説明

トリEBx細胞における組換えタンパク質作製

本発明は、概して、組換えタンパク質作製の分野に関する。より具体的には、本発明は、タンパク質、およびより具体的には抗体のような糖タンパク質の作製のための、EBx(登録商標)と名付けられたトリ胚由来幹細胞株の使用に関する。本発明は、細胞媒介性の細胞障害活性が高いモノクローナルIgG1抗体サブタイプの作製のために有用である。本発明は、癌および炎症性疾患を治療するための薬物としてのこれらの抗体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、組換えタンパク質作製の分野に関する。より具体的には、本発明は、タンパク質、およびより具体的には抗体のような糖タンパク質の作製のための、EBx(登録商標)と名付けられたトリ胚由来幹細胞株の使用に関する。本発明は、細胞媒介性の細胞障害活性が高いモノクローナルIgG1抗体サブタイプの作製のために有用である。本発明は、癌および炎症性疾患を治療するための薬物としてのこれらの抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖タンパク質は、触媒作用、シグナル伝達、細胞間情報交換、ならびに分子の認識および結合を含む多くの極めて重要な機能をヒトにおいて媒介する。多くの糖タンパク質が、治療目的のために開発されてきた。タンパク質のオリゴ糖構成要素は、物理的安定性、プロテアーゼの攻撃に対する抵抗性、免疫系との相互作用、薬物動態、および特異的生物活性を含む、治療的糖タンパク質の有効性に関連する特性に影響を及ぼし得る。このような特性は、オリゴ糖の存在または不在だけでなく、それらの特定の構造体にも依存する場合がある。例えば、ある種のオリゴ糖構造体は、特定の糖質結合タンパク質との相互作用を通して血流からの糖タンパク質の急速な排除を媒介するのに対し、他のオリゴ糖構造体は、抗体に結合され、望まれない免疫反応を誘発する場合がある(Jenkins et al., Nature Biotechnol., 14:975-81 (1996)(非特許文献1))。糖タンパク質の例には、エリスロポイエチン(EPO)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TpA)、インターフェロンβ(IFN-b)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、および治療的モノクローナル抗体(Mab)が含まれる。
【0003】
大半の抗体は、重鎖定常領域中の保存された位置に糖鎖構造を含み、各アイソタイプは、異なる配列のN結合型糖鎖構造を有し、これは、タンパク質の組立、分泌、または機能活性に様々に影響を及ぼす(Wright & Morrison (1997) Trends Biotech. 15:26-32(非特許文献2))。ある種のG免疫グロブリンの生物活性は、分子、特にそのFc構成要素上のグリカン構造の存在およびタイプに依存する。抗体がエフェクター分子(Fc受容体および補体)と相互作用する能力に対する、グリカンを含む残基の存在または不在の影響が実証されている。例えば、ツニカマイシンの存在下で培養することによってヒトIgG1のグリコシル化を阻害すると、単球およびマクロファージ上に存在するFcγRI受容体に対するこの抗体の親和性が50分の1に低下する(Leatherbarrow et al. (1985) Molec. Immun., 22:407-415(非特許文献3))。非グリコシル化IgG3は、NK細胞のFcγRIII受容体を介したADCC(antibody-dependent cellular cytotoxicity)タイプの溶解を誘導できないことが説明されているため(Lund et al. (1990) Molec. Immun. 27:1145-1153(非特許文献4))、FcγRIII受容体への結合もまた、IgG上の糖質の損失による影響を受ける。しかしながら、グリカンを含むこれらの残基の存在が必要であること以上に、エフェクター機能を開始する能力に差異をもたらし得るのは、より正確には、それらの構造の不均一性である。
【0004】
ヒトおよびマウスの亜綱すべてのIgG分子は、各重鎖のCH2ドメインに(ヒトIgGの場合、残基Asn297に)結合されたN-オリゴ糖を有する。IgG上のN結合型オリゴ糖の一般的構造は複合型であり、マンノシル-キトビオースコア(Man3-GlcNac2-Asn)を特徴とし、2つに分岐したGlcNac/L-フコース(Fuc)および他の鎖変種(ガラクトース(Gal)およびシアル酸の存在または不在を含む)を含むか、または含まない(図17を参照されたい)。さらに、オリゴ糖は、Galを含まないか(G0)、1つのGal(G1)または2つのGal(G2)を含んでよい(図17を参照されたい)。結合されたN結合型糖質の構造は、プロセシングの程度によってかなり異なる場合があり、高マンノース型、多分岐型、ならびに二分岐型の複合オリゴ糖が含まれ得る。典型的には、特定のグリコシル化部位に結合されたコアオリゴ糖構造体が不均一にプロセシングされ、その結果、モノクローナル抗体さえも、複数のグリコフォームとして存在する。個体(ヒト血清IgG1)によって多様であるガラクトシル化プロファイルが観察されている。これらの差は、これらの個体の細胞クローン間でのガラクトシル-トランスフェラーゼおよび他の酵素の活性の差を反映している可能性が高い(Jefferis et al. (1990) Biochem J. 268:529-537(非特許文献5))。同様に、抗体グリコシル化の主な差は細胞株間で生じ、およびさらに小さな差は、培地の組成、細胞濃度、pH、酸素添加を含む異なる培養条件下で増殖させられた所与の細胞株において認められることが示されている(Lifely et al. (1995) Glycobiology 5 (8):813-22(非特許文献6); Kumpel et al. (1994) Hum. Antibodies and hybridomas 5:143-151(非特許文献7))。
【0005】
抗体の生物活性に対するオリゴ糖残基の機能を調査するための研究が行われてきた。Boyd et al (1995 Mol. Immunol. 32:1311-1318(非特許文献8))は、IgGのシアル酸がADCCに影響を与えないことを示した。いくつかの報告により、Gal残基がADCCを強化することが示された(kumpel et al. (1994) Hum. Antib. Hybrid 5:143-151(非特許文献7); Kumpel et al. (1995) Hum. Antib. Hybrid 6:82-88(非特許文献9))。2つに分岐したGlcNacは、β-マンノース(Man)コア残基に転移されるβ1,4-GlcNac残基であり、治療的抗体の生物学的残基に関係があるとされている(Lifely et al. (1995) Glycobiology 5 (8):813-22(非特許文献6))。Shield et al. (2002, J. Biol. Chem. 277:26733-26740(非特許文献10))は、抗体エフェクター機能に対するフコシル化オリゴ糖の影響を明らかにした; Fucを欠くIgG1は、FcγRIIIへの結合が50倍多く、ADCCを強化した。
【0006】
現在、治療的用途(すなわち、癌、炎症性疾患など)のための多様な組換えタンパク質が、グリコシル化モノクローナル抗体から構成されている。治療的理由および経済的理由から、より特異性の高い抗体活性を得ることに大きな関心が持たれている。細胞株における単純な作製プロセスを維持し、顕著で望ましくない副作用を潜在的に回避しつつ、効力を大きく増大させるための1つの方法は、Mabの天然の細胞媒介性エフェクター機能を強化することである。したがって、抗体は、多数の治療的機能(例えば、抗原結合、アポトーシスの誘導、および補体依存性細胞障害活性(CDC))を有するが、IgGのオリゴ糖を操作することにより、治療的抗体の一部の主要な機能とみなされている最適化されたADCCが得られる場合がある。GLYCART BIOTECHNOLOGY AG (Zurich, CH)のような会社は、N結合型オリゴ糖への2つに分岐したGlcNac残基の付加を触媒するN-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株において発現させ、産生されるIgG1抗体のADCCが大きくなることを示した(WO 99/54342(特許文献1); WO 03/011878(特許文献2); WO 2005/044859(特許文献3))。抗体のFc部分からフコースを除去するか、またはフコースを置換することによって、KYOWA HAKKO KOGYO (Tokyo, Japan)は、Fc結合を強化し、ADCC、したがって、Mabの有効性を改善した(US6,946,292(特許文献4))。より最近では、Laboratoire Francais du Fractionnement et des Biotechnologies (LFB) (France)が、Mabオリゴ糖中のFuc/Galの比率は、ADCCの高い抗体を得るには、0.6以下であるべきであることを示した(FR 2 861 080(特許文献5))。
【0007】
しかしながら、適切なグリコシルトランスフェラーゼを発現するようにもサイレント化する(silent)ようにも操作されておらず、かつ、細胞媒介性エフェクター機能が強化された一定のヒト型グリコシル化を提供する、大規模製造に適した細胞においてヒトモノクローナル抗体を作製するための代替方法が依然として必要とされている。これが本発明の目標である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO 99/54342
【特許文献2】WO 03/011878
【特許文献3】WO 2005/044859
【特許文献4】US 6,946,292
【特許文献5】FR 2 861 080
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Jenkins et al., Nature Biotechnol., 14:975-81 (1996)
【非特許文献2】Wright & Morrison (1997) Trends Biotech. 15:26-32
【非特許文献3】Leatherbarrow et al. (1985) Molec. Immun., 22:407-415
【非特許文献4】Lund et al. (1990) Molec. Immun. 27:1145-1153
【非特許文献5】Jefferis et al. (1990) Biochem J. 268:529-537
【非特許文献6】Lifely et al. (1995) Glycobiology 5 (8):813-22
【非特許文献7】Kumpel et al. (1994) Hum. Antibodies and hybridomas 5:143-151
【非特許文献8】Boyd et al (1995 Mol. Immunol. 32:1311-1318)
【非特許文献9】Kumpel et al. (1995) Hum. Antib. Hybrid 6:82-88
【非特許文献10】Shield et al. (2002, J. Biol. Chem. 277:26733-26740
【発明の概要】
【0010】
発明者らは、トリ胚由来幹細胞株EBx(登録商標)において発現されたモノクローナル抗体が、驚くべきことに、ヒトに似たグリコシル化パターンを示すことをここに実証する。発明者らはまた、EBx(登録商標)細胞において産生されたIgG1抗体集団の大部分が、末端GlcNacを有し、高度にガラクトシル化された長鎖を含む、共通の2分岐型N結合型オリゴ糖構造体を有することも発見した。IgG1抗体集団のおよそ半分が、フコシル化されていない2分岐型N結合型オリゴ糖構造体を含み、これは強いADCC活性を抗体に与える。本発明は、組換えタンパク質、およびより具体的には抗体、抗体断片、またはADCC活性の増加した抗体断片を含む融合タンパク質を発現するように遺伝的に操作された、トリ胚由来幹細胞EBx(登録商標)、好ましくはニワトリまたはアヒル胚由来幹細胞EBx(登録商標)、およびより好ましくはニワトリEB14細胞またはアヒルEB24細胞およびEB66細胞を提供する。
【0011】
トリ胚由来幹細胞株EBx(登録商標)は、産業上の規格および規制上の規格を満たす新規の安定なトリ細胞株の開発に着手するために、トリ生物学およびトリ胚性幹(ES)細胞において専門技術を活用したVIVALIS(Nantes, France)によって開発された細胞株である。所有権を持った方法(WO 03/076601を参照されたい)を用いて、本発明者は、遺伝的不死化の段階も、化学的不死化の段階も、ウイルスによる不死化の段階も用いずに、十分に特徴付けられ、文書化されている一連の細胞株(すなわち、「EBx(登録商標)細胞」)を作製した。好ましい態様において、本発明のトリ細胞は、ニワトリ細胞またはアヒル細胞である。EBx(登録商標)細胞は、完全に文書化されている2段階の方法を用い、かつ、すべての規制要件(例えば、ニワトリおよびアヒルの群れの衛生状態を定期的にモニターすること、BSEの無い国から得た血清を使用すること、トリプシンの代わりにプロナーゼを使用すること、方法に含まれるすべての成分に関して、起源の証明書を入手できることなど)を考慮して、作製された。
【0012】
段階1:ニワトリES細胞またはアヒルES細胞のインビトロでの培養および増殖
胚性幹細胞は、(i)未分化細胞としてインビトロで無期限に自己複製することができ、(ii)無制限の再生能力を有しており、(iii)安定した染色体量を維持し、(iv)高レベルのテロメラーゼおよび特異的細胞表面マーカーを発現するという点で、独特である。世界中で多くの努力が払われているものの、極めて限られた数の種(マウス、ヒト、サル)からしか、ES細胞を単離することに成功していない。本発明者は、様々なトリ種、主にニワトリおよびアヒルからES細胞を単離し樹立するために、これまで何年にも渡って、かなりの資源を捧げてきた。このような研究努力によって、ニワトリES細胞[Pain et al. 1999. Cell Tissues Organs 165: 212-219]およびアヒルES細胞の単離および特徴付けに成功した。次いで、本発明者は、分化を誘導することなくニワトリES細胞およびアヒルES細胞を効率的にインビトロで培養し、大規模に増殖させることを可能にする、所有権を持った手順を開発した。
【0013】
段階2:EBx(登録商標)細胞の誘導
次に、本発明者は、トリES細胞から安定で持続的な、接着細胞株または浮遊細胞株を誘導するための所有権を持った方法を確立した。この方法は、細胞培養培地から血清、フィーダー細胞、および増殖因子を漸進的に取り除くことならびに浮遊培養液に細胞を順応させることを含む。これらの胚由来トリ細胞株は、ES細胞の望ましい特徴の大半(すなわち、無期限の増殖、テロメラーゼのようなES特異的マーカーの発現、核型の安定性)を維持しただけでなく、さらに、新しい「産業的に好都合な」特徴(無血清培地に浮遊した状態で高い細胞濃度まで増殖する)も示した。
【0014】
それらの魅力的な生物学的特性に基づいて、本発明者らは、浮遊ニワトリ細胞株EB14(WO03/076601およびWO05/007840を参照されたい)またはEBv13などをさらに開発するために、いくつかのニワトリEBx(登録商標)細胞株を選択した。あるいは、本発明者らは、EB24、EB26、EB66などをさらに開発するために、いくつかのアヒルEBx(登録商標)細胞株を選択した。本発明のEBx(登録商標)細胞株は、長期間に渡ってインビトロで培養され得る特徴を有するため、「持続的」である。有利には、本発明の細胞は、少なくとも50世代、少なくとも75世代、少なくとも100世代、少なくとも125世代、少なくとも150世代、少なくとも175世代、少なくとも200世代、少なくとも250世代の間、増殖することができる。得られる細胞は依然として生きており、引き続き継代培養してさらに継代できるため、250世代が期限ではない。理論に拘束されるわけではないが、本発明の細胞は、テロメラーゼが細胞によって発現される限り、「持続的に」培養され得ると仮定されている。実際、本発明のトリ細胞における高レベルのテロメラーゼ発現は、遺伝的安定性(すなわち、本発明のトリEBx(登録商標)細胞は2倍体である)および持続的な細胞増殖を司っていると想定されている。
【0015】
「継代(passage)」とは、希釈するか、または希釈せずに、細胞移植物を1つの培養容器から別の培養容器に移すことを意味する。1つの容器から別の容器に細胞を移すときは常に、一定の比率の細胞が失われる可能性があり、したがって、意図的であるかどうかを問わず、細胞の希釈が起こり得ることが理解されている。この用語は、「2次培養(subculture)」という用語と同義である。継代数とは、浮遊状態または接着状態のいずれかで増殖する培養物中の細胞が、新しい容器中で2次培養または継代された回数である。この用語は、細胞集団が1回複製するのに必要な時間、すなわち、大ざっぱに言えば、ある集団の各細胞が複製するための時間である集団倍加または世代と同義ではない。例えば、アヒルESまたはニワトリESの集団倍加時間(PDT)は、約40時間を上回る。本発明のトリEBx(登録商標)細胞のPDTは、約30時間未満、通常は24時間未満、および好ましくは20時間未満である。EBx(登録商標)細胞の場合、通常、3世代毎に1回継代する。
【0016】
「2倍体」とは、本発明の細胞が、各染色体の、通常は、母親から1つおよび父親から1つの、2つのコピー(2n)を有することを意味する。
【0017】
本発明のトリEBx(登録商標)細胞株が持続的であり2倍体(すなわち遺伝的に安定)であるということは、これらの用語は通常は相反するため、注目すべき独特な特徴である。すなわち、化学的改変、物理的改変(紫外線照射、X線、もしくはγ線照射など)、または遺伝的改変(ウイルス形質転換、癌遺伝子過剰発現など)によって得られる癌細胞および/または不死化細胞は、培養状態で無期限に複製することができるため、持続的な細胞であるが、倍数体の核型を示すため、遺伝的に安定ではない。これに対して、非形質転換細胞である、ニワトリ胚線維芽細胞、MRC5、WI38などの初代細胞は、寿命が数世代までに限られているため、持続的ではないが、遺伝的には安定な(すなわち、2倍体の)細胞である。
【0018】
本発明において、「細胞株」および「細胞」という用語は、明瞭に区別せずに使用される。
【0019】
本明細書において使用される「トリ(avian)」、「鳥(bird)」、「鳥類(aves)」、または「アバ(ava)」という用語は、同じ意味を有すると意図され、明瞭に区別せずに使用される。「鳥」は、分類学的階級がアバ(ava)である生物の任意の種、亜種、または品種を意味する。好ましい態様において、「鳥」とは、以下の分類学的目の任意の動物を意味する:
-「ガンカモ目(Anseriformes)」(すなわち、アヒル、ガチョウ、ハクチョウ、および同類のもの)。ガンカモ目は、次の3つのファミリーに属する約150種の鳥を含む:サケヒドリ科(Anhimidae)(サケビドリ(screamer))、カササギガン科(Anseranatidae)(カササギガン(Magpie-goose))、ならびに、140種を超える水鳥を含み、アヒル、ガチョウ、およびハクチョウが挙げられるガンカモ科(Anatidae)。この目の種はすべて、水面での水上生活に高度に順応している。すべて、効率的に泳ぐための水かきのある足を持つ(ただし、一部はその後、主に陸生になった)。
-「キジ目(Galliformes)」(すなわち、ニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、キジ、および同類のもの)。キジ目は、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、およびキジを含む、鳥の目である。全世界で約256種が存在する。
-「ハト目(Columbiformes)」(すなわち、大型のハトおよび同類のもの)。鳥のハト目は、極めて広範囲に及ぶ小型のハトおよび大型のハトを含む。
【0020】
好ましい態様によれば、本発明の鳥は、ゲノム中にトリ白血病ウイルスE型(ALV-E)および内因性トリウイルス(EAV)のプロウイルス配列を含まない鳥より選択される。当業者は、ALV-E配列およびEAV配列が鳥ゲノム中に存在するかどうかを判定することができる(Johnson et Heneine, 2001, J. Virol 75:3605-3612; Weissmahr et al., 1997, J. Virol 71 :3005- 3012)。好ましくは、鳥は、ガンカモ目(すなわち、アヒル、ガチョウ、ハクチョウ)、シチメンチョウ、ウズラ、ニホンウズラ、ホロホロチョウ、クジャクを含む群より選択される。したがって、このような鳥に由来する細胞は、複製可能な内因性のALV-E粒子および/またはEAV粒子を産生しない。好ましい態様において、本発明の鳥は、アヒル、ガチョウ、ハクチョウ、シチメンチョウ、ウズラおよびニホンウズラ、ホロホロチョウ、ならびにクジャクを含む群より選択される。より好ましい態様によれば、鳥はアヒル、より好ましくはペキンアヒルまたはタイワンアヒルである。より好ましい態様によれば、鳥はペキンアヒルである。したがって、本発明は、胚性幹細胞(ES)に由来する持続的な2倍体アヒル細胞株を得るための方法であって、該アヒル細胞株が、複製可能な内因性レトロウイルス粒子を産生しない方法を提供する。本発明のアヒルEBx(登録商標)細胞株の例は、EB24、EB26、EB66、またはEB24-12のようなそれらのサブクローンである。
【0021】
第2の好ましい態様によれば、本発明の鳥は、ゲノム中に完全なALV-Eプロウイルス配列を含まないが、最終的にはEAVプロウイルス配列を含む鳥より選択される。当業者は、部分的または完全なALV-E配列およびEAV配列が鳥ゲノム中に存在するかどうかを判定することができる(JohnsonおよびHeneine, 2001)。完全なALV-Eプロウイルス配列を含まず(すなわち、ev-0種)、したがって、感染性のALV-Eレトロ粒子(retroparticle)を産生しない、以下のようないくつかのニワトリ品種を育種によって選択した:
-East Lansing USDAの家禽貯蔵物である家畜ニワトリ0系統(ELL-0系統)。East Lansing 0系統のニワトリは、ALVに関係した内因性ウイルス座位(ev)をまったく含まない(DunwiddieおよびFaras, 1985 Proc. Natl. Acad. Sci USA 82:5097-5101)。
-Charles River (SPAFAS)社製の白色レグホーンニワトリ22系統。
-国立農学研究所(Institut National de la Recherche Agronomique)(Domaine de Magneraud, Surgeres, France)から得られるDE系統およびPE11系統。
【0022】
したがって、ev-0鳥に由来する細胞は、複製可能な内因性のALV-E粒子を産生しない。好ましい態様によれば、鳥は、ev-0家畜ニワトリ(ニワトリ(Gallus Gallus domesticus)亜種)であり、好ましくは、ELL-0、22系統、DE、およびPE11より選択される。通常、ev-0ニワトリは、依然としてEAVプロウイルス配列を含むが、これまでのところ、感染性のEAV単離物は同定されていない。したがって、本発明は、ev-0ニワトリ種の胚性幹細胞(ES)に由来する持続的な2倍体ニワトリ細胞株を得るための方法であって、該ev-0ニワトリ細胞株が、複製可能な内因性レトロウイルス粒子を産生しない方法を提供する。
【0023】
第3の態様によれば、本発明の鳥は、ゲノム中に完全および/または不完全なALV-Eプロウイルス配列およびEAVプロウイルス配列を含むが、複製可能なALV-Eレトロ粒子およびEAVレトロ粒子を産生することができない鳥より選択される。当業者は、ALV-Eおよび/またはEAVの感染性および/または非感染性のレトロ粒子が鳥細胞から産生されるかどうかを判定することができる(JohnsonおよびHeneine, 2001; Weissmahr et al., 1996)。好ましくは、鳥は、特定病原体除去(SPF)ニワトリを含む群より選択され、好ましくはValo種より選択される。本発明のニワトリEBx(登録商標)細胞株の例は、EBv13細胞株である。
【0024】
本発明において、「内因性レトロウイルス粒子(endogenous retroviral particle)」または「内因性レトロウイルス粒子(endogenous retrovirus particle)」という用語は、明瞭に区別せずに使用され得る用語であり、一部のトリ細胞ゲノム中に存在するALV-Eプロウイルス配列またはEAVプロウイルス配列によってコードされ、かつ/またはそれらから発現されるレトロウイルス粒子またはレトロウイルスを意味する。鳥において、ALV-Eプロウイルス配列は、家畜ニワトリ(0系統ニワトリを除く)、セキショクヤケイ、およびコウライキジのゲノム中に存在することが公知である。鳥において、EAVプロウイルス配列は、家畜ニワトリ、0系統ニワトリ、セキショクヤケイ、アオエリヤケイ、ハイイロヤケイ、セイロンヤケイ、および同類のもの)を含むニワトリ属すべてに存在することが公知である(Resnick et al., 1990, J. Virol., 64:4640-4653を参照されたい)。
【0025】
「複製可能な」とは、内因性のレトロウイルス粒子が感染性であること、すなわち、このようなレトロウイルス粒子が、本発明のトリ細胞に感染し、その中で複製できることを意味する。
【0026】
EBx(登録商標)と名付けられた本発明の持続的な2倍体トリ細胞株を樹立する方法は、以下の2つの段階を含む:
(a)複製可能な内因性レトロウイルス粒子を産生し得る完全な内因性プロウイルス配列もその断片も含まない、より具体的にはEAVプロウイルス配列および/またはALV-Eプロウイルス配列ならびにその断片も含まない、鳥由来の胚性幹(ES)細胞を、それらの増殖を可能にさせるすべての因子を含む完全培地において、フィーダー層の存在下で、動物血清を添加して、単離、培養、および増殖する段階; 任意で、該完全培地は、付加的なアミノ酸(すなわちグルタミンなど)、ピルビン酸ナトリウム、β-メルカプトエタノール、動物以外に由来するタンパク加水分解物(すなわち酵母加水分解物、植物加水分解物など)などの添加物を含んでよい;
(b)前記因子、前記フィーダー層、および前記血清、ならびに任意で前記添加物を完全に取り除くために培地を改変すること、ならびに、複製可能な内因性レトロウイルス粒子を産生せず、外因性増殖因子、フィーダー層、および動物血清の不在下で、基本培地において長期間に渡って増殖することができる、EBx(登録商標)と名付けられた接着トリ細胞株または浮遊トリ細胞株をさらに得ることによって、継代する段階。
