説明

トレイタイプのカード用コネクタ

【課題】実装面積を縮小できるトレイタイプのカード用コネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、トレイ2、ハウジング3、カバー板4、及び複数のコンタクト51・52を備える。トレイ2は、カード1が載置される第1凹部21を有する。ハウジング3は、トレイ2が進退可能な第2凹部32を有する。カバー板4は、第2凹部32を覆っている。第1凹部21は、第1支持アーム22、第2支持アーム23、及び逃げ部24を有する。第2凹部32は、第1案内壁31aと第2案内壁31bを有する。第1案内壁31aは、第2凹部32の一方の側壁31に形成され、第1支持アーム22の外側壁221を案内できる。第2案内壁31bは、第2凹部32の他方の側壁31に形成され、逃げ部24に露出されたカード1の他方の側縁1bを案内できる。コネクタ10は、実装面積を幅方向に縮小できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイタイプのカード用コネクタに関する。特に、SIM(Subscriber Identity Module:加入者識別モジュール)カードなどのメモリカードと電気的に接続するトレイタイプのコネクタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カード型の記憶装置であるメモリカードは、記憶媒体としてフラッシュメモリを採用している。メモリカードは非常に小型であり、データの読み書きにほとんど電力を消費しないため、例えば、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistance)に代表される携帯型情報機器用の記録メディアとして普及している。
【0003】
近年においては、携帯電話機には、情報管理用のメモリカードと記録用のメモリカードとが搭載されている。前者の情報管理用のメモリカードは、例えばSIMカードであり、後者の記録用のメモリカードは、例えばSD(Secure Digital)カードである。
【0004】
SIMカードには、携帯電話会社と契約した契約者情報が記録されている。そして、SIMカードを携帯電話機に差し込むと、利用者を識別できる。つまり、SIMカードを差し替えることにより、同じ契約者扱いで機種の異なる携帯電話機を利用できる。
【0005】
一般に、SIMカードの一方の面上には、複数の接続端子が露出している。そして、SIMカード用コネクタに備わるベローズ形のコンタクトがこれらの接続端子を付勢することにより、SIMカードとカード用コネクタとが電気的に接続している。
【0006】
前述したカード用コネクタとしては、バッテリを内部に収納するための収納凹部を背面側に有する携帯電話機の内部に収納され、SIMカードを載置するトレイの一部が前記収納凹部に突出して、トレイと共にSIMカードをスライド自在に本体に着脱する、携帯電話機に好適なトレイタイプのカード用コネクタが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1によるトレイタイプのカード用コネクタは、トレイを低背化した場合であっても、トレイを円滑に操作でき、又、トレイが本体から安易に脱落することを抑止でき、更に、トレイの表裏の向きを逆にして本体に挿入することを防止できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−170707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図8は、特許文献1によるトレイタイプのカード用コネクタの構成を示す斜視分解組立図である。本願の図8は、特許文献1の図7に相当している。図8を参照すると、特許文献1によるトレイタイプのカード用コネクタ(以下、コネクタと略称する)100は、平板状のハウジング7、カバー板8、及びトレイ9を備えている。
【0010】
図8を参照すると、ハウジング7は、複数の片持ち状のコンタクト7cを底部に配置している。カバー板8は、ハウジング7に設けた凹部71を覆っている。ハウジング7とカバー板8は、一体に組み立てられて、コネクタ100の本体を構成している。そして、この本体の一端部側に設けた開口から、トレイ9を本体の内部に挿入できる。
【0011】
