説明

トリグリセリドからの脂肪酸アルキルエステルおよびアクロレインの製造法

本発明は、一般式(I)の脂肪酸アルキルエステルおよびアクロレインを一般式(II)のトリグリセリドの反応によって製造する方法において、a)トリグリセリドを、アルコールR'−OHを用いて、適した触媒の存在下で反応させ脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンを得て、かつb)得られたグリセリンを接触的にアクロレインへと脱水することを特徴とする方法であって、b)その際、Rは、R、RおよびRであり、かつR、RおよびRは、全て同じであるか、または部分的に同じであるか、または全て異なっており、かつ、それぞれ直鎖または分岐鎖のおよび場合により一価不飽和または多価不飽和のC10〜C30−アルキル基を意味し、かつR'は、C〜C10−アルキル基またはC〜C−シクロアルキル基を意味する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適した触媒の使用下でのトリグリセリドからの脂肪酸アルキルエステルおよびアクロレインの製造法に関する。
【0002】
トリグリセリドは、例えば次式:
【化1】

[式中、
〜R=C10〜C30−アルキルを意味する]
によって記載することができる。
【0003】
これらのトリグリセリドは、例えば人工および天然の脂肪または植物油、例えば、バイオディーゼル製造において使用されるパーム油、ヒマワリ油、ダイズ油またはナタネ油の重要な成分である。本発明により使用されるトリグリセリドは、不純物の形で、または混合物の形で存在してよい。
【0004】
脂肪酸アルキルエステルまたはバイオディーゼルは、本明細書において、次式:
【化2】

[式中、R=R〜Rを意味し、R'=C〜C10−アルキルまたはC〜C−シクロアルキルを意味する]
によって記載することができる。
【0005】
これらの脂肪酸アルキルエステルの混合物は、バイオディーゼルの主成分である。有利にはR'は、CH基またはC基、少なくとも、しかしながらCH基である。なぜなら、バイオディーゼル製造に際して、たいていメタノール溶液中のメトキシドが使用されるからである。トリグリセリドのエステル交換反応を、相応する脂肪酸エステルを得るために他のアルコールを用いて実施してもよい。
【0006】
バイオディーゼルを製造するための植物油およびさらに別の脂肪の使用状況に関する概観は、G.Knothe,J.Van Gerpen,J.Krahl,The Biodiesel Handbook,OACS Verlag,2005の中で記載される。
【0007】
一般的に、脂肪酸アルキルエステルへのトリグリセリドのエステル交換反応は、酸触媒反応または塩基触媒反応によって促進され得る。工業的に、主として比較的速い均一系塩基触媒反応が使用される。その際、有利には、ナトリウムメトキシドまたはカリウムメトキシドが使用される。
【0008】
バイオディーゼルの工業的な製造に際して、なかでも触媒の濃度、温度、滞留時間、湿分、遊離脂肪酸の存在およびアルコール過剰量が、収率を最適化するための重要なプロセスパラメータである(B.Freedman,E.H.Pryde,T.L.Mounts,Variables affecting the yield of fatty esters from transesterified vegetable oils,J.Am.Oil Chem.Soc.,61,1638,1984)。
【0009】
使用されるトリグリセリドは、グリセリン約10質量%を含有し、該グリセリンは不純物のフラクションとしてエステル交換反応後に、有利には相分離または抽出によってバイオディーゼルフラクションから単離される。次いで両方のフラクションから、多段階の後処理工程において、水、酸、触媒、アルコール、塩および副生成物が大幅に除去される。
【0010】
アクロレインは重要な中間生成物であり、ひいてはアクリル酸、D,L−メチオニンおよびメチオニン−ヒドロキシ−類似体(MHA,=2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸)の作製のために経済的に大きな意味を持つ。メチオニンは必須アミノ酸であり、それはなかでも飼料中のサプリメントとして使用される。栄養改善性飼料添加物は、今日では動物栄養の不可欠な成分である。それらは栄養供給品のより良好な利用に用いられ、成長を刺激し、かつタンパク質形成を促す。これらの添加物の最も重要なものの1つは、なかでも家禽飼育において飼料添加剤として際立った位置を占める必須アミノ酸メチオニンである。この分野では、しかし、いわゆるメチオニン代替物質、例えばメチオニン−ヒドロキシ−類似体も相当な意味を持つ。なぜなら該類似体は、似たような成長刺激性特性を、それに関して公知のアミノ酸と同じように有するからである。
【0011】
従来技術に従って、アクロレインの合成は、混合酸化物触媒を用いた不均一系触媒作用によるプロペンの選択的酸化によって行われる。EP417723は、錯体多金属混合酸化物触媒を用いた、300〜380℃の温度および1.4〜2.2barの圧力での合成を記載する。Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry,6.Auflage,1999の中には、複数の副生成物が分離される後処理を含んだ全体的な方法が記載されている。プロペン、空気および水からの出発物質混合物が、少なくとも部分的に触媒を用いて反応させられた後に、まず、高沸点副生成物、例えばポリマー、アクリル酸および酢酸を分離するための急冷が行われる。後続の吸収装置中で、アクロレインが洗浄抽出される。吸収剤を回収する脱着後に、得られた粗アクロレインが多段階で、蒸留により精製される。
【0012】
単離されたグリセリンからアクロレインを合成する科学的試験は公知である。例えば、グリセリンは酸性物質の存在下で様々な生成物へと脱水され得ることも公知である。
【0013】
Organic Synthesis I,15〜18 (1964)によれば、粉末状の硫酸水素カリウム、硫酸カリウムとグリセリンとからの混合物の190〜200℃での処理によって、アクロレインが33〜48%の収率で獲得される。低い収率および高い塩負荷に基づいて、この方法は、しかしながら工業的規模には適していない。
【0014】
