説明

トレプロスチニル一水和物

【課題】たとえば、保管、輸送、取り扱い、および製剤において利点を提示するトレプロスチニルの安定な形状に対する必要性が存在する。
【解決手段】トレプロスチニルの安定な一水和物型および同じものを含む医薬製剤、同じものを作製し、使用する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願
[0001]本出願は2008年5月8日に出願された米国仮出願第61/051,509号に基づく優先権を主張し、その全体を参照として本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
[0002]プロスタサイクリン誘導体は血小板凝集阻害、胃液分泌減少、傷害阻害、および気管支弛緩などの活性を有する有用な医薬化合物である。
【0003】
[0003]レモジュリン(Remodulin)(登録商標)中の活性成分であるトレプロスチニルは米国特許第4,306,075号に初めて記載された。トレプロスチニルおよび他のプロスタサイクリン誘導体はMoriartyらのJ.Org.Chem.2004,69,1890−1902、Drug of the Future,2001,26(4),364−374、米国特許第6,441,245号、第6,528,688号、第6,700,025号、第6,809,223号、第6,756,117号および2008年12月15日に出願されたBatraらの米国特許出願第12/334,731号に記載のように調製されてきた。
【0004】
[0004]米国特許第5,153,222号は肺高血圧症の処置のためのトレプロスチニルの使用を記載する。トレプロスチニルは静脈内ならびに皮下経路に対して認可され、後者は継続的な静脈内カテーテルに伴う感染性事象を回避させる。米国特許第6,521,212号および第6,756,033号は、肺高血圧症、末梢血管疾患ならびに他の疾患および状態の処置のための吸入によるトレプロスチニルの投与を記載する。米国特許第6,803,386号は、肺癌、肝臓癌、脳腫瘍、膵臓癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌および頭頸部癌などの癌を処置するためのトレプロスチニルの投与を開示する。米国特許出願公開第2005/0165111号は虚血性傷害のトレプロスチニル処置を開示する。米国特許第7,199,157号はトレプロスチニル処置が腎臓機能を改善することを開示する。米国特許出願公開第2005/0282903号はニューロパシー足部潰瘍のトレプロスチニル処置を開示する。米国特許出願公開第2008/0280986号は肺線維症のトレプロスチニル処置を開示する。米国第6,054,486号はトレプロスチニルによる末梢血管疾患の処置を開示する。米国特許出願公開第2009/0036465号はトレプロスチニルを含む組み合わせ療法を開示する。米国特許出願公開第2008/0200449号は、定量噴霧式吸入器を使用したトレプロスチニルの送達を開示する。米国特許出願公開第2008/0280986号は、トレプロスチニルによる間質性肺疾患の処置およびトレプロスチニルによる喘息の処置を開示する。米国特許第7,417,070号および第7,384,978号ならびに米国公開公報第2007/0078095号、第2005/0282901号および第2008/0249167号はトレプロスチニルおよび他のプロスタサイクリン類似体の経口製剤を記載する。
【0005】
[0005]前述の参考文献の教示は、本発明の態様をどのように実行するかを示すために参照として援用される。
【0006】
[0006]要するに、トレプロスチニルは薬用の観点から非常に重要である。従って、たとえば保管、輸送、取り扱い、および製剤において利点を提示するトレプロスチニルの安定な形状に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]本発明の一態様は、トレプロスチニルの一水和物、トレプロスチニル一水和物を含む医薬製剤、ならびに同じものを作製し、使用する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]該一水和物はトレプロスチニルの他の形状より長い期間にわたり室温で安定である。
【0009】
[0009]一態様では、従って治療有効量のトレプロスチニル一水和物および薬剤的に受容可能なキャリアを含む医薬製剤が提供される。
【0010】
[0010]一態様では、トレプロスチニル一水和物の製造方法が提供される。
【0011】
[0011]一態様では、さらに前述のJ.Org.Chem.2004,69,1890−1902、Drug of the Future,2001,26(4),364−374、米国特許第5,153,222号、第6,054,486号、第6,521,212号、第6,756,033号、第6,803,386号、および第7,199,157号、米国特許出願公開第2005/0165111号、第2005/0282903号、第2008/0200449号、第2008/0280985号、および第2009/0036465号に記載の方法のような、トレプロスチニルを使用するための当該技術分野で公知の方法を含む、医学的状態を処置するためのトレプロスチニル一水和物を使用する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1a】[0012]図1aは無水トレプロスチニルのIR(赤外線)スペクトルである。
