説明

トルク変動吸収ダンパ

【課題】トルクを、その変動を吸収しながら伝達可能であって、しかもベルトスリップの発生を防止可能なトルク変動吸収ダンパを提供する。
【解決手段】ハブ1と、このハブ1に同心的に近接配置されたプーリ2の径方向対向面13a,23a間に、ラジアルベアリング3が摺動可能な状態で介在され、ハブ1に設けたフランジ14とプーリ2の軸方向対向面14a,22a間に、第一のスラストベアリング4が摺動可能な状態で介在され、プーリ2から見てフランジ14と軸方向反対側に弾性体5が配置され、この弾性体5とプーリ2の軸方向対向面52a,22b間に、第二のスラストベアリング6が摺動可能な状態で介在され、弾性体5が、軸方向付勢力によって第一のスラストベアリング4及び第二のスラストベアリング6の摺動面に摩擦力を付与するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関等の回転駆動装置の出力軸から、他の回転機器へトルクを伝達するプーリに、伝達トルクの変動を吸収する機構を設けたトルク変動吸収ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃機関で発生する駆動力の一部は、クランクシャフトの先端に設けられたプーリから、これに巻き掛けられたベルトを介して例えばオルタネータやウォーターポンプ等の補器に与えられるが、クランクシャフトは内燃機関の各行程によるトルク変動を伴って回転されるので、前記プーリには、トルク変動を吸収して伝達トルクの平滑化を図るためのトルク変動吸収機構が設けられる。図3は、このようなトルク変動吸収ダンパの典型的な従来技術を示すものである。
【0003】
すなわち、この種のトルク変動吸収ダンパは、自動車用内燃機関のクランクシャフトの軸端に取り付けられて一体に回転するハブ100と、このハブ100に取り付けられたダイナミックダンパ部110及びフレキシブルカップリング部120を備える。
【0004】
ダイナミックダンパ部110は、ハブ100の外筒部101と、その外周に配置した環状質量体112の間に、第一の弾性体111を圧入した構造を有する。また、カップリング部120は、環状質量体112の外周にラジアルベアリング123を介して支持されたプーリ121と、このプーリ121からハブ100の背面側(図3における右側)を内径方向へ向けて延在された内向きフランジ部121aとハブ100の外筒部101の間に介在されたスラストベアリング122と、プーリ121の内向きフランジ部121aの内径からハブ100の外筒部101の内周側へ延びるスリーブ部121bの間に介在されたラジアルベアリング123と、ハブ100の内筒部102の外周面に嵌着されたスリーブ103と前記プーリ121のスリーブ部121bとの間に加硫接着された第二の弾性体124とからなる。
【0005】
すなわち、この種のトルク変動吸収ダンパは、クランクシャフトからハブ100へ入力されたトルクを、フレキシブルカップリング部120において、第二の弾性体124の捩り方向剪断変形作用によってトルク変動を吸収しながらプーリ121へ伝達すると共に、第一の弾性体111及び環状質量体112で構成されるばね−質量系からなるダイナミックダンパ部110が、クランクシャフトの共振周波数域で捩り方向へ共振することによって、クランクシャフトの共振を動的吸収する制振機能を発揮するものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2605662号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のトルク変動吸収ダンパは、内燃機関を起動し、あるいは停止する際に、クランクシャフトの回転数の変化に伴うトルク変動の周波数の変化が、フレキシブルカップリング部120の共振点を通過することから、このときのトルク変動の増大によって大きく振れ回るプーリ121と、これに巻き掛けられた不図示のベルトとの間に滑りを生じる問題がある。そしてこのようなベルトスリップを生じると、「ベルト鳴き」と呼ばれる異音が発生するばかりか、ベルトの耐久性を低下させ、走行に支障を来たすなどの懸念がある。
【0008】
