説明

トリハロメタン分析装置

【課題】トリハロメタンガスの分離・溶解部において、トリハロメタンガスをキャリア液に溶解する手段、あるいはサンプル水からトリハロメタンガスを分離する手段のいずれか又は双方を、膜を使用することなく構成可能とし、耐久性及び信頼性の向上を図ることが可能成トリハロメタン分析装置を提供する。
【解決手段】トリハロメタンガス分析装置において、サンプル水4からトリハロメタンガスを分離する膜8を備えたガス分離チャンバー360と、ガス分離チャンバー360を加熱し一定温度に維持する加熱手段13と、キャリア液12を収容しトリハロメタンガスをキャリア液12に溶解させる容器37と、該容器37とガス分離チャンバー360とを互いに連結する連結手段17aとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中の低融点有機塩素化合物のトリハロメタン分析装置であって、トリハロメタンを含むサンプル水からトリハロメタンガスを分離させてキャリア液に溶解させ、このトリハロメタンガス溶解キャリア液を加熱してトリハロメタンをニコチン酸アミドと反応させるように構成されたトリハロメタン分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トリハロメタンは、水中の有機化合物と疫学的安全性を確保するために使う塩素に起因して生成されるものである。水中のトリハロメタンは、揮発性であって、気体として微孔性の膜を透過できる性質を有している。この透過したトリハロメタンは、キャリア液に溶解することにより、水中の懸濁物、イオン及び種々の干渉物から分離することが可能となっている。
【0003】
かかるトリハロメタンを自動分析するトリハロメタン分析装置としては、本件出願人の出願に係る特許文献1(特開平10−170493号公報)、特許文献2(特公平2−145961号公報)等の技術が提供されている。
図5は、トリハロメタン分析装置の基本構成を示す全体系統図である。
このトリハロメタン分析装置では、送液ポンプ3等のキャリア液送液部と、送液ポンプ7等の試料送液部と、分離・溶解部38等のトリハロメタンガス分離・溶解部と、反応部9と、検出部10とを有している。
【0004】
送液ポンプ3は、ニコチン酸アミド電磁弁1を介して導入されるニコチン酸アミド溶液と、水酸化ナトリウム電磁弁2を介して導入される水酸化ナトリウム溶液とを混合したキャリア液12を分離・溶解部38に供給するように構成されている。
送液ポンプ7は、サンプル水電磁弁5を介して導入されるトリハロメタンを含むサンプル水4に、酸性還元剤溶液電磁弁6を介して導入される酸性還元剤溶液(硫酸ヒドラジン溶液)を混合させて分離・溶解部38に供給するように構成されている。この分離・溶解部38と関連して、当該分離・溶解部38内のキャリア液12中にエアを供給するエアポンプ11が設けられている。
分離・溶解部38では、上記サンプル水4は加熱手段13によって70℃程度に加熱される。加熱されたサンプル水4は、内部のガス分離膜8を通ることによりトリハロメタンガス(該トリハロメタンガスの沸点は62.5℃)が分離され、分離されガス化されたトリハロメタンガスは、ニコチン酸アミド溶液と水酸化ナトリウム溶液とが混合されたキャリア液12が内側を流れるガス分離用微孔性チューブからなるガス溶解膜25と接することでキャリア液12に溶解されて、トリハロメタンガス溶解キャリア液となり、反応部9に搬送されることになる。
【0005】
反応部9では、加熱手段16によって90℃程度に保持されており、上記キャリア液12を流す過程で加熱手段16にて90℃程度まで加温し、当該キャリア液12中のトリハロメタンをニコチン酸アミドと反応させている。
検出部10は、反応部9における反応生成物の蛍光強度を測定し、そのフォトマルセンサ信号を図示しない分析手段に伝送している。
以上の分析処理が行われた排水は、配管51を通り、分離・溶解部38から排水管52を通って排出されるサンプル水4の排水と共通配管53で合流し、外部に排出されることになる。
【特許文献1】特開平10−170493号公報
【特許文献2】特公平2−145961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のトリハロメタン分析装置には、図5に示されるようなトリハロメタンガスの分離・溶解部を備えているため、次のような解決すべき課題を有している。
【0007】
