説明

トレース情報取得システム、およびトレース情報取得方法

【課題】インフラを共有しないフィールドにおいても、トレース情報を取得することができるトレース情報取得システムを提供する。
【解決手段】トレース情報取得システムは、複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得するトレース情報取得システムであって、製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータを記憶する記憶手段と、記憶手段により記憶されたイベントデータからトレース情報を取得する取得手段とを備える。ここで、イベントデータ11は、イベントに関するモノデータ12a、イベントに関する人データ12b、イベントに関する時点データ12c、イベントに関する位置データ12d、およびイベントに関する状態データ12eを含み、複数の段階において、共通のデータ形式を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トレース情報取得システム、およびトレース情報取得方法に関するものであり、特に、複数の段階を経て製造される製品のトレース情報を取得するトレース情報取得システム、およびトレース情報取得方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、製品の品質維持や品質向上等の観点から、複数の段階を経て製造される製品の製造工程を追跡可能とするトレーサビリティシステムの構築、すなわち、製品に対するトレース情報の取得システムの構築が求められている。製品のトレーサビリティに関する技術は、例えば、特開2007−249326号公報(特許文献1)、および特開2005−346280号公報(特許文献2)に開示されている。
【0003】
特許文献1によると、隣接する複数の工程間において、各工程間の連携を関連付ける情報を記憶し、記憶された工程間関連情報を用いることにより、隣接する工程間に跨るトレース情報を取得することとしている。また、特許文献2によると、一連のプロセスからなるプロセスチェーンにおいて、製品のトレース情報の記憶先を示すポインタを記憶し、記憶されたポインタを用いて、製品のトレース情報を取得することとしている。
【特許文献1】特開2007−249326号公報
【特許文献2】特開2005−346280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1および特許文献2に示すトレーサビリティについては、工程間の連係に関する情報や記憶先を示すトレース情報ポインタを記憶することが必要である。すなわち、記憶された工程間の連係情報等を用いなければ、製品に関するトレース情報を得ることができない。そうすると、例えば、異なるサプライチェーンや、サプライチェーンを跨った範囲等、インフラを共有しない環境下におけるフィールドでは、工程間の連係情報等が記憶されていない場合もあり、トレース情報を得ることができない。すなわち、インフラを共有しないフィールドにおいては、トレース情報を取得することができない。
【0005】
この発明の目的は、インフラを共有しないフィールドにおいても、トレース情報を取得することができるトレース情報取得システムを提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、インフラを共有しないフィールドにおいても、トレース情報を取得することができるトレース情報取得方法を提供することである。
【0007】
この発明のさらに他の目的は、インフラを共有しないフィールドにおいても、トレース情報を取得することができるトレース情報取得装置を提供することである。
【0008】
この発明のさらに他の目的は、インフラを共有しないフィールドにおいても、トレース情報を取得することができるトレース情報取得プログラムを提供することである。
【0009】
この発明のさらに他の目的は、インフラを共有しないフィールドにおいても、トレース情報を取得することができるトレース情報取得プログラムを記憶した記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るトレース情報取得システムは、複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得するトレース情報取得システムであって、製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータを記憶する記憶手段と、記憶手段により記憶されたイベントデータからトレース情報を取得する取得手段とを備える。ここで、イベントデータは、複数の段階において、共通のデータ形式を有する。
【0011】
このように、製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータが、複数の段階において共通のデータ形式を有するため、記憶されたイベントデータを基に、製品に対するトレース情報を取得することができる。そうすると、インフラとは無関係に複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得することができ、例えば、複数の段階を経て製造される製品において、複数の段階を関連付けるデータを記憶することなく、製品に対するトレース情報を取得することができる。したがって、インフラを共有しないフィールドにおいても、トレース情報を取得することができる。
