トルクレンチ
【課題】 握り部に対する手の掛かりを良くし、握力のない人でも容易に旋回操作でき、また滑り止め加工の手間暇を軽減でき、使い勝手が良くなるようにする。
【解決手段】 扁平形の中空状軸部1の基端側に握り部2を設け、この握り部2内に、トルク設定用のコイルバネ3を、その弾発方向を握り部2の長手方向に合わせて設ける。握り部2を、軸部1と扁平状の面2aの向きを合わせて扁平に形成する。コイルバネ3を、握り部2の幅広状の横幅方向に並べて平行状に複数設ける。
【解決手段】 扁平形の中空状軸部1の基端側に握り部2を設け、この握り部2内に、トルク設定用のコイルバネ3を、その弾発方向を握り部2の長手方向に合わせて設ける。握り部2を、軸部1と扁平状の面2aの向きを合わせて扁平に形成する。コイルバネ3を、握り部2の幅広状の横幅方向に並べて平行状に複数設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナットやボルトの締め付け力を限定したいときに使用するトルクレンチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種のトルクレンチは、扁平形の中空状軸部の基端側に握り部を設け、この握り部内に、トルク設定用のコイルバネを、その弾発方向を握り部の長手方向に合わせて設けている(例えば特許文献1参照)。
そしてこの場合、握り部は、従来、コイルバネの円筒形状に合わせて円筒形(丸棒形)に形成されているのが通例であった。
【0003】
ところでこの種のトルクレンチは、作業者が握り部を把持し、ヘッド部(ナット等の形状に応じてソケットを取り付ける部分)を中心に、軸部を旋回して使用するものである。従ってこの種のトルクレンチは、ナット等を締め付けるとき、通常、大きな握力を必要とするから、従来品によると、例えば握力の弱い(小さい)人にとっては使い勝手が悪いものであった。
また従来品は、上記の通り、トルク設定用のコイルバネの形状に合わせて握り部を円筒形(丸棒形)に形成しているため、通常、握り部の表面に、溝等の滑り止め加工を施す必要がある、という不利益があった。
【特許文献1】実公平7−4126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来品の問題点に鑑み、提案されたものである。
従って本発明の解決しようとする技術的課題は、握り部に対する手の掛かりを良くし、握力のない人でも容易に旋回操作でき、また滑り止め加工の手間暇を軽減でき、使い勝手が良くなるよう形成したトルクレンチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するため、次のような技術的手段を採る。
即ち本発明は、図1等に示されるように、扁平形の中空状軸部1の基端側に握り部2が設けられ、この握り部2内に、トルク設定用のコイルバネ3が、その弾発方向を握り部2の長手方向に合わせて設けられているトルクレンチであって、上記の握り部2が軸部1と扁平状の面2aの向きを合わせて扁平に形成され、上記のコイルバネ3が握り部2の幅広状の横幅方向に並べられて平行状に複数設けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0006】
本発明の場合、握り部2は、軸部1と扁平状の面2aを、面一にして形成される場合には限定されない。即ち握り部2は、扁平であれば軸部1より凸段差状、或いは凹段差状に形成されているのでも良い。また本発明は、例えば軸部1と握り部2の底面同士が面一に形成され、上面は段差状に形成されているのでも良い。本発明品が、このような形態に形成される場合は、載置時の座りが良くなり、またより斬新で印象的な外観の、商品価値の高い本発明品を提供できる。なおコイルバネ3は、本発明の場合、2本には限定されず、3本以上が並列状に設けられているのでも良い。
【0007】
また本発明の課題を達成する他の構成としては、図10〜図15に示されるものがある。
即ちこの本発明は、扁平形の中空状軸部1の基端側に握り部2が設けられ、この握り部2内に、トルク設定用のバネ13が、その弾発方向を握り部2の長手方向に合わせて設けられているトルクレンチであって、上記のバネ13が板バネで形成されると共に、この板バネが凹湾曲状の板面13aを向き合わせて複数設けられ、上記の握り部2が軸部1と扁平状の面2aの向きを合わせて扁平に形成されていることを特徴とする(請求項2)。
【0008】