図8を参照すると、トレイ9は、カード1を載置可能な凹部91を有している。カード1を凹部91に載置して、ハウジング7の凹部71に挿入すると、カード1の一方の面に露出した接続端子1tをコンタクト7cに接続(接触)できる。
【0012】
図8を参照すると、トレイ9は、接続端子1tとコンタクト7cが接続できるように、大きく開口した切り欠き部90を凹部91の底部に形成している。又、トレイ9は、一方の端部(後端部)から他方の端部(前端部)に向けて、略平行に延びる一対の支持アーム9a・9bを有している。そして、一対の支持アーム9a・9bに形成された内壁にカード1の両側縁1a・1bが案内されて、カード1の姿勢が維持される。
【0013】
又、図8を参照すると、トレイ9は、一対の支持アーム9a・9bと略直交するように形成された、後壁9cと一対の前壁9d・9dを有している。トレイ9をハウジング7の凹部71に挿入すると、カード1の後端縁1cが後壁9cに当接して、トレイ9に対するカード1の移動が阻止される。一方、トレイ9をハウジング7の凹部71から引き抜くと、カード1の前端縁1dが一対の前壁9d・9dに当接して、トレイ9に対するカード1の移動が阻止される。
【0014】
図8を参照すると、トレイ9の後端部は、一対の支持アーム9a・9bの上面より僅かに高い一対の段差92・92を形成している。トレイ9をハウジング7の凹部71に挿入すると、これらの段差92・92がカバー板8の端縁に当接して、トレイ9の挿入深さが規定されると共に、カード1及びトレイ9の一部(後端部)を本体から突出できる。
【0015】
図8を参照すると、トレイ9は、矩形状に切り欠かれた切り欠き部9eを後端部の一方の隅部に有している。トレイ9をコネクタ100から引き出した状態において、切り欠き部9eを利用して、凹部91に載置されたカード1を指などで摘むことができ、カード1をトレイ9から容易に取り出すことができる。
【0016】
又、図8を参照すると、トレイ9は、斜めに切り欠かれた斜辺壁9fを後端部の他方の隅部に有している。斜辺壁9fは、カード1の隅部に面取りされるように斜めに切り欠かれた斜辺部1fに対応しており、カード1を凹部91に載置するときに、誤挿入を防止できる。
【0017】
更に、図8を参照すると、トレイ9は、斜辺壁9fに隣接して、凹部91とは区画された直角三角形状の引出用凹部9gを設けている。ペンなどの棒状部材の端部を引出用凹部9gに係合して、トレイ9をコネクタ100から引き出すことができる。
【0018】
図8に示された、従来のコネクタ100は、その高さ方向に実装高さを低背化できる。しかし、従来のコネクタ100は、トレイ9が一対の支持アーム9a・9bでカード1の両側縁1a・1bを保持しているので、コネクタ100の実装面積を縮小することが困難であった。そして、これに起因して、例えば、携帯電話機の小型化を困難としていた。実装面積を縮小することが可能なトレイタイプのカード用コネクタが求められている。
【0019】
又、従来のコネクタ100は、トレイ9の凹部91にカード1を載置しているだけだったので、カード1と共にトレイ9をコネクタ100の本体から取り出すと、カード1が脱落し易いという問題があった。トレイからカードが脱落し難いトレイタイプのカード用コネクタが求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0020】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、実装面積を縮小でき、トレイからカードが脱落し難いトレイタイプのカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、カードが載置されるトレイの前半部は、片側の支持アームのみで保持すると共に、トレイの後半部には、カードの脱落を防止すために、一対の鉤状の爪部を設けることにより、上記の課題が解決できることを見出し、これに基づいて、以下のような新たなトレイタイプのカード用コネクタを発明するに至った。
【0022】
