説明

トリフェンジオキサジン顔料

本発明は、式(I)の新規なトリフェンジオキサジン顔料に関する。


[式中、Xは水素または塩素を表し、RはC〜Cアルキル、ハロゲン、C〜Cアルコキシ、アセチルアミノ、アミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、およびC〜Cアルコキシカルボニルを含む基からの1から5個の基によって置換されたフェニル、または、5員環または6員環を形成するように、式、−NH−(CO)−NR−、−CR=CH−CO−NH−、−CR=N−CO−NH−、−CO−NH−CO−NR−、−CO−(NH)−CO−、または−O−(CO)−NH−の二価基により、2,3または3,4位において縮合されたフェニルを表し、Rは、水素、メチル、エチル、またはフェニルを表し、およびmは、1または2を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なトリフェンジオキサジン顔料、その調製方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
トリフェンジオキサジンは、強力な発色団であり、一連の青色および紫色の染料および顔料中に存在する。それらを調製する種々の方法が知られている。
【0003】
EP−A−0400429では、置換されたトリフェンジオキサジンは、合成時に必然的に、1個以上の可溶化スルホ基を分子中に導入する硫酸または発煙硫酸中で、適切に置換されたベンゾキノンを環化することによって調製され、反応性染料用の前駆物質として使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、顔料特性を有する赤色から紫色の新規なトリフェンジオキサジン化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、式(I)の化合物が、驚くべきことに、良好な顔料特性を有することを見出した。Xが、塩素であり、Rが、非置換フェニルである式(I)の非置換化合物は、耐光堅牢度が不十分のため、顔料として役立たない。
【0006】
したがって本発明は、式(I)
【0007】
【化8】

[式中、
Xは、水素または塩素であり、および
は、C〜C−アルキル、ハロゲン、C〜C−アルコキシ、アセチルアミノ、アミノカルボニル、メチルアミノカルボニルおよびC〜C−アルコキシカルボニルからなる群から選択された1から5個の基で置換されたフェニルであり;
または、5員環または6員環を形成する、式−NH−(CO)−NR−、−CR=CH−CO−NH−、−CR=N−CO−NH−、−CO−NH−CO−NR−、−CO−(NH)−CO−または−O−(CO)−NH−の二価の基で2,3位または3,4位が縮合したフェニルであり、Rは、水素、メチル、エチルまたはフェニルであり、およびmは1または2である。]
のトリフェンジオキサジン顔料を提供する。
【0008】
式(I)の好ましい化合物は、式(Ia)、(Ib)および(Ic)
【0009】
【化9】


[式中、Xは、上記に定義した通りであり;
、R、R、RおよびRは、独立に水素、ハロゲン、特に塩素、C〜C−アルキル、特にメチルまたはエチル、またはC〜C−アルコキシ、特にメトキシまたはエトキシであるが、R、RおよびRの全てが、水素であることはなく、
は、水素、フェニルまたはC〜Cアルキル、特にメチルまたはエチルであり、およびnは0または1である。]
のものである。
【0010】
EP−A−0400429は、硫酸存在下で、適切に置換された前駆物質に関して過ホウ酸塩、過炭酸塩または混合物が作用する1段法としての、トリフェンジオキサジンの調製を記載している。本発明者等は、式(I)の化合物は、この方法では得られないことを確かめた。というのは、反応が生じないか、さらに厳しい条件下でスルホン化が生じて、化合物(I)の形成に不利に作用し、および/またはアミド結合が切断されるからである。
【0011】
本発明者等は、式(I)の新規な化合物が、以下の反応式によって調製することができることを見出した。
【0012】
【化10】

