説明

トレイ又はラックへの試験管準備装置

【課題】トレイ及びラックへ準備する試験管の全てについて一つのラベル印字貼付装置でラベルを貼着し、ラベル貼着後の試験管の搬送途中においてトレイ又はラック側へ振り分けて供給する。
【解決手段】ラベルを貼着した後の試験管の搬送路の途中に、トレイ供給用停止位置とラック供給用停止位置との二つの停止位置を設けてそれぞれにコンベアを連携させる。トレイへの供給が選択された場合は、トレイ供給用停止位置に連携する搬送コンベアからトレイ内へ直接落下供給し、ラックへの供給が選択された場合は、搬送路の途中で試験管の向きを検出して反対向きの試験管をターンテーブルで反転させて揃えるようにし、搬送路の終端側に設けた湾曲した試験管の姿勢変更通路部を通じて試験管を起立した姿勢でラックの保持孔へ投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血検査の前工程における採血工程での試験管の事前準備作業を行なうものであって、医師からの採血指示に応じて種類の異なる試験管を選択し、これに患者IDや前記採血指示内容等の患者情報を印字したラベルを貼着し、患者別にトレイ又はラックへ選択的に収納することのできる試験管準備装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院、医院、その他の医療機関における血液検査部門では、採血作業者(看護師等)により、患者から血液を採取し、採取した検体を試験管へ収容して検査部門へ移送するようにしている。血液検査では、その血液検査項目に応じて、多種類の試験管が準備されており、通常、一人の患者に対して複数種類の検査が同時に行われる。そのため、試験管の準備も一人の患者に対して複数種類のものが試験管準備装置によって自動的に準備されるようになっている。また採血室では多数の患者を取り扱うのが当たり前であり、前記試験管準備装置で準備された各試験管にはオーダ番号等のバーコードが印刷されたラベルが貼付されている。
そして、試験管の準備は、患者ごとに一つのトレイを準備し、前記選択された複数本のラベル貼着済の試験管を一つのトレイへ収容し、採血室へ搬送するようにしている。
このような採血業務の自動化を図り、採血業務を支援する技術として、特許文献1及び特許文献2に記載された技術がある。
【0003】
この特許文献1に記載された技術は、複数の試験管収容部を備え、医師からの採血オーダ情報に基づいて患者の採血に必要な種類の試験管を対応する試験管収容部から取り出し、ラベル印字・貼付手段を用いて、患者の採血に関する情報をラベルに印字し、印字後のラベルを取り出した試験管に貼り付けるようにしている。そして、ラベル貼付後の試験管を排出手段で試験管回収部まで移送し、試験管回収部にてラベル貼付後の試験管を患者毎にトレイで収容するようにしている。
この特許文献1の試験管は、複数の試験管収容部に収容されているとき及びラベル貼付位置へ移動するとき、ラベル貼付後にトレイへ移動するとき、トレイの中に収容されているときの全てにおいて水平状態を維持している。
【0004】
一方、ラックへ試験管を準備する従来技術として特許文献2に記載されたものがある。この特許文献2の技術は、一列に並んだラックの保持孔にそれぞれ試験管を差し込んで保持し、試験管を立てた状態で患者の採血に関する情報を印字したラベルを試験管の外周面に当接させ、貼付ロールで試験管の外周面に押し付けてラベルを試験管の外周面に貼着している。そして、保持孔の一個分だけラックを前進移動させ、次の保持孔に保持された試験管の外周面に同様にして患者の採血に関する情報を印字したラベルを貼着するようにしている。
この特許文献2の試験管は、ラックに保持されたとき以降は垂直状に立った姿勢を保っている。
【特許文献1】特開平10−59336号公報
【特許文献2】特開2000−153818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に示すように、ラベル貼着後の試験管をトレイへ準備する技術では、試験管が水平状態で移動し、水平状態の試験管に対してラベルを貼着するものであるのに対し、試験管をラックへ準備する技術にあっては特許文献2に示すように、ラックの保持孔へ試験管を差し込んで起立状態に保持した状態で試験管の外周面にラベルを貼着している。
【0006】
従って、試験管をトレイへ準備する場合とラックへ準備する場合とでは、ラベルの貼着方式が全く異なり、ラベルの印字貼付装置を一つのもので兼用できないため、試験管のトレイへの準備装置とラックへの準備装置とには全く異なる方式のラベルの印字貼付装置をそれぞれ独立して別個に組み込む必要があり、試験管のトレイへの準備装置とラックへの準備装置とはそれぞれが独立した相互に関連性のない製品となっていた。
