トリチウムサンプラ
【課題】捕集する試料水の量を適正化できるトリチウムサンプラを提供する。
【解決手段】サンプルガスの水蒸気密度を測定する水蒸気密度測定装置3と、この水蒸気密度測定装置3から排出されたサンプルガスを吸引して加圧するコンプレッサ4と、加圧されたサンプルガスを冷却して試料水を捕集する試料水捕集装置5と、この試料水捕集装置5から排出されたサンプルガスの圧力を前述の水蒸気密度測定装置3で測定した水蒸気密度を基に調整する圧力調整装置7とを備えた。
【解決手段】サンプルガスの水蒸気密度を測定する水蒸気密度測定装置3と、この水蒸気密度測定装置3から排出されたサンプルガスを吸引して加圧するコンプレッサ4と、加圧されたサンプルガスを冷却して試料水を捕集する試料水捕集装置5と、この試料水捕集装置5から排出されたサンプルガスの圧力を前述の水蒸気密度測定装置3で測定した水蒸気密度を基に調整する圧力調整装置7とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子力発電所や使用済燃料再処理施設などにおける固体廃棄物の焼却炉又は溶融炉から放出される排気に含まれるトリチウムの放射能量を測定するために、この排気をサンプリングしたサンプルガスに含まれる水分を結露させてトリチウムを含んだ試料水として採取するトリチウムサンプラ(Sampler:試料採取装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所や使用済燃料再処理施設等では、気体状放射性廃棄物としてトリチウム(T)が水蒸気(HTO又はT2O)の形態で存在することから、この気体状放射性廃棄物からトリチウムを含むサンプルガスを捕集して放射能量を測定する場合、一般的にサンプルガスを冷却して試料水を採取し、この試料水を液体シンチレーションカウンタで測定する冷却凝縮法が採用されている。「発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針」では冷却凝縮法について、捕集効率90%以上を確保する、又は試料採取期間における源流点のサンプルガス中の平均水蒸気密度を把握する、のいずれかで対応することが必要であるとされている。
【0003】
捕集効率90%以上を確保する方式の従来のトリチウムサンプラでは、試料水捕集部に特殊な低温用冷凍機を使用し、サンプルガスを−60℃以下に冷却してサンプルガスに含まれる水蒸気を凍結し、更に解凍して試料水を捕集している。この方法では、凍結した試料水を解凍するときにはこの試料水捕集部では試料を捕集することができないため、連続して試料水を採取するために試料水捕集部が2台必要となる。特殊な低温用冷凍機を搭載した試料水捕集部を2台備えることにより装置コストが高くなるため、これに替わる方法として、コンプレッサでサンプルガスを6.5気圧程度の高圧まで加圧して水蒸気密度を高め、水蒸気分離膜で水蒸気を選択的に抽出して冷却することにより、凍結させないで試料水を90%以上の捕集効率で採取するトリチウムサンプラが提案されている(特許文献1参照)。しかし、この方法では、サンプルガスをコンプレッサで高圧に加圧する必要があり、コンプレッサへの負荷が高くなり運転中のコンプレッサの交換頻度が多くなるという問題点や、サンプルガスに含まれる水蒸気の90%以上を確保するため放射性の液体廃棄物が多くなるという問題点があった。
【0004】
一方、試料採取期間における源流点のサンプルガス中の平均水蒸気密度を把握する方式の従来のトリチウムサンプラでは、コンプレッサでサンプルガスを2〜3気圧程度に加圧し、加圧したサンプルガスを試料水捕集部で3℃程度に冷却して試料水を捕集している。また、温度計、湿度計、圧力計を備え、サンプルガスの温度、湿度、圧力を測定し、試料採取期間における源流点のサンプルガス中の平均水蒸気密度を求めている。この方法では、前述の特許文献1による捕集効率90%以上を確保するためのトリチウムサンプラで問題となったコンプレッサへの負荷を低減することができると共に、放射性の液体廃棄物の量をある程度低減することができる(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−248882号公報(第1の実施の形態)
