説明

トリフェニレン化合物の製造方法

【課題】低コスト且つ工業的規模での量産が実施可能であり、環境への負荷を可能な限り低減した高収率である2,3,6,7,10,11−ヘキサ置換トリフェニレン化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】2価又は3価の鉄イオンを含む化合物の存在下、1,2−ジ置換ベンゼン化合物の3量化反応により、トリフェニレン化合物を製造する方法において、該反応においてカルボン酸エステル類、ラクトン類、炭酸エステル類及び亜硫酸エステル類からなる群から選択される少なくとも1種の反応溶媒を用いることを特徴とする2,3,6,7,10,11−ヘキサ置換トリフェニレン化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子、有機電界発光素子、光電変換素子、電池等のエレクトロニクス分野で使用される機能性有機材料及びその中間体原料である2,3,6,7,10,11−ヘキサ置換トリフェニレン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子はパーソナルコンピューターや薄型テレビなどに幅広く用いられており、関連する素材や装置の開発が盛んに進められている。液晶素材の中核的な材料である液晶化合物も同様に開発が活発に進められており、従来からよく利用されている棒状の液晶化合物に加え、最近ではディスコティック液晶化合物が注目を浴びるようになった。その代表的な化合物としてトリフェニレン誘導体が知られており、その高い配向性と屈折率異方性を利用して光学異方性材料として活発な研究が行われている。特に2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンはその光学異方性素材中間体として重要な化合物の1つとなっている。
一方、トリフェニレン化合物はその高い配向性に起因して優れた電荷輸送能力を有することが知られており、2,3,6,7,10,11−ヘキサ置換トリフェニレン化合物をホール輸送材料やホール注入材料に用い、種々の有機素材と適切な接触状態で構成した有機電界発光素子や光電変換素子などの有機電子デバイスも種々提案されている。
その他にも、トリフェニレン化合物と金属塩を含有する色素増感太陽電池や二次電池などのイオン伝導性固体電解質の利用なども研究されるなど、トリフェニレン化合物はエレクトロニクス分野で広く研究されている有機材料である。
【0003】
2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの製造方法の1つに、1,2−ジメトキシベンゼンを3量化して2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレンを合成し、その後に脱アルキル化する方法が知られている。第1工程の3量化反応では、塩化メチレン中で五塩化モリブデンを使用する方法(非特許文献1)、ハロゲン化炭化水素溶媒中で塩化第二鉄を使用する方法(特許文献1)等が提案されている。しかし、廃棄物の減量化を目指し、有害な溶剤や反応剤等を可能な限り用いないクリーンな化学反応が求められている中、含ハロゲン溶媒を用いる方法は廃液処理の問題で環境に負荷がかかり、工業的な量産方法としては好ましくない。
第2工程の脱アルキル化反応では、脱メチル化剤に三臭化ホウ素や臭化水素酸、ヨウ化水素酸等を使用する方法が知られている(特許文献2,3)。しかし、ホウ素やヨウ素化合物は一般的に高価であり、また腐食性が大きいことから工業スケールでの製造では問題があった。更に、脱アルキル化反応では過剰のハロゲン化水素酸を使用するため、やはり反応後処理時に大量の廃酸が発生することが大きな問題であった。
【0004】
含ハロゲン溶媒や高価な原料を用いない2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの製造方法として、硫酸中カテコールを過硫酸塩や酸化鉄(III)の存在下で反応する方法が開示されている(特許文献4)。この方法は製造工程を簡略化できる利点はあるものの、硫酸を溶剤量使用するため特殊設備が必要なこと、反応時に塩化水素が大量に生成すること、反応後処理時に大量の廃酸が発生すること等大きな問題があり、また収率も満足のいくものではない。
一方、ベンゾ[1,3]ジオキソールを3量化して対応するトリフェニレン化合物を合成し、次いで2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン化合物を得る方法(特許文献5)が開示されている。また、セリウム(IV)化合物や鉄(III)化合物の存在下、ルイス塩基性非水化合物を共存して1,2−ジ置換ベンゼンおよびベンゾ[1,3]ジオキソールを3量化する方法(特許文献6)も開示されている。しかしながら、これらの方法でも、メチレンジクロライドやクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒が使用されており、廃液処理の問題は依然として改善されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−40596号公報
【特許文献2】特表平9−502164号公報
【特許文献3】特開平8−119894号公報
【特許文献4】国際公開第2005/037754号
【特許文献5】特開2005−314335号公報
【特許文献6】特開2005−162628号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「シンレット」(Synlett)、2002年、第4号、622−624頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前記の問題点、特に環境への負荷を可能な限り低減した低コスト且つ工業的規模での量産が実施可能な、2,3,6,7,10,11−ヘキサ置換トリフェニレン化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の事情に鑑み、ベンゾ[1,3]ジオキソールの3量化方法について鋭意検討した結果、ある特定の反応溶媒を用いた場合、含ハロゲン溶媒や大量の酸を用いることなしに、目的物のトリフェニレン化合物を従来法と遜色無い収率で得られることを見出した。次いで、その反応系に無機過酸化物塩またはハロゲンオキソ酸塩を添加することにより、粗収率が飛躍的に向上することも見出した。更には、本発明の3量化方法は他の1.2−ジ置換ベンゼンの3量化反応においても有効であり、顕著に収率が向上することを見出し本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下によって達成される。
(i)2価又は3価の鉄イオンを含む化合物の存在下、ベンゾ[1,3]ジオキソール(a)の3量化反応を行い、トリフェニレン化合物(b)を製造する方法において、該反応において、カルボン酸エステル類、ラクトン類、炭酸エステル類及び亜硫酸エステル類からなる群から選択される少なくとも1種の反応溶媒(以降、「特定反応溶媒」ともいう)を用いることを特徴とするトリフェニレン化合物の製造方法。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
(ii)無機過酸化物塩及びハロゲンオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の共存下で反応させることを特徴とする(i)に記載のトリフェニレン化合物の製造方法。
(iii)2価又は3価の鉄イオンを含む化合物の存在下、カルボン酸エステル類、ラクトン類、炭酸エステル類及び亜硫酸エステル類からなる群から選択される少なくとも1種の反応溶媒を用いてベンゾ[1,3]ジオキソール(a)からトリフェニレン化合物(b)を製造し、次いで2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン化合物へ導くことを特徴とする2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン化合物の製造方法。
(iv)2価又は3価の鉄イオンを含む化合物の存在下、一般式(c)で表わされる1,2−ジ置換ベンゼン化合物の3量化反応を行い、一般式(d)で表されるトリフェニレン化合物を製造する方法において、該反応において、カルボン酸エステル類、ラクトン類、炭酸エステル類及び亜硫酸エステル類からなる群から選択される少なくとも1種の反応溶媒を用いることを特徴とするトリフェニレン化合物の製造方法。
【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
式中、R1及びR2は各々独立して、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、へテリルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキル及び/又はアリール置換カルバモイルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニルチオ基、アリールカルボニルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキル及び/又はアリール置換カルバモイル基、アルキル及び/又はアリール置換アミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキル及び/又はアリール置換シリルオキシ基、アルキル及び/又はアリール置換ホスフィノイルオキシ基、アルキル及び/又はアリール置換ホスフィノチオイルオキシ基、ハロゲン原子を表す。これらの各基は置換基を有していてもよい。
なお、上記基の中でアルキル基を有する基については、該アルキル基は、該アルキル基中の1個以上のメチレン基が、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−で置き換わった基であってもよい。
また、隣接するR1とR2とが結合して、炭素原子及びヘテロ原子から選ばれる原子を骨格と4〜18員環を形成してもよく、形成された4〜18員環は置換基を有していてもよい。
但し、R1とR2は同時にヒドロキシ基を表さない。
(v)無機過酸化物塩及びハロゲンオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の共存下で反応させることを特徴とする(iv)に記載のトリフェニレン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法によれば、液晶表示素子、有機電界発光素子、光電変換素子、電池等のエレクトロニクス分野で用いられる機能性有機材料やその中間体原料であるトリフェニレノ[2,3−d:6,7−d’:10,11−d’’] トリス(1,3)ジオキソール(化合物(b))及び2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン化合物、更には2,3,6,7,10,11−ヘキサ置換トリフェニレン化合物(化合物(d))を、低コスト且つ環境への負荷を低減した工業的スケールで生産可能な、高収率で提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明について説明する。
本発明においては、ベンゾ[1,3]ジオキソールの3量化反応の酸化剤として、2価又は3価の鉄イオンを含む化合物を用いる。具体的には、フッ化鉄(II)、フッ化鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(II)、 ヨウ化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、四酸化三鉄(II、III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、過塩素酸鉄(II)、過塩素酸鉄(III)、硫酸アンモニウム鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(III)、酸化タングステン酸鉄(III)、四バナジン酸鉄(III)、セレン化鉄(II)、三酸化チタン鉄(II)、五酸化チタン二鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化鉄(III)、りん化二鉄(II)、りん化三鉄(II)、りん化鉄(III)などの無機鉄化合物;酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、ぎ酸鉄(II)、三ぎ酸鉄(III)、酒石酸鉄(II) 、酒石酸鉄(III)ナトリウム、乳酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、シュウ酸鉄(III)、クエン酸アンモニウム鉄(III)、ラウリン酸鉄(III)、ステアリン酸鉄(III)、三パルミチン酸鉄(III)、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)ジアクア鉄(II)、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、トリス(オキサラト)鉄(III)酸カリウム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)鉄(III)、p−トルエンスルホン酸鉄(III)、ジメチルジチオカルバミン酸鉄(III)、ジエチルジチオカルバミン酸鉄(III)、フェロセン等の有機鉄化合物が挙げられる。これらは無水物でも水和物でも使用可能である。またこれらの中から2種以上の鉄化合物を適当な混合比で併用することも可能である。
【0017】
これらの中でも3価の鉄イオンを含む化合物が好ましく、より好ましくはフッ化鉄(III)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(III)、酸化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、水酸化鉄(III)、過塩素酸鉄(III)、硫酸アンモニウム鉄(III)、酢酸鉄(III)、三ぎ酸鉄(III)、酒石酸鉄(III)ナトリウム、シュウ酸鉄(III)、クエン酸アンモニウム鉄(III)、ラウリン酸鉄(III)、ステアリン酸鉄(III)、三パルミチン酸鉄(III)、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、トリス(オキサラト)鉄(III)酸カリウム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)鉄(III)、p−トルエンスルホン酸鉄(III)である。更に好ましくは塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、酢酸鉄(III)、三ぎ酸鉄(III)、シュウ酸鉄(III)、ラウリン酸鉄(III)、ステアリン酸鉄(III)、三パルミチン酸鉄(III)、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、p−トルエンスルホン酸鉄(III)であり、特に好ましくは塩化鉄(III)であり、無水塩化鉄(III)がもっとも好ましい。
鉄化合物の使用量は、原料であるベンゾ[1,3]ジオキソール1モルに対し、通常1.0〜10モルの範囲であるが、好ましくは2.0〜8.0モル、より好ましくは3.0〜6.0モルである。
【0018】
次に、本発明で用いる反応溶媒について説明する。
本発明で用いる反応溶媒はカルボン酸エステル類、ラクトン類、炭酸エステル類及び亜硫酸エステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
カルボン酸エステル類は、例えば、下記一般式(A)〜(C)のいずれかで表される化合物である。
【0019】
【化5】


