説明

トリフェニレン系化合物及びこれを含む有機電界発光素子

本発明は、下記化1で表されるトリフェニレン系化合物及びこれを含む有機電界発光素子に関する。本発明の化合物は、正孔注入及び/又は輸送能、電子輸送能及び/又は発光能、特に緑色及び赤色光の発光能に優れているため、これを発光ホスト材料として含む有機電界発光素子は、発光効率、輝度、熱的安定性、駆動電圧、寿命などの特性が向上できる。
【化1】


式中、A、L、X、R〜R19は、詳細な説明での定義と同様である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子輸送能、正孔注入及び輸送能、及び発光能に優れた新規なトリフェニレン系化合物、並びにこれを1つ以上の有機層に含むことで、発光効率、輝度、熱的安定性、駆動電圧、寿命などの特性が向上した有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光(EL)素子(以下、「有機EL素子」と略する)に関する研究は、1950年代にBernanoseにより有機薄膜発光が観測されて以来、1965年にはアントラセン単結晶を用いた青色電気発光が発表され、また、1987年にはTangらにより正孔層と発光層の機能層に分かれた積層構造の有機EL素子が提示され、高効率、長寿命の有機EL素子を作るために素子内それぞれの特徴的な有機物層を導入するように発展されてきており、これに使用するための物質の開発が行われている。
【0003】
このような有機EL素子は、ITO(Indium Tin Oxide)基板、アノード(anode)、選択的にアノードから正孔を受け取る正孔注入層、選択的に正孔を伝達する正孔輸送層、正孔と電子とが再結合して光を出す発光層、選択的に電子を伝達する電子輸送層、選択的にカソード(cathode)から電子を受け取る電子注入層、及びカソードから構成されている。
【0004】
通常、有機EL素子は、電気エネルギーを印加して、アノードとカソードとの間の各機能層を通じて、アノードからは正孔が、カソードからは電子が有機物層に注入されるようになる。注入された正孔と電子とが結合してエキシトン(exciton)が生成し、このエキシトンが基底状態に戻る際に発光するという原理に基づいている。
【0005】
このように、有機EL素子を多層にして製作する理由は、正孔と電子の移動速度が相違しているためであり、適切な正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層を形成することにより、正孔と電子とが効果的に伝達され、素子内の正孔と電子とがバランスして発光効率を高くすることができる。
【0006】
電子注入層から注入された電子と、正孔注入層から伝達された正孔とは、発光層で再結合してエキシトンを形成し、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光を蛍光と、三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光を燐光と呼ぶ。理論的に、キャリアが発光層で再結合してエキシトンが生成される際には、一重項と三重項の励起子の割合が1:3であり、燐光を用いる場合、内部量子効率が100%に達することができる。
【0007】
一般に、燐光ホスト材料としては、CBP(4,4-dicarbazolybiphenyl)等のカルバゾール系化合物などが使用され、燐光ドーパント材料としては、Ir、Ptなどの重原子が含まれた金属錯体化合物が広く使用されている。
【0008】
しかし、現在使用されている燐光ホスト材料であるCBPは、ガラス転移温度(Tg)が110℃程度と低く、素子内の結晶化が起こり易いため、有機EL素子の寿命が150時間程度と非常に短いという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、優れた電子輸送能、正孔注入及び/又は輸送能及び/又は発光能を有するトリフェニレン系化合物、及びこれを1つ以上の有機層に含むことにより、発光効率、輝度、熱的安定性、駆動電圧、寿命などの特性が向上した有機EL素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記化1で表される化合物を提供する。
【化1】

