説明

トレハロースの製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酵素法によるトレハロース(O-α-D-glucopyranosyl-(1→1)-D-glucopyranoside)の新規な製造方法に関する。更に詳しくは、プレシオモナス(Plesiomonas) 属に属する新規微生物由来の新規なマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを用いたトレハロースの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】トレハロースは、凍結あるいは乾燥時に細胞や細胞内物質を保護する作用を有しており、医薬、化粧品、食品等に保存、安定剤等としての役割が期待されている物質である。そこで、トレハロースを工業的に生産する多くの試みがなされてきた。これらの技術は大別して三つに分類する事ができる。その一つはトレハロースを菌体内に蓄積する性質を有する微生物から該物質を抽出精製する方法である〔ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエテー(J.Am.Chem.Soc.)72巻,2059頁、1950年、ドイツ特許第266584号、特開平3−130084号、特開平5−91890号、特開平5−184353号、特開平5−292986号〕。この方法は、微生物の培養工程、微生物の分離工程、微生物からのトレハロースの抽出工程、抽出したトレハロースの精製結晶化工程から構成されており、製造工程が非常に煩雑である。しかも、トレハロースの生産性も他の方法に比較して少ないばかりでなく、多量の微生物抽出残査が廃棄物として発生する事から経済的に効率の良い方法とは言えなかった。
【0003】また、他の方法として、トレハロースを菌体外(培地中)に生産する微生物が検索され、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属やコリネバクテリウム(Corynebacterium) 属等の微生物を培養してトレハロースを菌体外(培地中)に生産させる発酵法が開発されている〔特開平5−211882号〕。しかしながら、本方法においてもトレハロースの培地中への蓄積率は約3%(w/v)程度と低収率であることから工業的規模でトレハロースを大量生産するためには大容量の発酵槽とそれに見合う精製設備が必要であり経済的に問題がある。しかも、本方法においても精製したトレハロースを得るためには除菌操作が必要とされるばかりでなく、培養時に使用菌株が生産するトレハロース以外の夾雑物あるいは培地成分等の除去に煩雑な工程を必要としている。
【0004】一方、これら発酵法の種々の問題点を一挙に解決する方法として酵素法が既に開発されている。これには、微生物由来のマルトースホスホリラーゼ(Maltose:orthophosphate β-D-glucosyltransferase) と藻類由来のトレハロースホスホリラーゼ( α, α-Trehalose:orthophosphate β-D-glucosyltransferase) を燐酸存在下でマルトースに作用させてトレハロースを生産する方法(特許第1513517号、Agri.Biol.Chem.,49巻, 2113頁, 1985年) 、および細菌由来のシュークローズホスホリラーゼ(Sucrose:orthophosphate α-D-glucosyltransferase)と担子菌由来のトレハロースホスホリラーゼ( α, α-Trehalosep:orthophosphateα-D-glucosyltransferase) を燐酸存在下で蔗糖に作用させてトレハロースを得る方法(平成6年度日本農芸化学会大会講演要旨集、3Ra14)とが報告されている。
【0005】これらの方法によればマルトースあるいは蔗糖から60〜70%の高い収率でトレハロースが生成する事が報告されている。また、本方法は使用する原料が精製された高純度の糖質であることから、酵素反応により得られるトレハロースの精製も容易であり、他の方法に比較して工業的に有利な方法と考えられている。しかしながら、これらの方法においても使用される酵素、特に、トレハロースホスホリラーゼの供給源はユーグレナやマイタケなどのように藻類や担子菌であり、これらから酵素を生産するためには経済的な問題ばかりでなく技術的にも困難な点があった。しかも、得られるトレハロースホスホリラーゼやこれに組み合わせて用いられるシュークローズホスホリラーゼやマルトースホスホリラーゼはそれぞれの酵素の至適pH領域が大きく異なるために組み合わせて使用する際のpH管理が非常に困難であるばかりでなく、温度に対する安定性も非常に低く、トレハロースの生成反応は25〜37℃程度の低温下でしか行えなかった。このことは解放型の反応槽を用いて行われる酵素反応時に雑菌汚染が起こることを示唆しており、これによる副次的な反応を防止するために厳密な衛生管理を必要とする等の欠点を有している。さらには、これら公知の酵素を組み合わせて用いる場合、これらの酵素の有する基質濃度依存性の為に高濃度の原料が使用出来なかった。この為、この方法も経済的に効率の良い方法とは言えなかった。
