トレッド用ゴム組成物及び二輪車用タイヤ
【課題】ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、耐摩耗性(高シビアリティでの耐摩耗性)及び低燃費性をバランス良く改善できるトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いて作製したトレッドを有する二輪車用タイヤを提供する。
【解決手段】エポキシ化天然ゴムを含むゴム成分と、シリカと、下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物とを含有し、上記ゴム成分100質量%中の上記エポキシ化天然ゴムの含有量が5〜55質量%であり、上記ゴム成分100質量部に対して、上記シリカの含有量が50〜100質量部、下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量が1〜10質量部であり、二輪車用タイヤに使用されるトレッド用ゴム組成物に関する。
[化1]
【解決手段】エポキシ化天然ゴムを含むゴム成分と、シリカと、下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物とを含有し、上記ゴム成分100質量%中の上記エポキシ化天然ゴムの含有量が5〜55質量%であり、上記ゴム成分100質量部に対して、上記シリカの含有量が50〜100質量部、下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量が1〜10質量部であり、二輪車用タイヤに使用されるトレッド用ゴム組成物に関する。
[化1]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド用ゴム組成物、及びそれを用いて作製したトレッドを有する二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
低燃費性及びウェットグリップ性能を両立するため、トレッド用ゴム組成物においては、シリカを配合することが一般的である。また、ウェットグリップ性能及びドライグリップ性能を両立させるためには、シリカを増量する必要がある。しかし、シリカを増量すると、シリカが分散しにくくなり、耐摩耗性や低燃費性が悪化する傾向がある。したがって、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、耐摩耗性及び低燃費性をバランス良く改善する方法が望まれている。
【0003】
また、二輪車用タイヤ(特にモトクロス用タイヤ)においては、高シビアリティでの耐摩耗性が要求されるため、補強性に優れたカーボンブラックを使用することが一般的である。しかし、カーボンブラックを使用すると、ウェットグリップ性能や低燃費性が悪化する傾向があるため、これらの性能をバランス良く改善する方法も望まれている。
【0004】
特許文献1には、特定のアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を変性スチレンブタジエンゴムなどと併用することにより、低発熱性及び破断強度を両立したゴム組成物が提案されている。しかし、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、耐摩耗性及び低燃費性をバランス良く改善する点について、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−114427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、耐摩耗性(高シビアリティでの耐摩耗性)及び低燃費性をバランス良く改善できるトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いて作製したトレッドを有する二輪車用タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エポキシ化天然ゴムを含むゴム成分と、シリカと、下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物とを含有し、上記ゴム成分100質量%中の上記エポキシ化天然ゴムの含有量が5〜55質量%であり、上記ゴム成分100質量部に対して、上記シリカの含有量が50〜100質量部、下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量が1〜10質量部であり、二輪車用タイヤに使用されるトレッド用ゴム組成物に関する。
【化1】
(式中、R1、R2及びR3は、同一若しくは異なって、炭素数5〜12のアルキル基を示す。x及びyは、同一若しくは異なって、2〜4の整数を示す。mは0〜10の整数を示す。)
【0008】
上記エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率は、5〜30モル%であることが好ましい。
【0009】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する二輪車用タイヤに関する。
【0010】
上記二輪車用タイヤは、モトクロス用タイヤであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定量のエポキシ化天然ゴムを含むゴム成分に対して、シリカと、特定のアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物とを所定量配合したゴム組成物であるので、該ゴム組成物をトレッドとして用いることにより、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、耐摩耗性(高シビアリティでの耐摩耗性)及び低燃費性をバランス良く有する空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のゴム組成物は、エポキシ化天然ゴムを含むゴム成分と、シリカと、上記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物とを含有する。
【0013】
一般的に、天然ゴム(NR)を用いると、良好な耐摩耗性が得られる一方で、ウェットグリップ性能及びドライグリップ性能が悪化する傾向がある。また、シリカを増量すると、ウェットグリップ性能及びドライグリップ性能を両立できる一方で、耐摩耗性や低燃費性が悪化する傾向がある。
【0014】
これに対し、本発明では、シリカ、エポキシ化天然ゴム(ENR)及び上記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の併用により、良好な耐摩耗性が得られるとともに、tanδを低減できるため、良好な低燃費性を維持しながら、シリカを増量してウェットグリップ性能及びドライグリップ性能を両立できる。その結果、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、耐摩耗性及び低燃費性をバランス良く改善できる。また、上記成分の併用により、耐熱性が向上するため、カーボンブラックを減量しても、高シビアリティでの耐摩耗性を確保できる。
【0015】