また、フレキシブルカップリング部120における第二の弾性体124の捩り方向ばね定数を低くすることで、内燃機関の常用回転域内でのトルク変動吸収性能を向上させることは可能であるが、この場合、第二の弾性体124の耐久性が低下して破損しやすくなってしまう。したがって、第二の弾性体124の捩り方向の過大変形を防止するために、ハブ100とプーリ121の円周方向相対変位量を制限するための、ピンと孔の遊嵌構造等によるストッパ機構125を設ける必要があり、構造が複雑化してコスト高となる問題もあった。
【0009】
また、フレキシブルカップリング部120の共振域などにおいてストッパ機構125によってハブ100とプーリ121の円周方向相対変位が規制された状態では、円周方向相対変位が規制されていないフリー状態とは特性が異なるものとなってしまう。
【0010】
しかも第二の弾性体124の捩り方向ばね定数を低くすることでは、内燃機関を起動し、あるいは停止する際のトルク変動の周波数の変化が、フレキシブルカップリング部120の共振点を通過するのを避けることはできず、すなわちフレキシブルカップリング部120の共振点が低周波数側へ移動するだけであるから、ベルトスリップを有効に防止する根本的な対策とはならないものであった。
【0011】
さらに、従来のトルク変動吸収ダンパに、不図示のワンウェイクラッチを組み込むことで、トルク変動の周波数の変化がフレキシブルカップリング部120の共振点を通過する際の急激なトルク変動の増大をキャンセル可能とすることも考えられるが、この場合も構造が複雑化してコストが高くなってしまう問題がある。
【0012】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、トルクを、その変動を吸収しながら伝達可能であって、しかもベルトスリップの発生を防止可能なトルク変動吸収ダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るトルク変動吸収ダンパは、ハブと、このハブに同心的に近接配置されたプーリの径方向対向面間に、ラジアルベアリングが摺動可能な状態で介在され、前記ハブに設けたフランジと前記プーリの軸方向対向面間に、第一のスラストベアリングが摺動可能な状態で介在され、前記プーリから見て前記フランジと軸方向反対側に弾性体が配置され、この弾性体と前記プーリの軸方向対向面間に、第二のスラストベアリングが摺動可能な状態で介在され、前記弾性体が、軸方向付勢力によって前記第一のスラストベアリング及び前記第二のスラストベアリングの摺動面に摩擦力を付与することを特徴とするものである。
【0014】
上記構成において、プーリはハブにラジアルベアリングと第一のスラストベアリング及び第二のスラストベアリングを介して軸方向及び径方向に対して拘束されると共に相対回転可能な状態に支持されている。通常の入力トルクは、第一のスラストベアリング、第二のスラストベアリング及びラジアルベアリングの摩擦力によってハブとプーリ間で伝達されると共に、通常のトルク変動は、弾性体の捩り方向の変形によって吸収され、入力されるトルク変動が、弾性体の軸方向付勢力によって第一のスラストベアリング及び第二のスラストベアリングに付与された摩擦力による滑りトルクと、ラジアルベアリングの滑りトルクの和を上回った場合には、第一のスラストベアリング、第二のスラストベアリング及びラジアルベアリングに滑りを生じる。
【0015】
請求項2の発明に係るトルク変動吸収ダンパは、請求項1に記載された構成において、第一のスラストベアリング及び第二のスラストベアリングとラジアルベアリングの滑りトルクの和がプーリとベルト間の滑りトルクより小さく設定されたものである。
【0016】
請求項3の発明に係るトルク変動吸収ダンパは、請求項1又は2に記載された構成において、弾性体が、ハブに嵌着されたホルダを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るトルク変動吸収ダンパによれば、通常は第一のスラストベアリング、第二のスラストベアリング及びラジアルベアリングの摩擦力によってハブとプーリ間のトルク伝達が行われ、入力されるトルク変動が、弾性体の軸方向付勢力によって第一のスラストベアリング及び第二のスラストベアリングに付与された摩擦力(滑りトルク)と、ラジアルベアリングの滑りトルクとの和を上回ると、第一のスラストベアリング、第二のスラストベアリング及びラジアルベアリングに滑りを生じてクーロン減衰によりプーリの回転を平滑化するものであるため、ハブとプーリの捩れ方向相対変位を規制するための手段が不要であり、しかもトルク変動の増大による弾性体の破損を防止することができる。