【0020】
R3及びR4は各々独立して、炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状アルキル基を表す。
【0021】
【化6】

【0022】
R5及びR8は各々独立して炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状アルキル基を表す。R6及びR7は各々独立して水素原子、炭素数1〜6の直鎖、分岐又は環状アルキル基を表す。mは0〜10の整数を表す。
【0023】
【化7】

【0024】
R9及びR12は各々独立して炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状アルキル基を表す。R10及びR11は各々独立して水素原子、炭素数1〜6の直鎖、分岐又は環状アルキル基を表す、nは0〜20の整数を表す。
【0025】
前記一般式(A)で表わされる化合物としては例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸シクロヘキシルメチル、酢酸ヘプチル、酢酸n−オクチル、酢酸ノニル、酢酸デシル、酢酸ドデシル、酢酸トリデシル、酢酸ペンタデシル、酢酸ヘプタデシル、酢酸オクタデシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸3,5,5−トリメチルヘキシル、酢酸2−メチルブチル、酢酸2−メチルペンチル、酢酸4−メチル−2−ペンチル、酢酸3−メチルペンチル、酢酸5−メチル−3−ヘプチル、酢酸3−メチルヘキシル、酢酸2−イソプロピル−5−メチルヘキシル、酢酸2−ノニル等の酢酸エステル類(R3がメチル基);プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸tert−ブチル等のプロピオン酸エステル類(R3がエチル基);酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、酪酸sec−ブチル、酪酸アミル、酪酸イソアミル、酪酸シクロヘキシル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、イソ酪酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、イソ酪酸3−フェニルプロピル、酪酸2−エチル、酪酸2−エチルヘキシル等の酪酸エステル類(R3がn−プロピル基又はiso−プロピル基);2−メチル酪酸プロピル、2−メチル酪酸イソプロピル、DL−2−メチル酪酸エチル、DL−2−メチル酪酸2−メチルブチル等の酪酸エステル類(R3がsec−ブチル基);吉草酸メチル、吉草酸エチル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸イソブチル、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸シクロヘキシル等の吉草酸エステル類(R3がn−ブチル基又はiso−ブチル基);ピバル酸メチル、ピバル酸エチル等のピバル酸エステル類(R3がtert−ブチル基); 2−メチル吉草酸エチル、3−メチル吉草酸エチル、2−メチル吉草酸ブチル等の吉草酸エステル類(R3が分岐ペンチル基); tert−ブチル酢酸メチル、tert−ブチル酢酸エチル等のtert−ブチル酢酸エステル類(R3がneo−ペンチル基);ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸イソプロピル、ヘキサン酸ブチル、ヘキサン酸イソブチル、ヘキサン酸アミル、ヘキサン酸イソアミル等のヘキサン酸エステル類(R3がn−ペンチル基);2−エチルヘキサン酸ブチル等のヘキサン酸エステル類(R3が1−エチルペンチル基);ヘプタン酸メチル、ヘプタン酸エチル等のヘプタン酸エステル類(R3がn−ヘキシル基);オクタン酸メチル、オクタン酸エチル、オクタン酸イソプロピル、オクタン酸イソブチル、オクタン酸ブチル、オクタン酸アミル、オクタン酸イソアミル等のオクタン酸エステル類(R3がn−ヘプチル基);シクロヘキシル酢酸メチル、シクロヘキシル酢酸エチル等のシクロヘキシル酢酸エステル類(R3がシクロヘキシル基);ノナン酸メチル、ノナン酸エチル等のノナン酸エステル類(R3がn−オクチル基);デカン酸メチル、デカン酸イソプロピル、デカン酸ブチル、デカン酸イソブチル、デカン酸アミル、デカン酸イソアミル、デカン酸デシル等のデカン酸エステル類(R3がn−ノニル基);ウンデカン酸メチル、ウンデカン酸エチル等のウンデカン酸エステル類(R3がn−デシル基);ラウリン酸メチル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸イソブチル、ラウリン酸アミル、ラウリン酸イソアミル等のラウリン酸エステル類(R3がn−ウンデシル基);トリデカン酸メチル、トリデカン酸エチル等のトリデカン酸エステル類(R3がn−ドデシル基);ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソブチル等のミリスチン酸エステル類(R3がn−トリデシル基);ペンタデカン酸メチル、ペンタデカン酸エチル等のペンタデカン酸エステル類(R3がn−テトラデシル基);パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、等のパルミチン酸エステル類(R3がn−ペンタデシル基);ヘプタデカン酸メチル、ヘプタデカン酸エチル等のヘプタデカン酸エステル類(R3がn−ヘキサデシル基);ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ドデシル等のステアリン酸エステル類(R3がn−ヘプタデシル基)が挙げられる。
【0026】
前記一般式(B)で表わされる化合物は、アルキレングリコールジエステル類に属する化合物群である。具体的には、1,1−エタンジオールジ酢酸(m=0の場合);エチレングリコールジ酢酸、エチレングリコールジラウリン酸、エチレングリコールジミリスチン酸、エチレングリコールジパルミチン酸、エチレングリコールジステアリン酸、エチレングリコールジオレイン酸(m=1の場合);プロピレングリコールジ酢酸、プロピレングリコールジラウリン酸、プロピレングリコールジミリスチン酸、プロピレングリコールジパルミチン酸、プロピレングリコールジステアリン酸、プロピレングリコールジオレイン酸(m=2の場合);テトラメチレングリコールジ酢酸、テトラメチレングリコールジラウリン酸、テトラメチレングリコールジミリスチン酸、テトラメチレングリコールジパルミチン酸、テトラメチレングリコールジステアリン酸、テトラメチレングリコールジオレイン酸(m=3の場合);1,5−ペンタメチレングリコールジ酢酸(m=4の場合);1,6−ヘキサメチレングリコールジ酢酸、ヘキサメチレングリコールジラウリン酸、ヘキサメチレングリコールジミリスチン酸、ヘキサメチレングリコールジパルミチン酸、ヘキサメチレングリコールジステアリン酸、ヘキサメチレングリコールジオレイン酸、2,5−ヘキサメチレングリコールジ酢酸(m=5の場合);1,7−ヘプタメチレングリコールジ酢酸(m=6の場合);1,8−オクタメチレングリコールジ酢酸(m=7の場合);1,9−ノナメチレングリコールジ酢酸(m=8の場合);1,10−デカメチレングリコールジ酢酸(m=9の場合);1,11−ウンデカメチレングリコールジ酢酸(m=10の場合)等が挙げられる。
【0027】
前記一般式(C)で表わされる化合物は、脂肪族二酸ジエステル類に属する化合物群である。具体的には、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジ−tert−ブチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジヘキシル、エチルマロン酸ジエチル等のマロン酸ジエステル類(n=0の場合);こはく酸ジメチル、こはく酸ジエチル、こはく酸ジイソプロピル、こはく酸ジブチル等のこはく酸ジエステル類(n=1の場合);グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル等のグルタル酸ジエステル類(n=2の場合);アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のアジピン酸ジエステル類(n=3の場合);ピメリン酸ジメチル、ピメリン酸ジエチル等のピメリン酸ジエステル類(n=4の場合);スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、スベリン酸ジオクチル等のスベリン酸ジエステル類(n=5の場合);アゼライン酸ジメチル、アゼライン酸ジエチル等のアゼライン酸ジエステル類(n=6の場合);セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル等のセバシン酸ジエステル類(n=7の場合);ドデカン二酸ジメチル、ドデカン二酸ジエチル等のドデカン二酸ジエステル類(n=9の場合);テトラデカン二酸ジメチル等のテトラデカン二酸ジエステル類(n=11の場合);ヘキサデカン二酸ジメチル等のヘキサデカン二酸ジエステル類(n=13の場合);オクタデカン二酸ジメチル等のオクタデカン二酸ジエステル類(n=15の場合)等が挙げられる。
一般式(A)〜(C)で表されるカルボン酸エステル類は種々市販されており、容易に入手可能である。
次に、本発明で反応溶媒に用いるラクトン類は、例えば、下記一般式(D)で表される化合物である。
【0028】
【化8】