【0006】以上のことから、製造および精製が容易で、高い熱安定性を有し、基質濃度依存性が無い新たなマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを見出すことができれば、安易に且つ大量に入手できるマルトースを原料として高収率でしかも容易に且つ効率よくトレハロースを製造することができる。
【0007】そこで、本発明の目的は、上記の各種条件を満足する新規なマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを用い、かつ基質としてマルトースを用いて、比較的高い温度及び比較的高い基質濃度での酵素反応が可能であり、かつpHの調整が容易であるトレハロースの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、工業的に使用するためのマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼが具備すべきこれらの諸性質を有する酵素を生産する能力を持つ微生物を得るべくして広く天然界を検索した。その結果、プレシオモナス属に属する新規な微生物から新規なマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを得、このマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを用いることで、上記目的が達せられることを見出し本発明を完成せしめたものである。
【0009】即ち、本発明は、以下に示す理化学的性質を有するマルトースホスホリラーゼ及びトレハロースホスホリラーゼを燐酸の存在下でマルトースに作用させることを特徴とするトレハロースの製造方法に関する。
マルトースホスホリラーゼ(イ)作用:マルトース中のα−1,4−グルコピラノシド結合を燐酸存在下で可逆的に加燐酸分解し、グルコースおよびβ−D−グルコース1−燐酸を生成する。
(ロ)基質特異性(分解反応):マルトースに作用し、他の二糖類に作用しない。
(ハ)至適pHおよび安定pH範囲:分解反応の至適pHは7.0〜7.5であり、合成反応の至適pHは6.0である。50℃、10分間の加熱条件下ではpH5.5〜7.0の範囲内で安定である。
(ニ)温度に対する安定性:pH6.0、15分間の加熱条件下では45℃まで安定である。
(ホ)作用適温の範囲:50℃近傍に分解反応の至適作用温度を有し、合成反応の作用適温は50〜55℃である。
(ヘ)失活条件:50℃、10分間の加熱条件下ではpH5.0および8.0で完全に失活する。また、pH6.0、15分間の処理では55℃で完全に失活する。
(ト)阻害:銅、水銀、カドミウム、亜鉛、N−ブロモサクシニイミド、p−クロロマーキュリベンゾエイト、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムで阻害される。
(チ)アイソエレクトロフォーカシング法による等電点:3.8(リ)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子量:約92,000(ゲル濾過法による分子量は約200,000であり、2ケのサブユニットから構成されている)。
【0010】トレハロースホスホリラーゼ(イ)作用:トレハロース中のα−1,1−グルコピラノシド結合を燐酸存在下で可逆的に加燐酸分解し、グルコースおよびβ−D−グルコース1−燐酸を生成する。
(ロ)基質特異性(分解反応):トレハロースに作用し、他の二糖類に作用しない。
(ハ)至適pHおよび安定pH範囲:分解および合成反応の至適pHは7.0である。50℃、10分間の加熱条件下ではpH6.0〜9.0の範囲内である。
(ニ)温度に対する安定性:pH7.0、15分間の加熱条件下では50℃まで安定である。
(ホ)作用適温の範囲:分解反応及び、合成反応の作用適温は50〜55℃である。
(ヘ)失活条件:50℃、10分間の加熱条件下ではpH5.0および9.5で完全に失活する。また、pH7.0、15分間の処理では55℃で完全に失活する。
(ト)阻害:銅、水銀、カドミウム、亜鉛、N−ブロモサクシニイミド、p−クロロマーキュリベンゾエイトで阻害される。
(チ)アイソエレクトロフォーカシング法による等電点:4.5(リ)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子量:約88,000(ゲル濾過法による分子量は約200,000であり、2ケのサブユニットから構成されている)。
以下本発明について説明する。