【特許文献2】特開2005−134246号公報(段落0011、段落0012)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のトリチウムサンプラは以上のように構成されているので、サンプルガスの水蒸気密度の低い冬季には加圧するサンプルガスの圧力を高くし、試料水が多く捕集できる夏季には加圧するサンプルガスの圧力を低くするように、手動による圧力調整弁での圧力調整が必要になる。この圧力調整を不要とした場合には、試料水が少なくなる冬季にサンプルガスの圧力を合わせる必要があり、このようにすると夏季には過剰な試料水を捕集することとなり、放射性の液体廃棄物が多くなるという問題点があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、捕集する試料水の量を適正化できるトリチウムサンプラを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るトリチウムサンプラにおいては、サンプルガスの水蒸気密度を測定する水蒸気密度測定装置と、この水蒸気密度測定装置から排出されたサンプルガスを吸引して加圧するコンプレッサと、加圧されたサンプルガスを冷却して試料水を捕集する試料水捕集装置と、この試料水捕集装置から排出されたサンプルガスの圧力を水蒸気密度測定装置の測定結果を基に調整する圧力調整装置とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、水蒸気密度測定装置の測定結果を基に試料水捕集装置から排出されるサンプルガスの圧力を調整することにしたので、捕集する試料水の量を適正化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるトリチウムサンプラを示す構成図である。図1において、原子力発電所や使用済燃料再処理施設などの焼却炉や溶融炉から放出される排気の一部をサンプリングしたサンプルガスは、サンプルガス配管1からダストフィルタ2に導入され、このダストフィルタ2によりサンプルガスからダストが除去される。ダストが除去されたサンプルガスは水蒸気密度測定装置3に導入される。この水蒸気密度測定装置3は、サンプルガスの温度を測定する温度計31と、サンプルガスの湿度を測定する湿度計32と、サンプルガスの圧力を測定する圧力計33と、これら温度計31、湿度計32、圧力計33の測定結果を入力して平均水蒸気密度を算出するコントローラ34を有している。
【0011】
水蒸気密度測定装置3から排出されたサンプルガスはコンプレッサ4で吸引加圧され、試料水捕集装置5に導入される。この試料水捕集装置5では、導入されたサンプルガスは冷却装置51で冷却されて試料水が捕集さる。捕集された試料水は、オートドレン52により自動的に排出され、ドレンポット53に蓄積される。冷却装置51から排出されたサンプルガスは圧力計6で圧力が測定され、圧力調整装置7に導入される。この圧力調整装置7では、導入されたサンプルガスは並列に設置された第一の電磁弁71と第二の電磁弁72に導入される。この第一の電磁弁71を経由したサンプルガスは第一の圧力調整弁73で所定の圧力P1に調整され、第二の電磁弁72を経由したサンプルガスは第二の圧力調整弁74で所定の圧力P2に調節される。第一の電磁弁71と第二の電磁弁72の開閉状態は、前述の水蒸気密度測定装置3にあるコントローラ34により制御される。
【0012】
次に動作について説明する。温度計31、湿度計32、圧力計33の測定結果である、サンプリングガスの温度、湿度、圧力を基にコントローラ34で算出した水蒸気密度が、例えば5g/m3未満であれば第二の電磁弁72を開に、第一の電磁弁71を閉にする。
また、水蒸気密度が5g/m3以上であれば第一の電磁弁71を開に、第二の電磁弁72