【図1b】[0013]図1bはトレプロスチニル一水和物のIR(赤外線)スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0014]特記しない限り、“a”または“an”は“1以上”を意味する。本発明はトレプロスチニルの新規な一水和物の形態に関する。トレプロスチニルはレモジュリン(登録商標)の活性成分であり、NTHAクラスII、IIIおよびIV症状の患者において、皮下または静脈内投与を使用して運動に伴う症状を緩和するための、肺動脈高血圧症(PAH)の処置に対して米国FDAによって認可されている。
【0014】
[0015]トレプロスチニルの化学名は以下の構造:
【0015】
【化1】

【0016】
の2−((1R,2R,3aS,9aS)−2−ヒドロキシ−1−((S)−3−ヒドロキシオクチル)−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[b]ナフタレン−5−イルオキシ)酢酸である。
【0017】
[0016]トレプロスチニル(TREPROSTINIL)の無水物型は以前に、たとえばJ.Org.Chem.2004,69,1890−1902に記載されている。無水物型は室温で安定でない。安定性試験は、無水TREPROSTINILは25℃で安定ではなく、静置によりダイマ−が形成されることを示す。大量のダイマ−が、より高い温度で形成されうる。しかし、ダイマ−形成は5℃ではほとんど無視できる。従って、無水トレプロスチニルは保管および輸送に対して冷蔵されなければならない。これまで、トレプロスチニルは低温(2℃〜8℃)を維持するために冷蔵され、アイスパックと一緒に輸送されなければならなかった。
【0018】
[0017]無水トレプロスチニルの不安定性はまた、その調製に対して難題を課す。無水トレプロスチニルを得るために、再結晶化から得られたウェット化合物は真空状態で加熱された。トレプロスチニル固体が50℃より高い温度で加熱されると、トレプロスチニルの2種のダイマ−が固体中に不純物として形成されることが見出された。従って、すべての水を除去するためにトレプロスチニルを乾燥する場合、高温を回避するために、加熱温度は注意深く制御されなければならない。さもなければ、これらの2種のダイマ−不純物が生み出されることになる。
【0019】
[0018]不安定性に加えて、無水トレプロスチニルは取り扱いが難しい。無水物型はそれが生み出す静電荷電のために重量を測定することが困難な、微細で、飛散しやすい物質である。トレプロスチニルは強い生物学的活性を有する強力なプロスタグランジン類似体であるため、この物質を取り扱う場合、暴露を回避するために分析者やオペレーターは極めて注意深く使用しなければならない。
【0020】
[0019]現在驚くべきことに、トレプロスチニルは一水和物の形態で存在しうることが見いだされている。トレプロスチニルの一水和物形態の性状を解析するためにデータが生み出されてきた。該一水和物の1つの利点は、それが室温で安定なことである。安定性データは、一水和物の形態が室温、たとえば25℃で無水物型よりいっそう安定であることを示す。トレプロスチニル一水和物は特別な取り扱いをせずに、保管され、輸送されうる。トレプロスチニルの安定性は著しく改善されて、冷蔵庫内での保管、または低温状態下で輸送されることをもはや必要としない。
【0021】
[0020]一水和物の第2の利点は、静電荷電がこの形状では非常に低減されているため、該物質の重量測定および取り扱いがはるかに容易なことである。一水和物の形態を使って作業する場合、作業者にとって暴露を回避することははるかに容易である。従って、一水和物の改善された物理的特性のゆえに該物質を取り扱う場合の安全性も改善されている。
【0022】
[0021]トレプロスチニル一水和物はまた、その安定性および安全性のゆえに医薬製剤における使用に対して利点を提示する。
【0023】
[0022]本発明の一態様では、トレプロスチニルの一水和物の形態が提供される。一態様では、トレプロスチニル一水和物は結晶型で存在する。一態様では、トレプロスチニル一水和物は組成物の重量で少なくとも90%の純度を有する形態である。一態様では、トレプロスチニル一水和物は組成物の重量で少なくとも95%の純度を有する形態である。一態様では、トレプロスチニル一水和物は組成物の重量で少なくとも99%の純度を有する。
【0024】
[0023]トレプロスチニル一水和物は室温で安定であり、そしてさらに約15℃から約35℃まで、より好ましくは約20℃から約30℃までの範囲の温度にわたり安定性を示す。
【0025】
[0024]一態様では、トレプロスチニル一水和物の製造方法が提供され、該方法は以下のことを含む:
a.固体を提供するために有機溶媒/水の組み合わせから無水またはウェットトレプロスチニルを再結晶化すること;および
