説明

トリテロメラーゼ逆転写酵素

【課題】特に新規な組換えテロメラーゼ逆転写酵素、それらをコードする核酸分子、該核酸分子を含んでなる細胞、および目的とする物質の製造のためのこれら細胞の使用を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を有し、TERT活性を有するポリペプチド、並びに前記ポリペプチドをコードする核酸。前記ポリペプチドの発現によりカモ科(Anatidae)に属する細胞を不死化する方法。前記細胞を用いて、目的とする物質を製造するための方法。並びに、欠損ウイルスの増殖を可能にする相補性カセットをさらに含んでなる前記細胞の、ウィルスの複製のための使用。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
技術分野
本発明は、特に新規な組換えテロメラーゼ逆転写酵素、それらをコードする核酸分子、該核酸分子を含んでなる細胞、および目的とする物質の製造のためのこれら細胞の使用に関する。
【0002】
背景技術
1965年に、L. Hayflickは、細胞がプログラミングされた死の瞬間を有することを見出した。老化の一つの説明として、彼は、ヒト細胞が分裂することができる回数は限定されていることを示唆した(Exp Cell Res. 1965 Mar; 37: 614-36)。これは、現在では細胞が分裂するときにテロメアが短縮することによって引き起こされることが知られている。染色体は、一本鎖および二本鎖の結合タンパク質に会合した、保存され、縦列反復した非コード六量体性DNA配列からなるテロメアによってキャップされている。テロメアは、ゲノム安定性機能および特に染色体末端の複製に関与している。染色体末端を良好に複製するには、ユニークテロメア構造と、逆転写酵素の酵素活性を有する核タンパク質である特殊化した酵素テロメラーゼ逆転写酵素の両方を必要とする。テロメラーゼ逆転写酵素はテロメア反復配列を長くすることができ、これにより相補的娘鎖の延長複製を可能とする。テロメラーゼ逆転写酵素を欠いている細胞では、開始RNAプライマーが除去されると、DNA合成酵素は染色体の末端を完全に複製することができないので、テロメアDNAは連続分裂により短くなる。多くの研究により、いわゆる「テロメア時計」がヒト細胞寿命の重要な特徴であることの証拠が報告されている。細胞老化のテロメア仮説では、テロメアの短縮がテロメラーゼ逆転写酵素活性の全般的な欠如に関係しており、染色体を不安定にし、老化、アポトーシスを招くことが提案されている。テロメラーゼ逆転写酵素活性は、イン・ビボでの発生の際の体細胞系統およびイン・ビトロでテロメア短縮と相関している一次細胞でダウンレギュレーションされる。反対に、テロメラーゼ逆転写酵素活性のアップレギュレーションまたは制御不全は、形質転換細胞や腫瘍で見られる。数種類の哺乳類および1種類の両生類由来のテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)cDNAがクローニングされ、研究されてきた(Nakamura et al. 1997. Science 277, 955- 959; Greenberg et al. 1998. Oncogene 16, 1723-1730)。
【0003】
細胞におけるTERT過剰発現はその細胞の不死化をもたらすため、細胞系の製造を目的とするTERTの使用が提案されてきた(McSharry et al, 2001 J Gen Virol. 82, 855-63)。しかしながら、TERT活性は本質的に制限されている。例えば、ヒトTERTは、トリのテロメア保持装置と適合しない(Michailidis et al. 2005. Biochem Biophys Res Commun. 335 (1), 240-6)。従って、トリ、更に詳細にはカモの細胞系を発生させるには、これらの特定の細胞で機能するTERTが必要である。
【0004】
真核細胞系は、ウイルスワクチンおよびバイオテクノロジーの多くの生成物の製造にとって重要である。細胞培養物において生産される生物製剤としては、酵素、ホルモン、免疫生物製剤(モノクローナル抗体、インターロイキン、リンホカイン)、および制ガン剤が挙げられる。より単純な多くのタンパク質は細菌細胞を用いて製造することができるが、グリコシル化されている、より複雑なタンパク質は真核細胞で製造しなければならない。
【0005】
トリ細胞系は、医薬組成物で用いられる多くのウイルスがこの細胞系で複製することができるので、特に有用である。特に注目すべきは、様々なウイルスがトリ細胞でのみ増殖することができることである。このことは、例えば、ほとんどの哺乳類細胞で増殖することができない修飾アンカラウイルス(MVA)の場合に当てはまる。このポックスウイルスはCEFで500を上回る継代によってワクシニアウイルスから誘導され、痘瘡に対して免疫不全の人々にワクチン接種する目的で70年代初頭に用いられた。現在では、MVAは、主として遺伝子療法や免疫療法を目的とするベクターとして用いられている。例えば、MVAは、その抗原を発現する腫瘍に対して患者に予防接種を行うためのMUC1遺伝子のベクターとして用いられている(Scholl et al., 2003, J Biomed Biotechnol., 2003, 3, 194-201)。HPV抗原をコードする遺伝子を有するMVAは、高度の子宮頸部病変の治療処置のためのベクターとしても用いられる。更に最近では、MVAは、西ナイルウイルスや炭疽菌のような、新たに出現している疾患または生物兵器と考えられるものに対する予防処置を調える目的で、特に選ばれたベクターとなっている。
【0006】
従って、トリ細胞、更に詳細にはカモの細胞を不死化することができる新規なテロメラーゼ逆転写酵素が求められている。
【発明の開示】
【0007】
本明細書を通して用いられている単数形の名詞("a" and "an")は、文脈が明らかに別のことを示していない限り、それらが「少なくとも1個の」、「少なくとも1個の第一の」、「1以上の」または「複数の」言及された成分または工程を意味するという意味で用いられる。例えば、「細胞」という用語は、その混合物などの複数の細胞を包含する。
【0008】
本明細書で用いられる「および/または」という用語は、「および」、「または」、および「この用語によって連結される要素の総てまたは任意の他の組合せ」の意味を包含する。
【0009】
本明細書で用いられる「含んでなる」という用語は、生成物、組成物および方法が言及された成分または工程を包含するが、他のものを除外しないことを意味するものと考えられる。「から本質的になる」は、生成物、組成物および方法を定義するのに用いられるときには、本質的に重要な他の成分または工程を除外することを意味する。従って、列挙された成分から本質的になる組成物は、微量の混入物および薬学上許容可能なキャリヤーを除外しない。「からなる」とは、他の成分または工程の微量より多い要素を除外することを意味するものとする。
【0010】
本発明は、配列番号1に対して少なくとも60%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたポリペプチドおよび/または組換えポリペプチドに関する。本発明の更に好ましい実施態様では、本発明のポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、更に好ましくは少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる。更に好ましい実施態様では、本発明のポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含んでなる。
【0011】
好ましい実施態様では、本発明のポリペプチドはTERT活性を有し、本発明の更に好ましい実施態様では、本発明のポリペプチドの発現によりカモ科(Anatidae)に属する細胞を不死化することができる。
【0012】
本明細書で用いられる「単離された」および/または「組換え」という用語は、そのように示されている核酸分子、DNA、RNA、ポリペプチドまたはタンパク質がヒトの手によってそのような形態に製造されており、従って、それらの本来のイン・ビボでの細胞環境とは区別されることを意味する。このヒトの介入の結果として、本発明の組換えDNA、RNA、ポリペプチドおよびタンパク質は、そのDNA、RNA、ポリペプチドまたはタンパク質が天然に存在しているときには見られない本明細書に記載の有用性を有する。
【0013】
もう一つの態様では、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離された核酸分子に関する。