【0029】
式中、R13は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数4〜7の環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子を表す。pは0〜6の整数を表す。qは0〜3の整数を表す。
【0030】
一般式(D)で表される化合物は、例えばβ−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン等の4員環ラクトン類(q=0);γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、α−フルオロ−γ−ブチロラクトン、α−クロロ−γ−ブチロラクトン、β−ブロモ−γ−ブチロラクトン、α,α−ジフルオロ−γ−ブチロラクトン、α,α−ジクロロ−γ−ブチロラクトン、β−ニトロ−γ−ブチロラクトン、β−シアノ−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−ヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−ヘプチル−γ−ブチロラクトン、α,α−ジメチル−γ−ブチロラクトン、γ−フェニル−γ−ブチロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−ヘプタノラクトン、γ−オクタノラクトン、γ−ノナノラクトン、γ−デカノラクトン、γ−メチル−γ−デカノラクトン、γ−ウンデカノラクトン、γ−ドデカノラクトン、γ−クロトノラクトン、3−メチル−2(5H)−フラノン、4−メチル−2(5H)−フラノン等の5員環ラクトン類(q=1);δ−バレロラクトン、δ−オクタノラクトン、δ−ヘキサノラクトン、δ−ノナノラクトン、δ−デカノラクトン、δ−ドデカノラクトン、δ−ウンデカノラクトン、δ−トリデカノラクトン、δ−テトラデカノラクトン等の6員環ラクトン類(q=2);ε−カプロラクトン等の7員環ラクトン類(q=3)等が挙げられる。
【0031】
上記のラクトン類は種々市販されており、容易に入手できる。また、一般的に知られている合成法(J.Org. Chem.,第35巻、第10号、3574頁(1970年);J. C. S. Perkin I. 2037頁(1977年);J. Am. Chem. Soc.,1986年、第108巻、4943〜4952頁等)で調製し、それを使用することもできる。
次に、本発明で用いる炭酸エステル類は、例えば、下記一般式(E)又は(F)で表される化合物である。
【0032】
【化9】

【0033】
式中、R14及びR15は、各々独立して炭素数1〜20のハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル基を表す。
【0034】
【化10】

【0035】
式中、R16は炭素数1〜10のハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖又は分岐アルキル基、炭素数4〜7の環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子を表す。rは0〜4の整数を表す。sは1〜2の整数を表す。rが2以上の場合、複数のR16は同一でも異なってもよい。
【0036】
前記一般式(E)で表わされる化合物は鎖状炭酸エステル類であり、一般式(F)で表わされる化合物は5〜6員環の環式炭酸エステル類である。
一般式(E)で表わされる鎖式炭酸エステル類は、例えば炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルプロピル、炭酸メチルイソプロピル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルブチル、炭酸ジブチル、炭酸エチルプロピル、炭酸メチルフルオロエチル等が挙げられる。
前記一般式(F)で表される5員環の環式炭酸エステル(s=1の化合物)としては、例えば炭酸エチレン、炭酸4,4−ジメチルエチレン、炭酸4,4,5−トリメチルエチレン、炭酸4,4,5,5−テトラメチルエチレン、炭酸4−フルオロエチレン、炭酸4−クロロエチレン、炭酸4−ブロモエチレン、炭酸4,5−ジフルオロエチレン、炭酸4,4−ジクロロエチレン、炭酸4,5−ジブロモエチレン、炭酸4−トリフルオロメチルエチレン、炭酸4−ニトロエチレン、炭酸4−シアノエチレン等の炭酸エチレン類;炭酸プロピレン、炭酸4−フルオロプロピレン、炭酸4−クロロプロピレン、炭酸4−ブロモプロピレン、炭酸4,4−ジフルオロプロピレン、炭酸4,4−ジクロロプロピレン、炭酸4,5−ジブロモプロピレン、炭酸4,4−ジフルオロ−5−フルオロプロピレン、炭酸4,4,5−トリクロロプロピレン、炭酸4,4,5−トリブロモプロピレン、炭酸4−ニトロプロピレン、炭酸4−シアノプロピレン等の炭酸プロピレン類;炭酸1,2−ブチレン、炭酸2,3−ブチレン、炭酸イソブチレン等の炭酸ブチレン類;炭酸1,2−ペンチレン、炭酸2,3−ペンチレン等の炭酸ペンチレン類;炭酸スチレン;炭酸ビニレン等が挙げられる。
前記一般式(F)で表される6員環の環式炭酸エステル(s=2の化合物)としては、例えば炭酸トリメチレン、炭酸ジメチルトリメチレン等の炭酸トリメチレン類が挙げられる。
【0037】
これらの炭酸エステル類も種々市販されており、入手が容易である。また、一般的に知られている合成法(例えば、J.Org. Chem.,第39巻、38頁(1974年);Chem.Pharm.Bull.,第23巻、3017頁(1975年);Chem.Pharm.Bull.,第36巻、394頁(1988年); 等)により調製して用いることも出来る。
次に、本発明で用いる亜硫酸エステル類は、例えば、下記一般式(G)〜(H)のいずれかで表される化合物である。
【0038】
【化11】

【0039】
式中、R17及びR18は、炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状アルキル基を表す。
【0040】
【化12】