また試験管をラックへ準備する場合は、看護士などの病院側スタッフが医師などからの指示書に基づいてラックへ採血管を準備し、ラベル印字装置で患者情報、採血情報などの特定情報を印字したラベルをプリントアウトし、これを病院側スタッフがラックに立設した試験管へ手貼りで貼着するようにすることもあった。
【0007】
本発明は従来の前記課題に鑑みてこれを改良除去したものであって、トレイ及びラックへ準備する試験管の全てについて一つのラベル印字貼付装置でラベルを貼着し、ラベル貼着後の試験管の搬送途中においてトレイ又はラック側へ振り分けて供給するようにしたトレイ又はラックへの試験管準備装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
而して、前記課題を解決するために本発明が採用した請求項1の手段は、患者の検査に必要な種類の試験管を選択して取り出し、これに患者情報等を印字したラベルを貼着し、ラベル貼着後の試験管をラック又はトレイへ患者ごとに収納して準備する試験管の準備方法であって、ラベルを貼着した後の試験管の搬送路の途中に、トレイ供給用停止位置とラック供給用停止位置との二つの停止位置を設けてそれぞれにコンベアを連携させることにより、試験管をトレイ側又はラック側へ選択的に振り分けて供給するようにし、トレイへの供給が選択された場合は、トレイ供給用停止位置に連携する搬送コンベアからトレイ内へ直接落下供給し、ラックへの供給が選択された場合は、搬送路の途中で試験管の向きを検出して反対向きの試験管をターンテーブルで反転させて揃えるようにし、搬送路の終端側に設けた湾曲した試験管の姿勢変更通路部を通じて試験管を起立した姿勢でラックの保持孔へ投入するようにしたことを特徴とするトレイ又はラックへの試験管の準備方法である。
【0009】
本発明が採用した請求項2の手段は、患者の検査に必要な種類の試験管を種類別に収容する試験管収容部と、該試験管収容部から取り出した試験管に患者情報等を印字したラベルを貼着するラベル印字貼付装置とを備え、ラベルを貼着した後の試験管の搬送路の途中に、トレイ供給用停止位置とラック供給用停止位置との二つの停止位置を設け、トレイ供給用停止位置にはトレイへの搬送コンベアを連携接続し、ラック供給用停止位置にはラックへの搬入コンベアを連携接続し、ラック搬入コンベアの途中に試験管の切出装置と試験管の向き検出部を設け、切出装置の排出側下方に切出された試験管を受け取るためのターンテーブルを配置し、ターンテーブルの底板に開閉シャッターを設け、開閉シャッターの下方に搬出コンベアを設け、搬出コンベアの終端側を湾曲させて試験管が水平状態から垂直状態になるように試験管の姿勢変更通路部を形成し、ラックの保持孔へ試験管を立てた状態で供給するようにしたことを特徴とするトレイ又はラックへの試験管準備装置である。
【0010】
本発明が採用した請求項3の手段は、ラベルを貼着した後の試験管の搬送路が上下方向に往復駆動するリフターであって、最上部にラック供給用停止位置が設けられ、その下方にトレイ供給用停止位置が設けられている請求項2に記載のトレイ又はラックへの試験管準備装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明にあっては、先ず、採血検査受付がなされると、当該患者に関する医師などの採血指示情報が上位コンピュータを通じて試験管準備装置へ伝達される。試験管準備装置では、前記採血指示情報に基づいて、患者の検査に必要な種類の試験管を選択して取り出し、これに患者情報等を印字したラベルを貼着し、ラベルを貼着した試験管を準備するようにしている。
そして、ラベルを貼着した後の試験管の搬送路の途中に、トレイ供給用停止位置とラック供給用停止位置との二つの停止位置を設けてそれぞれにコンベアを連携させることにより、試験管をトレイ側又はラック側へ選択的に振り分けて供給するようにしている。
トレイへの供給が選択された場合は、トレイ供給用停止位置に連携する搬送コンベアからトレイ内へ直接落下供給している。一方、ラックへの供給が選択された場合は、搬送路の途中で試験管の向きを検出して反対向きの試験管をターンテーブルで反転させて揃えるようにし、搬送路の終端側に設けた湾曲した試験管の姿勢変更通路部を通じて試験管を起立した姿勢でラックの保持孔へ投入するようにしている。
【0012】
このようにトレイ又はラックへ試験管を準備する場合にあって、一つのラベル印字貼付装置でトレイ及びラックへ供給する試験管に対してラベルを印字及び貼着して準備するようにすることで、それぞれの装置へ複数種類の試験管の収容部(ストッカー)と、ラベルの印字貼付装置とを組み込む必要がなくなり、イニシャルコストの低減及び装置全体の構成のシンプル化が可能となる。