を閉にする。切り換えのタイミングについては、ハンチングを防止するために適度のヒステリシスを設けておく。
【0013】
サンプルガスはコンプレッサ4で加圧されることにより、単位体積あたりの水蒸気密度が圧力に比例して増加する。加圧されたサンプルガスを冷却することによりサンプルガス内の水蒸気が液化して試料水を捕集し、サンプルガスを乾燥させることができる。例えば、サンプルガスを2気圧に加圧して3℃に冷却し、冷却したサンプルガスを大気圧に減圧すると、サンプルガスの水蒸気密度は大気圧換算露点が約−6℃に乾燥され、サンプルガスが排出される。同様に、サンプルガスを3気圧に加圧して3℃に冷却した場合は、大気圧換算露点が約−10℃に乾燥され、サンプルガスが排出される。冬季には、吸入されるサンプルガスの露点が−5℃という乾燥した状態になることもあり、2気圧に加圧して冷却した場合と、3気圧に加圧して冷却した場合では、捕集効率がそれぞれ約6%、約40%となる。それぞれの圧力でサンプルガスを1分間に25×10−3m3でサンプリングした場合は、1ヶ月間のサンプリング期間でそれぞれ約200g、約1500gの試料水が得られる。
【0014】
一方、試料水を液体シンチレーションカウンタで測定するには数10gの試料水が必要である。また、1ヶ月間の試料水を取り出す時に、冷却装置5の内部に付着して未回収となる数10g程度の試料水が次のサンプリング期間の試料水に混入して測定誤差になる。この誤差を10%以下とすると試料水は約1000g以上必要なため、コントローラ34で算出した水蒸気密度が5g/m3未満のときにはサンプルガスを3気圧に加圧し、水蒸
気密度が5g/m3以上のときには2気圧に加圧するように、サンプルガスの水蒸気密度
に基づき第一の電磁弁71と第二の電磁弁72を切り換える。
【0015】
上記のように、サンプルガスの水蒸気密度に基づきサンプルガスの圧力を切り換えるようにしたので、手動による圧力調整が不要になり、保守が容易になると共に、きめ細かく圧力調整が行えるため、液体廃棄物を削減できる効果を奏する。
【0016】
なお、上記の実施の形態1では、圧力調整装置7を第一の電磁弁71と第一の圧力調整弁73の系統と、第二の電磁弁72と第二の圧力調整弁74の系統との2系統を並列に接続して切り換えるようにしているが、3系統以上を並列に接続して切り換えることにより、水蒸気密度による圧力の調整をさらにきめ細かくすることもできる。
【0017】
実施の形態2.
なお、実施の形態1では、第一の電磁弁71と第一の圧力調整弁73で冷却装置51の出口圧力が所定の圧力P1に調整され、第二の電磁弁72と第二の圧力調整弁74で冷却装置51の出口圧力が所定の圧力P2に調整され、第一の電磁弁71と第二の電磁弁73を切り換えることにより、冷却装置51の出口圧力をP1或いはP2に切り換える場合について述べたが、実施の形態2では図2に示すように、電動弁75を備え、コントローラ34で算出した水蒸気密度に基づき電動弁75の開度を制御することにより、冷却装置51の出口圧力を制御することもできる。なお、各図の同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0018】
実施の形態1で示したものと同じ例で説明すると、例えば、コントローラ34で算出した水蒸気密度が5g/m3未満のときには、電動弁75の開度を小さくして、サンプルガスを3気圧一定になるようにする。また、水蒸気密度が5g/m3以上のときには電動弁75の開度を大きくして、サンプルガスの圧力を3気圧から水蒸気密度に比例して下げ、50g/m3以上で1気圧一定になるようにする。また、この電動弁75の開度による冷却装置51の出口圧力は、圧力計6で測定され、コントローラ34に入力される。
【0019】
実施の形態2での冷却装置51の出口圧力の調整を電動弁75で行うことにより、上記のような2段階の圧力制御ではなく、水蒸気密度に応じてきめ細かい圧力制御ができる。このため、採取する試料水の量をさらに適正化することができ、液体廃棄物の量をさらに削減することができる。
【0020】
実施の形態3.