【0027】
増殖因子、血清、およびフィーダー層を漸進的にまたは完全に取り除くために行う、EBx(登録商標)細胞株を樹立する方法の段階(b)の培地の改変は、同時に、連続的に、または別々に行ってよい。培地からの除去(weaning)の順序は、以下から選択してよい:
-フィーダー層/血清/増殖因子;
-フィーダー層/増殖因子/血清;
-血清/増殖因子/フィーダー層;
-血清/フィーダー層/増殖因子;
-増殖因子/血清/フィーダー層;
-増殖因子/フィーダー層/血清。
【0028】
好ましい態様において、除去の順番は、増殖因子/フィーダー層/血清である。
【0029】
好ましい態様によれば、本発明の段階(a)によるトリ胚性幹細胞は、産卵、すなわち卵が産まれる際にトリ胚から採取される。Sellier et al. (2006, J. Appl. Poult. Res., 15:219-228)によれば、産卵は、イヤル-ギラディ(Eyal-Giladi)の分類(EYAL-GILADI's classification:EYAL-GILADIおよびKOCHAN, 1976, 「From cleavage to primitive streack formation : a complementary normal table and a new look at the first stages of the development in the chick」、"General Morphology" Dev.Biol. 49:321-337)に従った以下の発生段階に対応する:
-タイワンアヒル:段階VII
-ホロホロチョウ:段階VII〜VIII
-シチメンチョウ:段階VII〜VIII
-ペキンアヒル:段階VIII
-ニワトリ:段階X
-ニホンウズラ:段階XI
-ガチョウ:段階XI。
【0030】
好ましくは、段階(a)のアヒル胚性幹(ES)細胞は、イヤル-ギラディの分類の段階VIII(産卵)ごろに、より好ましくは、タイワンアヒルの場合は段階VIIごろ、およびペキンアヒルの場合は継代VIIIごろに、胚を分離することによって得られる。好ましくはev-0ニワトリ種に由来する、好ましくは、段階(a)のニワトリ胚性幹(ES)細胞は、イヤル-ギラディの分類の段階X(産卵)ごろに胚を分離することによって得られる。あるいは、本発明の段階(a)によるトリ胚性幹細胞は、産卵の前に胚から採取される。産卵の前に直面する主な制約は、雌鳥から外科的に卵を取り出さなければならないこと、および胚1つ当たりのES細胞の量が少ない(less important)ことである。
【0031】
さらに、トリ胚の極めて早い発生段階では、ES細胞は十分に個別化していないため、ES細胞をインビトロで培養することが困難である。当業者は、トリES細胞を採取するのが可能である、産卵前の時間帯を定めることができると考えられる。あるいは、本発明の段階(a)によるトリ胚性幹細胞は、産卵の後から孵化までの間にトリ胚から採取され得る。しかしながら、トリ胚性幹細胞は漸進的に分化を始めて、分化した組織を生じる; したがって、産卵後遅くなりすぎないうちにトリESを採取することが好ましい。当業者は、トリ胚性幹細胞を採取するのが可能である、産卵後の時間帯を定めることができると考えられる。
【0032】
これらのトリ胚性幹細胞は、39℃での培養で48〜72時間の間を含む、遅い倍加時間を特徴とする。
【0033】
理論に拘束されるわけではないが、トリES細胞の所定の細胞培養条件とそれに続く増殖因子、フィーダー層、および血清の漸進的な除去により、ES細胞の望ましい特徴の大半(核型の安定性、無期限の増殖、ESマーカーの発現)を維持するが、さらに、無血清培地に浮遊した状態で高い細胞濃度まで増殖するような産業的に好都合な特徴も示す細胞を順応させ、選択することが可能になる。テロメラーゼは、最も重要なESマーカーの内の1つに相当する。細胞継代の間、テロメラーゼ発現が持続および維持されるため、EBx(登録商標)細胞は持続的(すなわち不死性)であるが、さらに、遺伝的に安定(すなわち、2倍体)でもある。
【0034】
本発明は、複製可能な内因性レトロウイルス粒子を産生しない、ES細胞に由来する持続的な2倍体トリ細胞株(EBx(登録商標)細胞株またはEBx(登録商標)細胞と名付けられる)を得るための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:
(a)イヤル-ギラディの分類(EYAL-GILADI's classification:EYAL-GILADIおよびKOCHAN, 1976, 「From cleavage to primitive streack formation : a complementary normal table and a new look at the first stages of the development in the chick」、"General Morphology" Dev. Biol., 49:321-337)の段階VIごろから、孵化前、好ましくは産卵前後を含む発生段階に、好ましくはアヒルまたはニワトリ、好ましくはev-0ニワトリから鳥胚を単離する段階。好ましくは、該鳥のゲノムは、複製可能な内因性レトロウイルス粒子を産生し得る内因性プロウイルス配列を含まない;
(b)段階(a)の胚を分離することによって得られるトリ胚性幹(ES)細胞を、以下を添加した基本培地中に懸濁する段階:
-インスリン増殖因子1(IGF-1)および繊毛様神経栄養因子(CNTF);
-動物血清; および
-任意で、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン6受容体(IL-6R)、幹細胞因子(SCF)、および線維芽細胞増殖因子(FGF)を含む群より選択される増殖因子;
(c)段階(b)で得られたES細胞の懸濁液をフィーダー細胞の層に播種し、さらに、少なくとも1回の継代の間、ES細胞を培養する段階;
(d)任意で、継代1回〜約15回までの範囲の数回の継代に渡って、IL-6、IL-6R、SCF、FGFを含む群より選択される増殖因子すべてを培地から取り除き、さらに、少なくとも1回の継代の間、トリES細胞を培養する段階。好ましくは、IL-6、IL-6R、SCF、FGFを含む群より選択される増殖因子すべての培地から取り除くのは、1回の継代の間に同時に行う。通常、IL-6、IL-6R、SCF、FGFを取り除くのは、第10〜15代ぐらいで実施する;
(e)IGF-1およびCNTFを培地から取り除き、さらに、少なくとも1回の継代の間、トリES細胞を培養する段階。好ましくは、IGF-1およびCNTFを含む群より選択される増殖因子の培地から取り除くのは、1回の継代の間に同時に行う。通常、IGF-1およびCNTFを取り除くのは、第15〜25代ぐらいで実施する。あるいは、IGF-1およびCNTFを取り除くのは、数回の継代(少なくとも2回の継代、最高約15回の継代)の間に漸進的に減少させることによって実施する;
(f)数回の継代後にフィーダー層を完全に取り除くために、培地中のフィーダー細胞の濃度を漸進的に低下させ、さらに、細胞を培養する段階;
(g)任意で、少なくとも1回の継代後に添加物を完全に取り除くために、培地中の添加物の濃度を漸進的に低下させる段階;および
(h)任意で、数回の継代後に動物血清を完全に取り除くために、培地中の動物血清の濃度を漸進的に低下させる段階;および
(i)増殖因子、フィーダー層の不在下、任意で動物血清および添加物を含まない基本培地中で増殖することができる、ES細胞に由来するEBx(登録商標)と名付けられた接着トリ細胞株を得る段階であって、該持続的2倍体トリ細胞株が、好ましくは、複製可能な内因性レトロウイルス粒子を産生しない段階;
(j)任意で、前記接着トリEBx(登録商標)細胞株を浮遊培養条件にさらに順応させる段階;
(k)任意で、例えば限界希釈によって、前記トリEBx(登録商標)細胞をさらにサブクローニングする段階。
【0035】
好ましい態様において、本発明は、複製可能な内因性レトロウイルス粒子を産生しない、トリ胚性幹細胞(ES)に由来するEBx(登録商標)と名付けられた持続的2倍体トリ細胞株を得るための方法に関し、該方法は、以下の段階を含む:
(a)産卵前後の発生段階に鳥胚を単離する段階であって、該鳥のゲノムが、複製可能な内因性レトロウイルス粒子を産生し得る内因性プロウイルス配列を含まない段階;
(b)段階(a)の胚を分離することによって得られるトリ胚性幹(ES)細胞を、少なくとも以下を添加した基本培地中に懸濁する段階:
- インスリン増殖因子1(IGF-1)および繊毛様神経栄養因子(CNTF); ならびに
- ウシ胎仔血清のような哺乳動物血清;
(c)段階(b)で得られたES細胞の懸濁液をフィーダー細胞の層に播種し、さらに、少なくとも1回の継代の間、ES細胞を培養する段階;
(e)IGF-1およびCNTFを培地から取り除き、さらに、少なくとも1回の継代の間、細胞を培養する段階;
(f)数回の継代後にフィーダー層を完全に取り除くために、培地中のフィーダー細胞の濃度を漸進的に低下させ、さらに、細胞を培養する段階;
(g)数回の継代後に哺乳動物血清を完全に取り除くために、培地中の哺乳動物血清の濃度を漸進的に低下させる段階; および
(h)増殖因子、フィーダー層、および哺乳動物血清の不在下、基本培地中で増殖することができる、ES細胞に由来する接着トリEBx(登録商標)細胞株を得る段階であって、該持続的2倍体トリ細胞株が、複製可能な内因性レトロウイルス粒子を産生しない段階;
(i)任意で、好ましくは、浮遊液としての増殖を促進することによって、より好ましくは、段階(h)で得られた接着トリEBx(登録商標)細胞株を、最初の支持体より接着特性が劣る別の支持体(すなわち、超低接着支持体など)中に移すことによって、接着トリEBx(登録商標)細胞株を浮遊培養条件にさらに順応させる段階。
接着トリEBx(登録商標)細胞株を浮遊培養条件に順応させる段階(j)を実施する場合、別の好ましい態様において、培地中の哺乳動物血清の濃度を漸進的に低下させる段階(g)の前に実施することができる。
【0036】
別の好ましい態様において、本発明による持続的2倍体トリ細胞株を得るための方法の段階(b)の基本培地は、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン6受容体(IL-6R)、幹細胞因子(SCF)、および線維芽細胞増殖因子(FGF)を含む群より選択される増殖因子をさらに添加され、該方法は、以下の段階(d)をさらに含む:
(d)任意で、IL-6、IL-6R、SCF、FGFを含む群より選択される増殖因子すべてを培地から取り除き、さらに、少なくとも1回の継代の間、ES細胞を培養する段階。
【0037】
より好ましい態様において、段階(d)を実施する場合、IGF-1およびCNTFを培地から取り除く段階(e)を、IL-6、IL-6R、SCF、FGFを含む群より選択される増殖因子すべてを培地から取り除く段階(d)の後に実施する。
【0038】
本発明によれば、「基本培地」は、少なくとも細胞生存、およびさらに好適には細胞増殖を単独で可能にする古典的な培地配合の培地を意味した。基本培地の例は、BME (basal Eagle Medium)、MEM (minimum Eagle Medium)、培地199、DMEM(Dulbecco's modified Eagle Medium)、GMEM (Glasgow modified Eagle medium)、DMEM-HamF12、Ham-F12およびHam-F10、イスコフ改変ダルベッコ培地、マッコイ5A培地、RPMI1640、GTM3である。基本培地は、無機塩類(例えば、CaCl2、KCl、NaCl、NaHCO3、NaH2PO4、MgSO4など)、アミノ酸、ビタミン(チアミン、リボフラビン、葉酸、D-パントテン酸Caなど)、および他の成分、例えば、グルコース、β-メルカプト-エタノール、ピルビン酸ナトリウムを含む。好ましくは、基本培地は合成培地である。
【0039】
さらに、本発明の基本培地は、以下の群より選択される添加物を補充されてよい:
- 0.1〜5mMのL-グルタミン、好ましくは2〜3mMの間のL-グルタミン;
- 0.05〜2mMのピルビン酸ナトリウム、好ましくは0.1mM〜1mMの間のピルビン酸ナトリウム;
- 0.1〜2.5%の非必須アミノ酸、好ましくは約1%の非必須アミノ酸;
- 0.05〜5mMのβ-メルカプト-エタノール、好ましくは約0.16mMのβ-メルカプト-エタノール;
- 動物以外に由来するタンパク質加水分解物。
【0040】
本発明のアヒルEBx(登録商標)細胞を樹立する場合、基本培地には、動物以外に由来するタンパク質加水分解物が好ましくは補充される。動物以外に由来するタンパク質加水分解物は、細菌トリプトン、酵母トリプトン、ダイズ加水分解物のような植物加水分解物、またはその混合物からなる群より選択される。好ましい態様において、動物以外に由来するタンパク質加水分解物は酵母加水分解物である。「加水分解物」という用語は、ダイズペプトンまたは酵母抽出物の酵素消化物を含む。加水分解物は、それぞれ、複数のダイズペプトン調製物または酵母抽出物調製物から得ることができ、これらは、さらに酵素で(例えばパパインによって)消化するか、かつ/または自己分解、熱分解、および/もしくは原形質分離によって形成させることができる。また、加水分解物は、JRH BioSciences (Lenaxa, KA)、Quest International (Norwich, N.Y.)、OrganoTechnic S.A. (France)、またはDeutsche Hefewerke GmbH (Germany)などの供給業者から、酵母加水分解物(Yeastolate)、Hy-Soy、Hy-Yeast412、およびHi-Yeast 444などを商業的に得ることもできる。酵母抽出物の供給業者は、WO 98/15614でも開示されている。酵母抽出物およびダイズ加水分解物の供給業者は、WO00/03000でも開示されている。本発明の培地中で使用される加水分解物は、好ましくは、粗製の画分から精製される。これは、効率的な培養を妨げる可能性がある不純物が、この精製の間に好ましくは排除され、それによって加水分解物の均一性(consistency)が改善されるためである。精製は、限外ろ過、またはSephadexクロマトグラフィー(例えば、Sephadex G25もしくはSephadex G10または同等の材料を使用)、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、もしくは「逆相」クロマトグラフィーによって行ってよい。好ましくは、精製は、カットオフ値10kDaのフィルターを利用した限外ろ過によって実施される。これらの方法は当分野において公知である。これらの方法を用いて、所定の分子量のダイズ加水分解物または酵母加水分解物を含む画分を選択することができる。好ましくは、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物の平均分子量は、好ましくは約220〜375ダルトンの間である。好ましくは、酵母加水分解物は、細胞培養培地中に存在する。例えばJRH-BIOSCIENCESから入手した酵母加水分解物50×(約200g/l)(参照番号58902)は、約0.1×〜2×の間、好ましくは約0.5×〜約1×の間を含む培地中最終濃度で、細胞培養培地中に存在する。ダイズ加水分解物もまた、細胞培養培地に添加してよい。例えばJRH-BIOSCIENCESから入手したダイズ加水分解物50×(参照番号58903100M)は、約0.1×〜2×の間、好ましくは約1×を含む最終濃度で、細胞培養培地中に添加される。あるいは、US 2004/0077086に記載されているように、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物の混合物を細胞培養培地に添加してもよい。
【0041】
本発明の好ましい基本培地によれば、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、1%非必須アミノ酸、0.16mM β-メルカプト-エタノール、および任意で1×酵母加水分解物を補充されたDMEM-HamF12である。
【0042】
「完全培地」とは、補充されるか、または補充されていない基本培地、好ましくは、少なくとも1種の増殖因子および動物血清を添加された基本合成培地を意味する。完全培地の例は、WO 03/076601、WO 05/007840、EP 787 180、US 6,114,168、US 5,340,740、US 6,656,479、US 5,830,510、およびPain et al. (1996, Development 122:2339-2348)に記載されている。あるいは、完全培地は、順化培地、好ましくはBRL順化培地でよい。例えば、BRL順化培地は、SmithおよびHooper(1987, Dev.Biol. 121:1-9)によって説明されているような当技術分野において認識されている技術に従って調製される。BRL細胞は、ATCCアクセッション番号CRL-1442で入手可能である。順化培地は、後述するような外因性の増殖因子および動物血清を添加されてよい。
【0043】
本明細書において使用される「増殖因子」という用語は、基本培地中で培養中の未分化トリES細胞が生存および増殖するために必要な増殖因子を意味した。増殖因子の2つのファミリーを概略的に区別することが可能である:サイトカインおよび栄養因子。サイトカインは主に、gp130タンパク質と会合した受容体を介して作用するサイトカインである。したがって、白血病阻害因子(LIF)、インターロイキン11、インターロイキン6、インターロイキン6受容体、繊毛様神経栄養因子(CNTF)、オンコスタチン、およびカルジオトロフィンは、同様の作用様式を有し、受容体のレベルに特異的な鎖を動員し、単量体または時にはヘテロ2量体の形態で、後者とgp130タンパク質を組み合わせる。栄養因子は主に、幹細胞因子(SCF)、インスリン増殖因子1(IGF-1)、および線維芽細胞増殖因子(FGF)、好ましくは塩基性FGF(bFGF)またはヒトFGF(hFGF)である。
【0044】
本発明による完全培地は、基本培地、好ましくは基本合成培地、ならびにgp130タンパク質と会合した受容体を介して作用するサイトカイン少なくとも1種のサイトカインおよび/または少なくとも1種の栄養因子を含む。好ましくは、本発明による完全培地は、基本培地、および白血病阻害因子(LIF)、オンコスタチン、カルジオトロフィン、インスリン増殖因子1(IGF-1)、繊毛様神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン6受容体(IL-6R)、幹細胞因子(SCF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インターロイキン11(IL-11)からなる群より選択される少なくとも1種の増殖因子を含む。第1の好ましい態様によれば、完全培地は、動物血清ならびに少なくともIGF-1およびCNTFを添加された基本培地である。第2の好ましい態様によれば、完全培地は、動物血清ならびに少なくともIGF-1、CNTF、IL-6、およびIL-6Rを添加された基本培地である。第3の好ましい態様によれば、完全培地は、動物血清ならびに少なくともIGF-1、CNTF、IL-6、IL-6R、SCF、FGFを添加された基本培地である。別の態様によれば、完全培地は、増殖因子(すなわち、例えばBRL細胞またはSTO細胞によって発現される)を含み、かつ任意で、LIF、IGF-1、CNTF、IL-6、IL-6R、SCF、FGF、IL-11を含む群より選択される少なくとも1種の外因性増殖因子を添加された順化培地である。基本培地または順化培地中の増殖因子IGF-1、CNTF、IL-6、IL-6R、SCF、FGF、IL-11の濃度は、約0.01〜10ng/mlの間、好ましくは0.1〜5ng/ml、およびより好ましくは約1ng/mlで含まれる。
【0045】
本発明の培地はまた、細菌汚染を防ぐために、抗生物質、例えば、ゲンタマイシン、ペニシリン、およびストレプトマイシンなどをさらに含んでよい。抗生物質は、ES細胞培養の初期の継代時に培地に添加してよい。例えば、最終濃度10ng/mlのゲンタマイシン、最終濃度100U/mlのペニシリン、および最終濃度100μg/mlのストレプトマイシンを培地に添加してよい。好ましい態様において、本発明の持続的2倍体トリ細胞株を樹立する方法の後期の段階の間には、培地に抗生物質を添加しない。
【0046】
本発明のトリ胚性幹細胞を樹立する方法の実施中、細胞は、フィーダー細胞層上で培養される。より好ましくは、フィーダー細胞は、トリES細胞を培養する目的で培養された動物細胞または細胞株である。あるいは、フィーダー細胞は、結合された増殖因子を加えた細胞外マトリックスで代用することもできる。フィーダーマトリックスは、以後、フィーダー細胞または細胞外マトリックスのいずれかを指す。本明細書において使用されるフィーダーマトリックスは、当技術分野において公知の手順に従って構築される。上記のように、フィーダーマトリックスは前もって順化される(preconditioned)ことが好ましい。「前もって順化される(preconditioned)」という用語は、受精トリ卵胚盤葉板に由来する細胞をフィーダーマトリックスと接触するように播種する(depositing)前に、一定期間、例えば、フィーダーマトリックスによる例えば増殖因子または他の因子の産生を開始および確立するのに十分な時間、培地の存在下でフィーダーマトリックスを培養することを意味する; 通常、フィーダーマトリックスは、受精トリ卵胚盤葉板に由来する細胞をフィーダーマトリックスと接触するように播種する前に1〜2日間、単独でフィーダーマトリックスを培養することによって前もって順化する。フィーダー細胞は、好ましくは、マウス線維芽細胞を含む。STO線維芽細胞が好ましいが、初代線維芽細胞もまた、適している。また、本発明は、マウス細胞のフィーダーマトリックスの使用に関して説明したが、他のマウス種(例えばラット)、他の哺乳動物種(例えば、有蹄動物、ウシ、ブタの種)、またはトリ種(例えば、ガリナシア(Gallinacea)、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ)に由来する細胞を含むフィーダーマトリックスもまた使用され得ることが企図される。別の態様において、本発明のフィーダー細胞は、例えば、STO細胞中のトリSCFのような増殖因子の構成的発現を可能にさせる発現ベクターをトランスフェクトしてよい。したがって、この「フィーダー」は、可溶性であるか、かつ/または細胞の形質膜に結合した形態の因子を産生する。したがって、本発明の培養方法は、単層のフィーダー細胞を確立する段階を任意で含んでよい。フィーダー細胞は、標準的な技術を用いて、有糸分裂を不活性化される。例えば、フィーダー細胞をX線照射もしくはγ線照射(例えば、4000ラドのγ線照射)に曝露してよいか、またはマイトマイシンC(例えば、10μg/mlで2〜3時間)で処置してよい。また、細胞の有糸分裂を不活性化するための手順は、American Type Culture Collection (ATCC)、10801 University Boulevard, Manassas, Va. 20110-2209、から細胞と一緒に通常送付される情報の中で詳述されている(例えば、STOフィーダー細胞は、ATCCアクセッション番号1503で入手可能である)。単層は、約80%の集密度まで、好ましくは約90%の集密度まで、およびより好ましくは約100%の集密度まで任意で培養してよい。単層としてのフィーダー細胞の形状が、培養物のために好ましい形状であるものの、任意の適切な形状が本発明の範囲内であることが企図される。したがって、例えば、フィーダー細胞の層、単層、クラスター、凝集物、または他の団体もしくは集団が、本発明の範囲内に入ることが企図され、用語「マトリックス」の意味に入ることが特に企図される。
【0047】
本発明の培地には、動物血清が添加される。好ましくは使用される動物血清は、胎仔動物血清である。ウシ胎仔血清が好ましい。また、本発明は、ウシ胎仔血清の使用に関して説明したが、他の動物種(例えば、ニワトリ、ウマ、ブタ、有蹄動物など)に由来する血清を含む動物血清もまた使用され得ることが企図される。培地中の動物血清の最終濃度は、約1〜25%の間、好ましくは5%〜20%の間、より好ましくは8%〜12%の間を含む。好ましい態様において、培地中の動物血清の最終濃度は約10%である。好ましい態様によれば、培地は、約10%のウシ胎仔血清を含む。
【0048】
本発明はまた、持続的2倍体トリEBx(登録商標)細胞株にも関する。EBx(登録商標)細胞は、小型で円形の(すなわち、直径約10um)個別化した細胞であり、37℃または39℃での倍加時間は約30時間またはそれ以下である。トリEBx(登録商標)細胞、好ましくはアヒルEBx(登録商標)またはニワトリEBx(登録商標)ev-0は、以下の特徴を有する胚性幹細胞表現型を発現する:
- 高い核細胞質比、
- 内因性テロメラーゼ活性、
- 任意で、アルカリホスファターゼ、SSEA-1マーカー、EMA-1マーカー、ENS1マーカーなど1種または複数種の別のESマーカーを発現する場合がある。
- 本発明の方法の段階(a)のトリES細胞の倍加時間(39℃で48時間〜72時間)より短い倍加時間:37℃で約30時間またはそれ以下(好ましくは24時間)。
【0049】
前記EBx(登録商標)細胞は、好ましくは、複製可能な内因性レトロウイルス粒子を産生しない。本発明のトリEBx(登録商標)細胞株は、基本培地中、特に、外因性の増殖因子、血清、および/または不活性化したフィーダー層を含まず、任意で、当業者によって一般に使用される様々な添加物を補充した培地、例えば、SAFC Excell培地、DMEM、GMEM、DMEM-HamF12、またはマッコイなどにおいて無期限に増殖する能力がある。添加物の例は、非必須アミノ酸、ビタミン、ピルビン酸ナトリウム、および抗生物質である。本発明のアヒルEBx(登録商標)細胞は、グルタミンを補充されていない基本培地で増殖するという顕著な特徴を有する。
【0050】
本発明のトリEBx(登録商標)細胞の核型解析により、EBx(登録商標)細胞が2倍体であり、何世代にも渡って遺伝的に安定であることが示される。
【0051】
本発明は、関心対象の組換えタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸配列であって、細胞において該タンパク質の発現を引き起こすことができるプロモーター配列に機能的に連結された核酸配列、好ましくは、デオキシリボ核酸(DNA)配列を含む少なくとも1つの発現カセットを含む少なくとも1つの発現ベクターをトランスフェクトされた、トリEBx(登録商標)細胞、好ましくはニワトリEBx(登録商標)細胞またはアヒルEBx(登録商標)細胞を提供する。発現ベクターは、選択マーカーをコードする少なくとも1つのDNA配列であって、宿主細胞において該選択マーカーの発現を引き起こすことができるプロモーター配列に機能的に連結されたDNA配列を含む少なくとも1つの発現カセットをさらに含む。
