説明

トリポード型等速自在継手およびトリポード型等速自在継手の外側継手部材

【課題】強度の低下を伴わず、大幅な軽量化が可能なトリポード型等速自在継手およびトリポード型等速自在継手の外側継手部材を提供する。
【解決手段】内周に軸線方向に延びる三本のトラック溝26を設けると共に各トラック溝26の内側壁に互いに対向するローラ案内面27,27を設けたトリポード型等速自在継手の外側継手部材である。内周にトラック溝26が形成された金属製のカップ部24を備える。カップ部24に薄肉部40となる小外径部41を形成し、小外径部41をFRP層42にて被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドライブシャフトやプロペラシャフト等に使用されるトリポード型等速自在継手およびトリポード型等速自在継手の外側継手部材に関する。
【背景技術】
【0002】
等速自在継手(トリポード型等速自在継手)は、図15と図16に示すように、外側継手部材1と、内側継手部材としてのトリポード部材2と、トルク伝達部材としてのローラ3を主要な構成要素としている。
【0003】
外側継手部材1は一体に形成されたマウス部(カップ部)4と軸部5とからなる。マウス部4は、一端にて開口したカップ状で、内周の円周方向三等分位置に軸方向に延びるトラック溝6が形成してある。各トラック溝6の円周方向で向き合った内側壁にローラ案内面7、7が形成される。
【0004】
トリポード部材2はボス8と脚軸9とを備える。ボス8にはシャフト10とトルク伝達可能に結合するスプラインまたはセレーション孔が形成してある。脚軸9はボス8の円周方向三等分位置から半径方向に突出している。トリポード部材2の各脚軸9はローラ3を担持している。脚軸9とローラ3との間には、複数の針状ころ12が総ころ状態で配設されている。
【0005】
また、前記図15と図16に示すトリポード型等速自在継手では、ローラが一つのいわゆるシングルローラタイプであるが、トリポード型等速自在継手には、内側ローラと外側ローラとのローラが二つのいわゆるダブルローラタイプがある。シングルローラタイプとダブルローラタイプとは車両からの要求に応じて適宜選択している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平7−10562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、自動車においては、環境保護及び省エネルギーの観点から、軽量化の要求が高まっている。しかしながら、トリポード型等速自在継手では、外側継手部材を含め、各部品の材料は鋼材である。このため、軽量化を図るためには、可能な限り構成部品を減肉するという方法を提案できる。すなわち、特許文献1に記載のように、外側継手部材1を、外周の断面形状が小径部15と大径部16の繰返しからなる3弁の花冠状としている(図16参照)。
【0008】
しかしながら、図16に示すように花冠状としたとしても、継手機能を損なわせることなく、これ以上の軽量化は困難であった。
【0009】
そこで、本発明は斯かる実情を鑑み、強度の低下を伴わず、大幅な軽量化が可能なトリポード型等速自在継手およびトリポード型等速自在継手の外側継手部材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のトリポード型等速自在継手の外側継手部材は、内周に軸線方向に延びる三本のトラック溝を設けると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面を設けたトリポード型等速自在継手の外側継手部材であって、内周に前記トラック溝が形成された金属製のカップ部を備え、このカップ部に薄肉部を構成するための小外径部を形成し、この小外径部をFRP層にて被覆したものである。ここで、FRP(Fiber Reinforced Plastics)とは、繊維でプラスチックを強化したものである。FRPは使用する繊維によって、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、AFRP、KFRP(アラミド繊維強化プラスチック)と呼ばれる。なお、使用する樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が代表的であるが、ポリプロピレン、ナイロン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂も使用できる。
【0011】
本発明のトリポード型等速自在継手の外側継手部材によれば、FRP層を構成するFRPは、金属と同等以上の機械的性質を持ち、しかも金属材よりも軽量である。このため、全体を金属(鋼材)にて構成するものに比べて軽量化を図ることができ、しかも、強度的に劣ることがない。また、FRP層は、カップ部の小外径部を被覆するものであり、完成品としての外径寸法を従来と同様に設定できる。
【0012】
カップ部の奥側を薄肉部として、開口部側を厚肉部とし、開口部側の厚肉部の外径面に、ブーツ装着用の溝を形成することができる。また、開口部側の厚肉部の外径面とFRP層とでブーツ装着用の溝を形成することができる。
【0013】
合成樹脂剤に浸潤させた繊維をフィラメントワインディング法でマンドレルに巻設して焼き固めてなるFRP製筒体にて、前記FRP層を構成したり、合成樹脂剤に浸潤させた繊維をシート状にしたプリプレグを用いて、シートワインディング法でマンドレルに巻設して焼き固めてなるFRP製筒体にて、前記FRP層を構成したりできる。フィラメントワインディング法とは、樹脂を含浸した繊維(繊維束)を心棒のまわりに巻いて成形し、加熱して硬化させた後に心棒を取り外す方法である。繊維の束でなく、シートを巻きつけるのをシートワインディング法という。
【0014】
FRP製筒体をカップ部に圧入することができる。このように、FRP製筒体を圧入することによって、小外径部をFRP層にて被覆する状態とできる。
【0015】