【0041】
式中、R19は炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数4〜7の環状アルキル基、アルケニル基、ハロゲン原子を表す。tは0〜4の整数を表す。
【0042】
前記一般式(G)で表わされる化合物は鎖状亜硫酸エステル類であり、前記一般式(H)で表わされる化合物は5員環の環式亜硫酸エステル類である。
一般式(G)で表わされる鎖式亜硫酸エステル類としては、例えば亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチル、亜硫酸ジイソプロピル、亜硫酸ジペンチル等が挙げられる。
一般式(H)で表わされる5員環の環式亜硫酸エステル類としては、例えば亜硫酸エチレン等が挙げられる。
これらの硫酸エステル類も種々市販されており、入手が可能である。また、一般的に知られている合成法(例えば、J.Gen. Chem.USSR、第31巻、1230頁(1961年);Makromol.Chem.、第194巻、2605頁(1993年)等)により調製して用いることも出来る。
【0043】
本発明では、前記一般式(A)〜(H)で表される反応溶媒から選択される少なくとも1種を使用するが、2種以上混合して使用してもよい。溶媒種により反応速度、反応系の攪拌性及びろ過性等の状態が異なる場合があるが、その際には混合溶媒系で反応を行うことが望ましい。
上記の反応溶媒の中で、一般式(A)で表されるカルボン酸エステル類、一般式(B)で表わされるアルキレングリコールジエステル類、一般式(D)で表されるラクトン類、一般式(F)で表される環状炭酸エステル類が好ましい。より好ましくは酢酸エステル類、プロピオン酸エステル類、エリレングリコールジエステル類、プロピレングリコールジエステル類、5〜6員環のラクトン類、5員環の環式炭酸エステル類である。更に好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸3,5,5−トリメチルヘキシル、酢酸2−メチルブチル、酢酸2−メチルペンチル、酢酸4−メチル−2−ペンチル、酢酸3−メチルペンチル、酢酸5−メチル−3−ヘプチル、酢酸3−メチルヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸tert−ブチル、1,1−エタンジオールジ酢酸、エチレングリコールジ酢酸、プロピレングリコールジ酢酸、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−ヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−ヘプチル−γ−ブチロラクトン、α,α−ジメチル−γ−ブチロラクトン、γ−フェニル−γ−ブチロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−ヘプタノラクトン、γ−オクタノラクトン、γ−ノナノラクトン、γ−デカノラクトン、γ−メチル−γ−デカノラクトン、γ−ウンデカノラクトン、γ−ドデカノラクトン、δ−バレロラクトン、δ−オクタノラクトン、δ−ヘキサノラクトン、δ−ノナノラクトン、δ−デカノラクトン、δ−ドデカノラクトン、δ−ウンデカノラクトン、δ−トリデカノラクトン、δ−テトラデカノラクトン、ε−カプロラクトン、炭酸プロピレン、炭酸1,2−ブチレン、炭酸2,3−ブチレン、炭酸1,2−ペンチレン、炭酸2,3−ペンチレン、炭酸イソブチレンが挙げられる。
【0044】
反応溶媒として、上記特定反応溶媒以外の他の溶媒を併用してもよいが、全反応溶媒中特定反応溶媒を70質量%以上含有していることが好ましく、90質量%以上含有していることがより好ましい。
他の反応溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒を混合して用いる場合、他の反応溶媒の添加量は、全反応溶媒中30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
特定反応溶媒の使用量は、原料であるベンゾ[1,3]ジオキソール1モルに対し通常500ml〜3000mlの範囲であり、好ましくは700ml〜2000ml、より好ましくは1000ml〜1500mlである。
3量化反応の反応温度は通常0〜50℃であり、好ましくは5〜30℃、より好ましくは10〜20℃である。
3量化反応の反応時間は基質によるが、通常0.5〜12時間で反応が完結する。
一般式(a)で表わされる化合物を3量化する場合、基質および必要に応じて後述する共酸化剤を特定溶媒に溶解し、その溶液を内温−10〜10℃に冷却する。次いで、内温が20℃を超えないように酸化剤を分割添加する。添加終了後、内温を10〜20℃に維持し、反応を0.5〜2時間行う。反応終了後は、水や水溶性有機溶剤を添加し、分液した有機層を適宜、塩酸水溶液や食塩水溶液等で洗浄する。目的物によって、有機層をそのまま冷却して結晶をろ別するか、または有機層にアルコール等の晶析溶媒を添加し冷却して結晶をろ別する、または有機層の溶媒を留去後に晶析溶媒を添加し冷却して結晶をろ別する等、いづれかの方法で単離燥作を行う。
一般式(c)で表わされる化合物を3量化する場合も、原料投入までは前記一般式(a)の場合と同様に行う。反応条件は用いる基質にもよるが、通常は内温5〜30℃の範囲で、また反応時間は0.5〜12時間の範囲で行う。反応終了後についても、前記一般式(a)の場合と同様、一般的な単離操作を行う。
本発明は、従来の多量な含ハロゲン溶媒や酸性廃液を顕著に低減でき、このような簡単な反応、単離燥作で高収率に目的物を得ることができる。
【0045】
本発明では、カルボン酸エステル類、ラクトン類、炭酸エステル類又は亜硫酸エステル類から選択される少なくとも1種の反応溶媒中、ベンゾ[1,3]ジオキソールと、前記の酸化剤からなる反応系に、更に無機過酸化物塩又はハロゲンオキソ酸塩から選択される共酸化剤を添加して反応を行うことが好ましい。
無機過酸化物塩とは、過酸化物イオン(O2−)やペルオキシド構造(−O−O−)を有する無機アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を指す。本発明で用いる無機過酸化物塩としては、例えば過酸化リチウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウム、過酸化マグネシウム、過酸化亜鉛、等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の過酸化物;ペルオキソ炭酸ナトリウム、ペルオキソ炭酸カリウム等のペルオキソ炭酸塩;ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、OXONE(デュポン(株)の登録商標)(過硫酸水素イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン及びカリウムイオンからなる複塩)等のペルオキソ硫酸塩;ペルオキソリン酸ナトリウム、ペルオキソリン酸カリウム、ペルオキソリン酸アンモニウム等のペルオキソリン酸塩;ペルオキソホウ酸ナトリウム、ペルオキソホウ酸カリウム等のペルオキソホウ酸塩;ペルオキソクロム酸ナトリウム、ペルオキソクロム酸カリウム等のペルオキソクロム酸塩が挙げられる。
【0046】
ハロゲンオキソ酸塩とは、ハロゲン原子にヒドロシキ基とオキソ基が結合したオキソ酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を指す。本発明で用いるハロゲンオキソ酸塩としては、例えば過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸銀等の過塩素酸塩;塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、塩素酸マグネシウム等の塩素酸塩;亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸マグネシウム等の亜塩素酸塩;次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸塩;過臭素酸ナトリウム、過臭素酸カリウム、過臭素酸アンモニウム、過臭素酸カルシウム等の過臭素酸塩;臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、臭素酸アンモニウム、臭素酸カルシウム等の臭素酸塩;亜臭素酸ナトリウム等の亜臭素酸塩;次亜臭素酸リチウム、次亜臭素酸ナトリウム等の次亜臭素酸塩;過ヨウ素酸ナトリウム等の過ヨウ素酸塩;ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カルシウム、ヨウ素酸銀等のヨウ素酸塩が挙げられる。
【0047】
これらの中でも好ましくはペルオキソ硫酸塩、過塩素酸塩であり、より好ましくはペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸アンモニウムである。
これらの共酸化剤は単独で使用してもよいし、任意の2種類以上を混合して使用してもよい。また、無水物でも水和物でも使用可能である。
上記共酸化剤の使用量は、原料であるベンゾ[1,3]ジオキソール1モルに対し通常0.1モル〜5.0モルの範囲であるが、好ましくは0.5モル〜3.0モル、より好ましくは0.7モル〜2.0モルの範囲である。また、無機過酸化物塩とハロゲンオキソ酸塩とを併用する場合には、ベンゾ[1,3]ジオキソール1モルに対し総使用量として0.1モル〜5.0モル、好ましくは0.5モル〜3.0モル、より好ましくは0.7モル〜2.0モルの範囲で使用するのが好ましい。
また、共酸化剤は酸化剤1モルに対して通常0.01〜10モル、好ましくは0.05〜5.0モル、より好ましくは0.1〜2.0モルの範囲で使用するのが好ましい。
【0048】
次に、前記の方法により製造したトリフェニレン化合物(b)から、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン(f)を得る方法について説明する。本発明で得られたトリフェニレン化合物(b)は極めて高純度であり、これを製造中間体として用いることにより簡単な精製操作のみで目的物を高純度で得ることができる。
トリフェニレン化合物(b)から2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン(f)への製造方法は公知の様々な方法を用いることが出来る。トリフェニレン化合物(b)の3つのメチレンジオキシ基を開環することで、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン(f)を製造する方法の一例として、特開2005−314335号公報に記載されているように、ハロゲン溶媒中、トリフェニレン化合物(b)を分子状塩素、三塩化燐、五塩化燐又は塩化スルフリル等のハロゲン化剤と反応させて化合物(e)に誘導し、続いて水を加えて加水分解反応して2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン(f)を得る、下記に示す方法を挙げることができる。
【0049】
【化13】


