが考えられるが、炭素含有化合物が十分に除去されたトリクロロシランを製造することは容易ではない。
【0008】
これは、トリクロロシランの直接合成に用いられる金属シリコンはカーボン電極を用いたアーク炉で製造されるために純度は99%程度でしかなく不純物として炭素を含んでいることやトリクロロシラン合成用のCVD反応器から流出する生成物にはCVD反応器内の炭素部材に由来するメチルクロロシラン類が含まれていることから、蒸留精製されたトリクロロシラン中にも上述した炭素に由来するメチルクロロシラン類が微量含有されてしまうためである。例えば冶金級シリコンとしてカーボン電極を用いたアーク炉で製造されたような炭素不純物を含むものが用いられた場合には、炭素不純物由来の副生物としての低沸点メチルクロロシラン類が重量比率で数十ppm程度混入する。
【0009】
特に、メチルジクロロシランは、上述の含有メチルクロロシラン類の主成分であることに加え、その沸点(41℃)が蒸留精製の対象であるトリクロロシランの沸点(32℃)と近いことがその除去を困難なものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭56−73617号公報
【特許文献2】特開平2−208217号公報
【特許文献3】特開平9−169514号公報
【特許文献4】特開昭60−36318号公報
【特許文献5】特開平10−29813号公報
【特許文献6】特開2004−250317号公報
【特許文献7】特開2004−149351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような問題に鑑み、特開2004−149351号公報(特許文献7)には、比較的低コストで炭素不純物濃度を低減させ得るトリクロロシランの精製方法が開示され、この方法では、トリクロロシランをシリカゲルや活性炭などの吸着剤に接触させることで、トリクロロシラン中の炭素含有塩化珪素化合物を沸点に関係なく均等に一括除去するという手法が採用されている。
【0012】
しかし、この方法でも、沸点がトリクロロシランに近いメチルジクロロシランは除去し難く、蒸留の負荷は大きくならざるを得ない。また、吸着処理後の吸着剤を廃棄物として処理しなければならないという手間も生じる。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、過大な蒸留精製工程を必要とすることなく、高純度トリクロロシランを製造するに際して従来の手法では除去することが困難であったメチルジクロロシランの除去を容易なものとする手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するために、本発明のトリクロロシランの製造方法は、メチルジクロロシラン(CHHSiCl)とテトラクロロシラン(SiCl)とトリクロロシラン(HSiCl)とを含む混合物から高純度のトリクロロシランを得る方法であって、下記の工程を備えている。(A)前記混合物を蒸留して蒸留前混合物よりもメチルジクロロシラン含有率が高い留分を分画する工程、(B)前記分画された留分を加熱してメチルジクロロシランとテトラクロロシランとの間で塩素の再分配を行って前記メチルジクロロシランをメチルトリクロロシラン(CHSiCl)に変換する工程、(C)前記メチルトリクロロシラン(CHSiCl)を含む再分配後の留分を蒸留精製してトリクロロシランを分離する工程。
【0015】
好ましくは、前記工程(B)における塩素の再分配は、300〜600℃の温度範囲で行う。
【0016】
本発明は、前記工程(B)における塩素の再分配を、触媒を用いずに実行することもできる。
【0017】
また、本発明は、前記工程(B)における塩素の再分配を、塩化銅を触媒として含有させたシリコンを流動床とする加熱容器内において水素含有還元性雰囲気下で実行するようにしてもよい。
【0018】
前記メチルジクロロシランとテトラクロロシランとトリクロロシランとを含む混合物は、例えば、冶金級シリコンと塩化水素との反応によりトリクロロシランを合成する際の生成物、水素含有還元性雰囲気下でのテトラクロロシランからトリクロロシランへの転換反応の際の生成物、トリクロロシランを原料とする多結晶シリコン製造工程で排出される反応生成物などである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のトリクロロシランの製造方法では、沸点が蒸留精製の対象であるトリクロロシランの沸点(32℃)と近いために除去が困難であったメチルジクロロシラン(沸点41℃)を、テトラクロロシランとの間で塩素の再分配を行うことによりメチルトリクロロシラン(沸点66℃)に変換させることとして除去を容易なものとしている。このようなトリクロロシランの製造方法によれば、蒸留分離が難しいトリクロロシラン中のメチルジクロロシランがより沸点の高い化合物に変換されるため、蒸留による高純度トリクロロシランの精製負荷を軽くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のトリクロロシランの製造方法を説明するためのフロー図の例である。
