説明

トレイフィーダおよびトレイセット用のパレットならびにトレイセット方法

【課題】部品補給に伴う作業者の作業負荷を軽減するとともに設備の稼働率を向上させることができるトレイフィーダおよびトレイセット用のパレットならびにトレイセット方法を提供することを目的とする。
【解決手段】キャビティ部6bが複数凹設された部品収納部6aを有する形態のトレイ6を部品実装機構による部品取出し位置に供給するトレイフィーダにおいて、トレイ6を位置決めして保持するパレット24の上面に、トレイ6を下方から支持するとともに部品収納部6aから下方に延出して設けられたエンボス部6dの側面に当接してトレイ6の水平方向の位置を規制する規制部材50A、50Bを配設する。これにより、樹脂成形品など剛性の小さいトレイであっても安定した位置固定状態を得ることができるとともに、トレイ交換毎に既存のトレイのクランプ解除動作および新たなトレイのクランプ固定動作を実行する必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装装置の部品供給部に配置されて部品を収納したトレイを供給するトレイフィーダおよびトレイフィーダに装備されてトレイがセットされるパレットおよびパレットにトレイをセットするトレイセット方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部品実装装置において部品を供給する形態として、トレイフィーダを用いる方法が知られている。トレイフィーダによる部品供給では、大型部品や異形部品などを規則配列で平面収納した状態のトレイがセットされたパレットをマガジンなどに多段格納しておき、部品実装作業においては実装対象の部品に対応するパレットが実装ヘッドによる部品吸着位置まで引き出される。ここで用いられるトレイには部品種によって種々の形態・サイズがあるため、パレットには形状・サイズの異なる多種類のトレイを所定位置に位置決めして保侍するトレイセット機構が設けられる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献に示す先行技術においては、トレイの片側の側縁部をパレットに固定された押当部に押し当て、反対側の側縁部にバネによって付勢された爪を押し当てることにより、トレイを両側から挟み込んで位置固定するクランプ方式を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−142890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで実装対象の部品は多様であり、これに応じてトレイも多様な形態のものが用いられ、そしてトレイの材質についても製作の容易さやコストの面から樹脂材質が多く採用されるようになっている。ところが、樹脂材質のトレイを用いる場合には、樹脂の強度特性に起因してトレイのサイズと樹脂成形厚みによっては剛性が不足する。そしてこのような剛性の低いトレイに、従来のパレットのように外側から挟み込んで位置固定するクランプ方式を適用すると、以下に説明するような不都合がある。
【0006】
すなわちクランプ方式では、トレイの外側縁部が両側から挟み込まれるが、トレイの剛性が不足する場合にはトレイ自体が変形して位置固定状態が不安定となり、収納された部品が正しい位置に保持されずに部品吸着ミスの要因となる。またクランプ方式では、部品取り出しにより空になったトレイを新たなトレイと交換する部品補給時において、各トレイ交換毎に既存のトレイのクランプ解除動作および新たなトレイのクランプ固定動作を実行する必要がある。特に大型部品を対象とする場合には1つのトレイに収納される部品数が少ないため、部品補給を頻繁に実行する必要があり、作業者の作業負荷の増大と設備停止に伴う稼働率の低下が避けられなかった。
【0007】
そこで本発明は、部品補給に伴う作業者の作業負荷を軽減するとともに設備の稼働率を向上させることができるトレイフィーダおよびトレイセット用のパレットならびにトレイセット方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のトレイフィーダは、部品実装装置の部品供給部に配置され部品を収納するキャビティ部が複数凹設された平面部を有する形態のトレイを部品実装機構による部品取出し位置に供給するトレイフィーダであって、前記トレイを所定位置に位置決めして保持するパレットと、前記パレットを複数格納するマガジンと、前記マガジンから前記パレットを引き出して前記部品取出し位置まで移動させるパレット移動機構とを備え、前記パレットの上面には、前記トレイを下方から支持するとともに、前記平面部から下方に延出して設けられた延出部の側面に当接することにより前記トレイの水平方向の位置を規制する規制部材が配設されている。
