説明

トレンチ埋め込み用絶縁膜の形成方法

【課題】基体に形成された開口幅が狭く高アスペクトなトレンチ内に、埋め込み性が良好で、低いリーク電流を示す絶縁膜の形成方法を提供する。
【解決手段】第一の工程としてポリシロキサン化合物とシリカ粒子との縮合反応物をトレンチ構造を含む基板に塗布する塗布工程と、第二の工程として前記塗布された縮合反応物を焼成して絶縁膜を形成する焼成工程と、第三の工程として前記絶縁膜の表面を疎水化処理剤にさらす疎水化処理工程を順に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子に形成されたトレンチ内の絶縁膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリの集積度を高めるために、メモリセルを3次元的に配置した半導体記憶装置が多数提案されている。このような半導体装置において、メモリセルや回路素子などの間隙にあたる箇所にトレンチを形成し、トレンチ内に絶縁材料を埋め込むことにより、メモリセル間や回路素子間などの電気的分離を行う必要がある。メモリの集積度が高まるにつれて、トレンチの開口幅が狭く、トレンチのアスペクト比(トレンチの深さを、トレンチの開口幅で除した値)が大きくなり、また同一基板上に開口部が広い部分が混在し、それらを同時に平坦化する必要があるため、絶縁膜の厚膜化が要求されている。
トレンチ内に絶縁材料を埋め込むための手段として、塗布法により微細溝を埋設し、酸化雰囲気下の焼成によりシリコン酸化物膜を形成する方法が知られている。材料としてはポリシラザン材料、ポリシラン材料、シリコーン材料などが挙げられる。
【0003】
ポリシラザン材料の中で水素化ポリシラザンは、トレンチ埋め込み性が良く、シリコン酸化物膜への転化時の硬化収縮が少ない特長が報告されている(例えば特許文献1)。しかしながら、水素化ポリシラザンは水蒸気酸化による焼成が必要なため、基板が酸化されやすいこと、更に近年、トレンチ幅がより狭く、トレンチの深さがより深くなる傾向にあるため、埋め込み性不足及び、厚膜ではクラックが生じる問題、また焼成時にアンモニアガスが発生するため危険であるといった問題があった。
ポリシラン材料は、塗布したポリシラン化合物が蒸発し易く、また塗布量を多くすると、割れ易いといった問題があった(例えば特許文献2)。
【0004】
シリコーン材料は、塗膜、焼成時に脱水、脱アルコール縮合反応を伴うため、得られたシリコン酸化物膜中にボイドやクラックが発生する問題、シリコーン材料からシリコン酸化物に転化する際に大きな硬化収縮を伴い、膜表面から微細溝の底部に向かって密度が不均一になるといった問題があった。
シリコーン材料を用いてボイドやクラックの発生を回避する方法として、酸化シリコン粒子とシリコン原子バインダーによる組成物が提案されている(例えば特許文献3)。しかしながら、シリコン原子バインダーと酸化シリコン粒子は混合されているだけなので、溶液の保存安定性が悪いこと、また開口幅30nm以下でアスペクト比が50以上のトレンチへの埋め込み性が悪く、ボイドが発生するといった問題があった。
また、シリコーン材料は700℃を超えるような高温での熱処理などにより絶縁膜中の炭素原子および水素原子が離脱し、空気中の水や酸素と容易に結合して親水性のシラノール基が生成することがある。これにより、膜の吸湿性が上がり、吸着された水分によってリーク電流が増大し、デバイスの信頼性が低下するといった深刻な問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−308090号公報
【特許文献2】特開2003−31568号公報
【特許文献3】特開2006−310448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、その課題は、基体に形成された開口幅
が狭く、高アスペクトなトレンチ内に、埋め込み性が良好で、低いリーク電流を示す絶縁膜の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成する方法を開発すべく鋭意研究を行った結果、以下に示すトレンチ埋め込み用絶縁膜の形成方法を見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の通りである。
(1)第一の工程としてポリシロキサン化合物とシリカ粒子との縮合反応物をトレンチ構造を含む基板に塗布する塗布工程と、第二の工程として前記塗布された縮合反応物を焼成して絶縁膜を形成する焼成工程と、第三の工程として前記絶縁膜の表面を疎水化処理剤にさらす疎水化処理工程を順に含むことを特徴とするトレンチ埋め込み用絶縁膜の形成方法。
(2)前記疎水化処理工程の前に、脱水処理を行う工程を更に含む、(1)に記載のトレンチ埋め込み用絶縁膜の形成方法。
(3)前記脱水処理を行う工程が250℃以上1000℃以下の熱処理である、(2)に記載のトレンチ埋め込み用絶縁膜の形成方法。