【0014】
本発明の好ましい実施態様では、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号2に記載されたものと実質的に同一のヌクレオチド配列を含んでなる。本発明のポリペプチドをコードする好ましい核酸分子は、配列番号2に記載されたものと同一のヌクレオチド配列を含んでなる。
【0015】
本明細書で用いられる「実質的に同一のヌクレオチド配列」という用語は、参照ポリヌクレオチドに対して十分な同一性を有し、中程度のストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で参照ヌクレオチドにハイブリダイズする核酸分子を表す。一つの実施態様では、参照ヌクレオチド配列と実質的に同一のヌクレオチド配列を有する核酸分子は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を実質的にコードする。もう一つの実施態様では、参照ヌクレオチド配列と実質的に同一のヌクレオチド配列を有する核酸分子は、配列番号2に記載の核酸配列に対して少なくとも70%、更に好ましくは少なくとも90%、更に一層好ましくは少なくとも95%の同一性を有する。
【0016】
ハイブリダイゼーションは、天然では染色体DNAに存在する結合と同様の水素結合を介して核酸の相補鎖(すなわち、センス:アンチセンス鎖、またはプローブ:ターゲットDNA)を互いに結合することを表している。所定のプローブをターゲットDNAとハイブリダイズさせるのに用いられるストリンジェンシーレベルは、当業者であれば容易に変化させることができる。
【0017】
本明細書において「ストリンジェントハイブリダイゼーション」という用語は、ポリ核酸ハイブリッドが安定な条件を表す。当業者に知られているように、ハイブリッドの安定性はハイブリッドの融解温度(Tm)に反映される。通常は、ハイブリッドの安定性はナトリウムイオン濃度と温度によって変化する。典型的には、ハイブリダイゼーション反応は、低ストリンジェンシーの後に様々なより高いストリンジェンシーの洗浄の条件下で行われる。ハイブリダイゼーションストリンジェンシーの表現は、このような洗浄条件に関するものである。
【0018】
本明細書で用いられる「中程度のストリンジェントハイブリダイゼーション」という用語は、ターゲットDNAに対して約60%の同一性、好ましくは約75%の同一性、更に好ましくは約85%の同一性を有し、特に好ましくはターゲットDNAに対して約90%を上回る同一性を有する相補核酸をターゲットDNAに結合させる条件を表す。好ましくは、中程度のストリンジェント条件は、42℃における50%ホルムアミド、5×デンハート溶液、5×SSPE、0.2%SDSでのハイブリダイゼーションの後、65℃における0.2×SSPE、0.2%SDSでの洗浄と同等の条件である。
【0019】
本発明の核酸分子は、RNA、cDNAまたはゲノム配列であるか、または混合型のものであることができる。これは、場合によっては、1以上のイントロンであって、自生、異種(例えば、ウサギグロブリン遺伝子のイントロンなど)または合成起源のものを含み、宿主細胞における発現を増加させることができる。
【0020】
本発明は、本発明による核酸分子を有するベクターにも関する。
【0021】
本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、プラスミドまたはウイルス起源のベクター、場合によっては上記ベクターの形質転換効率および/または上記ベクターの安定性および/または宿主生物の免疫系に対するイン・ビボでの上記ベクターの保護を改良する1以上の物質と組み合わせたベクターを意味するものと理解される。これらの物質は、当業者が利用できる文献に広範囲に記載されている(例えば、Feigner et al., 1987, Proc. West. Pharmacol. Soc. 32, 115-121; Hodgson and Solaiman, 1996, Nature Biotechnology 14, 339-342; Remy et al., 1994, Bioconjugate Chemistry 5, 647-654)。例として、ポリマー、脂質、特にカチオン性脂質、リポソーム、核またはウイルスタンパク質、または中性脂質が挙げられるが、これらに限定されない。これらの物質は、単独で、または組み合わせて用いることができる。このような化合物の例は、特に特許出願WO98/08489号、WO98/17693号、WO98/34910号、WO98/37916号、WO98/53853号、EP890362号またはWO99/05183号明細書において利用できる。考えられる組合せは、カチオン性脂質(DOGS、DC−CHOL、スペルミン−chol、スペルミジン−cholなど)および中性脂質(DOPE)と組み合わされたプラスミド組換えベクターである。
【0022】
本発明において用いることができるプラスミドは、広範なものから選択される。それらは、クローニングおよび/または発現ベクターであってもよい。一般に、それらは当業者に知られており、それらの多くは市販されているが、遺伝子工学技術によってそれらを構築し、またはそれらを修飾することもできる。例えば、pBR322 (Gibco BRL)、pUC (Gibco BRL)、pBluescript (Stratagene)、pREP4、pCEP4 (Invitrogene)、p Poly (Lathe et al, 1987, Gene 57, 193-201)由来のプラスミドを挙げることができる。好ましくは、本発明において用いられるプラスミドは、製造する細胞および/または宿主細胞で複製を確実に開始する複製源を含む(例えば、CoIE1源は、プラスミドがE. coliで産生するように指定されるように選択することができ、また、oriP/EBNA1系は、それを哺乳類宿主細胞での自己複製が望まれる場合に選択することができる: Lupton and Levine, 1985, Mol. Cell. Biol. 5, 2533-2542; Yates et al., Nature 313, 812-815)。これは、所定の細胞におけるその保持および/またはその安定性を向上させる追加要素を含んでなることができる(プラスミドのモノマー性保持を促進するcer配列(Summers and Sherrat, 1984, Cell 36, 1097-1103, 細胞ゲノムに組込むための配列)。
【0023】
ウイルスベクターに関しては、ポックスウイルス(ワクシニアウイルス、特にMVA、カナリアポックスなど)、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アルファウイルス、フォーミーウイルスまたはアデノ随伴ウイルス由来のベクターを考えることができる。非複製型ベクターが好適に用いられる。これに関して、アデノウイルスベクターが、本発明の実施に特に適している。
【0024】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明によるベクターは、宿主細胞での本発明の核酸分子の発現に必要な要素をさらに含んでなる。
【0025】
発現に必要な要素は、ヌクレオチド配列をRNAに転写させ、かつmRNAをポリペプチドに翻訳させる要素の組合わせ、特に、上記細胞で有効なプロモーター配列および/または調節配列、および場合によっては上記ポリペプチドについてターゲット細胞の表面で排出または発現させるのに必要な配列からなっている。これらの要素は、調節可能であるか、または構成的であることがある。勿論のことであるが、プロモーターは、選択されたベクターおよび宿主細胞に適合するものである。例えば、遺伝子PGK(ホスホグリセレートキナーゼ)、MT(メタロチオネイン;Mclvor et al., 1987, Mol. Cell Biol. 7, 838-848)、α−1アンチトリプシン、CFTRの真核生物プロモーター、筋クレアチンキナーゼ、アクチン肺界面活性剤、免疫グロブリンまたはβ−アクチン(Tabin et al., 1982, Mol. Cell Biol. 2, 416-436)をコードする遺伝子のプロモーター、SRa(Takebe et al., 1988, Mol. Cell Biol. 8, 466-472)、SV40ウイルス(シミアンウイルス)初期プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)LTR、MPSVプロモーター、TK−HSV−1プロモーター、CMVウイルス(サイトメガロウイルス)初期プロモーター、ワクシニアウイルスプロモーターp7.5K、pH5R、pK1L、p28、p11、およびアデノウイルスプロモーターE1AおよびMLP、またはこれらのプロモーターの組合せを挙げることができる。サイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターが、最も好ましい。
