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トレーサ試験方法
説明

トレーサ試験方法

【課題】十分に高い精度のデータを効率的に取得できるトレーサ試験方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るトレーサ試験方法は、ボーリング孔1内に設置されたパッカー2a,2bによって形成される試験区間Zと地上設備とを連通する連通管3と、試験区間Zの近傍に設けられて連通管3の流路を開閉する開閉バルブ5とを備えるトレーサ試験装置10を用いて行うものであって、開閉バルブ5を閉じた状態において、開閉バルブ5よりも上方の連通管3内をトレーサ液8で満たす充填工程と、充填工程後に開閉バルブ5を開き、試験区間Zから地盤にトレーサ液8を注入する注入工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水に溶解した物質の移行特性を評価するために実施するトレーサ試験に関する。
【背景技術】
【0002】
高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全性評価や一般廃棄物処分場周辺の地下水汚染の評価を行う際、一般にトレーサ試験と呼ばれる水理試験が実施される。トレーサ試験は、ボーリング孔から所定の物質(トレーサ)を含むトレーサ液を地盤に注入する工程と、トレーサ液が注入された地盤から地下水を揚水する工程とを有する。揚水した地下水に含まれるトレーサの濃度等を連続的に測定することにより、地下水に溶解した物質の移行特性についてのデータを取得できる。
【0003】
トレーサ試験の種類としては、一方のボーリング孔からトレーサ液を注入し、他方のボーリング孔から地下水の揚水を行う複数孔による方法と、単一のボーリング孔からトレーサ液を注入した後、当該ボーリング孔から地下水の揚水を行う単一孔による方法とが知られている(特許文献1の[従来の技術]の欄を参照)。これらの試験方法は、試験目的や地盤の透水性などに応じて適宜選択される。
【特許文献1】特許第3808712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トレーサ試験によって取得されたデータは、地盤の透水性や分散長などを理論的に評価するのに使用される。したがって、これらの項目について十分に確実な評価結果を得るには、試験結果の解析で前提とする理論になるべく近い条件でトレーサ試験を実施し、高い精度のデータを取得することが望ましい。
【0005】
しかし、従来のトレーサ試験方法にあっては、地盤に対してトレーサ液の注入を開始する際の条件について、未だ改善の余地があった。このことについて、図1を参照しながら説明する。図1に示す二つのグラフは、いずれもボーリング孔内に設定した所定の試験区間に到達するトレーサ液の濃度の経時変化を示し、図1(a)は理論上のトレーサ濃度を示し、図1(b)は従来の試験方法を実施した際のトレーサ濃度を示す。
【0006】
ボーリング孔内に試験装置を設置し、トレーサ液を注入する準備が完了した段階にあっては、ボーリング孔内は地下水で満たされており、通常、地上設備とボーリング孔内の所定の試験区間とを連通する連通管内も地下水で満たされている。連通管内がこのような状態であるにも関わらず、地上設備から連通管を通じて試験区間へとトレーサ液を移送すると、連通管内においてトレーサ液と地下水との間で拡散が生じる。そうすると、試験区間にトレーサ液が到達するまでに、トレーサ液は地下水で希釈されて濃度勾配が低下する(図1(b)参照)。そのため、試験区間にトレーサ液の迅速な濃度変化を与えることが困難となる。また、トレーサ液の移送を開始した後もしばらくの間は連通管内の地下水が地盤へと注入されるため、所定量のトレーサ液の注入を完了するのに余分な時間(図1(b)のt1に相当)を要するという問題もある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、十分に高い精度のデータを効率的に取得できるトレーサ試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るトレーサ試験方法は、ボーリング孔内に設置されたパッカーによって形成される試験区間と地上設備とを連通する連通管と、試験区間の近傍に設けられて連通管の流路を開閉する開閉バルブとを備えるトレーサ試験装置を用いて行うものであって、開閉バルブを閉じた状態において、当該開閉バルブよりも上方の連通管内をトレーサ液で満たす充填工程と、充填工程後に開閉バルブを開き、試験区間から地盤にトレーサ液を注入する注入工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るトレーサ試験方法においては、開閉バルブよりも上方の連通管内をトレーサ液で満たした後、当該開閉バルブを開いてトレーサ液の注入を開始する。このことにより、連通管内の地下水によってトレーサ液が希釈されることを十分に抑制でき、試験区間にトレーサ液の迅速な濃度変化を与えることが可能となる。したがって、本発明によれば、図1(a)に示す試験条件に近い条件でトレーサ試験を実施することができ、十分に高い精度のデータを取得できる。