【0050】
このようにして得られた目的物は再結晶などの簡単な操作で液晶素材や電子デバイス素材の中間体として十分に使用可能である。
なお、トリフェニレン化合物(b)から、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン(f)を製造する方法は、他の置換基を有するトリフェニレン化合物から2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン(f)を製造する方法に比べて、容易で、環境汚染性も小さく、安価に製造することができる。
【0051】
本発明のもう1つの特長は、種々の1,2−ジ置換ベンゼン化合物を3量化する場合にも、従来法より高収率で目的物が得られる点である。
以下に詳細に説明する。
本発明で用いる1,2−ジ置換ベンゼン化合物は下記一般式(c)で表される化合物であり、得られる3量体は下記一般式(d)で表される化合物である。
【0052】
【化14】

【0053】
【化15】


【0054】
式中、R1及びR2は各々独立して、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、へテリルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキル及び/又はアリール置換カルバモイルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニルチオ基、アリールカルボニルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキル及び/又はアリール置換カルバモイル基、アルキル及び/又はアリール置換アミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキル及び/又はアリール置換シリルオキシ基、アルキル及び/又はアリール置換ホスフィノイルオキシ基、アルキル及び/又はアリール置換ホスフィノチオイルオキシ基、ハロゲン原子を表す。これらの各基は置換基を有していてもよい。
なお、R1又はR2として挙げた上記の基がアルキル基を有する基である場合は、該アルキル基中の1個以上のメチレン基が、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−で置き換わった基であってもよい。
また、隣接するR1とR2とが結合して、炭素原子及びヘテロ原子から選ばれる原子を骨格とする4〜18員環を形成してもよく、形成された4〜18員環は置換基を有していてもよい。
但し、R1とR2は同時にヒドロキシ基を表さない。
【0055】
R1及びR2が表すアルキル基は、直鎖、分岐又は環状の何れでもよく、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等の炭素数1〜15(より好ましくは炭素数1〜8)の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。
R1及びR2が表すアリール基は、例えばフェニル、ナフチル、フェナントリル等の単環式、二環式又は三環式のアリール基が挙げられる。
【0056】
R1及びR2が表すアルコキシ基は、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、ヘプタデシルオキシ、オクタデシルオキシ、ノナデシルオキシ、イコシルオキシ等の炭素数1〜20(より好ましくは炭素数1〜15)のアルコキシ基が挙げられる。
R1及びR2が表すアリールオキシ基は、例えばフェノキシ、ナフチルオキシ等の単環式又は二環式アリールオキシ基(好ましくは5〜10員環)が挙げられる。
R1及びR2が表すヘテリルオキシ基は、例えばテトラヒドロフリルオキシ、テトラヒドロピラニルオキシ、チエニルオキシ、ピリジルオキシ等の単環式(好ましくは5〜6員環)のヘテリルオキシ基が挙げられる。
R1及びR2が表すアルキルカルボニルオキシ基は、例えばアセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、ペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ等の炭素数1〜15の直鎖、分岐又は環状アルキル基が置換したカルボニルオキシ基が挙げられる。
R1及びR2が表すアリールカルボニルオキシ基は、例えばフェニルカルボニルオキシ、ナフチルカルボニルオキシ等の単環式又は二環式アリールカルボニルオキシ基(好ましくは5〜10員環)が挙げられる。
R1及びR2が表すアルコキシカルボニルオキシ基は、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ、ペンチルオキシカルボニルオキシ、ヘキシルオキシカルボニルオキシ、オクチルオキシカルボニルオキシ等の炭素数1〜15の直鎖、分岐又は環状アルキル基が置換したオキシカルボニルオキシ基が挙げられる。
【0057】
R1及びR2が表すアルキルスルホニルオキシ基は、例えばメタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、プロパンスルホニルオキシ、ブタンスルホニルオキシ、ペンタンスルホニルオキシ、ヘキサンスルホニルオキシ、ヘプタンスルホニルオキシ、オクタンスルホニルオキシ、ノナンスルホニルオキシ、デカンスルホニルオキシ、シクロプロパンスルホニルオキシ、シクロブタンスルホニルオキシ、シクロペンタンスルホニルオキシ、シクロヘキサンスルホニルオキシ、シクロヘプタンスルホニルオキシ等の炭素数1〜15の直鎖、分岐又は環状アルキル基が置換したスルホニルオキシ基が挙げられる。
R1及びR2が表すアリールスルホニルオキシ基は、例えばフェニルスルホニルオキシ、ナフチルスルホニルオキシ等の単環式又は二環式アリールスルホニルオキシ基(好ましくは5〜10員環)が挙げられる。
R1及びR2が表すアルキル及び/又はアリール置換カルバモイルオキシ基は、例えばN−メチルカルバモイルオキシ、N−(tert−ブチル)カルバモイルオキシ、N−ドデシルカルバモイルオキシ、N−オクタデシルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ、N−ナフチルカルバモイルオキシ等の炭素数1〜20の直鎖、分岐若しくは環状アルキル基、又は単環式若しくは二環式アリール基(好ましくは5〜10員環)がモノ置換したカルバモイルオキシ基;N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジヘキシルカルバモイルオキシ、N,N−ジデシルカルバモイルオキシ、N,N−ジフェニルカルバモイルオキシ、N,N−ジナフチルカルバモイルオキシ、N−メチル−N−フェニルカルバモイルオキシ、N−エチル−N−ナフチルカルバモイルオキシ等の炭素数1〜15の直鎖、分岐若しくは環状アルキル基及び/又は単環式若しくは二環式アリール基(好ましくは5〜10員環)がジ置換したカルバモイルオキシ基が挙げられる。
【0058】
R1及びR2が表すアルキルチオ基は、例えばメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ、ノニルチオ、デシルチオ、ウンデシルチオ、ドデシルチオ、トリデシルチオ、テトラデシルチオ、ペンタデシルチオ、シクロプロピルチオ、シクロブチルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ、シクロヘプチルチオ、シクロオクチルチオ、シクロノニルチオ、シクロデシルチオ等の炭素数1〜15の直鎖、分岐又は環状アルキル基が置換したチオ基が挙げられる。
R1及びR2が表すアリールチオ基は、例えばフェニルチオ、ナフチルチオ等の単環式又は二環式アリールチオ基(好ましくは5〜10員環)が挙げられる。