【0052】
発現ベクターは、関心対象の少なくとも1つのコード配列の転写および翻訳のために必要なエレメントを含む。当業者に周知であり、実行される方法を用いて、関心対象のタンパク質およびポリペプチドをコードする配列、ならびに適切な転写制御エレメントおよび翻訳制御エレメントを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、インビトロの組換えDNA技術、合成技術、およびインビボの遺伝的組換えが含まれる。このような技術は、例えば、Sambrook et al. (1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview, N.Y.)およびAusubel et al. (1989, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y.)に記載されている。
【0053】
適切な発現ベクターは、関心対象の異種タンパク質をコードし、制御エレメントおよび調節配列に機能的に連結された、核酸配列、好ましくはDNA配列を含む少なくとも1つの発現カセットを含む。少なくとも、発現カセットは、関心対象の異種タンパク質をコードし、プロモーター配列に機能的に連結された、核酸配列、好ましくはDNA配列を含む。本明細書において使用される「プロモーター」とは、遺伝子の発現を調節する核酸配列を意味する。本明細書において使用される「機能的に連結される」という用語は、コード配列の転写および/または発現を達成するための、例えば、発現ベクター内でのコード配列および制御配列の配置を意味する。したがって、コード配列に機能的に連結された制御配列は、コード配列の発現を引き起こすこと、および、例えばどの組織で、発生のどの時点に、またはどのシグナルに応答して遺伝子が発現されるかを調節することができる。DNAポリメラーゼがプロモーター配列に結合し、コードされたタンパク質に翻訳され得るmRNAにコード配列を転写する場合、コード配列は、細胞中で転写調節領域に機能的に連結されているか、またはその制御下にある。制御配列は、コード配列の発現を指示するように機能する限り、コード配列と隣接している必要はない。
【0054】
したがって、例えば、介在する非翻訳配列または転写配列は、プロモーター配列とコード配列の間に存在してよく、それでもなお、プロモーター配列はコード配列に「機能的に連結されている」とみなすことができる。このような介在配列には、転写もされず、ポリメラーゼに結合されもしないエンハンサー配列が含まれるがそれに限定されるわけではない。本明細書において使用される「発現された」または「発現」という用語は、遺伝子コード配列の核酸鎖2つの内1つのある領域に少なくとも部分的に相補的なRNA核酸分子へのヌクレオチド配列の転写、および/またはRNA核酸分子からタンパク質もしくはポリペプチドへの翻訳を意味する。
【0055】
このような発現カセットは、宿主細胞のタンパク質と相互に作用して転写および翻訳を行うプロモーターのほかに、カセットの非翻訳領域である制御エレメントまたは調節配列(例えば、エンハンサー、5'非翻訳領域および3'非翻訳領域)をさらに含む。本明細書において使用される場合、「制御エレメント」および「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、および遺伝子発現を制御し得る他のエレメントを含む。Sambrook et al.編、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第3版、Cold Spring Harbor Press (2001)のような標準的な分子生物学教科書を参考にして、複製起点および選択可能な遺伝子マーカーをさらに含み得る適切な発現ベクターを設計することができる。このようなエレメントの強度(strength)および特異性は様々でよい。ベクター系に応じて、構成的プロモーターおよび誘導性プロモーターを含む任意の数の適切な転写エレメントおよび翻訳エレメントを使用することができる。
【0056】
しかしながら、適切な発現ベクターの選択およびその中の機能的エレメントの組合せは、例えば、発現させようとするタンパク質のタイプを含む、多数の因子に依存することを認識すべきである。発現ベクターの代表的な例には、例えば、限定されるわけではないがpBR322のような発現ベクターおよびクローニングベクターを含む細菌プラスミドベクター、限定されるわけではないが、改変されたトリアデノウイルス、麻疹ウイルス、インフルエンザウイルス、ポリオウイルス、ポックスウイルス、およびレトロウイルスなどの動物ウイルスベクター、ならびにバクテリオファージ核酸に由来するベクター、例えば、プラスミドおよびコスミド、限定されるわけではないが、酵母人工染色体(YAC)および細菌人工染色体(BAC)などの人工染色体、ならびに化学合成したDNAまたはRNAのような合成オリゴヌクレオチドが含まれる。したがって、本明細書において使用される「核酸ベクター」または「ベクター」という用語は、細胞中にトランスフェクトまたは形質転換し、宿主細胞ゲノムから独立して、またはその内部で複製することができる、天然もしくは合成の単鎖もしくは二本鎖のプラスミドもしくはウイルス核酸分子または他の任意の核酸分子を意味する。核酸は、ベクターを制限酵素で切断し、それらの細片を一緒に連結することによって、ベクター中に挿入することができる。核酸分子はRNAまたはDNAでよい。好ましくは、核酸分子はDNAである。ある種のベクターは、導入された先の宿主細胞において自立複製することができる。例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよび哺乳動物エピソームベクターである。哺乳動物非エピソームベクターのような他のベクターは、宿主細胞中に導入された際に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、その結果、宿主ゲノムと共に複製される。
【0057】
タンパク質発現系において使用するための発現カセットは、プロモーター配列に機能的に連結された、関心対象の組換えタンパク質をコードする少なくとも1つのDNA配列、および任意で、制御エレメントまたは調節配列を含むように設計される。制御エレメントまたは調節配列は、遺伝子発現の適切な転写および調節のために必要であるか、または必要とされる。これらの配列は、好ましくは、転写開始配列および転写終結配列、エンハンサー、イントロン、複製起点部位、ポリアデニル化配列、ペプチドシグナルエレメント、ならびにクロマチンインスレーターエレメントからなる群より選択される。調節配列は、例えば、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に記載されている。エンハンサー配列は、遺伝子発現を最適化するために、プロモーター領域配列の上流または下流に位置してよい。「エンハンサー」とは、遺伝子のアイデンティティとも、遺伝子に対するその配列の位置とも、その配列の向きとも無関係に、遺伝子の転写を増強するように作用するヌクレオチド配列である。本発明のベクターは、任意でエンハンサーを含む。エンハンサーの例は、CMV最初期エンハンサーおよびSV40初期エンハンサーである。
【0058】
イントロン配列は、遺伝子発現を最適化するために、関心対象の組換えタンパク質をコードする配列の上流または下流に位置してよい。好ましい態様によれば、イントロン配列は、プロモーター配列と関心対象の組換えタンパク質をコードする配列の間に位置する。本発明のイントロン配列は、好ましくは、ヒトβ-グロビン遺伝子の第1のイントロンに由来する5'-供与部位およびブランチおよび免疫グロブリン遺伝子重鎖可変領域のイントロンに由来する3'-受容部位から構成されたキメライントロンからなる群より選択される。
【0059】
本発明のプロモーター配列は、好ましくは、哺乳動物由来の遺伝子もしくはトリ由来の遺伝子または哺乳動物ウイルス遺伝子もしくはトリウイルス遺伝子より選択される。好ましい態様において、プロモーター配列はウイルスに由来し、かつ、ヒトまたはマウスのサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、トリ肉腫ウイルス(ASV)xLNプロモーター、サルウイルス40(SV40)の初期プロモーターおよび後期プロモーター(Fiers et al. (1973) Nature 273:113)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼプロモーター、呼吸器合胞体ウイルスプロモーター、MDOTプロモーター、ポリオーマウイルスプロモーター、アデノウイルス2プロモーター、ウシパピローマウイルスプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、ならびにこれらの各プロモーターの機能的部分からなる群より選択される。別の態様によれば、プロモーター配列は、マウスホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター、マウス白血病ウイルス(MLV)プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、EiF4αプロモーター、キメラEF1α/HTLVプロモーター、キメラCAGプロモーター(ヒトCMV最初期エンハンサーおよび改変されたニワトリβ-アクチンプロモーターおよび第1イントロンを組み合わせた複合プロモーター)、およびトリ遺伝子プロモーター、ならびにこれらの各プロモーターの機能的部分からなる群より選択される。トリ遺伝子プロモーターのうちで、プロモーターは、好ましくは、β-アクチンプロモーター、輸卵管特異的プロモーター、オボムコイドプロモーター、卵白アルブミンプロモーター、コンアルブミンプロモーター、オボムチンプロモーター、オボトランスフェリンプロモーター、リゾチームプロモーター、ENS1遺伝子プロモーター、およびこれらの各プロモーターの機能的部分などのニワトリプロモーターより選択される。
【0060】
別の態様によれば、プロモーターは、特定の化合物または分子による誘導能を与えるプロモーターのような調節されたプロモーターより選択されてよく、例えば、マウス乳癌ウイルス(MMTV)の糖質コルチコイド応答エレメント(GRE)は、糖質コルチコイドによって誘導される(Chandler et al. (1983) Cell 33: 489-499)。また、必要または所望の場合には、組織特異的プロモーターまたは調節エレメントを使用することもできる(Swift et al. (1984) Cell, 38: 639-646)。本発明において有用であり得る他のプロモーターの非限定的な例には、非限定的に、Pol IIIプロモーター(例えば、1型、2型、および3型のPol IIIプロモーター)、例えば、HIプロモーター、U6プロモーター、tRNAプロモーター、RNアーゼMPRプロモーター、およびこれらの各プロモーターの機能的部分が含まれる。典型的には、機能的ターミネーター配列は、使用されるプロモーターに応じて、本発明で使用するために選択される。
【0061】
本発明の発現ベクターは、細胞において選択マーカーの発現を引き起こすことができるプロモーター配列に機能的に連結された、選択マーカーをコードする少なくとも1つの核酸配列、好ましくはDNA配列を含む少なくとも1つの発現カセットをさらに含んでよい。このような選択マーカーは、そのベクターを含むEBx(登録商標)細胞に対して耐性を与えて、適切な選択培地でそれらを選択することを可能にし得る。本発明の方法のためには、安定な発現の方が、再現性のより高い結果を通常もたらし、また、大規模な製造に適用しやすいため、一過性発現よりも一般に好ましい。したがって、本発明の発現ベクターは、EBx(登録商標)細胞の染色体DNA中に安定に組み入れられる。外来DNAの導入後、操作した細胞は、強化培地中で1〜2日間、増殖させてよく、次いで、選択培地に移される。組換えベクター中の選択マーカーは、選択に対する耐性を与え、かつ、染色体中にベクターを安定に組み込み、増殖して、次にクローン化し増殖させて細胞株にすることができるフォーカスを形成する細胞の選択を可能にする。
【0062】
好ましい態様において、抗代謝産物耐性が、以下の非限定的なマーカー遺伝子の例を選択する基本原理として使用される: メトトレキサートに対する耐性を与えるDHFR(Wigler et al. (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:357; およびO'Ηare et al. (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:1527); ミコフェノール酸に対する耐性を与えるGPT(MulliganおよびBerg (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:2072); アミノグリコシドG418に対する耐性を与えるネオマイシン(NEO)(WuおよびWu (1991) Biotherapy, 3:87-95; Tolstoshev (1993) Ann. Rev. Pharmacol.Toxicol., 32:573-596; Mulligan (1993) Science, 260: 926- 932; Anderson (1993) Ann. Rev. Biochem., 62:191-21); ならびにハイグロマイシンに対する耐性を与えるハイグロマイシンB(Santerre et al. (1984) Gene, 30:147)およびピューロマイシン。最も好ましい態様において、抗生物質耐性遺伝子が、選択の基本原理として使用される。好ましい態様によれば、本発明の選択マーカーは、ネオマイシン耐性遺伝子である。好ましくは、NEOをコードする核酸配列は、TN5のネオマイシン/カナマイシン耐性遺伝子である。別の好ましい態様によれば、本発明の選択マーカーは、カナマイシン耐性遺伝子である。別の好ましい態様によれば、本発明の選択マーカーは、ピューロマイシン耐性遺伝子である。
【0063】
あるいは、このような選択系は、本発明のEBx(登録商標)細胞が、適切な遺伝子型(すなわち、TK-、HGPRT-、ART-、DHFR-、GPT-など)を示すように前もって遺伝的に改変されていることを必要とする。限定されるわけではないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV TK)(Wigler et al. (1977) Cell 11 :223)、ヒポキサンチン・グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)(Szybalska & Szybalski (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 48:202)、およびアデニンホスホル-リボシル(phosphor-ribosyl)トランスフェラーゼ(Lowy et al. 1980 Cell 22: 817)の遺伝子を含むいくつかの選択系を使用することができ、それぞれ、tk-細胞、hgprt-細胞、またはart-細胞(APRT)において使用することができる。組換えDNA技術の技術分野において一般に公知の方法は、所望の組換え細胞クローンを選択するためにルーチン的に適用することができ、このような方法は、例えば、Ausubel et al. (1993)およびKriegle (1990, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY; 12章および13章)に記載されている。
【0064】
さらに、発現されるタンパク質分子の発現レベルは、ベクター増幅によって増大させることができる(総説については、Bebbington & Hentschel、「The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning」、第3巻、Academic Press, New- York 1987を参照されたい)。あるタンパク質を発現するベクター系中のマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞培養物中に存在する阻害物質のレベルが上昇すると、マーカー遺伝子のコピー数が増加すると考えられる。増幅される領域は、タンパク質をコードする遺伝子と結合しているため、タンパク質の産生も同時に増加する(Crouse et al. (1983), Mol. Cell. Biol., 3: 257)。グルタミン合成酵素(GS)またはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をコードする核酸を選択マーカーとして含むベクターは、それぞれ、薬物であるメチオニンスルホキシミンまたはメトトレキサートの存在下で増幅させることができる。グルタミン合成酵素発現系およびその構成要素は、PCT公報:WO 87/04462; WO 86/05807; WO 89/01036; WO 89/10404; およびWO 91/06657で詳述されている。さらに、本発明に従って使用することができるグルタミン合成酵素発現ベクターは、例えば、Lonza Biologies, Inc. (Portsmouth, NH)を含む供給業者から市販されている。
【0065】
コード配列を含み、生物学的に活性な遺伝子産物(すなわち、関心対象のタンパク質、選択マーカーなど)を発現する宿主細胞は、次の少なくとも4つの一般的アプローチによって特定することができる; (a)DNA-DNAまたはDNA-RNAハイブリダイゼーション; (b)「マーカー」遺伝子機能の存在または不在; (c)EBx(登録商標)細胞における各mRNA転写物の発現によって測定される転写レベルの評価; および(d)イムノアッセイ法またはその生物活性に基づいて測定される遺伝子産物の検出。第1のアプローチでは、発現ベクターに挿入された関心対象のタンパク質のコード配列の存在は、それぞれ各コード配列に相同であるヌクレオチド配列またはそれらの一部分もしくは誘導体を含むプローブを用いたDNA-DNAハイブリダイゼーションまたはDNA-RNAハイブリダイゼーションによって検出することができる。第2のアプローチでは、組換え発現ベクター/宿主系は、特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、メトトレキサートに対する耐性など)の存在または不在に基づいて特定および選択することができる。
【0066】
本発明のベクターの一方または両方は、宿主細胞内部でのベクター構築物の複製を可能にする少なくとも1つの複製起点を含んでよい。好ましい態様によれば、本発明のベクターは、細菌(例えば大腸菌(E. coli))における発現ベクターの複製を可能にする、F1 ORIのような1つの細菌複製起点、および迅速なトランジェントアッセイ法によって発現ベクターを検査することを可能にするSV40複製起点を含む。
【0067】
本発明の発現ベクターは、クロマチンインスレーターエレメントをさらに含んでよい。本発明のクロマチンインスレーターエレメントには、バウンダリーエレメント(BE)、マトリックス結合領域(MAR)、遺伝子座調節領域(LCR)、および普遍的クロマチンオープニングエレメント(UCOE)が含まれる。バウンダリーエレメント(「BE」)またはインスレーターエレメントは、多くの場合、クロマチン中の境界を定め(Bell & Felsenfeld (1999) Curr Opin Genet Dev 9:191-198)、インビボで転写ドメイン定める際に役割を果たし得る。BEは、固有のプロモーター/エンハンサー活性を欠いているが、どちらかと言えば、周囲のクロマチン中の調節エレメントの転写影響から遺伝子を保護すると考えられている。エンハンサーブロックアッセイ法は、インスレーターエレメントを特定するために一般に使用される。このアッセイ法では、エンハンサーとプロモーターの間にクロマチンエレメントを配置し、エンハンサーによって活性化された転写を測定する。バウンダリーエレメントは、ショウジョウバエ(Drosophila)、酵母、および哺乳動物の細胞において、安定にトランスフェクトされたレポーター遺伝子を位置効果から保護できることが示されている(Walters et al. (1999) Mol. Cell. Biol. 19:3714-3726)。マトリックス結合領域(「MAR」; 骨格結合領域または骨格/マトリックス結合領域(「S/MAR」)としても公知)は、インビトロで、単離された核骨格または核マトリックスに高い親和力で結合するDNA配列である(HartおよびLaemmli (1998) Curr. Opin. Genet Dev 8:519-525)。したがって、これらは、包含するシス調節エレメントのみがドメイン内の遺伝子の発現を制御するように、独立したクロマチンドメインの境界を定めることできる。MARエレメントは、細胞培養株における異種遺伝子の発現を促進することができる(KalosおよびFournier (1995) Mol. Cell. Biol. 15:198-207))。遺伝子座調節領域(「LCR」)は、ある遺伝子座の最初のクロマチン活性化、およびそれに続くそれらの天然の位置での遺伝子転写に必要とされるシス調節エレメントである(Grosveld 1999, Curr Opin Genet Dev 9:152-157に総説がある)。最も詳細に特徴付けがなされたLCRは、グロビン遺伝子座のものである。遍在性クロマチンオープニングエレメント(「UCOE」、また、「遍在的に作用するクロマチンオープニングエレメント」としても公知)は、最近報告された(WO 00/05393を参照されたい)。好ましい態様によれば、本発明のクロマチンインスレーターエレメントはMARエレメントである。好ましくは、MARエレメントは、WO 02/074969に記載されているニワトリリゾチーム5'MARエレメントまたはWO 2005/040377に記載されているヒトMARエレメントより選択される。
【0068】
当業者には理解されるように、適切なベクター、例えば、プラスミド、適切な転写、発現のための構成要素(プロモーター、制御配列、および調節配列)の選択ならびに細胞発現系で産生されるタンパク質の単離は公知であり、当業者によってルーチン的に決定し、実行される。
【0069】
1つの態様によれば、本発明のEBx(登録商標)細胞は、少なくとも以下を含む、少なくとも1つの発現ベクターをトランスフェクトされる:
-次のDNA配列を次の順序で含む第1の発現カセット:配列番号1のCMVプロモーター配列またはその断片もしくは変種、イントロン配列、関心対象の組換えタンパク質をコードするDNA配列、ポリアデニル化配列、および
-次のDNA配列を次の順序で含む第2の発現カセット:SV40プロモーター、抗生物質耐性遺伝子(好ましくはネオマイシン耐性遺伝子)、ポリアデニル化配列;
-任意で、WO 02/074969に記載されている少なくとも1つのニワトリリゾチーム5'MARエレメントまたはWO 2005/040377に記載されているヒトMARエレメント。
【0070】
第2の態様によれば、本発明のEBx(登録商標)細胞は、少なくとも以下を含む、少なくとも1つの発現ベクターをトランスフェクトされる:
- 次のDNA配列を次の順序で含む第1の発現カセット:配列番号2のキメラEF1α/HTLVプロモーター配列またはその断片もしくは変種、イントロン配列、関心対象の組換えタンパク質をコードするDNA配列、ポリアデニル化配列; および
- 次のDNA配列を次の順序で含む第2の発現カセット:SV40プロモーター、抗生物質耐性遺伝子(好ましくはネオマイシン耐性遺伝子)、ポリアデニル化配列;
- 任意で、WO 02/074969に記載されている少なくとも1つのニワトリリゾチーム5'MARエレメントまたはWO 2005/040377に記載されているヒトMARエレメント。
【0071】
1つの態様によれば、本発明のEBx(登録商標)細胞は、少なくとも以下を含む、少なくとも1つの発現ベクターをトランスフェクトされる:
- 次のDNA配列を次の順序で含む第1の発現カセット:配列番号3のRSVプロモーター配列またはその断片もしくは変種、イントロン配列、関心対象の組換えタンパク質をコードするDNA配列、ポリアデニル化配列; および
- 次のDNA配列を次の順序で含む第2の発現カセット:SV40プロモーター、抗生物質耐性遺伝子(好ましくはネオマイシン耐性遺伝子)、ポリアデニル化配列;
- 任意で、WO 02/074969に記載されている少なくとも1つのニワトリリゾチーム5'MARエレメントまたはWO 2005/040377に記載されているヒトMARエレメント。
【0072】
好ましい態様によれば、イントロン配列は、配列番号4の配列またはその断片もしくは変種であり、ポリアデニル化配列は、配列番号5の配列またはその断片もしくは変種である。
【0073】
本発明の関心対象の組換えタンパク質が多量体タンパク質である場合、該タンパク質の様々な鎖は、単一の発現ベクター中でコードされるか、または異なる発現ベクター中でコードされる。後者の場合、異なる発現ベクターは、同時または連続的にEBx(登録商標)細胞中に同時トランスフェクトされる。「同時トランスフェクション」とは、複数の発現ベクターをEBx(登録商標)細胞にトランスフェクトするプロセスを意味する。抗体の軽鎖を発現できる発現ベクターおよび抗体の重鎖を発現できるベクターを細胞に同時トランスフェクトする場合、ベクターは好ましくは選択マーカーをそれぞれ独立に含む。単一の発現ベクターが抗体の軽鎖および抗体の重鎖を発現できる場合、ベクターは好ましくは、少なくとも1つの選択マーカーを含む。
【0074】
驚くべきことに、本発明者らは、抗体の重鎖および軽鎖をコードする単一の発現ベクターをトランスフェクトした場合の方が、それぞれが一方の抗体鎖をコードする2つの発現ベクターを同時トランスフェクションした場合と比べて、EBx(登録商標)細胞における抗体発現のレベルが高いことをここに発見した。さらに、本発明者らは、単一のベクターをトランスフェクトする場合、発現ベクターが次の順序で以下を含む場合に、EBx(登録商標)細胞における抗体発現のレベルがより高いことも発見した:抗体の重鎖をコードする第1のカセットおよび抗体の軽鎖をコードする第2のカセット。各カセットは同じプロモーターを有する。軽鎖および重鎖は抗体分子中で等モルの比率で連結されるため、実際は、EBx(登録商標)細胞から抗体の軽鎖および重鎖がバランスよく発現されることが望ましい。発現ベクターは、抗体が機能的な形態で得られること、および優れた収量で分泌されることを可能にする。したがって、この方法により、病理学的障害の免疫療法において使用するために、十分な量の機能的抗体を得ることが可能になる。