(1) カードが載置される略方形の第1凹部を有する平板状のトレイと、このトレイが進退可能な第2凹部を有する平板状のハウジングと、このハウジングの第2凹部を覆うカバー板と、前記ハウジングの第2凹部に配列され、前記カードの一方の面に設けた接続端子と電気的に接続する複数の片持ち状のコンタクトと、を備え、前記トレイの第1凹部は、当該トレイが前記ハウジングの第2凹部に進出したときに、前記カードの後端縁が当接して前記カードの移動を阻止する後縁と、前記トレイが前記ハウジングの第2凹部から後退したときに、前記カードの前端縁が部分的に当接して前記カードの移動を阻止する前縁と、前記後縁から前記前縁に延びて、前記カードの一方の側縁を案内する第1内壁を設ける第1支持アームと、前記後縁から前記前縁に向けて延び、前記カードの他方の側縁を部分的に案内する第2内壁を設ける第2支持アームと、複数の前記コンタクトに当接しないように、前記前縁及び前記第2支持アームの大部分を含んで矩形状に切り欠かれた逃げ部と、を有し、前記ハウジングの第2凹部は、一方の側壁に形成され、前記第1支持アームの外側壁を案内する第1案内壁と、他方の側壁に形成され、前記逃げ部に露出された前記カードの他方の側縁を案内する第2案内壁と、を有するトレイタイプのカード用コネクタ。
【0023】
(1)の発明によるトレイタイプのカード用コネクタは、平板状のトレイ、平板状のハウジング、カバー板、及び複数の片持ち状のコンタクトを備えている。トレイは、カードが載置される略方形の第1凹部を有している。ハウジングは、トレイが進退可能な第2凹部を有している。カバー板は、ハウジングの第2凹部を覆っている。コンタクトは、カードの一方の面に設けた接続端子とプリント基板とを電気的に接続している。
【0024】
トレイの第1凹部は、後縁と前縁を有している。後縁は、トレイがハウジングの第2凹部に進出したときに、カードの後端縁が当接してカードの移動を阻止している。前縁は、ハウジングの第2凹部から後退したときに、カードの前端縁が部分的に当接してカードの移動を阻止している。
【0025】
又、トレイの第1凹部は、第1支持アーム、第2支持アーム、及び逃げ部を有している。第1支持アームは、後縁から前縁に延びており、カードの一方の側縁を案内する第1内壁を設けている。第2支持アームは、後縁から前縁に向けて延びており、カードの他方の側縁を部分的に案内する第2内壁を設けている。逃げ部は、複数のコンタクトに当接しないように、前縁及び第2支持アームの大部分を含んで矩形状に切り欠かれている。
【0026】
一方、ハウジングの第2凹部は、第1案内壁と第2案内壁を有している。第1案内壁は、第2凹部の一方の側壁に形成され、第1支持アームの外側壁を案内できる。第2案内壁は、第2凹部の他方の側壁に形成され、逃げ部に露出されたカードの他方の側縁を案内できる。
【0027】
トレイは、厚さ方向に曲げ変形(たわみ)が容易な弾性部材からなることが好ましく、絶縁性を有する合成樹脂を成形して、所望の形状のトレイを得てもよく、導電性を有する金属板を加工して、所望の形状のトレイを得てもよい。
【0028】
ハウジングは、絶縁性を有している。絶縁性のハウジングとは、非導電性の材料からなるハウジングのことであってよく、合成樹脂を成形して、所望の形状の絶縁性のハウジングを得ることができる。
【0029】
ハウジングには、略平行に延び、一対の対向する側壁を設けることが好ましく、これらの側壁で囲まれた空間をトレイが進退可能な第2凹部とすることができる。トレイの前部に当接して、トレイの進出を停止させる停止壁を第2凹部に設けてもよく、この停止壁をカバー板に設けてもよい。第2凹部にトレイが進退するとは、トレイにカードを載置して、このトレイをカードと共にハウジングに進出、又はハウジングから後退できることを意味している。
【0030】
ハウジングは、プリント基板の表面に実装されることが好ましく、このカード用コネクタを表面実装形のコネクタとすることができる。プリント基板は、硬質のリジッド基板を含み、片面のみにパターンがある片面基板を含むことができ、両面にパターンがある両面基板を含むことができ、絶縁体とパターンを積み重ねた多層基板を含むことができる。
【0031】
又、ハウジングは、プリント基板の端部に配置することが好ましく、このカード用コネクタは、プリント基板に対して、コネクタとカードの結合方向が水平になるように取り付ける、水平取付形コネクタであることが好ましい。水平取付形コネクタは、サイドコネクタとも呼ばれ、プリント基板への実装高さを低くできることから、薄型化が求められる携帯型情報機器に搭載するのに適している。
【0032】
カバー板は、導電性の金属板からなることが好ましく、展開された金属を成形して所望の形状の導電性のカバー板を得ることができる。カバー板は、カードを包囲して不要な電磁波から防護するシールド板として機能でき、第2凹部を覆って、カード用コネクタの外殻を構成する導電性のシェルとして機能することもできる。