【0026】
好ましい実施態様によれば、本発明のベクターは、細胞ゲノムのゲノムに元からあるターゲットDNA配列の領域内に含まれる配列部分と相同な2つの配列をさらに含んでなる。このような相同配列が存在すると、相同組換えによって本発明の核酸分子をターゲットDNA配列に部位特異的に挿入することができる。
【0027】
「相同組換え」という用語は、本質的に同一のヌクレオチド配列の部位における2つのDNA分子の間でDNA断片を交換することを表す。好ましくは、ベクターの相同配列は、ターゲット配列の領域に対して100%相同である。しかしながら、低めの配列相同性を用いることができる。従って、約80%程度の配列相同性を用いることができる。
【0028】
ベクターにおける相同配列は、少なくとも25bpを含んでなり、長めの領域が好ましく、少なくとも500bpであり、更に好ましくは少なくとも5000bpである。
【0029】
本発明の更に好ましい実施態様によれば、ベクターにおいて、核酸分子は相同配列によって囲まれている。
【0030】
本明細書で用いられる「囲まれている」とは、相同配列の1つが本発明の核酸分子の上流に配置され、かつ、相同配列の1つが本発明の核酸分子の下流に配置されていることを意味する。本明細書で用いられる「囲まれている」とは、2個の相同配列が本発明の核酸分子の3’または5’末端に直接連結していることを必ずしも意味せず、本発明の核酸分子と相同配列とは無制限数のヌクレオチドによって隔てられていてもよい。
【0031】
本明細書で用いられる「ターゲットDNA配列」とは、ベクターを用いる相同組換えによる修飾のための標的とされる細胞のゲノム内の領域である。ターゲットDNA配列としては、構造遺伝子(すなわち、真核生物の場合には、イントロンおよびエクソンなどのポリペプチドをコードするDNA配列)、エンハンサー配列、プロモーターなどのような調節配列、および目的とするゲノム中の他の領域が挙げられる。ターゲットDNA配列は、ベクターによってターゲティングされたときに、宿主ゲノムの機能に全く影響しない配列であることもある。
【0032】
本明細書で用いられる「ターゲットDNA配列中に挿入される」とは、広義には、本発明の核酸分子を挿入する相同組換え過程により、ターゲティングされたDNA配列中に欠失または破壊が導入されることを意味する。
【0033】
当業者であれば、適当な相同配列を選択して、細胞のゲノム中の特定のDNA配列をターゲティングすることができる。例えば、一方の相同配列は、ターゲティングされたDNA配列の一部に相同であり、他方の相同配列はターゲット配列の上流または下流に位置するDNA配列に相同であることができる。もう一つの例によれば、相同配列の一方はターゲティングされたDNA配列の上流に位置するDNA配列に相同であり、他方の相同配列はターゲットDNA配列の下流に位置するDNA配列に相同なものとすることができる。もう一つの例では、両方の相同配列はターゲットDNA配列中に位置する配列に相同である。
【0034】
本発明の好ましい実施態様によれば、ターゲットDNA配列はHPRT(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ)遺伝子である。
【0035】
ノバリケン(Cairina moschata)のHPRTプロモーターとHPRT遺伝子を含んでなるゲノム配列は、配列番号3に示されている。HPRTをコードする配列は、配列番号3に示されている核酸配列の8695位のATGコドンから始まり、このATGコドンの上流の配列はHPRTプロモーター配列である。
【0036】
当業者であれば、本発明の核酸分子をHPRT遺伝子中に組込むのに必要な相同配列を選択することができる。一つのファミリーの様々なメンバーの間で見られるように、HPRTをコードするゲノム配列はトリでは相同性が高いので、当業者はトリ細胞のHPRT遺伝子をターゲティングするのに必要な相同配列を設計することができる。
【0037】
本発明の更に好ましい実施態様によれば、相同配列は、本発明の核酸分子をHPRTプロモーターの下流に挿入するためにカスタマイズされる。この特定の実施態様では、本発明の核酸分子は細胞の内在性HPRTプロモーターに作動可能に連結される。本発明において「作動可能に連結される」とは、核酸分子が細胞で発現することができるようにプロモーターに連結されることを意味する。
【0038】
この特定の実施態様によれば、本発明の核酸分子の上流の相同配列は、好ましくは、配列番号3に記載の核酸配列の1位のヌクレオチドから始まり、8694位のヌクレオチドで終わる核酸配列の少なくとも500の連続bp、更に好ましくは少なくとも5000の連続bpと相同である核酸配列を有するが、該相同配列は、配列番号3に記載の核酸配列の8695位のヌクレオチドから始まり、26916位のヌクレオチドで終わる核酸配列とは相同ではない。更に、この上流の相同配列は、好ましくは本発明の核酸分子の開始コドンに直接連結されている。本発明の更に一層好ましい実施態様によれば、本発明の核酸分子の上流の相同配列は、配列番号3に記載の核酸配列の1383位のヌクレオチドから始まり、8694位のヌクレオチドで終わる核酸配列からなっている。例えば、本発明のベクターは、配列番号4に記載の核酸配列の1位のヌクレオチドから始まり、11227位のヌクレオチドで終わる核酸配列を含んでなる。本発明の核酸分子の下流の相同配列は、好ましくは、配列番号3に記載の核酸配列の10581位のヌクレオチドから始まり、17800位のヌクレオチドで終わる核酸配列の少なくとも500の連続bp、更に好ましくは少なくとも5000の連続bpと相同である核酸配列を有する。また、更に好ましくは、本発明の核酸分子の下流の前記相同配列は、配列番号3に記載の核酸配列の10581位のヌクレオチドから始まり17800位のヌクレオチドで終わる核酸配列からなっている。
【0039】
好ましい実施態様によれば、本発明のベクターは第一の選択マーカーを含んでなり、この第一の選択マーカーは正の選択マーカーであり、かつ、該第一の選択マーカーと本発明の核酸分子はベクターの同じ区画に配置されており、この区画は相同配列によって範囲が規定されている。
【0040】
本明細書で用いられる「正の選択マーカー」という用語は、特にその遺伝子を有する細胞のみがある条件下で生き延び、および/または増殖することを可能とする生成物をコードする遺伝子を表す。典型的な選択マーカーは、抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートまたはテトラサイクリンへの耐性を付与し、栄養要求性欠損を補完し、または複合培地から入手できない重要な栄養分を供給するタンパク質をコードする。本発明による好ましい実施態様では、第一の選択マーカーは抗生物質への耐性を付与するタンパク質をコードする。
【0041】
本発明の更に好ましい実施態様によれば、第一の選択マーカーは、ベクター中において、それを抑制することができる配列によって囲まれている。第一の選択マーカーを抑制することができる前記配列は、本発明の核酸分子を囲んでいない。ベクターが環状であるときには、第一の選択マーカーを抑制することができる配列、第一の選択マーカーおよび本発明の核酸分子は導入ベクターの同一の区画に配置されており、この区画は相同配列によって範囲が規定されている。
【0042】
核酸断片を抑制することができる配列は、当業者に周知である(Nunes-Duby, S. et al (1998) Nucleic Acids Res. 26:391-406)。これらの配列は、その配列の間に含まれる核酸の抑制を誘発する1以上の特異的酵素によって認識することができ、これらの酵素は「組換え酵素(recombinase)」と呼ばれる。例えば、核酸断片を抑制することができる3種類の周知の組換え酵素は、FLP、ISCEIおよびCre組換え酵素である。
【0043】