またトレイへの準備装置とラックへの準備装置とを、搬送路の途中で分離できるように構成することもできるようになり、トレイへの試験管準備装置のみを使用している状態で、オプションによりラックへの試験管準備装置を後付けで追加装備することも可能である。
【0013】
請求項2の発明は、前記請求項1の方法発明を実現するための具体的な試験管準備装置の発明である。本発明の試験管準備装置は、先ず、患者の検査に必要な種類の試験管を種類別に収容する試験管収容部を有している。試験管準備装置は、医師などの採血指示情報に基づいて、前記収容部から必要な試験管を取り出している。取り出された試験管は、ラベル印字貼付装置へ供給される。ラベル印字供給装置では、採血受付を行った患者に対応する情報をラベルへ印字し、これを前記供給されてきた試験管へ貼付する。この試験管へのラベル貼付までは、従来公知の装置を利用することが可能である。
【0014】
次に、ラベル貼着後の試験管は、搬送路の途中でトレイ供給用停止位置か又はラック供給用停止位置のいずれかの位置まで搬送される。停止位置の選択は、トレイへ準備するのかラックへ準備するのかの予め定められた指令に基づいて行われる。ラックへの供給用停止位置には、ラックへの搬入コンベアが連携接続されており、該搬入コンベアへ移載されたラベル貼着後の試験管は、その終端側から下方に待機するトレイへ自然落下により供給される。
またラック供給停止位置からラック搬入コンベアへ移載された試験管は、その途中に配設された試験管の向き検出部により、試験管の搬送方向が検知される。これは例えば光電式の投受光センサーを用い、試験管の底部側が先になって搬送されて来たときは、投光センサーからの光が試験管を透過して受光センサーで受光することで検知でき、また試験管の頭部が先になって搬送されて来たときは、試験管頭部のゴム栓又はラベルによって投光センサーからの照射光が遮断されることによって検知できる。
【0015】
試験管の向きが検知された後は、切出装置によって搬入コンベアから搬出コンベア側へ切り出されて供給される。切り出された試験管は、ターンテーブルへ落下供給される。そして、前記向き検出装置からの信号によって、試験管の向きが頭部側が先になって搬送されて来たときは、ターンテーブルを水平面内で180度回転させ、底部が先になるように方向を整列する。ターンテーブルは、その底壁に開閉シャッターが設けられており、底部側が先となるように整列された試験管は、開閉シャッターが開くことで下方の搬出コンベアへ移載される。
搬出コンベアの終端側は、その終端側が水平状態から垂直状態となるように湾曲した通路(姿勢変更通路部)に形成されている。この通路を通過することで試験管は、水平姿勢から垂直姿勢となる。そのため、搬出コンベア終端側の排出口の直下に目的とするラックの保持孔を位置させることにより、ラックの保持孔へ立てた状態で試験管を供給することが可能である。
このように、本装置を使用すれば、トレイ及びラックへ準備する試験管の全てについて一つのラベル印字貼付装置でラベルを貼着し、ラベル貼着後の試験管の搬送途中においてトレイ又はラック側へ振り分けて供給するようにすることができる。
【0016】
請求項3の発明にあっては、ラベルを貼着した後の試験管の搬送路を、上下方向に往復駆動するリフターで構成するようにしている。最上部にラック供給用停止位置を設け、その下方にトレイ供給用停止位置を設けている。
このように上下方向に往復移動するリフターに二段階の停止位置を設けることにより、水平方向の搬送路に二段階の停止位置を設ける場合に比較してスペース的に非常に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の構成を図面に示す発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。図1乃至図4は本発明の一実施の形態に係るトレイT又はラックRへの試験管準備装置1を示すものであり、図1は同装置1の全体を示す平面図、図2は同正面図、図3はラック装置3の右側面図、図4はラベラー本体2の右側面図である。
【0018】
図1乃至図4に示す如く、この実施の形態のトレイT又はラックRへの試験管準備装置1は、ラベラー本体2と、このラベラー本体2に対して後付け装備が可能であり、しかも独立して分離可能なラック装置3とを有している。ラベラー本体2は、種類の異なる試験管Sごとに多数を収容してなる収容部(ストッカー)と、該収容部から切り出された採血管Tに対して上位コンピュータからの患者情報をラベルへ印字し、印字したラベルを試験管の外周面へ貼着するラベル印字貼付装置と、ラベル貼付後の試験管を排出する搬送手段とを本体内に装備している。これらのラベラー本体内の各装置の構成と機能については、既に公知のオートラベラーの技術と同じであり、この公知技術を利用することが可能である。またラベラー本体2は、その上面側にトレイ機構部4と、トレイTへの試験管を搬送するためのL字状に配設された第一及び第二の試験管搬送コンベア5、6とを有している。またラベラー本体2の上面側には、トレイストッカー7と、手貼り用のラベルへ患者情報等を印字する手貼りラベラー8とが設置されている。