ここで、XおよびRは、それぞれ上記に定義した通りである。
【0013】
FR−A−789805は、酸化剤として、ニトロベンゼン中で塩化鉄(III)を使用して、X=Clに対する式(II)および式(III)の化合物の調製を記載している。
【0014】
したがって、本発明はまた、式(I)のトリフェンジオキサジン顔料を調製する方法を提供し、この方法は、式(III)の化合物を無機酸塩化物と反応させて、式(IV)の酸塩化物を形成し、その酸塩化物を非プロトン溶媒中で、式NH−R(Rは、上記に定義した通りである)の芳香族アミンと縮合させることを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
式(III)の化合物は、FR−A−789805に示された方法によって調製することができる。しかし、驚くべきことに、本発明者等は、式(II)の化合物を出発材料として使用する場合には、硫酸中において酸化閉環を良好な収率で、分裂性の2次反応なしに同様に実施することができることを見出した。閉環は、好ましくは80%から100重量%強度、さらに好ましくは90%から96重量%強度の濃硫酸中において、0から60℃の、好ましくは5から30℃の温度で、酸化剤(好ましくは二酸化マンガン、ナトリウムペルオキソジスルフェート、カリウムペルオキソジスルフェート、アンモニウムペルオキソジスルフェート、ナトリウムペルオキソカーボネート、カリウムペルオキソカーボネート、アンモニウムペルオキソカーボネート、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウムまたは過ホウ酸アンモニウム)を使用して、好ましくは実施される。式(III)の生成物は、直接または水で希釈した後、濾過によって反応混合物から単離することができる。
【0016】
式(IV)の酸塩化物は、無機酸塩化物、好ましくはチオニルクロリド、スルフリルクロリド、オキシ塩化リン、亜リン酸(III)塩化物または亜リン酸(V)塩化物、さらに好ましくはチオニルクロリドとの反応によって遊離カルボン酸から得られる。反応は、有利には、例えば0−ジクロロベンゼンまたはクロロベンゼンの非プロトン性有機溶媒中で、式(III)の化合物に基づいて、2から5モル量の無機酸塩化物と、40から100℃、好ましくは70から90℃の温度で実施する。また、別法として、反応を触媒量のジメチルホルムアミドの存在下で、溶媒なしで、無機酸塩化物と40から100℃、好ましくは70から90℃で加熱して実施する。
【0017】
次いで、式(IV)の化合物は、非プロトン性有機溶媒、好ましくはクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミドまたはN−メチルピロリドン中、適切であれば、補助塩基(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、または酢酸カリウムなどの)の存在下で、式NH−Rのアミンと縮合させる。反応は、有利には、式(IV)の化合物に基づいて、2から3倍モル量の式NH−Rのアミンと、20から150℃および好ましくは70から120℃の温度で行われる。合成されたままの生成物(粗製顔料)を、高温、例えば60から200℃、特に70から150℃、好ましくは75から100℃で、顔料自体は溶解しない有機溶媒中で、後処理することによって、さらに改善された顔料特性をしばしば有する微細に分散された形態に転化することが、多くの場合に有利である。後処理は、好ましくは粉砕または混練操作と組み合わされる。
【0018】
本発明のトリフェンジオキサジン顔料は、天然または合成由来の高分子有機材料の、例えばプラスチック、樹脂、コーティング剤、塗料、電子写真トナーおよび顕色剤、エレクトレット材料、カラーフィルター、およびまた印刷インキを含むインキ、およびシードの顔料着色をするために有用である。
【0019】
本発明のトリフェンジオキサジン顔料により顔料着色することができる高分子有機材料は、単独でまたは混合物として、例えばセルロース化合物、例えばセルロースエーテルおよびエステル(エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロースまたは酪酸セルロースなどの)、例えば脂肪酸、脂肪油、樹脂およびその転化生成物またはポリ縮合物、ポリ付加物、付加ポリマーおよび付加コポリマーなどの合成樹脂(例えば、アミノ樹脂、特に尿素−メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、フェノールプラストおよびフェノール樹脂(ノボラックまたはレゾールなどの)、尿素樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリ酢酸ビニルまたはポリビニルエーテルなどの)、ポリカーボネート、ポリオレフィン(ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの)、ポリ(メタ)アクリレートおよびそのコポリマー(ポリアクリル酸エステルなどの)またはポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、クマロン−インデン樹脂および炭化水素樹脂、エポキシ樹脂、種々の硬化機構を有する不飽和合成樹脂(ポリエステル、アクリレート)、ワックス、アルデヒド系およびケトン系樹脂、ガム、ゴムおよびその誘導体およびラテックス、カゼイン、シリコーンおよびシリコーン樹脂である。上記の高分子有機化合物が、可塑的に変形可能な組成物、溶融物の形態であるか、紡糸液、分散液、コーティング剤、塗料または印刷インキの形態であるかは重要ではない。意図する用途に応じて、本発明のトリフェンジオキサジン顔料を、ブレンドとして、または配合物または分散液の形態において使用することは、有利であろう。本発明のトリフェンジオキサジン顔料は、顔料着色されるべき高分子有機材料に基づいて、0.05%から30重量%および好ましくは0.1%から15重量%の量において使用される。
【0020】
また、いくつかの場合において、本発明の対応する粉砕された、および/または仕上がったトリフェンジオキサジン顔料の代わりに、2m/gより大きな、好ましくは5m/gより大きなBET面積を有する粗製物を使用することも可能である。この粗製物は、単独、または適切ならば他の粗製物または既製顔料との混合物として、5%から99重量%の濃度において、液体形態または固体形態における着色濃縮物を製造するために使用することができる。
【0021】
また、本発明のトリフェンジオキサジン顔料は、電子写真トナーおよび顕色剤、例えば1成分または2成分粉体トナー(1成分または2成分顕色剤としても知られている)、磁気トナー、液体トナー、ラテックストナー、付加重合トナーおよび特殊トナーにおける着色剤として有用である。典型的トナーバインダーは、付加重合、ポリ付加およびポリ縮合樹脂(スチレン、スチレン−アクリレート、スチレン−ブタジエン、アクリレート、ポリエステルおよびフェノールエポキシ樹脂、ポリスルホン、ポリウレタン、個々に、または組み合わせて、およびまたポリスチレンおよびポリプロピレンなど)であり、これらバインダーは、それぞれ電荷制御剤、ワックスまたは流動助剤などの、さらなる成分を含むことができ、または引き続いてこれらの添加剤により変性することができる。
