説明

トレミー管を使用した土砂の水底投下方法及びその装置

【課題】トレミー管を使用した土砂の水底投下に際し、汚濁拡散防止効果が高く、汚濁循環用ポンプのエネルギー消費量を低くする。
【解決手段】トレミー管1の下端に土砂投下域の周囲を囲う配置のフード5を備え、フード1内の水をポンプ10にてトレミー管1の上端部内に循環させることにより汚濁拡散を防止するに際し、トレミー管1内に、水位を検出するセンサ13,14を取り付けておき、トレミー管1内への土砂の投入落下によって、センサ13,14による水位変化を検出させ、検出された水位の変動に連動させて前記ポンプ10を制御させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレミー管を使用して水底に覆砂等の土砂層を敷設する際に、土砂の投入により水底に発生する汚濁の拡散を抑制するようにしたトレミー管を使用した土砂の水底投下方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海底への土砂の散布技術としてトレミー管を使用する方法が知られている。この方法は、土砂をトレミー管を通して水底に投下するものであるため、投下の途中で土砂の拡散が抑制され、ガット船や底開式土運船による土砂の水底投下に比べて汚濁の発生が少ない。
【0003】
しかし、トレミー管を使用した場合であっても、トレミー管の下端から水中に土砂が落下される際の土砂中の細粒成分の水中への拡散や、水底に浮泥が堆積している場合には、投入された土砂によって生じる浮泥の撹乱によって汚濁が発生する。
【0004】
このような問題を解決するものとして、二重管トレミー方式がある(例えば特許文献1〜3)。この方式は、トレミー管を、同心配置の内管と外管とからなる二重管をもって構成させ、内管内を通して投下した土砂が、該内管下に落下することによって生じる汚濁を、内外管間隙間を通して上昇させ、これを内管上端部側面に開けた開口より再度内管内に流入させることによって循環させ、これによって汚濁の外管外へ拡散を抑制するようにしたものである。
【0005】
汚濁の循環は、内管内に土砂を投入することにより内管内の水位が下がり、内外管間の水位との間に生じる水頭差を利用している。即ち、内管内に土砂を投入すると、内管内は下向きの圧力が加わるため、内管内に下向きの流動が発生し、内管内の水位が一時的に低下する。その時に、内外管間隙間上部内の水が、該外管の水位より低い位置に設けられた開口を通じて内管内に流れ込む。
【0006】
この流れ込んだ水の量だけトレミー管下端下において内外管間隙間の下端より汚濁を吸い上げる。これによって土砂の投下によって舞い上がった浮泥や、土砂から発生する細粒成分を含む汚濁が吸い上げられて内管上部に循環されることにより、汚濁の拡散が抑制される。
【0007】
この他、水底への土砂の投入による汚濁の拡散を抑制する方法として、トレミー管の下端に、土砂投下部分の周囲を囲む配置のフードを設け、そのフード内の水をポンプによって吸い上げ、トレミー管上部に戻すことによって汚濁の拡散を抑制するようにした砂撒き装置が知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3834464号公報
【特許文献2】特許第3834465号公報
【特許文献3】特開2001−69076号公報
【特許文献4】特開昭56−119035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来の二重管トレミー方式では、循環水量が、内管内への土砂の投入量に依存しているため、安定した水量の吸い上げが困難であり、吸い上げ量が発生する汚濁量に比べて少なくなることが多く、汚濁拡散抑制効果が不十分であった。
【0010】