【0011】本発明で用いる2種の酵素は、本発明者らにより新たに見出された菌株に由来する。この新規菌株は、本発明者等により静岡県富士市田子の浦海岸の汚泥中から新たに単離されたものである。この菌株は、バージェーズ・マニュアル・オブ・デターミネイティブ・バクテオロジー(Bergey's Mannual of Determinative Bacteriolgy) 、第8版、第1巻に従って同定すると、単離した菌株の菌学的諸性質を以下の表1に示しているように、プレシオモナス(Pleseiomonas)属に属し、P.shigelloidesの類縁菌と同定された。しかしながら、VPテストおよびウレアーゼテストが陽性であること、並びに、D−マンノース、D−ガラクトース、L−アラビノース、D−フラクトースを資化出来ること、並びに、pH9のアルカリ性条件下でも生育出来る点において記載内容と相違しており、しかも、トレハロースホスホリラーゼとマルトースホスホリラーゼの両酵素を菌体内および培地中(菌体外)に生成・蓄積する点で既知菌株とは大幅に異なる。なお、上記菌株プレシオモナスSH−35は工業技術院生命工学工業技術研究所に条寄第5144号(FERM BP-5144)として寄託している。
【0012】
【表1】


【0013】上記の新菌株は次のようにしてスクリーニングした。まず、採取海岸汚泥を整理食塩水に懸濁し、該懸濁液1滴を以下の組成の寒天培地に塗沫した。使用した寒天平板培地は寒天2%(w/v)、トレハロースまたはマルトース1%、ポリペプトン0.5%、酵母エキス0.5%、燐酸二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム・七水塩0.02%を含有する。かくして、寒天平板を37℃にて好気的に培養し、平板上に現れた各コロニーを得、各々のコロニーを寒天を除いた上記組成の液体培地中で37℃にて24〜72時間、180r.p.m.で振盪培養した。次いで、各培養液を12,000×gにて10分間、4℃で遠心分離し菌体と上澄液とに分離した。かくして得られた菌体は少量の0.1M燐酸緩衝液(7.0)に菌体を懸濁させ、以下に述べる方法で活性を測定した。その結果、上記のような菌学的諸特性を有する菌株を分離できた。
【0014】上記の新規な微生物は、新規なマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを生産する菌である。次に、これらの酵素の製造方法について説明する。上記の微生物(FERM P-14465)を適当な培地に接種し、培養する。培養は、該菌体の生育温度の観点から、25〜42℃の温度範囲とし、15〜70時間好気的に培養することが適当である。上記の微生物を培養することにより、本発明で用いるトレハロースホスホリラーゼおよび/またはマルトースホスホリラーゼが生成する。生成する酵素の大部分は菌体内に蓄積され、一部分は菌体外(培地中)に蓄積される。そこで、菌体内あるいは菌体外(培地中)に生成蓄積されたマルトースホスホリラーゼおよび/またはトレハロースホスホリラーゼを採取する。また、上記培養は、バッチ式、連続式のいずれによっても実施することができる。
【0015】上記培養に用いる培地について説明する。炭素源としては、トレハロースやマルトースおよびこれらを含有する糖質を用いることができる。窒素源には各種有機および無機の窒素化合物を用い、さらに培地は各種の無機塩をさらに含むことができる。炭素源としてトレハロースもしくは該物質を含有する糖質を用いると、本発明の微生物はトレハロースホスホリラーゼを優先的に生産する。また、マルトースもしくは該物質を含有する糖質を炭素源として用いると、本発明の微生物はマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを同時に生産する。但し、この場合、トレハロースホスホリラーゼの生産量は、炭素源としてトレハロースを用いた場合に比べれば、少なくなる傾向がある。さらに、炭素源としてトレハロースとマルトースの両者又はこれらの物質を含有する糖質を用いると、トレハロースホスホリラーゼとマルトースホスホリラーゼとを同時に生産させることができ、トレハロースとマルトースの量を制御することで、トレハロースホスホリラーゼとマルトースホスホリラーゼの生成割合をコントロールすることもできる。
【0016】また、窒素源にはコーンスチープリカー、大豆粕、あるいは各種ペプトン類等の有機窒素源、そして硫安、硝安、燐安、尿素等の無機窒素源などの一般に微生物の培養に用いられている安価な化合物が使用可能である。なお、尿素や有機窒素源は炭素源にもなることはいうまでもない。
【0017】上記微生物の培養において使用するのに適した培地としては、例えば、トレハロースホスホリラーゼを優先的に生産したい場合には、トレハロース1〜2%(w/v)、酵母エキス2%、燐酸アンモニウム0.15%、尿素0.15%、食塩1%、燐酸二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム・七水塩0.02%および炭酸カルシウム0.2%を含むpH7.0〜7.5の液体培地を用いることが適当である。また、マルトースホスホリラーゼとトレハロースホスホリラーゼを同時に生産したい場合には、マルトース1〜2%(w/v)、ポリペプトンS(日本製薬製)2〜3%、燐酸アンモニウム0.15%、尿素0.15%、食塩1%、燐酸二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム・七水塩0.02%および炭酸カルシウム0.2%を含む液体培地を用いることが適当である。尚、前記のように、マルトースを炭素源として用いるとマルトースホスホリラーゼばかりでなく、トレハロースホスホリラーゼもある程度の量生産される。従って、本発明で用いるトレハロース生産用の粗酵素(マルトースホスホリラーゼとトレハロースホスホリラーゼとの混合物)を得るには、マルトースを炭素源として用いことが便利かつ経済的である。