【0009】
本発明のトレイセット用のパレットは、 部品実装装置の部品供給部に配置され部品を収納するキャビティ部が複数凹設された平面部を有する形態のトレイを部品実装機構による部品取出し位置に供給するトレイフィーダに装備され、前記トレイを所定位置に位置決めして保持するパレットであって、前記トレイを下方から支持するとともに、前記平面部から下方に延出して設けられた延出部の側面に当接することにより前記トレイの水平方向の位置を規制する規制部材が上面に配設されている。
【0010】
本発明のトレイセット方法は、部品実装装置の部品供給部に配置され部品を収納するキャビティ部が複数凹設された平面部を有する形態のトレイを部品実装機構による部品取出し位置に供給するトレイフィーダに装備され、前記トレイを所定位置に位置決めして保持するパレットにこのトレイをセットするトレイセット方法であって、前記パレットの上面に配設された規制部材によってトレイを下方から支持するとともに、前記平面部から下方に延出して設けられた延出部の側面に前記規制部材を当接させることにより前記トレイの水平方向の位置を規制する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、部品を収納するキャビティ部が複数凹設された平面部を有する形態のトレイを部品実装機構による部品取出し位置に供給するトレイフィーダにおいて、トレイを所定位置に位置決めして保持するパレットの上面に、トレイを下方から支持するとともに平面部から下方に延出して設けられた延出部の側面に当接してトレイの水平方向の位置を規制する規制部材を配設することにより、剛性の小さいトレイであっても安定した位置固定状態を得ることができるとともに、トレイ交換毎に既存のトレイのクランプ解除動作および新たなトレイのクランプ固定動作を実行する必要がなく、部品補給に伴う作業者の作業負荷を軽減するとともに設備の稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態のトレイフィーダが装着される部品実装装置の平面図
【図2】本発明の一実施の形態のトレイフィーダが装着される部品実装装置の部分断面図
【図3】本発明の一実施の形態のトレイフィーダの構成説明図
【図4】本発明の一実施の形態のトレイフィーダの機能説明図
【図5】本発明の一実施の形態のトレイフィーダに用いられるパレットの構成説明図
【図6】本発明の一実施の形態のトレイフィーダに用いられるトレイの構成説明図
【図7】本発明の一実施の形態のパレットによるトレイの保持状態の説明図
【図8】本発明の一実施の形態のパレットによるトレイの保持状態の説明図
【図9】本発明の一実施の形態のトレイフィーダに用いられるパレットおよびトレイの構成説明図
【図10】本発明の一実施の形態のパレットによるトレイの保持状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1,図2を参照して、部品実装装置1の構成を説明する。図1において、基台1aの上面には、基板搬送機構2がX方向(基板搬送方向)に配設されており、基板搬送機構2は部品実装対象となる基板3を搬送して,以下に説明する部品実装機構による作業位置に位置決め保持する。基板搬送機構2の両側方には、基板3に実装される部品を供給する部品供給部4A、4Bが配設されており、部品供給部4Aにはトレイフィーダ5が、部品供給部4Bには複数のテープフィーダ13が配置されている。
【0014】
トレイフィーダ5は部品60が格子配列で格納されたトレイ6を、部品実装機構による部品取出し位置に供給する。これにより、トレイ6に保持された部品60は部品実装機構の実装ヘッドによるピックアップ位置に送られる。またテープフィーダ13は部品を保持したキャリアテープをピッチ送りすることにより、部品を部品実装機構に供給する。
【0015】
基台1aのX方向の一端部には、リニアモータ駆動のY軸移動テーブル7がY方向に配設されており、Y軸移動テーブル7には2基のX軸移動テーブル8A,8Bが、それぞれ部品供給部4A、部品供給部4Bに対応して、Y方向に移動自在に結合されている。X軸移動テーブル8A,8Bには実装ヘッド9A,9Bが、リニア駆動機構によってX方向に移動自在に装着されている。実装ヘッド9A,9Bはいずれも複数の単位移載ヘッド10を備えた多連型ヘッドであり、それぞれの単位移載ヘッド10の下端部には吸着ノズル10a(図2参照)が交換自在に装着されている。
【0016】