第1の課題は、トリハロメタンガスをニコチン酸アミド溶液からなるキャリア液12に溶解するガス溶解膜25の寿命にある。
このガス溶解膜25は、四フッ化エチレン膜(PTFE)に多孔質処理を施したものであり、孔径0.1μm程度の微細な孔が無数に空けられている。そして、ガス溶解膜25は撥水性を有しているため、ニコチン酸アミド溶液を保持しつつトリハロメタンガスだけを透過させることができる。
ところが、ニコチン酸アミド溶液は水に溶けやすい反面、空気と接触すると短時間にニコチン酸アミドが析出する性質がある。かかるトリハロメタン分析装置においては、トリハロメタン測定終了時に、エアポンプ11からトリハロメタンガスのパージ用空気が流される。そのため、ガス溶解膜25の表面が乾き、ニコチン酸アミドが析出することになる。これを繰り返すことでガス溶解膜25の撥水性が低下し、その寿命が通常2〜3ヶ月程度と短くなり、短期間でガス溶解膜25の交換が必要となってしまう。
【0008】
第2の課題は、サンプル水4からトリハロメタンガスを分離するガス分離膜8の寿命にある。
このガス分離膜8は、四フッ化エチレン膜(PTFE)に多孔質処理を施したものであり、孔径0.1μm程度の微細な孔が無数に空けられている。そして、ガス分離膜8は撥水性を有しているため、サンプル水4を保持しつつ蒸発したトリハロメタンガスだけを透過させることができる。
ところが、サンプル水4は水道水であるため、微細なゴミや夾雑物を含むことから、長期間使用していると、当該ガス分離膜8は徐々に汚れが表面に付着し、これにより撥水性が低下し、最後には水漏れを誘発することになる。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、トリハロメタンガスの分離・溶解部において、トリハロメタンガスをキャリア液に溶解する手段、あるいはサンプル水からトリハロメタンガスを分離する手段のいずれか又は双方を、膜を使用することなく構成可能とし、耐久性及び信頼性の向上を図ることが可能なトリハロメタン分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来技術の有する課題を解決するために、請求項1の本発明は、トリハロメタンを含むサンプル水からトリハロメタンガスを分離させてキャリア液に溶解させ、このトリハロメタンガス溶解キャリア液を加熱してトリハロメタンをニコチン酸アミドと反応させるように構成されたトリハロメタン分析装置において、前記サンプル水からトリハロメタンガスを分離する膜を備えたガス分離チャンバーと、前記ガス分離チャンバーを加熱し一定温度に維持する加熱手段と、ニコチン酸アミド溶液と水酸化ナトリウムとの混合液からなる前記キャリア液を収容し前記トリハロメタンガスを前記キャリア液に溶解させる容器と、該容器と前記ガス分離チャンバーとを互いに連結する連結手段とを備えている。
【0011】
また、請求項2の本発明は、トリハロメタンを含むサンプル水からトリハロメタンガスを分離させてキャリア液に溶解させ、このトリハロメタンガス溶解キャリア液を加熱してトリハロメタンをニコチン酸アミドと反応させるように構成されたトリハロメタン分析装置において、トリハロメタンが含まれる前記サンプル水から前記トリハロメタンガスを直接分離する直接ガス分離チャンバーと、前記直接ガス分離チャンバーを加熱し一定温度に維持する加熱手段と、ニコチン酸アミド溶液と水酸化ナトリウムとの混合液からなる前記キャリア液を収容し前記トリハロメタンガスを前記キャリア液に溶解させる容器と、該容器と前記直接ガス分離チャンバーとを互いに連結する連結手段とを備えている。
【0012】
かかる発明において、前記キャリア液を保持するため、前記容器内を真空に減圧にする手段と加圧する手段とを備えるのが好ましい形態である(請求項3)。
【0013】
上記発明において、具体的には次のように構成するのが好ましい。
(1)前記ガス分離チャンバー内の上部に、前記サンプル水をガス分離膜を通すことにより前記トリハロメタンガスを分離するガス分離室を形成し、前記ガス分離チャンバー内の前記ガス分離膜の下方に前記キャリア液が供給されるガス溶解室を形成し、前記ガス分離室にて前記サンプル水から分離された前記トリハロメタンガスを前記ガス溶解室内の前記キャリア液に溶解させるように構成している(請求項4)。
【0014】