【0018】上記培養において、各酵素は、培養菌体内又は培養上清中に蓄積される。本発明の製造方法では、菌体内の酵素を、菌体ごと粗酵素として用いることができる。さらに、菌体から菌体を破砕等した後に酵素を抽出することで得た粗酵素を用いることもできる。さらに、菌体外の培養上清中にも酵素は含まれており、菌体を分離した残りの培養液を粗酵素含有液として利用することもできる。さらに、これらの粗酵素は、エタノール、アセトン、イソプロパノール等による溶媒沈澱法、硫安分画法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー等の通常の方法を用いて、精製した後に、本発明の製造方法に用いることもできる。尚、マルトースホスホリラーゼとトレハロースホスホリラーゼとは、両者の等電点が異なることから、陰イオン交換クロマトグラフィーにより分離することができる。マルトースホスホリラーゼ及びトレハロースホスホリラーゼは、それぞれ粗酵素又は精製酵素として利用することができる。さらに、両酵素の活性を有する菌体および該菌体を適当な担体に包括、吸着あるいは化学的に結合させた固定化菌体を使用することも可能である。さらには、各酵素を公知の方法で固定化させた固定化酵素として使用することもできる。例えば、菌体をアルギン酸やκ−カラギーナンで固定したり、或いは抽出酵素を陰イオン交換樹脂に吸着させたものを用いることができる。
【0019】このようにして得られる酵素は、前記の理化学的性質を有するマルトースホスホリラーゼ及びトレハロースホスホリラーゼである。これらの酵素の活性測定は、前記のプレシオモナスSH−35株がマルトースやトレハロースを加水分解するα−グルコシダーゼ(マルターゼ)、グルコアミラーゼ、トレハラーゼ等を生産しないので、加燐酸分解反応の測定にはそれぞれマルトースあるいはトレハロースを基質とし、燐酸塩存在下で酵素反応させて生成するグルコースをグルコースオキシダーゼ法で測定する簡便法が適用可能である。また、合成反応はβ−D−グルコース1燐酸とグルコースの混合液を基質とし、酵素反応により生成する無機燐酸を常法により測定することで可能である。
【0020】酵素活性測定法(1)分解反応:50mMの燐酸緩衝液(pH7)に溶解させた20mMのマルトースもしくはトレハロース溶液0.5mlに酵素液0.01mlを添加し、50℃で15分間反応させた後、沸騰水浴中で3分間加熱して酵素反応を止める。次いで、流水中で冷却した後、生成したグルコースをグルコースオキシダーゼ法(和光純薬工業(株)製、グルコースC−IIテスト・ワコー)で測定する。ここで1単位の酵素活性は同条件下で1分間に1μmole(マイクロモル)のグルコースを生成する酵素量とする。
(2)合成反応:70mMのヘペス(HEPES)緩衝液(pH7.0)に溶解させた27mMのβ−D−グルコース1燐酸Na塩と同濃度のグルコースとの混合溶液0.15mlに0.05mlの酵素液を添加し、50℃で15分間反応させた後、沸騰水浴中で2分間加熱して酵素活性を止める。ついで、生成した無機燐酸を和光純薬工業(株)製ピーテストワコーを用いて測定する。ここで1単位の酵素活性は同上条件下で1分間に1マイクロモル(μmole)の無機燐酸を生成する酵素量とする。
【0021】本発明の製造方法は、前記2種の酵素を燐酸の存在下でマルトースに作用させるものである。燐酸は、マルトースが加燐酸分解されるために必要であり、反応液中0.1〜500ミリモル/リットル、好ましくは5〜10ミリモル/リットルの濃度範囲とすることが適当である。燐酸としては、例えば、オルト燐酸、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸2水素ナトリウム、燐酸2水素カリウム等の無機燐酸及びその塩等を用いることができる。また、基質としては、マルトースを用いる。但し、マルトースは、精製品であっても、或いはマルトースを含有する糖質であってもよい。マルトース濃度は、操作し易い粘度の溶液、及び仕込み1回当たりの収量即ち経済性という観点から、10〜600g/リットル、好ましくは200〜400g/リットルの範囲とすることが適当である。
【0022】酵素の濃度は、トレハロースの生成率や反応時間等を考慮して適宜決めることができる。但し、通常0.1〜50単位/g−基質とすることが適当である。反応温度は、酵素の至適温度及び反応時間等を考慮して適宜決められるが、雑菌汚染の防止等を考慮すると30〜65℃、好ましくは45〜55℃の範囲であることが適当である。また、反応pHは、酵素の至適pHを考慮すると、5.0〜9.0、好ましくは6.0〜7.0の範囲であることが適当である。反応時間は、トレハロースの生成率、酵素の添加量、反応容器の容量等により適宜決定される。但し、一般には、工業的規模では約50〜80時間の範囲であることが適当である。
【0023】上記反応により生成したトレハロースは、澱粉糖の精製法と同様に、珪藻土濾過、イオン交換樹脂による脱塩、イオン交換クロマトグラフィーによる分画、濃縮、結晶化により、分離精製することができる。