【0019】
ところで、本実施の形態にあっては、ラベラー本体2内に組み込まれたオートラベラーでラベルが貼着された後の試験管Sを排出する搬送手段に連係し、後述するトレイ又はラックへ搬送する搬送手段としてのリフター9を有している。リフター9は、ラベラー本体2の背面側に装着されており、オートラベラーの試験管排出側からラベル貼着後の試験管Sを受け取る小寸法の昇降コンベア10を有している。昇降コンベア10は、ベルト駆動手段11によって上下方向往復移動可能に設けられており、最下降位置でオートラベラーの試験管搬送装置からラベル貼着後の試験管Sを受け取り、最上位位置でラック装置3側へ試験管Sを受け渡し、それよりもやや下方の中間位置でトレイ機構側へ試験管Sを受け渡すようになっている。すなわち、昇降コンベア10は、最も下方の試験管受取位置と、最も上位のラック供給停止位置と、最上位位置よりもやや下方のトレイ供給停止位置との三つの停止位置を採ることができるように設定されている。
【0020】
ラック装置3は、前記リフター9のラック供給停止位置における昇降コンベア10から供給される試験管Sを受け取る搬入コンベア12と、搬入コンベア12から受け取った試験管Sの搬送方向の向きを検出し、試験管Sの底部が先になって搬送されるように試験管Sの向きを揃えるターンテーブル13と、ターンテーブル13から受け取った試験管Sをラック供給側へ搬送する搬出コンベア14と、搬出コンベア14に連続する投入シュート15と、投入シュート15の下方に待機し、投入シュート15から排出される試験管Sを待ち受けるラックR及びその駆動機構16とを有している。なお、ラックRの上には、試験管Sの投入姿勢を安定させるためのアタッチメントAが脱着自在に載置されている。
【0021】
搬入コンベア12の終端側には、搬送されて来た試験管Sを停止させるストッパー17と、試験管Sの到着を検知する図示しないリミットセンサーなどからなる到着センサーと、該停止位置で停止中の試験管Sの先頭部分に赤外線などを照射してその透過光を受光することで試験管Sの底部か頭部(開口に栓体が装着されている)かを検出する試験管向き検出部(図示せず)と、停止位置の試験管Sを搬送方向とクロスする方向へ切り出す切出装置18とが設けられている。切出装置18は、搬入コンベア12を跨ぐように配置されたE字状の切出板19を有している。切出板19の開口部は下向きに配置されている。試験管Sは、図3における切出板19の真ん中と右端の板とで仕切られた開口部を先端側が通過し、試験管本体部分が切出板19に対向する位置で先端部分がストッパーに当接して停止するようになっている。また切出装置18は、常時はばね等の蓄性弾力をもって図3の右方向へ付勢されており、「切出」動作の開始信号が出力されると、モーターの駆動力によりベルト及びプーリを介して図3の左方向へ移動し、試験管Sを切り出すようになっている。ばね等で付勢されているため、手動動作も可能であり、点検などが容易に行えるようになっている。
【0022】
ターンテーブル13は、図5の平面図及び図6の正面図に示すように、回転体20の上面側中央部にホッパー21が設けられており、ホッパー21の中央部の底壁に長方形状の開口が穿設されている。また底壁の下方にはボックス状でかつスライド式の開閉シャッター22が取り付けられている。この開閉シャッター22は、通常は前記ホッパー底壁の開口を閉塞する方向にばね等の蓄性弾力をもって付勢されている。そして、「開く」旨の信号が出力されると、モーターの駆動力によりベルト及びプーリを介して開方向へ移動し、ホッパー底壁の試験管Sを下方の搬出コンベア14上へ落下供給するようになっている。また開閉シャッター22は、手動でも開閉できるようになっている。
【0023】
更に、ターンテーブル13は、試験管Sの進行方向に対する傾き(進行方向に対する試験管中心軸線の水平面内におけるズレ)が生じないようにするために、回転体20の位置検出機構23及び位置決め機構24が設けられている。これは試験管Sが傾いたまま搬出コンベア14によって搬送されると、投入シュート15からラックRへ投入されるときの試験管Sの姿勢が悪くなり、正確な投入ができなくなる虞があるためである。
回転体20の位置検出機構23は、回転体20の外周側面に取り付けた回転位置検出板25と光電式の投受光センサー26とからなり、投光センサーからの赤外線などが回転位置検出板25によって遮られて受光センサーで受光できなくなったときに、回転体20が所定の回転位置にあることを検知するようになっている。また位置決め機構24は、回転体20の外周側面の一部に設けた凹部に対して電磁ソレノイドにより進退するロックピン27を嵌合させることにより、回転体20を固定するようにしている。