【図2】本発明のトリクロロシランの製造方法を説明するためのフロー図の他の例である。
【図3】本発明のトリクロロシランの製造方法を説明するためのフロー図の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0022】
図1〜3は、本発明のトリクロロシランの製造方法のフロー図の例で、このトリクロロシランの製造方法においては、メチルジクロロシラン(CHHSiCl)とテトラクロロシラン(SiCl)とトリクロロシラン(HSiCl)とを含む混合物を蒸留して蒸留前混合物よりもメチルジクロロシラン含有率が高い留分を分画し(S101)、この分画された留分を加熱してメチルジクロロシランとテトラクロロシランとの間で塩素の再分配を行ってメチルジクロロシランをメチルトリクロロシラン(CHSiCl)に変換する(S102)。
【0023】
そして、このメチルトリクロロシラン(CHSiCl)を含む再分配後の留分を蒸留精製して高純度なトリクロロシランを分離する(S103)こととしている。
【0024】
つまり、沸点が蒸留精製の対象であるトリクロロシランの沸点(32℃)と近いために除去が困難であったメチルジクロロシラン(沸点41℃)を、テトラクロロシランとの間で塩素の再分配を行うことによりメチルトリクロロシラン(沸点66℃)に変換させることとして除去を容易なものとしている。そして、このメチルジクロロシランからメチルトリクロロシラン(沸点66℃)への変換を効率的に行うために、メチルジクロロシラン(CHHSiCl)とテトラクロロシラン(SiCl)とトリクロロシラン(HSiCl)とを含む混合物を蒸留して蒸留前混合物よりもメチルジクロロシラン含有率が高い留分を予め分画する工程を設けている。
【0025】
このようなトリクロロシランの製造方法によれば、蒸留分離が難しいトリクロロシラン中のメチルジクロロシランがより沸点の高い化合物に変換されるため、蒸留による高純度トリクロロシランの精製負荷を軽くすることが可能となる。
【0026】
なお、上述の塩素再分配のための塩素供与体としてはトリクロロシランなども利用可能であるが、本発明においてテトラクロロシランを利用することとしたのは、テトラクロロシランは塩素供与によりトリクロロシランとなると考えられること、トリクロロシラン合成反応により生成する混合物中には必ず存在するものであるために外部から新たに追加する必要がないこと等の理由による。
【0027】
つまり、テトラクロロシランは、冶金級シリコンと塩化水素との反応によりトリクロロシランを合成する際の生成物(S100A)や、水素含有還元性雰囲気下でのテトラクロロシランからトリクロロシランへの転換反応の際の生成物(S100B)、或いは、トリクロロシランを原料とする多結晶シリコン製造工程で排出される反応生成物(S100C)に必ず含まれているものであることから、これを利用することとすれば塩素供与体をわざわざ外部から加える必要がなく、しかも塩素供与後には蒸留精製の対象物であるトリクロロシランへと転換されて収率も高まるという利点がある。
【0028】
例えば、特開平2−208217号公報(特許文献2)や特開平9−169514号公報(特許文献3)に記載されているような直接法によるトリクロロシランの製造工程では、主たる生成物はトリクロロシランとテトラクロロシランであり、条件の最適化を行なうと、トリクロロシランとテトラクロロシランが概ね80:20乃至20:80の比率で得られる。
【0029】
勿論、一旦粗い蒸留を行った後にトリクロロシランを取り出しこのトリクロロシランに含有されている低沸点メチルクロロシラン類に対して、塩素供与体としてのテトラクロロシランを別途外部から加えて塩素再分配を行なうこととしてもよい。なお、その場合でも、低沸点メチルクロロシラン類の含有量は通常ppmオーダーと低いため、テトラクロロシランの添加量は処理対象となる留分の20質量%程度で十分である。
【0030】