肉厚が相違する複数のFRP層を備えたものであってもよい。このように、肉厚が相違するFRP層を備えたものでは、高強度を必要とする部位に肉厚のFRP層を用いたり、あまり高強度を必要としない部位に薄肉のFRP層を用いたりすることができる。
【0016】
前記FRP層の繊維の配向角が軸線方向に対して+5°〜+90°、−5°〜−90°の角度で交互に配設される配向角となるように、所定の肉厚となるまで螺旋状に巻設したものとすることができる。
【0017】
カップ部の外径面に、前記FRP層の軸方向の抜けを防止するストッパを設けることができる。また、FRP層が被覆されるカップ部の被覆外径面とFRP層の内径面との間に接着剤を介在させてもよく、カップ部の被覆外径面に接着剤が溜まる溜り部を設けてもよい。
【0018】
カップ部の被覆外径面に凹凸部が形成されるものであってもよい。この凹凸部としては、ショットピーニングやローレット等にて形成することができる。また、この凹凸部として、鋸歯状であってもよい。
【0019】
カップ部は、鍛造にて成形された後、切削加工にて前記薄肉部が形成されている場合や、薄板材のプレス加工品である場合がある。
【0020】
例えば、カップ部と、このカップ部に底壁から突設させる軸部とからなり、前記カップ部がプレス加工にて成形され、前記軸部が切削および転造加工にて成形される。カップ部と軸部とが摩擦圧接にて接合されているもの、カップ部と軸部とがレーザ溶接にて接合されているもの、カップ部と軸部とがアーク溶接にて接合されているもの、カップ部と軸部とが塑性結合にて接合されているもの等がある。
【0021】
本発明の第1のトリポード型等速自在継手は、内周に軸線方向に延びる三本のトラック溝を設けると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面を設けた外側継手部材と、三本の脚軸を有するトリポード部材と、前記脚軸に回転自在に支持されると共に前記外側継手部材のトラック溝に転動自在に挿入されたローラとを備えたシングルローラタイプのトリポード型等速自在継手であって、前記外側継手部材に前記の外側継手部材を用いたものである。
【0022】
本発明の第2のトリポード型等速自在継手は、内周に軸線方向に延びる三本のトラック溝を設けると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面を設けた外側継手部材と、半径方向に突出した3つの脚軸を備えたトリポード部材と、前記脚軸に外嵌する内側ローラと、前記トラック溝に挿入されると共に前記内側ローラに外嵌する外側ローラとを備え、前記外側ローラが前記脚軸に対して回転自在であると共に前記ローラ案内面に沿って移動可能なダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手において、前記外側継手部材に前記の外側継手部材を用いたものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明のトリポード型等速自在継手の外側継手部材では、全体を金属(鋼材)にて構成するものに比べて軽量化を図ることができ、しかも、強度的に劣ることがない。このため、従来のものと同等の強度を有しかつ軽量である外側継手部材を提供できる。また、完成品としての外径寸法を従来と同様に設定でき、小型化を図ることができる。このため、この外側継手部材を用いたトリポード型等速自在継手は、ドライブシャフトやプロペラシャフト等に使用すれば、重量軽減を有効に図ることが可能なシャフトを構成することができる。
【0024】
ブーツ装着用の溝を形成したものでは、ブーツを安定して装着することができ、機能的に安定した等速自在継手を構成することができる。特に、開口部側の厚肉部の外径面に、ブーツ装着用の溝を形成したものでは、剛性が大である部位にブーツを装着することができ、ブーツ固定(装着)が一層安定する。また、FRP層の一部をブーツ装着用の溝の一部と利用するものでは、厚肉部と薄肉部の径差の変化が小さくなり、応力の集中度合いを低減することができる。
【0025】
FRP製筒体を圧入することによって、小外径部をFRP層にて被覆する状態とでき、組立性に優れる。
【0026】
肉厚が相違する複数のFRP層を備えたものであれば、高強度を必要とする部位に肉厚のFRP層を用いたり、あまり高強度を必要としない部位に薄肉のFRP層を用いたりすることができる。このため、FRPによる必要十分な補強効果を得る設計が可能であり、しかも、FRPの使用量を少なく抑えることができ、低コストが可能となる。
【0027】
フィラメントワインディング法又はシートワインディング法等にて、安定してFRP層
を成形でき、生産性に優れる。また、繊維の配向角を5°〜+90°、−5°〜−90°の角度で交互に配設される配向角となるように、所定の肉厚となるまで螺旋状に巻設することによって、より強度的に優れたFRP層を構成することができる。
【0028】
FRPの強度は含まれる繊維によって異なるが、例えば炭素繊維の場合、鋼の2倍程度の引張り強度であるため、より小径化を図ることが可能である。例えば、CFRPは鋼よりも変形しにくい材料であるため、荷重負荷時の外側継手部材の変形を抑え、等速自在継手の内部部品をより理想的な状態に保つことができ、高トルク負荷時の強度が向上する。FRPは異方性材料であるため、繊維の巻き角や厚さを調整することで使用状況に合わせ、容易に最適強度にチューニングできる。
【0029】
カップ部の外径面にストッパを設けたものでは、FRP層の軸方向の抜けを規制でき、製品として安定する。また、接着剤を用いた場合、FRP製筒体をカップ部に対して安定した接合が可能となる。特に、ストッパと接着剤を併用すれば、FRP製筒体の外側継手部材本体のカップ部に対する抜けや回転を防止でき、FRP製筒体の抜けや回転による等速自在継手における損傷を抑制できる。また、カップ部の被覆外径面に接着剤が溜まる溜り部を設けた場合、接着性の向上を図ることができ、FRP製筒体をカップ部に対して安定した接合が可能となって、製品として安定する。
