説明

トリポート型等速ジョイントの組立状態検査方法

【課題】駆動力伝達機構を構成するトリポート型等速ジョイントが正規に組み立てられたものであるか誤って組み立てられたものであるかを容易に判別する。
【解決手段】正規に組み立てられたトリポート型等速ジョイントがドライブシャフトの両端に連結されて構成された駆動力伝達機構に対して回転駆動力を付与し、所定時間が経過した後、回転を停止させる。この回転停止直後におけるドライブシャフトの回転トルク値の減少量を測定しておく。同様に、片方ないし双方が誤って組み立てられたトリポート型等速ジョイントが連結されて構成された駆動力伝達機構における回転トルク値の減少量も測定する。そして、検査対象である駆動力伝達機構における回転トルク値の減少量を調べ、この減少量と、予め測定された前記減少量とを比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のドライブシャフトに取り付けられたトリポート型等速ジョイントが適確に組み立てられているか否かを判定するトリポート型等速ジョイントの組立状態検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、ディファレンシャルギヤからハブを介して車輪に回転駆動力を伝達する駆動力伝達機構が搭載される。この駆動力伝達機構は、ドライブシャフトの両端部に等速ジョイントがそれぞれ連結されることで構成され、一般的には、ディファレンシャルギヤとドライブシャフトがトリポート型等速ジョイントを介して連結され、ドライブシャフトとハブがバーフィールド型等速ジョイントを介して連結されるが、場合によっては、上記した両連結がトリポート型等速ジョイントを介して行われることもある。
【0003】
通常、量産の組立ラインでは、複数車種の生産に対応するべく、複数種類の駆動力伝達機構が組み立てられる。すなわち、例えば、ある車種用の駆動力伝達機構を組み立てる際には、図6に示すように、インナ部材1のトラニオン2a〜2cに対し、ニードルベアリング3等の転動部材を介してローラ部材4が装着されるトリポート型等速ジョイントが選定されてドライブシャフトの両端に連結され、別の車種用の駆動力伝達機構を組み立てる際には、図7に示すように、インナ部材5のトラニオン6a〜6bに対してローラ部材7が直接装着されるトリポート型等速ジョイントが選定されてドライブシャフトの両端に連結される。なお、トラニオン6a〜6cは、トラニオン2a〜2cに比して大径である。
【0004】
このように、1ラインで別種の駆動力伝達機構を組み立てる場合、作業者が、インナ部材とローラ部材の組み合わせを誤る懸念がある。具体的には、例えば、図8に示すように、ニードルベアリング3(図6参照)等を介してローラ部材4を装着すべきインナ部材1のトラニオン2a〜2cに対し、トラニオン6a〜6c(図7参照)に直接装着される型のローラ部材7が装着される。
【0005】
この場合、ニードルベアリング3で形成される内接円の直径に比して内径が大きいローラ部材7がトラニオン2a〜2cに装着されたことになる。このため、トラニオン2a〜2cの側壁とローラ部材7の内壁との間にクリアランス8が生じ、その結果、ローラ部材7にいわゆるガタツキが発生する。このような状態の駆動力伝達機構を自動車に搭載することはできないので、自動車に搭載する前に、正規のローラ部材が装着された駆動力伝達機構であるか否かを検査する必要がある。
【0006】
この種の組立状態検査方法ないしその装置に関し、本出願人は、特許文献1、2に開示された方法ないし装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平6−1234号公報
【特許文献2】特公平5−41936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記特許文献1、2に開示された従来技術に関連してなされたもので、例えば、ドライブシャフトの両端部にトリポート型等速ジョイントを連結した場合においても、該トリポート型等速ジョイントを構成するインナ部材に正規のローラ部材が装着されているか否かを容易に判別することが可能なトリポート型等速ジョイントの組立状態検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、アウタ部材と、インナ部材の突出部に装着されて前記アウタ部材の内壁に形成されたトラック溝に摺接するローラ部材とを有するトリポート型等速ジョイントが適確に組み立てられているか否かを判定するトリポート型等速ジョイントの組立状態検査方法であって、