b.溶媒の付加的な留去が見られなくなるまで周囲温度で固体を風乾すること。
【0026】
[0025]上記の方法における風乾の温度は好ましくは約15℃から約35℃まで、より好ましくは約20℃から約30℃までである。再結晶化されている無水またはウェットトレプロスチニルがある範囲の純度を有していてもよい。ある態様では、それは純粋である。ある態様では、それは実質的に純粋である。ある態様では、それは合成に由来する粗生成物であってもよい。ある態様では、トレプロスチニルの粗生成物が固体または半固体であってもよい。
【0027】
[0026]ある態様では、有機溶媒は、低級アルコール、低級ケトン、および低級エーテルを含むがそれらに限定されない、水溶性溶媒であってもよい。低級アルコールは、たとえばメタノール、エタノール、またはイソプロパノールであってもよい。低級ケトンはたとえば、アセトンであってもよい。低級エーテルは、たとえばテトラヒドロフランまたはジオキサンであってもよい。有機溶媒/水の比は約1:1、または約1:2、または約1:3、または約1:4、または約1:5、または約2:1、または約3:1、または約4:1、または約5:1であってもよい。一態様では、有機溶媒はエタノールである。一態様では、有機溶媒/水の比は1:1である。
【0028】
[0027]本発明の一態様は前述の方法に従って調製されたトレプロスチニル一水和物である。
【0029】
[0028]別の態様はトレプロスチニル一水和物および薬剤的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含む医薬製剤である。
【0030】
[0029]本明細書で形容詞として使用する場合、“医薬(pharmaceutical)”という用語は、実質的に受容する哺乳類に無害であることを意味する。“医薬製剤”はキャリア、希釈剤、賦形剤、および活性成分が製剤の中の他の成分と適合し、その受容者に無害でなければならないことを意味する。
【0031】
[0030]トレプロスチニル一水和物は投与の前に処方されうる。製剤の選択は有効量の決定に関与する因子と同じ因子を考慮して主治医によって決定されなければならない。
【0032】
[0031]そのような製剤中の総活性成分は製剤の重量で0.1%から99.9%をなす。トレプロスチニル一水和物は1種以上の活性成分と一緒に、または単独の活性成分として製剤されうる。
【0033】
[0032]本発明の医薬製剤は、公知で、容易に入手可能な成分を使用して、当該技術分野で公知の手順により調製される。たとえば、トレプロスチニル一水和物は、単独、または他の活性成分との組み合わせのいずれかで、一般的な賦形剤、希釈剤、またはキャリアと一緒に製剤され、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、液剤、注射剤、エアゾール、粉末剤などに形成される。
【0034】
[0033]非経口投与のための本発明の医薬製剤は、滅菌水性または非水性液剤、分散剤、懸濁剤、またはエマルジョン、ならびに使用直前に滅菌液剤または懸濁剤に溶解される滅菌粉末剤を含む。適切な滅菌水性および非水性キャリア、希釈剤、溶媒またはベヒクルには水、生理的食塩水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール)など)、および適切なその混合物、植物油(たとえば、オリーブオイル)、ならびにオレイン酸エチルのような注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、たとえばレシチンのようなコーティング物質の使用により、分散剤および懸濁剤の場合には適切な粒子サイズの維持により、そして界面活性剤の使用により維持される。
【0035】
[0034]非経口製剤はまた、保存剤、加湿剤、乳化剤、および分散化剤のようなアジュバントを含んでいてもよい。微生物の作用の予防は抗菌剤および抗真菌剤、たとえばパラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなどの含有により保証される。また、糖類、塩化ナトリウムなどのような等張剤を含有することが望ましくてもよい。注射用製剤は、たとえば細菌保定濾過器を通した濾過により、または製造時もしくは(二重室注射器パッケージの例におけるように)投与直前のいずれかにおいて、混合物の成分の混合に先立つ前滅菌処理によって滅菌される。
【0036】