【0030】
カップ部の被覆外径面に凹凸部が形成されるものであれば、接着剤の接着性をより高めることができ、しかも、凹凸部としては、ショットピーニングやローレット等にて形成することができ、生産性に優れる。一方、鋸歯状の凹凸部であれば、この凹凸部(凸歯)がFRP層の内面に食い込むことになって、強固な接合状態を維持できる。
【0031】
カップ部は、鍛造にて成形された後、切削加工にて薄肉部が形成されている場合や、薄板材のプレス加工品である場合があり、種々の製造方法によって成形することができる。カップ部と軸部とを別工程で製作した後、これらを組み付けるものでは、形状、大きさの相違する外側継手部材を容易に生産できる。また、同一形状サイズのカップ部に、異なる軸部を組み付けたりできる。すなわち、カップ部の共通化を図ることができる。特に、カップ部がプレス加工品であれば、塑性加工の段階でより製品形状に近いものを成形することができ、旋削等の後加工での取り代を少なくすることができる。これにより、材料の歩留まりが向上する。
【0032】
カップ部と軸部とは、従来から公知公用の種々の接合方法によって接合でき、安定した接合が可能となる。
【0033】
本発明の第1および第2のトリポード型等速自在継手では、軽量化を図った外側継手部材を用いることになって、軽量化を図ることが可能な等速自在継手を提供できる。しかも、従来品に比べて強度的に劣ることもない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す外側継手部材を用いたトリポード型等速自在継手の縦断面図である。
【図2】前記図1に示すトリポード型等速自在継手の横断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す外側継手部材を用いたトリポード型等速自在継手の縦断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態を示す外側継手部材を用いたトリポード型等速自在継手の縦断面図である。
【図5】前記図4に示すトリポード型等速自在継手の横断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態を示す外側継手部材を用いたトリポード型等速自在継手の縦断面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態を示す外側継手部材を用いたトリポード型等速自在継手の縦断面図である。
【図8】前記図7に示すトリポード型等速自在継手の横断面図である。
【図9】本発明の第6の実施形態を示す外側継手部材を用いたトリポード型等速自在継手の縦断面図である。
【図10】前記図9に示すトリポード型等速自在継手の横断面図である。
【図11】本発明の第7の実施形態を示す外側継手部材の縦断面図である。
【図12】前記図11に示す外側継手部材の組立前の縦断面図である。
【図13】本発明の第8の実施形態を示す外側継手部材の縦断面図である。
【図14】前記図13に示す外側継手部材の組立前の縦断面図である。
【図15】従来の外側継手部材を用いたトリポード型等速自在継手の横断面図である。
【図16】前記図15のトリポード型等速自在継手の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下本発明の実施の形態を図1〜図14に基づいて説明する。
【0036】
図1と図2は第1の外側継手部材を用いたトリポード型等速自在継手を示している。トリポード型等速自在継手は、外側継手部材21と、内側継手部材としてのトリポード部材22と、トルク伝達部材としてのローラ23を主要な構成要素としている。
【0037】
外側継手部材21は一体に形成されたカップ部(マウス部)24と軸部25とを備える。カップ部24は、一端にて開口したカップ状で、内周の円周方向三等分位置に軸方向に延びるトラック溝26が形成してある。各トラック溝26の円周方向で向き合った内側壁にローラ案内面27、27が形成される。なお、カップ部24と軸部25とは金属製(例えば中炭素鋼等)である。また、軸部25は、カップ部24の底壁24a側の基部25aと、この基部25aから突設される本体部25bと、この本体部25bに連設されるスプライン軸部25cとを備える。
【0038】
トリポード部材22はボス28と脚軸29とを備える。ボス28の軸心孔には雌スプライン31が形成され、この軸心孔にシャフト30の端部が嵌入される。シャフト30の端部の外周面には雄スプライン30aが設けられている。このため、シャフト30の端部をボス28の軸心孔に嵌入することによって、シャフト30の雄スプライン30aとボス28の雌スプライン31とが嵌合する。なお、シャフト30の雄スプライン30aの端部には、周方向溝33が形成され、この周方向溝33に抜け止めとしての止め輪34が装着される。
【0039】
脚軸29はボス28の円周方向三等分位置から半径方向に突出している。トリポード部材22の各脚軸29はローラ23を担持している。脚軸29とローラ23との間には、複数の針状ころ32が総ころ状態で配設されている。
【0040】
カップ部24は、図2に示すように、外周の断面形状が小径部35と大径部36の繰返しからなる3弁の花冠状としている。そして、このカップ部24に薄肉部40を構成する小外径部41を形成し、この小外径部41をFRP層42にて被覆している。すなわち、各大径部36の外径面に削り取り部(切削や研削等によって成形しても、このカップ部24を形成する際の鍛造時に成形してもよい)を設け、この削り取り部に、短円筒体からなるFRP層42を外嵌(圧入)している。
【0041】
このため、カップ部24は、奥側を薄肉部40として、開口部側を厚肉部43としている。開口部側の厚肉部43の外径面に、ブーツ装着用の溝45を形成している。このように、FRP層42が薄肉部40に外嵌(装着)した状態において、FRP層42の外径面42aの外径寸法と、厚肉部43の外径面43aの外径寸法とが略同一に設定され、厚肉部43の外径面とFRP層42の外径面とが連続して同一円筒面上に配設される。また、FRP層42の厚肉部側端縁42bが、厚肉部43の段差部43bに当接している。なお、FRP層42の肉厚としては、例えば、2mm〜3mm程度とされ、薄肉部40の肉厚としては、例えば、2mm〜3mm程度とされ、厚肉部43の肉厚としては、例えば、4mm〜6mm程度とされる。