バイオマス熱分解油のモデル物質の調査の枠内において、H−ZSM5−ゼオライトを用いた350〜500℃でのグリセリンの接触処理も調べられていた−Dao,Le H.et al.ACS Symp.Ser.:376 (Pyrolysis Oils Biomass) 328〜341 (1988)を参照のこと。炭化水素は僅かな収率でしか形成されないが、しかし、アクロレインの形成が指摘される。
【0015】
WO2006/092272は、アクロレインを有する脱水生成物へのグリセリンの脱水、気相酸化およびアクリル酸の引き続く単離ならびに引き続く重合によるアクリル酸もしくはアクリル酸ポリマーの製造法を開示する。しかしながら、アクロレイン製造を目的とした方法は記載されない。
【0016】
DE4238493の中では、気相および液相中でのグリセリンからアクロレインへの酸触媒反応が記載されている。そのうえDE4238492は、グリセリンの脱水による1,2−および1,3−プロパンジオールの高い収率を伴う合成に関する。その際に使用されるグリセリンは、たいてい純粋な形で、または水溶液の形で存在する。
【0017】
バイオディーゼル製造において相分離後に発生するグリセリンは、しかしながら一般に価値が低い。なぜなら、例えば過剰量のメタノール、触媒およびセッケンを多量に不純物として有しているからである。
【0018】
これまで、脂肪酸アルキルエステル、殊にバイオディーゼルおよびアクロレインの同時の製造に直接的にトリグリセリドを使用するために、上記の工程は未だかつて組み合わされていなかった。
【0019】
一方では、トリグリセリドからのバイオディーゼルおよびプロペンまたはグリセリンからのアクロレインの別個の製造によって、装置による比較的高いエネルギー消費、ひいては相応する資本費が生じる。なぜなら、結び付けて一緒に製造する場合の相乗効果が利用されないからである。さらに、グリセリンを輸送するために、相応するロジスティクス費、ひいては相応して高い変動費、例えば輸送費およびエネルギー費が生じる。
【0020】
他方では、プロペンからの選択酸化によるこれまでの古典的なアクロレイン製造の欠点は、プロペンが気相中で製造され、かつ多段階の後処理において単離されなければならない煩雑な方法に見られ得、ならびに、プロペンが比較的高価な出発物質であり、その費用が加えて今日過大に上昇しているという点にある。
【0021】
それゆえ、この発明の課題は、トリグリセリドからのアクロレインおよび脂肪酸アルキルエステル、殊にバイオディーゼルの同時の製造法を提供し、かつ、そのようにして従来技術の欠点を防止することであった。
【0022】
殊に課題は、トリグリセリドの主要なエステル交換反応が、簡単かつ効果的に、安価かつ容易に手に入る触媒により成功し、ならびに一次生成物として得られたグリセリンを効果的に脂肪酸アルキルエステルから分離することのできる方法を見つけ出すことであった。分離されたグリセリンは、加えて可能な限り直接かつ、また簡単かつ効果的にアクロレインへと接触脱水され得、ひいては従来技術の欠点が防止される。
【0023】
この関連におけるさらに別の一課題は、主要なエステル交換反応(バイオディーゼル形成もしくはグリセリン形成)のみならず、二次的に行われるアクロレインを得るためのグリセリンの脱水にも可能な限り適している、可能な限り効果的な、良好に取り扱い可能な触媒を見つけ出すことであった。
【0024】
付加的に課題は、殊に、メチオニン化合物またはアクリル酸誘導体を製造する出発物質として、その使用に直接供給することができるアクロレイン水溶液を得る方法を提供することに向けられる。
【0025】
発明の詳細な説明
これらの課題ならびに、明確には挙げられていないがさらに別の、この中で議論された文脈から容易に導き出せるか、または推定できる課題は、請求項1記載の方法によって解決される。本発明による方法の目的に適った態様および変形は、請求項1を直接的または間接的に引用する下位請求項の中で保護される。
【0026】
一般式I:
【化3】

の脂肪酸アルキルエステルおよびアクロレインを一般式II:
【化4】

のトリグリセリドの反応によって製造する方法において、
a)トリグリセリドを、アルコールR'−OHを用いて、適した触媒の存在下で反応させ脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンを得て、かつ
b)得られたグリセリンを接触的にアクロレインへと脱水する
ことを特徴とする製造法を使用することによって、上で詳細に挙げられた従来技術の欠点を防止することに成功し、
その際、Rは、R、RおよびRであり、かつR、RおよびRは、全て同じであるか、または部分的に同じであるか、または全て異なっており、かつ、それぞれ直鎖または分岐鎖のおよび場合により一価不飽和または多価不飽和のC10〜C30−アルキル基、有利にはC12〜C20−アルキル基を意味し、かつR'は、C〜C10−アルキル基、有利にはC〜C−アルキル基、C〜C−シクロアルキル基、有利にはC−シクロアルキル基を意味する。
【0027】
とりわけ有利には、R、RおよびRがそれぞれC12〜C18−アルキル基であるトリグリセリドが反応工程a)で使用される。
【0028】
好ましくは、さらにまた反応工程a)において、R'=メチルまたはエチルであるアルコールR'−OHが使用される。極めて有利にはメタノールが使用される。なぜなら、そうして得られる脂肪酸メチルエステルは、最も頻繁にバイオディーゼルとして使用されるからである。
【0029】
2つの目的生成物の同時の製造は、本発明による方法の様々な変法によって達成され得る。その際、2つの主要な変法に区別することができる。
【0030】
第一の変法は、反応a)およびb)が同時に一工程で、つまり一段階で実施される方法を包含し、それは図1に示されている。
【0031】
適した触媒または触媒からの混合物の使用によって、両方の反応は並行して行われる。その際、例えばトリグリセリド−触媒−混合物は、場合により溶剤の存在下で、液相中で酸触媒を用いてアルコールR'OHと反応させられる。
【0032】
反応a)およびb)のために、均一系酸触媒または不均一系酸触媒および/または鉱酸の塩または場合により適した生体触媒が使用され得る。
【0033】
その際、有利なのは、均一系酸触媒、殊にpKa値<7を有する均一系触媒の使用下での方法である。
【0034】
触媒として適しているのは、例えば強いブレンステッド酸、例えば硫酸、リン酸、トルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸である。
【0035】