一方、トレミー管の下端にフードを備え、その内部の水をポンプによって強制吸引することによってトレミー管上部に循環させる方式は、汚濁拡散防止効果は高いが、常時ポンプを稼動させておく必要があるため、そのためのエネルギー消費量が多くなるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、トレミー管を使用した土砂の水底投下に際し、ポンプを使用した循環方式と同様に汚濁拡散抑制効果が高く、しかもポンプを稼動させるためのエネルギー消費量を低くし、少ないエネルギーで効果的に汚濁拡散を抑制できる土砂の水底投下方法及びその装置の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、筒状をした土砂類水底投下用のトレミー管と、該トレミー管の上端に連結したホッパーと、該トレミー管の下端に支持され、該下端下の所望範囲の土砂投下域の周囲を囲う配置のフードと、該フード内の水をポンプにて前記トレミー管の上端部内に循環させる循環手段とを備えた土砂水底投下装置を使用し、水底に投下しようとする土砂を前記ホッパーより投入し、前記トレミー管内を通して前記フード内の水底面上に落下させ、該落下によって生じる汚濁を前記循環手段によって吸引し前記トレミー管の上端部内に戻すことによって、水底への土砂の投下の際に生じる汚濁の拡散を抑制するようにしたトレミー管を使用した土砂の水底投下方法において、トレミー管内への土砂の投入落下によって生じる水位変動に連動して、前記循環手段に、前記トレミー管内の水位が所定の範囲内で維持されるように前記フード内の水をトレミー管の上端部内に循環させることにある。
【0013】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記トレミー管内に、該トレミー管内の水位を検出するセンサを取り付けておき、トレミー管内への土砂の投入落下によって生じる水位変動を前記センサによって検出させ、検出された水位の変動に連動させて前記ポンプを作動させることにある。
【0014】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項2の構成に加え、前記センサによるトレミー管内水位低下が所望の設定高さに達した時に前記ポンプが作動されるように自動的に制御することにある。
【0015】
請求項4に記載の発明の特徴は、筒状をした土砂類投下用のトレミー管と、該トレミー管の上端に連結したホッパーと、該トレミー管の下端に連結され、該下端下の所望の土砂投下域の周囲を囲う配置のフードと、該フード内の水をポンプにて前記トレミー管の上端部内に循環させる循環手段とを備え、水底に投下しようとする土砂を前記ホッパーより投入し、前記トレミー管内を通して前記フード内の水底面上に落下させ、該落下によって生じる汚濁を前記循環手段によって吸引し、前記トレミー管上端部内に戻すことによって、水底への土砂の落下によって生じる汚濁の前記フード外への拡散を抑制するようにしてなるトレミー管を使用した土砂水底投下装置において、前記トレミー管に、該トレミー管内の水位変化を検出するセンサを備え、該トレミー管内への土砂の投入落下によって生じる水位の変動を前記センサにより検出させ、該水位変動の検出に連動させて前記ポンプの作動を制御させるポンプ自動制御装置を備えたことにある。
【0016】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項4の構成に加え、前記センサは、トレミー管の吃水高さより低い位置に取り付けたポンプ始動用のセンサと、前記吃水高さより高い位置に取り付けたポンプ停止用のセンサとを備えていることにある。
【0017】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項4又は5の構成に加え、前記フードは、前記トレミー管の下端に固定した天板部と、該天板部の周囲縁部にそれぞれ上端側が枢支されて垂下された複数の遮蔽板をもって構成され、該フード下の水底に投入された土砂の堆積に対応して該フードの下端開放部が拡開されるようにしたことにある。
【0018】
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項4〜6のいずれか1の構成に加え、前記トレミー管の下端開口部下には、該トレミー管内を降下してきた土砂を前記フード内に拡散させる笠状の緩衝板を備えたことにある。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るトレミー管を使用した土砂の水底投下方法及びその装置では、トレミー管下端に備えたフード内の水をポンプによって強制的にトレミー管上部に送ることによってトレミー管下端部で土砂投入の際に舞い上がる浮泥等の汚濁を吸い上げてトレミー管内に戻すものであるため、汚濁の拡散が抑制される。
【0020】
