説明

トレッド用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤ

【課題】グリップ性能、耐摩耗性、スノー性能、転がり抵抗特性、加工性及び操縦安定性をバランス良く改善できるトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分100質量部に対して、液状ポリブタジエンを1〜15質量部、ガラス転移温度が10℃以下であり、芳香族ビニル単量体単位の含有量が95質量%以上である芳香族ビニル重合体を2〜100質量部含有するトレッド用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド用ゴム組成物、及びそれを用いたスタッドレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
スパイクタイヤによる粉塵公害を防止するために、スパイクタイヤの使用を禁止することが法制化され、寒冷地では、スパイクタイヤに代わってスタッドレスタイヤが使用されるようになった。
【0003】
スタッドレスタイヤのスノー性能を改善する方法として、一般的に、ガラス転移温度の低いゴム成分(ブタジエンゴム等)を配合することが知られている。しかしながら、この場合、グリップ性能及び操縦安定性が悪化する傾向がある。一方、ガラス転移温度の高いゴム成分(スチレンブタジエンゴム等)を配合すると、グリップ性能及び操縦安定性が改善するものの、スノー性能が悪化する傾向がある。このように、スノー性能と、グリップ性能及び操縦安定性とは、相反する関係にあり、これらの性能をバランス良く改善する方法が望まれていた。
【0004】
また、昨今の世情から、タイヤに対し、転がり抵抗特性(低燃費性)及び耐摩耗性を改善することも要求されている。転がり抵抗特性を改善する方法として、一般的に、充填剤としてシリカを配合する方法が知られているが、シリカを高充填させた場合には、シリカが分散しにくくなり、耐摩耗性及び加工性が悪化する傾向がある。
【0005】
特許文献1には、グリップ性能及び耐摩耗性を改善する方法として、芳香族ビニルモノマーのみを重合して得られた重合体を配合する方法が開示されているが、グリップ性能及び耐摩耗性以外の性能については検討されていない。
【0006】
また、特許文献2には、グリップ性能、耐摩耗性及び耐ブリード性を改善する方法として、低分子量芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を配合する方法が開示されているが、グリップ性能、耐摩耗性及び耐ブリード性以外の性能については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−112994号公報
【特許文献2】特開2005−225946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決し、グリップ性能、耐摩耗性、スノー性能、転がり抵抗特性、加工性及び操縦安定性をバランス良く改善できるトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ゴム成分100質量部に対して、液状ポリブタジエンを1〜15質量部、ガラス転移温度が10℃以下であり、芳香族ビニル単量体単位の含有量が95質量%以上である芳香族ビニル重合体を2〜100質量部含有するトレッド用ゴム組成物に関する。
【0010】
上記液状ポリブタジエンの数平均分子量は600〜20000であることが好ましい。
【0011】
上記液状ポリブタジエンの水素添加率は20〜60モル%であることが好ましい。
【0012】
上記芳香族ビニル重合体の芳香族ビニル単量体単位の含有量は100質量%であることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液状ポリブタジエンと、ガラス転移温度が一定以下であり、かつ芳香族ビニル単量体単位の含有量が一定以上である芳香族ビニル重合体とをそれぞれ所定量含有するゴム組成物であるので、該ゴム組成物をトレッドに使用することにより、グリップ性能、耐摩耗性、スノー性能、転がり抵抗特性、加工性及び操縦安定性がバランス良く得られるスタッドレスタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のゴム組成物は、液状ポリブタジエンと、ガラス転移温度が一定以下であり、かつ芳香族ビニル単量体単位の含有量が一定以上である芳香族ビニル重合体とをそれぞれ所定量含有する。上記特定の芳香族ビニル重合体を配合することで、グリップ性能を発揮するために必要な温度領域のtanδを上げ、グリップ性能を改善することができるとともに、操縦安定性を改善することができる。また、液状ポリブタジエンを配合することで、ゴム組成物のガラス転移温度を低くし、低温での貯蔵弾性率(E)を高くすることができる。これにより、グリップ性能及びスノー性能を両立することができるとともに、耐摩耗性及び操縦安定性を改善することができる。更に、液状ポリブタジエンを配合することで耐摩耗性を確保することできるため、カーボンブラック等のフィラーの含有量を減量し、転がり抵抗特性を改善することができる。そして、液状ポリブタジエンは軟化剤としての機能を有していることから、液状ポリブタジエンを配合することにより、加工性を改善することができる。
【0016】
本発明のゴム組成物に使用するゴム成分としては特に限定されないが、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)等のジエン系ゴムを使用することができる。なかでも、耐摩耗性及びグリップ性能を改善できるという理由から、SBR、NRを用いることが好ましく、SBR及びNRを併用することがより好ましい。
【0017】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。また、転がり抵抗特性及び耐摩耗性を改善できるという理由から、末端を変性したSBR(変性SBR)を好適に使用できる。変性SBRとしては、例えば、特開2001−114938号公報に記載されているアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物で変性した変性SBR等があげられる。
【0018】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは23.5質量%以上である。15質量%未満の場合、SBRのTgが低くなるため、グリップ性能が悪化する傾向がある。また、SBRのスチレン含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。45質量%を超えると、SBRのTgが高くなるため、低温で硬くなり、スノー性能が悪化する傾向がある。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、H−NMR測定によって算出される。