本発明のゴム組成物は、ENRを含有する。ENR及びシリカを併用することで、ENRのエポキシ基とシリカ表面のシラノール基とが反応し、良好なウェットグリップ性能、ドライグリップ性能及び耐摩耗性が得られる。
【0016】
ENRとしては、市販のENRを用いてもよいし、天然ゴム(NR)をエポキシ化して用いてもよい。NRをエポキシ化する方法としては特に限定されるものではなく、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などの方法を用いて行なうことができる(特公平4−26617号公報、特開平2−110182号公報、英国特許出願公開第2113692号明細書等)。過酸法としては、例えば、NRに過酢酸や過蟻酸などの有機過酸を反応させる方法などが挙げられる。
【0017】
エポキシ化を施すNRとしては特に限定されず、RSS♯3、TSR20などのゴム工業において一般的なもの、及びそれらのラテックスを使用することができる。ENRは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
ENRのエポキシ化率は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上、更に好ましくは10モル%以上である。5モル%未満では、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能及び耐摩耗性が充分に改善されないおそれがある。また、ENRのエポキシ化率は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは28モル%以下、更に好ましくは25モル%以下である。30モル%を超えると、ポリマーがゲル化する傾向がある。
なお、エポキシ化率とは、エポキシ化前の天然ゴム成分中の炭素間二重結合の全数のうちエポキシ化された数の割合を意味し、例えば、滴定分析や核磁気共鳴(NMR)分析等により求められる。
【0019】
ゴム成分100質量%中のENRの含有量は、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。5質量%未満であると、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能及び耐摩耗性が充分に改善されないおそれがある。また、ENRの含有量は、55質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。55質量%を超えると、ポリマーがゲル化する傾向がある。
【0020】
ENR以外に使用できるゴム成分としては、例えば、NR、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)などのジエン系ゴムが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、良好な耐摩耗性及び低燃費性が得られるという点から、SBRが好ましい。SBRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0021】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは18質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。15質量%未満の場合、ウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。また、SBRのスチレン含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは48質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。50質量%を超えると、低燃費性が著しく悪化する場合がある。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、H1−NMR測定によって算出される。
【0022】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは45質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。45質量%未満であると、耐摩耗性及び低燃費性を充分に改善できないおそれがある。また、SBRの含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。95質量%を超えると、ENRの含有量が少なくなり、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能及び耐摩耗性が悪化する傾向がある。
【0023】
本発明のゴム組成物は、シリカを含有する。シリカとしては、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水ケイ酸)、湿式法により調製されたシリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。なかでも、表面のシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製されたシリカが好ましい。
【0024】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは80m2/g以上、より好ましくは120m2/g以上、更に好ましくは140m2/g以上である。80m2/g未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。また、シリカのN2SAは、好ましくは250m2/g以下、より好ましくは210m2/g以下、更に好ましくは190m2/g以下である。250m2/gを超えると、シリカの分散が困難となり、耐摩耗性及び低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0025】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上、更に好ましくは75質量部以上である。50質量部未満では、充分なウェットグリップ性能及びドライグリップ性能を確保できないおそれがある。また、シリカの含有量は、100質量部以下、好ましくは90質量部以下、より好ましくは85質量部以下である。100質量部を超えると、シリカの分散が困難となり、耐摩耗性及び低燃費性が悪化する傾向がある。
【0026】
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。
【0027】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上、更に好ましくは6質量部以上である。2質量部未満では、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、シランカップリング剤の含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。15質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0028】