また、水中ポンプで汚濁を吸い上げる仕組みとしているため汚濁拡散抑制効果は、ポンプの能力に依存し、高能力のポンプを使用することによってより高い効果が得られるとともに、水中ポンプによる循環水量を変化させることにより、トレミー管下端にかかる圧力を変化させ、トレミー管内の土砂の落下速度をコントロールすることができる。
【0021】
更に、トレミー管に、該トレミー管内の水位変化を検出するセンサを備え、該トレミー管内への土砂の投入落下によって生じる水位の変動を前記センサにより検出させ、該水位変動の検出に連動させて前記ポンプの作動を制御させるポンプ自動制御装置を備え、検出された所定範囲の水位変動があった時に前記ポンプを作動させるようにしているため、ポンプの消費エネルギーを少なくできる。
【0022】
更に、トレミー管下端開口部下に土砂の落下速度を弱める緩衝板を設けることにより、現地盤からの浮泥などの汚濁の巻き上がりを減少させ水中ポンプ付近での撒き上がり量を増やすことで、汚濁の吸い込み効率が向上し、汚濁拡散抑制効果が高くなるとともに、水底に覆砂層を造成する場合、その厚さをより均一にできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るトレミー管を使用した土砂の水底投下装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す装置を使用した方法の工程を示すフローチャートである。
【図3】図1に示す装置を使用した土砂投下時の状態を示すもので、(a)はホッパー内への土砂投入状態、(b)は投入された土砂がトレミー管内の水面下に達した状態、(c)は、トレミー管内の水位がポンプ始動用のセンサより低くなった状態、(d)は、トレミー管内の水位が上昇する際の状態、(e)は、トレミー管内の水位がポンプ停止用のセンサに達した状態をそれぞれ示す断面図である。
【図4】図1に示す装置において、ポンプ始動用のセンサとポンプ停止用のセンサの適正な取り付け位置を選定する際の、トレミー管の内径、土砂投入量の関係についての一実験結果例を示す断面図である。
【図5】本発明におけるトレミー管内水位の検出に超音波式の水位センサを使用した例を示す、縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明に係るトレミー管を使用した土砂の水底投下装置の実施の態様を図に示した実施例に基づいて説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施例の概略構成を示したものであり、図において1はトレミー管である。このトレミー管1は、作業船や台船等の浮体2に支持されて水底に向けて垂下されており、上端には土砂投入用のホッパー3が備えられている。
【0026】
トレミー管1の下端にはフード5が支持されている。このフード5は、トレミー管1の下端に固着した水平配置の天板6と、その天板6の周縁部より下側に垂下した多数の遮蔽板7,7......とから構成されており、天板6は多角形状に形成され、その多角形の各辺部にそれぞれ遮蔽板7が回動可能に取り付けられ、自重によって垂下されるようになっているとともに、フード5下の水底面に土砂が堆積することによってその堆積土砂表面が上昇することにより、これに追随して水平方向側に拡開されるようになっている。
【0027】
この天板6と遮蔽板7,7...とによって囲まれた部分が、トレミー管1を通した土砂の水底投下部となるようにしている。換言すればトレミー管1の下端下の土砂の水底投下部の周囲を、トレミー管1の下端に支持させた天板6と遮蔽板7,7......からなるフード5によって囲うようにしている。
【0028】
トレミー管1には、該フード1内の水をポンプにて前記トレミー管1の上端部内に循環させる循環手段を備えている。この循環手段は、フード5の天板6に支持させた複数のポンプ10と、このポンプ10によって吸い上げられたフード1内の水をトレミー管1の上端内に送る汚濁循環水路11とから構成されている。
【0029】
この実施例では、ポンプ10として水中ポンプが使用されているとともに、汚濁循環水路11としてはホースが使用され、これをトレミー管1の外側に沿って上方に延長させ、上端をホッパー3内に開口させている。尚、本実施例ではポンプ10として水中ポンプをフード5に支持させて使用しているが、この他、汚濁循環路11の途中にポンプを設置したものであっても良い。
【0030】