【0022】
本発明の顔料組成物は、粉体および粉体コーティング剤における、特に摩擦電気的または界面動電的に噴霧可能な粉体コーティング剤における着色剤としてさらに有用であり、コーティング剤は、例えば金属、木材、プラスチック、ガラス、セラミック、コンクリート、織物材料、紙またはゴムからなる物品の表面コーティング用に使用される。一般に、有用な粉体コーティング樹脂には、エポキシ樹脂、カルボキシル−およびヒドロキシル含有ポリエステル樹脂、ポリウレタン、およびアクリル樹脂が、通常の硬化剤と一緒に含まれる。樹脂の組合せも使用することができる。例えば、エポキシ樹脂は、しばしばカルボキシル−およびヒドロキシル含有ポリエステル樹脂と組み合わせて使用される。典型的硬化剤(樹脂系によって)には、例えば酸無水物、イミダゾール、およびまたジシアンジアミド、およびその派生物、ブロックドイソシアナート、ビスアシルウレタン、フェノール樹脂およびメラミン樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、オキサゾリンおよびジカルボン酸が含まれる。
【0023】
本発明は、さらにジェット印刷可能なインキ用、特にインクジェットインキ用着色剤としてのトリフェンジオキサジン顔料の使用を提供する。インクジェットインキとは、水性ベースのインキ(マイクロエマルジョンインキを含む)、および非水性ベース(溶媒ベース)、UV硬化性インキのみならず、ホットメルトプロセスにより操作するようなインキも意味する。
【0024】
溶媒ベースインクジェットインキは、本質的に0.5%から30重量%および好ましくは1%から15重量%の本発明のトリフェンジオキサジン顔料、70%から95重量%の有機溶媒または溶媒混合物および/またはヒドロトロープ化合物を含む。適切であれば、溶媒ベースインクジェットインキは、溶媒に可溶な担体材料またはバインダー(例は、ポリオレフィン、天然ゴム、合成ゴム、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリ(ビニルブチノール)、ワックス−ラテックス系、またはその組合せ)を含むことができる。適切であれば、溶媒ベースインクジェットインキは、さらに添加剤を含むことができ、例えば、湿潤剤、ガス抜き剤/脱泡剤、防腐剤および抗酸化剤である。
【0025】
マイクロエマルジョンインキは、有機溶媒、水および適切ならば、界面媒介物として作用する他の物質(界面活性剤)をベースとする。マイクロエマルジョンインキは、一般に、本発明のトリフェンジオキサジン顔料0.5%から30重量%および好ましくは1%から15重量%、水0.5%から95重量%および有機溶媒および/または界面媒介物0.5%から95重量%を含む。
【0026】
UV硬化性インキは、本質的に本発明のトリフェンジオキサジン顔料0.5%から30重量%、水0.5%から95重量%、有機溶媒または溶媒混合物0.5%から95重量%、放射線硬化性バインダー0.5%から50重量%および適切ならば、光開始剤0から10重量%を含む。
【0027】
ホットメルトインキは、通常、室温で固体で、加熱により液化するワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、またはスルホンアミドをベースとし、好ましい溶融範囲は、約60から約140℃である。
【0028】
ホットメルトインクジェットインキは、本質的にワックス20%から90重量%および本発明のトリフェンジオキサジン顔料1%から10重量%からなる。ホットメルトインクジェットインキは、さらに他のポリマー(「染料溶解剤」として)0%から20重量%、分散剤0%から5重量%、粘度改質剤0%から20重量%、可塑剤0%から20重量%、粘着性付与添加剤0%から10重量%、透明性安定剤(例えば、ワックスの結晶化を防止する)0%から10重量%およびまた抗酸化剤0%から2重量%をさらに含んでもよい。
【0029】
ジェット印刷可能なインキ、特にインクジェットインキは、トリフェンジオキサジン顔料を、マイクロエマルジョン媒体中に、非水性媒体中に、またはUV硬化性インキ製造用の媒体中に、またはホットメルトインクジェットインキ製造用のワックス中に分散させることによって製造することができる。
【0030】
有利には、インクジェット用途の得られたインキは、引き続き、例えば1μmフィルターを通して濾過される。
【0031】
さらに、本発明のトリフェンジオキサジン顔料は、加法的および減法的発色の両方のカラーフィルター用着色剤として有用であり、およびまた電子インキ(「e−インキ」)または電子紙(「e−紙」)として有用である。カラーフィルター、反射ならびに透明カラーフィルター、を製造するためには、顔料は、それぞれのLCD構成部品(例えば、TFT−LCD=薄膜トランジスタ液晶ディスプレーまたは例えば、((s)TN−LCD=(超)ツイストネマチック−LCD)に対する適切なバインダー(アクリレート、アクリル酸エステル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エポキシドポリエステル、メラミン、ゼラチン、カゼイン)中のペーストの形態において、または顔料着色されたフォトレジストとして適用される。高い熱安定性、高い顔料純度は、安定なペーストまたは顔料着色されたフォトレジストに対して不可欠である。その上、顔料着色されたカラーフィルターは、インクジェット印刷プロセスまたは他の適切な印刷プロセスによって適用することもできる。
【0032】
コーティング部門において、本発明により製造された顔料の特性を評価するために、中油、不乾性アルキド樹脂(AM)をベースとするアルキド−メラミン樹脂ワニスを、多数の現存するコーティング剤の中から選択した。
【0033】
本発明の顔料は、良好な堅牢度特性で注目に値し、さらに特に、これらは高い溶媒堅牢度および高い耐光性堅牢度を有する。本発明の顔料は、環境上不安全な重金属を含まない。列挙した特性は、本発明の顔料を、印刷部門(特にジェット印刷できないインキ、インクジェットインキの製造)における着色剤として、またコーティング剤およびプラスチック、カラーフィルター、トナーにおける使用に対して、およびシードの着色に対して有用にする。
【0034】
以下の実施例において部は、重量部による。
【実施例1】
【0035】
エタノール(96%)62.5部に、4−アミノ安息香酸3.4部を添加する。この溶液に水1.0部および酢酸ナトリウム(無水)4.1部を添加する。混合物を加熱し、クロラニル3.2部を59から69℃で、1回に少しずつ混合する。約77℃で、反応時間17時間後、バッチを撹拌しながら室温に冷却させる。塩酸(30%)3.5部を添加後、バッチを室温で1時間撹拌する。沈殿を濾別し、エタノールで、次いで、蒸留水で洗浄し、減圧下で、75℃で乾燥して目標化合物4.9部を得る。精製には、プレスケーキをNMP38.6部中で1時間撹拌し、残渣を濾別し、さらにNMP38.6部で洗浄する。次いで、プレスケーキをこの精製操作にもう一度かけ、NMPで軽く洗った後、蒸留水で洗浄して、次式を有する化合物3.6部が得られる:
【0036】
【化11】