【0012】
好ましくは、イベントデータは、イベントに関するモノデータ、イベントに関する人データ、イベントに関する時点データ、イベントに関する位置データ、およびイベントに関する状態データを含む。
【0013】
さらに好ましくは、記憶手段は、イベント発生で記憶されるべき業務活動の情報であるイベント活動データを記憶し、取得手段は、記憶手段により記憶されたイベント活動データからトレース情報を取得する。
【0014】
さらに好ましくは、取得手段は、記憶手段により記憶された複数のイベントデータの中から、互いに関連付けられた複数のイベントデータを抽出する抽出手段を含む。
【0015】
また、抽出手段は、複数のイベントデータのうち、イベントに関する時点データにおいて時点が同じもの同士を、互いに関連付けられたイベントデータとして抽出するようにしてもよい。
【0016】
さらに好ましい一実施形態として、記憶手段は、RFID(Radio Frequency Identification)タグを用いてイベントデータを記憶する。
【0017】
この発明の他の局面において、トレース情報取得方法は、複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得するトレース情報取得方法であって、複数の段階において共通のデータ形式を有し、製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータを記憶する記憶ステップと、記憶ステップにより記憶されたイベントデータからトレース情報を取得する取得ステップとを備える。
【0018】
この発明のさらに他の局面において、トレース情報取得装置は、複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得するトレース情報取得装置であって、複数の段階において共通のデータ形式を有し、製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータを記憶する記憶部と、記憶部により記憶されたイベントデータからトレース情報を取得する取得部とを備える。
【0019】
この発明のさらに他の局面において、トレース情報取得プログラムは、コンピュータを、複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得するために、複数の段階において共通のデータ形式を有し、製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータを記憶する記憶手段、および記憶手段により記憶されたイベントデータからトレース情報を取得する取得手段として機能させるためのトレース情報取得プログラムである。
【0020】
この発明のさらに他の局面において、記憶媒体は、上記したトレース情報取得プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体である。
【発明の効果】
【0021】
このようなトレース情報取得システムによると、製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータが、複数の段階において共通のデータ形式を有するため、記憶されたイベントデータを基に、製品に対するトレース情報を取得することができる。そうすると、インフラとは無関係に複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得することができ、例えば、複数の段階を経て製造される製品において、複数の段階を関連付けるデータを記憶することなく、製品に対するトレース情報を取得することができる。したがって、インフラを共有しないフィールドにおいても、トレース情報を取得することができる。
【0022】
また、このようなトレース情報取得方法、トレース情報取得装置、トレース情報取得プログラムおよび記憶媒体についても、インフラとは無関係に複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得することができ、例えば、複数の段階を経て製造される製品において、複数の段階を関連付けるデータを記憶することなく、製品に対するトレース情報を取得することができる。したがって、インフラを共有しないフィールドにおいても、トレース情報を取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、この発明の一実施形態に係るトレース情報取得システムで用いられるイベントデータについて説明する。図1は、イベントデータのデータ形式を示す概念図である。図1を参照して、イベントデータ11は、製品に対して行なわれたイベントに関するデータであって、製品を製造する際の複数の段階において、共通のデータ形式を有する。イベントデータ11は、イベントに関するセンシング対象のモノの情報であるモノデータ12a、イベントに関する人の情報である人データ12b、イベントに関する時間の情報である時点データ12c、イベントに関する場所の情報である位置データ12d、およびイベントに関する状態の情報である状態データ12eを含む。モノデータ12a、人データ12b、時点データ12c、および位置データ12dはそれぞれ、状態データ12eによって繋がっている概念である。
【0024】