【0033】
カードの一方の面とは、接続端子となる区画されたパターンが露出している面を示し、コンタクトに付勢されたカード及びトレイが板厚方向の移動をカバー板に規制されて、コンタクトに所定の接触圧を得させることができる。
【0034】
コンタクトは導電性を有しており、導電性の金属板を打ち抜き加工又は折り曲げ加工して、所望の形状の導電性のコンタクトを得ることができる。コンタクトは加工の容易性や、ばね特性、導電性などを考慮すれば、例えば、銅合金が好ましく用いられるが、銅合金に限定される訳ではない。
【0035】
コンタクトは、ベローズ形コンタクト、又はカンチレバーコンタクトと呼ばれる、片持ち状の板ばねからなっている。コンタクトは、ハウジングに固定される固定片を有し、この固定片は、ハウジングに圧入される形態を含み、この固定片は、ハウジングにモールドされる一体成形の形態を含むことができる。固定片には、プリント基板にハンダ接合されるリード部を形成することが好ましい。
【0036】
又、コンタクトは、固定片から上り傾斜するように延びる弾性片を有している。そして、弾性斜片は、カードの接続端子に接触する接点を頂き部に設けている。トレイをハウジングに進出させると、カードに押されて弾性斜片が傾倒し、弾性斜片の反力(弾性復帰力)で接点が所定の接触圧をカードの接続端子に付与することができる。
【0037】
(1)の発明によるトレイタイプのカード用コネクタは、従来のトレイが一対の支持アームでカードを保持し、一対の支持アームの外壁がハウジングの凹部の内壁に案内されていたのに対し、一方の支持アームでカードを保持し、他方の支持アームを逃げ部で実質的に削除し、逃げ部に露出されたカードの他方の側縁を第2案内壁で案内する構成としたので、ハウジングの幅を縮小できる。つまり、コネクタの実装面積を縮小できる。
【0038】
(2) 前記トレイは、前記第1凹部の底面と略平行に突出し、前記カードの他方の面に当接可能な一組の対向する鉤状の爪部を前記第1支持アーム及び前記第2支持アームの後半部に有する(1)記載のトレイタイプのカード用コネクタ。
【0039】
(2)の発明によるトレイタイプのカード用コネクタは、カードの他方の面に当接可能な一組の対向する鉤状の爪部を第1支持アーム及び第2支持アームの後半部に有するので、カードと共にトレイをコネクタの本体から取り出しても、カードが脱落することを防止できる。
【0040】
(3) 前記カードは、誤装着を防止するために、斜めに切り欠かれた斜辺部を後端縁側の一方の隅部に有し、前記トレイは、前記接続端子を設ける前記カードの一方の面が前記第1凹部の底面と対向するように、前記斜辺部に係合して前記カードの装着の向きを規定する斜辺壁を前記第1凹部の後縁の隅部に有する(1)又は(2)記載のトレイタイプのカード用コネクタ。
【0041】
(3)の発明によるトレイタイプのカード用コネクタは、接続端子を設けるカードの一方の面がトレイの第1凹部の底面と対向するように配置される、いわゆる、ノーマルタイプのカード用コネクタにおいて、カードの誤装着を防止できる。
【0042】
トレイは、接続端子を設けるカードの一方の面が第1凹部の底面と反対側に配置されるように、斜辺部に係合してカードの装着の向きを規定する斜辺壁を第1凹部の後縁の隅部に有するように構成してもよく、接続端子を設けるカードの一方の面がトレイの第1凹部の底面と反対側に配置される、いわゆる、リバースタイプのカード用コネクタにおいて、カードの誤装着を防止できる。
【0043】
(4) 前記トレイは、前記斜辺壁の近傍に配置され、後壁から隆起するように部分的に突出して、前記第2凹部から引き出し容易な引出用突部を有する(3)記載のトレイタイプのカード用コネクタ。
【0044】
(4)の発明によるトレイタイプのカード用コネクタは、指先などを引出用突部に係止して、カードと共にトレイをコネクタの本体から容易に引き出すことができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によるトレイタイプのカード用コネクタは、他方の支持アームを逃げ部で実質的に削除し、逃げ部に露出されたカードの他方の側縁を第2案内壁で案内する構成としたので、コネクタの実装面積を幅方向に縮小できる。
【0046】