【0042】
FRP層42は、合成樹脂剤に浸潤させた繊維をフィラメントワインディング法又はシートワインディング法でマンドレルに巻設して焼き固めてなるFRP製筒体Pにて構成している。ここで、FRP(Fiber Reinforced Plastics)とは、繊維でプラスチックを強化したものである。FRPは使用する繊維によって、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、AFRP、KFRP(アラミド繊維強化プラスチック)と呼ばれる。また、合成樹脂剤に浸潤させたFRPを引抜成形法(型の中で樹脂を連続して加熱硬化させる成形法)にて成形したFRP製筒体Pにて、FRP層42を構成できる。さらに、射出成形にてこのようなFRP製筒体Pを構成することも可能である。
【0043】
FRP製筒体の形成に使用する樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が代表的であるが、ポリプロピレン、ナイロン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂も使用できる。特に、機械的強度が強く、耐熱性に優れ、耐薬品性、耐水性、耐湿性に優れる等の性質からこのFRP層42にはエポキシ樹脂が好ましい。
【0044】
FRP製筒体Pは、繊維の配向を軸線方向に対して+5°〜+90°、−5°〜−90°の角度で交互に配設される配向角となるように、所定の肉厚となるまで螺旋状に巻設したものである。一般に、FRPは次に記載する特性を有する。耐候性、耐熱性、耐薬品性にすぐれている。電気絶縁性があり電波透過性に優れている。断熱性に優れている。さまざまな形状の製作に対応でき、着色が自由である。軽量かつ強度的に優れている。
【0045】
この場合、FRP層42を構成するFRP製筒体Pを成形し、このFRP製筒体Pを、カップ部24の薄肉部40に圧入することになる。このように、別途FRP製筒体Pを構成して、カップ部24に圧入して装着するようにしたものでは、組立性に優れる。
【0046】
ところで、FRP製筒体Pの圧入の締代としては、使用する材質等によって相違するが、軸方向及び周方向にずれず、しかも、過大な圧入入力を必要とせず、圧入によって変形したり、損傷したりしないものとされる。
【0047】
本発明の外側継手部材では、FRP層42を構成するFRPは、金属と同等以上の機械的性質を持ち、しかも金属材よりも軽量である。このため、全体を金属(鋼材)にて構成するものに比べて軽量化を図ることができ、しかも、強度的に劣ることがない。このため、従来のものと同等の強度を有しかつ軽量である外側継手部材を提供できる。また、FRP層42は、カップ部24の小外径部41を被覆するものであり、完成品としての外径寸法を従来と同様に設定でき、小型化を図ることができる。
【0048】
ブーツ装着用の溝45を厚肉部43に形成しているので、ブーツ(図示省略)を安定して装着することができ、機能的に安定した等速自在継手を構成することができる。
【0049】
フィラメントワインディング法やシートワインディング法等にて、安定してFRP層42を成形でき、生産性に優れる。また、繊維の方向を5°〜+90°、−5°〜−90°の角度で交互に配設される配向角となるように、所定の肉厚となるまで螺旋状に巻設することによって、より強度的に優れたFRP層42を構成することができる。
【0050】
FRPの強度は含まれる繊維によって異なるが、例えば炭素繊維の場合、鋼の2倍程度
の引張り強度であるため、より小径化を図ることが可能である。例えば、CFRPは鋼よりも変形しにくい材料であるため、荷重負荷時の外側継手部材の変形を抑え、等速自在継手の内部部品をより理想的な状態に保つことができ、高トルク負荷時の強度が向上する。FRPは異方性材料であるため、繊維の巻き角や厚さを調整することで使用状況に合わせ、容易に最適強度にチューニングできる。
【0051】
FRP層が被覆されるカップ部24の被覆外径面40aとFRP層42の内径面42bとの間に接着剤を介在させてもよい。接着剤としては、金属・樹脂間の接合性の点からエポキシ系やウレタン系等の種々の接着剤を選択できる。
【0052】
カップ部24とFRP層42とが接着剤を介して接合したものであれば、FRP層42のカップ部24への嵌め合い関係の隙間として、この隙間に接着剤を介在させることができる。このため、FRP層42の内径面をカップ部24の外径面40aに圧接させる必要がない。すなわち、FRP層42の内径面寸法を高精度に仕上げる必要がなく、生産性に優れる。
【0053】
ところで、図3に示す外側継手部材21では、開口部側の厚肉部43の外径面43aとFRP層42とでブーツ装着用の溝45を形成している。すなわち、FRP層42の厚肉部43側の外径部にテーパ部46(外径が薄肉部側から厚肉部側に向かって縮径する)を設け、このテーパ部46の先端46aを、厚肉部43の段差部43bに突き合せている。また、FRP層42の外径面42aの外径寸法を、厚肉部43の外径面43aの外径寸法よりも大きく設定している。そして、厚肉部43の外径面43aの継手開口部側に周方向に延びる凸隆部47が設けられている。これによって、凸隆部47とFRP層42のテーパ部46との間の厚肉部43の外径面43aでもって、前記ブーツ装着用の溝45を形成することができる。このように、図3に示す外側継手部材21では、厚肉部43と薄肉部40の径差の変化が小さくなり、応力の集中度合いを低減することができる。
【0054】