なお、実施の形態1では、サンプルガスの温度、湿度、圧力を、温度計31、湿度計32、圧力計33で測定し、測定した温度と湿度と圧力からコントローラ34で水蒸気密度を算出する場合について述べたが、実施の形態3では、図3に示すようにサンプルガスの露点を測定する露点計35を備え、サンプルガスの露点と圧力を、この露点計35と圧力計33で測定し、測定した露点と圧力からコントローラ34でサンプルガスの水蒸気密度を算出するようにしてもよい。このようにすると、温度計および湿度計を設ける必要が無くなり、設備を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1におけるトリチウムサンプラを示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2におけるトリチウムサンプラを示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態3におけるトリチウムサンプラを示す構成図である。
【符号の説明】
【0022】
3 水蒸気密度測定装置 31 温度計
32 湿度計 33 圧力計
34 コントローラ 35 露点計
4 コンプレッサ 5 試料水捕集装置
7 圧力調整装置 71 第一の電磁弁
72 第二の電磁弁 73 第一の圧力調整弁
74 第二の圧力調整弁 75 電動弁
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子力発電所や使用済燃料再処理施設などにおける固体廃棄物の焼却炉又は溶融炉から放出される排気に含まれるトリチウムの放射能量を測定するために、この排気をサンプリングしたサンプルガスに含まれる水分を結露させてトリチウムを含んだ試料水として採取するトリチウムサンプラ(Sampler:試料採取装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所や使用済燃料再処理施設等では、気体状放射性廃棄物としてトリチウム(T)が水蒸気(HTO又はT2O)の形態で存在することから、この気体状放射性廃棄物からトリチウムを含むサンプルガスを捕集して放射能量を測定する場合、一般的にサンプルガスを冷却して試料水を採取し、この試料水を液体シンチレーションカウンタで測定する冷却凝縮法が採用されている。「発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針」では冷却凝縮法について、捕集効率90%以上を確保する、又は試料採取期間における源流点のサンプルガス中の平均水蒸気密度を把握する、のいずれかで対応することが必要であるとされている。
【0003】
捕集効率90%以上を確保する方式の従来のトリチウムサンプラでは、試料水捕集部に特殊な低温用冷凍機を使用し、サンプルガスを−60℃以下に冷却してサンプルガスに含まれる水蒸気を凍結し、更に解凍して試料水を捕集している。この方法では、凍結した試料水を解凍するときにはこの試料水捕集部では試料を捕集することができないため、連続して試料水を採取するために試料水捕集部が2台必要となる。特殊な低温用冷凍機を搭載した試料水捕集部を2台備えることにより装置コストが高くなるため、これに替わる方法として、コンプレッサでサンプルガスを6.5気圧程度の高圧まで加圧して水蒸気密度を高め、水蒸気分離膜で水蒸気を選択的に抽出して冷却することにより、凍結させないで試料水を90%以上の捕集効率で採取するトリチウムサンプラが提案されている(特許文献1参照)。しかし、この方法では、サンプルガスをコンプレッサで高圧に加圧する必要があり、コンプレッサへの負荷が高くなり運転中のコンプレッサの交換頻度が多くなるという問題点や、サンプルガスに含まれる水蒸気の90%以上を確保するため放射性の液体廃棄物が多くなるという問題点があった。
【0004】