Y軸移動テーブル7およびX軸移動テーブル8Aを駆動することにより、実装ヘッド9Aは部品供給部4Aと基板搬送機構2に保持された基板3との間で水平移動し、トレイ6に格納された部品60を吸着ノズル10aによって吸着保持してピックアップし、基板3に実装する。Y軸移動テーブル7およびX軸移動テーブル8Bを駆動することにより、実装ヘッド9Bは部品供給部4Bと基板3との間で水平移動し、テープフィーダ13によってピッチ送りされたキャリアテープから部品を吸着ノズル10aによって吸着保持して取り出し基板3に実装する。したがってY軸移動テーブル7、X軸移動テーブル8A,8B、実装ヘッド9A,9Bは、単位移載ヘッド10の吸着ノズル10aによって部品を吸着保持して基板3に実装する部品実装機構を構成する。
【0017】
実装ヘッド9A,9Bには、X軸移動テーブル8A,8Bの下面側に位置して実装ヘッド9A,9Bと一体的に移動する基板認識カメラ11が設けられている。基板認識カメラ11は実装ヘッド9A,9Bと一体的に基板3の上方に移動し、ここで基板認識カメラ11によって基板3を撮像することにより、基板3の位置認識が行われる。部品供給部4A,4Bと基板搬送機構2との間には、部品認識カメラ12が配設されている。電子部品を保持した実装ヘッド9A,9Bが部品認識カメラ12の上方を移動することにより部品認識カメラ12はこれらの電子部品を撮像し、この撮像結果を認識処理することにより、実装ヘッド9A,9Bに保持された状態における電子部品の識別や位置認識が行われる。
【0018】
図2は部品供給部4Aにトレイフィーダ5をセットした状態を示している。トレイフィーダ5は車輪21によって作業床上で移動自在なベース部20を備えている。ベース部20の上面において、オペレータOPによる操作側にはマガジン23を内蔵したフィーダ本体部22が配置されており、マガジン23にはそれぞれパレット収納部23aに収納された矩形板状のパレット24が複数格納されている。マガジン23の前面側(部品実装装置1側)には、パレット収納部23aからパレット24を引き出して保持するパレット保持部25およびパレット保持部25を昇降させて(矢印a)各パレット収納部23aの高さ位置に位置させる保持部昇降機構26が設けられている。
【0019】
パレット24には、部品60が格子配列で収納されたトレイ6が所定位置に位置決めされた状態で保持されており(図4(a)参照)、パレット24に保持されたトレイ6はマガジン23の各パレット収納部23aに収納される。部品実装装置1による部品実装作業においては、パレット24はパレット保持部25によって引き出されて、実装ヘッド9Aの単位移載ヘッド10による部品取出し位置Pまで移動する。そしてこの状態のトレイ6から部品60を吸着ノズル10aによってピックアップした実装ヘッド9Aが、基板搬送機構2に位置決め保持された基板3に移動することにより(矢印b)、部品60が基板3に実装される。
【0020】
この部品実装作業は本体制御装置14によって制御され、トレイフィーダ5におけるパレット24の移動動作は、トレイフィーダ5が備えたフィーダ制御部30によって制御される。部品供給部4Aにおいて、オペレータOPが視認容易な位置には操作パネル15が配設されており、操作パネル15の表示面に設けられたタッチパネルスイッチを操作することにより、本体制御装置14に対して、さらにはフィーダ制御部30に対して必要な操作入力を行うことができるようになっている。
【0021】
フィーダ本体部22においてパレット収納部23aとは別の領域(ここでは、最上段のパレット収納部23aの上方)には、パレット載置部27が設けられている。パレット載置部27には、部品実装作業の実行過程において部品切れとなったトレイ6を保持するパレット24がトレイ交換のために載置される。パレット載置部27の上面側はフィーダ本体部22の天井部によって覆われており、フィーダ本体部22の天井部の手前側(オペレータOPによる操作側)には、パレット載置部27へのパレット24の搬入・搬出を可能とするための開閉カバー28が開閉自在に設けられている。部品実装作業の実行中は開閉カバー28は閉じた状態にある。
【0022】
部品実装作業の実行過程においてパレット24に保持されたトレイ6の交換の必要が生じた場合には、当該パレット24はパレット保持部25から移動してパレット載置部27に載置される。そしてオペレータOPは開閉カバー28を開放してパレット載置部27からパレット24を搬出し、部品切れが生じた空のトレイ6を他のトレイ6と交換するトレイ交換を行う。トレイ交換後のパレット24は開閉カバー28を介して搬入されてパレット載置部27に再び載置され、さらにパレット保持部25によって引き出される。すなわち、パレット載置部27には部品切れとなったトレイを保持するパレット24が載置され、さらにこのパレット24をトレイ交換のためにフィーダ本体部22外へ搬出することが可能な構成となっている。