式中、Aは、N−含有の、6−乃至8−員のヘテロ環を示し、
Xは、−(CR2021)n−、−(SiR2223)m−、−NR24−、−O−及び−S−からなる群から選択され、n及びmは、それぞれ独立して1〜3の整数であり;
乃至R24は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキル、置換もしくは非置換の核原子数3〜40のヘテロ環、置換もしくは非置換のC1−C40のアルコキシ、置換もしくは非置換の核原子数6〜40の芳香族炭化水素、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールオキシ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキル、置換もしくは非置換のC2−C40のアルケニル、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールアミノ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC3−C20のアルキルシリル、置換もしくは非置換のC8−C40のアリールシリル、置換もしくは非置換のC7−C40のケトアリール、置換もしくは非置換のC1−C40のハロアルキル、又はシアノであり、R〜R23は、互いに隣接する基と結合して縮合脂肪族環、縮合芳香族環、縮合ヘテロ脂肪族環又は縮合ヘテロ芳香族環を形成することができ;
Lは、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキル、置換もしくは非置換の核原子数3〜40のヘテロ環、置換もしくは非置換のC1−C40のアルコキシ、置換もしくは非置換の核原子数6〜60の芳香族炭化水素、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールオキシ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキル、置換もしくは非置換のC2−C40のアルケニル、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールアミノ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC3−C20のアルキルシリル、置換もしくは非置換のC8−C40のアリールシリル、置換もしくは非置換のC7−C40のケトアリール、又は置換もしくは非置換のC1−C40のハロアルキルである。
【0011】
また、本発明は、アノード、カソード及び前記アノードとカソードとの間に介在した1層以上の有機層を含む有機電界発光素子であって、前記有機層のうちの少なくとも1つは、上記で挙げた化合物を含むことを特徴とする有機電界発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のトリフェニレン系化合物は、広いエネルギーバンドを有すると共に、従来の4,4−ジカルバゾールビフェニル(4,4−dicarbazolybiphenyl)(CBP)に比べて大きな分子量を有することで、ガラス転移温度が高くなって優れた熱的安定性を期待することができる。また、不斉分子構造によって、立体障害が発生して結晶性を低下させ、寿命の面において格段な性能を示すことができる。また、上記の化合物を有機EL素子の青色、緑色及び/又は赤色の燐光ホスト材料あるいは蛍光ホスト材料として採用する場合、CBPに比べて効率及び寿命の面において格段な性能向上を図ることができる。従って、本発明の化合物を含む有機EL素子は、発光性能及び寿命の面において著しく向上し、フルカラーのディスプレイパネルなどに効果的に適用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、化1で表される化合物、具体的には、三重項エネルギーレベルが適正でないため燐光ホストとしての特性を十分に発揮できないトリフェニレンのモイエティ(moiety)に、リンカー(L)を介してN−含有ヘテロ環のモイエティを連結することにより、十分に高い三重項エネルギーのレベルを達成し、燐光特性を改善すると共に、電子及び/又は正孔の輸送能、発光効率、駆動電圧、寿命特性などの改善したトリフェニレン系化合物(triphenylene-based compound)を提供する。
【0014】
本発明の化1の化合物において、Xは、−(CR2021)n−、−(SiR2223)m−、−NR24−、−O−及び−S−からなる群から選択され、n及びmは、それぞれ独立して1〜3の整数であり、これによって、Xを含む環Aは、窒素を含有する、6−乃至8−員のヘテロ環を形成する。
【0015】
乃至R24は、それぞれ独立して、水素又は任意の置換体であり、この置換体としては、例えば、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキル(好ましくは、C1−C8のアルキル)、置換もしくは非置換の核原子数3〜40のヘテロ環(好ましくは、核原子数3〜18のヘテロ環)、置換もしくは非置換のC1−C40のアルコキシ(好ましくは、C1−C24のアルコキシ)、置換もしくは非置換の核原子数6〜40の芳香族炭化水素(好ましくは、核原子数6〜24の芳香族炭化水素)、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールオキシ(好ましくは、C6−C18のアリールオキシ)、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキル(好ましくは、(C7−C24のアリール)C1−C8のアルキル)、置換もしくは非置換のC2−C40のアルケニル(好ましくは、C2−C24のアルケニル)、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキルアミノ(好ましくは、C1−C24のアルキルアミノ)、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールアミノ(好ましくは、C6−C24のアリールアミノ)、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキルアミノ(好ましくは、(C7−C24のアリール)C1−C24のアルキルアミノ)、置換もしくは非置換のC3−C20のアルキルシリル(好ましくは、C3−C8のアルキルシリル)、置換もしくは非置換のC8−C40のアリールシリル(好ましくは、C8−C24のアリールシリル)、置換もしくは非置換のC7−C40のケトアリール(好ましくは、C7−C24のケトアリール)、置換もしくは非置換のC1−C40のハロアルキル(好ましくは、C1−C8のハロアルキル)、シアノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
〜R23は、互いに隣接する基と結合して縮合脂肪族環、縮合芳香族環、縮合ヘテロ脂肪族環又は縮合ヘテロ芳香族環を形成することができ、具体的には、R〜Rの互いに隣接する基、R〜Rの互いに隣接する基、R〜R19の互いに隣接する基、R20とR21、R22とR23は、互いに結合して縮合脂肪族環、縮合芳香族環、縮合ヘテロ脂肪族環又は縮合ヘテロ芳香族環を形成することができる。
【0017】
リンカーLは、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキル、置換もしくは非置換の核原子数3〜40のヘテロ環、置換もしくは非置換のC1−C40のアルコキシ、置換もしくは非置換の核原子数6〜60の芳香族炭化水素、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールオキシ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキル、置換もしくは非置換のC2−C40のアルケニル、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールアミノ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC3−C20のアルキルシリル、置換もしくは非置換のC8−C40のアリールシリル、置換もしくは非置換のC7−C40のケトアリール、及び置換もしくは非置換のC1−C40のハロアルキルから選択されることができる。
【0018】
〜R24及びリンカーLのアルキル、ヘテロ環、アルコキシ、芳香族炭化水素、アリールオキシ、アリールアルキル、アルケニル、アルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、アルキルシリル、アリールシリル、ケトアリール、及びハロアルキルは、それぞれ独立して、重水素、ハロゲン、C1−C40のアルキル、核原子数3〜40のヘテロ環、C1−C40のアルコキシ、核原子数6〜40の芳香族炭化水素、C6−C40のアリールオキシ、(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキル、C2−C40のアルケニル、C1−C40のアルキルアミノ、C6−C40のアリールアミノ、(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキルアミノ、C3−C20のアルキルシリル、C8−C40のアリールシリル、C7−C40のケトアリール、C1−C40のハロアルキル、及びシアノからなる群から選択される1つ以上で置換されることができる。さらに、これらの置換基は、それぞれ独立して、C1−C40のアルキル、C6−C40のアリール、核原子数5〜40のヘテロアリール、などでさらに置換されることができる。
【0019】
本発明の化1の化合物は、代表例として、下記の化1a、化1b又は化1cで示されることができる。
【0020】
【化2】