前記トリポート型等速ジョイントが一端に取り付けられたドライブシャフトを回転駆動させる工程と、
前記ドライブシャフトの回転駆動を停止させ、その直後の回転トルク値を測定する工程と、
を有し、
前記回転トルク値が予め設定された基準トルク値以下となったときに、前記インナ部材の前記突出部に対して正規のローラ部材が装着されたと判断する一方、前記回転トルク値が前記基準トルク値を上回ったときに、前記インナ部材の前記突出部に対して正規のローラ部材ではないものが装着されたと判断することを特徴とする。
【0010】
例えば、転動部材を介してローラ部材が装着される型のトラニオンに対し、トラニオンに対して直接装着される型のローラ部材が装着された場合、トラニオンとローラ部材の間にクリアランスが生じる。
【0011】
しかしながら、クリアランスが生じているか否か、換言すれば、正規のローラ部材がトラニオンに装着されたか否かを、ドライブシャフトを回転させている最中の回転トルク値で判断することは容易ではない。正規のローラ部材がトラニオンに装着されている場合と、誤ったローラ部材がトラニオンに装着されている場合とで回転トルク値に顕著な相違がなく、判別が容易ではないからである。
【0012】
そこで、本発明においては、ドライブシャフトの回転を停止させ、その直後の回転トルク値を調べるようにしている。正規のローラ部材がトラニオンに装着されている場合、誤ったローラ部材がトラニオンに装着されている場合に比して回転トルク値が大きく減少する。従って、正規組立品における回転トルク値の減少量を判断基準値に設定し、この判断基準値と、検査対象であるトリポート型等速ジョイントの回転停止直後の回転トルク値とを比較することにより、検査対象であるトリポート型等速ジョイントが正規に組み立てられたものであるか否か、換言すれば、正規のローラ部材がトラニオンに装着されているか否かを容易に判別することができる。
【0013】
しかも、本発明は、ドライブシャフトを回転させている最中に一般的な検査を行った後、回転停止直後の回転トルク値を調べることによって行えばよい。すなわち、通常の検査に付随して行うことが可能であり、しかも、検査時間が長時間にわたることもない。また、検査自体も著しく簡便である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ドライブシャフトの回転停止直後の回転トルク値を測定し、その結果を所定の判断基準値と比較するという簡便な検査を行うことによって、前記ドライブシャフトに連結されたトリポート型等速ジョイントが正規に組み立てられたものであるか否かを容易に判別することができる。
【0015】
すなわち、本発明によれば、トリポート型等速ジョイントが正確に組み立てられたものであるか、又は、誤って組み立てられたものであるかを迅速且つ容易に判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係る組立状態検査方法を実施するための検査装置の概略ブロック構成図である。
【図2】正規に組み立てられたトリポート型等速ジョイントがドライブシャフトの両端に連結されて構成された駆動力伝達機構の一部断面概略全体図である。
【図3】前記トリポート型等速ジョイントの要部分解斜視図である。
【図4】本実施の形態に係る組立状態検査方法の概略フロー図である。
【図5】正規に組み立てられたトリポート型等速ジョイントがドライブシャフトの両端に連結されて構成された駆動力伝達機構、片方又は双方のトリポート型等速ジョイントが誤って組み立てられた上で連結されて構成された駆動力伝達機構の回転トルク値の経時変化(波形)を示すグラフである。
【図6】転動部材を介してローラ部材が装着されるタイプのインナ部材に対し、転動部材を介して正規のローラ部材が装着された状態を示す概略全体正面図である。
【図7】ローラ部材が直接装着されるタイプのインナ部材に対し、正規のローラ部材が直接装着された状態を示す概略全体正面図である。