典型的な部位特異的組換え酵素は、Cre組換え酵素である。CreはバクテリオファージP1のcre(環化組換え)遺伝子の38−kDa生成物であり、Intファミリーの部位特異的DNA組換え酵素である。Sternberg, N. et al. (1986) J. MoL Biol. 187: 197- 212。Creは、loxP(locus of X-over of P1)と呼ばれるP1ゲノム上の34bpの部位を認識し、loxP部位の対の間の相互保存的DNA組換えを効率的に触媒する。loxP部位は、8bpの非パリンドロームコア領域に隣接する2つの13bpの逆方向反復配列からなっている。2つの直接反復loxP部位の間のCre介在組換えにより、共有的に閉じた環としてそれらの間のDNAが削除される。逆方向配向のloxP部位の対の間のCre介在組換えでは、削除よりもむしろ介在DNAが反転する。DNAの破断および接合は、コア領域内の別々の位置に制限され、酵素による一過性のホスホチロシン(phophotyrosine)DNA−タンパク質結合を経由して同時に鎖上で進行する。
【0044】
もう一つの部位特異的組換え酵素はI−SceIである。他のイントロンホーミングエンドヌクレアーゼ、例えば、I−TliI、I−CeuI、I−CreI、I−PpoIおよびPI−PspIをI−SceIの代わりに用いることもできる。多くのものが、Belfort and Robertsによって記載されている((1997) Nucleic Acids Research 25:3379-3388)。これらのエンドヌクレアーゼの多くは、コドンの用法が標準的な核コドンの用法と異なる細胞小器官ゲノムに由来する。これらの遺伝子を用いてそのエンドヌクレアーゼを核で発現させるには、コード配列を変更して核遺伝子のものに調和させる必要があることがある。I−SceIは、その認識部位でDNAを開裂する二本鎖エンドヌクレアーゼである。I−SceIは、3’OH突出部を有する4bp段違い切断物(staggered cut)を生成する。
【0045】
酵素I−SceIは、既知の部位を有する。I−SceIの認識部位は、18bpにわたる非対称配列である。
5' TAGGGATAACAGGGTAAT3'
3' ATCCCTATTGTCCCATTA5'
【0046】
従って、本発明の好ましい実施態様では、第一の選択マーカーを抑制することができる配列は、I−SceIの認識部位を含んでなる。
【0047】
もう一つの部位特異的組換え酵素は、FLP組換え酵素である。Flp組換え酵素は、認識配列の限定された縮重のみを許容する別個の34bpの最小部位を認識する(Jayaram, 1985; Senecoff et al., 1988)。Flp組換え酵素とFRT配列との間の相互作用が、検討されている(Panigrahi et al., 1992)。変異FRT配列の例はJayaram (1985)およびSenecoff et al. (1988)によって報告されており、様々な基質でのFlp介在組換えはSnaith et al. (1996)によって報告されている。
【0048】
本発明のベクターが第一の選択マーカーを抑制することができる配列を含んでなる特定の実施態様では、上記ベクターは、好都合には第一の相同配列Aと第二の相同配列Bを含んでなり、相同配列AとBはそれらの間での相同組換えを可能とするのに十分な長さと十分な相同性を有する。相同配列AおよびBに関して「十分な相同性」とは、好ましくは少なくとも20塩基対、好ましくは少なくとも50塩基対、特に好ましくは少なくとも100塩基対、更に特に好ましくは少なくとも250塩基対、最も好ましくは少なくとも500塩基対の長さのこれらの相同配列中で、少なくとも70%、好ましくは80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、更に好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の相同性を有する配列を表す。この実施態様では、本発明のベクターは、下記のように5’−から3’−へ向けて、本発明の核酸分子、第一の相同配列A、第一の選択マーカーを抑制することができる配列、第一の選択マーカー、第一の選択マーカーを抑制することができる配列、および相同配列Bを含んでなる。
【0049】
好ましい実施態様によれば、本発明のベクターは、上記相同配列によって囲まれていない第二の選択マーカーを含んでなり、該第二の選択マーカーは負の選択マーカーである。この第二の選択マーカーは、本発明のベクターが環状であるときに特に有用である。ベクターが環状であるときには、第二の選択マーカーが上記相同配列によって囲まれていないということは、第二の選択マーカーと本発明の核酸分子が導入ベクターの同一区画(この区画は相同配列によって範囲が規定されている)に配置されていないことを意味する。
【0050】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のベクターは第三の選択マーカーを含んでなり、該第三の選択マーカーは負の選択マーカーであり、また、該第三の選択マーカーは第一の選択マーカーを抑制することができる配列の間に配置されている。ベクターが環状であるときには、第三の選択マーカーが第一の選択マーカーを抑制することができる配列の間に配置されているということは、第三の選択マーカーと第一の選択マーカーが導入ベクターの同一区画(この区画は第一の選択マーカーを抑制することができる配列によって範囲が規定されている)に配置されていることを意味する。
【0051】
本明細書で用いられる「負の選択マーカー」という用語は、特に、ある条件下でその遺伝子を有する細胞を殺す生成物をコードする遺伝子を表す。これらの遺伝子は、特に「自殺遺伝子」を含んでなる。これらの遺伝子によってコードされる生成物は、細胞傷害性化合物におけるプロドラッグを形成することができる。多数の自殺遺伝子/プロドラッグ対が、現在入手可能である。更に詳細には、下記の対を挙げることができる:
単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV−I TK)とアシクロビールまたはガンシクロビール(GCV)(Caruso et al, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 7024-7028; Culver et al., 1992, Science 256, 1550-1552; Ram et al., 1997, Nat. Med. 3, 1354- 1361);
シトクロムp450とシクロホスファミド(Wei et al., 1994, Human Gene Therapy 5, 969-978);
Escherichia coli(E. coli)由来のプリンヌクレオシドホスホリラーゼと6−メチルプリンデオキシリボヌクレオシド(Sorscher et al., 1994, Gene Therapy 1, 233-238);
E. coli由来のグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼと6−チオキサンチン(Mzoz and Moolten, 1993, Human Gene Therapy 4, 589-595);および
シトシンデアミナーゼ(CDアーゼ)と5−フルオロシトシン(5FC);
FCU1と5−フルオロ−シトシン(5FC)(WO9954481);
FCU1−8と5−フルオロ−シトシン(5FC)(WO2005007857)。
【0052】
第一、第二および第三の選択マーカーは、別々に用いることができる。例えば、本発明のベクターは第一および第三の選択マーカーを含んでなることができるが、第二のマーカーを含まず、あるいは、第二および第三の選択マーカーを含んでなることができるが、第一のマーカーを含まない。
【0053】
本発明の好ましい実施態様によれば、第一、第二および/または第三の選択マーカーは、宿主細胞におけるそれらの発現に必要な要素の制御下に置かれる。
【0054】
発現に必要な要素は、ヌクレオチド配列をRNAに転写し、mRNAをポリペプチドに翻訳する要素の組み合わせ、特に上記細胞で有効なプロモーター配列および/または調節配列、および場合によっては、上記ポリペプチドについて宿主細胞の表面で分泌または発現させるのに必要な配列からなっている。これらの要素は、調節可能または構成的であることがある。当然のことであるが、プロモーターは、選択したベクターおよび宿主細胞に適合するものである。例えば、遺伝子PGK(ホスホグリセレートキナーゼ)、MT(メタロチオネイン;Mclvor et al., 1987, Mol. Cell Biol. 7, 838-848)、α−1アンチトリプシン、CFTRの真核生物プロモーター、筋クレアチンキナーゼ、アクチン肺界面活性剤、免疫グロブリンまたはβ−アクチン(Tabin et al., 1982, Mol. Cell Biol. 2, 416-436)をコードする遺伝子のプロモーター、SRa(Takebe et al., 1988, Mol. Cell Biol. 8, 466-472)、SV40ウイルス(シミアンウイルス)初期プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)LTR、MPSVプロモーター、TK−HSV−1プロモーター、CMVウイルス(サイトメガロウイルス)初期プロモーター、ワクシニアウイルスプロモーターp7.5K、pH5R、pK1L、p28、p11、およびアデノウイルスプロモーターE1AおよびMLP、またはこれらのプロモーターの組合せを挙げることができる。サイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターが、最も好ましい。
