説明

トレイの支持構造、プラズマCVD装置および太陽電池製造用真空処理装置

【課題】ワーク搭載用のトレイに載置された基板に処理を行う際、昇降装置により支承されたトレイの平面度を向上する。
【解決手段】基板カートKの複数のトレイTは、基板搬送装置70の搬送用ローラRにより、一対の側縁の下面を支承されている。基板カートKの下方には、複数の昇降装置50が配列されており、各昇降装置50の先端側の保持部52は、受け板53を介して、トレイTの下面を支承している。各昇降装置50の保持部52によるトレイTの下面の支承面と、複数の搬送用ローラRによるトレイTの下面の支承面とを、トレイTの下面を面一にする高さ位置に設定した状態で、トレイTに搭載された基板Wに薄膜が成膜される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、真空処理装置内において、処理がなされる基板が搭載されるトレイの支持構造、プラズマCVD装置および太陽電池製造用真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CVD装置、スパッタ装置または蒸着装置により基板(ワーク)に薄膜を形成する際、ワークが搭載されるトレイ上に基板を搭載し、真空、高温の真空処理室内に搬送して成膜する。
例えば、プラズマCVD装置では、ワークが搭載されたトレイは、搬送装置によって、外部ステーションからプラズマCVD装置の予備加熱室内に搬入される。そして、予備加熱室において、予備加熱をしたうえで、別の搬送装置により予備加熱室から真空処理室に搬送され、真空処理室において成膜等の処理が行われる。
この場合、イオンビームスパッタリング成膜等において、水平搬送装置によりロードロック室から成膜室に搬送されたトレイを上昇装置により上昇させ、その状態で、ワークに成膜する成膜装置が知られている(例えば、特許文献1の図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−316813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された如く、上昇装置によりワークを突き上げた状態で成膜すると、トレイの自重または成膜時の膜応力により、トレイが変形し、平面度が粗くなる。このため、トレイ上のワークに形成される薄膜の膜厚のばらつきが大きくなり、ワークの特性が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のトレイの支持構造は、ワーク搭載用のトレイを、相対向する一対の側縁の下面において支承する複数の搬送用ローラと、ローラとは異なる位置で、トレイの下面を支承する保持部を有する少なくとも1つの昇降装置と、昇降装置の保持部によるトレイの下面の支承面と、複数の搬送用ローラによるトレイの下面の支承面とを、トレイの下面を面一にする高さ位置に設定した状態で、トレイに搭載されたワークに処理を施す制御手段とを備えることを特徴とする。
本発明のプラズマCVD装置は、上記支持構造を備えていることを特徴とする。
本発明の太陽電池製造用真空処理装置は、上記支持構造を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、トレイの下面を昇降装置と搬送用ローラにより支持し、支持されるトレイの下面の高さ位置を同一としたので、トレイの平面度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のトレイの支持構造を有する一実施形態としてのプラズマCVD装置の断面図。
【図2】図1に図示された本発明のトレイの支持構造の斜視図。
【図3】図2に図示された基板カートの拡大平面図。
【図4】成膜状態における図2のIV−IV線に沿う断面図。
【図5】成膜状態における図2のV−V線に沿う断面図。
【図6】試験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(全体構成)
以下、本発明のトレイの支持構造、図面を参照して説明する。
図1は、本発明のトレイの支持構造を有する、一実施形態としてのプラズマCVD装置の構成を模式的に示す全体構成図である。