【図8】転動部材を介してローラ部材が装着されるタイプのインナ部材のトラニオンに、トラニオンに対して直接装着されるタイプのローラ部材が誤って装着された状態を示す概略全体正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るトリポート型等速ジョイントの組立状態検査方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る組立状態検査方法を実施するための検査装置10の概略ブロック構成図である。この検査装置10は、検査対象である駆動力伝達機構12aを保持する保持具13a、13bを備える。
【0019】
先ず、トラニオンに対して正規のローラ部材が装着された駆動力伝達機構12につき、その一部断面概略全体図である図2を参照して説明する。この駆動力伝達機構12は、ドライブシャフト14の両端部にトリポート型等速ジョイント16a、16bが連結されて構成される。なお、これらトリポート型等速ジョイント16a、16bは同一構成であるが、便宜上、別の参照符号を付して両者を区別する。
【0020】
図3に示すように、トリポート型等速ジョイント16aは、アウタ部材18と、ドライブシャフト14に連結されたインナ部材20とを備え、この中のアウタ部材18は、有底円筒形状のカップ状部22と、該カップ状部22の一端部に突出形成された軸部24とを有する。この軸部24は、図示しないディファレンシャルギヤの回転軸に連結され、その回転駆動力を、カップ状部22及びインナ部材20を介してドライブシャフト14に伝達する。
【0021】
カップ状部22の内壁には、互いに120°の間隔で離間する3本のトラック溝26a〜26cが形成されている。一方、インナ部材20は、円盤形状体に貫通孔27が形成されることでリング形状をなす円環状部28と、該円環状部28の側壁に突出形成された3本のトラニオン30a〜30cとを有する。前記貫通孔27の内壁には、該貫通孔27の軸線方向に沿って延在する図示しないスプラインが設けられる。
【0022】
トラニオン30a〜30cは、その高さ方向略中腹部が若干膨出した円柱体形状をなす。トラニオン30a〜30c中の隣接するもの同士は互いに120°の等間隔で離間しており、従って、トラニオン30a〜30cの位相は、トラック溝26a〜26cの位相と一致する。そして、トラニオン30a〜30cの各々は、トラック溝26a〜26cに向かって延在する。
【0023】
トラニオン30a〜30cには、それぞれ、ローラ部材32a〜32cが装着される。これらローラ部材32a〜32cとトラニオン30a〜30cとの間には、複数本のニードルベアリング34等の転動体が介在される。このため、ローラ部材32a〜32cは、その中心を回転中心として、トラニオン30a〜30cに対して回転自在である。
【0024】
ローラ部材32a〜32cには、その直径方向内方に向かって突出する1組のフランジ部36a、36bが形成されている。全てのニードルベアリング34は、これらフランジ部36a、36bに挟持されることによってローラ部材32a〜32cに保持される。
【0025】
ドライブシャフト14の一端部は、カップ状部22に挿入されて前記インナ部材20の貫通孔27に通される。このドライブシャフト14の側壁にも図示しないスプラインが形成されており、該スプラインは、ドライブシャフト14の一端部がインナ部材20の貫通孔27に通される際、該貫通孔27の内壁に形成された前記スプラインに噛合する。なお、図3における参照符号37は、ドライブシャフト14からのインナ部材20の抜け止めをなす概略C字形状のクリップを示す。
【0026】
図3では省略しているが、カップ状部22からドライブシャフト14にわたって継手用ブーツ38が装着される(図1及び図2参照)。
【0027】
残余のトリポート型等速ジョイント16bは、軸部24がハブ(図示せず)に連結されることを除いて、トリポート型等速ジョイント16aと同様に構成されている。従って、同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0028】
次に、検査装置10につき図1を参照して説明する。ここで、図1におけるトリポート型等速ジョイント16c、16dは、正規のローラ部材32a〜32cがトラニオン30a〜30cに装着されることによって図2に示すトリポート型等速ジョイント16a、16bと同一構成となるものとする。