収率:64%
H NMR(DMSO−d6):12.8(s(br)、2H、COOH);9.8(s、2H、アミド−NH);7.8(d、4H、arom.CH、J=8.7Hz);7.1(d、4H、arom.CH、J=8.7Hz)
MALDI−TOF(DHB;m/z):445.5
【実施例2】
【0037】
硫酸(96%)45.6部に、実施例1のベンゾキノン2.5部を添加し、室温で15分間撹拌する。90分間に、温度が40℃を超えないように、二酸化マンガン(90−95%、活性化)2.0部を添加する。懸濁液を濾過する。フィルター残渣を硫酸(96%)で完全に洗浄し、暗褐色の濾液を氷水330部中に注ぐ。15分後、沈殿を濾別し、フィルターケーキを、酸がなくなるまで蒸留水で完全に洗浄し、エタノールで洗浄する。精製には、固体をジオキサン30部に懸濁し、数分間沸騰加熱し、引き続いて、残渣を熱い間に濾別する。酸化生成物を引き続いて、再度この精製手順にかける。濾過した後に、ジオキサンで完全に洗浄し、得られた赤褐色固体を減圧下で、80℃で乾燥して、以下の式のトリフェンジオキサジン1.1部が得られる:
【0038】
【化12】

収率:45%
MALDI−TOF(DHB;m/z):443.3
【実施例3】
【0039】
実施例2のトリフェンジオキサジン58.9部およびDMF1.0部を塩化チオニル615.1部に添加する。75℃で6時間の反応時間の後、バッチを氷で冷却する。氷浴中で1時間撹拌した後、沈殿を吸引して濾別し、ヘキサンで完全に洗浄して以下の式の褐色固体39.6部が得られる:
【0040】
【化13】