【0023】
次に図3,図4を参照して、トレイフィーダ5の詳細構成について説明する。図3において、ベース部20の上面に立設された縦フレーム33には、ナット部材36に螺合する送りねじ35を昇降駆動モータ34によって回転駆動する構成の保持部昇降機構26が設けられており、ナット部材36にはパレット保持部25を構成する水平なパレット保持プレート37が結合されている。昇降駆動モータ34を駆動することにより、パレット保持部25はフィーダ本体部22の前面側において昇降する(矢印d)。このとき、個々のパレット収納部23aに付された収納アドレスを指定することにより、パレット保持部25をこの収納アドレスに対応したパレット収納部23aの高さ位置に位置させることができる。
【0024】
パレット保持部25は、パレット収納部23aからパレット24を引き出し、また引き出したパレット24をパレット収納部23aに戻し入れるためのスライド動作を行うパレットスライド機能を有するものであり、パレット保持プレート37の下面側に配設されたスライド駆動モータ38を駆動することにより、パレット保持プレート37の上面に沿ってパレット24をスライド移動させることができるようになっている。すなわち図4(a)に示すように、パレット保持部25を構成するパレット保持プレート37の上面には、Y方向(パレット収納部23aに対して接離する方向)にスライドガイド42が配設されており、スライドガイド42にはスライド部材41がスライド自在に嵌合している。
【0025】
スライド部材41はスライド駆動モータ38を駆動源とする移動機構(図示省略)によってスライドガイド42に沿って往復動自在となっており、パレット24の前端部に設けられた被係止部24aを係止可能な係止部41aを備えている。パレット24は被係止部24aを係止部41aによって係止可能なように、引き出し方向に突出させた状態でパレット収納部23aに収納されている。さらにパレット保持プレート37の上面には、パレット24のY方向への移動をガイドするためのガイド部材43がスライドガイド42の両側に設けられている。
【0026】
スライド駆動モータ38を駆動することにより、図4(b)に示すように、スライド部材41はパレット収納部23aに対して接近する方向に移動し(矢印e)、係止部41aによって被係止部24aを係止する。そしてこの状態でスライド駆動モータ38を駆動してスライド部材41をパレット収納部23aから離隔する方向に移動させることにより、図4(c)に示すように、パレット24はスライド部材41によってパレット収納部23aから引き出され、パレット保持プレート37の上面に乗り移ってガイド部材43によって両側面をガイドされながら移動する(矢印f)。このパレット保持部25によるパレット出し入れは、パレット収納部23aのみならずパレット載置部27を対象としても実行される。
【0027】
すなわち、パレット保持部25を保持部昇降機構26によって昇降させることにより、パレット24を複数のパレット収納部23aから引き出して、実装ヘッド9Aの単位移載ヘッド10による部品取出し位置Pに移動させる部品供給のための移動、パレット24をトレイ交換のためにパレット載置部27に載置するための移動、さらには部品供給後、トレイ交換後のパレット24を所定の収納アドレスのパレット収納部23aに戻し入れするための移動が可能となっている。したがって、パレット保持部25および保持部昇降機構26は、マガジン23からパレット24を引き出して部品取出し位置Pに移動させるパレット移動機構を構成する。
【0028】
次に図5、図6を参照して、パレット24、トレイ6の構成を説明する。図5に示すように、パレット24の一方の端面には係止部41aが係合する切欠き部24bを有する被係止部24aが設けられている。パレット24の上面において被係止部24aに隣接した位置には、2つの矩形棒状の固定の規制部材50AがX方向に直列に配列されている。規制部材50Aはパレット24の複数位置に形成された締結孔24dに締結ボルト51によって締結固定されており、締結孔24dの位置を選択することにより、パレット24における規制部材50Aの固定位置を変更可能となっている。それぞれの規制部材50AとY方向に対向する位置には、同様に矩形棒状の可動の規制部材50Bが規制部材50Aと対をなして配置されている。規制部材50Bはパレット24にY方向に形成された締結用長孔24fに締結ボルト52によってY方向の位置が調節自在に締結されており、相対向する規制部材50Aと規制部材50Bとの間隔D1は調節可能となっている。
【0029】
