トリテルペン化合物含有油脂組成物の製造方法

【課題】マスリン酸等のトリテルペン化合物を、オリーブ植物粉砕物から、大量の溶剤を使用することなく効率良く抽出してトリテルペン化合物を多く含む油脂組成物を製造する方法を提供すること。
【解決手段】オリーブ植物粉砕物に、30〜60%(v/v)の炭素数1〜3の低級アルコール含有水溶液を添加し、0.05〜0.20Mとなるようにアルカリ金属水酸化物を添加して、前記オリーブ植物粉砕物からマスリン酸、オレアノール酸及びこれらの塩からなる群より選択されるトリテルペン化合物を含む油脂成分を抽出することを特徴とする、前記トリテルペン化合物含有油脂組成物を製造する方法により、前記課題は解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスリン酸等のトリテルペン化合物を高濃度に含有する油脂組成物を製造する方法に関し、特に、オリーブ油を採取したオリーブ果実圧搾残渣からマスリン酸等のトリテルペン化合物を多く含む油脂成分を効率的に抽出することにより前記油脂組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリーブの木は、地中海地方が原産とされる植物であり、その実から採れるオリーブオイルは、食用を初めとして様々な用途に使用される重要な油であり、世界中で大量に消費されている。
【0003】
オリーブの果実や葉に含まれるマスリン酸、オレアノール酸などのトリテルペン類は、抗炎症作用、抗ヒスタミン作用、抗がん作用など様々な生理活性が報告されており、その有用性が注目されている。これらのトリテルペン類は、オリーブオイルへの移行量が少なく、また、移行したトリテルペン類をオリーブオイルから抽出することは困難であるため、オリーブオイルを絞った後のオリーブ果実圧搾残渣から抽出する方法が報告されている(特許文献1、2参照)。
しかしながら、例えば、特許文献1に記載の分画による方法では、工程数及び使用溶媒量が多く、簡便な方法とはいえない。また、特許文献2に記載の方法では、大量のエタノールを使用しており、工業的に効率の良い方法とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許公開WO1998/004331号
【特許文献2】国際特許公開WO2003/029391号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、マスリン酸等のトリテルペン化合物を含む油脂成分をオリーブ植物粉砕物から効率良く抽出することにより前記トリテルペン化合物を含有する油脂組成物を製造する方法を提供することである。また、本発明の他の課題は、大量の有機溶剤を使用することなく、マスリン酸等のトリテルペン化合物を含む油脂成分をオリーブ植物粉砕物から効率良く抽出することにより、前記トリテルペン化合物含有油脂組成物を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、オリーブ植物粉砕物に、30〜60%(v/v)の炭素数1〜3の低級アルコール含有水溶液を添加し、更に0.05〜0.20Mとなるようにアルカリ金属水酸化物を添加することにより、比較的低い濃度の炭素数1〜3の低級アルコール含有水溶液で効率よくマスリン酸等のトリテルペン化合物を抽出できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は下記を提供する。
1.オリーブ植物粉砕物に、30〜60%(v/v)の炭素数1〜3の低級アルコール含有水溶液を添加し、更に0.05〜0.20Mとなるようにアルカリ金属水酸化物を添加して、前記オリーブ植物粉砕物からマスリン酸、オレアノール酸及びこれらの塩からなる群より選択されるトリテルペン化合物を含む油脂成分を抽出することを特徴とする、前記トリテルペン化合物を含有する油脂組成物の製造方法。
2.アルカリ金属水酸化物が、NaOHまたはKOHである、上記1記載の製造方法。
3.炭素数1〜3の低級アルコールが、エタノールである、上記1または2記載の製造方法。
4.50℃〜加熱還流温度の範囲で抽出溶液を加熱することを特徴とする、上記1〜3のいずれか一に記載の製造方法。
5.オリーブ植物粉砕物が、オリーブオイル採油かすである、上記1〜4のいずれか一に記載の製造方法。
6.0.08〜0.20Mとなるようにアルカリ金属水酸化物を添加することを特徴とする、上記1〜5のいずれか一に記載の製造方法。