【0024】
更にまた、ターンテーブル13は、回転体20のホッパー21内に試験管Sが確実に供給されたか否かの確認と、当該ホッパー21の開閉シャッターが開いて試験管Sが搬出コンベア14上へ確実に落下供給されたか否かを確認するための試験管検知機構28を有している。この試験管検知機構28は、光電式の投光センサー29と受光センサー30とが回転体20を挟んでその外周面に対向配置されている。このときの回転体20は、ロックピン27によって回転が固定されており、この位置における投光センサー29からの照射光が回転体20を通過して反対側の受光センサー30で受光されるように回転体20の外周側面には透過窓が形成されている。前記投光センサー29から照射される赤外線などの光は、ホッパー21内の試験管Sに対して斜めになるように各センサーの位置が決定されており、ホッパー21内に試験管Sがあるときは、当該試験管Sの向きがどちらを向いていてもラベル又は栓体によって前記照射光が遮断されるようになっている。
【0025】
搬出コンベア14は、その両側面にガイド板31が立設されている。このガイド板31の装置正面側に面する一部分には、蝶番とばね等の蓄性弾力により常時は閉塞方向へ付勢された点検扉32が取り付けられている。この点検扉32を作業者が手動により手前へ引くと、蝶番部分を支点として回動し、ターンテーブル直下の搬送コンベア14が露出するようになっている。開放状態から手を離すと、点検扉32は蓄性弾力により自動的に閉塞位置まで復帰するようになっている。
また搬出コンベア14の図2における右端側には、可動板39が取り付けられており、右端側の下方には試験管Sの回収トレイ40が配置されている。これは、停電などにより装置の電源がOFFになった後、再起動したときに、ラック装置3内に残っている試験管Sについては、その情報を認識することができないので、強制的に排出するためのものである。再起動時は、可動板39を開放し、搬出コンベア14を逆転させ、ラック装置3内に残っている試験管Sを回収トレイ40へ回収するようにしている。
【0026】
搬出コンベア14に連続する投入シュート15は、その姿勢変更通路部33が水平状態から垂直状態になるように湾曲しており、その周囲はボックス状に囲われている。この投入シュート15の装置正面側に面する一部分にも、蝶番とばね等の蓄性弾力により常時は閉塞方向へ付勢された点検扉34が取り付けられている。この点検扉34の場合も作業者が手動により手前へ引くと、蝶番部分を支点として回動し、湾曲した姿勢変更通路部33が露出するようになっている。開放状態から手を離すと、点検扉34は蓄性弾力により自動的に閉塞位置まで復帰する。
【0027】
ラックRは、図1の平面図に表されているように、試験管Sを垂直状態に立てて保持できる試験管保持孔35が設けられており、縦10列で、横5列の合計50個の試験管保持孔が形成されている。またこのラックRの上に脱着自在に載置されるアダプターAは、前記保持孔35と同位置に試験管Sの投入時の姿勢が垂直状になるように案内補助するための姿勢制御用孔36が上下方向に貫通して形成されている。
【0028】
このラックRを駆動させるラック駆動機構16は、X軸方向へ移動自在なスライダー37とY軸方向へ移動自在なスライダー38とが組み合わされており、ラックRの各試験管保持孔35を投入シュート15の真下へ正確に位置決めできるようになっている。
【0029】
次に、以上のように構成されたラックR又はトレイTへの試験管準備装置1の動作態様について、トレイTへ準備する外来患者の場合から説明する。先ず、患者が診察券カード又は整理券などを提示して採血受付を行うと、これらの診察券カードなどに記載又は記憶された患者IDがバーコードリーダ又はICカードリーダ/ライタなどによって読み取られる。読み取られた患者IDは、医療情報システム(HIS)、検査情報システム(LIS)などの上位コンピュータへ送られ、これらの上位コンピュータから当該患者の患者情報及び採血情報が採血室の試験管準備装置1のラベラー本体2へ伝達される。
【0030】
ラベラー本体2は、その内部に組み込まれたオートラベラーが前記採血情報に基づいて必要な試験管Sを試験管収容部から選択的に取り出し、これをラベル印字貼付装置へ移送する。ラベル印字貼付装置では、前記患者情報及び採血情報をラベルへ印字し、印字後のラベルを前記取り出された試験管の外周面へ貼着する。ラベル貼着後の試験管は、搬送装置により、ラベラー本体2の背面側に取り付けられたリフター9の最下降位置で待機する昇降コンベア10の位置まで搬送される。リフター9の昇降コンベア10は、ラベラー本体2の搬送装置によって試験管Sが所定の距離に近づくと、ラベラー本体2に設けたセンサーがこれを検知し、昇降コンベア10を駆動させるようになる。これにより、オートラベラー側から送られてくる試験管Sは、そのまま昇降コンベア10上へ乗り移り、完全に乗り移ると昇降コンベア10の駆動が停止する。