塩型触媒として適しているのは、例えば硫酸カリウム、硫酸ナトリウムまたは硫酸セシウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウムまたは硫酸水素セシウムまたは上記の硫酸水素塩または硫酸塩の混合物、リン酸リチウム、リン酸鉄、硫酸亜鉛であり、場合により均一相下および場合により溶剤の存在下にある。
【0036】
不均一系酸触媒が使用される場合、H値<+2、好ましくは<−3を有するものが有利である。
【0037】
値はハメットによる酸度関数に相当し、かつ指示薬を用いる、いわゆるアミン滴定によってか、またはガス状塩基の吸着によって算出され得る(Studies in surface science and catalysis,Vol.51,1989:"New solid acids and bases,their catalytic properties",K.Tanabe et al.,Kapitel 2,殊に第5頁〜第9頁を参照のこと)。
【0038】
前述の文献の第1章、第1頁〜第3頁は、当業者が、場合によりH値の測定に従って、適した触媒を選択することができる多数の固体酸を挙げている。
【0039】
不均一系触媒として、好ましくはゼオライト、固体酸、卑金属混合酸化物触媒または酸性イオン交換樹脂が適している。
【0040】
その際、不均一系触媒として有利なのは:
(i)天然または合成のケイ酸塩物質、例えば殊にモルデナイト、モンモリロナイトおよび酸性ゼオライト、例えばHZSM−5、MCM−22、ゼオライトベータ;
(ii)一塩基、二塩基、または多塩基無機酸、殊にリン酸、硫酸または無機酸の酸性塩で被覆された担体材料、例えば酸化物物質またはケイ酸塩物質、好ましくは酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウムまたはそれらの混合物;
(iii)酸化物および混合酸化物、例えば酸化アルミニウム、酸化亜鉛−酸化アルミニウム−混合物またはヘテロポリ酸;(iv)ポリスチレンスルホン酸樹脂、殊にレバチット樹脂またはアンバーライト樹脂またはパーフルオロ化ポリマースルホン酸樹脂、殊にナフィオン
である。
【0041】
生体触媒として、リパーゼ、エステラーゼ、ヒドラターゼおよび/またはヒドロラーゼが適している。
【0042】
溶剤の使用は有利である。というのも、それによって反応性中間化合物の濃度が下げられ、かつオリゴマー、ポリマーおよびその他の高沸点物が生じる副反応が最小化されるからである。さらに、エステル形成のためにアルコールの添加が必要とされる。使用されるのは、当業者に公知の溶剤および希釈剤、例えばメチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグリム、トルエン、メチルイソブチルケトンおよび/またはエステル交換反応のために利用されるアルコールR'−OHである。使用されるトリグリセリドも、中間体として生じるグリセリンならびに生じる脂肪酸アルキルエステルおよび脱水に際して生じる水と同様に溶剤として作用し得る。
【0043】
溶剤は、好ましくは過剰量で添加され、かつ有利にはエステル交換反応のために使用されるアルコールR'−OHと同一である。その際、極めて有利には、メタノールおよび/またはエタノールが使用される。
【0044】
30〜500℃、有利には50〜350℃、とりわけ有利には70〜300℃の反応温度で処理される。その際、圧力は、反応混合物の液状状態が引き続き保持されるように調整される。通常は、圧力は1〜300bar、有利には1〜150bar、とりわけ有利には1〜50barである。
【0045】
実施は、当業者に公知の反応容器、例えば固定床反応器、撹拌槽、流管または組み合わせにおいて実施され得る。
【0046】
形成されたアクロレインは、それ自体公知の様式で、単独でまたは溶媒あるいは希釈媒体の一部および/または水と一緒に、有利にはストリッピングまたは蒸留によって、得られた反応混合物から分離され得る。反応しなかった中間体またはグリセリンは、反応段階において留まり、かつ継続してさらに反応させられる。水(急冷)により分離されたアクロレインを捕集することによって、直接使用に供給され得るか、またはさらなる精製に供給され得るアクロレイン水溶液が得られる。
【0047】
使用目的に応じて、それに従ってアクロレイン中の不純物または副生成物は許容され得るか、または後処理工程によって取り除かれるべきである。有利には、水、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドまたは酢酸ならびに、さらに別の低反応性の副生成物は、アクロレインから単離されない。
【0048】
従って、本方法変法は、反応b)で形成されたアクロレインを反応混合物から単独でまたは場合により溶剤および/または水の少なくとも一部と一緒に分離することを特徴としている。
【0049】
その際、アクロレインは、ストリッピング、蒸留、抽出、相分離または膜の使用によって反応混合物から分離され得る。
【0050】
極めて有利には、その際、アクロレインは、反応の間、蒸留によって反応混合物から分離される。
【0051】
トリグリセリドからのアクロレインおよびバイオディーゼルの同時の合成のために、脱水工程の関与の他に、選択的エステル交換反応が必要とされる。アクロレインへの脱水に際して、脂肪酸アルキルエステル合成の際に遊離脂肪酸の不所望な生成を同様にもたらし得る水が形成されるので、本質的にアクロレインを得る後続反応によって消費されるグリセリンの他に、有利には水も反応混合物もしくは平衡から取り除かれるべきである。これは第一の反応工程で直接行うか、または後接続された段階において行ってよい。
【0052】
反応混合物からの化学反応の間にアクロレインを同時に取り除くことは、蒸留によって比較的簡単に可能であり、かつ、それゆえ有利である。これは、一方ではアクロレインおよび、他方ではトリグリセリド、脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンの沸点の大きな差違に因るものである。得られたアクロレインを反応混合物から即座に分離することによって、加えて収率を高めることができる。なぜなら、反応混合物中のアクロレインは、不所望な副反応をもたらし得る非常に反応性の化合物だからである。脂肪酸アルキルエステルを含有する反応混合物からのアクロレインの良好な分離可能性は、実施例2から明らかであり、そこではアクロレインを定量的に真空蒸留によってバイオディーゼルから分離した。