一方、試料採取期間における源流点のサンプルガス中の平均水蒸気密度を把握する方式の従来のトリチウムサンプラでは、コンプレッサでサンプルガスを2〜3気圧程度に加圧し、加圧したサンプルガスを試料水捕集部で3℃程度に冷却して試料水を捕集している。また、温度計、湿度計、圧力計を備え、サンプルガスの温度、湿度、圧力を測定し、試料採取期間における源流点のサンプルガス中の平均水蒸気密度を求めている。この方法では、前述の特許文献1による捕集効率90%以上を確保するためのトリチウムサンプラで問題となったコンプレッサへの負荷を低減することができると共に、放射性の液体廃棄物の量をある程度低減することができる(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−248882号公報(第1の実施の形態)
【特許文献2】特開2005−134246号公報(段落0011、段落0012)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のトリチウムサンプラは以上のように構成されているので、サンプルガスの水蒸気密度の低い冬季には加圧するサンプルガスの圧力を高くし、試料水が多く捕集できる夏季には加圧するサンプルガスの圧力を低くするように、手動による圧力調整弁での圧力調整が必要になる。この圧力調整を不要とした場合には、試料水が少なくなる冬季にサンプルガスの圧力を合わせる必要があり、このようにすると夏季には過剰な試料水を捕集することとなり、放射性の液体廃棄物が多くなるという問題点があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、捕集する試料水の量を適正化できるトリチウムサンプラを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るトリチウムサンプラにおいては、サンプルガスの水蒸気密度を測定する水蒸気密度測定装置と、この水蒸気密度測定装置から排出されたサンプルガスを吸引して加圧するコンプレッサと、加圧されたサンプルガスを冷却して試料水を捕集する試料水捕集装置と、この試料水捕集装置から排出されたサンプルガスの圧力を水蒸気密度測定装置の測定結果を基に調整する圧力調整装置とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、水蒸気密度測定装置の測定結果を基に試料水捕集装置から排出されるサンプルガスの圧力を調整することにしたので、捕集する試料水の量を適正化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるトリチウムサンプラを示す構成図である。図1において、原子力発電所や使用済燃料再処理施設などの焼却炉や溶融炉から放出される排気の一部をサンプリングしたサンプルガスは、サンプルガス配管1からダストフィルタ2に導入され、このダストフィルタ2によりサンプルガスからダストが除去される。ダストが除去されたサンプルガスは水蒸気密度測定装置3に導入される。この水蒸気密度測定装置3は、サンプルガスの温度を測定する温度計31と、サンプルガスの湿度を測定する湿度計32と、サンプルガスの圧力を測定する圧力計33と、これら温度計31、湿度計32、圧力計33の測定結果を入力して平均水蒸気密度を算出するコントローラ34を有している。
【0011】
水蒸気密度測定装置3から排出されたサンプルガスはコンプレッサ4で吸引加圧され、試料水捕集装置5に導入される。この試料水捕集装置5では、導入されたサンプルガスは冷却装置51で冷却されて試料水が捕集さる。捕集された試料水は、オートドレン52により自動的に排出され、ドレンポット53に蓄積される。冷却装置51から排出されたサンプルガスは圧力計6で圧力が測定され、圧力調整装置7に導入される。この圧力調整装置7では、導入されたサンプルガスは並列に設置された第一の電磁弁71と第二の電磁弁72に導入される。この第一の電磁弁71を経由したサンプルガスは第一の圧力調整弁73で所定の圧力P1に調整され、第二の電磁弁72を経由したサンプルガスは第二の圧力調整弁74で所定の圧力P2に調節される。第一の電磁弁71と第二の電磁弁72の開閉状態は、前述の水蒸気密度測定装置3にあるコントローラ34により制御される。
【0012】
次に動作について説明する。温度計31、湿度計32、圧力計33の測定結果である、サンプリングガスの温度、湿度、圧力を基にコントローラ34で算出した水蒸気密度が、例えば5g/m3未満であれば第二の電磁弁72を開に、第一の電磁弁71を閉にする。