【0010】
また、開閉バルブは試験区間の近傍に配設されているため、この開閉バルブを開けば間もなくしてトレーサ液が地盤へと注入される。したがって、本発明に係る試験方法によれば、従来の方法と比較し、所定量のトレーサ液の注入を完了するまでの時間を短縮できる。このように、本発明によれば、十分に高い精度のデータを効率的に取得できる。
【0011】
本発明に係るトレーサ試験方法は、単一のボーリング孔でトレーサ試験を実施するためには、注入工程で注入したトレーサ液を含む地下水を、ボーリング孔を通じて揚水する揚水工程を更に備えることが好ましい。すなわち、ボーリング孔を通じてトレーサ液を注入した後、当該ボーリング孔を通じて地下水を揚水することが好ましい。
【0012】
本発明に係るトレーサ試験方法は、開閉バルブを閉じた状態において、充填工程前に当該開閉バルブよりも上方の連通管内の地下水を排出する排出工程を更に備えたものであってもよい。上述の通り、トレーサ液を注入する準備が完了した段階にあっては、通常、地上設備とボーリング孔内の所定の試験区間とを連通する連通管内は地下水で満たされている。このような場合であっても、連通管内の地下水を排出する排出工程を実施することによって、その後の充填工程において連通管内にトレーサ液を充填できる。
【0013】
また、本発明に係るトレーサ試験方法においては、連通管及びパッカーをボーリング孔内に設置して試験区間を形成するに際し、開閉バルブを閉じた状態で連通管をボーリング孔内に挿入してもよい。ボーリング孔内に上記のようにして連通管を挿入すれば、開閉バルブよりも上方の連通管内は空の状態であるため、上記排出工程を経ることなく、試験区間の形成後、直ちに充填工程を実施できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、十分に高い精度のデータを効率的に取得できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。まず、本実施形態に係るトレーサ試験方法を実施するのに使用するトレーサ試験装置について説明する。
【0016】
(トレーサ試験装置)
図2に示すように、本実施形態において使用するトレーサ試験装置10は、ボーリング孔1内に設置された一対のパッカー2a,2bと、これらのパッカー2a,2bの間に形成される試験区間Zと地上設備(図示せず)とを連通する連通管3と、試験区間Zの近傍に設けられて連通管3の流路を開閉する開閉バルブ5とを備える。なお、ボーリング孔1は、内径が66〜150mm程度であり、深度が10m程度のものから1000m級のものまである。装置の耐圧性能を向上させることで1000m級の大深度のボーリング孔に対応可能である。
【0017】
一対のパッカー2a,2bは、連通管3の先端側に配設されている。パッカー2a,2bを拡張してボーリング孔1の内壁面と密着させることにより、上方のパッカー2aと下方のパッカー2bとの間に試験区間Zが形成される。
【0018】
連通管3は、地上設備から試験区間Zに向けてトレーサ液を供給したり、揚水した地下水を地上設備へと移送したりするためのものである。連通管3は、トレーサ液の移送及び地下水の揚水に兼用できるので、複数の配管をボーリング孔1内に挿入しなくてもよい。このため、本実施形態に係る装置及び方法は、口径が比較的小さいボーリング孔に対しても適用できるという利点がある。
【0019】
連通管3は試験区間Z近傍に設けられた開閉バルブ5を備える。地上から開閉バルブ5を操作することにより、連通管3の流路を開閉できるようになっている。なお、開閉バルブ5は、地上からの操作によって開閉自在のものであれば、その種類は限定されず、例えば、ボールバルブやバタフライバルブなどを適宜採用すればよい。
【0020】
地上設備は、所定の濃度に調製したトレーサ液や揚水した地下水を収容する複数のタンク及びトレーサ液を移送するポンプ等を備える。他方、ボーリング孔1内には、地下水を揚水するのに使用する孔内ポンプ(図示せず)が設置されている。当該孔内ポンプは、地下水を安定的に揚水する観点から、開閉バルブ5の直上に設置することが好ましい。