【化3】

【化4】

式中、A、X、R〜R19は、上記の定義と同様であり、
25〜R28は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキル、置換もしくは非置換の核原子数3〜40のヘテロ環、置換もしくは非置換のC1−C40のアルコキシ、置換もしくは非置換の核原子数6〜40の芳香族炭化水素、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールオキシ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキル、置換もしくは非置換のC2−C40のアルケニル、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールアミノ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC3−C20のアルキルシリル、置換もしくは非置換のC8−C40のアリールシリル、置換もしくは非置換のC7−C40のケトアリール、置換もしくは非置換のC1−C40のハロアルキル、又はシアノであり、R25〜R28は、互いに隣接する基と結合して縮合脂肪族環、縮合芳香族環、縮合ヘテロ脂肪族環又は縮合ヘテロ芳香族環を形成することができる。
【0021】
25〜R28のアルキル、ヘテロ環、アルコキシ、芳香族炭化水素、アリールオキシ、アリールアルキル、アルケニル、アルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、アルキルシリル、アリールシリル、ケトアリール、及びハロアルキルは、それぞれ独立して、C1−C40のアルキル、C6−C40のアリール、核原子数5〜40のヘテロアリール、などでさらに置換されることができる。
【0022】
また、本発明の化1の化合物は、下記化1dで示される化合物であることができる。
【0023】
【化5】

式中、X、R〜R19は、上記の定義と同様であり、
複数個のZのうちの少なくとも1つは、窒素原子、残りは、炭素原子であり、Zに付着した水素原子は、非置換、あるいは少なくとも1つが、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキル、置換もしくは非置換の核原子数3〜40のヘテロ環、置換もしくは非置換のC1−C40のアルコキシ、置換もしくは非置換の核原子数6〜40の芳香族炭化水素、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールオキシ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキル、置換もしくは非置換のC2−C40のアルケニル、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールアミノ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC3−C20のアルキルシリル、置換もしくは非置換のC8−C40のアリールシリル、置換もしくは非置換のC7−C40のケトアリール、置換もしくは非置換のC1−C40のハロアルキル、又はシアノで置換され、これらの置換基は、互いに隣接する基と結合して縮合脂肪族環、縮合芳香族環、縮合ヘテロ脂肪族環又は縮合ヘテロ芳香族環を形成することができる。
【0024】
これらの置換基は、それぞれ独立して、C1−C40のアルキル、C6−C40のアリール、核原子数5〜40のヘテロアリール、などでさらに置換されることができる。
【0025】
下記の式は、本発明の化1で表される化合物の代表例であるが、本発明に係る化1の化合物は、下記の例に限定されるものではない。
【0026】
【化6】







【0027】
本発明において使用される「非置換のヘテロ環」とは、核原子数3〜40のモノヘテロ環又はポリヘテロ環の芳香族又は非芳香族の環を意味し、このような環のうちの1つ以上の炭素、好ましくは1〜3個の炭素が、N、O、P又はSのようなヘテロ原子で置換される。その例としては、モルホリン、ピペラジンのようなヘテロ環アルキル、インドールのようなヘテロアリールなどが含まれるが、これらに限定されない。さらには、本願で使用されるヘテロ環とは、芳香族又は非芳香族ヘテロ原子含有環が、1つ以上の芳香族又は非芳香族環と縮合されたものを含む意味である。
【0028】
「非置換の芳香族炭化水素」とは、単環又は2以上の環が組み合わせられた、炭素数6〜60の芳香族システムを意味する。2以上の環は、互いに単純付着(pendant)あるいは縮合(fused)されてなることができる。その例としては、フェニル、ナフチルのようなアリール、フルオレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本発明に係る化1の化合物は、通常の合成法(例えば、Suzukiカップリング)により合成されることができる。本発明の化合物に関する合成過程の詳細は、後述の合成例において詳述する。
【0030】
本発明は、また、アノード、カソード及び前記アノードとカソードとの間に介在した1層以上の有機層を含む有機EL素子であって、前記1層以上の有機層のうちの少なくとも1つは、前記化1で表れる化合物を含むことを特徴とする有機EL素子を提供する。
【0031】
前記化1の化合物は、単独又は複数含まれることができ、前記化1a乃至1dで表される化合物が好ましい。
【0032】
本発明に係る化1の化合物を含む有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び発光層のうちのいずれか1つ以上であることができる。本発明において、発光層は、燐光ドーパント材料又は蛍光ドーパント材料を含むことができる。好ましくは、本発明に係る化1の化合物は、青色、緑色及び/又は赤色の燐光ホスト、蛍光ホスト、正孔輸送物質、正孔注入物質及び電子輸送物質として有機EL素子に含まれることができる。特に、本発明に係る化1の化合物は、燐光ホストとして使用されることができる。
【0033】
本発明の化合物は、150℃以上の高いガラス転移温度を有し、このような化合物を有機EL素子の有機層として使用する場合は、有機EL素子内での結晶化が最小化されるため、素子の駆動電圧を低くすることができ、発光効率、輝度、熱的安定性、及び寿命特性を改善することができる。
【0034】
本発明に係る有機EL素子の構造としては、例えば、基板、アノード、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及びカソードが順次積層されたものであることができ、この時、前記発光層、正孔注入層、正孔輸送層及び電子輸送層のうちの1つ以上は、前記化1で表される化合物を含むことができる。前記電子輸送層の上に電子注入層が位置することもできる。
【0035】
また、本発明に係る有機EL素子は、上述のように、アノード、1層以上の有機層及びカソードが順次積層された構造を有し、さらに、電極と有機層との界面に絶縁層又は接着層を挿入することもできる。
【0036】
本発明の有機EL素子において、前記化1の化合物を含む前記有機層は、真空蒸着や溶液塗布により形成されることができる。前記溶液塗布法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、インクジェットプリント法又は熱転写法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本発明の有機EL素子において、有機層のうちの1層以上を本発明の化1で表される化合物を含むように形成した以外は、当該技術分野で公知の材料及び方法を用いて有機層及び電極を形成することができる。
【0038】
例えば、基板としては、シリコンウェハ、石英、ガラス板、金属板、プラスチックフィルム又はシートなどを使用することができる。
【0039】
アノード材料としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属又はこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:Al又はSnO:Sbのような金属と酸化物との組み合わせ物、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDT)、ポリピロール及びポリアニリンのような伝導性高分子;又はカーボンブラックなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
カソード材料としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、錫又は鉛のような金属あるいはこれらの合金;LiF/Al又はLiO/Alのような多層構造物質などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
正孔注入層、正孔輸送層及び電子伝達層及び電子注入層としては、特に限定されず、当業技術分野で公知のものを使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の例示に過ぎず、本発明は、下記の実施例により限定されるものではない。
【0043】
[合成例1]化合物Inv−1(10−(3−トリフェニレン−2−イル)フェニル)−10H−フェノチアジン)の合成
[ステップ1]10−(3−ブロモフェニル)−10H−フェノチアジンの合成
【化7】