R1及びR2が表すアルキルカルボニルチオ基は、例えばアセチルチオ、エチルカルボニルチオ、プロピルカルボニルチオ、ブチルカルボニルチオ、ペンチルカルボニルチオ、ヘキシルカルボニルチオ、オクチルカルボニルチオ等の炭素数1〜15の直鎖、分岐又は環状アルキル基が置換したカルボニルチオ基が挙げられる。
R1及びR2が表すアリールカルボニルチオ基は、例えばフェニルカルボニルチオ、ナフチルカルボニルチオ等の単環式又は二環式アリールカルボニルチオ基(好ましくは5〜10員環)が挙げられる。
【0059】
R1及びR2が表すアルキルスルホニル基は、例えばメタンスルホニル、エタンスルホニル、プロパンスルホニル、ブタンスルホニル、ペンタンスルホニル、ヘキサンスルホニル、ヘプタンスルホニル、オクタンスルホニル、ノナンスルホニル、デカンスルホニル、シクロプロパンスルホニル、シクロブタンスルホニル、シクロペンタンスルホニル、シクロヘキサンスルホニル、シクロヘプタンスルホニルオキシ等の炭素数1〜15の直鎖、分岐又は環状アルキル基が置換したスルホニル基が挙げられる。
R1及びR2が表すアリールスルホニル基は、例えば、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル等の単環式又は二環式アリール基が置換したスルホニル基(好ましくは5〜10員環)が挙げられる。
【0060】
R1及びR2が表すアルキル及び/又はアリール置換カルバモイル基は、例えばN−メチルカルバモイル、N−(tert−ブチル)カルバモイル、N−ドデシルカルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−ナフチルカルバモイル等の等の炭素数1〜20の直鎖、分岐若しくは環状アルキル基、又は単環式若しくは二環式アリール基(好ましくは5〜10員環)がモノ置換したカルバモイル基;N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジヘキシルカルバモイル、N,N−ジデシルカルバモイル、N−ブチル−N−メチルカルバモイル、N−エチル−N−ヘキシルカルバモイル、N,N−ジフェニルカルバモイル、N,N−ジナフチルカルバモイル、N−メチル−N−フェニルカルバモイル、N−エチル−N−ナフチルカルバモイル等の等の炭素数1〜15の直鎖、分岐若しくは環状アルキル基及び/又は単環式若しくは二環式アリール基(好ましくは5〜10員環)がジ置換したカルバモイル基が挙げられる。
【0061】
R1及びR2が表すアルキル及び/又はアリール置換アミノ基は、例えばN−メチルアミノ、N−エチルアミノ、N−プロピルアミノ、N−ブチルアミノ、N−ヘキシルアミノ、N−デシルアミノ、N−テトラデシルアミノ、N−オクタデシルアミノ、N−シクロプロピルアミノ、N−シクロヘキシルアミノ、N−フェニルアミノ、N−ナフチルアミノ等、炭素数1〜20の直鎖、分岐若しくは環状アルキル基、又は単環式若しくは二環式アリール基(好ましくは5〜10員環)がモノ置換したアミノ基;N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、N,N−ジヘキシルアミノ、N,N−ジオクチルアミノ、N,N−ジドデシルアミノ、N,N−ジオクタデシルアミノ、N−エチル−N−メチルアミノ、N−エチル−N−ブチルアミノ、N,N−ジフェニルアミノ、N,N−ジナフチルアミノ、N−メチル−N−フェニルアミノ、N−エチル−N−ナフチルアミノ等、炭素数1〜20の直鎖、分岐若しくは環状アルキル基及び/又は単環式若しくは二環式アリール基(好ましくは5〜10員環)がジ置換したアミノ基が挙げられる。
R1及びR2が表すアルキルカルボニルアミノ基は、例えばアセチルアミノ、エチルカルボニルアミノ、プロピルカルボニルアミノ、ブチルカルボニルアミノ、ペンチルカルボニルアミノ、ヘキシルカルボニルアミノ、ヘプチルカルボニルアミノ、オクチルカルボニルアミノ、ノニルカルボニルアミノ、デシルカルボニルアミノ、ウンデシルカルボニルアミノ、ドデシルカルボニルアミノ、トリデシルカルボニルアミノ、テトラデシルカルボニルアミノ、ペンタデシルカルボニルアミノ、シクロプロピルカルボニルアミノ、シクロブチルカルボニルアミノ、シクロペンチルカルボニルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、シクロヘプチルカルボニルアミノ、シクロオクチルカルボニルアミノ、シクロノニルカルボニルアミノ、シクロデシルカルボニルアミノ等の炭素数1〜15の直鎖、分岐又は環状アルキル基が置換したカルボニルアミノ基が挙げられる。
R1及びR2が表すアリールカルボニルアミノ基は、例えばフェニルカルボニルアミノ、ナフチルカルボニルアミノ等、単環式又は二環式のアリール基(好ましくは5〜10員環)が置換したカルボニルアミノ基が挙げられる。
【0062】
R1及びR2が表すアルコキシカルボニルアミノ基は、例えばメトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、プロポキシカルボニルアミノ、ブトキシカルボニルアミノ、ペンチルオキシカルボニルアミノ、ヘキシルオキシカルボニルアミノ、ヘプチルオキシカルボニルアミノ、オクチルオキシカルボニルアミノ、ノニルオキシカルボニルアミノ、デシルオキシカルボニルアミノ、ウンデシルオキシカルボニルアミノ、ドデシルオキシカルボニルアミノ等の炭素数1〜15のアルキル基が置換したオキシカルボニルアミノ基が挙げられる。
R1及びR2が表すアリールオキシカルボニルアミノ基は、例えばフェノキシカルボニルアミノ、ナフチルオキシカルボニルアミノ等、単環式又は二環式のアリール基が置換したオキシカルボニルアミノ基が挙げられる。
R1及びR2が表すアルキルスルホニルアミノ基は、例えばメチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ、プロピルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、ペンチルスルホニルアミノ、ヘキシルスルホニルアミノ、ヘプチルスルホニルアミノ、オクチルスルホニルアミノ、ノニルスルホニルアミノ、デシルスルホニルアミノ、シクロプロピルスルホニルアミノ、シクロブチルスルホニルアミノ、シクロペンチルスルホニルアミノ、シクロヘキシルスルホニルアミノ、シクロヘプチルスルホニルアミノ等の炭素数1〜15の直鎖、分岐又は環状アルキル基が置換したスルホニルアミノ基が挙げられる。
R1及びR2が表すアリールスルホニルアミノ基は、例えばフェニルスルホニルアミノ、ナフチルスルホニルアミノ等、単環式又は二環式のアリール基(好ましくは5〜10員環)が置換したスルホニルアミノ基が挙げられる。
【0063】
R1及びR2が表すアルキル及び/又はアリール置換シリルオキシ基は、例えばトリメチルシリルオキシ、tert−ブチル(ジメチル)シリルオキシ、トリイソプロピルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシ、tert−ブチル(エチル)(フェニル)シリルオキシ、エチル(ジフェニル)シリルオキシ等の炭素数1〜10(より好ましくは炭素数1〜8)の直鎖若しくは分岐アルキル基及び/又はフェニル基が置換したシリルオキシ基が挙げられる。
R1及びR2が表すアルキル及び/又はアリール置換ホスフィノイルオキシ基は、例えばジメチルホスフィノイルオキシ、ジエチルホスフィノイルオキシ、ジイソプロピルホスフィノイルオキシ、ジオクチルホスフィノイルオキシ、ジフェニルホスフィノイルオキシ、メチル(フェニル) ホスフィノイルオキシ等の炭炭素数1〜10(より好ましくは炭素数1〜8)の直鎖若しくは分岐アルキル基及び/又はフェニル基が置換したホスフィニルオキシ基が挙げられる。