【0075】
本発明の細胞株は、等モル比率の軽鎖および重鎖を一般に含むあらゆる種類の抗体を産生することができる。したがって、本発明は、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列が、ハイブリドーマにより、インビボまたはインビトロでヒトリンパ球によって産生された抗体の配列と相同であるヒト抗体を含む。また、重鎖および軽鎖が天然の抗体と相同であるが、天然には起こらないと思われる様式で組み合わされているハイブリッド抗体のような改変抗体も本発明に含まれる。例えば、二重特異性抗体は、複数の抗原に対して特異的な抗原結合部位を有する。抗体の定常領域は、抗原結合領域の一方もしくは他方に関係してよいか、または別の抗体に由来してよい。キメラ抗体のような改変抗体は、1つの抗体に由来する可変領域および別の抗体に由来する定常領域を有する。したがって、キメラ抗体は、種/種キメラまたは綱/綱(class/class)キメラでよい。このようなキメラ抗体は、抗原結合力を改善するため、またはエフェクター機能を変更するために、さらに1つまたは複数の改変を有してよい。改変抗体の別の形態は、複合抗体を含むヒト化抗体またはCDR移植抗体であり、CDRに加えて、超可変領域の一部分がヒトフレームワークに移される。このような抗体のフレームワークまたは定常領域中のその他のアミノ酸を改変してもよい。重鎖および軽鎖のY分枝部分にほぼ等価であるFab断片は、改変抗体の定義に含まれる; これらは、不完全な断片またはFc領域の一部分を含む断片を含んでよい。したがって、アミノ酸配列が天然に存在するものではない任意の改変抗体が本発明の範囲内に含まれる。
【0076】
好ましくは、関心対象のタンパク質は、モノクローナル抗体、好ましくはヒトモノクローナル抗体、または改変抗体であり、本発明のEBx(登録商標)細胞は、少なくとも以下を次の順序で含む少なくとも1つの発現ベクターをトランスフェクトされる:
- 次のDNA配列を次の順序で含む第1の発現カセット:プロモーター配列、イントロン配列、抗体の重鎖またはその断片をコードするDNA配列(好ましくはcDNA配列)、ポリアデニル化配列;
- 次のDNA配列を次の順序で含む第2の発現カセット:プロモーター配列、イントロン配列、抗体の軽鎖またはその断片をコードするDNA配列(好ましくはcDNA配列)、ポリアデニル化配列;
- 次のDNA配列を次の順序で含む第3の発現カセット:ウイルスプロモーター、抗生物質耐性遺伝子、ポリアデニル化配列;
- 任意で、WO 02/074969に記載されている少なくとも1つのニワトリリゾチーム5'MARエレメントまたはWO 2005/040377に記載されているヒトMARエレメント。
【0077】
しかしながら、少なくとも以下を次の順序で含む少なくとも1つの発現ベクターをトランスフェクトされたEBx(登録商標)細胞を提供することもまた、本発明の目的である:
- 次のDNA配列を次の順序で含む第1の発現カセット:プロモーター配列、イントロン配列、抗体の軽鎖またはその断片をコードするDNA配列(好ましくはcDNA配列)、ポリアデニル化配列;
- 次のDNA配列を次の順序で含む第2の発現カセット:プロモーター配列、イントロン配列、抗体の重鎖またはその断片をコードするDNA配列(好ましくはcDNA配列)、ポリアデニル化配列;
- 次のDNA配列を次の順序で含む第3の発現カセット:ウイルスプロモーター、抗生物質耐性遺伝子、ポリアデニル化配列;
- 任意で、WO 02/074969に記載されている少なくとも1つのニワトリリゾチーム5'MARエレメントまたはWO 2005/040377に記載されているヒトMARエレメント。
【0078】
別の好ましい態様によれば、本発明のEBx(登録商標)細胞は、少なくとも以下を次の順序で含む、少なくとも1つの発現ベクターをトランスフェクトされる:
- 次のDNA配列を次の順序で含む第1の発現カセット:配列番号1のCMVプロモーターまたはその断片もしくは変種、イントロン配列、抗体の重鎖またはその断片をコードするcDNA配列、ポリアデニル化配列;
- 次のDNA配列を次の順序で含む第2の発現カセット:配列番号1のCMVプロモーターまたはその断片もしくは変種、イントロン配列、抗体の軽鎖またはその断片をコードするcDNA配列、ポリアデニル化配列;
- 次のDNA配列を次の順序で含む第3の発現カセット:SV40プロモーター、ネオマイシン耐性遺伝子、ポリアデニル化配列;
- 任意で、WO 02/074969に記載されている少なくとも1つのニワトリリゾチーム5'MARエレメントまたはWO 2005/040377に記載されているヒトMARエレメント。
【0079】
別の好ましい態様によれば、本発明のEBx(登録商標)細胞は、少なくとも以下を次の順序で含む、少なくとも1つの発現ベクターをトランスフェクトされる:
- 次のDNA配列を次の順序で含む第1の発現カセット:配列番号2のキメラEF1α/HTLVプロモーターまたはその断片もしくは変種、イントロン配列、抗体の重鎖またはその断片をコードするcDNA配列、ポリアデニル化配列;
- 次のDNA配列を次の順序で含む第2の発現カセット:配列番号2のキメラEF1α/HTLVプロモーターまたはその断片もしくは変種、イントロン配列、抗体の軽鎖またはその断片をコードするcDNA配列、ポリアデニル化配列;
- 次のDNA配列を次の順序で含む第3の発現カセット: SV40プロモーター、ネオマイシン耐性遺伝子、ポリアデニル化配列;
- 任意で、WO 02/074969に記載されている少なくとも1つのニワトリリゾチーム5'MARエレメントまたはWO 2005/040377に記載されているヒトMARエレメント。
【0080】
別の好ましい態様によれば、本発明のEBx(登録商標)細胞は、少なくとも以下を次の順序で含む、少なくとも1つの発現ベクターをトランスフェクトされる:
- 次のDNA配列を次の順序で含む第1の発現カセット:配列番号3のRSVプロモーターまたはその断片もしくは変種、イントロン配列、抗体の重鎖またはその断片をコードするcDNA配列、ポリアデニル化配列;
- 次のDNA配列を次の順序で含む第2の発現カセット:配列番号3のRSVプロモーターまたはその断片もしくは変種、イントロン配列、抗体の軽鎖またはその断片をコードするcDNA配列、ポリアデニル化配列;
- 次のDNA配列を次の順序で含む第3の発現カセット:SV40プロモーター、ネオマイシン耐性遺伝子、ポリアデニル化配列;
- 任意で、WO 02/074969に記載されている少なくとも1つのニワトリリゾチーム5'MARエレメントまたはWO 2005/040377に記載されているヒトMARエレメント。
【0081】
軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子は、ゲノムDNAまたは好ましくはcDNAに相当してよく、当技術分野において公知の手順(Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Maniatis et al, Cold Spring Harbor)を用いてクローン化される。
【0082】
別の態様によれば、本発明のEBx(登録商標)細胞は、抗アポトーシスタンパク質をコードする核酸配列であって、細胞において該抗アポトーシスタンパク質の発現を引き起こすことができるプロモーター配列に機能的に連結された核酸配列、好ましくはDNA配列を含む少なくとも1つの発現カセットを含む発現ベクターをさらに含む。抗アポトーシスタンパク質は、哺乳動物、トリ、両生類、および魚類のBcl2ファミリータンパク質を含む群より選択される。好ましい態様によれば、抗アポトーシスタンパク質は、NR13と名付けられたトリBcl2ファミリーメンバーである(Lee et al. 1999 Genes & Dev. 13:718-728; Lalle et al. 2002, Biochem.J. 368: 213-221)。抗アポトーシスNR13タンパク質をコードする発現ベクターの例は、少なくとも以下を含む:
- 次のDNA配列を次の順序で含む第1の発現カセット:CMVプロモーター配列、RSVプロモーター配列、またはキメラEF1α/HTLVプロモーター配列、イントロン配列、抗アポトーシスNR13タンパク質をコードするcDNA配列、ポリアデニル化配列; および
- 次のDNA配列を次の順序で含む第2の発現カセット:SV40プロモーター、ピューロマイシン耐性遺伝子、ポリアデニル化配列;
- 任意で、次のDNA配列を次の順序で含む第3の発現カセット:SV40プロモーター、ネオマイシン耐性遺伝子、ポリアデニル化配列;
- 任意で、WO 02/074969に記載されているニワトリリゾチーム5'MARエレメントまたはWO 2005/040377に記載されているヒトMARエレメント。
【0083】
好ましい態様によれば、NR13配列は、配列番号6またはその断片もしくは変種である。
【0084】
本発明は、トリEBx(登録商標)細胞において少なくとも1種の関心対象の生物学的産物を産生させるための方法もさらに提供し、該方法は以下の段階を含む:
(a)少なくとも1つの発現ベクターをトランスフェクションすることによって、本発明によるEBx(登録商標)細胞を調製する段階; トランスフェクションは、接着EBx(登録商標)細胞または浮遊EBx(登録商標)細胞のいずれかに対して実施してよい;
(b)該トランスフェクトされたEBx(登録商標)細胞を、適切な条件下で、細胞培養培地中で培養する段階; および
(c)該トランスフェクトされたEBx(登録商標)細胞、細胞培養培地、または該EBx(登録商標)細胞および該培地の両方から、関心対象の生物学的産物を回収する段階。
【0085】
本明細書において説明する発現ベクターは、様々な方法によってEBx(登録商標)細胞に導入することができる。特に、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストランを介したトランスフェクション、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション(nucleofection)(AMAXA Gmbh, GE)、リポソームを介したトランスフェクション(例えば、リポフェクチン(lipofectin)(登録商標)もしくはリポフェクタミン(lipofectamine)(登録商標)技術を使用)またはマイクロインジェクションなど、当業者に周知の標準的なトランスフェクション手順を実施することができる。好ましい態様によれば、段階(a)において、EBx(登録商標)細胞、好ましくはニワトリEBx(登録商標)細胞またはアヒルEBx(登録商標)細胞に、エレクトロポレーションにより、より好ましくは、AMAXA Gmbh (DE)によって開発された最適化されたエレクトロポレーション技術であるヌクレオフェクションにより、無血清細胞培養培地中での接着培養において少なくとも1つの発現ベクターをトランスフェクトする。好ましい態様によれば、段階(a)において、EBx(登録商標)細胞、好ましくはニワトリEBx(登録商標)細胞またはアヒルEBx(登録商標)細胞に、エレクトロポレーションにより、より好ましくは、ヌクレオフェクションにより、無血清細胞培養培地中での浮遊培養において少なくとも1つの発現ベクターをトランスフェクトする。別の好ましい態様によれば、段階(a)において、EBx(登録商標)細胞、好ましくはニワトリEBx(登録商標)細胞またはアヒルEBx(登録商標)細胞に、リポフェクタミン(登録商標)などのような化合物を用いるリポソームを介したトランスフェクションにより、無血清細胞培養培地中での接着培養または浮遊培養において少なくとも1つの発現ベクターをトランスフェクトする。
【0086】
本明細書において使用される場合、「関心対象のタンパク質」という用語は、ペプチド結合を介して連結された、アミノ酸のポリマーを意味する。「関心対象のタンパク質」という用語は、タンパク質、タンパク質断片、タンパク質類似体、ポリペプチド、オリゴペプチド、およびペプチドなどを含む。本発明によれば、「関心対象の生物学的産物」という用語は、単量体の「関心対象のタンパク質」、または多量体タンパク質を構成する少なくとも2つの関心対象の単量体タンパク質からなる組成物のいずれかを意味する。関心対象の多量体タンパク質の例は、関心対象の単量体タンパク質4つ(すなわち2つの重鎖および2つの軽鎖)から構成される抗体である。天然ではEBx(登録商標)細胞ゲノムの一部分ではない「タンパク質」または「生物学的産物」は、「異種タンパク質」または「異種生物学的産物」と呼ばれる。
【0087】
本発明は、トリEBx(登録商標)のグリコシル化を有する、関心対象の生物学的産物を提供する。より具体的には、本発明は、ニワトリEBx(登録商標)のグリコシル化、より好ましくはEB14もしくはEBv13のグリコシル化を有するか、またはアヒルEBx(登録商標)のグリコシル化、より好ましくは、EB24のグリコシル化、EB24-12のグリコシル化、EB26のグリコシル化、EB66のグリコシル化を有する抗体を提供する。
【0088】
前記トランスフェクトされたEBx(登録商標)細胞の培養は、当業者に周知の細胞培養技術に従って実施することができる。理解するために、限定されるわけではないが、タンパク質作製のための細胞培養および培養作業(culturing run)は3つの一般的なタイプ、すなわち、連続培養、回分培養、および流加培養を含み得ることが当業者によって理解されると考えられる。連続培養では、例えば、新鮮な培地補充物(すなわち、フィード培地)が培養期間の間、細胞に提供される一方で、古い培地は毎日除去され、産生物は、例えば、毎日または連続的に回収される。連続培養では、フィード培地は毎日添加することができ、連続的に、すなわち滴下物または注入物として添加することができる。連続培養の場合、細胞が引き続き生存しており、環境条件および培養条件が維持される限り、細胞は所望の間中長く培養状態で存続することができる。回分培養の場合、細胞は最初に培地中で培養され、この培地は除去も交換も補充もされない。すなわち、細胞は、培養作業の進行中または終了前に、新しい培地を「供給」されない。所望の産生物は、培養作業の最後に回収される。流加培養の場合、作業の間に新鮮な培地を毎日1回もしくは複数回(または連続的に)培地に補充することにより、培養作業の時間は延長される。すなわち、細胞は、培養期間の間に新しい培地(「フィード培地」)を「供給」される。流加培養は、前述したように様々な供給計画および回数、例えば、毎日、1日おき、2日おきなど、1日に複数回、または1日に1回未満などを含んでよい。さらに、流加培養物は、フィード培地を連続的に供給されてもよい。その場合、所望の産生物は、培養/作製作業の最後に回収される。本発明は、好ましくは、流加細胞培養物を包含する。本発明によれば、大規模または小規模のタンパク質製造のための条件下で、動物または哺乳動物の細胞培養のために通常使用される培養管および/または培養装置を用いて、細胞培養を実施することができ、かつ、タンパク質、好ましくは糖タンパク質を細胞によって産生させることができる。当業者によって理解されるように、組織培養シャーレ、Tフラスコ、およびスピナーフラスコは、典型的には実験室規模で使用される。より大きな規模(例えば、3L、7L、20L、100L、500L、および5000Lなど)で培養する場合、流動床バイオリアクター系、ホローファイバーバイオリアクター系、ローラーボトル培養系、または攪拌槽バイオリアクター系を非限定的に含む手順が使用され得る。
【0089】
マイクロキャリアは、ローラーボトル系または攪拌槽バイオリアクター系と共に使用してもしなくてもよい。これらの系は回分式、連続式、または流加式で実行することができる。さらに、培養装置または培養系は、フィルター、重力、および遠心力などを用いる細胞分離器を装備されてもされなくてもよい。
【0090】
本発明の細胞培養プロセスまたは細胞培養方法において、細胞は、当技術分野において従来から公知であるように、様々な細胞培養培地、すなわち基本培地中で維持することができる。例えば、これらの方法は、栄養素などを添加することができる細胞培養培地中で維持された大容量の細胞を用いる用途に応用可能である。典型的には、「細胞培養培地」(「培地」とも呼ばれる)は、当業者によって理解される用語であり、細胞、好ましくは動物細胞または哺乳動物細胞がその中で育てられ、次のうちの少なくとも1種または複数種の成分を一般に提供する栄養液を意味することが公知である:エネルギー源(通常、グルコースのような糖質の形態); 必須アミノ酸全種、および一般に20種の基本的アミノ酸に加えてシステイン; ビタミンおよび/または典型的には低濃度で必要とされる他の有機化合物; 脂質または遊離脂肪酸、例えば、リノール酸; ならびに微量元素、例えば、極めて低濃度、通常マイクロモル濃度範囲で典型的には必要とされる無機化合物または天然元素。
【0091】
また、様々な任意の成分、例えば、ホルモンおよび他の増殖因子、例えば、インスリン、トランスフェリン、上皮増殖因子、および血清など; 塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩、ならびに緩衝液、例えばHEPES; ヌクレオシドおよび塩基、例えば、アデノシン、チミジン、ヒポキサンチン; ならびにタンパク質加水分解物および組織加水分解物、例えば、加水分解された動物タンパク質(動物性副産物、精製ゼラチン、または植物性材料から得ることができるペプトンまたはペプトン混合物); 抗生物質、例えば、ゲンタマイシン; ならびに細胞保護剤、例えば、Pluronicポリオール(Pluronic F68)を含むように、細胞培養培地に添加することもできる。無血清で、かつ動物由来の産物も成分も含まない細胞栄養培地が好ましい。本発明のEBx(登録商標)細胞は、無血清条件での培養に順応させられた。
【0092】
市販されている培地を利用することができ、これらには、例えば、ハム(Ham) F12培地(Sigma, St.Louis, MO)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM, Sigma)、オプティプロ(optipro)培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)、またはExcell培地(SAFC, Lenexa, KS)が含まれ得る。必要または所望に応じて、かつ、当業者に公知であり実行されるように、任意の構成成分を含む前述の追加構成成分または追加成分を適切な濃度または量で前述の例示的な培地に添加することができる。さらに、本発明の方法に適した細胞培養条件は、細胞の回分培養、流加培養、または連続培養のために典型的に使用され、公知であるものであり、温度のほかに、pH、例えば、約6.5〜約7.5; 溶存酸素(O2)、例えば、約5〜90%の間の空気飽和および二酸化炭素(CO2)、撹拌、ならびに湿度に対して注意が払われる。
【0093】
回収後、通常、関心対象の生物学的産物は濃縮される。濃縮した形態で得た後、分取用ディスクゲル電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過、サイズ分離クロマトグラフィー、および等電点電気泳動など任意の標準的技術を用いて、異種タンパク質を精製、単離、および/または同定することができる。当業者はまた、特に異種タンパク質の結合相手、例えば抗体、が公知であるような場合、異種タンパク質を精製する親和性クロマトグラフィー手段を容易に考案することができる。培養物中にその他のヒトタンパク質も動物タンパク質も存在しないため、モノクローナル抗体の単離は単純であり、かつ安全性が向上する。本明細書において企図されるように、合成培地を使用すると再現性が向上するため、血清が無い場合、系の信頼性はさらに高くなる。
【0094】
本発明の方法によって有利に作製することができる関心対象のタンパク質の例には、それらのタンパク質断片を含む、サイトカイン、サイトカイン受容体、増殖因子(例えば、EGF、HER-2、FGF-α、FGF-β、TGF-α、TGF-β、PDGF、IGF-1、IGF-2、NGF)、増殖因子受容体が含まれるがそれらに限定されるわけではない。他の非限定的な例には、成長ホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン);インスリン(例えば、インスリンA鎖およびインスリンB鎖)、プロインスリン、エリスロポイエチン(EPO)、コロニー刺激因子(例えば、G-CSF、GM-CSF、M-CSF); インターロイキン(例えば、IL-1〜IL-12); 血管内皮増殖因子(VEGF)およびその受容体(VEGF-R)、インターフェロン(例えば、IFN-α、IFN-β、およびIFN-γ)、腫瘍壊死因子(TNF)およびそれらの受容体(TNFR-1およびTNFR-2)、トロンボポエチン(TPO)、トロンビン、脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP); 凝固因子(例えば、因子VIII、因子IX、およびフォンウィレブランド因子など)、抗凝固因子; 組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ウロキナーゼ、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)、カルシトニン、CDタンパク質(例えば、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD11a、CD11b、CD18、CD19、CD20、CD25、CD33、CD44、CD45、CD71など)、CTLAタンパク質(例えば、CTLA4); T細胞およびB細胞の受容体タンパク質、骨形態形成タンパク質(BNP、例えば、BMP-1、BMP-2、BMP-3など)、神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン、例えば、レンニン、リウマチ因子、RANTES、アルブミン、リラキシン、マクロファージ阻害性タンパク質(例えば、MIP-1、MIP-2)、ウイルスタンパク質またはウイルス抗原、表面膜タンパク質、イオンチャネルタンパク質、酵素、調節タンパク質、抗体、免疫調節性タンパク質、(例えば、HLA、MHC、B7ファミリー)、ホーミング受容体、輸送タンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、Gタンパク質共役受容体タンパク質(GPCR)、神経調節性タンパク質、アルツハイマー病に関連したタンパク質およびペプチド(例えば、A-β)、ならびに当技術分野において公知の他のものが含まれる。融合タンパク質および融合ポリペプチド、キメラタンパク質およびキメラポリペプチド、ならびに前述のタンパク質およびポリペプチドのいずれかの断片もしくは一部分、または変異体、変種、もしくは類似体もまた、本発明の方法によって作製できる適切なタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドの中に含まれる。
【0095】
好ましい態様において、関心対象のタンパク質は糖タンパク質、および好ましくはウイルスタンパク質である。本発明による方法において作製できるウイルスタンパク質(サブユニット)の例には、ライノウイルス、アフトウイルス、もしくはポリオウイルスなどのエンテロウイルス、単純ヘルペスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、もしくはウシヘルペスウイルスなどのヘルペスウイルス、インフルエンザウイルスなどのオルソミクソウイルス、ニューカッスル病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncitio virus)、ムンプスウイルス、もしくは麻疹ウイルスなどのパラミクソウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなどのレトロウイルスまたはパルボウイルスもしくはパポバウイルス、ロタウイルス、または伝染性胃腸炎ウイルスなどのコロナウイルス、またはダニ媒介脳炎ウイルスもしくは黄熱病ウイルスなどのフラビウイルス、風疹ウイルスまたは東部ウマ脳脊髄炎ウイルス、西部ウマ脳脊髄炎ウイルス、もしくはベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルスなどのトガウイルス、A型肝炎ウイルスもしくはB型肝炎ウイルスなどの肝炎を引き起こすウイルス、ブタコレラウイルスなどのぺスチウイルス、または狂犬病ウイルスなどのラブドウイルスに由来するタンパク質が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0096】
別の態様によれば、関心対象のタンパク質は細菌タンパク質である。
【0097】
別の好ましい態様において、関心対象の生物学的産物は抗体である。本明細書において使用される「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体ならびにそれらの断片、ならびにそれらの免疫学的結合等価物を意味する。「抗体」という用語は、同種の分子実体、または複数の異なる分子実体から構成されるポリクローナル血清産生物のような混合物を意味し、天然に存在する形態の抗体(例えば、IgD、IgG、IgA、IgM、IgE)ならびに組換え抗体、例えば、単鎖抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体ならびに多重特異性抗体を広く包含する。「抗体」という用語はまた、前述のものすべての断片および誘導体も意味し、エピトープに特異的に結合する能力を保持しているそれらの任意の改変変種または誘導体化変種もさらに含んでよい。抗体誘導体は、抗体に結合されたタンパク質部分または化学的部分を含んでよい。モノクローナル抗体は、標的抗原または標的エピトープに選択的に結合することができる。抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化抗体またはキメラ抗体、ラクダ化抗体、単鎖抗体(scFv)、Fab断片、F(ab')2断片、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、細胞内抗体、合成抗体、および前記のいずれかのエピトープ結合断片が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。また、「抗体」という用語は、免疫グロブリンのFc領域に等価な領域を含む融合タンパク質も意味する。
【0098】