1−ブロモ−3−ヨードベンゼン15.35ml(120.43mmol)、10H−フェノチアジン(15.0g、75.27mmol)、ナトリウム t−ブトキシド(21.70g、225.81mmol)、及びトリ−t−ブチルホスフィン1.83ml(7.53mmol)をトルエン400mlに溶解させ、Pd(dba)(1.38g、1.51mmol)を入れた後、12時間還流攪拌した。
【0044】
反応終了後、ジクロロメタンで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:MC=4:1(v/v))で精製して標題化合物(17.3g、収率65%)を得た。
【0045】
1H NMR : 6.31 (t, 2H), 6.48 (s, 1H), 6.63 (t, 2H), 6.85 (m, 4H), 6.99 (d, 2H), 7.22 (dd, 1H).
GC−Mass(理論値:352.99g/mol、測定値:353g/mol)。
【0046】
[ステップ2]化合物Inv−1の合成
【化8】

上記の[ステップ1]で合成した化合物(10g、28.33mmol)、4,4,5,5−テトラメチル−2−(トリフェニレン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン(11.04g、31.16mmol)、Pd(PPh(0.65g、0.57mmol)及び炭酸ナトリウム(9.01g、84.99mmol)をトルエン300ml及びエタノール80mlの混合溶媒に懸濁させた後、12時間還流攪拌した。
【0047】
反応終了後、ジクロロメタンで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:MC=4:1(v/v))で精製して、目的の標題化合物Inv−1(11.5g、収率81%)を得た。
【0048】
1H NMR : 6.67 (m, 4H), 6.90 (t, 2H), 6.98 (m, 5H), 7.01 (s, 1H), 7.87 (m, 4H), 8.01 (d, 1H), 8.11 (m, 3H), 8.89 (t, 2H), 9.11 (s, 1H).
GC−Mass(理論値:501.16g/mol、測定値:502g/mol)。
【0049】
[合成例2]化合物Inv−9の合成
[ステップ1]10−(3−ブロモ−5−(フェナントレン−9−イル)フェニル)−10H−フェノチアジンの合成
【化9】

10−(3,5−ジブロモフェニル)−10H−フェノチアジン(15.0g、34.81mmol)、フェナントレン−9−イルボロン酸(6.96g、31.33mmol)、Pd(PPh(0.80g、0.70mmol)及び炭酸ナトリウム(11.07g、104.43mmol)をトルエン400ml及びエタノール100mlの混合溶媒に懸濁した後、12時間還流攪拌した。
【0050】
反応終了後、ジクロロメタンで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:MC=4:1(v/v))で精製して標題化合物(12.4g、収率75%)を得た。
【0051】
1H NMR : 6.71 (m, 4H), 6.91 (t, 2H), 6.99 (m, 4H), 7.05 (s, 1H), 7.89 (m, 5H), 8.15 (t, 2H), 8.71 (t, 2H).
GC−Mass(理論値:529.05g/mol、測定値:530g/mol)。
【0052】
[ステップ2]化合物Inv−9の合成
上記の[ステップ1]で合成した化合物10g(18.90mmol)を使用した以外は、合成例1と同様にして目的の標題化合物であるInv−9を10.2g(収率80%)得た。
【0053】
1H NMR : 6.68 (m, 4H), 6.92 (dd, 2H), 7.01 (m, 5H), 7.86 (m, 9H), 8.24 (m, 5H), 8.89 (m, 6H).
GC−Mass(理論値:677.22g/mol、測定値:678g/mol)。
【0054】
[合成例3]化合物Inv−13の合成
【化10】