収率:62%
MALDI−TOF(DHB):480.4
【実施例4】
【0041】
実施例3の微粉化したトリフェンジオキサジン酸塩化物(バッチサイズ:表参照)1.0当量を撹拌しながらNMPに添加する。この混合物にアミン成分(NMP中)2.0から2.5当量を添加し、適切ならば、炭酸カリウム2.0から2.5当量を添加し、温度の上昇を観察する。20〜120℃(表参照)での反応時間の後に、懸濁液を冷却させ、沈殿を濾別する。フィルターケーキをエタノールおよび水で完全に洗浄する。粗製顔料をDMF中に懸濁し、120℃で撹拌する。沈殿を熱い状態で濾別し、DMFで、次いで水で洗浄し、減圧下で乾燥して、以下の式の赤褐色から赤紫色生成物が得られる:
【0042】
【化14】

式中、Rは、使用したアミン成分によって決まる。
【0043】
【表1】


【0044】
【表2】

【実施例5】
【0045】
o−ジクロロベンゼン12.0部中において、実施例3の微細に粉体化された酸塩化物1.0部の初期仕込みを調製し、o−ジクロロベンゼン3.0部中に溶解した3,5−ジクロロアニリン1.4部と混合した。120℃で2時間の反応時間の後、バッチを室温に冷却し、沈殿を濾別し、エタノールで、および水で洗浄する。粗製顔料をDMF中に懸濁させ120℃で撹拌した。沈殿を熱い状態で濾別し、DMFで、次いで水で洗浄し、減圧下で乾燥して、以下の式の褐色生成物が得られる:
【0046】
【化15】

収率:45%
MALDI−TOF(DHB;m/z):730.7
【0047】
(応用例)
以下の表の顔料4部を、ブタノール中ココアルデヒド−メラミンの60重量%溶液50部、キシレン10部およびエチレングリコールモノメチルエーテル10部の混合物96部と、30分間ビーズ粉砕する。得られた懸濁液を1枚の厚紙に塗布し、30分間空気乾燥し、140℃で30分間焼き付けた。前記実施例において調製された顔料の溶媒堅牢性、色強度および光堅牢性を、表3に報告する。
【0048】
【表3】