【0053】
本発明のさらに別の一実施態様において、アクロレインはエステル交換反応の反応開始時に即座に形成されるのではなく、トリグリセリドの大部分が脂肪酸アルキルエステルへと変換された後に初めて、形成されたグリセリンが分離される。エステル交換反応後に得られたグリセリンは、次いで脱水触媒によってアクロレインへと変換させられる。触媒は、記載された酸性または塩基性成分から成るか、または脱水触媒の当業者に公知の成分から成っていてよい。
【0054】
このさらに別の方法変法は、反応a)およびb)を別々の工程で実施する方法を包含し、それは図2に示されている。その際、まずグリセリンおよび脂肪酸アルキルエステル(バイオディーゼル)を得るためのトリグリセリドとアルコールR'OHとの反応a)(エステル交換反応)が、適した第一の触媒の存在下で実施される。引き続き、グリセリン含有相と、脂肪酸アルキルエステル含有相とに分けられる。分離されたグリセリン含有相中のグリセリンは、適した第二の触媒の存在下でアクロレインへと脱水される(反応b)。脂肪酸アルキルエステルは、直接または適した後処理後、例えば十分な脱水後に、燃料もしくはバイオディーゼルとして使用され得る。
【0055】
別々の反応工程での脱水触媒の使用によって、上記条件にて少なくともトリグリセリドまたはグリセリンの部分量から形成し得る反応性中間体の形成が防止される。さもなければ、該反応性中間体は、触媒の失活または収率の低下につながる不所望な副生成物を強く形成するからである。これらの中間体が最小化されると、アクロレインおよび脂肪酸アルキルエステルの収率が改善され得る。
【0056】
これは、一方では不連続的な運転様式において行われ得、その際、脱水触媒は、ある特定の反応時間後に、その時に二相の反応混合物に添加される。このために適しているのは、例えば撹拌槽中での実施である。
【0057】
他方では、脱水触媒は、相分離が行われた後に、反応器入口とは流方向に向かって隔たった位置において初めて、またはさらに別の反応器セクション中に供給してよい。グリセリン溶液および触媒がこの位置に達するまでに、すでにグリセリンの一部が反応性中間体へと変換されていてよい。この運転様式は技術的に、例えば撹拌槽カスケードまたは流管中で実現され得る。相分離は、本発明のこの実施態様の場合、水を後から添加することによってか、または過剰量のアルコールを蒸留除去することによって促進さえ得、このことはグリセリン相中での引き続く脱水を軽減する。
【0058】
第二の工程における脱水のさらに別の一利点は、アクロレインおよび脂肪酸アルキルエステルの収率が上昇し得るという点にある。なぜなら、反応体の反応挙動を手がかりにして最適化された温度プロフィールもしくは温度プログラムが各工程のために別個に調整され得るからである。例えば、トリグリセリドのエステル交換反応には、グリセリンの活性化より明らかに低い活性化エネルギーまたは反応温度と、中間生成物、例えばヒドロキシプロピオンアルデヒドを迅速に製造するその第一の脱水工程とを要する。得られた脂肪酸アルキルエステルは、それに反して150〜250℃の比較的高い温度では、非選択的に反応が継続する傾向にある。従って、様々な反応条件で二つの反応段階を通すことによって脂肪酸アルキルエステルおよびアクロレインの同時の製造を実施することは、有利な一実施態様である。
【0059】
本方法の有利な一実施態様は、エステル交換反応a)を、アルカリ触媒、好ましくは対応する酸のpKa値が>13であるアルカリ触媒を用いて実施することを特徴とする。
【0060】
ここで殊に、エステル交換反応のために使用されるアルコールR'OHのアルカリ金属アルコキシドが挙げられるべきである。その際、有利なのはC〜C−アルコールのアルカリ金属アルコキシド、殊にアルカリ金属メトキシドまたはアルカリ金属エトキシド、および極めて有利にはナトリウムメトキシドである。
【0061】
アルカリ触媒を反応a)におけるエステル交換反応のために使用する可能性は、第二の方法変法の場合に付加的な利点となる。なぜなら、ここでグリセリン相の後続の分離によって、脱水において使用されるべき酸触媒との反応が実際には起こり得ないからである。
【0062】
一工程における反応操作の場合と同様、ここでもしかし、反応a)を均一系酸触媒または不均一系酸触媒を用いて実施することが可能である。加えて、この触媒は、脱水において使用されるべき酸触媒と異なっていてもよく、そのため方法の可変性および柔軟性がさらに高められる。
【0063】
反応a)において均一系酸触媒が使用される場合、有利には、pKa値<7を有する触媒が使用される。
【0064】
反応a)において不均一系酸触媒が使用される場合、有利には、H値<+2、好ましくは<−3を有する触媒が使用される。
【0065】
アルカリ触媒のみならず酸触媒を用いたエステル交換反応a)も、20〜150℃、好ましくは25〜100℃、有利には25〜80℃の温度で実施される。
【0066】
このように、最適な反応条件の選択によって、バイオディーゼルの他にグリセリンを第一の反応段階において形成し、引き続き第二の段階において選択的にアクロレインへと変換させることが可能である。
【0067】
本発明により、反応a)を生体触媒によって実施することも可能である。
【0068】
生体触媒として、その際、リパーゼ、エステラーゼ、ヒドラターゼまたはヒドロラーゼが使用される。
【0069】
別々の反応工程a)およびb)を伴う方法変法の場合、一次生成物として形成されたグリセリンは反応a)の反応混合物から全体的または部分的に分離され、かつ別個に行われる反応b)の際に、接触作用によりアクロレインへと脱水される。
【0070】
脱水反応b)のために、本発明により、均一系酸触媒または不均一系酸触媒が使用され得る。
【0071】
均一系触媒の場合、pKa値<7を有するものが有利である。
【0072】
殊に、ここでは、硫酸、リン酸、トルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸が触媒として使用され得る。
【0073】
さらに、有利には、脱水反応b)のための均一系触媒として、鉱酸の塩が、場合により溶剤の存在下で使用される。
【0074】
極めて有利には、その際、硫酸カリウム、硫酸ナトリウムまたは硫酸セシウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウムまたは硫酸水素セシウムまたは上記の硫酸水素塩および硫酸塩の混合物、リン酸リチウム、リン酸鉄、硫酸亜鉛が、場合により溶剤の存在下で触媒として使用される。