また、水蒸気密度が5g/m3以上であれば第一の電磁弁71を開に、第二の電磁弁72
を閉にする。切り換えのタイミングについては、ハンチングを防止するために適度のヒステリシスを設けておく。
【0013】
サンプルガスはコンプレッサ4で加圧されることにより、単位体積あたりの水蒸気密度が圧力に比例して増加する。加圧されたサンプルガスを冷却することによりサンプルガス内の水蒸気が液化して試料水を捕集し、サンプルガスを乾燥させることができる。例えば、サンプルガスを2気圧に加圧して3℃に冷却し、冷却したサンプルガスを大気圧に減圧すると、サンプルガスの水蒸気密度は大気圧換算露点が約−6℃に乾燥され、サンプルガスが排出される。同様に、サンプルガスを3気圧に加圧して3℃に冷却した場合は、大気圧換算露点が約−10℃に乾燥され、サンプルガスが排出される。冬季には、吸入されるサンプルガスの露点が−5℃という乾燥した状態になることもあり、2気圧に加圧して冷却した場合と、3気圧に加圧して冷却した場合では、捕集効率がそれぞれ約6%、約40%となる。それぞれの圧力でサンプルガスを1分間に25×10−3m3でサンプリングした場合は、1ヶ月間のサンプリング期間でそれぞれ約200g、約1500gの試料水が得られる。
【0014】
一方、試料水を液体シンチレーションカウンタで測定するには数10gの試料水が必要である。また、1ヶ月間の試料水を取り出す時に、冷却装置5の内部に付着して未回収となる数10g程度の試料水が次のサンプリング期間の試料水に混入して測定誤差になる。この誤差を10%以下とすると試料水は約1000g以上必要なため、コントローラ34で算出した水蒸気密度が5g/m3未満のときにはサンプルガスを3気圧に加圧し、水蒸
気密度が5g/m3以上のときには2気圧に加圧するように、サンプルガスの水蒸気密度
に基づき第一の電磁弁71と第二の電磁弁72を切り換える。
【0015】
上記のように、サンプルガスの水蒸気密度に基づきサンプルガスの圧力を切り換えるようにしたので、手動による圧力調整が不要になり、保守が容易になると共に、きめ細かく圧力調整が行えるため、液体廃棄物を削減できる効果を奏する。
【0016】
なお、上記の実施の形態1では、圧力調整装置7を第一の電磁弁71と第一の圧力調整弁73の系統と、第二の電磁弁72と第二の圧力調整弁74の系統との2系統を並列に接続して切り換えるようにしているが、3系統以上を並列に接続して切り換えることにより、水蒸気密度による圧力の調整をさらにきめ細かくすることもできる。
【0017】
実施の形態2.
なお、実施の形態1では、第一の電磁弁71と第一の圧力調整弁73で冷却装置51の出口圧力が所定の圧力P1に調整され、第二の電磁弁72と第二の圧力調整弁74で冷却装置51の出口圧力が所定の圧力P2に調整され、第一の電磁弁71と第二の電磁弁73を切り換えることにより、冷却装置51の出口圧力をP1或いはP2に切り換える場合について述べたが、実施の形態2では図2に示すように、電動弁75を備え、コントローラ34で算出した水蒸気密度に基づき電動弁75の開度を制御することにより、冷却装置51の出口圧力を制御することもできる。なお、各図の同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0018】
実施の形態1で示したものと同じ例で説明すると、例えば、コントローラ34で算出した水蒸気密度が5g/m3未満のときには、電動弁75の開度を小さくして、サンプルガスを3気圧一定になるようにする。また、水蒸気密度が5g/m3以上のときには電動弁75の開度を大きくして、サンプルガスの圧力を3気圧から水蒸気密度に比例して下げ、50g/m3以上で1気圧一定になるようにする。また、この電動弁75の開度による冷却装置51の出口圧力は、圧力計6で測定され、コントローラ34に入力される。
【0019】
実施の形態2での冷却装置51の出口圧力の調整を電動弁75で行うことにより、上記のような2段階の圧力制御ではなく、水蒸気密度に応じてきめ細かい圧力制御ができる。このため、採取する試料水の量をさらに適正化することができ、液体廃棄物の量をさらに削減することができる。
【0020】
実施の形態3.