本発明のゴム組成物は、上記式(1)で表されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を含有する。アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を架橋剤として用いることで、通常の硫黄架橋に比べて熱的に安定な架橋構造を形成し、良好な低燃費性及び耐摩耗性(高シビアリティでの耐摩耗性)が得られる。
【0029】
mは、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物のゴム成分中への分散性が良い点から、0〜10の整数であり、1〜9の整数が好ましい。x及びyは、リバージョンを抑制できる点から、2〜4の整数であり、ともに2が好ましい。R1〜R3は、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物のゴム成分中への分散性が良い点から、炭素数5〜12のアルキル基であり、炭素数6〜9のアルキル基が好ましい。
【0030】
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物は、公知の方法で調製することができ、特に制限されないが、例えば、アルキルフェノールと塩化硫黄とを、モル比1:0.9〜1.25などで反応させる方法などが挙げられる。
【0031】
アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の具体例として、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200(下記式(2))などが挙げられる。
【0032】
【化2】
(式中、mは0〜10の整数を表す。)
【0033】
なお、上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の硫黄含有率は、燃焼炉で800〜1000℃に加熱し、SO2ガス又はSO3ガスに変換後、ガス発生量から光学的に定量し、求めた割合をいう。
【0034】
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは4質量部以上である。1質量部未満であると、低燃費性及び耐熱性を充分に改善できないおそれがある。また、該含有量は、10質量部以下、好ましくは8質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。10質量部を超えると、架橋密度が高くなり過ぎて、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
【0035】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、カーボンブラック等の補強用充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、アロマオイル等のオイル、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等を適宜配合することができる。
【0036】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを配合してもよい。従来、高シビアリティでの耐摩耗性が要求される用途においては、カーボンブラックを多量に配合し、機械的強度を高めることが一般的であった。本発明のゴム組成物は、シリカ、ENR及び上記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の併用によって、カーボンブラックを減量しても、高シビアリティでの耐摩耗性を確保することができる。
【0037】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、特に好ましくは6質量部以下である。また、カーボンブラックの含有量の下限は特に限定されないが、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。
【0038】
本発明のゴム組成物は、オイルを含有することが好ましい。これにより、良好なウェットグリップ性能及びドライグリップ性能が得られる。オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、その混合物等を用いることができる。
【0039】
プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル(アロマオイル)等が挙げられる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。
【0040】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。5質量部未満では、ウェットグリップ性能及びドライグリップ性能を充分に改善できないおそれがある。また、オイルの含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは35質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。50質量部を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
なお、オイルの含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0041】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0042】
本発明のゴム組成物は、二輪車用タイヤのトレッドに用いられ、モトクロス用タイヤのトレッドに好適に用いられる。
【0043】
本発明の二輪車用タイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して二輪車用タイヤを製造できる。また、ストリップを巻きつけて作製するSTW工法により二輪車用タイヤを製造してもよい。
【0044】
本発明の二輪車用タイヤは、自動二輪車用タイヤとして好適に用いられ、特にモトクロス用タイヤとして好適に用いられる。
【実施例】
【0045】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0046】
以下、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
SBR:JSR製のSBR1502(スチレン含有量:23モル%)
NR:RSS#3
ENR:クンプーランガスリー社(Kumpulan Guthrie Berhad)(マレーシア)製のENR−25(エポキシ化率:25モル%)
シリカ:デグッサ社製のウルトラジルVN3(N2SA:175m2/g)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi−69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
耐熱架橋剤:田岡化学工業(株)製のタッキロールV200(式(2)で表されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、m:0〜10、x及びy:2、R1〜R3:C8H17(オクチル基)、硫黄含有率:24質量%)
【0047】
実施例1〜3及び比較例1〜3