【0031】
続いて、リフター9が駆動し、昇降コンベア10を最上位位置よりもやや下方のトレイ供給停止位置まで上昇させる。昇降コンベア10は、この位置へ達すると、今度は前記とは逆方向へ回転駆動して試験管Sを排出し、第一の試験管搬送コンベア5上へ移載する。移載された試験管Sは、この第一のコンベア5に連続してL字状に配設された第二のコンベア6に移載され、横向きのままで搬送されてその終端からトレイTへ落下供給される。昇降コンベア10は、試験管Sが第一コンベア5へ移載された時点で回転駆動が停止される。またリフター9は、昇降コンベア10を最下降位置まで降下して搬送復帰させる。
【0032】
このようにして医師などの採血指示を反映した採血指示情報に基づいて、全ての種類のラベル貼着済の試験管SがトレイTへ準備されると、トレイ機構部4はトレイTをその一個分だけ前進移動させ、トレイストッカー7から試験管Sの受け渡し位置へ新たなトレイTを送り込んで待機する。以上でトレイTへの試験管Sの準備作業は終了する。
なお、患者に特殊な採血指示がなされており、別途試験管を準備する場合はこの試験管に貼着するための手貼りラベルが手貼りラベラー8からトレイTへ落下供給されるようになっている。
【0033】
次に、ラックRへラベル貼着済の試験管Sを準備する場合について説明する。試験管SのラックRへの準備は、入院患者などについて行われることが多い。入院病棟などにおいては、その日に採血検査を必要とする患者のリストがナースステーションの端末などにデータとして管理保存されている。病院スタッフが病棟ごとに、当日に行われる採血患者のIDをHIS又はLISなどに送ると、当該患者に関する患者情報及び採血情報が試験管準備装置1のラベラー本体2へ伝達される。ラベラー本体2では、前記したトレイTへ試験管Sを準備する場合と同じように、その内部に組み込まれたオートラベラーが前記採血情報に基づいて必要な試験管Sを試験管収容部から選択的に取り出し、これに前記患者情報及び採血情報を印字したラベルを貼着し、貼着後の試験管Sをリフター9の昇降コンベア10の位置まで搬送する。続いて、昇降コンベア10が回転駆動し、試験管Sを受け取ると、リフター9が駆動し、昇降コンベア10を最上位位置まで上昇させる。昇降コンベア10は、この上昇停止位置で逆回転し、試験管Sを排出する。排出された試験管Sは、ラック装置3の搬入コンベア12へ落下供給される。
【0034】
そして、試験管Sは、搬入コンベア12によって、図2の左方向へ搬送され、その終端側で切出装置18のE字状切出板19の間を通過し、ストッパー17に当接して停止する。この試験管Sの到着は、図示しない到着センサーにより、検知することが可能である。またこの停止位置には、光電式の投受光センサーなどからなる試験管Sの向き検出部が配設されており、該停止位置で停止中の試験管Sの先頭部分に赤外線などを照射してその透過光を受光することで試験管Sの底部か頭部(開口に栓体が装着されている)かを検出する。試験管Sの底部側が先になって搬送されている場合は、投光センサーからの照射光は試験管Sの底部をそのまま透過して反対側の受光センサーで受光されることで分かる。また試験管Sの頭部側が先になって搬送されている場合は、試験管Sの頭部には栓体が装着されているので、この栓体によって前記投光センサーから照射された光が遮断され、受光センサーで光検知信号が得られなくなることで分かる。
【0035】
試験管Sの方向検知後は、切出装置18が前記搬入コンベア12の搬送方向とはクロスする方向(図3の左方向)へ前進し、試験管Sをターンテーブル回転体20の上面側中央部に設けられたホッパー21へ落下供給する。試験管検知機構28は、ホッパー21内へ試験管Sが確実に供給されたかどうかを検出する。試験管Sがホッパー21内に存在しているときは、投光センサー29から照射された赤外線などの光が、試験管Sの外周面に貼着されているラベル又は頭部開口に装着されている栓体によって遮断されて受光センサー30で受光されないことで分かる。試験管Sが存在していないときは、投光センサー29からの照射光が直接受光センサー30で受光されることによって分かる。ホッパー21内に試験管Sが存在している状態で、前記向き検出部からの出力信号によって、試験管Sの向きが頭部が先になっていることが分かった場合は、モーター及びベルト・プーリー駆動方式により、ターンテーブル13の回転体20が180度回転する。これにより、搬送方向に対して試験管Sの向きが底部が先になるように揃えられる。
【0036】