本発明の場合、バネ13としての板バネは、通常、図12等に示されるように、断面略弓形に形成され、その凹湾曲状の板面13aを向き合わせて配置されるが、本発明はこれに限定されるものではない。また本発明は、板バネが握り部2の横幅方向に沿っても複数並べられ、握り部2の長手方向に沿った列が握り部2の横幅方向に2列状、3列状に設けられているのでも良い。なお本発明は、請求項1に係る本発明品と同様、握り部2の扁平状の面2aが軸部1の扁平面と段差を有して形成されているのでも良い。
【0009】
また請求項1又は2記載の本発明は、軸部1が握り部2の部分まで形作るよう長尺状に形成され、軸部1の基端側が、軸部1の基端から先端に向かって所定の長さだけゴム質の保護材で被覆され、この保護材による被覆個所が握り部2に形成されているのが好ましい(請求項3)。
なぜならこれによると、扁平加工した一本の長い金属管を所定の長さに切り出すことで軸部1と握り部2の部分を形作ることができ、握り部2と軸部1との接続加工を一掃でき、量産が容易になり、その分、製品を安価に提供できるからである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のトルクレンチは、このように握り部を、軸部と扁平状の面の向きを合わせて扁平に形成し、コイルバネを、握り部の幅広状の横幅方向に並べて平行状に複数設けたり、或いはコイルバネに代えて板バネを用い、この板バネを凹湾曲状の板面を向き合わせ、板バネの弾発方向を握り部の長手方向に合わせて複数設けているものである。
従って本発明のトルクレンチは、手指を折り曲げたとき、指が握り部にしっくりと馴染み、指掛かりが良くなるから、これによると、握力がなくても旋回操作を容易にできる。
また本発明品は、このように握り部が扁平で、指掛かりし易いから、握り部の滑り止め加工を減らすことができ、その分、加工の手間暇を軽減でき、製品を安価に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明のトルクレンチは、図1等に示されるように、扁平形の中空状軸部1の基端側に握り部2が設けられ、この握り部2内に、トルク設定用のコイルバネ3が、握り部2の長手方向に沿って設けられている。4は、軸ピン5を中心に、図1において、上下方向に回動する締め付け部材である。6はトグルリンクであり、7は締め付け部材4の動きがトグルリンク6を介して伝わると、軸部1の長手方向に沿って移動するスラスタである。なお8は、軸部1の内側壁に周面が当接するよう、スラスタ7の側部に設けられているローラである。
【0012】
上記の握り部2は、上記の軸部1と扁平状の面2aの向きを合わせて扁平に形成されている。軸部1は、例えば金属の丸管がプレス機で押し潰されて形成され、この実施形態では握り部2の部分まで形作るよう、長尺状に形成されている。またこの実施形態の場合、軸部1の基端側は、軸部1の基端から先端に向かって所定の長さだけゴム質の保護材で被覆され、この保護材による被覆個所が握り部2に形成されている。
【0013】
上記のコイルバネ3は、握り部2の幅広状の横幅方向に並べられて平行状に、この実施形態では2本設けられている。即ちこの実施形態に係る本発明品のコイルバネ3は、2本合計で、従来の1本のコイルバネ3のバネ定数を有するよう形成されている。各コイルバネ3の先端は、スラスタ7の基端面に形成されている係合突起7aに被せて嵌め込まれ、コイルバネ3の基端は可動バネ受け9の係合凸部9aに被せて嵌め込まれている。スラスタ7の各係合突起7aと可動バネ受け9の各係合凸部9aは、対向状に配置され、コイルバネ3はスラスタ7と可動バネ受け9との間に、上記の通り、平行状に架け渡されている。なおこの実施形態の場合、係合突起7aと係合凸部9aは、夫々一端が雄ネジ状のピンで形成され、スラスタ7、可動バネ受け9の各端面に形成されているネジ孔7b、9b(図5〜図8等参照)に、ねじ込まれている。
【0014】
10は、上記のコイルバネ3を圧縮してトルクを設定するための操作部である。この操作部10は、頭にマイナス溝10a(図2参照)が形成され、ネジ状に形成されている。またこの操作部10は、ガイド部11の横孔11a(図9参照)に螺合されて通され、先端は図2等に示されるように、可動バネ受け9の基端面の中央部に形成されている螺子孔9cに螺合されている。ガイド部11は、図2、図9等に示されるように、握り部2の横幅方向に延びる隙間11bを隔てて薄肉部11cと厚肉部11dとの2片を有し、軸部1の断面形状に合わせて側面視長円形に形成されている。操作部10は、このガイド部11に案内され、握り部2の長手方向に沿って案内されるものである。