【0024】
【実施例】以下本発明について実施例及び参考例によりさらに説明する。
参考例1菌体内および菌体外トレハロースホスホリラーゼの製造トレハロース1%(w/v)、酵母エキス(Difco社製) 2%、燐酸アンモニウム0.15%、尿素0.15%、食塩1%、燐酸二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム・七水塩0.02%および炭酸カルシウム0.2%を含むpH7.5の液体培地20リットルに予め同上培地で一夜培養して得たプレシオモナスSH−35株種菌(FERM BP-5144)1リットルを無菌的に添加し、37℃、300rpm、通気量1v.v.mの条件下で24時間通気攪拌培養をした。本培養液のトレハロースホスホリラーゼ活性を測定した結果、培養液1ml当たり1.5単位であった。また同様にマルトースホスホリラーゼ活性も測定したが、活性は微量であった。次いで、12,000×g、4℃で10分間遠心分離し、約160gの菌体(湿潤時)および19.5リットルの上清液を得、ロミコン(Romicon) 社製UF膜(YM-30 )で濃縮し、約1リットル(約6,400単位)の菌体外濃縮粗酵素が得られた。上清液中の酵素活性を測定した結果、全活性(約30×103 単位)の約25%(7.5×103 単位)の活性があった。また、菌体部分については10mMの燐酸緩衝液(pH7)で充分洗浄し、500mlの同上緩衝液に懸濁させた後、超音波菌体破砕機で菌体を破砕し、常法によりトレハロースホスホリラーゼ活性を測定した結果、全活性の約75%(22.5×103 単位)が菌体内に含まれていた。
【0025】参考例2(マルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼ含有菌体内および菌体外酵素の製造)参考例1で用いた培地成分中のトレハロースをマルトースに、酵母エキスをポリペプトンFC(日本製薬(株)製)5%(w/v)にそれぞれ代え、他は同様な方法でSH−35株(FERM BP-5144)を培養した。本培養液のマルトースホスホリラーゼ活性並びにトレハロースホスホリラーゼ活性を測定した結果、培養液1ml当たり0.5単位のマルトースホスホリラーゼ活性と0.45単位のトレハロースホスホリラーゼが含まれていた。次いで、同様に遠心分離して約150gの菌体(湿潤時)および19.6リットルの上清液を得た。ついで、菌体および上清中のマルトースホスホリラーゼ活性を測定した結果、マルトースホスホリラーゼの全活性の約78%(約10,000単位)が菌体内に、そして約22%が菌体外(培養上清)に含まれていた。また、トレハロースホスホリラーゼの全活性の約82%(約9,000単位)が菌体内に、そして約18%が菌体外(培養上清)に含まれていた。培養上清は参考例1と同様な方法で濃縮し、約1リットルの濃縮酵素が得られ、該濃縮酵素中には約1,700単位のマルトースホスホリラーゼと1,430単位のトレハロースホスホリラーゼが含まれていた。
【0026】参考例3トレハロースホスホリラーゼの精製参考例1で得られた菌体破砕エマルジョン気500mlに硫安を加えて30%飽和とし、4℃で一夜放置した。次いで、遠心分離をして沈澱物を除いて得られる上清液にさらに硫安を加えて70%飽和とした。4℃で一夜放置して生成する沈澱物を遠心分離で集め、0.4M食塩を含む20mM燐酸緩衝液(pH7)に溶解させた後、同上緩衝液で充分に透析した。
【0027】次いで、同上緩衝液で平衡化したDEAE−フラクトゲル(メルク社製)カラムに通液し酵素を吸着させた。吸着した酵素を同上緩衝液に含まれる0Mから0.6Mの食塩の濃度勾配法で溶出させた後、UF膜(アミコン社製、YM−30)で濃縮した。濃縮酵素は0.2M食塩を含む同上緩衝液で平衡化したセファクリルS−300(ファルマシア社製)カラムを用いてゲル濾過クロマトグラフィーで精製した。得られた活性画分を集め、1.5M硫安を含む同上緩衝液で充分に透析した後、1.5M硫安を含む同上緩衝液で平衡化したフェニル・トヨパール(東ソー社製)カラムに通液し酵素を吸着させた。吸着した酵素を同上緩衝液に含まれる1.5Mから0Mの硫安の濃度勾配法で溶出させた後、得られた活性画分を集め0.2M食塩を含む同上緩衝液で充分に透析した。前述のUF膜を用いて濃縮した後、0.2M食塩を含む同上緩衝液で平衡化したスーパーデックス(Superdex)200(ファルマシア社製)で再度ゲル濾過クロマトグラフィーを行い、得られた活性画分を前述の方法で濃縮してポリアクリルアミドゲルデイスク電気泳動法(PAGE)並びにSDS−PAGE法において均一な菌体内トレハロースホスホリラーゼ精製酵素(5ml、約7,880単位、活性収率約35%)が得られた。また、菌体外酵素についても上記と同様の方法で精製濃縮して、トレハロースホスホリラーゼ精製酵素(5ml、約2,400単位、活性収率約32%)を得た。
【0028】参考例4マルトースホスホリラーゼの精製参考例2で得られたマルトースホスホリラーゼ含有菌体及び培養上清を参考例3と同様な方法で精製し、PAGE法及びSDS−PAGE法において均一な菌体内マルトースホスホリラーゼ(5ml、約2,800単位、活性収率約28%)及び菌体外トレハロースホスホリラーゼ(5ml、約425単位、活性収率約25%)をそれぞれ得た。