表1に示す配合処方に従い、バンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の排出温度で3分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。更に、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、170℃で12分間加硫することにより、試験用タイヤ(モトクロス用タイヤ)を製造した。
【0048】
得られた未加硫ゴム組成物及び試験用タイヤを用いて以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0049】
(ウェットグリップ性能)
上記試験用タイヤを装着したモトクロスバイクで1周2kmのテストコース(ウェット路面)を8周走行し、走行時における操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価した。評価結果は、比較例1を3点とし、5点満点で表示した。数値が大きいほど、ウェットグリップ性能が良好であることを示す。
【0050】
(ドライグリップ性能)
上記試験用タイヤを装着したモトクロスバイクで1周2kmのテストコース(ドライ路面)を8周走行し、走行時における操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価した。評価結果は、比較例1を3点とし、5点満点で表示した。数値が大きいほど、ドライグリップ性能が良好であることを示す。
【0051】
(耐摩耗性)
上記試験用タイヤのトレッドから測定用試験片を切り出し、LAT試験機(Laboratory Abration and Skid Tester)を用いて、荷重120N、速度20km/h、スリップアングル5°の条件にて、測定用試験片の容積損失量を測定した。そして、比較例1の耐摩耗性指数を100とし、下記計算式により、各配合の測定結果を指数表示した。数値が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(耐摩耗性指数)=(比較例1の容積損失量)/(各配合の容積損失量)×100
【0052】
(転がり抵抗)
上記試験用タイヤのトレッドから測定用試験片を切り出し、粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下で、測定用試験片のtanδを測定した。数値が小さいほど、転がり抵抗が低く、低燃費性に優れることを示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1より、ENR、シリカ及びV200(耐熱架橋剤)を併用した実施例は、比較例に比べて、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、耐摩耗性及び低燃費性がバランス良く改善した。一方、上記成分を併用していない比較例は、これらの性能をバランス良く改善することができなかった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド用ゴム組成物、及びそれを用いて作製したトレッドを有する二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
低燃費性及びウェットグリップ性能を両立するため、トレッド用ゴム組成物においては、シリカを配合することが一般的である。また、ウェットグリップ性能及びドライグリップ性能を両立させるためには、シリカを増量する必要がある。しかし、シリカを増量すると、シリカが分散しにくくなり、耐摩耗性や低燃費性が悪化する傾向がある。したがって、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、耐摩耗性及び低燃費性をバランス良く改善する方法が望まれている。
【0003】
また、二輪車用タイヤ(特にモトクロス用タイヤ)においては、高シビアリティでの耐摩耗性が要求されるため、補強性に優れたカーボンブラックを使用することが一般的である。しかし、カーボンブラックを使用すると、ウェットグリップ性能や低燃費性が悪化する傾向があるため、これらの性能をバランス良く改善する方法も望まれている。
【0004】
特許文献1には、特定のアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を変性スチレンブタジエンゴムなどと併用することにより、低発熱性及び破断強度を両立したゴム組成物が提案されている。しかし、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、耐摩耗性及び低燃費性をバランス良く改善する点について、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−114427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、耐摩耗性(高シビアリティでの耐摩耗性)及び低燃費性をバランス良く改善できるトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いて作製したトレッドを有する二輪車用タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エポキシ化天然ゴムを含むゴム成分と、シリカと、下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物とを含有し、上記ゴム成分100質量%中の上記エポキシ化天然ゴムの含有量が5〜55質量%であり、上記ゴム成分100質量部に対して、上記シリカの含有量が50〜100質量部、下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量が1〜10質量部であり、二輪車用タイヤに使用されるトレッド用ゴム組成物に関する。
【化1】
(式中、R1、R2及びR3は、同一若しくは異なって、炭素数5〜12のアルキル基を示す。x及びyは、同一若しくは異なって、2〜4の整数を示す。mは0〜10の整数を示す。)
【0008】
上記エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率は、5〜30モル%であることが好ましい。
【0009】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する二輪車用タイヤに関する。
【0010】
上記二輪車用タイヤは、モトクロス用タイヤであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定量のエポキシ化天然ゴムを含むゴム成分に対して、シリカと、特定のアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物とを所定量配合したゴム組成物であるので、該ゴム組成物をトレッドとして用いることにより、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、耐摩耗性(高シビアリティでの耐摩耗性)及び低燃費性をバランス良く有する空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のゴム組成物は、エポキシ化天然ゴムを含むゴム成分と、シリカと、上記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物とを含有する。