【0018】
また、第一のスラストベアリング及び第二のスラストベアリングとラジアルベアリングの滑りトルクの和をプーリとベルト間の滑りトルクより小さく設定しておけば、大きなトルク変動の入力時には第一のスラストベアリング、第二のスラストベアリング及びラジアルベアリングに滑りを生じることによって、ベルトスリップや、これによる「ベルト鳴き」の発生及びベルトの耐久性低下を防止することができる。
【0019】
また、弾性体がハブに嵌着されたホルダを備えるものであれば、ハブに対するホルダの嵌着位置によって弾性体の付勢力、ひいては第一のスラストベアリング及び第二のスラストベアリングの摺動面の摩擦力の設定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るトルク変動吸収ダンパの好ましい実施の形態を、軸心Oを通る平面で切断して示す断面図である。
【図2】本発明に係るトルク変動吸収ダンパの好ましい実施の形態を、軸心Oを通る平面で切断して示す組み立て前の状態の断面図である。
【図3】従来の技術によるトルク変動吸収ダンパの一例を、軸心Oを通る平面で切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るトルク変動吸収ダンパの好ましい実施の形態について図1及び図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる「正面側」とは、図における左側、すなわち車両のフロント側のことであり、「背面側」とは、図における右側、すなわち図示されていない内燃機関が存在する側のことである。
【0022】
参照符号1は、自動車の内燃機関のクランクシャフト(不図示)の軸端に取り付けられるハブである。このハブ1は、金属材料の鋳造等により製作されたものであって、クランクシャフトに固定される内筒部11と、その正面側の端部から外径側へ展開する中間部12と、その外径端部から背面側へ延びる外筒部13と、さらにその正面側の端部から外径方向へ延びる外径フランジ14を有する。なお、参照符号11aは、内筒部11の内周の軸孔に形成されたキー溝であり、外径フランジ14は、請求項1に記載された「ハブに設けたフランジ」に相当するものである。
【0023】
ハブ1の外周側には、プーリ2が同心的に近接配置されている。このプーリ2は、金属材料の鋳造等により製作されたものであって、外周面にポリV溝21aが形成されたプーリ本体21と、その内周から内径方向へ延びてハブ1の外径フランジ14に背面側から軸方向に対向する被支持フランジ部22と、さらにこの被支持フランジ部22の内周端部から背面側へ向けて延びてハブ1の外筒部13の外周面と径方向に対向する被支持筒部23とからなる。ポリV溝21aが形成されたプーリ本体21の外周面には、不図示のベルトが巻き掛けられるようになっている。
【0024】
ハブ1の外筒部13の外周面13aと、これに外周側から径方向に対向するプーリ2の被支持筒部23の内周面23aとの間には、ラジアルベアリング3が摺動可能な状態で介在している。なお、外周面13a及び内周面23aは、請求項1に記載された「径方向対向面」に相当するものである。このラジアルベアリング3は摺動性及び耐摩耗性に優れたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の合成樹脂材料からなるものであって、円筒状に成形されており、すなわちプーリ2は、ラジアルベアリング3を介して、ハブ1の外筒部13に相対回転可能な状態で径方向に支持されている。
【0025】
ハブ1の外径フランジ14の背面側の端面14aと、この面14aに背面側から軸方向に対向する被支持フランジ部22の正面側の端面22aの間には、第一のスラストベアリング4が摺動可能な状態で介在している。なお、端面14a,22aは、請求項1に記載された「前記ハブに設けたフランジと前記プーリの軸方向対向面」に相当するものである。この第一のスラストベアリング4は摺動性及び耐摩耗性に優れたPTFE等の合成樹脂材料合成樹脂材料からなるものであって、平ワッシャ状に成形されている。
【0026】