【0055】
本発明は、本発明による核酸分子またはベクターによってトランスフェクトされた細胞、およびそれに由来する細胞にも関する。本明細書で用いられる「由来する」という用語は、本発明による核酸分子によってトランスフェクトされた細胞から発生または分化する、またはこの細胞を先祖として有する細胞を表す。
【0056】
本発明は、細胞の不死化のための、本発明のポリペプチド、核酸分子およびベクターの使用にも関する。
【0057】
本発明は、本発明の核酸分子を含んでなる細胞に関するものでもあり、該核酸分子は細胞の内在性HPRTプロモーターに作動可能に連結されている。「作動可能に連結された」とは、核酸分子が細胞中でその発現を可能とするようにプロモーターに連結していることを意味する。好ましい実施態様では、本発明による細胞は、配列番号4に記載の核酸配列を含んでなる。
【0058】
本発明は、細胞を不死化する方法に関するものでもあり、該方法は、本発明によるベクターを前記細胞にトランスフェクトする工程を含んでなる。
【0059】
本明細書で用いられる不死化細胞は、35を上回る継代の培養で増殖することができる細胞を表す。
【0060】
継代数という用語は、更なる増殖を刺激するために十分な低密度に細胞を保持することを目的として、細胞個体群を培養容器から取り出した後、サブカルチャー(継代)処置を行う回数をいう。
【0061】
本明細書で用いられる「トランスフェクトされた」という用語は、本発明の細胞の安定なトランスフェクションまたは一過性トランスフェクションを表す。
【0062】
「安定なトランスフェクション」または「安定にトランスフェクトされた」という用語は、トランスフェクトした細胞のゲノムへの外来DNAの導入および組込みを表す。「安定なトランスフェクタント」という用語は、外来DNAをゲノムDNAに安定に組込んだ細胞を表す。
【0063】
「一過性トランスフェクション」または「一時的にトランスフェクトされた」という用語は、外来DNAをトランスフェクトした細胞のゲノムに組込むことができない細胞への外来DNAの導入を表す。外来DNAは、トランスフェクトされた細胞の核に数日間存続する。「一過性トランスフェクタント」という用語は、外来DNAを取り込んだが、このDNAを組込むことができなかった細胞を表す。
【0064】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の細胞はトリ細胞に由来し、更に好ましくはカモ科(Anatidae)またはキジ科(Phasianidae)の細胞に由来する。カモ科(Anatidae)の中でも、ノバリケン(Cairina)またはマガモ(Anas)属に属する細胞が特に好ましい。更に好ましくは、本発明による細胞はノバリケン(Cairina moschata)またはマガモ(Anas platyrhynchos)種に属する。
【0065】
好ましくは、本発明による細胞は胚生物に由来する。生体から細胞を単離する方法は当業者に周知である。例えば、実施例2に開示されている方法を用いることができる。本発明の好ましい態様によれば、一次細胞は、0〜20日齢、更に好ましくは5〜15日齢、更に一層好ましくは11〜14日齢のカモ科(Anatidae)に属する胚から単離される。
【0066】
本発明の方法で用いられるベクターが第一の選択マーカーを含んでなる場合には、第一の選択マーカーの組込みにより、本発明の核酸分子を組込んだ細胞を選択することができる。従って、本発明による方法は、上記細胞を、第一の選択マーカーが組み込まれた細胞の増殖のみを可能にする培地で培養する工程をさらに含んでなる。例えば、抗生物質を含んでなる培地で培養する。
【0067】
本発明の方法で用いられるベクターが第一の選択マーカーを抑制することができる配列を含んでなるときには、本発明による方法は、前記一次細胞のゲノム由来の第一の選択マーカーを抑制することからなる工程を含んでなる。前記第一の選択マーカーを抑制するには、第一の選択マーカーを抑制することができる配列に特異的な組換え酵素をコードする遺伝子によって細胞をトランスフェクトする。前記遺伝子を細胞に輸送することができる方法およびベクターは当業者に周知であり、例えば、本明細書の実施例4に開示の方法を用いることができる。
【0068】
本発明の方法で用いられるベクターが第二の選択マーカーを含んでなるときには、本発明による方法は、第二の選択マーカーが組み込まれていない細胞の増殖のみを可能にする培地で細胞を培養する工程をさらに含んでなる。この工程は、第一の選択マーカーが組み込まれた細胞の増殖のみを可能にする培地で細胞を培養する工程と同時にまたは別個に行うことができる。
【0069】
前記第二の選択マーカーは、本発明による方法で用いられるベクターが環状であるときに特に有用である。前記第二の選択マーカーが含まれていると、相同組換え過程によって本発明の核酸分子を含んでいない導入ベクターの区画が導入された細胞を破壊することができる。
【0070】
本発明の方法で用いられるベクターが第三の選択マーカーを含んでなるときには、本発明による方法は、第三の選択マーカーを含んでなる細胞の増殖を可能にしない培地で細胞を培養する工程をさらに含んでなることができる。例えば、FCU1を第三の選択マーカーとして含んでなる細胞を増殖させない培地は、5−フルオロシトシンを含んでなる。
【0071】
この工程では、第一の選択マーカーの抑制が起こっている細胞を選択することができる。このことは、第一の選択マーカーを抑制することからなる工程では第三の選択マーカーも抑制することを意味している。第三の選択マーカーが含まれていることによって、第一の選択マーカーが含まれている細胞を破壊することができる。
【0072】
より具体的には、本発明は、
細胞に、
相同配列によって囲まれている本発明による核酸分子、
第一の選択マーカー(この第一の選択マーカーは正の選択マーカーであり、かつ上記相同配列によって囲まれている)、
第一の選択マーカーを抑制することができる配列、
第二の選択マーカー(この第二の選択マーカーは上記相同配列によって囲まれておらず、かつ負の選択マーカーである)、
第三の選択マーカー(この第三の選択マーカーは負の選択マーカーであり、かつ第一の選択マーカーを抑制することができる配列の間に配置されている)
を含んでなるベクターを導入し、
前記細胞を、第一の選択マーカーが組み込まれた細胞の増殖のみを可能にする培地で培養し、
前記細胞を、第二の選択マーカーが組み込まれた細胞の増殖を可能にしない培地で培養し、
第一の選択マーカーを前記細胞のゲノムから排除し、
前記細胞を、第三の選択マーカーを含んでなる細胞の増殖を可能にしない培地で培養する
工程を含んでなる、細胞を不死化する方法に関するが、これらに限定されない。
【0073】
特に好ましい実施態様では、本発明は、ノバリケン(Cairina moschata)種に属する動物の細胞に由来し、かつノバリケン(Cairina moschata)HPRTプロモーターの制御下にてその細胞のHPRT遺伝子に挿入されたノバリケン(Cairina moschata)テロメラーゼ逆転写酵素を含んでなる不死化細胞に関する。
【0074】
本発明による細胞は、欠損ウイルスの増殖を可能にする1以上の核酸配列をさらに含んでなることができる。「欠損ウイルス」とは、その複製に必要な1以上のウイルス遺伝子が欠損し、または機能しなくなっているウイルスを表す。「欠損ウイルスの増殖を可能にする核酸配列」という用語は、欠損ウイルスの複製を可能とする(単数または複数の)機能をトランスで供給する核酸配列を表す。換言すれば、上記の(単数または複数の)核酸配列は上記欠損ウイルスの複製およびカプセル化に必要な(単数または複数の)タンパク質をコードする。例えば、E1領域のほとんどを欠いているアデノウイルスベクターを産生するために、本発明による細胞をE1領域をコードする核酸配列で一時的にまたは永久にトランスフェクトすることができる。
【0075】