A−A断面に示すように、パレット24のY方向の略中央位置には、1対の規制部材50Aと規制部材50Bが相対向して配列されている。規制部材50Aは上述の規制部材50Aと同様に、複数位置に形成された締結孔24dに締結ボルト51によって締結固定されており、パレット24における規制部材50Aの固定位置を変更可能となっている。規制部材50BはX方向に形成された締結用長孔24fに締結ボルト52によってX方向の位置が調節自在に締結されており、相対向する規制部材50Aと規制部材50Bとの間隔D2は調節可能となっている。これらの規制部材50A、規制部材50Bの高さ寸法は、以下に説明するトレイ6を下方から支持することができる寸法に合わせて設定される。
【0030】
図6に示すように、トレイ6は上面が平板状の部品収納部6aで下面側が開放された無底矩形箱状の部材であり、樹脂を成形することによって製造されている。部品収納部6aには部品60を収納する複数のキャビティ部6bが所定の格子配列で形成されており、トレイ6は部品60を収納するキャビティ部6bが複数凹設された平面部としての部品収納部6aを有する形態となっている。キャビティ部6bの下面側は、部品収納部6aから下方に延出して設けられた延出部であるエンボス部6dとなっており、これらのエンボス部6dの配列において最外縁に位置するエンボス部6dの外側面間の距離は、X方向についてはd1,Y方向についてはd2となっている。
【0031】
部品収納部6aの縁部には下方に延出した側壁部6cが設けられており、部品収納部6aと側壁部6cを組み合わせた箱構造によって、トレイ6に必要とされる剛性が確保されている。ここで、トレイ6は材質的には強度の劣る樹脂によって製作されていることから、従来この種の用途に採用されていた金属製のトレイと比較して、剛性が低く変形しやすいという特性を有している。すなわち、トレイ6は部品60をキャビティ部6b内に収納して保持するために必要とされる強度は有しているものの、トレイ6をパレット24の所定位置に位置決めして保持するために外側方向からクランプ機構によって挟み込まれた状態において正常な形状を確保するだけの剛性は有していない。
【0032】
このような強度特性を有するトレイ6を、両側から挟み込むことによりトレイを保持するクランプ方式の従来のパレットに装着して用いると、トレイ自体が変形して位置固定状態が不安定となり、収納された部品が正しい位置に保持されずに部品吸着ミスの要因となる。このような不都合を防止するため、本実施の形態においては、図6に示すような樹脂成形で製作されて剛性が低いトレイ6を対象とする場合には、図5に示す構成のパレット24を用いるようにしている。この場合において、規制部材50A、規制部材50Bの配列位置定める間隔D1,D2は、対象とするトレイ6における距離d1,d2に対応して設定される。これにより、同一のパレット24をサイズの異なる複数種類のトレイ6に共用することができ、汎用性にすぐれたパレットが実現される。
【0033】
図7は、このようにして間隔D1,D2が設定されたパレット24に、トレイ6を保持させた状態を示している。すなわち、4辺の側壁部6cがパレット24に予め配列された規制部材50A、規制部材50Bの外側に位置するようにトレイ6を位置合わせし、トレイ6をパレット24上に載置する。この状態では、4辺に枠状に配置された規制部材50A、規制部材50Bによって部品収納部6aの下面側が支持される。そして規制部材50A、規制部材50Bのそれぞれの側面50a、50bが最外縁のエンボス部6dの側面6eに当接し、これによりパレット24におけるトレイ6の水平方向の位置が規制される。このとき、側面50a、50bと側面6eとの間に、位置決め許容誤差を超える過大な隙間が生じず、また位置合わせ時の干渉を生じることのない適正隙間が実現されるように、間隔D1,D2を設定する。
【0034】
すなわち本実施の形態のトレイフィーダ5に用いられるパレット24の上面には、トレイ6を下方から支持するとともに、平面部である部品収納部6aから下方に延出して設けられた延出部であるエンボス部6dの側面6eに当接することにより、トレイ6の水平方向の位置を規制する規制部材50A、50Bが配設されている。そしてトレイ6をパレット24にセットするトレイセット方法においては、パレット24の上面に配設された規制部材50A、50Bによってトレイ6を下方から支持するとともに、部品収納部6aから下方に延出して設けられたエンボス部6dの側面6eに規制部材50A、50Bを当接させることにより、パレット24におけるトレイ6の水平方向の位置を規制するようにしている。
【0035】