(2)前記容器を前記ガス分離チャンバーとは別個に設置し、前記容器内に前記ガス分離チャンバーにて前記サンプル水から分離された前記トリハロメタンガスを前記キャリア液に溶解させるガス溶解室を形成し、該ガス溶解室と前記ガス分離チンバーとを前記連結手段で連結している(請求項5)。
【0015】
(3)前記直接ガス分離チャンバーを、該直接ガス分離チャンバーの底壁近傍に設置した加熱手段により前記直接ガス分離チャンバーの底部に溜まった前記サンプル水を加熱脱気して前記トリハロメタンガスを分離するように構成するとともに、前記容器を前記直接ガス分離チャンバーとは別個に設置して前記連結手段を介して前記直接ガス分離チャンバーと接続し、前記容器内に前記ガス直接分離チャンバーにて前記サンプル水から分離された前記トリハロメタンガスを前記キャリア液に溶解させるガス溶解室を形成している(請求項6)。
【0016】
(4)1つの共通容器内に前記直接ガス分離チャンバーとガス溶解室とを隔壁に設けた通路を介して連通して設け、前記共通容器の前記直接ガス分離チャンバーの底壁近傍に設置した加熱手段により前記直接ガス分離チャンバーの底部に溜まった前記サンプル水を加熱脱気して前記トリハロメタンガスを分離するように構成し、前記直接ガス分離チャンバーにて前記サンプル水から分離された前記トリハロメタンガスを前記通路を通して前記ガス溶解室に導入して前記キャリア液に溶解させるように構成している(請求項7)。
【発明の効果】
【0017】
上述の如く、請求項1,3の発明に係るトリハロメタン分析装置及びこれを具体化した請求項4,5の発明によれば、サンプル水からトリハロメタンガスを分離する膜を備えたガス分離チャンバーと、ガス分離チャンバーを加熱し一定温度に維持する加熱手段と、ニコチン酸アミド溶液と水酸化ナトリウムとの混合液からなるキャリア液を収容し前記トリハロメタンガスを前記キャリア液に溶解させる容器と、該容器と前記ガス分離チャンバーとを互いに連結する連結手段とを備えたので、上記従来技術(図5)のような、四フッ化エチレン膜(PTFE)に多孔質処理を施したチューブ材等からなるガス溶解膜が不要となる。
これにより、上記従来技術において特に問題となっていたガス溶解膜の撥水性の低下が無くなり、トリハロメタン分析装置の安定機能が保持されるとともに耐久性が向上し、高い信頼性を長期間にわたり維持できる。
【0018】
また、請求項2,3の発明、及びこれを具体化した請求項6,7の発明に係るトリハロメタン分析装置によれば、トリハロメタンが含まれるサンプル水からトリハロメタンガスを直接分離する直接ガス分離チャンバーと、前記直接ガス分離チャンバーを加熱し一定温度に維持する加熱手段と、ニコチン酸アミド溶液と水酸化ナトリウムとの混合液からなる前記キャリア液を収容する容器と、該容器と前記直接ガス分離チャンバーとを互いに連結する連結手段とを備えたので、従来技術(図5)のようなガス分離膜及びガス溶解膜の双方が不要となる。
これにより、上記従来技術において特に問題となっていたサンプル水に含まれる微細なゴミや夾雑物に起因するガス分離膜の劣化、及びガス溶解膜の撥水性の低下が一切無くなり、かつ膜の交換が不要となり、トリハロメタン分析装置の安定機能が保持されるとともに耐久性が向上し、高い信頼性を長期間にわたり維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明に係るトリハロメタン分析装置について、その実施形態を詳細に説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態に係るトリハロメタン分析装置の全体構成を示す系統図である。
このトリハロメタン分析装置では、送液ポンプ3等のキャリア液送液部と、送液ポンプ7等の試料(サンプル水4)送液部と、ガス分離部(ガス分離チャンバー)360と、ガス溶解部370と、反応部9と、検出部10とをそれぞれ有している。
【0021】
図1において、上記送液ポンプ3は、ニコチン酸アミド電磁弁1を介して導入されるニコチン酸アミド溶液と、水酸化ナトリウム電磁弁2を介して導入される水酸化ナトリウム溶液とを混合したキャリア液12をガス溶解室37に供給するように構成されている。
上記送液ポンプ7は、サンプル水電磁弁5を介して導入されるトリハロメタンを含むサンプル水4に、酸性還元剤溶液電磁弁6を介して導入される酸性還元剤溶液(硫酸ヒドラジン溶液)を混合させてガス分離部360のガス分離室36に供給するように構成されている。
【0022】