図4と図5に示す外側継手部材では、肉厚が相違する複数のFRP層42A、42Bを備えたものである。この場合、大径部36全体が同一肉厚の薄肉部40とされ、継手開口側に肉厚寸法が大であるFRP層42Aが装着(外嵌)され、継手奥側に肉厚寸法が小であるFRP層42Bが装着(外嵌)されている。この場合、FRP層42Aの肉厚寸法が例えば、2mm〜3mm程度とされ、FRP層42Bの肉厚寸法が例えば、1mm〜2mm程度とされる。また、大径部36の肉厚寸法としては、例えば、4mm〜6mm程度とされる。
【0055】
このように、肉厚が相違するFRP層42を備えたものでは、高強度を必要とする部位に肉厚のFRP層を用いたり、あまり高強度を必要としない部位に薄肉のFRP層を用いたりすることができる。このため、FRPによる必要十分な補強効果を得る設計が可能であり、しかも、FRPの使用量を少なく抑えることができ、低コストが可能となる。
【0056】
次に、図6に示す外側継手部材21では、カップ部24の外径面40aにFRP層42の軸方向の抜けを防止するストッパ50を設けている。すなわち、図1に示す外側継手部材21において、カップ部24の外径面に周方向凹溝51を設け、この周方向凹溝51に、ストッパ50としての止め輪を装着している。そして、ストッパ50と厚肉部43の段差部43bとの間にFRP層42が介在される。クリップとしては、既存の丸サークリップ、角サークリップ、スナップリング等を用いることができる。なお、この実施形態では、断面扁平のサークリップを用いている。
【0057】
FRP層42は、継手開口側への軸方向移動が厚肉部43の段差部43bに規制され、継手奥側への軸方向移動がストッパ50に規制される。FRP層42の軸方向の抜けを規制でき、製品として安定する。また、特に、接着剤と併用すれば、FRP製筒体Pをカップ部24に対して安定した接合が可能となって、製品として安定する。すなわち、FRP製筒体Pのカップ部24に対する抜けや回転を防止でき、FRP製筒体Pの抜けや回転による等速自在継手における損傷を抑制できる。
【0058】
図7と図8とに示す外側継手部材では、カップ部24の被覆外径面40aに接着剤が溜まる溜り部55を設けたものである。すなわち、被覆外径面40aの厚肉部43側に、断面扁平矩形の周方向溝を設け、この周方向溝でもって溜り部55を構成している。
【0059】
ところで、接着剤を用いる場合において、FRP製筒体Pを圧入するものであれば、この圧入によって、外径面40aのFRP製筒体Pの内径面との界面に接着剤が残留しにくい。このため、接着性に劣ることになる。そのため、接着剤を用いる場合、外径面40aに接着剤が溜まる溜り部55を設けるのが好ましい。このように、溜り部55を設ければ、圧入の際に予め接着剤を流し込んでおくことで、接着剤の機能を十分発揮させることができる。これによって、FRP製筒体Pのカップ部24に対する抜けや回転を防止でき、FRP製筒体Pの抜けや回転による等速自在継手における損傷を抑制できる。
【0060】
なお、この場合の溜り部55は、断面扁平矩形の周方向溝にて構成しているが、このような形状に限らず、接着剤を溜めることができて、カップ部24の強度を低下させない範囲で種々変更できる。また、溜り部55の大きさ(容量)、配置位置等も、接着剤を溜めることができて、カップ部24の強度を低下させない範囲で種々変更できる。
【0061】
接着剤を用いる場合、カップ部24の被覆外径面40aに、凹凸部を設けるようにするのが好ましい。凹凸部を形成する場合、ショットピーニング処理やローレット加工等にて形成することができる。ショットピーニングとは、小さな鋼球(ショット)を構造材や機械部品の表面に噴射して、表面層に圧縮残留応力を生じさせると共に軽い加工硬化をおこさせ、応力や疲れによる破壊強度を増す加工である。ローレット加工とは、素材を旋盤で回転させ専用の工具(刃)を押しつけて溝をつける加工である。このように、凹凸部を設けることによって、接着剤の接着効果を高めることができる。
【0062】
図9と図10に示す外側継手部材では、カップ部24の被覆外径面40aに、鋸歯状の凹凸部56が形成されている。すなわち、軸方向に延びる断面三角形状の凸歯が周方向に沿って配設されてなる。このような凹凸部56であれば、凹凸部56の凸歯56aがFRP層42の内径面に食い込むことになって、強固な接合状態を維持できる。
【0063】
図11に示す外側継手部材と図13に示す外側継手部材とは、図12と図14に示すように、それぞれ、カップ部24と軸部25とが別個に成形され、その後、これらを組み付けるものである。図12に示す外側継手部材では、カップ部24は、周壁60とこの周壁60の継手奥側を塞ぐ底壁61とからなり、周壁60に、小外径部41を形成して薄肉部40を形成している。このため、薄肉部40にFRP層42を形成し、厚肉部43にブーツ装着用の溝45を設けている。
【0064】
軸部25は、基盤部62と、この基盤部62から突設される軸部本体63とを備える。軸部本体63は、基部63aと、スプライン軸部63bとからなる。そして、図11に示すように、軸部25の基盤部62がカップ部24の底壁61裏面に接合される。接合手段としては、摩擦圧接、レーザ溶接、アーク溶接等を採用できる。
【0065】
摩擦圧接法とは、接合する部材(たとえば金属や樹脂など)を高速で擦り合わせ、 そのとき生じる摩擦熱によって部材を軟化させると同時に圧力を加えて接合する方法である。摩擦圧接には、次に記載する利点がある。比較的簡単な作業で寸法精度の高い製品が得られる。従って、仕上げ加工を施した部材の組み立て接合が行える。接合結果に高い再現性がある。用途に応じて種々の異種材料(ステンレスと軟鋼、ステンレスと銅など)を組み合わせて接合できるため、優れた性能の製品が得られる。アーク溶接では接合が難しい一部の材料についても、摩擦圧接で接合できる。鍛造などに比べて振動、騒音が少ない。スパッタ、ヒューム等が生じないので、他の工作機械と組み合わせた一貫ラインが編成できる。
【0066】
レーザ溶接とは、レーザ光を熱源として主として金属に集光した状態で照射し、金属を局部的に溶融・凝固させることによって接合する方法のことである。レーザ溶接は次の利点がある。高速深溶込み溶接が可能である。溶接熱影響が非常に少ない。溶接変形が少ない。