この実施形態におけるプラズマCVD装置100は、ロード/アンロード室を兼ねる真空予備加熱室10と真空処理室20を有する。外部ステーション30は、プラズマCVD装置100とは別体のものとして配置されている。真空予備加熱室10内には、基板搬送装置11、13が上下2段に配置されるとともに、基板搬送装置11、13の上方にランプヒータ15が設置されている。ランプヒータ15は、図示しないヒータ駆動部により駆動される。
【0009】
真空予備加熱室10には、排気系10aとガス導入系10bが配管接続され、大気開放と真空密閉とを切り換え可能に構成されており、シリコン基板等の基板(ワーク)Wの加熱処理を行う。基板搬送装置11、13は、それぞれ、フレームに複数のローラRが回転可能に軸支された構造を有し、ローラRを回転させて基板Wが搭載された基板カートKを搬送する。基板搬送装置11、13は、それぞれ、時計方向回りおよび反時計方向回りに揺動可能に構成されている。
【0010】
真空処理室20内には、基板搬送装置70とRF電極22と、シーズヒータ23が設置されている。RF電極22は、図示しないプラズマ放電制御部に接続されている。真空処理室20には、排気系20aとガス導入系20bが配管接続されており、所定のガス圧力下での処理、例えば、成膜、エッチング等の真空処理を行う。基板搬送装置70は、フレームに複数のローラRが回転可能に軸支された搬送機構が、幅方向における左右に一対、配置された構造を有し、ローラRを回転させて基板Wが搭載された基板カートKを搬送する。また、基板搬送装置70は、時計方向回りおよび反時計方向回りに揺動可能に構成されている。シーズヒータ23は、一対の搬送機構の幅方向における内側に配置されている。
【0011】
真空処理室20の外部には、複数の昇降装置50が配設されている。各昇降装置50は、真空処理室20の壁部に設けられた開口から、真空処理室内に伸張されたロッド51を備えている。図示はしないが、各ロッド51と真空処理室20の壁部の開口には、内部を密封するシール材が設けられている。詳細は後述するが、各ロッド51の先端は基板カートKを構成する複数のトレイTの下面に当接し、各ロッド51を上下に移動して基板カートKを上昇または下降させる。各昇降装置50は、図示しない昇降装置駆動部により、上昇および下降の動作を制御される。
【0012】
真空予備加熱室10には、外部ステーション30側に面してゲートG1が設けられ、真空予備加熱室10と真空処理室20の境界には、ゲートG2が設けられている。ゲートG1は、基板Wを搬送トレイと共にプラズマCVD装置100の外部に搬出入する際に開放され、搬出入以外のときには閉じて真空予備加熱室10を密閉している。ゲートG2は、基板Wを搬送トレイと共に真空予備加熱室10と真空処理室20との間で般出入する際に開放され、それ以外の時は閉じている。
【0013】
外部ステーション30内には、基板搬送装置18が備えられており、処理前の基板Wを保持してプラズマCVD装置100へ供給し、また、処理済の基板WをプラズマCVD装置100から受け取って図示しないストッカに収納する。基板搬送装置18は、実線で記載された上部位置と、点線で記載された下部位置に移動可能に構成されている。
【0014】
プラズマCVD装置100は、マイクロコンピュータを有する制御部を有しており、マイクロコンピュータに組み込まれたプログラムにより、ヒータ駆動部、プラズマ放電部、基板搬送装置駆動部および昇降装置駆動部の駆動を制御する。また、真空予備加熱室10に接続された排気系10a、ガス導入系10b、真空処理室20に接続された排気系20a、ガス導入系20bの各導入系に設けられた流量調整弁の開閉を制御して、チャンバへのガスの流出入量を調整する。さらに、ランプヒータ15およびシーズヒータ23の温度を制御して基板Wの成膜温度を監視する。
【0015】
(基板搬送)
基板Wの搬送について説明する。
先ず、基板搬送装置18が、基板カートKが載置された状態で、外部ステーション30の上段側に配置される。
この状態において、真空吸着搬送機等の図示しない搬送機により、処理前の基板Wが基板カートK上に搭載される。
【0016】
基板カートKは、カーボンにより形成されており、基板Wに対し遥かに大きい面積を有する。ゲートG1を開放し、基板搬送装置18のローラR、および真空予備加熱室10内の基板搬送装置11のローラRを回転させることにより、基板カートKは基板Wと共に矢印X1方向に移動して真空予備加熱室10内の基板搬送装置11上に搬送される。真空予備加熱室10内において基板Wの予備加熱がなされ、予備加熱が完了すると、ゲートG2を開放し、基板搬送装置11および真空処理室20内の基板搬送装置70をX2方向と平行に傾斜させる。基板搬送装置11のローラRおよび真空処理室20内の基板搬送装置70のローラRを回転させることにより、基板カートKは基板W共に矢印X2方向に移動して真空処理室20内の基板搬送装置70上に搬送される。