上記ガス分離部360は、内部にガス分離室36が形成された容器39と、容器39内に設けられたガス分離膜8と、容器39内の試料液であるサンプル水4を加熱する加熱手段13と、エアポンプ40と、エアポンプ40と容器39内とを接続する空気通路40bを開閉する電磁弁40aと、パージ用の電磁弁38とによって構成されており、前記容器39内のガス分離室36に導入されたサンプル水4は、加熱手段13によって70℃程度に加熱されるようになっている。
加熱されたサンプル水4は、ガス分離室36に臨むガス分離膜8を通ることによって、トリハロメタンガス(該トリハロメタンガスの沸点は62.5℃)が分離されることになる。
【0023】
上記電磁弁40aは、電磁弁38のゼロ校正時に大気開放し、エアポンプ40からの空気によりトリハロメタンガスを空気でパージするために設けられている。また、電磁弁40a及び電磁弁38は、ガス分離部360の容器39内でトリハロメタンガスをサンプル水4から分離する際には閉じて、容器39内を密閉するようになっている。
【0024】
上記ガス溶解部370は、前記容器39内の下部に形成されたガス溶解室37を備え、送液ポンプ3から、ニコチン酸アミド溶液と水酸化ナトリウム溶液とを混合したキャリア液12がガス溶解室37に供給され、当該ガス溶解室37においてキャリア液12を保持し、ガス分離室36から、上記のようにしてサンプル水4をガス分離膜8を通すことにより分離されたトリハロメタンガスを取り込み、キャリア液12にトリハロメタンガスを溶解させている。
このトリハロメタンガス溶解キャリア液は、送液ポンプ22により反応部9に搬送されることになる。
【0025】
上記反応部9では、加熱手段16によって90℃程度に保持されており、キャリア液12を流す過程で加熱手段16にて90℃程度まで加温し、当該キャリア液12中のトリハロメタンをニコチン酸アミドと反応させている。
上記検出部10では、反応部9における反応生成物の蛍光強度を測定し、そのフォトマルセンサ信号を図示しない分析手段に伝送している。
以上の分析処理が行われた排水は、配管51を通り、分離・溶解部38から排水管52を通って排出されるサンプル水4の排水と共通配管53で合流し、外部に排出されることになる。
【0026】
次に、第1実施形態に係るトリハロメタン分析装置の動作手順について説明する。
先ず、電磁弁1及び電磁弁2を開き、送液ポンプ3でキャリア液12をガス溶解部370のガス溶解室37へ送る。それと同時に電磁弁6及び電磁弁5を開き送液ポンプ7でサンプル水4をガス分離部360のガス分離室36へ送り、加熱手段13によって当該サンプル水4を70℃程度に加熱する。
加熱されたサンプル水4は、ガス分離室36に臨むガス分離膜8を通ることにより、トリハロメタンガス(該トリハロメタンガスの沸点は62.5℃)が分離される。
【0027】
次いで、電磁弁40aと電磁弁38を閉じ、上記トリハロメタンガスをガス溶解室37内のキャリア液12に溶解させる。トリハロメタンガスを溶解させた後のトリハロメタンガス溶解キャリア液は、送液ポンプ22によって次工程である反応部9に送り込まれて、当該反応部9で前述のような反応動作を行う。
しかる後、上記電磁弁40aを、電磁弁38のゼロ校正時に大気開放し、エアポンプ40からの空気によりトリハロメタンガスを空気でパージする。
【0028】
以上の第1実施形態によれば、容器39内の上部にサンプル水4をガス分離膜8を通すことによりトリハロメタンガスを分離するガス分離室36を形成し、該容器39内のガス分離膜8の下方にキャリア液12が供給されるガス溶解室37を形成し、ガス分離室36にてサンプル水4から分離されたトリハロメタンガスをガス溶解室37に取り込み、キャリア液12にトリハロメタンガスを溶解させるように構成したので、図5に示される従来技術のような、四フッ化エチレン膜(PTFE)に多孔質処理を施したチューブ材等からなるガス溶解膜25が不要となる。
これにより、上記従来技術において特に問題となっていたガス溶解膜の撥水性の低下が無くなり、トリハロメタン分析装置の安定機能が保持されるとともに耐久性が向上し、高い信頼性が維持できることとなった。
【0029】
[第2実施形態]
図2は本発明の第2実施形態に係るトリハロメタン分析装置の全体構成を示す系統図である。