プーリ2の被支持フランジ部22から見てハブ1の外径フランジ14と軸方向反対側、すなわち前記被支持フランジ部22の背面側には弾性体5が配置されている。この弾性体5は、ハブ1の外筒部13の内周面に圧入・嵌着された嵌着筒部51a及びその背面側の端部からハブ1の外径フランジ14の背面側の空間へ向けて径方向へ展開する円盤部51bからなる金属製のホルダ51と、このホルダ51における前記円盤部51bの正面側にあってプーリ2の被支持フランジ部22と軸方向に対向する平ワッシャ状のリテーナ52と、このリテーナ52とホルダ51の円盤部51bの間に一体に設けられた弾性体本体53からなる。また、弾性体本体53は、耐熱性、耐寒性及び機械的強度に優れたゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなる。
【0027】
すなわち弾性体5は、不図示の金型内にホルダ51及びリテーナ52を同心的にセットし、このホルダ51とリテーナ52の間に前記金型の型締めによって画成される環状のキャビティに、未加硫ゴム材料を充填して加熱・加圧することによって、弾性体本体53を前記ホルダ51及びリテーナ52に一体に加硫成形(加硫接着)したものである。
【0028】
弾性体5のリテーナ52の正面側の端面52aと、これに対向するプーリ2の被支持フランジ部22の背面側の端面22bの間には、第二のスラストベアリング6が摺動可能な状態で介在している。なお、端面52a,22bは、請求項1に記載された「弾性体と前記プーリの軸方向対向面」に相当するものである。この第二のスラストベアリング6は摺動性及び耐摩耗性に優れたPTFE等の合成樹脂材料からなるものであって、平ワッシャ状に成形されている。
【0029】
弾性体5の弾性体本体53は、図1に示す組立状態での軸方向長さLが、図2に示す組み立て前の状態での軸方向長さLよりも短くなっており、すなわち弾性体5におけるホルダ51の嵌着筒部51aを予圧縮されることによってその反力としての軸方向付勢力が与えられており、この軸方向付勢力によって、リテーナ52が第二のスラストベアリング6に圧接している。このため、第二のスラストベアリング6、プーリ2の被支持フランジ部22、及び第一のスラストベアリング4がハブ1の外径フランジ14へ向けて押し付けられ、これによって、第一のスラストベアリング4及び第二のスラストベアリング6の摺動面に所定の摩擦力が付与されている。
【0030】
また、弾性体5の付勢力によって付与された第一のスラストベアリング4及び第二のスラストベアリング6の滑りトルクと、ラジアルベアリング3の滑りトルクの和は、常用回転時からハブ1からプーリ2へ伝達すべき通常のトルクよりも大きく、ポリV溝21aが形成されたプーリ本体21の外周面と、これに巻き掛けられる不図示のベルトとの滑りトルクよりも小さく設定されている。
【0031】
なお、ラジアルベアリング3と第一のスラストベアリング4は一体的に互いに連続したものであっても良い。
【0032】
以上の構成を備えるトルク変動吸収ダンパは、図2に示す状態から、ハブ1の外筒部13の外周に、第一のスラストベアリング4、ラジアルベアリング3、プーリ2、第二のスラストベアリング6を挿入して、弾性体5におけるホルダ51の嵌着筒部51aをハブ1の外筒部13の内周面に圧入・嵌着することによって、図1に示す状態に組み立てられる。これによって、プーリ2は、ハブ1との相対回転が許容された状態で、このハブ1の外筒部13の外周にラジアルベアリング3を介して径方向に拘束されると共に、ハブ1の外径フランジ14の背面側に、弾性体5との間で第一のスラストベアリング4及び第二のスラストベアリング6を介して軸方向にクランプされた状態に拘束される。
【0033】
また、上述の組み立てにおいて、ハブ1の外筒部13の内周面に対するホルダ51の嵌着筒部51aの軸方向圧入量によって、弾性体本体53の圧縮量、言い換えれば弾性体本体53の軸方向付勢力が決まるので、第一のスラストベアリング4及び第二のスラストベアリング6の摺動面の摩擦力による滑りトルクの設定を容易に行うことができる。
【0034】