【0017】
基板搬送装置70を水平にし、この状態で基板Wに処理を行う。このとき、後述する如く、各昇降装置50のロッド51が伸張され、ロッド51により、基板カートKを構成する複数のトレイTの下面を支持する。ロッド51が支持するトレイTの下面の高さ位置は、基板搬送装置70の各ローラRの上面が支持する各トレイの下面の高さ位置と同一である。この状態で、基板カートK上に搭載された基板WにプラズマCVDによる薄膜成膜等の処理を行う。所定の処理が完了したら、ゲートG2を開放し、基板搬送装置70および真空予備加熱室10内の基板搬送装置13をX3方向と平行に傾斜させる。基板搬送装置70のローラRおよび真空予備加熱室10内の基板搬送装置13のローラRを回転させることにより、基板カートKを処理済の基板W共に矢印X3方向に移動して真空予備加熱室10内の基板搬送装置13上に搬送する。
【0018】
外部ステーション30内では、基板搬送装置18は、基板カートKを処理前の基板Wと共に基板搬送装置11に搬送した後、点線で示す如く、下段側に移動される。
基板搬送装置13を水平にし、ゲートG1を開放する。基板搬送装置13のローラRおよび基板搬送装置18のローラRを回転させることにより、基板カートKは処理済の基板W共に矢印X4方向に移動して基板搬送装置18上に搬送される。
【0019】
そして、基板搬送装置18を上部側に移動して、基板カートK上の処理済の基板Wを真空吸着搬送機等の図示しない搬送機により、図示しないストッカに収納する。この後、処理前の基板Wを基板搬送装置18上の基板カートK上に搭載し、以下、同様な搬送を繰り返す。
【0020】
上記において、上述した基板カートKおよび基板Wの搬送は、処理済の基板Wを外部ステーション30から搬出後に、処理前の基板Wを外部ステーション30に搬入する、というシリアルな制御ではない。真空処理室20内において、基板Wに処理を行っている間に、処理済の基板Wを搬出し、次の基板Wを搬入して、真空予備加熱室10内に搬入しておく、というパラレルな制御が行われる。
【0021】
(基板搬送装置)
次に、基板カートKを支持して、基板Wに薄膜を形成する方法について詳述する。
図2は、真空処理室20内に装着された基板搬送装置と昇降装置の一実施の形態を示す斜視図である。但し、図2においては、基板搬送装置は一段のみを示し、また、基板搬送装置を傾斜する揺動機構は省略されている。
基板搬送装置70は、真空処理室20内における相対向する壁面に沿って、それぞれ、中心面に対して線対称に装着された一対の搬送機構70Aとして装着されている。
各搬送機構70Aは、同一の構造を有しているので、一方についてのみ説明する。ローラRは、図2では4個が図示されているが、これは一例であって、適宜の数にすることができる。各ローラRはその回転軸77が、図示を省略されたフレームに回転可能に支持されている。フレームの外側にはモータ62が配置されており、モータ62の回転軸63には、傘歯車64が取り付けられている。傘歯車64は、軸心において駆動軸71に固定された傘歯車72に噛合している。傘歯車64と傘歯車72との軸角は90度である。
【0022】
駆動軸71には、4個の傘歯車73が設けられている。各傘歯車73は、ローラRの回転軸77に対応する領域に配置されており、各傘歯車73に噛合う傘歯車74が各ローラRの回転軸77に設けられている。傘歯車73と傘歯車74の軸角は90度である。
【0023】
各搬送機構70Aは、このように構成されており、図2に示すように、モータ62の回転軸63が→印に示すように時計方向に回転すると、傘歯車64−傘歯車72−駆動軸71−傘歯車73−傘歯車74を介してローラRの回転軸77を反時計方向に回転し、ローラR上に載置された基板カートKを左側方向に搬送する。また、モータ62の回転軸63を反時計方向に回転すると、同じ伝達経路を経て、ローラRの回転軸77を時計方向に回転し、ローラR上に搭載された基板カートKを右側方向に搬送する。
【0024】
(昇降装置)
昇降装置50は、一対の搬送機構70Aの間に、基板搬送装置70の搬送方向に3列、搬送方向と直交する方向に3行、すなわち、3個×3個のマトリクス状に配列されている。