本発明の範囲における好ましい抗体には、次の抗体のアミノ酸配列を含むものが含まれる:huMAb 4D5-8の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗体(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4285-4289 (1992)、米国特許第5,725,856号)またはトラスツズマブ(Trastuzumab)、例えばHERCEPTIN(商標); 抗CD20抗体、例えば、米国特許第5,736,137号に記載のキメラ抗CD20「C2B8」(RITUXAN(登録商標))、米国特許第5,721,108号に記載の2H7抗体のキメラ変種もしくはヒト化変種またはトシツモマブ(Tositumomab)(BEXXAR); 抗IL-8(St John et al., Chest, 103: 932 (1993)および国際公開番号WO 95/23865); ヒト化抗VEGF抗体および/または親和性成熟抗VEGF抗体、例えばヒト化抗VEGF抗体huA4.6.1 AVASTIN(商標)などを含む抗VEGF抗体(Kim et al., Growth Factors, 7: 53- 64 (1992)、国際公開番号WO 96/30046およびWO 98/45331); 抗PSCA抗体(WO01/40309); 抗CD40抗体(S2C6およびそのヒト化変種を含む)(WO00/75348); 抗CD11a(米国特許第5,622,700号、WO98/23761); 抗EGFR(WO 96/40210に記載のキメラ化225抗体またはヒト化225抗体); 抗CD3抗体、例えばOKT3(米国特許第4,515,893号); CHI-621 (SIMULECT)および(ZENAPAX)などの抗CD25抗体または抗tac抗体(米国特許第5,693,762号を参照されたい); 抗CD4抗体、例えばcM-7412抗体(Choy et al. Arthritis Rheum 39(1): 52-56 (1996)); 抗CD52抗体、例えばCAMPATH-1H (Riechmann et al., Nature 332: 323-337 (1988); 抗癌胎児性抗原 (CEA)抗体、例えばhMN-14(Sharkey et al., Cancer Res. 55 (23補遺): 5935s-5945s (1995); 抗EpCAM抗体、例えば17-1A(PANOREX); アブシキシマブまたはc7E3 Fab(REOPRO)などの抗GpIIb/IIIa抗体; 抗RSV抗体、例えばMEDI-493(SYNAGIS); 抗CMV抗体、例えばPROTOVIR; 抗肝炎抗体、例えば抗HepB抗体OSTAVIR; 抗ヒト腎細胞癌抗体、例えばch-G250; 抗ヒト17-1A抗体(3622W94); 抗ヒト結腸直腸腫瘍抗体(A33); GD3ガングリオシドを対象とする抗ヒト黒色腫抗体R24; 抗ヒト扁平上皮癌(SF-25)抗体; ならびにSmartID 10および抗HLA DR抗体Oncolym(Lym-1)などの抗ヒト白血球抗原(HLA)抗体。
【0099】
本発明は、トランスフェクトされた本発明のEBx(登録商標)細胞を培養する段階を含む、抗体を作製するための方法を提供する。EBx(登録商標)細胞の培養は、血清を含む培地、または好ましくは血清およびタンパク質を含まない培地において実施してよい。結果として生じる抗体は、標準的な手順に従って精製および調製することができる。実質的に等モルの比率でMabの両方の鎖を発現させることにより、最適な収率で機能的抗体を得ることが可能になる。本発明のトランスフェクトされたEBx(登録商標)細胞、ならびにより具体的にはニワトリEBx(登録商標)細胞およびアヒルEBx(登録商標)細胞は、回分培養において少なくとも10pg/細胞/日の免疫グロブリン、好ましくは回分培養において少なくとも15pg/細胞/日の免疫グロブリン、より好ましくは回分培養において少なくとも25pg/細胞/日の免疫グロブリン、さらにより好ましくは回分培養において少なくとも35pg/細胞/日の免疫グロブリンを産生することができる。2つの鎖は細胞内部で組み立てられ、次いで、機能的抗体として培地中に分泌される。EBx(登録商標)細胞によってグリコシル化された抗体は、抗原結合能力およびエフェクター機能性を維持している。興味深いことに、本発明者らは、本発明の方法によって作製した抗体、抗体断片、または免疫グロブリンのFc領域に等価な領域を含む融合タンパク質は、Fcを介した細胞毒性が増加したことをここに実証した。例えば、トリEBx(登録商標)細胞、好ましくはニワトリEB14細胞において産生されたIgG1サブタイプの抗体は、ハイブリドーマ細胞およびCHO細胞において産生された同じ抗体と比べて増加したADCC活性を有する。これは、トリEBx(登録商標)のグリコシル化パターン、より好ましくはニワトリEBx(登録商標)のグリコシル化パターン、またはアヒルEBx(登録商標)のグリコシル化パターンを関心対象の抗体に与えることによって実現される。特に、トランスフェクトされた本発明のトリEBx(登録商標)細胞は、末端GlcNacを有し、高度にガラクトシル化され、フコシル化されていない長鎖を含み、かつ強いADCC活性を抗体に与える、共通の2分岐型N結合型オリゴ糖構造体を有する抗体またはそれらの断片を高い比率で発現させることを可能にする。EBx(登録商標)細胞において産生される組換え抗体集団のうちで、非フコシル化抗体の比率は、抗体の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも35%、およびより好ましくは少なくとも45%、またはそれ以上に相当する。したがって、本発明は、トランスフェクトされたEBx細胞株、好ましくはアヒルEB66細胞株によって産生され、約20%、より好ましくは約35%、およびさらにより好ましくは約45%の非フコシル化N結合型オリゴ糖構造体を有することを特徴とする組換えポリペプチドを提供する。より正確には、本発明は、トランスフェクトされたEBx細胞株、好ましくはアヒルEB66細胞株によって産生され、約45%またはそれ以上の非フコシル化N結合型オリゴ糖構造体を有することを特徴とする組換えモノクローナル抗体を提供する。該抗体は、約35%またはそれ以上の非フコシル化N結合型オリゴ糖構造体G0、G1、およびG2を有することを特徴とする。
【0100】
本発明はまた、EBx(登録商標)細胞、好ましくはアヒルEB66細胞において産生され、かつ、ハイブリドーマ細胞株または野生型CHO細胞株、好ましくはCHO-K1およびCHO-DG44において産生された同じ抗体と比べてADCC活性が増加した抗体または抗体集団に関する。抗体は、好ましくは、IgGより、ならびにより好ましくはIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4より選択される。より好ましくは、抗体はIgG1またはIgG3である。
【0101】
したがって、EBx(登録商標)細胞タンパク質作製プラットホームは、免疫グロブリンもしくはその断片によって、または免疫グロブリン領域のFc領域もしくは免疫グロブリンのFc領域の等価物を有する任意の生物学的分子によって媒介される、望ましくない細胞に対するFcを介した細胞障害活性を増加させるのに有用である。本発明は、EBx(登録商標)細胞において産生され、EBx(登録商標)グリコシル化プロファイルを有する抗体(または免疫グロブリン)集団を提供し、該抗体集団またはその断片は、末端GlcNacを有し、ガラクトシル化された長鎖を含む共通の2分岐型N結合型フコシル化オリゴ糖構造体をFc領域が有する抗体を高比率で、および末端GlcNacを有し、ガラクトシル化された長鎖を含む共通の2分岐型N結合型非フコシル化オリゴ糖構造体をFc領域が有する抗体を高比率で含む。該抗体集団は、約45%の非フコシル化N結合型オリゴ糖構造体を有することを特徴とし、これは強いADCC活性を該抗体に与える。これらの抗体の大半、すなわちEBx細胞において産生された抗体集団のこれらの抗体の60%超、好ましくは75%超、85%超、およびさらに95%超は、Fc領域に連結された2分岐型N結合型オリゴ糖構造体上にシアル酸残基を含まない。シアル酸残基の大部分はN-アセチル-ノイラミン酸(NeuAC)である; 実際、80%超、好ましくは90%超、および好ましくは95%超のシアル酸残基は、ヒトにおいて非免疫原性であることが公知であるNeuAcである。残りの少量のシアル酸残基は、N-グリコリルノイラミン酸(NeuGc)から構成される。
【0102】
本明細書において使用される場合、Fcを介した細胞障害活性、という用語は、抗体依存性細胞障害活性およびヒトFc領域を含む可溶性Fc-融合タンパク質によって媒介される細胞障害活性を含む。これは、「ヒト免疫エフェクター細胞」による「抗体の標的とされた細胞」の溶解をもたらす免疫機構である。「ヒト免疫エフェクター細胞」は、表面にFc受容体を提示し、このFc受容体を介して抗体またはFc融合タンパク質のFc領域に結合し、エフェクター機能を果たす、白血球集団である。このような集団は、末梢血単核細胞(PBMC)および/またはナチュラルキラー(NK)細胞を含んでよいが、それらに限定されるわけではない。「抗体の標的とされた細胞」とは、抗体またはFc融合タンパク質によって結合される細胞である。本明細書において使用される場合、Fcを介した増加した細胞障害活性、という用語は、上記に定義したFcを介した細胞障害活性の機序により、標的細胞を取り囲む培地において、所与の濃度の抗体またはFc融合タンパク質によって、所与の時間で溶解される「抗体の標的とされた細胞」の数が増加すること、および/またはFcを介した細胞障害活性の機序により、所与の時間で、抗体の標的とされた細胞を所与の数だけ溶解するのに必要とされる、標的細胞を取り囲む培地中の抗体またはFc融合タンパク質の濃度の低下のいずれかと定義される。Fcを介した細胞障害活性の増加は、当業者に公知である同じ標準的な作製、精製、調製、および保存方法を用いて、例えばハイブリドーマのような他のタイプの宿主細胞によって産生された同じ抗体またはFc融合タンパク質によって媒介される細胞障害活性を基準とする。抗体依存性細胞障害活性(ADCC)が増大した抗体、とは、この用語が本明細書において定義される場合、当業者に公知である任意の適切な方法によって決定される、増加したADCCを有する抗体を意味する。1つの一般に認められているインビトロのADCCアッセイ法は以下のとおりである:
(1)このアッセイ法は、抗体の抗原結合領域によって認識される標的抗原を発現することが公知である標的細胞を使用する。このアッセイ法は、ランダムに選択した健常なドナーの血液から単離したヒト末梢血単核細胞(PBMC)をエフェクター細胞として使用する;
(2)このアッセイ法は次のプロトコールに従って実施される:(i)標準的な密度遠心分離手順を用いてPBMCを単離し、RPMI細胞培養培地中に5×106細胞/mlの濃度で懸濁する; (ii)標準的な組織培養方法によって標的細胞を増殖させ、生存率が90%を超える指数増殖期に回収し、RPMI細胞培養培地中で洗浄し、100マイクロキュリーの51Crで標識し、細胞培養培地で2回洗浄し、105細胞/mlの濃度で細胞培養培地中に再懸濁する; (iii)上記の標的細胞の最終懸濁液100マイクロリットルを96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに移す; (iv)細胞培養培地中で抗体を4000ng/mlから0.04ng/mlまで段階的に希釈し、結果として得られる抗体用溶液を50マイクロリットルずつ、96ウェルマイクロタイタープレート中の標的細胞に添加して、上記の濃度範囲全体を包含する様々な抗体濃度を三つ組で試験する; (v)最大放出(MR)対照とするために、標識された標的細胞を含むプレート中の別の3つのウェルに、抗体溶液(上記のivの時点)の代わりに、非イオン系洗剤(Nonidet, Sigma, St.Louis)の2%(V/V)水溶液50マイクロリットルを添加する; (vi)自発的放出(SR)対照とするために、標識された標的細胞を含むプレート中の別の3つのウェルに、抗体溶液(上記のivの時点)の代わりに、RPMI細胞培養培地50マイクロリットルを添加する; (vii)次いで、96ウェルマイクロタイタープレートを50×gで1分間遠心分離し、4℃で1時間インキュベートする; (viii)PBMC懸濁液(上記のiの時点)50マイクロリットルを各ウェルに添加して、エフェクター:標的細胞比率を25:1とし、37℃、5%CO2雰囲気下のインキュベーター中に4時間、プレートを置く; (ix)細胞を含まない上清を各ウェルから回収し、実験によって放出された放射能(ER)をγ線計数器によって定量する; (x)式(ER-MR)/(MR-SR)×100に従って、各抗体濃度での特異的溶解率(%)を算出する。式中、ERはその抗体濃度において定量された(上記ixの時点を参照されたい)平均放射能であり、MRはMR対照(上記vの時点を参照されたい)において定量された(上記ixの時点を参照されたい)平均放射能であり、SRはSR対照(上記viの時点を参照されたい)において定量された(上記ixの時点を参照されたい)平均放射能である;
(4)「増加したADCC」とは、上記に試験した抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大比率(%)の増加、および/または上記に試験した抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大比率(%)の半分(one half)を実現するのに必要とされる抗体濃度の低下のいずれかと定義される。ADCCの増加は、上記のアッセイ法を用いて測定した、当業者に公知である同じ標準的な作製、精製、調製、および保存方法を用いて別のタイプの宿主細胞によって産生された同じ抗体によって媒介されるADCCを基準とする。例えば、本発明の方法によって作製されたIgG1サブタイプの抗体は、ハイブリドーマ細胞またはCHO細胞において産生された同じ抗体と比べて増加したADCC活性を有する。
【0103】
本発明はまた、組換えポリペプチド、好ましくはモノクローナル抗体を作製するのに有用な、EBx(登録商標)細胞株、好ましくはアヒルEB66細胞株に関し、グリコシル化されたポリペプチドを産生する該細胞株は、CHO細胞株を用いて作製した同じポリペプチドと比べて、フコースの含有量が実質的に減少していることを特徴とする。CHO細胞株(ECACC参照番号Q6911)において産生された抗体の約0〜20%が、フコシル化オリゴ糖構造体を含まないのに対し、EB66細胞株において産生される抗体の約55%またはそれ以上が、フコシル化オリゴ糖構造体を含まない。EB66細胞株において産生された抗体は、CHO細胞株において産生された抗体と比べて(G0:約2.5%; G1約7%)、多量の非フコシル化型G0(15%超)およびG1(13%超)を含む。
【0104】
本発明のEBx細胞株は、レクチンに対する耐性に関してさらに選択してもよい。実際、レクチンは、特定のタイプのオリゴ糖を発現する細胞株を選択するために使用され得る(RipkaおよびStanley, 1986, Somatic Cell Mol Gen 12:51-62)。フコースに特異的なレンズマメレクチン凝集素(LCA)を用いて、さらに低レベルのフコースを発現するEBx細胞株を選択することができる。例えば、EB66細胞は、様々な濃度のLCAレクチンの存在下、96ウェルプレートに入れた無血清培地中に5000細胞/ウェルの細胞濃度で播種してよい。5日後、細胞生存率を検査し、低レベルのフコシル-トランスフェラーゼFUT8 mRNAを発現するEB66の珍しい天然変種を選択し、50ug/ml LCAの存在下の別の96ウェルプレートに播種してよい。数週間後、耐性のEBxクローンが出現すると考えられ、これらを増殖させ、フコース含有量の少ない組換えポリペプチドを産生する能力に関して特徴付けることができる。
【0105】
本発明は、薬剤としての本発明による関心対象の生物学的産物に関する。より具体的には、本発明は、薬剤としての本発明による抗体に関する。EBx(登録商標)によって産生されたIgGの細胞障害活性が高い方が、患者に投与する抗体の量を減らし、治療に伴う費用を軽減することが可能になると考えられる。
【0106】
EBx(登録商標)によるグリコシル化生物学的産物および非グリコシル化生物学的産物(例えば、抗体、ウイルスタンパク質など)は、ヒトおよび動物の多数の障害を予防および治療するための医学的療法において有用である。障害の非限定的な例は、ウイルス感染症、細菌感染症、癌(例えば、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、黒色腫など)、感染症(AIDS、ヘルペス、B型肝炎、C型肝炎など)、自己免疫障害(例えば、多発性硬化症、移植片対宿主疾患、乾癬、若年発症型糖尿病、シェーグレン病、甲状腺疾患、重症筋無力症、移植拒絶、喘息など)、炎症性障害(例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなど)である。
【0107】
したがって、本発明は、前述の障害のいずれかの予防的処置および治療的処置のための薬剤の製造における、EBx(登録商標)によるグリコシル化生物学的産物および非グリコシル化生物学的産物(例えば、ウイルスタンパク質、抗体など)の使用を提供する。また、任意のこのような障害を有するヒトを治療する方法であって、予防的または治療的に有効な量の、EBx(登録商標)によるグリコシル化生物学的産物および非グリコシル化生物学的産物を該個体に投与する段階を含む方法も提供される。
【0108】
本発明はまた、ヒトおよび動物の疾患を予防または治療するための薬学的組成物の調製のための、本発明による生物学的産物の使用も包含する。このような薬学的組成物は、好ましくは、例えば抗生物質のような他の作用物質と場合によっては混合した生理学的に許容される希釈剤または担体を、生物学的産物に加えて含む。適切な担体には、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水グルコース、および緩衝化生理食塩水が含まれるがそれらに限定されるわけではない。あるいは、抗体のような生物学的産物は、凍結乾燥(フリーズドライ)し、前述の水性緩衝液の添加により、必要に応じて使用するために復元してもよい。したがって、本発明は、本発明の生物学的産物および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。
【0109】
このような生物学的産物の投薬量は、治療される病態および治療の受容者によって異なる。抗体の場合、投薬量は、例えば、成人患者に対しては1〜約100mgの範囲であり、好ましくは、1日〜30日の間の期間、毎日1〜10mgが通常投与される。投与経路はルーチン的に非経口であり、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内の注射または送達が含まれる。
【0110】
下記の実施例では、本発明をより詳細に説明する。以下の調製物および実施例は、当業者が本発明をより明瞭に理解し、実行できるようにするために与えられる。しかしながら、本発明は、例示される態様によって範囲を限定されず、これらの態様は本発明の個別の局面の例証として意図されるにすぎず、機能的に等価である方法は本発明の範囲内にある。実際、本明細書において説明するもの以外の本発明の様々な改変法が、前述の説明および添付図から当業者には明らかになると考えられる。このような改変法は、添付の特許請求の範囲に含まれると意図される。この後の説明のために、図面の凡例について以下に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】親となる空発現ベクター:pVVS431(pKNexp)。VIVALISベクターのバックボーンは、大腸菌におけるプラスミド増幅およびトリ細胞への発現ベクタートランスフェクション後のクローン選択を可能にする単一の耐性カセットを含む。nptII遺伝子は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼタンパク質をコードし、原核生物ではカナマイシン耐性および真核生物ではネオマイシン耐性を生物に与える。転写は、nptII遺伝子の上流に縦に並んでクローニングされた原核生物プロモーターおよび真核生物プロモーターの両方によって推進される。関心対象のタンパク質をコードするcDNAは、容易に交換可能な(easely exangeable)プロモーター(すなわちCMVプロモーターなど)、イントロン、およびポリA領域を含む空発現カセット中に位置するMCS(multiple cloning site)内にクローニングされる。
【図2】図2Aおよび2B:ヒト-マウスのキメラMab IgG1(κ軽鎖および重鎖)をMAT-Biopharma(Evry, France)の好意により頂いた。図2A:IgG1軽鎖発現を推進するRSVプロモーターを有するベクター:pVVS452(pRSV-IgG1-L)。図2B:IgG1重鎖発現を推進するRSVプロモーターを有するベクター:pVVS450(pRSV-IgG1-H)。
【図3】図3Aおよび3B:RSVプロモーターの制御下でIgG1の軽鎖および重鎖の両方を発現するデュアルベクター。図3A:pVVS455(pRSV-LH-IgG1)。図3B:pVVS460(pRSV-HL-IgG1)。
【図4】無血清培地中のアヒルEBx(登録商標)細胞におけるIgG1の一過性発現。アヒルEBx(登録商標)細胞においてIgG1を一過性に発現させた。IgG1濃度は、トランスフェクション後24時間目および48時間目にELISAによって決定した。細胞培養上清中の抗体濃度は約4.5μg/mlに達した。
【図5】IgG1作製のための安定なトランスフェクション、クローン単離、およびスクリーニング。パネルA: EF1/HTLVプロモーターを含むIgG1発現ベクター(左)またはRSVプロモーターを含むIgG1発現ベクター(右)のいずれかをニワトリEB14細胞にトランスフェクトした。ニワトリEB14トランスフェクションから耐性コロニー200個を採取し、0.25mg/mlジェネテシンを含むExcell 63066培地(SAFC Biosciences)中に播種した。播種後5日間増殖させた後、ELISAアッセイ法を実施して、採取した各コロニーからのIgG1産生を解析した。パネルB:最も優れた産生コロニー(producer)のみを24ウェルプレート中で増幅させた。パネルC:最も優れた産生コロニーのみを6ウェルプレート中で増幅させ、継代した。パネルD:最後に、最も優れた産生コロニーのみを175cm2フラスコに広がるまで増殖させた。このパネルDは、1つのニワトリEB14クローン(EF1/HTLVプロモーター)のルーチンな培養の間にELISAアッセイ法によってモニターしたIgG1生産性の例を示す。
【図6】ニワトリEB14細胞およびアヒルEB66細胞において産生させたIgG1抗体。図6A:攪拌槽バイオリアクター中のニワトリEB14細胞において産生させたIgG1抗体。IgG1を発現するトランスフェクトされた安定なニワトリEB14クローン(EF1/HTLVプロモーター)を、無血清ExCell培地(SAFC BioSciences)に浮遊した状態での増殖に順応させた。3リットル攪拌槽バイオリアクター(Applikon)に細胞40万個/mlで播種した。次いで、回分培養を実施した; 細胞を13日間増殖させた。EB14細胞は、10日目に細胞1600万個/mlの最大細胞濃度に達した。細胞培養培地中のIgG1濃度はELISAアッセイ法によってモニターした。12日目に、最大IgG1濃度は0.25g/lに達した。タンパク質に特異的な生産性は、約10〜20pg/細胞/24時間である。図6B:攪拌槽バイオリアクター中のアヒルEB66細胞において産生させたIgG1抗体。IgG1を発現するトランスフェクトされた安定なアヒルEB66クローンを、無血清ExCell培地(SAFC BioSciences)に浮遊した状態での増殖に順応させた。3リットル攪拌槽バイオリアクター(Applikon)に細胞40万個/mlで播種した。次いで、回分培養を実施した; 細胞を13日間増殖させた。EB66細胞は、11日目に細胞1100万個/mlの最大細胞濃度に達した。細胞培養培地中のIgG1濃度はELISAアッセイ法によってモニターした。11日目に、最大IgG1濃度は0.07g/lに達した。
【図7】図7Aおよび7B:ニワトリEBx細胞において産生させたIgG1抗体のグリコシル化プロファイル。図7A:キャピラリー電気泳動による解析。ニワトリEBx細胞において産生させたIgG1のグリコシル化プロファイルは、ヒト血清(seric)IgG分子のものに類似している。図7B:質量分析による解析。フコースの少ないIgG1抗体の比率は、CHO細胞で産生された抗体の場合は2%にすぎないのに対し(文献からのデータ)、ニワトリEB14細胞で産生させた抗体集団では48%に達した。
【図8】ニワトリEBx細胞において産生させたIgG1抗体の詳細なグリコシル化プロファイル。ニワトリEBx細胞の安定にトランスフェクトされた1つのクローンにおいて産生させたIgG1のグリコシル化プロファイルを、Maldi-Toff質量スペクトル解析によって解析した。各IgG1重鎖のCH2ドメインの残基Asn297に結合したN-オリゴ糖の構造を解析した。このニワトリEB14クローンにおいて産生させたIgG1抗体の大半は、末端GlcNacを有し、ガラクトシル化された長鎖を含む、共通の2分岐型N結合型オリゴ糖構造体を有する。IgG1抗体集団のうちでフコシル化されていないものの比率は高い(48%)。いくつかの抗体集団は、2つに分岐したGlcNacを伴う2分岐型N結合型オリゴ糖構造体を有する。
【図9】ニワトリEBx細胞において産生させたIgG1抗体による、腫瘍細胞増殖の阻害。ニワトリEB14細胞またはハイブリドーマいずれかにおいて産生させたIgG1免疫グロブリンの細胞増殖阻害活性を測定するためにアッセイ法を開発した。IgG1抗体は、ヒト腫瘍細胞表面で発現されるCDマーカーを対象とする。トリチウム標識チミジンの存在下で腫瘍細胞を増殖させ、正常な患者から精製した単球またはナチュラルキラーT細胞と共に、IgG1免疫グロブリンの存在下でインキュベートした。このアッセイ法では、ナチュラルキラー細胞によるIgG1を介した腫瘍細胞溶解の後、増殖する腫瘍細胞中に取り込まれたトリチウム標識チミジンの量を測定する。4日間培養した後、NK細胞で処理し、かつニワトリEB14細胞において産生させたIgG1抗体で処理した腫瘍細胞に取り込まれたトリチウム標識チミジンは少量であったことから、腫瘍細胞が増殖しないことが示された。反対に、NK細胞または単球細胞で処理し、かつハイブリドーマにおいて産生させたIgG1抗体で処理した腫瘍細胞では、より高レベルのH3-チミジンが観察されたことから、腫瘍細胞は増殖することが示された。ニワトリEB14細胞において産生させたIgG1は、ハイブリドーマにおいて産生された同じ抗体よりも優れた抗細胞増殖活性を示す。