上述の塩素再分配反応は特別な触媒を用いずに実行することもでき、その場合には塩素再分配反応工程中での炭素不純物の混入の恐れがないという利点があるが、塩化銅を触媒として含有させたシリコンを流動床とする加熱容器内において水素含有還元性雰囲気下で実行する等してもよい。例えば、事前の蒸留工程で得られた、メチルジクロロシランを不純物として数百ppm含有しているトリクロロシラン約1%を、塩素供与体としてのテトラクロロシラン99%及びキャリヤガスとしての水素と共に電気ヒータ或いは誘導加熱機能を有する空筒管に供給して加熱することで、塩素再分配反応によるメチルジクロロシランからメチルトリクロロシランへの転換を効率的に行わせることができる。
【0031】
また、この塩素再分配反応は、高温であるほど再分配速度が高まるため、300℃以上であることが好ましく、より好ましくは400℃以上である。一方、900℃以上の温度では、塩素再分配反応系に水素が含まれている場合に、当該水素による還元反応とテトラクロロシランからの塩素の再分配反応とが競争する可能性がある。このため、温度の上限を600℃とすることが好ましい。
【0032】
また、塩素再分配反応を行なう際の圧力は、例えば、0.1〜4.0MPaの範囲とすることができるが、生産性を高める観点からはなるべく高圧下で行うことが好ましい。一方、4.0MPaを超える圧力下で反応を行うと、反応容器内で液化現象が発生する恐れがあるため、安全性確保の観点からは好ましくない。
【0033】
反応時間は触媒の有無や反応温度及び圧力にも依存するが、10〜30秒以上であれば一定の反応率が得られる。トリクロロシランの生産性の観点からは、30〜200秒の範囲内で設定することが好ましい。
【0034】
塩素供与体としてテトラクロロシランを使用してメチルジクロロシランをメチルトリクロロシランに変換する反応は単純ではないと考えられるが、現時点では、本発明者らは概ね下記のようなものではないかと推定している。
【0035】
塩素再分配反応に用いる反応容器の入口および出口でガスクロマトグラフィーによる留分中の成分分析を行った結果によれば、塩素再分配反応後のガス中においてメチルクロロシラン由来のCH基の減少とCHの生成が認められ、CHの生成量はほぼメチルクロロシラン由来のCH基の減少量に一致していた。この結果から、反応容器内では下記の反応が進行している可能性が高い。
【0036】
SiCl4 + H2 → SiHCl3 + HCl
CH3SiHCl2 + HCl → SiHCl3 + CH4
CH3SiHCl2 + SiCl4→ CH3SiCl3 + SiHCl3
CH3SiHCl2 + SiHCl3→ CH3SiCl3 + SiH2Cl2
CH3SiHCl2 + H2→ SiH2Cl2 + CH4
CH3SiCl3 + H2→ SiHCl3 + CH4
【0037】
なお、このような塩素再分配反応を、直接法によるトリクロロシランの製造工程やテトラクロロシランの還元によるトリクロロシランの製造工程に組み込む場合、粗生成物中には比較的多量のテトラクロロシランが含まれているため、当該粗生成物をそのまま塩素再分配処理しても良い。しかし、粗生成物中のテトラクロロシラン含量が低い場合や、蒸留濃縮回収したメチルジクロロシランが多量(数十〜数百ppm)に含まれているトリクロロシランを処理するような場合には、外部から別途塩素供与体としてのテトラクロロシランを導入することもできる。
【0038】
また、上記塩素再分配処理をバッチで行なう場合には特にキャリアガスを用いる必要はないが、連続で塩素再分配処理を行なう場合には、水素や不活性ガス等のキャリアガスを用いるようにしてもよい。なお、キャリアガスとして水素を用いる場合には、直接法によるトリクロロシランの製造工程やテトラクロロシランの還元によるトリクロロシランの製造工程で使用した水素を再循環させて使用してもよい。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0040】
[実施例1]塩素再分配効果:空筒の反応器(反応器A)および冶金級金属シリコンの流動床とした反応器(反応器B)を用い、クロロシラン類混合体中のメチルクロロシラン類の再分配効果を検証した。なお、反応器として、径40cmで長さ100cmのステンレス鋼チューブを用いた。
【0041】
この反応器に、メチルジクロロシラン180ppmwtを含む四塩化ケイ素を、2倍モル量の水素で希釈してガス状態で導入した。反応器は500℃に加熱し、評価対象ガスの反応器内空筒線速を1.0cm/secとなるように供給した。また、均熱範囲に対する滞留時間は約50秒とした。なお、反応器内圧は2.0MPaに維持した。
【0042】