この第2実施形態においては、図2に示すように、サンプル水4からトリハロメタンガスを分離するガス分離部(ガス分離チャンバー)33、膜を使用することなくトリハロメタンガスを容器35内で直接溶解するガス溶解部34、ガス溶解部34の容器35内の内圧を制御しガス分離部33からガス溶解部34にトリハロメタンガスを輸送し、あるいは次工程の反応部9へトリハロメタンガス溶解キャリア液を輸送する手段であるエアポンプ21等を備えている。
【0030】
上記ガス分離部33は、容器32、該容器32内に設けられたガス分離膜8、大気開放弁15等により構成されており、ガス分離膜8では上記第1実施形態と同様に、サンプル水4からトリハロメタンガスを分離するようになっている。かかる分離作動時には、後述する電磁弁17及び大気開放弁15は閉じて、容器32を密閉している。
また、上記大気開放弁15は、ゼロ校正時に容器32内のトリハロメタンガスを空気でパージする際に開き、トリハロメタン分析装置の稼動時には閉じている。
上記ガス分離部33でサンプル水4から分離したトリハロメタンガスは、電磁弁17を備えた通路17aを通ってガス溶解部34に搬送され、ガス溶解部34で送液ポンプ3により送り込まれたキャリア液12に溶解している。
【0031】
上記ガス溶解部34は、トリハロメタンガス及び送液ポンプ3により送り込まれたキャリア液12が収容される容器35と電磁弁18とで構成されており、容器35には、キャリア液12が保持されて、ガス分離部33からトリハロメタンガスを取り込み、キャリア液12にトリハロメタンガスを溶解させている。
そして、このトリハロメタンガス溶解キャリア液は反応部9に送り込まれ、それ以降は、上記第1実施形態と同様の処理が施される。
なお、上記電磁弁18は、これを開いて容器35内のガスを空気によるパージを行うのに使用されている。
【0032】
上記エアポンプ21は、3方弁からなる電磁弁19と3方弁からなる電磁弁20とを併用することにより、容器35内部の圧力調整に使用している。図2の状態ではエアポンプ21を作動させると容器35内を負圧にすることが可能となる。容器35内を正圧にする場合は、エアポンプ21を作動させて電磁弁19及び電磁弁20を開くようになっている。
【0033】
次に、第2実施形態に係るトリハロメタン分析装置の動作手順について説明する。
先ず、電磁弁1及び電磁弁2を開き、送液ポンプ3でキャリア液12をガス溶解部34のガス溶解室34aへ送る。それと同時に電磁弁6及び電磁弁5を開き、送液ポンプ7でサンプル水4をガス分離部33のガス分離室33aへ送り、加熱手段13によって当該サンプル水4を70℃程度に加熱する。加熱されたサンプル水4は、ガス分離室33aに臨むガス分離膜8を通ることによりトリハロメタンガス(該トリハロメタンガスの沸点は62.5℃)が分離される。
【0034】
次いで、電磁弁17を開き、圧力計19aを目視しながら電磁弁20及び電磁弁19の開度を調整してエアポンプ21を動作させ、ガス溶解室34a内を負圧に減圧すると、ガス分離室33a内のトリハロメタンガスは通路17aを通ってガス溶解室34a内に導入され、ガス溶解室34aに供給されているキャリア液12に溶解することになる。
トリハロメタンガスを溶解させたトリハロメタンガス溶解キャリア液を次工程である反応部9に送る際には、電磁弁17及び電磁弁18を閉じ、圧力計19aを目視しながら電磁弁20及び電磁弁19の開度を調整してエアポンプ21を動作させ、ガス溶解室34a内を正圧にして、ガス溶解室34a内のトリハロメタンガス溶解キャリア液を反応部9に圧送する。
その他の構成は、上記第1実施形態と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示している。
【0035】
以上の第2実施形態によれば、ガス分離部33とは別個に、容器35内にガス溶解室34aを形成したガス溶解部34を設置し、電磁弁17を備えた通路17aでガス分離部33に接続し、ガス分離部33にてサンプル水4から分離されたトリハロメタンガスをガス溶解部34のガス溶解室34aに取り込み、キャリア液12にトリハロメタンガスを溶解させるように構成したので、図5に示される従来技術のようなガス溶解膜25が不要となる。
これにより、上記従来技術において特に問題となっていたガス溶解膜の撥水性の低下が無くなり、トリハロメタン分析装置の安定機能が保持されるとともに耐久性が向上し、高い信頼性が維持できることとなった。
【0036】
[第3実施形態]
図3は本発明の第3実施形態に係るトリハロメタン分析装置の全体構成を示す系統図である。