薄肉部11cの開放状の先端側は、厚肉部11dに貫通されているネジ込み孔11e(図9参照)にネジ込まれるネジ12の操作で押し開かれ、操作部10をガイド部11にきつく係合できるよう形成されている。即ち、ネジ12の先端は、薄肉部11cの内端面に当接され、このネジ12を締め付けると、薄肉部11cが図面上左方向に押し開かれ、薄肉部11cが外側方に傾くと操作部10と薄肉部11cとの係合状態がきつくなり、操作部10の戻りを防止できるものである。またネジ12を緩めると、薄肉部11cは、そのバネ力で復元して厚肉部11dと平行状になり、これにより操作部10の進退動作が可能になる。なおガイド部11は、握り部2に、ネジ孔11fを介してネジ止めされている。
【0015】
次に本発明のトルクレンチの作用を説明する。
先ず作業者は、例えばマイナスドライバーを握り部2の基端の開口から差し入れ、操作部10の頭のマイナス溝10aを利用して操作部10を例えば締め込む。すると操作部10が、ガイド部11に案内されて前進し、可動バネ受け9を押し、図2等において左方向に移動する。次に作業者は、操作部10の戻りを防止するため、ネジ12を締め、ガイド部11の薄肉部11cを、図2等において左方向に傾け、操作部10と薄肉部11cの係合状態をきつくする。
【0016】
而して作業者は、この状態で握り部2に手指を掛け、軸部1を旋回操作してナット等を締め付ける。そして締め付け力が、設定トルクを超えると、通常のトルクレンチと同様、トルクが解放される。本発明の場合、設定トルクを変更する場合は、ネジ12を緩めて操作部10とガイド部11との仮止め状態を解除後、操作部10を任意の方向に回転し、可動バネ受け9を、図面上、左右方向にスライドさせる。これにより、コイルバネ3の圧縮状態が変わり、トルク変更が可能になる。
【0017】
次に請求項2に係る本発明品の好適な一実施形態を、図10〜図15に従って説明する。上例と同一部材、同一個所については、同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0018】
この本発明は、扁平形の中空状軸部1の基端側に握り部2が設けられ、この握り部2内に、トルク設定用のバネ13が、その弾発方向を握り部2の長手方向に合わせて設けられている。上記の軸部1は、上例と同様、金属の丸管がプレス機で押し潰されて形成され、握り部2の部分まで形作るよう、長尺状に形成されている。また軸部1の基端側は、軸部1の基端から先端に向かって所定の長さだけゴム質の保護材で被覆され、この保護材による被覆個所が握り部2に形成されている。握り部2は、軸部1と扁平状の面2aの向きを合わせて扁平に形成されている。
【0019】
上記のバネ13は、板バネで形成されると共に、この板バネが凹湾曲状の板面13aを向き合わせて複数設けられている。またバネ13としての板バネは、図12に示されるように、断面略弓形に形成され、図13等に示されるように、その長手方向を、握り部2の幅広状の横幅方向に合わせて設けられている。そして握り部2内の最前部の板バネ13bは、その背がスラスタ7の基端面に当接され、最後部の板バネ13cは、その背が可動バネ受け9の前端面に当接されている。ネジ状の操作部10や、この操作部10を握り部2の長手方向に沿って案内するガイド部11の構成は、上例と同様である。
【0020】
次に本発明のトルクレンチの作用を説明する。
先ず作業者は、マイナスドライバーを握り部2の基端の開口から差し入れ、操作部10の頭のマイナス溝10aを利用して操作部10を正逆回転させ、可動バネ受け9を例えば前進させる。この場合、作業者は、操作部10の戻りを確実に防止するため、上例と同様、ガイド部11のネジ12を締め、操作部10とガイド部11との係合状態をきつくする。
【0021】
而して可動バネ受け9が、図13等において、左方向に移動すると、バネ13としての板バネが圧縮され、締め付けトルクが任意の値に設定される。作業者は、この状態で握り部2に手指を掛け、軸部1を旋回させてナット等を締め付ける。そしてナット等に加わる締め付け力が設定トルクを超えると、本発明品は、通常のトルクレンチと同様、トルクが解放される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のトルクレンチの好適な一実施形態を示し、Aは平面図、Bは右側面図、Cは正面図である。
【図2】同上トルクレンチの要部拡大平面図である。
【図3】図2のIII−III線における断面図である。
【図4】図3のIV−IV線における断面図である。