(4)前記焼成工程の焼成温度が600℃以上1000℃以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載のトレンチ埋め込み用絶縁膜の形成方法。
(5)前記焼成工程の焼成雰囲気が非酸化性雰囲気である、(1)〜(4)のいずれかに記載のトレンチ埋め込み用絶縁膜の形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体素子に形成された開口幅が狭く、高アスペクト比なトレンチ内に絶縁膜を埋め込むに好適な、トレンチ内への埋め込み性が良好で、焼成後の耐クラック性が高く、低いリーク電流を示すトレンチ埋め込み用絶縁膜の形成方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
まず、第一の工程としてポリシロキサン化合物とシリカ粒子との縮合反応物をトレンチ構造を含む基板に塗布する塗布工程について説明する。
後述するポリシロキサン化合物とシリカ粒子との縮合反応物は、通常の方法で塗布することができる。例えばスピンコート法、ディップコート法、ローラーブレード塗布法、スプレー塗布法等が挙げられる。中でも成膜時の塗布厚みが均一になるためスピンコート法が好ましい。
【0010】
トレンチ構造を有する基板にスピンコート法で塗布する場合、一段階の回転数で塗布しても、複数段階の回転数を組み合わせて塗布しても構わないが、少なくとも一段階目の回転数が50rpm以上1000rpm以下で、より好ましくは100rpm以上700rpm以下で塗布することが好ましい。これは、一段階目に低速で回転させることによって縮合反応物をシリコン基板全面に広げるためと、埋め込み性が良好になるためである。また、縮合反応物の塗布回数は1回でも複数回でも構わないが、成膜性が良くなること、及び製造コストの観点から、1回で塗布する方がより好ましい。
基板に、これらの方法で縮合反応物を塗布した後、塗布膜中の残留溶媒を除くために50℃〜200℃の範囲で予備硬化させることが好ましい。そのとき、段階的に温度を上げても、連続的に温度を上げても良い。予備硬化の雰囲気としては、酸化性雰囲気であっても非酸化性雰囲気であっても構わない。
【0011】
次に、第二の工程である前記塗布された縮合反応物を焼成して絶縁膜を形成する焼成工程について説明する。
必要に応じて予備硬化させて得られた膜を加熱焼成することによって絶縁膜を得ることができる。焼成の方法としては、ホットプレート、オーブン、ファーネス等の一般的な加熱手段を適用することができる。焼成温度は、600℃以上1000℃以下であり、好ましくは700℃以上900℃以下であり、より好ましくは750℃以上800℃以下である。熱処理時間は好ましくは1分以上24時間以下であり、より好ましくは30分以上2時間以下である。この温度範囲と時間範囲であれば、本発明で得られる絶縁膜単独の性能に特に問題はないが、適用される半導体装置の耐熱性によってはその耐熱性の上限温度以下で行うのが好ましい。
【0012】
焼成工程の焼成雰囲気は非酸化性雰囲気であることが好ましい。非酸化性雰囲気とは、真空下、又はN、Ar、Xe等の不活性雰囲気のことであり、これらの不活性雰囲気中の酸素や水蒸気などの酸化性ガスは1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。そのときの全圧力に特に制限は無く、加圧、常圧、減圧のいずれでもよい。
非酸化性雰囲気での焼成後に、空気や酸素または水蒸気などの酸化性雰囲気での焼成を行っても構わない。加熱温度としては好ましくは200℃超過850℃以下であり、より好ましくは300℃以上700℃以下であり、更に好ましくは350℃以上600℃以下である。200℃超である場合、得られた膜質が良好であるため好ましく、850℃以下である場合、基板の酸化が抑制されるため好ましい。
【0013】
続いて、第三の工程である前記絶縁膜の表面を疎水化処理剤にさらす疎水化処理工程について説明する。
絶縁膜の表面を疎水化処理剤にさらすことにより、上記工程で形成された絶縁膜中のシラノール基と疎水化処理剤が反応し、絶縁膜の表面を疎水化することができる。
疎水化処理剤として公知のものを使用でき、例えばヘキサメチルジシラザン、ジアセトキシジシラザン、ジヒドロキシジメチルシラン、ハロゲン化有機シランなどを利用することができる。また、環状シロキサン、有機ケイ素化合物、環状シラザンも利用できる。
環状シロキサンの具体例としては、たとえば、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン、トリフェニルトリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラエチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロペンタシロキサンなどが挙げられる。