【0021】
また、図3に示すように、ボーリング孔1内には地下水のトレーサ濃度を測定するためのセンサ6が設置される。例えば、トレーサ液として塩水(NaCl水溶液)を使用する場合、センサ6として電気伝導度計を使用できる。地下水の電気伝導度を測定することで地下水に含まれる塩分濃度を把握できる。センサ6は、なるべく試験区間Zの近傍に設置することが好ましい。このことにより、連通管3内においてトレーサが地下水に拡散して濃度が平均化されてしまう前に地下水のトレーサ濃度を測定できる。センサ6で測定されたデータは、ケーブルなどを通じてデータロガーやコンピュータ(図示せず)に送られるようになっている。
【0022】
(単一孔トレーサ試験方法)
次に、本実施形態に係るトレーサ試験方法について説明する。本実施形態に係るトレーサ試験方法は、上述のトレーサ試験装置10を用いて単一のボーリング孔1において行うものである。すなわち、当該単一孔トレーサ試験方法は、開閉バルブ5を閉じた状態において、開閉バルブ5よりも上方の連通管3内の地下水を排出する排出工程と、開閉バルブ5を閉じた状態としたまま開閉バルブ5よりも上方の連通管3内をトレーサ液で満たす充填工程と、充填工程後に開閉バルブ5を開き、試験区間Zから地盤にトレーサ液を注入する注入工程と、注入工程で注入されたトレーサ液を含む地下水を揚水する揚水工程とを備える。
【0023】
まず、開閉バルブ5よりも上方の連通管3内の地下水を排出する(排出工程)。図2は、連通管3内に挿入したエアリフト用ホース7によって地下水を排出する作業を行っている様子を示す模式図である。ホース7が挿入された連通管3内に圧縮ガス(例えば、圧縮空気)を供給し、その圧力を利用して図2に示す矢印の通り、ホース7を通じて地下水を排出する。
【0024】
排出工程後、揚水工程の実施時にトレーサ濃度等を測定するためのセンサ6を連通管3内に設置する。その後、地上設備のタンクから連通管3内へとトレーサ液を供給する(充填工程)。図3は、連通管3内にトレーサ液8を充填する作業を行っている様子を示す模式図である。
【0025】
連通管3内をトレーサ液8で満たし、注入工程を実施する準備が完了すると開閉バルブ5を開き、試験区間Zからトレーサ液を地盤へと注入する(注入工程)。図4は、トレーサ液を地盤に注入する作業が行っている様子を示す模式図である。所定量のトレーサ液を地盤に注入した後、孔内ポンプの運転を開始し、注入したトレーサを含む地下水を揚水する(揚水工程)。地下水を揚水しながら、センサ6でトレーサ濃度等を測定する。測定されたデータからトレーサの移動状況についての情報を取得し、種々の解析を行うことによって物質移行特性を評価する。
【0026】
本実施形態に係る単一孔トレーサ試験方法においては、開閉バルブ5よりも上方の連通管3内をトレーサ液で満たした後に注入工程を開始する。また、開閉バルブ5は試験区間Zの近傍に配設されている。これらのことにより、ボーリング孔1内の地下水によってトレーサ液が希釈されることを十分に抑制でき、試験区間Zにトレーサ液の迅速な濃度変化を与えることができる。したがって、試験結果の解析で前提とする理論に近い条件(図1(a)参照)でトレーサ試験を実施することができ、十分に高い精度のデータを取得できる。また、注入工程を開始後、間もなくして所定の濃度のトレーサ液が地盤に到達する。このため、従来の方法と比較し、所定量のトレーサ液の注入を完了するまでの時間を短縮できる。
【0027】
また、本実施形態においては、注入工程前は試験区間Zが地下水で満たされているため、注入工程前に試験区間Zと地上設備との間でトレーサ液を循環させるなどの手法と比較すると、注入開始前に試験区間Zがトレーサ液の影響を受けることを未然に防止できる。
【0028】
本実施形態に係るトレーサ試験方法は、所定の試験区間Zについての一連の工程を実施した後、異なる深度の試験区間について連続してトレーサ試験を行う場合にも適用できる。すなわち、揚水工程後においては、連通管3内は地下水で満たされているため、一対のパッカー2a,2bを異なる深度に設置後、再度、排出工程から実施することによって高い精度のトレーサ試験を繰り返し実施できる。
【0029】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、充填工程に先立って排出工程を実施する場合を例示したが、以下のような場合には、排出工程を実施しなくてもよい。すなわち、連通管3及び一対のパッカー2a,2bをボーリング孔1内に設置して試験区間Zを形成するに際し、開閉バルブ5を閉じた状態で連通管3をボーリング孔1内に挿入すれば、その後の連通管3内は空の状態であるため、直ちに充填工程を実施できる。ただし、ボーリング孔1の深度が深い場合、開閉バルブ5を閉じた状態では内部の空気による浮力の影響で連通管3をボーリング孔1内に挿入しにくくなるおそれがある。このような場合には、開閉バルブ5を開いた状態で連通管3をボーリング孔1内に挿入し、試験区間Zを形成後、排出工程を実施すればよい。