各昇降装置50は、油圧、モータまたは空圧により伸縮するシリンダである。本実施例では、シリンダのストロークはシリンダに備えられたストロークセンサ(図示せず)で検出しているが、シリンダをモータによって伸縮する場合には、モータの回転信号からストロークを検出することが可能であり、この場合、ストロークセンサは不要である。昇降装置50のロッド51の先端には、基板カートKを支持するための、ロッド51よりも径大の保持部52が設けられている。本実施形態の場合、昇降装置50は、基板搬送装置70の搬送方向に配列された3個毎に、それぞれ、受け板53により連結されている。すなわち、受け板53は、基板搬送装置70の搬送方向と直交する方向に、搬送方向と平行に3個配列され、各受け板53は、3個の昇降装置50の保持部52上に配置されており、各保持部52は、受け板53に固定されている。なお、ここで、受け板53は、図示の都合上、点線で示している。なお、本実施形態では各保持部52は受け板53に固定されているが、受け板53に固定されていなくても良い。
【0025】
(基板カート)
図3は、基板カートKを拡大した平面図である。
基板カートKは、複数のトレイTと、これらのトレイTを連結する連結板31を備えている。また、基板カートKは、締結部材32およびセラミックからなるピン33を備えている。トレイTは、図3では、4個図示されているが、これよりも多くてもよいし少なくてもよい。トレイTは1個でもよく、その場合には、連結板31は不要となる。
各トレイTは、カーボンにより形成されており、長尺形状を有し、隣接するトレイTと長手側の側面を密着させた状態で、長手側と直交する側の相対向する一対の側縁において、連結板31により固定され一体化されている。
【0026】
連結板31は、例えば、ステンレス等の強度の大きい薄い板状を有し、各トレイTの隣接するもの同士を、長手方向の側面を密着した状態で、4個のトレイTを連結している。連結板31の長さは、4個のトレイTの幅(長手方向に直交する方向の長さ)の合計の寸法とほぼ同一である。
4個のトレイTには、連結板31との共締め用の貫通穴が形成されており、締結部材32により連結板31にトレイTを共締めすることにより一体化されている。これにより、基板カートKは、連結板31がトレイTの下面から突き出した構造(図2参照)となっている。
【0027】
各トレイTには、多数の基板Wが搭載される基板(ワーク)搭載部41が形成されている。
ピン33は、基板Wの位置決め用としての機能を有する。基板搭載部41に搭載された基板Wが、例えば、点線で示すように回転しても、ピン33により回転が規制され、位置決めがなされる。
【0028】
図4は、成膜状態における図2のIV−IV線に沿う断面図であり、図5は、成膜状態における図2のV−V線に沿う断面図である。
図4および図5に示されるように、成膜状態では、基板搬送装置70の各ローラRの上面は、基板カートKの連結板31の下面に接触している。すなわち、各ローラRの上面が、基板カートKを構成する各トレイTの相対向する一対の側縁の下面を支承する支障面となっている。
一方、受け板53の上面は、基板カートKを構成する各トレイTの下面に接触しており、各昇降装置50のロッド51の先端に設けられた保持部52は、受け板53の下面に接触して基板カートKを支持している。すなわち、各昇降装置50の保持部52の上面が、基板カートKを構成する各トレイTの下面を支障する支障面となっている。
【0029】
各昇降装置50は、制御手段により、ロッド51の先端に設けられた保持部52に支持される各トレイTの下面の高さ位置が、ローラRにより支持される各トレイTの下面の高さ位置と同一の高さ位置となるように制御される。この場合、各昇降装置50の上昇は、図示はしないが、各昇降装置50が備えるストロークセンサにより、上昇位置を検出しながら制御される。これにより、基板カートKを構成する4個のトレイTの下面は、8個のローラRおよび9個の昇降装置50の保持部52によって面一となる位置で支承される。
そして、このように、昇降装置50の保持部52によるトレイTの下面の支承面と、複数の搬送用ローラRによるトレイTの下面の支承面とが、トレイTの下面が面一となる高さ位置に設定された状態で、制御手段の制御により、トレイTに搭載された基板Wに薄膜を成膜する処理が施される。