【0019】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。30質量%未満であると、グリップ性能を充分に確保できないおそれがある。また、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。90質量%を超えると、スノー性能が悪化する傾向がある。
【0020】
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0021】
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。10質量%未満であると、耐摩耗性及びスノー性能が悪化する傾向がある。また、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。60質量%を超えると、グリップ性能が悪化する傾向がある。
【0022】
ゴム成分100質量%中のSBR及びNRの合計含有量は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは100質量%である。75質量%未満であると、グリップ性能と耐摩耗性のバランスが悪くなる傾向がある。
【0023】
本発明のゴム組成物は、芳香族ビニル重合体を含有する。本明細書において、芳香族ビニル重合体とは、芳香族ビニル単量体単位の含有量が95質量%以上のものをいう。なお、上記芳香族ビニル重合体は、ゴム成分には含まれない。
【0024】
芳香族ビニル重合体を構成する芳香族ビニル単量体(単位)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン等が挙げられる。これらは1種であってもよく、2種以上であってもよい。なかでも、経済的で、加工しやすく、グリップ性に優れていることから、スチレン、α−メチルスチレン及び1−ビニルナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、スチレンであることがより好ましい。
【0025】
芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニル単量体単位以外の成分(エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等)も含んでもよいが、該成分の含有量をできるだけ少なくすることが好ましい。エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体は、ゴム成分との相溶性が悪いため、芳香族ビニル重合体中のオレフィン系単量体単位の含有量が多くなると、ブリードアウトが発生しやすくなる傾向がある。また、ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体は、ゴム成分と共架橋することによりヒステリシスロスが低下するため、芳香族ビニル重合体中のジエン系単量体単位の含有量が多くなると、ヒステリシスロスが低下することにより、グリップ性能が悪化する傾向がある。このような理由から、芳香族ビニル重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量は、95質量%以上、好ましくは97質量%以上、より好ましくは99質量%以上、最も好ましくは100質量%である。すなわち、上記芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニル単量体の単独重合体(ポリスチレン等)であることが好ましい。
【0026】
芳香族ビニル重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−45℃以上、更に好ましくは−40℃以上である。−50℃未満の場合、グリップ性能が悪化する傾向がある。また、芳香族ビニル重合体のTgは、10℃以下、好ましくは5℃以下、より好ましくは0℃以下である。10℃を超えると、耐摩耗性及び低温時のグリップ性能が悪化する傾向がある。
なお、本明細書において、Tgは、JIS−K7121に従い、(株)島津製作所製の自動示差走査熱量計(DSC−60A)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した値である。
【0027】
芳香族ビニル重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは300以上、より好ましくは350以上である。300未満では、転がり抵抗特性及びグリップ性能の充分な改善効果が得られにくい傾向がある。また、芳香族ビニル重合体の重量平均分子量は、好ましくは20000以下、より好ましくは15000以下である。20000を越えると、転がり抵抗特性が悪化する傾向がある。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めたものである。
【0028】
芳香族ビニル重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。2質量部未満であると、グリップ性能の充分な改善効果が得られにくい傾向がある。また、芳香族ビニル重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、100質量部以下、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。100質量部を超えると、転がり抵抗特性及び耐摩耗性が悪化する傾向がある。
【0029】
本発明のゴム組成物は、軟化剤として、液状ポリブタジエンを含有する。本明細書において、液状ポリブタジエンとは、室温(25℃)において液状であるポリブタジエンを意味する。液状ポリブタジエンとしては、例えば、クラレ(株)製のクラプレンLBR−307等を使用することができる。なお、液状ポリブタジエンは、ゴム成分には含まれない。
【0030】
液状ポリブタジエンの数平均分子量(Mn)は、好ましくは600以上、より好ましくは800以上、更に好ましくは5000以上、最も好ましくは6000以上である。600未満では、加工性の改善効果が高くなるものの、耐摩耗性及び操縦安定性の改善効果が小さくなる傾向がある。また、液状ポリブタジエンの数平均分子量は、好ましくは20000以下、より好ましくは18000以下、更に好ましくは15000以下、最も好ましくは12000以下である。20000を越えると、軟化剤としての機能が発揮されにくくなる傾向がある。
なお、本明細書において、数平均分子量は、上述した重量平均分子量と同様の方法で求めたものである。
【0031】