補助的に反応器から得られた生成混合物に含まれるメチルシラン類に対し、水素炎イオン化検出器(FID:Flame ionization detector)を用いたガスクロマトグラフィーで分析を行い、標準試料を用いて作成した検量線から、メチルジクロロシラン及びメチルトリクロロシラン量等を定量した。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示した結果から、300〜500℃の範囲で、メチルジクロロシランの減少が確認できる。特に500℃の塩素再配分反応後では95%以上のメチルジクロロシランがメチルトリクロロシランに変換されている。なお、反応器Bのメチルトリクロロシラン中には冶金級金属シリコンから発生したものも含まれていると考えられる。
【0045】
[実施例2]塩化銅(CuCl)を触媒とした場合の効果:冶金級金属シリコンに触媒としての塩化銅(CuCl)を4wt%含有させ、これをステンレス鋼チューブの反応器(内径4cm、長さ100cm)に50cmの高さまで充填し、この反応器にメチルジクロロシラン180ppmwt含有の四塩化ケイ素を2倍モル量の水素とともに当該反応器に供給した。なお、塩素再分配反応条件は、圧力2.0MPa、温度500℃、滞留時間100秒である。最終的に得られたクロロシラン混合生成物のトリクロロシラン(TCS)とテトラクロロシラン(STC)の比(TCS/STC)は概ね3/7であり、メチルジクロロシランは7.9ppmwtに減少し、メチルトリクロロシランが150ppmwt生成していた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のトリクロロシランの製造方法によれば、蒸留分離が難しいトリクロロシラン中のメチルジクロロシランがより沸点の高い化合物に変換されるため、蒸留による高純度トリクロロシランの精製負荷を軽くすることが可能となる。つまり、本発明により、トリクロロシランとメチルジクロロシランの分離を容易化して高純度のトリクロロシランを得る方法が提供される。
【符号の説明】
【0047】
S100A、S100B、S100C メチルジクロロシランとテトラクロロシランとトリクロロシランとを含む混合物が生成される工程
S101 メチルジクロロシランとテトラクロロシランとトリクロロシランとを含む混合物を蒸留して蒸留前混合物よりもメチルジクロロシラン含有率が高い留分を分画する工程
S102 塩素再配分によりメチルジクロロシランをメチルトリクロロシランに変換する工程
S103 メチルトリクロロシランを含む再分配後の留分を蒸留精製して高純度なトリクロロシランを分離する工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルジクロロシラン(CHHSiCl)とテトラクロロシラン(SiCl)とトリクロロシラン(HSiCl)とを含む混合物から高純度のトリクロロシランを得る方法であって、下記の工程を備えているトリクロロシランの製造方法。
(A)前記混合物を蒸留して蒸留前混合物よりもメチルジクロロシラン含有率が高い留分を分画する工程:
(B)前記分画された留分を加熱してメチルジクロロシランとテトラクロロシランとの間で塩素の再分配を行って前記メチルジクロロシランをメチルトリクロロシラン(CHSiCl)に変換する工程:
(C)前記メチルトリクロロシラン(CHSiCl)を含む再分配後の留分を蒸留精製してトリクロロシランを分離する工程。
【請求項2】
前記工程(B)における塩素の再分配を、300〜600℃の温度範囲で行う請求項1に記載のトリクロロシランの製造方法。
【請求項3】
前記工程(B)における塩素の再分配を、触媒を用いずに実行する請求項2に記載のトリクロロシランの製造方法。
【請求項4】
前記工程(B)における塩素の再分配を、塩化銅を触媒として含有させたシリコンを流動床とする加熱容器内において水素含有還元性雰囲気下で実行する請求項2に記載のトリクロロシランの製造方法。
【請求項5】
前記メチルジクロロシランとテトラクロロシランとトリクロロシランとを含む混合物は、冶金級シリコンと塩化水素との反応によりトリクロロシランを合成する際の生成物である請求項1乃至4の何れか1項に記載のトリクロロシランの製造方法。
【請求項6】
前記メチルジクロロシランとテトラクロロシランとトリクロロシランとを含む混合物は、水素含有還元性雰囲気下でのテトラクロロシランからトリクロロシランへの転換反応の際の生成物である請求項1乃至4の何れか1項に記載のトリクロロシランの製造方法。
【請求項7】
前記メチルジクロロシランとテトラクロロシランとトリクロロシランとを含む混合物は、トリクロロシランを原料とする多結晶シリコン製造工程で排出される反応生成物である請求項1乃至4の何れか1項に記載のトリクロロシランの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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