[ステップ1]10−(3−ブロモ−5−(ピリジン−2−イル)フェニル)−10H−フェノチアジンの合成
10−(3,5−ジブロモフェニル)−10H−フェノチアジン(10g、23.21mmol)、2−ピリジニルボロン酸(3.43g、27.85mmol)、Pd(PPh(0.54g、0.46mmol)、及び炭酸ナトリウム(7.38g、69.62mmol)をトルエン400mlとエタノール100mlとの混合溶媒に懸濁させた後、12時間還流攪拌した。
【0055】
反応終了後、ジクロロメタンで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:MC=4:1(v/v))で精製して目的の標題化合物(6.38g、収率64%)を得た。
【0056】
GC−Mass(理論値:431.35g/mol、測定値:432g/mol)。
【0057】
[ステップ2]化合物Inv−13の合成
上記の[ステップ1]で合成した化合物10g(23.26mmol)を使用した以外は、合成例1と同様にして目的の標題化合物であるInv−13を11.56g(収率86%)得た。
【0058】
1H NMR : 6.61 (t, 2H), 6.72 (s, 1H), 6.95 (m, 6H), 7.01 (dd, 1H), 7.11 (s, 1H), 7.37 (m, 4H), 7.79 (m, 4H), 8.10 (m, 3H), 8.49 (t, 1H), 8.91 (t, 2H), 9.12 (s, 1H).
GC−Mass(理論値:578.18g/mol、測定値:579g/mol)。
【0059】
[合成例4]Inv−17の合成
[ステップ1]10−(3−ブロモ−5−(5−フェニルチオフェン−2−イル)フェニル)−10H−フェノチアジンの合成
【化11】

10−(3,5−ジブロモフェニル)−10H−フェノチアジン(10g、23.21mmol)、5−フェニル−2−チオフェニルボロン酸(5.68g、27.85mmol)、Pd(PPh(0.46g、0.46mmol)、及び炭酸ナトリウム(7.38g、69.62mmol)をトルエン400mlとエタノール100mlとの混合溶媒に懸濁させた後、12時間還流攪拌した。
【0060】
反応終了後、ジクロロメタンで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:MC=4:1(v/v))で精製して目的の標題化合物(7.12g、収率60%)を得た。
【0061】
GC−Mass(理論値:512.48g/mol、測定値:513g/mol)。
【0062】
[ステップ2]Inv−17の合成
上記の[ステップ1]で得られた化合物10g(19.75mmol)を使用した以外は、合成例1と同様にして目的の標題化合物であるInv−17を10.84g(収率84%)得た。
【0063】
1H NMR : 6.58 (s, 1H), 6.60 (s, 1H), 6.63 (t, 2H), 6.98 (m, 6H), 7.01 (d, 2H), 7.09 (s, 1H), 7.51 (dd, 3H), 7.86 (m, 6H), 8.13 (m, 3H), 8.29 (s, 1H), 8.91 (m, 3H).
GC−Mass(理論値:659.17g/mol、測定値:660g/mol)。
【0064】
[合成例5]Inv−24の合成
[ステップ1]10−(4−ブロモフェニル)−10H−フェノチアジンの合成
【化12】

1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(37.55g、120.43mmol)、10H−フェノチアジン(15.0g、75.27mmol)、ナトリウム t−ブトキシド(21.70g、225.81mmol)、及びトリ−t−ブチルホスフィン1.83ml(7.53mmol)をトルエン400mlに溶解させ、Pd(dba)(1.38g、1.51mmol)を入れた後、12時間還流攪拌した。
【0065】
反応終了後、ジクロロメタンで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:MC=4:1(v/v))で精製して標題化合物21.3g(収率80%)を得た。
【0066】
1H NMR : 6.32 (d, 2H), 6.60 (t, 2H), 6.85 (m, 4H), 7.01 (d, 2H), 7.19 (d, 2H). GC−Mass(理論値:352.99g/mol、測定値:353g/mol)。
【0067】
[ステップ2]Inv−24の合成
上記の[ステップ1]で合成した化合物10g(28.33mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして目的の標題化合物であるInv−24を10.84g(収率84%)得た。
【0068】
1H NMR : 6.64 (m, 4H), 6.87 (t, 2H), 6.99 (m, 6H), 7.83 (m, 4H), 8.02 (d, 1H), 8.15 (m, 3H), 8.84 (t, 2H), 9.13 (s, 1H).
GC−Mass(理論値:501.16g/mol、測定値:502g/mol)。
【0069】
[合成例6]Inv−32の合成
[ステップ1]10−(6−ブロモピリジン−2−イル)−10H−フェノチアジンの合成
【化13】

2,6−ジブロモピリジン(28.28g、120.43mmol)、10H−フェノチアジン(15.0g、75.27mmol)、ナトリウム t−ブトキシド(21.70g、225.81mmol)、及びトリ−t−ブチルホスフィン1.83ml(7.53mmol)をトルエン400mlに溶解させ、Pd(dba)(1.38g、1.51mmol)を入れた後、12時間還流攪拌した。
【0070】
反応終了後、ジクロロメタンで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:MC=4:1(v/v))で精製して標題化合物18.1g(収率68%)を得た。
【0071】
1H NMR : 6.67 (t, 1H), 6.71 (d, 2H), 6.88 (m, 3H), 6.98 (m, 4H), 7.53 (dd, 1H).
GC−Mass(理論値:353.98g/mol、測定値:354g/mol)。
【0072】
[ステップ2]Inv−32の合成
上記の[ステップ1]で合成した化合物10g(28.25mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして目的の標題化合物であるInv−32を10.78g(収率76%)得た。
【0073】
1H NMR : 6.30 (d, 1H), 6.68 (t, 2H), 6.76 (d, 1H), 6.98 (m, 6H), 7.14 (t, 1H), 7.84 (m, 4H), 8.13 (d, 2H), 8.23 (d, 1H), 8.54 (d, 1H), 8.92 (d, 2H), 9.57 (s, 1H).
GC−Mass(理論値:353.98g/mol、測定値:354g/mol)。
【0074】
[合成例7]Inv−35の合成
[ステップ1]10−(4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−10H−フェノチアジンの合成
【化14】