そしてこのトルク変動吸収ダンパは、ハブ1の内筒部11が不図示のクランクシャフトの軸端に装着されることによって、このクランクシャフトと共に回転されるものである。クランクシャフトの常用回転時のトルクは、ハブ1から弾性体5、第一のスラストベアリング4、第二のスラストベアリング6及びラジアルベアリング3を介して、この第一のスラストベアリング4、第二のスラストベアリング6及びラジアルベアリング3の摩擦力によってプーリ2の被支持フランジ部22へ伝達され、更に、プーリ2のプーリ本体21に巻き掛けられたベルトを介して、冷却水循環ポンプや、オルタネータや、冷却ファン等の補機の回転軸に伝達される。
【0035】
クランクシャフトは、内燃機関の駆動に起因するトルク変動を伴って回転されるので、これに取り付けられたハブ1には捩り方向の振動が入力されて振れ回りを生じることになる。そしてこのような常用回転域での通常のトルク変動は、弾性体5の弾性体本体53が繰り返し捩り方向(円周方向)の剪断変形を受けることによって、トルク変動による運動エネルギが、弾性体本体53の変形に伴い発生する内部摩擦により熱エネルギとして消費されるので、プーリ2の回転が平滑化され、すなわちプーリ2の振れ回りが抑制される。
【0036】
ここで、入力される伝達トルクの変動が第一のスラストベアリング4及び第二のスラストベアリング6とラジアルベアリング3の滑りトルクの和を超えて増大した場合は、その時点で第一のスラストベアリング4、第二のスラストベアリング6及びラジアルベアリング3に滑りを生じるので、トルク変動による運動エネルギが熱エネルギとして消費されるクーロン減衰を生じて伝達トルクの変動が吸収され、このためプーリ2の回転が平滑化され、すなわちプーリ2の振れ回りが抑制される。そして、第二のスラストベアリング6の滑りによって、弾性体5の弾性体本体53に加わる捩り方向(円周方向)の剪断変形も抑制されるため、弾性体本体53の過大変形による破損や耐久性の低下が防止され、このためハブ1とプーリ2の捩れ方向相対変位を規制するための手段も不要となって、構造を簡素化することができる。
【0037】
また、第一のスラストベアリング4及び第二のスラストベアリング6とラジアルベアリング3の滑りトルクの和が、プーリ2とベルトとの間の滑りトルクより小さく設定されているので、過大なトルク変動の入力時には第一のスラストベアリング4、第二のスラストベアリング6及びラジアルベアリング3に滑りを生じることによって、プーリ2の振れ回りが抑制されるので、回転数0から常用回転域までのすべての領域で、ベルトスリップやこれによる「ベルト鳴き」の発生及びベルトの耐久性低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ハブ
13 外筒部
14 外径フランジ(フランジ)
2 プーリ
21 プーリ本体
22 被支持フランジ部
23 被支持筒部
3 ラジアルベアリング
4 第一のスラストベアリング
5 弾性体
51 ホルダ
52 リテーナ
53 弾性体本体
6 第二のスラストベアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブと、このハブに同心的に近接配置されたプーリの径方向対向面間に、ラジアルベアリングが摺動可能な状態で介在され、前記ハブに設けたフランジと前記プーリの軸方向対向面間に、第一のスラストベアリングが摺動可能な状態で介在され、前記プーリから見て前記フランジと軸方向反対側に弾性体が配置され、この弾性体と前記プーリの軸方向対向面間に、第二のスラストベアリングが摺動可能な状態で介在され、前記弾性体が、軸方向付勢力によって前記第一のスラストベアリング及び前記第二のスラストベアリングの摺動面に摩擦力を付与することを特徴とするトルク変動吸収ダンパ。
【請求項2】
第一のスラストベアリング及び第二のスラストベアリングとラジアルベアリングの滑りトルクの和がプーリとベルト間の滑りトルクより小さく設定されたことを特徴とする請求項1に記載のトルク変動吸収ダンパ。
【請求項3】
弾性体が、ハブに嵌着されたホルダを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のトルク変動吸収ダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−2615(P2013−2615A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137319(P2011−137319)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】