【0029】
図1に示すように、検査装置10は、トリポート型等速ジョイント16c、16dを構成する各アウタ部材18、18の軸部24、24を回動自在に保持する1組の保持具13a、13bを有する。そして、一方のトリポート型等速ジョイント16cには、トリポート型等速ジョイント16d及びドライブシャフト14と同心となるように、前記保持具13aを介して駆動軸40が連結される。また、残余のトリポート型等速ジョイント16dには、前記保持具13bを介して負荷手段41が連結されている。この負荷手段41により、ドライブシャフト14が回転動作した際、該ドライブシャフト14に対して負荷が付与される。
【0030】
駆動軸40は、トルクメータ42及び駆動ベルト44を介して駆動モータ46に連結されている。後述するように、この駆動モータ46が駆動されることに伴い、トリポート型等速ジョイント16c、16d及びドライブシャフト14に回転駆動力が付与され、その結果、ドライブシャフト14が回転付勢される。
【0031】
トルクメータ42は、ドライブシャフト14が回転付勢された際に駆動軸40に発生するトルク、すなわち、ドライブシャフト14の回転トルクを検出して該回転トルク値に応じた信号を出力する。この出力信号は、正誤判定器48に接続されたストレインアンプ50によって増幅される。
【0032】
増幅された信号は、波形比較判定器52、又は、アナログ/デジタル(A/D)変換器54に送られる。波形比較判定器52に送られた信号は入力ユニット56を介して、一方、A/D変換器54に送られた信号は、該A/D変換器54によってアナログ/デジタル変換された後、中央演算処理装置(CPU)58に送られる。後述するように、CPU58は、トリポート型等速ジョイント16c、16dにおける組み立ての正誤を判定する。参照符号60は、その判定結果を表示する表示器である。
【0033】
CPU58には、計算機リンクユニット62が接続される。さらに、この計算機リンクユニット62にはパーソナルコンピュータ(PC)64が接続されており、前記回転トルク値の経時変化は、波形として該PC64に保存される。また、このPC64には、トリポート型等速ジョイント16c、16dの組み立ての正誤の判定結果も記録される。
【0034】
以上の構成において、正誤判定器48の全体の作動は、シーケンサ66によって制御される。
【0035】
本実施の形態に係る組立状態検査方法は、このように構成された検査装置10を用い、且つ図4に示す概略フローに従って以下のようにして実施される。
【0036】
先ず、トリポート型等速ジョイント16c、16dをドライブシャフト14に連結して駆動力伝達機構12aを構成する。
【0037】
次に、これらトリポート型等速ジョイント16c、16dを同心状態で保持具13a、13bに保持する。その後、前記シーケンサ66の制御作用下に駆動モータ46が駆動され、これに伴い、駆動軸40に連結されたトリポート型等速ジョイント16cに回転駆動力が付与される。その結果、ドライブシャフト14及びトリポート型等速ジョイント16dが回転付勢される(ステップS1)。
【0038】
波形比較判定器52には、図2に示すトリポート型等速ジョイント16a、16bがドライブシャフト14に連結されて構成された駆動力伝達機構12を検査装置10に組み込んで測定した回転トルク値が予め入力されている。波形比較判定器52は、この回転トルク値と、駆動力伝達機構12aにおける回転トルク値を比較し、その比較結果を、入力ユニット56を介してCPU58に送る(ステップS2)。
【0039】
上記したように、トリポート型等速ジョイント16c又はトリポート型等速ジョイント16dのインナ部材を構成するトラニオン30a〜30cに対して正規のローラ部材32a〜32cが装着された場合、トラニオン30a〜30cとローラ部材32a〜32cの間にニードルベアリング34が介在する。これに対し、ニードルベアリング34を介さずトラニオン30a〜30cに対して直接装着される型のローラ部材が誤って装着された場合、図8と同様に、トラニオン30a〜30cとローラ部材の間にクリアランスが生じる。勿論、トリポート型等速ジョイント16c又はトリポート型等速ジョイント16dの双方に、トラニオン30a〜30cに対して直接装着される型のローラ部材が誤って装着された場合も同様である。