なお上記実施の形態においては、部品収納部6aから下方に延出して設けられた延出部として、最外縁に位置するエンボス部6dを用いる例を示したが、延出部としては上述例には限定されず、パレット24に設けられた規制部材50A、50Bと組み合わせて、トレイ6の水平方向の位置を規制する機能を有するものであれば、どのような形態であってもよい。
【0036】
例えば、図8(a)は、延出部としてトレイ6の中央近傍に位置して相隣接する2つのエンボス部6dを用い、これらのエンボス部6dの間に嵌合する形状の規制部材50Cをパレット24において対応する位置に設けた例を示している。この場合には、規制部材50Cの側面をエンボス部6dの側面6eに当接させることにより、トレイ6の水平方向の位置が規制される。
【0037】
また図8(b)は、延出部としてトレイ6の4辺の側壁部6cを用い、これらの側壁部6cの側面6fに当接する形状の規制部材50Dをパレット24において対応する位置に設けた例を示している。この場合には、規制部材50Dの側面50dを側壁部6cの側面6fに当接させることにより、トレイ6の水平方向の位置が規制される。
【0038】
さらに図8(c)は、延出部として部品収納部6aから下方に突設された位置合わせピン53を用い、位置合わせピン53が嵌合する形状の嵌合孔50eが設けられた規制部材50Eをパレット24において位置合わせピン53に対応する位置に設けた例を示している。この場合には、嵌合孔50eの内周面を位置合わせピン53の外周面53aに当接させることにより、トレイ6の水平方向の位置が規制される。
【0039】
なお、トレイ6におけるキャビティ部6bの配列が前後方向で非対称である場合や、収納される部品60が実装方向が特定された極性部品であるような場合には、パレット24にトレイ6をセットする際に、トレイ6の方向を確認した上でセットしなければならず、誤方向にセットすると吸着ノズル10aが正常に部品を取り出せない部品取り出しミスや、基板への実装時に正しい装着方向に搭載されない実装ミスなどの原因となる。
【0040】
このような誤方向のセットを防止するため、図9に示すようなパレット24を用いることにより、誤セットを防止することができる。図9(a)に示すパレット24において、後方側に配置された規制部材50Bの側面には、前方側に突出して突出部54が設けられている。図9(b)は、図9(a)に示すパレット24にセットされるトレイ6の例を示している。トレイ6において前方側の両側端に位置する2つのキャビティ部6bの中間には、干渉部6gが部品収納部6aから下方に突出して設けられており、トレイ6は平面視した中心点CPに関して非対称形状となっている。
【0041】
図10(a)は、このようなトレイ6をパレット24にセットした状態を示している。トレイ6の前後方向がパレット24の前後方向と一致している正しいセット状態の場合には、図10(b)に示すように、突出部54、干渉部6gのいずれも他部位との干渉を生じることがなく、トレイ6は規制部材50A、規制部材50Bによって正しく位置規制される。これに対し、トレイ6の前後方向がパレット24の前後方向と一致せずに逆方向に誤セットされた場合には、図10(c)に示すように、突出部54に干渉部6gが干渉する。このためオペレータはトレイ6をパレット24に正常にセットすることができず、トレイ6のセット方向が誤っていることを直ちに察知する。
【0042】
すなわち、図9,図10に示す例においては、トレイ6は平面視した中心点CPに関して非対称形状であり、規制部材50Bには当該トレイ6がパレット24に対して誤方向にセットされた場合にのみこのトレイ6の干渉部6gと干渉を生じる位置に突出部54が設けられた形態となっている。そしてこのような構成のトレイ6をこのような形態のパレット24にセットするトレイセット方法においては、規制部材50Bに当該トレイ6がパレットに対して誤方向にセットされた場合にのみこのトレイ6と干渉を生じる位置に突出部54を設けることにより、トレイ6のパレット24に対する誤方向のセットを防止するようにしている。
【0043】
なお図9,図10に示す例では、規制部材50Bに設けた突出部54と部品収納部6aから下方に突出した干渉部6gとの干渉によって誤セットを検出するようにしているが、誤セット検出目的で設ける突出部の形成部位・形状については種々のバリエーションが可能である。すなわち、トレイ6の非対称形状の態様は種々想定されるため、対象となるトレイ6の非対称形状の態様に応じて、誤セット状態においてのみ相互に干渉するトレイ6、パレット24の部位を選定し、選定されたパレット24の部位にトレイ6の当該部位の形状に応じた突出部を設けるようにすればよい。
【0044】