【0030】
また、上記実施形態においては、一対のパッカー2a,2bの間に試験区間Zを形成する場合を例示したが、一対のパッカー2a,2bの代わりに1つのパッカー2aで試験区間Zを形成してもよい。この場合、上方のパッカー2aと孔底との間に試験区間Zが形成される。
【0031】
更に、上記実施形態においては、単一孔に適用するトレーサ試験装置及びこれを用いたトレーサ試験方法を例示したが、本発明に係るトレーサ試験方法は、複数孔を用いる場合にも適用できる。すなわち、上記実施形態と同様にしてボーリング孔1からトレーサ液を注入し、他方、他のボーリング孔においてトレーサ濃度等をモニタリングするなどしてもよい。この場合、ボーリング孔1を通じて地下水を揚水しなくてもよいため、ボーリング孔1に設置するトレーサ試験装置は、揚水用の孔内ポンプを具備しないものであってもよい。
【0032】
また、上記実施形態において、トレーサ液として塩水を例示したが、地下水と区別可能な流体であれば、塩水に限定されず、所定のイオンや蛍光成分などを含有する液体を使用してもよい。また、トレーサ液として、例えば、pH、溶存酸素量、温度などの物性値によって地下水と区別可能な液体を使用してもよい。かかる場合、測定すべき含有成分や物性値に応じてセンサの種類を適宜選択すればよい。なお、センサ6とエアリフト用ホース7の入れ替えを行う必要がないように、両者が連通管3内で共存できるようにしてもよい。また、センサ6は開閉バルブ5よりも下方、すなわち、試験区間Zにより一層近い位置に設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ボーリング孔内に設定した試験区間に到達するトレーサ液の濃度の経時変化を示すグラフである。
【図2】排出工程におけるボーリング孔内の状態を示す模式断面図である。
【図3】充填工程におけるボーリング孔内の状態を示す模式断面図である。
【図4】注入工程におけるボーリング孔内の状態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1…ボーリング孔、2a,2b…パッカー、3…連通管、5…開閉バルブ、6…センサ、7…エアリフト用ホース、8…トレーサ液、10…トレーサ試験装置、Z…試験区間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリング孔内に設置されたパッカーによって形成される試験区間と地上設備とを連通する連通管と、前記試験区間の近傍に設けられて前記連通管の流路を開閉する開閉バルブとを備えるトレーサ試験装置を用いたトレーサ試験方法であって、
前記開閉バルブを閉じた状態において、当該開閉バルブよりも上方の前記連通管内をトレーサ液で満たす充填工程と、
前記充填工程後に前記開閉バルブを開き、前記試験区間から地盤にトレーサ液を注入する注入工程と、
を備えることを特徴とするトレーサ試験方法。
【請求項2】
前記注入工程で注入したトレーサ液を含む地下水を、前記ボーリング孔を通じて揚水する揚水工程を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載のトレーサ試験方法。
【請求項3】
前記開閉バルブを閉じた状態において、前記充填工程前に当該開閉バルブよりも上方の前記連通管内の地下水を排出する排出工程を更に備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のトレーサ試験方法。
【請求項4】
前記連通管及び前記パッカーを前記ボーリング孔内に設置して前記試験区間を形成するに際し、前記開閉バルブを閉じた状態で前記連通管を前記ボーリング孔内に挿入することを特徴とする、請求項1又は2に記載のトレーサ試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−25757(P2010−25757A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187671(P2008−187671)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000206196)大成基礎設計株式会社 (12)
【Fターム(参考)】