【0013】
一般的に、天然ゴム(NR)を用いると、良好な耐摩耗性が得られる一方で、ウェットグリップ性能及びドライグリップ性能が悪化する傾向がある。また、シリカを増量すると、ウェットグリップ性能及びドライグリップ性能を両立できる一方で、耐摩耗性や低燃費性が悪化する傾向がある。
【0014】
これに対し、本発明では、シリカ、エポキシ化天然ゴム(ENR)及び上記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の併用により、良好な耐摩耗性が得られるとともに、tanδを低減できるため、良好な低燃費性を維持しながら、シリカを増量してウェットグリップ性能及びドライグリップ性能を両立できる。その結果、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、耐摩耗性及び低燃費性をバランス良く改善できる。また、上記成分の併用により、耐熱性が向上するため、カーボンブラックを減量しても、高シビアリティでの耐摩耗性を確保できる。
【0015】
本発明のゴム組成物は、ENRを含有する。ENR及びシリカを併用することで、ENRのエポキシ基とシリカ表面のシラノール基とが反応し、良好なウェットグリップ性能、ドライグリップ性能及び耐摩耗性が得られる。
【0016】
ENRとしては、市販のENRを用いてもよいし、天然ゴム(NR)をエポキシ化して用いてもよい。NRをエポキシ化する方法としては特に限定されるものではなく、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などの方法を用いて行なうことができる(特公平4−26617号公報、特開平2−110182号公報、英国特許出願公開第2113692号明細書等)。過酸法としては、例えば、NRに過酢酸や過蟻酸などの有機過酸を反応させる方法などが挙げられる。
【0017】
エポキシ化を施すNRとしては特に限定されず、RSS♯3、TSR20などのゴム工業において一般的なもの、及びそれらのラテックスを使用することができる。ENRは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
ENRのエポキシ化率は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上、更に好ましくは10モル%以上である。5モル%未満では、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能及び耐摩耗性が充分に改善されないおそれがある。また、ENRのエポキシ化率は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは28モル%以下、更に好ましくは25モル%以下である。30モル%を超えると、ポリマーがゲル化する傾向がある。
なお、エポキシ化率とは、エポキシ化前の天然ゴム成分中の炭素間二重結合の全数のうちエポキシ化された数の割合を意味し、例えば、滴定分析や核磁気共鳴(NMR)分析等により求められる。
【0019】
ゴム成分100質量%中のENRの含有量は、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。5質量%未満であると、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能及び耐摩耗性が充分に改善されないおそれがある。また、ENRの含有量は、55質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。55質量%を超えると、ポリマーがゲル化する傾向がある。
【0020】
ENR以外に使用できるゴム成分としては、例えば、NR、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)などのジエン系ゴムが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、良好な耐摩耗性及び低燃費性が得られるという点から、SBRが好ましい。SBRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0021】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは18質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。15質量%未満の場合、ウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。また、SBRのスチレン含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは48質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。50質量%を超えると、低燃費性が著しく悪化する場合がある。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、H1−NMR測定によって算出される。
【0022】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは45質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。45質量%未満であると、耐摩耗性及び低燃費性を充分に改善できないおそれがある。また、SBRの含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。95質量%を超えると、ENRの含有量が少なくなり、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能及び耐摩耗性が悪化する傾向がある。
【0023】
本発明のゴム組成物は、シリカを含有する。シリカとしては、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水ケイ酸)、湿式法により調製されたシリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。なかでも、表面のシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製されたシリカが好ましい。
【0024】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは80m2/g以上、より好ましくは120m2/g以上、更に好ましくは140m2/g以上である。80m2/g未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。また、シリカのN2SAは、好ましくは250m2/g以下、より好ましくは210m2/g以下、更に好ましくは190m2/g以下である。250m2/gを超えると、シリカの分散が困難となり、耐摩耗性及び低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0025】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上、更に好ましくは75質量部以上である。50質量部未満では、充分なウェットグリップ性能及びドライグリップ性能を確保できないおそれがある。また、シリカの含有量は、100質量部以下、好ましくは90質量部以下、より好ましくは85質量部以下である。100質量部を超えると、シリカの分散が困難となり、耐摩耗性及び低燃費性が悪化する傾向がある。