次に、イベント活動データ13について説明する。イベント活動データ13とは、イベント発生で記憶されるべき業務活動の情報、例えば、生産数量や部品消費量等のデータをいう。イベント活動データ13は、フィールドごとのイベントの属性に従ったデータ項目となる。例えば、イベント活動データ13における生産数量データ14aのうち、「製品ID」はモノデータ、「時点」は時点データとなる。「容器ID」、「良品数」、「廃棄数」は、現場入力/取得情報となる。また、搬入出データ14bのうち、「ゲートID」は位置データ、「コンテナID」はモノデータ、「時点」は時点データ、「キャリア」は現場入力/取得情報となる。作業日報データ14cのうち、「作業者ID」は人データ、「時点」は時点データ、「日報」は現場入力/取得情報となる。環境データ14dのうち、「施設ID」は位置データ、「時点」は時点データ、「気温」、「湿度」は現場入力/取得情報となる。電力量データ14eのうち、「電力計ID」は位置データ、「時点」は時点データ、「電力」は現場入力/取得情報となる。イベント活動データとイベントデータとは、1:1で対応付けが可能な最小項目で結合される。なお、図1においてイベント活動データのうち、モノデータ等、同じ項目のものは、同じハッチングで示している。
【0025】
図2は、この発明の一実施形態に係るトレース情報取得システムのハードウェア構成を示すシステム構成図である。図1および図2を参照して、トレース情報取得システム21は、イベントデータやイベント活動データ、複数のイベントデータやイベント活動データを記憶したイベントデータマスタ等、種々のデータを記憶可能であるサーバ22と、既存システムを構築し、生産管理系データや工程マスタ、BOM(Build Of Material)マスタを記憶したサーバ23と、イベントデータ等のデータを入力させるコンピュータ24a、24b、24c、24dと、イベントデータをそのまま入力可能なセンサーデバイス25aと、コンピュータ24cを介してイベントデータを入力可能なセンサーデバイス25bと、サーバ22、23、コンピュータ24a〜24dを接続する接続線26とを備える。サーバ22は、製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータを記憶する記憶手段と、記憶手段により記憶されたイベントデータからトレース情報を取得する取得手段とを備える。ここで、コンピュータ24cは、センサーデバイス25bに対して、デバイス設定インターフェースとして機能する。また、トレース情報取得システム21は、製品と離隔した状態でイベントデータを入出力可能なRFIDタグシステム27を含む。RFIDタグシステム27は、コンピュータ24d側に設けられたリーダライタ28aと、リーダライタ28aによりデータの読書き、すなわち、データの入出力が可能であり、製品29に取り付けられたRFIDタグ28bとを備える。ここで、コンピュータ24dは、RFIDタグシステム27に対して、外部記憶データインターフェースとして機能する。
【0026】
なお、サーバ22とサーバ23は1台のサーバで実現しても構わない。また、接続線26は、有線によるものに限定されず、一部または全部を無線で実現しても構わない。また、コンピュータ24a〜24dは4台に限定されず、最低1台以上あればよく、何台でも構わない。また、センサーデバイス25a、25b、およびRFIDタグシステム27は、含まなくともよいし、それぞれを2台以上含んでいてもよい。
【0027】
ここで、製品のイベントに対するイベントデータを記憶する方法について説明する。図3は、イベントデータを記憶する場合の動作の流れを示すフローチャートである。図4は、この発明の一実施形態に係るトレース情報取得システムのブロック図である。図1〜図4を参照して、まず、デバイス機器によるイベントセンシングタイプのイベントデータの記憶方法について説明する。なお、イベントセンシングタイプのイベントデータの記憶方法とは、例えば、図2に示すシステム構成図のセンサーデバイス25aやセンサーデバイス25bのようなセンサーデバイスにより直接イベントデータを取得して記憶する方法を指す。
【0028】
まず、コンピュータ24cのデバイス設定インターフェースにおいて、センサーデバイス(デバイス機器)25bから、データを読取る(図3において、ステップS11、以下、ステップを省略する)。次に、コンピュータ24cにおけるインターフェースロジックによって、上記した構成のイベントデータを作成する(S12)。その後、コンピュータ24cにおけるインターフェースロジックによって、上記した構成のイベント活動データを作成する(S13)。次に、サーバ22に記憶されているイベントデータマスタのデータベースを更新する(S14)。ここでは、テーブルマスタ、状態マスタ、位置マスタ、モノマスタ、および人マスタから構成されるイベントデータマスタの更新を行なう。すなわち、各マスタに、新たなイベントデータを記憶する。
【0029】
ここで、イベントデータマスタは、各イベントデータのデータと内容を対応付けるためのマスタである。例えば、人データであれば、データ自体は数字やアルファベット等の単純な記号で記憶されている。この記号と、実際の作業者の氏名や所属等の情報の対応付けが記憶されているマスタがイベントデータマスタ内の人マスタである。状態マスタ、位置マスタ、モノマスタについても同様である。また、テーブルマスタは、製品イベントデータ、部品イベントデータ等の種々のデータベースに対応するマスタである。なお、時点データについては、それ自体が年月日、日時のデータであり、別の情報と対応付けは不要なので、マスタは存在しない。