【図5】スラスタの正面図である。
【図6】図5のVI−VI線における断面図である。
【図7】Aはスラスタの左側面図、Bは右側面図である。
【図8】可動バネ受けを示し、Aは図2において左側から見た側面図、BはAのB―B線断面図、Cは右側から見た側面図である。
【図9】ガイド部を示し、Aは図2において右側から見た側面図、BはAのB―B線断面図である。
【図10】本発明のトルクレンチの他の構成を示す平面図である。
【図11】図10に係る本発明のトルクレンチの正面図である。
【図12】板バネを示し、Aは正面図、BはAのB―B線断面図である。
【図13】図10に係る本発明のトルクレンチの要部拡大断面図である。
【図14】図13のXIV−XIV線における断面図である。
【図15】図14のXV−XV線における断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 中空状軸部
2 握り部
2a 扁平状の面
3 コイルバネ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナットやボルトの締め付け力を限定したいときに使用するトルクレンチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種のトルクレンチは、扁平形の中空状軸部の基端側に握り部を設け、この握り部内に、トルク設定用のコイルバネを、その弾発方向を握り部の長手方向に合わせて設けている(例えば特許文献1参照)。
そしてこの場合、握り部は、従来、コイルバネの円筒形状に合わせて円筒形(丸棒形)に形成されているのが通例であった。
【0003】
ところでこの種のトルクレンチは、作業者が握り部を把持し、ヘッド部(ナット等の形状に応じてソケットを取り付ける部分)を中心に、軸部を旋回して使用するものである。従ってこの種のトルクレンチは、ナット等を締め付けるとき、通常、大きな握力を必要とするから、従来品によると、例えば握力の弱い(小さい)人にとっては使い勝手が悪いものであった。
また従来品は、上記の通り、トルク設定用のコイルバネの形状に合わせて握り部を円筒形(丸棒形)に形成しているため、通常、握り部の表面に、溝等の滑り止め加工を施す必要がある、という不利益があった。
【特許文献1】実公平7−4126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来品の問題点に鑑み、提案されたものである。
従って本発明の解決しようとする技術的課題は、握り部に対する手の掛かりを良くし、握力のない人でも容易に旋回操作でき、また滑り止め加工の手間暇を軽減でき、使い勝手が良くなるよう形成したトルクレンチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するため、次のような技術的手段を採る。
即ち本発明は、図1等に示されるように、扁平形の中空状軸部1の基端側に握り部2が設けられ、この握り部2内に、トルク設定用のコイルバネ3が、その弾発方向を握り部2の長手方向に合わせて設けられているトルクレンチであって、上記の握り部2が軸部1と扁平状の面2aの向きを合わせて扁平に形成され、上記のコイルバネ3が握り部2の幅広状の横幅方向に並べられて平行状に複数設けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0006】
本発明の場合、握り部2は、軸部1と扁平状の面2aを、面一にして形成される場合には限定されない。即ち握り部2は、扁平であれば軸部1より凸段差状、或いは凹段差状に形成されているのでも良い。また本発明は、例えば軸部1と握り部2の底面同士が面一に形成され、上面は段差状に形成されているのでも良い。本発明品が、このような形態に形成される場合は、載置時の座りが良くなり、またより斬新で印象的な外観の、商品価値の高い本発明品を提供できる。なおコイルバネ3は、本発明の場合、2本には限定されず、3本以上が並列状に設けられているのでも良い。
【0007】
また本発明の課題を達成する他の構成としては、図10〜図15に示されるものがある。
即ちこの本発明は、扁平形の中空状軸部1の基端側に握り部2が設けられ、この握り部2内に、トルク設定用のバネ13が、その弾発方向を握り部2の長手方向に合わせて設けられているトルクレンチであって、上記のバネ13が板バネで形成されると共に、この板バネが凹湾曲状の板面13aを向き合わせて複数設けられ、上記の握り部2が軸部1と扁平状の面2aの向きを合わせて扁平に形成されていることを特徴とする(請求項2)。