本発明による細胞は、目的とする物質をコードする核酸配列を含んでなることもできる。本発明で用いられる目的とする物質としては、薬学活性タンパク質、例えば、増殖因子、増殖調節因子、抗体、抗原、免疫または予防接種などに有用なそれらの誘導体、インターロイキン、インスリン、G−CSF、GM−CSF、hPG−CSF、M−CSFまたはそれらの組合せ、インターフェロン、例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン− 、血液凝固因子、例えば、第VIII因子、第IX因子、またはtPA、またはそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。「目的とする物質」は、パルプおよび紙、織物の改質、またはエタノール生産で用いられる工業用酵素も表す。最後に、「目的とする物質」は、タンパク質栄養補助食品または動物飼料用の付加価値製品も表す。
【0076】
本発明による方法によって得られる細胞、本発明の細胞およびそれらに由来する細胞は、ウイルスの複製に特に有用である。上記ウイルスは、生きているもの、弱毒化したもの、組換え体またはそうでないものであることができる。更に好ましくは、上記細胞は、ポックスウイルス (ワクシニアウイルス、特にMVA、カナリアポックスウイルスなど)、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アルファウイルス、フォーミーウイルス、またはアデノウイルス随伴ウイルスの複製に特に有用である。
【0077】
レトロウイルスは、分裂細胞に感染し、ほとんどの場合に組込まれる特性を有し、これに関して、癌に関する使用に特に適している。本発明による組換えレトロウイルスは、一般にLTR配列、カプセル化領域、および本発明によるヌクレオチド配列であって、下記のようなレトロウイルスLTRまたは内部プロモーターの制御下に置かれているものを含む。レトロウイルスベクターは、修飾、特にLTR(プロモーター領域の真核生物プロモーターによる置換)またはキャプシド化領域(異種キャプシド化領域、例えば、VL30型による置換)における修飾を含むことがある(仏国特許出願第94 08300号明細書および第97 05203号明細書参照)。
【0078】
アデノウイルスベクターは、複製に必須であり、かつE1、E2、E4およびL1 L5領域から選択される少なくとも1個の領域の総てまたは一部を欠いている可能性がある。E1領域の欠失が好ましい。しかしながら、特にE2、E4および/またはL1 L5領域の総てまたは一部に影響を及ぼす別の(もう一つの)修飾/欠失と組み合わせることができる。例えば、E1領域の主要部分およびE4転写単位の欠失が特に有利である。クローニング能を増加させるために、アデノウイルスベクターは非必須E3領域の総てまたは一部を欠くこともできる。もう一つの実施態様では、配列キャプシド化に必須の配列、すなわち5’および3’ITR(逆方向末端反復配列)とキャプシド化領域を保持する最少アデノウイルスベクターを用いることができる。様々なアデノウイルスベクターやそれを調製する手法が知られている(例えば、Graham and Prevect著, 1991年, 「(分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)」, 第7巻, p 109 128; E. J. Murey監修, The Human Press Incを参照されたい)。
【0079】
ポックスウイルス科は、コルドポックスウイルスおよびエントモポックスウイルス亜科を含んでなる。これらの中で、本発明によるポックスウイルスは、好ましくはオルトポックスウイルス、パラポックスウイルス、アヴィポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルスモルシポックスウイルス、ヤタポックスウイルスを含んでなる群から選択される。更に好ましい実施態様によれば、本発明のポックスウイルスはオルトポックスウイルスである。
【0080】
オルトポックスウイルスは、好ましくはワクシニアウイルスであり、更に好ましくは修飾ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、特にMVA 575(ECACC VOO 120707)およびMVA−BN(ECACC V00083008)である。
【0081】
「組換えウイルス」という用語は、そのゲノムに挿入された外来配列を含んでなるウイルスを表す。本明細書で用いられる外来配列は、天然では親ウイルスに含まれていない核酸を表す。
【0082】
一つの実施態様では、外来配列は、直接または間接的に細胞傷害性機能を有する分子をコードする。「直接または間接的に」とは、外来配列によってコードされた分子がそれ自身毒性を有することがあるか(例えば、リシン、腫瘍壊死因子、インターロイキン−2、インターフェロン−γ、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、シュドモナス外毒素A)、またはそれが何か他のものに作用して毒性生成物を形成することがあることを意味する。リシンcDNAの配列は、Lamb et al (Eur. J. Biochem., 1985, 148, 265-270)に開示されており、その内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。
【0083】
本発明の好ましい実施態様では、外来配列は自殺遺伝子である。自殺遺伝子は、比較的毒性のないプロドラッグを有毒な薬剤へ転換することができるタンパク質をコードする。例えば、酵素シトシンデアミナーゼは5−フルオロシトシン(5FC)を5−フルオロウラシル(5FU)に転換し(Mullen et al (1922) PNAS 89, 33)、単純疱疹酵素チミジンキナーゼは、抗ウイルス薬ガンシクロビール(GCV)またはアシクロビールを用いる治療に感受性にする(Moolten (1986) Cancer Res. 46, 5276; Ezzedine et al (1991) New Biol 3, 608)。E. coliまたはSaccharomyces cerevisiaeなど任意の生物のシトシンデアミナーゼを用いることができる。
【0084】
従って、本発明の更に好ましい実施態様では、遺伝子はシトシンデアミナーゼ活性を有するタンパク質をコードし、更に好ましくはWO2005007857およびWO9954481に記載のタンパク質をコードする。
【0085】
他の実施態様では、外来遺伝子は、選択されたRNAまたはDNAを開裂することができるリボソームをコードする。開裂を受ける選択されたRNAまたはDNAは、細胞の機能に必須のRNAまたはDNAであることがあり、その開裂によって細胞死を生じ、または開裂を受けるRNAまたはDNAは望ましくないタンパク質、例えば、癌遺伝子生成物をコードするRNAまたはDNAであることがあり、このRNAまたはDNAの開裂により、細胞が癌になるのを防止することができる。
【0086】
更に別の実施態様では、外来遺伝子がアンチセンスRNAをコードする。
【0087】
「アンチセンスRNA」とは、タンパク質をコードするmRNA分子またはpre−mRNAまたはtRNAまたはrRNAのような細胞内の別のRNA分子とハイブリダイズしてその発現を妨げ、または遺伝子とハイブリダイズしてその発現を妨げるRNA分子を意味する。
【0088】
本発明のもう一つの実施態様では、外来配列はターゲット細胞の欠陥遺伝子の機能を置き換える。ヒトを含む哺乳類の数千の遺伝病があり、これは欠陥遺伝子によって引き起こされる。このような遺伝病の例としては、CFTR遺伝子の突然変異であることが知られている嚢胞性繊維症、ジストロフィン遺伝病の突然変異であることが知られているデュシェーヌ筋ジストロフィ、HbA遺伝子の突然変異であることが知られている鎌状赤血球症が挙げられる。多くの種類の癌は、欠陥遺伝子、特に癌原遺伝子、および突然変異を受けた腫瘍サプレッサー遺伝子によって引き起こされる。
【0089】
癌原遺伝子の例はras、src、bclなどであり、腫瘍−サプレッサー遺伝子の例はp53およびRbである。
【0090】
本発明の他の実施態様では、外来配列は腫瘍関連抗原(TAA)をコードする。TAAは、同種類の組織の非腫瘍細胞よりも腫瘍細胞で一層高頻度または密度で検出される分子を表す。TAAの例としては、CEA、MART−1、MAGE−1、MAGE−3、GP−100、MUC−1、MUC−2、点突然変異したras癌遺伝子、正常または点突然変異したp53、過剰発現したp53、CA−125、PSA、C−erb/B2、BRCA I、BRCA II、PSMA、チロシナーゼ、TRP−I、TRP−2、NY−ESO−I、TAG72、KSA、HER−2/neu、bcr−abl、pax3−fkhr、ews−fli−1、サバイビング(surviving)およびLRPが挙げられるが、これらに限定されない。更に好ましい実施態様によれば、TAAはMUC1である。