R1及びR2が表すアルキル及び/又はアリール置換ホスフィノチオイルオキシ基は、例えばジメチルホスフィノチオイルオキシ、エチルメチルホスフィノチオイルオキシ、ジ−tert−ブチルホスフィノチオイルオキシ、フェニルメチルホスフィノチオイルオキシ、ジフェニルホスフィノチオイルオキシ等の炭炭素数1〜10(より好ましくは炭素数1〜8)の直鎖若しくは分岐アルキル基及び/又はフェニル基が置換したホスフィノチオイルオキシ基が挙げられる。
R1及びR2が表すハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
【0064】
これらの基は更に置換基を有していてもよい。更なる置換基は反応を阻害するものでなければ特に制限はなく、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキル及び/又はアリール置換カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキル及び/又はアリール置換シリル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヘテロ環残基等が挙げられる。
【0065】
隣接するR1とR2とが結合して、一般式(c)におけるベンゼン環の縮合環として、炭素原子及びヘテロ原子から選ばれる原子を骨格とする4〜18員環を形成してもよい。
隣接するR1とR2とが結合して形成してもよい4〜18員環としては、例えばシクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等のメチレン鎖を介して結合する環;1,3−ジオキソラン環、1,4−ジオキサン環、1,3−ジチオラン環、1,4−ジチアン環、イミダゾリジン環、ピペラジン環等の酸素原子、硫黄原子、窒素原子を介して互いに結合する環;1,2−ジオールとホウ酸エステルから得られるジオキサボロラン環;12−クラウン4−エーテル環、15−クラウン5−エーテル環、18−クラウン6−エーテル環、1−アザ−12−クラウン4−エーテル環、1−アザ−15−クラウン5−エーテル環、1−アザ−18−クラウン6−エーテル環、4,10−ジアザ−12−クラウン4−エーテル環、4,10−ジアザ−15−クラウン5−エーテル環、4,13−ジアザ−18−クラウン6−エーテル環等のクラウンエーテル環が挙げられる。
これらの環は更に置換基を有していてもよく、環が置換する場合にはスピロ位で置換してもよい。更なる置換基は3量化反応を阻害するものでなければ特に制限はないが、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、オキソ基、チオキソ基、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環残基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0066】
R1又はR2として挙げた上記の基がアルキル基を有する基である場合は、該アルキル基中の1個以上のメチレン基が、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−で置き換わった基であってもよい。
即ち、R1又はR2として挙げた上記の基がアルキル基を有する基である場合、該アルキル基を、例えば、下記に挙げる基としてもよい。
−(CH−CF;−(CH−(CF−CF;−(CF−CF;−CHO−CH;−(CHO)−CH;−(CHCHO)−CH;−(CFO)−(CHO)−CH;−(CHCHO)−(CFCH;−CH−S−CH;−(CHO)−S−(CHO)−CH;−(CH−CO−CH;−(CH−CO−O−CH;−(CF−O−CO−CH;−(CH−O−CO−CH=CH;−(CHCHO)−CO−CH=CH;−(CH=CH)−CH;−(CH−C≡CH;−(CH−(CF−C≡CH等が挙げられる。ここでx及びyは各々原子団の繰り返し単位を表し、1〜5の整数(好ましくは1〜3の整数)である。
より具体的には、下記の置換基が挙げられる。
−O(CHCHO)CH
−CFCFCHOCH
−O(CHCHO)CFCFCH
−SCHOCHCHCH
−O(CHO)SCHOCH
−O(CHCOCH
−CHCHCHCOOCH
−OCHCFCFOCOCH
−O(CHCHO)COCH=CH
−O(CH=CH)CH
【0067】
R1及びR2は、好ましくはアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はアルキル鎖部位を有する置換基であって、アルキル鎖部位において1個以上のメチレン基が、アルキレンオキシ基であるか、もしくはアルキレンオキシ基の繰り返し単位で構成される置換基である。
R1とR2とがメチレン鎖又はヘテロ原子を介して互いに結合して形成した環としては、好ましくは1,3−ジオキソラン環、1,4−ジオキサン環、1,3−ジチオラン環、1,4−ジチアン環、クラウンエーテル環である。
なお、R1又はR2で表される基の原子数は、50以下が好ましく、30以下がより好ましく、R1で表される基及びR2で表される基の合計の原子数は100以下が好ましく、80以下がより好ましい。
本発明により製造したトリフェニレン化合物(d)は極めて高純度であるため、簡単な精製操作のみで各種の有機電子デバイス用素材として使用することができる。
【0068】
なお、本発明で製造したトリフェニレン化合物(d)のうち、R1及びR2の一部の置換基については一般的な脱保護反応を行うことにより、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン(f)に導くことが出来る。
脱保護可能な置換基としては、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテリルオキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アルキル及び/又はアリール置換カルバモイルオキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキル及び/又はアリール置換シリルオキシ、アルキル及び/又はアリール置換ホスフィノイルオキシ、アルキル及び/又はアリール置換ホスフィノチオイルオキシ等が挙げられる。
また、隣接するR1とR2とが結合して形成する4〜18員環でも、ジアルキルメチレンケタール、シクロアルキリデンケタール、ジアリールメチレンケタール、アルキルオルトギ酸エステル、環状ホウ酸エステル、環状炭酸エステル等は脱保護可能である。
これら置換基の脱保護は、一般的な種々の方法を用いることが出来る。例えば、PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS、JOHN WILEY&SONS,INC.、THIRD EDITION、1999年、246〜292頁;特開平9−301906号公報;特開2005−225800号公報;特開2005−225807号公報;特開2007−277101号公報等が挙げられる。
【0069】
以下に、本発明の一般式(d)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
一般式(d)で表される化合物は、置換基の種類に応じて1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合があるが、該不斉炭素に基づく任意の光学異性体又はジアステレオ異性体はいずれも本発明の範囲に含まれる。また、純粋な形態の異性体の他、それらの任意の混合物、ラセミ体等も本発明の範囲に含まれる。
更に、R1及び/又はR2に1個又は2個以上の二重結合を含む場合は、該二重結合に基づく任意の幾何異性体も本発明の範囲に含まれる。
表中、Etはエチルを、Phはフェニルを各々表す。
【0070】
【化16】