[0035]経口投与用の固形剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤、および顆粒剤が挙げられる。そのような固形剤形では、トレプロスチニル一水和物は少なくとも1種の不活性な医薬キャリア、たとえばクエン酸ナトリウム、またはリン酸二カルシウム、および/または(a)充填剤または増量剤、たとえばデンプン、ラクトースおよびグルコースを含む糖類、マンニトール、ならびにケイ酸、(b)結合剤、たとえばカルボキシメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリ(ビニルピロリドン)、スクロースならびにアラビアゴム、(c)湿潤剤、たとえばグリセロール、(d)崩壊剤、たとえば寒天、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ケイ酸塩ならびに炭酸ナトリウム、(e)保湿剤、たとえばグリセロール;(f)溶解抑制剤、たとえばパラフィン、(g)吸収促進剤、たとえば4級アンモニウム化合物、(h)加湿剤、たとえばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリン、(i)吸収剤、たとえばカオリンおよびベントナイト粘土、および(j)潤滑剤、たとえばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリ(エチレングリコール)、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合には、剤形はさらに緩衝剤を含んでいてもよい。
【0037】
[0036]類似の型の固形製剤はまた、賦形剤、たとえばラクトースおよび高分子量(ポリ)エチレングリコール)などを使用して軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセル中に充填剤(fill)を含んでいてもよい。固形剤形、たとえば錠剤、ドラジェ(dragee)、カプセル剤、丸剤および顆粒剤はまた、コーティング剤またはシェル(shell)、たとえば医薬製剤分野で公知の腸溶コーティング剤または他のコーティング剤と一緒に調製されてもよい。コーティング剤は乳白剤(opacifying agent)または、消化管の特定の部分で活性成分を遊離する薬剤、たとえば胃において活性成分を遊離するための酸可溶性コーティング剤、または腸管において活性成分を遊離するための塩基可溶性コーティング剤を含んでいてもよい。活性成分はまた、徐放性コーティング剤の中にマイクロカプセル化されていてもよく、マイクロカプセルカプセル製剤の丸剤の一部を成していてもよい。
【0038】
[0037]トレプロスチニル一水和物の経口投与のための液体剤形としては、液剤、エマルジョン、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体製剤は、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、たとえば水または他の医薬溶媒、可溶化剤および乳化剤、たとえばエタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル類(とりわけ、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、およびごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリ(エチレングリコール)、ソルビトールの脂肪酸エステル、およびその混合物を含んでいてもよい。不活性希釈剤の他に、液体経口製剤はまた、加湿剤、乳化剤、および懸濁化剤のようなアジュバント、ならびに甘味剤、香味剤、および芳香剤を含んでいてもよい。液体懸濁剤は、活性成分に加えて、懸濁化剤、たとえばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト粘土、寒天、およびトラガカント、ならびにその混合物を含んでいてもよい。
【0039】
[0038]別の態様は、医学的状態を処置することが必要な対象に、治療有効量のトレプロスチニル一水和物を含む前述の医薬製剤を投与することを含む、医学的状態を処置する方法である。処置されることになる医学的状態には、肺高血圧症(原発性および二次性肺高血圧症、ならびに肺動脈高血圧症を含む)、鬱血性心不全、末梢血管疾患、喘息、重篤な間欠性跛行、免疫抑制、増殖性疾患、癌、たとえば肺癌、肝臓癌、脳腫瘍、膵臓癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、および頭頸部癌、虚血性傷害、ニューロパシー足部潰瘍、および肺線維症、腎臓機能、および間質性肺疾患が挙げられるが、それらに限定されない。ある態様では、医薬製剤はトレプロスチニル一水和物に加えて1種以上の活性成分を含んでいてもよい。以下の参考文献は、本発明の態様を実行するための参照として援用される。J.Org.Chem.2004,69,1890−1902、Drug of the Future,2001,26(4),364−374、米国特許第5,153,222号、第6,054,486号、第6,521,212号、第6,756,033号、第6,803,386号、および第7,199,157号、米国特許出願公開第2005/0165111号、第2005/0282903号、第2008/0200449号、第2008/0280985号、および第2009/0036465号。
【0040】
[0039]本発明はここで以下の実施例に関連して記載されることになる。これらの実施例は本発明の範囲を限定するものとして見なされるべきでなく、実例的な様式においてだけ役立つべきである。
【実施例】
【0041】
I.調製