【0067】
アーク溶接とは、金属材料(母材)と溶接棒との間にアークを発生させる溶接法である。溶着効率・溶接性が良い、設備費が安く、手軽に溶接できる溶接部分の小さい面積を高温度にすることが出来るので厚板でも容易に溶接できる。
【0068】
次に図13に示す外側継手部材では、カップ部24と軸部25とを塑性結合にて接合している。すなわち、図14に示すように、カップ部24の底壁61に貫通孔65を設け、軸部25の基盤部62の外周面に軸方向に延びる多数の凸部66を周方向に沿って配設する。そして、軸部25の基盤部62を底壁61の貫通孔65に圧入する。この場合、例えば、軸方向に沿う凸部と凹部とからなるスプラインを形成する。そして、スプラインの凸部を硬化処理して、この凸部を前記凸部66とする。この熱硬化処理としては、高周波焼入れや浸炭焼入れ等の種々の熱処理を採用することができる。ここで、高周波焼入れとは、高周波電流の流れているコイル中に焼入れに必要な部分を入れ、電磁誘導作用により、ジュール熱を発生させて、伝導性物体を加熱する原理を応用した焼入れ方法である。また、浸炭焼入れとは、低炭素材料の表面から炭素を浸入/拡散させ、その後に焼入れ行う方法である。
【0069】
底壁61の貫通孔65側においては熱硬化処理を行わない未硬化部(未焼き状態)とする。凸部66と底壁61の未硬化部との硬度差は、例えば、HRCで20ポイント以上とする。さらに、具体的には、凸部66の表面の硬度を50HRC以上とし、未硬化部の硬度を10HRCから30HRC程度とする。
【0070】
この際、凸部66の突出方向中間部位が、凹部形成前の凹部形成面(この場合、底壁61の貫通孔65の内径面)の位置に対応する。すなわち、図14に示すように、底壁61の貫通孔65の内径面の内径寸法dを、凸部66の最大外径、つまりスプラインの凸部である前記凸部66の頂部を結ぶ円の直径寸法(外接円直径)Dよりも小さく、凸部間の谷底(スプラインの凹部の底)を結ぶ円の直径寸法D1よりも大きく設定される。すなわち、D<d<D1とされる。このため、凸部66は、少なくとも頂点から突出方向中間部位までが底壁61の貫通孔65の内径面に圧入される。
【0071】
凸部66を構成するスプラインは、従来からの公知公用の手段である転造加工、切削加工、プレス加工、引き抜き加工等の種々の加工方法によって、形成することがきる。また、熱硬化処理としては、高周波焼入れ、浸炭焼入れ等の種々の熱処理を採用することができる。なお、スプラインを形成することによって構成された凸部66の圧入開始端は、軸部軸線方向に対して直交する平坦面とされる。
【0072】
次に、カップ部24と軸部25とを一体化する方法を説明する。まず、カップ部24の軸心と軸部25の軸心とを合わせた状態とする。この状態で、カップ部24に対して、軸部25を挿入(圧入)していく。この際、貫通孔65の内径面の径寸法dと、凸部66の直径寸法Dと、スプラインの凹部の直径寸法D1とが前記のような関係であり、しかも、凸部66の硬度が貫通孔65の内径面の硬度よりも20ポイント以上大きいので、軸部25をカップ部24の貫通孔65に圧入していけば、この凸部66が貫通孔65の内径面に食い込んでいき、凸部66が、この凸部66が嵌合する凹部67を、軸方向に沿って形成していくことになる。
【0073】
例えば、この圧入は、軸部25の基盤部62の先端面62aが、底壁61の内面61aに一致する状態まで行われる。これによって、凸部66と、これに嵌合する凹部67との嵌合接触部位の全体が密着している。すなわち、相手側の凹部形成面(この場合、カップ部24の貫通孔65の内径面)に凸部66の形状の転写を行うことになる。この際、凸部66が貫通孔65の内径面に食い込んでいくことによって、貫通孔65が僅かに拡径した状態となって、凸部31の軸方向の移動を許容し、軸方向の移動が停止すれば、貫通孔65が元の径に戻ろうとして縮径することになる。言い換えれば、凸部66の圧入時に貫通孔65が径方向に弾性変形し、この弾性変形分の予圧が凸部66の歯面(凹部嵌合部位の表面)に付与される。このため、凸部66の凹部嵌合部位の全体がその対応する凹部67に対して密着する凹凸嵌合構造Mを確実に形成することができる。
【0074】
なお、軸部25を圧入していけば、はみ出し部が形成されることになる。ここで、はみ出し部とは、凸部66が嵌入(嵌合)する凹部の容量の材料分であって、形成される凹部から押し出されたもの、凹部を形成するために切削されたもの、又は押し出されたものと切削されたものの両者等から構成される。
【0075】
軸部25を貫通孔65に圧入すれば、貫通孔65の内径面に凸部66に密着嵌合する凹部を軸方向に沿って形成することができる。しかも、凹凸嵌合構造Mは、凸部66と凹部67との嵌合接触部位の全体が密着しているので、この嵌合構造Mにおいて、径方向及び円周方向においてガタが生じる隙間が形成されない。
【0076】
ところで、各実施形態におけるFRP層におけるFRPとして、前記したように、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、AFRP、KFRP(アラミド繊維強化プラスチック)を用いることができ、このように、繊維の種類によって、特性の相違するFRP層を構成することができる。すなわち、GFRPは、材料が安価でいろいろな形状になじみやすいので、形状の自由度が高い。また硬化時間が比較的短いため、短納期で製作できる利点がある。CFRPは、GFRPより高価であるが、強度の面で優れており、積層数を薄くすることによって重さを軽くすることができる。強度を必要とし、なおかつ重量を軽くしたい制作物に向いている。AFRP、KFRPは、切断されにくく、最も優れた強度を発揮する。しかしながら、繊維の持つ「切れにくい」という特性が、自由な形状の成形を困難にし、後加工がしにくいという面もある。
【0077】