7.40〜55%(v/v)エタノール含有水溶液を使用することを特徴とする、上記1〜6のいずれか一に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来多量に用いられていた低級アルコール等の有機溶媒濃度を低減しても、トリテルペン化合物を含む油脂成分を、オリーブ植物粉砕物から効率よく抽出することができる。本発明の方法により、有機溶媒量を低減することができ、かつ原料(オリーブ植物粉砕物)からのトリテルペン化合物の収量も向上するため、低コストでトリテルペン化合物を含有する組成物を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】エタノール濃度を変えることにより、マスリン酸及びオレアノール酸の回収率が変化することを示したグラフである。
【図2】KOH濃度を変えることにより、マスリン酸及びオレアノール酸の回収率が変化することを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明においてオリーブ植物粉砕物とは、オリーブ植物を、適宜細かく砕いたもの、粉砕物、摩砕物をいう。これらはオリーブオイルを絞るために圧搾された圧搾物、更にオリーブオイルを絞った後の圧搾残渣を含む。
オリーブ植物とは、オリーブの果実、種子、葉、茎、枝など、マスリン酸、オレアノール酸及びこれらの塩から選択されるトリテルペン化合物を含む部位であれば、いずれの部位を使用してもよい。これらは乾燥物であっても、乾燥物でなくても良い。
【0010】
特に、オリーブ果実の粉砕物は、オリーブ採油かす(オリーブオイルを絞った後の搾りかす、粉砕圧搾残渣)であることが好ましい。低コストで容易に入手しやすいからである。
オリーブオイルの搾りかすは、オリーブオイルの採油方法として通常知られている方法により得ることができる。主なオリーブオイル採油方法としては、圧搾法、遠心分離法、パーコレィション法等が知られており、これらの方法をそれぞれ単独で、あるいは併用して行うことができる(『小豆島オリーブ検定』公式テキスト、香川県小豆島町オリーブ課、2008年4月1日発行)。
【0011】
圧搾法では、夾雑物を取り除き、洗浄した原料果実を破砕機でゆっくりとペースト状にし、ペーストを化学繊維製のマットに薄く均一に広げ、このマットを積み重ねて圧搾を行う。搾出された果汁から、デカンテイションまたは遠心分離機で油のみを分別採取する。この時に出る採油かすはポマスとも呼ばれており、本発明の抽出のための原材料として使用することができる。
遠心分離法としては、2相式あるいは3相式と呼ばれる遠心分離法が知られている。典型的な3相式遠心分離法では、果実を破砕してペースト状とした後、撹拌しながら適量の水を加えて油を遊離させ、ペーストを遠心分離機に送り、液相(油と植物性水分との混合相)と固相(ポマス)を分離する。
パーコレィション法は、磨り潰したオリーブペーストにスチール棒を差し込み、付着した油を引き上げ、かき集める方法である。採油量が少ないため、圧搾法や遠心分離法との併用にて採油が行われている。
いずれの方法によって得られた採油かす(ポマス)も本発明の方法の原料として使用することが可能である。
【0012】
通常、オリーブ採油かす中の残存オイル量は、乾燥物重量において15質量%以下であることが好ましく、15〜8質量%であることがより好ましく、12〜8質量%であることが更に好ましい。湿重量に対する残存オイル量は、水分含量によることは当然であるが、例えば3〜5質量%である。
オリーブ採油かすは、乾燥したものを用いてもよく、また、完全に乾燥していないもの、あるいは全く乾燥していないものを用いてもよい。乾燥していない場合、水分は80質量%以下、更に好ましくは50〜75質量%程度含まれていてもよい。
オリーブ植物粉砕物として、乾燥していないものを使用する場合には、最終抽出溶液(オリーブ植物粉砕物に炭素数1〜3の低級アルコール含有水溶液のアルコールとアルカリ金属水酸化物を添加した溶液)中の、炭素数1〜3の低級アルコール含有水溶液のアルコールの濃度及びアルカリ金属水酸化物の濃度が所定範囲内となるように調節すればよい。
【0013】
本発明の方法により得られるマスリン酸、オレアノール酸の塩とは、マスリン酸またオレアノール酸の−COOH基のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、トリエチルアミン、エタノールアミン等の有機アミン塩等の塩が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、使用する目的によって、最終物の塩の種類を公知の方法により適宜調製することができる。
本発明の製造方法により得られる油脂組成物は、マスリン酸、オレアノール酸及びこれらの塩からなる群より選択されるトリテルペン化合物およびオリーブ植物粉砕物から得られるオリーブ油由来の油脂成分を含む。油脂組成物中の油脂の種類および量は、原料の種類等により異なるが、例えば、オレイン酸を含む油脂を油脂組成物中に5〜20質量%程度含む。
【0014】