【0075】
不均一系触媒の場合、H値<+2、好ましくは<−3を有するものが有利である。
【0076】
有利には、ゼオライト、固体酸、卑金属混合酸化物触媒または酸性イオン交換樹脂が不均一系触媒として使用される。
【0077】
不均一系触媒として、殊に:
(i)天然または合成のケイ酸塩物質、例えば殊にモルデナイト、モンモリロナイトおよび酸性ゼオライト、殊にHZSM−5、MCM−22、ゼオライトベータ;
(ii)一塩基、二塩基、または多塩基無機酸、殊にリン酸、硫酸または無機酸の酸性塩で被覆された担体材料、例えば酸化物物質またはケイ酸塩物質、殊に酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウムまたはそれらの混合物;
(iii)酸化物および混合酸化物、殊に酸化アルミニウム、酸化亜鉛−酸化アルミニウム−混合物またはヘテロポリ酸または
(iv)ポリスチレンスルホン酸樹脂、殊にレバチット樹脂またはアンバーライト樹脂またはパーフルオロ化ポリマースルホン酸樹脂、殊にナフィオン
が適している。
【0078】
好ましくは調整されるべき反応条件は、上述の最初の一段階の方法変法の際に適用されるものに相当する。第二の反応、脱水b)の反応温度は単に、第一の反応、エステル交換反応a)と比較して、50〜400℃、有利には100〜350℃のより高い温度にある。
【0079】
同様に有利には、脱水反応b)は生体触媒を用いて実施される。
【0080】
生体触媒として、その際、例えばデヒドラターゼまたはヒドラターゼまたはヒドロラーゼが使用される。
【0081】
反応工程b)は、その際、好ましくは溶剤の存在下で実施される。
【0082】
溶剤として有利には、メチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグリム、トルエン、メチルイソブチルケトンおよび/またはエステル交換反応のために反応工程a)ですでに利用されたアルコールR'−OHが使用される。
【0083】
その際、グリセリンを反応混合物a)から蒸留によって分離する可能性がある。
【0084】
反応混合物a)の真空蒸留によって、グリセリンは、第一の反応装置中に取り付けられた蒸留塔内で分離され得る。
【0085】
本方法のとりわけ好ましい一実施態様は、グリセリンが反応混合物a)から反応蒸留によって分離され、その際、同時に存在する酸触媒によりアクロレインへと脱水される(反応工程b)という点にある。
【0086】
この場合、蒸留塔内には、好ましくは上記の詳細に説明された種類(i)〜(iv)の不均一系脱水触媒が存在し、該触媒は、分離されるべきグリセリンのアクロレインへの変換を同時に促進する。後接続された塔内の温度は、50〜300℃、有利には80〜250℃、とりわけ有利には100〜200℃である。そこでの圧力は、0.1〜1500mbar、有利には0.5〜1000mbar、とりわけ有利には2〜100mbarである。
【0087】
固体の、一般に不溶性の脱水酸触媒は、蒸留塔内部で堆積物としてかまたはコーティングとして導入されている。
【0088】
2つの別々の工程での反応a)およびb)の実施の利点は、プロセスの安定性が、連続的な運転様式の場合の制限された方法工程に基づき改善されているという点にもある。
【0089】
蒸留もしくは反応蒸留の他になお、グリセリンを分離するさらに別の方法が使用され得る。
【0090】
本発明による方法のさらに別の有利な一実施態様は、脂肪酸アルキルエステルを含有する親油性相Aおよびグリセリン含有の親水性相Bが形成された後に、グリセリンを反応溶液から単純な相分離によって分離することを特徴とする。
【0091】
この相分離は、さらにまた相分離剤の添加よって可能とされるか、または促進され得る。
【0092】
その際、有利な相分離剤は、水および/または有機溶剤および/または脂肪酸アルキルエステルである。
【0093】
アクロレインおよび脂肪酸アルキルエステルの同時の製造は、本発明により、トリグリセリドおよび脂肪酸アルキルエステルを含有する親油性相Aと、水−およびグリセリン含有の親水性相Bとへの相分離を、エステル交換反応の開始時にすでに意図的に促進し、かつ反応a)およびb)を並行して2つの異なる液相中で行う(二相触媒作用)ことによっても達成され得る。これは一方では、水またはその他の溶剤の添加によって行われ得る。
【0094】
他方では、相分離を促進するために、エステル交換反応のために使用される過剰量のアルコールを蒸留によって取り除いてよい。このことが持つ利点は、エステル交換反応a)のためにおよび脱水反応b)のために、そのつど最適化された触媒が使用できることである。加えて2つの反応は、互いに影響し合わずに、別々にそれぞれの相において行われる。
【0095】
それゆえ有利なのは、反応a)が、トリグリセリドおよび脂肪酸アルキルエステルを含有する親油性相A中で実施され、かつ反応b)が、グリセリン、水およびアクロレインを含有する親水性相B中で実施される方法である。
【0096】
脂肪酸アルキルエステルを含有する親油性相Aから水性親水性相Bへのアクロレインの簡単な移行は、実施例1から明らかであり、そこではアクロレインが主に水相中で再び見つけられた。
【0097】
従って、2つの目的生成物の収率は、非選択的な副反応の発生がより少ないために全体で上昇し得る。残留湿分または添加された水をもっぱらグリセリン相中で結合させることも目的とされている。それというのも、さもなければ遊離脂肪酸の不所望な形成に強くつながるからである。
【0098】
エステル交換反応のためのおよび脱水のための触媒系は、二相触媒作用の場合、均一系触媒の使用の際にエステル交換触媒がトリグリセリド相中に溶解し、かつ脱水触媒がグリセリン含有相中に溶解し、かつ、その逆とはならないように適合させられ、その結果、親油性相A中に有利には可溶性の触媒はそこで反応a)を促進し、かつ親水性相中で有利には可溶性の触媒はそこで反応b)を促進する。
【0099】
一般的に、良好な物質交換のためには均一な溶液が好ましいが、ここでどうしても必要とはされない。この場合、これはそれどころか二相触媒作用の原理によって適切に利用され、その際、生成物のアクロレインは水性のグリセリン相中に良好に可溶性である。従って、アクロレインは、煩雑な後処理なしに簡単に相分離または脂肪酸アルキルエステルからの付加的な抽出によって分離され得、ひいては方法全体が単純化され得る。このことは実施例1からも明らかである。