【0026】
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。
【0027】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上、更に好ましくは6質量部以上である。2質量部未満では、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、シランカップリング剤の含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。15質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0028】
本発明のゴム組成物は、上記式(1)で表されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を含有する。アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を架橋剤として用いることで、通常の硫黄架橋に比べて熱的に安定な架橋構造を形成し、良好な低燃費性及び耐摩耗性(高シビアリティでの耐摩耗性)が得られる。
【0029】
mは、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物のゴム成分中への分散性が良い点から、0〜10の整数であり、1〜9の整数が好ましい。x及びyは、リバージョンを抑制できる点から、2〜4の整数であり、ともに2が好ましい。R1〜R3は、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物のゴム成分中への分散性が良い点から、炭素数5〜12のアルキル基であり、炭素数6〜9のアルキル基が好ましい。
【0030】
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物は、公知の方法で調製することができ、特に制限されないが、例えば、アルキルフェノールと塩化硫黄とを、モル比1:0.9〜1.25などで反応させる方法などが挙げられる。
【0031】
アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の具体例として、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200(下記式(2))などが挙げられる。
【0032】
【化2】
(式中、mは0〜10の整数を表す。)
【0033】
なお、上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の硫黄含有率は、燃焼炉で800〜1000℃に加熱し、SO2ガス又はSO3ガスに変換後、ガス発生量から光学的に定量し、求めた割合をいう。
【0034】
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは4質量部以上である。1質量部未満であると、低燃費性及び耐熱性を充分に改善できないおそれがある。また、該含有量は、10質量部以下、好ましくは8質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。10質量部を超えると、架橋密度が高くなり過ぎて、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
【0035】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、カーボンブラック等の補強用充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、アロマオイル等のオイル、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等を適宜配合することができる。
【0036】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを配合してもよい。従来、高シビアリティでの耐摩耗性が要求される用途においては、カーボンブラックを多量に配合し、機械的強度を高めることが一般的であった。本発明のゴム組成物は、シリカ、ENR及び上記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の併用によって、カーボンブラックを減量しても、高シビアリティでの耐摩耗性を確保することができる。
【0037】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、特に好ましくは6質量部以下である。また、カーボンブラックの含有量の下限は特に限定されないが、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。
【0038】
本発明のゴム組成物は、オイルを含有することが好ましい。これにより、良好なウェットグリップ性能及びドライグリップ性能が得られる。オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、その混合物等を用いることができる。
【0039】
プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル(アロマオイル)等が挙げられる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。
【0040】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。5質量部未満では、ウェットグリップ性能及びドライグリップ性能を充分に改善できないおそれがある。また、オイルの含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは35質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。50質量部を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
なお、オイルの含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0041】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0042】
本発明のゴム組成物は、二輪車用タイヤのトレッドに用いられ、モトクロス用タイヤのトレッドに好適に用いられる。
【0043】
本発明の二輪車用タイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して二輪車用タイヤを製造できる。また、ストリップを巻きつけて作製するSTW工法により二輪車用タイヤを製造してもよい。
【0044】
本発明の二輪車用タイヤは、自動二輪車用タイヤとして好適に用いられ、特にモトクロス用タイヤとして好適に用いられる。