【0029】参考例5マルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼの酵素化学的諸性質参考例1及び2で得られたプレシオモナスSH−35株(FERM P-14465)が生産する新規マルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼの一般的な酵素化学的特性を以下に示す。なお、予備実験の結果、菌体内および菌体外の両酵素共にほぼ同様な理化学的諸性質を示したので、ここでは菌体内酵素の諸性質を示している。
【0030】(イ)作用10mM燐酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた1%(w/v)のマルトース及びトレハロース溶液にマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを基質1gに対してそれぞれ5単位(分解反応)添加し、50℃で5時間反応させた後、沸騰水浴中で3分間加熱して酵素を失活させて得られる糖化液中の糖を高速液体クロマトグラフ法で測定した結果、グルコース及びグルコース1燐酸がそれぞれ検出された。また、10mMのトリス(Tris)塩酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた1%(w/v)のグルコースおよびβ−D−グルコース1燐酸Na塩もしくはα−D−グルコース1燐酸Na塩の混合溶液を基質とし、マルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを基質1gに対してそれぞれ5単位添加し50℃で5時間反応させた後、前述のように処理して糖組成を測定した結果、グルコースとβ−D−グルコース1燐酸からはマルトースおよびトレハロースがそれぞれ検出されたが、グルコースとα−D−グルコース1燐酸からの二糖類の合成反応は検出されなかった。
【0031】生成糖の分析は以下の方法で行った。即ち、加熱失活させて得られる糖化液中の不溶物を0.45μmのメンブレンフィルターで濾別して得られる濾液を供試糖液とし、YMC−Pack、ODS−AQ(AQ−304、YMC社製)カラムを用いる高速液体クロマトグラフィー法で測定した。なお、移動相には水を用い、カラム温度を30℃とし検出には示差屈折計を用いた。
(ロ)基質特異性(分解反応)先に述べた活性測定法(分解反応)に示した基質(マルトースもしくはトレハロース)に代えて各種糖類を基質とした場合の活性を相対活性として表した。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】


【0033】(ハ)至適pHおよび安定pH範囲精製酵素を用いて分解および合成反応の最適pHを測定した。その結果、図1のAに示したように、マルトースホスホリラーゼの分解反応(白丸で示す)の最適pHは7.0〜7.5であり、合成反応(黒丸で示す)は6.0が最適であった。また、図1のBに示すように、トレハロースホスホリラーゼは分解反応(白丸)及び合成反応(黒丸)共に7.0が最適であった。なお、pH分解反応の場合は20mMの燐酸緩衝液を、合成反応の場合には、MES(pH5.5〜6.5)、MOPS(pH値6.5〜7.0)、HEPES(pH7.0〜8.0)、トリスー塩酸(pH7.5〜9.0)の各緩衝液を用いて調整した。また、精製した両酵素を各緩衝液中で10分間、50℃で処理し、それらの残存酵素活性を分解反応で測定した結果、図2に示したように、マルトースホスホリラーゼ(白丸)はpH5.5〜6.5の範囲で、また、トレハロースホスホリラーゼ(黒丸)はpH6.0〜9.0まで安定であった。なお、pHは酢酸(pH5.0〜5.5)、燐酸(pH6.0〜8.0)、炭酸(pH8.9)の各緩衝液を用いて調整した。
【0034】(ニ)作用適温両酵素の分解反応および合成反応の作用適温を測定した結果、図3に示したように、マルトースホスホリラーゼ(A、白丸:分解反応、黒丸:合成反応)、トレハロースホスホリラーゼ(B、白丸:分解反応、黒丸:合成反応)共に分解反応は50℃、合成反応は50〜55℃の範囲であった。
(ホ)温度による失活の条件マルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼのそれぞれの安定pHであるpH6.0および7.0の条件下で15分間処理し、残存する失活を無処理と比較して常法により測定した。その結果、図4に示したように、マルトースホスホリラーゼ(白丸)は55℃で、また、トレハロースホスホリラーゼ(黒丸)は60℃で完全に失活した。
(ヘ)阻害剤両酵素の合成反応における活性を各種阻害剤存在下で測定し、無添加時の活性を100%とする相対活性で表した結果を表3に示す。
【0035】
【表3】


【0036】(ト)等電点アイソゲル(FMC BioProducto社製) を用いるアイソエレクトロフォーカシング法により、両酵素の等電点を測定した結果、図5に示したようにマルトースホスホリラーゼは3.8、トレハロースホスホリラーゼは4.5であった。