2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン(22.21g、120.43mmol)、10H−フェノチアジン(15.0g、75.27mmol)、ナトリウム t−ブトキシド(21.70g、225.81mmol)、及びトリ−t−ブチルホスフィン1.83ml(7.53mmol)をトルエン400mlに溶解させ、Pd(dba)(1.38g、1.51mmol)を入れた後、12時間還流攪拌した。
【0075】
反応終了後、ジクロロメタンで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:MC=4:1(v/v))で精製して標題化合物16.1g(収率62%)を得た。
【0076】
1H NMR : 6.61 (t, 2H), 6.83 (t, 2H), 6.95 (m, 4H).
GC−Mass(理論値:345.98g/mol、測定値:346g/mol)。
【0077】
[ステップ2]10−(4−クロロ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−10H−フェノチアジンの合成
【化15】

上記の[ステップ1]で合成した化合物(10g、28.90mmol)、フェニルボロン酸(4.23g、34.68mmol)、Pd(PPh(0.67g、0.58mmol)及び炭酸ナトリウム(9.19g、86.71mmol)をトルエン400mlとエタノール100mlとの混合溶媒に懸濁させた後、12時間還流攪拌した。
【0078】
反応終了後、ジクロロメタンで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:MC=4:1(v/v))で精製して標題化合物6.51g(収率58%)を得た。
【0079】
GC−Mass(理論値:388.87g/mol、測定値:389g/mol)。
【0080】
[ステップ3]化合物Inv−35の合成
上記の[ステップ2]で合成した化合物10g(25.77mmol)を使用した以外は、合成例1と同様にして目的の標題化合物であるInv−35を11.81g(収率79%)得た。
【0081】
1H NMR : 6.67 (t, 2H), 6.96 (m, 6H), 7.51 (m, 3H), 7.80 (m, 4H), 8.13 (m, 3H), 8.33 (m, 3H), 8.92 (m, 3H).
GC−Mass(理論値:580.17g/mol、測定値:581g/mol)。
【0082】
[合成例8]Inv−50の合成
[ステップ1]10−(3,5−ジブロモフェニル)−10H−フェノチアジンの合成
【化16】

1,3,5−トリブロモベンゼン(51.89g、120.43mmol)、10H−フェノチアジン(15.0g、75.27mmol)、ナトリウム t−ブトキシド(21.70g、225.81mmol)、及びトリ−t−ブチルホスフィン1.83ml(7.53mmol)をトルエン400mlに溶解させ、Pd(dba)(1.38g、1.51mmol)を入れた後、12時間還流攪拌した。
【0083】
反応終了後、ジクロロメタンで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:MC=4:1(v/v))で精製して標題化合物16.5g(収率51%)を得た。
【0084】
1H NMR : 6.59 (d, 2H), 6.87 (d, 2H), 6.91 (m, 4H), 7.08 (s, 1H).
GC−Mass(理論値:430.90g/mol、測定値:431g/mol)。
【0085】
[ステップ2]化合物Inv−50の合成
上記の[ステップ1]で合成した化合物10g(23.21mmol)を使用した以外は、合成例1と同様にして目的の標題化合物であるInv−50を13.16g(収率78%)得た。
【0086】
1H NMR : 6.58 (s, 2H), 6.67 (t, 2H), 6.95 (m, 6H), 7.01 (s, 1H), 7.79 (dd, 8H), 8.10 (d, 2H), 8.51 (d, 8H), 8.60 (d, 2H), 8.76 (s, 2H).
GC−Mass(理論値:727.23g/mol、測定値:728g/mol)。
【0087】
[合成例9]Inv−51の合成
[ステップ1]10−(6−ブロモナフタレン−2−イル)−10H−フェノチアジンの合成
【化17】

2,6−ジブロモナフタレン(34.19g、120.43mmol)、10H−フェノチアジン(15.0g、75.27mmol)、ナトリウム t−ブトキシド(21.70g、225.81mmol)、及びトリ−t−ブチルホスフィン1.83ml(7.53mmol)をトルエン400mlに溶解させ、Pd(dba)(1.38g、1.51mmol)を入れた後、12時間還流攪拌した。
【0088】
反応終了後、ジクロロメタンで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:MC=4:1(v/v))で精製して標題化合物22.4g(収率74%)を得た。
【0089】
1H NMR : 6.57 (d, 1H), 6.61 (t, 2H), 6.69 (s, 1H), 6.89 (m, 3H), 6.96 (m, 4H), 7.32 (d, 2H), 7.81 (s, 1H).
GC−Mass(理論値:403.00g/mol、測定値:403g/mol)。
【0090】
[ステップ2]化合物Inv−51の合成
上記の[ステップ1]で合成した化合物10g(24.81mmol)を使用した以外は、合成例1と同様にして目的の標題化合物であるInv−51を11.35g(収率83%)得た。
【0091】
1H NMR : 6.65 (t, 2H), 6.79 (m, 2H), 6.96 (m, 6H), 7.58 (m, 3H), 7.87 (m, 4H), 8.16 (m, 3H), 8.91 (m, 4H), 9.13 (s, 1H).
GC−Mass(理論値:551.17g/mol、測定値:552g/mol)。
【0092】
[合成例10]Inv−58の合成
[ステップ1]10−(3−ブロモフェニル)−10H−フェノキサジンの合成
【化18】