【図10】ニワトリEB14細胞対CHO細胞において産生させたIgG1抗体の抗腫瘍細胞障害性応答。健常なドナー2名に由来するナチュラルキラー細胞を用いて、標準的なADCCアッセイ法を実施した。NK細胞は、インターロイキン2(IL-2)無しで、または5ユニットもしくは100ユニットのIL-2と共に培養した。放射性クロミウムと共に前もって培養した腫瘍細胞を、IgG1免疫グロブリンおよびNK細胞と共にインキュベートした。ADDC活性は、培地中へのクロミウム放出の比率(%)として評価した。腫瘍:陰性対照。腫瘍+ハイブリドーマ(キメラ化されていない)由来の抗腫瘍IgG1:陽性対照。腫瘍+CHOにおいて産生させた抗腫瘍IgG1。腫瘍+ニワトリEB14細胞において産生させた抗腫瘍IgG1。ニワトリEB14細胞において産生させたIgG1抗体は、CHO細胞において産生させた同じIgG1抗体と比べて、高いADCC活性を示す。
【図11】NR13抗アポトーシス遺伝子を発現する接着ニワトリEBx(登録商標)細胞の増殖解析。パネルA:pVVS437ベクターおよびpVVS438ベクターの説明。pVVS437は、ピューロマイシン耐性遺伝子のみを含む。PVVS438は、ピューロマイシン耐性遺伝子およびニワトリ抗アポトーシス遺伝子NR13の発現を可能にする。接着ニワトリEBx(登録商標)細胞(EB45)にpVVS437ベクターまたはpVVS438ベクターをトランスフェクトし、これらの細胞において選択を行った。パネルB:クローンを集団としてプールするか、または単離し、これらの集団またはクローンから単離した全RNAを用いてRT-PCRを実施して、NR13遺伝子の発現を検出した。このパネルは、クローンB2、B3、およびC1が抗アポトーシス遺伝子NR13を発現することを示す。パネルC:NR13抗アポトーシス遺伝子を安定にトランスフェクトされた接着ニワトリEBx(登録商標)細胞(EB45)の増殖解析。NR13タンパク質を発現する安定にトランスフェクトされたEBx(登録商標)細胞を100mmシャーレ中で接着培養した。NR13タンパク質を発現しないEBx(登録商標)細胞は、生存して培養状態になることはなく、それらの大半は培養して6〜7日後に死滅する。NR13タンパク質を発現するEBx(登録商標)は、わずかかつ一定の比率しか培養物中で死滅せず、NR13 EBx(登録商標)細胞の大多数は、より長い期間、培養状態で生存し続ける。
【図12】アヒルEB66細胞およびCHO細胞において産生させたIgG1抗体のグリコシル化プロファイル。アヒルEB66細胞およびCHO細胞の安定にトランスフェクトされた1つのクローンにおいて産生させたIgG1のグリコシル化プロファイルを、MALDI TOF質量スペクトル解析によって解析した。各IgG1重鎖のCH2ドメインの残基Asn297に結合したN-オリゴ糖の構造を解析した。このアヒルEB66クローンにおいて産生させたIgG1抗体の大半は、末端GlcNacを有し、ガラクトシル化された長鎖を含む、共通の2分岐型N結合型オリゴ糖構造体を有する。EB66によって産生されたIgG1抗体集団では、フコシル化されていないものの比率は高い(約55%)。CHOによって産生されたIgG1抗体集団では、フコシル化されていないものの比率は少ない(約20%)。
【図13】アヒルEB66細胞またはCHO細胞において産生させたIgG1重鎖のCH2ドメインの残基Asn297に結合したN結合型オリゴ糖の質量スペクトル解析。PNGase F消化によって放出された抗体Fcオリゴ糖をペルメチル化し、陽イオンモードでDHBマトリックスを用いたMALDI-TOF MSによって解析した。3種の主なグリコフォームが、両方の細胞株において産生させたIgG上で発見された。EB66によって産生されたIgGの方が、CHOによって産生されたIgGと比べて、非フコシル化型のG0およびG1を高い比率で含む。
【図14】EB66細胞およびCHO細胞において産生させた同じIgG1細胞の3種の主なフコシル化および非フコシル化グリコフォームG0、G1、およびG2の比率の表。PNGase F消化によって放出された抗体Fcオリゴ糖をペルメチル化し、陽イオンモードでDHBマトリックスを用いたMALDI-TOF MSによって解析した。3種の主なグリコフォームG0、G1、およびG2が、両方の細胞株において産生されたIgG上で発見された。EB66によって産生されたIgGの方が、CHOによって産生されたIgGと比べて、非フコシル化型のG0およびG1を高い比率で含む。
【図15】図15A〜15B:ニワトリEB14細胞、アヒルEB66細胞、およびCHO細胞において産生させたIgG1抗体の抗腫瘍細胞障害性応答。図15A:NK細胞の活性化(IFNg分泌細胞の解析)。IgG1によるナチュラルキラー細胞活性化を、フローサイトメトリーでINFgを検出することによって評価した。健常ドナー2名の細胞に由来するNK細胞を、インターロイキン2(IL-2)無しで、または5ユニットもしくは100ユニットのIL-2と共に培養した。腫瘍細胞を、IgG1免疫グロブリンおよびNK細胞と共にインキュベートした。INFgの検出は、抗INFg結合フィコエリトリン(PE)を用いた細胞内染色によって測定した。ニワトリEB14細胞およびアヒルEB66細胞において産生させたIgG1抗体の方が、CHO細胞において産生させた同じIgG1抗体と比べて、高いNK活性化を示す。図15B:NK細胞の活性化(CD107陽性細胞の解析)。IgG1によるナチュラルキラー細胞活性化を、フローサイトメトリーでCD107動員を解析することによって評価した。健常ドナー2名の細胞に由来するNK細胞を、インターロイキン2(IL-2)無しで、または5ユニットもしくは100ユニットのIL-2と共に培養した。腫瘍細胞を、IgG1免疫グロブリンおよびNK細胞と共にインキュベートした。FITCに結合させた抗CD107抗体を用いて、活性化されたNK細胞を検出した。ニワトリEB14細胞およびアヒルEBx細胞において産生させたIgG1抗体の方が、CHO細胞において産生させた同じIgG1抗体と比べて、高いNK活性化を示す。
【図16】ニワトリEB14細胞、アヒルEB66細胞、およびCHO細胞において産生させたIgG1抗体の抗腫瘍細胞障害性応答。健常ドナー由来の精製したナチュラルキラー細胞を用いて、標準的なADCCアッセイ法を実施した。NK細胞は、インターロイキン2(IL-2)無しで、または100ユニットのIL-2と共に培養した。放射性クロミウムと共に前もって培養した腫瘍細胞を、0.8〜50μ/mlの範囲の様々な濃度のIgG1免疫グロブリンおよびNK細胞と共にインキュベートした。ADDC活性は、培地中へのクロミウム放出の比率(%)として評価した。非限定的な条件(50μg/ml未満の抗体)下で、EB66およびEB14によって産生されたIgG1の方が、CHO細胞において産生された同じ抗体よりも強力に腫瘍細胞の死滅を誘導した。
【図17】各IgG重鎖のCH2ドメインに、ヒトIgGの場合、残基Asn297に、結合された2分岐型のオリゴ糖構造体の潜在的異種性。図17A:マンノシル-キトビオースコア(Man3-GlcNac2)が普通の黒い線で示され、存在し得る(+/-)付加的な糖残基が、点線でMan3-GlcNac2コアに連結されている。図17B:各重鎖のCH2ドメインに(ヒトIgGの場合、残基Asn297に)結合された複雑なタイプの2分岐型N結合型オリゴ糖構造体の図。
【発明を実施するための形態】
【0112】
実施例
実施例1:SPFニワトリVALO種に由来するニワトリEBv13細胞株
1.1 原材料

Valoと呼ばれる特定病原体除去(SPF)種。valo種は、ドイツのLohmann社によって生産され提供される白色レグホーン種である。これらのSPFニワトリの卵は、分析証明書と共に供給され、以下に関して試験される:CAV、トリアデノウイルス(1群、血清型1〜12および3群)、EDS、トリ脳脊髄炎ウイルス、トリ白血病ウイルス/RSV(血清型ALV-Jを含む)、トリ腎炎ウイルス、トリレオウイルス、鶏痘ウイルス、感染性気管支炎ウイルス、感染性滑液包炎ウイルス(IBDV)、感染性喉頭気管炎ウイルス、A型インフルエンザウイルス、マレック病ウイルス、マイコプラズマ病(Mg+Ms)、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、ニューカッスル病ウイルス、細網内皮症ウイルス、ひな白痢菌(Salmonella pullorum)、他のサルモネラ感染症病原菌、トリ鼻気管炎ウイルス(ART)、ヘモフィルス・パラガリナルム(Hemophilus paragallinarum)。除染装置を用いた殺菌にValoニワトリ卵を1回だけ供して(only submitted)、輸送の間の卵の取扱いに関係した任意の汚染リスクを回避した。
【0113】
フィーダー細胞
EBv13を樹立する方法の第1の段階において、マウス由来の細胞(STO細胞)をフィーダー層として用いて、ニワトリ幹細胞の多能性を維持した。これらのフィーダー細胞は、プラスチック上に播種する前に、ガンマ線照射(45〜55グレイ)によって有糸分裂を不活性化される。放射線照射のこの線量は、細胞周期の決定的停止を誘導するが、非分化細胞の細胞増殖の促進のために必要な増殖因子および細胞外マトリックスの産生は引き続き許容する致死未満量である。
【0114】
STO細胞株は、A. Bernstein、Ontario Cancer Institute, Toronto, Canada、によって、SIM(Sandos Inbred Mice)マウスの胚線維芽細胞の持続的株から誘導され、American Type Culture Collection (ATCC)によって供給された(STO製品番号:CRL-1503、バッチ番号1198713)。新しいフィーダー層を週に2回、一般に月曜日および木曜日に調製した。指数期の細胞を分離し、計数した。生存能力がある培養物を維持するために細胞の一部分を播種し、別の部分に放射線照射した。放射線照射のために、本発明者らは、10×106細胞/mLの細胞懸濁液をチューブ中で調製した。細胞を45〜55グレイの線量に曝露し、プラスチック上に播種した。播種後、不活性化したフィーダー細胞でコーティングしたシャーレまたはプレートを、最長5日間使用した。
【0115】
培地
DMEM-HamF12 (Cambrex、カタログ番号BE04-687)
Optipro培地(Invitrogen、カタログ番号12309)
EX-CELL(商標)65195、60947、および65319 (SAFC、特別注文による培地)
【0116】
添加物
グルタミン(Cambrex、カタログ番号BE17-605E)
ペニシリン(Pencillin)/ストレプトマイシン(Cambrex、カタログ番号BE17-602E)
非必須アミノ酸(Cambrex、カタログ番号BE13-114E)
ピルビン酸ナトリウム(Cambrexカタログ番号BE13-115)
ビタミン(Cambrex、カタログ番号13-607C)
βメルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M7522)
【0117】
緩衝液および固定液(fixator)
PBS 1×(Cambrex、カタログ番号BE17-516F)
パラホルムアルデヒド4%(Sigma、カタログ番号P6148)
KCl 5.6%(Sigma、カタログ番号P9333)
メタノール/酢酸(3/1):メタノール(Merck、カタログ番号K34497209); 酢酸(Sigma、カタログ番号A6283)
コルセミド、Karyomax(Gibco、カタログ番号15212-046)
【0118】
凍結保護剤
ジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma、カタログ番号D2650)
【0119】
因子
以下の2種の異なる組換え因子を使用した:
・組換えヒト繊毛様神経栄養因子(CNTF)(Peprotech Inc、カタログ番号450-13)
・組換えヒトインスリン様因子I(IGF1)(Peprotech Inc、カタログ番号100-11)
これらの2種の因子は、大腸菌において産生させた。
【0120】
ウシ胎仔血清
放射線照射されていないウシ胎仔血清(FBS)(JRH、カタログ番号12103)
この計画で使用した放射線照射されていない血清は、米国で採取され製造された。採取のために使用された動物は、USDAによる検査を受け、屠殺が容認されたものであった。これは、トリ幹細胞を培養する間に培地に添加した。このバッチは、培養状態の幹細胞の維持のために不可欠であると確認された重要なタンパク質または成分の破壊を回避するために、放射線照射には供さなかった。
【0121】
放射線照射された血清(JRH、カタログ番号12107)
この計画で使用した放射線照射されたバッチもまた、米国で採取された。放射線照射されたこのバッチを、STO細胞またはFED細胞(フィーダー細胞)の培養のために使用されるDMEM培地に補充物として添加した。これらの細胞は、幹細胞とは違って(as stem cells)、培養状態で増殖および維持するために特定の品質の血清を必要としない。培地中の高濃度の血清を最小限にするために、本発明者らは、わずか4%のFBSの存在下での増殖にSTO細胞を順応させた。
【0122】
解離剤:
・プロナーゼ(Roche、カタログ番号165 921)
プロナーゼは、Roche Diagnostics, Germanyによって製造された組換えプロテアーゼであり、接着トリ幹細胞の分離のために使用される。
・トリプシンEDTA(Cambrex、カタログ番号BE17-161E)
トリプシンは、STO細胞またはFED細胞の分離のために、後期の継代培養では、無血清培地に順応したトリ細胞を分離するために使用される。ブタ由来のこの酵素は、cGMPの指示要件に従って、有効な滅菌ろ過法によって無菌的に製造され、現行のE.Pに従って試験される。この原材料は、調製する前に放射線照射され、9/CFR113.53に忠実に従って、ブタパルボウイルスに関して試験される。
・非酵素的細胞解離溶液(Sigma、カタログ番号C5914)
この解離剤は、培養管の増殖表面から細胞を穏やかに剥離するために使用される、すぐ使用できる調製物である。この調製物は、タンパク質を含まず、酵素を用いずに細胞を取り外すことを可能にする。細胞タンパク質は保存されるため、細胞表面タンパク質の認識に依存する免疫化学的研究が可能になる。この酵素は、EMA-1(Epithelial Membrane Antigen 1)およびSSEA1(Stage Specific Embryonic antigen- 1)のような生物学的マーカーをFACS解析する前に、細胞を剥離するために使用された。
【0123】
1.2 EBv13細胞株の樹立方法
卵を割り、開卵する間に卵白から卵黄を分離した。パスツールピペットを用いて直接、または穴開け機を用いて穴の開いた輪の形に予め切り抜いた小型の吸収性ろ紙(Whatmann 3M紙)を用いて、卵黄から胚を取り出した。穴の直径は約5mmであった。これらの小型の輪は、オーブン中で約30分間、乾熱滅菌した。この小型の紙の輪を卵黄の表面に置き、胚の中央に合わせ、このようにして紙の輪で胚を取り囲む。次いで、小型のはさみを用いて後者を切り抜き、取り出した全体を、PBSまたは生理食塩水で満たしたペトリ皿に入れる。輪を用いてこのようにして取り出した胚を媒体(medium)中で洗浄して過剰な卵黄を除き、このようにして過剰なビテリンを取り除いた胚盤をパスツールピペットで採取する。
【0124】
ニワトリValo胚を、生理学的媒体(1×PBS、トリスグルコース、および媒体など)を含むチューブ中に入れた。次いで、Valo胚を機械的に分離し、39℃で、完全培地中のフィーダーSTO細胞の層に植え付けた。フィーダー細胞は、約2.7×104細胞/cm2の濃度でフラスコ中に播種した。完全培地は、10%ウシ胎仔血清、最終濃度1ng/mlのIGF1およびCNTF、ならびに1%の非必須アミノ酸、1%の市販のビタミン混合物、最終濃度1mMのピルビン酸ナトリウム、最終濃度0.2mMのβ-メルカプト-エタノール、最終濃度2.9mMのグルタミン、最終濃度100U/mlのペニシリンおよび最終濃度100μg/mlのストレプトマイシンを含む抗生物質の初期混合物を添加した市販の基本培地DMEM-Ham F12から構成される。細胞の最初の継代後、速やかに、抗生物質混合物を培地に添加するのを止める。速やかに、という表現は、一般に最初の3〜5回の継代の後を意味すると理解される。
【0125】
ニワトリValo胚に由来するトリES細胞を1つの培養フラスコから別の培養フラスコに継代する場合、培養フラスコへの播種は、完全培地において約7×104個/cm2〜8×104個/cm2の間のトリES細胞を用いて実施した。好ましくは、播種は、約7.3×104個/cm2(4×106細胞/55cm2または4×106細胞/100mmシャーレ)で行う。段階(a)のトリ細胞、好ましくはトリ胚細胞を、数回の継代の間、完全培地中で培養する。第15代で、完全培地中の増殖因子IGF1およびCNTを枯渇させた。枯渇は、1つの代から別の代に移る1つの段階で直接行う。胚性幹細胞、好ましくはトリ胚細胞を、数回の継代の間、増殖因子IGF1およびCNTFを含まない完全培地中で培養する。
【0126】
次いで、増殖因子IGF1およびCNTFの枯渇後、数回の継代に渡ってフィーダー細胞濃度を漸進的に低下させることにより、フィーダー細胞の枯渇を実施した。実際には、同じ濃度のフィーダー細胞を2回〜4回の継代に使用し、次いで、さらに2回〜4回の継代のために低濃度のフィーダー細胞を使用するなどした。最初にフィーダー細胞約2.7×104個/cm2をフラスコに播種し、次いで、フィーダー細胞約2.2×104個/cm2、次いでフィーダー細胞約1.8×104個/cm2、次いでフィーダー細胞約1.4×104個/cm2、次いでフィーダー細胞約1.1×104個/cm2、次いでフィーダー細胞約0.9×104個/cm2、次いでフィーダー細胞約0.5×104個/cm2を播種した。次いで、フラスコにトリ細胞6.5×104個/cm2〜トリ細胞7.5×104個/cm2を播種し、フィーダー細胞は播種しなかった。フィーダー細胞の枯渇は第21代ごろに開始し、第65代ごろに終了した。フィーダー細胞を枯渇させる間に、段階(a)より低い濃度、すなわち約4×104細胞/cm2〜約5×104細胞/cm2でニワトリValo ES細胞を培養フラスコに播種した。フラスコ中のフィーダー細胞濃度の低下後、Valo ES細胞の形状は良くなかったという仮説に基づいて、次いで、同じフィーダー細胞濃度でさらに何代かトリ細胞を培養した後に、フィーダー細胞枯渇を追跡する。
【0127】
増殖因子およびフィーダー細胞を枯渇させた後、血清を枯渇させた。血清枯渇の開始時、培地は、10%ウシ胎仔血清、および1%の非必須アミノ酸、1%の市販のビタミン混合物、最終濃度1mMのピルビン酸ナトリウム、最終濃度0.2mMのβ-メルカプト-エタノール、最終濃度2.9mMのグルタミンを添加した市販の基本培地DMEM-HamF12から構成された。次の2段階のプロセスで、無血清培地培養での増殖にニワトリValo細胞を順応させた:第1に、10%ウシ胎仔血清、および1%の非必須アミノ酸、1%の市販のビタミン混合物、最終濃度1mMのピルビン酸ナトリウム、最終濃度0.2mMのβ-メルカプトエタノール、最終濃度2.9mMのグルタミンを添加した市販の無血清培地(SFM)、好ましくはExCell 60947(SAFC Biosciences)から構成される培地にニワトリValo細胞を急速に順応させた。新しい培地(DMEM-HamF12からExcell 60947)へのこの急速な順応を実施した後、SFM培地中の動物血清濃度の低下に緩徐に順応させることからなる第2の段階を開始した。10%血清から始め、次いで7.5%、次いで5%、次いで2.5%、次いで1.25%、次いで0.75%にSFM細胞培養培地中の血清濃度を漸進的に低下させることによって血清枯渇を実施して、最終的にSFM細胞培養培地中の血清を0%にした。血清枯渇は第103代で開始し、第135代で終了した。
【0128】
血清枯渇のプロセスの最後の時点で、SFM培地中の残存血清濃度が0.75%または0%のいずれかである場合、足場依存性EBv13細胞の浮遊培養への順応を開始した。足場依存性EBv13分離株を単離するために実施された数回の試みのうち、62.5%の試みが成功し、浮遊EBv13細胞の様々な分離株を得ることができた。EBv13細胞の1つの分離株は、集団倍加時間(約18時間)、フラスコ培養する際の最適細胞濃度(細胞約400万個/ml)、細胞生存率、細胞培養の均質性(細胞塊の存在およびサイズ)ならびに細胞の扱い易さに基づいて選択した。
【0129】
血清枯渇の最後の時点で、EBv13と名付けられた足場依存性ニワトリValo細胞は、増殖因子の不在下、フィーダー細胞の不在下、無血清培地中で増殖することができた。次いで、細胞培養温度を0.5℃/日ずつ漸進的に低下させることによって、EBv13細胞を37℃での増殖に順応させた。
【0130】
実施例2:アヒルEBx細胞株EB66
2.1 原材料
アヒルの卵
ペキン種GL30に由来するアヒルの卵を、GRIMAUD FRERES SELECTION (La Corbiere, Roussay France)から入手した。親アヒルは、大腸菌(Escherichia Coli)(自己ワクチンColi01および02)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)(Landavax)、アヒルウイルス肝炎(Hepatovax)、豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)(Ruvax)、トリメタニューモウイルス(Nemovac)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)および腸炎菌(Salmonella Enteridis)(自己ワクチン)、リエメレラ・アンティペステイファー(Riemerella antipestifer) (自家ワクチンRiemerella)、トリメタニューモウイルス(Nobilis RTV不活性)、ならびに豚丹毒菌(Ruvax)の予防接種を受けていた。受領後、ペキンアヒルの受精卵を次亜塩素酸浴(hypochloryde bath)中での殺菌、続いてFermacidal (Thermo)を用いた汚染除去に供して、殻に付着した粉塵に関係する任意の汚染リスクを回避した。
【0131】
フィーダー細胞
方法の第1の段階において、マウス由来の細胞(STO細胞)をフィーダー層として用いて、アヒル幹細胞の多能性を維持した。これらのフィーダー細胞は、プラスチック上に播種する前に、ガンマ線照射(45〜55グレイ)によって有糸分裂を不活性化される。放射線照射のこの線量は、細胞周期の決定的停止を誘導するが、非分化細胞の細胞増殖の促進のために必要な増殖因子および細胞外マトリックスの産生は引き続き許容する致死未満量である。STO細胞株は、A. Bernstein(Ontario Cancer Institute, Toronto, Canada)によって、SIM(Sandos Inbred Mice)マウスの胚線維芽細胞の持続的株から誘導され、American Type Culture Collection (ATCC)によって供給された(STO製品番号:CRL-1503、バッチ番号1198713)。新鮮なフィーダー層を週に2回調製した。指数期の細胞を分離し、計数した。生存能力がある培養物を維持するために細胞の一部分を播種し、別の部分に放射線照射した。放射線照射のために、本発明者らは、10×106細胞/mLの細胞懸濁液をチューブ中で調製した。細胞を45〜55グレイの線量に曝露し、プラスチック上に播種した。播種後、不活性化したフィーダー細胞でコーティングしたシャーレまたはプレートを、最長5日間使用した。
【0132】
培地
EX-CELL(商標)65788、65319、63066、および66444培地(SAFC、特別注文による培地)
GTM-3培地(Sigma、カタログ番号G9916)
DMEM-HamF12(Cambrex、カタログ番号BE04-687)
DMEM(Cambrex、カタログ番号BE 12-614F)
【0133】
添加物
グルタミン(Cambrex、カタログ番号BE17-605E)
ペニシリン/ストレプトマイシン(Cambrex、カタログ番号BE17-602E)
非必須アミノ酸(Cambrex、カタログ番号BE13-114E)
ピルビン酸ナトリウム(Cambrex、カタログ番号BE13-115)
ビタミン(Cambrex、カタログ番号13-607C)
βメルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M7522)
酵母加水分解物(SAFC、カタログ番号58902C)
【0134】
緩衝液および固定液
PBS 1×(Cambrex、カタログ番号BE17-516F)
【0135】
凍結保護剤
ジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma、カタログ番号D2650)
【0136】
因子
以下の2種の異なる組換え因子を使用した:
・組換えヒト繊毛様神経栄養因子(CNTF)(Peprotech Inc、カタログ番号450-13)
・組換えヒトインスリン様因子I(IGF1)(Peprotech Inc、カタログ番号100-11)
これらの2種の因子は、大腸菌において産生させた。
【0137】
ウシ胎仔血清
放射線照射されていないウシ胎仔血清(FBS)(JRH、カタログ番号12003)
この計画で使用した放射線照射されていない血清は、オーストラリアで採取され製造された。採取のために使用された動物は、USDAによる検査を受け、屠殺が容認されたものであった。これは、トリ幹細胞を培養する間に培地に添加した。このバッチは、培養状態の幹細胞の維持のために不可欠であると確認された重要なタンパク質または成分の破壊を回避するために、放射線照射には供さなかった。
【0138】
放射線照射された血清(JRH、カタログ番号12107)
この計画で使用した放射線照射されたバッチは、米国で採取された。放射線照射されたこのバッチを、STO細胞(フィーダー細胞)の培養のために使用されるDMEM培地に補充物として添加した。これらの細胞は、幹細胞とは違って、培養状態で増殖および維持するために特定の品質の血清を必要としない。培地中の高濃度の血清を最小限にするために、本発明者らは、わずか4%のFBSの存在下での増殖にSTO細胞を順応させた。
【0139】
解離剤:
・プロナーゼ(Roche、カタログ番号165 921)
プロナーゼは、Roche Diagnostics,Germanyによって製造された組換えプロテアーゼであり、接着トリ幹細胞の分離のために使用される。
・トリプシンEDTA(Cambrex、カタログ番号BE17-161E)
トリプシンは、STO細胞の分離のために、後期の継代培養では、無血清培地に順応したトリ細胞を分離するために使用される。ブタ由来のこの酵素は、cGMPの指示要件に従って、有効な滅菌ろ過法によって無菌的に製造され、現行のE.Pに従って試験される。この原材料は、調製する前に放射線照射され、9/CFR113.53に忠実に従って、ブタパルボウイルスに関して試験される。