したがって、基板カートKを構成するトレイTを昇降装置50の保持部52のみで支持する場合に比し、複数のローラRにより各トレイTの下面の側縁を支承される分だけトレイTの平面度が高くなる。これにより、基板カートKに載置された基板Wに薄膜を成膜した場合に、薄膜の膜厚のばらつきを小さくすることができ、基板Wの特性を良好にすることができる。
【0030】
(効果の確認)
1.5m×2.0mの基板カートKの相対向する一対の側縁の下面を、6個のローラRを有する搬送機構70Aを用い、合計12個のローラRにより支承した。同時に、基板カートKの搬送方向に3列、基板カートKの搬送方向と直交する方向に3行、合計9個の昇降装置50をマトリクス状に配列し、基板カートKを構成する5個のカーボン製のトレイTの中央部の下面を、各昇降装置50の保持部52により受け板53を介して支承した。
この状態(実施の形態1)で、基板カートKの平面度を測定した。また、この状態で、基板カートK上に載置された基板WにプラズマCVDによりシリコン絶縁膜(薄膜)を成膜し、成膜後に膜厚のばらつきを測定した。
比較例として、マトリクス状に配列された合計9個の昇降装置50の保持部52のみにより、基板カートKを構成する5個のトレイTを支承し、この状態における基板カートKの平面度と、基板Wに成膜後の薄膜の膜厚のばらつきを測定した。
試験結果を、図6に示す。
【0031】
図6に示される如く、本実施の形態1の場合、基板カートKの平面度(最大高低差)は1.81mmであり、基板Wに成膜された薄膜の膜厚のばらつきは8.0%であった。
これに対し、比較例では、基板カートKの平面度(最大高低差)は3.00mmであり、基板W成膜された薄膜の膜厚のばらつきは10.7%であった。
これにより、本実施の形態1における基板Wに成膜された薄膜の膜厚のばらつきは、ローラRにより支持しない場合よりも小さくすることを確認することができた。
【0032】
なお、本実施の形態1に対する上記試験は、トレイTの下面がローラRの上面より上方に位置するように、昇降装置50によりトレイTを持ち上げる方法として調整された比較例のプラズマCVD装置を用いて行った。この場合のプラズマCVD装置の電極間距離は37mmである。
しかし、本実施の形態1では、ローラRの上面がトレイTの下面に接触する高さ位置に、昇降装置50の保持部52を下げた状態で行った。このため、本実施の形態1の場合、電極間距離は45mmであった。
比較例の場合には、電極間距離がほぼ最適であることが確認されているが、本実施の形態1の場合、電極間距離が最適か否か未確認である。図6に示された試験結果は、このようなに状態のものであるが、それでも、本実施の形態1の場合には、電極間距離が最適であることが確認されている比較例の場合よりも、良好な結果が得られた。
【0033】
以上の通り、本実施形態では、ワーク搭載用のトレイの下面を昇降装置と搬送用ローラにより支承し、支承されるトレイの下面の高さ位置を同一とすることにより、トレイの平面度を向上し、以って、トレイに載置されるワークの特性を良好にすることができる、という効果を奏する。
【0034】
なお、上記実施の形態1では、基板カートKを支承するローラRの数を12個(片側6個)、昇降装置50の数を9個の場合で説明した。しかし、ローラRおよび昇降装置50の数は、基板カートKのサイズまたは厚さにより適切な数とすればよく、特に、昇降装置50は、1個とすることもできる。
【0035】
上記実施の形態では基板カートKを構成する複数個のトレイTの下面を支承する場合で説明した。しかし、本発明は、1個のトレイTに対しても適用することが可能である。
【0036】
上記実施の形態では、昇降装置50の保持部52とトレイTとの間に受け板53を介装して、基板カートKを支承する場合で説明した。しかし、受け板53を用いず、直接、昇降装置50の保持部52をトレイTの下面に当接して支承するようにしてもよい。
【0037】
上記実施の形態では、プラズマCVD装置の場合で説明した。特に、プラズマCVD装置の中でも太陽電池基板にプラズマCVDで反射防止膜を成膜する太陽電池製造用真空処理装置に適用することは非常に有用である。最近では、多数の太陽電池基板を一般住居や集合住宅の屋根や外壁等に配置して使用されることも多く、変換効率等の物理的特性と並び、外観的な特性、より具体的には太陽電池基板の色合いの均一性が要求されている。そして、太陽電池基板の色合いは表面に成膜される反射防止膜の膜厚によって変化するため、上記実施例のプラズマCVD装置を太陽電池製造用真空処理装置に適用することによって、反射防止膜の膜厚のばらつきが小さい、つまり色合いが均一な太陽電池基板を製造することが可能となる。