1−ブロモ−3−ヨードベンゼン14.57ml(114.71mmol)、10H−フェノキサジン15.0g(81.94mmol)、ナトリウム t−ブトキシド23.62g(245.81mmol)、及びトリ−t−ブチルホスフィン1.99ml(8.19mmol)をトルエン400mlに溶解させ、Pd(dba)を1.50g(1.64mmol)入れた後、12時間還流攪拌した。
【0093】
反応終了後、ジクロロメタンで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:MC=4:1(v/v))で精製して標題化合物17.1g(収率62%)を得た。
【0094】
1H NMR : 6.28 (t, 2H), 6.49 (s, 1H), 6.65 (t, 2H), 6.81 (m, 4H), 6.96 (d, 2H), 7.25 (dd, 1H).
GC−Mass(理論値:337.01g/mol、測定値:338g/mol)。
【0095】
[ステップ2]化合物Inv−58の合成
上記の[ステップ1]で合成した化合物10g(29.67mmol)を使用した以外は、合成例1と同様にして目的の標題化合物であるInv−58を10.8g(収率75%)得た。
【0096】
1H NMR : 6.66 (m, 4H), 6.92 (t, 2H), 6.99 (m, 5H), 7.02 (s, 1H), 7.86 (m, 4H), 8.03 (d, 1H), 8.14 (m, 3H), 8.90 (t, 2H), 9.09 (s, 1H).
GC−Mass(理論値:485.18g/mol、測定値:485g/mol)。
【0097】
[合成例11]Inv−59の合成
[ステップ1]10−(5−ブロモビフェニル−3−イル)−10H−フェノキサジンの合成
【化19】

10−(3,5−ジブロモフェニル)−10H−フェノキサジン(10g、24.10mmol)、フェノールボロン酸(3.53g、28.92mmol)、Pd(PPh(0.56g、0.48mmol)、炭酸ナトリウム(7.66g、72.30mmol)をトルエン400mlとエタノール100mlとの混合溶媒に懸濁させた後、12時間還流攪拌した。
【0098】
反応終了後、ジクロロメタンで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:MC=4:1(v/v))で精製して標題化合物6.17g(収率62%)を得た。
【0099】
GC−Mass(理論値:414.29g/mol、測定値:415g/mol)。
【0100】
[ステップ2]化合物Inv−59の合成
上記の[ステップ1]で合成した化合物10g(24.21mmol)を使用した以外は、合成例1と同様にして目的の標題化合物であるInv−59を10.02g(収率81%)得た。
【0101】
1H NMR : 6.41 (t, 2H), 6.61 (m, 4H), 6.65 (s, 1H), 6.68 (s, 1H), 6.72 (dd, 2H), 7.06 (s, 1H), 7.45 (m, 3H), 7.72 (d, 2H), 7.86 (m, 5H), 8.10 (d, 2H), 8.91 (d, 2H).
GC−Mass(理論値:511.19g/mol、測定値:512g/mol)。
【0102】
[合成例12]Inv−66の合成
[ステップ1]10−(3−ブロモ−5−(フェナントレン−9−イル)フェニル)−10H−フェノキサジンの合成
【化20】

10−(3,5−ジブロモフェニル)−10H−フェノキサジン(10g、24.10mmol)、フェナントレン−9−イルボロン酸(6.42g、28.92mmol)、Pd(PPh(0.56g、0.48mmol)及び炭酸ナトリウム(7.66g、72.30mmol)をトルエン400ml及びエタノール100mlの混合溶媒に懸濁させた後、12時間還流攪拌した。
【0103】
反応終了後、ジクロロメタンで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:MC=4:1(v/v))で精製して標題化合物(7.54g、収率61%)を得た。
【0104】
GC−Mass(理論値:514.41g/mol、測定値:515g/mol)。
【0105】
[ステップ2]化合物Inv−66の合成
上記の[ステップ1]で合成した化合物10g(19.49mmol)を使用した以外は、合成例1と同様にして目的の標題化合物であるInv−66(10.95g、収率85%)を得た。
【0106】
1H NMR : 6.51 (m, 4H), 6.67 (dd, 2H), 7.01 (m, 5H), 7.66 (m, 9H), 8.14 (m, 5H), 8.86 (m, 6H).
GC−Mass(理論値:661.24g/mol、測定値:662g/mol)。
【0107】
[合成例13]10−(2−ヨードフェニル)−10H−フェノチアジンの合成
【化21】

1−ブロモ−2−ヨードベンゼン(37.55g、120.43mmol)、10H−フェノチアジン(15.0g、75.27mmol)、ナトリウム t−ブトキシド(21.70g、225.81mmol)、及びトリ−t−ブチルホスフィン(1.83ml、7.53mmol)をトルエン400mlに溶解させ、Pd(dba)(1.38g、1.51mmol)を入れた後、12時間還流攪拌した。
【0108】
反応終了後、ジクロロメタンで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:MC=4:1(v/v))で精製して標題化合物(16.9g、収率72%)を得た。
【0109】
1H NMR : 6.29 (t, 1H), 6.65 (t, 2H), 6.85 (dd, 2H), 6.88 (t, 2H), 6.97 (m, 4H), 7.07 (t, 1H).
GC−Mass(理論値:352.99g/mol、測定値:353g/mol)。
【0110】
[実施例1〜12]有機EL素子の製造
ITOが1500Å厚さで薄膜コートされたガラス基板を蒸留水超音波で洗浄した。蒸留水洗浄終了後、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールなどの溶剤で超音波洗浄を行い、乾燥させた後、プラズマ洗浄機に移送して酸素プラズマを用いて前記基板を5分間洗浄した後、真空蒸着機に基板を移送した。
【0111】
このように準備したITO透明電極の上にNPB(40nm)/合成例1〜12で合成した各化合物+10%Ir(ppy)2(acac)(20nm)/BCP(10nm)/Alq3(40nm)/LiF(1nm)/Al(200nm)の順に有機EL素子を製造した。
【0112】
[比較例1]有機EL素子の製造
発光層を形成する際、合成例で製造した化合物の代わりにCBPを発光ホスト材料として使用した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を製造した。
【0113】
上記において、NPB、CBP及びIr(ppy)2(acac)、BCPの構造は、下記の通りである。
【0114】
【化22】