【0014】
有機ケイ素化合物の具体例としては、たとえば、1,2−ビス(テトラメチルジシロキサニル)エタン、1,3−ビス(トリメチルシロキシ)−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,1,4,4−テトラメチルジシルエチレン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサイソプロピルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,1,3,3,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジエトキシジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルジエトキシトリシロキサン、テトラメチル−1,3−ジメトキシジシロキサンなどのシロキサン化合物が挙げられる。
環状シラザンの具体例としては、例えば、1,2,3,4,5,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン、1,3,5,7−テトラエチル−2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシラザン、1,2,3−トリエチル−2,4,6−トリエチルシクロトリシラザン
などの環状シラザン化合物が挙げられる。
【0015】
これらの疎水化処理剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
絶縁膜の表面を疎水化処理剤にさらす方法としては、疎水化処理剤を絶縁膜表面に液相で塗布する方法や疎水化処理剤を気相にして絶縁膜表面に接触させる方法などを適用することができる。
接触処理を液相で実施する場合は、有機溶媒を用いて実施しても良い。
有機溶媒中で処理する場合には有機ケイ素化合物の濃度は特に制限はなく任意の濃度で実施できる。液相で塗布する場合の温度と時間に特に制限はないが、0℃以上100℃以下、より好ましくは20℃以上80℃以下で、0.1分以上30分以下、より好ましくは0.2分以上10分以下が好ましい。
【0016】
反応を気相で実施する場合は、好ましくは、疎水化処理剤はガスにより希釈して用いられる。希釈用のガスとしては、空気、窒素、アルゴン、水素などが挙げられる。また、ガスで希釈する代わりに、減圧下での実施も可能である。気相で実施する場合の温度と時間に特に制限はないが、0℃以上500℃以下、より好ましくは20℃以上400℃以下で、0.1分以上30分以下、より好ましくは0.2分以上10分以下が好ましい。
絶縁膜の表面を疎水化処理剤にさらす前に、脱水処理を行う工程を含むことが好ましい。乾燥した空気中や不活性雰囲気下で熱処理することで脱水処理を行うことができる。 熱処理の温度としては、250℃以上850℃以下、より好ましくは300℃以上850℃以下が好ましい。熱処理の時間としては、0.1分以上2時間以下、より好ましくは0.2分以上1時間以下が好ましい。下限温度以上で絶縁膜に吸着した水分を除去することができるが、適用される半導体装置の耐熱性によってはその耐熱性の上限温度以下で行うのが好ましい。
【0017】
本発明で用いられる縮合反応物はポリシロキサン化合物とシリカ粒子とを縮合反応させることで得ることができる。
ポリシロキサン化合物は、下記一般式(1)に由来する化合物であることが好ましい。
SiX4−n (1)
{式中、nは0〜3の整数であり、Rは水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基である。}
【0018】
中でも、ポリシロキサン化合物は、下記一般式(2)で表されるシラン化合物に由来する構造を60 mol%以上有することが好ましく、より好ましくは70 mol%以上である。上記範囲内であると、クラック耐性を有し、埋め込み性が良好になるため好ましい。
SiX (2)
上記一般式(2)中のRの具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、iso−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、iso−ヘプチル、n−オクチル、iso−オクチル、t―オクチル、n−ノニル、iso−ノニル、n−デシル、iso−デシル等の非環式又は環式の脂肪族炭化水素基、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、シクロヘキセニルエチル、ノルボルネニルエチル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、スチレニル等の非環式及び環式アルケニル基、ベンジル、フェネチル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル等のアラルキル基、PhCH=CH−基のようなアラアルケニル基、フェニル基、トリル基あるいはキシリル基のようなアリール基が挙げられる。更に、Rの具体例としては水素原子が挙げられる。この中で