なお、上記実施の形態では、プラズマCVD装置の場合で説明したが、本発明は、スパッタ装置または他のCVD装置に対しても適用することが可能である。また、薄膜を成膜する場合に限らず、エッチング等、他の真空処理を行う場合に適用することができる。
【0038】
その他、本発明のトレイの支持構造は、発明の趣旨の範囲において、種々、変形することが可能であり、要は、この発明のトレイの支持構造は、ワーク搭載用のトレイを、相対向する一対の側縁の下面において支承する複数の搬送用ローラと、ローラとは異なる位置で、トレイの下面を支承する保持部を有する少なくとも1つの昇降装置と、昇降装置の保持部によるトレイの下面の支承面と、複数の搬送用ローラによるトレイの下面の支承面とを、トレイの下面を面一にする高さ位置に設定した状態で、トレイに搭載されたワークに処理を施す制御手段と、を備えるものであればよい。
【符号の説明】
【0039】
10 真空予備加熱室
11、13、18、70 基板搬送装置
20 真空処理室
50 昇降装置
52 保持部
53 受け板
100 プラズマCVD装置
K 基板カート
R ローラ
T トレイ
W 基板(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク搭載用のトレイを、相対向する一対の側縁の下面において支承する複数の搬送用ローラと、
前記ローラとは異なる位置で、前記トレイの下面を支承する保持部を有する少なくとも1つの昇降装置と、
前記昇降装置の前記保持部による前記トレイの下面の支承面と、前記複数の搬送用ローラによる前記トレイの下面の支承面とを、前記トレイの下面を面一にする高さ位置に設定した状態で、前記トレイに搭載されたワークに処理を施す制御手段とを備えることを特徴とするトレイの支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載のトレイの支持構造において、前記昇降装置を複数個備え、前記各昇降装置の前記保持部による前記トレイの下面の支承面と、前記複数の搬送用ローラによる前記トレイの下面の支承面とを、前記トレイの下面を面一にする高さ位置に設定することを特徴とするトレイの支持構造。
【請求項3】
請求項2に記載のトレイの支持構造において、前記昇降装置が、前記搬送用ローラによる前記トレイの搬送方向および前記搬送方向と直交する方向にそれぞれ複数個配列されていることを特徴とするトレイの支持構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトレイの支持構造において、前記トレイは、複数個が連結されて1つの基板カートを構成することを特徴とするトレイの支持構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトレイの支持構造において、前記トレイは、カーボンにより形成されていることを特徴とするトレイの支持構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のトレイの支持構造において、さらに、前記昇降装置の昇降部の先端面と前記トレイとの間に介装された前記トレイの下面を支持する受け板を備えることを特徴とするトレイの支持構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のトレイの支持構造において、前記受け板は、複数の前記昇降装置に跨って延出されていることを特徴とするトレイの支持構造。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトレイの支持構造を備えていることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトレイの支持構造を備えていることを特徴とする太陽電池製造用真空処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219280(P2012−219280A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82811(P2011−82811)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】