本発明の方法の特徴の1つは、比較的低い濃度の炭素数1〜3の低級アルコール含有水溶液を抽出溶媒として使用することである。アルコール濃度を低く抑えることができるにも関わらず、非常に高い回収率でマスリン酸等のトリテルペン化合物を回収することができることが利点である。
本発明では特に、30〜60%(v/v)の濃度のアルコール含有水溶液を用いることができる。アルコール含有水溶液中のアルコール濃度は、更に好ましくは35〜55%(v/v)であり、最も好ましくは40〜55%(v/v)である。
炭素数1〜3の低級アルコールとは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールから選択されるアルコールである。エタノールが特に好ましい。
また、本発明の効果を損なわない範囲内で更に他の有機溶媒を添加してもよい。
炭素数1〜3の低級アルコール含有水溶液は、オリーブ植物粉砕物の質量に対して0.5〜10倍(乾燥物の場合)あるいは0.5〜4倍(未乾燥物の場合)(v/w)の範囲で添加することが好ましい。例えば、10gのオリーブ植物粉砕物(乾燥物)に対して、5ml〜100mlの範囲で添加することが好ましい。
【0015】
本発明の方法では、オリーブ植物粉砕物に上記アルコール含有水溶液を添加した溶液に、更に、0.05〜0.20Mの濃度となるようにアルカリ金属水酸化物を添加する。アルカリ金属水酸化物の濃度は、好ましくは0.08〜0.18M、更に好ましくは0.10〜0.15Mである。
アルカリ金属水酸化物として、好ましくはKOHまたはNaOHが挙げられ、更に好ましくはKOHが挙げられる。
アルカリ金属水酸化物は、固体で添加してもよく、また水溶液として添加してもよい。
オリーブ植物粉砕物に、エタノール含有水溶液とアルカリ金属水酸化物を添加する順序は、いずれが先であってもよい。
【0016】
本発明の方法は、オリーブ植物粉砕物に、エタノール含有水溶液とアルカリ金属水酸化物を所定濃度となるように添加した後、前記溶液を放置あるいは撹拌することを含む。溶液の撹拌は通常抽出効率にほとんど影響しないため、必須の操作ではない。ただし、オリーブ植物粉砕物の粉砕の程度、あるいは残存オイルの量などによって抽出効率が向上する場合には撹拌してもよい。
放置(浸漬)あるいは攪拌する時間は、オリーブ植物粉砕物の性状、抽出液の温度、アルコール及びアルカリ金属水酸化物の濃度により適宜変更しうるが、例えば、5分〜24時間程度である。通常、2〜3時間程度で抽出が完了する。
放置(浸漬)あるいは攪拌は、5℃〜溶媒の還流温度において行うことができる。抽出効率及び時間を短縮する観点から、好ましくは、室温よりも高い温度に加熱して行う。例えば50℃〜溶媒の還流温度にて行うことが好ましい。エタノールを使用する場合には、70℃〜85℃付近で加熱して還流させることが好ましい。
【0017】
圧力は、常圧〜0.2Pa程度の圧力をかけて行っても良い。例えばオートクレーブ(0.05〜0.15Mpa、例えば0.12MPa)を用いて行うことも可能である。
【0018】
オリーブ植物粉砕物に、エタノール含有水溶液とアルカリ金属水酸化物を添加し、任意に加熱した後、前記オリーブ植物粉砕物からエタノール含有水溶液に抽出されたマスリン酸、オレアノール酸及びこれらの塩を含む油脂成分を、更に公知の方法により単離・精製することができる。
典型的には、抽出後のエタノール含有水溶液を静置すると、オリーブ植物粉砕物の固形物が沈殿するため、上澄み液をデカンテーションによりあるいは濾過等により回収する。回収された溶液から溶媒を除去し、濃縮物を得る。この濃縮物をマスリン酸、オレアノール酸及びこれらの塩を含む油脂組成物として使用することができる。また、前記濃縮物から更に、公知の方法により、マスリン酸、オレアノール酸及びこれらの塩と油脂成分を分離し、マスリン酸、オレアノール酸及びこれらの塩を精製・単離回収してもよい。
なお、上澄み液をデカンテーションあるいは濾過等により回収した後の残った固形物に更にエタノール含有水溶液とアルカリ金属水酸化物とを加えて、再抽出を行ってもよい。または、固形物に有機溶媒を加えて抽出し、有機相を水等により洗浄して、マスリン酸、オレアノール酸及びこれらの塩の更なる回収を行ってもよい。有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、ヘキサン、アセトン等が挙げられる。
【0019】
本発明の製造方法において、得られる油脂組成物はそのまま好適に用いることができるが、好ましくは濃縮処理および/または精製処理を行うことができる。本発明の製造方法により得られる油脂組成物に含有されるオレアノール酸およびマスリン酸が有する生理的作用としては、従来から、オレアノール酸が発ガンプロモーター抑制作用、抗炎症作用、創傷治療促進作用、アルコール吸収抑制作用、発毛促進作用等を有すること、また、マスリン酸が抗炎症作用や抗ヒスタミン作用を有することが知られている。また、マスリン酸については、美白作用や抗腫瘍作用等の作用も有する。