このときターンテーブル13の回転体20は、試験管Sの進行方向に対する傾き(進行方向に対する試験管中心軸線の水平面内におけるズレ)が生じないようにするために、位置検出機構23で回転体20の回転位置を検出し、更に位置決め機構24のロックピン27によって正確な回転位置で停止するように固定されている。回転体20の回転停止位置を正確に行うようにした理由は、前記した通りであり、試験管Sの中心軸線が傾いたまま搬出コンベア14によって搬送されると、投入シュート15からラックRへ投入されるときの試験管Sの姿勢が悪くなり、正確な投入ができなくなる虞があるためである。
このようにして試験管Sの向きが底部が先になって搬送されるように揃えられ、回転体20の回転角度位置が正確に位置決めされると、ホッパー21内に投入された試験管Sは底部が先頭になった上で、その中心軸線が搬出コンベア14の搬送方向に一致することになる。
【0037】
然る後は、ホッパー21の底壁開口を閉塞しているボックス状でかつスライド式の開閉シャッター22が開動作する。この開閉シャッター22は、通常は前記ホッパー底壁の開口を閉塞する方向にばね等の蓄性弾力をもって付勢されている。そして、「開く」旨の信号が出力されると、モーターの駆動力によりベルト及びプーリを介して開方向へ移動する。これにより、ホッパー底壁の試験管Sは、下方の搬出コンベア14上へ自然落下により供給される。
【0038】
搬出コンベア14は、図2の右側から左側へ向けて試験管Sを搬送する。やがて試験管Sは、投入シュート15に至り、その湾曲した姿勢変更通路部33を通過することによって水平状態から垂直状態となるように姿勢が変更される。そして、垂直状態のまま下方で待機するラックRの試験管保持孔35へ落下投入される。このとき、ラックRの上面側に載置されたアタッチメントAの姿勢制御用孔36を通過することにより、ラックRの上面と投入シュート15の下端面との間の空間領域における試験管Sの姿勢を垂直状に安定して維持することが可能である。これは、ラックRの上面とアタッチメントAの下端面との間には、所定寸法の空間領域が設けられているからである。この空間領域は、ラックRへの試験管Sの準備を、試験管Sの中間より上部がラック上面から露出するように試験管Sを保持することで、採血後の試験管Sへ収容された検体の状態を確認できるようにするためのものである。
【0039】
このようにしてラックRの試験管保持孔35へ試験管Sが投入された後は、ラック駆動機構16のX軸スライダー37及びY軸スライダー38を駆動させて次に投入予定の空の試験管保持孔35を投入シュート15の直下へ移動させて配置し、前記した以上の動作を繰り返して順次、ラックRの試験管保持孔35へラベル貼着後の試験管Sを投入準備する。ラックRの試験管保持孔35への全ての試験管Sの投入が完了した後は、アタッチメントAを取り外し、次のラックRの上面へセットすればよい。これで一つのラックRに対する試験管Sの準備作業は終了する。然る後は、ラック機構16から試験管投入済のラックRを取り外し、新たなラックRを装着すればよい。
【0040】
ところで、このラック装置3においては、試験管Sの搬送途中において、試験管Sが搬送路途中で詰まったりすることが考えられる。そのため、本実施の形態にあっては、そのための保守点検を容易にするための手段が設けられている。切出装置18は手動により操作することが可能であり、前進した状態で、搬入コンベア12の上に試験管Sが残っていないかなどを点検することが可能である。切出装置18は、前進位置から手を放すと、ばね等の蓄性弾力により自動復帰するようになっている。またターンテーブル13のホッパー下方に設けられたボックス状の開閉シャッター22は手動で開放することが可能であり、これも手を離すと蓄性弾力などにより閉塞位置へ自動復帰することが可能である。更に、搬出コンベア14のターンテーブル直下に位置する手前側の側面部分に設けられた点検扉32と、投入シュート15の手前側側面に設けた点検扉34とは、蝶番とばね等の蓄性弾力により常時は閉塞方向へ付勢され、手動によりワンタッチで開放されてその内部を確認することができるようになっている。また確認後は手を放すだけで蓄性弾力により自動復帰することが可能である。
【0041】
このように本実施の形態におけるラックR又はトレイTへの試験管準備装置1にあっては、一つのオートラベラーによって試験管Sへラベルを貼着した後、ラックR又はトレイTへ選択的に供給することができる。つまり、オートラベラーを兼用でき、イニシャルコストの低下、装置全体のコンパクト化が可能である。また一つの装置で外来の採血検査と病棟の採血検査とを受け持つことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