上記説明したように本実施の形態では、部品60を収納するキャビティ部6bが複数凹設された平面部としての部品収納部6aを有する形態のトレイ6を部品実装機構による部品取出し位置に供給するトレイフィーダ5において、トレイ6を所定位置に位置決めして保持するパレット24の上面に、トレイ6を下方から支持するとともに部品収納部6aから下方に延出して設けられたエンボス部6dなどの延出部の側面に当接してトレイ6の水平方向の位置を規制する規制部材を配設する構成としたものである。これにより、樹脂成形品など剛性の小さいトレイであっても安定した位置固定状態を得ることができるとともに、トレイ交換毎に既存のトレイのクランプ解除動作および新たなトレイのクランプ固定動作を実行する必要がなく、部品補給に伴う作業者の作業負荷を軽減するとともに設備の稼働率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のトレイフィーダおよびトレイセット用のパレットならびにトレイセット方法は、部品補給に伴う作業者の作業負荷を軽減するとともに設備の稼働率を向上させることができるという効果を有し、部品を基板に実装する部品実装分野において有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 部品実装装置
3 基板
4A,4B 部品供給部
5 トレイフィーダ
6 トレイ
6a 部品収納部
6b キャビティ部
6c 側壁部
6d エンボス部
60 部品
7 Y軸移動テーブル
8A,8B X軸移動テーブル
9A,9B 実装ヘッド
10 単位移載ヘッド
13 テープフィーダ
23 マガジン
23a パレット収納部
24 パレット
25 パレット保持部
26 保持部昇降機構
50A、50B,50C,50D、50E 規制部材
54 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装装置の部品供給部に配置され部品を収納するキャビティ部が複数凹設された平面部を有する形態のトレイを部品実装機構による部品取出し位置に供給するトレイフィーダであって、
前記トレイを所定位置に位置決めして保持するパレットと、
前記パレットを複数格納するマガジンと、
前記マガジンから前記パレットを引き出して前記部品取出し位置まで移動させるパレット移動機構とを備え、
前記パレットの上面には、前記トレイを下方から支持するとともに、前記平面部から下方に延出して設けられた延出部の側面に当接することにより前記トレイの水平方向の位置を規制する規制部材が配設されていることを特徴とするトレイフィーダ。
【請求項2】
部品実装装置の部品供給部に配置され部品を収納するキャビティ部が複数凹設された平面部を有する形態のトレイを部品実装機構による部品取出し位置に供給するトレイフィーダに装備され、前記トレイを所定位置に位置決めして保持するパレットであって、
前記トレイを下方から支持するとともに、前記平面部から下方に延出して設けられた延出部の側面に当接することにより前記トレイの水平方向の位置を規制する規制部材が上面に配設されていることを特徴とするトレイセット用のパレット。
【請求項3】
前記トレイは平面視した中心点に関して非対称形状であり、前記規制部材には当該トレイがパレットに対して誤方向にセットされた場合にのみこのトレイと干渉を生じる位置に突出部が設けられていることを特徴とする請求項2記載のトレイセット用のパレット。
【請求項4】
部品実装装置の部品供給部に配置され部品を収納するキャビティ部が複数凹設された平面部を有する形態のトレイを部品実装機構による部品取出し位置に供給するトレイフィーダに装備され、前記トレイを所定位置に位置決めして保持するパレットにこのトレイをセットするトレイセット方法であって、
前記パレットの上面に配設された規制部材によってトレイを下方から支持するとともに、前記平面部から下方に延出して設けられた延出部の側面に前記規制部材を当接させることにより前記トレイの水平方向の位置を規制することを特徴とするトレイセット方法。
【請求項5】
前記トレイは平面視した中心点に関して非対称形状であり、前記規制部材に当該トレイがパレットに対して誤方向にセットされた場合にのみこのトレイと干渉を生じる位置に突出部を設けることにより、前記トレイのパレットに対する誤方向のセットを防止することを特徴とする請求項4記載のトレイセット方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−98521(P2013−98521A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243301(P2011−243301)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】