[0040]TREPROSTINILはエタノールの50%水溶液から再結晶化された。“ウェット”な固体は濾過によって集め、溶媒の付加的な留去がなくなるまで周囲温度で風乾した。一水和物はこの乾燥プロセスの成果であった。
II.25℃におけるTREPROSTINILの無水物型対一水和物型の安定性
1.無水物lot#01A07002に関する安定性レポート(6ヶ月)
[0041]無水トレプロスチニルは以下の手順に従って調製された。
【0042】
[0042]トレプロスチニルジエタノールアミン塩3.34−kgの試料は40Lの滅菌水に溶解され、60Lの酢酸エチルおよび3.2Lの3M HClが添加され、混合物は攪拌された。層は分離され、水性層は酢酸エチルの20−L部分で直ちに抽出された。4つの有機層は合わされ、有機溶液は滅菌水の20−L部分で2回、20Lのブラインで1回洗浄され、2.97kgの無水硫酸ナトリウムで乾燥された。混合物は濾過され、濾液は濃縮されてゴム状の固体としてトレプロスチニルを得た。この固体はガラス乾燥トレイに移され、93時間風乾させた。この固体はその後23.4kgのエタノールに溶解され、48℃に温められ、23.4kgの温かい(40〜50℃)滅菌水で処置された。溶液は攪拌され、その後攪拌は停止され、トレプロスチニルはゆっくり結晶化した。生じた白色固体はAuroraフィルター中に濾過によって集められ、45Lの冷たい(6℃)滅菌水溶液中20%エタノールで洗浄され、フィルターはHepaフィルターを備えたフィニッシングルームに移され、ハウス真空下(house vacuum)で22.3時間固体は乾燥された。固体は乾燥トレイに移され、55℃および0.26Torrにおいて、22.7時間真空オーブン中でさらに乾燥され、白色固体として無水トレプロスチニル(Lot#01A07002)を2.63Kg(96.3%)得た。
【0043】
【表1】

【0044】
2.一水和物lot#D−1007−089のUT安定性概要(18ヶ月)
[0043]トレプロスチニル一水和物は以下の手順に従って調製された。
【0045】
[0044]トレプロスチニルジエタノールアミン塩3.4−kgの試料は36Lの滅菌水に溶解され、60Lの酢酸エチルおよび3.6Lの3M HClが添加され、混合物は攪拌された。層は分離され、水性層は酢酸エチルの20−L部分で直ちに抽出された。4つの有機層は合わされ、有機溶液は滅菌水の20−L部分で2回、20Lのブラインで1回洗浄され、2.86kgの無水硫酸ナトリウムで乾燥された。混合物は濾過され、濾液は濃縮されてゴム状の固体としてトレプロスチニルを得た。この固体はガラス乾燥トレイに移され、66時間風乾させた。この固体はその後23.8kgのエタノールに溶解され、48℃に温められ、23.8kgの温かい(40〜50℃)滅菌水で処置された。溶液は攪拌され、その後攪拌は停止され、トレプロスチニルをゆっくり結晶化させた。生じた白色固体はAuroraフィルター中に濾過によって集め、45Lの冷たい(6℃)滅菌水溶液中20%エタノールで洗浄され、フィルターはHepaフィルターを備えたフィニッシングルームに移され、ハウス真空下において23時間固体は乾燥された。固体はガラス乾燥トレイに移され、物質の総重量が一定になるまで(それ以上の溶媒の損失がない)、115時間さらに風乾させた。トレプロスチニル一水和物の試料はLot#1007−089として安定性研究に利用された。残存する物質は55℃および1.66Torrにおいて、10時間真空オーブン中でさらに乾燥し、無水トレプロスチニル(Lot#01G07018)を2.68Kg(96.4%)得た。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
[0045]TREPROSTINIL lot D−1007−089に関して集められた安定性データは、一水和物が周囲温度において無水物型よりいっそう安定であることを示す。安定性研究の1つは開放された容器中で保管されたTREPROSTINILの一水和物を追跡した。1モルの水は18ヶ月間にわたり固体から消失せず、水が結晶構造の構成部分であること、および該物質はただの“ウェット”な固体ではないことを示す。
【0050】
III.30℃および40℃において促進された安定性(Lot#01M07033)
本実験では、500mgのトレプロスチニル一水和物試料はNalgene125ml、HDPEボトルに保管された。この実験で使用された実験手順は、lot D−1007−089に関して先に記載の手順と同じであった。
【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
[0046]注:30℃/65%RH:研究は6ヶ月で中止した;40℃/75%RH:研究は12ヶ月で中止した。
【0054】
IV.無水物型および一水和物型の性状解析
[0047]性状解析は以下の方法により行われた:
1.カールフィッシャー法による水分含量の測定、
2.融点、
3.HPLCアッセイ、
4.比旋光度、
5.IRスペクトロスコピー、
6.元素分析。
【0055】
[0048]TREPROSTINIL中1モルの水は重量で4.41%と計算され、この結果はTREPROSTINILのこの水和型に1モルの水が存在することを確証する。