カップ部24は、鍛造にて成形された後、切削加工にて薄肉部が形成されている場合や、薄板材のプレス加工品である場合があり、種々の製造方法によって成形することができる。また、カップ部24と軸部25とからなり、カップ部24と軸部25とを別工程で製作した後、これらを組み付けるものでは、形状、大きさの相違する外側継手部材21を容易に生産できる。また、同一形状サイズのカップ部に、異なる軸部25を組み付けたりできる。すなわち、カップ部24の共通化を図ることができる。特に、カップ部24がプレス加工品であれば、塑性加工の段階でより製品形状に近いものを成型することができ、旋削等の後加工での取り代を少なくすることができる。これにより、材料の歩留まりが向上する。
【0078】
しかも、カップ部24と軸部25とは、従来から公知公用の種々の接合方法によって接合でき、安定した接合が可能となる。
【0079】
このように、本発明のトリポード型等速自在継手では、軽量化を図った外側継手部材を用いることになって、軽量化を図ることが可能な等速自在継手を提供できる。しかも、従来品に比べて強度的に劣ることもない。このため、本発明の外側継手部材21を用いたトリポード型等速自在継手を、ドライブシャフトやプロペラシャフト等に使用すれば、重量軽減を有効に図ることが可能なものを構成することができる。
【0080】
なお、前記各実施形態では、外側継手部材は、ローラが1個のシングルローラタイプのトリポード型等速自在継手であったが、外側継手部材としては、ローラが内側ローラと外側ローラとの2個のダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手に用いることができる。このようなダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手の外側継手部材であっても、前記各実施形態の外側継手部材と同様の作用効果を奏することができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、FRP層42の肉厚や軸方向長さとしては、カップ部24の材質、肉厚、外径寸法、FRP層42の材質等に基づいて、形成される外側継手部材としての強度を考慮して種々選択できる。また、図1等においては、開口部側(入口側)を厚肉部43としていたが、逆に、開口部側(入口側)を薄肉部として、この薄肉部にFRP層42を設けるようにしてもよい。
【0082】
FRP層42をFRP製筒体Pにて構成する場合、長尺状のFRP製筒体を成形した後、この長尺状のFRP製筒体を所定寸に切断してFRP製筒体Pを製作するようにすることができる。このような製法では、所定寸のFRP製筒体Pを個々に成形するより複数個分のFRP製筒体Pを一度に成形することができ、生産性に優れる。なお、このように長尺状のFRP製筒体を成形する場合、所定寸に切断した際に無駄な部分が生じなく、かつ、たわまない範囲とするのが好ましい。
【0083】
図13と図14に示すように、カップ部24と軸部25とを塑性結合にて接合する場合、凸部66の断面形状として、断面三角形状、台形形状、半円形状、半楕円形状、矩形形状等の種々の形状のものを採用でき、凸部66の面積、数、周方向配設ピッチ等も任意に変更できる。すなわち、スプラインを形成し、このスプラインの凸部(凸歯)をもって凹凸嵌合構造Mの凸部66とする必要はなく、キーのようなものであってもよく、曲線状の波型の合わせ面を形成するものであってもよい。要は、軸方向に沿って配設される凸部66を相手側に圧入し、この凸部66にて凸部66に密着嵌合する凹部67を相手側に形成することができて、凸部66とこれに嵌合する凹部66との嵌合接触部位の全体が密着すればよい。
【0084】
凸部66の圧入始端部のみが、凹部67が形成される部位より硬度が高ければよいので、凸部66の全体の硬度を高くする必要がない。凸部66側と、凸部66にて形成される凹部形成面側との硬度差としては、HRCで20ポイント以上とするのが好ましいが、凸部31が圧入可能であれば20ポイント未満であってもよい。
【0085】
凸部66の端面(圧入始端)は前記実施形態では軸方向に対して直交する面であったが、軸方向に対して、所定角度で傾斜するものであってもよい。この場合、内径側から外径側に向かって反凸部側に傾斜しても凸部側に傾斜してもよい。
【符号の説明】
【0086】
21 外側継手部材
22 トリポード部材
23 ローラ
24 カップ部
24a 底壁
25 軸部
29 脚軸
40a 被覆外径面
40 薄肉部
41 小外径部
42、42A、42B FRP層
42a 外径面
43 厚肉部
43a 外径面
45 溝
50 ストッパ
55 溜り部
P FRP製筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に軸線方向に延びる三本のトラック溝を設けると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面を設けたトリポード型等速自在継手の外側継手部材であって、
内周に前記トラック溝が形成された金属製のカップ部を備え、このカップ部に薄肉部を構成するための小外径部を形成し、この小外径部をFRP層にて被覆したことを特徴とするトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項2】
カップ部の奥側を薄肉部として、開口部側を厚肉部としたことを特徴とする請求項1に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項3】
開口部側の厚肉部の外径面に、ブーツ装着用の溝を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項4】
開口部側の厚肉部の外径面とFRP層の外径面とでブーツ装着用の溝を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項5】
合成樹脂剤に浸潤させた繊維をフィラメントワインディング法でマンドレルに巻設して焼き固めてなるFRP製筒体にて、前記FRP層を構成したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項6】