液状ポリブタジエンは、共役ジエン部の二重結合に水素が添加されていてもよい。これにより、液状ポリブタジエンとゴム成分との架橋反応が発生しにくくなるため、軟化剤としての機能を維持したまま、耐摩耗性及び操縦安定性の改善効果を高めることができる。液状ポリブタジエンの共役ジエン部の二重結合に水素が添加される場合、液状ポリブタジエンの水素添加率は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上である。20モル%未満の場合、耐摩耗性及び操縦安定性の改善効果を充分に高めることができないおそれがある。また、液状ポリブタジエンの水素添加率は、好ましくは60モル%以下、より好ましくは55モル%以下である。60モル%を超えると、ゴム成分との相溶性が低下し、ブリードが発生しやすくなる傾向がある。
なお、液状ポリブタジエンの水素添加率は、H−NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算することができる。
【0032】
液状ポリブタジエンの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上である。1質量部未満であると、充分な軟化効果が得られにくくなる傾向がある。また、液状ポリブタジエンの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、15質量部以下、好ましくは12質量部以下である。15質量部を超えると、加工性が悪化する傾向がある。
【0033】
本発明のゴム組成物は、上記成分に加え、充填剤(シリカ、カーボンブラック等)、オイル、粘着付与剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等、必要に応じた添加剤が適宜配合され得る。
【0034】
本発明のゴム組成物は、上記充填剤として、シリカを含有することが好ましい。これにより、補強性を高めながら、転がり抵抗特性をより改善することができる。使用できるシリカとしては、例えば、湿式法で製造されたシリカ、乾式法で製造されたシリカ等が挙げられるが、特に制限はない。なお、シリカは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは170m/g以上、より好ましくは185m/g以上、更に好ましくは200m/g以上である。170m/g未満であると、シリカの補強効果が小さいため、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは250m/g以下、より好ましくは240m/g以下、更に好ましくは230m/g以下である。250m/gを超えると、シリカの分散性が低下するため、ヒステリシスロスが増大し、転がり抵抗特性が悪化する傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0036】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは60質量部以上である。10質量部未満では、シリカの補強効果が小さいため、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、当該シリカの含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは85質量部以下である。100質量部を超えると、シリカの分散性が低下するため、ヒステリシスロスが増大し、転がり抵抗特性が悪化する傾向がある。
【0037】
本発明では、シリカとともにシランカップリング剤を併用しても良い。シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。なかでも、補強性改善効果が高いという点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが好ましい。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。1質量部未満では、未加硫ゴム組成物の粘度が高くなるため、加工性が悪くなる傾向がある。また、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。20質量部をこえると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0039】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロール等の混練機で上記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0040】
本発明のゴム組成物は、スタッドレスタイヤのトレッドとして用いられるものである。
【0041】
本発明のスタッドレスタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明のスタッドレスタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0042】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0043】
以下、実施例および比較例で用いた各種薬品について説明する。
NR:STR20
SBR:JSR(株)製のHPR355(変性S−SBR、スチレン含有量:27質量%)
液状ポリブタジエン:クラレ(株)製のクラプレンLBR−307(数平均分子量:8000、水素添加率:0モル%)
芳香族ビニル重合体(1):下記製造例1で合成(芳香族ビニル単量体単位:スチレン、スチレン含有量:100質量%、ガラス転移温度:−20℃、重量平均分子量:830)
芳香族ビニル重合体(2):下記製造例2で合成(芳香族ビニル単量体単位:スチレン、スチレン含有量:100質量%、ガラス転移温度:0℃、重量平均分子量:1020)
芳香族ビニル重合体(3):下記製造例3で合成(芳香族ビニル単量体単位:1−ビニルナフタレン、1−ビニルナフタレン含有量:100質量%、ガラス転移温度:0℃、重量平均分子量:860)
芳香族ビニル重合体(4):下記製造例4で合成(芳香族ビニル単量体単位:スチレン、スチレン含有量:100質量%、ガラス転移温度:50℃、重量平均分子量:3130)
シリカ:デグッサ社製のウルトラジルVN3(NSA:175m/g)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のJOMOプロセスX140
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製の椿
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0044】
製造例1(芳香族ビニル重合体(1)の合成)
充分に窒素置換した50ml容器に、ヘキサン35ml、スチレン5ml及び1.6mol/lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液2.7mlを混入し、室温で1時間撹拌した後、メタノールを添加することで反応を停止させ、芳香族ビニル重合体(1)を合成した。
【0045】
製造例2(芳香族ビニル重合体(2)の合成)