この第3施形態においては、図2に示される第2実施形態に対して、図3に示すように、ガス分離部の構成を膜を用いない構造に変えたものであり、ガス溶解部の構成は上記第2実施形態と同様である。従って、かかる第3実施形態では、ガス分離部、ガス溶解部の双方に膜を用いない構造となる。
図3において、ガス分離部(直接ガス分離チャンバー)43は、内部にガス分離室43bが形成された容器43aと大気開放弁15とにより構成されており、サンプル水4中のトリハロメタンガスを加熱手段13の加熱により脱気分離するように構成されている。
そして、この第3実施形態では、加熱手段13を容器43aの底壁に接して設置し、ガス分離室43bの底部に溜まったサンプル水4を加熱脱気してトリハロメタンガスを分離するように構成されている。
その他の構成は、上記第2実施形態(図2)と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示している。
【0037】
次に、第3実施形態に係るトリハロメタン分析装置の動作手順について説明する。
先ず、電磁弁1及び電磁弁2を開き、送液ポンプ3でキャリア液12をガス溶解部34のガス溶解室34aへ送る。それと同時に電磁弁6及び電磁弁5を開き、送液ポンプ7でサンプル水4をガス分離部43のガス分離室43bへ送る。
ガス分離室43bの底部に溜まったサンプル水4は、容器43aの底壁に接して設置した加熱手段13によって加熱脱気され、トリハロメタンガスが分離されて、ガス分離室43bの上部に溜まる。
【0038】
次いで、電磁弁17を開き、圧力計19aを目視しながら電磁弁20及び電磁弁19の開度を調整してエアポンプ21を動作させ、ガス溶解室34a内を負圧に減圧すると、ガス分離室43b内のトリハロメタンガスは通路17aを通ってガス溶解室34a内に導入され、ガス溶解室34aに供給されているキャリア液12に溶解することになる。
トリハロメタンガスを溶解させたトリハロメタンガス溶解キャリア液を次工程である反応部9に送る際には、電磁弁17及び電磁弁18を閉じ、圧力計19aを目視しながら電磁弁20及び電磁弁19の開度を調整してエアポンプ21を動作させ、ガス溶解室34a内を正圧にして、ガス溶解室34a内のトリハロメタンガス溶解キャリア液を反応部9に圧送する。
【0039】
以上の第3実施形態によれば、ガス分離部43を、加熱手段13を容器43aの底壁に接して設置し、ガス分離室43bの底部に溜まったサンプル水4を加熱脱気してトリハロメタンガスを分離するように構成することにより、膜を用いることなくサンプル水4からトリハロメタンガスを分離可能となるとともに、上記第2実施形態と同様に、ガス分離部43とは別個に、容器35内にガス溶解室34aを形成したガス溶解部34を設置して、電磁弁17を備えた通路17aでガス分離部43に接続し、ガス分離部43にてサンプル水4から分離されたトリハロメタンガスをガス溶解部34のガス溶解室34aに取り込み、キャリア液12にトリハロメタンガスを溶解させるように構成したので、図5に示される従来技術のようなガス分離膜8及びガス溶解膜25の双方が不要となる。
【0040】
これにより、上記従来技術において特に問題となっていたサンプル水4に含まれる微細なゴミや夾雑物によるガス分離膜の劣化、及びガス溶解膜の撥水性の低下が一切無くなり、トリハロメタン分析装置の安定機能が保持されるとともに耐久性が向上し、高い信頼性が維持できることとなった。
【0041】
[第4実施形態]
図4は本発明の第4実施形態に係るトリハロメタン分析装置の全体構成を示す系統図である。
この第4実施形態においては、図4に示すように、1つの容器400内に、サンプル水4からトリハロメタンガスを直接分離させる2つのガス分離室41,41を連通して設けるとともに、該ガス分離室41,41に挟まれてガス溶解室42を設け、各ガス分離室41,41の外側に該ガス分離室41,41内のサンプル水4を加熱してトリハロメタンガスを分離せしめる加熱手段13,13を設けている。
上記各ガス分離室41,41とガス溶解室42とは、両者を仕切る隔壁41c,41cの上部に穿孔された通路41a,41aを介して連通され、ガス分離室41,41で分離されたトリハロメタンガスが通路41a,41aを通ってガス溶解室42に流入するようになっている。
【0042】