ところで、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜の変更が可能である。例えば、本装置は、ラベラー本体2がオートラベラーの機能と、トレイTへの試験管準備装置の機能とを有しており、ラベラー本体2のみを単独で使用することも可能であるため、ラベラー本体2が先行して導入されている医療機関などに対して、ラック装置3を後から追加して装備し、トレイTとラックRのどちらへもラベル貼着後の試験管Sを準備するシステム構成が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態に係るラック又はトレイへの試験管準備装置の全体を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るラック又はトレイへの試験管準備装置の全体を示す正面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るラック装置を示す右側面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るラベラー本体の右側面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るターンテーブルの平面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るターンテーブルの正面図である。
【符号の説明】
【0044】
1…ラック又はトレイへの試験管準備装置、2…ラベラー本体、3…ラック装置、4…トレイ機構部、5…第1コンベア、6…第2コンベア、7…トレイストッカー、8…手貼りラベラー、9…リフター、10…昇降コンベア、11…ベルト駆動手段、12…搬入コンベア、13…ターンテーブル、14…搬出コンベア、15…投入シュート、16…ラック機構、17…ストッパー、18…切出装置、19…切出板、20…回転体、21…ホッパー、22…開閉シャッター、32,34…点検扉、33…姿勢変更通路部、35…試験管保持孔、A…アタッチメント、R…ラック、T…トレイ、S…試験管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の検査に必要な種類の試験管を選択して取り出し、これに患者情報等を印字したラベルを貼着し、ラベル貼着後の試験管をラック又はトレイへ患者ごとに収納して準備する試験管の準備方法であって、ラベルを貼着した後の試験管の搬送路の途中に、トレイ供給用停止位置とラック供給用停止位置との二つの停止位置を設けてそれぞれにコンベアを連携させることにより、試験管をトレイ側又はラック側へ選択的に振り分けて供給するようにし、トレイへの供給が選択された場合は、トレイ供給用停止位置に連携する搬送コンベアからトレイ内へ直接落下供給し、ラックへの供給が選択された場合は、搬送路の途中で試験管の向きを検出して反対向きの試験管をターンテーブルで反転させて揃えるようにし、搬送路の終端側に設けた湾曲した試験管の姿勢変更通路部を通じて試験管を起立した姿勢でラックの保持孔へ投入するようにしたことを特徴とするトレイ又はラックへの試験管の準備方法。
【請求項2】
患者の検査に必要な種類の試験管を種類別に収容する試験管収容部と、該試験管収容部から取り出した試験管に患者情報等を印字したラベルを貼着するラベル印字貼付装置とを備え、ラベルを貼着した後の試験管の搬送路の途中に、トレイ供給用停止位置とラック供給用停止位置との二つの停止位置を設け、トレイ供給用停止位置にはトレイへの搬送コンベアを連携接続し、ラック供給用停止位置にはラックへの搬入コンベアを連携接続し、ラック搬入コンベアの途中に試験管の切出装置と試験管の向き検出部を設け、切出装置の排出側下方に切出された試験管を受け取るためのターンテーブルを配置し、ターンテーブルの底板に開閉シャッターを設け、開閉シャッターの下方に搬出コンベアを設け、搬出コンベアの終端側を湾曲させて試験管が水平状態から垂直状態になるように試験管の姿勢変更通路部を形成し、ラックの保持孔へ試験管を立てた状態で供給するようにしたことを特徴とするトレイ又はラックへの試験管準備装置。
【請求項3】
ラベルを貼着した後の試験管の搬送路が上下方向に往復駆動するリフターであって、最上部にラック供給用停止位置が設けられ、その下方にトレイ供給用停止位置が設けられている請求項2に記載のトレイ又はラックへの試験管準備装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−268032(P2008−268032A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112326(P2007−112326)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(395000337)株式会社アステックコーポレーション (32)
【Fターム(参考)】