・トリプジーン(Trypzean)(Sigma、カタログ番号T3449)
トリプジーン溶液は、ウシ組換えトリプシンを用いて調製され、トウモロコシにおいて発現され、Sigma Aldrichにより、ProdiGene社専有のトランスジェニック植物タンパク質発現系を利用して、製造される。この製品は、無血清の接着細胞培養物および血清を添加した接着細胞培養物の両方における細胞解離のために最適化されている。
・非酵素的細胞解離溶液(Sigma、カタログ番号C5914)
この解離剤は、培養管の増殖表面から細胞を穏やかに剥離するために使用される、すぐ使用できる調製物である。この調製物は、タンパク質を含まず、酵素を用いずに細胞を取り外すことを可能にする。細胞タンパク質は保存されるため、細胞表面タンパク質の認識に依存する免疫化学的研究が可能になる。この酵素は、EMA-1(Epithelial Membrane Antigen 1)およびSSEA1(Stage Specific Embryonic antigen- 1)のような生物学的マーカーをFACS解析する前に、細胞を剥離するために使用された。
【0140】
2.2 アヒルEBx細胞株EB66の樹立方法
約360個のアヒル受精卵を割り、開卵する間に、卵白から卵黄を分離した。穴開け機を用いて穴の開いた輪の形に予め切り抜いた小型の吸収性ろ紙(Whatmann 3M紙)を用いて、卵黄から胚を取り出した。穴の直径は約5mmである。これらの小型の輪は、オーブン中で約30分間、乾熱滅菌した。実際には、胚採取の段階の間に、小型の紙の輪を卵黄の表面に置き、胚の中央に合わせ、このようにして紙の輪で胚を取り囲む。次いで、小型のはさみを用いて後者を切り抜き、取り出した全体を、PBSで満たしたペトリ皿に入れる。輪を用いてこのようにして取り出した胚を媒体中で洗浄して過剰な卵黄を除き、このようにして過剰なビテリンを取り除いた胚盤をパスツールピペットで採取した。
【0141】
アヒル胚を、PBS 1×を含む50mlチューブ中に入れた。次いで、アヒル胚を機械的に分離し、PBSで洗浄し、39℃、7.5%CO2で、完全培地中のフィーダーSTO細胞の不活性化層に播種した。フィーダー細胞は、約2.7×104細胞/cm2の濃度で6ウェルプレートまたはシャーレに播種した。完全培地は、10%ウシ胎仔血清、最終濃度1ng/mlのIGF1、CNTF、ならびに1%の非必須アミノ酸、1%の市販のビタミン混合物、最終濃度0.1mMのピルビン酸ナトリウム、最終濃度0.5mMのβ-メルカプト-エタノール、最終濃度2.1mMのグルタミン、最終濃度100U/mlのペニシリン、最終濃度100μg/mlのストレプトマイシン、および酵母加水分解物1×を添加した無血清培地DMEM-Ham F12から構成される。第4代の時点で速やかに、抗生物質混合物を培地に添加するのを止める。
【0142】
アヒルES細胞をDMEM-Ham F12培地中で第4代まで培養した。第4代の後、基本培地を改変し、DMEM-Ham F12完全培地を、10%ウシ胎仔血清、最終濃度1ng/mlのIGF1、CNTF、1%の非必須アミノ酸、1%の市販のビタミン混合物、最終濃度0.1mMのピルビン酸ナトリウム、最終濃度0.5mMのβ-メルカプト-エタノール、最終濃度2.1mMのグルタミン、および酵母加水分解物1×を添加したSFM GTM-3培地に交換する。この新しい培地中で、14回の継代の間、アヒルES細胞をさらに培養し、次いで、第18代の時点で増殖因子の枯渇を実施した。すなわち、第19代から第24代にかけて、IGF1およびCNTFを同時に培地から除去した。培地は、10%FBS、1%の非必須アミノ酸、1%の市販のビタミン混合物、最終濃度0.1mMのピルビン酸ナトリウム、最終濃度0.5mMのβ-メルカプト-エタノール、最終濃度2.1mMのグルタミン、および酵母加水分解物1×を添加したGTM-3培地であった。
【0143】
ペキンアヒル胚に由来するアヒルES細胞を1つの培養シャーレから別の培養シャーレに継代する場合、培養シャーレへの播種は、完全培地において約7×104個/cm2〜12×104個/cm2の間のアヒルES細胞を用いて実施した。
【0144】
次いで、第24代の後、数回の継代に渡ってフィーダー細胞濃度を漸進的に低下させることにより、フィーダー細胞の枯渇を実施した。最初にフィーダー細胞約2.7×104個/cm2をシャーレに播種し、次いで、第25代〜第31代の間にフィーダー細胞約1.8×104個/cm2、次いで第32代〜第35代の間に細胞約1.4×104個/cm2、次いで第36代〜第41代の間にフィーダー細胞約1×104個/cm2、次いで第42代〜第44代の間にフィーダー細胞約0.7×104個/cm2を播種し、最後に、第45代からはトリ細胞のみをシャーレに播種し、フィーダー細胞は播種しなかった。フィーダー枯渇の最後に、トリ細胞9×104個/cm2〜トリ細胞12.7×104個/cm2をシャーレに播種する。フィーダー細胞の枯渇は第25代に開始し、第45代に終了した。フィーダー細胞を枯渇させる間、段階(a)より高い濃度、すなわち約9×104細胞/cm2〜12.7×104細胞/cm2でアヒルES細胞を培養シャーレに播種する。
【0145】
フィーダー細胞無しで数回継代した後、増殖パラメーター(集団倍加時間(PDT)および濃度)を調査して、細胞の安定性および強健性を確認し、アミノ酸、ビタミン、βメルカプトエタノール、ピルビン酸ナトリウム、および酵母加水分解物の枯渇を開始する。PDTが約40時間より短く、細胞濃度が約26×104細胞/cm2より高い場合、細胞は十分に強健で、このような枯渇に供することができるとみなされる。
【0146】
EB66と名付けられた本発明のアヒルEBx(登録商標)細胞を開発する場合、ビタミン、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、およびβメルカプトエタノールの枯渇は、第52代で開始した。これらの添加物をすべて培地から同時に除去した。したがって、第52代〜第59代の間、培地は、グルタミン、酵母加水分解物、およびFBSを添加したSFM GTM-3である。新しい培養条件に少しの間順応させた後、温度を下げ始めた。この低下は、第60代〜第67代の間に漸進的に行った。第67代の後、細胞は37℃で増殖することができた。第67代の後、基本培地GTM-3を、Excell 65788と呼ばれる新しいSFM基本培地に交換した。したがって、第67代の後、培地は、10%FBS、2.5mMグルタミン、および1×酵母加水分解物を添加したExcell 65788であった。第80代で、超低接着(ULA)シャーレに細胞4×106個を移し、常に攪拌しながら維持して、足場非依存性細胞増殖を開始させた。浮遊液としての増殖を促進するために、基本培地を改変し、ULAシャーレに播種する場合、血清の比率を10%から5%に下げた。したがって、第80代〜第85代まで、培地は、5%FBS、2.5mMグルタミン、および1×酵母加水分解物を添加したSFM GTM-3であった。第85代の後に、EB66細胞浮遊液においてFBSをゆっくりと減らし始めた。2.5%血清から始め、次いで1.5%にSFM細胞培養培地中の血清濃度を漸進的に低下させることによって血清を枯渇させて、最終的にSFM細胞培養培地中の血清を0%にした。血清枯渇は第86代で開始し、第94代で終了した。血清枯渇の最後の時点で、足場非依存性dEB66細胞は、増殖因子の不在下、フィーダー細胞の不在下、無血清培地中にて、37℃で増殖することができた。
【0147】
2.5mMグルタミンを添加したSFM GTM-3中、37℃で増殖できるEB66アヒル細胞を得た後、例えば、Excell 63066、Excell 66444、Excell CHO ACFなどの新しいSFM調製物に希釈または漸進的に順応させることによって、SFM培地にさらにいくらか順応させた。
【0148】
浮遊アヒルEB66細胞のサブクローニングはまた、酵母加水分解物の存在下または不在下で実現することができる。
【0149】
実施例3:アヒルEBx細胞株EB26
3.1 原材料
アヒルの卵、フィーダー細胞、添加物、緩衝液および固定液、凍結保護剤、ウシ胎仔血清、ならびに解離剤(実施例3と同じ)
ペキン種GL30に由来するアヒルの卵を使用した。
【0150】
培地
EX-CELL 65319、63066、および66444培地(SAFC、特別注文による培地)
GTM-3培地(Sigma、カタログ番号G9916)
DMEM(Cambrex、カタログ番号BE 12-614F)
【0151】
因子
以下の6種の異なる組換え因子を使用した:
・組換えヒト繊毛様神経栄養因子(CNTF)(Peprotech Inc、カタログ番号450-13)
・組換えヒトインスリン様因子I(IGF1)(Peprotech Inc、カタログ番号100-11)
・組換えヒトインターロイキン6(IL6)(Peprotech Inc、カタログ番号200-06)
・組換えヒト可溶性インターロイキン6受容体(sIL6r) (Peprotech Inc、カタログ番号200-06 R)
・組換えヒト幹細胞因子(SCF)(Peprotech Inc、カタログ番号300-07)
・組換えヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(Peprotech Inc、カタログ番号100-18B)
IL6r以外のこれらの因子はすべて、大腸菌において産生させる。可溶性IL6rは、トランスフェクトされたHEK293細胞において発現させる。
【0152】
3.2 アヒルEBx細胞株EB26の樹立方法
EB66に関して先に説明したようにして、アヒル胚を採取した。PBS 1×を含む50mLチューブにアヒル胚を入れた。次いで、アヒル胚を機械的に分離し、PBS中で洗浄し、39℃、7.5%CO2で、完全培地中のフィーダーSTO細胞の不活性化層に播種した。フィーダー細胞は、約2.7×104細胞/cm2の濃度で6ウェルプレートまたはシャーレに播種した。完全培地は、5%ウシ胎仔血清、最終濃度1ng/mlのIGF1、CNTF、Il-6、Il-6R、SCF、およびFGF、ならびに1%の非必須アミノ酸、1%の市販のビタミン混合物、最終濃度0.1mMのピルビン酸ナトリウム、最終濃度0.5mMのβ-メルカプト-エタノール、最終濃度2.1mMのグルタミン、最終濃度100U/mlのペニシリン、最終濃度100μg/mlのストレプトマイシン、および酵母加水分解物1×を添加した無血清培地GTM-3から構成される。細胞の最初の継代後、速やかに、抗生物質混合物を培地に添加するのを止める。速やかに、という表現は、一般に最初の3〜9回の継代の後を意味すると理解される。アヒルES細胞を完全培地中で第9代まで培養した。第9代の後に、完全培地の因子をある程度枯渇させる。すなわち、第10代〜第13代の間に、SCF、IL6、IL6r、およびbFGFを培地から除去し、組換えIGF1およびCNTFのみを濃度1ng/mlで維持した。次に、第13代〜第16代の間にIGF1およびCNTFの濃度を同時に低下させて、組換え因子無しで増殖できる細胞を第17代で最終的に得た。因子の枯渇は、低濃度の因子に漸進的に順応させることによって実施した。ペキンアヒル胚に由来するアヒルES細胞を1つの培養シャーレから別の培養シャーレに継代する場合、培養シャーレへの播種は、完全培地において約7×104個/cm2〜12×104個/cm2の間のアヒルES細胞を用いて実施した。好ましくは、播種は、約7.3×104個/cm2(4×106細胞/55cm2または4×106細胞/100mmシャーレ)で行う。組換え因子を枯渇させた後、第23代の時点で酵母加水分解物を減少させて、最終濃度を0.5倍にした。次いで、第31代の後に、数回の継代に渡ってフィーダー細胞濃度を漸進的に低下させることにより、フィーダー細胞の枯渇を実施した。最初にフィーダー細胞約2.7×104個/cm2をシャーレに播種し、次いで、第32代〜第38代の間にフィーダー細胞約1.8×104個/cm2、次いで第39代〜第44代の間に細胞約1.4×104個/cm2、次いで第45代〜第47代の間にフィーダー細胞約1×104個/cm2、次いで第48代〜第50代の間にフィーダー細胞約0.7×104個/cm2を播種し、最後に、第51代からはトリ細胞のみをシャーレに播種し、フィーダー細胞は播種しなかった。フィーダー枯渇の最後に、トリ細胞9×104個/cm2〜トリ細胞12.7×104個/cm2をシャーレに播種する。フィーダー細胞の枯渇は第32代に開始し、第51代で終了した。フィーダー細胞を枯渇させる間、段階(a)より高い濃度、すなわち約9×104細胞/cm2〜約12.7×104細胞/cm2でアヒルES細胞を培養シャーレに播種する。フィーダー細胞無しで数回継代した後、増殖パラメーター(集団倍加時間(PDT)および濃度)を調査して、細胞の安定性および強健性を確認し、浮遊液としての細胞増殖を開始した。PDTが約40時間より短く、細胞濃度が約26×104細胞/cm2より高い場合、細胞は十分に強健で、浮遊培養に供することができるとみなされる。さらに、細胞の形態は、円形、屈折性(refringent)、非常に小型であるべきであり、細胞はプラスチックシャーレにあまり多く接着すべきではない。
【0153】
EB26細胞開発の場合、第53代に浮遊培養を開始した。7×106個の細胞を超低接着シャーレに移し、約50〜70rpmで常に攪拌しながら維持した。次の継代のために、0.4〜0.5×106細胞/mLの間を含む濃度でT175フラスコ(Sarsted、参照番号831812502)に細胞を播種した。新しい培養条件に少しの間順応させた後、細胞のPDTは、約160時間から40時間に短縮した。この好適な進化を考慮して、一連の枯渇を新たに第59代で実施した。すなわち、ビタミン、ピルビン酸ナトリウム、β-メルカプトエタノール、および非必須アミノ酸を除去した。したがって、第59代の後、培地には、5%FBS、0.5×酵母加水分解物、および2.5mMグルタミンのみを添加した。血清枯渇は、増殖因子、フィーダー細胞、ビタミン、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびβ-メルカプトエタノールを既に枯渇させた細胞懸濁物に対して実施する。5%血清から始め、次いで2.5%、次いで1.5%にSFM細胞培養培地中の血清濃度を漸進的に低下させることによって血清枯渇を実施して、最終的にSFM細胞培養培地中の血清を0%にした。血清枯渇は第61代で開始し、第79代で終了した。血清枯渇の最後の時点で、足場非依存性アヒルEB26細胞は、増殖因子の不在下、フィーダー細胞の不在下、無血清培地中にて、39℃で増殖することができた。次いで、第80代で細胞培養温度を低下させることによって、EB26細胞を37℃、0.5×酵母加水分解物不在下での増殖に順応させた。
【0154】
2.5mMグルタミンを添加したSFM GTM-3中、37℃で増殖できるEB26細胞を得た後、Excell 63066、Excell 66444、Excell CHO ACFなどの新しいSFM調製物に希釈または漸進的に順応させることによって、さらにいくらか順応させた。浮遊アヒルEB26細胞のサブクローニングはまた、酵母加水分解物の存在下または不在下で実現することができる。
【0155】
実施例4:アヒルEBx細胞株EB24
4.1 原材料
アヒルの卵、フィーダー細胞、添加物、緩衝液および固定液、凍結保護剤、ウシ胎仔血清、ならびに解離剤(実施例3と同じ)
ペキン種GL30に由来するアヒルの卵を使用した。
【0156】
培地
EX-CELL(商標)65319、63066、および66444培地(SAFC、特別注文による培地)
GTM-3培地(Sigma、カタログ番号G9916)
DMEM F12(Cambrex、カタログ番号BE04-687)
DMEM (Cambrex、カタログ番号BE12-614F)
【0157】
因子
以下の6種の異なる組換え因子を使用した:
・組換えヒト繊毛様神経栄養因子(CNTF)(Peprotech Inc、カタログ番号450-13)
・組換えヒトインスリン様因子I(IGF1)(Peprotech Inc、カタログ番号100-11)
・組換えヒトインターロイキン6(IL6)(Peprotech Inc、カタログ番号200-06)
・組換えヒト可溶性インターロイキン6受容体(sIL6r) (Peprotech Inc、カタログ番号200-06 R)
・組換えヒト幹細胞因子(SCF)(Peprotech Inc、カタログ番号300-07)
・組換えヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(Peprotech Inc、カタログ番号100-18B)
IL6r以外のこれらの因子はすべて、大腸菌において産生させる。可溶性IL6rは、トランスフェクトされたHEK293細胞において発現させる。
【0158】
4.2 アヒルEBx(登録商標)細胞株EB24の樹立方法
EB66に関して先に説明したようにして、アヒル胚を採取した。PBS 1×を含む50mlチューブにアヒル胚を入れた。次いで、アヒル胚を機械的に分離し、39℃、7.5%CO2で、完全培地中のフィーダーSTO細胞の不活性化層に播種する。フィーダー細胞は、約2.7×104細胞/cm2の濃度で6ウェルプレートまたはシャーレに播種した。完全培地は、10%ウシ胎仔血清、最終濃度1ng/mlのIGF1、CNTF、Il-6、Il-6R、SCF、およびFGF、ならびに1%の非必須アミノ酸、1%の市販のビタミン混合物、最終濃度0.1mMのピルビン酸ナトリウム、最終濃度0.5mMのβ-メルカプト-エタノール、最終濃度2.1mMのグルタミン、最終濃度100U/mlのペニシリン、最終濃度100μg/mlのストレプトマイシン、および1×酵母加水分解物を添加した無血清培地DMEM-Ham F12から構成される。細胞の最初の継代後、速やかに、抗生物質混合物を培地に添加するのを止める。速やかに、という表現は、一般に最初の3〜9回の継代の後を意味すると理解される。
【0159】
アヒルES細胞をDMEM-Ham F12完全培地中で第7代まで培養する。第7代の後、基本培地を改変し、DMEM-Ham F12完全培地を、10%ウシ胎仔血清、最終濃度1ng/mlのIGF1、CNTF、Il-6、Il-6R、SCF、およびFGF、1%の非必須アミノ酸、1%の市販のビタミン混合物、最終濃度0.1mMのピルビン酸ナトリウム、最終濃度0.5mMのβ-メルカプト-エタノール、最終濃度2.1mMのグルタミン、最終濃度100U/mlのペニシリン、最終濃度100μg/mlのストレプトマイシン、および酵母加水分解物1×を添加したGTM-3完全培地に交換する。したがって、第11代で、血清濃度は5%に低下しており、SCF、IL6、IL6r、およびbFGFは培地から除去されている。したがって、第11代から、培地は、5%FBS、最終濃度1ng/mlのIGF1およびCNTF、1%の非必須アミノ酸、1%の市販のビタミン混合物、最終濃度0.1mMのピルビン酸ナトリウム、最終濃度0.5mMのβ-メルカプト-エタノール、最終濃度2.1mMのグルタミン、最終濃度100U/mlのペニシリン、最終濃度100μg/mlのストレプトマイシン、ならびに酵母加水分解物1×から構成される。第22代でIGF1およびCNTFを同時に除去する。第22代の後、GTM-3培地中に組換え因子は存在しない。第23代〜第28代の間、このような培地中でアヒル細胞を維持した。ペキンアヒル胚に由来するアヒルES細胞を1つの培養シャーレから別の培養シャーレに継代する場合、培養シャーレへの播種は、完全培地において約7×104/cm2〜12×104/cm2の間のアヒルES細胞を用いて実施した。好ましくは、播種は、約7.3×104/cm2(4×106細胞/55cm2または4×106細胞/100mmシャーレ)で行う。次いで、第28代の後、数回の継代に渡ってフィーダー細胞濃度を漸進的に低下させることにより、フィーダー細胞の枯渇を実施する。最初にフィーダー細胞約2.7×104個/cm2をシャーレに播種し、次いで、第29代〜第33代の間にフィーダー細胞約1.8×104個/cm2、次いで第34代〜第37代の間に細胞約1.4×104個/cm2、次いで第38代〜第42代の間にフィーダー細胞約1×104個/cm2、次いで第43代〜第46代の間にフィーダー細胞約0.7×104個/cm2を播種し、最後に、第47代からはトリ細胞のみをシャーレに播種し、フィーダー細胞は播種しなかった。フィーダー枯渇の最後に、トリ細胞9×104個/cm2〜トリ細胞12.7×104個/cm2をシャーレに播種する。フィーダー細胞の枯渇は第29代に開始し、第47代に終了した。フィーダー細胞を枯渇させる間、段階(a)より高い濃度、すなわち約9×104細胞/cm2〜約12.7×104細胞/cm2でアヒルES細胞を培養シャーレに播種する。
【0160】
フィーダー細胞無しで数回継代した後、増殖パラメーター(集団倍加時間(PDT)および濃度)を調査して、細胞の安定性および強健性を確認し、浮遊液としての細胞増殖を開始した。PDTが約40時間より短く、細胞濃度が約26×104細胞/cm2より高い場合、細胞は十分に強健で、浮遊培養に供することができるとみなされる。さらに、細胞の形態は、円形、屈折性、非常に小型であるべきであり、細胞はプラスチックシャーレにあまり多く接着すべきではない。EB24細胞開発の場合、第48代に浮遊培養を開始する。8×106個の細胞を超低接着シャーレに移し、約50〜70rpmで常に攪拌しながら維持した。次の継代のために、0.4〜0.5×106細胞/mLの間を含む濃度でT175フラスコ(Sarsted、参照番号831812502)に細胞を播種した。新しい培養条件に少しの間順応させた後、細胞のPDTは、約248時間から128時間に短縮した。次いで、次の段階の枯渇を実施する。すなわち、第52代で、ビタミン、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびβメルカプトエタノールを除去する。第56代でPDTが44時間に達するという好適な進化を考慮して、第57代から血清枯渇を開始した。したがって、第57代からは、培地GTM-3には、5%FBS、1×酵母加水分解物、および2.5mMグルタミンのみを添加した。血清枯渇は、増殖因子、フィーダー細胞、ビタミン、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびβ-メルカプトエタノールを既に枯渇させた細胞懸濁物に対して実施する。5%血清から始め、次いで2.5%、次いで2%、次いで1.5%にSFM細胞培養培地中の血清濃度を漸進的に低下させることによって血清を枯渇させて、最終的にSFM細胞培養培地中の血清を0%にした。血清枯渇は第57代で開始し、第77代で終了した。この血清枯渇の実施中、37℃での増殖に順応させることも行った。したがって、漸進的な温度変化を避けるために、第65代で、2.5 % FBSを添加した培地中で増殖する細胞を37℃で移した。血清枯渇の最後の時点で、足場非依存性アヒルEB24細胞は、増殖因子の不在下、フィーダー細胞の不在下、無血清培地中にて、37℃で増殖することができた。
【0161】
2.5mMグルタミンを添加したSFM GTM-3中、37℃で増殖できるアヒルEB24細胞を得た後、Excell 63066、Excell 66444、Excell CHO ACFなどの新しいSFM調製物に希釈または漸進的に順応させることによって、さらにいくらか順応させた。浮遊アヒルEB24のサブクローニングを実施し、ウイルスを効率的に複製するパフォーマンスに優れたアヒルEB24-12サブクローンを選択した。
【0162】
実施例5:発現ベクターおよび構築物
5.1 親となる空発現ベクター:pVVS431(pKNexp)
VIVALISベクターのバックボーンは、大腸菌におけるプラスミド増幅およびトリEBx(登録商標)細胞への発現ベクタートランスフェクション後のクローン選択を可能にする単一の耐性カセットを含む。nptII遺伝子は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼタンパク質をコードし、原核生物ではカナマイシン耐性および真核生物ではネオマイシン耐性を生物に与える。転写は、nptII遺伝子の上流に縦に並んでクローニングされた原核生物プロモーターおよび真核生物プロモーターの両方によって推進される。関心対象のタンパク質をコードするcDNAは、容易に交換可能な(easely exangeable)プロモーター(すなわちCMVプロモーターなど)、イントロン、およびポリA領域を含む空発現カセット中に位置するMCS(multiple cloning site)内にクローニングされる(図1)。
【0163】
以下は、RSVプロモーター配列を有する発現ベクターの例である。同様の手順を用いて、CMVプロモーター、EF&/HTLVプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、mPGKプロモーター、eiF4αプロモーター、CAGプロモーター、ENS-1プロモーターを有する発現ベクターを構築した。
【0164】
5.2 IgG1軽鎖発現を推進するRSVプロモーターを有するベクター:pVVS452(pRSV-IgG1-L)
ヒト-マウスのキメラMab IgG1(κ軽鎖)をMAT-Biopharma(Evry, France)の好意により頂いた。pIgG1-L-クローン10(MAT-Biopharma)に由来する平滑末端化したNcoI-KpnI DNA断片を、pKNexp MCS領域の平滑末端化したNheI-NotI部位内にクローニングして、pVVS451(pCMV-IgG1-L)を作製した。pVVS451において、Mab軽鎖の発現は、CMVプロモーターによって推進される。RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)をPhilippe Moullier (Inserm U649 - Laboratoire de Therapie Genique, CHU Hotel-Dieu, Nantes)から入手した。RSVプロモーターは、SO29

プライマーおよびSO30

プライマーを用いて、pAAV5RSVLacZからPCR増幅した。RSVプロモーターのPCR断片およびpVVS451をBglIIおよびIPpoIで消化した。pVVS451のCMVプロモーターを含まないDNA断片をアガロースゲル精製し、pVVS452を作製するためにRSVプロモーターに連結した(図2A)。
【0165】
5.3 IgG1重鎖発現を推進するRSVプロモーターを有するベクター:pVVS450(pRSV-H90H)