このポンプ10によって天板6の下のフード内汚濁が吸い上げられ、ホース11を通じてホッパー3内に排出させるようになっている。
【0031】
トレミー管1には、その内部の水位を検出するセンサ13,14が取り付けられている。このセンサはセンサ取付け位置に水が存在するか否かを検出する方式のものが使用され、トレミー管1の吃水高さ15より下の位置にポンプ始動用のセンサ13が、また、吃水高さ15より上の位置にポンプ停止用のセンサ14が取り付けられている。
【0032】
このセンサ13,14は、トレミー管1内の水位が検出できるものであればよく、図1に示すようにセンサの設置高さに水が存在するか否かを検出する形式のもの、例えば、水圧によって作動する圧力式、赤外線を検出する光学式、回転羽根のトルクを検出するパドル式、振動ロッドが液面に触れることによって信号を発信する振動式などが使用できる。
【0033】
更に具体的には、ポンプ始動用のセンサ13によって、トレミー管1内への土砂投入時のトレミー管内水位低下を検出し、これによって前述したポンプ10を作動させ、ポンプ10の作動によって水が汲み上げられ、ホッパー3内に循環されることによるトレミー管1内の水位の上昇をポンプ停止用のセンサ14によって検出し、これによってポンプ10の作動を停止させるようにしている。
【0034】
ポンプ10の始動及び停止は、図には示してないが、両センサからの出力信号を受けて、ポンプを自動的に始動及び停止させるポンプ自動制御装置によってなされるようになっている。
【0035】
このポンプ自動制御装置は、地質や施工速度に適した水中ポンプの始動開始位置、停止位置にセンサを取り付けておき、トレミー管1内部の水位によってポンプ10が自動でON/OFFするように、センサから取得したデータを制御分電盤を介して水中ポンプへ連動するように設置する。
【0036】
しかし頻繁な電源のON/OFFは水中ポンプの負担が大きくなり故障の原因に繋がるため好ましくないため、トレミー管1の直径、土砂の投入量及びポンプ能力を考慮してセンサの取り付け高さを設定する。
【0037】
トレミー管1の下端開口下には、土砂の落下速度を弱める緩衝板16が取り付けられている。この緩衝板16は、円錐形の笠状をしており、その直径はトレミー管1より小さく、円錐の頂点をトレミー管1の中心線に位置させて複数の支持腕17によってトレミー管1に固定されている。
【0038】
トレミー管1内を落下してくる土砂は、緩衝板16に当たることによってその周囲に広げられてフード5内に広げられるようになっており、これによって土砂がトレミー管1内を落下する速度で水底面に衝突することを防ぐとともに、土砂をフード5内全域に均等に行き渡らせることにより、投入土砂によって水底に形成される投入土砂層がより均一な厚さになる。
【0039】
次に、上述した土砂の水底投下装置を使用した土砂の水底投下方法を図2に示すフローチャートと、図3に示す投下状態説明図に従って説明する。
【0040】
本発明方法では、トレミー管1内への土砂の投入落下によって生じる水位変動に連動して、循環手段にトレミー管1内の水位が所定の範囲内で維持されるようにフード5内の水をトレミー管1の上端部内に循環させ、水底への土砂投下の際に生じる汚濁の拡散を効率よく抑制するようにしている。以下にその内容を詳述する。
【0041】
図3(a)に示すようにバックホーなどの投入装置を使用して土砂19をホッパー3内に投入する(図2中a)。この土砂の投入によって図3(b)に示すようにトレミー管1内を土砂が自重によって降下するが、このときトレミー管1内の水位が低下する(図2中b)。
【0042】
この水位の低下は、トレミー管1の内径と投入土砂の量によって定まる。即ち土砂がトレミー管1内をほぼ塞ぐような状態で降下するような投入量である場合には、水位の低下は大きくなる。逆に投入量が少ない場合には、トレミー管1内の水は、土砂の間から容易に上昇するため、水位低下が小さくなる。
【0043】
図3(c)に示すように、トレミー管1内の水位下がり、ポンプ10の始動位置、即ち水位が所定の範囲の下端に到達すると(図2中c)、ポンプ始動用のセンサ13がこれを検出し、ポンプ10が始動され(図2中d)、これによってフード5内の天板下の水が吸引されホッパー3からトレミー管1の上部に注入される。
【0044】