【0115】
[評価例]
実施例1〜12及び比較例1で製造したそれぞれの有機EL素子について、駆動電圧、電流効率、及び輝度を測定し、その結果を下記の表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
表1の結果からわかるように、本発明に係る化合物を使用した有機EL素子(実施例1〜12)は、従来のCBPを使用した有機EL素子(比較例1)に比べて駆動電圧及び発光効率の面において格段に優れた性能を示すことが確認される。
【0118】
以上、本発明の好適な実施例について説明してきたが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の範囲内で種々に変更して実施することができ、それらの変更実施も本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化1で表される化合物:
【化1】

式中、Aは、N−含有の、6−乃至8−員のヘテロ環を示し、
Xは、−(CR2021)n−、−(SiR2223)m−、−NR24−、−O−及び−S−からなる群から選択され、n及びmは、それぞれ独立して1〜3の整数であり;
乃至R24は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキル、置換もしくは非置換の核原子数3〜40のヘテロ環、置換もしくは非置換のC1−C40のアルコキシ、置換もしくは非置換の核原子数6〜40の芳香族炭化水素、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールオキシ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキル、置換もしくは非置換のC2−C40のアルケニル、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールアミノ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC3−C20のアルキルシリル、置換もしくは非置換のC8−C40のアリールシリル、置換もしくは非置換のC7−C40のケトアリール、置換もしくは非置換のC1−C40のハロアルキル、又はシアノであり、R〜R23は、互いに隣接する基と結合して縮合脂肪族環、縮合芳香族環、縮合ヘテロ脂肪族環又は縮合ヘテロ芳香族環を形成することができ;
Lは、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキル、置換もしくは非置換の核原子数3〜40のヘテロ環、置換もしくは非置換のC1−C40のアルコキシ、置換もしくは非置換の核原子数6〜60の芳香族炭化水素、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールオキシ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキル、置換もしくは非置換のC2−C40のアルケニル、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールアミノ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC3−C20のアルキルシリル、置換もしくは非置換のC8−C40のアリールシリル、置換もしくは非置換のC7−C40のケトアリール、又は置換もしくは非置換のC1−C40のハロアルキルである。
【請求項2】
前記化1の化合物は、下記化1a、化1b又は化1cの化合物であることを特徴とする請求項1に記載の化合物:
【化2】

【化3】

【化4】

式中、A、X、R〜R19は、請求項1での定義と同様であり、
25〜R28は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキル、置換もしくは非置換の核原子数3〜40のヘテロ環、置換もしくは非置換のC1−C40のアルコキシ、置換もしくは非置換の核原子数6〜40の芳香族炭化水素、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールオキシ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキル、置換もしくは非置換のC2−C40のアルケニル、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールアミノ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC3−C20のアルキルシリル、置換もしくは非置換のC8−C40のアリールシリル、置換もしくは非置換のC7−C40のケトアリール、置換もしくは非置換のC1−C40のハロアルキル、又はシアノであり、R25〜R28は、互いに隣接する基と結合して縮合脂肪族環、縮合芳香族環、縮合ヘテロ脂肪族環又は縮合ヘテロ芳香族環を形成することができる。
【請求項3】
前記化1の化合物は、下記化1dの化合物であることを特徴とする請求項1に記載の化合物:
【化5】

式中、A、X、R〜R19は、請求項1での定義と同様であり、
複数個のZのうちの少なくとも1つは、窒素原子、残りは、炭素原子であり、Zに付着した水素原子は、非置換、あるいは少なくとも1つが、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキル、置換もしくは非置換の核原子数3〜40のヘテロ環、置換もしくは非置換のC1−C40のアルコキシ、置換もしくは非置換の核原子数6〜40の芳香族炭化水素、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールオキシ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキル、置換もしくは非置換のC2−C40のアルケニル、置換もしくは非置換のC1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC6−C40のアリールアミノ、置換もしくは非置換の(C7−C40のアリール)C1−C40のアルキルアミノ、置換もしくは非置換のC3−C20のアルキルシリル、置換もしくは非置換のC8−C40のアリールシリル、置換もしくは非置換のC7−C40のケトアリール、置換もしくは非置換のC1−C40のハロアルキル、又はシアノで置換され、これらの置換基は、互いに隣接する基と結合して縮合脂肪族環、縮合芳香族環、縮合ヘテロ脂肪族環又は縮合ヘテロ芳香族環を形成することができる。
【請求項4】
アノード、カソード及び前記アノードとカソードとの間に介在した1層以上の有機層を含む有機電界発光素子であって、
前記有機層のうちの少なくとも1つは、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物を含むことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項5】
前記有機層は、発光層、電子輸送層、正孔注入層及び正孔輸送層からなる群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記化合物は、燐光ホスト物質又は蛍光ホスト物質であることを特徴とする請求項4に記載の有機電界発光素子。

【公表番号】特表2013−516408(P2013−516408A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547024(P2012−547024)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【国際出願番号】PCT/KR2010/009503
【国際公開番号】WO2011/081449
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(504408236)ドゥーサン コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】