又、本発明によるトレイタイプのカード用コネクタは、カードの他方の面に当接可能な一組の対向する鉤状の爪部を第1支持アーム及び第2支持アームの後半部に有するので、カードと共にトレイをコネクタの本体から取り出しても、カードが脱落することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの構成を示す斜視図である。
【図2】前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタに備わるトレイの外観を示す斜視図である。
【図3】前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、トレイが引き出された状態図である。
【図4】前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、トレイが挿入された状態を下面側から観ている。
【図5】前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの本体の構成を示す斜視分解組立図であり、トレイの図示を省略している。
【図6】前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの本体の構成を示す図であり、図6(A)は、本体の平面図、図6(B)は、本体の正面図、図6(C)は、本体の右側面図、図6(D)は、本体の下面図、図6(E)は、本体の左側面図である。
【図7】前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタに備わるトレイの構成を示す図であり、図7(A)は、トレイの平面図、図7(B)は、トレイの正面図、図7(C)は、トレイの背面図、図7(D)は、トレイの右側面図、図7(E)は、トレイの左側面図、図7(E)は、図7(A)のA−A矢視断面図である。
【図8】従来技術によるトレイタイプのカード用コネクタの構成を示す斜視分解組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0049】
[トレイタイプのカード用コネクタの構成]
最初に、本発明の一実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの構成を示す斜視図である。図2は、前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタに備わるトレイの外観を示す斜視図である。図3は、前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、トレイが引き出された状態図である。
【0050】
又、図4は、前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、トレイが挿入された状態を下面側から観ている。図5は、前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの本体の構成を示す斜視分解組立図であり、トレイの図示を省略している。図6は、前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの本体の構成を示す図であり、図6(A)は、本体の平面図、図6(B)は、本体の正面図、図6(C)は、本体の右側面図、図6(D)は、本体の下面図、図6(E)は、本体の左側面図である。
【0051】
更に、図7は、前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタに備わるトレイの構成を示す図であり、図7(A)は、トレイの平面図、図7(B)は、トレイの正面図、図7(C)は、トレイの背面図、図7(D)は、トレイの右側面図、図7(E)は、トレイの左側面図、図7(E)は、図7(A)のA−A矢視断面図である。
【0052】
図1から図4を参照すると、本発明の一実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタ(以下、コネクタと略称する)10は、平板状のトレイ2、平板状のハウジング3、及びカバー板4を備えている。
【0053】
又、図5又は図6を参照すると、コネクタ10は、ハウジング3の前列に配置された三つの片持ち状のコンタクト51、及びハウジング3の後列に配置された三つの片持ち状のコンタクト52を備えている。これらのコンタクト51・52は、カード1の一方の面11に設けた接続端子1tとプリント基板1pとを電気的に接続している(図1参照)。