【0100】
エステル開裂は、反応条件に応じて一方向またはその他の方向に進み得る平衡反応である。これは二相触媒作用の記載された実施態様の場合に、グリセリンが反応生成物として、トリグリセリドおよび脂肪酸アルキルエステルを含有する相から、ひいては平衡から取り除かれることによって適切に利用される。それゆえ、反応a)は脂肪酸アルキルエステルもしくはバイオディーゼルの方向へと強く促進されるか、もしくはトリグリセリドへの逆反応が最小化される。それによって、さもなければ本来バイオディーゼルの製造のために適していないとされる反応条件が調整され得るか、もしくは適した反応条件の範囲が広げられ得る。そうして、例えば過剰量のアルコールが低下させられ得る。
【0101】
式Iの脂肪酸アルキルエステルは、好ましくは親油性相Aから獲得され、かつ直接または場合によりさらなる精製後に燃料として使用され得る。
【0102】
アクロレインは親水性相Bから獲得され、かつ直接または場合によりさらなる精製後にメチオニン生成物またはアクリル酸のための出発物質として使用され得る。
【0103】
本発明のさらに別の一実施態様は、使用されるトリグリセリドをアルコールR'OHの存在下で触媒作用により脂肪酸アルキルエステルおよびアクロレインに変換し、その際、エステル交換反応a)および脱水反応b)を、膜の使用下で、同時に、しかし空間的に別々に実施する(膜分離)ことを特徴とする。膜によって、得られるグリセリンは透過液に達する一方で、トリグリセリドおよび脂肪酸アルキルエステルは選択的に保持される(保持液)。それによって、別個の後処理工程なしに分離が行われ、これにより製造費が下がる。
【0104】
例えば、グリセリンは反応a)の反応混合物から、本発明により、膜濾過によっても分離され得る。膜材料として、殊に有機材料またはセラミック材料が適している。
【0105】
脱水反応は、膜上または膜中に固定化される適した触媒によってか、または透過液中へ触媒を別個に添加することによっても行われ得る。脱水のための触媒活性成分は、膜の不溶性成分であってもよい。
【0106】
膜として、例えば精密濾過または限界濾過からの溶解膜または拡散膜が適しており、該膜は、それらの官能基、極性および細孔構造に基づいてトリグリセリドを保持するが、しかしグリセリンに対しては透過性である。適した膜は、殊に、有機材料、例えばポリエーテルスルホン(PES)、セルロースエステル、ポリイミドまたはポリエーテルイミド、ポリ脂肪酸アミドまたはポリアクリロニトリル(PAN)から、またはセラミック材料、例えば酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム(バデレアイト)ならびにそれらを組み合わせから作り上げられている。
【0107】
記載されたバイオディーゼルおよびアクロレインの同時の製造の利点は、高められた製造性、付加価値および時間の節約という点にある。同時に、輸送費およびエネルギー費が減少される。全体で、バイオディーゼルおよびアクロレインの製造はより経済的である。
【0108】
同時に、アクロレイン合成の際に発生する高沸点副生成物は、付加的な発熱量としてバイオディーゼルに添加、または場合によりバイオディーゼル中に残してよい。これは、例えばアクロレインのダイマーまたはトリマーまたはグリセリンからのエーテルであってよい。
【0109】
本発明の対象はまた、ここで記載された本発明による方法に従って製造された、アクロレインを含有する混合物、ならびに、ここで記載された本発明による方法に従って製造された、式Iの脂肪酸アルキルエステルを含有する混合物である。
【0110】
以下の実施例は、記載された本発明を詳細に説明するが、その範囲を決して制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】反応a)およびb)を同時に一工程で、つまり一段階で実施する第一の方法変法を示す図
【図2】反応a)およびb)を別々の工程で実施する第二の方法変法を示す図
【実施例】
【0112】
実施例1:
バイオディーゼル50gおよびアクロレイン50gを混合し、かつ均一な混合物を形成した。分液漏斗中で、この均一な混合物を水250gと混合し、振動させ、かつ放置しておき、その際、2つの相が形成された。相界面の形成後、分液漏斗中の下方の水相を分離し、かつアクロレイン含量の測定のためにガスクロマトグラフィーにより分析した。全体で、水相中でそれによってアクロレイン33.4gを得た。従って、簡単な水による一段階の抽出に際してすでに、アクロレインの大部分をバイオディーゼルから分離することができた。
【0113】
実施例2:
回転蒸発器のフラスコ中に、バイオディーゼル50gおよびアクロレイン50gからの混合物を装入し、かつ水浴中で35℃に加熱した。水流ポンプによって、該混合物をゆっくりと真空下に置いた。冷却した蒸留受け器中に、ヒドロキノン50mgを、蒸留して得たアクロレインの安定化のために装入した。1時間以内に、アクロレイン49.1gの留出物を得た。留出物の純度は、ガスクロマトグラフィーによって少なくとも99.5%であることを確認した。回転蒸発器のフラスコ中には50.6gが残っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:
【化1】

の脂肪酸アルキルエステルおよびアクロレインを一般式II
【化2】

のトリグリセリドの反応によって製造する方法において、
a)トリグリセリドを、アルコールR'−OHを用いて、適した触媒の存在下で反応させ脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンを得て、かつ
b)得られたグリセリンを接触的にアクロレインへと脱水する
[式中、Rは、R、RおよびRであり、かつR、RおよびRは、全て同じであるか、または部分的に同じであるか、または全て異なっており、かつ、そのつど直鎖または分岐鎖のおよび場合により一価不飽和または多価不飽和のC10〜C30−アルキル基、有利にはC12〜C20−アルキル基を意味し、かつR'は、C〜C10−アルキル基、有利にはC〜C−アルキル基、C〜C−シクロアルキル基、有利にはC−シクロアルキル基を意味する]
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
、RおよびR=C12〜C18−アルキル基であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