なお、26は、トリハロメタンガスをサンプル水4から分離する際に容器400内を密閉し、あるいはエアパージ時等に容器400内を大気開放するために用いられる電磁弁である。25は容器400内を空気でパージするためのエアポンプであり、エアポンプ25と容器400内とを接続する通路25cを開閉する電磁弁25b及び電磁弁26を開き、エアポンプ25からの空気で容器400内をパージするようになっている。28は容器400内からの排水通路52aを開閉する電磁弁、25aは通路25cの圧力を計測する圧力計である。
その他の構成は、上記第1実施形態(図1)と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示している。
【0043】
次に、第4実施形態に係るトリハロメタン分析装置の動作手順について説明する。
先ず、電磁弁1及び電磁弁2を開き、送液ポンプ3でキャリア液12を容器400内のガス溶解室42へ送る。それと同時に電磁弁6及び電磁弁5を開き、送液ポンプ7でサンプル水4を互いに連通されたガス分離室41,41へ送る。
そして、ガス分離室41,41の底部に溜まったサンプル水4は、容器400の底壁に接して設置した加熱手段13,13によって加熱脱気され、トリハロメタンガスが分離されて、通路41a,41aを通ってガス溶解室42に流入する。
そして、トリハロメタンガスは、ガス溶解室42に供給されているキャリア液12に溶解することになる。
【0044】
トリハロメタンガスを溶解させたトリハロメタンガス溶解キャリア液を次工程である反応部9に送る際には、電磁弁26を閉じ、電磁弁1及び電磁弁2を開き送液ポンプ3を作動させて、ガス溶解室42内のトリハロメタンガス溶解キャリア液を反応部9に圧送する。
【0045】
以上の第4実施形態によれば、1つの容器400内にガス分離室41,41とガス溶解室42とを設けて、両者の隔壁41c,41cに設けた通路41a,41aを介してガス分離室41,41とガス溶解室42とを連通し、容器400の底壁に接して設置した加熱手段13,13によりガス分離室41,41の底部に溜まったサンプル水4を加熱脱気してトリハロメタンガスを分離するように構成することにより、膜を用いることなくサンプル水4からトリハロメタンガスを分離可能となるとともに、ガス分離室41,41にてサンプル水4から分離されたトリハロメタンガスを隣り合うガス溶解室42に取り込み、キャリア液12に該トリハロメタンガスを溶解させるように構成したので、図5に示される従来技術のようなガス分離膜8及びガス溶解膜25の双方が不要となるとともに、1つの容器400内にガス分離室41,41とガス溶解室42とを両者の隔壁41c,41cに設けた通路41a,41aを介して連通して設けたことにより、構造が簡単でかつコンパクトになる。
【0046】
これにより、1つの容器400内にガス分離室41,41とガス溶解室42とを設けるという、きわめて簡単でかつコンパクトな構造でもって、上記従来技術において特に問題となっていたサンプル水に含まれる微細なゴミや夾雑物によるガス分離膜の劣化、及びガス溶解膜の撥水性の低下が一切無くなり、トリハロメタン分析装置の安定機能が保持されるとともに耐久性が向上し、高い信頼性が維持できることとなった。
【0047】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態に係るトリハロメタン分析装置の全体構成を示す系統図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るトリハロメタン分析装置の全体構成を示す系統図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るトリハロメタン分析装置の全体構成を示す系統図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係るトリハロメタン分析装置の全体構成を示す系統図である。
【図5】従来技術に係るトリハロメタン分析装置の全体構成を示す系統図である。
【符号の説明】
【0049】
1,2,5,6 電磁弁
3,7 送液ポンプ
4 サンプル水
8 ガス分離膜
9 反応部
10 検出部
12 キャリア液
13 加熱手段
32 容器
33 ガス分離部(ガス分離チャンバー)
34 ガス溶解部
34a ガス溶解室
35 容器
36 ガス分離室
37 ガス溶解室
39 容器
41 ガス分離室
42 ガス溶解室
43 ガス分離部(直接ガス分離チャンバー)
43a 容器
43b ガス分離室
360 ガス分離部(ガス分離チャンバー)
370 ガス溶解部