【0049】
(比較例)
o−ジクロロベンゼン24.5部中において、実施例3の微細に粉体化された酸塩化物1.0部の初期仕込みを調製する。アニリン1.0部を添加後、反応混合物を150℃に加熱する。さらにo−ジクロロベンゼン10.0部を添加し、反応バッチを引き続いて、30分間170℃に加熱する。懸濁液を、さらに半時間、170℃で撹拌する。冷却後、粗製生成物を濾別し、フィルターケーキをo−ジクロロベンゼンで、および水で洗浄し、減圧下で80℃で乾燥する。粗製顔料をDMF20.0部中に懸濁させ、撹拌還流する。2時間の反応時間の後、沈殿を熱い状態で濾別し、DMFで、次いで水で洗浄し、減圧下で乾燥して、以下の式の赤色生成物が得られる:
【0050】
【化16】

収率:86%
この化合物は、光堅牢性(LiE/AH=3)が低いので、実用に適さないことが分かった。
【0051】
LME =溶媒堅牢性
FST =色強度
LiE/VT=光堅牢性 マストーン
LiE/AH=光堅牢性 リダクション
溶媒堅牢性は、DIN54002 5点グレースケールを対照にして求めた。
色強度は、1/3標準深さの色相に対して着色顔料1部を生成するのに必要なTiOの部数を示す:1:×TiO(色強度、およびこの測定は、DIN EN ISO787−26)により定義される)。
【0052】
光堅牢性は、マストーンおよびリダクションにおける、DIN 54003のライン上の8点ブルースケールを対照にして求めた:「8」が、最高の光堅牢性に対応し、「1」が、最低に対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のトリフェンジオキサジン顔料
【化1】

[式中、
Xは、水素または塩素であり、および
は、C〜C−アルキル、ハロゲン、C〜C−アルコキシ、アセチルアミノ、アミノカルボニル、メチルアミノカルボニルおよびC〜C−アルコキシカルボニルからなる群から選択された1から5個の基で置換されたフェニルであり;
または、5員環または6員環を形成する、式−NH−(CO)−NR−、−CR=CH−CO−NH−、−CR=N−CO−NH−、−CO−NH−CO−NR−、−CO−(NH)−CO−または−O−(CO)−NH−の二価の基で2,3位または3,4位が縮合したフェニルであり、Rは、水素、メチル、エチルまたはフェニルであり、およびmは1または2である。]。
【請求項2】
式(Ia)
【化2】

[式中、R、R、R、RおよびRは、独立に水素、ハロゲン、特に塩素、C〜C−アルキル、特にメチルまたはエチル、またはC〜C−アルコキシ、特にメトキシまたはエトキシであるが、R、RおよびRの全てが、水素であることはない。]
を特徴とする、請求項1に記載のトリフェンジオキサジン顔料。
【請求項3】
式(Ib)
【化3】

[式中、Rは、水素、フェニルまたはC〜C−アルキル、特にメチルまたはエチルであり、およびnは0または1である。]
を特徴とする、請求項1に記載のトリフェンジオキサジン顔料。
【請求項4】
式(Ic)
【化4】

[式中、Rは、水素、フェニルまたはC〜C−アルキル、特にメチルまたはエチルである。]
を特徴とする、請求項1に記載のトリフェンジオキサジン顔料。
【請求項5】
式(III)の化合物
【化5】

を無機酸塩化物と反応させて、式(IV)の酸塩化物
【化6】

を形成し、後者の酸塩化物を、非プロトン性有機溶媒中で、式NH−Rの芳香族アミンと縮合させることを含む、請求項1から4の一項以上に記載のトリフェンジオキサジン顔料を調製する方法。
【請求項6】
式(III)の中間体が、濃硫酸中、酸化剤を使用した、式(II)の化合物
【化7】

の閉環によってもたらされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
天然または合成由来の高分子有機材料を顔料着色するための、請求項1から4の一項以上に記載のトリフェンジオキサジン顔料の使用。
【請求項8】
プラスチック、樹脂、コーティング剤、塗料、電子写真トナーおよび顕色剤、エレクトレット材料、カラーフィルター、印刷インキを含むインキ、およびシードを顔料着色するための、請求項7に記載の使用。

【公表番号】特表2007−520596(P2007−520596A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548250(P2006−548250)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000197
【国際公開番号】WO2005/068560
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(598109501)クラリアント・プロドゥクテ(ドイチュラント)ゲーエムベーハー (45)
【氏名又は名称原語表記】Clariant Produkte (Deutschland)GmbH
【Fターム(参考)】