R'=メチルまたはエチルであることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
反応a)およびb)を同時に一工程で実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
反応a)およびb)のために、均一系または不均一系酸触媒および/または鉱酸の塩または生体触媒を使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
pKa値<7を有する均一系触媒を使用することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
硫酸、リン酸、トルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸を使用することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
硫酸カリウム、硫酸ナトリウムまたは硫酸セシウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウムまたは硫酸水素セシウムまたは上記の硫酸水素塩および硫酸塩の混合物、リン酸リチウム、リン酸鉄、硫酸亜鉛を、場合により溶剤の存在下で触媒として使用することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項9】
値<+2、好ましくは<−3を有する不均一系触媒を使用することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項10】
ゼオライト、固体酸、卑金属混合酸化物触媒または酸性イオン交換樹脂を不均一系触媒として使用することを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
(i)天然または合成のケイ酸塩物質、殊にモルデナイト、モンモリロナイトおよび酸性ゼオライト、殊にHZSM−5、MCM−22およびゼオライトベータ、
(ii)一塩基、二塩基、または多塩基無機酸、殊にリン酸、硫酸または無機酸の酸性塩で被覆された担体材料、例えば殊に酸化物物質またはケイ酸塩物質、好ましくは酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウムまたはそれらの混合物、
(iii)酸化物および混合酸化物、殊に酸化アルミニウム、酸化亜鉛−酸化アルミニウム−混合物またはヘテロポリ酸、または
(iv)ポリスチレンスルホン酸樹脂、殊にレバチット樹脂またはアンバーライト樹脂またはパーフルオロ化ポリマースルホン酸樹脂、殊にナフィオン
を使用することを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
リパーゼ、エステラーゼ、ヒドラターゼおよび/またはヒドロラーゼを生体触媒として使用することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項13】
反応を溶剤の存在下で実施することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
溶剤として、メチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグリム、トルエン、メチルイソブチルケトンおよび/または請求項1記載のエステル交換反応に利用されるアルコールR'−OHを使用することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
反応b)で形成されたアクロレインを、反応混合物から単独でまたは場合により溶剤の少なくとも一部と一緒に分離することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
アクロレインを、ストリッピング、蒸留、抽出、相分離または膜の使用によって反応混合物から分離することを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
アクロレインを、すでに反応の間に、蒸留によって反応混合物から分離することを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
反応a)およびb)を別々の工程で実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
反応a)を、対応する酸のpKa値が>13であるアルカリ触媒を用いて実施することを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
アルカリ触媒として、エステル交換反応のために使用されるアルコールR'OHのアルカリ金属アルコキシドまたはアルカリ金属メトキシドまたはアルカリ金属エトキシド、有利にはナトリウムエトキシドを使用することを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
反応a)を、均一系または不均一系酸触媒を用いて実施することを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項22】
pKa値<7を有する均一系酸触媒を使用することを特徴とする、請求項21記載の方法。
【請求項23】
値<+2、好ましくは<−3を有する不均一系触媒を使用することを特徴とする、請求項21記載の方法。
【請求項24】
反応a)を、生体触媒を用いて実施することを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項25】
リパーゼ、エステラーゼ、ヒドラターゼまたはヒドロラーゼを生体触媒として使用することを特徴とする、請求項24記載の方法。
【請求項26】
反応a)の反応混合物からの一次生成物として形成されたグリセリンを、全体的または部分的に分離し、かつ反応b)で接触的にアクロレインへと脱水することを特徴とする、請求項18から25までのいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
脱水反応b)のために、均一系または不均一系酸触媒を使用することを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項28】