【0056】
[0049]トレプロスチニル(TREPROSTINIL)の一水和物型と無水物型の比較が行われた。TREPROSTINIL調製の過程で、lot番号01 M07033は重量の損失が観察されなくなるまで数時間風乾された。データは一水和物型に関して集められた。固体はその後55℃で数時間真空乾燥された。その後データは無水物型に関して集められた。
【0057】
【表7】

【0058】
[0050]上記の表は、TREPROSTINILの2つの形状間の識別可能な唯一の違いは存在する水の量であることを示す。水和型に対するカールフィッシャーアッセイによる水分4.5%という結果は1モルの水の存在に相当する。一水和物型のIRスペクトルはTREPROSTINILの無水物型のIRスペクトルと異なり、一水和物は異なる分子実体であることの目安になる。元素分析は無水物型および一水和物型に関して実施された。一水和物(lot no.01M07033)のCおよびHの燃焼分析の結果は以下の通りである:C23345・O(M.W.408.499)に対する計算値:C,67.63;H,8.87。実測値:C,67.74;H,8.79。無水物参照標準(lot no.D−066−193)のCおよびHの燃焼分析の結果は以下の通りである:C2334(M.W.390.486)の計算値:C,70.75;H,8.77。実測値:C,70.58;H,9.07。
【0059】
[0051]前述の事項は特有の態様を表すが、本発明はそのように限定されないことを理解するべきである。当業者は開示された態様に対して種々の改変が行われてもよいこと、およびそのような改変は本発明の範囲内であることが意図されていることに気がつくであろう。本明細書で参照したすべての刊行物および特許は、まるでそれぞれが個々に参照として援用される場合と同じ程度に、そのまま参照として本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレプロスチニルの一水和物。
【請求項2】
重量で少なくとも90%の純度で存在する、トレプロスチニル一水和物。
【請求項3】
結晶型の状態である、トレプロスチニル一水和物。
【請求項4】
a.固体を提供するために有機溶媒/水の組み合わせから無水またはウェットトレプロスチニルを再結晶化すること;
b.溶媒の付加的な留去が見られなくなるまで約15℃から約35℃までの温度で固体を風乾すること、
を含む、トレプロスチニル一水和物の製造方法。
【請求項5】
風乾の温度が約20℃から約30℃までである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
有機溶媒が低級アルコール、低級ケトン、および低級エーテルからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
有機溶媒がエタノールである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
有機溶媒/水の比が約1:1、または約1:2、または約1:3、または約1:4、または約1:5、または約2:1、または約3:1、または約4:1、または約5:1である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
エタノール/水の比が約1:1である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法によって製造されるトレプロスチニル一水和物。
【請求項11】
治療有効量のトレプロスチニル一水和物および薬剤的に受容可能なキャリアを含む医薬製剤。
【請求項12】
医学的状態を処置することが必要な対象に、治療有効量のトレプロスチニル一水和物を含む医薬製剤を投与することを含む、医学的状態を処置する方法であって、該医学的状態は肺高血圧症、鬱血性心不全、末梢血管疾患、重篤な間欠性跛行、免疫抑制、増殖性疾患、喘息、肺癌、肝臓癌、脳腫瘍、膵臓癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、頭頸部癌、虚血性傷害、ニューロパシー足部潰瘍、肺線維症、間質性肺疾患、および腎臓機能不全または腎不全を引き起こす疾患または状態からなる群から選択される,前記方法。
【請求項13】
対象がヒト対象である、請求項12に記載の方法

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate


【公表番号】特表2011−519927(P2011−519927A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508505(P2011−508505)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/002818
【国際公開番号】WO2009/137066
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(502278769)ユナイテッド セラピューティクス コーポレーション (10)
【Fターム(参考)】