ポンプ10の始動によりホッパー3内フード内の水が注入されることにより図3(d)に示すようにトレミー管1内の水位が上昇する。ポンプ始動後、ポンプ始動用のセンサ13によってトレミー管1内の水位の状態を検出させ、図示しない制御装置によって該水位の上昇を判別させる(図2中e)。
【0045】
図3(e)に示すように、ポンプ10による揚水が停止するか減少してトレミー管1内の水位が上昇しないときは、土砂の投入を終了する。トレミー管1内の水位が上昇する場合は、引き続きポンプ10を作動させて揚水を継続させ、トレミー管1内の水位がポンプ10の停止位置、即ち水位が所定の範囲の上端に到達すると(図2中f)、ポンプ停止用のセンサ14がこれを検出し、ポンプ10を停止させる(図2中g)。
【0046】
ポンプ10の停止後、ポンプ停止用のセンサ14によってトレミー管1内の水位の上昇及び低下の状態を検出させ、図示しない制御装置によって該水位の低下を判別させる(図2中h)。水位が低下していれば土砂の投入を続け、ポンプ始動用のセンサ13がポンプ10の始動水位に到達するのを待ち(図2中c)、前述したポンプ10の始動、停止を制御する。
【0047】
一方、ポンプ停止用のセンサ14がポンプ作動停止水位を検出してポンプ10が停止された後、トレミー管1内水位が低下しない場合には、土砂の投入を停止する(図2中i)。
実験例
【0048】
上述した両センサ13、14の取り付け位置、トレミー管1の内径、土砂投入量の関係について実験を行った。
【0049】
図4に示すように、直径3mのトレミー管1を使用し、汚濁循環路11のトレミー管1の吃水高さ15からホッパー3に到る揚程を9mとし、5mバックホー2台を使用して100〜200m/hの速度で土砂の投入を行った。
【0050】
この時のポンプ始動用のセンサ13の取り付け高さは、吃水下1m、ポンプ停止用のセンサ14は吃水上5mが最適であった。
【0051】
このセンサの取り付け位置は、投入する土砂の比重、トレミー管の直径、水深、単位時間当たり土砂投下量などの条件によって異なり、施工現場毎の条件に従って実験を行い、最も適切なセンサ取り付け位置を選定する。
【0052】
上述の実施例では、予め設定したポンプ始動・停止の水位となる位置に、ポンプ始動用のセンサ13とポンプ停止用のセンサ14とを取り付け、その取り付け位置における水の存否を検出させるものであるが、この他、図5に示すように、トレミー管1の上端部内に、下向きに水位センサ収容ボックス20を取り付け、その内部に超音波パルス信号を水面に向けて発射し、その水面からの反射波の到達時間によって水位を計測する反射波式の水位センサ21を使用し、予め設定したポンプ始動水位22及びポンプ停止水位23を検出することによってポンプを始動・停止させるようにしてもよい。
【0053】
また、上述した実施例では、単管のトレミー管を使用した場合を示しているが、複数の管を長さ方向に伸縮可能につなぎ合わせた伸縮管を使用してもよく、この場合、施工位置の水深に応じトレミー管長さを調節しつつ使用できる。
【0054】
このトレミー管を使用した土砂の水底投下方法及び装置では、トレミー管下端に備えたフード内の水をポンプによって強制的にトレミー管上部に送ることによってトレミー管下端部で土砂投入の際に舞い上がる浮泥を吸い上げてトレミー管内に戻すものであるため、汚濁の拡散が抑制される。
【0055】
また、水中ポンプで汚濁を吸い上げる仕組みとしているため汚濁拡散抑制効果は、ポンプの能力に依存し、高能力のポンプを使用することによってより高い効果が得られる。しかし、ポンプ能力を上げると、重量や消費電力の面からも効率的ではないので、施工場所の地質や施工速度に適したポンプの選定が望ましい。
【0056】
また、水中ポンプによる汚濁の吸い上げ効果は、トレミー管下端周辺だけであり、広範囲に亘ることは難しいが、トレミー管下端にフードを設けることによって発生した汚濁をより効果的に吸引循環でき汚濁拡散抑制効果が高い。
【0057】
更に、土砂投入現地盤より高くなるようにトレミー管下端開口部下に土砂の落下速度を弱める緩衝板を設けることにより、現地盤からの浮泥などの汚濁の巻き上がりを減少させ水中ポンプ付近での撒き上がり量を増やすことで、汚濁の吸い込み効率が向上し、周辺への汚濁拡散が抑制される。
【0058】
また、水中ポンプによる循環水量を変化させることにより、トレミー管下端にかかる圧力を変化させ、トレミー管内の土砂の落下速度をコントロールすることができる。これによって、トレミー管上部からの汚濁の流失などのヒューマンエラーの防止、水中ポンプの稼動効率の向上及び施工速度の調節が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 トレミー管