(チ)分子量両精製酵素の分子量をSDS−PAGE法並びにセファクリルS−200を用いるゲル濾過法により測定した。その結果、図6に示したように、ゲル濾過法では両酵素の分子量は約200,000であったが、SDS−PAGE法ではマルトースホスホリラーゼが約92,000そしてトレハロースホスホリラーゼが約88,000であったことから、これらの酵素はそれぞれ2ケのサブユニットから構成されていることが予想された。上記の理化学的諸性質を既知のマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼと比較して表4および表5にまとめた。
【0037】
【表4】


【0038】
【表5】


【0039】実施例110mlの10mM燐酸緩衝液(pH6)に溶解させた10、20、30、および40%(W/V)の各マルトース溶液に参考例3および参考例4と同様な方法で調製した菌体内精製トレハロースホスホリラーゼおよび菌体内精製マルトースホスホリラーゼを各々基質重量1g当たり5単位(分解活性)添加し、55℃で70時間反応させた。反応終了後、反応液を100℃で5分間加熱して酵素を失活させて得られる糖化液中のトレハロース含有量を測定した。その結果、基質重量に対してそれぞれ58.2、58.1、58.6.57.9%のトレハロースが生成していた。なお、トレハロースの定量は以下の方法で行った。即ち、加熱失活させた糖化液に水を加え、約1%(W/V)とした後、該糖化液0.5mlにグルコアミラーゼ(生化学工業製、ピュアグレード30U/mg)を0.01単位添加し、50℃、pH5.0で1時間反応させて未反応のマルトースをグルコースに完全に分解させた。次いで100℃の沸騰水浴中で5分間加熱してグルコアミラーゼを失活させた後、生成する不溶性蛋白質を0.45μmのメンブレンフィルターで除去して得られる濾液中のトレハロース含有量をYMC−Pack ODS−AQ(AQ−304、YMC社製)カラムを用いる液体クロマトグラフ法(HPLC法)で測定した。なお、測定は移動相に水を用い、カラム温度を30℃として、検出には示差屈折計を用いた。
【0040】実施例210mlの5mM燐酸緩衝液(pH6)に溶解させた20%(W/V)のハイマルトースシラップ(日本食品化工製、商品名MC−95、糖組成:グルコース2.5%、マルトース95.2%、マルトトリオース0.8%、マルトテトラオース1.5%)に、参考例3および4と同様な方法で調製した菌対外精製トレハロースホスホリラーゼおよび菌体外精製マルトールホスホリラーゼを基質重量1g当たり各々5単位添加し、以下実施例1と同様に反応させた。生成したトレハロースをHPLC法で測定した結果、使用した基質重量に対して54.3%であった。
【0041】実施例3実施例2と同様な方法で調製してトレハロースホスホリラーゼおよびマルトースホスホリラーゼを含有する菌体約1kg(湿潤時)を得た。常法により酵素活性(分解活性)を測定した結果、該菌体には55単位/g(湿潤時)のトレハロースホスホリラーゼおよび68単位/g(湿潤時)のマルトースホスホリラーゼ活性を有していた。調製した菌体1kgを10mMの燐酸緩衝液(pH6.5)に含まれる30%(W/V)のマルトース溶液250リットル中に添加し、50℃で80時間反応させた後、菌体を遠心分離して除いた。得られた上清液の一部をグルコアミラーゼ処理し、その糖組成をHPLC法で測定した。その結果、トレハロース58.1%、グルコース39.6%、グルコース1燐酸2.3%であった。ついで、得られた糖化上清液約240リットル(固形物72kg)に固形物重量に対して0.1%の工業用粗グルコアミラーゼ(新日本化学社製、商品名スミチーム#3,000)を添加し、pH5.5、55℃で20時間再糖化して残存するマルトースをグルコースにほぼ完全に加水分解した。次いで常法により活性炭脱色、イオン交換樹脂による脱塩などで精製し、減圧下で濃縮して濃度約75%(W/V)の精製糖化液(固形物約65kg)を得た。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、新規なマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを用いて、トレハロースを酵素的に製造することができる。また、本発明のトレハロースの製造方法は、pHの調整が容易であり、高い基質(マルトース)濃度でも、高収率でトレハロースが得られる。さらに、反応温度も高くすることが可能であり、より高い反応温度を選ぶことで高収率でトレハロースが得られる。さらに、高温での酵素反応が可能であることから、反応中の雑菌汚染から免れることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 プレシオモナスSH−35株の生産するマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼの反応至適曲線〔シンボル:分解反応(○)、合成反応(●)〕。
【図2】 プレシオモナスSH−35株の生産するマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼのpH安定性〔シンボル:マルトースホスホリラーゼ(○)、トレハロースホスホリラーゼ(●)〕。