【0008】
本発明の場合、バネ13としての板バネは、通常、図12等に示されるように、断面略弓形に形成され、その凹湾曲状の板面13aを向き合わせて配置されるが、本発明はこれに限定されるものではない。また本発明は、板バネが握り部2の横幅方向に沿っても複数並べられ、握り部2の長手方向に沿った列が握り部2の横幅方向に2列状、3列状に設けられているのでも良い。なお本発明は、請求項1に係る本発明品と同様、握り部2の扁平状の面2aが軸部1の扁平面と段差を有して形成されているのでも良い。
【0009】
また請求項1又は2記載の本発明は、軸部1が握り部2の部分まで形作るよう長尺状に形成され、軸部1の基端側が、軸部1の基端から先端に向かって所定の長さだけゴム質の保護材で被覆され、この保護材による被覆個所が握り部2に形成されているのが好ましい(請求項3)。
なぜならこれによると、扁平加工した一本の長い金属管を所定の長さに切り出すことで軸部1と握り部2の部分を形作ることができ、握り部2と軸部1との接続加工を一掃でき、量産が容易になり、その分、製品を安価に提供できるからである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のトルクレンチは、このように握り部を、軸部と扁平状の面の向きを合わせて扁平に形成し、コイルバネを、握り部の幅広状の横幅方向に並べて平行状に複数設けたり、或いはコイルバネに代えて板バネを用い、この板バネを凹湾曲状の板面を向き合わせ、板バネの弾発方向を握り部の長手方向に合わせて複数設けているものである。
従って本発明のトルクレンチは、手指を折り曲げたとき、指が握り部にしっくりと馴染み、指掛かりが良くなるから、これによると、握力がなくても旋回操作を容易にできる。
また本発明品は、このように握り部が扁平で、指掛かりし易いから、握り部の滑り止め加工を減らすことができ、その分、加工の手間暇を軽減でき、製品を安価に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明のトルクレンチは、図1等に示されるように、扁平形の中空状軸部1の基端側に握り部2が設けられ、この握り部2内に、トルク設定用のコイルバネ3が、握り部2の長手方向に沿って設けられている。4は、軸ピン5を中心に、図1において、上下方向に回動する締め付け部材である。6はトグルリンクであり、7は締め付け部材4の動きがトグルリンク6を介して伝わると、軸部1の長手方向に沿って移動するスラスタである。なお8は、軸部1の内側壁に周面が当接するよう、スラスタ7の側部に設けられているローラである。
【0012】
上記の握り部2は、上記の軸部1と扁平状の面2aの向きを合わせて扁平に形成されている。軸部1は、例えば金属の丸管がプレス機で押し潰されて形成され、この実施形態では握り部2の部分まで形作るよう、長尺状に形成されている。またこの実施形態の場合、軸部1の基端側は、軸部1の基端から先端に向かって所定の長さだけゴム質の保護材で被覆され、この保護材による被覆個所が握り部2に形成されている。
【0013】
上記のコイルバネ3は、握り部2の幅広状の横幅方向に並べられて平行状に、この実施形態では2本設けられている。即ちこの実施形態に係る本発明品のコイルバネ3は、2本合計で、従来の1本のコイルバネ3のバネ定数を有するよう形成されている。各コイルバネ3の先端は、スラスタ7の基端面に形成されている係合突起7aに被せて嵌め込まれ、コイルバネ3の基端は可動バネ受け9の係合凸部9aに被せて嵌め込まれている。スラスタ7の各係合突起7aと可動バネ受け9の各係合凸部9aは、対向状に配置され、コイルバネ3はスラスタ7と可動バネ受け9との間に、上記の通り、平行状に架け渡されている。なおこの実施形態の場合、係合突起7aと係合凸部9aは、夫々一端が雄ネジ状のピンで形成され、スラスタ7、可動バネ受け9の各端面に形成されているネジ孔7b、9b(図5〜図8等参照)に、ねじ込まれている。
【0014】