【0040】
すなわち、この場合、トリポート型等速ジョイント16cが誤って組み立てられたものである一方でトリポート型等速ジョイント16dが正規に組み立てられたもの、トリポート型等速ジョイント16cが正規に組み立てられたものである一方でトリポート型等速ジョイント16dが誤って組み立てられたもの、トリポート型等速ジョイント16c、16dの双方が誤って組み立てられたものという3通りの誤組立がある。
【0041】
しかしながら、ドライブシャフト14が回転動作している最中の回転トルク値は、図5に示すように、トリポート型等速ジョイント16c、16dの双方が正規に組み立てられた(すなわち、トリポート型等速ジョイント16a、16bである)駆動力伝達機構12の回転トルク値と、トリポート型等速ジョイント16c、16dの少なくともいずれか一方が誤って組み立てられた駆動力伝達機構12の回転トルク値と略同等である。従って、ドライブシャフト14の回転途中のトルク値を比較することでは、誤組立であるか否かを判別することは容易ではない。
【0042】
そこで、本実施の形態では、ドライブシャフト14の回転を停止し、この回転停止直後の回転トルク値を比較する(ステップS3)。
【0043】
すなわち、ドライブシャフト14の回転が開始されて一定時間が経過した後、駆動モータ46を停止する。この停止に対し、ドライブシャフト14は、慣性力によって回転動作を続行する。
【0044】
この際、図5に示すように、A/D変換器54を経由してCPU58に入力された信号、すなわち、回転トルク値が減少する。この減少量は、トリポート型等速ジョイント16c、16dの双方が正規に組み立てられた(すなわち、トリポート型等速ジョイント16a、16bである)駆動力伝達機構12で最も大きく、トリポート型等速ジョイント16c、16dのいずれか一方が誤って組み立てられたもの、トリポート型等速ジョイント16c、16dの双方が誤って組み立てられたものの順で小さくなる。
【0045】
この理由は、トリポート型等速ジョイント16c、16dのトラニオン30a〜30cに対して正規のローラ部材32a〜32cが装着されている場合には、トラニオン30a〜30cとローラ部材32a〜32cの間にクリアランスがほとんどないので、ドライブシャフト14に対して慣性力によって回転を続行させようとするトルクが発生するのに対し、誤ったローラ部材が装着された場合には、トラニオン30a〜30cとローラ部材の間に比較的大きなクリアランスが存在するようになるので、慣性力が伝達され難くなるからであると推察される。勿論、トリポート型等速ジョイント16c、16dの双方において誤ったローラ部材が装着された場合、慣性力が一層伝達され難くなり、この結果、回転トルク値の減少量が少なくなる。
【0046】
従って、CPU58に対し、トリポート型等速ジョイント16a、16bが連結された駆動力伝達機構12の回転停止直後の回転トルク値の減少量を予め入力しておき、この減少量と、トリポート型等速ジョイント16c、16dが連結された駆動力伝達機構12の回転停止直後の回転トルク値の減少量とを比較することにより、トリポート型等速ジョイント16c、16dのトラニオン30a〜30cに対して正規のローラ部材が装着されているか否かを容易に判別することができる。
【0047】
すなわち、CPU58には、トリポート型等速ジョイント16a、16bが連結された駆動力伝達機構12の回転開始から、回転が停止されて回転トルク値が一定となるまでの回転トルク値の経時変化(波形)が入力されるとともに、回転停止直後の回転トルク値の減少量の平均値、ないしは該平均値を若干上回る値が判断基準値(基準トルク値)として設定されている。また、トリポート型等速ジョイント16aに代え、誤ったローラ部材がトラニオン30a〜30bに装着されたトリポート型等速ジョイント16cと、トリポート型等速ジョイント16bが連結された駆動力伝達機構12b、トリポート型等速ジョイント16aと、誤ったローラ部材がトラニオン30a〜30bに装着されたトリポート型等速ジョイント16dとが連結された駆動力伝達機構12c、及び、誤ったローラ部材がトラニオン30a〜30bに装着されたトリポート型等速ジョイント16c、16dが連結された駆動力伝達機構12dにおける回転トルク値の経時変化(波形)も、CPU58に併せて入力されている。