【0030】
次に、既存システムによるデータトランスファタイプのイベントデータの記憶方法について説明する。なお、データトランスファタイプのイベントデータの記憶方法とは、例えば、図2に示すシステム構成図のサーバ23のような既存システムの記憶装置に記憶されたデータを読取り、イベントデータへ変換して記憶する方法、およびシステム構成図に示すRFIDタグ28bのような外部記憶媒体に記憶されたデータを読取り、イベントデータへ変換して記憶する方法を指す。
【0031】
まず、サーバ22において、既存システムを構築する生産管理系のサーバ23から、データを読取る(S21)。次に、サーバ22の既存システムインターフェースにおけるインターフェースロジックによって、イベントデータおよびイベント活動データを作成する(S22、S23)。次に、サーバ22に記憶されているイベントデータマスタのデータベースを更新する(S24)。
【0032】
次に、外部記憶データによるデータトランスファタイプのイベントデータの記憶方法について説明する。コンピュータ24dにおいて、RFIDタグシステム27により、データを読取る(S31)。具体的には、製品29に取り付けられたRFIDタグ28bから、リーダライタ28aにより外部システム記憶データを読取り、コンピュータ24dに入力する。次に、コンピュータ24dの外部記憶データインターフェースにおけるインターフェースロジックによって、イベントデータおよびイベント活動データを作成する(S32、S33)。次に、サーバ22に記憶されているイベントデータマスタのデータベースを更新する(S34)。
【0033】
上記のようにして、種々のデータ、具体的には、デバイス機器によるイベントセンシングタイプのデータ、既存システムによるデータトランスファタイプのデータ、および外部記憶データによるデータトランスファタイプのデータのイベントデータおよびイベント活動データを生成し、データベースの更新を行なう。
【0034】
なお、図4に示すように、イベントデータに基づいて予め種々のデータベースを構築することとしてもよい。具体的には、複数の段階において、記憶された製品に関する製品イベントデータおよび製品イベント活動データ、部品に関する部品イベントデータおよび部品イベント活動データ、装填に関する装填イベントデータおよび装填イベント活動データ、調達に関する調達イベントデータおよび調達イベント活動データ、出荷に関する出荷イベントデータおよび出荷イベント活動データ、静脈に関する静脈イベントデータおよび静脈イベント活動データを構築する。なお、静脈イベントとは、製品の生産過程ではなく、回収、分解、リユースおよびリサイクルに関するイベントである。こうすることにより、後述するトレース情報の取得が、より適切なものになると共に、トレース情報の取得が効率的になる。
【0035】
次に、イベントデータを用いて、製品のトレース情報を取得する方法について説明する。図5は、製品のトレース情報を取得する場合の処理の流れを示すフローチャートである。図1〜図5を参照して、トレーシングエージェントとしてトレース情報を取得する対象となる製品の情報がサーバ22に入力されると(S41)、まず、複数の段階を経て製造された製品のイベントデータを抽出する(S42)。ここで、サーバ22に含まれる取得手段は、記憶手段により記憶された複数のイベントデータの中から、互いに関連付けられた複数のイベントデータを抽出する抽出手段を含む。ここでいう製品のイベントデータは、いわゆる製品のフットプリント情報(足跡情報)であり、どのような工程で製造されたかを示すデータである。
【0036】
次に、抽出した製品のイベントデータを基に、具体的には、イベントデータのうちの時点データおよび位置(場所)データを基に、同時発生、すなわち、同じ時点データおよび同じ位置データを有する部品イベントを抽出する(S43)。ここで、抽出手段は、複数のイベントデータのうち、イベントに関する時点データにおいて時点が同じもの同士を、互いに関連付けられたイベントデータとして抽出する。同様に、抽出した製品のイベントデータを基に、部品容器装着イベントを抽出し(S44)、さらに、抽出した部品容器装着イベントから部品容器イベントをさらに抽出し(S45)、抽出した部品容器イベントから部品イベントを抽出する(S46)。そして、S43において抽出した部品イベントおよびS44〜S46において抽出した部品容器装着イベント、部品容器イベント、および部品イベントにより、工程マスタやBOMマスタによるBOM情報より情報の妥当性を検討した後(S47)、関連イベントの調達イベントを抽出する(S48)。なお、工程マスタやBOMマスタによる情報の妥当性を検討するステップは、任意に行なわれる。
【0037】
また、S42において、製品イベント情報を抽出した後、部品イベントの抽出と共に梱包出荷イベントを抽出し(S49)、さらに、製品出荷の出荷イベントを抽出する(S50)。同様に、S42において、製品イベント情報を抽出した後、部品イベントの抽出と共に分解品イベントを抽出し(S51)、さらに、分解品の再利用イベントを抽出する(S52)。
【0038】