2 浮体
3 ホッパー
5 フード
6 天板
7 遮蔽板
10 ポンプ
11 汚濁循環水路
13、14 センサ
15 吃水高さ
16 緩衝板
17 支持腕
19 土砂
20 水位センサ収容ボックス
21 水位センサ
22 ポンプ始動水位
23 ポンプ停止水位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をした土砂類水底投下用のトレミー管と、該トレミー管の上端に連結したホッパーと、該トレミー管の下端に支持され、該下端下の所望範囲の土砂投下域の周囲を囲う配置のフードと、該フード内の水をポンプにて前記トレミー管の上端部内に循環させる循環手段とを備えた土砂水底投下装置を使用し、水底に投下しようとする土砂を前記ホッパーより投入し、前記トレミー管内を通して前記フード内の水底面上に落下させ、該落下によって生じる汚濁を前記循環手段によって吸引し前記トレミー管の上端部内に戻すことによって、水底への土砂投下の際に生じる汚濁の拡散を抑制するようにしたトレミー管を使用した土砂の水底投下方法において、
トレミー管内への土砂の投入落下によって生じる水位変動に連動して、前記循環手段に、前記トレミー管内の水位が所定の範囲内で維持されるように前記フード内の水をトレミー管の上端部内に循環させることを特徴としてなるトレミー管を使用した土砂の水底投下方法。
【請求項2】
前記トレミー管内に、該トレミー管内の水位を検出するセンサを取り付けておき、トレミー管内への土砂の投入落下によって生じる水位変動を前記センサによって検出させ、検出された水位の変動に連動させて前記ポンプを作動させる請求項1に記載のトレミー管を使用した土砂の水底投下方法。
【請求項3】
前記センサによるトレミー管内水位低下が所望の設定高さに達した時に前記ポンプが作動されるように自動的に制御する請求項2に記載のトレミー管を使用した土砂の水底投下方法。
【請求項4】
筒状をした土砂類投下用のトレミー管と、該トレミー管の上端に連結したホッパーと、該トレミー管の下端に連結され、該下端下の所望の土砂投下域の周囲を囲う配置のフードと、該フード内の水をポンプにて前記トレミー管の上端部内に循環させる循環手段とを備え、水底に投下しようとする土砂を前記ホッパーより投入し、前記トレミー管内を通して前記フード内の水底面上に落下させ、該落下によって生じる汚濁を前記循環手段によって吸引し、前記トレミー管上端部内に戻すことによって、水底への土砂の落下によって生じる汚濁の前記フード外への拡散を抑制するようにしてなるトレミー管を使用した土砂水底投下装置において、
前記トレミー管に、該トレミー管内の水位を検出するセンサを備え、該トレミー管内への土砂の投入落下によって生じる水位の変動を前記センサにより検出させ、該水位変動の検出に連動させて前記ポンプの作動を制御させるポンプ自動制御装置を備えたことを特徴としてなるトレミー管を使用した土砂水底投下装置。
【請求項5】
前記センサは、トレミー管の吃水高さより低い位置に取り付けたポンプ始動用のセンサと、前記吃水高さより高い位置に取り付けたポンプ停止用のセンサとを備えている請求項4に記載のトレミー管を使用した土砂水底投下装置。
【請求項6】
前記フードは、前記トレミー管の下端に固定した天板部と、該天板部の周囲縁部にそれぞれ上端側が枢支されて垂下された複数の遮蔽板をもって構成され、該フード下の水底に投入された土砂の堆積に対応して該フードの下端開放部が拡開されるようにしてなる請求項4又は5に記載のトレミー管を使用した土砂水底投下装置。
【請求項7】
前記トレミー管の下端開口部下には、該トレミー管内を降下してきた土砂を前記フード内に拡散させる笠状の緩衝板を備えてなる請求項4〜6のいずれか1に記載のトレミー管を使用した土砂水底投下装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−19119(P2013−19119A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151399(P2011−151399)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】