【0054】
図1から図3及び図5を参照すると、トレイ2は、カード1が載置される略方形の第1凹部21を有している。ハウジング3は、プリント基板1pの端部に配置されている。又、ハウジング3は、トレイ2が進退可能な第2凹部32を有している。カバー板4は、ハウジング3の第2凹部32を覆っている。
【0055】
図1から図3及び図7を参照すると、トレイ2の第1凹部21は、後縁21aと部分的に形成された前縁21bを有している。後縁21aは、トレイ2がハウジング3の内部に進出したときに、カード1の後端縁1cが当接して、カード1の移動を阻止している。前縁21bは、トレイ2がハウジング3から後退したときに、カード1の前端縁1dが部分的に当接して、カード1の移動を阻止している。
【0056】
又、図1から図3及び図7を参照すると、トレイ2の第1凹部21は、第1支持アーム22、第2支持アーム23、及び逃げ部24を有している。第1支持アーム22は、後縁21aから前縁21bに延びており、カード1の一方の側縁1aを案内する第1内壁22aを設けている。第2支持アーム23は、後縁21aから前縁21bに向けて延びており、カード1の他方の側縁1bを部分的に案内する第2内壁23bを設けている。逃げ部24は、複数のコンタクト51・52に当接しないように、前縁21b及び第2支持アーム23の大部分を含んで矩形状に切り欠かれている。
【0057】
一方、図5を参照すると、ハウジング3の第2凹部32は、第1案内壁31aと第2案内壁31bを有している。第1案内壁31aは、第2凹部32の一方の側壁31に形成され、第1支持アーム22の外側壁221を案内できる。第2案内壁31bは、第2凹部32の他方の側壁31に形成され、逃げ部24に露出されたカード1の他方の側縁1bを案内できる。
【0058】
図1から図3及び図7を参照すると、トレイ2は、一組の対向する鉤状の爪部2a・2aを第1支持アーム22及び第2支持アーム23の後半部に有している。これらの爪部2a・2aは、第1凹部21の底面と略平行に突出している。又、これらの爪部2a・2aは、カード1の他方の面12に当接可能となっている。そして、これらの爪部2a・2aは、カード1と共にトレイ2をコネクタ10の本体10Bから取り出しても、カード1が脱落することを防止できる。
【0059】
図1を参照すると、カード1は、誤装着を防止するために、斜めに切り欠かれた斜辺部1fを後端縁1c側の一方の隅部に有している。一方、図1から図3及び図7を参照すると、トレイ2は、斜辺壁2bを第1凹部21の後縁21aの隅部に有している。斜辺壁2bは、斜辺部1fに係合して、接続端子1tを設けるカード1の一方の面11が第1凹部21の底面と対向するように、カード1の装着の向きを規定できる。
【0060】
図1から図4及び図7を参照すると、トレイ2は、斜辺壁2bの近傍に配置された引出用突部2cを有している。引出用突部2cは、トレイ2の後壁から隆起するように部分的に突出している。引出用突部2cに指先などを係合して、ハウジング3の第2凹部32(図5参照)からトレイ2を容易に引き出すことができる。
【0061】
又、図1から図4及び図7を参照すると、第1支持アーム22の外側壁221には、段差22dを形成している。一方、第2支持アーム23は、逃げ部24により切り欠かれた端面23dを形成している。トレイ2をハウジング3の内部に進出させると、段差22d及び端面23dがハウジング3の両翼に当接して、トレイ2の押し込み深さを規定することができる。
【0062】
(カード用コネクタの本体の構成)
次に、実施形態によるコネクタ10の本体10Bの構成を説明する。図5又は図6を参照すると、本体10Bは、ハウジング3、カバー板4、及び複数のコンタクト51・52で構成している。
【0063】
図1を参照すると、本体10Bは、プリント基板1pの一方の面11pに実装している。ハウジング3は、プリント基板1pの一方の面11pに実装されており、実施形態によるコネクタ10を表面実装形のコネクタとしている。又、実施形態によるコネクタ10は、プリント基板1pに対して、本体10Bとカード1の結合方向が水平になるように取り付ける、水平取付形コネクタとしている。そして、カバー板4で囲われた開口(スロット)からカード1を載置したトレイ2を挿入できる。
【0064】