【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
【化17】

【0076】
【化18】


【0077】
1,2−ジ置換ベンゼン化合物(c)を3量化する場合も、前記のベンゾ[1,3]ジオキソール(a)の場合と同様の条件で操作を行い、試薬も同じものを用いることができる。反応溶媒は1,2−ジ置換ベンゼン化合物(c)の溶解度や、目的物のトリフェニレン化合物(d)のろ過性などを考慮して、特定反応溶媒以外のものを併用してもよい。その場合、全反応溶媒中に特定反応溶媒を10質量%以上含有していることが好ましい。より好ましくは特定反応溶媒を30質量%以上、最も好ましくは50質量%以上含有していることである。併用可能な反応溶媒としては、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素等が挙げられる。
本発明の方法を用いることにより、従来法よりも高収率且つ工業的規模で低コストに目的物のトリフェニレン化合物(d)を製造することができる。
【実施例】
【0078】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
実施例1 トリフェニレノ[2,3−d:6,7−d’:10,11−d’’]トリス(1,3)ジオキソール(化合物(b))の合成
1000mlの四つ口フラスコに酢酸エチル600mlを仕込み、攪拌しながらペルオキソ二硫酸アンモニウム98.0g(0.43mol)とベンゾ[1,3]ジオキソール52.0g(0.43mol)を添加し、内温10℃に冷却した。更に、無水塩化鉄(III)414.5g(2.52mol)を少しずつ添加し、内温10〜15℃で2時間反応した。反応終了後、反応液を冷却しながら水2400mlを添加し、10分攪拌後に静置した。二層に分離した溶液の水層を除去し、有機層を再度、食塩水800mlで洗浄した。有機層にメタノール600mlを添加し、15〜25℃で1時間晶析した後に結晶をろ別した。得られた結晶を乾燥して、灰色結晶として目的物47.0g(収率91.3%)を得た。
【0080】
実施例2〜87 化合物(b)の合成
反応溶媒、酸化剤及び共酸化剤の種類を表2に示すように変更し、各成分の使用量については、実施例1における量(モル数)と同様とした以外は実施例1と同様の方法で合成を行った。ただし、過酸化物塩とハロゲンオキソ酸とを併用する場合は、各々0.22mmolを使用した。
【0081】
比較例1 化合物(b)の合成
表2に示す反応溶媒及び酸化剤(特開2005−314335号公報の実施例1で使用されている反応溶媒及び酸化剤)を用い、各成分の使用量は実施例1における量(モル数)と同様とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0082】
比較例2及び3 化合物(b)の合成
表2に示す反応溶媒、酸化剤及びルイス塩基性化合物(特開2005−162628号公報の実施例で使用されている反応溶媒、酸化剤及びルイス塩基性化合物)を用い、各成分の使用量は実施例1における量(モル数)と同様とし、ルイス塩基性化合物のみ引用文献の表3に記載されている量(酸化剤に対するモル数)を使用した以外は実施例1と同様に行った。
参考例1〜5 化合物(b)の合成
表2に示す特開2005−162628号公報の実施例で使用されている反応溶媒、酸化剤及びルイス塩基性化合物を用いた比較例2及び3に相当する系について、収率向上の可能性を探るべく、表2に示すように共酸化剤を使用し、各成分の使用量は実施例1における量(モル数)と同様とし、ルイス塩基性化合物のみ引用文献の表3に記載されている量(酸化剤に対するモル数)を使用した以外は実施例1と同様に行った。
【0083】
実施例1〜87、比較例1〜3及び参考例1〜5の結果を下記表2に示す。
化合物(b)が得られていることは、下記に示すマススペクトル及びNMRスペクトルのデータにより確認した。
EI−MS: m/z 366(M
H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ6.17(s,6H,CH),
δ8.16(s,6H,Arom)ppm
なお、反応率のみ表記してあるものは単離を行っていない。
また、「重合物のみ生成」とは、一般式(c)で表される化合物の4量体以上のもののみが生成したということである。
【0084】
実施例88−1 2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン(f)の合成
1000mlの四つ口フラスコに、クロロベンゼン150ml、化合物(b)10.0g(27.8mmol)及び五塩化リン34.2g(166.8mmol)を加え、内温120℃で3時間反応した。反応終了後、冷却して反応溶媒を減圧留去した。次いで、水を400ml添加し、内温90℃で5時間反応した。反応液を冷却、ろ別して黒色固体を得た。黒色固体にアセトン400mlを加え、30分間加熱還流後熱ろ過し、ろ液の有機溶剤を減圧留去した。水100mlを加え攪拌し、結晶をろ別した。乾燥して灰色結晶の目的物6.4g(収率71.1%)を得た。
【0085】
実施例88−2 2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン(f)の合成
1000mlの四つ口フラスコに、トルエン100mlと化合物(b)10.0g(27.8mmol)、三塩化リン0.78g(5.77mmol)を加え、内温を50℃に上げて塩素(55.6mmol)を1時間かけて導入した。反応終了後、冷却して反応溶媒を減圧留去した。水400mlを添加し、更に内温90℃で5時間反応した。反応液を冷却し、ろ別して黒色固体を得た。アセトン400mlに得られた黒色固体を加え、30分間加熱還流後に熱ろ過し、ろ液の有機溶剤を減圧留去した。そこに水100mlを加え攪拌し、結晶をろ別した。乾燥して灰色結晶の目的物6.3g(収率70.0%)を得た。
なお、実施例88−1及び88−2において、目的物が合成されていることは、下記に示すマススペクトル及びNMRスペクトルのデータにより確認した。
EI−MS: m/z 324(M
H−NMR(400MHz,CDOD):δ4.85(s,6H,OH),
δ7.74(s,6H,Arom)ppm
【0086】
実施例89 化合物No.1の合成
1000mlの四つ口フラスコに酢酸エチル600mlを入れ、攪拌しながらペルオキソ二硫酸ナトリウム102.4g(0.43mol)とo−キシレン45.7g(0.43mol)を添加し、内温10℃に冷却した。更に、無水塩化鉄(III)345.4g(2.10mol)を少しずつ添加した後、内温10〜15℃で6時間反応した。反応後、冷却しながら水2000mlを添加し、10分攪拌後静置した。二層に分離した溶液の水層を除去し、有機層を食塩水800mlで洗浄した。有機層にメタノール600mlを添加し15〜25℃で1時間晶析した後、結晶をろ別した。乾燥して灰色結晶として目的物19.5g(収率43.6%)を得た。
【0087】
実施例90〜117及び比較例4〜61
表3に示すように、表1に示すR1及びR2を有する一般式(c)で表される化合物(基質)、反応溶媒、酸化剤及び共酸化剤の種類を変更し、各成分の使用量については、実施例89における量(モル数)と同様とした以外は、実施例89と同様に操作し、種々のトリフェニレン化合物を合成した。
【0088】
実施例99において合成した化合物についてのマススペクトル及びNMRスペクトルのデータは以下のとおりであり、化合物18であることを確認した。
EI−MS: m/z 408(M
H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ4.04(s,18H,CH),
δ7.99(s,6H,Arom)ppm
また、実施例90〜98、100〜117、比較例4〜61においても、目的物が合成されていることは、マススペクトル及びNMRスペクトルにより確認した。
実施例90〜117、比較例4〜61の結果を下記表3に示す。
【0089】
実施例118 化合物No.131の合成
1000mlの四つ口フラスコに炭酸プロピレン500mlを入れ、攪拌しながらペルオキソ二硫酸カリウム116.2g(0.43mmol)とベンゾ−12−クラウン4−エーテル96.4g(0.43mmol)を添加し、内温10℃に冷却した。更に、無水塩化鉄(III)276.3g(1.68mmol)を少しずつ添加した後、内温10〜15℃で2時間反応した。反応後、冷却しながら水2000mlを添加し、10分攪拌後に静置した。二層に分離した溶液の水層を除去し、有機層を1N塩酸水溶液200mlで洗浄した。水層を除去し、有機層を食塩水500mlで洗浄した。有機層にメタノール600mlを添加して内温15〜25℃で1時間晶析し、結晶をろ別した。乾燥して薄紫色結晶の目的物72.2g(収率75.6%)を得た。目的物が合成されていることは、マススペクトル及びNMRスペクトルにより確認した。
【0090】
【表5】

【0091】
【表6】

【0092】
【表7】

【0093】
【表8】

【0094】
【表9】

【0095】
【表10】

【0096】
【表11】

【0097】
表2の結果から、従来法で用いられていた環境に影響を与えるハロゲン系溶媒や、ヘキサンなどの防爆上取り扱いに注意を要する溶媒を使用しなくとも、本発明の反応溶媒を用いることによって従来法と遜色無い収率で目的物を合成できることがわかる。また、本発明の反応系に、無機過酸化物塩やハロゲンオキソ酸塩の酸化剤を共存することにより、顕著な収率向上の効果があることが判る。
更には、表3の結果から、種々の1,2−ジ置換ベンゼンの3量化においても、本発明の方法が効果があることは明らかである。
本発明の方法は環境への負荷を低減し、且つ高度な精製を必要とせずに簡便な方法で目的物を得ることが可能な、工業的に有用で優れた製造方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価又は3価の鉄イオンを含む化合物の存在下、ベンゾ[1,3]ジオキソール(a)の3量化反応を行い、トリフェニレン化合物(b)を製造する方法において、該反応において、カルボン酸エステル類、ラクトン類、炭酸エステル類及び亜硫酸エステル類からなる群から選択される少なくとも1種の反応溶媒を用いることを特徴とするトリフェニレン化合物の製造方法。
【化1】


【化2】


【請求項2】
無機過酸化物塩及びハロゲンオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の共存下で反応させることを特徴とする請求項1記載のトリフェニレン化合物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法によりトリフェニレン化合物(b)を製造し、次いで、トリフェニレン化合物(b)の3つのメチレンジオキシ基を開環し、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン化合物へ導くことを特徴とする2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン化合物の製造方法。
【請求項4】
2価又は3価の鉄イオンを含む化合物の存在下、一般式(c)で表わされる1,2−ジ置換ベンゼン化合物の3量化反応を行い、一般式(d)で表されるトリフェニレン化合物を製造する方法において、該反応において、カルボン酸エステル類、ラクトン類、炭酸エステル類及び亜硫酸エステル類からなる群から選択される少なくとも1種の反応溶媒を用いることを特徴とするトリフェニレン化合物の製造方法。
【化3】


【化4】



式中、R1及びR2は各々独立して、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、へテリルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキル及び/又はアリール置換カルバモイルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニルチオ基、アリールカルボニルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキル及び/又はアリール置換カルバモイル基、アルキル及び/又はアリール置換アミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキル及び/又はアリール置換シリルオキシ基、アルキル及び/又はアリール置換ホスフィノイルオキシ基、アルキル及び/又はアリール置換ホスフィノチオイルオキシ基、ハロゲン原子を表す。これらの各基は置換基を有していてもよい。
なお、上記基の中でアルキル基を有する基については、該アルキル基は、該アルキル基中の1個以上のメチレン基が、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−で置き換わった基であってもよい。
また、隣接するR1とR2とが結合して、炭素原子及びヘテロ原子から選ばれる原子を骨格とする4〜18員環を形成してもよく、形成された4〜18員環は置換基を有していてもよい。
但し、R1とR2は同時にヒドロキシ基を表さない。
【請求項5】
無機過酸化物塩及びハロゲンオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の共存下で反応させることを特徴とする請求項4に記載のトリフェニレン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2013−71922(P2013−71922A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213405(P2011−213405)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000175607)富士フイルムファインケミカルズ株式会社 (34)
【Fターム(参考)】