【0091】
組換えウイルスは1を上回る外来配列を含んでなることができ、それぞれの外来配列は1を上回る分子をコードすることができる。例えば、それは、同一組換えポックスウイルスでは、TAAをコードする外来配列を、サイトカインをコードする外来配列と会合させるのに有用である。
【0092】
本発明のもう一つの実施態様では、外来遺伝子は抗原をコードする。本明細書で用いられる「抗原」とは、抗体と結合することができるリガンドを表し、抗原自身は免疫原性である必要はない。
【0093】
好ましくは、抗原は、ウイルス、例えばHIV−1(例えば、gp120またはgp160)、ネコ免疫不全ウイルスのいずれか、ヒトまたは動物のヘルペスウイルス、例えばgDまたはその誘導体、またはHSV1またはHSV2由来のICP27のような前初期タンパク質、サイトメガロウイルス(例えば、gBまたはその誘導体)、水痘帯状ヘルペスウイルス(例えば、gpI、IIまたはIII)に由来し、またはB型肝炎ウイルス、例えばB型肝炎表面抗原またはその誘導体、A型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス(特に、遺伝子型1b株ja由来の非構造タンパク質)およびE型肝炎ウイルスのような肝炎ウイルスに由来し、またはRS(Respiratory Syncytial)ウイルス、ヒトパピローマウイルス(特に、HPV16株由来のE6およびE7タンパク質)またはインフルエンザウイルスのような他のウイルス病原体に由来し、またはサルモネラ、ナイセリア、ボリリア(例えば、OspAまたはOspBまたはその誘導体)またはクラミジア、またはボルデテラ、例えばP.69、PTおよびFHAのような細菌病原体に由来し、またはマラリア原虫またはトキソプラズマのような寄生生物に由来する。
【実施例】
【0094】
実施例1:テロメラーゼ発現系
ランダム挿入
カモ(duck)ゲノムと相同な特異配列を共有しないプラスミドを、この目的に用いた(図1)。
【0095】
ターゲティング挿入
ノバリケンテロメラーゼ逆転写酵素遺伝子を囲んでいるノバリケン(Cairina moschata)HPRT遺伝子に相同な2つの5kb断片と2つの選択マーカーを含んでなるプラスミドを構築した。ヒポキサンチングアニンホスホリルトランスフェラーゼをコードするHPRT遺伝子を、ノバリケンテロメラーゼの構成的発現に適当な部位として選択した。
【0096】
これら2つの選択マーカーは、CMVプロモーターの制御下にある(Thomsen et al. P.N.A.S. 1984. 81. 3:659-63)FCU1遺伝子(Erbs et al. Cancer Res. 2000. Jul. 15; 60:3813-22)およびSV40プロモーターの制御下にあるネオマイシン耐性遺伝子である。ネオマイシン耐性およびFCU−1発現カセットは、最終細胞系からの選択カセットを除去することができるSce1開裂部位によって囲まれている。HPRT遺伝子アームの外側には、RSVプロモーターによって駆動されるHSVTKをコードする選択マーカーが挿入される(図2)。
【0097】
実施例2:12個の古いノバリケン(Cairina moschata)の卵からのCECバッチの調製および下位個体群の説明
25個のSPF受精卵を37.5℃でインキュベーションする。12日間のインキュベーションの後に、これらの卵を、利用可能なプロトコルに従って切開する。
【0098】
23個の胚を細かく切り刻み、リン酸緩衝食塩水−ダルベッコ(PBS)で1回洗浄し、TrypLE Select(Invitrogen)中、室温で5時間解離させる。
【0099】
低速で遠心分離した後、細胞を、10%ウシ胎仔血清(FCS)、ゲンタマイシン0.04g/Lを補充したイーグルの基礎培地(MBE)に再懸濁し、500cmのトリプルフラスコ(triple flasks)に播種し、5%CO下、37℃でインキュベーションする。
【0100】
24時間後に、コンフルエント細胞を、TrypLE Selectを用いてフラスコから取りだし(5ml/トリプルフラスコ)、細胞の一部を175cmフラスコに再び播種して、二回目の継代培養を行った。残りの細胞を、適当な培地(60%BME、30%FCSおよび10%DMSO)中で10細胞/mLで濃縮し、イソプロピルアルコール調節容器(NALGENE(登録商標)「Mr. Frosty」1℃冷凍容器)中で−80℃にて冷凍した後、長期保存のために液体窒素に移し、初期細胞バンク(50×1,5.10細胞/バイアル,44×1.10細胞/バイアル)とした。
【0101】
培養物中に残っている細胞を古典的な方法で18代まで継代培養し、最初の3代では、非接着細胞を、コンディショニングした培地を低速遠心分離することによって集め、初期培養と同じ方法で再播種して更に継代培養する。
【0102】
特徴的な異なる形態学的特徴を示す下位個体群を、培養寿命中に再現可能に単離した。
【0103】
実施例3:トランスフェクションの方法
目的とするヌクレオチド配列の発現を指示することができるベクターを導入するための多数のトランスフェクションの方法が、当技術分野で知られている。これらの方法としては次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:CaPO沈澱、エレクトロポレーション、リポフェクチントランスフェクション法。本実施例は、CaPO沈澱の手順に基づいている。
【0104】
細胞は、約80〜50%コンフルエンシーとする。培地を、CaPO/DNA添加の2時間前に交換する。30μgのDNAを、31μlの2M CaCl−161.3mM Tris pH7.6に再懸濁する。HOを、最終容積が0.5mlになるまで加える。
【0105】
トランスフェクション当たり、0.5mlの2X HEBSを15ml滅菌Falconチューブに加え、DNA溶液を、緩やかに渦流攪拌し、またはバブリングしながら滴下する。溶液はミルク状となる。この混合物を、室温で10〜30分間放置する。次いで、組織培養キャビネット中、滅菌ピペットで吸引および排出を1回行ってフレークを砕き、細胞に滴下する。次いで、細胞を37℃で6時間〜一晩インキュベーションする。細かな沈澱が細胞表面を覆う。トランスフェクション手順を完了するために、グリセロールショック溶液を37℃まで加温する。培地を吸引除去し、BME5mlを加えて細胞層を洗浄した後、培地を吸引除去し、グリセロールショック溶液1mlを2分間以下の時間で加える。次いで、BME10mlを緩やかに加えてグリセロールを希釈し、BME−グリセロールを完全に除去する。次に、所望の培地10mlを加え、プレートを適温にてインキュベーションする。
【0106】
実施例4:選択の方法
ランダム挿入
トランスフェクションの48時間後に選択圧を加え、細胞をTrypLE Selectで解離させ、低速遠心分離し、10%FCSと800μg/mLのG418を含むBMEに再播種する。
【0107】
細胞を、個々の増殖クローンを単離することができるようになるまで連続継代培養する。増殖するフォーカスを単離して増幅した後、TRAPeze(登録商標)XLテロメラーゼ検出キット(S7707, Chemicon)を用いるテロメラーゼ活性定量およびサザンブロット分析により、標的とした特異的な遺伝子座への組込みを証明する。
【0108】
ターゲティング挿入
トランスフェクションの48時間後に選択圧を加え、細胞をTrypLE Selectで解離させ、低速遠心分離し、10%FCS、25μg/mLのガンシクロビールおよび800μg/mLのG418を含むBMEに再播種する。
【0109】
細胞を、個々の増殖クローンを単離することができるようになるまで連続継代培養する。増殖するフォーカスを単離して増幅した後、TRAPeze(登録商標)XLテロメラーゼ検出キット(S7707, Chemicon)を用いるテロメラーゼ活性定量およびサザンブロット分析により、標的とした特異的な遺伝子座への組込みを証明する。
【0110】
検出された回復テロメラーゼ活性と、標的としたHPRT座組込みを有する細胞クローンを、次に、下記の方法に従ってメガヌクレアーゼI−SceI発現プラスミドによりトランスフェクトする。
【0111】