図5又は図6を参照すると、カバー板4は、第2凹部32と対向する面積の大きい主面板40を有している。又、カバー板4は、主面板40の両翼を略直角に折り曲げた一対の対向する折り曲げ片41・41を有している。
【0065】
図5又は図6を参照すると、一対の折り曲げ片41・41には、一組の係止孔41a・41aを開口している。一方、ハウジング3には、一組の係合突起31c・31cを設けている。そして、係合突起31cに係止孔41aを係合して、カバー板4をハウジング3に係止している。
【0066】
図5又は図6を参照すると、カバー板4は、片持ち状の板ばね片41bを一方の折り曲げ片41に有している。板ばね片41bは、第1支持アーム22の外側壁221を付勢しながらスライドできる(図2参照)。又、板ばね片41bは、その先端部が外側壁221に設けた凹部22eに陥没して(図2参照)、所定のクリック感を操作者に付与できる。
【0067】
図5又は図6を参照すると、コンタクト51は、固定片5a、弾性変形が可能な弾性斜片5b、及び接点5cを有している。同様に、コンタクト52は、固定片5a、弾性変形が可能な弾性斜片5b、及び接点5cを有している。又、コンタクト51の弾性斜片5b及び接点5cは、固定片5aから二股に分岐している。同様に、コンタクト52の弾性斜片5b及び接点5cは、固定片5aから二股に分岐している。
【0068】
図5又は図6を参照すると、コンタクト51の固定片5aは、ハウジング3に固定されている。コンタクト51の固定片5aは、その一部がハウジング3の前方に突出して、プリント基板1pにハンダ接合されるリード部51fを形成している。
【0069】
図5又は図6を参照すると、コンタクト52の固定片5aは、ハウジング3に固定されている。コンタクト52の固定片5aは、その一部がハウジング3の後方に突出して、プリント基板1pにハンダ接合されるリード部52rを形成している。又、コンタクト52の固定片5aは、その一部がハウジング3の前方に突出して、プリント基板1pにハンダ接合されるリード部52fを形成している。そして、リード部51fとリード部52fは、交互に一列に配置されている。
【0070】
図5又は図6を参照すると、コンタクト51とコンタクト52とは、固定片5a、弾性斜片5b、及び接点5cで構成される本体部が同じであるので、以下、コンタクト52を代表して説明する。
【0071】
図5を参照すると、弾性斜片5bは、固定片5aから上り傾斜するように延びる弾性片となっている。又、弾性斜片5bは、カード1の接続端子1tに接触する接点5cを頂き部に設けている。トレイ2をハウジング3に進出させると、カード1に押されて弾性斜片5bが傾倒し、弾性斜片5bの反力(弾性復帰力)で接点5cが所定の接触圧をカード1の接続端子1tに付与することができる。
【0072】
[トレイタイプのカード用コネクタの作用]
次に、実施形態によるコネクタ10の動作を説明しながら、コネクタ10の作用及び効果を説明する。
【0073】
図1又は図5を参照すると、トレイ2を本体10Bに挿入すると、複数のコンタクト51・52は、カード1の一方の面11に設けた接続端子1tとプリント基板1pとを電気的に接続できる。
【0074】
図8に示された従来のコネクタ100と実施形態によるコネクタ10を対比すると、コネクタ100は、トレイ9に設けた一対の支持アーム9a・9bがカード1を保持している。そして、一対の支持アーム9a・9bの外壁がハウジング7の凹部71の内壁に案内されて、カード1の接続端子1tとコンタクト7cの接続を可能としている(図8参照)。
【0075】
一方、実施形態によるコネクタ10は、第1支持アーム22でカード1を保持し、第2支持アーム23を逃げ部24で実質的に削除し、逃げ部24に露出されたカード1の他方の側縁1b(図2参照)を第2案内壁31bで案内する構成としたので、ハウジングの幅を縮小できる。つまり、コネクタの実装面積を縮小できるという効果がある。
【0076】
図1から図3及び図7を参照すると、実施形態によるコネクタ10は、カード1の他方の面12に当接可能な一組の対向する鉤状の爪部2a・2aを第1支持アーム22及び第2支持アーム23の後半部に有するので、カード1と共にトレイ2をコネクタ10の本体10Bから取り出しても、カード1が脱落することを防止できる。なお、カード1をトレイ2に装着する場合は、第1支持アーム22の前縁21b側を撓ませ、第1凹部21の底面と平行にカード1を後縁21aに向かって挿入することにより、カード1をトレイ2に装着できる。