【実施例】
【0045】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0046】
以下、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
SBR:JSR製のSBR1502(スチレン含有量:23モル%)
NR:RSS#3
ENR:クンプーランガスリー社(Kumpulan Guthrie Berhad)(マレーシア)製のENR−25(エポキシ化率:25モル%)
シリカ:デグッサ社製のウルトラジルVN3(N2SA:175m2/g)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi−69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
耐熱架橋剤:田岡化学工業(株)製のタッキロールV200(式(2)で表されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、m:0〜10、x及びy:2、R1〜R3:C8H17(オクチル基)、硫黄含有率:24質量%)
【0047】
実施例1〜3及び比較例1〜3
表1に示す配合処方に従い、バンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の排出温度で3分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。更に、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、170℃で12分間加硫することにより、試験用タイヤ(モトクロス用タイヤ)を製造した。
【0048】
得られた未加硫ゴム組成物及び試験用タイヤを用いて以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0049】
(ウェットグリップ性能)
上記試験用タイヤを装着したモトクロスバイクで1周2kmのテストコース(ウェット路面)を8周走行し、走行時における操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価した。評価結果は、比較例1を3点とし、5点満点で表示した。数値が大きいほど、ウェットグリップ性能が良好であることを示す。
【0050】
(ドライグリップ性能)
上記試験用タイヤを装着したモトクロスバイクで1周2kmのテストコース(ドライ路面)を8周走行し、走行時における操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価した。評価結果は、比較例1を3点とし、5点満点で表示した。数値が大きいほど、ドライグリップ性能が良好であることを示す。
【0051】
(耐摩耗性)
上記試験用タイヤのトレッドから測定用試験片を切り出し、LAT試験機(Laboratory Abration and Skid Tester)を用いて、荷重120N、速度20km/h、スリップアングル5°の条件にて、測定用試験片の容積損失量を測定した。そして、比較例1の耐摩耗性指数を100とし、下記計算式により、各配合の測定結果を指数表示した。数値が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(耐摩耗性指数)=(比較例1の容積損失量)/(各配合の容積損失量)×100
【0052】
(転がり抵抗)
上記試験用タイヤのトレッドから測定用試験片を切り出し、粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下で、測定用試験片のtanδを測定した。数値が小さいほど、転がり抵抗が低く、低燃費性に優れることを示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1より、ENR、シリカ及びV200(耐熱架橋剤)を併用した実施例は、比較例に比べて、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、耐摩耗性及び低燃費性がバランス良く改善した。一方、上記成分を併用していない比較例は、これらの性能をバランス良く改善することができなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化天然ゴムを含むゴム成分と、シリカと、下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物とを含有し、
前記ゴム成分100質量%中の前記エポキシ化天然ゴムの含有量が5〜55質量%であり、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が50〜100質量部、下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量が1〜10質量部であり、
二輪車用タイヤに使用されるトレッド用ゴム組成物。
【化1】
(式中、R1、R2及びR3は、同一若しくは異なって、炭素数5〜12のアルキル基を示す。x及びyは、同一若しくは異なって、2〜4の整数を示す。mは0〜10の整数を示す。)
【請求項2】
前記エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率が5〜30モル%である請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する二輪車用タイヤ。
【請求項4】
モトクロス用タイヤである請求項3記載の二輪車用タイヤ。
【請求項1】
エポキシ化天然ゴムを含むゴム成分と、シリカと、下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物とを含有し、
前記ゴム成分100質量%中の前記エポキシ化天然ゴムの含有量が5〜55質量%であり、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が50〜100質量部、下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量が1〜10質量部であり、
二輪車用タイヤに使用されるトレッド用ゴム組成物。
【化1】
(式中、R1、R2及びR3は、同一若しくは異なって、炭素数5〜12のアルキル基を示す。x及びyは、同一若しくは異なって、2〜4の整数を示す。mは0〜10の整数を示す。)
【請求項2】
前記エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率が5〜30モル%である請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する二輪車用タイヤ。
【請求項4】
モトクロス用タイヤである請求項3記載の二輪車用タイヤ。
【公開番号】特開2011−190328(P2011−190328A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56550(P2010−56550)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】
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