【図3】 プレシオモナスSH−35株の生産するマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼの作用適温〔シンボル:分解反応(○)、合成反応(●)〕。
【図4】 プレシオモナスSH−35株の生産するマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼの温度安定性〔シンボル:マルトースホスホリラーゼ(○)、トレハロースホスホリラーゼ(●)〕。
【図5】 プレシオモナスSH−35株の生産するマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼの等電点。
【図6】 プレシオモナスSH−35株の生産するマルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼの分子量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 以下に示す理化学的性質を有するマルトースホスホリラーゼ及びトレハロースホスホリラーゼを燐酸の存在下でマルトースに作用させることを特徴とするトレハロースの製造方法。
マルトースホスホリラーゼ(イ)作用:マルトース中のα−1,4−グルコピラノシド結合を燐酸存在下で可逆的に加燐酸分解し、グルコースおよびβ−D−グルコース1−燐酸を生成する。
(ロ)基質特異性(分解反応):マルトースに作用し、他の二糖類に作用しない。
(ハ)至適pHおよび安定pH範囲:分解反応の至適pHは7.0〜7.5であり、合成反応の至適pHは6.0である。50℃、10分間の加熱条件下ではpH5.5〜7.0の範囲内で安定である。
(ニ)温度に対する安定性:pH6.0、15分間の加熱条件下では45℃まで安定である。
(ホ)作用適温の範囲:50℃近傍に分解反応の至適作用温度を有し、合成反応の作用適温は50〜55℃である。
(ヘ)失活条件:50℃、10分間の加熱条件下ではpH5.0および8.0で完全に失活する。また、pH6.0、15分間の処理では55℃で完全に失活する。
(ト)阻害:銅、水銀、カドミウム、亜鉛、N−ブロモサクシニイミド、p−クロロマーキュリベンゾエイト、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムで阻害される。
(チ)アイソエレクトロフォーカシング法による等電点:3.8(リ)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子量:約92,000(ゲル濾過法による分子量は約200,000であり、2ケのサブユニットから構成されている)。
トレハロースホスホリラーゼ(イ)作用:トレハロース中のα−1,1−グルコピラノシド結合を燐酸存在下で可逆的に加燐酸分解し、グルコースおよびβ−D−グルコース1−燐酸を生成する。
(ロ)基質特異性(分解反応):トレハロースに作用し、他の二糖類に作用しない。
(ハ)至適pHおよび安定pH範囲:分解および合成反応の至適pHは7.0である。50℃、10分間の加熱条件下ではpH6.0〜9.0の範囲内である。
(ニ)温度に対する安定性:pH7.0、15分間の加熱条件下では50℃まで安定である。
(ホ)作用適温の範囲:分解反応及び、合成反応の作用適温は50〜55℃である。
(ヘ)失活条件:50℃、10分間の加熱条件下ではpH5.0および9.5で完全に失活する。また、pH7.0、15分間の処理では55℃で完全に失活する。
(ト)阻害:銅、水銀、カドミウム、亜鉛、N−ブロモサクシニイミド、p−クロロマーキュリベンゾエイトで阻害される。
(チ)アイソエレクトロフォーカシング法による等電点:4.5(リ)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子量:約88,000(ゲル濾過法による分子量は約200,000であり、2ケのサブユニットから構成されている)。
【請求項2】 マルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼが生命研条寄第5144号の微生物を培養して得られた菌体内酵素又は菌体外酵素である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】 酵素反応を30〜65℃の温度範囲で行う請求項1又は2記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】特許第3014950号(P3014950)
【登録日】平成11年12月17日(1999.12.17)
【発行日】平成12年2月28日(2000.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−232458
【出願日】平成7年9月11日(1995.9.11)
【公開番号】特開平8−131182
【公開日】平成8年5月28日(1996.5.28)
【審査請求日】平成9年8月1日(1997.8.1)
【微生物の受託番号】 FERM BP−5144
【出願人】(000231453)日本食品化工株式会社 (68)