Mabγ1アイソタイプをMAT-Biopharma(Evry, France)から入手した。pHIgG1-H-クローン28(MAT-Biopharma)に由来する平滑末端化したNcoI-HindIII DNA断片を、pKNexp MCS領域の平滑末端化したNheI-NotI部位内にクローニングして、pVVS449(pCMV-HIgG1L)を作製した。pVVS449において、Mab重鎖の発現は、CMVプロモーターによって推進される。RSVプロモーターのPCR断片およびpVVS449をBglIIおよびIPpoIで消化した。pVVS449のCMVプロモーターを含まないDNA断片をアガロースゲル精製し、pVVS450を作製するためにRSVプロモーターに連結した(図2B)。
【0166】
5.4 RSVプロモーターの制御下でH90の軽鎖および重鎖の両方を発現するデュアルベクター:pVVS455(pRSV-LH-IgG1)およびpVVS460(pRSV-HL-IgG1)
RSVプロモーターによって推進されるIgG1軽鎖発現カセットを、SO29プライマーおよびAS455

プライマー(配列番号9)を用いたPCRによってpVVS452から増幅した。RSVプロモーター、H90軽鎖、およびSV40後期ポリAを有するこのDNA断片をAscIおよびBamHIによって消化した。レシピエントpVVS450ベクターをAscI-BglIIで消化した。直線化したベクターの5'末端を脱リン酸した後に、精製した増幅DNA断片と連結して、pVVS455(pRSV-LH-IgG1)を作製した(図3A)。
【0167】
同じSO29プライマーおよびAS455プライマーを用いて、RSVプロモーターによって推進されるIgG1重鎖発現カセットをpVVS450から増幅した。RSVプロモーター、IgG1重鎖、およびSV40後期ポリAを有するこのDNA断片をAscIおよびBamHIによって消化した。レシピエントpVVS452ベクターをAscI-BglIIで消化した。直線化したベクターの5'末端を脱リン酸した後に、精製したPCR DNA断片と連結して、pVVS460(pRSV-HL-IgG1)を作製した(図3B)。
【0168】
5.5 ピューロマイシン耐性を有するNR13発現ベクター:pVVS438(pNR13-ピューロ)
S86N45セキショクヤケイ(Gallus gallus)種から精製した全RNAに対してRT-PCR実験を実施して、NR13抗アポトーシス遺伝子をコードするcDNAを作製した。それぞれNheI部位およびNotI部位を有するオリゴヌクレオチドAS376

およびAS377

を用いて、NR13 cDNA断片を作製した。CMVプロモーターを欠失させRSVプロモーターで置き換えた、pCiNeoベースのベクターを、NR13 cDNAのレシピエントとして使用した。両方のDNAのNheI消化およびNotI消化に続いて、ライゲーション実験を行った。ライゲーション産物を使用して、プライマーSO29およびプライマーAS4349を用いたPCR増幅を実行して、NR13 RSV推進性プロモーター発現カセットを得た。このPCR断片をBglIIおよびSwaIによって消化した。レシピエントpVVS437ベクターをBglII-SwaIで消化した。精製した挿入断片およびベクターの両方を一つに連結してpVVS438(pNR13-ピューロ)を作製した。
【0169】
実施例6:無血清培地における一過性トランスフェクションおよび最も優れたプロモーターの単離
6.1 ニワトリEBx細胞における一過性トランスフェクション
8種の異なるプロモーターによってそれぞれ推進される2つのレポーター遺伝子(赤蛍光タンパク質dsREDnucおよびヒト血液凝固因子IX)の一過性発現を接着ニワトリEBx細胞において実施して、最も優れたプロモーターを単離した。
【0170】
この実験で試験した8種の異なるプロモーターは次のものであった:CMVプロモーター(IEヒトサイトメガロウイルスプロモーター); SV40プロモーター(サルウイルス40); ヒトβ-アクチンプロモーター; マウスPGKプロモーター(ホスホグリセリン酸キナーゼ);RSV-LTR(ラウス肉腫ウイルスのLTR); ヒトeIF4αプロモーター(翻訳開始因子4α); EF1α-HTLV複合プロモーター(HTLVlウイルスの5'UTR領域に連結されたヒトEF1伸長因子); CAG複合プロモーター(ニワトリβ-アクチンプロモーターに連結されたCMVエンハンサー)。
【0171】
試薬lipofectamine(商標)もしくはfugene(商標)を用いるか、またはエレクトロポレーションにより、これら8種のプロモーターを有する発現ベクター(表1)をニワトリ接着EBx(登録商標)細胞株に一過性にトランスフェクトした。レポーター遺伝子の一過性発現が最も強く観察されたプロモーター4種は、EF1α-HTLV、RSV、CAG、およびCMVであった。これらを選択し、EBx(登録商標)細胞においてヒト/マウスキメラIgG1を発現させるためにさらに使用した。
【0172】
(表1)EBx(登録商標)細胞において高レベルで発現するプロモーターを選択するための一過性発現実験において使用する、cDNA発現を推進するプロモーターのリスト
GFP:蛍光性レポータータンパク質; DsRed2nuc:蛍光性レポータータンパク質; hFIX:ヒト凝固因子IX; IgG1-LHまたはHL:同じベクター内にクローニングされ、通知された(notified)同じプロモーターによって推進される、IgG1をコードする軽鎖および重鎖。LH:軽鎖は重鎖の上流にクローニングされる; HL:重鎖は軽鎖の上流にクローニングされる。pVVSxxxは、Vivalisのデータベースに登録されているベクターの名称に対応する。

【0173】
EBx(登録商標)細胞において最大のIgG1発現を得ることを可能にするプロモーターはEF1α-HTLV、RSV、およびCMVであった(データ不掲載)。これらをさらに使用して、EBx(登録商標)細胞においてヒト/マウスキメラIgG1を発現させるための安定なトランスフェクション実験を実施した。
【0174】
6.2 アヒルEBx細胞における一過性トランスフェクション
方法
6ウェルプレート中の2.5mMグルタミンを添加した無血清培地(SAFC Biosciences社製のExcell GTM3培地)に懸濁したアヒルEBx 細胞に、ヌクレオフェクチン(nucleofection)(Amaxa, DE)を用いて発現ベクター[pEF1/HTLV-IgG1軽鎖および重鎖](pvVS490)を一過性にトランスフェクトした。トランスフェクション後24時間目および48時間目に、ELISAアッセイ法によってIgG1発現をモニターした。DNA無しで対照ヌクレオフェクチンを実施した。
【0175】
結果
アヒルEBx細胞は、最大約4.5μg/mlのIgG1抗体を一過性に発現した(図4)。
【0176】
実施例7:安定なトランスフェクションおよび最も優れた産生クローンの同定
7.1 材料および方法:
細胞:
2.5mMグルタミンを添加した無血清培地(SAFC Biosciences社製のExcell)中のニワトリEB14細胞およびアヒルEB66細胞。
【0177】
発現ベクター:
EB14細胞に対してはpVVS490(pEF1/HTLV)およびpVVS455(pRSV)。EB66細胞に対してはpVVS490(pEF1/HTLV)。
【0178】
トランスフェクション:
エレクトロポレーション(Amaxa)により、無血清培地中のEB14細胞およびEB66細胞に発現ベクターをトランスフェクトした。トランスフェクション後3日目に、選択剤(EB14細胞に対しては0.25mg/ml、EB66細胞に対しては0.15mg/mLのジェネテシン)を細胞培養培地に添加する。ジェネテシン耐性クローンを単離し、採取し、より大きな容器(マイクロプレート、フラスコ、次いでバイオリアクター)において培養した。
【0179】
ELISA:
安定にトランスフェクトされたクローンに対してELISAスクリーニングアッセイ法を実施して、上清中の抗体発現レベルを検出した。このアッセイ法は、定量的なサンドイッチ式酵素イムノアッセイ技術を使用する。96ウェルプレートに抗IgG-Fc特異的抗体を予めコーティングする。標準物質、試料、および結合体をこれらのウェルに添加し、固定化された抗体とIgG-κに特異的な第2の酵素結合モノクローナル抗体によって、存在する任意のIgGをサンドイッチ状にはさむ。任意の未結合の物質および/または抗体-酵素反応物を除去するために洗浄した後、基質溶液をウェルに添加すると、結合されたIgGの量に比例して発色が起こる。反応を停止し、発色強度を測定する(光学濃度、490nm)。各標準物質の平均吸光度をy軸に、濃度をx軸にプロットすることによって検量線を作成し、グラフのプロット点を通る最良適合曲線を引いた。平均吸光度に対応するIgG濃度を検量線から算出することによって、未知の各試料の濃度を決定する。試料の場合、検量線から決定した濃度に希釈率を掛けなければならない。
【0180】
7.2 結果
ヒト-マウスキメラIgG1の重鎖および軽鎖cDNAをコードする発現ベクターを安定にトランスフェクトされた多くのEBx(登録商標)細胞クローンを獲得し、ELISAを用いて選択した。最も優れた産生クローンを選択し、より大きな容器で培養した(図5)。IgG1を発現する安定にトランスフェクトされた1つのEB14クローンおよびEB66クローンを浮遊培養に順応させ、3リットルの攪拌槽バイオリアクターでさらに培養した。3Lバイオリアクター中の9日間の非最適化培養後、EB14細胞濃度は細胞1600万個/mlに達し、細胞培養上清中のIgG1濃度は約0.25g/lであった(図6A)。非最適化条件下で、IgG1はまた、3Lバイオリアクター中のEB66細胞においても効率的に発現された(図6B)。
【0181】
実施例8:EBx(登録商標)によって産生されたIgG1モノクローナル抗体のグリコシル化パターンの解析
EBxによって産生されたIgG1に結合しているグリカンのキャピラリー電気泳動解析を実施して、ヒト血清IgGに結合しているグリカンのキャピラリー電気泳動解析と比較した。得られた結果から、EBxのグリコシル化プロファイルが、ヒトのグリコシル化プロファイルに類似していることが実証された(図7A)。
【0182】
また、N結合型グリカンのMaldi-Toff質量スペクトル解析を用いて、CHO(Chinese Hamster Ovary)細胞およびニワトリEB14細胞において産生させたIgG1のグリコシル化パターンの比較も実施した。ニワトリEB14細胞を用いることにより、通常のCHO細胞(図7B)またはHEK細胞(データ不掲載)を用いた場合よりもフコシル化の程度が低い抗体集団の作製が可能になる。
【0183】
ニワトリEB14細胞の安定にトランスフェクトされた1つのクローンにおいて産生させたIgG1のグリコシル化プロファイルを、Maldi-Toff質量スペクトル解析によって解析した。各IgG1重鎖のCH2ドメインの残基Asn297に結合したN-オリゴ糖の構造を解析した(図8)。このニワトリEB14クローンにおいて産生させたIgG1抗体の大半は、末端GlcNacを有し、ガラクトシル化された長鎖を含む、共通の2分岐型N結合型オリゴ糖構造体を有する。IgG1抗体集団の多く(48%)がフコシル化されていない(図7Bおよび図8)。
【0184】
また、N結合型グリカンのMALDI TOF質量スペクトル解析を用いて、CHO(Chinese Hamster Ovary)細胞およびアヒルEB66細胞において産生させたIgG1のグリコシル化パターンの比較も実施した。アヒルEB66細胞を用いることにより、通常のCHO細胞を用いた場合よりもフコシル化の程度が低い抗体集団の作製が可能になる(図12-表2)。アヒルEB66細胞の安定にトランスフェクトされた1つのクローンにおいて産生させたIgG1のグリコシル化プロファイルを、MALDI TOF質量スペクトル解析によって解析した。各IgG1重鎖のCH2ドメインの残基Asn297に結合したN-オリゴ糖の構造を解析した(図13)。アヒルEB66クローンにおいて産生させたIgG1抗体の大半は、末端GlcNacを有し、ガラクトシル化された長鎖を含む、共通の2分岐型N結合型オリゴ糖構造体を有する。EB66によって産生されたIgG1抗体集団の多く(50%超)がフコシル化されていない(図12、13、14)。これに対して、CHO細胞において産生させた同じIgG1抗体は、末端GlcNacを有し、フコシル化の程度が高い(70%超)長鎖を含む、2分岐型N結合型オリゴ糖構造を示す(図12、13、14)。
【0185】
(表2)アヒルEB66細胞およびCHO細胞によって産生させたIgG1における複合型(complex type)N結合型オリゴ糖の比率(%)

【0186】
EB66細胞において発現されたIgG1中に存在するシアル酸残基含有量の解析を実施した。酢酸(最終濃度2M、80℃、2時間)で加水分解した後、EB66クローン1D7において発現されたIgG1上に存在するシアル酸をDMB(1,2-ジアミノ-4,5-メチレンジオキシ-ベンゼン)で標識した。N-アセチル-ノイラミン酸(NeuAC)とN-グリコリルノイラミン酸(NeuGc)の相対比をHPLC(蛍光検出)によって求めた。NeuAcは、「EB66」IgG1上に存在するシアル酸の95%に相当する(表3を参照されたい)。
【0187】
(表3)EB66細胞(クローンID7)において産生させたIgG1上に存在するシアル酸の相対比率(%)

【0188】
実施例9
EBx(登録商標)細胞およびハイブリドーマにおいて産生させたIgG1による腫瘍細胞増殖の阻害の解析
ニワトリEB14細胞またはハイブリドーマいずれかにおいて産生させたIgG1免疫グロブリンの細胞増殖阻害活性を測定するためにアッセイ法を開発した。IgG1抗体は、ヒト腫瘍細胞表面で発現されるCDマーカーを対象とする。トリチウム標識チミジンの存在下で腫瘍細胞を増殖させ、正常な患者から精製した単球またはナチュラルキラーT細胞と共に、IgG1免疫グロブリンの存在下でインキュベートした。このアッセイ法では、単球またはNK細胞によるIgG1を介した腫瘍細胞溶解の後、腫瘍細胞中に取り込まれたトリチウム標識チミジンの量を測定する。4日間培養した後、少量のトリチウム標識チミジンが、NK細胞または単球細胞で処理し、かつニワトリEB14細胞において産生させたIgG1抗体で処理した腫瘍細胞に取り込まれていた。反対に、NK細胞または単球細胞で処理し、かつハイブリドーマにおいて産生させたIgG1抗体で処理した腫瘍細胞では、より高レベルのH3-チミジンが観察された。
【0189】
したがって、ニワトリEB14細胞において産生させたIgG1は、ハイブリドーマにおいて産生させた同じ抗体よりも優れた細胞媒介性の細胞障害活性を示す(図9)。
【0190】
実施例10:EBx(登録商標)細胞において産生させたIgG1 MABのADCC活性
10.1 方法
健常なドナー2名に由来するPBMCを標準的な密度遠心分離手順を用いて単離し、RPMI細胞培養培地中に5×106細胞/mlの濃度で懸濁した。
【0191】
標準的な組織培養方法によって、疾患に関連した標的細胞を増殖させ、生存率が90%を超える指数増殖期に回収し、RPMI細胞培養培地中で洗浄し、100マイクロキュリーの51Crで標識し、細胞培養培地で2回洗浄し、105細胞/mlの濃度で細胞培養培地中に再懸濁した。疾患に関連した標的細胞の懸濁液100マイクロリットルを96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに移した。
【0192】
前記疾患標的細胞の抗原性表面マーカーを対象とする抗体を細胞培養培地中で4000ng/mlから0.04ng/mlまで段階的に希釈し、結果として得られる抗体溶液を50マイクロリットルずつ、96ウェルマイクロタイタープレート中の標的細胞に添加して、上記の濃度範囲全体を包含する様々な抗体濃度を三つ組で試験する。次いで、96ウェルマイクロタイタープレートを50×gで1分間遠心分離し、4℃で1時間インキュベートした。
【0193】
PBMC懸濁液を50マイクロリットルずつ各ウェルに添加して、エフェクター:標的細胞比率を25:1とし、37℃、5% CO2雰囲気下のインキュベーター中に4時間、プレートを置く。
【0194】
細胞を含まない上清を各ウェルから回収し、実験によって放出された放射能(ER)をγ線計数器によって定量する。
【0195】
10.2 結果
異なる健常なドナー2名のPBMCから精製したNK細胞を用いて2回の独立した実験を行ったところ、疾患に関連した標的細胞を対象とし、かつニワトリEB14細胞およびアヒルEB66細胞において産生させたIgG1抗体が、CHO細胞において産生させた同じ抗体と比べて増加したADCC活性を有することが示された(図10、15、および16)。ADCC活性は、クロミウム放出法によって測定するか、またはIFNγもしくはCD107マーカーを発現するNK細胞の比率に基づいて評価した(図15)。
【0196】
実施例11:NR13抗アポトーシス遺伝子を安定にトランスフェクトされた接着ニワトリEBX(登録商標)細胞の増殖解析
2つの異なる発現ベクター、pVVS437ベクターおよびpVVS438ベクター、を構築した。pVVS437は、ピューロマイシン耐性遺伝子のみを含む。PVVS438は、ピューロマイシン耐性遺伝子およびニワトリ抗アポトーシス遺伝子NR13の発現を可能にする。
【0197】
接着ニワトリEBx(登録商標)細胞にpVVS437ベクターまたはpVVS438ベクターをトランスフェクトし、最も優れた産生クローンを選択した。
【0198】
NR13タンパク質を発現する安定にトランスフェクトされたEBx(登録商標)細胞を100mmシャーレ中で接着培養した。NR13タンパク質を発現しないEBx(登録商標)細胞は、培養状態で生存せず、それらの大半は培養して6〜7日後に死滅する。NR13タンパク質を発現するEBx(登録商標)は、わずかかつ一定の比率しか培養物中で死滅せず、NR13 EBx(登録商標)細胞の大多数は、より長い期間、培養状態で生存し続ける(図11)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞において関心対象の組換えタンパク質の発現を引き起こすことができるプロモーター配列に機能的に連結された、該タンパク質をコードする核酸配列を含む少なくとも1つの発現カセットを含む少なくとも1つの発現ベクターをトランスフェクトされた、トリEBx(登録商標)細胞。
【請求項2】
発現ベクターが、宿主細胞において選択マーカーの発現を引き起こすことができるプロモーター配列に機能的に連結された、該選択マーカーをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む少なくとも1つの発現カセットをさらに含む、請求項1記載のEBx(登録商標)細胞。
【請求項3】
選択マーカーが、グルタミン合成酵素、キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、ピューロマイシン、ハイグロマイシンB、ネオマイシン遺伝子、およびジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)より選択される、請求項1および2のいずれか一項記載のEBx(登録商標)細胞。
【請求項4】
プロモーター配列が、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、マウスホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター、eIF4αプロモーター、キメラEF1α/HTLVプロモーター、CAGプロモーター、β-アクチンプロモーターより選択される、請求項3記載のEBx(登録商標)細胞。
【請求項5】
発現カセットが、転写開始配列、エンハンサー配列、イントロン配列、ポリアデニル化配列、終結配列、クロマチンインスレーターエレメントからなる群より選択される、1つまたは複数の制御エレメントまたは調節配列をさらに含む、請求項1および4のいずれか一項記載のEBx(登録商標)細胞。
【請求項6】
クロマチンインスレーターエレメントが、バウンダリーエレメント(BE)、マトリックス結合領域(MAR)、遺伝子座調節領域(LCR)、普遍的クロマチンオープニングエレメント(UCOE)より選択される、請求項5記載のEBx(登録商標)細胞。
【請求項7】
発現ベクターが少なくとも以下を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載のEBx(登録商標)細胞:
次のDNA配列を次の順序で含む第1の発現カセット:配列番号1のCMVプロモーター配列、イントロン配列、関心対象の組換えタンパク質をコードするcDNA配列、ポリアデニル化配列、および
次のDNA配列を次の順序で含む第2の発現カセット:SV40プロモーター、ネオマイシン遺伝子、ポリアデニル化配列。
【請求項8】
発現ベクターが少なくとも以下を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載のEBx(登録商標)細胞:
次のDNA配列を次の順序で含む第1の発現カセット:配列番号2のキメラEF1α/HTLVプロモーター配列、イントロン配列、関心対象の組換えタンパク質をコードするcDNA配列、ポリアデニル化配列、および
次のDNA配列を次の順序で含む第2の発現カセット:SV40プロモーター、ネオマイシン遺伝子、ポリアデニル化配列。
【請求項9】
発現ベクターが少なくとも以下を次の順序で含む、請求項1〜6のいずれか一項記載のEBx(登録商標)細胞:
次のDNA配列を次の順序で含む第1の発現カセット:配列番号1のCMVプロモーター、イントロン配列、抗体の重鎖またはその断片をコードするcDNA配列、ポリアデニル化配列;
次のDNA配列を次の順序で含む第2の発現カセット:配列番号1のCMVプロモーター、イントロン配列、抗体の軽鎖またはその断片をコードするcDNA配列、ポリアデニル化配列;
次のDNA配列を次の順序で含む第3の発現カセット:SV40プロモーター、ネオマイシン遺伝子、ポリアデニル化配列。
【請求項10】
発現ベクターが少なくとも以下を次の順序で含む、請求項1〜6のいずれか一項記載のEBx(登録商標)細胞:
次のDNA配列を次の順序で含む第1の発現カセット:配列番号2のキメラEF1α/HTLVプロモーター、イントロン配列、抗体の重鎖またはその断片をコードするcDNA配列、ポリアデニル化配列;
次のDNA配列を次の順序で含む第2の発現カセット:配列番号2のキメラEF1α/HTLVプロモーター、イントロン配列、抗体の軽鎖またはその断片をコードするcDNA配列、ポリアデニル化配列;
次のDNA配列を次の順序で含む第3の発現カセット:SV40プロモーター、ネオマイシン遺伝子、ポリアデニル化配列。
【請求項11】
細胞において抗アポトーシスタンパク質の発現を引き起こすことができるプロモーター配列に機能的に連結された、該抗アポトーシスタンパク質をコードするDNA配列を含む少なくとも1つの発現カセットを含む発現ベクターをさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項記載のEBx(登録商標)細胞。
【請求項12】
抗アポトーシスタンパク質が、ニワトリNR13タンパク質である、請求項11記載のEBx(登録商標)細胞。
【請求項13】
細胞の染色体DNAに発現ベクターが安定に組み込まれる、請求項1〜12のいずれか一項記載のEBx(登録商標)細胞。
【請求項14】
EB14細胞およびEBv13細胞より選択されるニワトリEBx(登録商標)細胞であり、かつEB24、EB24-12、EB26、およびEB66より選択されるアヒルEBx細胞である、請求項1〜13のいずれか一項記載のEBx(登録商標)細胞。
【請求項15】
無血清培地に順応させた浮遊EBx(登録商標)細胞である、請求項14記載のEBx(登録商標)細胞。
【請求項16】
無血清培地に順応させた接着EBx(登録商標)細胞である、請求項14記載のEBx(登録商標)細胞。
【請求項17】
以下の段階を含む、トリEBx(登録商標)細胞において少なくとも1種の関心対象の生物学的産物を産生させるための方法:
(a)少なくとも1つの発現ベクターをトランスフェクションすることによって、請求項1〜16のいずれか一項記載のEBx(登録商標)細胞を調製する段階;
(b)該EBx(登録商標)細胞を、適切な条件下で、かつ適切な培地中で培養する段階;および
(c)該EBx(登録商標)細胞、該適切な培地、または該EBx(登録商標)細胞および該培地の両方から、関心対象の生物学的産物を回収する段階。
【請求項18】
エレクトロポレーションにより、無血清培地中での接着培養において少なくとも1つの発現ベクターをEBx(登録商標)細胞にトランスフェクトする、請求項17記載の方法。
【請求項19】
リポソームを介したトランスフェクションにより、無血清培地中での浮遊培養において少なくとも1つの発現ベクターをEBx(登録商標)細胞にトランスフェクトする、請求項17記載の方法。
【請求項20】
関心対象の生物学的産物が、抗体分子、抗体断片、または免疫グロブリンのFc領域に等価な領域を含む融合タンパク質であり、Fcを介した増加した細胞毒性を有する、請求項17〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
ニワトリEBx(登録商標)グリコシル化またはアヒルEBx(登録商標)グリコシル化を有する、関心対象の生物学的産物。
【請求項22】
EBx(登録商標)細胞において産生され、かつEBx(登録商標)グリコシル化を有する抗体集団であって、該抗体集団またはその断片が、末端GlcNacを有し、高度にガラクトシル化された長鎖を含み、かつ強いADCC活性を該抗体に与える共通の2分岐型N結合型フコシル化オリゴ糖構造体を有する抗体を高比率で含むFc領域を含む、抗体集団。
【請求項23】
EBx(登録商標)細胞において産生され、かつハイブリドーマ細胞またはCHO細胞において産生された同じ抗体と比べて増加したADCC活性を有する、IgG1サブタイプまたはIgG3サブタイプの請求項22記載の抗体。
【請求項24】
薬剤としての、請求項21記載の関心対象の生物学的産物。
【請求項25】
薬剤としての、請求項22および23のいずれか一項記載の抗体またはその断片。
【請求項26】
ヒトおよび動物の疾患を予防または治療するための薬学的組成物の調製のための、請求項24記載の生物学的産物または請求項25記載の抗体もしくはその断片の使用。
【請求項27】
請求項24記載の生物学的産物または請求項25記載の抗体もしくはその断片、および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−529833(P2010−529833A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508848(P2010−508848)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056285
【国際公開番号】WO2008/142124
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(504341128)
【Fターム(参考)】