このような効果を有するオレアノール酸およびマスリン酸を含有する油脂組成物の用途については、例えば下記のように、人体に対する経口および非経口の用途、その他にも家畜や魚類等の飼料や農薬、工業用等、様々な分野・用途で利用することができるが、形態等は特に限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
次に、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
参考例1
(検量線の作成及びトリテルペン化合物量の決定)
オリーブ採油かす(乾燥物)からなるサンプルを用意した。採油かすは、連続式遠心分離法(3相式)によりオリーブ果実洗浄→破砕→ペースト状→第一遠心分離→第二遠心分離を行って得られたものである。
採油かす(乾燥物)から以下に記載の方法で抽出物3を得た。
オリーブ採油粕(乾燥物)からなるサンプルをクロロホルム‐メタノールの混液で抽出し、抽出物1を得た。抽出物1からクロロホルム‐メタノール‐水を用い、溶媒分配を行い、抽出物2を得た。抽出物2からヘキサン‐エタノール‐水を用い、溶媒分配を行い、抽出物3を得た。一晩デシケータで減圧した後、HPLC分析に供した。
【0022】
抽出物3(40〜70mg)を50%メタノールで100mlに希釈(100倍希釈)し、その1部(1ml)を80%メタノールで1000倍希釈した。更にその一部(1ml)をとり、0.45μmフィルターでろ過してHPLC分析を行った。マスリン酸及びオレアノール酸のスタンダードサンプルにより予め作成した検量線から、オリーブ採油かす(乾燥物)からなるサンプル10g中のマスリン酸及びオレアノール酸をそれぞれ75.36mg及び40.23mgと特定した。
【0023】
実施例1
参考例1で用いたものと同じ採油かすサンプル10gを100ml広口ナスフラスコ内に入れ、20%〜100%(v/v)の濃度のエタノール水溶液50mlを添加し、続いて0.1M濃度となるようにKOH水溶液を添加した。得られた混合物を70℃の温度で3時間加熱還流を行った。
混合物を室温まで冷却して、上澄み液40mlを回収した(回収物1)。
前記上澄み液を回収した残渣に、更に30mlの抽出溶媒20〜100%エタノール溶液を添加して、洗浄し、得られた抽出液を静置して、上澄み液30mlを回収した(回収物2)。
回収物1と回収物2を併せて、エバポレーターにかけて濃縮した。得られた濃縮物は、0.8g〜1.8gの固形状物であった。
また、比較例1として、エタノール及びKOHを添加する代わりに、熱水を50ml添加して、混合物を70℃の温度で3時間加熱還流を行い、同様に回収物1及び2を得て混合、濃縮して、濃縮物を得た。
【0024】
得られた各濃縮物についてHPLC分析(条件については下記参照)によりマスリン酸及びオレアノール酸を検出し、予め作成した検量線と比較することにより、マスリン酸及びオレアノール酸の抽出量(mg)を定量し、回収率を計算した(表1、図1)。

カラム :GLサイエンス, Innertsil, ODS-3, 4.6x150mm,5μm
溶媒(移動相):アセトニトリル:メタノール:水:リン酸(500:400:100:0.5)、pH3、アイソクラティック分析法
波長 :210nm
流速 :1ml/分
カラムオーブン:25度
【0025】
【表1】

【0026】
表1及び図1から明らかなとおり、熱水抽出では、オレアノール酸を全く回収できなかった。また、熱水抽出によるマスリン酸の回収率はKOHを加えない場合には5%程度であり、KOHを加えた場合には全く回収できなかった。
60%より高い濃度のエタノール水溶液を使用した場合には、KOHの添加の有無に関わらず、マスリン酸及びオレアノール酸とも高い回収率で抽出することができた。一方、60%以下の濃度(40%〜60%)のエタノール水溶液を使用した場合、KOHを添加しない場合に比べて、KOHを添加した場合には回収率が飛躍的に上昇した。KOH非添加でエタノール濃度が40%及び50%の場合には回収率は1〜25%程度であったが、KOHを添加することにより、40〜100%程度にまで回収率が上昇した。また、特に、50%エタノール水溶液を使用しかつKOHを添加した場合には、マスリン酸及びオレアノール酸共に100%近い回収率を示した。これらの結果から、本発明の方法の有用性が明らかである。
【0027】
実施例2
実施例1と同様に、マスリン酸を75.36mg及びオレアノール酸を40.23mg含む10gのオリーブ採油かす(乾燥物)からなるサンプルを100ml広口ナスフラスコ内に入れ、40%〜60%及び100%(v/v)の濃度のエタノール水溶液50mlを添加し、続いて0.05〜0.15M濃度となるようにKOH水溶液を添加した。