400 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリハロメタンを含むサンプル水からトリハロメタンガスを分離させてキャリア液に溶解させ、このトリハロメタンガス溶解キャリア液を加熱してトリハロメタンをニコチン酸アミドと反応させるように構成されたトリハロメタン分析装置において、前記サンプル水からトリハロメタンガスを分離する膜を備えたガス分離チャンバーと、前記ガス分離チャンバーを加熱し一定温度に維持する加熱手段と、ニコチン酸アミド溶液と水酸化ナトリウムとの混合液からなる前記キャリア液を収容し前記トリハロメタンガスを前記キャリア液に溶解させる容器と、該容器と前記ガス分離チャンバーとを互いに連結する連結手段とを備えたことを特徴とするトリハロメタン分析装置。
【請求項2】
トリハロメタンを含むサンプル水からトリハロメタンガスを分離させてキャリア液に溶解させ、このトリハロメタンガス溶解キャリア液を加熱してトリハロメタンをニコチン酸アミドと反応させるように構成されたトリハロメタン分析装置において、トリハロメタンが含まれる前記サンプル水から前記トリハロメタンガスを直接分離する直接ガス分離チャンバーと、前記直接ガス分離チャンバーを加熱し一定温度に維持する加熱手段と、ニコチン酸アミド溶液と水酸化ナトリウムとの混合液からなる前記キャリア液を収容し前記トリハロメタンガスを前記キャリア液に溶解させる容器と、該容器と前記直接ガス分離チャンバーとを互いに連結する連結手段とを備えたことを特徴とするトリハロメタン分析装置。
【請求項3】
前記キャリア液を保持するため、前記容器内を真空にする手段と加圧する手段とを備ええたことを特徴とする請求項1または2に記載のトリハロメタン分析装置。
【請求項4】
前記ガス分離チャンバー内の上部に、前記サンプル水をガス分離膜を通すことにより前記トリハロメタンガスを分離するガス分離室を形成し、前記ガス分離チャンバー内の前記ガス分離膜の下方に前記キャリア液が供給されるガス溶解室を形成し、前記ガス分離室にて前記サンプル水から分離された前記トリハロメタンガスを前記ガス溶解室内の前記キャリア液に溶解させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のトリハロメタン分析装置。
【請求項5】
前記容器を前記ガス分離チャンバーとは別個に設置し、前記容器内に前記ガス分離チャンバーにて前記サンプル水から分離された前記トリハロメタンガスを前記キャリア液に溶解させるガス溶解室を形成し、該ガス溶解室と前記ガス分離チンバーとを前記連結手段で連結したことを特徴とする請求項1に記載のトリハロメタン分析装置。
【請求項6】
前記直接ガス分離チャンバーを、該直接ガス分離チャンバーの底壁近傍に設置した加熱手段により前記直接ガス分離チャンバーの底部に溜まった前記サンプル水を加熱脱気して前記トリハロメタンガスを分離するように構成するとともに、前記容器を前記直接ガス分離チャンバーとは別個に設置して前記連結手段を介して前記直接ガス分離チャンバーと接続し、前記容器内に前記直接ガス分離チャンバーにて前記サンプル水から分離された前記トリハロメタンガスを前記キャリア液に溶解させるガス溶解室を形成したことを特徴とする請求項2に記載のトリハロメタン分析装置。
【請求項7】
1つの共通容器内に前記直接ガス分離チャンバーとガス溶解室とを隔壁に設けた通路を介して連通して設け、前記共通容器の前記直接ガス分離チャンバーの底壁近傍に設置した加熱手段により前記直接ガス分離チャンバーの底部に溜まった前記サンプル水を加熱脱気して前記トリハロメタンガスを分離するように構成し、前記直接ガス分離チャンバーにて前記サンプル水から分離された前記トリハロメタンガスを前記通路を通して前記ガス溶解室に導入して前記キャリア液に溶解させるように構成したことを特徴とする請求項2に記載のトリハロメタン分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−157791(P2008−157791A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347786(P2006−347786)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(507291316)富士電機水環境システムズ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】