なお、実施の形態1では、サンプルガスの温度、湿度、圧力を、温度計31、湿度計32、圧力計33で測定し、測定した温度と湿度と圧力からコントローラ34で水蒸気密度を算出する場合について述べたが、実施の形態3では、図3に示すようにサンプルガスの露点を測定する露点計35を備え、サンプルガスの露点と圧力を、この露点計35と圧力計33で測定し、測定した露点と圧力からコントローラ34でサンプルガスの水蒸気密度を算出するようにしてもよい。このようにすると、温度計および湿度計を設ける必要が無くなり、設備を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1におけるトリチウムサンプラを示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2におけるトリチウムサンプラを示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態3におけるトリチウムサンプラを示す構成図である。
【符号の説明】
【0022】
3 水蒸気密度測定装置 31 温度計
32 湿度計 33 圧力計
34 コントローラ 35 露点計
4 コンプレッサ 5 試料水捕集装置
7 圧力調整装置 71 第一の電磁弁
72 第二の電磁弁 73 第一の圧力調整弁
74 第二の圧力調整弁 75 電動弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルガスの水蒸気密度を測定する水蒸気密度測定装置、
該水蒸気密度測定装置から排出されたサンプルガスを吸引して加圧するコンプレッサ、
加圧されたサンプルガスを冷却して試料水を捕集する試料水捕集装置、
及び該試料水捕集装置から排出されたサンプルガスの圧力を前記水蒸気密度測定装置の測定結果を基に調整する圧力調整装置
を備えたトリチウムサンプラ。
【請求項2】
前記圧力調整装置は、直列に接続された第一の電磁弁と第一の圧力調整弁、及び直列に接続された第二の電磁弁と第二の圧力調整弁を備え、
前記直列に接続された第一の電磁弁と第一の圧力調整弁、及び前記直列に接続された第二の電磁弁と第二の圧力調整弁が並列に接続され、
前記水蒸気密度測定装置の測定結果を基に前記第一の電磁弁と前記第二の電磁弁の開閉状態が制御されることを特徴とする請求項1に記載のトリチウムサンプラ。
【請求項3】
前記圧力調整装置は、前記水蒸気密度測定装置の測定結果を基に開度が制御される電動弁を備えたことを特徴とする請求項1に記載のトリチウムサンプラ。
【請求項4】
前記水蒸気密度測定装置は、サンプルガスの温度を測定する温度計、湿度を測定する湿度計、圧力を測定する圧力計、及び前記温度計の測定結果と前記湿度計の測定結果と前記圧力計の測定結果とを基にサンプルガスの水蒸気密度を算出するコントローラを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトリチウムサンプラ。
【請求項5】
前記水蒸気密度測定装置は、サンプルガスの露点を測定する露点計、圧力を測定する圧力計、及び前記露点計の測定結果と前記圧力計の測定結果とを基にサンプルガスの水蒸気密度を算出するコントローラを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトリチウムサンプラ。
【請求項1】
サンプルガスの水蒸気密度を測定する水蒸気密度測定装置、
該水蒸気密度測定装置から排出されたサンプルガスを吸引して加圧するコンプレッサ、
加圧されたサンプルガスを冷却して試料水を捕集する試料水捕集装置、
及び該試料水捕集装置から排出されたサンプルガスの圧力を前記水蒸気密度測定装置の測定結果を基に調整する圧力調整装置
を備えたトリチウムサンプラ。
【請求項2】
前記圧力調整装置は、直列に接続された第一の電磁弁と第一の圧力調整弁、及び直列に接続された第二の電磁弁と第二の圧力調整弁を備え、
前記直列に接続された第一の電磁弁と第一の圧力調整弁、及び前記直列に接続された第二の電磁弁と第二の圧力調整弁が並列に接続され、
前記水蒸気密度測定装置の測定結果を基に前記第一の電磁弁と前記第二の電磁弁の開閉状態が制御されることを特徴とする請求項1に記載のトリチウムサンプラ。
【請求項3】
前記圧力調整装置は、前記水蒸気密度測定装置の測定結果を基に開度が制御される電動弁を備えたことを特徴とする請求項1に記載のトリチウムサンプラ。
【請求項4】
前記水蒸気密度測定装置は、サンプルガスの温度を測定する温度計、湿度を測定する湿度計、圧力を測定する圧力計、及び前記温度計の測定結果と前記湿度計の測定結果と前記圧力計の測定結果とを基にサンプルガスの水蒸気密度を算出するコントローラを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトリチウムサンプラ。
【請求項5】
前記水蒸気密度測定装置は、サンプルガスの露点を測定する露点計、圧力を測定する圧力計、及び前記露点計の測定結果と前記圧力計の測定結果とを基にサンプルガスの水蒸気密度を算出するコントローラを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトリチウムサンプラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2010−48764(P2010−48764A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215431(P2008−215431)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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