【0048】
なお、図5においては、駆動力伝達機構12、12b、12c、12dの波形を、それぞれ、太い実線、太い破線、細い破線、細い実線で示している。
【0049】
CPU58は、検査対象である駆動力伝達機構12aにおける回転停止直後の回転トルク値の減少量を前記判断基準値と対比し、減少量が判断基準値を上回る場合、トリポート型等速ジョイント16c、16dの少なくともいずれか一方が誤って組み立てられたもの、すなわち、駆動力伝達機構12aが駆動力伝達機構12b、12c、12dのいずれかであると判断し(ステップS4)、表示器60に「誤組立」と表示する。
【0050】
この場合、作業者は、PC64に記録された波形と、図5の波形とを対比し、トリポート型等速ジョイント16c、16dのいずれが誤って組み立てられているのか、又は双方とも誤って組み立てられているのかを判断して、誤って組み立てられた方を分解した後、再組立を行う(ステップS5)。
【0051】
一方、回転トルク値の減少量が判断基準値以下である場合、CPU58は、トリポート型等速ジョイント16c、16dが正規に組み立てられたもの、すなわち、駆動力伝達機構12aが駆動力伝達機構12であると判断し(ステップS4)、表示器60に「正規組立」と表示する。この場合、駆動力伝達機構12aの検査が終了し、該駆動力伝達機構12aが次工程に搬送される。
【0052】
以上のように、本実施の形態によれば、回転停止直後の回転トルク値に基づいて判断を行うという簡素な工程を行うことにより、検査対象である駆動力伝達機構12aを構成するトリポート型等速ジョイント16c、16dが正規に組み立てられたものであるか、誤って組み立てられたものであるかを容易に判別することができる。
【0053】
なお、駆動力伝達機構12aが回転動作している間に、所定の作動確認を行うようにしてもよい(ステップS2)ことは勿論である。
【0054】
また、トリポート型等速ジョイント16b(16d)に代替してバーフィールド型等速ジョイントを連結することで駆動力伝達機構を構成するようにしてもよい。この場合において、駆動力伝達機構を回転動作させている最中、前記特許文献1に記載される検査を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…検査装置 12、12a〜12d…駆動力伝達機構
14…ドライブシャフト 16a〜16d…トリポート型等速ジョイント
18…アウタ部材 20…インナ部材
22…カップ状部 24…軸部
26a〜26c…トラック溝 30a〜30c…トラニオン
32a〜32c…ローラ部材 34…ニードルベアリング
40…駆動軸 42…トルクメータ
44…駆動ベルト 46…駆動モータ
52…波形比較判定器 58…中央演算処理装置
60…表示器 62…計算機リンクユニット
64…パーソナルコンピュータ 66…シーケンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタ部材と、インナ部材の突出部に装着されて前記アウタ部材の内壁に形成されたトラック溝に摺接するローラ部材とを有するトリポート型等速ジョイントが適確に組み立てられているか否かを判定するトリポート型等速ジョイントの組立状態検査方法であって、
前記トリポート型等速ジョイントが一端に取り付けられたドライブシャフトを回転駆動させる工程と、
前記ドライブシャフトの回転駆動を停止させ、その直後の回転トルク値を測定する工程と、
を有し、
前記回転トルク値が予め設定された基準トルク値以下となったときに、前記インナ部材の前記突出部に対して正規のローラ部材が装着されたと判断する一方、前記回転トルク値が前記基準トルク値を上回ったときに、前記インナ部材の前記突出部に対して正規のローラ部材ではないものが装着されたと判断することを特徴とするトリポート型等速ジョイントの組立状態検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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