選択マーカーの除去を選択するため、トランスフェクションの48時間後に5−フルオロシトシン(5−FC)を加える:細胞をTrypLE Selectで解離させ、低速遠心分離し、10−3〜10−7Mの範囲の5−FC濃度および維持されたG418選択を有する培地(10%FCS、5−FCおよび800μg/mLのG418を含むBME)に再播種する。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】テロメラーゼ逆転写酵素をコードする遺伝子を含んでなるベクター。
【図2】テロメラーゼ逆転写酵素をコードする遺伝子のHPRT遺伝子への部位特異的挿入を表す模式図。
【図3】本発明の方法によって得られた不死化細胞のゲノムからの、第一および第三の選択マーカーの除去を表す模式図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に対して少なくとも60%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたまたは組換えポリペプチド。
【請求項2】
配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたまたは組換えポリペプチド。
【請求項3】
配列番号1に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたまたは組換えポリペプチド。
【請求項4】
配列番号1に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたまたは組換えポリペプチド。
【請求項5】
配列番号1に示されるアミノ酸配列を含んでなる、単離されたポリペプチド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする、単離されたまたは組換え核酸分子。
【請求項7】
配列番号2に実質的に示される核酸配列を含んでなる、請求項6に記載の単離された核酸分子。
【請求項8】
請求項6または7に記載の核酸分子を有する、ベクター。
【請求項9】
ターゲットDNA配列に相同な2つの配列を含んでなる、請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
前記核酸分子が前記相同配列によって囲まれている、請求項9に記載のベクター。
【請求項11】
前記ベクターが第一の選択マーカーをさらに含んでなり、該第一の選択マーカーが正の選択マーカーであり、前記相同配列によって囲まれている、請求項9または10に記載のベクター。
【請求項12】
前記第一の選択マーカーがそれを抑制することができる配列によって囲まれている、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
前記ベクターが前記相同配列によって囲まれていない第二の選択マーカーを含んでなり、該選択マーカーが負の選択マーカーである、請求項9〜12のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項14】
前記ベクターが第三の選択マーカーを含んでなり、該第三の選択マーカーが負の選択マーカーであり、第一の選択マーカーを抑制することができる配列の間に配置されている、請求項11〜13のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項15】
請求項6または7に記載の核酸分子によってトランスフェクトされた、細胞。
【請求項16】
前記核酸分子が前記一次細胞のHPRT遺伝子中に挿入されている、請求項15に記載の細胞。
【請求項17】
細胞の内在性HPRTプロモーターに作動可能に連結された請求項6または7に記載の核酸分子を含んでなる、細胞。
【請求項18】
前記細胞がカモ科(Anatidae)に属する動物に由来するものである、請求項15〜17のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項19】
前記動物がノバリケン(Cairina moschata)種に属するものである、請求項18に記載の細胞。
【請求項20】
前記動物がマガモ(Anas platyrhynchos)種に属するものである、請求項18に記載の細胞。
【請求項21】
目的とする物質をコードする核酸配列をさらに含んでなる、請求項15〜20のいずれか一項に記載の細胞系。
【請求項22】
欠損ウイルスの増殖を可能にする相補性カセットをさらに含んでなる、請求項15〜21のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項23】
細胞の不死化のための、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項6または7に記載の核酸分子、または請求項8〜14のいずれか一項に記載のベクターの使用。
【請求項24】
ウイルスの複製のための、請求項15〜21のいずれか一項に記載の細胞の使用。
【請求項25】
前記ウイルスが、牛痘ウイルス、エクトロメリアウイルス、サル痘ウイルス、ワクシニアウイルス、痘瘡ウイルスおよびMVAからなる群から選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
目的とする物質の製造のための、請求項21に記載の細胞の使用。
【請求項27】
ウイルスの製造のための、請求項15〜22のいずれか一項に記載の細胞の使用。
【請求項28】
前記ウイルスがポックスウイルスである、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記ウイルスがワクシニアウイルスである、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記ワクシニアウイルスがMVAである、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
組換えウイルスの製造のための、請求項15〜21のいずれか一項に記載の細胞の使用。
【請求項32】
細胞を請求項8〜14のいずれか一項に記載のベクターでトランスフェクトする工程を含んでなる、細胞を不死化する方法。
【請求項33】
前記細胞を、第一の選択マーカーが組み込まれた細胞の増殖のみを可能にする培地で培養する工程をさらに含んでなる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞を、第二の選択マーカーが組み込まれた細胞の増殖を可能にしない培地で培養する工程をさらに含んでなる、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞のゲノムから第一の選択マーカーを排除することからなる工程をさらに含んでなる、請求項32〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
細胞のゲノムから第一の選択マーカーを排除することからなる前記工程の後に得られる細胞を、第三の選択マーカーを含んでなる細胞の増殖を可能にしない培地で培養する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞がカモ科(Anatidae)に属する生物から採取されたものである、請求項32〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記生物がノバリケン(Cairina moschata)種に属するものである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記生物がマガモ(Anas platyrhynchos)種に属するものである、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記核酸分子が前記細胞のターゲットDNA配列中に挿入される、請求項32〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記ターゲットDNA配列がHPRT遺伝子である、請求項40に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−27397(P2013−27397A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−198723(P2012−198723)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【分割の表示】特願2008−549016(P2008−549016)の分割
【原出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(599082883)トランジェーヌ、ソシエテ、アノニム (32)
【氏名又は名称原語表記】TRANSGENE S.A.
【Fターム(参考)】