10は、上記のコイルバネ3を圧縮してトルクを設定するための操作部である。この操作部10は、頭にマイナス溝10a(図2参照)が形成され、ネジ状に形成されている。またこの操作部10は、ガイド部11の横孔11a(図9参照)に螺合されて通され、先端は図2等に示されるように、可動バネ受け9の基端面の中央部に形成されている螺子孔9cに螺合されている。ガイド部11は、図2、図9等に示されるように、握り部2の横幅方向に延びる隙間11bを隔てて薄肉部11cと厚肉部11dとの2片を有し、軸部1の断面形状に合わせて側面視長円形に形成されている。操作部10は、このガイド部11に案内され、握り部2の長手方向に沿って案内されるものである。薄肉部11cの開放状の先端側は、厚肉部11dに貫通されているネジ込み孔11e(図9参照)にネジ込まれるネジ12の操作で押し開かれ、操作部10をガイド部11にきつく係合できるよう形成されている。即ち、ネジ12の先端は、薄肉部11cの内端面に当接され、このネジ12を締め付けると、薄肉部11cが図面上左方向に押し開かれ、薄肉部11cが外側方に傾くと操作部10と薄肉部11cとの係合状態がきつくなり、操作部10の戻りを防止できるものである。またネジ12を緩めると、薄肉部11cは、そのバネ力で復元して厚肉部11dと平行状になり、これにより操作部10の進退動作が可能になる。なおガイド部11は、握り部2に、ネジ孔11fを介してネジ止めされている。
【0015】
次に本発明のトルクレンチの作用を説明する。
先ず作業者は、例えばマイナスドライバーを握り部2の基端の開口から差し入れ、操作部10の頭のマイナス溝10aを利用して操作部10を例えば締め込む。すると操作部10が、ガイド部11に案内されて前進し、可動バネ受け9を押し、図2等において左方向に移動する。次に作業者は、操作部10の戻りを防止するため、ネジ12を締め、ガイド部11の薄肉部11cを、図2等において左方向に傾け、操作部10と薄肉部11cの係合状態をきつくする。
【0016】
而して作業者は、この状態で握り部2に手指を掛け、軸部1を旋回操作してナット等を締め付ける。そして締め付け力が、設定トルクを超えると、通常のトルクレンチと同様、トルクが解放される。本発明の場合、設定トルクを変更する場合は、ネジ12を緩めて操作部10とガイド部11との仮止め状態を解除後、操作部10を任意の方向に回転し、可動バネ受け9を、図面上、左右方向にスライドさせる。これにより、コイルバネ3の圧縮状態が変わり、トルク変更が可能になる。
【0017】
次に請求項2に係る本発明品の好適な一実施形態を、図10〜図15に従って説明する。上例と同一部材、同一個所については、同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0018】
この本発明は、扁平形の中空状軸部1の基端側に握り部2が設けられ、この握り部2内に、トルク設定用のバネ13が、その弾発方向を握り部2の長手方向に合わせて設けられている。上記の軸部1は、上例と同様、金属の丸管がプレス機で押し潰されて形成され、握り部2の部分まで形作るよう、長尺状に形成されている。また軸部1の基端側は、軸部1の基端から先端に向かって所定の長さだけゴム質の保護材で被覆され、この保護材による被覆個所が握り部2に形成されている。握り部2は、軸部1と扁平状の面2aの向きを合わせて扁平に形成されている。
【0019】
上記のバネ13は、板バネで形成されると共に、この板バネが凹湾曲状の板面13aを向き合わせて複数設けられている。またバネ13としての板バネは、図12に示されるように、断面略弓形に形成され、図13等に示されるように、その長手方向を、握り部2の幅広状の横幅方向に合わせて設けられている。そして握り部2内の最前部の板バネ13bは、その背がスラスタ7の基端面に当接され、最後部の板バネ13cは、その背が可動バネ受け9の前端面に当接されている。ネジ状の操作部10や、この操作部10を握り部2の長手方向に沿って案内するガイド部11の構成は、上例と同様である。
【0020】
次に本発明のトルクレンチの作用を説明する。
先ず作業者は、マイナスドライバーを握り部2の基端の開口から差し入れ、操作部10の頭のマイナス溝10aを利用して操作部10を正逆回転させ、可動バネ受け9を例えば前進させる。この場合、作業者は、操作部10の戻りを確実に防止するため、上例と同様、ガイド部11のネジ12を締め、操作部10とガイド部11との係合状態をきつくする。
【0021】
而して可動バネ受け9が、図13等において、左方向に移動すると、バネ13としての板バネが圧縮され、締め付けトルクが任意の値に設定される。作業者は、この状態で握り部2に手指を掛け、軸部1を旋回させてナット等を締め付ける。そしてナット等に加わる締め付け力が設定トルクを超えると、本発明品は、通常のトルクレンチと同様、トルクが解放される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のトルクレンチの好適な一実施形態を示し、Aは平面図、Bは右側面図、Cは正面図である。