このようにして、イベントデータにより、トレース情報、具体的には、製品に対する関連部品に関する情報や部品情報、容器や出荷、再利用に関する情報を取得する。このようなトレース情報取得システムによると、製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータが、複数の段階において共通のデータ形式を有するため、記憶されたイベントデータを基に、製品に対するトレース情報を取得することができる。そうすると、インフラとは無関係に複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得することができ、例えば、複数の段階を経て製造される製品において、複数の段階を関連付けるデータを記憶することなく、製品に対するトレース情報を取得することができる。したがって、インフラを共有しないフィールドにおいても、トレース情報を取得することができる。
【0039】
すなわち、トレース情報取得システムは、トレース対象である製品のライフサイクルにおけるプロセスを、その開始と終了のイベントデータとして記憶する。そして、同時にその製品のライフサイクルプロセスにおいて、同じ場所で同時発生した部品、部材消費や梱包出荷のイベントデータも同様に記憶する。イベントの同時性により生産に使われたその製品用の部品、部材の関連付け、および使用部品、部材の入荷プロセスと製品の出荷プロセスとも関連付けられ、部品、部材の調達から生産、さらに出荷のトレース情報を取得できる。また、生産過程だけではなく、回収、分解、リユース、リサイクルといった静脈イベントについても、同時性により関連付けが可能となる。この場合、イベントデータは、複数の段階において、共通のデータ形式を有するため、このようなトレース情報の取得が可能になる。
【0040】
なお、トレース情報の表現として製品ライフサイクルフットプリントとカーボンフットプリントとがある。一製品は調達、生産、使用、回収、分解、リユース、リサイクルに跨ってその存在の形跡を持っており、その形跡と軌跡を製品ライフサイクルフットプリントと呼ぶ。さらに、それぞれの形跡において排出されたCO(二酸化炭素)の量を記憶することによって、製品ライフサイクルフットプリントにおけるCO排出の軌跡が描かれ、これをカーボンフットプリントと呼ぶ。
【0041】
また、この発明に係るトレース情報取得方法は、複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得するトレース情報取得方法であって、複数の段階において共通のデータ形式を有し、製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータを記憶する記憶ステップと、記憶ステップにより記憶されたイベントデータからトレース情報を取得する取得ステップとを備える。
【0042】
また、この発明に係るトレース情報取得装置は、複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得するトレース情報取得装置であって、複数の段階において共通のデータ形式を有し、製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータを記憶する記憶部と、記憶部により記憶されたイベントデータからトレース情報を取得する取得部とを備える。ここで、トレース情報取得装置には、上記した図2におけるサーバ22が該当する。
【0043】
また、この発明に係るトレース情報取得プログラムは、コンピュータを、複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得するために、複数の段階において共通のデータ形式を有し、製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータを記憶する記憶手段、および記憶手段により記憶されたイベントデータからトレース情報を取得する取得手段として機能させるためのトレース情報取得プログラムである。
【0044】
また、この発明に係る記憶媒体は、上記したトレース情報取得プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体である。
【0045】
ここで、この発明に係るトレース情報取得システムの一実施例について説明する。図6は、組付け部品リールを装着した部品実装機を用いて製品の実装作業を行なう場合のイベントデータの一例を示す図である。図7は、図6に示す場合において、イベントデータの関連付けを示す図である。図6および図7を参照して、リール交換に関しては、トリガーを「セット完了」とするリールセットというイベント、すなわち、「部品テープをリールにセットする」というイベント、トリガーを「装着完了」とするリール着脱というイベント、すなわち、「リールを部品実装機に着脱する」というイベント、およびトリガーを「取外完了」とするリール着脱というイベントが発生する。これらのイベントに対し、図6に示すようなイベントデータが記憶される。具体的には、トリガーを「セット完了」とする「リールセット」というイベントに対し、モノデータとしての「部品ロット3」、人データしての「作業者B」、位置(設備)データとしての「リール2」、時間データとしての「8:50」、状態データとしての「正常終了」が記憶される。これは、すなわち、作業者Bが、時間8:50に、部品ロット3をリール2に正常にセットした、ということを意味している。同様に、トリガーを「装着完了」とする「リール着脱」というイベントに対し、モノデータとしての「装着リール2」、人データしての「作業者C」、位置(設備)データとしての「実装機4」、時間データとしての「8:55」、状態データとしての「正常装着」が記憶される。これは、すなわち、作業者Cが時間8:55に、リール2を実装機4に正常に装着した、ということを意味している。また、同様に、トリガーを「取外完了」とする「リール着脱」というイベントに対し、モノデータとしての「装着リール2」、人データしての「作業者C」、位置(設備)データとしての「実装機4」、時間データとしての「10:00」、状態データとしての「正常装着」が記憶される。これは、すなわち、作業者Cが、時間10:00に、リール2を実装機4から正常に取り外した、ということを意味している。