充分に窒素置換した50ml容器に、ヘキサン35ml、スチレン5ml及び1.6mol/lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液3.4mlを混入し、室温で1時間撹拌した後、メタノールを添加することで反応を停止させ、芳香族ビニル重合体(2)を合成した。
【0046】
製造例3(芳香族ビニル重合体(3)の合成)
充分に窒素置換した50ml容器に、ヘキサン35ml、1−ビニルナフタレン5ml及び1.6mol/lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液2.3mlを混入し、室温で1時間撹拌した後、メタノールを添加することで反応を停止させ、芳香族ビニル重合体(3)を合成した。
【0047】
製造例4(芳香族ビニル重合体(4)の合成)
充分に窒素置換した50ml容器に、ヘキサン35ml、スチレン5ml及び1.6mol/lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液0.9mlを混入し、室温で1時間撹拌した後、メタノールを添加することで反応を停止させ、芳香族ビニル重合体(4)を合成した。
【0048】
実施例1〜5及び比較例1〜6
表1に示す配合内容にしたがって、バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加し、50℃の条件下で5分間混練りし、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で15分間プレス加硫することにより、加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を厚さ約2mmのシート状に圧延後、トレッドの形状に加工し、他のタイヤ部材と貼り合わせてタイヤに成形し、170℃で15分間加硫することで試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を得た。
【0049】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物及び試験用タイヤを用いて、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0050】
(グリップ指数)
上記試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、ドライアスファルト路面のテストコースにて実車走行を行なった。その際における操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、比較例1を100として指数表示をした。数値が大きいほどドライ路面におけるグリップ性能及び操縦安定性に優れることを示す。
【0051】
(摩耗指数)
ランボーン摩耗試験機にて、温度20℃、スリップ率20%、試験時間5分間の条件で上記加硫ゴム組成物のランボーン摩耗量を測定した。そして、測定したランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、比較例1の容積損失量を100として、各配合の容積損失量を下記計算式により指数表示した。数値が大きいほど耐摩耗性に優れることを示す。
(摩耗指数)=(比較例1の損失量)/(各配合の損失量)×100
【0052】
(スノー性能指数)
上記試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、全長数百mの八の字周回路(雪上コース)を実車走行し、該コースを1周するのに要したタイムを測定した。そして、比較例1のタイムを100とし、下記計算式により指数表示した。数値が大きいほどスノー性能に優れることを示す。
(スノー性能指数)=(比較例1のタイム)/(各配合のタイム)×100
【0053】
(転がり抵抗指数)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%の条件下で上記加硫ゴム組成物のtanδを測定し、比較例1のtanδを100として、下記計算式により指数表示した。数値が大きいほど転がり抵抗特性に優れる(転がり抵抗が低い)ことを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0054】
(ムーニー粘度指数)
JIS K 6300−1「未加硫ゴム−物理特性−第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準じて、ムーニー粘度試験機を用いて、1分間の予熱によって熱せられた130℃の温度条件にて、小ローターを回転させ、4分間経過した時点での上記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4/130℃)を測定した。そして、比較例1のムーニー粘度を100とし、下記計算式により指数表示した。数値が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れることを示す。
(ムーニー粘度指数)=(比較例1のムーニー粘度)/(各配合のムーニー粘度)×100
【0055】
【表1】

【0056】
表1より、液状ポリブタジエンと、ガラス転移温度が一定以下であり、かつ芳香族ビニル単量体単位の含有量が一定以上である特定の芳香族ビニル重合体とをそれぞれ所定量配合した実施例1〜5は、比較例1と比較して、グリップ性能、耐摩耗性、スノー性能、転がり抵抗特性、加工性及び操縦安定性がバランス良く得られた。一方、比較例2〜6は、比較例1と比較して、一部の性能が大幅に悪化しており、性能のバランスが悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量部に対して、液状ポリブタジエンを1〜15質量部、ガラス転移温度が10℃以下であり、芳香族ビニル単量体単位の含有量が95質量%以上である芳香族ビニル重合体を2〜100質量部含有するトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記液状ポリブタジエンの数平均分子量が600〜20000である請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記液状ポリブタジエンの水素添加率が20〜60モル%である請求項1又は2記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
前記芳香族ビニル重合体の芳香族ビニル単量体単位の含有量が100質量%である請求項1〜3のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤ。

【公開番号】特開2011−94013(P2011−94013A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248941(P2009−248941)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】