【0077】
又、図1から図3及び図7を参照すると、実施形態によるコネクタ10は、接続端子1tを設けるカード1の一方の面11がトレイ2の第1凹部21の底面と対向するように配置される、いわゆる、ノーマルタイプのカード用コネクタにおいて、カード1の誤装着を防止できる。
【0078】
トレイは、接続端子1tを設けるカード1の一方の面11が第1凹部21の底面と反対側に配置されるように、斜辺部1fに係合してカード1の装着の向きを規定する斜辺壁を第1凹部21の後縁21aの隅部に有するように構成してもよく、接続端子1tを設けるカード1の他方の面12がトレイ2の第1凹部21の底面と対向するように配置される、いわゆる、リバースタイプのカード用コネクタにおいて、カード1の誤装着を防止できる。
【0079】
図1から図4及び図7を参照すると、実施形態によるコネクタ10は、指先などを引出用突部2cに係止して、カード1と共にトレイ2をコネクタ10の本体10Bから容易に引き出すことができる。
【符号の説明】
【0080】
1 カード
1a カードの一方の側縁
1b カードの他方の側縁
1c カードの後端縁
1d カードの前端縁
1t 接続端子
2 トレイ
3 ハウジング
4 カバー板
10 コネクタ(トレイタイプのカード用コネクタ)
11 カードの一方の面
21 第1凹部
21a 第1凹部の後縁
21b 第1凹部の前縁
22 第1支持アーム
22a 第1内壁
23 第2支持アーム
23b 第2内壁
24 逃げ部
31 側壁
31a 第1案内壁
31b 第2案内壁
32 第2凹部
51・52 コンタクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが載置される略方形の第1凹部を有する平板状のトレイと、
このトレイが進退可能な第2凹部を有する平板状のハウジングと、
このハウジングの第2凹部を覆うカバー板と、
前記ハウジングの第2凹部に配列され、前記カードの一方の面に設けた接続端子と電気的に接続する複数の片持ち状のコンタクトと、を備え、
前記トレイの第1凹部は、
当該トレイが前記ハウジングの第2凹部に進出したときに、前記カードの後端縁が当接して前記カードの移動を阻止する後縁と、
前記トレイが前記ハウジングの第2凹部から後退したときに、前記カードの前端縁が部分的に当接して前記カードの移動を阻止する前縁と、
前記後縁から前記前縁に延びて、前記カードの一方の側縁を案内する第1内壁を設ける第1支持アームと、
前記後縁から前記前縁に向けて延び、前記カードの他方の側縁を部分的に案内する第2内壁を設ける第2支持アームと、
複数の前記コンタクトに当接しないように、前記前縁及び前記第2支持アームの大部分を含んで矩形状に切り欠かれた逃げ部と、を有し、
前記ハウジングの第2凹部は、
一方の側壁に形成され、前記第1支持アームの外側壁を案内する第1案内壁と、
他方の側壁に形成され、前記逃げ部に露出された前記カードの他方の側縁を案内する第2案内壁と、を有するトレイタイプのカード用コネクタ。
【請求項2】
前記トレイは、前記第1凹部の底面と略平行に突出し、前記カードの他方の面に当接可能な一組の対向する鉤状の爪部を前記第1支持アーム及び前記第2支持アームの後半部に有する請求項1記載のトレイタイプのカード用コネクタ。
【請求項3】
前記カードは、誤装着を防止するために、斜めに切り欠かれた斜辺部を後端縁側の一方の隅部に有し、
前記トレイは、前記接続端子を設ける前記カードの一方の面が前記第1凹部の底面と対向するように、前記斜辺部に係合して前記カードの装着の向きを規定する斜辺壁を前記第1凹部の後縁の隅部に有する請求項1又は2記載のトレイタイプのカード用コネクタ。
【請求項4】
前記トレイは、前記斜辺壁の近傍に配置され、後壁から隆起するように部分的に突出して、前記第2凹部から引き出し容易な引出用突部を有する請求項3記載のトレイタイプのカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−216357(P2012−216357A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79871(P2011−79871)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】