pKa値<7を有する均一系触媒を使用することを特徴とする、請求項27記載の方法。
【請求項29】
硫酸、リン酸、トルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸を触媒として使用することを特徴とする、請求項28記載の方法。
【請求項30】
脱水反応b)のために、鉱酸の塩を触媒として使用することを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項31】
硫酸カリウム、硫酸ナトリウムまたは硫酸セシウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウムまたは硫酸水素セシウムまたは上記の硫酸水素塩および硫酸塩の混合物、リン酸リチウム、リン酸鉄、硫酸亜鉛を、場合により溶剤の存在下で触媒として使用することを特徴とする、請求項30記載の方法。
【請求項32】
脱水反応b)のために、H値<+2、好ましくは<−3を有する不均一系触媒を使用することを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項33】
ゼオライト、固体酸、卑金属混合酸化物触媒または酸性イオン交換樹脂を不均一系触媒として使用することを特徴とする、請求項32記載の方法。
【請求項34】
(i)天然または合成のケイ酸塩物質、殊にモルデナイト、モンモリロナイトおよび酸性ゼオライト、殊にHZSM−5、MCM−22およびゼオライトベータ、
(ii)一塩基、二塩基、または多塩基無機酸、殊にリン酸、硫酸または無機酸の酸性塩で被覆された担体材料、例えば殊に酸化物物質またはケイ酸塩物質、殊に酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウムまたはそれらの混合物、
(iii)酸化物および混合酸化物、殊に酸化アルミニウム、酸化亜鉛−酸化アルミニウム−混合物またはヘテロポリ酸、または
(iv)ポリスチレンスルホン酸樹脂、殊にレバチット樹脂またはアンバーライト樹脂、またはパーフルオロ化ポリマースルホン酸樹脂、殊にナフィオン
を使用することを特徴とする、請求項33記載の方法。
【請求項35】
脱水反応b)を、生体触媒を用いて実施することを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項36】
デヒドラターゼ、ヒドラターゼまたはヒドロラーゼを生体触媒として使用することを特徴とする、請求項35記載の方法。
【請求項37】
反応b)を溶剤の存在下で実施することを特徴とする、請求項26から36までのいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
溶剤として、メチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグリム、トルエン、メチルイソブチルケトンおよび/または請求項1記載のエステル交換反応に利用されるアルコールR'−OHを使用することを特徴とする、請求項37記載の方法。
【請求項39】
グリセリンを反応混合物a)から蒸留によって分離することを特徴とする、請求項26から38までのいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
グリセリンを反応溶液から反応蒸留によって分離し、かつ、その際、同時に存在する酸触媒を用いてアクロレインへと脱水することを特徴とする、請求項39記載の方法。
【請求項41】
グリセリンを反応溶液から膜濾過によって分離することを特徴とする、請求項26から38までのいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
膜として有機材料またはセラミック材料を使用することを特徴とする、請求項41記載の方法。
【請求項43】
脂肪酸アルキルエステルを含有する親油性相Aおよびグリセリン含有の親水性相Bが形成された後に、グリセリンを反応溶液から相分離によって分離することを特徴とする、請求項26から38までのいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
相分離を、相分離剤の添加によって可能にするか、または促進することを特徴とする、請求項43記載の方法。
【請求項45】
相分離剤として、水および/または有機溶剤および/または脂肪酸アルキルエステルを使用することを特徴とする、請求項44記載の方法。
【請求項46】
反応a)およびb)を並行して2つの異なる液相中で行うことを特徴とする、請求項18または21から38までのいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
反応a)を、トリグリセリドおよび脂肪酸アルキルエステルを含有する親油性相A中で実施することを特徴とする、請求項46記載の方法。
【請求項48】
親油性相A中で、そこで有利には可溶性の触媒が反応a)を促進することを特徴とする、請求項47記載の方法。
【請求項49】
反応b)を、グリセリン、水およびアクロレインを含有する親水性相B中で実施することを特徴とする、請求項47記載の方法。
【請求項50】
親水性相B中で、そこで有利には可溶性の触媒が反応b)を促進することを特徴とする、請求項49記載の方法。
【請求項51】
式Iの脂肪酸アルキルエステルを相Aから取得することを特徴とする、請求項46から50までのいずれか1項記載の方法。
【請求項52】
アクロレインを相Bから取得することを特徴とする、請求項46から50までのいずれか1項記載の方法。
【請求項53】
請求項1から52までのいずれか1項記載の方法に従って製造された、アクロレインを含有する混合物。
【請求項54】
請求項1から52までのいずれか1項記載の方法に従って製造された、式Iの脂肪酸アルキルエステルを含有する混合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−510277(P2010−510277A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537584(P2009−537584)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061669
【国際公開番号】WO2008/061860
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】