も焼成時にシリコン酸化物への転換の際に重量減少が少なく、収縮率が小さい基として、Rは好ましくはメチル基、エチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0019】
上記一般式(2)中のXの具体例としては、例えばクロライド、ブロマイド、アイオダイド等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基等が挙げられる。この中でもクロライド、ブロマイド、アイオダイド等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基やアセトキシ基が縮合反応の反応性が高いため好ましい。
【0020】
更に、ポリシロキサン化合物は、下記一般式(3)で表されるシラン化合物に由来する構造を1mol%以上40mol%以下有することが好ましく、より好ましくは5mol%以上30mol%以下である。上記の範囲内であると、成膜性が良好であるため好ましい。
SiX (3)
上記一般式(3)中のXの具体例としては、例えばクロライド、ブロマイド、アイオダイド等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基等が挙げられる。この中でもクロライド、ブロマイド、アイオダイド等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基やアセトキシ基が縮合反応の反応性が高いため好ましい。
【0021】
ポリシロキサン化合物は、一種又は二種以上を混合して用いることができる。
シリカ粒子との縮合反応時におけるポリシロキサン化合物の割合は、シリカ粒子との合計に対して、ポリシロキサン化合物の添加量は、50質量%以上99質量%以下である。膜質が良くなる観点から、50質量%以上が好ましく、クラック耐性が上がる観点から99質量%以下が好ましい。より好ましくは60質量%以上、90質量%以下である。
縮合反応物に使用されるシリカ粒子としては、例えばヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。
シリカ粒子の平均一次粒子径は、1nm以上120nm以下であることが好ましく、1
nm以上40nm以下であることがより好ましい。上記平均一次粒子系が1nm以上である場合、クラック耐性が向上するため好ましく、120nm以下である場合、トレンチへの埋め込み性が高くなるため好ましい。上記平均一次粒子系は、BETの比表面積から計算で求めた値である。
【0022】
シリカ粒子としては、上記の要件に適合する限りで、制限は無く、市販品を使用することもできる。市販品としては、コロイダルシリカとして、例えばLEVASILシリーズ(H.C.Starck(株)製)、メタノールシリカゾルIPA−ST、同MEK−ST、同NBA−ST、同XBA−ST、同DMAC−ST、同ST−UP、同ST−OUP、同ST−20、同ST−40、同ST−C、同ST−N、同ST−O、同ST−50、同ST−OL(以上、日産化学工業(株)製)、クオートロンP Lシリーズ(扶桑化学(株)製)、OSCALシリーズ(触媒化成工業(株)製)等;粉体状のシリカ粒子として、例えばアエロジル130、同300、同380、同TT600、同OX50(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、同H32、同H51、同H52、同H121、同H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株))、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレーク(日本板硝子(株)製)等;
粉体状のシリカ粒子として、例えばアエロジル130 、同300 、同380 、同TT600 、同OX50 ( 以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31 、同H32、同H51 、同H52 、同H121 、同H122(以上、旭硝子(株)製) 、E
220A、E220 ( 以上、日本シリカ工業(株)) 、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレーク( 日本板硝子(株)製)等が、それぞれ挙げられる。
【0023】