【図2】同上トルクレンチの要部拡大平面図である。
【図3】図2のIII−III線における断面図である。
【図4】図3のIV−IV線における断面図である。
【図5】スラスタの正面図である。
【図6】図5のVI−VI線における断面図である。
【図7】Aはスラスタの左側面図、Bは右側面図である。
【図8】可動バネ受けを示し、Aは図2において左側から見た側面図、BはAのB―B線断面図、Cは右側から見た側面図である。
【図9】ガイド部を示し、Aは図2において右側から見た側面図、BはAのB―B線断面図である。
【図10】本発明のトルクレンチの他の構成を示す平面図である。
【図11】図10に係る本発明のトルクレンチの正面図である。
【図12】板バネを示し、Aは正面図、BはAのB―B線断面図である。
【図13】図10に係る本発明のトルクレンチの要部拡大断面図である。
【図14】図13のXIV−XIV線における断面図である。
【図15】図14のXV−XV線における断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 中空状軸部
2 握り部
2a 扁平状の面
3 コイルバネ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平形の中空状軸部の基端側に握り部が設けられ、この握り部内に、トルク設定用のコイルバネが、その弾発方向を握り部の長手方向に合わせて設けられているトルクレンチであって、上記の握り部が軸部と扁平状の面の向きを合わせて扁平に形成され、上記のコイルバネが握り部の幅広状の横幅方向に並べられて平行状に複数設けられていることを特徴とするトルクレンチ。
【請求項2】
扁平形の中空状軸部の基端側に握り部が設けられ、この握り部内に、トルク設定用のバネが、その弾発方向を握り部の長手方向に合わせて設けられているトルクレンチであって、上記のバネが板バネで形成されると共に、この板バネが凹湾曲状の板面を向き合わせて複数設けられ、上記の握り部が軸部と扁平状の面の向きを合わせて扁平に形成されていることを特徴とするトルクレンチ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のトルクレンチであって、軸部が握り部の部分まで形作るよう長尺状に形成され、軸部の基端側が、軸部の基端から先端に向かって所定の長さだけゴム質の保護材で被覆され、この保護材による被覆個所が握り部に形成されていることを特徴とするトルクレンチ。
【請求項1】
扁平形の中空状軸部の基端側に握り部が設けられ、この握り部内に、トルク設定用のコイルバネが、その弾発方向を握り部の長手方向に合わせて設けられているトルクレンチであって、上記の握り部が軸部と扁平状の面の向きを合わせて扁平に形成され、上記のコイルバネが握り部の幅広状の横幅方向に並べられて平行状に複数設けられていることを特徴とするトルクレンチ。
【請求項2】
扁平形の中空状軸部の基端側に握り部が設けられ、この握り部内に、トルク設定用のバネが、その弾発方向を握り部の長手方向に合わせて設けられているトルクレンチであって、上記のバネが板バネで形成されると共に、この板バネが凹湾曲状の板面を向き合わせて複数設けられ、上記の握り部が軸部と扁平状の面の向きを合わせて扁平に形成されていることを特徴とするトルクレンチ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のトルクレンチであって、軸部が握り部の部分まで形作るよう長尺状に形成され、軸部の基端側が、軸部の基端から先端に向かって所定の長さだけゴム質の保護材で被覆され、この保護材による被覆個所が握り部に形成されていることを特徴とするトルクレンチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−102863(P2006−102863A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292087(P2004−292087)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(599143885)株式会社中村製作所 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(599143885)株式会社中村製作所 (9)
【Fターム(参考)】
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