【0046】
一方、実装に関しては、トリガーを「作業着手」とする「実装機」イベント、およびトリガーを「作業完了」とする「実装機」イベントが発生する。そして、図6に示すように、「実装機」というイベントに対し、「作業着手」というトリガー、そして、モノデータとしての「製品オーダ1」、人データしての「作業者D」、位置(設備)データとしての「実装機4」、時間データとしての「9:00」、状態データとしての「正常開始」が記憶される。これは、すなわち、作業者Dが、時間9:00に、実装機4で製品オーダ1の実装作業を正常に開始した、ということを意味している。また、「実装機」というイベントに対し、「作業完了」というトリガー、そして、モノデータとしての「製品オーダ1」、人データしての「作業者D」、位置(設備)データとしての「実装機4」、時間データとしての「9:45」、状態データとしての「正常終了」が記憶される。これは、すなわち、作業者Dが、時間9:45に、実装機4で製品オーダ1の実装作業を正常に終了した、ということを意味している。
【0047】
そして、トレース情報の取得により、図7中の点線で示すトレース情報の関連付けがなされる。すなわち、実装機4に関するイベントデータにおいて、モノデータは、「製品オーダ1」である。また、リール着脱に関するイベントデータにおいて、位置データとしては、「実装機4」である。さらに、リール着脱に関するイベントデータにおいて、モノデータとしては、「装着リール2」であり、リールセットイベントにおいては、位置データとして「リール2」である。
【0048】
そうすると、図7に示すように、部品ロット3と製品オーダ1の関連付けを直接記憶しておかなくても、実装機4および装着リール2を介したイベントデータにより、部品ロット3と製品オーダ1とのトレース情報の関連付けを行うことができる。
【0049】
ここで、他の実施例として製造工程におけるイベントデータについて、さらに説明する。図8は、製品オーダから出荷までの製造工程におけるイベントデータの一例を示す図である。図8を参照して、製造工程においては、製品オーダに対応して部品を在庫から選び出すピッキング工程、ピッキングされた部品を組立作業者が作業を行ないやすいように配置するキッティング工程、リール交換工程、配当工程、実装工程、検査工程、積荷工程がある。そして、ピッキング工程の前に発生するイベントとして、トリガーをセット完了とするオーダ登録イベントがある。これら各工程において発生したイベントに対し、それぞれ、イベントデータ、すなわち、モノデータ、人データ、位置データ、時間データ、および状態データを記憶する。そして、記憶されたイベントデータからトレース情報を取得する。
【0050】
以上より、このようなトレース情報取得システムによると、インフラとは無関係に複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得することができ、例えば、複数の段階を経て製造される製品において、複数の段階を関連付けるデータを記憶することなく、製品に対するトレース情報を取得することができる。したがって、インフラを共有しないフィールドにおいても、トレース情報を取得することができる。
【0051】
また、このようなトレース情報取得方法、トレース情報取得装置、トレース情報取得プログラムおよび記憶媒体についても、インフラとは無関係に複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得することができ、例えば、複数の段階を経て製造される製品において、複数の段階を関連付けるデータを記憶することなく、製品に対するトレース情報を取得することができる。したがって、インフラを共有しないフィールドにおいても、トレース情報を取得することができる。
【0052】
なお、上記の実施の形態においては、イベントデータおよびイベント活動データからトレース情報を取得することとしたが、これに限らず、イベントデータのみを記憶し、記憶したイベントデータからトレース情報を取得するよう構成してもよい。
【0053】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
この発明に係るトレース情報取得システム、トレース情報取得方法、トレース情報取得装置、トレース情報取得プログラムおよび記憶媒体は、インフラを共有しない環境において、適切にトレース情報を取得する必要がある場合に、有効に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】イベントデータを示す概念図である。
【図2】この発明の一実施形態に係るトレース情報取得システムのハードウェア構成を示すシステム構成図である。