ポリシロキサン化合物とシリカ粒子との縮合時におけるシリカ粒子の割合は、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子との合計に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上45質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以上40質量%以下である。1質量%以上であることは、クラック耐性が上がるため好ましく、50質量%以下であることは、膜質が良くなるため好ましい。
上記縮合反応物のシロキサン結合数が0に相当する成分(Q0成分)、シロキサン結合数が1つに相当する成分(Q1成分)、シロキサン結合数が2つに相当する成分(Q2成分)、シロキサン結合数が3つに相当する(Q3成分)、シロキサン結合数が4つに相当する(Q4成分)のピーク強度のトータルにおけるQ4成分の割合が、50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上であり、更に好ましくは70%以上である。上記範囲内であると、ヒドロシリル基やアルコキシ基等の末端基が少ないため、硬化収縮率が小さく、縮合反応物のポットライフが長くなることから好ましい。
【0024】
縮合反応物のQ成分とは、シリカ粒子、上記一般式(1)で表されるシラン化合物のうちn=0のシラン化合物、及び上記一般式(3)で表されるシラン化合物由来の4官能シロキサン成分のことであり、溶液または固体の29SiNMR分析よりシロキサン結合数が0〜4に相当する成分量を求めることができる。なお、各Q成分のピーク強度はピーク面積から算出した。
縮合反応物の標準ポリメチルメタクリレート換算での重量平均分子量は、1,000以上20,000以下の範囲が好ましく、更に好ましくは1,000以上10,000以下である。該縮合反応物の重量平均分子量が1,000以上であると、成膜性、クラック耐性が良く、重量平均分子量が20,000以下であると、トレンチ埋め込み性が良く、縮合反応物のポットライフが長くなるため好ましい。
【0025】
本発明で得られた絶縁膜は、液晶表示素子、集積回路素子、半導体記憶素子、固体撮像素子等の電子部品用の層間絶縁膜、素子分離膜、STI用絶縁膜、PMD(Pre Metal Dielectric)膜、平坦化膜、表面保護膜、封止膜など、ファクシミリ、電子複写機、固体撮像素子等など光通信分野での光学素子における光導波路のコアやクラッド材、レンズ、マイクロレンズ、マイクロレンズアレイなどの光学材料として好適である。
【0026】
以下、実施例及び比較例により本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)クラック耐性
成膜後、750℃、N雰囲気下で焼成し、焼成後のSi基板を光学顕微鏡にて観察し、光学顕微鏡にてクラックが入っているか否かを判定した。クラック限界膜厚が1μm以下の場合を×、1μm以上の場合を○とした。
(2)埋め込み性
開口幅20nm、深さ1μm(アスペクト比50)のトレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工をした後、日立製作所製、走査型電子顕微鏡(SEM)S4800を使用し、加速電圧1kVで測定し、ボイドやシームが無くトレンチ内が埋まっていれば○とした。トレンチ内にボイドやシームがある場合を×とした。
(3)絶縁性(リーク電流)
Si基板上の絶縁膜のIV特性をSolid State Measurements社製 SSM495を使用して測定し、電界強度2MV/cmの電界を印加したときのリーク電流値が1×10−8 A/cm以下であれば○、それ以外を×とした。
【0027】
[実施例1]
ナスフラスコにメチルトリメトキシシラン12.73g(0.094mol)、エタノール20gを入れて5分間攪拌し、ここへ水10.09g(0.56mol)と70質量%の硝酸10μlの混合溶液を室温で滴下した。滴下終了後、30分時間攪拌し、24時間静置してポリシロキサン化合物を得た。
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の500mLフラスコに、PL−06(扶桑化学工業製の平均粒径6nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子)47.6gとエタノール60gを入れ、5分間攪拌し、ここへ合成したポリシロキサン化合物を室温で滴下した。滴下終了後30分間攪拌した後、ここへ、メチルトリメトキシシラン0.99g(0.0073mol)をエタノール20gに溶解させた溶液を滴下した。その後、4時間還流した。還流後、プロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGMEA)を150g添加し、オイルバスを昇温させて、蒸留ラインよりメタノール、エタノール、水、硝酸を留去し、縮合反応物のPGMEA溶液を得た。該縮合反応物のPGMEA溶液を濃縮し、20質量%のPGMEA溶液を得た。
【0028】