KOHを添加しないものを比較例2とした。
【0028】
得られた各濃縮物についてHPLC(条件については下記参照)によりマスリン酸及びオレアノール酸を検出し、予め作成した検量線と比較することにより、マスリン酸及びオレアノール酸の抽出量(mg)を定量し、回収率を計算した(表2、図2)。

カラム :GLサイエンス,Innertsil, ODS-3, 4.6x150mm, 5μm
溶媒(移動相):アセトニトリル:メタノール:水:リン酸(500:400:100:0.5)、pH3、アイソクラティック分析法
波長 :210nm
流速 :1ml/分
カラムオーブン:25度
【0029】
【表2】

【0030】
表2及び図2から明らかなとおり、エタノール濃度が40〜55%程度と比較的低い濃度であっても、KOH濃度が0.05〜0.15Mの場合には、KOHを加えない場合に比べて高いマスリン酸の回収率を示した。
また、エタノール濃度が40〜60%程度と比較的低い濃度であっても、KOH濃度が0.05〜0.15Mの場合には、KOHを加えない場合に比べて高いオレアノール酸の回収率を示した。
また、特にKOH濃度が0.1〜0.15Mの場合には、40〜60%のいずれの濃度のエタノールを用いた場合でも、顕著に高い回収率を示しており、本発明の方法の有用性が明らかである。
【0031】
実施例3
マスリン酸を1.51kg、オレアノール酸を0.81kg含むオリーブ採油かす(湿重量500kg、水分60%)に800Lのエタノールと500Lの水、計1300L(原料中水分を含めて最終エタノール濃度50%(V/V)を加え、全溶液に対して0.08Mとなるように95%KOHを添加した(7.6kg)。
前記溶液を85℃に加温して3時間攪拌して抽出し、固液分離して、1150Lの分離液1を得た。残渣へ500Lの50(V/V)%エタノール溶液を加え、洗浄後、固液分離し、800Lの分離液2を得た。分離液1と2を併せて、1950Lの分離液を得た。全分離液をエバポレーターで濃縮し、55kgの濃縮物(油脂組成物)を得た。
得られた濃縮物についてHPLC(実施例1、2と同様)により、マスリン酸及びオレアノール酸を検出し、予め作成した検量線と比較することにより、マスリン酸及びオレアノール酸の抽出量(kg)を定量し、回収率(%)を計算した。(表3)
この油脂組成物中の油脂含量は11kg(あるいは20質量%)であった(油脂含量はFolch法により測定した)。
【0032】
表3

表3から明らかなとおり、本発明の方法により、マスリン酸とオレアノール酸を高い回収率でオリーブ採油かすから回収することができ、高い濃度のマスリン酸とオレアノール酸を含む油脂組成物を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリーブ植物粉砕物に、30〜60%(v/v)の炭素数1〜3の低級アルコール含有水溶液を添加し、更に0.05〜0.20Mとなるようにアルカリ金属水酸化物を添加して、前記オリーブ植物粉砕物からマスリン酸、オレアノール酸及びこれらの塩からなる群より選択されるトリテルペン化合物を含む油脂成分を抽出することを特徴とする、前記トリテルペン化合物を含有する油脂組成物の製造方法。
【請求項2】
アルカリ金属水酸化物が、NaOHまたはKOHである、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
炭素数1〜3の低級アルコールが、エタノールである、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
50℃〜加熱還流温度の範囲で抽出溶液を加熱することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
オリーブ植物粉砕物が、オリーブ採油かすである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
0.08〜0.20Mとなるようにアルカリ金属水酸化物を添加することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
40〜55%(v/v)エタノール含有水溶液を使用することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−91604(P2013−91604A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232697(P2011−232697)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】