【図3】イベントデータを記憶する場合の動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】この発明の一実施形態に係るトレース情報取得システムのブロック図である。
【図5】製品のトレース情報を取得する場合の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】組付け部品リールを装着した部品実装機を用いて製品の実装作業を行なう場合のイベントデータの一例を示す図である。
【図7】図6に示す場合において、イベントデータの関連付けを示す図である。
【図8】製品オーダから出荷までの製造工程におけるイベントデータの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
11 イベントデータ、12a モノデータ、12b 人データ、12c 時点データ、12d 位置データ、12e 状態データ、13 イベント活動データ、14a 生産数量データ、14b 搬入出データ、14c 作業日報データ、14d 環境データ、14e 電力量データ、21 トレース情報取得システム、22,23 サーバ、24a,24b,24c,24d コンピュータ、25a,25b センサーデバイス、26 接続線、27 RFIDタグシステム、28a リーダライタ、28b RFIDタグ、29 製品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得するトレース情報取得システムであって、
製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段により記憶された前記イベントデータからトレース情報を取得する取得手段とを備え、
前記イベントデータは、前記複数の段階において、共通のデータ形式を有する、トレース情報取得システム。
【請求項2】
前記イベントデータは、前記イベントに関するモノデータ、前記イベントに関する人データ、前記イベントに関する時点データ、前記イベントに関する位置データ、および前記イベントに関する状態データを含む、請求項1に記載のトレース情報取得システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、イベント発生で記憶されるべき業務活動の情報であるイベント活動データを記憶し、
前記取得手段は、前記記憶手段により記憶された前記イベント活動データからトレース情報を取得する、請求項1または2に記載のトレース情報取得システム。
【請求項4】
前記取得手段は、前記記憶手段により記憶された複数の前記イベントデータの中から、互いに関連付けられた複数の前記イベントデータを抽出する抽出手段を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のトレース情報取得システム。
【請求項5】
前記抽出手段は、複数の前記イベントデータのうち、前記イベントに関する時点データにおいて時点が同じもの同士を、互いに関連付けられたイベントデータとして抽出する、請求項4に記載のトレース情報取得システム。
【請求項6】
前記記憶手段は、RFIDタグを用いて前記イベントデータを記憶する、請求項1〜5のいずれかに記載のトレース情報取得システム。
【請求項7】
複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得するトレース情報取得方法であって、
前記複数の段階において共通のデータ形式を有し、製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータを記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップにより記憶された前記イベントデータからトレース情報を取得する取得ステップとを備える、トレース情報取得方法。
【請求項8】
複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得するトレース情報取得装置であって、
前記複数の段階において共通のデータ形式を有し、製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータを記憶する記憶部と、
前記記憶部により記憶された前記イベントデータからトレース情報を取得する取得部とを備える、トレース情報取得装置。
【請求項9】
コンピュータを、
複数の段階を経て製造される製品に関するトレース情報を取得するために、前記複数の段階において共通のデータ形式を有し、製品に対して行なわれたイベントに関するイベントデータを記憶する記憶手段、
および前記記憶手段により記憶された前記イベントデータからトレース情報を取得する取得手段として機能させるためのトレース情報取得プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のトレース情報取得プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−92365(P2010−92365A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263121(P2008−263121)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】