合成樹脂剤に浸潤させた繊維をシート状にしたプリプレグを用いて、シートワインディング法でマンドレルに巻設して焼き固めてなるFRP製筒体にて、前記FRP層を構成したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項7】
FRP製筒体をカップ部に圧入したことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項8】
肉厚が相違する複数のFRP層を備えることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項9】
前記FRP層の繊維の配向角が軸線方向に対して+5°〜+90°、−5°〜−90°の角度で交互に配設される配向角となるように、所定の肉厚となるまで螺旋状に巻設したことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項10】
カップ部の外径面に、前記FRP層の軸方向の抜けを防止するストッパを設けたことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項11】
FRP層が被覆されるカップ部の被覆外径面とFRP層の内径面との間に接着剤を介在させたことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項12】
カップ部の被覆外径面に接着剤が溜まる溜り部を設けたことを特徴とする請求項11に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項13】
カップ部の被覆外径面にショットピーニングによる凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項14】
カップ部の被覆外径面にローレットによる凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項15】
カップ部の被覆外径面に鋸歯状の凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項16】
カップ部は、鍛造にて成形された後、切削加工にて前記薄肉部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項17】
カップ部は、薄板材のプレス加工品であることを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項18】
カップ部と、このカップ部に底壁から突設させる軸部とからなり、前記カップ部がプレス加工にて成形され、前記軸部が切削および転造加工にて成形され、カップ部と軸部とが摩擦圧接にて接合されていることを特徴とする請求項1〜請求項17のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項19】
カップ部と、このカップ部に底壁から突設させる軸部とからなり、前記カップ部がプレス加工にて成形され、前記軸部が切削および転造加工にて成形され、カップ部と軸部とがレーザ溶接にて接合されていることを特徴とする請求項1〜請求項17のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項20】
カップ部と、このカップ部に底壁から突設させる軸部とからなり、前記カップ部がプレス加工にて成形され、前記軸部が切削および転造加工にて成形され、カップ部と軸部とがアーク溶接にて接合されていることを特徴とする請求項1〜請求項17のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項21】
カップ部と、このカップ部に底壁から突設させる軸部とからなり、前記カップ部がプレス加工にて成形され、前記軸部が切削および転造加工にて成形され、カップ部と軸部とが塑性結合にて接合されていることを特徴とする請求項1〜請求項17のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手の外側継手部材。
【請求項22】
内周に軸線方向に延びる三本のトラック溝を設けると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面を設けた外側継手部材と、三本の脚軸を有するトリポード部材と、前記脚軸に回転自在に支持されると共に前記外側継手部材のトラック溝に転動自在に挿入されたローラとを備えたシングルローラタイプのトリポード型等速自在継手であって、 前記外側継手部材に前記請求項1〜請求項21のいずれか1項に記載の外側継手部材を用いたことを特徴とするトリポード型等速自在継手。
【請求項23】
内周に軸線方向に延びる三本のトラック溝を設けると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面を設けた外側継手部材と、半径方向に突出した3つの脚軸を備えたトリポード部材と、前記脚軸に外嵌する内側ローラと、前記トラック溝に挿入されると共に前記内側ローラに外嵌する外側ローラとを備え、前記外側ローラが前記脚軸に対して回転自在であると共に前記ローラ案内面に沿って移動可能なダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手において、
前記外側継手部材に前記請求項1〜請求項21のいずれか1項に記載の外側継手部材を用いたことを特徴とするトリポード型等速自在継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−226589(P2011−226589A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97907(P2010−97907)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】