生成した縮合反応物溶液を6インチのSi基板上に2mL滴下し、回転速度300rpmで10秒と、回転速度1000rpmで30秒間の2段階でスピンコートを行った。この基板を空気中、50℃、100℃、140℃のホットプレート上で2分間ずつ、段階的にプリベークし、溶媒を除去した。得られたSi基板をN雰囲気下、5℃/minで750℃まで昇温し、750℃で30分間焼成した後、2℃/minで室温まで降温した。クラック耐性は○であった。
また生成した縮合反応物溶液を開口幅20nm、深さ1μmのトレンチ構造を有するSi基板に2mL滴下し、上記条件でスピンコート、プリベーク、焼成を行った。埋め込み結果はトレンチ内にボイドやシームが無く、○であった。
生成した縮合反応物溶液を膜厚が200nm程度になるようにSi基板上にスピン塗布し、上記条件でプリベーク、焼成を行ったのち、室温まで降温した。その後、大気中で一日放置した後、N中400℃で30分加熱し、室温まで降温し、直ちに絶縁膜上に5wt%のヘキサメチルシジラザンのPGMEA溶液を2mL滴下し、回転速度3000rpmで30秒間のスピンコートを行った。この基板を、空気中で200℃のホットプレート上で2分間加熱した。得られた膜の絶縁性は○であった。
【0029】
[比較例1]
東京応化工業製有機SOG(OCD T−7)を6インチのSi基板上に2mL滴下し、回転速度300rpmで10秒と、回転速度1000rpmで30秒間の2段階でスピンコートを行った。この基板を空気中、50℃、100℃、140℃のホットプレート上で2分間ずつ、段階的にプリベークし、溶媒を除去した。得られたSi基板をAir雰囲気下、5℃/minで750℃まで昇温し、750℃で30分間焼成した後、2℃/minで室温まで降温した。クラック耐性は×であった。
【0030】
東京応化工業製有機SOG(OCD T−7)を開口幅20nm、深さ1μmのトレンチ構造を有するSi基板に2mL滴下し、回転速度300rpmで10秒と、回転速度1000rpmで30秒間の2段階でスピンコートを行った。この基板を空気中、50℃、100℃、140℃のホットプレート上で2分間ずつ、段階的にプリベークし、溶媒を除去した。得られたSi基板をN雰囲気下、5℃/minで750℃まで昇温し、750℃で30分間焼成した後、2℃/minで室温まで降温した。埋め込み結果はトレンチ内にボイドが発生し、×であった。
東京応化工業製有機SOG(OCD T−7)を膜厚が200nm程度になるようにSi基板上にスピン塗布した。この基板を空気中、50℃、100℃、140℃のホットプレート上で2分間ずつ、段階的にプリベークし、溶媒を除去した。得られたSi基板をN
雰囲気下、5℃/minで750℃まで昇温し、750℃で30分間焼成した後、2℃/minで室温まで降温した。得られた膜の絶縁性は×であった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の縮合反応物を使用して得られた絶縁膜は、液晶表示素子、集積回路素子、半導体記憶素子、固体撮像素子等の電子部品用の層間絶縁膜、素子分離膜、STI用絶縁膜、PMD(Pre Metal Dielectric)膜、平坦化膜、表面保護膜、封止膜など、ファクシミリ、電子複写機、固体撮像素子等など光通信分野での光学素子における光導波路のコアやクラッド材、レンズ、マイクロレンズ、マイクロレンズアレイなどの光学材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の工程としてポリシロキサン化合物とシリカ粒子との縮合反応物をトレンチ構造を含む基板に塗布する塗布工程と、第二の工程として前記塗布された縮合反応物を焼成して絶縁膜を形成する焼成工程と、第三の工程として前記絶縁膜の表面を疎水化処理剤にさらす疎水化処理工程を順に含むことを特徴とするトレンチ埋め込み用絶縁膜の形成方法。
【請求項2】
前記疎水化処理工程の前に、脱水処理を行う工程を更に含む、請求項1に記載のトレンチ埋め込み用絶縁膜の形成方法。
【請求項3】
前記脱水処理を行う工程が250℃以上1000℃以下の熱処理である、請求項2に記載のトレンチ埋め込み用絶縁膜の形成方法。
【請求項4】
前記焼成工程の焼成温度が600℃以上1000℃以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のトレンチ埋め込み用絶縁膜の形成方法。
【請求項5】
前記焼成工程の焼成雰囲気が非酸化性雰囲気である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のトレンチ埋め込み用絶縁膜の形成方法。

【公開番号】特開2011−100856(P2011−100856A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254706(P2009−254706)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】